(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】流体圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/16 20060101AFI20240215BHJP
F15B 15/14 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
F15B15/16
F15B15/14 380C
(21)【出願番号】P 2020025486
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船戸 泰志
(72)【発明者】
【氏名】谷川 夏樹
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104564905(CN,A)
【文献】特開2018-053923(JP,A)
【文献】特開2003-166508(JP,A)
【文献】特開昭51-117282(JP,A)
【文献】特開平06-307412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
F15B 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブに挿入されるロッド部と、
前記ロッド部の端部に設けられ前記シリンダチューブ内をロッド側室と反ロッド側室とに区画するピストン部と、を備え、
前記ロッド部は、前記ロッド側室に対して作動流体を給排する給排通路を有し、
前記給排通路と前記ロッド側室とは、
前記ピストン部のみに設けられた給排ポートと、
前記ピストン部のみに設けられた排出ポートと、を通じて連通
し、
前記給排ポート及び前記排出ポートの一端は、前記ピストン部の外周面に形成された環状溝にそれぞれ開口し、
前記環状溝と前記ロッド側室との間の前記ピストン部の外周面の外径は、前記シリンダチューブの内周面と前記ピストン部の外周面との間に形成され前記環状溝と前記ロッド側室とを連通する流路の断面積が、前記給排ポートの流路断面積と前記排出ポートの流路断面積とを合わせた合計流路断面積以上となるように設定されることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
前記ロッド部は、
前記ピストン部が端部に設けられた筒状の外側ロッド部と、前記外側ロッド部の内周面に沿って摺動する内側ピストン部が端部に設けられた内側ロッド部と、を有し、
前記ロッド側室は、前記シリンダチューブと前記外側ロッド部との間に形成され、
前記内側ロッド部または前記内側ピストン部には、前記外側ロッド部と前記内側ロッド部との間に形成される内側ロッド側室と、前記給排通路と、を連通する内側給排ポートが設けられ、
前記給排ポート及び前記排出ポートは、
前記ピストン部のみに設けられ、前記内側給排ポートを通じて前記給排通路と連通し、
前記給排ポートの流路断面積と前記排出ポートの流路断面積とを合わせた
前記合計流路断面積は、前記内側給排ポートの流路断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【請求項3】
前記ロッド部は、前記ピストン部が端部に設けられた筒状の外側ロッド部と、前記外側ロッド部の内周面に沿って摺動する第1内側ピストン部が端部に設けられた第1内側ロッド部と、前記第1内側ロッド部の内周面に沿って摺動する第2内側ピストン部が端部に設けられた第2内側ロッド部と、を有し、
前記ロッド側室は、前記シリンダチューブと前記外側ロッド部との間に形成され、
前記第1内側ロッド部または前記第1内側ピストン部には、前記外側ロッド部と前記第1内側ロッド部との間に形成される第1内側ロッド側室と、前記給排通路と、を連通する内側給排ポートが設けられ、
前記第2内側ロッド部には、前記第1内側ロッド部と前記第2内側ロッド部との間に形成される第2内側ロッド側室と、前記給排通路と、を連通する連通孔が設けられ、
前記給排ポート及び前記排出ポートは、前記ピストン部のみに設けられ、前記内側給排ポート及び前記連通孔を通じて前記給排通路と連通し、
前記合計流路断面積は、前記内側給排ポートの流路断面積及び前記連通孔の流路断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンダチューブと、シリンダチューブに挿入されるロッド部と、ロッド部の端部に設けられるピストン部と、を備えた流体圧シリンダが開示されている。この流体圧シリンダは、ロッド部に設けられた通路を通じてロッド側室及び反ロッド側室に対して作動流体を給排することにより伸縮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような流体圧シリンダでは、ロッド側室とロッド部に設けられた通路とを連通するポートの流路断面積が比較的小さく形成される。このため、収縮した状態にある流体圧シリンダに対して、引張方向の荷重が外部から急に作用すると、ポートが絞りとなってロッド側室内の作動流体が排出されにくくなり、ロッド側室の圧力が急激に上昇することとなる。このようにロッド側室内の圧力が急激に上昇すると、ロッド側室をシールするシール部材が外れたり、シリンダチューブが膨張したりすることで流体圧シリンダが破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体圧シリンダの破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体圧シリンダが、シリンダチューブと、シリンダチューブに挿入されるロッド部と、ロッド部の端部に設けられシリンダチューブ内をロッド側室と反ロッド側室とに区画するピストン部と、を備え、ロッド部が、ロッド側室に対して作動流体を給排する給排通路を有し、給排通路とロッド側室とが、ピストン部のみに設けられた給排ポートと、ピストン部のみに設けられた排出ポートと、を通じて連通し、給排ポート及び排出ポートの一端は、ピストン部の外周面に形成された環状溝にそれぞれ開口し、環状溝とロッド側室との間のピストン部の外周面の外径は、シリンダチューブの内周面とピストン部の外周面との間に形成され環状溝とロッド側室とを連通する流路の断面積が、給排ポートの流路断面積と排出ポートの流路断面積とを合わせた合計流路断面積以上となるように設定されることを特徴とする。
【0007】
この本発明では、給排通路とロッド側室とが、給排ポートに加えて、排出ポートを通じて連通している。このように給排通路とロッド側室とを、給排ポートに加えて、排出ポートを通じて連通させることによって、最収縮状態にある流体圧シリンダに対して、引張方向の荷重が外部から急に作用したとしても、ロッド側室内の作動流体は給排ポートに加えて、排出ポートから排出されることになる。これによりロッド側室の圧力が急激に上昇することが抑制され、結果として、流体圧シリンダが破損することを防止することができる。
【0008】
また、本発明は、ロッド部が、筒状の外側ロッド部と、外側ロッド部の内周面に沿って摺動する内側ピストン部が端部に設けられた内側ロッド部と、を有し、ロッド側室が、シリンダチューブと外側ロッド部との間に形成され、内側ロッド部または内側ピストン部には、外側ロッド部と内側ロッド部との間に形成される内側ロッド側室と、給排通路と、を連通する内側給排ポートが設けられ、給排ポート及び排出ポートは、ピストン部のみに設けられ、内側給排ポートを通じて給排通路と連通し、給排ポートの流路断面積と排出ポートの流路断面積とを合わせた合計流路断面積は、内側給排ポートの流路断面積よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
この発明では、給排ポートの流路断面積と排出ポートの流路断面積とを合わせた合計流路断面積を、内側給排ポートの流路断面積よりも大きくしている。これにより、給排ポート及び排出ポートの方が内側給排ポートよりも作動流体が流れやすくなり、結果として、ロッド側室の圧力を内側ロッド側室へと解放させることができる。
【0010】
また、本発明は、ロッド部が、ピストン部が端部に設けられた筒状の外側ロッド部と、外側ロッド部の内周面に沿って摺動する第1内側ピストン部が端部に設けられた第1内側ロッド部と、第1内側ロッド部の内周面に沿って摺動する第2内側ピストン部が端部に設けられた第2内側ロッド部と、を有し、ロッド側室は、シリンダチューブと外側ロッド部との間に形成され、第1内側ロッド部または第1内側ピストン部には、外側ロッド部と第1内側ロッド部との間に形成される第1内側ロッド側室と、給排通路と、を連通する内側給排ポートが設けられ、第2内側ロッド部には、第1内側ロッド部と第2内側ロッド部との間に形成される第2内側ロッド側室と、給排通路と、を連通する連通孔が設けられ、給排ポート及び排出ポートは、ピストン部のみに設けられ、内側給排ポート及び連通孔を通じて給排通路と連通し、合計流路断面積は、内側給排ポートの流路断面積及び連通孔の流路断面積よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、流体圧シリンダの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体圧シリンダの断面図であり、最収縮状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る流体圧シリンダを示す断面図であり、第1ロッドアッシーが伸長位置にあり、第2ロッドアッシー及び第3ロッドアッシーが収縮位置にある状態を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る流体圧シリンダを示す断面図であり、第1ロッドアッシー及び第2ロッドアッシーが伸長位置にあり、第3ロッドアッシーが収縮位置にある状態を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る流体圧シリンダを示す断面図であり、最伸長状態を示す図である。
【
図5】
図1のA-A線に沿う第1ロッドアッシーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧シリンダについて説明する。以下では、流体圧シリンダが作動油を作動流体として駆動する多段式油圧シリンダ100(以下、単に「油圧シリンダ100」と称する。)である場合について説明する。
【0015】
図1に示すように、油圧シリンダ100は、有底筒状のシリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に摺動自在に挿入される第1ロッドアッシー30と、第1ロッドアッシー30に摺動自在に挿入される第2ロッドアッシー40と、第2ロッドアッシー40に摺動自在に挿入される第3ロッドアッシー50と、を備える。なお、
図1は、油圧シリンダ100が最も収縮した状態を示す断面図である。
【0016】
油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10の底部に設けられる第1取付部61と、シリンダチューブ10から突出する第3ロッドアッシー50の端部に設けられる第2取付部62と、を介して、シリンダチューブ10が鉛直方向上方側に位置し、第3ロッドアッシー50が鉛直方向下方側に位置するようにして駆動対象機器に取り付けられる。つまり、油圧シリンダ100は、第2取付部62に対して第1取付部61が鉛直方向、すなわち上下方向に変位するように駆動対象機器に取り付けられる。なお、油圧シリンダ100が取り付けられる方向はこれに限定されず、シリンダチューブ10が鉛直方向下方側に位置し、第3ロッドアッシー50が鉛直方向上方側に位置するように取り付けられてもよい。また、油圧シリンダ100は、第2取付部62に対して第1取付部61が水平方向において変位するように駆動対象機器に取り付けられてもよい。
【0017】
第1ロッドアッシー30は、ロッド部としての筒状の外側ロッド部31と、外側ロッド部31の一端部に設けられシリンダチューブ10の内周面に沿って摺動するピストン部としての環状の外側ピストン部32と、外側ロッド部31の他端部から径方向内側に突出して形成され第2ロッドアッシー40を摺動自在に支持する円筒状の第1支持部33と、を有する。
【0018】
第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32側の内周面には金属製の第1スナップリング35が装着される環状溝が形成される。第1スナップリング35は、第1ロッドアッシー30の内周面から径方向内側に少なくとも一部が突出した状態で装着される。なお、第1スナップリング35の装着は、第1ロッドアッシー30に第2ロッドアッシー40が挿入されてから行われる。
【0019】
第2ロッドアッシー40は、第1ロッドアッシー30と同様の形状を有しており、外側ロッド部31に挿入されるロッド部としての筒状の第1内側ロッド部41と、第1内側ロッド部41の一端部に設けられ第1ロッドアッシー30の内周面に沿って摺動する内側ピストン部としての環状の第1内側ピストン部42と、第1内側ロッド部41の他端部から径方向内側に突出して形成され第3ロッドアッシー50を摺動自在に支持する円筒状の第2支持部43と、を有する。なお、第1内側ロッド部41は、第1ロッドアッシー30の外側ロッド部31の内周面に沿って摺動する第1内側ピストン部42が端部に設けられた内側ロッド部として、外側ロッド部31とともにシリンダチューブ10に挿入される。
【0020】
第2ロッドアッシー40の第1内側ピストン部42側の内周面には金属製の第2スナップリング45が装着される環状溝が形成される。第2スナップリング45は、第2ロッドアッシー40の内周面から径方向内側に少なくとも一部が突出した状態で装着される。なお、第2スナップリング45の装着は、第2ロッドアッシー40に第3ロッドアッシー50が挿入されてから行われる。
【0021】
第3ロッドアッシー50は、第1内側ロッド部41に挿入されるロッド部としての第2内側ロッド部51と、第2内側ロッド部51の一端部に結合され第2ロッドアッシー40の内周面に沿って摺動する環状の第2内側ピストン部52と、を有する。第2内側ロッド部51と第2内側ピストン部52とは、図示しないボルトを介して結合される。
【0022】
このように、シリンダチューブ10には、外側ロッド部31、第1内側ロッド部41及び第2内側ロッド部51の3つのロッド部が挿入される。
【0023】
シリンダチューブ10は、開口部に設けられ第1ロッドアッシー30の外側ロッド部31を摺動自在に支持するシリンダヘッド11を有する。また、軸方向において外側ピストン部32と対抗するシリンダチューブ10の底部には、外側ピストン部32の内径よりも大きな内径を有する凹部10Aが形成される。
【0024】
シリンダチューブ10に挿入される第1ロッドアッシー30の最収縮位置は、外側ピストン部32がシリンダチューブ10の底部に当接することによって規定され、最伸長位置は、外側ピストン部32がシリンダヘッド11に当接することによって規定される。なお、シリンダヘッド11の内周面には、外部への作動油の漏れを防止するために、シリンダヘッド11の内周面と外側ロッド部31の外周面との間の隙間を封止する図示しないシール部材が設けられる。
【0025】
第1ロッドアッシー30に挿入される第2ロッドアッシー40の最収縮位置は、第1ロッドアッシー30に装着された第1スナップリング35に第1内側ピストン部42が当接することによって規定され、最伸長位置は、第1内側ピストン部42が第1支持部33に当接することによって規定される。なお、第1スナップリング35は、第2ロッドアッシー40の最収縮位置を規制しているとともに、油圧シリンダ100が収縮した際に、第1ロッドアッシー30がシリンダチューブ10から抜け落ちてしまうことを防止している。
【0026】
また、第1支持部33の内周面には、外部への作動油の漏れを防止するために、第1支持部33の内周面と第1内側ピストン部42の外周面との間の隙間を封止する図示しないシール部材が設けられる。
【0027】
第2ロッドアッシー40に挿入される第3ロッドアッシー50の最収縮位置は、第2ロッドアッシー40に装着された第2スナップリング45に第2内側ピストン部52が当接することによって規定され、最伸長位置は、第2内側ピストン部52が第2支持部43に当接することによって規定される。なお、第2スナップリング45は、第3ロッドアッシー50の最収縮位置を規制しているとともに、油圧シリンダ100が収縮した際に、第2ロッドアッシー40がシリンダチューブ10から抜け落ちてしまうことを防止している。
【0028】
また、第2支持部43の内周面には、外部への作動油の漏れを防止するために、第2支持部43の内周面と第2内側ピストン部52の外周面との間の隙間を封止する図示しないシール部材が設けられる。また、第2支持部43の内周面には、第3ロッドアッシー50が最も伸長した際に第2内側ロッド部51に形成された後述の連通孔51bの開口部が臨む環状凹部43Aが形成される。なお、環状凹部43Aは、後述の第2内側ロッド側室4に開口している。
【0029】
上述の第1ロッドアッシー30、第2ロッドアッシー40及び第3ロッドアッシー50が挿入されるシリンダチューブ10内には、シリンダチューブ10、シリンダヘッド11、外側ロッド部31及び外側ピストン部32によって区画されるロッド側室2と、外側ロッド部31、第1支持部33、第1内側ロッド部41及び第1内側ピストン部42によって区画される内側ロッド側室としての第1内側ロッド側室3と、第1内側ロッド部41、第2支持部43、第2内側ロッド部51及び第2内側ピストン部52によって区画される第2内側ロッド側室4と、シリンダチューブ10、外側ピストン部32、第1内側ピストン部42及び第2内側ピストン部52によって区画される反ロッド側室5と、が形成される。
【0030】
第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32には、ロッド側室2に対して作動油を給排するための給排ポート30Aが径方向に貫通して複数形成される。給排ポート30Aが開口する外側ピストン部32の外周面32aには、給排ポート30Aの径よりも溝幅が大きい環状溝32bが周方向に沿って形成される。環状溝32bとロッド側室2との間の外側ピストン部32の外周面32cの外径は、シリンダチューブ10の内周面と外側ピストン部32の外周面32cとの間に形成される流路断面積が、給排ポート30Aの流路断面積以上となるように設定される。
【0031】
また、第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32の外周面32aには、第1シール部材34が設けられる。第1シール部材34が設けられることにより、外側ピストン部32の外周面32aとシリンダチューブ10の内周面との間の隙間を通じたロッド側室2と反ロッド側室5との連通が遮断される。
【0032】
第2ロッドアッシー40の第1内側ピストン部42には、第1内側ロッド側室3に対して作動油を給排するための内側給排ポート40Aが径方向に貫通して複数形成される。内側給排ポート40Aが開口する第1内側ピストン部42の外周面42aには、内側給排ポート40Aの径よりも溝幅が大きい環状溝42bが周方向に沿って形成される。環状溝42bと第1内側ロッド側室3との間の第1内側ピストン部42の外周面42cの外径は、第1ロッドアッシー30の内周面と第1内側ピストン部42の外周面42cとの間に、内側給排ポート40Aの流路断面積以上の流路断面積が確保されるように設定される。
【0033】
また、第2ロッドアッシー40の第1内側ピストン部42の外周面42aには、第2シール部材44が設けられる。第2シール部材44が設けられることにより、第1内側ピストン部42の外周面42aと第1ロッドアッシー30の内周面との間の隙間を通じた第1内側ロッド側室3と反ロッド側室5との連通が遮断される。
【0034】
第3ロッドアッシー50の第2内側ロッド部51には、油圧シリンダ100に対して作動油を給排する図示しない外部装置に接続される給排通路としての中空部51aと、中空部51aと第2内側ロッド側室4とを連通する連通孔51bと、が形成される。また、第2内側ロッド部51には、第2取付部62に形成された通路64と、中空部51aと、を接続する接続通路51cが形成される。
【0035】
また、第3ロッドアッシー50の第2内側ピストン部52の外周面には、第3シール部材54が設けられる。第3シール部材54が設けられることにより、第2内側ピストン部52の外周面と第2ロッドアッシー40の内周面との間の隙間を通じた第2内側ロッド側室4と反ロッド側室5との連通が遮断される。
【0036】
第1ロッドアッシー30が最収縮位置にある状態において、ロッド側室2は、給排ポート30A、内側給排ポート40A及び連通孔51bを通じて中空部51aと連通するとともに、給排ポート30Aを通じて第1内側ロッド側室3と連通し、給排ポート30A及び内側給排ポート40Aを通じて第2内側ロッド側室4と連通する。
【0037】
また、第2ロッドアッシー40が最収縮位置にある状態において、第1内側ロッド側室3は、内側給排ポート40A及び連通孔51bを通じて中空部51aと連通するとともに、内側給排ポート40Aを通じて第2内側ロッド側室4と連通する。
【0038】
したがって、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4への作動油の供給と、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4からの作動油の排出とは、第2内側ロッド部51に形成された中空部51aを通じて行われることになる。
【0039】
また、第2内側ロッド部51には、油圧シリンダ100に対して作動油を給排する外部装置に接続されるパイプ状の給排管55が設けられる。給排管55は、一端が反ロッド側室5に臨んで開口するように第2内側ロッド部51に組み込まれており、具体的には、中空部51aを軸方向に貫通するようにして第2内側ロッド部51に接合される。また、第2内側ロッド部51には、第2取付部62に形成された通路63と、給排管55の他端側と、を接続する接続通路51dが形成される。
【0040】
このように給排管55の一端が反ロッド側室5において開口しているため、反ロッド側室5への作動油の供給及び反ロッド側室5からの作動油の排出は、第2内側ロッド部51に設けられた給排管55を通じて行われることになる。
【0041】
次に、
図1~4を参照して、油圧シリンダ100の作動について説明する。なお、以下では、油圧シリンダ100が、第1取付部61が鉛直方向上方側に位置し、第2取付部62が鉛直方向下方側に位置するようにして駆動対象機器に取り付けられている場合について説明する。
【0042】
油圧シリンダ100が伸長作動する際には、給排管55を通じて図示しないポンプ等の油圧源から反ロッド側室5に作動油が供給され、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4内の作動油が中空部51aを通じて図示しないタンクに排出される。油圧シリンダ100の伸長作動では、第1ロッドアッシー30、第2ロッドアッシー40、第3ロッドアッシー50の順番で、シリンダチューブ10に対して相対移動する。
【0043】
油圧シリンダ100が
図1に示す最収縮状態から伸長作動する際には、給排管55を通じて反ロッド側室5に作動油が供給される。ここで、反ロッド側室5の圧力を受ける受圧面積は、第1ロッドアッシー30が最も大きく、第3ロッドアッシー50が最も小さく形成される。つまり、内側のピストン部ほど受圧面積が小さい。よって、油圧シリンダ100が最収縮状態から伸長作動する際には、まず、第1ロッドアッシー30に対してシリンダチューブ10が相対移動する。具体的には、
図2に示すように、シリンダチューブ10が第1ロッドアッシー30に対して上方(
図2中上側)へ移動する。なお、シリンダチューブ10の底部に形成された凹部10Aは、第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32の内径よりも大きな内径を有するため、反ロッド側室5に導かれた作動油の圧力は、凹部10Aを通じて外側ピストン部32に作用する。
【0044】
第1ロッドアッシー30に対してシリンダチューブ10が相対移動すると、ロッド側室2の作動油は、給排ポート30A、内側給排ポート40A及び連通孔51bを通じて中空部51aに導かれて外部へと排出される。
【0045】
そして、
図2に示すように、第1ロッドアッシー30に対してシリンダチューブ10が最も伸長した状態、すなわち、シリンダヘッド11が第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32に当接するまでシリンダチューブ10が上方へと移動した状態となると、次は、反ロッド側室5の圧力によって、第3ロッドアッシー50よりも受圧面積が大きい第2ロッドアッシー40に対してシリンダチューブ10及び第1ロッドアッシー30が相対移動することになる。具体的には、
図3に示すように、シリンダチューブ10及び第1ロッドアッシー30が第2ロッドアッシー40に対して上方(
図3中上側)へ移動する。
【0046】
第2ロッドアッシー40に対して第1ロッドアッシー30が相対移動すると、第1内側ロッド側室3の作動油は、内側給排ポート40A及び連通孔51bを通じて中空部51aに導かれて外部へと排出される。
【0047】
そして、
図3に示すように、第2ロッドアッシー40に対して第1ロッドアッシー30が最も伸長した状態、すなわち、第1ロッドアッシー30の第1支持部33が第2ロッドアッシー40の第1内側ピストン部42に当接するまでシリンダチューブ10及び第1ロッドアッシー30が上方へと移動した状態となると、次は、反ロッド側室5の圧力によって、第3ロッドアッシー50に対してシリンダチューブ10、第1ロッドアッシー30及び第2ロッドアッシー40が相対移動することになる。具体的には、
図4に示すように、シリンダチューブ10、第1ロッドアッシー30及び第2ロッドアッシー40が第3ロッドアッシー50に対して上方(
図4中上側)へ移動する。
【0048】
第3ロッドアッシー50に対して第2ロッドアッシー40が相対移動すると、第2内側ロッド側室4の作動油は、連通孔51bを通じて中空部51aに導かれて外部へと排出される。
【0049】
そして、
図4に示すように、第3ロッドアッシー50に対して第2ロッドアッシー40が最も伸長した状態、すなわち、第2ロッドアッシー40の第2支持部43が第3ロッドアッシー50の第2内側ピストン部52に当接するまでシリンダチューブ10、第1ロッドアッシー30及び第2ロッドアッシー40が上方へと移動した状態となると、油圧シリンダ100は最伸長状態となる。
【0050】
油圧シリンダ100が収縮作動する際には、中空部51aを通じて油圧源からロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4に作動油が供給され、反ロッド側室5の作動油が給排管55を通じてタンクに排出される。油圧シリンダ100の収縮作動では、第3ロッドアッシー50、第2ロッドアッシー40、第1ロッドアッシー30の順番で、シリンダチューブ10に対して相対移動する。
【0051】
なお、油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10及び第1取付部61に連結される駆動対象機器の自重により収縮作動してもよい。この場合、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4に作動油を供給する必要はなく、ロッド側室2、第1内側ロッド側室3及び第2内側ロッド側室4には、タンクから作動油が吸い込まれることになる。
【0052】
ここで、
図1に示すように、上記構成の油圧シリンダ100が最収縮状態にあるときに、外部から引張方向の荷重、例えば、第1取付部61を
図1において上方へと引き上げる荷重が急に作用すると、シリンダチューブ10が、第1ロッドアッシー30から離れる方向に移動しようとすることで、ロッド側室2は急激に圧縮されることになる。
【0053】
圧縮されるロッド側室2からは給排ポート30Aを通じて作動油が排出されるが、給排ポート30Aの内径は比較的小さく形成されることから、ロッド側室2が急激に圧縮された場合には、給排ポート30Aが絞りとなってロッド側室2内の作動油は排出されにくくなる。
【0054】
このようにロッド側室2内の作動油が排出されず、ロッド側室2内の圧力が急激に上昇すると、ロッド側室2をシールするシール部材が外れたり、シリンダチューブ10が膨張したりすることで油圧シリンダ100が破損するおそれがある。
【0055】
また、ロッド側室2内の圧力が上昇すると、第1ロッドアッシー30は、シリンダチューブ10とともに上方へと引き上げられ、第2ロッドアッシー40から離れた状態となるが、外部からの荷重が油圧シリンダ100に対して作用しなくなると、第1ロッドアッシー30は再び第1スナップリング35を介して第2ロッドアッシー40と接触した状態へと戻る。このように第1ロッドアッシー30と第2ロッドアッシー40とが離れた状態から接触した状態へと瞬時に戻ったり、離れた状態と接触した状態とが繰り返されたりすると、第1ロッドアッシー30と第2ロッドアッシー40との間に介在する第1スナップリング35に不規則な荷重がかかり、第1スナップリング35が破損するおそれがある。
【0056】
これに対し、本実施形態の油圧シリンダ100では、ロッド側室2が急激に圧縮された場合であっても、ロッド側室2からの作動油が円滑に排出されるように、給排ポート30Aに加えて、排出ポート30Bを設けている。
【0057】
排出ポート30Bは、
図5に示すように、給排ポート30Aと同様に、第1ロッドアッシー30の外側ピストン部32に設けられる。なお、
図5は、
図1のA-Aに沿う断面を示す断面図であり、第1ロッドアッシー30以外の部材については省略して示している。
【0058】
具体的には、排出ポート30Bは、一端が環状溝32bにおいて開口し、他端が第1ロッドアッシー30の内周面において開口するように、外側ピストン部32を径方向に貫通して複数形成される。そして、環状溝32bとロッド側室2との間の外側ピストン部32の外周面32cの外径は、シリンダチューブ10の内周面と外側ピストン部32の外周面32cとの間に形成される流路断面積が、給排ポート30Aの総流路断面積(A1)と排出ポート30Bの総流路断面積(A2)とを合わせた合計流路断面積(A1+A2)以上となるように設定される。
【0059】
このように給排ポート30Aに加えて、排出ポート30Bを設けたことにより、ロッド側室2が急激に圧縮された場合であってもロッド側室2の作動油は円滑に排出されることになる。これにより、油圧シリンダ100が最収縮状態にあるときに外部から引張方向の荷重が作用したとしてもロッド側室2の圧力の上昇が抑制され、結果として、油圧シリンダ100の破損を防止することができる。また、ロッド側室2の圧力の上昇が抑制されることで、ロッド側室2の圧力の上昇に起因して第1スナップリング35が破損等することも防止することができる。
【0060】
なお、給排ポート30A及び排出ポート30Bを通じてロッド側室2から排出された作動油は、第2ロッドアッシー40に設けられた内側給排ポート40Aを流れることになるが、内側給排ポート40Aの総流路断面積(A3)が、給排ポート30Aと排出ポート30Bとの合計流路断面積(A1+A2)よりも大きいと、結果的に給排ポート30A及び排出ポート30Bは絞りとなってしまう。
【0061】
そこで、本実施形態では、給排ポート30Aと排出ポート30Bとの合計流路断面積(A1+A2)を、内側給排ポート40Aの総流路断面積(A3)よりも大きくすることにより、給排ポート30A及び排出ポート30Bが絞りとなることを抑制している。つまり、給排ポート30A及び排出ポート30Bの方が内側給排ポート40Aよりも作動油が流れやすい構成としている。
【0062】
これにより、ロッド側室2と第1内側ロッド側室3とは、給排ポート30A及び排出ポート30Bを通じて連通され、ほぼ1つの圧力室となる。このように圧力室の容積を実質的に拡張させることによって、ロッド側室2が急激に圧縮され、ロッド側室2の圧力が上昇したとしても、ロッド側室2と連通する第1内側ロッド側室3へと圧力が解放されるため、ロッド側室2の圧力が急激に上昇することは抑制される。
【0063】
また、同様の理由により、給排ポート30Aと排出ポート30Bとの合計流路断面積(A1+A2)を、内側給排ポート40Aの総流路断面積(A3)よりも大きくするとともに、内側給排ポート40Aの総流路断面積(A3)を、中空部51aと第2内側ロッド側室4とを連通する連通孔51bの流路断面積(A4)よりも大きくして、給排ポート30Aと排出ポート30Bとの合計流路断面積(A1+A2)を、連通孔51bの流路断面積(A4)よりも大きくすることが好ましい。
【0064】
このように、給排ポート30A及び排出ポート30Bの方が内側給排ポート40Aよりも作動油が流れやすく、さらに、内側給排ポート40Aの方が連通孔51bよりも作動油が流れやすい構成とすることによって、ロッド側室2が急激に圧縮され、ロッド側室2の圧力が上昇したとしても、ロッド側室2と連通する第1内側ロッド側室3へと圧力が解放され、さらには第1内側ロッド側室3と連通する第2内側ロッド側室4へも圧力が解放されるため、ロッド側室2の圧力が急激に上昇することは抑制される。
【0065】
また、本実施形態では、給排ポート30A及び排出ポート30Bは、第1ロッドアッシー30の外側ロッド部31ではなく、外側ロッド部31よりも径方向における肉厚が厚い外側ピストン部32に設けられる。このように比較的肉厚が厚い外側ピストン部32に給排ポート30A及び排出ポート30Bを設けることで、第1ロッドアッシー30の剛性を低下させることなく、給排ポート30A及び排出ポート30Bの内径を大きくしたり、数を増やしたりして、中空部51aとロッド側室2とを連通する流路の合計流路断面積(A1+A2)を容易に拡大させることが可能である。
【0066】
なお、給排ポート30A及び排出ポート30Bは、外側ロッド部31に設けられていてもよい。この場合、外側ロッド部31の剛性の低下を抑制するために、給排ポート30A及び排出ポート30Bは、周方向または軸方向に所定の間隔をあけて配置されることが好ましい。また、給排ポート30A及び排出ポート30Bの一方を外側ロッド部31に設け、他方を外側ピストン部32に設けてもよく、この場合も合計流路断面積(A1+A2)を容易に増大させることが可能である。
【0067】
なお、給排ポート30A及び排出ポート30Bの両方または何れか一方が外側ロッド部31に設けられる場合、第1ロッドアッシー30が最も伸長した際に、シリンダヘッド11に設けられた図示しないシール部材が、外側ロッド部31に設けられた給排ポート30Aや排出ポート30Bのエッジによって傷ついてしまうおそれがある。このため、外側ロッド部31に給排ポート30Aや排出ポート30Bを設ける場合には、第1ロッドアッシー30が最も伸長した際に、シリンダヘッド11に設けられたシール部材にこれらのポートが接しないように、これらのポートを外側ピストン部32から軸方向において所定の範囲内に配置することが好ましく、例えば、第1ロッドアッシー30に設けられる給排ポート30Aと排出ポート30Bとの軸方向における間隔については、外側ピストン部32の軸方向長さ以下に設定することが好ましい。
【0068】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0069】
上記構成の油圧シリンダ100では、給排通路である中空部51aとロッド側室2とが、給排ポート30Aに加えて、排出ポート30Bを通じて連通している。このように中空部51aとロッド側室2とを、給排ポート30Aに加えて、排出ポート30Bを通じて連通させることによって、最収縮状態にある油圧シリンダ100に対して、引張方向の荷重が外部から急に作用したとしても、ロッド側室2内の作動油は給排ポート30Aに加えて、排出ポート30Bから排出されることになる。これによりロッド側室2の圧力が急激に上昇することが抑制され、結果として、油圧シリンダ100が破損することを防止することができる。
【0070】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0071】
上記実施形態において、油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10内に3つのロッド部(第1ロッドアッシー30,第2ロッドアッシー40,第3ロッドアッシー50)が径方向において重なって設けられた三段式の油圧シリンダ100である。これに対し、油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10内に二つのロッド部が径方向に重なって設けられた二段式のものであってもよいし、四つ以上のロッド部が径方向において重なって設けられたものであってもよい。また、油圧シリンダ100は、給排通路を有する一つのロッド部のみがシリンダチューブ10内に設けられたものであってもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、排出ポート30Bは、単なる貫通孔で形成されている。排出ポート30Bは、ロッド側室2から作動油が排出される際に作動油の流路となればよいことから、排出ポート30Bには、ロッド側室2から排出される作動油の流れのみを許容するチェック弁が設けられてもよい。これにより、上述の効果を奏するとともに、第1ロッドアッシー30が収縮位置に戻る際の第1ロッドアッシー30の収縮速度を制御することができる。
【0073】
また、上記実施形態において、内側給排ポート40Aは、第1内側ピストン部42に設けられている。これに代えて、内側給排ポート40Aは、第1内側ロッド部41に形成されてもよい。なお、第2ロッドアッシー40の剛性の低下を抑制するためには、内側給排ポート40Aは、第1内側ロッド部41よりも第1内側ピストン部42に設けられることが好ましい。
【0074】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0075】
油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に挿入されるロッド部である外側ロッド部31、第1内側ロッド部41及び第2内側ロッド部51と、外側ロッド部31の端部に設けられシリンダチューブ10内をロッド側室2と反ロッド側室5とに区画する外側ピストン部32と、を備え、第2内側ロッド部51は、ロッド側室2に対して作動油を給排する給排通路である中空部51aを有し、中空部51aとロッド側室2とは、外側ロッド部31または外側ピストン部32に設けられた給排ポート30Aと、外側ロッド部31または外側ピストン部32に設けられた排出ポート30Bと、を通じて連通する。
【0076】
この構成では、給排通路である中空部51aとロッド側室2とが、給排ポート30Aに加えて、排出ポート30Bを通じて連通している。このように中空部51aとロッド側室2とを、給排ポート30Aに加えて、排出ポート30Bを通じて連通させることによって、最収縮状態にある油圧シリンダ100に対して、引張方向の荷重が外部から急に作用したとしても、ロッド側室2内の作動油は給排ポート30Aに加えて、排出ポート30Bから排出されることになる。これによりロッド側室2の圧力が急激に上昇することが抑制され、結果として、油圧シリンダ100が破損することを防止することができる。
【0077】
また、ロッド部は、筒状の外側ロッド部31と、外側ロッド部31の内周面に沿って摺動する第1内側ピストン部42が端部に設けられた第1内側ロッド部41と、を有し、ロッド側室2は、シリンダチューブ10と外側ロッド部31との間に形成され、第1内側ロッド部41または第1内側ピストン部42には、外側ロッド部31と第1内側ロッド部41との間に形成される第1内側ロッド側室3と、給排通路である中空部51aと、を連通する内側給排ポート40Aが設けられ、給排ポート30A及び排出ポート30Bは、外側ロッド部31または外側ピストン部32に設けられ、内側給排ポート40Aを通じて中空部51aと連通し、給排ポート30Aの流路断面積(A1)と排出ポート30Bの流路断面積(A2)とを合わせた合計流路断面積(A1+A2)は、内側給排ポート40Aの流路断面積(A3)よりも大きい。
【0078】
この構成では、給排ポート30Aの流路断面積(A1)と排出ポート30Bの流路断面積(A2)とを合わせた合計流路断面積(A1+A2)を、内側給排ポート40Aの流路断面積(A3)よりも大きくすることにより、給排ポート30A及び排出ポート30Bが絞りとなることを抑制している。つまり、給排ポート30A及び排出ポート30Bの方が内側給排ポート40Aよりも作動油が流れやすい構成となっている。
【0079】
これにより、ロッド側室2と第1内側ロッド側室3とは、給排ポート30A及び排出ポート30Bを通じて連通され、ほぼ1つの圧力室となる。このように圧力室の容積を実質的に拡張させることによって、ロッド側室2が急激に圧縮され、ロッド側室2の圧力が上昇したとしても、第1内側ロッド側室3へと圧力が解放されるため、ロッド側室2の圧力が急激に上昇することを抑制することができる。
【0080】
また、給排ポート30A及び排出ポート30Bの何れか一方は外側ピストン部32に設けられる。
【0081】
この構成では、給排ポート30A及び排出ポート30Bの何れか一方が外側ピストン部32に設けられる。このように外側ロッド部31よりも径方向における肉厚が厚い外側ピストン部32に給排ポート30A及び排出ポート30Bの何れかまたは両方を設けることによって、第1ロッドアッシー30の剛性を低下させることなく、給排ポート30A及び排出ポート30Bの内径を大きくしたり、数を増やしたりして、中空部51aとロッド側室2とを連通する流路の断面積を容易に拡大することができる。これによりロッド側室2の圧力が急激に上昇することが抑制され、結果として、油圧シリンダ100が破損することを防止することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0083】
100・・・油圧シリンダ(流体圧シリンダ)、2・・・ロッド側室、3・・・第1内側ロッド側室(内側ロッド側室)、4・・・第2内側ロッド側室、5・・・反ロッド側室、10・・・シリンダチューブ、30・・・第1ロッドアッシー、30A・・・給排ポート、30B・・・排出ポート、31・・・外側ロッド部(ロッド部)、32・・・外側ピストン部(ピストン部)、40・・・第2ロッドアッシー、40A・・・内側給排ポート、41・・・第1内側ロッド部(内側ロッド部,ロッド部)、42・・・第1内側ピストン部(内側ピストン部)、50・・・第3ロッドアッシー、51・・・第2内側ロッド部(ロッド部)、51a・・・中空部(給排通路)、52・・・第2内側ピストン部