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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ゴム組成物、タイヤ、及びゴム用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240215BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240215BHJP
   C08K 5/3432 20060101ALI20240215BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240215BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/013
C08K5/3432
C08L9/00
B60C1/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020145730
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040828
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 真也
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-136048(JP,A)
【文献】特開昭53-069252(JP,A)
【文献】国際公開第2022/045240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B60C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物若しくはその塩、並びにゴム成分を含み、
前記化合物又はその塩の配合割合は、前記ゴム成分100質量部に対して0.01~30質量部である、ゴム組成物。
【化1】
〔式中、Aは、環構造内に1~3個の窒素原子を有する六員の芳香族複素環を示し、さらに1又は複数の置換基を有していてもよい。前記置換基は、アミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基から選ばれる。〕
【請求項2】
前記六員の芳香族複素環がピリジン環である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
さらに充填材を含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分がジエン系ゴムである、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
【請求項6】
下記式(1)で表される化合物又はその塩を含むゴム用添加剤。
【化2】
〔式中、Aは、環構造内に1~3個の窒素原子を有する六員の芳香族複素環を示し、さらに1又は複数の置換基を有していてもよい。前記置換基は、アミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基から選ばれる。〕
【請求項7】
低発熱化剤である、請求項6に記載の添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、タイヤ、及びゴム用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源、省エネルギー、及び環境保護の観点から、二酸化炭素をはじめとした排出ガスの規制が厳しくなっており、自動車に対する低燃費化の要求が高まっている。自動車の低燃費化には、エンジン等の駆動系及び伝達系の寄与が大きいが、タイヤの転がり抵抗も大きく関与しているため、駆動系及び伝達系だけでなく、タイヤの転がり抵抗の改善も必要とされている。
【0003】
タイヤの転がり抵抗の改善方法として、ゴム組成物にジヒドラジド化合物を配合する方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
しかし、ジヒドラジド化合物をゴム組成物に配合すると、低発熱性が向上する一方で、ゴム組成物の粘性(ムーニー粘度)が増加する傾向があり、その結果、加工性が悪化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-136048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、優れた低発熱性及び加工性を有するゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の化合物をゴム成分に加えることにより優れた低発熱性及び加工性を有するゴム組成物を得ることができることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下のゴム組成物、タイヤ及びゴム用添加剤を提供する。
項1.
下記式(1)で表される化合物若しくはその塩、並びにゴム成分を含む、ゴム組成物。
【化1】
〔式中、Aは、環構造内に1~3個の窒素原子を有する六員の芳香族複素環を示し、さらに1又は複数の置換基を有していてもよい。前記置換基は、アミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基から選ばれる。〕
項2.
前記六員の芳香族複素環がピリジン環である、項1に記載のゴム組成物。
項3.
さらに充填材を含む、項1又は2に記載のゴム組成物。
項4.
前記ゴム成分がジエン系ゴムである、項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
項5.
項1~4のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
項6.
下記式(1)で表される化合物を含むゴム用添加剤。
【化2】
〔式中、Aは、環構造内に1~3個の窒素原子を有する六員の芳香族複素環を示し、さらに1又は複数の置換基を有していてもよい。前記置換基は、アミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基から選ばれる。〕
項7.
低発熱化剤である、項6に記載の添加剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム組成物は優れた低発熱性及び優れた加工性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、後述する式(1)で表される化合物若しくはその塩、並びにゴム成分を含む。当該ゴム組成物を使用して得られるゴム材料は、優れた低発熱性及び加工性を有し、例えばタイヤ等に好適に使用することが可能である。
【0011】
1.1.式(1)で表される化合物
式(1)で表される化合物は、下記式の構造式により表される。
【0012】
【化3】
【0013】
上記式(1)中、Aは、環構造内に1~3個の窒素原子を有する六員の芳香族複素環を示し、さらに1又は複数の置換基を有していてもよい。前記置換基は、アミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、及びニトロ基から選ばれる。六員の芳香族複素環上にこれらの置換基が複数存在する場合、これらの置換基は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0014】
上記Aにおいて、「アミノ基」は、-NHで表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、1-エチルプロピルアミノ、n-ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3-メチルペンチルアミノ基等の炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれるものと定義される。
【0015】
同様に、「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、更に、1-エチルプロピル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、5-プロピルノニル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を加えた炭素数5~18の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3~8の環状アルキル基等が挙げられる。
【0016】
「アルコキシ基」は、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ基の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられる。
【0017】
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0018】
「六員の芳香族複素環」は環構造内に1~3個の窒素原子を有するものであれば、特に限定はない。具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、及びトリアジン環が挙げられる。中でも、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であることが好ましく、ピリジン環であることがより好ましい。ピリジン環を採用する場合、特に低発熱性及び加工性に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0019】
「六員の芳香族複素環」は、式(1)に示すとおり2つのカルボニル基が付加し、さらに1又は複数の置換基が付加していてもよいが、上記2つのカルボニル基以外の置換基が存在しないことが好ましい。
【0020】
式(1)で表される化合物は、より具体的には、ピリジン-3,5-ジカルボヒドラジド、ピリジン-2,6-ジカルボヒドラジド、ピリジン-2,4-カルボヒドラジド、及びピリジン-2,5-カルボヒドラジドを例示することができる。これらの中でも、ピリジン-3,5-カルボヒドラジドを採用することが特に好ましい。
【0021】
式(1)で表される化合物の塩としては特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0022】
また、式(1)で表される化合物としては、例えば、下記式(2a)に示すように、六員の芳香族複素環中の窒素原子がヒドラジド基等により置換されて四級化され、塩素等のアニオン性のハロゲン化物、水酸化物等と塩を形成する化合物であってもよい。
【0023】
【化4】
【0024】
本発明のゴム組成物において、式(1)で表される化合物又はその塩としては、上記した化合物及びその塩の中から選ばれる一種のみを単独で含んでいてもよいし、二種以上を混合して含んでいてもよい。
【0025】
式(1)で表される化合物又はその塩の配合割合は、後述するゴム成分100質量部に対して0.01~30質量部とすることが好ましく、0.05~5質量部とすることがより好ましい。当該割合で配合することにより、低発熱性の向上効果を、効果的に得ることができる。
【0026】
1.2.ゴム成分
ゴム成分としては、特に制限はなく、例えば、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム、及び天然ゴムと合成ジエン系ゴムとの混合物等のジエン系ゴム、並びにこれら以外の非ジエン系ゴムを使用することができる。
【0027】
天然ゴムとしては、天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴムなどの天然ゴムに加えて、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴム等が挙げられる。
【0028】
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムとしては、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが挙げられる。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基、水酸基などのヘテロ原子を含有する官能基を1種類以上含むものが挙げられる。また、ジエン部分のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの平均分子量および分子量分布は、特に制限はなく、平均分子量500~300万が好適に用いることができる。また、合成ジエン系ゴムの製造方法についても、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などで合成されたものが挙げられる。
【0029】
非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
【0030】
ゴム成分は、ジエン系ゴムを含んでいることが好ましく、ゴム成分100質量部中、ジエン系ゴムが50質量部以上含まれることが好ましく、75質量部以上含まれることがより好ましく、80~100質量部含まれていることが特に好ましい。
【0031】
また、ジエン系ゴムのガラス転移点については、-70℃から-20℃の範囲のものが耐摩耗性と制動特性の両立の観点から有効である。本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム中の50質量%以上が、ガラス転移点が-70℃から-20℃の範囲にあるジエン系ゴムであることが好ましい。
【0032】
ゴム成分は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、天然ゴム、IR、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくは天然ゴム、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物である。また、これらのブレンド比率は、特に制限はないが、ゴム成分100質量部中に、SBR、BR又はこれらの混合物を50~100質量部の比率で配合することが好ましく、75~100質量部で配合することがより好ましい。SBR及びBRの混合物を配合する場合には、SBR及びBRの合計量が上記範囲であることが好ましい。また、このときのSBRは50~100質量部であり、BRが0~50質量部の範囲であることが好ましい。
【0033】
1.3.その他の配合成分
本発明のゴム組成物は、上記した化合物及びゴム成分以外にも、充填材、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、発泡剤、オイル、ステアリン酸、亜鉛華(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫剤(硫黄)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。
【0034】
充填材としては、ゴム工業界で使用される公知の充填材を広く使用することが可能である。具体的には、カーボンブラック及び無機充填材を例示することができ、もちろんこれらに限定されない。
【0035】
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon-Silica Dual phase filler等が挙げられる。
【0036】
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
【0037】
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60~200cm/100g、より好ましくは70~180cm/100g、特に好ましくは80~160cm/100gである。
【0038】
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217-2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30~200m/g、より好ましくは40~180m/g、特に好ましくは50~160m/gである。
【0039】
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・HO);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)];炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(Ca・SiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
【0040】
中でも、無機充填材としては、制動特性の観点からシリカが好ましく、シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40~350m/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO 5794/1に準拠して測定される。
【0041】
この観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が50~350m/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積が100~270m/gであるシリカであり、特に好ましくは、BET比表面積が110~270m/gの範囲にあるシリカである。
【0042】
このようなシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積=165m/g)、「HD115MP」(BET比表面積=115m/g)、「HD200MP」(BET比表面積=200m/g)、「HD250MP」(BET比表面積=250m/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積=240m/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m/g)等が挙げられる。
【0043】
充填材の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、20~120質量部とすることが好ましく、30~100質量部とすることがより好ましく、40~90質量部とすることがさらに好ましい。
【0044】
充填材の中でも、カーボンブラック又はシリカが好ましく、それぞれ単独で使用しても良いし、併用しても良い。
【0045】
また、上記充填材が配合されたゴム組成物においては、充填材によるゴム組成物の靱性を高める目的、又はゴム組成物の引裂き強度と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、又はジルコネートカップリング剤を配合してもよい。
【0046】
上記充填材と併用可能なシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、又はアルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
【0047】
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリル
プロピル)トリスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
【0048】
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0049】
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等を挙げることができる。
【0050】
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0051】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0052】
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-エトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0053】
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0054】
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
【0055】
充填材と併用可能なチタネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなチタネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のチタネートカップリング剤が挙げられる。
【0056】
アルコキシド系のチタネートカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等を挙げることができる。これらの内、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
【0057】
キレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンエタノールアミネート、チタンオクチレングリコレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート等を挙げることができる。これらの内、チタンアセチルアセトネートが好ましい。
【0058】
アシレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンイソステアレート等を挙げることができる。
【0059】
充填材と併用可能なアルミネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなアルミネートカップリング剤として、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が挙げることができる。これらの内、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。
【0060】
充填材と併用可能なジルコネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなジルコネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のジルコネートカップリング剤が挙げられる。
【0061】
アルコキシド系のジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等を挙げることができる。この内、ノルマルブチルジルコネートが好ましい。
【0062】
キレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等を挙げることができる。この内、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましい。
【0063】
アシレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等を挙げることができる。この内、ステアリン酸ジルコニウムが好ましい。
【0064】
本発明においては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
シランカップリング剤の配合量は、上記充填材100質量部に対して、0.1~20質量部とすることが好ましく、3~15質量部とすることがより好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の引裂き強度向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。
【0066】
2.タイヤ
上述した本発明のゴム組成物を使用してタイヤを製造することにより、低発熱性に優れたタイヤを得ることができる。
【0067】
本発明のタイヤにおいて、上記ゴム組成物は、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
【0068】
中でも、空気入りタイヤのタイヤトレッド部を当該ゴム組成物で形成するのが最も好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0069】
トレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカス部を保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
【0070】
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカス部を保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
【0071】
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
【0072】
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカス部を桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
【0073】
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
【0074】
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカス部を保護する役目を果たす。
【0075】
本発明のタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0076】
3.ゴム用添加剤
上記の式(1)で表される化合物又はその塩は、ゴム用添加剤として使用することにより、形成されるゴム材料に優れた低発熱性を与えることが可能である。かかるゴム用添加剤は、当該化合物又はその塩それ自体、つまり、式(1)で表される化合物又はその塩のみからなる態様であってもよいし、その効果を妨げない範囲内でその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば公知のオイル、樹脂、ステアリン酸、亜鉛華(ZnO)、炭酸カルシウム及びシリカ等を広く使用することが可能である。
【0077】
4.低発熱化剤
上記の通り、本発明のゴム用添加剤は、ゴム材料に優れた低発熱性を付与することが可能であり、低発熱化剤として、好適に使用することが可能である。
【0078】
5.ゴム組成物の製造方法
本発明のゴム組成物の製造方法については特に限定はなく、例えば、上記したゴム成分、式(1)で表される化合物若しくはその塩、そして必要に応じてその他の成分を、混合することにより得ることが可能である。また、式(1)で表される化合物又はその塩についても、公知の方法により製造すればよい。
【0079】
上記した混合するための方法としては特に限定はなく、公知の方法を広く採用することが可能である。具体的には、上記したゴム成分、式(1)で表される化合物若しくはその塩、並びに必要に応じてその他の成分を、混練機などを使用して混練する方法を挙げることができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例
【0081】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0082】
製造例1:3,5-ピリジンカルボン酸ジヒドラジド(化合物a)の製造
メタノール70mLに3,5-ピリジンジカルボン酸ジエチル15.9gを加えた溶液に、ヒドラジン一水和物8.66gを添加して、24時間還流した。反応液を冷却し、析出した固体をろ過してとり、得られた固体をメタノールで洗浄した後、乾燥することで、目的物を13.9g(収率100.0%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.6(br-s,4H),8.5(t,1H),9.0(d,2H),10.0(br-s,2H)
融点:234℃
【0083】
製造例2:ピリジン-2,6-カルボヒドラジド(化合物b)の製造
メタノール65mLに2,6-ピリジンジカルボン酸ジメチル12.6gを加えた溶液に、ヒドラジン一水和物8.08gを加えて24時間還流した。この反応液を冷却し、析出した固体をろ過してとり、得られた固体をメタノールで洗浄した後、乾燥することで、目的物を12.4g(収率98.8%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.6(br-s,4H),8.1(m,3H),10.6(br-s,2H)
融点:287℃
【0084】
製造例3:ピリジン-2,4-カルボヒドラジド(化合物c)の製造
メタノール150mLに2,4-ピリジンジカルボン酸25.4gを加えた溶液を冷却し、塩化チオニル52.5gを滴下した後、12時間還流した。この反応液を冷却し、溶媒を留去した後、析出した固体をろ過し、ヘキサンとジエチルエーテルでそれぞれ洗浄し、乾燥して、2,4-ピリジンジカルボン酸ジメチルを得た。この2,4-ピリジンジカルボン酸ジメチルにメタノール120mLを加え、ヒドラジン一水和物15.4gを添加して、24時間還流した。この反応液を冷却し、析出した固体をろ過してとり、得られた固体をメタノールで洗浄した後、乾燥することで、目的物を23.0g(収率97.0%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.6(br-s,2H),4.7(br-s,2H),7.9(m,1H),8.3(m,1H),8.7(m,1H),10.0(br-s,1H),10.3(br-s,1H)
融点:299℃
【0085】
製造例4:ピリジン-2,5-カルボヒドラジド(化合物d)の製造
メタノール30mLに2,5-ピリジンジカルボン酸ジメチル6.50gを加えた溶液に、ヒドラジン一水和物4.73gを加えて22時間還流した。この反応液を冷却し、析出した固体をろ過してとり、得られた固体をメタノールで洗浄した後、乾燥することで、目的物を5.64g(収率99.2%)得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,δppm):
4.6(br-s,4H),8.0(m,1H),8.3(m,1H),9.0(m,1H),10.0(br-s,1H),10.1(br-s,1H)
融点:286℃
【0086】
実施例1~4、比較例1、及び参考例1:ゴム組成物の製造
下記表1の工程(I)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混練した。混合物の温度が80℃以下になるまで養生させた後、表1の工程(II)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が110℃以下になるよう調整しながら混練して、未加硫ゴム組成物を製造した。ここで得られた未加硫ゴム組成物を、加硫プレス機を用いて150℃×30分で加熱することにより、各ゴムを得た。
【0087】
低発熱性(Tanδ値指数)試験
各実施例及び比較例のゴム組成物について、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度40℃、動歪5%、周波数15HzでTanδ値を測定した。比較するために、化合物を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(参考例1)を作製し、そのTanδ値を100とした指数により表し、下記式に基づいて低発熱性指数を算出した。なお、低発熱性指数の値が小さい程、低発熱性であり、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
式:低発熱性指数
=(各実施例1~4、及び比較例1のゴム組成物のTanδ値)×100/(参考例1のTanδ値)
【0088】
加工性(ムーニー粘度指数)試験
JIS K6300-1(ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方;ML1+4,100℃)に準じて測定した。比較するために、化合物を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(参考例1)を作製し、そのムーニー粘度値を100とした指数により表し、下記式に基づいて加工性指数を算出した。なお、加工性指数の値が小さい程、加工性が良好であることを示す。
式:加工性指数
=(各実施例1~4、及び比較例1のゴム組成物のムーニー粘度値)×100/(参考例1のムーニー粘度値)
【0089】
【表1】
※1:天然ゴム;GUANGKEN RUBBER社製、TSR-20
※2:製造例1で製造したピリジン-3,5-カルボヒドラジド
※3:製造例2で製造したピリジン-2,6-カルボヒドラジド
※4:製造例3で製造したピリジン-2,4-カルボヒドラジド
※5:製造例4で製造したピリジン-2,5-カルボヒドラジド
※6:イソフタル酸ジヒドラジド;大塚化学社製
※7:カーボンブラック;Cabot社製、N234
※8:老化防止剤(N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン);Kemai Chemical Co.,Ltd社製
※9:ワックス;Rhein Chemie Rheinau社製、Antilux 111
※10:酸化亜鉛;Dalian Zinc Oxide Co.,Ltd社製
※11:ステアリン酸;Sichuan Tianyu Grease社製
※12:加硫促進剤;N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド;三新化学工業株式会社製、サンセラーNS-G
※13:硫黄;Shanghai Jinghai Chemical Co.,Ltd社製
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のゴム組成物は、式(1)で表される化合物又はその塩、並びにゴム成分を含有することにより、充分な加工性を有し、且つ優れた低発熱性をも有することから、タイヤの材料として好適に活用できる。