(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20240215BHJP
【FI】
G01N23/046
(21)【出願番号】P 2020075927
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】595039014
【氏名又は名称】株式会社サキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140800
【氏名又は名称】保坂 丈世
(74)【代理人】
【識別番号】100156281
【氏名又は名称】岩崎 敬
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】北畠 惇史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友一郎
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-061257(JP,A)
【文献】特開2006-333898(JP,A)
【文献】特開2009-128056(JP,A)
【文献】米国特許第09025855(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01T 1/00-7/12
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線源と、
被検査体を保持する保持部と、
前記被検査体を透過した前記線源からの放射線を検出して前記被検査体の画像を取得する検出器と、
前記線源と前記保持部及び前記検出器との相対位置を変化させる駆動部と、
前記保持部及び前記検出器の位置に関する情報を検出する位置検出部と、
制御部と、を有し、
前記駆動部により前記線源と前記保持部及び前記検出器との相対位置を変化させている状態で
の複数ある撮像タイミングのそれぞれにおいて、
前記制御部が前記検出器に前記画像の取得を開始させる
撮像開始信号を送信するステップと、
前記検出器が
前記撮像開始信号を受信して前記画像の取得を開始
するとともに、前記制御部に撮像を開始したことを示す応答信号を送信するステップと、
前記制御部が前記応答信号を受信して前記保持部及び前記検出器の位置に関する情報を前記位置検出部から取得するステップと、
前記制御部が前記検出器で取得された前記画像と前記位置に関する情報とを関連付けて記憶するステップと、
を実行する検査装置。
【請求項2】
線源と、
被検査体を保持する保持部と、
前記被検査体を透過した前記線源からの放射線を検出して前記被検査体の画像を取得する検出器と、
前記線源と前記保持部及び前記検出器との相対位置を変化させる駆動部と、
前記保持部及び前記検出器の位置に関する情報を検出する位置検出部と、
制御部と、を有し、
前記駆動部により前記線源と前記保持部及び前記検出器との相対位置を変化させている状態で
の複数ある撮像タイミングのそれぞれにおいて、
前記制御部が前記検出器に前記画像の取得を開始させる
撮像開始信号を送信するステップと、
前記検出器が
前記撮像開始信号を受信して前記画像の取得を開始
するとともに、前記制御部に撮像を開始したことを示す応答信号を送信するステップと、
前記制御部が前記応答信号を受信して前記保持部及び前記検出器の位置に関する情報を前記位置検出部から取得するステップと、
前記制御部が前記検出器で取得された前記画像と前記位置に関する情報とを関連付けて記憶するステップと、
を実行し、
前記検出器は、前記画像を取得している期間の少なくとも一部の所定の期間において、前記線源から前記放射線を放射させる
検査装置。
【請求項3】
前記応答信号を送信するステップの後に、
前記検出器が前記線源に露光信号を送信し、前記露光信号を受信した前記線源が前記放射線を放射する
請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記検出器は、ローリングシャッター方式の検出器であって、
前記所定の期間は、全ての走査ラインが検出された情報を取得している期間である
請求項2または3に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面や裏面のはんだ形状を計測する検査装置として、トモシンセシス方式のX線検査装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような検査装置では、線源(放射線発生器)と被検査体及び検出器との相対位置を変化させて複数の透過画像を撮像し、これらの透過画像から再構成画像を生成するように構成されている。このような検査装置においては、撮像毎に被検査体及び検出器を停止させて透過画像を取得することが一般的であったが、移動時間や静止時間が無駄となるという課題や、加減速時に振動が発生するという課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、線源と被検査体及び検出器との相対位置を変化させながら透過画像を撮像することが可能な検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る検査装置は、線源と、被検査体を保持する保持部と、前記被検査体を透過した前記線源からの放射線を検出して前記被検査体の画像を取得する検出器と、前記線源と前記保持部及び前記検出器との相対位置を変化させる駆動部と、前記保持部及び前記検出器の位置に関する情報を検出する位置検出部と、制御部と、を有し、前記駆動部により前記線源と前記保持部及び前記検出器との相対位置を変化させている状態での複数ある撮像タイミングのそれぞれにおいて、前記制御部が前記検出器に前記画像の取得を開始させる撮像開始信号を送信するステップと、前記検出器が前記撮像開始信号を受信して前記画像の取得を開始するとともに、前記制御部に撮像を開始したことを示す応答信号を送信するステップと、前記制御部が前記応答信号を受信して前記保持部及び前記検出器の位置に関する情報を前記位置検出部から取得するステップと、前記制御部が前記検出器で取得された前記画像と前記位置に関する情報とを関連付けて記憶するステップと、を実行する。
【0008】
また、本発明に係る検査装置は、線源と、被検査体を保持する保持部と、前記被検査体を透過した前記線源からの放射線を検出して前記被検査体の画像を取得する検出器と、前記線源と前記保持部及び前記検出器との相対位置を変化させる駆動部と、前記保持部及び前記検出器の位置に関する情報を検出する位置検出部と、制御部と、を有し、前記駆動部により前記線源と前記保持部及び前記検出器との相対位置を変化させている状態での複数ある撮像タイミングのそれぞれにおいて、前記制御部が前記検出器に前記画像の取得を開始させる撮像開始信号を送信するステップと、前記検出器が前記撮像開始信号を受信して前記画像の取得を開始するとともに、前記制御部に撮像を開始したことを示す応答信号を送信するステップと、前記制御部が前記応答信号を受信して前記保持部及び前記検出器の位置に関する情報を前記位置検出部から取得するステップと、前記制御部が前記検出器で取得された前記画像と前記位置に関する情報とを関連付けて記憶するステップと、を実行し、前記検出器は、前記画像を取得している期間の少なくとも一部の所定の期間において、前記線源から前記放射線を放射させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る検査装置によれば、線源と被検査体及び検出器との相対位置を変化させながら透過画像を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る検査装置の構成を説明するための説明図である。
【
図2】上記検査装置の制御部が処理する各機能ブロックを説明するための説明図である。
【
図3】検査の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図4】透過画像の撮像及び再構成画像の生成処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図5】基板保持部及び検出器の移動と、放射線発生器からのX線の放射及び検出器による撮像のタイミングを説明するための説明図であって、(a)はタイミングチャートを示し、(b)は露光のタイミングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る検査装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)等の処理装置で構成される制御部10、モニタ12、及び、撮像部32を有して構成されている。また、撮像部32は、更に、線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、検出器駆動部20、放射線発生器22、基板保持部24、及び、検出器26を有している。
【0012】
放射線発生器22は、X線等の放射線を発生させる装置(線源)であり、例えば加速させた電子をタングステンやダイアモンド等のターゲットに衝突させることで放射線を発生するものである。本実施形態における放射線は、X線の場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、放射線は、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、紫外線、可視光、赤外線でもよい。また、放射線は、マイクロ波やテラヘルツ波でもよい。
【0013】
基板保持部24は、被検査体である基板を保持する。基板保持部24に保持された基板に放射線発生器22で発生させた放射線を照射し、基板を透過した放射線を検出器26で画像として撮像する。以下、検出器26で撮像された基板の放射線透過画像を「透過画像」と呼ぶ。なお、後述するように、本実施形態においては、基板を保持した基板保持部24と検出器26とを放射線発生器22に対して相対移動させて複数の透過画像を取得して、再構成画像を生成する。
【0014】
検出器26で撮像された透過画像は、制御部10に送られ、例えば、フィルター補正逆投影法(Filtered-Backprojection法(FBP法))等の既知の技術を用いて、接合部分のはんだの立体形状を含む画像に再構成される。そして、再構成された画像や透過画像は、制御部10内のストレージや、図示しない外部のストレージに記憶される。以下、透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を含む3次元画像に再構成された画像を「再構成画像」と呼ぶ。また、再構成画像から任意の断面を切り出した画像を「断面画像」と呼ぶ。このような再構成画像及び断面画像はモニタ12に出力される。なお、モニタ12には再構成画像や断面画像のみならず、後述するはんだの接合状態の検査結果等も表示される。また、本実施形態における再構成画像は、上述したように、検出器26で撮像された平面画像から再構成されるため「プラナーCT」とも呼ぶ。
【0015】
線質変更部14は、放射線発生器22で発生される放射線の線質を変更する。放射線の線質は、ターゲットに衝突させる電子を加速するために印加する電圧(以下「管電圧」と呼ぶ)や、電子の数を決定する電流(以下「管電流」と呼ぶ)によって定まる。線質変更部14は、これら管電圧と管電流とを制御する装置である。この線質変更部14は変圧器や整流器等、既知の技術を用いて実現できる。
【0016】
ここで、放射線の線質は、放射線の輝度と硬さ(放射線のスペクトル分布)とで定まる。管電流を大きくすればターゲットに衝突する電子の数が増え、発生する放射線の光子の数も増える。その結果、放射線の輝度が大きくなる。例えば、コンデンサ等の部品の中には他の部品と比較して厚みがあるものもあり、これらの部品の透過画像を撮像するには輝度の大きな放射線を照射する必要がある。このような場合に管電流を調整することで放射線の輝度を調整する。また、管電圧を高くすると、ターゲットに衝突する電子のエネルギーが大きくなり、発生する放射線のエネルギー(スペクトル)が大きくなる。一般に、放射線のエネルギーが大きいほど物質の貫通力が大きくなり、物質に吸収されにくくなる。そのような放射線を用いて撮像した透過画像はコントラストが低くなる。このため、管電圧は透過画像のコントラストを調整するのに利用できる。
【0017】
放射線発生器駆動部16は、図示しないモータ等の駆動機構を有しており、放射線発生器22をその焦点を通る軸(この軸の方向を「Z軸方向」とする)に沿って上下に移動させることができる。これにより放射線発生器22と基板保持部24に保持される被検査体(基板)との距離を変えて照射野を変更し、検出器26で撮像される透過画像の拡大率を変更することが可能となる。なお、放射線発生器22のZ軸方向の位置は、発生器位置検出部23により検出され、制御部10に出力される。
【0018】
検出器駆動部20も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、検出器回転軌道30に沿って検出器26を回転移動させる。また、基板保持部駆動部18も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、基板回転軌道28が設けられた平面上を、基板保持部24を平行移動させる。また、基板保持部24は、検出器26の回転移動と連動して、基板回転軌道28上を回転移動する構成となっている。これにより、基板保持部24が保持する基板と放射線発生器22との相対的な位置関係を変更させながら、投射方向及び投射角度が異なる複数の透過画像を撮像することが可能となる。
【0019】
ここで、基板回転軌道28と検出器回転軌道30との回転半径は固定ではなく、自由に変更できる構成となっている。これにより、基板に配置される部品に照射する放射線の照射角度を任意に変更することが可能となる。なお、基板回転軌道28及び検出器回転軌道30の軌道面は、上述したZ軸方向と直交しており、この軌道面において直交する方向をX軸方向及びY軸方向とすると、基板保持部24のX軸方向及びY軸方向の位置は、基板位置検出部29で検出されて制御部10に出力され、検出器26のX軸方向及びY軸方向の位置は、検出器位置検出部31で検出されて制御部10に出力される。
【0020】
制御部10は、上述した検査装置1の全動作を制御する。以下、制御部10の諸機能について
図2を用いて説明する。なお、図示されていないが、制御部10にはキーボードおよびマウスなどの入力装置が接続されている。
【0021】
制御部10は、記憶部34、撮像処理部35、断面画像生成部36、基板検査面検出部38、疑似断面画像生成部40、及び検査部42を含む。なお、図示しないが制御部10は線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、及び検出器駆動部20の作動を制御する撮像制御部も含む。また、これらの各機能ブロックは、各種演算処理を実行するCPU、データの格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0022】
記憶部34は、基板の透過画像を撮像するための撮像条件や、被検査体である基板の設計等の情報を記憶する。記憶部34はまた、基板の透過画像や再構成画像(断面画像、疑似断面画像)、及び後述する検査部42の検査結果等を記憶する。記憶部34はさらに、放射線発生器駆動部16が放射線発生器22を駆動する速度、基板保持部駆動部18が基板保持部24を駆動する速度および検出器駆動部20が検出器26を駆動する速度も格納されている。
【0023】
撮像処理部35は、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18及び検出器駆動部20により、放射線発生器22、基板保持部24及び検出器26を駆動させて、基板保持部24により保持された被検査体の透過画像を撮像し、透過画像から再構成画像を生成する。この撮像処理部35による透過画像の撮像及び再構成画像の生成方法については、後述する。
【0024】
断面画像生成部36は、記憶部34から取得した複数の透過画像に基づいて、断面画像を生成する。これは、例えばFBP法や最尤推定法等、既知の技術を用いて実現できる。再構成アルゴリズムが異なると、得られる再構成画像の性質や再構成に要する時間も異なる。そこで、あらかじめ複数の再構成アルゴリズムやアルゴリズムに用いられるパラメータを用意しておき、ユーザに選択させる構成としてもよい。これにより、再構成に要する時間が短くなることを優先したり、時間はかかっても画質の良さを優先したりするなどの選択の自由度をユーザに提供することができる。生成した断面画像は記憶部34に出力し、この記憶部34に記録される。
【0025】
基板検査面検出部38は、断面画像生成部36が生成した複数の断面画像の中から、基板上の検査の対象となる面(例えば、基板の表面)を映し出している位置(断面画像)を特定する。以後、基板の検査面を映し出している断面画像を「検査面画像」という。
【0026】
疑似断面画像生成部40は、断面画像生成部36が生成した断面画像について、連続する所定枚数の断面画像を積み上げることにより、断面画像よりも厚い基板の領域を画像化する。積み上げる断面画像の枚数は、断面画像が映し出す基板の領域の厚さ(以後、「スライス厚」という。)と、疑似断面画像のスライス厚とによって定める。例えば、断面画像のスライス厚が50μmで、疑似断面画像としてBGAのはんだボール(以後単に「はんだ」という。)の高さ(例えば500μm)をスライス厚としようとするならば、500/50=10枚の断面画像を積み上げればよい。この際、はんだの位置を特定するために、基板検査面検出部38が特定した検査面画像が用いられる。
【0027】
検査部42は、断面画像生成部36が生成した断面画像、基板検査面検出部38が特定した検査面画像、及び疑似断面画像生成部40が生成した疑似断面画像に基づいて、はんだの接合状態を検査する。基板と部品とを接合するはんだは基板検査面付近にあるので、検査面画像及び検査面画像に対して放射線発生器22側の領域を映し出している断面画像を検査することで、はんだが基板と部品とを適切に接合しているか否かが判断できる。
【0028】
ここで、「はんだの接合状態」とは、基板と部品とがはんだにより接合し、適切な導電経路が生成されているか否かのことをいう。はんだの接合状態の検査には、ブリッジ検査、溶融状態検査、及びボイド検査が含まれる。「ブリッジ(bridge)」とは、はんだが接合することにより生じた導体間の好ましくない導電経路のことをいう。また、「溶融状態」とは、はんだの溶融不足により、基板と部品との間の接合が不足しているか否かの状態、いわゆる「浮き」か否かの状態をいう。「ボイド(void)」とは、はんだ接合部内の気泡によるはんだ接合の不具合のことをいう。したがって検査部42は、ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、及びボイド検査部48を含む。
【0029】
ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、及びボイド検査部48の動作の詳細は後述するが、ブリッジ検査部44およびボイド検査部48は、疑似断面画像生成部40が生成した疑似断面画像に基づいてそれぞれブリッジおよびボイドの検査をし、溶融状態検査部46は基板検査面検出部38が特定した検査面画像に基づいてはんだの溶融状態を検査する。なお、ブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、及びボイド検査部48における検査結果は記憶部34に記録される。
【0030】
図3は透過画像の撮像及び再構成画像の生成、及び、検査面画像の特定から、はんだの接合状態を検査するまでの流れを示したフローチャートである。また、
図4は透過画像の撮像及び再構成画像の生成の処理の部分の流れを示したフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば、制御部10が図示しない入力装置から検査開始の指示を受け付けたときに開始する。
【0031】
制御部10は、
図3に示すように、放射線発生器駆動部16により放射線発生器22により放射される放射線の照射野を設定し、基板保持部駆動部18により基板保持部24を移動させるとともに、検出器駆動部20により検出器26を移動させて撮像位置を変更しながら、線質変更部14により放射線発生器22の線質を設定して放射線を基板に照射して透過画像を撮像し、さらに、このようにして撮像された複数枚の透過画像から、断面画像生成部36及び疑似断面画像生成部40により再構成画像を生成する(ステップS100)。なお、透過画像を撮像する際の、基板保持部駆動部18による基板保持部24の移動経路、及び、検出器駆動部20による検出器26の移動経路は、記憶部34に記憶させた情報を読み込む方法や、入力装置から入力する方法により、予め基板保持駆動部18及び検出器駆動部20に設定されているものとする。また、放射線発生器22のZ軸方向の位置も、同様の方法により予め設定されているものとする。
【0032】
このステップS100の処理の詳細を
図4及び
図5を用いて説明する。
図4に示すように、制御部10の撮像処理部35は、ステップS100が開始されると、基板保持部駆動部18及び検出器駆動部20に出力される作動信号をオンにする(ステップS1000)。
図5(a)における時刻t0に相当する。この作動信号がオンとなると、基板保持部駆動
部18は、基板保持部24の移動を開始させ(ステップS1002)、検出器駆動部20は、検出器26の移動を開始させる(ステップS1004)。基板保持部24及び検出器26は、上述したように予め設定されている移動経路に沿って移動される。
【0033】
撮像処理部35は、撮像タイミングか否かを判断し(ステップS1006)、撮像タイミングでないと判断した場合(ステップS1006の「N」)、所定の時間をおいて再度このステップを繰り返し、撮像タイミングであると判断した場合(ステップS1006の「Y」)、撮像開始信号(トリガー)を検出器26に送信する(ステップS1008)。例えば、
図5(a)の例では時刻t1に検出器26に対するトリガーをオンにする。
【0034】
撮像処理部35によりトリガーがオンされたことを検出した検出器26は、透過画像の撮像を開始するとともに、撮像を開始したことを示す応答信号を撮像処理部35に送信する(ステップS1010)。また、検出器26は、放射線発生器駆動部16に露光信号を送信する(ステップS1012)。例えば、
図5(a)の例では時刻t2から時間Tの間、放射線発生器駆動部16に出力する露光信号をオンにする。このように、検出器26から放射線発生器駆動部16に露光信号を送信するように構成すると、撮像開始から露光開始までの遅延を限りなく小さくすることができる。
【0035】
検出器26から露光信号を受信した放射線発生器駆動部16は、露光信号がオンの間、放射線発生器22から放射線を発生させ、この放射線が被検査体に照射される(ステップS1014)。ここで、検出器26がローリングシャッター方式を採用している場合、この検出器26の受光素子で検出されたX線の情報(強度等)は、所定の方向に並ぶ複数の走査ラインに沿って取得されるが、走査ライン毎に開始時刻がずれて取得される。例えば、
図5(b)に示すように、検出器26が、左右方向に延びるn本の走査ラインで構成されている場合、上からL1、L2、L3、・・・、Ln-1、Lnの順で開始時刻がずれて検出された情報が取得される。そのため、全ての走査ラインがデータを取得している時間(
図5(b)の場合時間Tの間)に、放射線発生器22からX線を発生させることにより、各走査ラインから得られる情報は、同じ時間に照射されたX線による情報となるため、取得された透過画像の歪みを防止することができる。
【0036】
また、検出器26から送信された応答信号を受信した撮像処理部35は、基板位置検出部29から基板保持部24の位置情報を取得し、検出器位置検出部31から検出器26の位置を取得して記憶する(ステップS1016)。なお、基板保持部駆動部18による基板保持部24の移動と、検出器駆動部20による検出器26の移動は、上述したように予め決められた移動経路に沿って制御されるため、基板保持部24の位置及び検出器26の位置のいずれか一方が分かれば他方の位置も分かるため、基板保持部24及び検出器26の両方の位置を記憶しても良いし、いずれか一方の位置を記憶してもよい。また、基板保持部24及び検出器26の位置は、上述したXY直交座標系(X軸方向及びY軸方向の位置(x,y)の形式)で記憶しても良いし、基板回転軌道28及び検出器回転軌道30の軌道面の中心を原点として極座標系(原点からの距離rと、角度θで特定する位置(r,θ)の形式)で記憶してもよい。
【0037】
以上のようにして、透過画像の撮像が終了すると、検出器26は、撮像された透過画像を撮像処理部35に送信する(ステップS1018)。そして、この透過画像を取得した撮像処理部35は、ステップS1016で取得した基板保持部24の位置情報及び検出器26の位置情報と取得した透過画像とを対応付けて記憶部34に記憶する(ステップS1020)。
【0038】
また、撮像処理部35は、次の撮像位置があるか否かを判断し(ステップS1022)、次の撮像位置があると判断した場合(ステップS1022の「Y」)、ステップS1006に戻って上述した処理(ステップS1006~S1020)を繰り返す。一方、撮像処理部35は、次の撮像位置がないと判断した場合(ステップS1022の「N」)、基板保持部駆動部18及び検出器駆動部20に出力される作動信号をオフにし(ステップS1024)、作動信号がオフになったことを検出した基板保持部駆動部18は基板保持部24の移動を停止させ(ステップS1026)、検出器駆動部20は検出器26の移動を停止させる(ステップS1028)。例えば、
図5(a)の時刻t3に相当する。
【0039】
最後に、撮像処理部35は、断面画像生成部36及び疑似断面画像生成部40により、記憶部34に記憶されている透過画像から再構成画像を生成する(ステップS1030)。生成された再構成画像は、記憶部34に記憶してもよい。
【0040】
次に、
図3に戻り、制御部10の基板検査面検出部38は、断面画像生成部36から透過画像または再構成画像(断面画像)を受け取り、その中から検査面画像を特定する(ステップS102)。ブリッジ検査部44は、疑似断面画像生成部40からはんだボールを映し出しているはんだボールと同程度のスライス厚の疑似断面画像を取得し、ブリッジの有無を検査する(ステップS104)。ブリッジを検出しない場合には(ステップS106の「N」)、溶融状態検査部46は基板検査面検出部38から検査面画像を取得し、はんだが溶融しているか否かを検査する(ステップS108)。はんだが溶融している場合には(ステップS110の「Y」)、ボイド検査部48は疑似断面画像生成部40からはんだボールを部分的に映し出している疑似断面画像を取得し、ボイドが存在するか否かを検査する(ステップS112)。ボイドが見つからない場合には(ステップS114の「N」)、ボイド検査部48は、はんだの接合状態は正常と判断し(ステップS116)、その旨を記憶部34に出力する。また、ブリッジを検出した場合(ステップS106の「Y」)、はんだが溶融していない場合(ステップS110の「N」)、またはボイドが存在する場合(ステップS114の「Y」)には、それぞれブリッジ検査部44、溶融状態検査部46、およびボイド検査部48ははんだの接合状態は異常と判断して(ステップS118)その旨を記憶部34に出力する。はんだの状態が記憶部34に出力されると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0041】
以上の方法によると、透過画像が撮像された位置は、撮像処理部35が検出器26にトリガーを送信した時刻の情報ではなく、検出器26が画像の取得の開始した時刻(検出器26から応答信号を受信した時刻)の情報となる。放射線発生器22と基板保持部24及び検出器26との相対位置を変化させている状態(基板保持部24及び検出器26が移動しつづけている状態)の場合、撮像処理部35がトリガーを送信してから検出器26が画像の取得を開始するまでは遅延が発生するため、トリガーが送信された時刻の基板保持部24及び検出器26の位置は、実際に透過画像が撮像される位置とずれている可能性がある。そのため、上述したように、検出器26が画像の取得を開始し、そのときに検出器26から送信される応答信号を撮像処理部35が受信したときに、基板保持部24及び検出器26の位置を取得することにより、正確な位置情報を取得することができ、これにより再構成画像の精度を向上させることができる。また、基板保持部駆動部18による基板保持部24の移動経路、及び、検出器駆動部20による検出器26の移動経路は、駆動部の特性等により、予め指定した位置からずれる場合があるが、上述したように、これらの位置は基板位置検出部29及び検出器位置検出部31により検出された位置であるため、正確な位置情報を取得することができ、再構成画像の精度をさらに向上させることができる。
【0042】
なお、基板保持部24及び検出器26の位置情報及び透過画像は、制御部10の記憶領域(メモリやハードディスク等)のうち、所定の領域を循環的に使用して記憶する方式(所定の領域の先頭から順次情報を記憶し、所定の領域の最後に情報を記憶したときは、所定の領域の先頭に戻って記憶させる方式)を採用することより、記憶領域を効率よく利用することができる。
【0043】
また、検出器26がローリングシャッター方式により透過画像を撮像している場合、放射線発生器22と基板保持部24及び検出器26との相対位置を変化させている状態で透過画像を取得すると画像が歪む場合があるが、上述したように、放射線発生器22から放射されるX線のオン/オフを(露光信号のオン/オフ)を検出器26のローリングシャッターの信号(応答信号)に同期させることにより、歪みのない透過画像を取得することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 検査装置
10 制御部
18 基板保持部駆動(駆動部)
20 検出器駆動部(駆動部)
22 放射線発生器(線源)
24 基板保持部(保持部)
29 基板位置検出部(位置検出部)
26 検出器
31 検出器位置検出部(位置検出部)