(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】燃料集合体
(51)【国際特許分類】
G21C 3/328 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
G21C3/328 400
G21C3/328 100
G21C3/328 200
(21)【出願番号】P 2020128099
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】光安 岳
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-301688(JP,A)
【文献】特開2000-028771(JP,A)
【文献】特開2002-196090(JP,A)
【文献】特開2019-178896(JP,A)
【文献】米国特許第04251321(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/328
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部燃料支持部材と、上部燃料支持部材と、下端部が前記下部燃料支持部材に支持されて上端部が前記上部燃料支持部材に支持され、内部に核燃料物質が充填された複数の燃料棒と、上端部が前記上部燃料支持部材に取り付けられて前記下部燃料支持部材に向かって伸びており、束ねられた前記複数の燃料棒を取り囲む筒状のチャンネルボックスとを備えた燃料集合体であって、
前記燃料棒の一部である、ウランを含みプルトニウムを含まない少なくとも1本の第1燃料棒、及び前記燃料集合体内で最低のプルトニウム富化度である複数の第2燃料棒のそれぞれが存在するコーナー領域が、前記燃料集合体の横断面における少なくとも1つのコーナーに形成され、
前記燃料集合体の横断面において、前記コーナー領域以外に、中心領域が形成されており、前記燃料棒の残りである、前記第2燃料棒のプルトニウム富化度よりもプルトニウム富化度が高い複数の第3燃料棒が、前記中心領域に配置され、
前記コーナー領域において、前記第1燃料棒が、前記チャンネルボックスの内面に隣接する、正方形状で且つ環状の最外周領域のコーナーに配置され、複数の前記第2燃料棒が、前記第1燃料棒の周囲に配置され
、
前記コーナー領域において、前記最外周領域のコーナーに配置された前記第1燃料棒から伸びる、前記最外周領域内で前記チャンネルボックスの内面に沿った直交する二方向のそれぞれに、複数の前記第2燃料棒を配置し、前記直交する二方向のそれぞれにおいて、前記複数の第2燃料棒のうちの1本の前記第2燃料棒を前記第1燃料棒に隣接して配置し、前記最外周領域において、ウラン及び可燃性毒物を含みプルトニウムを含まない第6燃料棒を、前記複数の第2燃料棒の列に隣接して配置したことを特徴とする燃料集合体。
【請求項2】
前記第1燃料棒の周囲に配置される前記第2燃料棒が、前記コーナー領域において、前記最外周領域、及び前記チャンネルボックスの内面から二列目の燃料棒配列のコーナーのそれぞれに配置される請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項3】
前記燃料集合体は、前記燃料集合体の横断面における、前記チャンネルボックスを前記上部燃料支持部材に取り付けたチャンネルファスナ側のコーナーに位置する前記コーナー領域、及び前記チャンネルファスナ側の前記コーナーを通る対角線上で、前記チャンネルファスナ側の前記コーナーとは反対側に位置する他のコーナーに位置する他の前記コーナー領域を有し、
他の前記コーナー領域では、前記チャンネルボックスの内面から二列目の燃料棒配列のコーナーに、ウラン及び可燃性毒物を含みプルトニウムを含まない第6燃料棒を配置した請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項4】
前記コーナー領域において、前記チャンネルボックスの内面に隣接する前記最外周領域のコーナーに配置された前記第1燃料棒から伸びる、前記最外周領域内で前記チャンネルボックスの内面に沿った直交する二方向のそれぞれに、複数の前記第2燃料棒を配置し、前記直交する二方向のそれぞれにおいて、前記複数の第2燃料棒のうちの1本の前記第2燃料棒を前記第1燃料棒に隣接させて配置した請求項1ないし3のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項5】
前記複数の第3燃料棒は、前記燃料集合体内でプルトニウム富化度が最も高い複数の第4燃料棒、及びプルトニウム富化度が、前記第2燃料棒のプルトニウム富化度と前記第4燃料棒のプルトニウム富化度の間の値である複数の第5燃料棒を含んでいる請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項6】
複数の前記第5燃料棒が、前記中心領域内で、前記コーナー領域内に配置された複数の前記第2燃料棒に隣接して配置される請求項
5に記載の燃料集合体。
【請求項7】
前記コーナー領域において、他の前記第1燃料棒を、前記最外周領域内で、前記最外周領域の前記コーナーに配置された前記第1燃料棒に隣接して配置した請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項8】
前記燃料集合体は、前記燃料棒を9行9列に配置した燃料集合体であってウォーターロッドを有しており、
この燃料集合体の横断面において形成された前記コーナー領域の、前記燃料集合体の横断面に対する割合は、9%以上40%以下の範囲に存在する割合であり、前記ウォーターロッドが配置された領域を除いた、前記中心領域の、前記燃料集合体の横断面に対する割合が、82%以下52%以上の範囲に存在する割合である請求項1ないし
7のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項9】
前記燃料集合体は、前記燃料棒を10行10列に配置した燃料集合体であってウォーターロッドを有しており、
この燃料集合体の横断面において形成された前記コーナー領域の、前記燃料集合体の横断面に対する割合は、8%以上48%以下の範囲に存在する割合であり、前記ウォーターロッドが配置された領域を除いた、前記中心領域の、前記燃料集合体の横断面に対する割合が、88%以下48%以上の範囲に存在する割合である請求項1ないし
7のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項10】
前記燃料棒を10行10列に配置した前記燃料集合体の横断面において4つのコーナーに形成されたそれぞれの前記コーナー領域の、前記燃料集合体の横断面に対する割合は、32%以上48%以下の範囲に存在する割合であり、前記ウォーターロッドが配置された領域を除いた、前記中心領域の、前記燃料集合体の横断面に対する割合が、64%以下48%以上の範囲に存在する割合である請求項
9に記載の燃料集合体。
【請求項11】
前記燃料集合体は、前記燃料棒を11行11列に配置した燃料集合体であってウォーターロッドを有しており、
この燃料集合体の横断面において形成された前記コーナー領域の、前記燃料集合体の横断面に対する割合は、6%以上40%以下の範囲に存在する割合であり、前記ウォーターロッドが配置された領域を除いた、前記中心領域の、前記燃料集合体の横断面に対する割合が、86%以下52%以上の範囲に存在する割合である請求項1ないし
7のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項12】
前記燃料棒を11行11列に配置した前記燃料集合体の横断面において4つのコーナーに形成されたそれぞれの前記コーナー領域の、前記燃料集合体の横断面に対する割合は、26%以上40%以下の範囲に存在する割合であり、前記ウォーターロッドが配置された領域を除いた、前記中心領域の、前記燃料集合体の横断面に対する割合が、66%以下52%以上の範囲に存在する割合である請求項
11に記載の燃料集合体。
【請求項13】
前記第2燃料棒のプルトニウム富化度は、0.1wt%以上3.0wt%以下の範囲にある請求項1ないし
12のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項14】
前記第4燃料棒のプルトニウム富化度は、9.0wt%以上17.0wt%以下の範囲にある請求項
5または
6に記載の燃料集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料集合体に係り、特に、プルトニウムを含んで、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉の炉心には、複数の燃料集合体が装荷されている。燃料集合体は、核燃料物質(例えば、酸化ウラン)を含む複数の燃料ペレットを封入した複数の燃料棒、燃料棒の上端部を支持する上部タイプレート(上部燃料支持部材)、燃料棒の下端部を支持する下部タイプレート(下部燃料支持部材)、燃料棒間の間隔を保持する複数の燃料スペーサ、水ロッド、及び横断面が正方形状である角筒状のチャンネルボックスを有する。核燃料物質、例えば、酸化ウランは核分裂性物質である、例えば、U-235を含んでいる。チャンネルボックスは、上端部が上部タイプレートに取り付けられて下部タイプレートに向かって伸びており、軸方向に配置された複数の燃料スペーサによって束ねられた複数の燃料棒を取り囲んでいる。水ロッドは燃料集合体の横断面の中央部に配置され、水ロッドの周囲には複数の燃料棒が配置される。水ロッドの下端部が下部タイプレートに支持され、水ロッドの上端部が上部タイプレートに支持される。
【0003】
各燃料棒は、被覆管を有し、この被覆管の下端部を下部端栓で封鎖して被覆管の上端部を上部端栓で封鎖して構成される。さらに、各燃料棒は、核燃料物質を含む複数の燃料ペレットを被覆管内に充填している。ガスプレナムが、被覆管内において、それらの燃料ペレットが充填された領域(核燃料充填領域)の上方に配置される。
【0004】
原子炉出力を制御するために、複数の制御棒が炉心内に、具体的には、炉心に装荷された燃料集合体の相互間に挿入される。また、燃料集合体内の一部の燃料棒は、可燃性毒物、例えば、ガドリニウム(Gd)を含むガドリニア(Gd2O3)が存在する燃料ペレットを内部に充填している。制御棒及び可燃性毒物は、核燃料物質の核分裂によって余分に発生した中性子を吸収する。可燃性毒物は、中性子の吸収により中性子を吸収しにくい物質に変わっていく。このため、炉心内に装荷された新燃料集合体(燃焼度が0GWd/tの燃料集合体)に含まれる可燃性毒物は、新燃料集合体が炉心に装荷されてから原子炉の或る運転期間が経過すると消滅する。可燃性毒物が消滅した燃料集合体は、核燃料物質が燃焼するにつれて反応度が単調に減少していく。炉心には、炉心内に滞在した運転サイクル数が異なる複数の燃料集合体が装荷されているため、炉心全体として原子炉の運転期間を通して臨界状態が維持される。
【0005】
原子炉から取り出された使用済燃料集合体に含まれる使用済核燃料は再処理される。この再処理により得られたプルトニウム(Pu)とウランを含む混合酸化物燃料(MOX燃料)は、核燃料物質として使用される。成型加工されたそのMOX燃料を含む燃料集合体は、MOX燃料集合体と呼ばれる。このMOX燃料集合体でも可燃性毒物が使用される。しかし、MOX燃料集合体を装荷した炉心は中性子の平均エネルギーが高くなる(中性子のエネルギースペクトルが硬くなる)ため、可燃性毒物の中性子吸収効果は小さくなる。このため、一般に、MOX燃料集合体では、可燃性毒物が、Puが含まれていなくウランの含有量が少ないウラン燃料が充填された燃料棒内のそのウラン燃料に添加されることにより、その可燃性毒物の中性子吸収効果が高められる。この現象は、ウラン燃料のみを用いた燃料集合体においても、濃縮度の高い核燃料物質を用いた場合にも起こる。
【0006】
また、プルトニウムは再処理により使用済核燃料から回収されるため、ウラン燃料と異なり、プルトニウム富化度を高める濃縮過程を必要としない。すなわち、MOX燃料集合体の高富化度化は比較的低コストで可能となるため、高富化度MOX燃料集合体による高燃焼度化がコスト低減に有効である。高富化度MOX燃料集合体では中性子のエネルギースペクトルが硬くなるので、燃料集合体の横断面において外周部に配置されて、燃料集合体相互間に存在する水ギャップに面する燃料棒と、その横断面の中央に位置する燃料棒とでは、そのエネルギースペクトルの差が大きくなる。
【0007】
なお、本明細書内で記述した「プトニウム富化度」は、核分裂性プルトニウムの富化度を意味している。
【0008】
エネルギースペクトルの差が大きくなる場合に燃料集合体内の燃料棒毎の出力分布を平坦にするためには、プルトニウム富化度の異なる複数の燃料棒を、エネルギースペクトルに合わせた富化度分布が形成されるように、燃料集合体の横断面に配置すればよい。しかしながら、MOX燃料集合体において、プルトニウム富化度の異なる燃料棒の種類数が増加することは、MOX燃料集合体の製造工程で準備する燃料ペレットの種類数の増大によりMOX燃料集合体の製造コストが増大する。このため、高富化度MOX燃料集合体では、ペレット種類数の増大を抑えながら高富化度化する必要がある。
【0009】
燃焼度を向上させつつ、プルトニウムの富化度種類数を低減する方法として、特許第6016209号公報に記載された技術が提案されている。
【0010】
特許第6016209号公報は、複数のMOX燃料棒を有するMOX燃料集合体を記載している。特に、
図9には、燃料棒を10行10列に配置したMOX燃料集合体を記載する。MOX燃料集合体の横断面において、チャンネルボックスの内面から一列目の燃料棒配列が存在する、正方形状で環状の領域を、最外周領域という。上記の
図9に示されたMOX燃料集合体の横断面では、チャンネルボックスの内面に離接する最外周領域に、複数のMOX燃料棒P2,P3及びP4を配置し、その最外周領域よりも内側の領域に、複数のMOX燃料棒P1を配置している。これらの燃料棒において、MOX燃料棒のPu富化度が最も大きくて10wt%であり、MOX燃料棒P2,P3及びP4のそれぞれのPu富化度はMOX燃料棒P1のそれよりも小さくなっている。MOX燃料棒P2,P3及びP4の各Pu富化度は、P2>P3>P4の関係にある(段落0032参照)。Pu富化度が最も小さいMOX燃料棒P4は、最外周領域において各コーナーに配置される。MOX燃料棒P1は濃縮ウランを含んでおり、この燃料棒P1のウラン濃縮度はMOX燃料棒P1~P4中で最も大きくなっている。MOX燃料棒P2,P3及びP4は、例えば、劣化ウランを含んでおり、MOX燃料棒P2,P3及びP4の各濃縮度はMOX燃料棒P1のそれよりも小さい。
【0011】
このようなMOX燃料集合体は、熱的余裕を悪化させることなく、MOX燃料集合体の高燃焼度化を図ることができ、Puの積載量を増加させ消費を促進させることができる。
【0012】
特開2001-56388号公報の
図1には、燃料棒を9行9列に配置したMOX燃料集合体が記載されている。このMOX燃料集合体の横断面では、チャンネルボックスの内面に離接する最外周領域に、燃料棒2,3,4及び6をそれぞれ複数本配置しており、その最外周領域よりも内側の領域に、チャンネルボックスの内面から二列目のコーナー以外で複数の燃料棒1を配置している。その二列目の各コーナーには、燃料棒2を配置している。最外周領域の各コーナーには燃料棒3が配置され、最外周領域において燃料棒3に隣接して2本の燃料棒2がそれぞれ配置される。燃料棒1,2及び3の各Pu富化度は、燃料棒1>燃料棒2>燃料棒3の関係にある(段落0047参照)。Pu富化度の最も小さい燃料棒3が、最外周領域のコーナーに配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第6016209号公報
【文献】特開2001-56388号公報
【文献】WO2006/068144
【文献】特開2011-117771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許第6016209号公報及び特開2001-56388号公報に記載されたMOX燃料集合体では、燃料集合体の横断面において各コーナー部に配置された複数の燃料棒のプルトニウム富化度を、これらのコーナー部よりも中心側に位置する中心領域に配置された複数の燃料棒のプルトニウム富化度よりも低くすることにより、MOX燃料集合体の横断面における出力分布を平坦化していた。しかしながら、MOX燃料集合体も、高燃焼度化が求められつつある。
【0015】
高燃焼度化するために、燃料集合体内の各燃料棒のプルトニウム富化度を単に増加させることが考えられる。各燃料棒のプルトニウム富化度を増加させることにより、プルトニウムを含む燃料集合体の高燃焼度化が達成できる。発明者らは、プルトニウムを含む、高燃焼度化された燃料集合体でも、更なる、横断面における出力分布の平坦化が望まれると考えた。
【0016】
本発明の目的は、プルトニウムを含み、高燃焼度化によっても横断面における出力分布を更に平坦化できる燃料集合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、下部燃料支持部材と、上部燃料支持部材と、下端部が前記下部燃料支持部材に支持されて上端部が前記上部燃料支持部材に支持され、内部に核燃料物質が充填された複数の燃料棒と、上端部が前記上部燃料支持部材に取り付けられて前記下部燃料支持部材に向かって伸びており、束ねられた前記複数の燃料棒を取り囲む筒状のチャンネルボックスとを備えた燃料集合体であって、
前記燃料棒の一部である、ウランを含みプルトニウムを含まない少なくとも1本の第1燃料棒、及び前記燃料集合体内で最低のプルトニウム富化度である複数の第2燃料棒のそれぞれが存在するコーナー領域が、前記燃料集合体の横断面における少なくとも1つのコーナーに形成され、
前記燃料集合体の横断面において、前記コーナー領域以外に、中心領域が形成されており、前記燃料棒の残りである、前記第2燃料棒のプルトニウム富化度よりもプルトニウム富化度が高い複数の第3燃料棒が、前記中心領域に配置され、
前記コーナー領域において、前記第1燃料棒が、前記チャンネルボックスの内面に隣接する、正方形状で且つ環状の最外周領域のコーナーに配置され、複数の前記第2燃料棒が、前記第1燃料棒の周囲に配置され、
前記コーナー領域において、前記最外周領域のコーナーに配置された前記第1燃料棒から伸びる、前記最外周領域内で前記チャンネルボックスの内面に沿った直交する二方向のそれぞれに、複数の前記第2燃料棒を配置し、前記直交する二方向のそれぞれにおいて、前記複数の第2燃料棒のうちの1本の前記第2燃料棒を前記第1燃料棒に隣接して配置し、前記最外周領域において、ウラン及び可燃性毒物を含みプルトニウムを含まない第6燃料棒を、前記複数の第2燃料棒の列に隣接して配置したことにある。
【0018】
本発明によれば、燃料集合体の横断面におけるコーナー領域に、プルトニウムを含む1種類の燃料棒である、最低プルトニウム富化度の第2燃料棒が配置されているため、その横断面における中心領域に配置された第3燃料棒のプルトニウム富化度を増大させることができる。この結果、プルトニウムを含む燃料集合体を高燃焼度化することができ、高燃焼度化された燃料集合体の中心領域の中心部における出力が増加することにより、燃料集合体の横断面において最外周領域とその中心部のとの出力の差が減少する。このため、本発明では、プルトニウムを含む、高燃焼度化された燃料集合体においても、その横断面における出力分布を更に平坦化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高燃焼度化によっても、プルトニウムを含む燃料集合体の横断面における出力分布を更に平坦化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の好適な一実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例1のMOX燃料集合体の横断面図である。
【
図2】
図1に示されたMOX燃料集合体に含まれる各燃料棒の核分裂性ウラン及び核分裂性プルトニウムの含有量を示す説明図である。
【
図3】
図1に示すMOX燃料集合体の縦断面図である。
【
図4】
図1に示すMOX燃料集合体が炉心に装荷された、改良型沸騰水型原子力プラントの原子炉の縦断面図である。
【
図5】MOX燃料集合体のコーナー部を含む1/4横断面における、燃料棒毎の熱中性子束を示す説明図である。
【
図6】MOX燃料集合体のコーナー部を含む1/4横断面における、実施例1での出力分布、及び富化度分布がない状態での出力分布を示す説明図である。
【
図7】本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例2のMOX燃料集合体の横断面図である。
【
図8】
図7に示された燃料集合体に含まれる各燃料棒の核分裂性ウラン及び核分裂性プルトニウムの含有量を示す説明図である。
【
図9】本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例3のMOX燃料集合体の横断面図である。
【
図10】本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例4のMOX燃料集合体の横断面図である。
【
図11】
図10に示された燃料集合体に含まれる各燃料棒の核分裂性ウラン及び核分裂性プルトニウムの含有量を示す説明図である。
【
図12】本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例5のMOX燃料集合体の横断面図である。
【
図13】
図12に示された燃料集合体に含まれる各燃料棒の核分裂性ウラン及び核分裂性プルトニウムの含有量を示す説明図である。
【
図14】本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例6のMOX燃料集合体の横断面図である。
【
図15】
図14に示された燃料集合体に含まれる各燃料棒の核分裂性ウラン及び核分裂性プルトニウムの含有量を示す説明図である。
【
図16】本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例7のMOX燃料集合体の横断面図である。
【
図17】
図16に示された燃料集合体に含まれる各燃料棒の核分裂性ウラン及び核分裂性プルトニウムの含有量を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明者らは、特許第6016209号公報及び特開2001-56388号公報に記載された各MOX燃料集合体よりも高燃焼度化することができ、この高燃焼度化によっても横断面における出力分布が更に平坦化できるMOX燃料集合体の実現に向けて種々の検討を行った。この検討結果及び新たに見出したMOX燃料集合体の概要を以下に説明する。
【0022】
沸騰水型原子炉(BWR)のMOX燃料集合体のプルトニウム富化度を高める場合には、前述したように、MOX燃料集合体内において中性子のエネルギースペクトル差が大きくなる。このようなMOX燃料集合体において出力分布を平坦化しようとした場合、中性子のエネルギースペクトルに合わせてプルトニウム富化度を決定する必要がある。BWRでは、MOX燃料集合体のチャンネルボックスの外側は水ギャップが形成されており、この水ギャップには飽和水が存在するため、MOX燃料集合体における中性子のエネルギースペクトルは軟らかくなる。MOX燃料集合体のコーナーに配置された燃料棒における中性子のエネルギースペクトルが最も軟らかく、そのコーナーに存在する燃料棒に隣接する他の燃料棒、さらに、この燃料棒に隣接する他の燃料棒のように、MOX燃料集合体のコーナー部において、中心領域の近くに配置された燃料棒ほど、中性子のエネルギースペクトルが硬くなる。
【0023】
このように、コーナー部における中性子のエネルギースペクトルの変化が大きいため、従来は、プルトニウム富化度が異なる複数種類の燃料棒をコーナー部に配置して、MOX燃料集合体の横断面での出力分布を平坦化していた。この結果、MOX燃料集合体の横断面内部、すなわち、中心領域に配置される、MOX燃料を含む燃料棒の種類数は少なかった。しかし、この状態から、MOX燃料集合体の平均プルトニウム富化度を高める場合には、中性子のエネルギースペクトルの軟らかいコーナー部に配置された燃料棒のプルトニウム富化度を高めると出力ピーキングが増大するため、MOX燃料集合体内部のプルトニウム富化度を高める必要がある。MOX燃料集合体内部においても、位置によって中性子のエネルギースペクトルが変化する。しかしながら、MOX燃料集合体内部では、水ギャップに隣接する、MOX燃料集合体の周辺部に比べて、周囲の燃料棒が多く、水の量が限定的であるため、エネルギースペクトルの変化が小さい。
【0024】
発明者はこの特性に着目した。MOX燃料集合体における燃料棒毎の相対的な熱中性子束を
図5に示す。
図5は、右側にMOX燃料集合体の横断面を示しており、左側の上部に、その横断面における、制御棒側のコーナー部に位置する1/4の領域における燃料棒識別子を、左側の下部に、左側の上部に示された燃料棒毎の相対的熱中性子束を示している。前述のように、コーナー(R1)における熱中性子束が最も高い。高速中性子の平均自由行程は熱中性子よりも大きいため、MOX燃料集合体の横断面内での高速中性子束の変化が小さいと仮定すると、R1の燃料棒のエネルギースペクトルが最も軟らかくなる。次に、コーナーに隣接し、MOX燃料集合体の横断面における最外周領域に位置するR2の燃料棒のエネルギースペクトルが軟らかい。その次は、R2に隣接し、その最外周領域に位置するR3である。R4は、R3に隣接し、その最外周領域に位置する燃料棒である。それ故に、使用する燃料棒の種類数が4種類である、例えば、特許第6016209号公報の
図10に記載されたMOX燃料集合体では、最外周領域に配置された、(a)R1,(b)2及びR3、及び(c)R4及びR5の各燃料棒を異なるプルトニウム富化度とし、最外周領域よりも内側に配置された、(d)R6以降の各燃料棒を均一のプルトニウム富化度としている。このように、特許第6016209号公報の上記のMOX燃料集合体では、(a)~(d)の4つの燃料グループを作成し、燃料グループ毎に燃料棒のプルトニウム富化度を決めている。
【0025】
特許第6016209号公報の
図10に記載されたMOX燃料集合体では、プルトニウム富化度が異なるMOX燃料を含む、P1,P2,P3及びP4の4種類の燃料棒を有する。段落0032の説明において、燃料棒P1のプルトニウム富化度は10%であり、燃料棒P2~P4のプルトニウム富化度は、燃料棒P1のプルトニウム富化度との関係で、P1>P2>P3>P4であると記載されている。特許第6016209号公報の
図10に記載の、燃料棒を10行10列に配置したMOX燃料集合体において、最外周領域のコーナーに位置する燃料棒P4は
図5に示されたR1の燃料棒に相当し、最外周領域においてコーナーから2番目に配置された燃料棒P3は
図5におけるR2の燃料棒に相当し、最外周領域においてコーナーから3番目に配置された燃料棒P2は
図5におけるR3の燃料棒に相当し、最外周領域においてコーナーから4番目に配置された燃料棒P2は
図5におけるR4の燃料棒に相当し、最外周領域においてコーナーから5番目に配置された燃料棒P2は
図5におけるR5の燃料棒に相当し、最外周領域よりも内側の中心領域に配置された燃料棒P1は
図5におけるR6以降の燃料棒に相当する。
【0026】
特許第6016209号公報の
図10に記載のMOX燃料集合体において、
図5の左側の上部に示された燃料棒識別子R1~R14のそれぞれに対応する各燃料棒(P1~P4)の相対的熱中性子束は、
図5の左側の下部に示された相対的熱中性子束の値となる。
【0027】
特開2001-56388号公報の
図1に示された、燃料棒を9行9列に配置したMOX燃料集合体では、最外周領域のコーナーに位置する燃料棒3は
図5に示されたR1の燃料棒に相当し、最外周領域においてコーナーから2番目に配置された燃料棒2は
図5におけるR2の燃料棒に相当し、最外周領域においてコーナーから3番目に配置された燃料棒2は
図5におけるR4の燃料棒に相当し、最外周領域に隣接した、チャンネルボックスの内面から二列目の燃料棒配列のコーナーに位置する燃料棒2は
図5におけるR6の燃料棒に相当し、最外周領域よりも内側の中心領域に配置された燃料棒1は
図5におけるR7以降の燃料棒に相当する。
【0028】
燃料集合体における各燃料棒の出力は、熱中性子束×巨視的核分裂断面積に比例する。巨視的核分裂断面積はプルトニウムの個数密度に比例するため、プルトニウムを高富化度化すると、この巨視的核分裂断面積が大きくなる。特許第6016209号公報の
図10に記載されたMOX燃料集合体の横断面におけるプルトニウム富化度分布は、最外周領域よりも内側で均一としているが、巨視的核分裂断面積が大きくなった場合には、最外周領域よりも内側の領域における熱中性子束差に起因する出力差が大きくなる。ただし、この領域における熱中性子束の大きさは小さいので、プルトニウム富化度を高めることができる。一方、最外周領域の熱中性子束は大きいので、最外周領域のプルトニウム富化度を高めることができない。この結果、MOX燃料集合体のプルトニウム富化度を高めるためには、MOX燃料集合体の最外周領域よりも内側の領域でプルトニウム富化度を高める必要がある。
【0029】
特許第6016209号公報のように、(d)の燃料グループをR6以降の燃料棒とした場合、(d)の燃料グループのプルトニウム富化度は、熱中性子束が最も高いR6の燃料棒の出力ピーキングが制限値以下となるプルトニウム富化度に制限される。このように、燃料グループ内の熱中性子束の最大値でプルトニウム富化度が制限されるため、プルトニウム富化度を高めるためには、MOX燃料集合体の最外周領域よりも内側の領域でプルトニウム富化度分布をつけることが望ましい。
【0030】
燃料棒のプルトニウム富化度の種類数が増えると、燃料棒の製造に必要な燃料ペレットの種類数が増えるため、燃料製造コストが増大する。この増大を抑えるためには、燃料ペレットの種類数を抑える必要がある。MOX燃料集合体の高富化度化のために、MOX燃料集合体の最外周領域よりも内側の領域においてプルトニウム富化度分布をつけるならば、燃料集合体の最外周領域に配置された各燃料棒及びこの最外周領域よりも内側におけるR6~R14の燃料棒に使用する燃料ペレットの種類数は1~2種類にすることが望ましい。なお、劣化ウラン、天然ウラン、可燃性毒物であるガドリニアを含むウラン燃料棒(プルトニウムを含まず)は、プルトニウムペレットとは別工程で製造され、かつ従来のウラン製造工程を使用することができる。このため、ウラン燃料のペレットの種類数増加による燃料製造コスト増大への影響は限定的である。
【0031】
以上の検討から、発明者は、MOX燃料集合体の最外周領域に位置する燃料棒、及びR6に位置する燃料棒のプルトニウム富化度の種類数を低減すれば、MOX燃料集合体のプルトニウム富化度を増大できると考えた。特に、コーナー付近に位置する、R1~4及びR6の燃料棒において、プルトニウム富化度の種類数を1種類にできれば、当初の目的が達成できる。R1~4及びR6の燃料棒が配置される領域は熱中性子束が高い領域であるため、それらの燃料棒のプルトニウム富化度は、燃料集合体の横断面において、最低プルトニウム富化度となる。なお、R1~4及びR6の各燃料棒のプルトニウム富化度を1種類としても、燃料棒内の母材となる核燃料物質のウラン濃縮度が異なる場合、MOX燃料ペレットの製造工程ではその核燃料物質は別の種類の核燃料物質として取り扱われるため、母材となる核燃料物質のウラン濃縮度は同じにしなければならない。
【0032】
MOX燃料集合体の横断面における出力ピーキングをできるだけ抑える観点から、各燃料グループに含まれる燃料棒の熱中性子束の偏差は小さいほうがよいため、上記の知見を考慮し、特許第6016209号公報の
図10に記載された従来の燃料グループ(a)~(d)を、発明者らは、以下に述べる新たな燃料グループ(A)~(D)に創生した。(C)の燃料グループはMOX燃料集合体の横断面における最外周領域に配置されたR3及びR4の各燃料棒、及び最外周領域に隣接した、チャンネルボックスの内面から二列目の燃料棒配列のコーナーに位置するR6の燃料棒により形成し、(D)の燃料グループを、その横断面の最外周領域に配置されたR5の燃料棒、及びその最外周領域よりも内側に配置されたR7以降の各燃料棒により形成する。なお、この場合には、(A)の燃料グループは最外周領域のコーナーに配置されたR1の燃料棒を含み、(B)の燃料グループは最外周領域においてR1の燃料棒に隣接したR2の燃料棒を含んでいる。
【0033】
例えば、(A)の燃料グループにおけるR1は、核燃料物質としてプルトニウムを含んでいない劣化ウランを用いた燃料棒であり、(B)の燃料グループにおけるR2は、R1と同様に、核燃料物質としてプルトニウムを含んでいない劣化ウランを用いた燃料棒である。また、(C)の燃料グループにおけるR3、R4及びR6の各燃料棒は、プルトニウムを含む燃料棒であり、これらの燃料棒のプルトニウム富化度は、例えば、MOX燃料集合体内における最低プルトニウム富化度である。(D)の燃料グループにおけるR5の燃料棒及びR7以降の各燃料棒は、プルトニウムを含む燃料棒であり、これらの燃料棒のプルトニウム富化度は、例えば、R3、R4及びR6の各燃料棒のプルトニウム富化度よりも大きい。
【0034】
上記の検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0035】
本発明の好適な一実施例である、改良型沸騰水型原子力プラント(ABWRプラント)に適用される実施例1のMOX燃料集合体を、
図1、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0036】
本実施例のMOX燃料集合体を説明する前に、このMOX燃料集合体が適用される改良型沸騰水型原子力プラント(ABWRプラント)の原子炉の概略構造を、
図4に基づいて説明する。ABWRプラントにおける原子炉20は、原子炉圧力容器21を有し、複数の燃料集合体10(
図1及び
図3参照)が装荷された炉心22を原子炉圧力容器21内に配置している。原子炉圧力容器21内において、円筒状の炉心シュラウド23が炉心22を取り囲み、炉心22の上方に配置された気水分離器24が炉心シュラウド23の上端部に設置される。さらに、蒸気乾燥器25が、気水分離器24の上方で原子炉圧力容器21内に設置される。環状のダウンカマ27が、炉心シュラウド23の外面と原子炉圧力容器21の内面の間に形成される。ダウンカマ27内に配置されたインターナルポンプ26が、原子炉圧力容器21の底部を貫通して下方に向かって伸びており、原子炉圧力容器21の底部に取り付けられる。給水配管28及び主蒸気配管29が、原子炉圧力容器21に接続される。
【0037】
なお、下部プレナム31が、原子炉圧力容器21内で炉心22の下方に形成される。下部プレナム31には、複数の制御棒案内管(図示せず)が配置される。燃料集合体10の核反応を制御する横断面が十字形をしている複数の制御棒30(
図1参照)が、各制御棒案内管内に別々に配置される。複数の制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)が、原子炉圧力容器21の底部に取り付けられ、その底部から下方に向かって伸びている。制御棒駆動機構(図示せず)が、それぞれの制御棒駆動機構ハウジング内に配置され、制御棒30に連結される。
【0038】
炉心22に装荷された複数の燃料集合体10は、
図3に示すように、複数の燃料棒11、下部タイプレート17(下部燃料支持部材)、上部タイプレート(上部燃料支持部材)18、軸方向に配置される複数の燃料スペーサ20及びチャンネルボックス16を有する。燃料集合体10は、MOX燃料を含むMOX燃料集合体である。
【0039】
各燃料棒11は、被覆管(図示せず)を有し、この被覆管の下端部を下部端栓(図示せず)で封鎖して被覆管の上端部を上部端栓(図示せず)で封鎖しており、核燃料物質を含む複数の燃料ペレット(図示せず)を被覆管内に充填して構成される。ガスプレナム(図示せず)が、被覆管内で、それらの燃料ペレットが充填された核燃料物質充填領域の上方に形成される。
【0040】
水ロッドWRが、燃料集合体10の横断面の中央部に配置され、周囲を複数の燃料棒11によって取り囲まれる(
図1参照)。水ロッドWRの下端部が下部タイプレート17に支持され、それらの上端部が上部タイプレーと18に支持される。全ての燃料棒11及び水ロッドWRは、燃料棒11の相互間、及び水ロッドWRとこれに隣接する燃料棒11の間に所定幅のスペースを形成するように、燃料棒11の軸方向において所定の間隔に配置された複数の燃料スペーサ20によって束ねられる。複数の燃料スペーサ20によって束ねられた燃料棒11及び水ロッドWRの束は、4つの側壁部を有して横断面が正方形状の角筒であるチャンネルボックス16内に配置される。なお、燃料棒11の相互間、及び水ロッドWRとこれに隣接する燃料棒11の間にそれぞれ形成された所定幅のスペースは、冷却水が流れる冷却水通路となる。
【0041】
チャンネルボックス16は、上部タイプレート18の4つのコーナー部のうちで2つのコーナー部に設けられ、上部タイプレート18の上面から上方に向かって伸びる2つのポスト(図示せず)の上に置かれる。チャンネルボックス16の上端部が、チャンネルファスナ(図示せず)によって制御棒30に面する1本のポストに取り付けられる。このように、チャンネルボックス16が、上部タイプレート18に取り付けられる。チャンネルボックス16は、上部タイプレーと18から下部タイプレート17に向かって伸びている。チャンネルボックス16は、上部タイプレート18及び下部タイプレート17の各側面を取り囲んでいる。
【0042】
複数の燃料集合体10が装荷された炉心22では、実質的に、互いに隣り合う4体の燃料集合体10に対して1体の制御棒30が配置される。炉心22に装荷された、互いに隣り合う4体の燃料集合体10上端部が、炉心22の上端部に配置されて炉心シュラウド23に取り外し可能に取り付けられた上部格子板(図示せず)に形成された升目内に挿入され、上部格子板によって支持される。それらの燃料集合体10の下端部は、炉心22の下端部に配置されて炉心シュラウドに取り付けられた炉心支持板(図示せず)に取り付けられた燃料支持金具によって支持される。たがいに隣り合う4体の燃料集合体10のそれぞれにおいて、それぞれの燃料集合体10の横断面に存在する4つのコーナー部のうちの一つ、すなわち、チャンネルファスナが配置されているコーナー部が、制御棒30と向き合っている。
【0043】
チャンネルファスナは、炉心22に装荷された各燃料集合体10の前述した4つのコーナー部のうち、制御棒30と向き合う1つのコーナー部に配置される。互いに隣り合う4体の燃料集合体10のそれぞれのコーナー部に配置された各チャンネルファスナは、互いに接触して、4体の燃料集合体10相互間に制御棒30が挿入できるように、隣り合う燃料集合体10の相互間の間隔を所定幅に維持する(WO2006/068144の段落0003及び0005及び
図2、及び特開2011-117771号公報の段落0013及び
図9及び
図10参照)。4体の燃料集合体10のそれぞれは、チャンネルファスナによって上部格子板に押圧される。1体の制御棒30は互いに隣り合う4体の燃料集合体10の相互間に挿入される。その相互間への制御棒30の挿入、及びその相互間からの制御棒30の引抜きを行うことにより、原子炉出力が制御される。
【0044】
制御棒30が4の燃料集合体10の相互間に挿入されているとき、制御棒30の2枚のブレードは、
図1に示すように、チャンネルボックス16の、制御棒30に面する1つのコーナー、すなわち、チャンネルファスナが配置された、チャンネルボックス16の1つのコーナー(チャンネルファスナ側のコーナー)から、直交する二方向に伸びる2つの側壁部の外面に対向している。
【0045】
ハンドル19が、上部タイプレート18の上面に設けられる。ハンドル19は、燃料集合体10を炉心22と燃料貯蔵プール(図示せず)との間で移送させる際、燃料交換機(図示せず)によって把持される。
【0046】
ダウンカマ27内の冷却水は、駆動されているインターナルポンプ26から吐出され、下部プレナム31を経て炉心22に供給される。炉心22内において、冷却水は燃料集合体10内に導かれる。すなわち、この冷却水は、下部タイプレート17を通してチャンネルボックス16の内側に流入し、燃料棒11相互間、及び燃料棒11と水ロッドWRの間にそれぞれ形成された冷却水通路を上昇する。この冷却水通路を上昇する間に、冷却水は、燃料棒11内に存在する核燃料物質に含まれる核分裂性物質(核分裂性プルトニウムまたは核分裂性ウラン)の核分裂で生じる熱によって加熱される。冷却水の一部が蒸気になるため、冷却水は水及び蒸気を含む気液二相流となる。
【0047】
この気液二相流が、燃料集合体10の上端から、すなわち、炉心22から排出され、気水分離器24に流入する。気液二相流は、気水分離器24で水と蒸気に分離される。分離された水は、気水分離器24からダウンカマ27に排出され、冷却水としてダウンカマ27を下降し、インターナルポンプ26で昇圧される。分離された蒸気は、気水分離器24から蒸気乾燥器25に導かれ、蒸気乾燥器25内で湿分が除去される。湿分が除去されて蒸気乾燥器25から排出された蒸気は、主蒸気配管29を通して蒸気タービン(図示せず)に導かれ、蒸気タービンを回転させる。蒸気タービンに連結された発電機が回転し、電力を発生する。蒸気タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水となる。この凝縮水は、給水として、給水配管28により原子炉圧力容器21内に供給される。
【0048】
炉心22に装荷される燃料集合体10は、
図1に示すように、複数の燃料棒11を、燃料集合体10の横断面において、10行10列の正方格子でチャンネルボックス16内に配置している。燃料集合体10の横断面においては、96本の燃料棒11が存在する。複数の燃料棒11は、燃料棒1~7を含む。燃料棒1~7は、核燃料物質を含み可燃性毒物を含んでいない燃料棒である。
【0049】
図2に示すように、8本の燃料棒1及び8本の燃料棒2は、核分裂性ウラン(例えば、U-235)を含んでおりプルトニウムを含んでいない。燃料棒1及び2のそれぞれは、核燃料物質である劣化ウランで製造された複数の燃料ペレットを、両端が密封された被覆管内に充填している。劣化ウランの替りに、天然ウラン、回収ウラン及び濃縮ウランを用いてもよい。燃料棒1及び2内の核燃料物質に含まれる核分裂性ウランの濃度は、0.2wt%である。燃料棒3~7のそれぞれは、核分裂性ウランの濃度が0.2wt%である上記の劣化ウランを核燃料物質の母材とし、核分裂性プルトニウム(Puf)(例えば、Pu-239及びPu-241等)を含んでいる。燃料棒3,4及び5のそれぞれのプルトニウム冨化度は1.8wt%であり、燃料棒6のプルトニウム冨化度は7.0wt%、及び燃料棒7のプルトニウム冨化度は11.0wt%である。このため、燃料棒3,4及び5のそれぞれのプルトニウム富化度は、燃料集合体10において、最低プルトニウム富化度となる。
【0050】
燃料集合体10内で最低のプルトニウム富化度を有する燃料棒3,4及び5のそれぞれのプルトニウム冨化度を2.2wt%にしてもよい。この場合には、燃料棒6のプルトニウム富化度を8.6wt%にし、燃料集合体10内で最低のプルトニウム富化度を有する燃料棒7のプルトニウム富化度を9.0wt%にする。また、燃料棒3,4及び5のそれぞれのプルトニウム冨化度を2.7wt%にしてもよい。この場合には、燃料棒6のプルトニウム富化度を10.5wt%にし、燃料棒7のプルトニウム富化度を16.5wt%にする。
【0051】
燃料棒3,4及び5のそれぞれのプルトニウム冨化度は0.1wt%以上3.0wt%以下の範囲の値に設定され、燃料棒7のプルトニウム富化度は9.0wt%以上17.0wt%以下の範囲の値に設定される。燃料棒6のプルトニウム富化度は、燃料棒3,4及び5のそれぞれのプルトニウム冨化度よりも大きくて燃料棒7のプルトニウム富化度よりも小さい範囲内で設定される。
【0052】
燃料集合体10の横断面において、チャンネルボックス16の内面に隣接する、正方形状であって環状の最外周領域内には、チャンネルボックス16の内面から一列目に配置された36本の燃料棒11が配置される。換言すれば、チャンネルボックス16の内面から一列目の全ての燃料棒11が配置された領域が、燃料集合体10の横断面における最外周領域である。最外周領域において隣り合うコーナーを結ぶ直線、具体的には、その隣り合うコーナーに配置されたそれぞれの燃料棒1の横断面の中心を結ぶ直線を、最外周領域の辺という。正方形状の最外周領域には、4つの辺が存在する。
【0053】
燃料集合体10の横断面には、その横断面の各コーナーに形成されたコーナー領域15、及びこれら4つのコーナー領域15に取り囲まれる中心領域14が存在する。コーナー領域15は、燃料集合体10の横断面における、最外周領域のコーナーに配置される1本の燃料棒11、最外周領域内で、コーナーに配置されたその1本の燃料棒11から直交する二つの方向のそれぞれにおいてその1本の燃料棒11に連なって配置された複数の燃料棒11、及びチャンネルボックス16の内面から二列目の燃料棒配列のコーナーに配置される1本の燃料棒11が存在する領域である。換言すれば、コーナー領域15は、ウランを含みプルトニウムを含まない燃料棒11及び燃料集合体内で最低プルトニウム富化度の燃料棒11が配置された領域である。中心領域14は、燃料集合体10の横断面において、コーナー領域15以外の、プルトニウム富化度がその最低プルトニウム富化度よりも大きい複数の燃料棒11が配置された領域である。
【0054】
本実施例では、コーナー領域15は、燃料集合体10の横断面において、4つのコーナーのそれぞれに配置されている。各コーナー領域15には、8本の燃料棒13が配置され、燃料棒13は燃料棒1ないし5の各燃料棒11を含んである。
【0055】
燃料棒1は、燃料集合体10の横断面における最外周領域のコーナーに配置された、
図5に示された燃料棒識別子R1の燃料棒であり、前述の(A)の燃料グループに含まれる燃料棒である。その最外周領域で燃料棒1に隣接して配置された2本の燃料棒2は、燃料棒識別子R2の燃料棒であり、前述の(B)の燃料グループに含まれる燃料棒である。最外周領域で2本の燃料棒2に別々に隣接して配置された2本の燃料棒3は、燃料棒識別子R3の燃料棒であり、前述の(C)の燃料グループに含まれる燃料棒である。最外周領域で2本の燃料棒3に別々に隣接して配置された2本の燃料棒4は、燃料棒識別子R4の燃料棒であり、前述の(C)の燃料グループに含まれる燃料棒である。チャンネルボックス16の内面から二列目のコーナーに配置されて2本の燃料棒2に隣接している1本の燃料棒5は、燃料棒識別子R6の燃料棒であり、前述の(C)の燃料グループに含まれる燃料棒である。
【0056】
燃料集合体10の横断面において、4つのコーナー領域15以外の中心領域14には、(C)の燃料グループ及び(D)の燃料グループに含まれる複数の燃料棒12が存在する。中心領域14において、チャンネルボックス16の内面から二列目の燃料棒配列に含まれて一つのコーナー領域15に隣接する4本の燃料棒6は、燃料棒識別子R7及びR8の燃料棒であり、前述の(D)の燃料グループに含まれる燃料棒である。中心領域14に配置された、燃料棒6以外の48本の燃料棒7は、燃料棒識別子R5及びR9以降の燃料棒であり、前述の(D)の燃料グループに含まれる燃料棒である。中心領域14には、64本の燃料棒12が配置され、これらの燃料棒12は16本の燃料棒6及び48本の燃料棒7を含んでいる。
【0057】
1本のウォーターロッドWRが配置された領域(4本の燃料棒11が配置可能な領域)を除いた、燃料棒6及び7が配置された中心領域14は、10行10列の燃料棒が配置された燃料集合体10の、チャンネルボックス16の内面よりも内側の横断面に対し、64%を占めている。4つのコーナー領域15は、燃料集合体10のその横断面に対し、32%を占めている。1つのコーナー領域15では、8%となる。ちなみに、ウォーターロッドWRは、燃料集合体10のその横断面に対して4%を占めている。
【0058】
前述の特許第6016209号公報の
図9に示されたMOX燃料集合体では、
図5の左側上部に示された燃料棒識別子R1~R4及びR6の各位置に配置された8本の燃料棒P1~P4が、燃料集合体10のコーナー領域15に対応した位置に配置されている。このコーナー領域15には、プルトニウム富化度が異なる4種類の燃料棒11(燃料棒P1~P4)が配置されている。コーナー領域15からR6の位置における燃料棒11を除外したとしても、プルトニウム富化度が異なる3種類の燃料棒11(燃料棒P2~P4)が配置される。特許第6016209号公報の
図9に示されたMOX燃料集合体では、中心領域14には、プルトニウム富化度が1種類の燃料棒11(燃料棒P1)が配置される。
【0059】
特許第6016209号公報の
図9に示されたMOX燃料集合体は、コーナーにMOX燃料を含む燃料棒P4が配置され、プルトニウム富化度が異なる4種類の燃料棒11をコーナー領域15に配置しているため、そのMOX燃料集合体の横断面において、中心領域14、すなわち、最外周領域、及びR6の位置を除いた部分での出力分布は、
図6左側の下部の「Puの富化度分布なし」のようになる。そのMOX燃料集合体の横断面における、最外周領域、及びR6の位置を除いた部分には、プルトニウム富化度が10%である燃料棒P1が配置されており、その部分のプルトニウム富化度は均一であり、プルトニウム富化度に分布がついていない。
図5左側の下部に示された相対的熱中性子束から、プルトニウム富化度10%を用いて予測した出力分布は、
図6左側の下部の「Puの富化度分布なし」のようになり、出力の最大値はR7の位置で0.29となる。
【0060】
本実施例の燃料集合体10は、コーナー領域15内のR1の位置及びR2の位置のそれぞれに、劣化ウランを有してプルトニウムを含んでいない燃料棒1及び2を配置しており、コーナー領域15内のR3,R4及びR6の位置のそれぞれに、プルトニウム富化度が1.8wt%である燃料棒3,4及び5を配置している。すなわち、コーナー領域15には、プルトニウム富化度が1種類の燃料棒11が配置される。燃料集合体10は、燃料棒3,4及び5よりもプルトニウム富化度が大きい燃料棒6及び7を中心領域14に配置しているが、コーナー領域15にプルトニウム富化度が1種類で均一な燃料棒3,4及び5を配置しているため、燃料集合体10の横断面における、最外周領域、及びR6の位置を除いた部分での出力分布は、
図6左側の上部の「実施例1の燃料集合体10の出力分布」のようになり、出力の最大値はR7の位置で0.21となる。
【0061】
このように、燃料集合体10の横断面におけるR7の位置での出力が、特許第6016209号公報の
図9に示されたMOX燃料集合体の横断面におけるR7の位置での出力よりも低下する。すなわち、後者での「0.29」が前者で「0.21」となる。本実施例では、燃料集合体10の横断面における最大出力が「0.21」となり、燃料集合体10の横断面における出力分布が、特許第6016209号公報の
図9に示されたMOX燃料集合体のその出力分布よりも平坦化される。
【0062】
本実施例では、コーナー領域15に配置された燃料棒11のプルトニウム富化度が1.8wt%と1種類であるため、燃料集合体10の横断面における中心領域14に配置された燃料棒11のプルトニウム富化度を11.0wt%に増大させることができる。この結果、燃料集合体10が高燃焼度化され、燃料集合体10の横断面における中心領域14の中心部(
図5の左側上部に示された識別子R10~R14の各燃料棒が配置される領域)における出力(
図6の左側上部の図を参照)が、特許第6016209号公報の
図9に記載されたMOX燃料集合体の横断面における、同じ中心部(識別子R10~R14の各燃料棒が配置される領域)での出力よりも増加している。このため、燃料集合体10の横断面における中心領域14において、中心部の出力とこの周囲の領域の出力の差が減少し、燃料集合体10の横断面での出力分布がより平坦化された。
【0063】
本実施例は、中心領域14にプルトニウム富化度が7.0wt%の複数の燃料棒6及び11.0wt%の複数の燃料棒7を配置し、それらの燃料棒6を中心領域14内でコーナー領域15に隣接させて配置しているため、燃料集合体10の横断面での出力分布がさらに平坦化される。
【0064】
燃料集合体10の、中心領域14の中心部に配置された燃料棒7のプルトニウム富化度が11.0wt%に増大されたが、このプルトニウム富化度の高い燃料棒7の周囲では、水の量が少ない。このため、その中心部におけるR10の位置に配置されてプルトニウム富化度が増大された燃料棒7の出力は、特許第6016209号公報の
図9に示されたMOX燃料集合体の横断面における同じ位置に配置された、核分裂性プルトニウムを含む燃料棒の出力よりも「0.02」だけしか増加していない。また、
図6の左側上部の図及び
図6の左側下部の図から明らかなように、中心領域14内のR11~R14の各位置に配置された各燃料棒7の出力も、「0.01」~「0.02」の範囲で増加している。このように、水の量が少ない中央部に配置された燃料棒7のプルトニウム富化度を増大しても、上昇する出力の増加割合は小さい。
【0065】
特に、各コーナー領域15においては、核分裂性ウランの濃度が0.2wt%である劣化ウランを有してプルトニウムを含んでいない燃料棒1及び2が、最外周領域でコーナーとこのコーナーに隣接する位置にそれぞれ配置され、プルトニウム富化度が燃料集合体10内で最低である燃料棒3ないし5が、燃料棒1及び2が配置された領域の周りに配置される。このため、燃料集合体10の各コーナー領域15における出力は、特許第6016209号公報の
図9に記載されたMOX燃料集合体の横断面におけるコーナー領域の出力よりも著しく低下する。このようなコーナー領域15における出力の低下も、また、燃料集合体10の横断面における出力分布の平坦化に大きく貢献している。
【0066】
本実施例は、コーナー領域15において、劣化ウランを含みプルトニウムを含まない燃料棒1を最外周領域のコーナーに配置し、この最外周領域で劣化ウランを含みプルトニウムを含まない燃料棒2を燃料棒1に隣接して配置しているので、燃料集合体10内における燃料棒の種類数を低減することができ、燃料集合体10の横断面における出力分布をさらに平坦化することができる。
【0067】
本実施例によれば、コーナー領域15における核分裂性プルトニウムを含む燃料棒11(燃料棒3ないし5)のプルトニウム富化度が1種類であるため、燃料集合体10の中心領域14に配置された燃料棒11のプルトニウム富化度を11.0wt%まで高めることができる。このため、燃料集合体10を、特許第6016209号公報の
図9に記載されたMOX燃料集合体よりも高燃焼度化することができる。高燃焼度化した燃料集合体10においても、横断面における出力分布をより平坦化することができる。
【0068】
本実施例では、核分裂性プルトニウムを含む燃料棒の種類数が、「3」と、特許第6016209号公報の
図9に記載されたMOX燃料集合体における、核分裂性プルトニウムを含む燃料棒の種類数(「4」)よりも少なくなるため、燃料集合体10の製造に必要な燃料ペレットの製造が著しく容易になり、燃料集合体10の製造が容易になる。
【0069】
本実施例では、中心領域14に、プルトニウム富化度7.0wt%の燃料棒6及びプルトニウム富化度11.0wt%の燃料棒7を配置している。しかしながら、中心領域14に、プルトニウム富化度7.0wt%の燃料棒6を配置しないでプルトニウム富化度11.0wt%の燃料棒7を配置した場合でも、コーナー領域15において、核分裂性プルトニウムを含まず、劣化ウランを含む燃料棒1及び2を最外周領域のコーナー付近に配置しているため、プルトニウムを含む燃料集合体の高燃焼度化によっても、その燃料集合体の横断面における出力分布を更に平坦化することができる。
【実施例2】
【0070】
本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例2のMOX燃料集合体を、
図3、
図7及び
図8を用いて説明する。
【0071】
本実施例の燃料集合体10Aは、MOX燃料集合体であり、燃料集合体10と同様に、複数の燃料棒11を、燃料集合体10Aの横断面において、10行10列の正方格子でチャンネルボックス16内に配置している。燃料集合体10Aは、実施例1の燃料集合体10で用いられた燃料棒2を燃料棒2Aに替え、燃料集合体10の横断面における第1対角線上で、制御棒30側のコーナーに位置しているコーナー領域15、すなわち、チャンネルファスナ側のコーナーに位置しているコーナー領域15に対して反対側の他のコーナーに位置する他のコーナー領域15において、チャンネルボックス16の内面から二列目のコーナー(R6の位置)に、燃料棒Gを配置している。燃料棒2Aは、
図8に示すように、核分裂性プルトニウムを含み、プルトニウム富化度は、燃料棒3ないし5と同様に1.8wt%である。燃料棒2Aは、核分裂性ウランの濃度が0.2wt%である劣化ウランを核燃料物質として用いており、核分裂性プルトニウムがその劣化ウランに混ざっている。燃料棒Gは、ガドリニアを含んでおり、
図8に示すように、10.0wt%の、可燃性毒物であるガドリニウム(Gd)が、核分裂性ウランの濃度が0.2wt%である劣化ウランに含まれている。
【0072】
燃料集合体10Aの横断面において、制御棒30側の1つのコーナーを含むコーナー領域15、及びこのコーナー領域15に隣り合っている2つのコーナー領域15のそれぞれでは、
図5の左側の上部に示されたR1の位置に燃料棒1を、2箇所のR2の位置のそれぞれに燃料棒2Aを、2箇所のR3の位置のそれぞれに燃料棒3を、2箇所のR4の位置のそれぞれに燃料棒4を、及びR6の位置に燃料棒5を配置している。さらに、燃料集合体10Aの制御棒30側の上記の1つのコーナーを通る対角線(以下、第1対角線という)上で、制御棒30側のコーナー領域15に対して反対側のコーナーに位置する他のコーナー領域15では、
図5の左側の上部に示されたR1の位置に燃料棒1を、2箇所のR2の位置のそれぞれに燃料棒2Aを、2箇所のR3の位置のそれぞれに燃料棒3を、2箇所のR4の位置のそれぞれに燃料棒4を、及びR6の位置に燃料棒Gを配置している。
【0073】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、可燃性毒物であるガドリニアを含む燃料棒Gを1つのコーナー領域15(前述の第1対角線上で、制御棒30側のコーナー領域15に対して反対側のコーナーに位置する他のコーナー領域15)に配置することにより、この他のコーナー領域15における反応度制御が可能となると共に、4つのコーナー領域15のそれぞれに2本の燃料棒2Aを配置することにより、燃料集合体10よりも燃料集合体の平均プルトニウム富化度を高めることができる。このため、燃料集合体10Aの更なる高燃焼度化を図ることができる。
【0074】
燃料集合体10Aの横断面において制御棒30側のコーナーに配置されたコーナー領域15内で、例えば、チャンネルボックス16の内面から二列目の燃料棒配列のコーナー(R6の位置)に燃料棒Gを配置した場合には、制御棒30を炉心22に装荷された4体の燃料集合体10Aの相互間に挿入したときに、制御棒30が吸収するはずの中性子が、燃料棒Gに含まれる可燃性毒物であるガドリニアによって吸収され、制御棒30の価値が小さくなって制御棒30による反応度調整量が小さくなる。燃料集合体10Aでは、燃料棒Gが、第1対角線上で、制御棒30側のコーナーとは反対側のコーナーに配置されたコーナー領域15内で、チャンネルボックス16の内面から二列目の燃料棒配列のコーナーに配置しているため、その問題点が解消され、制御棒30の価値が大きくなって制御棒30による反応度調整量が大きくなる。
【実施例3】
【0075】
本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例3のMOX燃料集合体を、
図3、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0076】
本実施例の燃料集合体10Bは、MOX燃料集合体であり、燃料集合体10と同様に、複数の燃料棒11を、燃料集合体10Bの横断面において、10行10列の正方格子でチャンネルボックス16内に配置している。燃料集合体10Bは、実施例2の燃料集合体10Aの横断面におけるR4に配置された燃料棒4を、ガドリニアを含む燃料棒Gに替えた構成を有する。燃料集合体10Bの他の構成は、燃料集合体10Aと同じである。本実施例では、中性子のエネルギースペクトルが変化しやすい、燃料集合体10Bの最外周領域に、ガドリニアを含みプルトニウムを含まない燃料棒Gを配置している。
【0077】
本実施例は、実施例2で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例では、コーナー領域15内の最外周領域(例えば、R4の位置)に燃料棒Gを配置し、実施例2の燃料集合体10Aよりも、炉心の制御に必要な可燃性毒物を含む燃料棒Gの本数が多くすることにより、制御棒の制御方法に対する自由度が向上し、炉心の反応度制御が容易となる。特許第6016209号公報の
図9に示されたMOX燃料集合体ではこの燃料集合体の横断面の中央部に可燃性毒物を含む複数の燃料棒(燃料棒G1)を配置している。これに対し、本実施例では、燃料集合体10Bの相互間に形成される水ギャップ領域(図示せず)に近い、コーナー領域15内の最外周領域、すなわち、熱中性子の多い領域に複数の燃料棒Gを配置することにより、それらの燃料棒Gでより多くの熱中性子を吸収することができ、燃料集合体10B内に配置する燃料棒Gの本数を低減することができる。
【実施例4】
【0078】
本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例4のMOX燃料集合体を、
図3、
図10及び
図11を用いて説明する。
【0079】
本実施例の燃料集合体10Cは、MOX燃料集合体であり、燃料集合体10と同様に、複数の燃料棒11を、燃料集合体10Cの横断面において、10行10列の正方格子でチャンネルボックス16内に配置している。複数体の燃料集合体10Cが、改良型沸騰水型原子力プラントの原子炉圧力容器21内の炉心22に装荷される。
【0080】
燃料集合体10Cは、燃料集合体10のコーナー領域15をコーナー領域15Aに替えた構成を有する。コーナー領域15Aは、燃料集合体10Cの横断面における4つのコーナーのそれぞれに配置される。燃料集合体10Cにおける中心領域14Aは、4つのコーナー領域15Aの内側に形成される。
【0081】
各コーナー領域15Aに配置された燃料棒13の本数は、燃料集合体10のコーナー領域15を形成する燃料棒13の本数よりも多くなっている。それぞれのコーナー領域15Aに配置された燃料棒13は、燃料集合体10のコーナー領域15に配置された燃料棒1ないし5の8本と共に、2本の燃料棒4A及び2本の燃料棒5Aを含む。燃料棒4Aは、コーナー領域15A内の最外周領域(チャンネルボックス16の内面に隣接した、燃料棒13の配置領域)において、各燃料棒4に隣接して配置される。2本の燃料棒5Aは、コーナー領域15A内で、チャンネルボックス16の内面から二列目の燃料棒配列において、この二列目の燃料棒配列のコーナーに配置された燃料棒5に隣接して配置される。なお、燃料棒4A及び5Aのそれぞれのプルトニウム富化度は、燃料棒3ないし5のプルトニウム富化度と同じ1.8wt%である。
【0082】
燃料棒4A及び5Aのそれぞれのプルトニウム富化度を、燃料棒3,4及び5のそれぞれのプルトニウム冨化度と同様に、2.2wt%または2.7wt%にしてもよい。燃料棒4A及び5Aのそれぞれのプルトニウム富化度は、燃料棒3,4及び5のそれぞれと同様に、0.1wt%以上3.0wt%以下の範囲の値に設定される。
【0083】
燃料集合体10Cの中心領域14Aは、8本の燃料棒6及び40本の燃料棒7が配置される。
【0084】
本実施例では、燃料集合体10Cの各コーナー領域15Aでは、12本の燃料棒13が配置され、実施例1における燃料集合体10の各コーナー領域15よりも燃料棒13が4本多くなっている。このため、燃料集合体10Cでは、4つのコーナー領域15Aは、燃料集合体10Cの横断面に対し、48%を占めている。1つのコーナー領域15では、12%となる。4本の燃料棒11が配置可能な領域に配置された1本のウォーターロッドWRは、燃料集合体10Cの横断面に対して4%を占めている。なお、燃料集合体10Cの中心領域14Aは、燃料集合体10Cの横断面に対し、48%を占めている。
【0085】
このような燃料集合体10Cでは、増加した燃料棒4A及び5Aのプルトニウム富化度が、前述したように、燃料棒3ないし5のそれと同じであるため、燃料集合体10Cの各コーナー領域15A内に配置された、核分裂性プルトニウムを含む燃料棒13のプルトニウム富化度は1種類である。このため、燃料集合体10Cの中心領域14A内の燃料棒7のプルトニウム富化度を11.0wt%に高めることができ、燃料集合体10Cの横断面での出力分布を、特許第6016209号公報の
図9に記載されたMOX燃料集合体よりも平坦化することができる。
【0086】
本実施例では、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0087】
10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体において、燃料集合体の横断面における各コーナーに形成したコーナー領域の燃料棒13の配置を、実施例1及び本実施例のそれぞれの燃料集合体の横断面で各コーナーに配置したコーナー領域とは異なる燃料棒13の配置にしてもよい。例えば、10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体における各コーナー領域の燃料棒13の配置を、燃料集合体10Cの横断面に形成されたコーナー領域15Aの燃料棒13の配置から、チャンネルボックス16の内面から二列目の燃料棒配列のコーナーに配置された燃料棒5に隣接した2本の燃料棒5Aを削除した燃料棒13の配置にする。このコーナー領域では、10本の燃料棒13が配置される。また、10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体における各コーナー領域の燃料棒13の他の配置の例としては、燃料集合体10Cの横断面に形成されたコーナー領域15Aの燃料棒13の配置から、チャンネルボックス16の内面から一列目の最外周領域に配置された2本の燃料棒4Aを削除した燃料棒13の配置が挙げられる。このコーナー領域でも、10本の燃料棒13が配置される。10本の燃料棒13が配置されるコーナー領域が横断面の各コーナーに形成される燃料集合体では、4つのコーナー領域はその燃料集合体の横断面に対して40%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域(4本の燃料棒11が配置可能な領域)を除いた、その燃料集合体の中心領域はその燃料集合体の横断面に対して56%を占めている。
【0088】
このため、横断面において10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、その横断面の各コーナーに形成された、4つのコーナー領域は、燃料集合体の横断面に対して32%以上48%以下の範囲内の割合である。1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、中心領域14は、10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体の横断面に対して64%以下48%以上の範囲内の割合である。
【0089】
さらに、横断面において10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体10におけるコーナー領域15は、燃料集合体10の横断面において制御棒30側の一つのコーナー、またはこのコーナーを通る第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナーにのみ配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、燃料集合体10において、1つのコーナー領域15はその燃料集合体10の横断面に対して8%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域(4本の燃料棒11が配置可能な領域)を除いた、その燃料集合体10の中心領域14はその燃料集合体10の横断面に対して88%を占めている。
【0090】
横断面において10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体10におけるコーナー領域15は、燃料集合体10の横断面において第1対角線上の2つのコーナーのそれぞれに、または、燃料集合体10の横断面において第1対角線と直交する他の1本の対角線(以下、第2対角線という)上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなケースでは、燃料集合体10において、それらの二つのコーナー領域15は、その燃料集合体10の横断面に対して16%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域(4本の燃料棒11が配置可能な領域)を除いた、その燃料集合体10の中心領域14はその燃料集合体10の横断面に対して80%を占めている。
【0091】
横断面において10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体10におけるコーナー領域15は、燃料集合体10の横断面において制御棒30側の一つのコーナー、及び燃料集合体10の横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれ、または、第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナー、及び第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、燃料集合体10において、三つのコーナー領域15はその燃料集合体10の横断面に対して24%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10の中心領域14はその燃料集合体10の横断面に対して72%を占めている。
【0092】
コーナー領域15Aを有する燃料集合体10Cでは、コーナー領域15Aを、燃料集合体10Cの横断面において制御棒30側の一つのコーナー、または第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナーにのみ配置してもよい。このような各ケースでは、燃料集合体10Cにおいて、1つのコーナー領域15Aはその燃料集合体10Cの横断面に対して12%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10Cの中心領域14Aはその燃料集合体10Cの横断面に対して84%を占めている。
【0093】
横断面において10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体10Cにおけるコーナー領域15Aは、燃料集合体10の横断面において第1対角線上の2つのコーナーのそれぞれに、または、燃料集合体10Cの横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなケースでは、燃料集合体10Cにおいて、それらの二つのコーナー領域15Aは、その燃料集合体10Cの横断面に対して24%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10Cの中心領域14Aはその燃料集合体10Cの横断面に対して72%を占めている。
【0094】
コーナー領域15Aを有する燃料集合体10Cでは、コーナー領域15Aは、燃料集合体10Cの横断面において制御棒30側の一つのコーナー、及び燃料集合体10Cの横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれ、または、第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナー、及び第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、燃料集合体10Cにおいて、三つのコーナー領域15Cはその燃料集合体10Cの横断面に対して36%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域(を除いた、その燃料集合体10Cの中心領域14Aはその燃料集合体10Cの横断面に対して60%を占めている。
【0095】
10本の燃料棒13が配置されるコーナー領域を有する、横断面において10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、その燃料集合体の横断面において制御棒30側の一つのコーナー、または第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナーにのみ、そのコーナー領域を配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、10本の燃料棒13が配置される、1つのコーナー領域はその燃料集合体の横断面に対して10%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域(4本の燃料棒11が配置可能な領域)を除いた、その燃料集合体の中心領域はその燃料集合体の横断面に対して86%を占めている。
【0096】
10本の燃料棒13が配置されるコーナー領域を有する、横断面において10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、その燃料集合体の横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーのそれぞれ配置に、そのコーナー領域を配置してもよい。このようなケースでは、10本の燃料棒13が配置される、それらの二つのコーナー領域は、その燃料集合体の横断面に対して20%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体の中心領域14はその燃料集合体の横断面に対して76%を占めている。
【0097】
10本の燃料棒13が配置されるコーナー領域を有する、横断面において10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、その燃料集合体の横断面において制御棒30側の一つのコーナー、及びその燃料集合体の横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれ、または、第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナー、及び第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、その燃料集合体10において、10本の燃料棒13が配置される、三つのコーナー領域はその燃料集合体の横断面に対して30%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体の中心領域はその燃料集合体の横断面に対して66%を占めている。
【0098】
以上に述べた、8本の燃料棒13を有するコーナー領域15が形成された燃料集合体10、10本の燃料棒13を有するコーナー領域が形成された燃料集合体、及び12本の燃料棒13を有するコーナー領域15Aが形成された燃料集合体10Cにおけるコーナー領域及び中心領域のそれぞれの、燃料集合体の横断面に対する割合を考慮すれば、横断面において10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、その横断面のコーナーに形成されたコーナー領域の、その燃料集合体の横断面に対する割合を8%以上48%以下の範囲に存在する割合とし、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、10行10列で燃料棒11を配置したその燃料集合体の中心領域の、その燃料集合体の横断面に対する割合を88%以下48%以上の範囲に存在する割合とする。
【0099】
好ましくは、横断面において10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、前述したように、4つのコーナー領域の、燃料集合体の横断面に対する割合を32%以上48%以下の範囲に存在する割合とし、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、中心領域14の、10行10列で燃料棒11を配置した燃料集合体の横断面に対する割合を64%以下48%以上の範囲に存在する割合とすることが望ましい。
【0100】
以上述べましたように、燃料集合体の横断面におけるコーナー領域は、その横断面の少なくとも1つのコーナーに形成される。コーナー領域をその横断面の少なくとも1つのコーナーに形成することは、後述する実施例5の燃料集合体10D、実施例6の燃料集合体10E及び実施例7の燃料集合体10Fにも適用される。
【0101】
特に、燃料集合体10におけるコーナー領域15の配置としては、(1)コーナー領域15は、燃料集合体10の横断面において制御棒30側の一つのコーナー、またはこのコーナーを通る第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナーにのみ、コーナー領域15を配置、(2)燃料集合体10の横断面において第1対角線上の2つのコーナーのそれぞれに、または、燃料集合体10の横断面において第1対角線と直交する他の1本の対角線(以下、第2対角線という)上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーのそれぞれに、コーナー領域15を配置、(3)燃料集合体10の横断面において制御棒30側の一つのコーナー、及び燃料集合体10の横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれ、または、第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナー、及び第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれに、コーナー領域15を配置、及び(4)燃料集合体10の横断面における4つのコーナーのそれぞれに、コーナー領域15を配置(実施例1)の4つのケースがある。これらのケースでは、それぞれ、燃料集合体10の横断面における少なくとも1つのコーナー領域が、燃料集合体の制御棒側のコーナーを通る第1対角線(対称軸)に対して対称になっている。それぞれのケースの燃料集合体の横断面におけるコーナー領域の、第1対角線に対する線対称性は、本実施例の燃料集合体10C、及び後述する実施例5の燃料集合体10D、実施例6の燃料集合体10E及び実施例7の燃料集合体10Fにおいても成立する。
【実施例5】
【0102】
本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例5のMOX燃料集合体を、
図3、
図12及び
図13を用いて説明する。
【0103】
本実施例の燃料集合体10Dは、MOX燃料集合体であり、実施例1の燃料集合体10と異なり、複数の燃料棒11を、燃料集合体10Dの横断面において、9行9列の正方格子でチャンネルボックス16内に配置している。複数体の燃料集合体10Dが、改良型沸騰水型原子力プラントの原子炉圧力容器21内の炉心22に装荷される。
【0104】
燃料集合体10Dは、燃料集合体10Dの横断面において4つのコーナーのそれぞれにコーナー領域15Bを形成しており、これらのコーナー領域15Bの内側に中心領域14Bを形成している。9行9列の燃料棒11の配置、及びコーナー領域15B及び中心領域14Bの形成以外の、燃料集合体10Dの構成は、燃料集合体10と同じである。
【0105】
燃料集合体10Dは、
図13に示すように、燃料棒1及び5をそれぞれ4本、燃料棒2,3及び4をそれぞれ8本、燃料棒6を16本、及び燃料棒7を26本含んでいる。燃料集合体10D内の燃料棒1ないし7のそれぞれのプルトニウム富化度は、燃料集合体10における燃料棒1ないし7のそれぞれのプルトニウム富化度と同じである。
【0106】
各コーナー領域15Bには、8本の燃料棒13が配置される。それぞれのコーナー領域15Bに配置された8本の燃料棒13は、1本の燃料棒1,2本の燃料棒2、2本の燃料棒3,2本の燃料棒4及び1本の燃料棒5を含んでいる。各コーナー領域15Bにおいて、燃料棒1は最外周領域のコーナーに配置され、各燃料棒2はその最外周領域で燃料棒1に隣接して配置され、各燃料棒3はその最外周領域で別々の燃料棒2に隣接して配置され、さらに、各燃料棒4はその最外周領域で別々の燃料棒3に隣接して配置される。残りの1本の燃料棒5は、各コーナー領域15Bにおいて、チャンネルボックス16の内面から二列目の燃料棒配列のコーナーに配置される。
【0107】
燃料集合体10Dの中心領域14Bには、16本の燃料棒6及び26本の燃料棒7が配置される。燃料集合体10Dの横断面の中央に、2本のウォーターロッドWRが配置される。これらのウォーターロッドWRは、7本の燃料棒11が配置可能な領域を占有している。
【0108】
本実施例の燃料集合体10Dでは、4つのコーナー領域15Bは、燃料集合体10Dの横断面に対し、40%を占めている。1つのコーナー領域15では、10%となる。4本の燃料棒11が配置可能な領域に配置された1本のウォーターロッドWRは、燃料集合体10Dの横断面に対して8%を占めている。なお、2本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、燃料集合体10Dの中心領域14Bは、燃料集合体10Dの横断面に対し、52%を占めている。
【0109】
実施例5は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0110】
さらに、横断面において9行9列で燃料棒11を配置した燃料集合体10Dにおけるコーナー領域15Bは、燃料集合体10Dの横断面において制御棒30側の一つのコーナー、またはこのコーナーを通る第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナーにのみ配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、燃料集合体10Dにおいて、1つのコーナー領域15Bはその燃料集合体10Dの横断面に対して9%を占めており、2本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10Dの中心領域14Bはその燃料集合体10Dの横断面に対して82%を占めている。
【0111】
横断面において9行9列で燃料棒11を配置した燃料集合体10Dにおけるコーナー領域15Bは、燃料集合体10の横断面において第1対角線上の2つのコーナーのそれぞれに、または、燃料集合体10Dの横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーにそれぞれ配置してもよい。このようなケースでは、燃料集合体10Dにおいて、それらの二つのコーナー領域15Bは、その燃料集合体10Dの横断面に対して16%を占めており、2本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10Dの中心領域14Bはその燃料集合体10Dの横断面に対して72%を占めている。
【0112】
横断面において9行9列で燃料棒11を配置した燃料集合体10Dにおけるコーナー領域15Bは、燃料集合体10Dの横断面において制御棒30側の一つのコーナー、及び燃料集合体10Dの横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれ、または、第1対角線上で、制御棒30側のコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナー、及び第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、燃料集合体10Dにおいて、三つのコーナー領域15Bはその燃料集合体10Dの横断面に対して29%を占めており、2本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10Dの中心領域14Bはその燃料集合体10Dの横断面に対して62%を占めている。
【0113】
以上に述べた、8本の燃料棒13を有するコーナー領域15Bが形成された燃料集合体10Dにおけるコーナー領域15B及び中心領域14Bのそれぞれの、燃料集合体10Dの横断面に対する割合を考慮すれば、燃料集合体10Dでは、その横断面のコーナーに形成されたコーナー領域の、その燃料集合体10Dの横断面に対する割合を9%以上40%以下の範囲に存在する割合とし、2本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、燃料集合体10Dの中心領域14Bの、その燃料集合体10Dの横断面に対する割合を82%以下52%以上の範囲に存在する割合とする。
【実施例6】
【0114】
本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例5のMOX燃料集合体を、
図3、図
14及び図
15を用いて説明する。
【0115】
本実施例の燃料集合体10Eは、MOX燃料集合体であり、実施例1の燃料集合体10と異なり、複数の燃料棒11を、燃料集合体10Eの横断面において、11行11列の正方格子でチャンネルボックス16内に配置している。複数体の燃料集合体10Eが、改良型沸騰水型原子力プラントの原子炉圧力容器21内の炉心22に装荷される。
【0116】
燃料集合体10Eは、燃料集合体10Eの横断面において4つのコーナーのそれぞれにコーナー領域15Cを形成しており、これらのコーナー領域15Cの内側に中心領域14Cを形成している。11行11列の燃料棒11の配置、及びコーナー領域15C及び中心領域14Cの形成以外の、燃料集合体10Eの構成は、燃料集合体10と同じである。
【0117】
燃料集合体10Eは、
図15に示すように、燃料棒1及び5をそれぞれ4本、燃料棒2,3及び4をそれぞれ8本、燃料棒6を16本、及び燃料棒7を64本含んでいる。燃料集合体10E内の燃料棒1ないし7のそれぞれのプルトニウム富化度は、燃料集合体10における燃料棒1ないし7のそれぞれのプルトニウム富化度と同じである。
【0118】
各コーナー領域15Cには、8本の燃料棒13が配置される。それぞれのコーナー領域15Cに配置された8本の燃料棒13は、1本の燃料棒1,2本の燃料棒2、2本の燃料棒3,2本の燃料棒4及び1本の燃料棒5を含んでいる。各コーナー領域15Cにおいて、燃料棒1は最外周領域のコーナーに配置され、各燃料棒2はその最外周領域で燃料棒1に隣接して配置され、各燃料棒3はその最外周領域で別々の燃料棒2に隣接して配置され、さらに、各燃料棒4はその最外周領域で別々の燃料棒3に隣接して配置される。残りの1本の燃料棒5は、各コーナー領域15Cにおいて、チャンネルボックス16の内面から二列目の燃料棒配列のコーナーに配置される。
【0119】
燃料集合体10Eの中心領域14Cには、16本の燃料棒6及び64本の燃料棒7が配置される。燃料集合体10Eの横断面の中央に、1本のウォーターロッドWRが配置される。これらのウォーターロッドWRは、9本の燃料棒11が配置可能な領域を占有している。
【0120】
本実施例の燃料集合体10Eでは、4つのコーナー領域15Cの、燃料集合体10Eの横断面に対する割合は26%を占めている。1つのコーナー領域15に対しては6.5%となる。9本の燃料棒11が配置可能な領域に配置された1本のウォーターロッドWRは、燃料集合体10Eの横断面に対して8%を占めている。なお、1本のウォーターロッドWRが配置された領域(9本の燃料棒11が配置可能な領域)を除いた、燃料集合体10Eの中心領域14Cは、燃料集合体10Eの横断面に対し、66%を占めている。
【0121】
実施例6は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【実施例7】
【0122】
本発明の好適な他の実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例4のMOX燃料集合体を、
図3、
図16及び
図17を用いて説明する。
【0123】
本実施例の燃料集合体10Fは、MOX燃料集合体であり、燃料集合体10と同様に、複数の燃料棒11を、燃料集合体10Fの横断面において、11行11列の正方格子でチャンネルボックス16内に配置している。複数体の燃料集合体10Fが、改良型沸騰水型原子力プラントの原子炉圧力容器21内の炉心22に装荷される。
【0124】
燃料集合体10Fは、燃料集合体10Eのコーナー領域15Cをコーナー領域15Dに替えた構成を有する。コーナー領域15Eは、燃料集合体10Fの横断面における4つのコーナーのそれぞれに配置される。燃料集合体10Fにおける中心領域14Dは、4つのコーナー領域15Eの内側に形成される。
【0125】
各コーナー領域15Dに配置された燃料棒13の本数は、燃料集合体10Eのコーナー領域15Cを形成する燃料棒13の本数よりも多くなっている。それぞれのコーナー領域15Dに配置された燃料棒13は、燃料集合体10Eのコーナー領域15Cに配置された燃料棒1ないし5の8本と共に、2本の燃料棒4A及び2本の燃料棒5Aを含んでいる。燃料棒4Aは、コーナー領域15D内の最外周領域(チャンネルボックス16の内面に隣接した、燃料棒13の配置領域)において、各燃料棒4に隣接して配置される。2本の燃料棒5Aは、コーナー領域15D内で、チャンネルボックス16の内面から二列目の燃料棒配列において、この二列目の燃料棒配列のコーナーに配置された燃料棒5に隣接して配置される。なお、燃料棒4A及び5Aのそれぞれのプルトニウム富化度は、燃料棒3ないし5のプルトニウム富化度と同じ1.8wt%である。
【0126】
燃料集合体10Fの中心領域14Dは、8本の燃料棒6及び56本の燃料棒7が配置される。
【0127】
本実施例では、燃料集合体10Fの各コーナー領域15Dでは、12本の燃料棒13が配置され、実施例6における燃料集合体10Dの各コーナー領域15Bよりも燃料棒13が4本多くなっている。このため、燃料集合体10Fでは、4つのコーナー領域15Dの、燃料集合体10Fの横断面に対する割合は40%である。1つのコーナー領域15Dでは10%となる。9本の燃料棒11が配置可能な領域に配置された1本のウォーターロッドWRは、燃料集合体10Fの横断面に対して8%を占めている。なお、燃料集合体10Fの中心領域14Dの、燃料集合体10Fの横断面に対する割合は52%である。
【0128】
このような燃料集合体10Fでは、増加した燃料棒4A及び5Aのプルトニウム富化度が、前述したように、燃料棒3ないし5のそれと同じであるため、燃料集合体10Fの各コーナー領域15D内に配置された、核分裂性プルトニウムを含む燃料棒13のプルトニウム富化度は1種類である。このため、燃料集合体10Fの中心領域14D内の燃料棒7のプルトニウム富化度を11.0wt%に高めることができ、燃料集合体10Fの横断面での出力分布を平坦化することができる。
【0129】
本実施例では、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0130】
11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体において、燃料集合体の横断面における各コーナーに形成したコーナー領域の燃料棒13の配置を、実施例6及び本実施例のそれぞれの燃料集合体の横断面で各コーナーに配置したコーナー領域とは異なる燃料棒13の配置にしてもよい。例えば、11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体における各コーナー領域の燃料棒13の配置を、燃料集合体10Fの横断面に形成されたコーナー領域15Dの燃料棒13の配置から、チャンネルボックス16の内面から二列目の燃料棒配列のコーナーに配置された燃料棒5に隣接した2本の燃料棒5Aを削除した燃料棒13の配置にする。このコーナー領域では、10本の燃料棒13が配置される。また、11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体における各コーナー領域の燃料棒13の他の配置の例としては、燃料集合体10Fの横断面に形成されたコーナー領域15Dの燃料棒13の配置から、チャンネルボックス16の内面から一列目の最外周領域に配置された2本の燃料棒4Aを削除した燃料棒13の配置が挙げられる。このコーナー領域でも、10本の燃料棒13が配置される。10本の燃料棒13が配置されるコーナー領域が横断面の各コーナーに形成される燃料集合体では、4つのコーナー領域の、その燃料集合体の横断面に対する割合は33%であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域(9本の燃料棒11が配置可能な領域)を除いた、その燃料集合体の中心領域の、その燃料集合体の横断面に対する割合は59%である。
【0131】
このため、横断面において11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、その横断面の各コーナーに形成された、4つのコーナー領域の、燃料集合体の横断面に対する割合は26%以上40%以下の範囲に存在する割合であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、中心領域14Dの、その燃料集合体の横断面に対する割合は、66%以下52%以上の範囲に存在する割合である。
【0132】
さらに、横断面において11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体10Eにおけるコーナー領域15Cは、燃料集合体10Eの横断面において制御棒30側の一つのコーナー、またはこのコーナーを通る第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナーにのみ配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、燃料集合体10Eにおいて、1つのコーナー領域15Cの、その燃料集合体10Eの横断面に対する割合は6%であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域(9本の燃料棒11が配置可能な領域)を除いた、その燃料集合体10Eの中心領域14Cの、その燃料集合体10Eの横断面に対する割合は87%を占めている。
【0133】
横断面において11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体10Eにおけるコーナー領域15Cは、燃料集合体10Eの横断面において第1対角線上の2つのコーナーのそれぞれに、または、燃料集合体10Eの横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなケースでは、燃料集合体10Eにおいて、それらの二つのコーナー領域15Cの、その燃料集合体10の横断面に対する割合が13%であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10Eの中心領域14Cの、その燃料集合体10Eの横断面に対する割合が79%である。
【0134】
横断面において11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体10Eにおけるコーナー領域15Cは、燃料集合体10Eの横断面において制御棒30側の一つのコーナー、及び燃料集合体10Eの横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれ、または、第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナー、及び第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、燃料集合体10Eにおいて、三つのコーナー領域15Cの、その燃料集合体10Eの横断面に対する割合が19%であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10Eの中心領域14Cの、その燃料集合体10Eの横断面に対する割合が73%である。
【0135】
コーナー領域15Dを有する燃料集合体10Fでは、コーナー領域15Dを、燃料集合体10Fの横断面において制御棒30側の一つのコーナー、または第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナーにのみ配置してもよい。このような各ケースでは、燃料集合体10Fにおいて、1つのコーナー領域15Dの、その燃料集合体10Fの横断面に対する割合が10%であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10Fの中心領域14Aの、その燃料集合体10Fの横断面に対する割合が82%である。
【0136】
燃料集合体10Fにおけるコーナー領域15Dは、燃料集合体10Fの横断面において第1対角線上の2つのコーナーのそれぞれに、または、燃料集合体10Fの横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなケースでは、燃料集合体10Fにおいて、それらの二つのコーナー領域15Dの、その燃料集合体10Fの横断面に対する割合が20%であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10Fの中心領域14Aの、その燃料集合体10Fの横断面に対して72%を占めている。
【0137】
コーナー領域15Dを有する燃料集合体10Fでは、コーナー領域15Dは、燃料集合体10Fの横断面において制御棒30側の一つのコーナー、及び燃料集合体10Fの横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれ、または、第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナー、及び第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、燃料集合体10Fにおいて、三つのコーナー領域15Dの、その燃料集合体10Fの横断面に対する割合が29%であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体10Fの中心領域14Dの、はその燃料集合体10Fの横断面に対する割合が63%である。
【0138】
10本の燃料棒13が配置されるコーナー領域を有する、横断面において11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、その燃料集合体の横断面において制御棒30側の一つのコーナー、または第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナーにのみ、そのコーナー領域を配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、10本の燃料棒13が配置される、1つのコーナー領域の、その燃料集合体の横断面に対する割合が8%であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域(9本の燃料棒11が配置可能な領域)を除いた、その燃料集合体の中心領域のその燃料集合体の横断面に対する割合が83%である。
【0139】
10本の燃料棒13が配置されるコーナー領域を有する、横断面において11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、その燃料集合体の横断面において第1対角線上の2つのコーナーのそれぞれに、または、第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなケースでは、10本の燃料棒13が配置される、それらの二つのコーナー領域の、その燃料集合体の横断面に対する割合が16%であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体の中心領域の、その燃料集合体の横断面に対する割合が76%である。
【0140】
10本の燃料棒13が配置されるコーナー領域を有する、横断面において11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、その燃料集合体の横断面において制御棒30側の一つのコーナー、及びその燃料集合体の横断面において第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれ、または、第1対角線上でそのコーナーの反対側に位置する他の一つのコーナー、及び第2対角線上に位置する、制御棒30側の一つのコーナーに隣り合う二つのコーナーの三つのコーナーのそれぞれに配置してもよい。このようなそれぞれのケースでは、その燃料集合体10において、10本の燃料棒13が配置される、三つのコーナー領域はその燃料集合体の横断面に対して24%を占めており、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、その燃料集合体の中心領域はその燃料集合体の横断面に対して68%を占めている。
【0141】
以上に述べた、8本の燃料棒13を有するコーナー領域15Cが形成された燃料集合体10E、10本の燃料棒13を有するコーナー領域が形成された燃料集合体、及び12本の燃料棒13を有するコーナー領域15Dが形成された燃料集合体10Fのそれぞれにおけるコーナー領域及び中心領域の、燃料集合体の横断面に対する割合を考慮すれば、横断面において11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、その横断面のコーナーに形成されたコーナー領域の、その燃料集合体の横断面に対する割合を6%以上40%以下の範囲に存在する割合とし、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、11行11列で燃料棒11を配置したその燃料集合体の中心領域の、その燃料集合体の横断面に対する割合を86%以下52%以上の範囲に存在する割合とする。
【0142】
好ましくは、横断面において11行11列で燃料棒11を配置した燃料集合体では、前述したように、4つのコーナー領域の、燃料集合体の横断面に対する割合は26%以上40%以下の範囲に存在する割合であり、1本のウォーターロッドWRが配置された領域を除いた、中心領域14Dの、その燃料集合体の横断面に対する割合は、66%以下52%以上の範囲に存在する割合であることが望ましい。
【0143】
なお、前述の実施例1ないし7の各燃料集合体は、改良型沸騰水型原子力プラント以外に、例えば、再循環ポンプ及び再循環系配管を有する再循環系、及びジェットポンプを備えた通常の沸騰水型原子力プラント(BWRプラント)、及びチムニを設け、これにより冷却水の自然循環で炉心を冷却する自然循環型の沸騰水型原子力プラント等に適用することができる。
【符号の説明】
【0144】
1~7,4A,5A,G,11~13…燃料棒、10,10A,10B,10C,10D,10E,10F…燃料集合体、14,14A,14B,14C,14D…中心領域、15,15A,15B,15C,15D…コーナー領域、16…チャンネルボックス、17…下部タイプレート、20…燃料スペーサ、20…原子炉、21…原子炉圧力容器、22…炉心、23…炉心シュラウド、26…インターナルポンプ、30…制御棒。