(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ポンプ式吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20240215BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B65D83/00 K
(21)【出願番号】P 2020089243
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-354803(JP,A)
【文献】特開2000-015148(JP,A)
【文献】特開平10-059404(JP,A)
【文献】特開2002-096858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、
前
記ヘッ
ドは、当接部を有し、
前記キャッ
プは、
前記ヘッドを該キャップに向けて移動させた際、前記当接部によって前記ステムの中心軸線から離れる向きに撓む弾性部を有
し、
前記当接部は、前記キャップに向かって先細りになるヘッド側傾斜部であって、前記ヘッドの外周面に設けられ、
前記キャップは、前記口部の外周部に取り付けられるキャップ本体を有し、前記弾性部は、前記キャップ本体の上面から前記ヘッド側に向けて上方に延出するキャップ側弾性片であり、
前記キャップ側弾性片は、前記ヘッドが押し下げられる際に、前記キャップによって周囲から覆われておらず外側に露出しており、前記ヘッドが押し下げられると前記ヘッド側傾斜部によって撓むポンプ式吐出器。
【請求項2】
内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、
前記キャップは、当接部を有し、
前記ヘッドは、該ヘッドを前記キャップに向けて移動させた際、前記当接部によって前記ステムの中心軸線から離れる向きに撓む弾性部を有し、
前記キャップは、
前記口部の外周部に取り付けられるキャップ本体を有し、前記当接部は、前記キャップ本体の上面から前記ヘッドに向けて先細りになる
ように上方に延出するキャップ側傾斜部
であり、
前記キャップ側傾斜部は、前記ヘッドが押し下げられる際に、前記キャップによって周囲から覆われておらず外側に露出しており、
前記
弾性部は、
前記ヘッドの外周部に設けられるヘッド側弾性片であり、前記ヘッド側弾性片は、前記ヘッドを
押し下げた際に前記キャップ側傾斜部によって撓
むポンプ式吐出器。
【請求項3】
前記ヘッドが最下位置まで押圧された状態では、前記弾性部は、前記キャップの径方向において、少なくとも前記キャップ本体の内周面と同等の位置まで撓む請求項1または2に記載のポンプ式吐出器。
【請求項4】
内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、
前記キャップ及び前記ヘッドの何れか一方は、当接部を有し、
前記キャップ及び前記ヘッドの何れか他方は、該ヘッドを該キャップに向けて移動させた際、前記当接部によって前記ステムの中心軸線から離れる向きに撓む弾性部を有し、
前記ヘッドは、前記当接部として機能し、前記キャップに向かって先細りになるヘッド側傾斜部を備え、
前記キャップは、前記口部に保持されるキャップ本体と、前記弾性部として機能し、該キャップ本体に連結するとともに前記ヘッドを該キャップに向けて移動させた際に前記ヘッド側傾斜部によって撓むキャップ側弾性片と、を備え、
前記ヘッドは、前記キャップ側弾性片を避けた位置において前記キャップ本体に対して間隔をあけて設けられる突起部を有していて、
更に、前記キャップ本体と前記突起部との間に介在して前記ヘッドの該キャップに向かう移動を阻止するストッパーを備え
るポンプ式吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ式吐出器として、容器の口部に装着されるキャップと、キャップにより口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、ステムに連結するヘッドとを備え、ヘッドをキャップに向けて移動させることによって容器内の内容液をヘッドの吐出口から吐出させるものが既知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなポンプ式吐出器の内部には、特許文献1に示されているように、キャップに向けて移動させたヘッドを初期位置に復帰させるためにコイルスプリングが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこのようなポンプ式吐出器は、大部分の部材は合成樹脂製であるものの、コイルスプリングは金属製である。このため使用後に廃棄するにあたって、このままの状態では樹脂品としてリサイクルすることができない。また一般にこの種のポンプ式吐出器では、通常の使用時において部材が外れてしまうことを避けるべく、例えば嵌合等によって部材同士は強固に固定されている。従って、ポンプ式吐出器を分解してコイルスプリングと他の部材とに分別するにも手間を要することとなる。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであって、従来と同じようにして内容液を吐出することが可能であって、更にリサイクル性にも優れるポンプ式吐出器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、前記ヘッドは、当接部を有し、前記キャップは、前記ヘッドを該キャップに向けて移動させた際、前記当接部によって前記ステムの中心軸線から離れる向きに撓む弾性部を有し、前記当接部は、前記キャップに向かって先細りになるヘッド側傾斜部であって、前記ヘッドの外周面に設けられ、前記キャップは、前記口部の外周部に取り付けられるキャップ本体を有し、前記弾性部は、前記キャップ本体の上面から前記ヘッド側に向けて上方に延出するキャップ側弾性片であり、前記キャップ側弾性片は、前記ヘッドが押し下げられる際に、前記キャップによって周囲から覆われておらず外側に露出しており、前記ヘッドが押し下げられると前記ヘッド側傾斜部によって撓むポンプ式吐出器である。
【0008】
また、本発明は、内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、前記キャップは、当接部を有し、前記ヘッドは、該ヘッドを前記キャップに向けて移動させた際、前記当接部によって前記ステムの中心軸線から離れる向きに撓む弾性部を有し、前記キャップは、前記口部の外周部に取り付けられるキャップ本体を有し、前記当接部は、前記キャップ本体の上面から前記ヘッドに向けて先細りになるように上方に延出するキャップ側傾斜部であり、前記キャップ側傾斜部は、前記ヘッドが押し下げられる際に、前記キャップによって周囲から覆われておらず外側に露出しており、前記弾性部は、前記ヘッドの外周部に設けられるヘッド側弾性片であり、前記ヘッド側弾性片は、前記ヘッドを押し下げた際に前記キャップ側傾斜部によって撓むポンプ式吐出器である。
前記ヘッドが最下位置まで押圧された状態では、前記弾性部は、前記キャップの径方向において、少なくとも前記キャップ本体の内周面と同等の位置まで撓むことが好ましい。
【0009】
また、本発明は、内容液を収容する容器の口部に装着されるキャップと、該キャップにより該口部に保持されステムが進退移動することによって駆動するポンプと、内容液を外界に吐出させる吐出口を有するとともに該ステムに連結するヘッドと、を備え、該ヘッドを該キャップに向けて移動させることによって該容器内の内容液を該吐出口から吐出させるポンプ式吐出器において、前記キャップ及び前記ヘッドの何れか一方は、当接部を有し、前記キャップ及び前記ヘッドの何れか他方は、該ヘッドを該キャップに向けて移動させた際、前記当接部によって前記ステムの中心軸線から離れる向きに撓む弾性部を有し、前記ヘッドは、前記当接部として機能し、前記キャップに向かって先細りになるヘッド側傾斜部を備え、前記キャップは、前記口部に保持されるキャップ本体と、前記弾性部として機能し、該キャップ本体に連結するとともに前記ヘッドを該キャップに向けて移動させた際に前記ヘッド側傾斜部によって撓むキャップ側弾性片と、を備え、前記ヘッドは、前記キャップ側弾性片を避けた位置において前記キャップ本体に対して間隔をあけて設けられる突起部を有していて、更に、前記キャップ本体と前記突起部との間に介在して前記ヘッドの該キャップに向かう移動を阻止するストッパーを備えるポンプ式吐出器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポンプ式吐出器によれば、ヘッドをキャップに向けて移動させた際、当接部によって弾性部が撓むため、弾性部が復元することによってヘッドを初期位置に復帰させることができる。すなわち本発明のポンプ式吐出器は、金属製のコイルスプリングを用いずとも従来のものと同じように使用することができ、また廃棄にあたっては、これを分解せずとも樹脂品としてリサイクルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るポンプ式吐出器の第一実施形態につき、ヘッドが最上位置(初期位置)にある状態での断面図である。
【
図2】
図1に示したポンプ式吐出器において、ヘッドを押圧し始めた状態での断面図である。
【
図3】
図2に示したポンプ式吐出器において、ヘッドを最下位置まで押圧した状態での断面図である。
【
図4】本発明に係るポンプ式吐出器の第二実施形態につき、ヘッドが最上位置(初期位置)にある状態での断面図である。
【
図5】
図4に示したポンプ式吐出器において、ヘッドを最下位置まで押圧した状態での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係るポンプ式吐出器の一実施形態について説明する。なお、本明細書等における「上」、「下」とは、図示したようにボトル状をなす容器(符合P)にポンプ式吐出器を取り付けて、この容器Pを正立姿勢にした状態での向きである。
【0014】
図1~
図3は、容器Pに取り付けた本発明に係るポンプ式吐出器の第一実施形態を示している。本実施形態のポンプ式吐出器100は、図示した如き容器Pに装着して使用されるものである。本実施形態の容器Pは、上方を開放した円筒状をなす口部P1を備えていて、口部P1の外周面には、雄ねじ部P2を備えている。容器Pの内部には、例えばシャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料等の内容液が収容される。
【0015】
また本実施形態のポンプ式吐出器100は、シリンダー1、弁部材2、パイプ3、内部部材4、ピストン5、パッキン6、キャップ7、ヘッド8、ストッパー9で構成されている。ここでシリンダー1、弁部材2、内部部材4、及びピストン5は、本明細書等における「ポンプ」を構成する部材である。また上記の部材のうち、弁部材2、ピストン5、パッキン6は、弾性を有する軟質の合成樹脂(例えばポリエチレン(LDPE、HDPE、発泡PE))により形成されていて、その他の部材は、硬質の合成樹脂(例えばポリプロピレン(PP)・ポリブチレンテレフタレート(PBT)・ポリアセタール(POM)樹脂等)で形成されている。そしてポンプ式吐出器100を構成する各部材は、容器Pを含めて、共通の中心軸線O上に位置している。
【0016】
シリンダー1は、円板状をなす底壁部1aと、底壁部1aの外縁部から起立する円筒状の筒壁部1bと、筒壁部1bの上部から径方向外側に向けて延在するフランジ壁1cを備えている。底壁部1aの中央部には、これを貫通する孔(吸込口1d)が設けられていて、吸込口1dの周囲には、下方に向けて延在してパイプ3を保持する筒状の保持筒1eが設けられている。また筒壁部1bには、フランジ壁1cの下方においてこれを貫通する孔(通気口1f)が設けられている。
【0017】
弁部材2は、環状をなしていて、底壁部1aの上面に載置された状態で筒壁部1bに嵌合保持される環状基部2aと、吸込口1dを覆って底壁部1aの上面に着座する弁体部2bと、環状基部2aと弁体部2bとを連結する弾性変形可能な連結片2cとを備えている。弁部材2は逆止弁として機能するものであって、シリンダー1内が減圧状態になると、吸込口1dを閉鎖していた弁体部2bが底壁部1aから離反して吸込口1dを開放させることができる。
【0018】
パイプ3は、中空状をなすものであって、上端部は保持筒1eに挿入されてこれに嵌合保持されている。また、図示を省略するパイプ3の下端部は、容器Pの底部近傍に位置している。
【0019】
内部部材4は、シリンダー1の内部に配設されるものである。内部部材4は、円筒状をなすステム4aと、ステム4aの下端部を閉鎖するとともに径方向外側に延在する底部4bとを備えている。またステム4aには、これを貫通する孔(連通口4c)が設けられていて、底部4bの上面には、ステム4aとの連結部よりも径方向外側に位置する環状壁4dが設けられている。
【0020】
ピストン5は、ステム4aに挿通されて底部4bの上方に配設される。本実施形態のピストン5は、水平方向に延在する円環板状の基部5aを備えている。基部5aの外縁部には、基部5aから上方及び下方に向けて延在する外側摺動片5bが設けられている。外側摺動片5bは、筒壁部1bの内周面に対して摺動可能に液密に当接するものである。そして基部5aの内縁部には、基部5aから上方及び下方に向けて延在する内側摺動片5cが設けられている。内側摺動片5cは、その下部は環状壁4dの内周面に対して摺動可能に液密に当接し、その上部は後述するヘッド8における拡径部8dの内周面に対して摺動可能に液密に当接する。
【0021】
パッキン6は、円環板状をなすものであって、シリンダー1の筒壁部1bに挿通されてこれに嵌合保持されている。ポンプ式吐出器100を容器Pに取り付けた際、パッキン6は口部P1の上面とフランジ壁1cの下面に挟持されるものであり、これにより容器Pを倒した際に内容液が口部P1から溢れる等の不具合が防止される。
【0022】
キャップ7は、口部P1の外周部及び上端部を覆うキャップ本体7aを備えている。キャップ本体7aの内周面には、雄ねじ部P2に対応する形状となる雌ねじ部7bが設けられていて、雄ねじ部P2と雌ねじ部7bとを螺合させることにより、キャップ7を容器Pに装着することができる。キャップ本体7aの中央部には、これを貫通する孔が設けられていて、この孔の径方向外側には、キャップ本体7aから上方に向けて延在するとともに径方向外側に向けて弾性変形可能なキャップ側弾性片7cが設けられている。本実施形態のキャップ側弾性片7cは、
図2のA-A断面図に示すように平面視において円弧状をなすものであって、キャップ7には、これらが中心軸線O周りに4つ設けられている。なおキャップ側弾性片7cは、本明細書等で「弾性部」と称する部位に相当する。そしてキャップ本体7aの上面におけるキャップ側弾性片7cの径方向外側には、上面が水平方向に延在する段差部7dが設けられている。
【0023】
またキャップ本体7aの下面には、キャップ側弾性片7cの直下に位置するとともに下方に向けて延在する下部環状壁7eと、下部環状壁7eの径方向外側に位置するとともに下方を開放した環状凹部7fが設けられている。
図1に示すように本実施形態における下部環状壁7eの下端部は、ヘッド8が最上位置(初期位置)にある状態において、ピストン5における基部5aの上面に当接している。また環状凹部7fは、筒壁部1bの上端部を嵌合することが可能であって、これによりシリンダー1は、キャップ7に保持される。
【0024】
ヘッド8は、円筒状をなす筒状壁8aと、筒状壁8aの上部に連結するヘッド本体8bとを備えている。筒状壁8aは、その内側に挿入されたステム4aに嵌合保持されるものである。筒状壁8aの内周面における上部には、嵌合保持されたステム4aの上端部に当接する複数の位置決めリブ8cが設けられていて、これによりヘッド8は、その内側に挿入されたステム4aに対して所定の高さで保持される。また筒状壁8aの内周面における下部には、ステム4aとの間に環状の隙間を形成する拡径部8dが設けられている。図示したように、ステム4aと拡径部8dとの間の隙間には、ピストン5における内側摺動片5cの上端部が入り込んでいて、内側摺動片5cの上端部は、拡径部8dの内周面に対して摺動可能に液密に当接する。そしてヘッド本体8bには、筒状壁8aに連通するとともに水平方向に延在し、先端部に吐出口8eを有するノズル8fが設けられている。
【0025】
またヘッド8は、筒状壁8aとヘッド本体8bが連結する部位において、上方から下方に向けて先細りになる円錐状のヘッド側傾斜部8gを備えている。ヘッド側傾斜部8gは、本明細書等で「当接部」と称する部位に相当する。本実施形態のヘッド側傾斜部8gは、
図1に示すようにヘッド8が最上位置にある状態において、キャップ側弾性片7cの上端部よりも上方に位置しているが、キャップ側弾性片7cの上端部に当接していてもよく、またキャップ側弾性片7cを径方向外側に撓ませる状態でキャップ側弾性片7cの上端部に押し当たっていてもよい。
【0026】
更にヘッド8は、リブ状の突起部8hを備えている。突起部8hの下端部は、図示したようにキャップ7に設けた段差部7dに対して間隔をあけて水平方向に延在する。また本実施形態の突起部8hは、
図2のA-A断面図に示すように、キャップ側弾性片7cを避けた位置(隣り合うキャップ側弾性片7cの間に形成される隙間の位置)に、合計4つ設けられている。
【0027】
図1において仮想線で示したストッパー9は、輸送時等にヘッド8がキャップ7に向けて押し下げられることを防止するものである。本実施形態のストッパー9は、キャップ側弾性片7cに対して側方から押込むことによってこれに取り付けられるものである。またキャップ側弾性片7cに取り付けた状態において、ストッパー9は、段差部7dと突起部8hの間に介在している。
【0028】
このような部材によって構成されるポンプ式吐出器100は、ストッパー9を取り外すことでヘッド8が押し下げ可能状態になる。そしてヘッド8を上方から押圧すると、
図2に示すように、ステム4aがヘッド8とともに押し下げられる(中心軸線Oに沿ってステム4aがキャップ7に向けて移動する)。またステム4aが押し下げられるに伴い、
図2に示すようにステム4aに連結する底部4bも下降するため、環状壁4dと内側摺動片5cの下部との液密な当接が解除される。またヘッド8が押し下げられるに伴ってヘッド側傾斜部8gがキャップ側弾性片7cの上端部に当接する。このため、ヘッド側傾斜部8gが径方向外側に撓み始める。
【0029】
そして、
図3に示すようにヘッド8を更に押し下げていくと、内部部材4とともにピストン5も下降して、シリンダー1の内部が加圧される。このためシリンダー1内の内容液は、連通口4cを通過し、ステム4a、筒状壁8a、及びノズル8fの内部通路を通って吐出口8eから外界に吐出される。なお、ピストン5が下降するに伴って形成されることになるシリンダー1の上部空間には、通気口1fから空気が取り込まれる。従って、ピストン5が下方に移動しても、このシリンダー1の上部空間は負圧化されず、ピストン5の下降が妨げられることはない。
【0030】
また
図3に示すようにヘッド8を押し下げていくと、下降するヘッド側傾斜部8gによってキャップ側弾性片7cは更に径方向外側に撓むことになる。従ってヘッド8には、撓んだキャップ側弾性片7cによって上方への付勢力が作用することになる。
【0031】
その後、ヘッド8への押圧を解除すると、撓んだキャップ側弾性片7cが復元するに伴って、最下位置まで下降していたヘッド8は上昇し始める。これに伴い、環状壁4dに対して内側摺動片5cの下部が再び液密に当接しつつ、ピストン5が内部部材4とともに上昇するため、シリンダー1の内部が減圧される。これにより、弁体部2bが底壁部1aから離反して吸込口1dが開放されて、パイプ3を通して容器P内の内容液をシリンダー1内に吸引させることができる。
【0032】
このように本実施形態のポンプ式吐出器100によれば、金属製のコイルスプリングを用いずとも、内容液を吐出させた後のヘッド8を復帰させることができ、従来のポンプ式吐出器と同じように使用することができる。
【0033】
次に、
図4~
図5を参照しながら本発明に係るポンプ式吐出器の第二実施形態について説明する。本実施形態のポンプ式吐出器200は、上述した容器Pに装着して使用されるものである。またポンプ式吐出器200は、上述したシリンダー1、弁部材2、パイプ3、内部部材4、ピストン5、パッキン6の他、キャップ17、ヘッド18により構成されている。
【0034】
キャップ17は、口部P1の外周部及び上端部を覆うキャップ本体17aを備えている。キャップ本体17aの内周面には、雄ねじ部P2に螺合する雌ねじ部17bが設けられている。キャップ本体17aの上面には、下方から上方に向けて先細りとなる円錐状のキャップ側傾斜部17cが設けられていて、キャップ側傾斜部17cの内縁部には、円筒状の内筒部17dが設けられている。キャップ側傾斜部17cは、本明細書等で「当接部」と称する部位に相当する。そして本実施形態における内筒部17dの下端部は、
図4に示すようにヘッド18が最上位置(初期位置)にある状態において、ピストン5における基部5aの上面に当接している。またキャップ17におけるキャップ側傾斜部17cの下方には、筒壁部1bの上端部を嵌合することが可能な環状凹部17eが設けられている。
【0035】
ヘッド18は、円筒状をなす筒状壁18aと、筒状壁18aの上部に連結するヘッド本体18bとを備えている。筒状壁18aは、その内側に挿入されたステム4aに嵌合保持されるものである。筒状壁18aの内周面における上部には、嵌合保持されたステム4aの上端部に当接する複数の位置決めリブ18cが設けられていて、筒状壁18aの内周面における下部には、ステム4aとの間に環状の隙間を形成する拡径部18dが設けられている。なお位置決めリブ18cと拡径部18dは、上述した位置決めリブ8cと拡径部8dと同じように機能する部位である。そしてヘッド本体18bには、筒状壁18aに連通するとともに水平方向に延在し、先端部に吐出口18eを有するノズル18fが設けられている。
【0036】
またヘッド18は、筒状壁18aの径方向外側に位置してヘッド本体18bから下方に向けて延在するとともに径方向外側に向けて弾性変形可能なヘッド側弾性片18gを備えている。図示は省略するが、上述したキャップ側弾性片7cと同様に本実施形態のヘッド側弾性片18gも、平面視において円弧状をなすものであって、ヘッド18には、これらが中心軸線O周りに4つ設けられている。なおヘッド側弾性片18gは、本明細書等で「弾性部」と称する部位に相当する。
【0037】
このような部材によって構成されるポンプ式吐出器200は、ヘッド18を上方から押圧すると、ステム4aがヘッド18とともに押し下げられる。またピストン5は、上述したポンプ式吐出器100の場合と同様に、内部部材4に対する上下方向への相対移動が可能となる。そしてヘッド18が押し下げられるに伴って、キャップ側傾斜部17cに押し付けられるヘッド側弾性片18gが径方向外側に撓み始める。
【0038】
そしてヘッド18を更に押し下げていくと、シリンダー1の内部が加圧され、シリンダー1内の内容液は、環状壁4dと内側摺動片5cの下部との液密な当接が解除されて開口した連通口4cを通過し、更にステム4a、筒状壁8a、及びノズル18fの内部通路を通って吐出口18eから外界に吐出される。
【0039】
その後、ヘッド18への押圧を解除すると、撓んだヘッド側弾性片18gが復元するに伴ってヘッド18が上昇し始め、シリンダー1の内部が減圧される。これにより、上述したポンプ式吐出器100の場合と同様に、容器P内の内容液をシリンダー1内に吸引させることができる。
【0040】
このように本実施形態のポンプ式吐出器200においても、金属製のコイルスプリングを用いることなく、内容液を吐出させた後のヘッド18を復帰させることができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0042】
例えば、キャップ側弾性片7cとヘッド側弾性片18gは、本実施形態では4つ設けられていたが、その数は任意に変更可能であって、複数に限られず単数でもよい。またキャップ側弾性片7cとヘッド側弾性片18gは、平面視において円弧状になる湾曲板状をなすものであったが、平板状になるものでもよい。またヘッド側傾斜部8gとキャップ側傾斜部17cは、図示したように側面視において直線状に傾斜するものであったが、例えば平面視において円弧状に湾曲しながら傾斜するものでもよい。またポンプの構成も、上述したものに限られず、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:シリンダー
1a:底壁部
1b:筒壁部
1c:フランジ壁
1d:吸込口
1e:保持筒
1f:通気口
2:弁部材
2a:環状基部
2b:弁体部
2c:連結片
3:パイプ
4:内部部材
4a:ステム
4b:底部
4c:連通口
4d:環状壁
5:ピストン
5a:基部
5b:外側摺動片
5c:内側摺動片
6:パッキン
7:キャップ
7a:キャップ本体
7b:雌ねじ部
7c:キャップ側弾性片(弾性部)
7d:段差部
7e:下部環状壁
7f:環状凹部
8:ヘッド
8a:筒状壁
8b:ヘッド本体
8c:位置決めリブ
8d:拡径部
8e:吐出口
8f:ノズル
8g:ヘッド側傾斜部(当接部)
8h:突起部
9:ストッパー
17:キャップ
17a:キャップ本体
17b:雌ねじ部
17c:キャップ側傾斜部(当接部)
17d:内筒部
17e:環状凹部
18:ヘッド
18a:筒状壁
18b:ヘッド本体
18c:位置決めリブ
18d:拡径部
18e:吐出口
18f:ノズル
18g:ヘッド側弾性片(弾性部)
100:ポンプ式吐出器
200:ポンプ式吐出器
O:中心軸線
P:容器
P1:口部
P2:雄ねじ部