(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 3/40 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
E02F3/40 Z
(21)【出願番号】P 2020124533
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 慎一
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特許第4050651(JP,B2)
【文献】特開平07-243224(JP,A)
【文献】実開昭62-016155(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物を掬って排出するバケットを車体の前方に備えた作業車両において、
前記バケットは、
前記作業対象物が投入および排出される開口部と、
前記車体の幅方向に前記開口部の幅分の間隔を空けて対向する一対の側面部と、
前記開口部と対向する側において前記一対の側面部を連結する背面部と、
前記車体の接地面側において前記背面部から前記開口部に向かって延在する底面部と、
前記底面部と対向する側において前記背面部から前記開口部に向かって延在する天面部と、を有し、前記作業対象物を内部に積むことが可能な容器状に形成され、
前記背面部には、
前記バケットの内外を貫通する貫通穴が形成されると共に、前記バケット内の前記作業対象物に対して所定重量を有するプレートが前記貫通穴に対向するように外面に取り付けられ、
前記プレートは、
一端部が、前記天面部側または前記底面部側に取り付けられて前記車体の幅方向に延びる支持ピンを中心として前記背面部に対し回動可能に設けられ、
他端部が、前記バケットのダンプ動作時に前記貫通穴を介して前記バケット内に向かって突出自在に設けられ
、
前記プレートの前記他端部には、
前記貫通穴よりも前記天面部側または前記底面部側に延出する延出部が設けられ、
前記背面部の前記外面には、
前記ダンプ動作時において前記プレートが前記支持ピンを中心として前記背面部に近づく方向に回動した場合に前記延出部が衝突される衝突面部が設けられ、
前記プレートは、
前記ダンプ動作時において、前記他端部が前記貫通穴からバケット内に突出する際に、前記延出部が前記衝突面部に衝突する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項
1に記載の作業車両において、
前記背面部の前記外面には、
前記バケットのチルト動作時において前記プレートが前記支持ピンを中心として前記背面部から離れる方向に回動した場合に前記延出部が当接するストッパ部が設けられている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項
1に記載の作業車両において、
前記背面部は、前記開口部とは反対側に向かって円弧状に湾曲しており、
前記貫通穴および前記プレートはそれぞれ、前記背面部の頂部よりも前記天面部側の領域に配置されている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項
1に記載の作業車両において、
前記貫通穴よりも大きく形成され前記バケットの内側から前記貫通穴を塞ぐ閉塞プレートをさらに備え、
前記閉塞プレートは、
前記背面部の内面および前記貫通穴に対向する閉塞面が、前記プレートの前記貫通穴との対向面に固定され、
前記バケットのチルト動作時には、前記閉塞面が前記内面に接触し、
前記バケットのダンプ動作時には、前記閉塞面が前記内面から離間して前記開口部側に向かって突出する
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業対象物を掬って積込み先に排出するバケットを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダなどの作業車両は、バケットを用いて土砂や鉱物などの作業対象物を掘削し、バケット内に積まれた作業対象物をダンプトラックやホッパーなどの積込み先へ積み込む荷役作業を行う。ここで、作業車両が、例えば泥や粘土、堆肥などのように、粘性の高い作業対象物を取り扱う場合には、バケット内の隅の部分に作業対象物が固着して残留することがある。バケット内に残留した作業対象物が堆積していくと、バケット内に積むことが可能な荷の容量が減って作業効率が低下する。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、搬送物の収納および搬出のための開口を前方に備えた容器状のバケット本体が作業装置に昇降自在かつ上下回動自在に設けられたバケット装置であって、バケット本体の底部隅部近傍には、複数の空気供給用の貫通孔が設けられており、バケット本体への搬送物収納時に移動する内容物からの外力により複数の貫通孔をそれぞれ閉じると共に、バケット本体の開口を下向きにして搬送物排出時に貫通孔を開口して空気供給を行う可動板を備えた構成が開示されている。この構成によって、貫通穴からバケット本体内に供給された空気が内容物とバケット本体との間に入り、内容物がバケット本体から離脱し易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のバケット装置では、可動板がバケット本体の内側に設けられているため、粘性の高い内容物の場合には、バケット本体の内面面との間の摩擦が大きくなって可動板が回動しづらくなってしまう。また、可動板の回動中心となるヒンジが粘性の高い内容物で覆われることから、可動板が回動することができなくなる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、粘性の高い作業対象物を取り扱う場合であっても、バケット内に作業対象物を残留させにくくし、また、バケット内に残留した作業対象物を十分に剥がし落とすことが可能な作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、作業対象物を掬って排出するバケットを車体の前方に備えた作業車両において、前記バケットは、前記作業対象物が投入および排出される開口部と、前記車体の幅方向に前記開口部の幅分の間隔を空けて対向する一対の側面部と、前記開口部と対向する側において前記一対の側面部を連結する背面部と、前記車体の接地面側において前記背面部から前記開口部に向かって延在する底面部と、前記底面部と対向する側において前記背面部から前記開口部に向かって延在する天面部と、を有し、前記作業対象物を内部に積むことが可能な容器状に形成され、前記背面部には、前記バケットの内外を貫通する貫通穴が形成されると共に、前記バケット内の前記作業対象物に対して所定重量を有するプレートが前記貫通穴に対向するように外面に取り付けられ、前記プレートは、一端部が、前記天面部側または前記底面部側に取り付けられて前記車体の幅方向に延びる支持ピンを中心として前記背面部に対し回動可能に設けられ、他端部が、前記バケットのダンプ動作時に前記貫通穴を介して前記バケット内に向かって突出自在に設けられ、前記プレートの前記他端部には、前記貫通穴よりも前記天面部側または前記底面部側に延出する延出部が設けられ、前記背面部の前記外面には、前記ダンプ動作時において前記プレートが前記支持ピンを中心として前記背面部に近づく方向に回動した場合に前記延出部が衝突される衝突面部が設けられ、前記プレートは、前記ダンプ動作時において、前記他端部が前記貫通穴からバケット内に突出する際に、前記延出部が前記衝突面部に衝突することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粘性の高い作業対象物を取り扱う場合であっても、バケット内に作業対象物を残留させにくくし、また、バケット内に残留した作業対象物を十分に剥がし落とすことができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るホイールローダの一構成例を示す外観側面図である。
【
図7】バケットの水平姿勢時におけるプレートの状態を示す左側面図である。
【
図8】バケットのダンプ動作時におけるプレートの状態を示す左側面図である。
【
図9】本発明の変形例に係るプレートおよび閉塞プレートの一構成例を示す斜視図である。
【
図10】変形例におけるバケットの正面の一部を示す斜視図である。
【
図11】変形例におけるプレートおよび閉塞プレートの取付状態を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る作業車両の一態様として、例えば土砂や鉱物を掘削してダンプトラックやホッパーなどへ積み込む荷役作業を行うホイールローダについて説明する。
【0011】
<ホイールローダ1の全体構成>
まず、本発明の実施形態に係るホイールローダ1の全体構成について、
図1を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るホイールローダ1の一構成例を示す外観側面図である。
【0013】
ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵されるアーティキュレート式の作業車両である。具体的には、車体の前部となる前フレーム1Aと車体の後部となる後フレーム1Bとが、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。なお、以下の説明において、車体の左右の幅方向(車幅方向)のうち、進行方向の前側を向いた状態での左手側を「左方向」とし、その反対となる右手側を「右方向」とする。
【0014】
車体には4つの車輪11が設けられており、2つの車輪11が前輪11Aとして前フレーム1Aの左右両側に、残り2つの車輪11が後輪11Bとして後フレーム1Bの左右両側に、それぞれ設けられている。なお、
図1では、左右一対の前輪11Aおよび後輪11Bのうち、左側の前輪11Aおよび後輪11Bのみを示している。
【0015】
前フレーム1Aの前部には、荷役作業に用いる作業装置2が取り付けられている。作業装置2は、前フレーム1Aに基端部が取り付けられたリフトアーム21と、リフトアーム21を駆動する2つのリフトアームシリンダ(不図示)と、リフトアーム21の先端部に取り付けられたバケット22と、バケット22を駆動するバケットシリンダ22Aと、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット22とバケットシリンダ22Aとのリンク機構を構成するベルクランク23と、を有している。なお、
図1では、バケットシリンダ22Aおよびベルクランク23は、いずれも二点鎖線で示されている。
【0016】
リフトアーム21は、2つのリフトアームシリンダに作動油がそれぞれ供給されて各ロッドが伸縮することにより駆動する。具体的には、リフトアーム21は、各ロッドが伸びることにより前フレーム1Aに対して上方向に回動し、各ロッドが縮むことにより前フレーム1Aに対して下方向に回動する。
図1では、リフトアーム21が前フレーム1Aに対して限界まで上昇した状態を実線で、前フレーム1Aに対して限界まで下降した状態を二点鎖線で、それぞれ示している。
【0017】
バケット22は、土砂や鉱物などの作業対象物を掬ってダンプトラックやホッパーなどの積込み先に排出するための作業具であり、バケットシリンダ22Aに作動油が供給されてロッド220A(
図1では二点鎖線で示す)が伸縮することにより駆動する。具体的には、バケット22は、ロッド220Aが伸びることによりリフトアーム21に対して上方向に回動(チルト)し、ロッド220Aが縮むことによりリフトアーム21に対して下方向に回動(ダンプ)する。すなわち、バケット22は、チルト動作によって作業対象物を掬い、掬った作業対象物(荷)をダンプ動作によって排出する。
【0018】
なお、
図1では、リフトアーム21が前フレーム1Aに対して限界まで上昇した状態および前フレーム1Aに対して限界まで下降した状態のそれぞれにおいて、バケット22がチルト動作を行った時の状態を二点鎖線で示し、リフトアーム21が前フレーム1Aに対して限界まで上昇した状態において、バケット22がダンプ動作を行った時の状態を実線で示している。また、リフトアーム21が前フレーム1Aに対して下降していきバケット22が地面に接触した状態、およびその状態からバケット22がチルト動作を行った時の状態をそれぞれ二点鎖線で示している。
【0019】
後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室12と、エンジンや油圧ポンプなどのホイールローダ1の駆動に必要な機器類を収容する機械室13と、車体が傾倒しないように作業装置2とのバランスを保つカウンタウェイト14と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、運転室12は前側に、カウンタウェイト14は後側に、機械室13は運転室12とカウンタウェイト14との間に、それぞれ配置されている。
【0020】
<バケット22の構成>
次に、バケット22の具体的な構成について、
図2~6を参照して説明する。
【0021】
図2は、バケット22の正面斜視図である。
図3は、バケット22の背面斜視図である。
図4は、バケット22の背面図である。
図5は、バケット22の左側面図である。
図6は、
図5におけるX部拡大図である。
【0022】
バケット22は、作業対象物が投入および排出される開口部220と、車幅方向に開口部220の幅分の間隔を空けて対向する一対の側面部221,222と、開口部220と対向する側において一対の側面部221,222を連結する背面部223と、車体の接地面側において背面部223から開口部220に向かって延在する底面部224と、底面部224と対向する側において背面部223から開口部220に向かって延在する天面部225と、を有している。
【0023】
したがって、バケット22は、一対の側面部221,222と背面部223と底面部224と天面部225とで囲まれた内部空間に作業対象物を積むことが可能な容器状に形成されている。なお、一対の側面部221,222のうち、車体の左方向に配置された側面部を「左側面部221」とし、車体の右方向に配置された側面部を「右側面部222」とする。
【0024】
開口部220は、
図2に示すように、車幅方向に長辺を有する横長の長方形状に形成されており、バケット22のチルト動作時には前斜め上方を指向し、バケット22のダンプ動作時には前斜め下方を指向する。また、作業対象物を掘削するために例えば地山などにバケット22を突っ込む際には、バケット22は底面部224を地面に接触させた状態とするが、このとき、開口部220は前方を指向する。なお、開口部220が前方を指向した状態のバケット22の姿勢を「水平姿勢」とする。
【0025】
図2、
図3、および
図5に示すように、背面部223は、本実施形態では、開口部220とは反対側に向かって円弧状に湾曲している。また、
図5に示すように、バケット22の出入口となる開口部220は、バケット22の奥側となる背面部223側よりも大きく形成されている。したがって、底面部224は、背面部223側から開口部220側に向かって斜め下方に傾斜し、天面部225は、背面部223側から開口部220側に向かって斜め上方に傾斜している。これにより、バケット22は、内部に作業対象物を投入しやすく、かつ内部から作業対象物を排出しやすい構造になっている。
【0026】
ここで、ホイールローダ1が取り扱う作業対象物が、例えば泥や粘土、堆肥など、粘性の高い(粘り気がある)ものである場合、バケット22内に投入された作業対象物が隅の部分に固着して残留してしまうことがある。特に、左側面部221と背面部223との接続部分や右側面部222と背面部223との接続部分に、作業対象物が残留しやすい。
【0027】
そこで、バケット22の背面部223には、
図2に示すように、バケット22の内外を貫通する4つの第1~第4貫通穴223A~223Dが形成されている。これにより、空気が第1~第4貫通穴223A~223Dを介してバケット22内に供給され、固着した作業対象物とバケット22の内面面との間に空気が入るため、バケット22の内面面から作業対象物が剥がれ落ちやすくなる。本実施形態では、第1~第4貫通穴223A~223Dはそれぞれ、車幅方向に短辺を有し、背面部223の湾曲面に沿って細長く形成された縦長の長方形状である。
【0028】
また、背面部223には、
図3および
図4に示すように、第1~第4貫通穴223A~223Dのそれぞれに対向するように、4つの第1~第4プレート3A~3Dが外面223Xに取り付けられている。第1~第4プレート3A~3Dはそれぞれ、第1~第4貫通穴223A~223Dの形状に対応して、車幅方向に短辺を有し、背面部223の湾曲面に沿って細長い形状であって、バケット22内の作業対象物が第1~第4貫通穴223A~223Dからこぼれ落ちない程度の大きさに形成されている。
【0029】
本実施形態では、
図2に示すように、第1~第4貫通穴223A~223Dおよび第1~第4プレート3A~3Dはそれぞれ、背面部223の頂部T(
図2において一点鎖線で示す)よりも天面部225側の領域に配置されている。
【0030】
そして、第1~第4貫通穴223A~223Dのうち、第1貫通穴223Aおよび第2貫通穴223Bは背面部223の右端部に、第3貫通穴223Cおよび第4貫通穴223Dは背面部223の左端部に、それぞれ対をなして配置されている。なお、第1~第4貫通穴223A~223Dは、バケット22の右側から左側に向かって第1貫通穴223A、第2貫通穴223B、第3貫通穴223C、第4貫通穴223Dの順で並んでいる。
【0031】
図3および
図4に示すように、第1~第4プレート3A~3Dについても、第1~第4貫通穴223A~223Dに対応すべく、第1プレート3Aおよび第2プレート3Bが背面部223の右端部に、第3プレート3Cおよび第4プレート3Dが背面部223の左端部に、それぞれ対をなして配置されている。そして、第1~第4貫通穴223A~223Dと同様に、バケット22の右側から左側に向かって第1プレート3A、第2プレート3B、第3プレート3C、第4プレート3Dの順で並んでいる。
【0032】
なお、背面部223において、第2貫通穴223Bと第3貫通穴223Cとの間には、リフトアーム21の左右の側板が接続される一対のリフトアーム用接続片ユニット41A,41Bと、ベルクランク23が接続されるベルクランク用接続片ユニット42と、が設けられている。ベルクランク用接続片ユニット42は、一対のリフトアーム用接続片ユニット41A,41Bの間に配置されている。
【0033】
よって、換言すれば、背面部223において、第1貫通穴223Aおよび第2貫通穴223Bは右側のリフトアーム用接続片ユニット41Aの右方に、第3貫通穴223Cおよび第4貫通穴223Dは左側のリフトアーム用接続片ユニット41Bの左方に、それぞれ形成されている。
【0034】
なお、背面部223における第1~第4貫通穴223A~223Dの位置については特に制限はないが、前述したように、特に作業対象物が残留しやすいバケット22の左右両端部側に位置していることが望ましい。また、背面部223には、必ずしも4つの第1~第4貫通穴223A~223Dが形成されている必要はなく、貫通穴の数についても特に制限はない。したがって、プレートの数および背面部223における取り付け位置についても特に制限はなく、貫通穴に対応して取り付けられていればよい。
【0035】
第1~第4プレート3A~3Dはそれぞれ、長辺方向における天面部225側の一端部に取り付けられて車幅方向に延びる第1~第4支持ピン5A~5Dを介して、背面部223に対しその厚み方向に回動可能に取り付けられている。すなわち、第1~第4プレート3A~3Dはそれぞれ、長辺方向の一端部が、天面部225側に取り付けられて車幅方向に延びる第1~第4支持ピン5A~5Dを中心として背面部223に対し回動可能に設けられている。第1~第4プレート3A~3Dにおける当該一端部にはそれぞれ、第1~第4支持ピン5A~5Dが挿通される挿通孔300(
図6および
図7参照)が短辺方向に貫通して形成されている。そして、第1~第4プレート3A~3Dはそれぞれ、長辺方向における底面部224側の他端部が、第1~第4支持ピン5A~5Dを中心(支点)として弧を描くように回動する。
【0036】
なお、第1~第4プレート3A~3Dが背面部223に近づく方向に回動した場合、第1~第4プレート3A~3Dの長辺方向の他端部はそれぞれ、第1~第4貫通穴223A~223Dを介してバケット22の内側に突出する。換言すると、第1~第4プレート3A~3Dはそれぞれ、長辺方向の他端部が、バケット22のダンプ動作時に、第1~第4貫通穴223A~223Dを介してバケット22内に向かって突出自在となるように設けられている。したがって、第1~第4プレート3A~3Dの横幅(短辺方向の長さ)は、第1~第4貫通穴223A~223Dの横幅よりもそれぞれ小さく設定されている。
【0037】
すなわち、第1~第4プレート3A~3Dは、第1~第4貫通穴223A~223Dを完全に塞いでおらず、第1~第4プレート3A~3Dと第1~第4貫通穴223A~223Dとは、短辺方向の両側において隙間が形成されている。なお、隙間が大き過ぎるとバケット22内の作業対象物がこの隙間を介して背面部223側にこぼれ落ちやすくなってしまうため、隙間は、第1~第4プレート3A~3Dの長辺方向の他端部がバケット22内に向かって突出可能となる最低限の大きさに設定されている。
【0038】
背面部223の右側端部には、外面223Xから張り出した3つの第1~第3ブラケット43A~43Cが車幅方向に等間隔に並んで設けられている。これら第1~第3ブラケット43A~43Cは、バケット22の右側から中央側に向かって第1ブラケット43A、第2ブラケット43B、第3ブラケット43Cの順に並んでいる。
【0039】
そして、第1ブラケット43Aと第2ブラケット43Bとの間に第1プレート3Aが配置され、第1ブラケット43Aから第2ブラケット43Bに亘って第1支持ピン5Aが取り付けられている。また、第2ブラケット43Bと第3ブラケット43Cとの間に第2プレート3Bが配置され、第2ブラケット43Bから第3ブラケット3Cに亘って第2支持ピン5Bが取り付けられている。
【0040】
同様にして、背面部223の左側端部には、外面223Xから張り出した3つの第4~第6ブラケット43D~43Fが車幅方向に等間隔に並んで設けられている。これら第4~第6ブラケット43D~43Fは、バケット22の左側から中央側に向かって第6ブラケット43F、第5ブラケット43E、第4ブラケット43Dの順に並んでいる。
【0041】
そして、第4ブラケット43Dと第5ブラケット43Eとの間に第3プレート3Cが配置され、第4ブラケット43Dから第5ブラケット43Eに亘って第3支持ピン5Cが取り付けられている。また、第5ブラケット43Eと第6ブラケット43Fとの間に第4プレート3Dが配置され、第5ブラケット43Eから第6ブラケット43Fに亘って第4支持ピン5Dが取り付けられている。
【0042】
本実施形態では、背面部223の外面223Xには、第1~第4プレート3A~3Dの長手方向における底面部224側の他端部が係合する第1~第4係合ユニット44A~44Dがそれぞれ設けられている。第1~第4係合ユニット44A~44Dはいずれも同様の構成を有しているため、第4係合ユニット44Dを例に挙げ、
図6を参照して説明する。
【0043】
図6に示すように、第4プレート3Dの他端部には、第4貫通穴233Dよりも底面部224側に延出する延出部30が設けられており、この延出部30が第4係合ユニット44Dに係合している。
【0044】
第4係合ユニット44Dは、第4プレート3Dが第4支持ピン5Dを中心として背面部223に近づく方向に回動した場合に延出部30が衝突される衝突面部441と、第4プレート3Dが第4支持ピン5Dを中心として背面部223から遠ざかる方向に回動した場合に延出部30が当接するストッパ部442と、衝突面部441およびストッパ部442を背面部223に固定するための固定具443と、を有している。
【0045】
衝突面部441およびストッパ部442はそれぞれ、矩形状の板部材で形成されており、背面部223の厚み方向に間隔を空けて並んで配置されている。具体的には、衝突面部441が背面部223側に配置されており、衝突面部441とストッパ部442との間において延出部30が隙間を介して係合している。本実施形態では、固定具443は、背面部223に沿って並んだ2本のボルトであるが、固定手段については特に制限はない。
【0046】
<第1~第4プレート3A~3Dの動き>
次に、バケット22の動作に伴う第1~第4プレート3A~3Dの動きについて、第4プレート3Dを例に挙げ、
図7および
図8を参照して説明する。
【0047】
図7は、バケット22の水平姿勢時における第4プレート3Dの状態を示す左側面図である。
図8は、バケット22のダンプ動作時における第4プレート3Dの状態を示す左側面図である。
【0048】
図7に示すように、バケット22が水平姿勢を取っている場合には、第4プレート3Dは、第4貫通穴223Dに対向する面が、背面部223の内側の面と同一になるように位置する。このとき、延出部30は、衝突面部441とストッパ部442との間に位置しており、衝突面部441およびストッパ部442のいずれにも接触していない状態となる。
【0049】
そして、
図8に示すように、バケット22がダンプ動作を行った場合には、第4プレート3Dは、第4支持ピン5Dを中心として背面部223に近づく方向に回動し、延出部30の上方前側が第4貫通穴223Dを介してバケット22内に向かって突出する。なお、第4プレート3Dは、所定重量を有しており、本実施形態では、バケット22と同様の鋼材で形成されている。この第4プレート3Dの所定重量は、例えば、バケット22内の作業対象物に対して衝撃力を付与するのに必要な重量に相当し、バケット22の仕様や作業対象物の種類に応じて任意に変更することが可能である。
【0050】
このように、バケット22のダンプ動作時において、第4プレート3Dの底面部224側の他端部が第4貫通穴223Dからバケット22内に突出することで、バケット22内の作業対象物に対して瞬間的な衝撃力を与えることができる。これにより、作業対象物における背面部223との固着面に衝撃が加わり、作業対象物が背面部223の内面から剥がれ落ちやすくなる。
【0051】
ホイールローダ1では、第4貫通穴223Dを介してバケット22内へ空気を供給することにより、作業対象物と背面部223の内面との間に空気層を形成して、作業対象物を背面部223から剥がれ落としやすくするだけでなく、加えて、第4プレート3Dを用いて作業対象物に衝撃力を与えて作業対象物を押し出すことにより、背面部223からの作業対象物の剥がれ落ちを促進している。したがって、粘性の高い作業対象物を取り扱う場合であっても、バケット22内に作業対象物を残留させにくくし、また、バケット22内に残留した作業対象物を十分に剥がし落とすことが可能である。
【0052】
また、第4プレート3Dは、前述したように、背面部223に沿って縦長に形成されており、重心が長辺方向の中央位置よりも下側に位置している。これにより、第4貫通穴223Dを介したバケット22内への突出のモーメントアームを長めに取ることができ、てこの原理を利用して作業対象物に衝撃力が付与されやすくなっている。
【0053】
本実施形態では、
図8に示すように、第4プレート3Dは、底面部224側の他端部が第4貫通穴223Dからバケット22内に突出すると同時に、延出部30が衝突面部441に衝突する。これにより、第4プレート3Dが作業対象物に与える衝撃力が大きくなり、作業対象物が背面部223の内面からより剥がれ落ちやすくなる。
【0054】
また、本実施形態では、第4プレート3Dが背面部223の頂部Tよりも天面部225側の領域に配置されているため(
図2参照)、バケット22のダンプ動作時において、作業対象物を後斜め上方から前斜め下方(開口部220の向いている方向)に向かって押し出すことができ、背面部223からの作業対象物の剥がれ落ちがより促進される。
【0055】
バケット22がチルト動作を行うと、第4プレート3Dは、第4支持ピン5Dを中心として背面部223から離れる方向に回動するが、このとき、本実施形態では、延出部30がストッパ部442に当接することで回動幅が規制される。この回動幅は、第4プレート3Dが背面部223から離れる方向に回動して第4貫通穴223Dが開いた場合に、開いた部分から作業対象物がこぼれ落ちない程度に設定されている。
【0056】
なお、本実施形態では、第4プレート3Dは、天面部225側の一端部が第4支持ピン5Dで支持され、底面部224側の他端部が背面部223の厚み方向に回動する構成であるが、これに限らず、底面部224側の他端部が第4支持ピン5Dで支持され、天面部225側の一端部が背面部223の厚み方向に回動する構成であってもよい。その場合、作業対象物に対して後斜め上方から前斜め下方に向かって衝撃力を付与することができるため、衝撃力が大きくなる。
【0057】
<変形例>
次に、変形例に係るホイールローダ1の構成について、
図9~11を参照して説明する。なお、
図9~11において、実施形態に係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図9は、本発明の変形例に係るプレート3および閉塞プレート6の一構成例を示す斜視図である。
図10は、変形例におけるバケット22の正面の一部を示す斜視図である。
図11は、変形例におけるプレート3および閉塞プレート6の取付状態を示す左側面図である。
【0059】
本変形例に係るホイールローダ1は、
図10に示すように、第1~第4貫通穴223A~223Dよりも大きく形成され、バケット22の内側から第1~第4貫通穴223A~223Dをそれぞれ塞ぐ閉塞プレート6をさらに備えている。なお、
図10では、第1~第4貫通穴223A~223Dのうち第1貫通穴223Aおよび第2貫通穴223Bをそれぞれ塞ぐ閉塞プレート6のみを示している。また、以下では、「第1~第4貫通穴223A~223D」を単に「貫通穴223H」とし、「第1~第4プレート3A~3D」を単に「プレート3」とする。
【0060】
図9に示すように、閉塞プレート6は、バケット22の背面部223の形状に沿って円弧状に湾曲している。そして、
図11に示すように、背面部223の内面223Yおよび貫通穴223Hに対向する面である閉塞面61が、プレート3の貫通穴223Hとの対向面31に、例えば溶接などの接着手段を用いて固定されている。一体となったプレート3および閉塞プレート6は、バケット22の開口部220側から組み付けられる。
【0061】
閉塞プレート6の閉塞面61は、貫通穴223Hを塞ぐ必要があるため、長辺および短辺のいずれも貫通穴223Hよりも長い寸法に設定されている。一方、プレート3の対向面31は、バケット22のダンプ動作時に、貫通穴223Hを介してバケット22内に突出するため、長辺および短辺のいずれも貫通穴223Hよりも短い寸法に設定されている。
【0062】
図11に示すように、バケット22のチルト動作時には、閉塞面61(具体的には、閉塞面61のうちの貫通穴223Hよりも外側に張り出した領域)が、バケット22の内面223Yに接触(当接)する。プレート3と貫通穴223Hとの間に形成される僅かな隙間から作業対象物が多少なりともこぼれ落ちる可能性があるが、閉塞プレート6の閉塞面61が貫通穴223H全体を覆って塞ぐことにより、当該隙間からの作業対象物のこぼれ落ちを防止することができる。
【0063】
また、バケット22のダンプ動作時には、バケット22内へのプレート3の突出に伴って閉塞プレート6が開口部220側に向かって押し出される。これにより、閉塞プレート6の閉塞面61は、背面部223の内面223Yから離間して開口部220側に向かって突出する。このとき、バケット22内の作業対象物は、閉塞プレート6によって開口部220に向かって押し出されるため、背面部223からの作業対象物の剥がれ落ちがより促進される。
【0064】
なお、本変形例では、プレート3の取付位置が、実施形態に係るプレート3の取付位置よりも高く設定されている。具体的には、プレート3は、回動中心の位置、すなわち支持ピン5の位置が貫通穴223Hの上方となるように、背面部223の外面223Xに取り付けられている。仮に、本変形例に係るプレート3の取付位置を、実施形態に係るプレート3の取付位置と同じにした場合、回動中心の位置と貫通穴223Hの位置との関係から、閉塞プレート6が動かなくなってしまうため、プレート3の取付位置を変えることでそのような事態を回避している。
【0065】
以上、本発明の実施形態および変形例について説明した。なお、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、様々な他の変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態および変形例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態および変形例では、第1~第4プレート3A~3Dのそれぞれの他端部には延出部30が設けられていたが、必ずしも延出部30が設けられている必要はない。
【0067】
また、上記実施形態および変形例では、バケット22の背面部223の外面223Xに第1~第4係合ユニット44A~44Dが設けられていたが、必ずしも第1~第4係合ユニット44A~44Dが設けられている必要はない。
【0068】
また、上記実施形態および変形例では、バケット22の背面部223が車体側に向かって湾曲しており、第1~第4プレート3A~3Dは、背面部223の頂部Tよりも天面部225側の領域に配置されていたが、必ずしも背面部223が湾曲状である必要はなく、第1~第4プレート3A~3Dの配置場所についても、背面部223内における第1~第4貫通穴223A~223Dの位置に対応していれば特に制限はない。
【0069】
また、上記実施形態および変形例では、作業車両の一態様としてホイールローダ1を例に挙げて説明したが、これに限らず、バケット22を車体の前方に備えた作業車両であれば本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1:ホイールローダ(作業車両)
3,3A~3D:第1~第4プレート(プレート)
5A~5D:第1~第4支持ピン
6:閉塞プレート
22:バケット
30:延出部
31:対向面
61:閉塞面
220:開口部
221:左側面部
222:右側面部
223:背面部
223A~223D,223H:第1~第4貫通穴(貫通穴)
223X:外面
223Y:内面
224:底面部
225:天面部
441:衝突面部
442:ストッパ部
T:頂部