(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】スイッチ装置、車載通信システムおよび通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
(21)【出願番号】P 2020044877
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】岩田 章人
(72)【発明者】
【氏名】泉 達也
(72)【発明者】
【氏名】浦山 博史
(72)【発明者】
【氏名】松本 真
(72)【発明者】
【氏名】呉 ダルマワン
(72)【発明者】
【氏名】前田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】雨皿 将志
(72)【発明者】
【氏名】古川 久史
(72)【発明者】
【氏名】石塚 秀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英樹
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161349(JP,A)
【文献】特開2017-216613(JP,A)
【文献】米国特許第07899048(US,B1)
【文献】特開2019-176255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられるスイッチ装置であって、
複数の通信ポートと、
前記機能部から送信された
フレームであって、VLAN(Virtual Local Area Network)のID(Identifier)
である第1のIDを含む情報が付加されている
前記フレームを前記通信ポート経由で他の前記機能部へ中継するスイッチ部と、
前記診断装置が他のスイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成する複製部とを備え、
前記スイッチ部は、前記複製部により生成された前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力
し、
前記スイッチ装置は、さらに、
複数の前記スイッチ装置を含み、属するVLANが異なる複数の前記診断装置が1または複数の前記スイッチ装置に接続されている車載ネットワークにおいて、前記診断装置がいずれの前記スイッチ装置に接続されているかを認識可能な情報である接続情報を取得する取得部を備え、
前記複製部は、前記取得部によって取得された前記接続情報に基づいて、前記診断用複製フレームの宛先の前記診断装置が属するVLANのIDである第2のIDを認識し、
前記スイッチ部は、前記複製部によって認識された前記第2のIDを含む前記特定情報が付加された前記診断用複製フレームを対応の前記他のスイッチ装置へ出力する、スイッチ装置。
【請求項2】
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられるスイッチ装置であって、
複数の通信ポートと、
前記機能部から送信されたフレームであって、VLAN(Virtual Local Area Network)のID(Identifier)である第1のIDを含む情報が付加されている前記フレームを前記通信ポート経由で他の前記機能部へ中継するスイッチ部と、
前記診断装置が他のスイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成する複製部とを備え、
前記スイッチ部は、前記複製部により生成された前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力し、
属するVLANが異なる複数の前記診断装置が1または複数の前記スイッチ装置に接続されており、
前記スイッチ装置は、さらに、
前記スイッチ部により受信された他の前記スイッチ装置からの前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、前記スイッチ部により受信された前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断する判断部を備え、
前記判断部は、前記特定情報に含まれるVLANのIDである第2のIDに基づいて、前記診断用複製フレームの、前記複数の通信ポートのうちの前記診断用複製フレームの宛先の前記診断装置に対応する前記通信ポートへの出力に関する判断を行う、スイッチ装置。
【請求項3】
前記スイッチ部は、前記診断用複製フレームを前記診断装置に対応する前記通信ポートから出力する場合であって、自己を備える前記スイッチ装置における前記通信ポートに前記診断装置が接続されている場合、前記特定情報が削除された前記診断用複製フレームを対応の前記通信ポートから前記診断装置へ出力する、請求項
2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられる車載通信システムであって、
複数のスイッチ装置を備え、
前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを含み、
前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された
フレームであって、VLANのID
である第1のIDを含む情報が付加されている
前記フレームを他の前記機能部へ中継し、
第1の前記スイッチ装置は、前記診断装置が他の前記スイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力し、
第2の前記スイッチ装置は、他の前記スイッチ装置から受信した前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断
し、
前記第1のスイッチ装置は、さらに、
前記複数のスイッチ装置を含み、属するVLANが異なる複数の前記診断装置が1または複数の前記スイッチ装置に接続されている車載ネットワークにおいて、前記診断装置がいずれの前記スイッチ装置に接続されているかを認識可能な情報である接続情報を取得し、
前記第1のスイッチ装置は、取得した前記接続情報に基づいて、前記診断用複製フレームの宛先の前記診断装置が属するVLANのIDである第2のIDを認識し、
前記第1のスイッチ装置は、認識した前記第2のIDを含む前記特定情報が付加された前記診断用複製フレームを対応の前記他のスイッチ装置へ出力する、車載通信システム。
【請求項5】
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられる車載通信システムであって、
複数のスイッチ装置を備え、
前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを含み、
前記スイッチ装置は、前記機能部から送信されたフレームであって、VLANのIDである第1のIDを含む情報が付加されている前記フレームを他の前記機能部へ中継し、
第1の前記スイッチ装置は、前記診断装置が他の前記スイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力し、
第2の前記スイッチ装置は、他の前記スイッチ装置から受信した前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断し、
属するVLANが異なる複数の前記診断装置が1または複数の前記スイッチ装置に接続されており、
前記第2のスイッチ装置は、前記特定情報に含まれるVLANのIDである第2のIDに基づいて、前記診断用複製フレームの、前記複数の通信ポートのうちの前記診断用複製フレームの宛先の前記診断装置に対応する前記通信ポートへの出力に関する判断を行う、車載通信システム。
【請求項6】
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられるスイッチ装置における通信方法であって、
前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを備え、
前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された
フレームであって、VLANのID
である第1のIDを含む情報が付加されている
前記フレームを前記通信ポート経由で他の前記機能部へ中継し、
前記診断装置が他のスイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成するステップと、
生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力するステップとを含
み、
前記通信方法は、さらに、
複数の前記スイッチ装置を含み、属するVLANが異なる複数の前記診断装置が1または複数の前記スイッチ装置に接続されている車載ネットワークにおいて、前記診断装置がいずれの前記スイッチ装置に接続されているかを認識可能な情報である接続情報を取得するステップと、
取得した前記接続情報に基づいて、前記診断用複製フレームの宛先の前記診断装置が属するVLANのIDである第2のIDを認識するステップとを含み、
前記診断用複製フレームを出力するステップにおいて、認識した前記第2のIDを含む前記特定情報が付加された前記診断用複製フレームを対応の前記他のスイッチ装置へ出力する、通信方法。
【請求項7】
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられるスイッチ装置における通信方法であって、
前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを備え、
前記スイッチ装置は、前記機能部から送信されたフレームであって、VLANのIDである第1のIDを含む情報が付加されている前記フレームを前記通信ポート経由で他の前記機能部へ中継し、
前記診断装置が他のスイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成するステップと、
生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力するステップとを含み、
属するVLANが異なる複数の前記診断装置が1または複数の前記スイッチ装置に接続されており、
前記通信方法は、さらに、
受信した他の前記スイッチ装置からの前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断するステップと、
前記特定情報に含まれるVLANのIDである第2のIDに基づいて、前記診断用複製フレームの、前記複数の通信ポートのうちの前記診断用複製フレームの宛先の前記診断装置に対応する前記通信ポートへの出力に関する判断を行うステップとを含む、通信方法。
【請求項8】
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられる、複数のスイッチ装置を備える車載通信システムにおける通信方法であって、
前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを含み、
前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された
フレームであって、VLANのID
である第1のIDを含む情報が付加されている
前記フレームを他の前記機能部へ中継し、
第1の前記スイッチ装置が、前記診断装置が他の前記スイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力するステップと、
第2の前記スイッチ装置が、他の前記スイッチ装置から受信した前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断するステップとを含
み、
前記通信方法は、さらに、
前記複数のスイッチ装置を含み、属するVLANが異なる複数の前記診断装置が1または複数の前記スイッチ装置に接続されている車載ネットワークにおいて、前記第1のスイッチ装置が、前記診断装置がいずれの前記スイッチ装置に接続されているかを認識可能な情報である接続情報を取得するステップと、
前記第1のスイッチ装置が、取得した前記接続情報に基づいて、前記診断用複製フレームの宛先の前記診断装置が属するVLANのIDである第2のIDを認識するステップとを含み、
前記第1のスイッチ装置が前記診断用複製フレームを出力するステップにおいて、認識した前記第2のIDを含む前記特定情報が付加された前記診断用複製フレームを対応の前記他のスイッチ装置へ出力する、通信方法。
【請求項9】
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられる、複数のスイッチ装置を備える車載通信システムにおける通信方法であって、
前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを含み、
前記スイッチ装置は、前記機能部から送信されたフレームであって、VLANのIDである第1のIDを含む情報が付加されている前記フレームを他の前記機能部へ中継し、
第1の前記スイッチ装置が、前記診断装置が他の前記スイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力するステップと、
第2の前記スイッチ装置が、他の前記スイッチ装置から受信した前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断するステップとを含み、
属するVLANが異なる複数の前記診断装置が1または複数の前記スイッチ装置に接続されており、
前記通信方法は、さらに、
前記第2のスイッチ装置が、前記特定情報に含まれるVLANのIDである第2のIDに基づいて、前記診断用複製フレームの、前記複数の通信ポートのうちの前記診断用複製フレームの宛先の前記診断装置に対応する前記通信ポートへの出力に関する判断を行うステップを含む、通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチ装置、車載通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワークにおける対象の通信ポートを経由するフレームをミラーリングすることにより、当該通信ポートを用いた通信を中断することなく当該フレームを解析する技術が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1(特開2018-107584号公報)には、以下のようなネットワーク装置が開示されている。すなわち、ネットワーク装置は、第1のフレームを送受信する第1のポートと、前記第1のフレームの所定の位置から抽出された所定の長さのデータであるミラーリングデータをペイロードに含む第2のフレームを生成するフレーム集約手段と、前記第2のフレームを送出する第2のポートと、を備える。
【0004】
また、特許文献2(国際公開第2012/133060号)には、以下のようなネットワークシステムが開示されている。すなわち、ネットワークシステムは、スイッチと、パケットをフローとして一律に制御するためのルールとアクションが定義されたフローエントリを、前記スイッチのフローテーブルに設定するコントローラとを含み、前記コントローラは、ネットワーク内を流れるパケットに付与されたタグ情報と、前記パケットに対応するフローエントリを示すフロークッキー情報(Flow cookie)をマッピングして保持し、仮想的に複数のVLAN(Virtual Local Area Network)を取り扱う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-107584号公報
【文献】国際公開第2012/133060号
【文献】特開2000-183936号公報
【文献】特開2009-33577号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Cisco Systems, Inc.、「Cisco Small Business 300 1.1 シリーズ マネージド スイッチ アドミニストレーション ガイド」、2011年、p.67-69,79-81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような特許文献1および特許文献2に記載の技術を超えて、複数のスイッチ装置を備える車載ネットワークにおけるフレームの解析をより円滑かつ正確に行うことを可能とする技術が望まれる。
【0008】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、複数のスイッチ装置を備える車載ネットワークにおけるフレームの解析をより円滑かつ正確に行うことが可能なスイッチ装置、車載通信システムおよび通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のスイッチ装置は、複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられるスイッチ装置であって、複数の通信ポートと、前記機能部から送信された、VLANのID(Identifier)を含む情報が付加されているフレームを前記通信ポート経由で他の前記機能部へ中継するスイッチ部と、前記診断装置が他のスイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成する複製部とを備え、前記スイッチ部は、前記複製部により生成された前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力する。
【0010】
本開示の車載通信システムは、複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられる車載通信システムであって、複数のスイッチ装置を備え、前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを含み、前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを他の前記機能部へ中継し、第1の前記スイッチ装置は、前記診断装置が他の前記スイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力し、第2の前記スイッチ装置は、他の前記スイッチ装置から受信した前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断する。
【0011】
本開示の通信方法は、複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられるスイッチ装置における通信方法であって、前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを備え、前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを前記通信ポート経由で他の前記機能部へ中継し、前記診断装置が他のスイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成するステップと、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力するステップとを含む。
【0012】
本開示の通信方法は、複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられる、複数のスイッチ装置を備える車載通信システムにおける通信方法であって、前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを含み、前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを他の前記機能部へ中継し、第1の前記スイッチ装置が、前記診断装置が他の前記スイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力するステップと、第2の前記スイッチ装置が、他の前記スイッチ装置から受信した前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断するステップとを含む、通信方法。
【0013】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備えるスイッチ装置として実現され得るだけでなく、スイッチ装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、スイッチ装置における処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、スイッチ装置を備える車載通信システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載通信システムにおける処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、フレームの解析をより正確に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける各装置のVID、MACアドレスおよびIPアドレスの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて伝送されるイーサネットフレームの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスイッチ装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスイッチ装置の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける複製部により生成される診断用複製フレームの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスイッチ装置の構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置が診断用複製フレームを生成して送信する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置が診断用複製フレームを受信して診断装置へ送信する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態の変形例に係るスイッチ装置が診断用複製フレームを受信して診断装置へ送信する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図12】
図12は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける中継処理のシーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0017】
(1)本開示の実施の形態に係るスイッチ装置は、複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられるスイッチ装置であって、複数の通信ポートと、前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを前記通信ポート経由で他の前記機能部へ中継するスイッチ部と、前記診断装置が他のスイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成する複製部とを備え、前記スイッチ部は、前記複製部により生成された前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力する。
【0018】
このように、対象となるフレームの複製フレームに、診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加された診断用複製フレームを生成し、生成した診断用複製フレームを他のスイッチ装置に対応する通信ポートから出力する構成により、複製元のフレームに格納された情報をすべて含む診断用複製フレームを生成して他のスイッチ装置へ送信することができるとともに、他のスイッチ装置において通常のフレームと診断用複製フレームとを識別することができる。したがって、複数のスイッチ装置を備える車載ネットワークにおけるフレームの解析をより円滑かつ正確に行うことができる。
【0019】
(2)好ましくは、前記スイッチ装置は、さらに、複数の前記スイッチ装置を含む車載ネットワークにおいて、前記診断装置がいずれの前記スイッチ装置に接続されているかを認識可能な情報である接続情報を取得する取得部を備え、前記複製部は、前記取得部により取得された前記接続情報に基づいて、前記診断装置が前記他のスイッチ装置に接続されていることを認識する。
【0020】
このような構成により、たとえば、診断装置とスイッチ装置との接続関係が予め固定されていないような車載ネットワークにおいて、新たに他のスイッチ装置に診断装置が接続されたことを認識し、対象となるフレームに基づく診断用複製フレームを生成することができる。
【0021】
(3)好ましくは、前記スイッチ装置は、さらに、前記スイッチ部により受信された他の前記スイッチ装置からの前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、前記スイッチ部により受信された前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断する判断部を備える。
【0022】
このような構成により、他のスイッチ装置から受信したフレームの中から診断用複製フレームを容易に検出することができる。
【0023】
(4)より好ましくは、前記判断部は、前記特定情報に含まれるVLANのIDに基づいて、前記診断用複製フレームの、前記複数の通信ポートのうちの前記診断装置に対応する前記通信ポートへの出力に関する判断を行う。
【0024】
このような構成により、特定情報に含まれるVLANのIDに基づいて、診断用複製フレームを出力すべき通信ポートをより正確に判断することができる。たとえば、属するVLANが異なる複数の診断装置がスイッチ装置に接続されているような車載ネットワーク、および診断装置とスイッチ装置との接続関係が予め固定されていないような車載ネットワークにおいて、特定情報に含まれるVLANのIDに基づいて、診断用複製フレームを宛先の診断装置へ正しく送信することができる。
【0025】
(5)より好ましくは、前記判断部は、前記診断用複製フレームに前記特定情報が付加されていることをもって、前記診断用複製フレームを前記複数の通信ポートのうちの前記診断装置に対応する前記通信ポートから出力すべきであると判断する。
【0026】
このような構成により、診断装置とスイッチ装置との接続関係が予め固定されている車載ネットワークにおいて、簡易な処理で、診断装置に対応する通信ポートから診断用複製フレームを出力することができる。
【0027】
(6)好ましくは、前記スイッチ部は、前記診断用複製フレームを前記診断装置に対応する前記通信ポートから出力する場合であって、自己を備える前記スイッチ装置における前記通信ポートに前記診断装置が接続されている場合、前記特定情報が削除された前記診断用複製フレームを対応の前記通信ポートから前記診断装置へ出力する。
【0028】
このような構成により、たとえば、対象となる複製元のフレームと同じ情報が格納された診断用複製フレームを診断装置へ送信することができるため、診断装置において特定情報を処理することなくフレームの解析をより正確に行うことができる。
【0029】
(7)本開示の実施の形態に係る車載通信システムは、複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられる車載通信システムであって、複数のスイッチ装置を備え、前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを含み、前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを他の前記機能部へ中継し、第1の前記スイッチ装置は、前記診断装置が他の前記スイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力し、第2の前記スイッチ装置は、他の前記スイッチ装置から受信した前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断する。
【0030】
このように、対象となるフレームの複製フレームに、診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加された診断用複製フレームを生成し、生成した診断用複製フレームを他のスイッチ装置に対応する通信ポートから出力する構成により、複製元のフレームに格納された情報をすべて含む診断用複製フレームを生成して他のスイッチ装置へ送信することができるとともに、他のスイッチ装置において通常のフレームと診断用複製フレームとを識別することができる。したがって、複数のスイッチ装置を備える車載ネットワークにおけるフレームの解析をより円滑かつ正確に行うことができる。
【0031】
(8)本開示の実施の形態に係る通信方法は、複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられるスイッチ装置における通信方法であって、前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを備え、前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを前記通信ポート経由で他の前記機能部へ中継し、前記診断装置が他のスイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成するステップと、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力するステップとを含む。
【0032】
このように、対象となるフレームの複製フレームに、診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加された診断用複製フレームを生成し、生成した診断用複製フレームを他のスイッチ装置に対応する通信ポートから出力する方法により、複製元のフレームに格納された情報をすべて含む診断用複製フレームを生成して他のスイッチ装置へ送信することができるとともに、他のスイッチ装置において通常のフレームと診断用複製フレームとを識別することができる。したがって、複数のスイッチ装置を備える車載ネットワークにおけるフレームの解析をより円滑かつ正確に行うことができる。
【0033】
(9)本開示の実施の形態に係る通信方法は、複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられる、複数のスイッチ装置を備える車載通信システムにおける通信方法であって、前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを含み、前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを他の前記機能部へ中継し、第1の前記スイッチ装置が、前記診断装置が他の前記スイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力するステップと、第2の前記スイッチ装置が、他の前記スイッチ装置から受信した前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断するステップとを含む。
【0034】
このように、対象となるフレームの複製フレームに、診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加された診断用複製フレームを生成し、生成した診断用複製フレームを他のスイッチ装置に対応する通信ポートから出力する方法により、複製元のフレームに格納された情報をすべて含む診断用複製フレームを生成して他のスイッチ装置へ送信することができるとともに、他のスイッチ装置において通常のフレームと診断用複製フレームとを識別することができる。したがって、複数のスイッチ装置を備える車載ネットワークにおけるフレームの解析をより円滑かつ正確に行うことができる。
【0035】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0036】
[構成および基本動作]
図1は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【0037】
図1を参照して、車載通信システム301は、複数のスイッチ装置101と、複数の車載通信デバイス111と、診断装置201とを備える。車載通信システム301は、車両1に搭載される。
【0038】
より詳細には、車載通信システム301は、スイッチ装置101として、スイッチ装置101A,スイッチ装置101Bを備える。また、車載通信システム301は、車載通信デバイス111として、車載通信デバイス111A,111B,111C,111Dを備える。スイッチ装置101Aは、第2のスイッチの一例である。スイッチ装置101Bは、第1のスイッチの一例である。車載通信デバイス111は、機能部の一例である。
【0039】
なお、車載通信システム301は、4つの車載通信デバイス111を備える構成に限らず、2つ、3つまたは5つ以上の車載通信デバイス111を備える構成であってもよい。
【0040】
車載通信デバイス111は、たとえば、自動運転ECU(Electronic Control Unit)、センサ、ナビゲーション装置、TCU(Telematics Communication Unit)、セントラルゲートウェイ、ヒューマンマシンインタフェース、およびカメラ等であり、スイッチ装置101と通信を行うことが可能である。
【0041】
車載通信システム301における各スイッチ装置101および各車載通信デバイス111の接続関係は、たとえば固定されている。
【0042】
スイッチ装置101および車載通信デバイス111は、たとえば、車載のイーサネット(登録商標)通信用のケーブルすなわちイーサネットケーブルにより互いに接続されている。また、スイッチ装置101Aおよびスイッチ装置101Bは、たとえばイーサネットケーブルにより互いに接続されている。また、スイッチ装置101Aおよび診断装置201は、たとえばイーサネットケーブルにより互いに接続されている。たとえば、スイッチ装置101およびイーサネットケーブルは、車載ネットワークを構成する。
【0043】
スイッチ装置101、車載通信デバイス111および診断装置201は、イーサネットケーブルを用いて互いに通信する。スイッチ装置101および車載通信デバイス111間では、たとえば、IEEE802.1Qに従うイーサネットフレームを用いて情報のやり取りが行われる。
【0044】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける各装置のVID、MACアドレスおよびIPアドレスの一例を示す図である。
【0045】
図2を参照して、車載通信システム301において、車載通信デバイス111Aおよび診断装置201の属するVLANのIDは、「222」である。また、車載通信デバイス111B,111Cの属するVLANのIDは、「111」である。また、車載通信デバイス111Dの属するVLANのIDは、「111」および「222」である。
【0046】
スイッチ装置101、車載通信デバイス111および診断装置201は、固有のMAC(Media Access Control)アドレスを有する。また、スイッチ装置101、車載通信デバイス111および診断装置201には、異なるIP(Internet Protocol)アドレスが割り当てられている。
【0047】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて伝送されるイーサネットフレームの一例を示す図である。
【0048】
図3を参照して、イーサネットフレームは、イーサネットヘッダと、ペイロードとを有する。
【0049】
イーサネットヘッダには、宛先MACアドレスと、送信元MACアドレスと、タグ1と、タイプとが格納される。ペイロードには、IPヘッダ、宛先IPアドレス、送信先IPアドレス、および任意のデータ等が格納される。
【0050】
タグ1は、TPID(Tag Protocol Identifier)と、PCP(Priority Code Point)と、DEI(Drop Eligibility Indicator)と、VID(VLAN Identifier)とを含む。
【0051】
TPIDには、当該イーサネットフレームがタグ1を含むことを示す情報が格納される。PCPには、当該イーサネットフレームの優先度情報が格納される。より詳細には、PCPには、最も優先順位が低い「ゼロ」から最も優先順位が高い「7」までの8段階の優先順位を示す優先度情報が格納される。VIDには、VLANのIDが格納される。
【0052】
スイッチ装置101は、車載ネットワークにおけるデータを中継する中継処理を行う。より詳細には、スイッチ装置101は、たとえば、レイヤ2、およびレイヤ2よりも上位のレイヤ3に従って中継処理を行うことが可能である。
【0053】
具体的には、車載通信システム301では、たとえば、IPプロトコルに従って、IPパケットを用いて情報の送受信が行われる。IPパケットは、イーサネットフレームに格納されて伝送される。
【0054】
スイッチ装置101は、各車載通信デバイス111間で伝送されるイーサネットフレームを中継する。
【0055】
詳細には、スイッチ装置101は、複数のレイヤを有する通信プロトコルに従って動作する。より詳細には、スイッチ装置101は、L2スイッチとして機能することが可能であり、同じVLANに属する車載通信デバイス111間で伝送されるイーサネットフレームを中継する。また、スイッチ装置101は、L3スイッチとしても機能することが可能であり、異なるVLANに属する車載通信デバイス111間のイーサネットフレームを中継する。
【0056】
具体的には、車載通信デバイス111CがIPパケットを車載通信デバイス111Bへ送信する場合、このIPパケットには、送信元IPアドレスおよび宛先IPアドレスとして、IP-CおよびIP-Bがそれぞれ含まれる。
【0057】
車載通信デバイス111Cは、自己と車載通信デバイス111Bとが同じVLANに属していることから、111、MAC-BおよびMAC-Cを、タグ1におけるVID、宛先MACアドレスおよび送信元MACアドレスとしてそれぞれイーサネットフレームに書き込む。
【0058】
車載通信デバイス111Cは、IPパケットを格納したイーサネットフレームをスイッチ装置101Bへ送信する。
【0059】
スイッチ装置101Bは、車載通信デバイス111Cからイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームに対してレイヤ2のスイッチ処理を行うことで、イーサネットフレームをスイッチ装置101A経由で車載通信デバイス111Bへ送信する。
【0060】
また、車載通信デバイス111BがIPパケットを車載通信デバイス111Aへ送信する場合、このIPパケットには、送信元IPアドレスおよび宛先IPアドレスとして、IP-BおよびIP-Aがそれぞれ含まれる。
【0061】
車載通信デバイス111Bは、自己と車載通信デバイス111Aとが異なるVLANに属していることから、111、デフォルトゲートウェイであるスイッチ装置101AのMACアドレスすなわちMAC-F、およびMAC-Bアドレスを、タグ1におけるVID、宛先MACアドレスおよび送信元MACアドレスとしてそれぞれイーサネットフレームに書き込む。
【0062】
車載通信デバイス111Bは、IPパケットを格納したイーサネットフレームをスイッチ装置101Aへ送信する。
【0063】
スイッチ装置101Aは、車載通信デバイス111Bからイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームに対してレイヤ3の中継処理を行うことで、イーサネットフレームを車載通信デバイス111Aへ送信する。
【0064】
診断装置201は、車載通信システム301において異常が発生した場合に、車載通信デバイス111間で送受信されるイーサネットフレームを解析することにより、異常の原因および異常箇所を特定する。
【0065】
より詳細には、たとえば、車載通信システム301の管理者は、車載通信システム301において異常が発生すると、スイッチ装置101における複数の通信ポート54のうちのいずれかの通信ポート54を監視対象として指定する。以下、監視対象として指定された通信ポート54を指定ポート54とも称する。
【0066】
診断装置201は、指定ポートを経由して伝送されるイーサネットフレームを解析することにより、異常の原因および異常箇所を特定する。具体的には、診断装置201は、指定ポートを経由して伝送されるイーサネットフレームの複製であるミラーフレームをスイッチ装置101から受信し、受信したミラーフレームを解析する。
【0067】
[スイッチ装置の構成]
図4および
図5は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスイッチ装置の構成の一例を示す図である。
図4は、スイッチ装置101Aの構成を示している。
図5は、スイッチ装置101Bの構成を示している。
【0068】
図4および
図5を参照して、スイッチ装置101は、スイッチ部110と、取得部120と、複製部130と、判断部140と、記憶部150と、複数の通信ポート54とを備える。
【0069】
たとえば、スイッチ部110、取得部120、複製部130および判断部140は、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって実現される。
【0070】
記憶部150は、たとえば不揮発性メモリである。たとえば、指定ポート54を備えるスイッチ装置101における記憶部150は、指定ポート54を特定するための指定情報を記憶している。
【0071】
通信ポート54は、たとえば、イーサネットケーブルを接続可能な端子である。通信ポート54は、車載通信デバイス111、診断装置201および他のスイッチ装置101にそれぞれ接続可能である。
【0072】
図4に示す例では、スイッチ装置101Aは、通信ポート54として、通信ポート54A,54B,54C,54Dを備える。通信ポート54A、54B、54Cおよび54Dは、それぞれ車載通信デバイス111A、車載通信デバイス111B、診断装置201およびスイッチ装置101Bにイーサネットケーブルを介して接続される。
【0073】
また、
図5に示す例では、スイッチ装置101Bは、通信ポート54として、通信ポート54E,54F,54Gを備える。通信ポート54E、54Fおよび54Gは、それぞれ車載通信デバイス111C、車載通信デバイス111Dおよびスイッチ装置101Aにイーサネットケーブルを介して接続される。
【0074】
なお、スイッチ装置101Aでは、4つの通信ポート54が設けられる構成に限らず、2つ、3つまたは5つ以上の通信ポート54が設けられる構成であってもよい。また、スイッチ装置101Bでは、3つの通信ポート54が設けられる構成に限らず、2つまたは4つ以上の通信ポート54が設けられる構成であってもよい。
【0075】
[スイッチ部]
スイッチ部110は、車載通信デバイス111から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているイーサネットフレームを通信ポート54経由で他の車載通信デバイス111へ中継する。
【0076】
スイッチ部110は、通信ポート54を介して受信したイーサネットフレームに対してレイヤ2またはレイヤ3の中継処理を行う。
【0077】
より詳細には、スイッチ部110は、車載通信デバイス111から送信されたイーサネットフレームを通信ポート54経由で受信すると、受信したイーサネットフレームを記憶部150に保存する。
【0078】
たとえば、記憶部150には、イーサネットフレームの優先順位ごとのキューが設けられている。
【0079】
スイッチ部110は、受信したイーサネットフレームのタグ1におけるPCPに格納された優先度情報を参照し、イーサネットフレームを優先順位ごとに対応のキューに振り分けて記憶部150に保存する。
【0080】
そして、スイッチ部110は、たとえば優先順位に応じた周期で記憶部150における各キューからイーサネットフレームを取得し、取得したイーサネットフレームを宛先の車載通信デバイス111に対応する通信ポート54から出力する。
【0081】
より詳細には、スイッチ部110は、たとえば、複数の通信ポート54にそれぞれ接続される図示しない複数の端子を有する。各端子には、固有の論理ポート番号が割り当てられている。
【0082】
また、記憶部150は、たとえば、VLANのIDごとのARP(Address Resolution Protocol)テーブル、およびARL(Address Resolution Logic)テーブルを記憶している。
【0083】
ARPテーブルおよびARLテーブルの内容は、上述したように車載通信システム301において固定されている接続関係に基づいて、たとえばユーザにより予め定められている。
【0084】
具体的には、ARPテーブルは、IPアドレスとMACアドレスとの対応関係を示す。また、ARLテーブルは、車載通信デバイス111のMACアドレスと当該車載通信デバイス111を接続先とする端子の論理ポート番号との対応関係、および他のスイッチ装置101のMACアドレスと当該他のスイッチ装置101を接続先とする端子の論理ポート番号との対応関係を示す。
【0085】
スイッチ部110は、記憶部150から取得した、出力すべきイーサネットフレームの宛先MACアドレスを参照する。スイッチ部110は、参照した宛先MACアドレスに対応する論理ポート番号をARLテーブルから取得し、受信したイーサネットフレームを、取得した論理ポート番号の端子から通信ポート54経由で車載通信デバイス111または他のスイッチ装置101へ送信する。
【0086】
[取得部]
取得部120は、複数のスイッチ装置101を含む車載ネットワークにおいて、診断装置201がいずれのスイッチ装置101に接続されているかを認識可能な情報である接続情報を取得する。
【0087】
たとえば、診断装置201は、スイッチ装置101の通信ポート54に接続されると、自己のMACアドレス等を含む認証情報を当該スイッチ装置101へ送信する。
【0088】
図1および
図4に示す例では、診断装置201は、イーサネットケーブルを介してスイッチ装置101Aの通信ポート54Cに接続されると、自己のMACアドレス等を含む認証情報をスイッチ装置101Aへ送信する。
【0089】
スイッチ装置101Aにおけるスイッチ部110は、通信ポート54C経由で診断装置201から認証情報を受信すると、受信した認証情報を取得部120へ出力する。
【0090】
スイッチ装置101Aにおける取得部120は、スイッチ部110から認証情報を受けると、受けた認証情報を用いて診断装置201の認証処理を行う。取得部120は、診断装置201の認証処理に成功すると、診断装置201のMACアドレスと、通信ポート54Cに接続される端子の論理ポート番号との対応関係を記憶部150におけるARLテーブルに追加する。
【0091】
また、スイッチ装置101Aにおける取得部120は、診断装置201のIPアドレスおよび診断装置201がスイッチ装置101Aに接続されている旨を示す接続情報を生成し、生成した接続情報を記憶部150に保存する。また、取得部120は、生成した接続情報をスイッチ部110および通信ポート54経由で他のスイッチ装置101すなわちスイッチ装置101Bへ送信する。
【0092】
スイッチ装置101Bにおけるスイッチ部110は、通信ポート54G経由でスイッチ装置101Aから接続情報を受信すると、受信した接続情報を取得部120へ出力する。
【0093】
スイッチ装置101Bにおける取得部120は、スイッチ部110から接続情報を受けると、受けた接続情報を記憶部150に保存する。
【0094】
[複製部]
複製部130は、診断装置201が他のスイッチ装置101に接続されている場合、複数の通信ポート54のうちの指定ポートを経由して中継すべきイーサネットフレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、診断装置201へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたイーサネットフレームである診断用複製フレームを生成する。以下、指定ポートを経由して中継すべきイーサネットフレームを、対象フレームとも称する。
【0095】
(対象フレームの検出)
たとえば、複製部130は、取得部120により取得された接続情報に基づいて、診断装置201が他のスイッチ装置101に接続されていることを認識する。また、たとえば、複製部130は、記憶部150に指定情報が保存されている場合、当該指定情報に基づいて、指定ポートを認識する。
【0096】
具体的には、スイッチ装置101Bにおける複製部130は、記憶部150における接続情報に基づいて、診断装置201がスイッチ装置101Aに接続されていることを認識する。また、スイッチ装置101Bにおける複製部130は、記憶部150における指定情報に基づいて、たとえば通信ポート54Fが指定ポートであると認識する。
【0097】
スイッチ装置101Bにおける複製部130は、記憶部150を監視し、スイッチ部110により記憶部150に保存されるイーサネットフレームのうちの、通信ポート54Fを経由して中継されるイーサネットフレームを対象フレームとして検出する。
【0098】
より詳細には、複製部130は、スイッチ部110により記憶部150に保存されるイーサネットフレームのうちの、通信ポート54F経由でスイッチ部110により受信されたイーサネットフレーム、および通信ポート54F経由でスイッチ部110により送信されるべきイーサネットフレームを対象フレームとして検出する。
【0099】
たとえば、複製部130は、記憶部150におけるARPテーブルおよびARLテーブルを参照することにより、記憶部150におけるイーサネットフレームに格納された宛先IPアドレスおよび送信元IPアドレスに基づいて、当該イーサネットフレームが通信ポート54Fを経由して中継される対象フレームであるか否かを判断する。
【0100】
再び
図1および
図5を参照して、たとえば、複製部130は、送信元IPアドレスがIP-Dであり、かつ宛先IPアドレスがIP-Bであるイーサネットフレーム、すなわち車載通信デバイス111Dから送信された車載通信デバイス111B宛のイーサネットフレームを、通信ポート54F経由でスイッチ部110により受信された対象フレームであると判断する。
【0101】
また、たとえば、複製部130は、送信元IPアドレスがIP-Cであり、かつ宛先IPアドレスがIP-Dであるイーサネットフレーム、すなわち車載通信デバイス111Cから送信された車載通信デバイス111D宛のイーサネットフレームを、通信ポート54F経由でスイッチ部110により送信されるべき対象フレームであると判断する。
【0102】
(診断用複製フレームの生成)
複製部130は、対象フレームを検出すると、当該対象フレームの複製である複製フレームに、特定情報が付加されたイーサネットフレームである診断用複製フレームを生成する。
【0103】
より詳細には、複製部130は、対象フレームを検出すると、当該対象フレームの複製フレームを生成し、当該複製フレームに特定情報を付加することにより、診断用複製フレームを生成する。
【0104】
図6は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける複製部により生成される診断用複製フレームの一例を示す図である。
【0105】
図6を参照して、診断用複製フレームは、イーサネットヘッダと、ペイロードとを有する。
【0106】
診断用複製フレームにおけるイーサネットヘッダには、宛先MACアドレスと、送信元MACアドレスと、タグ2と、タグ1と、タイプとが格納される。診断用複製フレームにおけるタグ2以外は、複製元の対象フレームの複製である。
【0107】
複製部130は、対象フレームの複製である複製フレームにタグ2を付加することにより診断用複製フレームを生成する。タグ2に格納される情報は、特定情報の一例である。
【0108】
タグ2は、タグ1と同様に、TPIDと、PCPと、DEIと、VIDとを含む。タグ2におけるTPIDには、当該診断用複製フレームがタグ2を含むことを示す情報が格納される。
【0109】
たとえば、複製部130は、記憶部150における接続情報を参照することにより診断装置201のIPアドレスを取得し、取得したIPアドレスに対してサブネットマスク計算等を行うことにより診断装置201が属するVLANのIDを特定する。そして、複製部130は、診断装置201が属するVLANのIDをタグ2のVIDに格納する。
【0110】
複製部130は、生成した診断用複製フレームを、当該診断用複製フレームの優先順位ごとに対応のキューに振り分けて記憶部150に保存する。
【0111】
スイッチ部110は、複製部130により生成された診断用複製フレームを他のスイッチ装置101に対応する通信ポート54から出力する。
【0112】
より詳細には、スイッチ装置101Bにおけるスイッチ部110は、記憶部150から診断用複製フレームを取得し、取得した診断用複製フレームを他のスイッチ装置101であるスイッチ装置101Aに対応する通信ポート54Gから出力する。
【0113】
[判断部]
判断部140は、スイッチ部110により受信された他のスイッチ装置101からのイーサネットフレームに特定情報すなわちタグ2が付加されている場合、スイッチ部110により受信された当該イーサネットフレームが診断用複製フレームであると判断する。
【0114】
より詳細には、判断部140は、記憶部150を監視し、スイッチ部110により記憶部150に保存されるイーサネットフレームの中から、タグ2を含むイーサネットフレームを検出すると、検出したイーサネットフレームは診断用複製フレームであると判断する。
【0115】
図1および
図4に示す例において、スイッチ装置101Aにおけるスイッチ部110が通信ポート54D経由でスイッチ装置101Bから受信するイーサネットフレームとしては、診断用複製フレームと、診断用複製フレーム以外の通常のイーサネットフレームとがあり得る。
【0116】
スイッチ装置101Aにおける判断部140は、記憶部150を監視し、スイッチ部110により記憶部150に保存されるイーサネットフレームの中から、タグ2を含むイーサネットフレームを検出すると、当該イーサネットフレームは診断用複製フレームであると判断する。
【0117】
たとえば、判断部140は、診断用複製フレームのタグ2におけるVIDに格納されたVLANのIDに基づいて、当該診断用複製フレームの、複数の通信ポート54のうちの診断装置201に対応する通信ポート54への出力に関する判断を行う。
【0118】
より詳細には、判断部140は、記憶部150における診断用複製フレームのタグ2におけるVIDに格納されたVLANのIDが、診断装置201の属するVLANのIDと一致する場合、当該診断用複製フレームを診断装置201に対応する通信ポート54へ出力すべきであると判断する。
【0119】
一方、判断部140は、記憶部150における診断用複製フレームのタグ2におけるVIDに格納されたVLANのIDが、診断装置201の属するVLANのIDと一致しない場合、たとえば当該診断用複製フレームを破棄する。
【0120】
なお、スイッチ装置101Aにおける判断部140は、属するVLANが異なる複数の診断装置201がスイッチ装置101Aにおける通信ポート54にそれぞれ接続されている場合、診断用複製フレームのタグ2におけるVIDに格納されたVLANのIDに基づいて、当該診断用複製フレームを、複数の診断装置201のうちのいずれの診断装置201に対応する通信ポート54へ出力すべきであるかを判断する構成であってもよい。
【0121】
また、判断部140は、診断用複製フレームにタグ2が付加されていることをもって、当該診断用複製フレームを複数の通信ポート54のうちの診断装置201に対応する通信ポート54から出力すべきであると判断する構成であってもよい。
【0122】
たとえば、記憶部150には、イーサネットフレームごとに診断フラグ用の領域が設けられる。診断フラグは、イーサネットフレームが診断用複製フレームである場合にオンされるフラグである。
【0123】
判断部140は、記憶部150におけるイーサネットフレームのうちの、診断用複製フレームであると判断したイーサネットフレームの診断フラグをオンする。
【0124】
(診断用複製フレームの出力例)
スイッチ部110は、記憶部150におけるイーサネットフレームの診断フラグがオンされている場合、当該イーサネットフレームすなわち診断用複製フレームの宛先IPアドレスに関わらず、当該診断用複製フレームを診断装置201に対応する通信ポート54から出力する。
【0125】
たとえば、スイッチ部110は、診断用複製フレームを診断装置201に対応する通信ポート54から出力する場合であって、自己を備えるスイッチ装置101における通信ポート54に診断装置201が接続されている場合、タグ2が削除された診断用複製フレームを対応の通信ポート54から診断装置201へ出力する。
【0126】
より詳細には、判断部140は、記憶部150におけるARLテーブルに基づいて、診断装置201が自己のスイッチ装置101における通信ポート54に接続されているか否かを判断する。
【0127】
図1および
図4に示す例では、スイッチ装置101Aにおける判断部140は、記憶部150における接続情報に基づいて、診断装置201が自己のスイッチ装置101Aにおける通信ポート54Cに接続されていると判断する。
【0128】
スイッチ装置101Aにおける判断部140は、診断装置201がスイッチ装置101Aにおける通信ポート54Cに接続されていると判断すると、記憶部150における診断用複製フレームのタグ2を削除する。
【0129】
スイッチ部110は、判断部140によってタグ2が削除され、かつ診断フラグがオンされた診断用複製フレームを記憶部150から取得し、取得した診断用複製フレームを通信ポート54Cから診断装置201へ出力する。
【0130】
(変形例)
なお、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置101では、スイッチ部110は、判断部140によってタグ2が削除された診断用複製フレームを対応の通信ポート54から診断装置201へ出力する構成であるとしたが、これに限定するものではない。判断部140は、診断装置201が自己のスイッチ装置101における通信ポート54に接続されていない場合、診断用複製フレームのタグ2を削除しない構成であってもよい。以下、具体的に説明する。
【0131】
図7は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【0132】
図7を参照して、車載通信システム302は、スイッチ装置101として、スイッチ装置101A,101B,101Cを備える。また、車載通信システム302は、車載通信デバイス111として、車載通信デバイス111A,111B,111C,111D,111Eを備える。
【0133】
スイッチ装置101Aおよびスイッチ装置101Cは、たとえばイーサネットケーブルにより互いに接続されている。また、スイッチ装置101Cおよびスイッチ装置101Bは、たとえばイーサネットケーブルにより互いに接続されている。
【0134】
図8は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスイッチ装置の構成の一例を示す図である。
図8は、スイッチ装置101Cの構成を示している。
【0135】
図8を参照して、スイッチ装置101Cは、通信ポート54として、通信ポート54H,54J,54Kを備える。通信ポート54H、54Jおよび54Kは、それぞれスイッチ装置101A、スイッチ装置101Bおよび車載通信デバイス111Eにイーサネットケーブルを介して接続される。
【0136】
スイッチ装置101Cにおけるスイッチ部110が通信ポート54J経由でスイッチ装置101Bから受信するイーサネットフレームとしては、診断用複製フレームと、診断用複製フレーム以外の通常のイーサネットフレームとがあり得る。
【0137】
スイッチ装置101Cにおける判断部140は、記憶部150を監視し、スイッチ部110により記憶部150に保存されるイーサネットフレームのうちの、タグ2を含むイーサネットフレームを検出すると、当該イーサネットフレームは診断用複製フレームであると判断する。そして、判断部140は、診断用複製フレームであると判断したイーサネットフレームの診断フラグをオンする。
【0138】
また、スイッチ装置101Cにおける判断部140は、記憶部150における接続情報に基づいて、診断装置201が他のスイッチ装置101Aにおける通信ポート54に接続されていると判断する。
【0139】
スイッチ装置101Cにおける判断部140は、診断装置201が他のスイッチ装置101Aにおける通信ポート54に接続されていると判断すると、記憶部150における診断用複製フレームのタグ2を削除することなく、診断用複製フレームにタグ2が付加された状態を維持する。
【0140】
スイッチ装置101Cにおけるスイッチ部110は、記憶部150におけるイーサネットフレームの診断フラグがオンされている場合、当該イーサネットフレームすなわち診断用複製フレームの宛先IPアドレスに関わらず、当該診断用複製フレームを診断装置201に対応する通信ポート54から出力する。
【0141】
より詳細には、スイッチ装置101Cにおけるスイッチ部110は、記憶部150における接続情報を参照することにより、診断装置201がスイッチ装置101Aに接続されていることを認識し、診断用複製フレームをスイッチ装置101Aに対応する通信ポート54Hから出力する。
【0142】
[動作の流れ]
本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0143】
図9は、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置が診断用複製フレームを生成して送信する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図9は、
図1に示すように診断装置201がスイッチ装置101Aに接続されている場合において、スイッチ装置101Bが診断用複製フレームを生成して送信する際の動作手順の一例を示している。
【0144】
図9を参照して、まず、スイッチ装置101Bは、イーサネットフレームを待ち受け(ステップS102でNO)、車載通信デバイス111から送信されたイーサネットフレームを通信ポート54経由で受信すると(ステップS102でYES)、当該イーサネットフレームが指定ポートを経由して中継すべきイーサネットフレームであるか否かを判断する。より詳細には、スイッチ装置101Bは、受信したイーサネットフレームが対象フレームであるか否かを判断する(ステップS104)。
【0145】
次に、スイッチ装置101Bは、受信したイーサネットフレームが対象フレームではないと判断した場合(ステップS106でNO)、当該イーサネットフレームを通信ポート54経由で宛先の車載通信デバイス111へ中継する(ステップS108)。
【0146】
次に、スイッチ装置101Bは、新たなイーサネットフレームを待ち受ける(ステップS102でNO)。
【0147】
一方、スイッチ装置101Bは、受信したイーサネットフレームが対象フレームであると判断した場合(ステップS106でYES)、当該対象フレームの複製である複製フレームを生成する(ステップS110)。
【0148】
次に、スイッチ装置101Bは、複製フレームにタグ2を付加することにより診断用複製フレームを生成する(ステップS112)。
【0149】
次に、スイッチ装置101Bは、対象フレームを通信ポート54経由で宛先の車載通信デバイス111へ中継する(ステップS114)。
【0150】
次に、スイッチ装置101Bは、診断用複製フレームをスイッチ装置101Aに対応する通信ポート54Gから出力する(ステップS116)。
【0151】
次に、スイッチ装置101Bは、新たなイーサネットフレームを待ち受ける(ステップS102でNO)。
【0152】
なお、上記ステップS114とS116との順番は、上記に限らず、順番を入れ替えてもよい。
【0153】
図10は、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置が診断用複製フレームを受信して診断装置へ送信する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図10は、
図1に示すように診断装置201がスイッチ装置101Aに接続されている場合において、スイッチ装置101Aが診断用複製フレームを受信して診断装置201へ送信する際の動作手順の一例を示している。
【0154】
図10を参照して、まず、スイッチ装置101Aは、イーサネットフレームを待ち受け(ステップS202でNO)、スイッチ装置101Bから送信されたイーサネットフレームを通信ポート54D経由で受信すると(ステップS202でYES)、受信したイーサネットフレームが、診断装置201に対応する通信ポート54Cから出力すべき診断用複製フレームであるか否かを判断する(ステップS204)。
【0155】
次に、スイッチ装置101Aは、受信したイーサネットフレームが診断用複製フレームではないと判断した場合(ステップS206でNO)、当該イーサネットフレームを通信ポート54経由で宛先の車載通信デバイス111へ中継する(ステップS208)。
【0156】
次に、スイッチ装置101Aは、新たなイーサネットフレームを待ち受ける(ステップS202でNO)。
【0157】
一方、スイッチ装置101Aは、受信したイーサネットフレームが診断用複製フレームであると判断した場合(ステップS206でYES)、診断用複製フレームのタグ2を削除する(ステップS210)。
【0158】
次に、スイッチ装置101Aは、当該診断用複製フレームの宛先IPアドレスに関わらず、タグ2が削除された当該診断用複製フレームを通信ポート54Cから診断装置201へ出力する(ステップS212)。
【0159】
次に、スイッチ装置101Aは、新たなイーサネットフレームを待ち受ける(ステップS202でNO)。
【0160】
図11は、本開示の実施の形態の変形例に係るスイッチ装置が診断用複製フレームを受信して診断装置へ送信する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図11は、
図7に示すように診断装置201がスイッチ装置101Aに接続されている場合において、スイッチ装置101Cが診断用複製フレームを受信してスイッチ装置101Aへ送信する際の動作手順の一例を示している。
【0161】
図11を参照して、まず、スイッチ装置101Cは、イーサネットフレームを待ち受け(ステップS302でNO)、スイッチ装置101Bから送信されたイーサネットフレームを通信ポート54J経由で受信すると(ステップS302でYES)、受信したイーサネットフレームが、診断装置201が接続されているスイッチ装置101Aに対応する通信ポート54Hから出力すべき診断用複製フレームであるか否かを判断する(ステップS304)。
【0162】
次に、スイッチ装置101Cは、受信したイーサネットフレームが診断用複製フレームではないと判断した場合(ステップS306でNO)、当該イーサネットフレームを通信ポート54経由で宛先の車載通信デバイス111へ中継する(ステップS308)。
【0163】
次に、スイッチ装置101Cは、新たなイーサネットフレームを待ち受ける(ステップS302でNO)。
【0164】
一方、スイッチ装置101Cは、受信したイーサネットフレームが診断用複製フレームであると判断した場合(ステップS306でYES)、当該診断用複製フレームの宛先IPアドレスに関わらず、当該診断用複製フレームをスイッチ装置101Aに対応する通信ポート54Hから出力する(ステップS310)。
【0165】
次に、スイッチ装置101Cは、新たなイーサネットフレームを待ち受ける(ステップS302でNO)。
【0166】
図12は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける中継処理のシーケンスの一例を示す図である。
【0167】
図12を参照して、まず、たとえば診断装置201がイーサネットケーブルを介してスイッチ装置101Aの通信ポート54Cに接続される(ステップS402)。
【0168】
次に、スイッチ装置101Aは、診断装置201がスイッチ装置101Aに接続されている旨を示す接続情報を生成し、生成した接続情報をスイッチ装置101Bへ送信する(ステップS404)。
【0169】
次に、たとえば、車載通信デバイス111Cは、車載通信デバイス111B宛のイーサネットフレームF1をスイッチ装置101Bへ送信する(ステップS406)。
【0170】
次に、スイッチ装置101Bは、通信ポート54E経由で車載通信デバイス111Cから受信したイーサネットフレームF1を中継処理する。具体的には、スイッチ装置101Bは、イーサネットフレームF1を通信ポート54G経由でスイッチ装置101Aへ送信する(ステップS408)。
【0171】
次に、スイッチ装置101Aは、通信ポート54D経由でスイッチ装置101Bから受信したイーサネットフレームF1を中継処理する。具体的には、スイッチ装置101Aは、イーサネットフレームF1を通信ポート54B経由で車載通信デバイス111Bへ送信する(ステップS410)。
【0172】
次に、たとえば、車載通信デバイス111Dは、車載通信デバイス111B宛のイーサネットフレームF2をスイッチ装置101Bへ送信する(ステップS412)。
【0173】
次に、スイッチ装置101Bは、指定ポートである通信ポート54F経由で車載通信デバイス111CからイーサネットフレームF2を受信すると、当該イーサネットフレームF2が対象フレームであると判断し、イーサネットフレームF2の複製にタグ2を付加することにより診断用複製フレームを生成する(ステップS414)。
【0174】
次に、スイッチ装置101Bは、イーサネットフレームF2を中継処理する。具体的には、スイッチ装置101Bは、イーサネットフレームF2を通信ポート54G経由でスイッチ装置101Aへ送信する(ステップS416)。
【0175】
また、スイッチ装置101Bは、生成した診断用複製フレームを通信ポート54G経由でスイッチ装置101Aへ送信する(ステップS418)。
【0176】
次に、スイッチ装置101Aは、通信ポート54D経由でスイッチ装置101Bから受信したイーサネットフレームF2を中継処理する。具体的には、スイッチ装置101Aは、イーサネットフレームF2を通信ポート54B経由で車載通信デバイス111Bへ送信する(ステップS420)。
【0177】
次に、スイッチ装置101Aは、通信ポート54D経由でスイッチ装置101Bから受信した診断用複製フレームのタグ2を削除する(ステップS422)。
【0178】
次に、スイッチ装置101Aは、タグ2が削除された診断用複製フレームを通信ポート54C経由で診断装置201へ送信する(ステップS424)。
【0179】
次に、たとえば、車載通信デバイス111Cは、車載通信デバイス111D宛のイーサネットフレームF3をスイッチ装置101Bへ送信する(ステップS426)。
【0180】
次に、スイッチ装置101Bは、通信ポート54E経由で車載通信デバイス111CからイーサネットフレームF3受信すると、指定ポートである通信ポート54F経由で送信されるべき当該イーサネットフレームF3を対象フレームであると判断し、イーサネットフレームF3の複製にタグ2を付加することにより診断用複製フレームを生成する(ステップS428)。
【0181】
次に、スイッチ装置101Bは、イーサネットフレームF3を中継処理する。具体的には、スイッチ装置101Bは、イーサネットフレームF3を通信ポート54F経由で車載通信デバイス111Dへ送信する(ステップS430)。
【0182】
また、スイッチ装置101Bは、生成した診断用複製フレームを通信ポート54G経由でスイッチ装置101Aへ送信する(ステップS432)。
【0183】
次に、スイッチ装置101Aは、通信ポート54D経由でスイッチ装置101Bから受信した診断用複製フレームのタグ2を削除する(ステップS434)。
【0184】
次に、スイッチ装置101Aは、タグ2が削除された診断用複製フレームを通信ポート54C経由で診断装置201へ送信する(ステップS436)。
【0185】
なお、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、スイッチ装置101A,101Bが、判断部140を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。たとえば、診断装置201およびスイッチ装置101Aの接続関係が固定されている場合、スイッチ装置101Aが判断部140を備える一方で、スイッチ装置101Bは判断部140を備えない構成であってもよい。
【0186】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、診断装置201がスイッチ装置101Aに接続され、スイッチ装置101Bにおける通信ポート54Fが指定ポートであるとしたが、これに限定するものではない。診断装置201がスイッチ装置101Bに接続され、スイッチ装置101Aにおけるいずれかの通信ポート54が指定ポートであってもよい。この場合、スイッチ装置101Aにおける複製部130が、上述のスイッチ装置101Bにおける複製部130と同様の処理を行い、スイッチ装置101Bにおける判断部140が、上述のスイッチ装置101Aにおける判断部140と同様の処理を行う。
【0187】
また、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置101では、複製部130は、対象フレームの複製フレームにタグ2が付加された診断用複製フレームを生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。複製部130は、複製フレームに、診断装置201へ伝送すべき旨の情報としてタグ2とは異なる情報が付加された診断用複製フレームを生成する構成であってもよい。たとえば、複製部130は、複製フレームに、タグ2の代わりに1ビットの情報が付加された診断用複製フレームを生成する構成であってもよい。
【0188】
また、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置101は、取得部120を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。たとえば、診断装置201およびスイッチ装置101Aの接続関係が固定されており、予め記憶部150に接続情報が保存されている場合、スイッチ装置101は取得部120を備えない構成であってもよい。
【0189】
また、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置101では、判断部140は、診断用複製フレームのタグ2におけるVIDに格納されたVLANのIDが、診断装置201の属するVLANのIDと一致する場合、診断用複製フレームを診断装置201に対応する通信ポート54から出力すべきであると判断する構成であるとしたが、これに限定するものではない。判断部140は、診断用複製フレームのタグ2におけるVIDに格納されたVLANのIDに関わらず、診断用複製フレームにタグ2が付加されていることをもって、当該診断用複製フレームを診断装置201に対応する通信ポート54から出力すべきであると判断する構成であってもよい。
【0190】
また、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置101では、判断部140は、診断装置201が自己のスイッチ装置101における通信ポート54に接続されていると判断すると、記憶部150における診断用複製フレームのタグ2を削除する構成であるとしたが、これに限定するものではない。判断部140は、診断装置201がいずれのスイッチ装置101の通信ポート54に接続されているかに関わらず、診断用複製フレームのタグ2を削除しない構成であってもよい。この場合、スイッチ部110は、タグ2が付加された診断用複製フレームを対応の通信ポート54から診断装置201へ出力する。
【0191】
ところで、複数のスイッチ装置を備える車載ネットワークにおけるフレームの解析をより円滑かつ正確に行うことを可能とする技術が望まれる。
【0192】
たとえば、特許文献3には、スイッチングハブにおける特定の通信ポートを監視し、当該通信ポートを経由するフレームをミラーリングする、いわゆるポートミラーリング技術について記載されている。特許文献3に記載のポートミラーリング技術では、スイッチングハブが監視対象の通信ポート経由で受信するイーサネットフレーム、およびスイッチングハブが監視対象の通信ポート経由で転送するイーサネットフレームを複製し、複製により得られたイーサネットフレームの宛先をネットワークアナライザのアドレスに書き換える。これにより、複製により得られたイーサネットフレームは、ネットワークアナライザへ送信され、ネットワークアナライザにおいて解析される。
【0193】
また、特許文献4には、複数のスイッチ装置と、複数のPC(Personal Computer)とを含むシステムにおいて、セキュリティを向上させるためのセキュリティ方法が記載されている。具体的には、このセキュリティ方法では、PCは、自己が属するVLANの番号が格納されたVLANタグ情報を含むフレームをスイッチ装置へ送信する。スイッチ装置は、PCから受信したフレームに含まれるVLANタグ情報と、当該PCが接続された通信ポートに予め対応付けられたVLAN番号とが一致した場合にのみ、当該フレームを宛先のPCへ中継する。
【0194】
また、非特許文献1には、ポートミラーリング機能を有するスイッチ装置における、監視対象の通信ポートおよび監視対象のVLANの設定手順について記載されている。また、非特許文献1には、LLDP-MED(Link Layer Discovery Protocol-Media Endpoint Discovery)のネットワークポリシーの設定手順の一部として、トラフィックをVLANタグ付きにするか否かを選択することが記載されている。
【0195】
しかしながら、従来のポートミラーリング技術では、車載ネットワークにおけるフレームの解析を円滑かつ正確に行うことができない場合がある。
【0196】
より詳細には、たとえば
図1に示す車載通信システム301のように、指定ポート54を備えるスイッチ装置101Bと、診断装置201が接続されたスイッチ装置101Aとが別個のスイッチ装置101である場合、スイッチ装置101Aにおいて、対象フレームを宛先の車載通信デバイス111Aまたは111Bへ中継し、かつ対象フレームの複製であるミラーフレームを診断装置201へ送信するために、スイッチ装置101Aが通常のイーサネットフレームとミラーフレームとを識別する必要がある。
【0197】
そこで、たとえば、スイッチ装置101Bにおいて、ミラーフレームにおけるVIDに格納された情報を所定内容に書き換えてスイッチ装置101Aへ送信することが考えられる。
【0198】
この場合、スイッチ装置101Aは、スイッチ装置101Bから受信したイーサネットフレームのVIDに格納された情報が所定内容である場合、当該イーサネットフレームがミラーフレームであることを認識することができる。そして、スイッチ装置101Aは、ミラーフレームにおける、スイッチ装置101Bによって書き換えられたVIDを削除した上で、当該ミラーフレームを診断装置201へ送信する。
【0199】
しかしながら、このように、スイッチ装置101Bが、ミラーフレームにおけるVIDに格納された情報を書き換えてスイッチ装置101Aへ送信する構成では、最終的に診断装置201により受信されるミラーフレームにおいて、複製元の対象フレームのVIDに格納されていた情報は失われる。したがって、診断装置201において対象フレームの解析を正確に行うことができない場合がある。
【0200】
これに対して、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置101では、スイッチ部110は、車載通信デバイス111から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを通信ポート54経由で他の車載通信デバイス111へ中継する。複製部130は、診断装置201が他のスイッチ装置101に接続されている場合、複数の通信ポート54のうちの指定されている通信ポート54を経由して中継すべきフレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、診断装置201へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成する。スイッチ部110は、複製部130により生成された診断用複製フレームを他のスイッチ装置101に対応する通信ポート54から出力する。
【0201】
本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、複数のスイッチ装置101は、車載通信デバイス111から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを他の車載通信デバイス111へ中継する。スイッチ装置101Bは、診断装置201がスイッチ装置101Aに接続されている場合、複数の通信ポート54のうちの指定されている通信ポートを経由して中継すべきフレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、診断装置201へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した診断用複製フレームをスイッチ装置101Aに対応する通信ポートから出力する。スイッチ装置101Aは、スイッチ装置101Bから受信したフレームに特定情報が付加されている場合、受信したフレームが診断用複製フレームであると判断する。
【0202】
本開示の実施の形態に係る通信方法は、スイッチ装置101における通信方法である。この通信方法では、まず、スイッチ装置101が、診断装置201が他のスイッチ装置101に接続されている場合、複数の通信ポート54のうちの指定されている通信ポート54を経由して中継すべきフレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、診断装置201へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成する。次に、スイッチ装置101が、生成した診断用複製フレームを他のスイッチ装置101に対応する通信ポート54から出力する。
【0203】
本開示の実施の形態に係る通信方法は、車載通信システム301における通信方法である。この通信方法では、まず、スイッチ装置101Bが、診断装置201がスイッチ装置101Aに接続されている場合、複数の通信ポート54のうちの指定されている通信ポート54を経由して中継すべきフレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、診断装置201へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した診断用複製フレームをスイッチ装置101Aに対応する通信ポート54から出力する。次に、スイッチ装置101Aが、スイッチ装置101Bから受信したフレームに特定情報が付加されている場合、受信したフレームが診断用複製フレームであると判断する。
【0204】
このように、対象となるフレームの複製フレームに、診断装置201へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加された診断用複製フレームを生成し、生成した診断用複製フレームを他のスイッチ装置に対応する通信ポートから出力する構成および方法により、複製元のフレームに格納された情報をすべて含む診断用複製フレームを生成して他のスイッチ装置101へ送信することができるとともに、他のスイッチ装置101において通常のフレームと診断用複製フレームとを識別することができる。
【0205】
したがって、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置、車載通信システムおよび通信方法では、複数のスイッチ装置を備える車載ネットワークにおけるフレームの解析をより円滑かつ正確に行うことができる。
【0206】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0207】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられるスイッチ装置であって、
複数の通信ポートと、
前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを前記通信ポート経由で他の前記機能部へ中継するスイッチ部と、
前記診断装置が他のスイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成する複製部とを備え、
前記スイッチ部は、前記複製部により生成された前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力し、
前記スイッチ部および前記複製部は、プロセッサにより実現される、スイッチ装置。
【0208】
[付記2]
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられるスイッチ装置であって、
複数の通信ポートと、
前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを前記通信ポート経由で他の前記機能部へ中継するスイッチ部と、
前記診断装置が他のスイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成する複製部とを備え、
前記スイッチ部は、前記複製部により生成された前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力し、
前記複製部は、前記診断装置のVLANのIDを含む前記特定情報が付加された診断用複製フレームを生成する、スイッチ装置。
【0209】
[付記3]
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられる車載通信システムであって、
複数のスイッチ装置を備え、
前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを含み、
前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを他の前記機能部へ中継し、
第1の前記スイッチ装置は、前記診断装置が他の前記スイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力し、
第2の前記スイッチ装置は、他の前記スイッチ装置から受信した前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断し、
前記機能部は、ECUである、車載通信システム。
【0210】
[付記4]
複数の機能部と、診断装置とが搭載される車両に用いられる車載通信システムであって、
複数のスイッチ装置を備え、
前記スイッチ装置は、複数の通信ポートを含み、
前記スイッチ装置は、前記機能部から送信された、VLANのIDを含む情報が付加されているフレームを他の前記機能部へ中継し、
第1の前記スイッチ装置は、前記診断装置が他の前記スイッチ装置に接続されている場合、前記複数の通信ポートのうちの指定されている前記通信ポートを経由して中継すべき前記フレームを複製し、複製により得られた複製フレームに、前記診断装置へ伝送すべき旨の情報である特定情報が付加されたフレームである診断用複製フレームを生成し、生成した前記診断用複製フレームを前記他のスイッチ装置に対応する前記通信ポートから出力し、
第2の前記スイッチ装置は、他の前記スイッチ装置から受信した前記フレームに前記特定情報が付加されている場合、受信した前記フレームが前記診断用複製フレームであると判断し、
前記第1のスイッチ装置は、前記診断装置のVLANのIDを含む前記特定情報が付加された診断用複製フレームを生成し、
前記第2のスイッチ装置は、前記特定情報に含まれるVLANのIDに基づいて、前記診断用複製フレームの、前記複数の通信ポートのうちの前記診断装置に対応する前記通信ポートへの出力に関する判断を行う、車載通信システム。
【符号の説明】
【0211】
1 車両
54 通信ポート
101 スイッチ装置
110 スイッチ部
120 取得部
130 複製部
140 判断部
111 車載通信デバイス
201 診断装置
301 車載通信システム