(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】海苔束の整列機
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20240215BHJP
【FI】
A23L17/60 103F
(21)【出願番号】P 2020084475
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】392024699
【氏名又は名称】株式会社川島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086092
【氏名又は名称】合志 元延
(72)【発明者】
【氏名】川島 一美
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-122211(JP,A)
【文献】特開昭63-027373(JP,A)
【文献】特開2008-230675(JP,A)
【文献】実開昭51-097593(JP,U)
【文献】実開昭57-094391(JP,U)
【文献】特開昭55-156574(JP,A)
【文献】米国特許第06206363(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔の生産ラインにおいて、検査選別機に付設されるカウント集積機と折曲機との間に配設される整列機であって、昇降板,整列板,コンベアを有しており、
該昇降板は、上記カウント集積機下の上位置と、該コンベアの左右間隔下の下位置とに、昇降動可能であり、
該昇降板は、上記カウント集積機から落下された海苔束を、上位置で受け取って積載すると共に、下位置に向け降下途中で、該海苔束を該コンベアへと乗り移らせ、
該整列板は、該昇降板や該コンベアに積載される該海苔束を、四方から起立,押動して揃える整列動作可能であり、
該コンベアは、整列完了した該海苔束を、前記折曲機へと搬出可能であり、
該昇降板について、上下貫通穴が全体的に形成されていること、を特徴とする海苔束の整列機。
【請求項2】
請求項1において、該整列機の昇降板の上下貫通穴は、上位置の該昇降板上に該海苔束が落下する際、空気を下に抜く空気逃がし機能を発揮し、
もって該海苔束について、該昇降板の上昇に伴う風圧や、該昇降板との間の空気抵抗に起因した、変位乱れが回避されること、を特徴とする海苔束の整列機。
【請求項3】
請求項2において、上記検査選別機,上記カウント集積機,該整列機,上記折曲機は、直線状にレイアウトされ、かつ、上記カウント集積機と該整列機は、上下にレイアウトされており、
該整列機の昇降板は、積載した該海苔束の向きを変えるべく90度程度回転しつつ降下可能であると共に、90度程度逆回転しつつ上昇可能であり、
もって、該整列板にて整列された該海苔束が、その長手方向を搬送方向と直交させて、該コンベアにて上記折曲機へと直出し搬出されること、を特徴とする海苔束の整列機。
【請求項4】
請求項2において、上記検査選別機,上記カウント集積機,該整列機は、直線状にレイアウトされ、かつ、上記カウント集積機と該整列機は、上下にレイアウトされ、上記折曲機は、該整列機の側方にレイアウトされており、
該整列機の昇降板は、直線的に昇降動可能であり、積載した該海苔束の向きは変えずにそのまま降下し、
もって、該整列板にて整列された該海苔束が、その長手方向を搬送方向と直交させて、それ迄の搬送方向に対し90度程度側方に向け、該コンベアにて上記折曲機へと横出し搬出されること、を特徴とする海苔束の整列機。
【請求項5】
請求項3又は4において、該整列機の整列板は、該昇降板にて積載,降下される該海苔束を、整列動作すること、を特徴とする海苔束の整列機。
【請求項6】
請求項3又は4において、該整列機の整列板は、該コンベアに積載された該海苔束を、整列動作すること、を特徴とする海苔束の整列機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔束の整列機に関する。すなわち、海苔の生産ラインにおいて、海苔束のカウント集積機と折曲機との間に設けられる、海苔束の整列機に関する。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
乾海苔(以下単に海苔という)の生産ラインでは、生海苔摘採,水洗,抄き,脱水,乾燥の各工程の後、検査選別,カウント集積,整列,折曲,結束の各工程を辿って、海苔が生産されている。
すなわち、乾燥後に検査選別された平海苔は、一束10枚等の海苔束としてカウント集積されて、整列された後、折曲され結束されて出荷されている。
図9は、このような海苔生産ラインの工程ブロック図である。同図にも示したように、海苔生産ラインの整列機1は、従来より、(1)図の直出しタイプと、(2)図の横出しタイプとがある。
【0003】
《直出しタイプ》
図9の(1)図に示した直出しタイプの整列機1については、次のとおり。
その生産ラインでは、表裏反転機6,検査選別機7,カウント集積機8,整列機1,折曲機9等は、直線状にレイアウトされており、カウント集積機8と整列機1は、上下にレイアウトされている。
そして整列機1の昇降板が、カウント集積機8から落下した海苔束Aを、積載して、向き変えるべく90度回転しつつ降下し、もって、整列板にて整列された海苔束Aが、コンベアにて折曲機9へと直出し搬出されていた。
【0004】
《横出しタイプ》
図9の(2)図に示した横出しタイプの整列機1については、次のとおり。
その生産ラインでは、表裏反転機6,検査選別機7,カウント集積機8,整列機1等は、直線状にレイアウトされており、カウント集積機8と整列機1は、上下にレイアウトされ、折曲機9は、整列機1の側方にレイアウトされている。
そして、従来の横出しタイプの整列機1は、カウント集積機8からコンベア上に海苔束Aが落下,積載され、もって、コンベア上で整列板にて整列された海苔束Aが、それ迄の搬送方向に対し90度側方に向け、コンベアにて折曲機9へと横出し搬出されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
直出しタイプの整列機1は、例えば、次の特許文献1,2中に示されている。
【文献】特開昭63-27373号公報
【文献】特開2008-230675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような従来の整列機1については、次の問題が課題として指摘されていた。
《直出しタイプ:変位乱れ》
直出しタイプの整列機1については、海苔束Aの散乱等の変位乱れが、問題となっていた。
直出しタイプでは、昇降動する昇降板2’が、上位置Bで、カウント集積機8から落下される海苔束Aを、受け取り,積載して,降下する(本発明に関する
図1~
図3も参照)。(なお、この従来の直出しタイプの整列機1では、昇降板2’が、後述する本発明の昇降板2とは異なり、穴等は存しないムクの平プレート板製よりなっていた。)
そして、このような昇降板2’を用いた従来の直出しタイプの整列機1では、上位置Bの昇降板2’に落下する海苔束Aについて、直前の昇降板2’の上昇に伴う風圧や、昇降板2’との間の空気抵抗にて、変位乱れが発生し易かった。
すなわち、海苔生産ラインでは、高速大量処理のニーズが強く、昇降板2’の上昇スピードも高速化されており、昇降板2’は、風圧を伴って上位置Bへと上昇してくる。
もって、このような昇降板2’上に落下する海苔束Aは、単にカウントされただけで未だ結束されてはいない状態なので、下からの風圧を受けて、変位乱れし易かった。例えば、ズレてバラバラに散乱し易かった。
更に、落下する海苔束Aと昇降板2’との間に形成される空気層が大きな抵抗となり、昇降板2’へと落下する海苔束Aが、空気抵抗を受けて、この面からも変位乱れし易かった。
【0007】
《横出しタイプ:変位乱れ》
横出しタイプの整列機1についても、海苔束Aの変位乱れが、問題となっていた。
横出しタイプでは、カウント集積機8からの海苔束Aを、コンベア3上に直接落下,積載する(本発明に関する
図5~
図7も参照)。(なお、この従来の整列機1は、上述した従来の直出しタイプの整列機1や、後述する本発明の整列機5とは異なり、昇降板2は備えていない。)
そして、このような従来の横出しタイプの整列機1では、コンベア3上に落下する海苔束Aについて、変位乱れが発生し易かった。
すなわち、まず、上位のカウント集積機8と下位のコンベア3間の上下距離が長く、長い距離を落下する海苔束Aが、途中で変位乱れし易かった。例えば、ズレてバラバラに散乱し易かった。
更に、長い距離を落下する海苔束Aとコンベア3の落下面との間に形成される空気層が、抵抗となり、海苔束Aが空気抵抗を受けて、変位乱れし易かった。
なお、コンベア3の左右のVベルト14間の直下には、受けプレート(図示せず)が固設されており、左右のVベルト14間上に落下してきた海苔束Aについて、その中央等の垂れ下がりや抜けを防止し、全体的な受け止めをサポートするようになっている。このような受けプレートが、Vベルト14と共にコンベア3の落下面となり、上述した空気層による空気抵抗の形成原因となっていた。
【0008】
《横出しタイプ:整列不良》
横出しタイプの整列機1については、更に、海苔束Aの整列不良が問題となっていた。
従来の横出しタイプでは、コンベア3上に落下された海苔束Aが、整列板4にて四方から整列される(
図6の(1)図も参照)。
そして上述したように、海苔束Aの落下距離が長いので、その落下位置に大きな誤差が生じ易かった。海苔束A中心が整列中心から大きくズレてしまう、誤差が生じ易かった。又、コンベア3上で整列動作するので、コンベア3のVベルト14の両上端縁・エッジ部分に、海苔束Aの最下一枚の裏面・裏足が引っ掛り易かった。
そこで、このように落下位置に大きな誤差が生じると共に引っ掛り易い海苔束Aを、整列中心に寄せる整列板4の整列動作について、支障が生じることが多々あった。所期のとおり整列することが容易でなく、困難化し易く整列不良が発生し易かった。特に、柔軟な海苔ほど困難な傾向にあった。
【0009】
《直出しタイプ:整列不良》
これに対し、直出しタイプの整列機1については、このような整列不良の発生頻度は、比較的低かった。
すなわち直出しタイプでは、カウント集積機8から落下される海苔束Aは、昇降板2’で受け取り,積載,降下してから、コンベア3へと乗り移らされる。もって、落下距離が短いので、落下位置の誤差発生も少なく、誤差が少ない分、整列板4の整列動作も、従来の横出しタイプよりはスムーズであった。
このように直出しタイプでは、整列動作をコンベア3上の海苔束Aについて実施した場合、上述した横出しタイプと同様、コンベア3のVベルト14の両上端縁・エッジ部分に、海苔束Aが引っ掛り易いものの、落下位置誤差が少ないので、整列不良の発生頻度が横出しタイプほどではなかった。
【0010】
《本発明について》
本発明の海苔束の整列機は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、海苔束の散乱等の変位乱れが回避され、第2に、海苔束の整列不良も抑制される、海苔束の整列機を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1の海苔束の整列機は、海苔の生産ラインにおいて、検査選別機に付設されるカウント集積機と折曲機との間に配設される。そして、昇降板,整列板,コンベアを有している。
該昇降板は、上記カウント集積機下の上位置と、該コンベアの左右間隔下の下位置とに、昇降動可能である。
そして該昇降板は、上記カウント集積機から落下された海苔束を、上位置で受け取って積載すると共に、下位置に向け降下途中で、該海苔束を該コンベアへと乗り移らせる。
該整列板は、該昇降板や該コンベアに積載される該海苔束を、四方から起立,押動して揃える整列動作可能である。該コンベアは、整列完了した該海苔束を、前記折曲機へと搬出可能である。
そして該昇降板について、上下貫通穴が全体的に形成されていること、を特徴とする。
【0012】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の海苔束の整列機では、請求項1において、該整列機の昇降板の上下貫通穴は、上位置の該昇降板上に該海苔束が落下する際に、空気を下に抜く空気逃がし機能を発揮する。
もって該海苔束について、該昇降板の上昇に伴う風圧や、該昇降板との間の空気抵抗に起因した、変位乱れが回避されること、を特徴とする。
【0013】
請求項3については、次のとおり。
請求項3の海苔束の整列機では、請求項2において、上記検査選別機,上記カウント集積機,該整列機,上記折曲機は、直線状にレイアウトされ、かつ、上記カウント集積機と該整列機は、上下にレイアウトされている。
そして該整列機の昇降板は、積載した該海苔束の向きを変えるべく90度程度回転しつつ降下可能であると共に、90度程度逆回転しつつ上昇可能である。
もって、該整列板にて整列された該海苔束が、その長手方向を搬送方向と直交させて、該コンベアにて上記折曲機へと直出し搬出されること、を特徴とする。
【0014】
請求項4については、次のとおり。
請求項4の海苔束の整列機では、請求項2において、上記検査選別機,上記カウント集積機,該整列機は、直線状にレイアウトされ、かつ、上記カウント集積機と該整列機は、上下にレイアウトされ、上記折曲機は、該整列機の側方にレイアウトされている。
そして該整列機の昇降板は、直線的に昇降動可能であり、積載した該海苔束の向きは変えずにそのまま降下する。
もって、該整列板にて整列された該海苔束が、その長手方向を搬送方向と直交させて、それ迄の搬送方向に対し90度程度側方に向け、該コンベアにて上記折曲機へと横出し搬出されること、を特徴とする。
【0015】
請求項5については、次のとおり。
請求項5の海苔束の整列機では、請求項3又は4において、該整列機の整列板は、該昇降板にて積載,降下される該海苔束を、整列動作すること、を特徴とする。
請求項6については、次のとおり。
請求項6の海苔束の整列機では、請求項3又は4において、該整列機の整列板は、該コンベアに積載された該海苔束を、整列動作すること、を特徴とする。
【0016】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)この整列機では、まず昇降板が、カウント集積機から落下される海苔束を、上位置で受け取る。
(2)そして昇降板は、海苔束を積載して下位置へと降下する。直出しタイプでは90度程度回転しつつ降下し、横出しタイプでは直線的に降下する。そして停止中のコンベアが、海苔束を降下途中の昇降板から乗り移らせる。
(3)この間、降下途中の昇降板上やコンベア上の海苔束を、整列機が整列動作する。
(4)それからコンベアが、整列完了した海苔束を、折曲機に直出し搬出や、横出し搬出する。
(5)なお昇降板は、その後、上位置へと上昇する。
(6)さて、本発明の整列機は、昇降板について上下貫通穴を採用してなる。もって、その空気逃がし機能により、風圧や空気抵抗による海苔束の変位乱れが、回避される。
(7)更に、横出しタイプの整列機については、昇降板の採用により海苔束の落下距離が短縮されるので、この面からも変位乱れが回避される。
(8)又、昇降板にて積載,降下される海苔束を、降下途中で整列板が整列動作する場合は、整列時の海苔束とコンベアとの接触,引っ掛かり懸念がなく、整列不良発生が抑制される。
(9)特に、横出しタイプの整列機については、昇降板の採用により、整列不良発生が抑制される降下途中での整列が、可能となった。
更に、横出しタイプの整列機では、海苔束について、昇降板の採用による落下距離短縮により、落下位置誤差が少なくなり、海苔束を整列中心に寄せることが容易化するので、この面からも、整列不良発生が抑制される。
(10)そこで、本発明に係る海苔束の整列機は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0017】
《第1の効果》
第1に、海苔束の散乱等の変位乱れが、回避される。
本発明の海苔束の整列機は、昇降板について上下貫通穴を採用したことにより、海苔束の変位乱れが回避される。昇降板へと落下する海苔束が、ズレてバラバラに散乱することが、防止される。
もって、本発明の整列機によると、海苔束が所期のとおり整列され、整列能力,整列確実性,整列安定性が向上し、海苔生産ラインの高速大量処理ニーズに、十分対応可能となる。
なお、本発明の横出しタイプの整列機は、前述したこの種従来例の横出しタイプに比し、海苔束について、落下距離が昇降板までと短縮されるので、この面からも変位乱れが回避される。
【0018】
第2に、海苔束の整列不良も抑制される。
本発明の海苔束の整列機は、昇降板にて降下される海苔束を、降下途中で整列するようにした場合、整列不良が抑制される。すなわち、コンベアとの接触,引っ掛かり懸念がなく、海苔束を整列中心に向け確実に寄せることができ、良好な整列が実現される。
特に、横出しタイプの整列機については、昇降板の採用により、このような整列が可能となった。更に、横出しタイプについては、その従来例に比し海苔束の落下距離が短縮され、海苔束の落下位置誤差が少なくなるので、この面からも良好な整列が実現される。
これらにより、本発明の整列機によると、海苔束が所期のとおり整列され、整列能力,整列確実性,整列安定性が向上し、海苔生産ラインの高速大量処理ニーズに、十分対応可能となる。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る海苔束の整列機について、発明を実施するための形態の説明に供し、第1例の直出しタイプを示し、その整列第1工程の正面図である。
【
図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、直出しタイプを示す。そして、(1)図は、その整列第2,第3工程の正面図、(2)図は、整列第4工程の正面図である。
【
図3】同発明を実施するための形態の説明に供し、直出しタイプを示し、その整列第5工程の正面図である。
【
図4】同発明を実施するための形態の説明に供し、直出しタイプを示し、その昇降板等の斜視図である。
【
図5】本発明に係る海苔束の整列機について、発明を実施するための形態の説明に供し、第2例の横出しタイプを示し、その整列第1工程の正面図である。
【
図6】同発明を実施するための形態の説明に供し、横出しタイプを示す。そして、(1)図は、その整列第2,第3工程の正面図、(2)図は、整列第4工程の正面図である。
【
図7】同発明を実施するための形態の説明に供し、横出しタイプを示し、その整列第5工程の正面図である。
【
図8】同発明を実施するための形態の説明に供し、横出しタイプを示し、その昇降板等の斜視図である。
【
図9】同発明を実施するための形態の説明に供し、工程ブロック図である。そして(1)図は、直出しタイプを示し、(2)図は、横出しタイプを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
《海苔の生産ライン》
海苔の生産ラインでは、まず、生海苔摘採,水洗,抄き,脱水,乾燥等の前工程を辿った後、検査選別,カウント集積,整列,折曲,結束等の後工程を辿って、海苔が生産される。
すなわち、
図9の(1)図,(2)図に示したように、乾燥機11から1枚ずつ搬出された海苔aは、→検査選別機7で品質検査,選別された後、→カウント集積機8で、10枚等の所定枚数の海苔束Aとして、カウントされて集積される。
→それから、整列機5(従来例では整列機1)で整列される。→そして、折曲機9で二つ折りに折曲してから、→結束機10で、10束毎にテープで結束されて100枚束とされる。→もって、このような海苔束Aが、箱詰め出荷されている。
【0021】
《海苔束Aの整列機5》
以下、本発明の海苔束Aの整列機5について、
図1~
図9を参照して説明する。
この整列機5は、上述した海苔の生産ラインにおいて、検査選別機7に付設されるカウント集積機8と、折曲機9との間に配設される。そして、昇降板2,整列板4,コンベア3を、有している。なおカウント集積機8は、検査選別機7に直接付設される場合もあるが、コンベアを介して付設される場合もある。
もって、カウント集積機8から落下される海苔束Aを、上下貫通穴H付の昇降板2で受け取り,積載し,降下して、コンベア3に乗り移らせる。そしてその間、整列板4にて整列させてから、折曲機9へと搬出する。
このような整列機5は、生産ラインの設置スペースの観点から、直出しタイプと横出しタイプとがある。
【0022】
《直出しタイプ》
まず、
図1~
図4に示した直出しタイプの整列機5について、説明する。
図9の(1)図に示したように、その生産ラインでは、表裏反転機6,検査選別機7,カウント集積機8,整列機5,折曲機9は、直線ライン状にレイアウトされており、かつ、カウント集積機8と整列機5は、上下にレイアウトされている。
そして、整列機5の昇降板2は、カウント集積機8から落下,積載した海苔束Aの向きを変えるべく90度程度回転しつつ降下可能であると共に(
図1,
図2を参照)、90度程度逆回転しつつ上昇可能である(
図3を参照)。
この間、整列機5の整列板4にて整列された海苔束A(
図2の(1)図を参照)は、海苔束Aの長手方向を搬送方向と直交させて、整列機5のコンベア3にて、これ迄の海苔aの搬送方向に沿い、折曲機9へと直出し搬出されるようになっている。(
図2の(2)図,
図3を参照)。
【0023】
このような直出しタイプの整列機5について、本発明は、全体的に上下貫通穴Hが形成された昇降板2を、採用したことを特徴とする(
図4を参照)。
ところで、整列機5の整列板4による整列動作対象については、次のとおり。整列板4は、昇降板2に積載,降下される途中の海苔束Aを、整列動作することも可能であるが、これによらず図示例では、コンベア3に積載された海苔束Aを、整列動作するようになっている。
海苔束Aが、前述したように回転しつつ降下されることに鑑み、図示例では後者が採用されている。
【0024】
《横出しタイプ》
次に、
図5~
図8に示した横出しタイプの整列機5について、説明する。
図9の(2)図に示したように、その生産ラインでは、表裏反転機6,検査選別機7,カウント集積機8,整列機5は、直線ライン状にレイアウトされており、かつ、カウント集積機8と整列機5は、上下にレイアウトされ、折曲機9は、整列機5の側方にレイアウトされている。
そして整列機5の昇降板2は、直線的に昇降動可能であり、カウント集積機8から落下,積載した海苔束Aの向きは変えずに、そのまま降下する(
図5,
図6を参照)。
もって、整列機5の整列板4にて整列された海苔束Aは(
図6の(1)図を参照)、それ迄の海苔aの搬送方向に対し90度程度(例えば90度)側方に向け、海苔束Aの長手方向を搬送方向と直交させて、コンベア3にて、折曲機9へと横出し搬出されるようになっている(
図6の(2)図,
図7を参照)。
【0025】
このように、横出しタイプの整列機5について、本発明は、昇降板2を採用したことを特徴とすると共に、その昇降板2が、全体的に上下貫通穴Hが形成されていることを、特徴とする(
図8を参照)。
ところで、整列機5の整列板4による整列動作対象については、次のとおり。整列板4は、図示例では、昇降板2に積載,降下される途中の海苔束Aを、整列動作するが、これによらず、コンベア3に積載された海苔束Aを、整列動作することも可能である。
そして、海苔束Aとコンベア3のVベルト14等との接触回避の観点から、図示例では前者が採用されている。
【0026】
《昇降板2》
次に、整列機5の昇降板2について説明する。
昇降板2は、カウント集積機8下の上位置Bと(
図1,
図3,
図5,
図7等を参照)、コンベア3の左右間隔下の下位置Cとに(
図2,
図6を参照)、昇降動可能である。
そして上位置Bで、カウント集積機8から落下された海苔束Aを、受け取って積載すると共に、下位置Cに向け降下途中の最終段階で、積載していた海苔束Aを、コンベア3へと乗り移らせる。
その際、前述したように直出しタイプの整列機5の場合は、積載した海苔束Aの向きを変えるべく、90度程度(例えば90度)回転しつつ降下する。横出しタイプの整列機5の場合は、積載した海苔束Aの向きは変えずに、そのまま直線的に降下する。
それから昇降板2は、下位置Cで一旦停止し、海苔束Aのコンベア3による真上からの搬出が完了するまで、待機した後、下位置Cから上位置Bへと上昇する。
なお昇降板2は、降下速度,時間に比し上昇速度,時間が、より高速化,短縮化設定されている。海苔束Aを積載しないので、生産ラインの高速大量処理ニーズに鑑み、高速化,短縮化設定されている。
そして昇降板2は、下位置Cから上位置Bへと、直出しタイプの場合は、90度程度(例えば90度)逆回転しつつ上昇し、横出しタイプの場合は、直線的に上昇する。
【0027】
昇降板2は、平プレート板状をなすと共に、上下貫通穴Hが全体的に形成されている(
図4,
図8を参照)。
上下貫通穴Hは、図示例では多数の丸穴状をなすが、その形状等はこれに限定されず、各種可能である。
例えば、その他各種形状の穴状,更に小さな孔状、直線スリット状,湾曲スリット状等々も可能である。更に、例えば網目状に形成することも可能である。つまり上下貫通穴Hを、プレート板構成材よりも大きな面積,ウエートで形成することも可能である。
そして、この昇降板2の上下貫通穴Hは、上位置Bの昇降板2上に海苔束Aが落下する際(
図1,
図5を参照)、空気を下に抜く空気逃がし機能を発揮する。もって、昇降板2上に落下する海苔束Aについて、昇降板2の上昇に伴う風圧や、昇降板2との間の空気抵抗に起因した、変位乱れが回避されるようになる。
すなわち昇降板2は、直前において高速スピードで上昇し、上位置Bに風圧を伴って上昇してくるが、上下貫通穴Hの空気逃がし機能により、このような風圧は大幅低下される。又、落下する海苔束Aと昇降板2間に介在形成される空気層による空気抵抗も、上下貫通穴Hの空気逃がし機能により、大幅削減される。
【0028】
昇降板2の駆動機構12については、次のとおり(
図4,
図8,
図1~
図3を参照)。駆動機構12は、昇降板2下に駆動軸20が固定され、モータ13にて伝達機構を介し昇降動可能であると共に、付設されたスプリング(図示せず)の付勢力にて、回転可能となっている。
そして、駆動軸20に横設された一対のローラ21が、直出しタイプの場合は(
図4を参照)、外筒22に形成された湾曲状をなす左右一対のガイド面23に、案内されることにより、駆動軸20が、回転しつつ昇降動するようになっている。
横出しタイプの場合は(
図8を参照)、横設された一対のローラ21が、外ブラケット24に形成された上下直線状をなす左右一対のガイド溝25に、案内されることにより、駆動軸20が、直線的に昇降動するようになっている。
このような駆動機構12により、駆動軸20上の昇降板2が、所定の回転昇降動や直線昇降動するようになっている。
昇降板2については、以上のとおり。
【0029】
《コンベア3》
次に、整列機5のコンベア3について、説明する。
コンベア3は、海苔束Aを、その左右間隔間直下の下位置Cまで降下する昇降板2から、降下途中で乗り移らせた後、整列完了した海苔束Aを、折曲機9へと搬出可能である(
図2,
図3,
図6,
図7等を参照)。
コンベア3には、Vベルト14が代表的に用いられ、駆動機構15がモータ16やローラ17を備えている。図示のコンベア3は、左右2本のVベルト14が間隔を存して配設されており、この左右のVベルト14間に、上位置Bと下位置C間で降下,上昇される昇降板2の通過間隔が、形成されている。
もって昇降板2は、上位置Bで受け取った海苔束Aを、降下途中の通過間隔の箇所で(下位置C直前の降下最終段階で)、コンベア3に乗り移らせるようになっている。コンベア3の左右のVベルト14間の通過間隔は、昇降板2の幅より広いと共に、海苔束Aの幅よりは狭く設定されている。
【0030】
《整列板4》
次に、整列機5の整列板4について、説明する。
整列板4は、昇降板2やコンベア3に積載される海苔束Aを、四方から起立,押動,揃える整列動作可能である。
すなわち整列板4は、コンベア3のVベルト14の内外に配され、もって整列対象の海苔束Aの前後左右に位置し、起立位置D(
図2の(1)図,
図6の(1)図)と、退避位置E(
図1,
図2の(2)図,
図3)(
図5,
図6の(2)図,
図7)とに、閉開起伏可能となっている。
そして起立位置Dにて、直出しタイプの図示例では、停止中のコンベア3上に積載された海苔束Aを、横出しタイプの図示例では、降下途中の昇降板2上に積載された海苔束Aの四辺を、それぞれ断続的に叩いて押動することにより、海苔束Aを揃えて整列させる。図中、18は整列板4の駆動機構、19は装置フレームである。
【0031】
《作用等》
本発明の海苔束Aの整列機5は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)整列第1工程(
図1,
図5を参照):
昇降板2は、カウント集積機8から、例えば10枚カウントされて落下される海苔束A(一束10枚)を、上位置Bで受け取って積載する。カウント集積機8は、10枚等所定枚数の海苔が溜ったら、例えば左右の羽根部が回転して、海苔束Aを落下させる。
【0032】
(2)整列第2工程(
図2の(1)図,
図6の(1)図を参照):
海苔束Aを積載した昇降板2は、それから下位置Cへ向け降下する。直出しタイプの図示例では、積載した海苔束Aの向きを変えるべく90度回転しつつ降下し、横出しタイプの図示例では、積載した海苔束Aの向きを変えずに直線的に降下する。
そして停止中のコンベア3が、海苔束Aを、そのVベルト14の左右間隔間直下の下位置Cまで降下する昇降板2から、降下途中で乗り移らせる。
【0033】
(3)整列第3工程(
図2の(1)図,
図6の(1)図を参照):
この間、退避位置Eから起立位置Dに起立した整列板4が、降下途中の昇降板2上の海苔束Aや、コンベア3に積載された海苔束Aを、四方から押動して揃える整列動作の後、元の退避位置Eに降下する。
そして、このような整列動作は、直出しタイプの図示例では、昇降板2からコンベア3に乗り移って積載された海苔束Aを対象として、実施されている。これに対し、横出しタイプの図示例では、昇降板2にて積載,降下途中の(まだコンベア3に乗り移る前の)海苔束Aを対象として、実施されている。
【0034】
(4)整列第4工程(
図2の(2)図,
図6の(2)図を参照):
それからコンベア3は、整列完了した海苔束Aを整列機5外へ、そして折曲機9に向けて搬出を開始する。
海苔束Aは、直出しタイプでは、これ迄の海苔aの搬送方向に沿い、折曲機9へと直出し搬出される(
図9の(1)図を参照)。これに対し横出しタイプでは、これ迄の海苔aの搬送方向に対し90度側方に向けて、折曲機9へと横出し搬出される(
図9の(2)図を参照)。
昇降板2は、海苔束Aのコンベア3による真上からの搬出が完了する迄、待機する。コンベア3そして海苔束Aより下位の下位置Cで、そのまま不動で待機し、コンベア3にて海苔束Aが真上から搬出されてしまうのを待つ。
【0035】
(5)整列第5工程(
図3,
図7を参照):
しかる後、昇降板2は、下位置Cから上位置Bへと上昇し、上位置Bにて次の海苔束Aが落下される。なお昇降板2は、直出しタイプでは、90度逆回転しつつ上昇し、横出しタイプでは、直線的に上昇する。
【0036】
(6)さて、本発明の整列機5は、このような整列第1工程~第5工程を辿ることにより、以下のようになる。
まず、本発明の整列機5の昇降板2は、上下貫通穴Hを備えており、空気逃がし機能を発揮する。もって整列第1工程において、昇降板2へと落下する海苔束Aが、風圧や空気抵抗に基づき変位乱れすることは、回避される。
すなわち、直前の整列第5工程の上昇に伴う風圧は、上下貫通穴Hにて大幅低下される。又、海苔束Aと昇降板2間に形成される空気層による空気抵抗も、上下貫通穴Hにて大幅削減される。もって海苔束Aが、ズレてバラバラに散乱することは、回避される。
【0037】
(7)そして、このような本発明の上下貫通穴Hによる海苔束Aの変位乱れ回避は、直出しタイプの整列機5および横出しタイプの整列機5について、変わらず同様に実現される。
更に、横出しタイプ整列機5については、次の点でも、変位乱れが回避される。すなわち、海苔束Aは、上位の昇降板2で落下を受け積載されて、下位のコンベア3まで降下され、カウント集積機8からの落下距離が、整列第1工程の上位置Bの昇降板2までに、短縮される。
そこで、このように短い落下距離の点や、その間に形成される空気層による空気抵抗が少ない点でも、変位乱れが回避されるようになる。
これに対し、前述した従来の横出しタイプの整列機1は、カウント集積機8からの落下距離が、下位のコンベア3の落下面迄と長かった。もって、このように長い落下距離の点や、長い落下距離での空気層による空気抵抗の形成量等の点からも、海苔束Aの変位乱れが発生し易かった次第である。
【0038】
(8)次に、昇降板2にて積載,降下される海苔束Aを対象に、整列動作する場合は、整列機5の整列不良が抑制される。
これに対し、コンベア3に積載された海苔束Aを対象に、整列動作する場合は、整列不良が発生し易くなる。すなわち、コンベア3に積載された海苔束Aの最下一枚の海苔aの裏面・裏足が、整列中に、コンベア3のVベルト14の両上端縁・エッジ部分に、接触して引っ掛り易く抵抗を受け、もって整列板4による整列動作に支障が生じ易くなる。
昇降板2にて積載,降下途中の海苔束Aを対象として、整列板4が整列動作する場合は、このようなコンベア3との接触懸念がなく、海苔束Aを整列中心に向け確実に寄せることができ、整列不良が抑制され、良好な整列が実現される。
【0039】
(9)特に、横出しタイプの整列機5では、昇降板2の採用により、このような整列不良発生が抑制される降下途中での整列動作が、可能となった。
これに対し、前述した従来の横出しタイプの整列機1では、コンベア3上に落下,積載された海苔束Aの整列動作が、必須的となっていた次第である。
更に、海苔束Aの落下距離が、カウント集積機8から昇降板2までと短いので、海苔束Aの落下位置に誤差が生じにくく、海苔束Aを整列中心に向け寄せることが容易化し、この面からも、整列不良が抑制され、良好な整列が実現される。
前述した従来の横出しタイプの整列機1では、海苔束Aの落下距離がコンベア3までと長かったので、海苔束Aの中心が整列中心からズレる誤差が発生し易かった。
作用等については以上のとおり。
【符号の説明】
【0040】
A 海苔束
a (平)海苔
B 上位置
C 下位置
D 起立位置
E 退避位置
H 上下貫通穴
1 整列機(従来例)
2 昇降板(本発明)
2’ 昇降板(従来例)
3 コンベア
4 整列板
5 整列機(本発明)
6 表裏反転機
7 検査選別機
8 カウント集積機
9 折曲機
10 結束機
11 乾燥機
12 駆動機構
13 モータ
14 Vベルト
15 駆動機構
16 モータ
17 ローラ
18 駆動機構
19 フレーム
20 駆動軸
21 ローラ
22 外筒
23 ガイド面
24 外ブラケット
25 ガイド溝