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特許7437207強化コンクリート用モルタル及び強化コンクリートの補強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】強化コンクリート用モルタル及び強化コンクリートの補強方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240215BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240215BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240215BHJP
   C04B 24/20 20060101ALI20240215BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20240215BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20240215BHJP
   E01D 19/12 20060101ALN20240215BHJP
   C04B 111/72 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/08 Z
C04B22/06 Z
C04B22/06 A
C04B24/20
C04B24/06 A
E01D22/00 B
E01D19/12
C04B111:72
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020055345
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021155241
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤江 信哉
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-322400(JP,A)
【文献】特開2008-031008(JP,A)
【文献】特開2019-218224(JP,A)
【文献】特開2015-054791(JP,A)
【文献】特開2019-099454(JP,A)
【文献】特開2007-320783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
速硬性セメント、ポゾラン物質、膨張材、細骨材、減水剤及び凝結遅延剤を含む強化コンクリート用補修材と、水とを含む強化コンクリート補修用モルタルであって、
金属粉末を含まず、
前記速硬性セメント100量部に対し、前記ポゾラン物質の含有量が3~28質量部、前記細骨材の含有量が60~380質量部であり、前記減水剤の含有量が0.1~2.5質量部であり、前記凝結遅延剤の含有量が0.1~3質量部であり、前記水の含有量が20~40質量部であり、
前記モルタルの硬化体における材齢28日の圧縮強度が75N/mm 以上である、強化コンクリート補修用モルタル。
【請求項2】
前記減水剤がナフタレンスルホン酸系減水剤である、請求項1に記載のモルタル。
【請求項3】
前記凝結遅延剤がクエン酸である、請求項1又は2に記載のモルタル。
【請求項4】
強化コンクリートの表面に、8~40mmの厚さで請求項1~3のいずれか一項に記載のモルタルを施工する、強化コンクリートの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化コンクリート用補修材、そのモルタル及び硬化体、並びに強化コンクリートの補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋のコンクリート床版は、鉄筋等を入れて耐力や靱性に優れた強化コンクリートを使用することが多いが、重交通や過積載車両の通行等による疲労や劣化因子(塩化物や炭酸ガス等)の浸入により劣化し、これが原因となって耐力が低下してしまう。このようにして耐力が低下したコンクリート床版を補強して延命化を図るための方法の1つとして、コンクリート床版の上面を増厚する床版上面増厚工法が知られている。
【0003】
この床版上面増厚工法としては、アスファルト舗装を撤去してコンクリート床版の上面に鋼繊維補強コンクリートを増厚層として打設することが広く採用されている。一方、鋼繊維補強コンクリートを用いない増厚方法も提案されている。特許文献1には、コンクリート床版の上面に補強鉄筋の役割を兼ねた帯状鋼板を固定した状態でコンクリートを打設することにより増厚層の形成を行う床版上面増厚工法が記載されている。特許文献2には、コンクリート床版の上面に樹脂モルタル層を、その中間層として繊維補強層を介在させた状態で形成することにより増厚層の形成を行う床版上面増厚工法が記載されている。特許文献3には、コンクリート床版の上面にコンクリートのヤング係数に対して1/3以上の値のヤング係数を有する高弾性の樹脂モルタルにより増厚層の形成を行う床版上面増厚工法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-59929号公報
【文献】特開2004-169346号公報
【文献】特開2011-149244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、低下した耐力を補強するために従来の上面増厚工法を採用した場合、増厚層の最小施工厚が50mm程度となるため、コンクリート床版の自重が著しく増大してしまい負荷がかかるという問題があった。また、施工厚はコストにも直結する。そのため、施工厚を低減してもコンクリートの耐力を増強できる材料が求められている。
【0006】
したがって、本発明では、薄層施工が可能で、強化コンクリートの耐力及び靱性を向上させることができる強化コンクリート用補修材、そのモルタル及び硬化体、並びに強化コンクリートの補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、上記課題について鋭意検討した結果、ポゾラン物質と細骨材の含有量を調整した結果、薄層施工が可能で、コンクリートの靭性を維持しつつ耐力を向上させられる補修材を作製できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の[1]~[4]である。
[1]速硬性セメント、ポゾラン物質、膨張材及び細骨材を含み、速硬性セメント100量部に対し、ポゾラン物質の含有量が3~28質量部、細骨材の含有量が60~380質量部である、強化コンクリート用補修材。
[2][1]に記載の補修材及び水を含み、水の含有量が、速硬性セメント100質量部に対し、20~40質量部である、強化コンクリート補修用モルタル。
[3][2]に記載のモルタルの硬化体であって、硬化体における材齢28日の圧縮強度が75N/mm以上である、硬化体。
[4]強化コンクリートの表面に、8~40mmの厚さで[2]に記載のモルタルを施工する、強化コンクリートの補修方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄層施工が可能で、強化コンクリートの耐力及び靱性を向上させることができる強化コンクリート用補修材、そのモルタル及び硬化体、並びに強化コンクリートの補強方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、強化コンクリートとは耐力又は靱性に優れたコンクリートを指し、例えば、繊維補強コンクリート、鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリート等が挙げられる。
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0012】
[強化コンクリート用補修材]
本実施形態の強化コンクリート用補修材は、速硬性セメント、ポゾラン物質、膨張材及び細骨材を含む。
【0013】
速硬性セメントは、カルシウムアルミネート類を有効成分として含有するものが好ましく、11CaO・7Al・CaX(Xはハロゲン原子を示す)又は3CaO・3Al・CaSO(アウイン)を有効成分として含有するものがより好ましい。11CaO・7Al・CaXは、いわゆるカルシウムアルミネートハロゲン化物系セメントである。ハロゲン原子はフッ素原子が好ましい。アウインは、カルシウムサルホアルミネート系セメント(アウイン系セメント)とも称されるものである。これらは超速硬セメントと呼ばれるものであり、商品名ジェットセメント又はスーパージェットセメントとして市販されている。速硬性セメントは、アウイン系セメントが最も好ましい。
カルシウムアルミネート類としては、この他にもCaOをC、AlをA、FeをFで表示した場合、CA、CA、C1、C、CA、C、CA等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、CAF、CAF等と表示されるカルシウムアルミノフェライト、アルミナセメント、並びにこれらにSiO、KO、Fe、TiO等が固溶又は化合したもの等が含まれる。カルシウムアルミネート類は結晶質又は非晶質のいずれであってもよいし、結晶質及び非晶質の混合体のようなものでもよい。これらのカルシウムアルミネート類と石膏等の無機塩類とを配合して調製された速硬性混和材を、ポルトランドセメントに添加したものも速硬性セメントとして用いることができる。
【0014】
ポゾラン物質は、JIS A 6201:2015に記載されている各種フライアッシュ、JIS A 6207:2016に記載されているシリカフューム、スラグ粉末、非晶質アルミノシリケート等が挙げられる。ポゾラン物質は、長期の強度発現や施工性に一層優れるという観点から、シリカフューム、非晶質アルミノシリケートが好ましい。ポゾラン物質は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0015】
ポゾラン物質の含有量は、速硬性セメント100質量部に対し、3~28質量部である。ポゾラン物質の含有量が上記範囲外であると、モルタル時の性状が優れず薄層施工性が低下し、また補修したコンクリートの耐力や靱性も得られにくい。ポゾラン物質の含有量は、補修したコンクリートの耐力及び靱性が一層優れたものになるという観点から、速硬性セメント100質量部に対し、4~25質量部であることが好ましく、5~20質量部であることがより好ましい。
【0016】
膨張材は、コンクリート用膨張材として一般に使用されているJIS適合の膨張材(JIS A 6202:2008)であれば、何れの膨張材でもかまわない。膨張材としては、例えば、遊離生石灰を主成分とする膨張材(生石灰系膨張材)、アウインを主成分とする膨張材(エトリンガイト系膨張材)、遊離生石灰とエトリンガイト生成物質の複合系膨張材が挙げられる。これらの中では、生石灰系膨張材が好ましい。膨張材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。膨張材はブレーン比表面積が2000~6000cm/gのものを使用することが好ましい。
【0017】
膨張材の含有量は、速硬性セメント100質量部に対し、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~8質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることが更に好ましい。膨張材の含有量が上記範囲内であれば、圧縮強度、寸法変化率等がより一層優れたものとなる。
【0018】
細骨材は特に限定されるものではなく、例えば、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材等が挙げられる。細骨材は、これらの中でも珪砂が好ましい。細骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。細骨材は、通常用いられる粒径5mm以下のもの(5mmふるい通過分)を使用するのが好ましい。
【0019】
細骨材の含有量は、速硬性セメント100質量部に対し、60~380質量部である。細骨材の含有量が上記範囲外であると、モルタル時の性状が優れず施工性が低下し、また強度発現性が得られにくい。細骨材の含有量は、施工性を更に良好にするという観点から、セメント100質量部に対し、70~350質量部であることが好ましく、80~320質量部であることがより好ましい。
【0020】
本実施形態の強化コンクリート用補修材は減水剤を含んでもよい。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤、アクリル系減水剤が挙げられる。これらの中では、ナフタレンスルホン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0021】
減水剤の含有量は、速硬性セメント100質量部に対し、0.1~10質量部であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましく、0.5~2.5質量部であることが更に好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際により良好な流動性及びコテ性状が得られやすく、硬化時の強度発現性もより向上しやすい。
【0022】
本実施形態の強化コンクリート用補修材は凝結遅延剤を含んでもよい。凝結遅延剤としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸又はその塩;ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩等の無機塩;糖類が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、クエン酸塩、酒石酸、酒石酸塩、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。凝結遅延剤は、粉体であってもよく、液状体(例えば、水溶液、エマルジョン、懸濁液の形態)であってもよい。凝結遅延剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0023】
凝結遅延剤の含有量は、速硬性セメント100質量部に対し、0.1~8質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましく、0.8~3質量部であることが更に好ましい。凝結遅延剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を確保しやすい。
【0024】
本実施形態の強化コンクリート用補修材には、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和剤(材)を配合してもよい。混和剤(材)としては、例えば、石膏類、セメント用ポリマー、発泡剤、消泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、増粘剤、粉じん低減剤、強度増進剤、石粉、土鉱物粉末、繊維が挙げられる。
【0025】
本実施形態の強化コンクリート用補修材を製造する方法は、特に限定されず、例えば、V型混合機や可傾式コンクリートミキサー等の重力式ミキサー、ヘンシェル式ミキサー、噴射型ミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー等のミキサーにより混合することで製造することができる。
【0026】
[強化コンクリート用補修モルタル]
本実施形態の強化コンクリート用補修材は、水と混合して強化コンクリート用補修モルタルとして調製することができ、水の含有量は用途に応じて適宜調整すればよい。水の含有量は、速硬性セメント100質量部に対し、20~40質量部であることが好ましく、25~38質量部であることがより好ましく、28~35質量部であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、より施工性を確保しやすく、材料分離の発生、硬化体の収縮の増加を抑制しやすい。
【0027】
本実施形態の強化コンクリート用補修モルタルの調製は、通常の強化コンクリート用補修材と同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、モルタルミキサー、グラウトミキサー、ハンドミキサー、傾胴ミキサー、二軸ミキサー等が挙げられる。
【0028】
強化コンクリート用補修モルタルの硬化体において、材齢28日の圧縮強度は75N/mm以上であることが好ましく、78~150N/mmであることがより好ましく、80~130N/mmであることが更に好ましい。硬化体の圧縮強度が上記範囲内であれば、劣化しにくく、補修したコンクリートの耐力及び靱性が一層優れたものになる。圧縮強度は、JIS A 1108:2018「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて測定することができる。
【0029】
[強化コンクリートの補修方法]
本実施形態の強化コンクリートの補修方法は、強化コンクリートの表面に上記強化コンクリート用補修モルタルを施工することで行われる。施工する強化コンクリート用補修モルタルの厚さは、8~40mmであることが好ましく、10~30mmであることがより好ましく、12~25mmであることが更に好ましい。モルタルの厚さが上記範囲内であれば、自重増加を抑制しつつ、強化コンクリートの耐力及び靱性を十分に補強できる傾向にある。
【0030】
強化コンクリート補修用モルタルの施工方法としては特に限定されず、凹部にコテで充填する方法、充填後にバイブレーター等で均した後にコテで仕上げる方法等が選択できる。
【0031】
本実施形態の強化コンクリート用補修材又は強化コンクリート用補修モルタルを用いることで、強化コンクリートを補修した際に、強化コンクリートの靭性を維持しつつ耐力向上させることができる。また、本実施形態の強化コンクリート用補修材又は強化コンクリート用補修モルタルは薄層施工が可能なため、強化コンクリートの補修の際に自重の増加を抑えることもできる。したがって、本実施形態の強化コンクリート用補修材又は強化コンクリート用補修モルタルは、強化コンクリートを用いる土木構造物の補修において好適に用いることができる。土木構造物としては、例えば、道路、橋梁、港湾構造物、河川構造物(護岸や桟橋等)、地下構造物(トンネルやボックスカルバート等)、ダム等が挙げられる。
【実施例
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
[強化コンクリート用補修材・強化コンクリート用補修モルタルの作製]
・材料
セメント:
速硬性セメント(CSA)
普通ポルトランドセメント(NC)
ポゾラン物質:シリカフューム(SF)
細骨材:珪砂
膨張材:生石灰系膨張材
減水剤:ナフタレンスルホン酸系減水剤
凝結遅延剤:クエン酸
【0034】
セメント100質量部に対し、シリカフューム、細骨材を表1に示す割合とし、膨張材を2質量部、減水剤を1質量部、凝結遅延剤を1質量部として配合設計した。20℃環境下において、セメント100質量部に対し、水32質量部を10Lの円筒容器に添加し、配合設計した強化コンクリート用補修材の各材料を添加し、ハンドミキサーで90秒混練してモルタルを約3L作製した.
【0035】
【表1】
【0036】
[母材コンクリートの作製]
・材料
セメント:早強ポルトランドセメント(C)
細骨材:山砂(S)
粗骨材:砕石(G)
繊維:鋼繊維(F)
膨張材:生石灰系膨張材(Ex)
減水剤:高性能AE減水剤(AE)
【0037】
20℃環境下において、表2に示す割合で配合設計したコンクリート組成物の各材料を添加し、強制練りミキサーにて120秒混錬して母材コンクリートを約25L作製した。
【0038】
【表2】
【0039】
[評価方法]
各項目について以下の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
1)圧縮強度
JIS A 1108:2018「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて、強化コンクリート用補修モルタルの材齢28日における圧縮強度を測定した。供試体の寸法は、直径100mm、高さ200mmとした。供試体は翌日に脱型した後、材齢日まで水中で養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。
2)静弾性係数
JIS A 1149:2017「コンクリートの静弾性係数試験方法」に準じて、強化コンクリート補修用モルタルの材齢28日における静弾性係数を測定した。供試体の寸法は、直径100mm、高さ200mmとした。供試体は翌日に脱型した後、材齢日まで水中で養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。測定は圧縮強度試験を兼ねて行った。
3)曲げ強度(耐力)
JIS A 1106:2018「コンクリートの曲げ強度試験方法」に準じて、材齢28日における曲げ強度を測定した。供試体の寸法は、幅100mm、高さ100mm、長さ400mmとした。供試体は母材コンクリートを高さ85mmで成形し、翌日に脱型した後、材齢7日まで水中で養生した。その後、表面処理を行い残り高さ15mmをモルタルで成形し、所定の供試体寸法としてさらに材齢28日間まで水中養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。
4)曲げ靭性係数(靱性)
JSCE-G552-2013「鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法」に準じて、材齢28日における曲げ靭性係数を測定した。供試体の寸法は、幅100mm、高さ100mm、長さ400mmとした。供試体は母材コンクリートを高さ85mmで成形し、翌日に脱型した後、材齢7日まで水中で養生した。その後、残り高さ15mmをモルタルで成形し、所定の供試体寸法としてさらに材齢28日間まで水中養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。測定は曲げ強度試験を兼ねて行った。
5)薄層施工性
型枠(30×30×3cm)を勾配5%の状態に設置し、モルタルを施工した後コテで均してモルタルのダレ性状を目視観察した。ダレが生じたものを不良(×)と評価し、ダレを生じなかったものを良好(○)と評価した。
【0040】
【表3】
【0041】
実施例の試験体では、母材コンクリートよりも靱性係数を維持し、且つ、曲げ強度が向上しており、強化コンクリート用補修材により耐力(曲げ強度)及び靱性(曲げ靱性係数)が向上していた。一方、比較例の試験体では、薄層施工ができない場合や、母材コンクリートよりも曲げ強度や靱性係数が向上せず、耐力及び靱性の補強効果は見られない場合があった。