(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ポンプ制御圧レギュレータ
(51)【国際特許分類】
F04B 1/128 20200101AFI20240215BHJP
F04B 1/22 20060101ALI20240215BHJP
F04B 49/12 20060101ALI20240215BHJP
F04B 49/22 20060101ALI20240215BHJP
F04B 1/32 20200101ALI20240215BHJP
【FI】
F04B1/128
F04B1/22
F04B49/12
F04B49/22
F04B1/32
(21)【出願番号】P 2020056303
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 明夫
(72)【発明者】
【氏名】武井 元
(72)【発明者】
【氏名】久保井 宏暁
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-240518(JP,A)
【文献】特開2001-055968(JP,A)
【文献】特開平10-095331(JP,A)
【文献】特開2008-151010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/12
F04B 1/128
F04B 1/32
F04B 49/12
F04B 49/22
F16K 3/24
F16K 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
馬力制御圧に応じて駆動馬力が制御されるポンプへ前記馬力制御圧を供給するポンプ制御圧レギュレータであって、
前記馬力制御圧を前記ポンプへ導く第1通路と、前記ポンプの吐出圧が導かれる第2通路と、前記ポンプの馬力を変更する前記吐出圧より低い信号圧が導かれる第3通路と、前記第1通路、前記第2通路及び前記第3通路が開口する取付孔と、を有するハウジングと、
前記取付孔に取り付けられ、前記第1通路と連通する第1ポートと、前記第2通路と連通する第2ポートと、前記第3通路と連通する第3ポートと、を有するスリーブと、
前記スリーブに摺動自在に収容され、前記第2ポートを通じて供給される前記吐出圧と前記第3ポートを通じて供給される前記信号圧とに応じて軸方向に変位し、前記第1ポートと前記第2ポートとの連通を許容または遮断する制御スプールと、を備え、
前記ハウジング及び前記スリーブの何れかには、作動流体が貯留されるタンクに連通するドレン通路が設けられ、
前記ドレン通路は、前記第2通路と前記第2ポートとが接続される第2接続部と、前記第3通路と前記第3ポートとが接続される第3接続部と、の間において開口することを特徴とするポンプ制御圧レギュレータ。
【請求項2】
前記ドレン通路は、前記スリーブの外周面において一端が開口し、前記スリーブと前記制御スプールとの摺動面において他端が開口することを特徴とする請求項1に記載のポンプ制御圧レギュレータ。
【請求項3】
前記スリーブには、前記制御スプールと前記スリーブとの間の隙間を通じて漏れ出た作動流体を回収するための回収室と、前記回収室に回収された作動流体を前記タンクへと回収する回収通路と、が設けられ、
前記ドレン通路は、前記回収通路に接続されることを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ制御圧レギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ制御圧レギュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、馬力制御圧に応じて駆動馬力が制御される斜板式ピストンポンプへ馬力制御圧を供給するポンプ制御圧レギュレータが開示されている。このポンプ制御圧レギュレータから斜板式ピストンポンプへ供給される馬力制御圧は、外部から供給される信号圧に応じて変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のポンプ制御圧レギュレータでは、斜板式ピストンポンプの吐出圧が導かれる吐出圧ポートと、外部からの信号圧が導かれる信号圧ポートと、が隣接して配置されている。このように比較的高い圧力が導かれる吐出圧ポートと、比較的低い圧力が導かれる信号圧ポートと、が隣接して配置されていると、吐出圧ポートとポンプハウジングに形成された通路との接続部から作動油が漏れ出し、信号圧ポートへと流れ込むおそれがある。信号圧ポートへと比較的高い圧力の作動油が流入すると、外部から信号圧が供給されていない場合であっても信号圧が供給された状態と同じ状態になることから、意図しない大きさの馬力制御圧がポンプ制御圧レギュレータから斜板式ピストンポンプへと供給されることになる。
【0005】
ポンプ制御圧レギュレータから斜板式ピストンポンプに供給される馬力制御圧の大きさが意図しない大きさになると、例えば、斜板式ピストンポンプの吐出量が低下し油圧機器へと十分な作動油を供給することができなくなるおそれがある。また、斜板式ピストンポンプを駆動する駆動源がエンジンである場合には、斜板式ピストンポンプの駆動馬力が増大しエンジンが過負荷状態となって、エンジンが停止するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ポンプ制御圧レギュレータからポンプへと意図しない大きさの馬力制御圧が供給されることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、馬力制御圧に応じて駆動馬力が制御されるポンプへ馬力制御圧を供給するポンプ制御圧レギュレータが、馬力制御圧をポンプへ導く第1通路と、ポンプの吐出圧が導かれる第2通路と、ポンプの馬力を変更する吐出圧より低い信号圧が導かれる第3通路と、第1通路、第2通路及び第3通路が開口する取付孔と、を有するハウジングと、取付孔に取り付けられ、第1通路と連通する第1ポートと、第2通路と連通する第2ポートと、第3通路と連通する第3ポートと、を有するスリーブと、スリーブに摺動自在に収容され、第2ポートを通じて供給される吐出圧と第3ポートを通じて供給される信号圧とに応じて軸方向に変位し、第1ポートと第2ポートとの連通を許容または遮断する制御スプールと、を備え、ハウジング及びスリーブの何れかには、作動流体が貯留されるタンクに連通するドレン通路が設けられ、ドレン通路は、第2通路と第2ポートとが接続される第2接続部と、第3通路と第3ポートとが接続される第3接続部と、の間において開口することを特徴とする。
【0008】
この発明では、第2通路と第2ポートとの第2接続部と、第3通路と第3ポートとの第3接続部と、の間において、タンクに連通するドレン通路が開口している。このため、第2接続部から比較的高い圧力の作動流体が漏れ出たとしても、漏れ出た作動流体は、第3接続部に至ることなくドレン通路に流れ込む。これにより外部からポンプ制御圧レギュレータへと信号圧が供給されていないときに、信号圧が供給されているかのようにポンプ制御圧レギュレータが作動してしまうことが回避される。この結果、ポンプ制御圧レギュレータからポンプへと意図しない馬力制御圧が供給されることを防止することができる。
【0009】
また、本発明は、ドレン通路が、スリーブの外周面において一端が開口し、スリーブと制御スプールとの摺動面において他端が開口することを特徴とする。
【0010】
この発明では、ドレン通路は、スリーブの外周面において開口するとともに、スリーブと制御スプールとの摺動面において開口している。これにより、スリーブとハウジングとの間の隙間だけではなく、スリーブと制御スプールとの間の隙間を通じて、第3ポートに比較的高圧の作動流体が流入してしまうことが抑制される。この結果、ポンプ制御圧レギュレータからポンプへと意図しない馬力制御圧が供給されることを防止することができる。
【0011】
また、本発明は、制御スプールとスリーブとの間の隙間を通じて漏れ出た作動流体を回収するための回収室と、回収室に回収された作動流体をタンクへと回収する回収通路と、がスリーブに設けられ、ドレン通路が、回収通路に接続されることを特徴とする。
【0012】
この発明では、ドレン通路は、制御スプールとスリーブとの間の隙間を通じて漏れ出た作動流体を回収する回収通路に接続される。このように、スリーブに形成された通路を利用し、ドレン通路をタンクと連通させることによって、ドレン通路とタンクとを連通する連通路を別途設ける必要がなくなる。このため、ドレン通路を設けることによる製造コストの増加を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポンプ制御圧レギュレータからポンプへと意図しない大きさの馬力制御圧が供給されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るポンプ制御圧レギュレータを備える斜板式ポンプの断面図である。
【
図2】
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線に沿った断面を拡大して示した拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るポンプ制御圧レギュレータを備える斜板式ポンプの変形例を示す図であって、
図2に相当する断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1を参照して、本発明の実施形態に係るポンプ制御圧レギュレータ50(以下、「レギュレータ50」という。)を備える斜板式ポンプ100(以下、「ポンプ100」という。)について説明する。ポンプ100は、例えば、油圧シリンダ等の油圧機器に作動流体としての作動油を供給する油圧供給源として使用され、エンジン等の駆動源によって回転駆動される。
【0017】
図1に示すように、ポンプ100は、斜板式のピストンポンプであり、動力源によって回転する駆動軸としてのシャフト1と、シャフト1に連結されシャフト1と共に回転するシリンダブロック2と、シリンダブロック2を収容するケース3と、を備える。
【0018】
ケース3は、有底筒状のハウジングとしてのケース本体3aと、ケース本体3aの開口端を封止するカバー3bと、を有する。ケース3の内部は、図示しないドレン配管を通じて作動油が貯留される図示しないタンクに連通する。このため、ケース3内部の圧力は、タンク圧とほぼ等しい大きさになっている。
【0019】
カバー3bにはシャフト1が挿通する挿通孔3cが形成されており、シャフト1は、軸受4aを介して挿通孔3cに回転自在に支持される。カバー3bから外部に突出するシャフト1の一方の端部1aには、エンジン等の動力源(図示省略)が連結される。ケース3の内部に挿入されるシャフト1の他方の端部1bは、ケース本体3aの底部に設けられるシャフト収容孔3dに収容され、軸受4bを介してシャフト収容孔3dに回転自在に支持される。なお、シャフト1の他方の端部1bには、ポンプ100と共に動力源によって駆動されるギアポンプ等の他の油圧ポンプの回転軸が連結されてもよい。
【0020】
シリンダブロック2は、シャフト1が貫通する貫通孔2aを有し、貫通孔2aを介してシャフト1とスプライン結合される。これにより、シリンダブロック2はシャフト1の回転に伴って回転する。
【0021】
シリンダブロック2には、一方の端面に開口部を有する複数のシリンダ2bがシャフト1と平行に形成される。複数のシリンダ2bは、シリンダブロック2の周方向に所定の間隔を持って形成される。シリンダ2bには、容積室6を区画する円柱状のピストン5が往復動自在に挿入される。ピストン5の先端側はシリンダ2bの開口部から突出し、その先端部には球面座5aが形成される。
【0022】
ポンプ100は、ピストン5の球面座5aに回転自在に連結され球面座5aに摺接するシュー7と、シリンダブロック2の回転に伴ってシュー7が摺接する斜板8と、シリンダブロック2とケース本体3aの底部との間に設けられるバルブプレート9と、をさらに備える。
【0023】
シュー7は、各ピストン5の先端に形成される球面座5aを受容する受容部7aと、斜板8の摺接面8aに摺接する円形の平板部7bと、を有する。受容部7aの内面は球面状に形成され、受容した球面座5aの外面と摺接する。これにより、シュー7は球面座5aに対してあらゆる方向に角度変位可能である。
【0024】
斜板8は、ポンプ100の吐出量を可変とするため、カバー3bに傾転可能に支持される。
【0025】
バルブプレート9は、シリンダブロック2の基端面が摺接する円板部材であり、ケース本体3aの底部に固定される。バルブプレート9には、シリンダブロック2に形成された図示しない吸込通路と容積室6とを接続する吸込ポート(図示省略)と、シリンダブロック2に形成された図示しない吐出通路と容積室6とを接続する吐出ポート(図示省略)と、が形成される。
【0026】
また、ポンプ100は、
図1及び
図2に示すように、傾転角が小さくなる方向に斜板8を付勢する付勢機構としての第1付勢機構20と、傾転角が大きくなる方向に斜板8を付勢する第2付勢機構30と、第1付勢機構20に馬力制御圧(以下、「制御圧」と称する。)を供給するレギュレータ50と、をさらに備える。なお、
図2は、
図1のII-II線に沿う断面の一部を拡大して示した拡大断面図である。
【0027】
第1付勢機構20は、
図1に示すように、ケース本体3aに形成される第1ピストン収容孔21に摺動自在に挿入され斜板8に当接する大径ピストン22と、大径ピストン22によって第1ピストン収容孔21内に区画される制御圧室23と、を有する。
【0028】
制御圧室23には、レギュレータ50によって調整された制御圧が導かれる。つまり、第1付勢機構20の大径ピストン22は、レギュレータ50から供給される制御圧に応じて、斜板8の傾転角を変化させるように変位し、制御圧が高くなるほど傾転角が小さくなる方向に斜板8を付勢する。
【0029】
第2付勢機構30は、
図2に示すように、ケース本体3aに形成される第2ピストン収容孔31に摺動自在に挿入され斜板8に当接する小径ピストン32と、小径ピストン32によって第2ピストン収容孔31内に区画される圧力室33と、を有する。なお、
図2では省略されているが、小径ピストン32の端部のうち、圧力室33に臨む端部とは反対側の端部は、斜板8に当接している。
【0030】
圧力室33には、ケース本体3aに形成される吐出圧通路10を通じて、ポンプ100の吐出圧が常時導かれる。第2付勢機構30の小径ピストン32は、圧力室33に導かれた吐出圧を受けて、斜板8の傾転角を変化させるように変位し、吐出圧が高くなるほど傾転角が大きくなる方向に斜板8を付勢する。
【0031】
なお、大径ピストン22は、小径ピストン32よりも外径が大きく、制御圧室23に導かれた制御圧を受ける大径ピストン22の受圧面積は、圧力室33に導かれた吐出圧を受ける小径ピストン32の受圧面積よりも大きい。
【0032】
レギュレータ50は、主にポンプ100の吐出圧に応じて制御圧室23に導かれる制御圧を調整するものであり、ポンプ100の出力、すなわち、ポンプ100を駆動させるために必要な馬力を制御するために設けられる。
【0033】
レギュレータ50は、斜板8の傾きに追従して軸方向に変位するフィードバックピン40と、フィードバックピン40を斜板8に向けて付勢する付勢部材51と、ポンプ100の吐出圧及び付勢部材51の付勢力に応じて移動して制御圧を調整する制御スプール52と、制御スプール52を収容するスプール収容孔65が設けられ、ケース本体3aに形成される取付孔67に取り付けられるスリーブ60と、スリーブ60に形成されたスプール収容孔65の一端を封止するプラグ70と、一端面がプラグ70に当接するように設けられ他端側が制御スプール52内に挿入される円柱状の軸部材71と、を有する。
【0034】
フィードバックピン40は、棒状部材であり、ケース本体3aに軸方向に貫通して形成された貫通孔41に摺動自在に挿入される。フィードバックピン40は、一端が斜板8に当接するように付勢部材51により付勢される。
【0035】
付勢部材51は、外側スプリング51aと、外側スプリング51aよりも巻き径が小さく、外側スプリング51aの内側に設けられる内側スプリング51bと、を有する。外側スプリング51a及び内側スプリング51bは、それぞれコイルスプリングであり、フィードバックピン40の球面状に形成された端部に係合する第1ばね座72と、制御スプール52の端部に係合する第2ばね座73と、の間に介装される。
【0036】
外側スプリング51aの自然長(自由長)は、内側スプリング51bの自然長より長く設定されており、斜板8の傾転角が最大となる状態(
図1に示す状態)では、外側スプリング51aは、第1ばね座72と第2ばね座73との間において圧縮された状態となる一方、内側スプリング51bは、いずれかの端部がばね座(
図1では第1ばね座72)から離れて浮いた状態、すなわち、自然長状態となる。
【0037】
つまり、斜板8の傾転角が最大の状態から小さくなる際、初めのうちは外側スプリング51aのみが圧縮され、外側スプリング51aが内側スプリング51bの自然長よりも短い状態に圧縮されると、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの両方が圧縮される。これにより、フィードバックピン40を介して斜板8に作用する外側スプリング51a及び内側スプリング51bの弾性力は、斜板8の傾転角が小さくなるにつれて段階的に高まることになる。
【0038】
スリーブ60が取り付けられる取付孔67は、一端がケース3の内部に対して開口するようにケース本体3aに軸方向に貫通して形成された貫通孔であり、取付孔67の内周面には、
図2に示すように、制御圧室23に制御圧を導く第1通路としての制御圧通路11と、ポンプ100の吐出圧が導かれる第2通路としての吐出圧通路10と、外部から供給される信号圧が導かれる第3通路としての信号圧通路13と、がそれぞれ開口している。
【0039】
スリーブ60は、制御スプール52が挿入されるスプール収容孔65が軸方向に貫通して形成された筒状部材である。スプール収容孔65は、
図2に示すように、制御スプール52を摺動自在に支持する第1孔部65aと、第1孔部65aよりも内径が大きい第2孔部65bと、を有する。スプール収容孔65は、第2孔部65bにプラグ70が螺着されることによって封止される。
【0040】
プラグ70によって開口端が封止された第2孔部65bの内部には、スリーブ60と制御スプール52との間の隙間や制御スプール52と軸部材71との間の隙間から漏れ出た作動油を回収する回収室66が設けられる。また、この回収室66に回収された作動油をタンクへ戻すために、スリーブ60には回収通路62が形成される。回収通路62は、一端が回収室66において開口するようにスリーブ60の軸方向に沿って貫通して形成された複数の貫通孔であり、その他端は、ケース3の内部に対して開口している。
【0041】
スリーブ60の外周には、第1ポート60a、第2ポート60b、及び第3ポート60cが、それぞれ環状の溝として、ケース3の内部に臨む一方の端部側からこの順番で形成される。また、スリーブ60には、第1ポート60a、第2ポート60b、及び第3ポート60cにそれぞれ連通する第1連通孔61a、第2連通孔61b、及び第3連通孔61cが、径方向に貫通する貫通孔としてそれぞれ形成される。第1連通孔61a、第2連通孔61b、及び第3連通孔61cは、第1孔部65aの内周面においてそれぞれ開口している。
【0042】
スリーブ60が取付孔67に取り付けられた状態において、第1ポート60aは、制御圧室23に制御圧を導く制御圧通路11と連通し、第2ポート60bは、ポンプ100の吐出圧が常時導かれる吐出圧通路10と連通し、第3ポート60cは、信号圧通路13に連通する。なお、信号圧通路13に導かれる信号圧は、例えば、ポンプ100と共に動力源によって駆動される他のポンプから吐出された油圧であり、この信号圧を変化させると、後述のように、斜板8の傾転角が変化し、ポンプ100の吐出量が変更されることでポンプ100の駆動馬力特性を変化させることが可能である。
【0043】
制御スプール52は、
図2に示すように、スプール収容孔65の第1孔部65aにより摺動支持される本体部53と、本体部53の一端部に設けられ本体部53よりも外径が大きいフランジ部54と、フランジ部54とは反対側の端部に設けられ第2ばね座73に挿入される突出部55と、を有する。突出部55は、本体部53より外径が小さく形成され、本体部53と突出部55の外径差により生じる段差面55aには、第2ばね座73が当接する。
【0044】
本体部53の外周には、第1制御ポート56a、第2制御ポート56b、及び第3制御ポート56cが、それぞれ環状の溝として、突出部55側からこの順番で形成される。また、制御スプール52には、第1制御ポート56a、第2制御ポート56b、及び第3制御ポート56cにそれぞれ連通する第1制御通路57a、第2制御通路57b、及び第3制御通路57cが、径方向に貫通する貫通孔としてそれぞれ形成される。
【0045】
また、制御スプール52には、一端が突出部55の先端面において開口し、他端が第1制御通路57aに接続される軸方向通路58aが軸方向に沿って形成される。軸方向通路58aは、第2ばね座73に形成された接続通路73aとともに、第1制御通路57aをケース3の内部と連通させるために設けられる。換言すれば、第1制御通路57aは、軸方向通路58a及び接続通路73aを通じてケース3の内部と連通しており、第1制御通路57a内の圧力はタンク圧と同じ大きさとなっている。
【0046】
また、制御スプール52には、プラグ70側の端部において開口する第1挿入孔58bと、第1挿入孔58bに連続して設けられる第2挿入孔58cと、が軸方向に沿って同軸上に形成される。第1挿入孔58bは、軸方向において第3制御通路57cに至る長さを有し、第2挿入孔58cは、軸方向において第2制御通路57bに至る長さを有する。第1挿入孔58bの内径は、第2挿入孔58cの内径よりも大きく形成されており、第1挿入孔58bには、プラグ70に当接する軸部材71の基端側に形成された大径部71aが摺動自在に挿入され、第2挿入孔58cには、大径部71aよりも径が小さく軸部材71の先端側に形成された小径部71bが摺動自在に挿入される。なお、制御スプール52に挿入される軸部材71は、プラグ70と別部材で形成されているが、プラグ70と一体的に形成されていてもよい。
【0047】
図2に示すように、制御スプール52のフランジ部54がプラグ70に当接した状態において、第2挿入孔58cと、第2挿入孔58cに挿入される小径部71bの端面と、により画定される吐出圧油室59aには、第2制御通路57bが開口する。
【0048】
第2制御通路57bは、第2制御ポート56b、第2連通孔61b及び第2ポート60bを通じて吐出圧通路10と常時連通していることから、吐出圧油室59aには常時、ポンプ100の吐出圧が導かれる。第2制御通路57bを通じて吐出圧油室59a内に導かれた吐出圧は、吐出圧油室59aを拡張するように、すなわち、第2挿入孔58c内から小径部71bを押し出すように作用する。換言すれば、制御スプール52は、吐出圧油室59aに導かれる作動油の圧力により、軸方向においてプラグ70から離れる方向、すなわち、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮する方向に押圧される。
【0049】
また、
図2に示すように、制御スプール52のフランジ部54がプラグ70に当接した状態において、大径部71aと小径部71bとの外径差によって形成される段差面71cと、第1挿入孔58bと、小径部71bの外周面と、により画定される信号圧油室59bには、第3制御通路57cが開口している。
【0050】
第3制御通路57cは、第3制御ポート56c、第3連通孔61c及び第3ポート60cを通じて信号圧通路13と常時連通していることから、信号圧油室59bには常時、外部から供給される信号圧が導かれる。第3制御通路57cを通じて信号圧油室59b内に導かれた信号圧は、信号圧油室59bを拡張するように、すなわち、第1挿入孔58b内から大径部71aを押し出すように作用する。換言すれば、制御スプール52は、信号圧油室59bに導かれる作動油の圧力により、軸方向においてプラグ70から離れる方向、すなわち、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮する方向に押圧される。
【0051】
このように、制御スプール52は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bによる付勢力によって斜板8から離れる方向(
図2において左方向)に付勢される一方、吐出圧と信号圧とによって斜板8に近づく方向(
図2において右方向)に付勢される。つまり、制御スプール52は、スリーブ60に対して、外側スプリング51aと内側スプリング51bとからなる付勢部材51の付勢力と、吐出圧油室59aに導かれたポンプ100の吐出圧による付勢力と、信号圧油室59bに導かれた信号圧による付勢力と、が釣り合う位置へと移動することになる。
【0052】
具体的には、制御スプール52は、フランジ部54が第1孔部65aと第2孔部65bとの間に形成される段部65cに当接した第1ポジションと、フランジ部54がプラグ70に当接した第2ポジションと、の2つのポジションの間で移動する。なお。
図1及び
図2には、制御スプール52が第2ポジションにある状態が示されている。制御スプール52の位置は、
図1及び
図2に示す第2ポジションから、図中右方向へと制御スプール52が移動することによって、第1ポジションに切り換わる。
【0053】
第1ポジションでは、スリーブ60の第1連通孔61aと第2連通孔61bとが制御スプール52の第2制御ポート56bを通じて連通し、制御スプール52の第1制御通路57aと第1連通孔61aとの連通が遮断される。このため、第1ポジションでは、第1連通孔61aと連通する制御圧通路11を通じてポンプ100の吐出圧が第1付勢機構20の制御圧室23へと導かれることとなり、結果として、斜板8の傾転角が小さくなりポンプ100の吐出容量が減少する。
【0054】
一方、第2ポジションでは、第1連通孔61aと第1制御通路57aとが第1制御ポート56aを通じて連通し、第1連通孔61aと第2連通孔61bとの連通が遮断される。第1制御通路57aは、上述のように、軸方向通路58a及び接続通路73aを通じてケース3の内部と連通していることから、第2ポジションでは、制御圧室23に制御圧通路11を通じてタンク圧が導かれることとなり、結果として、斜板8の傾転角が大きくなりポンプ100の吐出容量が上昇する。
【0055】
なお、第1ポジションと第2ポジションとの間で制御スプール52の位置が切り換わる際には、スリーブ60の第1連通孔61aが、スリーブ60の第2連通孔61bと制御スプール52の第1制御通路57aとの両方に連通した状態となる。言い換えれば、レギュレータ50は、第1ポジションと第2ポジションとの間で制御スプール52の位置が切り換わる際に、第1連通孔61aが何れの通路とも連通しない状態となって、第1連通孔61a及び制御圧室23内に圧力が閉じ込められてしまうことがないように構成されている。
【0056】
次に、上記構成のレギュレータ50を備えたポンプ100の作動について説明する。
【0057】
ポンプ100は、レギュレータ50によって、ポンプ100の吐出圧と吐出流量の関係が略反比例となる定馬力特性、すなわち、吐出圧と吐出流量との積が略一定となる特性を生じるように制御される。
【0058】
ポンプ100の吐出圧は、例えば、ポンプ100の吐出圧で駆動する油圧シリンダの負荷が上昇するのに伴って上昇する。斜板8の傾転角が最大に保たれた状態から、ポンプ100の吐出圧が上昇すると、制御スプール52に作用するポンプ100の吐出圧による付勢力が外側スプリング51aによる付勢力を上回り、制御スプール52は、第2ポジションから第1ポジションに向かって移動する。
【0059】
制御スプール52が第1ポジションへと移動すると、上述のように、制御圧室23には制御圧通路11を通じて吐出圧が導かれるため、制御圧室23内の圧力が上昇する。制御圧室23内の圧力が上昇することにより、大径ピストン22は、第1ピストン収容孔21から押し出され、傾転角が小さくなる方向に斜板8を傾転させる。
【0060】
傾転角が小さくなる方向に斜板8が傾転すると、フィードバックピン40は、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮するように、斜板8に追従して
図1において左方向へ移動する。言い換えれば、傾転角が小さくなる方向に斜板8が傾転すると、フィードバックピン40は、制御スプール52を第2ポジションに向けて付勢する外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力が高まるように移動する。
【0061】
圧縮されることで外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力が高まり、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力により制御スプール52が押し戻されて第2ポジションへと移動すると、制御圧室23は制御圧通路11を通じてケース3の内部と連通することになる。このため、制御圧室23内の圧力は徐々に低下する。
【0062】
制御圧室23内の圧力が低下すると、大径ピストン22は、斜板8を介して作用する外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力により第1ピストン収容孔21内へと押し戻される。つまり、制御圧室23内の圧力が低下すると、斜板8は傾転角が大きくなる方向に傾転し、制御スプール52を付勢する外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力は小さくなる。外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力が小さくなることで、制御スプール52は、ポンプ100の吐出圧によって、再び第1ポジションへと移動し、斜板8は再び傾転角が小さくなる方向に傾転することになる。
【0063】
制御スプール52は、このような動きを繰り返し、制御スプール52に作用するポンプ100の吐出圧による付勢力と、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力と、がバランスする位置で留まる。また、斜板8は、大径ピストン22の付勢力と、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力と、がバランスする傾転角で留まる。
【0064】
制御圧室23内の圧力は、ポンプ100の吐出圧が高くなるほど高くなることから、斜板8の傾転角も、ポンプ100の吐出圧が高くなるほど小さくなる。これにより、ポンプ100の吐出容量は、ポンプ100の吐出圧が高くなるにつれて減少することになる。
【0065】
一方、ポンプ100の吐出圧で駆動する油圧シリンダの負荷が低下すると、ポンプ100の吐出圧もこれに伴って低下する。ポンプ100の吐出圧が低下すると、制御スプール52に作用するポンプ100の吐出圧による付勢力が外側スプリング51a及び内側スプリング51bによる付勢力を下回り、制御スプール52は、第1ポジションから第2ポジションに向かって移動する。
【0066】
制御スプール52が第2ポジションへと移動すると、上述のように、制御圧室23には制御圧通路11を通じてタンク圧が導かれるため、制御圧室23内の圧力が低下する。制御圧室23内の圧力が低下すると、大径ピストン22は、斜板8を介して作用する外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力により第1ピストン収容孔21内へと押し戻される。この結果、斜板8は、傾転角が大きくなる方向へと傾転する。
【0067】
傾転角が大きくなる方向に斜板8が傾転すると、フィードバックピン40は、外側スプリング51a及び内側スプリング51b、特に外側スプリング51aによって付勢され、斜板8に追従して
図1において右方向へと移動する。言い換えれば、傾転角が大きくなる方向に斜板8が傾転すると、フィードバックピン40は、制御スプール52を第2ポジションに向けて付勢する外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力を低下させるように移動する。
【0068】
伸長することで外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力が低下し、制御スプール52に作用する外側スプリング51a及び内側スプリング51bによる付勢力がポンプ100の吐出圧による付勢力を下回ると、制御スプール52は、第2ポジションから第1ポジションに向かって移動する。制御スプール52が外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮し第1ポジションへと移動すると、制御圧室23には制御圧通路11を通じてポンプ100の吐出圧が導かれるため、制御圧室23内の圧力は徐々に上昇する。但し、ポンプ100の吐出圧が低下していることから、制御圧室23内の圧力の上昇度合は、ポンプ100の吐出圧が高い場合と比べて小さくなる。
【0069】
制御圧室23内の圧力が上昇すると、大径ピストン22は、第1ピストン収容孔21から押し出され、傾転角が小さくなる方向に斜板8を傾転させる。このように傾転角が小さくなる方向に斜板8が傾転すると、制御スプール52を付勢する外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力は大きくなる。外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力が大きくなることで、制御スプール52は、再び第2ポジションへと移動し、斜板8は再び傾転角が大きくなる方向に傾転することになる。
【0070】
制御スプール52は、このような動きを繰り返し、制御スプール52に作用するポンプ100の吐出圧による付勢力と、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力と、がバランスする位置で留まる。また、斜板8は、大径ピストン22の付勢力と、外側スプリング51a及び内側スプリング51bの付勢力と、がバランスする傾転角で留まる。
【0071】
制御圧室23内の圧力は、ポンプ100の吐出圧が低くなるほど低くなることから、斜板8の傾転角は、ポンプ100の吐出圧が低くなるほど大きくなる。これにより、ポンプ100の吐出容量は、ポンプ100の吐出圧が低くなるにつれて増大することになる。
【0072】
以上のように、ポンプ100の吐出圧が上昇することによりポンプ100の吐出容量が減少し、ポンプ100の吐出圧が低下することによりポンプ100の吐出容量が増加するように、つまり、ポンプ100の吐出圧と吐出容量との関係が略反比例となるように、ポンプ100は、レギュレータ50によって制御される。
【0073】
このような定馬力制御に加えて、ポンプ100を駆動するエンジン(駆動源)によってエアコンや発電機といった補機を駆動する場合、エンジンが過負荷により停止してしまうことを避けるために、ポンプ100の駆動馬力を低減させる減馬力制御が行われる。
【0074】
次にレギュレータ50によって行われる減馬力制御について説明する。
【0075】
エンジンにより補機を駆動する際には、信号圧通路13に外部から信号圧が供給される。具体的には、信号圧供給源となる図示しない信号圧生成ポンプの吐出圧が図示しない信号圧制御弁を通じて信号圧通路13に信号圧として導かれる。信号圧通路13の圧力は、この信号圧制御弁によって補機の駆動状態に応じて制御され、補機がエンジンにより駆動されている間は所定の大きさの信号圧となるように、補機が停止している間はタンク圧と同等となるように制御される。
【0076】
補機が駆動され、信号圧制御弁を通じて信号圧通路13に所定圧の信号圧が供給されると、供給された信号圧は、上述のように、第3連通孔61c、第3制御ポート56c及び第3制御通路57cを通じて信号圧油室59bに導かれる。そして、信号圧油室59bに導かれた圧力は、吐出圧油室59aに導かれるポンプ100の吐出圧と同様に、制御スプール52を、軸方向においてプラグ70から離れる方向、すなわち、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮する方向へと押圧する付勢力となる。
【0077】
つまり、補機が駆動している間、制御スプール52には、吐出圧油室59aに導かれるポンプ100の吐出圧による付勢力に加えて、信号圧油室59bに導かれる信号圧による付勢力が制御スプール52を第1ポジションへと移動させる方向に作用することになる。このため、制御スプール52は、ポンプ100の吐出圧が所定の大きさだけ上昇した場合と同じように作動する。
【0078】
したがって、補機が駆動している間は、補機が停止しているとき、すなわち、信号圧油室59b内の圧力がタンク圧と同等となっているときよりもポンプ100の吐出容量が低下する。このように補機が駆動しているときのポンプ100の吐出容量を低下させることでポンプ100の駆動馬力が低下することになるため、結果として、補機を駆動させるための馬力をエンジンに確保させることが可能となる。
【0079】
ここで、信号圧が導かれる第3ポート60cが、ポンプ100の吐出圧が常時導かれる第2ポート60bやポンプ100の吐出圧が適時導かれる第1ポート60aに隣接して設けられていると、第1ポート60aと制御圧通路11との接続部である第1接続部81や第2ポート60bと吐出圧通路10との接続部である第2接続部82から漏れ出した比較的高圧の作動油が第3ポート60cと信号圧通路13との接続部である第3接続部83に至り、第3ポート60cへと流れ込むおそれがある。
【0080】
このように第3ポート60cに比較的高圧の作動油が流入すると、信号圧油室59b内の圧力が比較的高い状態となることから、第3ポート60cに信号圧が供給されていないとき、すなわち、補機が駆動していないときであっても、第3ポート60cに信号圧が供給された状態、すなわち、補機が駆動している状態と同じ状態になってしまう。このため、ポンプ100には制御圧通路11を通じてレギュレータ50から吐出容量を低下させるような意図しない制御圧が継続的または断続的に供給されることとなる。この結果、ポンプ100の吐出容量が意図せず低下したり、変動したりすることとなり、作動油が供給される油圧機器の作動が不安定となってしまうおそれがある。
【0081】
このような状況を回避するために、本実施形態では、第1ポート60aと制御圧通路11との第1接続部81及び第2ポート60bと吐出圧通路10との第2接続部82と、第3ポート60cと信号圧通路13との第3接続部83と、の間においてタンクに連通するドレン通路63を開口させることによって、第1接続部81や第2接続部82から漏れ出た比較的高圧の作動油が第3接続部83に至ることを抑制している。
【0082】
以下、
図2及び
図3を参照し、ドレン通路63について説明する。なお、
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面を拡大して示した断面図である。
【0083】
ドレン通路63は、スリーブ60の外周に環状の溝として形成される第4ポート60dと、スリーブ60を径方向に貫通して形成され第4ポート60dに連通する貫通孔としての第4連通孔61dと、制御スプール52の本体部53の外周に環状の溝として形成され連通孔61dと常時連通する第4制御ポート56dと、により構成される。
【0084】
図2に示すように、第4ポート60dは、第2ポート60bと第3ポート60cとの間に配置され、第4制御ポート56dは、第2制御ポート56bと第3制御ポート56cとの間に配置される。このようにドレン通路63は、スリーブ60の外周面において一端が開口し、スリーブ60と制御スプール52との摺動面において他端が開口している。
【0085】
そして、第4ポート60dと第4制御ポート56dとを連通する第4連通孔61dは、
図3に示すように、スリーブ60を軸方向に貫通して形成される回収通路62に接続されている。回収通路62は、
図3に示すように、スリーブ60を径方向に貫通して形成される第1連通孔61aや第2連通孔61b、第3連通孔61cと連通してしまうことを避けるために、これらの連通孔61a,61b,61cと周方向において、ある程度の間隔をあけて設けられている。
【0086】
第4連通孔61dを形成する方向については、スリーブ60の径方向に限定されず、第4ポート60dと第4制御ポート56dとを連通し、且つ、回収通路62に接続されていればどのように形成されていてもよい。なお、第4連通孔61d及び回収通路62は、各連通孔61a,61b,61cとスリーブ60の同じ断面上に形成されるものではないが、
図2では、第4連通孔61d及び回収通路62と、各連通孔61a,61b,61cと、の位置関係を理解しやすいように、第4連通孔61d及び回収通路62を破線で図示している。
【0087】
回収通路62は、上述のように、ケース3の内部に対して開口していることから、ドレン通路63は、回収通路62を通じて、タンクと連通するケース3の内部と連通しており、ドレン通路63の圧力は、タンク圧と同等の圧力となっている。
【0088】
したがって、第1ポート60aと制御圧通路11との第1接続部81及び第2ポート60bと吐出圧通路10との第2接続部82と、第3ポート60cと信号圧通路13との第3接続部83と、の間において、回収通路62と接続するドレン通路63を開口させることによって、第1接続部81や第2接続部82から漏れ出た比較的高圧の作動油は、第3接続部83に至ることなく、ドレン通路63及び回収通路62を通じてタンクへと導かれることになる。
【0089】
このように第1接続部81や第2接続部82から漏れ出た比較的高圧の作動油が第3ポート60cに流入しないようにすることで、外部からレギュレータ50へと信号圧が供給されていないときに、信号圧が供給されているかのようにレギュレータ50が作動してしまうことが避けられ、結果として、レギュレータ50から意図しない制御圧がポンプ100へと継続的または断続的に供給されることを防止することができる。また、レギュレータ50からポンプ100へと供給される制御圧が安定することで、ポンプ100の吐出容量及び駆動馬力が安定し、ポンプ100から作動油が供給される油圧機器の作動やポンプ100を駆動するエンジン等の駆動源の作動も安定することになる。
【0090】
また、ドレン通路63は、スリーブ60を径方向に貫通して形成されており、スリーブ60と制御スプール52との摺動面においても開口している。このため、第2制御ポート56bと第1連通孔61aとの接続部や第2制御ポート56bと第2連通孔61bとの接続部のようにスリーブ60と制御スプール52との摺動面を介して接続する部分から比較的高圧の作動油が漏れ出たとしても、漏れ出た作動油は、第3制御ポート56cと第3連通孔61cとの接続部に至ることなく、ドレン通路63(第4制御ポート56d,第4連通孔61d)及び回収通路62を通じてタンクへと導かれる。
【0091】
このようにドレン通路63をスリーブ60の第1孔部65aの内周面においても開口させておくことによって、スリーブ60とケース本体3aとの間の隙間だけではなく、スリーブ60と制御スプール52との間の隙間を通じて、信号圧油室59b内や第3連通孔61c、第3制御ポート56cに比較的高圧の作動油が流入してしまうことが抑制される。この結果、レギュレータ50から意図しない制御圧がポンプ100へと継続的または断続的に供給されることを、より確実に防止することができる。
【0092】
また、ドレン通路63は、回収室66とケース3の内部とを連通するためにスリーブ60に設けられた回収通路62を通じてタンクと連通している。このように、回収通路62のようにスリーブ60に予め形成された通路を利用し、ドレン通路63をタンクと連通させることによって、ドレン通路63とタンクとを連通する連通路を別途設ける必要がなくなる。このため、ドレン通路63を追加することによる製造コストの増加を抑えることができる。
【0093】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0094】
上記構成のレギュレータ50では、第1ポート60aと制御圧通路11との第1接続部81及び第2ポート60bと吐出圧通路10との第2接続部82と、第3ポート60cと信号圧通路13との第3接続部83と、の間において、タンクに連通するドレン通路63が開口している。このため、第1接続部81または第2接続部82から比較的高い圧力の作動油が漏れ出たとしても、漏れ出た作動油は、第3接続部83に至ることなくドレン通路63に流れ込むことになる。
【0095】
これにより外部からレギュレータ50へと信号圧が供給されていないときに、信号圧が供給されているかのようにレギュレータ50が作動してしまうことが回避される。この結果、レギュレータ50からポンプ100へと意図しない制御圧が継続的または断続的に供給されることを防止することができる。また、レギュレータ50からポンプ100へと供給される制御圧が安定することで、ポンプ100の吐出容量及び駆動馬力が安定し、結果として、作動油が供給される油圧機器の作動やポンプ100を駆動するエンジン等の駆動源の作動を安定させることができる。
【0096】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0097】
上記実施形態において、レギュレータ50から制御圧が供給されるポンプ100は、斜板式のピストンポンプである。ポンプ100の形式は、これに限定されず、容量を変化させる機構に対してレギュレータ50から制御圧を供給することによって、容量が変更されるポンプであればどのような形式であってもよく、例えば可変容量式のベーンポンプであってもよい。
【0098】
また、上記実施形態において、ドレン通路63はスリーブ60内に設けられている。これに代えてドレン通路はケース本体3aに設けられていてもよい。この場合、ドレン通路は、吐出圧通路10と信号圧通路13との間において、取付孔67の内周面において開口するように形成される。この場合も上記実施形態と同様に第1接続部81または第2接続部82から比較的高い圧力の作動油が漏れ出たとしても、漏れ出た作動油は、第3接続部83に至ることなくケース本体3aに設けられたドレン通路に流れ込むことになる。なお、漏れ出た作動油をドレン通路へと導くために、ドレン通路と連通する環状溝をスリーブ60の外周面または取付孔67の内周面に設けることが好ましい。
【0099】
また、上記実施形態において、ドレン通路63は、スリーブ60内に形成された回収通路62に接続されている。これに代えて、ドレン通路63とタンクまたはケース3の内部とを連通する連通路を、例えば、ケース本体3aに別途設けてもよい。この場合、この連通路は、ケース本体3aに形成される取付孔67の内周面において開口し、第4ポート60dと連通するように形成される。
【0100】
また、上記実施形態において、信号圧通路13に供給される信号圧は、所定圧の信号圧とタンク圧との何れかである。これに代えて、信号圧は、所定圧の信号圧とタンク圧との間で段階的または無段階で大きさが変化する圧力であってもよい。この場合、ポンプ100の吐出容量を任意の大きさで変化させるとともにポンプ100の駆動馬力を任意の大きさに変化させることが可能となる。このようにポンプ100の駆動負荷を適宜変更できるようにすることで、例えば、ポンプ100を駆動するエンジンを効率の良い回転及び負荷で運転させることが可能となる。
【0101】
また、上記実施形態において、レギュレータ50は、減馬力制御を行うものであり、信号圧は、エンジンにより補機が駆動されているときのみに供給されている。これに代えて、例えば、通常時には、信号圧通路13に所定圧の信号圧を供給してポンプ100の駆動動力を低減し、エンジンの出力に余裕がある場合や油圧機器において要求される作動油の流量が増大した場合に、信号圧通路13をタンクに連通させることによって、所定の条件が揃ったときに通常時よりもポンプ100の吐出容量を増大させてポンプ100の駆動動力を増加させてもよい。このように、レギュレータ50は、減馬力制御ではなく、増馬力制御を行うために用いられてもよい。
【0102】
また、上記実施形態において、レギュレータ50に供給される信号圧は、ポンプ100の吐出圧と同様に、制御スプール52を、軸方向においてプラグ70から離れる方向、すなわち、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを圧縮する方向へと押圧する付勢力となっている。これに代えて、
図4に示す変形例のように、レギュレータ150に供給される信号圧は、ポンプ100の吐出圧とは反対の方向に制御スプール52を押圧する付勢力となっていてもよい。
【0103】
図4に示す変形例において、スリーブ60は、第1孔部65aと第2孔部65bとの間に設けられ第1孔部65aよりも内径が大きく第2孔部65bよりも内径が小さい第3孔部65dを有し、制御スプール52は、本体部53とフランジ部54との間に設けられ第3孔部65dにより摺動支持される第2本体部53aを有する。
【0104】
そして、この変形例において、信号圧が導かれる信号圧油室59cは、第1孔部65aと、第3孔部65dと、第1孔部65aと第3孔部65dとを接続する接続面と、第3制御ポート56cと、第3制御ポート56cと第2本体部53aとの外径差によって形成される第1段差面53bと、第3制御ポート56cと本体部53との外径差によって形成される第2段差面53cと、により画定される。
【0105】
このように画定された信号圧油室59c内に信号圧通路13及び第3連通孔61cを通じて導かれた信号圧は、軸方向において対向する第1段差面53bと第2段差面53cとに作用することになる。ここで、第2本体部53aの外径は本体部53の外径よりも大きいことから、第3制御ポート56cと第2本体部53aとの外径差によって形成される第1段差面53bの面積は、第3制御ポート56cと本体部53との外径差によって形成される第2段差面53cの面積よりも当然に大きくなる。
【0106】
このように第1段差面53bの面積と第2段差面53cの面積とに差があることから、信号圧油室59c内に導かれた信号圧は、面積が大きい第1段差面53bを押圧するように、すなわち、第3孔部65d内から第2本体部53aを押し出すように作用する。換言すれば、制御スプール52は、信号圧油室59cに導かれる作動油の圧力により、軸方向においてプラグ70へと近づく方向、すなわち、外側スプリング51a及び内側スプリング51bを伸長させる方向に押圧される。
【0107】
このように
図4に示す変形例では、信号圧油室59cに導かれる信号圧は、上記実施形態と異なり、ポンプ100の吐出圧とは反対の方向に制御スプール52を押圧する付勢力となっている。このため、信号圧油室59cに所定圧の信号圧が導かれると、制御スプール52は、ポンプ100の吐出圧が所定の大きさだけ低下した場合と同じように作動する。つまり、信号圧油室59cに所定圧の信号圧が導かれると、ポンプ100の吐出容量が増加し、ポンプ100の駆動馬力が増大することになる。
【0108】
したがって、この変形例において上記実施形態と同様に、レギュレータ150によって減馬力制御を行う場合、信号圧通路13の圧力は、補機がエンジンにより駆動されている間はタンク圧と同等となるように、補機が停止している間は所定の大きさの信号圧となるように信号圧制御弁によって制御される。
【0109】
これにより補機が駆動している間は、補機が停止しているときよりもポンプ100の吐出容量が低下する。このように補機が駆動しているときのポンプ100の吐出容量を低下させることでポンプ100の駆動馬力が低下することになるため、結果として、補機を駆動させるための馬力をエンジンに確保させることが可能となる。
【0110】
また、この変形例においても、第1接続部81及び第2接続部82と、第3接続部83と、の間においてドレン通路63が開口しており、第1接続部81や第2接続部82から漏れ出た比較的高圧の作動油は、第3ポート60cに流入することが抑制されるため、レギュレータ150からポンプ100へ吐出容量を増加させるような意図しない制御圧が継続的または断続的に供給されることを防止することができる。この結果、上記実施形態と同様に、ポンプ100の吐出容量が安定し、作動油が供給される油圧機器の作動も安定する。
【0111】
なお、この変形例では、信号圧制御弁の故障等により信号圧通路13に所定の大きさの信号圧が供給されず、信号圧通路13の圧力がタンク圧と同等となったとしても、ポンプ100の駆動馬力は低下することから、故障等により信号圧が供給されない場合であってもエンジンの負荷が過負荷となってしまうことを回避することが可能である。
【0112】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0113】
ポンプ100へ制御圧を供給するレギュレータ50,150は、制御圧をポンプ100へ導く制御圧通路11と、ポンプ100の吐出圧が導かれる吐出圧通路10と、ポンプ100の馬力を変更する吐出圧より低い信号圧が導かれる信号圧通路13と、制御圧通路11、吐出圧通路10及び信号圧通路13が開口する取付孔67と、を有するケース本体3aと、取付孔67に取り付けられ、制御圧通路11と連通する第1ポート60aと、吐出圧通路10と連通する第2ポート60bと、信号圧通路13と連通する第3ポート60cと、を有するスリーブ60と、スリーブ60に摺動自在に収容され、第2ポート60bを通じて供給される吐出圧と第3ポート60cを通じて供給される信号圧とに応じて軸方向に変位し、第1ポート60aと第2ポート60bとの連通を許容または遮断する制御スプール52と、を備え、ケース本体3a及びスリーブ60の何れかには、作動油が貯留されるタンクに連通するドレン通路63が設けられ、ドレン通路63は、吐出圧通路10と第2ポート60bとが接続される第2接続部82と、信号圧通路13と第3ポート60cとが接続される第3接続部83と、の間において開口する。
【0114】
この構成では、第2ポート60bと吐出圧通路10との第2接続部82と、第3ポート60cと信号圧通路13との第3接続部83と、の間において、タンクに連通するドレン通路63が開口している。このため、第2接続部82から比較的高い圧力の作動油が漏れ出たとしても、漏れ出た作動油は、第3接続部83に至ることなくドレン通路63に流れ込むことになる。これにより外部からレギュレータ50,150へと信号圧が供給されていないときに、信号圧が供給されているかのようにレギュレータ50,150が作動してしまうことが回避される。この結果、レギュレータ50,150からポンプ100へと意図しない制御圧が継続的または断続的に供給されることを防止することができる。また、レギュレータ50,150からポンプ100へと供給される制御圧が安定することで、ポンプ100の吐出容量及び駆動馬力が安定し、結果として、作動油が供給される油圧機器の作動やポンプ100を駆動するエンジン等の駆動源の作動を安定させることができる。
【0115】
また、ドレン通路63は、スリーブ60の外周面において一端が開口し、スリーブ60と制御スプール52との摺動面において他端が開口する。
【0116】
この構成では、ドレン通路63は、スリーブ60の外周面だけではなく、スリーブ60と制御スプール52との摺動面においても開口している。これにより、スリーブ60とケース本体3aとの間の隙間だけではなく、スリーブ60と制御スプール52との間の隙間を通じて、第3ポート60cに比較的高圧の作動油が流入してしまうことが抑制される。この結果、レギュレータ50,150からポンプ100へと意図しない制御圧が継続的または断続的に供給されることを、より確実に防止することができる。
【0117】
また、スリーブ60には、制御スプール52とスリーブ60との間の隙間を通じて漏れ出た作動油を回収するための回収室66と、回収室66に回収された作動油をタンクへと回収する回収通路62と、が設けられ、ドレン通路63は、回収通路62に接続される。
【0118】
この構成では、ドレン通路63は、制御スプール52とスリーブ60との間の隙間を通じて漏れ出た作動油を回収する回収通路62に接続される。このように、回収通路62のようにスリーブ60に予め形成された通路を利用し、ドレン通路63をタンクと連通させることによって、ドレン通路63とタンクとを連通する連通路を別途設ける必要がなくなる。このため、ドレン通路63を設けることによる製造コストの増加を抑えることができる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0120】
100・・・斜板式ポンプ(ポンプ)、50,150・・・ポンプ制御圧レギュレータ(レギュレータ)、1・・・シャフト(駆動軸)、2・・・シリンダブロック、2b・・・シリンダ、3・・・ケース、3a・・・ケース本体(ハウジング)、5・・・ピストン、6・・・容積室、8・・・斜板、10・・・吐出圧通路(第2通路)、11・・・制御圧通路(第1通路)、13・・・信号圧通路(第3通路)、20・・・第1付勢機構(付勢機構)、52・・・制御スプール、60・・・スリーブ、60a・・・第1ポート、60b・・・第2ポート、60c・・・第3ポート、60d・・・第4ポート、62・・・回収通路、63・・・ドレン通路、65・・・スプール収容孔、66・・・回収室、67・・・取付孔、81・・・第1接続部、82・・・第2接続部、83・・・第3接続部