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特許7437223ポリエチレン系シーラントフィルム及びラミネートフィルム
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  • 特許-ポリエチレン系シーラントフィルム及びラミネートフィルム 図1
  • 特許-ポリエチレン系シーラントフィルム及びラミネートフィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ポリエチレン系シーラントフィルム及びラミネートフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240215BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020076060
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021171969
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】緩詰 宏
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健太郎
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114037(JP,A)
【文献】特開2013-177194(JP,A)
【文献】特開2018-020496(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163836(WO,A1)
【文献】特開2014-069456(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110890(WO,A1)
【文献】特開2018-171785(JP,A)
【文献】特開2014-046674(JP,A)
【文献】特開2013-151623(JP,A)
【文献】特開2013-136689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、中間層と、シーラント層とを有する無延伸ポリエチレン系フィルムであって、
前記基材層は、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂5~50重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂50~95重量%とする組成とし、
前記中間層は、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂5~94重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂6~95重量%とする組成とし、
前記シーラント層は石油由来ポリエチレン系樹脂とし、
前記バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、JIS K 7252-1(2008)に準拠したGPC測定から得た分子量分布曲線の分子量10000以下の領域の面積割合が全ピーク面積に対して10%未満とし、
JIS K 7112に準拠した前記基材層の密度(d1)が0.919g/cm3以上、かつ前記基材層の密度(d1)と前記中間層の密度(d2)がd1≧d2を満たす
ことを特徴とするポリエチレン系シーラントフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエチレン系シーラントフィルムの基材層側に、他の樹脂フィルムが積層されてなることを特徴とするラミネートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷低減のためのバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含んだポリエチレン系シーラントフィルム及びラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の主な原因として大気中の二酸化炭素濃度の増加が挙げられており、様々な分野において環境負荷低減のためのカーボンニュートラルが求められている。例えば、樹脂フィルムを構成する合成樹脂材料は、石油等を原料として生成されることが一般的であるが、近年では、カーボンニュートラルの観点から、バイオマス資源を活用することが注目されている。
【0003】
そこで、樹脂フィルムの分野においても、カーボンニュートラルの要求から、バイオマス資源を用いた樹脂フィルムの開発が進んでおり、例えば、バイオマス由来のポリエチレンを5質量%以上含んだ樹脂フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。バイオマス由来のポリエチレンは、植物原料から得られるバイオマス由来のエタノールを原料として製造されるため、従来の石油(化石燃料)由来の材料の使用量を削減することができる。そのため、樹脂フィルムにバイオマス由来ポリエチレンを多く含有させることによって、環境負荷低減への貢献度がより高められる。
【0004】
しかしながら、現在市場に流通するバイオマス由来ポリエチレンには低分子量成分が比較的多く含まれている。樹脂フィルムを構成する材料としてバイオマス由来ポリエチレンが使用された場合、バイオマス由来ポリエチレンの低分子量成分がフィルム表面に粉状に現れるブリードアウト現象が発生することがある。このようなフィルム表面のブリードは、ラミネート強度低下の原因となる。そして、環境負荷低減のためにバイオマス由来ポリエチレンを多く含有させると、ブリードアウト現象が顕著に生じるため、ラミネート強度がより低下しやすくなる問題がある。
【0005】
そこで、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含む樹脂フィルムにおいて、ブリードアウト抑制剤を添加したシーラントフィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このシーラントフィルムでは、ブリードアウト抑制剤が添加されていることにより、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を有しながらもラミネート強度の低下を抑制することができる。シーラントフィルムにおいては、例えば包装材等の材料として使用される場合、フィルムの滑り性や透明性等の性能が要求されることがある。しかしながら、ブリードアウト抑制剤が添加されたシーラントフィルムに滑り性を向上させるための滑剤(スリップ剤)を添加した場合、滑剤がブリードアウト抑制剤に吸収されて、フィルムの滑り性が低下する問題があった。また、ブリードアウト抑制剤の種類によっては、フィルムが白色化する等して透明性が悪化したりする問題があった。
【0006】
これに対し、ラミネート強度と滑り性を両立させるために、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層と、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂からなる層とを積層した多層積層フィルムにおいて、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層を基材積層面を形成する最表層としたシーラントフィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。このシーラントフィルムでは、ヒートシール面がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂からなる層となった場合、ヒートシール面の滑り性が悪くなる。そのため、このシーラントフィルムを使用して袋の製造を行う場合等において、ヒートシール面が製造装置と接触していると引っ掛かり等が生じることがあり、加工適正が低下する問題があった。
【0007】
上記問題点を改善するために、シーラントフィルムの表裏両面は石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層で構成される。しかしながら、石油由来ポリエチレン系樹脂からなる層が増えると、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-251006号公報
【文献】特開2013-177531号公報
【文献】特開2016-196195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂が添加された層をフィルム表層としても、ラミネート強度、滑り性、透明性等の性能の低下を抑制することができる新たなポリエチレン系シーラントフィルム及びラミネートフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、基材層と、中間層と、シーラント層とを有する無延伸ポリエチレン系フィルムであって、前記基材層は、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂5~50重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂50~95重量%とする組成とし、前記中間層は、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂5~94重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂6~95重量%とする組成とし、前記シーラント層は石油由来ポリエチレン系樹脂とし、前記バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、JIS K 7252-1(2008)に準拠したGPC測定から得た分子量分布曲線の分子量10000以下の領域の面積割合が全ピーク面積に対して10%未満とし、JIS K 7112に準拠した前記基材層の密度(d1)が0.919g/cm3以上、かつ前記基材層の密度(d1)と前記中間層の密度(d2)がd1≧d2を満たすことを特徴とするポリエチレン系シーラントフィルムに係る。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のポリエチレン系シーラントフィルムの基材層側に、他の樹脂フィルムが積層されてなることを特徴とするラミネートフィルムに係る。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明に係るポリエチレン系シーラントフィルムによると、基材層と、中間層と、シーラント層とを有する無延伸ポリエチレン系フィルムであって、前記基材層は、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂5~50重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂50~95重量%とする組成とし、前記中間層は、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂5~94重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂6~95重量%とする組成とし、前記シーラント層は石油由来ポリエチレン系樹脂とし、前記バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、JIS K 7252-1(2008)に準拠したGPC測定から得た分子量分布曲線の分子量10000以下の領域の面積割合が全ピーク面積に対して10%未満とし、JIS K 7112に準拠した前記基材層の密度(d1)が0.919g/cm3以上、かつ前記基材層の密度(d1)と前記中間層の密度(d2)がd1≧d2を満たすため、基材層(表層)にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を添加しても、従来のシーラントフィルムと比較して、ラミネート強度、滑り性、透明性等の性能にそん色ないシーラントフィルムが得られる。
【0013】
請求項2の発明に係るラミネートフィルムによると、請求項1に記載のポリエチレン系シーラントフィルムの基材層側に、他の樹脂フィルムが積層されてなるため、従来のフィルムとそん色ない性能を備えながら、環境負荷低減により貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るポリエチレン系シーラントフィルムの概略断面図である。
図2図1のポリエチレン系シーラントフィルムの基材層側に他の樹脂フィルムが積層されたラミネートフィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す本発明の一実施形態に係るポリエチレン系シーラントフィルム10は、基材層20と、中間層30と、シーラント層40とを有する無延伸ポリエチレン系フィルムであって、カーボンニュートラルの観点から、基材層20及び中間層30にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含むものである。無延伸ポリエチレン系フィルムは、各層を構成する樹脂がそれぞれ溶融されて、Tダイ法等の公知の製造方法により所定の厚さに製造される。当該シーラントフィルム10は、生鮮食品、加工食品、菓子類等の食品包装資材、洗剤、化粧品、その他薬剤等の包装資材等の包装袋に好適に使用される。この他、適宜工業用等のフィルム製品にも使用することができる。
【0016】
基材層20は、シーラントフィルム10の表面となる層であり、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂5~50重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂50~95重量%とする組成によって構成される。バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、植物原料を加工して得られたポリエチレン系樹脂である。具体的には、サトウキビ等の植物原料から抽出された糖液から酵母によるアルコール発酵を経てエタノールを生成し、エチレン化したのち公知の樹脂化の工程でポリエチレンを製造する。このバイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、最終製品の環境負荷の低減に寄与するため、重量配合割合が増すことにより、環境負荷の低減への寄与が高められる。
【0017】
このバイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、JIS K 7252-1(2008)に準拠したGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定から得た分子量分布曲線の分子量10000以下の領域の面積割合が全ピーク面積(分布面積)に対して10%未満であることが好ましい。GPC測定では、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂をジクロロベンゼン等の適宜の溶媒に溶解させた後、この溶解液がカラムに通されて分子量ごとに分離、検出される。分子量10000以下の領域の面積割合は、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂中の低分子量の割合に相当する。したがって、使用するバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の好ましい条件は、低分子量(分子量10000以下)の割合が少ないものである。
【0018】
石油由来ポリエチレン系樹脂は、石油等を原料として生成される公知のポリエチレン系樹脂であり、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、引張り、耐引裂き、耐衝撃強度、シール強度、耐ストレスクラッキング性等の点において優れている。高密度ポリエチレンは引張り、耐引裂き、耐衝撃強度、シール強度、耐熱性等の点において優れている。上記樹脂の使い分けは、用途等に依存する。低密度ポリエチレンは透明性、柔軟性、成形性等の点において優れている。石油由来ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは特に制限されないが、例えば、JIS K 7210に記載の190℃、荷重2.16kgの条件で測定したMFRとして、0.1~30g/10分、好ましくは1~10g/10分が挙げられる。
【0019】
基材層20において、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合が少なすぎる場合、当該シーラントフィルム10全体に含まれるバイオマス由来ポリエチレン系樹脂が少なくなるため、環境負荷低減に貢献する目的に適さない。また、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合が多すぎる場合、透明性の低下や、ブリードアウト現象によるラミネート強度の低下等が発生しやすくなる。
【0020】
中間層30は、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂5~94重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂6~95重量%とする組成によって構成された層である。中間層30に使用されるバイオマス由来ポリエチレン系樹脂や石油由来ポリエチレン系樹脂の好ましい条件は、基材層20に使用されるバイオマス由来ポリエチレン系樹脂や石油由来ポリエチレン系樹脂と同一である。中間層30に使用されるバイオマス由来ポリエチレン系樹脂または石油由来ポリエチレン系樹脂は、基材層20に使用される樹脂と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
中間層30においても、基材層20と同様に、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合が少なすぎる場合、当該シーラントフィルム10全体に含まれるバイオマス由来ポリエチレン系樹脂が少なくなるため、環境負荷低減に貢献する目的に適さない。また、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合が多すぎる場合、透明性の低下や、ブリードアウト現象によるラミネート強度の低下等が発生しやすくなる。
【0022】
シーラント層40は、シーラントフィルム10のヒートシール面となる層であり、石油由来ポリエチレン系樹脂によって構成される。石油由来ポリエチレン系樹脂は、基材層20や中間層30と同様に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)等が好ましく用いられる。そして、シーラント層40では、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂が含まれないため、ヒートシール面に要求されるシール強度を十分に確保することができる。
【0023】
基材層20と中間層30とシーラント層40の各層では、必要に応じて滑剤、アンチブロッキング剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を添加することができる。
【0024】
シーラントフィルム10では、厚さについて特に制限されないが、通常20~200μm、好ましくは20~150μmが挙げられる。シーラントフィルム10の基材層20と中間層30とシーラント層40の厚さの比率は、10%~33.3%:33.4%~80%:10%~33.3%の範囲である。
【0025】
本発明のシーラントフィルム10は、JIS K 7112に準拠した基材層20の密度(d1)が0.919g/cm3以上、かつ基材層20の密度(d1)と中間層30の密度(d2)がd1≧d2を満たすものである。基材層20や中間層30の密度は、各層におけるバイオマス由来ポリエチレン系樹脂と石油由来ポリエチレン系樹脂との各樹脂の密度と配合割合に応じて決定される。
【0026】
前記したように、バイオマス由来ポリエチレンは、低分子量成分が比較的多く含まれていることから、フィルム材料に使用した場合に低分子量成分がフィルム表面に現れてブリードアウト現象が発生する等の問題があった。しかしながら、本発明のシーラントフィルム10では、基材層20の密度(d1)が0.919g/cm3以上、かつ基材層20の密度(d1)と中間層30の密度(d2)がd1≧d2であることにより、フィルムの透明性が確保できるとともに、ブリードアウト現象の発生を適切に抑制することができる。
【0027】
これは、基材層20の密度(d1)が0.919g/cm3以上と高く構成されることにより、基材層20に含まれるバイオマス由来ポリエチレンの低分子量成分がフィルム表面へ現れにくくなるためであると考えられる。加えて、基材層の密度(d1)が中間層の密度(d2)以上(d1≧d2)に構成されることにより、中間層30に含まれるバイオマス由来ポリエチレンの低分子量成分の基材層への移行が抑制され、フィルム表面へ現れにくくなるためであると考えられる。
【0028】
また、ブリードアウト現象による低分子量成分のブリード量がフィルムの透明性に影響を及ぼすことから、本発明のシーラントフィルム10では、ブリードアウト現象を抑制することが可能であることにより、透明性を確保することができる。フィルムの透明性は、例えば、JIS K 7136(2000)に準拠して測定したヘーズ値の高低により評価することができる。実施形態のシーラントフィルム10では、ヘーズを10%以下とすることができ、外観の美麗さを得ることができる。
【0029】
本発明のシーラントフィルム10は、図2に示すように、基材層20側に他の樹脂フィルム60を積層させてラミネートフィルム50を形成することもできる。ラミネートフィルム50は、包装袋や包装容器用のシート状の蓋材等の製品の原材料として好適に用いられる。基材層20側に積層される他の樹脂フィルム60は、用途等に応じて適宜に選択されるが、製品として使用する際には外装部分に相当する。そこで、他の樹脂フィルム60としては、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)やポリエステルフィルム(PETフィルム)、ナイロンフィルム(Nyフィルム)等、安価で加工しやすく強度に優れた公知のフィルムが好適である。これらの樹脂で構成することにより、下層側となるシーラントフィルム10を適切に保護することができる。
【実施例
【0030】
[フィルムの作製]
試作例1~25のシーラントフィルムについて、後述の樹脂配合割合(重量%)に基づき、原料となる樹脂を溶融、混練してTダイフィルム成形機により共押出し、冷却ロールで冷却して無延伸のポリエチレン系シーラントフィルムを製膜した。各層を構成する使用原料は、それぞれ合計で100重量%となる配合割合である。各試作例のシーラントフィルムは共通の設定により製膜し、いずれのフィルムも厚さ50μm、基材層と中間層とシーラント層の厚さの比率を1:3:1とした。なお、参考例1として、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を使用しない無延伸のポリエチレン系シーラントフィルムを同様の手順で製膜した。
【0031】
[バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の材料]
バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、下記の樹脂(A1)~(A3)の材料を使用した。
・樹脂(A1):密度0.916g/cm3のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製「SLH218」)
・樹脂(A2):密度0.918g/cm3のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製「SLL318」)
・樹脂(A3):密度0.961g/cm3のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製「SGM9460」)
【0032】
[石油由来ポリエチレン系樹脂の材料]
石油由来ポリエチレン系樹脂は、下記の樹脂(B1)~(B6)の材料を使用した。
・樹脂(B1):密度0.918g/cm3の石油由来ポリエチレン系樹脂(宇部丸善ポリエチレン株式会社製「2040F」)
・樹脂(B2):密度0.923g/cm3の石油由来ポリエチレン系樹脂(宇部丸善ポリエチレン株式会社製「2540F」)
・樹脂(B3):密度0.944g/cm3の石油由来ポリエチレン系樹脂(宇部丸善ポリエチレン株式会社製「4540F」)
・樹脂(B4):密度0.904g/cm3の石油由来ポリエチレン系樹脂(宇部丸善ポリエチレン株式会社製「0540F」)
・樹脂(B5):密度0.963g/cm3の石油由来ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「HF560」)
・樹脂(B6):密度0.898g/cm3の石油由来ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「KF360T」)
【0033】
[試作例1]
試作例1のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を5重量%と樹脂(B1)を80重量%と樹脂(B2)を15重量%、中間層として樹脂(A1)を5重量%と樹脂(B1)を80重量%と樹脂(B2)を15重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0034】
[試作例2]
試作例2のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を5重量%と樹脂(B1)を80重量%と樹脂(B2)を15重量%、中間層として樹脂(A1)を94重量%と樹脂(B5)を6重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0035】
[試作例3]
試作例3のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を10重量%と樹脂(B1)を70重量%と樹脂(B2)を20重量%、中間層として樹脂(A1)を10重量%と樹脂(B1)を70重量%と樹脂(B2)を20重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0036】
[試作例4]
試作例4のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(B1)を60重量%と樹脂(B2)を20重量%、中間層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を30重量%と樹脂(B2)を30重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0037】
[試作例5]
試作例5のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を25重量%と樹脂(B2)を35重量%、中間層として樹脂(A1)を94重量%と樹脂(B5)を6重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0038】
[試作例6]
試作例6のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を30重量%と樹脂(B2)を30重量%、中間層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を30重量%と樹脂(B2)を30重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0039】
[試作例7]
試作例7のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を50重量%と樹脂(B1)を15重量%と樹脂(B2)を35重量%、中間層として樹脂(A1)を94重量%と樹脂(B5)を6重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0040】
[試作例8]
試作例8のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を60重量%と樹脂(B2)を40重量%、中間層として樹脂(A1)を94重量%と樹脂(B5)を6重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0041】
[試作例9]
試作例9のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を5重量%と樹脂(B1)を80重量%と樹脂(B2)を15重量%、中間層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(B6)を80重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0042】
[試作例10]
試作例10のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を5重量%と樹脂(B2)を85重量%と樹脂(B3)を10重量%、中間層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(B6)を80重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0043】
[試作例11]
試作例11のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を5重量%と樹脂(B1)を80重量%と樹脂(B2)を15重量%、中間層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B6)を60重量%、シーラント層として樹脂(B4)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0044】
[試作例12]
試作例12のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を5重量%と樹脂(B1)を80重量%と樹脂(B2)を15重量%、中間層として樹脂(A1)を60重量%と樹脂(B6)を40重量%、シーラント層として樹脂(B6)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0045】
[試作例13]
試作例13のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を30重量%と樹脂(B2)を30重量%、中間層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B4)を60重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0046】
[試作例14]
試作例14のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B3)を60重量%、中間層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を40重量%と樹脂(B2)を20重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0047】
[試作例15]
試作例15のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B4)を60重量%、中間層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B4)を60重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0048】
[試作例16]
試作例16のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B4)を60重量%、中間層として樹脂(A1)を94重量%と樹脂(B5)を6重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0049】
[試作例17]
試作例17のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を30重量%と樹脂(B2)を30重量%、中間層として樹脂(A1)を70重量%と樹脂(B5)を30重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0050】
[試作例18]
試作例18のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(A3)を20重量%と樹脂(B1)を35重量%と樹脂(B3)を25重量%、中間層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を30重量%と樹脂(B2)を30重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0051】
[試作例19]
試作例19のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(A2)を10重量%と樹脂(A3)を10重量%と樹脂(B2)を60重量%、中間層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を30重量%と樹脂(B2)を30重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0052】
[試作例20]
試作例20のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(A2)を10重量%と樹脂(A3)を10重量%と樹脂(B1)を40重量%と樹脂(B4)を20重量%、中間層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を30重量%と樹脂(B2)を30重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0053】
[試作例21]
試作例21のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(A3)を20重量%と樹脂(B1)を32重量%と樹脂(B3)を28重量%、中間層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(A2)を20重量%と樹脂(B1)を30重量%と樹脂(B2)を30重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0054】
[試作例22]
試作例22のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(B1)を60重量%と樹脂(B2)を20重量%、中間層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(A2)を20重量%と樹脂(B1)を40重量%と樹脂(B2)を20重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0055】
[試作例23]
試作例23のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(B1)を60重量%と樹脂(B2)を20重量%、中間層として樹脂(A1)を30重量%と樹脂(A3)を10重量%と樹脂(B1)を40重量%と樹脂(B4)を20重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0056】
[試作例24]
試作例24のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(B1)を60重量%と樹脂(B2)を20重量%、中間層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(A2)を10重量%と樹脂(A3)を10重量%と樹脂(B1)を40重量%と樹脂(B4)を20重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0057】
[試作例25]
試作例25のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(A1)を20重量%と樹脂(B1)を60重量%と樹脂(B2)を20重量%、中間層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を30重量%と樹脂(B2)を30重量%、シーラント層として樹脂(A1)を40重量%と樹脂(B1)を60重量%の各配合割合で製膜した。
【0058】
[参考例1]
参考例1のシーラントフィルムは、基材層として樹脂(B1)を100重量%、中間層として樹脂(B1)を100重量%、シーラント層として樹脂(B1)を100重量%の各配合割合で製膜した。
【0059】
[積層フィルムの作製]
作製した試作例1~25及び参考例1のシーラントフィルムに、表面層として厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(フタムラ化学株式会社製「FE2001」)をドライラミネート(接着層)により積層して、試作例1~25及び参考例1に対応する積層フィルムを作製した。なお、接着層は、主剤(東洋モートン株式会社製,TM-329)と、硬化剤(東洋モートン株式会社製,CAT-8B)と、酢酸エチルとを混合して調整し、1.5g/m2で塗布して80℃乾燥させた後、表面層と貼り合わせた。
【0060】
[バイオマス由来ポリエチレン系樹脂のGPC測定]
バイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂A1~A3)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による測定を行った。測定に際し、JIS K 7252-1(2008)に準拠し、東ソー株式会社製「HLC-8321GPC/HT」を測定装置とし、カラムに「TSKgel guardcolumn HHR(S)」と「GMHHR-H(S)HT」の2本、検出器に示差屈折計を使用した。また、溶離液にo-ジクロロベンゼンを使用して樹脂試料の濃度を0.1wt/vol%に調製して完全溶解させ、カラムとインジェクタの温度設定を145℃とし、流量を1.0mL/minとした。なお、分子量換算に際して、ポリスチレンを標準物質とし、比較として石油由来ポリエチレン系樹脂(樹脂B1)についても同様に測定した。
【0061】
バイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂A1~A3)について、上記GCP測定から得た分子量分布曲線の全ピーク面積(分布面積)に対する分子量10000以下の領域の面積割合は、樹脂(A1)が2.9%、樹脂(A2)が3.4%、樹脂(A3)が7.4%であった。これに対し、石油由来ポリエチレン系樹脂(樹脂B1)の分子量分布曲線の全ピーク面積(分布面積)に対する分子量10000以下の領域の面積割合は、1.9%であった。
【0062】
[シーラントフィルムの密度の算出]
試作例1~25及び参考例1について、基材層、中間層、シーラント層の各層と、全層の密度(g/cm3)を、下記の式(i)に基づいて算出した。なお、式(i)は、複数種類(X,Y,Z)の原料を混合した場合の密度(ρblend)を算出するものであり、ρXは原料Xの密度、ρYは原料Yの密度、ρZは原料Zの密度、xは原料Xの配合割合、yは原料Yの配合割合、zは原料Zの配合割合である。
【0063】
【数1】
【0064】
[シーラントフィルムの性能の評価]
試作例1~25及び参考例1に対応する積層フィルムを用いて、シーラントフィルムのラミネート強度(N/15mm)、ヘーズ(%)についてそれぞれ試験を行い、その結果に基づいて性能を評価した。なお、シーラントフィルムの性能の総合評価では、ラミネート強度とヘーズの双方で「良」と判定された場合に「良(〇)」、いずれか一方でも「不可」と判定された場合には「不可(×)」とした。その結果について、シーラントフィルムの密度とともに後述の表1~表4に示した。
【0065】
[ラミネート強度の測定]
ラミネート強度(N/15mm)の測定は、接着適性の指標の1つであって、JIS K 6854-3(1999)に準拠して測定した。この測定では、試作例1~25及び参考例1に対応する積層フィルムから15mm×200mm(フィルムの幅方向×長さ方向)の長方形の試験片を切り出し、非ラミネート部分であるシーラントフィルムと二軸延伸ポリエステルフィルムとをそれぞれ上下に180°広げて引張試験機(株式会社島津製作所製「EZ-SX」)のチャックに固定し、試験速度200mm/minで上下に引張してラミネート部分を剥離させてラミネート強度を求めた。ラミネート強度(N/15mm)は、100mm剥離させた際の最大剥離力とし、測定結果が7N/15mm以上を良品とした。
【0066】
[ヘーズの測定]
ヘーズ(%)の測定は、透明性の指標であって、シーラントフィルムを35℃7日間、調整した後、JIS K 7136(2000)に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製,NDH-4000)を使用して測定を行った。試作例1~25及び参考例1のシーラントフィルムでは、測定結果が10%以下を良品とした。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
[結果と考察]
表1~表4に示すように、総合評価が「良(〇)」となったのは試作例1~7,9~14,18~24であり、「不可(×)」となったのは試作例8,15,16,17,25であった。総合評価が「不可」の試作例のうち、試作例8,15,16,17は、ラミネート強度が7N/mm以下で不足し、かつ、ヘーズが10%より大きくて透明性も不足していた。また、試作例25は、ラミネート強度は十分であったが、ヘーズが10%より大きくて透明性も不足していた。
【0072】
総合評価が「不可」の試作例8は、「良」の試作例2,7に対して、中間層及びシーラント層の配合割合や、各層及び全層の密度が同一であるが、基材層の配合割合が相違する。すなわち、基材層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合は、試作例2が5重量%、試作例7が50重量%であるのに対して、試作例8が60重量%であった。また、総合評価が「良」の試作例1~7,9~14,18~24の基材層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合は、いずれも5~50重量%の範囲に含まれていた。このことから、基材層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合が過剰となることにより、ラミネート強度や透明性(ヘーズ)が低下することがわかった。なお、基材層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合が5重量%未満の場合は、環境負荷低減の観点から好ましくないため、基材層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合の好ましい条件は、5~50重量%であると考えられる。
【0073】
総合評価が「不可」の試作例15は、「良」の試作例13に対して、基材層の組成が異なり、特にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合は同一だが、石油由来ポリエチレン系樹脂の種類が異なる。同様に、試作例16は、「良」の試作例5に対して、基材層の石油由来ポリエチレン系樹脂の種類が異なる組成であった。試作例15,16の基材層の密度は0.909g/cm3であり、試作例13,5の基材層の密度0.919g/cm3より小さくなっていた。また、総合評価が「良」の試作例1~7,9~14,18~24の基材層の密度は、いずれも0.919g/cm3以上であった。このことから、基材層の密度が小さくなることにより、ラミネート強度や透明性(ヘーズ)が低下することがわかった。そこで、基材層の密度の好ましい条件は、0.919g/cm3以上であると考えられる。
【0074】
総合評価が「不可」の試作例17は、「良」の試作例6に対して、中間層の組成が異なる。試作例17の中間層の密度は0.930g/cm3であり、基材層の密度0.919g/cm3より大きく、試作例6の中間層の密度0.919g/cm3より大きかった。ここで、各試作例の基材層と中間層の密度の関係に注目すると、「良」の試作例1~7,20,22~24は基材層と中間層の密度が等しく、「良」の試作例9~14,21は基材層の密度が中間層の密度より大きかった。このことから、基材層の密度より中間層の密度が大きくなることにより、ラミネート強度や透明性(ヘーズ)が低下することがわかった。そこで、基材層の密度は、中間層の密度以上とすることが好ましいと考えられる。なお、総合評価が「不可」の試作例16においても、試作例17と同様に中間層の密度が基材層の密度より大きかった。
【0075】
総合評価が「不可」の試作例25は、「良」の試作例4に対して、シーラント層にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂が含まれている点で異なる。また、総合評価が「良」の試作例1~7,9~14,18~24は、いずれもシーラント層にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂が含まれていない。このことから、シーラント層にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂が含まれることにより、透明性(ヘーズ)が低下することがわかった。よって、シーラント層にはバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を添加しないことが好ましいと考えられる。
【0076】
なお、総合評価が「良」の試作例1~7,9~14,18~24と、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含まない参考例1との対比から理解されるように、試作例1~7,9~14,18~24は、ラミネート強度及び透明性(ヘーズ)の性能が参考例1とそん色ない結果が得られた。また、試作例18~24から理解されるように、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、樹脂(A1)~(A3)のいずれも好適に使用することができた。したがって、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂のGPC測定から得られる分子量分布曲線の全ピーク面積(分布面積)に対する分子量10000以下の領域の面積割合は、10%未満が好ましいと考えられる。
【0077】
以上図示し説明したように、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含む本発明のシーラントフィルムは、基材層の組成をバイオマス由来ポリエチレン系樹脂5~50重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂50~95重量%とし、中間層の組成をバイオマス由来ポリエチレン系樹脂5~94重量%と、石油由来ポリエチレン系樹脂6~95重量%とし、前記シーラント層を石油由来ポリエチレン系樹脂とし、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、JIS K 7252-1(2008)に準拠したGPC測定から得た分子量分布曲線の分子量10000以下の領域の面積割合が全ピーク面積に対して2.5~9%であり、JIS K 7112に準拠した基材層の密度(d1)が0.919g/cm3以上、かつ基材層の密度(d1)と中間層の密度(d2)がd1≧d2を満たすものである。これにより、基材層(表層)にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を添加しても、表層にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含まない従来のシーラントフィルムと比較して、ラミネート強度、滑り性、透明性等の性能がそん色ないシーラントフィルムを得ることができた。
【0078】
また、このシーラントフィルムは、基材層側に他の樹脂フィルムを積層することにより、ラミネートフィルムとしても好適に使用することができる。したがって、従来のフィルムとそん色ない性能を備えながら、環境負荷低減により貢献することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のポリエチレン系シーラントフィルム及びラミネートフィルムは、シーラントフィルムの表層(基材層)にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含んでも、従来のシーラントフィルムとそん色ない性能を備える。従って、新たなシーラントフィルム等への活用が期待できるとともに、バイオマス資源の活用に有利となる。
【符号の説明】
【0080】
10 無延伸ポリエチレン系樹脂フィルム
20 基材層
30 中間層
40 シーラント層
50 ラミネートフィルム
60 他の樹脂フィルム
図1
図2