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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】換気システム及び換気方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240215BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20240215BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20240215BHJP
   F24F 7/00 20210101ALI20240215BHJP
   F24F 13/26 20060101ALI20240215BHJP
   F24F 13/02 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
F24F7/06 A
F24F7/10 101
F24F13/06 A
F24F7/06 B
F24F7/00 Z
F24F13/26
F24F13/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020088901
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183877
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】大賀 利一
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-028234(JP,A)
【文献】特開平10-288392(JP,A)
【文献】特開昭57-207738(JP,A)
【文献】特許第4282868(JP,B2)
【文献】特開2017-029902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 7/10
F24F 13/06
F24F 7/00
F24F 13/26
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁と屋根とで囲まれた被覆空間を換気する換気システムであって、
前記周壁に設けられ外部から自然吸気方式で前記被覆空間内における前記周壁近傍に空気を導入する給気部と、
前記屋根に設けられ前記被覆空間から外部に空気を排出する排気部と、
前記給気部を通じて前記被覆空間内に導入され前記被覆空間内の前記周壁近傍で吸入した空気を前記周壁近傍から前記被覆空間の内側に向けて噴射する噴射ノズルを有し前記周壁に沿って複数配列された空気噴射部と、を備える、換気システム。
【請求項2】
前記空気噴射部は、前記噴射ノズルの噴射方向を上下方向に調整可能とする調整機構を有する請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記被覆空間は、クローズド型廃棄物処分場の内部空間である、請求項1又は2に記載の換気システム。
【請求項4】
周壁と屋根とで囲まれ前記周壁よりも低い位置に凹状に形成された低部空間を含む被覆空間を請求項1~3の何れか1項に記載の換気システムで換気する換気方法であって、
前記噴射ノズルからの前記空気を前記低部空間に向けて下向きに噴射させる、換気方法。
【請求項5】
周壁と屋根とで囲まれ前記周壁よりも低い位置に凹状に形成された低部空間を含む被覆空間を換気システムで換気する換気方法であって、
前記換気システムは、
前記周壁に設けられ外部から自然吸気方式で前記被覆空間内における前記周壁近傍に空気を導入する給気部と、
前記屋根に設けられ前記被覆空間から外部に空気を排出する排気部と、
前記給気部を通じて前記被覆空間内に導入された空気を前記周壁近傍から前記被覆空間の内側に向けて噴射する噴射ノズルを有し前記周壁に沿って複数配列された空気噴射部と、を備えており、
前記被覆空間はクローズド型廃棄物処分場の内部空間であり、前記低部空間は廃棄物が貯留され埋立てられる貯留槽であり、
前記噴射ノズルからの前記空気を前記低部空間に向けて下向きに噴射させ、
前記噴射ノズルの前記空気の噴射方向が、前記低部空間への廃棄物の埋立ての進行に伴う前記廃棄物の層の上面の上昇に対応させて、徐々に上向きになるように調整される、換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気システム及び換気方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載の換気システムが知られている。この換気システムは、周壁と屋根とで囲まれた被覆空間の換気を行うものであり、クローズド型廃棄物処分場の換気に適用されている。この換気システムは、周壁近傍に設置された換気装置を備えおり、換気装置は、外部の新鮮な空気を被覆空間内に供給する給気ファンと、被覆空間内の空気を外部に排出する排気ファンと、を備えている。給気ファンの吹出し口から被覆空間の低部(廃棄物層の表面)まで蛇腹状のスパイラル風管が延びており、このスパイラル風管を介して給気ファンからの新鮮な空気が供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4282868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の換気システムには、被覆空間内を満遍なく換気することが望まれる。しかし、上記特許文献1の換気システムでは、スパイラル風管の出口近傍に偏って新鮮な空気が供給されるので、被覆空間内の換気状態にムラが生じ易い。本発明は、被覆空間における換気状態の均斉度を向上する換気システム及び換気方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の換気システムは、周壁と屋根とで囲まれた被覆空間を換気する換気システムであって、周壁に設けられ外部から被覆空間に空気を導入する給気部と、屋根に設けられ被覆空間から外部に空気を排出する排気部と、給気部を通じて被覆空間内に導入された空気を周壁近傍から被覆空間の内側に向けて噴射する噴射ノズルを有し、周壁に沿って複数配列された空気噴射部と、を備える。
【0006】
空気噴射部は、噴射ノズルの噴射方向を上下方向に調整可能とする調整機構を有することとしてもよい。被覆空間は、クローズド型廃棄物処分場の内部空間であることとしてもよい。
【0007】
本発明の換気方法は、周壁と屋根とで囲まれ周壁よりも低い位置に凹状に形成された低部空間を含む被覆空間を上記の何れかの換気システムで換気する換気方法であって、噴射ノズルからの空気を低部空間に向けて下向きに噴射させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被覆空間における換気状態の均斉度を向上する換気システム及び換気方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の換気システムを備えた廃棄物処分場の一例を示す断面図である。
図2図1の廃棄物処分場の平面図である。
図3】空気噴射部を示す斜視図である。
図4】給気口の近傍を拡大して示す周壁の断面図である。
図5】換気構造のうち内側の部分を示す斜視図である。
図6】換気構造のうち外側の部分を示す斜視図である。
図7】換気構造の変形例を示す断面図である。
図8】換気構造の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係る換気システム及び換気構造の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は本実施形態の換気システム、換気方法及び換気構造が適用される廃棄物処分場1の断面図であり、図2はこの廃棄物処分場1の屋根を除いた状態を示す平面図である。図に示されるように、廃棄物処分場1は、廃棄物を埋立て処分する管理型の処分場であり、廃棄物処分場1では、有機物、無機物(塩類、重金属)を含む種々の廃棄物が投棄され埋立て処分される。廃棄物としては、例えば、ごみ焼却施設で発生する焼却灰や飛灰固化物、有機汚泥、無機汚泥、木くず、鉱さい等がある。なお、埋め立てられる廃棄物に対しては、事前に廃棄物から有価物を取り出したり、廃棄物を混合したりといった操作が行われる場合もある。
【0012】
廃棄物処分場1は、廃棄物を貯留するための貯留槽3を有している。貯留槽3は、例えば1辺160m程度のサイズの平面視正方形をなしている。貯留槽3は、地盤100が地表101から下方に掘削されて形成されたすり鉢状の凹部と、当該凹部の内側の面全体に施工された遮水層2とで形成されている。遮水層2は、水を遮断する層であり、例えば、遮水シート、ベントナイト層により構成される。遮水層2の内側の凹状の空間が廃棄物によって埋め立てられ廃棄物層Sが形成される。
【0013】
また、廃棄物処分場1では、廃棄物を安定化させるために廃棄物層Sに対する散水が行われる。この散水によって発生する浸出水は遮水層2の遮水性によって貯留槽3内に閉じ込められ、地盤100には漏出しない。また、浸出水は貯留槽3底部の集水管(図示せず)を通じて集水ピット(図示せず)に集められ、集水ピットから浸出水処理施設(図示せず)に送られて浄化処理される。廃棄物処分場1は、埋立ての終了後、廃棄物層Sの廃棄物が安定化した後に廃止される。
【0014】
廃棄物処分場1は、貯留槽3を全体的に覆う建屋10を備えている。建屋10は、地表101の位置に立設され貯留槽3の周囲を取り囲む周壁7と、貯留槽3の上方を全体的に覆う屋根9と、を備えている。建屋10は平面視で貯留槽3よりもやや大きい正方形をなしている。貯留槽3の外周縁と周壁7との間の細長いスペースにはメンテナンス用の歩廊4が形成されている。このように、周壁7と屋根9とで閉鎖的に囲まれるタイプの廃棄物処分場は、一般的に「クローズド型廃棄物処分場」と呼ばれる。
【0015】
この種のクローズド型の廃棄物処分場1は、埋立て作業の作業環境の悪化を防止すべく、内部空間11(被覆空間)を換気する必要がある。このため、廃棄物処分場1は、以下に説明する換気システム13を備えている。なお、換気システム13で換気すべき「内部空間11」とは、周壁7と屋根9とで囲まれ、周壁7よりも低い位置(地表101よりも低い位置)に凹状に形成された貯留槽3の内側の空間(以下「低部空間11a」という)と、地表101よりも高い位置の空間11bと、を含む空間である。また、貯留槽3内に既に廃棄物層Sが形成されている場合には、貯留槽3の内側の空間のうち廃棄物層Sよりも上方の空間が、上記の低部空間11aである。
【0016】
換気システム13は、周壁7に設けられた給気部17と、屋根9に設けられた排気部19と、内部空間11内で周壁7の近傍に設けられた送風システム21と、を備えている。給気部17は周壁7を通過させて外部から内部空間11に空気を導入し、排気部19は屋根9を通じて内部空間11から外部に空気を排出する。送風システム21は、給気部17によって内部空間11内に導入された周壁7の近傍の空気を、この周壁7の近傍から内部空間11の内側に向けて噴射する。
【0017】
給気部17は、周壁7に設けられた自然給気手段である周壁給気口23と、周壁7に取り付けられた機械給気手段である圧力扇27と、を有している。詳細は後述するが、周壁給気口23は、周壁7のほぼ全体に亘って水平方向に連続的に延在している。圧力扇27は、水平方向にほぼ等間隔で周壁7のほぼ全体に亘って取り付けられている。排気部19は、屋根9に設けられた機械排気手段であるルーフファンで構成されている。例えば、屋根9全体で21個のルーフファンが適切な間隔で設置される。なお、排気部19には、屋根9に設けられた自然排気手段(例えば、開閉可能なトップライト等)が含まれてもよい。
【0018】
送風システム21は、大空間用の気流発生システムであり、例えば建屋10内で周壁7の近傍に据え付けられる。送風システム21は、ファンで発生させた高圧の空気を高風速化して噴射するための噴射ノズル39を備えている。このようなシステムは、「大空間特殊換気システム」、又は「ディリベントシステム(登録商標)」などと呼ばれる場合もある。
【0019】
図3に拡大して示されるように、送風システム21は、ファンを内蔵し高圧の空気を発生させる本体部31を備えている。本体部31からは、歩廊4の延在方向に主ダクト33が延び出しており、主ダクト33からは、複数本(図の例の場合は3本)のノズルダクト35(空気噴射部)が分岐している。複数本のノズルダクト35は、歩廊4の延在方向に等間隔に配列され、内部空間11の内側に向けて略水平に延び出している。ノズルダクト35は、その中央部に形成された蛇腹部37と、蛇腹部37の先端側に設けられた噴射ノズル39と、を有している。
【0020】
送風システム21は、周壁7の近傍で歩廊4の上方に設置され、歩廊4の延在方向にほぼ等間隔に配列されている。例えば、東側(図2の右側)及び西側(図2の左側)の歩廊4では、それぞれ6台の送風システム21が配列されており、図2の北側(図2の上側)及び南側(図2の下側)の歩廊4では、それぞれ中央付近に3台の送風システム21が配列されている。そして、噴射ノズル39が歩廊4の延在方向に等ピッチで配列されるように、送風システム21同士の設置間隔が調整されてもよい。すなわち、例えば東側及び西側の歩廊4では、6個の送風システム21の配列ピッチが調整されることで、合計18個の噴射ノズル39が等ピッチで配列されるようにしてもよい。
【0021】
このような構成の送風システム21では、本体部31が自機の近傍の空気を取り込むとともにファンによってこの空気を高圧化する。そして、本体部31で発生した高圧の空気が主ダクト33を通じて各ノズルダクト35に送出される。ノズルダクト35では、蛇腹部37を通じて噴射ノズル39に空気が送られ、空気は噴射ノズル39の先端から内部空間11の内側に向けて噴射される。噴射ノズル39は先端側に向かうほど流路面積が絞られる形状をなすので、噴射ノズル39によって空気が高風速化されて噴射される。なお、「内部空間11の内側に向けて」とは、平面視においては、概ね送風システム21の直近の周壁7に直交する向きである。すなわち、東側に配列された送風システム21からは西に向け、西側に配列された送風システム21からは東に向け、北側に配列された送風システム21からは南に向け、南側に配列された送風システム21からは北に向けて空気が噴射される。
【0022】
また、図3中に二点鎖線で示されるように、ノズルダクト35は、蛇腹部37において屈曲可能であり、噴射ノズル39の向きを任意の方向に調整可能である。すなわち、蛇腹部37は、噴射ノズル39の噴射方向を少なくとも上下方向に調整可能とする調整機構として機能する。なお、この蛇腹部37により、噴射ノズル39の噴射方向を水平方向にも調整可能である。蛇腹部37の硬さは、噴射ノズル39の向きが作業者の手作業によって変更可能な程度であり、且つ、噴射ノズル39から空気が噴射されているときには噴射ノズル39の向きが変動しない程度である。噴射ノズル39の噴射方向は、低部空間11aに向けて、廃棄物層Sの上面近傍に空気を送り出すために、やや斜め下向きにされることが好ましい。また、廃棄物埋立ての進行に伴って廃棄物層Sの上面が上昇するので、この上面の上昇に対応させて噴射ノズル39の向きが徐々に上向きになるように調整されてもよい。なお、蛇腹部37の調整による噴射ノズル39の可動範囲内では、噴射ノズル39は貯留槽3の外周縁よりも高い位置にあり、低部空間11aに挿入されることはない。また、送風システム21における本体部31の出力や噴射ノズル39の特性は、内部空間11の中央近傍まで噴射空気の流動を生じさせる程度に設定されることが好ましい。
【0023】
続いて、周壁7に設けられた周壁給気口23を備える換気構造20について図4図6を参照しながら説明する。図4は周壁給気口23の近傍を拡大して示す周壁7の断面図である。図4では、周壁7の左側が建屋10の外部であり周壁7の右側が建屋10の内部である。以下の説明で「内側/外側」、「内面/外面」などの語は、建屋10の内外に対応させるものとする。図5は換気構造20のうち内側の部分を示す斜視図であり、図6は換気構造20のうち外側の部分を示す斜視図である。
【0024】
図に示されるように、周壁7は、腰壁41と、耐風梁43と、外壁部45と、を備えている。腰壁41は、地表101から約1m程度の高さで鉛直上方に立ち上がる鉄筋コンクリート製の部位である。耐風梁43は、腰壁41の上端面にほぼ当接し水平に延びるH鋼からなる。なお、耐風梁43は、実際には建屋10の柱等に支持されているが、耐風梁43は腰壁41の上端面にほぼ当接しており、腰壁41の外側の面と耐風梁43の外側の面とがほぼ面一になるように配置されていることから、腰壁41が耐風梁43によって上方に延長されたような構造をなす。このため、以下では、腰壁41と、耐風梁43と、後述するガイド材55aと、を合わせて「内壁部47」と呼び、この内壁部47を周壁7の一構成要素として取扱う。
【0025】
外壁部45は、折り目を上下方向とする姿勢で設置される折板49を備えている。折板49は内壁部47の外側に配置されており、折板49の下端の一部が内壁部47の上端の一部とオーバーラップしている。すなわち、内壁部47の上端よりも下方に、折板49の下端が位置している。折板49は、内壁部47側の折り目49aの位置で内壁部47に接合されている。具体的には、折板49は、タイトフレーム51を介して耐風梁43の外側の面に固定され、内壁部47に対し実質的に壁厚方向の隙間をあけずに、内壁部47と平行に配置されている。
【0026】
また、換気構造20では、周壁給気口23を通じた虫の侵入を避けるための矩形平板状の防虫板53が設けられている。防虫板53の下端は内壁部47に沿って取り付けられている。そして防虫板53の上端は、外壁部45の折板49の内側の面に沿って取り付けられている。具体的な取り付け構造として、耐風梁43の外側のフランジの上端には、耐風梁43と平行に水平方向に延びる断面コ字状のガイド材55aが取り付けられている。また、折板49の内側の面には、ガイド材55aよりもやや高い位置において耐風梁43と平行に水平方向に延びる断面コ字状のガイド材55bが取り付けられている。ガイド材55bは、折板49の内側の折り目49a上に固定される。
【0027】
そして、ガイド材55aに防虫板53の下端部が嵌め込まれ、ガイド材55bに防虫板53の上端部が嵌め込まれることにより、防虫板53が折板49の折り目49aと平行な姿勢、すなわち鉛直な姿勢で固定される。ガイド材55a,55bに嵌め込まれた状態の防虫板53の板厚方向が周壁7の板厚方向に平行であり、防虫板53は折板49の内側の折り目49aに沿って位置する。また、ガイド材55a,55bに対して、防虫板53はケンドン式で着脱可能である。このようにして、防虫板53の下端が内壁部47の上端であるガイド材55aに取り付けられ、防虫板53の上端が外壁部45のガイド材55bに取り付けられている。ガイド材55a,55bに取り付けられた防虫板53は水平方向(図4の紙面直交方向)にスライド可能である。なお、ガイド材55a,55bは一体としてサッシュで構成されてもよい。防虫板53は前述のように矩形平板状をなしており、矩形のフレーム53aの中央に防虫網53bを張設した構造をなしている。
【0028】
このように防虫板53が設置されることにより、防虫板53は、内壁部47の上端に当接するとともに、折板49の内側の各折り目49aに対して実質的に壁厚方向の隙間をあけずに設置される。そして、このような防虫板53が、ガイド材55a,55bの延在方向に隙間をあけずに連続的に設置される。更に、換気構造20では、防虫板53の上端の高さ(ガイド材55bの高さ)の位置で折板49の内側に面戸板57が取り付けられている。そして、面戸板57は、ガイド材55bに対して隙間をあけずに当接している。
【0029】
廃棄物処分場1では、上述したような換気構造20が、歩廊4の延在方向(図4の紙面直交方向)に連続して延びている。そして、換気構造20は、廃棄物処分場1の出入扉や搬入口等を除いて、周壁7のほぼ全周に亘って構築されている。
【0030】
以上のような換気構造20では、折板49の内側から見た場合の凹部分61が空気の通り路になるので、当該凹部分61を通り防虫板53を横切って建屋10の内外を連通させる周壁給気口23が形成される。また、面戸板57が存在することにより、防虫板53を横切らずに建屋10の内外を短絡させるルートが塞がれている。
【0031】
以上説明した換気システム13による廃棄物処分場1の換気方法は、次の通りである。各送風システム21が稼働され、各送風システム21の噴射ノズル39から内部空間11の内側に向けて空気が噴射される。このとき、噴射ノズル39の向きはやや下向きに設定されており、噴射ノズル39からの空気は下向きに低部空間11aに向けて噴射される。
【0032】
このとき、周壁7のほぼ全周に亘って、周壁給気口23を通じて外部の空気が周壁7の内側近傍に吸入される。また、周壁7の内側近傍には、圧力扇27を通じた外部の空気も供給される。そして、これらの空気が、周壁7に沿って配列されたノズルダクト35の噴射ノズル39により、比較的高い風速で周壁7の近傍から内部空間11(特に低部空間11a)の内側に向けて噴射され、減衰しながらも内部空間11の中央まで空気が流動することになる。またこのとき、噴射ノズル39からは比較的高い風速で空気が噴射されるので、噴射ノズル39の周囲の空気や送風システム21の周囲の空気も巻き込まれて内部空間11の内側に向けて流動することになる。その後、空気は内部空間11で上昇し屋根9に設けられた排気部19から建屋10の外部に排出される。
【0033】
このように、換気システム13及びその換気方法では、周壁7の近傍の新鮮な空気がダクト等を介さずに噴射ノズル39から噴射され内部空間11に送り込まれるので、ダクト等を介した場合に比較して、満遍なく内部空間11内に空気が送られ、その結果、内部空間11内の換気状態の均斉度は高くなる。すなわち、ダクト等を介して空気が送られる場合には、ダクト等の出口近傍に偏って新鮮な空気が供給されることになり、内部空間11の換気状態にムラが生じ易いが、換気システム13によれば、このような問題が回避可能である。また、ダクト等が低部空間11aまで延びるように設置される場合には、ダクト等が低部空間11aで行われる埋め立て作業の邪魔になり易いが、このような問題も回避可能である。
【0034】
換気構造20では、折板49という軽量で高剛性の部材が周壁7の一部に使用されることで、合理的な周壁7が構築される。また、周壁給気口23の近傍の構造が、折板49、タイトフレーム51及び面戸板57といったような比較的が入手容易な市販の製品を用いてシンプルに構築可能である。また、周壁7では、外壁部45の下端の一部が内壁部47の上端の一部とオーバーラップしているので、外部からの雨水等の侵入を抑制することができる。また、防虫板53はケンドン式で周壁7から容易に着脱可能であるので、防虫網53bの清掃など防虫板53のメンテナンス作業が容易である。
【0035】
また、外壁部45の折板49がその内壁部47側の折れ点部(頂点部、折り目49a)で内壁部47に連結するようにして、折板49が内壁部47に対し実質的に壁厚方向の隙間をあけずに配置されているので、周壁7の厚さを薄くすることができる。但し、折板49が内壁部47に対し実質的に壁厚方向の隙間をあけずに配置されることは必須ではない。例えば、図7に示されるように、折板49と内壁部47とが壁厚方向に離間していてもよい。この場合、防虫板53の下端が内壁部47の上端であるガイド材55aに取り付けられ、防虫板53の上端が外壁部45のガイド材55bに取り付けられることにより、防虫板53は斜めに傾いた姿勢で取り付けられることになる。
【0036】
また、例えば、図8に示されるように、折板49と内壁部47とが壁厚方向に更に離間し防虫板53が水平姿勢で取付けられてもよい。また、防虫板53の下端が内壁部47の上端に取り付けられることは必須ではない。すなわち、例えば、耐風梁43の上端よりも低い位置で内壁部47の外側の壁面上にガイド材55aが設置されてもよい。また、防虫板53の上端が内壁部47に沿って取り付けられ、下端が外壁部45に沿って取り付けられるようにしてもよい。すなわち例えば、図8におけるガイド材55bを更に下方に移動させて、外壁部45のガイド材55bが内壁部47のガイド材55aよりも低い位置にあってもよい。
【0037】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。例えば、折板49の少なくとも一部が、採光部として機能するように光を透過する材料で形成されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…廃棄物処分場(クローズド型廃棄物処分場)、7…周壁、9…屋根、11…内部空間(被覆空間)、11a…低部空間、13…換気システム、17…給気部、19…排気部、35…ノズルダクト(空気噴射部)、37…蛇腹部(調整機構)、39…噴射ノズル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8