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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】急結混和材及び吹付コンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/08 20060101AFI20240215BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240215BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240215BHJP
   C04B 103/14 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
C04B22/08 Z
C04B28/02
C04B22/14 A
C04B22/14 B
C04B103:14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020055344
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021155240
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】倉形 公悦
(72)【発明者】
【氏名】羽根井 誉久
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-151759(JP,A)
【文献】特開平11-049553(JP,A)
【文献】国際公開第2008/056716(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
C01D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムアルミネート、アルミニウム硫酸塩、アルカリ金属硫酸塩及びアルカリ土類金属硫酸塩を含み、
前記アルカリ土類金属がカルシウムであり、
前記カルシウムアルミネート100質量部に対し、前記アルミニウム硫酸塩の含有量が0.5~15質量部、前記アルカリ金属硫酸塩の含有量が4~16質量部、アルカリ土類金属硫酸塩の含有量が5~45質量部であり、
前記アルカリ金属硫酸塩の自由水量が、アルカリ金属硫酸塩の総質量に対し、0.08~0.85質量%である、急結混和材。
【請求項2】
前記アルカリ金属がナトリウムである、請求項1に記載の急結用混和材。
【請求項3】
セメント、骨材、水及び請求項1又は2に記載の急結混和材を含み、
前記急結混和材の含有量が、前記セメント100質量部に対して5~15質量部である、吹付コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急結混和材及び吹付コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル、採掘抗、地下空間等の建設では、採掘面の崩落防止、地山補強等の観点から吹付コンクリートの施工が行われている。吹付コンクリートの施工としては、粉じんやリバウンド(跳ね返り)がより少ないことから湿式吹付工法が多く用いられている。湿式吹付工法は、セメントと骨材と必要に応じて混和成分とを配合した水を混練したベースコンクリートに、吹付直前に急結成分とその助剤等からなる液体又は粉体の急結材を添加して、コンクリートの急結性を付与し、吹付施工時の付着性を担保している。一般的に、粉体急結材は液体急結材よりも高い強度を得るのに適している。急結材は、コンクリート輸送管に接続したY字状又はト字状の三方管を介して、圧送中のベースコンクリートに添加され、添加後は吹付け用ノズルまでの移動の短時間に混合がなされ、ノズル端から吹付コンクリートとして吹き出される。
【0003】
このような吹付コンクリートを得るために、混和される粉体状の急結材は、一般には、急結成分に、諸性状を調整する助剤が加えられたものである。急結剤としては、例えば、化学成分としてのCaO含有量を多くしたカルシウムアルミネートに、硬化促進のセッコウを配合し、これらに初期強度発現性を高めるアルミン酸ナトリウムや凝結促進の炭酸ナトリウム等加えた高アルカリ化の従来の代表的な粉体急結材(例えば、特許文献1~3参照。)等が挙げられる。急結材は水と接した後、極短時間で凝結が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-121763号公報
【文献】特開2003-012356号公報
【文献】特許第5129955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に吹付けコンクリートの硬化性状は温度の影響を大きく受ける。特に高温環境下においては、吹付けコンクリートの急結性は向上するが、長期の強度発現性が低下するという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、高温環境下であっても長期の強度発現性に優れる急結混和材及び吹付コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、アルカリ金属硫酸塩の自由水量を調整することで高温環境下における長期の強度発現性に優れた急結混和材及び吹付コンクリートが得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の[1]~[3]である。
[1]カルシウムアルミネート、アルミニウム硫酸塩、アルカリ金属硫酸塩及びアルカリ土類金属硫酸塩を含み、アルカリ金属硫酸塩の自由水量が、アルカリ金属硫酸塩の総質量に対し、0.08~0.85質量%である、急結混和材。
[2]カルシウムアルミネート100質量部に対し、アルミニウム硫酸塩の含有量が0.5~15質量部、アルカリ金属硫酸塩の含有量が4~16質量部、アルカリ土類金属硫酸塩の含有量が5~45質量部である、[1]に記載の急結用混和材。
[3]セメント、骨材、水及び[1]又は[2]に記載の急結混和材を含み、急結混和材の含有量が、セメント100質量部に対して5~15質量部である、吹付コンクリート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温環境下であっても長期の強度発現性に優れる急結混和材及び吹付コンクリートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の急結用混和材は、カルシウムアルミネート、アルミニウム硫酸塩、アルカリ金属硫酸及びアルカリ土類金属硫酸塩を含む。
【0012】
カルシウムアルミネートは、CaOとAlを主要化学成分とする無機水和活性物質であり、CaOとAlの含有モル比(CaO/Al)が1.8~2.7であることが好ましく、1.9~2.65であることが好ましく、2.0~2.6であることがより好ましい。CaOとAlの含有モル比が上記範囲内であれば、急結性と施工性が両立しやすい。カルシウムアルミネートには、原料由来のCaOとAl以外の不純物等の異成分も、その存在形態に拘わらず、本発明の効果を阻害させない範囲で含んでもよい。
【0013】
カルシウムアルミネートは結晶質、非晶質、又はその混合物のいずれも用いることができる。カルシウムアルミネートは、より優れた急結性が得られやすいという観点から、非晶質化の度合いであるガラス化率が60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。カルシウムアルミネートの粉末度は特に制限されないが、コンクリートへの急結混和材に使用したときに適度な反応活性が得られやすいことから、混和対象となる水硬性組成物中のセメントと同程度かそれ以上の粉末度であることが好ましく、例えば、ブレーン比表面積3000~6500cm/gの粉末度が挙げられる。
【0014】
カルシウムアルミネートは、例えば、CaO源となる原料及びAl源となる原料を用いて、目的とする化学成分としてのCaOとAlの含有モル比が得られるように配合した原料混合物を、溶融するまで加熱することで得られる。製造時の加熱後の冷却過程の違いにより、冷却後のカルシウムアルミネートの構造状態に様々な差異が生じるため、冷却速度等の冷却条件に応じて、非晶質化の度合であるガラス化率を調整できる。
【0015】
アルミニウム硫酸塩はいずれの形態でもよく、例えば、16水和物、無水物等が挙げられ、中でも16水和物が好ましい。アルミニウム硫酸塩の含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無水物換算で0.5~15質量部であることが好ましく、0.7~13質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることが更に好ましい。硫酸アルミニウムの含有量が上記範囲内であれば、強度発現性を確保しやすい。
【0016】
アルカリ金属硫酸塩は、特に限定されるものではなくいずれのものも使用することができ、反応性に優れることから無水物であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、中でもナトリウムが好ましい。アルカリ金属硫酸塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。アルカリ金属硫酸塩の粒度分布は、総粒子量の50質量%以上が45~450μmの範囲に存在することが好ましく、60~250μmの範囲に存在することがより好ましい。
【0017】
アルカリ金属硫酸塩に含まれる自由水量は、アルカリ金属硫酸塩の総質量に対し、0.08~0.85質量%である。自由水量が上記範囲外であると、高温環境下での長期の圧縮強度が伸びにくい。アルカリ金属硫酸塩に含まれる自由水量は、高温環境下での長期の強度発現性がより一層向上するという観点から、アルカリ金属硫酸塩の総質量に対し、0.15~0.7質量%であることが好ましく、0.3~0.6質量%であることがより好ましい。
アルカリ金属硫酸塩の自由水量は次の方法にて算出することができる。まずアルカリ金属硫酸塩の質量(M1)を測定し、その後、105℃の乾燥機にて24時間乾燥させ、室温(20℃)に戻るまで放置する。乾燥させたアルカリ金属硫酸塩の質量(M2)を測定し、乾燥前後のアルカリ金属硫酸塩の質量の値を用い、以下の式からアルカリ金属硫酸塩の自由水量を算出する。
自由水量(質量%)={([M1]-[M2])/[M1]}×100
【0018】
このようなアルカリ金属硫酸塩の製造方法としては、例えば、乾燥させたアルカリ金属硫酸塩の粉末を撹拌しながら、目的とする自由水量に相当する量の水を噴霧する方法や、湿潤した空間にアルカリ金属硫酸塩を設置し、その後目的とする自由水量になるまで乾燥処理し、粉砕を行う方法が挙げられる。
【0019】
アルカリ金属硫酸塩の含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無水物換算で4~16質量部であることが好ましく、5~15質量部であることがより好ましく、6~14質量部であることが更に好ましい。アルカリ金属の硫酸塩の含有量が上記範囲内であれば、急結性及び強度発現性に優れやすい。
【0020】
アルカリ土類金属硫酸塩は、特に限定されるものではなくいずれのものも使用することができ、反応性に優れることから無水物であることが好ましい。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、中でもカルシウムが好ましい。アルカリ土類金属硫酸塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。アルカリ土類金属硫酸塩の粒径や粒度も特に制限されるものではなく、例えば、ブレーン比表面積が4000~6500cm/g程度のものが挙げられる。アルカリ土類金属硫酸塩の含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無水物換算で5~45質量部であることが好ましく、7~40質量部であることがより好ましく、10~35質量部であることが更に好ましい。アルカリ土類金属硫酸塩の含有量が上記範囲内であれば、強度発現性に優れやすい。
【0021】
本実施形態に係る急結混和材は、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和材を配合してもよい。混和材としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩が挙げられる。
【0022】
本実施形態に係る急結混和材は、上記の各成分を混合して製造される。混合方法は特に制限されるものではなく、例えば、傾動ミキサ、パン型ミキサ、2軸ミキサ、グラウトミキサ、ホバートミキサ、オムニミキサ等の汎用的なミキサを用いることができる。
【0023】
本実施形態の急結混和材は、セメント、骨材及び水と混合することで吹付コンクリートとして調製することができる。急結混和材の含有量は、セメント100質量部に対して5~15質量部であることが好ましく、5.5~12質量部であることがより好ましく、6~10質量部であることが更に好ましい。急結混和材の含有量が上記範囲内であれば、急結性及び混合性を両立しやすい。
【0024】
セメントは、種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、速硬性セメント、高炉セメント、フライアッシュセメント等が挙げられる。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0025】
骨材は、細骨材及び粗骨材が挙げられる。細骨材は、モルタルやコンクリートに使用できる細骨材なら特に限定されず、珪砂や石灰石砂等の天然骨材、安山岩、砂岩、玄武岩等の砕砂等が挙げられる。粗骨材はコンクリートに使用できる粗骨材なら特に限定されず、珪石、石灰石、安山岩、砂岩、玄武岩等の砕石や砂利等が挙げられる。骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0026】
吹付コンクリート中の骨材の含有量は特に限定されるものではないが、施工時におけるコンクリートの圧送性に優れやすいという観点から、セメント含有量100質量部に対し、細骨材及び粗骨材の合計が300~570質量部であることが好ましく、380~550質量部であることがより好ましく、420~520質量部であることが更に好ましい。細骨材及び粗骨材を併用する場合、細骨材率(全骨材中の細骨材の質量割合)は54~69質量%であることが好ましく、55~65質量%であることがより好ましく、56~63質量%であることが更に好ましい。
【0027】
本実施形態の吹付コンクリートは、上記以外のその他の成分も本発明の効果を阻害しない範囲で含んでもよい。その他の成分として、短繊維、ポゾラン反応性物質、減水剤、増粘剤等が挙げられる。
【0028】
本実施形態の吹付コンクリートは、水の量を適宜調整することができる。水の含有量は、セメント100質量部に対し、52~68質量部であることが好ましく、53~67質量部であることがより好ましく、55~65質量部であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、強度発現性に優れる傾向となる。
【0029】
吹付コンクリートは、例えば、急結混和材を除く各材料を水と混練してベースコンクリートとし、吹付ノズルの先端でベースコンクリート及び急結混和材を混合して吹付ける湿式吹付工法により製造してもよく、急結混和材を含む各材料を混合してベース組成物とし、吹付ノズルの先端でベース組成物及び水を混合して吹付ける乾式吹付工法により製造してもよい。吹付コンクリートは、粉塵やリバウンドがより低減されやすいという観点から、湿式吹付け工法により製造することが好ましい。
【0030】
本実施形態の急結混和材及び吹付コンクリートは、30℃以上の高温環境下であっても長期の強度発現性に優れるものである。そのため、本実施形態の急結混和材及び吹付コンクリートは、夏場や気温の高いトンネル内部等であっても施工することができ、トンネル壁面や斜面への吹付けにおいて好適に用いることができる。
【実施例
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
[材料]
カルシウムアルミネート:CaO/Alが2.5、ガラス化率94%、ブレーン比表面積5400cm/g
硫酸アルミニウム試薬(16水和物)
硫酸ナトリウム試薬(無水芒硝、総粒子量の50質量%以上が60~250μmの範囲に存在、自由水量0.07質量%、0.47質量%、0.86質量%)
硫酸カルシウム試薬(無水石膏)
セメント:普通ポルトランドセメント
細骨材:石灰石細骨材(粒径5mm以下)
粗骨材:砕石(粒径5~15mm)
【0033】
[カルシウムアルミネートの作製]
市販の工業用薬品のCaCOとAlを用い、CaO及びAlの含有モル比(CaO/Al3、C/A比)の値が以下に表すカルシウムアルミネートが得られるように秤量配合し、ヘンシェル型混合機で原料調合物を作製した。この原料調合物を電気炉中で、約1600℃±50℃にて60分間加熱した。一部のものを除き、加熱時間経過後は加熱物を直ちに炉外に取り出した。取り出した加熱物の表面に冷却用の窒素ガスを最大流速約30mL/秒で吹付けて急冷し、冷却物を得た。冷却物のガラス化率については、窒素ガスの流速を最大値よりも落として吹付けることで調整した。各冷却物は、全鋼製のボールミルで粉砕し、分級装置にかけてブレーン比表面積約5400cm/gに整粒した。カルシウムアルミネートのガラス化率は、粉末エックス線回折装置を用い、質量がM3のカルシウムアルミネートクリンカに含まれる各鉱物の質量を内部標準法等で定量し、定量できた含有鉱物相の総和質量;M4を算出し、残部が純ガラス相と見なし、次式でガラス化率を算出した。
ガラス化率(質量%)={1-(M4/M3)}×100
【0034】
[無水芒硝の調製]
市販の無水芒硝粉末を混合しながら、無水芒硝の総質量に対し、0.47質量%、0.86質量%又は0.07質量%の水を噴霧し、試験に用いる無水芒硝を調製した。
【0035】
[急結混和材の作製]
カルシウムアルミネート100質量部に対し、硫酸アルミニウム16水和物を無水物換算で3質量部、無水芒硝を15質量部、無水石膏を28質量部添加し、ヘンシェルミキサーで1分間混合し、急結混和材を調製した。
【0036】
[ベースコンクリートの作製]
セメント100質量部に対し、細骨材290質量部、粗骨材200質量部、水60質量部、を加えてコンクリートミキサーで2分間混合し、ベースコンクリートを作製した。
【0037】
[吹付コンクリートの作製]
ベースコンクリートを混練後直ちに供給用タンクに入れ、そこから長さ約10m、内径6cmの樹脂製ホースを介して吹付装置へポンプ圧送した。吹付装置は、ベースコンクリートが圧送される内径2インチの圧送管と、その側面に約30度の傾斜角で連通するベースコンクリートに添加物(急結混和材)を供給添加するための円筒状側管と、吹付コンクリートを吹き付ける内径(先端孔径)2インチの噴射用ノズルとを基本構成とする市販品である。ここで、添加物供給用の側管は、圧送管本管と噴射用ノズルとの間に鋼製ト字状管(三方管)を介すことで形成させた。ト字状管の直線上に位置する二方の管口に圧送管本管と噴射用ノズルがそれぞれ接続され、残りの管口に、別送される急結性混和材の供給管が接続される構造とした。ト字状管内でのベースコンクリートへの急結混和材の添加位置(ベースコンクリートと急結混和材の合流地点)から噴射用ノズル孔端までの距離の間に、ベースコンクリートと急結混和材の混合がなされ、その距離(以下、混合距離と称す。)は1.5mとした。急結混和材は圧搾空気により所定量を空気圧送し、これを吹付装置内で圧送中のベースコンクリートに添加し、添加されたコンクリートは所定の混合距離を進む間に混合され、吹付コンクリートを作製した。
急結混和材の添加量は、セメント100質量部に対して9質量部とした。
【0038】
[急結性の評価]
ベースコンクリートの配合において、それぞれ含有する粗骨材と細骨材の合計含有量に相当する量を全て細骨材の含有量にし、粗骨材を含まず、また他の成分とその含有量は変更せずに、モルタル配合に変更したベースモルタルをベースコンクリートと同様の手順で作製した。得られたベースモルタルに、急結混和材を添加し、高速ミキサで5秒間混合し、モルタル混練物を作製した。
急結混和材添加から、20秒経過後、30秒経過後、60秒経過後及び90秒経過後のモルタル混練物のプロクター貫入抵抗値を測定し、急結性を評価した。プロクター貫入抵抗の測定方法は、土木学会コンクリート標準示方書「吹付コンクリート用急結剤品質規格」附属書「急結剤を添加したモルタルの貫入抵抗による瞬結時間測定方法」に準拠し、断面積0.125cmのプロクター針を使用した。この貫入抵抗値の測定結果を表1に示す。また、表中「>16(N/mm)」の記載はプロクター針の打込みはできたが、今回の使用機材の測定限界(最大16N/mm)を超えたものである。
測定は、20℃又は30℃で行った。
【0039】
[吹付コンクリートの強度発現性の評価]
混合距離を1.5mにし、作製した吹付コンクリートを、作製後直ちに、内寸30×40×20cmの成形用型枠内に吹き付け、型枠内を満たすようにした。これを20℃又は30℃(±1℃)の恒温庫に入れ所定時間経過後、型枠内の硬化コンクリートからコアドリルによって直径5cm、高さ10cmの円柱状供試体を採取し、材齢7日及び材齢28日にした供試体を得た。この材齢7日又は材齢28日の供試体の一軸圧縮強度をアムスラー式圧縮強度試験機で測定した。また、土木学会規準JSCE-G561に規定するプルアウト試験用型枠と埋込具を使用し、同様に作製した吹付コンクリートを、JSCE-G561に準拠したプルアウト試験に供した。当該試験により材齢28日の吹付コンクリートの圧縮強度を測定した。各供試体の強度測定の結果を表2に示す。表中のベース比とは、ベースコンクリートの材齢28日圧縮強度に対する各材齢28日の圧縮強度の比率(%)である。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1及び表2の結果から、実施例のモルタル及びコンクリートは、急結性に優れており、また30℃の恒温環境下においてもベースコンクリートと比較して十分な圧縮強度を維持していた。