(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
G01N21/956 B
(21)【出願番号】P 2020031485
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】595039014
【氏名又は名称】株式会社サキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140800
【氏名又は名称】保坂 丈世
(74)【代理人】
【識別番号】100156281
【氏名又は名称】岩崎 敬
(72)【発明者】
【氏名】小更 一平
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152557(JP,A)
【文献】特開2012-167975(JP,A)
【文献】特開2019-056668(JP,A)
【文献】特開2014-035261(JP,A)
【文献】国際公開第2012/039043(WO,A1)
【文献】特開平09-079995(JP,A)
【文献】特開2011-247639(JP,A)
【文献】特開2006-177852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体
上の検査対象を含む領域を撮像する第1の撮像部と、
前記被検査体に対して前記第1の撮像部とは異なる位置に配置され、前記被検査体の前記第1の撮像部が撮像する領域の少なくとも一部
であって前記検査対象を含む領域を、前記第1の撮像部とは異なる角度で撮像する第2の撮像部と、
前記第1の撮像部で撮像された前記被検査体の第1の画像データと、前記第2の撮像部で撮像された前記被検査体の第2の画像データとを用いて
前記検査対象の検査を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記第2の画像データを、前記第1の撮像部と同じ位置及び構成で撮像された画像データに射影変換により変換する第1のステップと、
前記第1の画像データ及び変換された前記第2の画像データにより前記被検査体
上の前記検査対象を検査する第2のステップと、を実行する検査装置。
【請求項2】
被検査体
上の検査対象を含む領域を撮像する第1の撮像部と、
前記被検査体に対して前記第1の撮像部とは異なる位置に配置され、前記被検査体の前記第1の撮像部が撮像する領域の少なくとも一部
であって前記検査対象を含む領域を、前記第1の撮像部とは異なる角度で撮像する第2の撮像部と、
前記第1の撮像部で撮像された前記被検査体の第1の画像データと、前記第2の撮像部で撮像された前記被検査体の第2の画像データとを用いて
前記検査対象の検査を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記第1の画像データを検査用のフレームを用いて前記被検査体
上の前記検査対象を検査するステップと、
前記第2の画像データを、前記第1の撮像部と同じ位置及び構成で撮像された画像データに射影変換により変換し、
変換された前記第2の画像データを前記検査用のフレームを用いて前記被検査体
上の前記検査対象を検査するステップと、を実行する検査装置。
【請求項3】
前記第1のステップは、
前記第2の画像データを、前記第1の撮像部と同じ位置及び構成で撮像された画像データに射影変換により変換するステップの後に、前記射影変換により変換された画像データの前記第1の画像データとの視野ずれ量を補正するステップを有する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第1のステップは、
前記射影変換により変換するステップと前記視野ずれ量を補正するステップとの間に、
前記射影変換により変換された画像データの、前記射影変換により発生した歪みを補正するステップをさらに有する
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第2のステップは、
前記被検査体上の
前記検査対象の形状情報に基づいて前記第1の画像データに対して設定された検査区域と、前記検査区域に設定された前記第1の画像データに対する検査情報とに基づいて前記第1の画像データを用いた検査を行い、
前記第1の画像データに対して設定された検査区域と、前記検査区域に設定された前記第2の画像データに対する検査情報とに基づいて前記第2の画像データを用いた検査を行う
請求項1、3、4のいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の外観を検査するための検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、様々な機器に電子回路基板が実装されるようになってきているが、この種の電子回路基板が実装される機器においては、小型化、薄型化等が常に課題になっており、この点から、電子回路基板の実装の高密度化を図ることが要求されている。このような電子回路基板を検査する検査装置においては、検査面(基板面)に対して略垂直方向から撮像する撮像部(メインカメラ)では撮像することができない領域を検査するために、垂直以外の角度から撮像する(組み付け位置が異なる)撮像部(サイドカメラ)を有する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような検査装置においては、撮像部で取得された画像を用いて検査を行う際には、その画像に合わせて検査するエリアを設定するが、メインカメラとサイドカメラとは組み付け位置が異なるため、検査面の同じ位置が撮像されていたとしても、メインカメラで取得された画像及びサイドカメラで取得された画像に共通する検査データ(後述する基板検査データ)を使用することができず、メインカメラ及びサイドカメラで取得されたそれぞれの画像に対して、検査データを作成しなければならないという課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、サイドカメラで取得された画像による検査において、メインカメラで取得された画像による検査に用いられる情報の少なくとも一部を流用することができ、検査作業を軽減することができる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る検査装置の第1の態様は、被検査体上の検査対象を含む領域を撮像する第1の撮像部と、前記被検査体に対して前記第1の撮像部とは異なる位置に配置され、前記被検査体の前記第1の撮像部が撮像する領域の少なくとも一部であって前記検査対象を含む領域を、前記第1の撮像部とは異なる角度で撮像する第2の撮像部と、前記第1の撮像部で撮像された前記被検査体の第1の画像データと、前記第2の撮像部で撮像された前記被検査体の第2の画像データとを用いて前記検査対象の検査を行う制御部と、を有し、前記制御部は、前記第2の画像データを、前記第1の撮像部と同じ位置及び構成で撮像された画像データに射影変換により変換する第1のステップと、前記第1の画像及び変換された前記第2の画像データにより前記被検査体上の前記検査対象を検査する第2のステップと、を実行する。
【0007】
また、本発明に係る検査装置の第2の態様は、被検査体上の検査対象を含む領域を撮像する第1の撮像部と、前記被検査体に対して前記第1の撮像部とは異なる位置に配置され、前記被検査体の前記第1の撮像部が撮像する領域の少なくとも一部であって前記検査対象を含む領域を、前記第1の撮像部とは異なる角度で撮像する第2の撮像部と、前記第1の撮像部で撮像された前記被検査体の第1の画像データと、前記第2の撮像部で撮像された前記被検査体の第2の画像データとを用いて前記検査対象の検査を行う制御部と、を有し、前記制御部は、前記第1の画像データを検査用のフレームを用いて前記被検査体上の前記検査対象を検査するステップと、前記第2の画像データを、前記第1の撮像部と同じ位置及び構成で撮像された画像データに射影変換により変換し、変換された前記第2の画像データを前記検査用のフレームを用いて前記被検査体上の前記検査対象を検査するステップと、を実行する。
【0008】
また、本発明に係る検査装置の第1の態様において、前記第1のステップは、前記第2の画像データを、前記第1の撮像部と同じ位置及び構成で撮像された画像データに射影変換により変換するステップの後に、前記射影変換により変換された画像データの前記第1の画像データとの視野ずれ量を補正するステップを有することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る検査装置の第1の態様において、前記第1のステップは、前記射影変換により変換するステップと前記視野ずれ量を補正するステップとの間に、前記射影変換により変換された画像データの、前記射影変換により発生した歪みを補正するステップをさらに有することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る検査装置の第1の態様において、前記第2のステップは、前記被検査体上の前記検査対象の形状情報に基づいて前記第1の画像データに対して設定された検査区域と、前記検査区域に設定された前記第1の画像データに対する検査情報とに基づいて前記第1の画像データを用いた検査を行い、前記第1の画像データに対して設定された検査区域と、前記検査区域に設定された前記第2の画像データに対する検査情報とに基づいて前記第2の画像データを用いた検査を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サイドカメラ(第2の撮像部)で取得された画像による検査において、メインカメラ(第1の撮像部)で取得された画像による検査に用いられる情報の少なくとも一部(例えば、検査区域)を流用することができ、検査作業の軽減を可能とする検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】検査装置の構成を説明するための説明図である。
【
図2】同一部品を撮像した画像を示し、(a)はメインカメラである第1の撮像部で撮像した画像であって、(b)はサイドカメラである第2の撮像部で撮像した画像である。
【
図3】検査処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】射影変換の処理を説明するための説明図である。
【
図5】射影変換による画像を示し、(a)は変換前の画像であって、(b)は変換後の画像である。
【
図6】歪み補正の処理を説明するための説明図である。
【
図7】視野ずれ量補正の処理を説明するための説明図である。
【
図8】高さによる視野ずれ量の差を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、
図1を用いて本実施形態に係る検査装置10の構成について説明する。この検査装置10は、被検査体12を撮像して得られる被検査体画像を使用して被検査体12を検査する装置である。被検査体12は例えば、多数の電子部品が実装されている電子回路基板である。検査装置10は、電子部品の実装状態の良否を被検査体画像に基づいて判定する。この検査は通常、各部品に対し複数の検査項目について行われる。検査項目とはすなわち良否判定を要する項目である。検査項目には例えば、部品そのものの欠品や位置ずれ、極性反転などの部品配置についての検査項目と、ハンダ付け状態や部品のリードピンの浮きなどの部品と基板との接続部についての検査項目とが含まれる。
【0014】
検査装置10は、被検査体12を保持するための検査テーブル14と、被検査体12を照明し撮像する撮像ユニット20と、検査テーブル14に対し撮像ユニット20を移動させるXYステージ16と、撮像ユニット20及びXYステージ16を制御し、被検査体12の検査を実行するための制御ユニット30と、を含んで構成される。なお説明の便宜上、
図1に示すように、検査テーブル14の被検査体配置面をXY平面とし、その配置面に垂直な方向(すなわち撮像ユニット20を構成する第1の撮像部21による撮像方向(第1の撮像部21の光学系の光軸方向))をZ方向とする。
【0015】
撮像ユニット20は、XYステージ16の移動テーブル(図示せず)に取り付けられており、XYステージ16によりX方向及びY方向のそれぞれに移動可能である。XYステージ16は例えばいわゆるH型のXYステージである。よってXYステージ16は、Y方向に延びるY方向ガイドに沿って移動テーブルをY方向に移動させるY駆動部と、Y方向ガイドをその両端で支持しかつ移動テーブルとY方向ガイドとをX方向に移動可能に構成されている2本のX方向ガイドとX駆動部と、を備える。なおXYステージ16は、撮像ユニット20をZ方向に移動させるZ移動機構をさらに備えてもよいし、撮像ユニット20を回転させる回転機構をさらに備えてもよい。検査装置10は、検査テーブル14を移動可能とするXYステージをさらに備えてもよく、この場合、撮像ユニット20を移動させるXYステージ16は省略されてもよい。また、X駆動部及びY駆動部には、リニアモータやボールねじを用いることができる。
【0016】
撮像ユニット20は、被検査体12の検査面(基板面)に対して垂直方向(Z軸方向)から撮像するメインカメラである第1の撮像部21と、照明ユニット22と、被検査体12の検査面(基板面)に対して斜め方向から(Z軸とは異なる角度で)撮像するサイドカメラである第2の撮像部23と、を含んで構成される。これは、2つの方向から被検査体12を撮影し検査することで、検査精度を上げるためのものである。本実施形態に係る検査装置10においては、第1の撮像部21、照明ユニット22、及び第2の撮像部23は一体の撮像ユニット20として構成されていてもよい。この一体の撮像ユニット20において、第1の撮像部21、照明ユニット22、及び第2の撮像部23の相対位置は固定されていてもよいし、各ユニットが相対移動可能に構成されていてもよい。また、第1の撮像部21、照明ユニット22、及び第2の撮像部23は別体とされ、別々に移動可能に構成されていてもよい。
【0017】
第1の撮像部21は、対象物の2次元画像を生成する撮像素子と、その撮像素子に画像を結像させるための光学系(例えばレンズ)とを含む。第1の撮像部21は例えばCMOSカメラである。第1の撮像部21の最大視野は、検査テーブル14の被検査体載置区域よりも小さくてもよい。この場合、第1の撮像部21は、複数の部分画像に分割して被検査体12の全体を撮像する。制御ユニット30は、第1の撮像部21が部分画像を撮像するたびに次の撮像位置へと第1の撮像部21が移動されるようXYステージ16を制御する。制御ユニット30は、部分画像を合成して被検査体12の全体画像を生成する。
【0018】
なお、第1の撮像部21は、2次元の撮像素子に代えて、ラインセンサなどの1次元画像を生成する撮像素子を備えてもよい。この場合、第1の撮像部21により被検査体12を走査することにより、被検査体12の全体画像を取得することができる。
【0019】
照明ユニット22は、第1の撮像部21及び第2の撮像部23による撮像のための照明光を被検査体12の表面に投射するよう構成されている。照明ユニット22は、第1の撮像部21及び第2の撮像部23の撮像素子により検出可能である波長域から選択された波長または波長域の光を発する1つまたは複数の光源を備える。照明光は可視光には限られず、紫外光やX線等を用いてもよい。光源が複数設けられている場合には、各光源は異なる波長の光(例えば、赤色、青色、及び緑色)を異なる投光角度で被検査体12の表面に投光するよう構成される。
【0020】
本実施形態に係る検査装置10において、照明ユニット22は、被検査体12の検査面に対し斜め方向から照明光を投射する側方照明源であって、本実施形態では、上位光源22a、中位光源22b及び下位光源22cを備えている。なお、本実施形態に係る検査装置10においては、側方照明源22a、22b、22cはそれぞれリング照明源であり、第1の撮像部21の光軸を包囲し、被検査体12の検査面に対し斜めに照明光を投射するように構成されている。これらの側方照明源22a,22b,22cの各々は、複数の光源が円環状に配置されて構成されていてもよい。また、側方照明源である上位光源22a、中位光源22b及び下位光源22cは、それぞれ、検査面に対して異なる角度で照明光を投射するように構成されている。
【0021】
また、第2の撮像部23は被検査体12の検査面(基板面)に対して斜め方向から撮像するように構成されている。この第2の撮像部23も第1の撮像部21と同様に、例えばCMOSカメラである。
【0022】
なお、図示される実施例においては上位光源22aと中位光源22bとの間に第2の撮像部23が設けられているが、第2の撮像部23の配置はこれに限られず、例えば下位光源22cの外側に第2の撮像部23が設けられてもよい。
【0023】
図1に示す制御ユニット30は、本装置全体を統括的に制御するもので、ハードウエアとしては、任意のコンピュータのCPU、GPU(Graphics Processing Unit)やFPU(Floating-point Processing Unit/Floating-Point Unit)などのコプロセッサ、メモリ、その他のLSIで実現され、ソフトウエアとしてはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できる。
【0024】
図1には、制御ユニット30の構成の一例が示されている。制御ユニット30は、検査制御部31と記憶部であるメモリ35とを含んで構成される。検査制御部31は、高さ測定部32と検査データ処理部33と検査部34とを含んで構成される。また、検査装置10は、ユーザまたは他の装置からの入力を受け付けるための入力部36と、検査に関連する情報を出力するための出力部37とを備えており、入力部36及び出力部37はそれぞれ制御ユニット30に接続されている。入力部36は例えば、ユーザからの入力を受け付けるためのマウスやキーボード等の入力手段や、他の装置との通信をするための通信手段を含む。出力部37は、ディスプレイやプリンタ等の公知の出力手段を含む。
【0025】
検査制御部31は、入力部36からの入力及びメモリ35に記憶されている検査関連情報に基づいて、検査のための各種制御処理を実行するよう構成されている。検査関連情報には、被検査体12の2次元画像、被検査体12の高さマップ、及び基板検査データが含まれる。検査に先立って、検査データ処理部33は、すべての検査項目に合格することが保証されている被検査体12の2次元画像及び高さマップを使用して基板検査データを作成する。検査部34は、作成済みの基板検査データと、検査されるべき被検査体12の2次元画像及び高さマップとに基づいて検査を実行する。
【0026】
基板検査データは基板の品種ごとに作成される検査データである。基板検査データはいわば、その基板に実装された部品ごとの検査データの集合体である。各部品の検査データは、その部品に必要な検査項目、各検査項目についての画像上の検査区域である検査ウインドウ、及びこの検査ウインドウに対応付けられる検査情報であって、各検査項目について良否判定の基準となる検査基準を含む。検査ウインドウは各検査項目について1つまたは複数設定される。例えば部品のハンダ付けの良否を判定する検査項目においては通常、その部品のハンダ付け領域の数と同数の検査ウインドウがハンダ付け領域の配置に対応する配置で設定される。また、被検査体画像に所定の画像処理をした画像を使用する検査項目については、その画像処理の内容も検査データに含まれる。
【0027】
検査データ処理部33は、基板検査データ作成処理として、その基板に合わせて検査データの各項目を設定する。例えば、検査データ処理部33は、その基板の部品レイアウトに適合するように各検査ウインドウの位置及び大きさを各検査項目について自動的に設定する。検査データ処理部33は、検査データのうち一部の項目についてユーザの入力を受け付けるようにしてもよい。例えば、検査データ処理部33は、ユーザによる検査基準のチューニングを受け入れるようにしてもよい。検査基準は高さ情報を用いて設定されてもよい。
【0028】
検査制御部31は、基板検査データ作成の前処理として被検査体12の撮像処理を実行する。この被検査体12はすべての検査項目に合格しているものが用いられる。撮像処理は上述のように、照明ユニット22により被検査体12を照明しつつ撮像ユニット20と検査テーブル14との相対移動を制御し、第1の撮像部21及び第2の撮像部23により、被検査体12の部分画像を順次撮像することにより行われる。被検査体12の全体がカバーされるように複数の部分画像が撮像される。検査制御部31は、これら複数の部分画像を合成し、被検査体12の検査面全体を含む基板全面画像を生成する。検査制御部31は、メモリ35に部分画像及び基板全面画像(画像データ)を記憶する。
【0029】
メインカメラである第1の撮像部21で撮像される被検査体12の画像(画像データ)に対しては、その被検査体12に搭載されている部品であって、検査の対象となる部品の形状に関する情報(以下「形状情報」と呼ぶ)が設定されており、この形状情報を用いて、上述した検査ウインドウの各々が設定される。なお、例えば、ICチップが検査対象の場合、ICチップはパッケージやそのパッケージから伸びる複数のピンで構成されるが、それぞれが個別の検査対象の場合は、形状情報の下位属性として形状要素情報として規定してもよい。この場合、形状要素情報の各々を用いて検査ウインドウが設定されることとなる。形状情報または形状要素情報は被検査体12を検査するための検査用のフレームに相当する。
図2(a)では、形状要素情報である検査用のフレームが符号21aから符号21hまでの8個設定されている。同様に、
図2(b)では、形状要素情報である検査用のフレームが符号23aから符号23hまでの8個設定されている。図からも分かるように、形状要素情報である検査用のフレームの大きさは、それぞれ作成すると、
図2(a)と
図2(b)に示されるように大きさが異なる。本実施形態では、第1の撮像部21で撮像された画像を用いて、
図2(a)に示すように形状要素情報である検査用のフレームを作成し、その検査用のフレームを用いて第2の撮像部23で撮像された画像を画像変換して検査するものである。
【0030】
検査ウインドウ毎の検査情報の設定方法としては、例えば、出力部37(ディスプレイ等)に、上述したように全ての検査項目に合格している被検査体12の画像(基板全面画像)を表示し、この画像上に更に形状情報(又は形状要素情報)を枠線として表示し、この枠線の各々に対して入力部36(キーボードやマウス等)を用いて検査情報が設定される。なお、メインカメラである第1の撮像部21と、サイドカメラである第2の撮像部23とは、組み付けられている位置が異なるため、
図2(a),(b)に示すように、同一の部品であっても撮像された画像においてその形状や大きさが異なるが、本実施形態に係る検査装置10では、後述するように、第2の撮像部23の画像(画像データ)を、第1の撮像部21と同じ位置及び構成で見た場合の変換画像(変換画像データ)に変換して検査が行われる。このため、第2の撮像部23の画像(画像データ)に対しても、メインカメラである第1の撮像部21の画像用に設定された形状情報(又は形状要素情報)を用いて、検査することができる。
【0031】
それでは、
図3を用いて、メインカメラである第1の撮像部21及びサイドカメラである第2の撮像部23で被検査体12の画像を撮像して検査を行う、制御ユニット30の検査制御部31の検査処理について説明する。なお、第2の撮像部23が複数ある場合でも、第1の撮像部21に対する第2の撮像部23が配置されている方向を考慮して、それぞれの第2の撮像部23の画像(画像データ)に以降に説明する処理を適用することで対応可能である。
【0032】
制御ユニット30の検査制御部31は、入力部36等を介して検査の開始を検出したときは、XYステージ16及び照明ユニット22の作動を制御して被検査体12の検査面の画像を第1の撮像部21及び第2の撮像部23で撮像し、それぞれの画像(画像データ)をメモリ35に記憶する(ステップS100)。なお、以降の説明では、第1の撮像部21で撮像された画像データを第1の画像データと呼び、第2の撮像部23で撮像された画像データを第2の画像データと呼ぶ。このステップS100において、被検査体12の全体をカバーするために複数の部分画像が撮像されたときは、それぞれの部分画像(画像データ)を記憶するとともに、第1の撮像部21の画像については、被検査体12の全体を示す一枚の画像に合成され、その合成画像(画像データ)もメモリ35に記憶される。
【0033】
次に、検査制御部31は、射影変換を用いて、第2の撮像部23の画像(第2の画像データ)を、第1の撮像部21と同じ位置及び構成で撮像された画像に変換する(ステップS110)。ここで、「第1の撮像部21と同じ位置及び構成に変換する」とは、例えば、第2の撮像部23で撮像された画像(画像データ)を、この第2の撮像部23が第1の撮像部21と同じ位置に配置され、且つ、第2の撮像部23の光学系が、第1の撮像部21の光学系と同じ焦点距離や倍率であるときに撮像された画像(画像データ)に変換することを意味している。
【0034】
射影変換はキーストーン補正とも呼ばれ、第2の撮像部23で撮像された画像(第2の画像データ)の画素毎に、その画素の座標を以下に示す式(1),(2)により算出される座標に変換する。なお、第1の撮像部21と第2の撮像部23の構成(光学系等の構成)は同一であるとする。
【0035】
u = (x×a+y×b+c)/(x×g+y×h+1) (1)
v = (x×d+y×e+f)/(x×g+y×h+1) (2)
但し、
x:変換前のx座標
y:変換前のy座標
u:変換後のx座標
v:変換後のy座標
a,b,c,d,e,f,g,h:変換係数
【0036】
ここで、変換係数a,b,c,d,e,f,g,hは、
図4に示すように、予め座標が既知の4点P1,P2,P3,P4のマークが設けられた補正用ボードを検査テーブル14に載置し、第1の撮像部21及び第2の撮像部23のそれぞれで撮像してその画像(画像データ)のマークの位置から決定することができる。なお、
図4では、被検査体12の高さ方向(z座標)も示されているが、上述した式(1),(2)では高さ方向は考慮されていない。
【0037】
このステップS110における射影変換の処理は、換言すると、第1の撮像部21及び第2の撮像部23の撮像面上に基準を設け、第2の撮像部23で撮像された場合の撮像面上の基準を、第1の撮像部21で撮像された場合の撮像面上の基準に合わせるように、第2の撮像部23で撮像された画像(第2の画像データ)を変換した変換画像(最終的に第3の画像データとなる)を生成する処理である。
【0038】
以上のように、第2の撮像部23で撮像した画像(第2の画像データ)を、第1の撮像部21と同じ位置及び構成で撮像された画像(画像データ)に射影変換することにより、画像内の長さの単位を揃えることができる。具体的には、
図5(a)に示すように、同じ部品でも、奥に行くほど長さが短くなる。これが変換前の第2の画像データになる。そして、
図5(b)に示すように、射影変換することにより同じ部品は同じ大きさ(長さ)となる。これが変換後の第3の画像データである変換画像データである。射影変換することにより、同一形状の異なる部品に同じ検査データ(検査用のフレーム)を使用することができる。つまり、同じICチップの足の接着状態を検査するために、
図5(a)においては、上側のICチップの足の接着状態を検査する検査用のフレームと下側のICチップの足の接着状態を検査する検査用のフレームとを作る必要があった。しかし、この画像変換によって、ICチップの足の接着状態を検査する検査用のフレームを1つ作成すれば、上側のICチップの足の検査と、下側のICチップの足の検査とを行うことが可能になった。これにより検査作業の時間を短縮することができる。
【0039】
図3に戻り、次に、検査制御部31は、ステップS110で射影変換された画像(画像データ)に対し、歪み補正を行う(ステップS120)。
図6に示すように、射影変換を行うと、左右に歪み(ディストーション)が発生し、設計座標と計測座標との間にずれが生じるため、これを補正するものである。なお、歪みが少ない場合はこの処理を省略してもよい。
【0040】
次に、検査制御部31は、ステップS120で歪み補正が行われた画像(画像データ)に対し、視野ずれ量の補正を行う(ステップS130)。
図7(a)に示すように、被検査体12に形成された黒点Ppを、第1の撮像部21の光軸上に位置するように配置すると(第1の撮像部21の視野の中心に位置するように配置すると)、
図7(b)に示すように、第1の撮像部21の画像の中心に黒点の像Pp′が形成される。一方、第2の撮像部23の視野は、第1の撮像部21の視野とはずれているため、
図7(c)に示すように、第2の撮像部23の画像の中心からずれた位置に像Pp′が形成される。したがって、検査を行う前に、上述したように位置が明らかなマーク(例えば黒点)が形成された補正用ボード等を検査テーブル14に載置し、いずれかのマークが第1の撮像部21の光軸上に位置するように撮像ユニット20を移動させ、第2の撮像部23で取得された画像においてこのマークの画像の中心からのずれ量を予め求めておき、ステップS130において、第2の撮像部23で取得された画像(画像データ)に対して上記ずれ量で補正を行う。
【0041】
なお、
図8(a)は、被検査体12の基板面と視野ずれ量を求めた補正用ボードの上面とが一致する場合を示しており、このような場合では、視野ずれ量は正確に補正される。しかし、
図8(b)に示すように、被検査体12が反っていて上下方向の位置(高さ)が補正用ボードの上面が位置していたところからずれている場合、視野ずれ量が異なり、正確な補正を行うことができない。このような場合、視野ずれ量の測定において、上述した補正用ボードのように平面的なマーク(例えば黒点)を用いるのではなく、立体的なマーク(例えば、高さのある円柱)であって、異なる高さのマークを複数設け、それぞれの視野ずれ量を測定して、各高さの視野ずれ量から、補正のための値を近似式により求め、この近似式により求められた値で視野ずれ量の補正を行うように構成することもできる。
【0042】
図3に戻り、最後に、検査制御部31は、高さ測定部32及び検査部34により、第1の撮像部21で取得された画像(第1の画像データ)を用いた被検査体12の検査と、第2の撮像部23で取得された画像(第2の画像データ)を、上述した処理により補正した画像(第3の画像データ)を用いた被検査体12の検査とを行う(ステップS140)。上述したように、メインカメラである第1の撮像部21で取得された画像(第1の画像データ)には、第1の撮像部21用の基板検査データ(第1の撮像部21の画像用に設定された形状情報又は形状要素情報(検査用のフレーム)と、この第1の撮像部21の画像用の検査情報と)を用いて検査が行われる。また、サイドカメラである第2の撮像部23の画像であって、上述した補正が行われた画像(第3の画像データ)には、第2の撮像部23用の基板検査データ(第1の撮像部21の画像用に設定された形状情報又は形状要素情報(検査用のフレーム)と、第2の撮像部23の画像用の検査情報と)を用いて検査が行われる。検査結果はメモリ35に記憶される。
【0043】
なお、検査に用いられる第1の撮像部21の画像(第1の画像データ)は、上述したように、部分画像を接合して被検査体12の全体が撮像された画像であってもよいし、部分画像であってもよい。同様に、検査に用いられる第2の撮像部23の画像(第3の画像データ)は、上述した補正がされた部分画像であってもよいし、補正された部分画像を接合した被検査体12の全体が撮像された画像であってもよい。
【0044】
また、第1の撮像部21及び第2の撮像部23で取得された画像(第1の画像データ、第2の画像データ又は第3の画像データ)は、モニタ等の出力部37に表示してもよい。このとき、第1の撮像部21の画像と、補正がされた第2の撮像部23の画像とを並べて表示してもよいし、重ねて表示してもよい。また、上述した形状情報又は形状要素情報(検査用のフレーム)を、検査対象の部品(例えばICチップのそれぞれのピン)を囲う枠線として、第1の撮像部21の画像又は変換された(補正された)第2の撮像部23の画像に重ねて表示してもよい。
【0045】
以上の構成によると、第2の撮像部23で取得された被検査体12の画像(第2の画像データ)は、第1の撮像部21と同じ位置及び構成で撮像された画像(第3の画像データ)に変換される(補正される)ため、この第2の撮像部23の画像(第3の画像データ)の検査に用いられる基板検査データの作成において、第1の撮像部21で取得された画像(第1の画像データ)の検査に用いられる形状情報(又は形状要素情報)を利用することができるので、検査のための作業量を軽減することができる。例えば、変換された第2の撮像部23の画像による検査に用いられる基板検査データの作成において、第1の撮像部21で取得された画像に用いられる基板検査データのうち、検査ウインドウである形状情報(又は形状要素情報)を、変換された第2の撮像部23で取得された画像(全ての検査項目に合格している被検査体12を第2の撮像部23で撮像した画像)に重ねて表示し、それらの検査ウインドウに対して検査情報を設定することにより、第2の撮像部23の画像に対しては、検査ウインドウである形状情報(又は形状要素情報)を設定する処理を省くことができる。
【符号の説明】
【0046】
10 検査装置
21 第1の撮像部
23 第2の撮像部
30 制御ユニット(制御部)