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  • 特許-レーザ切断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】レーザ切断方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20240215BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240215BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/00 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020106740
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001375
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000185374
【氏名又は名称】小池酸素工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大己
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-195186(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0220623(US,A1)
【文献】特開2016-068144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断材にレーザ光を照射して予め設定された予定切断線に沿って切断する際に、切断すべき角部を切断するレーザ切断方法であって、
切断すべき角部に接近するのに伴って切断速度を被切断材を切断する際に予め設定された速度よりも漸減させると共に入熱を被切断材を切断する際に予め設定された入熱よりも漸減させ、
角部に到達する以前に前記切断速度を引き続き漸減させつつ入熱を前記漸減させた入熱よりも漸増させ、
角部に到達したとき切断速度を最も低くすると共に前記漸増させた入熱を前記予め設定された入熱よりも低い入熱とし、
角部を通過した後、切断速度を漸増させると共に入熱を前記漸増させた入熱よりも漸減させ、
引き続き切断速度を前記予め設定された速度まで漸増させると共に入熱を前記予め設定された入熱まで漸増させ、切断速度が前記予め設定された速度に到達するのに伴って入熱を前記予め設定された入熱まで漸増させる
ことを特徴とするレーザ切断方法。
【請求項2】
前記入熱は、切断速度に対応して設定されていることを特徴とする請求項1に記載したレーザ切断方法。
【請求項3】
前記切断速度に対応した切断部への入熱の設定値は、レーザ光のデューティ又はレーザ出力或いは周波数の制御条件の中の少なくとも一つを設定することを特徴とする請求項1又は2に記載したレーザ切断方法。
【請求項4】
被切断材にレーザ光を照射して予め設定された予定切断線に沿って切断する際に、切断すべき角部を切断するレーザ切断装置であって、
予め被切断材の材質、板厚に対応させた切断速度及びレーザ条件を含む切断条件を記憶する切断条件記憶部と、
切断速度を、切断すべき角部に接近するのに伴って前記予め設定された切断速度よりも漸減させて角部に到達したとき最も低くし、角部を通過した後、切断速度を前記予め設定された切断速度まで漸増させるように制御する切断速度制御部と、
レーザ光による入熱を、切断すべき角部に接近するのに伴う切断速度の前記予め設定された切断速度の漸減に伴って被切断材を切断する際に予め設定された入熱よりも漸減させ、角部に到達する以前に前記漸減させた入熱よりも漸増させ、角部に到達したとき前記予め設定された入熱よりも低い入熱とし、角部を通過した後、前記漸増させた入熱よりも漸減させた後、更に前記予め設定された入熱まで漸増させるように制御するレーザ条件制御部と、
を有することを特徴とするレーザ切断装置。
【請求項5】
前記レーザ条件は、切断速度に対応して設定されていることを特徴とする請求項4に記載したレーザ切断装置。
【請求項6】
前記切断速度に対応したレーザ条件の設定値は、レーザ光のデューティ又はレーザ出力或いは周波数の制御条件の中の少なくとも一つを設定することを特徴とする請求項4又は5に記載したレーザ切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断材に向けてレーザ光を照射して角部を含む図形をレーザ切断する際に、角部を合理的に切断できるようにした角部レーザ切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被切断材に向けてレーザ光を照射すると共に該レーザ光に添えてアシストガスを噴射し、て、或いはアシストガスに沿ってシールドガスを噴射して被切断材を切断するレーザ切断法が広く採用されている。
【0003】
このレーザ切断は、レーザトーチに取り付けたノズルから被切断材の上面に向けてレーザ光を照射すると共にアシストガスを噴射し、照射されたレーザ光や噴射されたアシストガスによって生成した溶融物を裏面側に排除して切溝を形成することで行われる。そして、レーザトーチを予め設定された予定切断線に沿って移動させることで、この予定切断線に沿って連続した切溝を形成して目的の切断を行っている。
【0004】
このような切断では、被切断材の表面側の反応と裏面側の反応との間に時間的なズレが生じ、被切断材に形成された切断面には切断の進行方向から後方に向かうような斜めの線(ドラグライン)が形成される。
【0005】
上記の如き斜めのドラグラインが形成された場合でも、目的の予定切断線が直線であれば大きな問題ではない。しかし、予定切断線に角部が存在する場合、角部の表面側が目的の角度で切断されていたとしても、裏面側にはドラグラインの遅れが表現されてしまうため、目的の角度で切断されないという問題が生じる。
【0006】
このため、角部を切断するに際し、如何にして表面側に対する裏面側の遅れを解消するかが課題として挙げられている。この課題を解決するために、角部を構成する一方の辺を切断したまま該角部を通過させて切断した後、レーザトーチを移動させて該角部の他方の辺の延長線上から或いは角部から、切断するようにした切断方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-068144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された発明では、角部を表面側から裏面側まで略同じ角度で切断することができる。しかし、被切断材に対する切断領域が、角部を構成する二辺から離脱するため、スクラップとなる面積が増加して歩留まりが悪くなるという問題がある。
【0009】
角部を切断する場合、切断速度を低下させることで連続して切断するか、或いは角部で一度停止させて切断する。この場合、角部を切断する際の入熱を辺を切断する際の入熱のままとすると、角部では入熱が過大になってセルフバーニングが生じる虞がある。このため、切断速度を低下させるのに伴って入熱も低下させることが行われるが、この場合、裏面側の切断遅れを解消することができないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、被切断材から切断すべき図形の角部を切断する際に、裏面側の切断遅れを低減させることができるレーザ切断方法と、レーザ切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る代表的な角部レーザ切断方法は、被切断材にレーザ光を照射して予め設定された予定切断線に沿って切断する際に、切断すべき角部を切断するレーザ切断方法であって、切断すべき角部に接近するのに伴って切断速度を被切断材を切断する際に予め設定された速度よりも漸減させると共に入熱を被切断材を切断する際に予め設定された入熱よりも漸減させ、角部に到達する以前に前記切断速度を引き続き漸減させつつ入熱を前記漸減させた入熱よりも漸増させ、角部に到達したとき切断速度を最も低くすると共に前記漸増させた入熱を前記予め設定された入熱よりも低い入熱とし、角部を通過した後、切断速度を漸増させると共に入熱を前記漸増させた入熱よりも漸減させ、引き続き切断速度を前記予め設定された速度まで漸増させると共に入熱を前記予め設定された入熱まで漸増させ、切断速度が前記予め設定された速度に到達するのに伴って入熱を前記予め設定された入熱まで漸増させることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る代表的なレーザ切断装置は、被切断材にレーザ光を照射して予め設定された予定切断線に沿って切断する際に、切断すべき角部を切断するレーザ切断装置であって、予め被切断材の材質、板厚に対応させた切断速度及びレーザ条件を含む切断条件を記憶する切断条件記憶部と、切断速度を、切断すべき角部に接近するのに伴って前記予め設定された切断速度よりも漸減させて角部に到達したとき最も低くし、角部を通過した後、切断速度を前記予め設定された切断速度まで漸増させるように制御する切断速度制御部と、レーザ光による入熱を、切断すべき角部に接近するのに伴う切断速度の前記予め設定された切断速度の漸減に伴って被切断材を切断する際に予め設定された入熱よりも漸減させ、角部に到達する以前に前記漸減させた入熱よりも漸増させ、角部に到達したとき前記予め設定された入熱よりも低い入熱とし、角部を通過した後、前記漸増させた入熱よりも漸減させた後、更に前記予め設定された入熱まで漸増させるように制御するレーザ条件制御部と、
を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るレーザ切断方法では、角部を切断する際に、被切断材の裏面側の遅れを軽減することができる。即ち、切断速度を、目的の被切断材を切断する際に予め設定された速度を角部に接近するのに伴って漸減させ、角部を到達したときに最も低くし、角部を通過した後は予め設定された速度まで漸増させる。そして、入熱を、切断速度の漸減と共に漸減させ、角部に到達する以前に漸増させつつ角部に到達させ、角部を通過した後再度漸減させ、その後、漸増させる。従って、角部に到達して通過する際に、切断速度は最も低い速度となるにも関わらず、入熱は最も低くはならない。
【0014】
このように角部を通過する際には、切断速度に比較して入熱が高くなる。このため、相対的な切断能力が高くなる。従って、被切断材の裏面側に対する入熱が高くなり、該裏面側に生じた切断の遅れを軽減又は解消することができる。
【0015】
また、本発明に係るレーザ切断装置では、予め設定された予定切断線を切断する際に存在する角部を、円滑に切断することができる、
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るレーザ切断方法を模式的に説明する図である。
図2】本実施例に係るレーザ切断方法を実施する際の切断速度の変化と入熱の変化を説明する図である。
図3】本実施例によって切断された被切断材の裏面と、従来のレーザ切断方法によって切断された被切断材の裏面を比較した写真である。
図4】本実施例に係るレーザ切断装置を模式的に説明する図である。
図5】レーザ切断装置を構成する制御装置の構成を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るレーザ切断方法及びレーザ切断装置について図1図4を用いて説明する。本発明に係るレーザ切断方法は、図1に示す被切断材Aに設定された切断すべき図形1に含まれた角部2を切断する際の方法である。特に、角部2に於ける被切断材Aの表面側に対する裏面側の切断遅れを軽減或いは解消することによって、角部2を表面側から裏面側に向けて略直線となるように切断するものである。
【0018】
本発明に係るレーザ切断装置は、レール20に沿って走行する台車21と、この台車21にレール20に直交する方向に走行する横行キャリッジ23を有している。台車21は走行モータ22によって駆動され、横行キャリッジ23は横行モータ24によって駆動される。横行キャリッジ23にはレーザトーチ25が昇降可能に配置されており、このレーザトーチ25にレーザ発振器26が接続されている。台車21には操作盤28が配置されており、この操作盤28に、走行モータ22、横行モータ24、レーザ発振器26を制御する制御装置29が構成されている。
【0019】
上記の如く構成されたレーザ切断装置の走行モータ22及び横行モータ24、レーザ発振器26を制御することで、レーザトーチ25から被切断材Aに向けてレーザ光を照射すると共に切断すべき図形1の輪郭に沿って走行させることで切断が実行される。そして、この過程で角部2の切断が行われる。
【0020】
角部2を切断するに際し、切断線3~角部2~切断線4の順に切断を進行させるか、切断線4~角部2~切断線3の順に切断を進行させるかは限定しない。また、被切断材Aに対する切断速度は、被切断材Aの板厚や材質或いは表面状態などの条件に応じて変化するものの、主として板厚に対応して設定されている。
【0021】
図2に示すように、角部2に於いて切断方向が変化するため、レーザノズル25の走行速度(切断速度)は角部2に達したとき最も遅くなるように設定されている。しかし、レーザノズル25の走行を停止させることはなく、切断速度を漸減させた状態で切断方向を変化させるようにしている。このため、角部2は許容された範囲で僅かに曲面となる。
【0022】
切断速度の変化に対応させて被切断材Aに対するレーザ光の照射による入熱を制御することで、角部2を構成する切断線3による面と切断線4による面とによって構成されたエッジを表面側から裏面側にかけて略垂直に構成することが可能である。即ち、角部2を基準として、切断の進行方向上流側(切断線3側)及び下流側(切断線4側)に、夫々角部2からの離隔距離、又は角部2に到達する時間或いは角部2から離脱した時間を設定し、各設定点に於ける切断速度と入熱を対応させて制御している。
【0023】
図2に示すように、角部2を基準として複数の位置Sを、切断線3から角部2に向けて切断方向を変更し始める位置S3、角部2からの離隔距離、又は角部2に到達する時間に設定された位置S03、位置S04、角部2から切断線4に向けて切断方向の変更が完了する位置S4、として設定する。尚、各位置S相互の間隔は一義的に設定されるものではなく、被切断材Aの板厚や、入熱の条件などに応じて設定されている。
【0024】
本実施例では、被切断材Aの板厚が12mmの場合、位置S3から位置S03までの間隔及び位置S04から位置S4までの間隔は略1.6mm又は時間t1は略0.1秒、位置S03から位置S2までの間隔及び位置S2から位置S04までの間隔は略0.8mm又は時間t2は略0.07秒に設定されている。また、被切断材Aの板厚が19mmの場合、位置S3から位置S03までの間隔及び位置S04から位置S4までの間隔は略1.5mm又は時間t1は略0.1秒、位置S03から位置S2までの間隔及び位置S2から位置S04までの間隔は略0.6mm又は時間t2は略0.06秒に設定されている。更に、被切断材Aの板厚が25mmの場合、位置S3から位置S03までの間隔及び位置S04から位置S4までの間隔は略1.9mm又は時間t1は略0.2秒、位置S03から位置S2までの間隔及び位置S2から位置S04までの間隔は略0.5mm又は時間t2は略0.06秒に設定されている。
【0025】
各位置Sに於ける切断速度Vは、位置S3では速度V3、位置S03では速度V03、位置S2では速度V2、位置S04では速度V04として設定されている。位置S3、S4に設定された速度V3、V4は、被切断材Aを切断する際の切断速度として設定されている。また、位置S2に設定された速度V2は、角部2を切断する際の切断速度として設定されている。更に、位置S03、S04に設定された速度V03、V04は、速度V3から速度V2に到達する過程で位置S03を通過する際の切断速度、速度V2から速度V4に到達する過程で位置S04を通過する際の切断速度として設定されている。
【0026】
本実施例では、被切断材Aの板厚が12mmの場合、速度V3、V4は略毎分1100mmに、速度V2は略毎分650mmに、速度V03、V04は略毎分850mmに、夫々設定されている。また、被切断材Aの板厚が19mmの場合、速度V3、V4は略毎分900mmに、速度V2は略毎分550mmに、速度V03、V04は略毎分700mmに、夫々設定されている。更に、被切断材Aの板厚が25mmの場合、速度V3、V4は略毎分650mmに、速度V2は略毎分450mmに、速度V03、V04は略毎分500mmに、夫々設定されている。
【0027】
各位置Sに於けるレーザ光の照射による入熱Pは、位置S3では入熱P3、位置S03では入熱P03、位置S2では入熱P2、位置S04では入熱P04として設定されている。位置S3、S4に設定された入熱P3、P4は、被切断材Aを切断する際の入熱として設定されている。また、位置S2に設定された入熱P2は、角部2を切断する際の入熱として設定されている。更に、位置S03、S04に設定された入熱P03、P04は、入熱P3から入熱P2に到達する過程で位置S03を通過する際の入熱として、入熱P2から入熱P4に到達する過程で位置S04を通過する際の入熱として設定されている。
【0028】
本実施例では、レーザ光の照射による入熱Pをデューティを制御することで変化させている。被切断材Aの板厚が12mmの場合、入熱P3、P4はデューティ略50%に、入熱P2はデューティ略41%に、入熱P03、P04はデューティ略35%に、夫々設定されている。また、被切断材Aの板厚が19mmの場合、入熱P3、P4はデューティ略75%に、入熱P2はデューティ略61%に、入熱P03、P04はデューティ略53%に、夫々設定されている。更に、被切断材Aの板厚が25mmの場合、入熱P3、P4はデューティ略65%に、入熱P2はデューティ略53%に、入熱P03、P04はデューティ略49%に、夫々設定されている。
【0029】
前述の設定値によって各板厚の被切断材Aを切断し、角部2に於ける表面側の丸みと裏面側の丸みを比較したところ、裏面側の方が僅かに丸みが大きいものの、充分に実用に耐えると判断される。例えば板厚19mmの場合、表面側の丸みが略700μmであったのに対し、裏面側の丸みが略800μmであった。このように、厚さが19mmで表面側と裏面側の丸みの差が100μmということは充分に実用的である。
【0030】
図3は、本発明に係るレーザ切断方法で切断した被切断材の裏面(図3(a))と、従来のレーザ切断方法で切断した被切断材の裏面(図3(b))とを示す図である。図に示すように、本発明のレーザ切断方法で切断した角部の裏面の丸みの方が、従来のレーザ切断方法で切断した角部の裏面の丸みよりも小さいことが明らかである。
【0031】
尚、前述の実施例では被切断材Aに対する入熱の変化をデューティを制御することで行っている。しかし、入熱を変化させる場合、デューティのみならず、レーザ出力、出力周波数の少なくとも一つを制御することでよいことは当然である。
【0032】
次に本実施例に係るレーザ切断装置に於ける制御装置29の構成について説明する。この制御装置29は、演算部29aと、予め被切断材Aの材質、予め板厚に対応させた切断速度及びレーザ条件を含む切断条件を記憶する切断条件記憶部29bと、切断速度を、切断すべき角部に接近するのに伴って前記予め設定された切断速度よりも漸減させて角部に到達したとき最も低くし、角部を通過した後、切断速度を前記予め設定された切断速度まで漸増させるように制御する切断速度制御部29cと、レーザ出力を、切断すべき角部に接近するのに伴う切断速度の前記予め設定された切断速度の漸減に伴って被切断材を切断する際に予め設定された出力よりも漸減させ、角部に到達する以前に前記漸減させた出力よりも漸増させ、角部に到達したとき前記予め設定された出力よりも低い出力とし、角部を通過した後、前記漸増させた出力よりも漸減させた後、更に前記予め設定された出力まで漸増させるように制御するレーザ条件制御部29dと、入力装置30から入力された一次記憶する一次記憶部29eを有して構成されている。
【0033】
上記の如く構成された制御装置29を有するレーザ切断装置では、被切断材Aを切断する際に、目的の被切断材Aの板厚を含む切断条件、及び切断すべき図形1などの情報を入力装置30から入力して切断を開始すると、入力された条件に従って図形1の切断線3を切断する。
【0034】
そして、レーザトーチ25が角部2に接近し、位置S3に到達すると、図2に示すように、走行モータ22横行モータ24の回転を制御すると共にレーザ発振器26を制御して角部2に対する切断を進行する。この切断の過程で、切断速度Vは位置S3から位置S2に向けて漸減し、位置S2を通過した後位置S4に向けて漸増する。このような切断速度Vの漸減、漸増の過程は従来から行われているレーザ切断と変わることはない。
【0035】
レーザトーチ25は図形1の切断線3に対し入熱P3で行い、図2に示すように、位置S3に到達した後、位置S03に向けて入熱P3から入熱P03まで漸減する。そして、位置S03に到達したとき入熱P03に達し、その後位置S2に向けて入熱P2まで漸増し、位置S2で入熱P2となり、位置2を通過した後位置S04に向けて入熱P04まで漸減する。更に、位置S04に到達したときの入熱P04は位置S4に向けて漸増し、位置S4で入熱P4に到達した後、予め設定された入熱P4で切断線4に対する切断を継続する。
【0036】
このようにしてレーザトーチ25が、角部2に対応した位置S2を通過する際に、入熱Pを漸増させることで、被切断材Aの裏面側に生じている切断遅れの部分に対する切断能力を向上させることとなる。その結果、切断の進行方向上流側に生じている切断遅れ部分に対する切断が進行し、切断遅れを軽減或いは解消させることが可能となる。このため、切断された図形1の角部2の表面側と裏面側の丸みの差を小さくし、表面側から裏面側にかけての角部2を略垂直な線として構成することが可能となる、
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係るレーザ切断方法では、被切断材の厚さの如何に関わらず、角部を良好に切断することが可能となり、被切断材を精密切断する際に利用して有利である。
【符号の説明】
【0038】
A 被切断材
S、S3、S03、S2、S04、S4 位置
V、V3、V03、V2、V04、V4 切断速度
P、P3、P03、P2、P04、P4 入熱
t1、t2 時間
1 図形
2 角部
3、4 切断線
20 レール
21 台車
22 走行モータ
23 横行キャリッジ
24 横行モータ
25 レーザトーチ
26 レーザ発振器
28 操作盤
29 制御装置
29a 演算部
29b 切断条件記憶部
29c 切断速度制御部
29d レーザ条件制御部
29e 一次記憶部
30 入力装置
図1
図2
図3
図4
図5