(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
(21)【出願番号】P 2020104288
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】深谷 尚利
(72)【発明者】
【氏名】藤本 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】宮倉 隆志
(72)【発明者】
【氏名】西山 仁
(72)【発明者】
【氏名】萬谷 隆典
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210129946(CN,U)
【文献】特開2014-068373(JP,A)
【文献】特開2001-109481(JP,A)
【文献】国際公開第2019/035304(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を放射するスピーカと、
前記スピーカを収容し、前記スピーカから放射された音波が通過する音道空間と、前記音道空間と連通し外耳道に挿入可能な開口端部と、を有する第一ハウジングと、
前記スピーカよりも前記開口端部の側、且つ、前記音道空間の外側に配置されたマイクロホンと、
前記マイクロホンを覆う第二ハウジングと、
前記スピーカ及び前記マイクロホンの作動を制御する制御基板と、を備え、
前記第一ハウジングは、前記スピーカよりも前記開口端部の側に形成された側壁と、当該側壁の外面の一部を内側に窪ませて形成された側壁凹部と、を有しており、
前記側壁凹部が前記第二ハウジングに覆われることにより前記マイクロホンの収容空間が形成されており、
前記側壁凹部には、前記音道空間と前記収容空間とを仕切る仕切壁が形成されており、当該仕切壁には、前記音道空間と前記収容空間とを連通させる連通孔が形成されて
おり、
前記連通孔は複数設けられており、
複数の前記連通孔は、夫々、気圧調整孔と前記マイクロホンの集音孔とで構成されているイヤホン。
【請求項2】
前記マイクロホンは、前記制御基板に電気的に接続されるフレキシブル基板を有しており、
前記フレキシブル基板は、前記第一ハウジングの外側に延在している請求項
1に記載のイヤホン。
【請求項3】
前記フレキシブル基板には、前記連通孔と重複する貫通孔が形成されている請求項
2に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記フレキシブル基板と前記仕切壁との間に配置される介在部材を更に備え、
前記介在部材には、前記連通孔と同一形状で重複する第二貫通孔が形成されている請求項
3に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードバック方式のマイクロホンを備えたイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音波を放射するスピーカと、外部の騒音を集音可能なマイクロホンと、スピーカ及びマイクロホンの作動を制御する制御基板と、を備えたイヤホンが知られている(例えば、特許文献1~2参照)。ノイズキャンセリング方式として、マイクロホンをスピーカよりも内側(耳側)に配置したフィードバック方式と、マイクロホンをスピーカよりも外側に配置したフィードフォワード方式とがある。特許文献1~2に記載のイヤホンはフィードバック方式を採用しており、このフィードバック方式は、スピーカから放射される音波に対して耳側にマイクロホンが配置されているため、フィードフォワード方式に比べてノイズ低減効果が高いものとなっている。
【0003】
特許文献1に記載のイヤホンは、長尺筒状の音響管と、音響管の壁面を外側に窪ませて形成された2つの凹部に夫々収容されるスピーカ及びマイクロホンと、を備えている。スピーカの放音面を音響管の内周面と面一にして音響管の音響インピーダンスを乱すことを防止すると共に、マイクロホンも音響管の音響インピーダンスを乱さないように音響管の音道外に配置されている。
【0004】
特許文献2に記載のイヤホンは、スピーカの音波が放射される前側空洞の側壁を切欠いた部位に、マイクロホンを接着剤等で連結している。このマイクロホンには音響導入孔が設けられており、この音響導入孔を介してスピーカからの音を集音して生成された音声信号と外部の騒音を集音して生成された音声信号とを制御基板に送信し、これら音声信号を受信した制御基板によりノイズキャンセリング信号が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-79873号公報
【文献】特表2019-524028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のイヤホンのように、音響管に外側に窪ませた凹部を形成して、この凹部にマイクロホンを収容する形態であると、マイクロホンと制御基板とを電気的に接続するために音響管に導線配設用孔を設けて密封する必要があり、組立性が悪い。特許文献2に記載のイヤホンのように、前側空洞の側壁を切欠いた部位にマイクロホンを接着剤等で連結する形態であると、切欠いた部位により音道が適正に確保されず、音質が安定しない。
【0007】
そこで、組立性が高く音質を安定させることができるイヤホンが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るイヤホンの特徴構成は、音波を放射するスピーカと、前記スピーカを収容し、前記スピーカから放射された音波が通過する音道空間と、前記音道空間と連通し外耳道に挿入可能な開口端部と、を有する第一ハウジングと、前記スピーカよりも前記開口端部の側、且つ、前記音道空間の外側に配置されたマイクロホンと、前記マイクロホンを覆う第二ハウジングと、前記スピーカ及び前記マイクロホンの作動を制御する制御基板と、を備え、前記第一ハウジングは、前記スピーカよりも前記開口端部の側に形成された側壁と、当該側壁の外面の一部を内側に窪ませて形成された側壁凹部と、を有しており、前記側壁凹部が前記第二ハウジングに覆われることにより前記マイクロホンの収容空間が形成されており、前記側壁凹部には、前記音道空間と前記収容空間とを仕切る仕切壁が形成されており、当該仕切壁には、前記音道空間と前記収容空間とを連通させる連通孔が形成されている点にある。
【0009】
本構成のようにスピーカよりも開口端部の側(耳側)にマイクロホンが配置されたフィードバック方式のイヤホンは、フィードフォワード方式のイヤホンに比べてノイズ低減効果が高い。一方、音道空間にマイクロホンを配置した場合、音響特性が安定せず、マイクロホンと制御基板とを電気的に接続するためにハウジングに配線用孔を設けて密封する必要があり、組立性が悪い。
【0010】
そこで、本構成では、第一ハウジングと第二ハウジングとを備え、第一ハウジングの側壁凹部に仕切壁を設けた。これにより、スピーカから放射された音波が通過する音道空間とマイクロホンの収容空間とが別空間で形成されるため、音質が安定する。また、第一ハウジングの側壁の外面を内側に窪ませた側壁凹部を第二ハウジングで覆うだけで、音道空間とマイクロホンの収容空間とを別空間で形成することが可能となるため、イヤホンの組立てが容易である。
【0011】
さらに、第一ハウジングの側壁凹部が第二ハウジングに覆われることによりマイクロホンの収容空間が形成されているため、マイクロホンと制御基板とを電気的に接続するための配線を第一ハウジングの外側に設けることが可能となる。その結果、スピーカを収容する第一ハウジングにマイクロホンの配線用孔を設ける必要がなく、組立性が向上する。また、第一ハウジングの側壁凹部の仕切壁に音道空間とマイクロホンの収容空間とを連通させる連通孔を形成しているため、加工が容易である。このように、組立性が高く音質を安定させることができるイヤホンを提供できた。
【0012】
他の特徴構成は、前記連通孔は複数設けられており、複数の前記連通孔は、夫々、気圧調整孔と前記マイクロホンの集音孔とで構成されている点にある。
【0013】
本構成のように、連通孔として、マイクロホンの集音孔に加えて気圧調整孔で構成すれば、イヤホンを外耳道に挿入した際に鼓膜への負担を軽減することができる。
【0014】
他の特徴構成は、前記マイクロホンは、前記制御基板に電気的に接続されるフレキシブル基板を有しており、前記フレキシブル基板は、前記第一ハウジングの外側に延在している点にある。
【0015】
本構成のように、マイクロホンと制御基板とを電気的に接続する配線をフレキシブル基板で構成し、このフレキシブル基板を第一ハウジングの外側に延在させれば、組立性がより向上する。
【0016】
他の特徴構成は、前記フレキシブル基板には、前記連通孔と重複する貫通孔が形成されている点にある。
【0017】
本構成のように、フレキシブル基板に連通孔と重複する貫通孔を形成すれば、第一ハウジングに設けることが難しい微小な貫通孔を容易に形成することが可能となるため、音道空間に対する音響特性への影響を最小化することができる。
【0018】
他の特徴構成は、前記フレキシブル基板と前記仕切壁との間に配置される介在部材を更に備え、前記介在部材には、前記連通孔と同一形状で重複する第二貫通孔が形成されている点にある。
【0019】
本構成のように、フレキシブル基板と仕切壁との間に介在部材を設ければ、フレキシブル基板が安定的に支持され、フレキシブル基板の第一ハウジングの外側への引き回しが容易となる。また、介在部材に連通孔と同一形状の第二貫通孔を設けているため、音道空間とマイクロホンの収容空間とを確実に連通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】フレキシブル基板の配設状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るイヤホンの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、イヤホンの一例として、マイクロホン3を備え、フィードバック方式でノイズをキャンセルするイヤホン100として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態におけるイヤホン100は、外耳道に密着するエラストマ等の弾性材料から成るイヤーパッド10を備えたカナル型(耳栓型)ワイヤレスイヤホンである。
図1には、右耳に挿入される一方のイヤホン100が図示されており、左耳に挿入される他方のイヤホン100も左右対称にした同様の構造であるため、以下の説明を省略する。双方のイヤホン100は、携帯電話等のデバイスと近距離無線通信可能に構成されている。なお、デバイスと有線接続されるイヤホン100であっても良いし、インナーイヤー型イヤホンであっても良く、特に限定されない。
【0023】
図2~
図3に示すように、イヤホン100は、スピーカ1と、第一ハウジング2と、マイクロホン3と、第二ハウジング4と、制御基板5とを備えている。また、イヤホン100は、第三ハウジング7と、スペーサ8と、フレキシブル基板9と、を備えている。第一ハウジング2、第二ハウジング4、第三ハウジング7は樹脂等の絶縁性材料で形成されており、フレキシブル基板9の配線は導電性の金属材料で形成されている。また、本実施形態におけるスペーサ8は両面テープで構成されているが、樹脂や金属等で構成しても良い。
【0024】
スピーカ1は、制御基板5と電気的に接続された状態で、第一ハウジング2に収容されている(
図3参照)。スピーカ1は、制御基板5から出力された音声信号が入力され、この音声信号を音に変換して振動板11から音波を放射する。スピーカ1は、ドーム状の振動板11と、振動板11に固定されるボイスコイル12と、ボイスコイル12を振動させる磁気回路13と、ボイスコイル12及び磁気回路13を収容するフレーム14とを有する。スピーカ1は公知のダイナミックスピーカであるため、詳細な説明を省略する。
【0025】
第一ハウジング2は、外耳道に挿入可能な開口端部21と、スピーカ1よりも開口端部21の側に形成され、開口端部21からスピーカ1側に拡径するように延出した筒状部22(側壁の一例)と、筒状部22から延出し、スピーカ1を収容するスピーカ収容空間23aを形成する基台部23と、を有している。
【0026】
開口端部21は、環状凹部21aを有しており、開口を覆う通気性のある音響レジスタ24が環状凹部21aに固定されている。また、開口端部21の外面には、イヤーパッド10の係合凸部10aが係合する係合凹部21bが形成されている。
【0027】
開口端部21は筒状部22の内部に形成された音道空間2Aと連通しており、スピーカ1から放射された音波はこの音道空間2Aを通過する。筒状部22は、開口端部21から基台部23に向かうにつれてラッパ状に外側に拡がる形状を呈しており、外面の一部を内側に窪ませた側壁凹部25を有している。側壁凹部25は、長孔状の複数(本実施形態では2つ)の第一貫通孔25a1(連通孔の一例)が形成された底部25a(仕切壁の一例)と、後述する第一スペーサ81の第一突出部81bが係合して案内される案内凹部25b1が形成された第一側面25bと、第一側面25bの両側から開口端部21に向かって高さが小さくなるように傾斜した一対の第二側面25cと、第一側面25bと平行且つ開口端部21の側で一対の第二側面25cを接続する第三側面25dとを含んでいる(
図2参照)。すなわち、側壁凹部25の底部25aは、周囲を第一側面25b、一対の第二側面25c、第三側面25dに囲まれている。
【0028】
底部25aは、音道空間2Aと後述するマイク収容空間3Aとを仕切っている(
図3参照)。この底部25aに形成された複数の第一貫通孔25a1は、音道空間2Aとマイク収容空間3Aとを連通させており、底部25aの中央付近に位置する第一貫通孔25a1はマイクロホン3の集音孔26の一部と、開口端部21近傍に位置する第一貫通孔25a1は気圧調整孔27の一部として夫々構成されている。第一側面25bには、後述する第二ハウジング4の隔壁44が対向しており、第二側面25cには、後述する第二ハウジング4の側壁部42が対向しており、第三側面25dには、後述する第二ハウジング4の接続壁43が対向している(
図2~
図3参照)。
【0029】
マイクロホン3は、フレキシブル基板9を介して制御基板5と電気的に接続されており、スピーカ1よりも第一ハウジング2の開口端部21の側に配置され、且つ、音道空間2Aの外側に配置されている(
図3参照)。このマイクロホン3は、周囲の騒音を集音すると共に、イヤホン100を装着した人物の話し声も集音することができる。マイクロホン3は、集音孔26を介して音道空間2Aの音を集音すると共に周囲の騒音も集音して生成された音声信号を制御基板5に送信し、制御基板5が該音声信号の位相を反転させたノイズキャンセル信号をスピーカ1に出力するように構成されている。なお、マイクロホン3のフィードバック方式のノイズキャンセル機構や通話機構は公知であるので、詳細な説明を省略する。
【0030】
第二ハウジング4は、マイクロホン3を覆っている。この第二ハウジング4は、第一ハウジング2の側壁凹部25の上方を覆う天壁41と、天壁41から立設し側壁凹部25に内挿される一対の側壁部42と、一対の側壁部42の先端部(第一ハウジング2の開口端部21側の端部)を接続する接続壁43と、一対の側壁部42の基端部(第一ハウジング2の基台部23側の端部)を接続する隔壁44と、を有している(
図2参照)。第二ハウジング4を側壁凹部25に嵌め込むことにより、側壁凹部25の中に更に天壁41と一対の側壁部42と接続壁43と隔壁44と側壁凹部25の底部25a(厳密にはフレキシブル基板9)とで囲まれるマイク収容空間3A(収容空間の一例)が形成される。マイク収容空間3Aにはマイクロホン3が収容されている(
図3参照)。つまり、側壁凹部25が第二ハウジング4に覆われることにより、マイク収容空間3Aが形成されている。
【0031】
天壁41は、第二ハウジング4が側壁凹部25に嵌め込まれた状態で、筒状部22の外形と滑らかにつながり、筒状部22と一体化して接続壁43から隔壁44に向かうにつれてラッパ状に拡がる形状を外側の面に呈し、内側にマイク収容空間3Aを形成した主壁部41aと、主壁部41aから延出し第一ハウジング2の基台部23に対向する補助壁部41bとで構成されている。一対の側壁部42は、夫々第一ハウジング2の一対の第二側面25cに対向しており、第二側面25cと同様に、隔壁44から接続壁43に向かって高さが小さくなるように傾斜している。接続壁43は、第一ハウジング2の第三側面25dに対向しており、上述した気圧調整孔27と外部とを連通させる切欠部43aが形成されている。なお、切欠部43aは貫通孔であっても良い。
【0032】
隔壁44は、天壁41の長手方向中央付近から立設しており、第一ハウジング2の第一側面25bに対向している。これら一対の側壁部42、接続壁43及び隔壁44は、天壁41から立設する立設部として構成されており、第一ハウジング2の側面25b,25c,25dに嵌合又は接着等されると共に、補助壁部41bが第一ハウジング2の基台部23にフレキシブル基板9を挟んで接着等されることにより、第二ハウジング4が第一ハウジング2に固定されている。
【0033】
制御基板5は、スピーカ1及びマイクロホン3の作動を制御する制御回路を有している。この制御回路は、無線通信用LSIや音声データ処理用LSI等で構成されており、不図示のバッテリから電源が供給される。この制御基板5によるスピーカ1及びマイクロホン3の作動形態は公知であるので、詳細な説明を省略する。
【0034】
第三ハウジング7は、底蓋70と、底蓋70との間で制御基板5を収容する収容基部71と、収容基部71からブロック状に延出したブロック状部72と、収容基部71及びブロック状部72から円筒状に突出する突出筒部73と、を有しており、これら収容基部71とブロック状部72と突出筒部73とが一体形成されている(
図1参照)。突出筒部73は、天壁41の補助壁部41bを覆って支持する支持壁部73aを含んでいる(
図2~
図3参照)。支持壁部73aの内側には、第三ハウジング7を第一ハウジング2に固定するための複数(本実施形態では2つ)のボルトBが挿入される孔を有する固定部73bが形成されている(
図2参照)。
【0035】
スペーサ8は、両面テープで構成されており、第一スペーサ81(介在部材の一例)と第二スペーサ82と第三スペーサ83と第四スペーサ84とを有している(
図2参照)。第一スペーサ81は、フレキシブル基板9と側壁凹部25の底部25aとの間に配置されており、第二スペーサ82は、フレキシブル基板9と第二ハウジング4の一対の側壁部42、接続壁43及び隔壁44との間に配置されている。つまり、これら第一スペーサ81及び第二スペーサ82によりフレキシブル基板9を挟み込んで接着した状態で、第二ハウジング4が第一ハウジング2に固定されることにより、フレキシブル基板9が位置固定される。
【0036】
第一スペーサ81は矩形状部材で構成されており、矩形部81aと矩形部81aの一辺から突出した第一突出部81bとが一体形成されている。矩形部81aには、第一貫通孔25a1と同一形状で第一貫通孔25a1よりも若干大きい長孔状に形成された複数(本実施形態では2つ)の第二貫通孔81a1が形成されている。複数の第二貫通孔81a1は、夫々複数の第一貫通孔25a1と重複しており、矩形部81aの中央付近に位置する第二貫通孔81a1はマイクロホン3の集音孔26の一部として、開口端部21近傍に位置する第二貫通孔81a1は気圧調整孔27の一部として夫々構成されている。第二スペーサ82は中央が開口した矩形環状部材で構成されており、矩形環状部82aと矩形環状部82aの一辺から突出した第二突出部82bとが一体形成されている。矩形環状部82aは、中央の開口にマイクロホン3が挿入される。これら第一突出部81b及び第二突出部82bは、側壁凹部25の案内凹部25b1に挿入されて位置決めされる。
【0037】
第三スペーサ83は基台部23の外面に接着される屈曲部材で構成されており、長方形状の平面部83aと平面部83aの中央付近から延出し平面部83aよりも幅狭で屈曲させた屈曲部83bとが一体形成されている。第四スペーサ84は、U字状部材で構成されており、屈曲部83bに干渉しない位置に設けられた一対の腕部84aと、一対の腕部84aを接続する接続部84bとが一体形成されている。夫々の腕部84aには、ボルトBが挿入される孔部84a1が形成されている。これら第三スペーサ83及び第四スペーサ84によりフレキシブル基板9を挟み込んで接着した状態で、固定部73b及び腕部84aの孔部84a1に挿入されたボルトBにより第三ハウジング7が第一ハウジング2に固定されることにより、フレキシブル基板9が位置固定される。
【0038】
図4に示すように、フレキシブル基板9は、第一ハウジング2の外側(音道空間2Aに干渉しない箇所)に延在している。このフレキシブル基板9は、マイクロホン3が電気的に接続された矩形板状の基部91と、基部91から延出する延出部92と、延出部92の端部に形成され、制御基板5に電気的に接続される接続端部93とが一体形成されている。
【0039】
基部91は、中央にマイクロホン3を配置した状態で、第一スペーサ81及び第二スペーサ82に挟み込まれて支持されている。基部91には、微小な丸孔で構成される複数(本実施形態では2つ)の第三貫通孔91a(貫通孔の一例)が形成されている(
図3も参照)。複数の第三貫通孔91aは、夫々複数の第一貫通孔25a1及び第二貫通孔81a1と重複しており、基部91の中央付近に位置する第三貫通孔91aはマイクロホン3の集音孔26の一部として直径0.5mm程度の微小な丸孔で構成されており、開口端部21近傍に位置する第三貫通孔91aは気圧調整孔27の一部として直径0.2mm程度の微小な丸孔で構成されている。すなわち、集音孔26は、第一ハウジング2の底部25aの中央付近に位置する第一貫通孔25a1、第二貫通孔81a1及び第三貫通孔91aから構成されると共に、気圧調整孔27は、第一ハウジング2の底部25aの開口端部21近傍に位置する第一貫通孔25a1、第二貫通孔81a1及び第三貫通孔91aから構成される。本実施形態では、加工が容易なフレキシブル基板9に微小な丸孔で構成される複数の第三貫通孔91aを形成することで、音道空間2Aを通過する音波の音質を良好なものとすることができる。
【0040】
延出部92は、基部91から側壁凹部25の案内凹部25b1に沿って屈曲して延在する第一延在部92aと、第一延在部92aから基台部23の側面に沿って屈曲して延在する第二延在部92bと、第二延在部92bから基台部23の端面に沿って屈曲して延在する第三延在部92cと、第三延在部92cから制御基板5に向かって屈曲して延在する第四延在部92dとを有している。第三延在部92cには、スピーカ1のフレーム14の底板14aの一部が露出する中央孔部92c1が形成されている。接続端部93は板状部材を波状に屈曲させた板ばねとして形成されており、フレキシブル基板9と制御基板5との電気的な接続が振動により切断されないように構成されている。
【0041】
上述した実施形態に係るイヤホン100を組付方法は、以下の通りとなる。
図2に示すように、第一スペーサ81とマイクロホン3が実装されたフレキシブル基板9の基部91と第二スペーサ82とをこの順で積層させた状態で、第一スペーサ81及び第二スペーサ82の突出部81b,82bを第一ハウジング2の案内凹部25b1に挿入し、次に、第二ハウジング4を第一ハウジング2の側壁凹部25に固定する。これにより、第一貫通孔25a1、第二貫通孔81a1及び第三貫通孔91aが重複し、マイクロホン3の集音孔26と気圧調整孔27とが形成される。この気圧調整孔27はマイクロホン3の実装部分の外側に位置しており、これにより音道空間2Aが第二ハウジング4の接続壁43の切欠部43aを介して外部と連通するため、イヤホン100を外耳道に挿入した際に鼓膜への負担を軽減することができる。
【0042】
また、第三スペーサ83を基台部23の側面に接着固定した状態で、フレキシブル基板9の第三延在部92c及び第四スペーサ84をこの順で積層し、第三ハウジング7の固定部73b及び第四スペーサ84の孔部84a1にボルトBを挿入して、スピーカ1を収容した第一ハウジング2に第三ハウジング7を固定する。そして、フレキシブル基板9の接続端部93を第三ハウジング7の不図示の貫通孔に挿通して制御基板5と電気的に接続し、制御基板5等を収容した収容基部71に底蓋70を固定する。その後、第一ハウジング2の開口端部21の環状凹部21aに音響レジスタ24を固定し、イヤーパッド10を装着してイヤホン100が完成する(
図1参照)。
【0043】
本実施形態のようにスピーカ1よりも第一ハウジング2の開口端部21の側にマイクロホン3が配置されたフィードバック方式は、スピーカ1から放射される音波に対して耳側にマイクロホン3が配置されているため、フィードフォワード方式に比べてノイズ低減効果が高い。このフィードバック方式のイヤホン100において、第一ハウジング2と第二ハウジング4とを備え、第一ハウジング2の側壁凹部25に仕切壁となる底部25aを設けた。これにより、スピーカ1から放射された音波が通過する音道空間2Aとマイク収容空間3Aとが別空間で形成されるため、音質が安定する。本実施形態では、第一ハウジング2の筒状部22の外面を内側に窪ませた側壁凹部25に第二ハウジング4の天壁41から立設する一対の側壁部42、接続壁43及び隔壁44を内挿することにより、音道空間2Aとマイク収容空間3Aとを別空間で形成することが可能となるため、組立てが容易である。
【0044】
また、第一ハウジング2の側壁凹部25が第二ハウジング4に覆われることによりマイク収容空間3Aが形成されているため、マイクロホン3と制御基板5とを電気的に接続するためのフレキシブル基板9を第一ハウジング2の外側に設けることが可能となる。その結果、スピーカ1を収容する第一ハウジング2に配線用孔を設ける必要がなく、組立性が向上する。さらに、マイクロホン3と制御基板5とを電気的に接続する配線をフレキシブル基板9で構成し、このフレキシブル基板9を第一ハウジング2の外側に延在させているので、組立性がより向上する。このとき、フレキシブル基板9と側壁凹部25の底部25aとの間に第一スペーサ81を設けているので、フレキシブル基板9が安定的に支持され、フレキシブル基板9の第一ハウジング2の外側への引き回しが容易となる。
【0045】
また、第一ハウジング2の側壁凹部25に音道空間2Aとマイク収容空間3Aとを連通させる第一貫通孔25a1を形成しているため、加工が容易である。さらに、側壁凹部25の底部25aに長孔状の第一貫通孔25a1を形成し、フレキシブル基板9の基部91に第一貫通孔25a1と重複する第三貫通孔91aを形成すれば、第三貫通孔91aの孔径を微小に構成することが可能となるため、音響特性に影響を与えず音道空間2Aとマイク収容空間3Aとを連通させることができる。また、第一スペーサ81に第一貫通孔25a1と同一形状の第二貫通孔81a1を設けているため、音道空間2Aとマイク収容空間3Aとを確実に連通させることができる。
【0046】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態における第二ハウジング4の天壁41から立設する立設部としての一対の側壁部42、接続壁43及び隔壁44は、少なくとも何れか1つ設けていれば良いし、天壁41のみで構成しても良い。
(2)上述した実施形態におけるスペーサ8を省略しても良い。このとき、第一スペーサ81、第二スペーサ82、第三スペーサ83及び第四スペーサ84の少なくとも1つを省略しても良いし、全て省略しても良い。また、上述した実施形態における気圧調整孔27を省略して集音孔26のみで構成しても良い。
(3)上述した実施形態では、マイクロホン3と制御基板5とを接続するためにフレキシブル基板9を設けたが、延出部92を導線で構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、フィードバック方式のマイクロホンを備えたイヤホンに利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 :スピーカ
2 :第一ハウジング
2A :音道空間
3 :マイクロホン
3A :マイク収容空間(収容空間)
4 :第二ハウジング
5 :制御基板
9 :フレキシブル基板
21 :開口端部
22 :筒状部(側壁)
25 :側壁凹部
25a :底部(仕切壁)
25a1 :第一貫通孔(連通孔)
26 :集音孔
27 :気圧調整孔
81 :第一スペーサ(介在部材)
81a1 :第二貫通孔
91a :第三貫通孔(貫通孔)
100 :イヤホン