(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】電子時計、電子機器
(51)【国際特許分類】
G04R 60/10 20130101AFI20240215BHJP
G04G 21/00 20100101ALI20240215BHJP
G04G 21/04 20130101ALI20240215BHJP
G04G 19/00 20060101ALI20240215BHJP
H01Q 9/04 20060101ALI20240215BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
G04R60/10
G04G21/00 303
G04G21/04
G04G19/00 A
H01Q9/04
H01Q1/22
(21)【出願番号】P 2020181506
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 吉康
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正也
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/021353(WO,A1)
【文献】特開2018-141639(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092801(WO,A1)
【文献】特開2010-230374(JP,A)
【文献】特開2008-249500(JP,A)
【文献】特開2019-070674(JP,A)
【文献】特開2019-215169(JP,A)
【文献】特開2016-176957(JP,A)
【文献】特開2017-092922(JP,A)
【文献】特開2012-142793(JP,A)
【文献】特開2004-056665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04R 20/00-60/14
G04G 3/00-99/00
G04C 1/00-99/00
G04B 1/00-99/00
H01Q 1/12- 1/26
H01Q 5/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースと、
前記外装ケースに収容される文字板と、
前記外装ケースに収容されると共に、前記文字板の裏側に配置される回路基板と、
前記回路基板に実装されており、所定の受信周波数帯域の信号を受信可能な第1のアンテナ素子を含む複数の電子部品がユニット化されて成るアンテナユニットと、
前記回路基板に実装されており、前記第1のアンテナ素子のGND電位と同電位である第2のアンテナ素子と、
を有し、
平面視における、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子とを接続する配線距離は、前記受信周波数帯域に相当する波長の8分の1以下である、
電子時計。
【請求項2】
前記回路基板は誘電体を含んでおり、
前記受信周波数帯域に相当する波長は、前記誘電体による波長短縮効果を受けた長さである、
請求項1に記載の電子時計。
【請求項3】
平面視において、前記アンテナユニットと前記第2のアンテナ素子とは互いに重ならないように配置されている、
請求項1又は2に記載の電子時計。
【請求項4】
前記回路基板よりも視認側に配置される、少なくとも一部に金属を含む少なくとも1以上の板部材を有し、
前記第2のアンテナ素子は、平面視において、少なくとも一部が前記板部材の金属を含む部分と重ならないように設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項5】
前記第2のアンテナ素子は、平面視において、その先端部が前記板部材の金属を含む部分と重ならないように設けられている、
請求項4に記載の電子時計。
【請求項6】
外装ケースと、
前記外装ケースに収容される文字板と、
前記外装ケースに収容されると共に、前記文字板の裏側に配置される回路基板と、
前記回路基板に実装されており、所定の受信周波数帯域の信号を受信可能な第1のアンテナ素子を含む複数の電子部品がユニット化されて成るアンテナユニットと、
前記回路基板に実装されており、前記第1のアンテナ素子のGND電位と同電位である第2のアンテナ素子と、
を有し、
前記回路基板よりも視認側に配置される、少なくとも一部に金属を含む少なくとも1以上の板部材を有し、
前記少なくとも1以上の前記板部材は前記文字板を含み、
前記文字板には開口部が形成されており、
前記第2のアンテナ素子は、平面視において、少なくとも一部が前記開口部に重なるように設けられており、
複数の機能表示が設けられる機能表示板を含み、
前記機能表示板は、前記複数の機能表示のうちいずれかを前記開口部を介して外部から視認させるように移動可能に設けられている、
電子時計。
【請求項7】
前記第2のアンテナ素子は、平面視において、その先端部が前記開口部に重なるように設けられている、
請求項6に記載の電子時計。
【請求項8】
前記少なくとも1以上の前記板部材は、光を入射することにより発電するソーラパネルを含む、
請求項4~7のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項9】
外装ケースと、
前記外装ケースに収容される文字板と、
前記外装ケースに収容されると共に、前記文字板の裏側に配置される回路基板と、
前記回路基板に実装されており、所定の受信周波数帯域の信号を受信可能な第1のアンテナ素子を含む複数の電子部品がユニット化されて成るアンテナユニットと、
前記回路基板に実装されており、前記第1のアンテナ素子のGND電位と同電位である第2のアンテナ素子と、
を有し、
前記第2のアンテナ素子は、線状アンテナであって、前記回路基板の縁に沿う孤状である、
電子時計。
【請求項10】
前記受信周波数帯域は2.4GHz帯である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項11】
前記第2のアンテナ素子は、前記アンテナユニットよりも薄い、
請求項1~10のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項12】
外装ケースと、
前記外装ケースに収容される回路基板と、
前記回路基板に実装されており、所定の受信周波数帯域の信号を受信可能な第1のアンテナ素子を含む複数の電子部品がユニット化されて成るアンテナユニットと、
前記回路基板に実装されており、前記第1のアンテナ素子のGND電位と同電位である第2のアンテナ素子と、
を有し、
平面視における、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子とを接続する配線距離は、前記受信周波数帯域に相当する波長の8分の1以下である、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1放射素子と第2放射素子を含むアンテナが実装される回路基板を有する電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電子機器においては、アンテナの受信感度を低下させることなく、アンテナを外装ケースに収容するための工夫が必要となる。特に、複数の放射素子(アンテナ素子)を用いる場合においては、そのような工夫がより必要となる。特許文献1の電子機器においては、第1放射素子及び第2放射素子が、平面視において金属製のベゼルと重なるように配置されている。このような構成においては、金属の影響によりアンテナの受信感度が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、受信感度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)外装ケースと、前記外装ケースに収容される文字板と、前記外装ケースに収容されると共に、前記文字板の裏側に配置される回路基板と、前記回路基板に実装されており、所定の受信周波数帯域の信号を受信可能な第1のアンテナ素子を含む複数の電子部品がユニット化されて成るアンテナユニットと、前記回路基板に実装されており、前記第1のアンテナ素子のGND電位と同電位である第2のアンテナ素子と、を有する、電子時計。
【0007】
(2)(1)において、平面視における、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子とを接続する配線距離は、前記受信周波数帯域に相当する波長の8分の1以下である、電子時計。
【0008】
(3)(1)又は(2)において、前記回路基板は誘電体を含んでおり、前記受信周波数帯域に相当する波長は、前記誘電体による波長短縮効果を受けた長さである、電子時計。
【0009】
(4)(1)~(3)のいずれかにおいて、平面視において、前記アンテナユニットと前記第2のアンテナ素子とは互いに重ならないように配置されている、電子時計。
【0010】
(5)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記回路基板よりも視認側に配置される、少なくとも一部に金属を含む少なくとも1以上の板部材を有し、前記第2のアンテナ素子は、平面視において、少なくとも一部が前記板部材の金属を含む部分と重ならないように設けられている、電子時計。
【0011】
(6)(5)において、前記第2のアンテナ素子は、平面視において、その先端部が前記板部材の金属を含む部分と重ならないように設けられている、電子時計。
【0012】
(7)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記回路基板よりも視認側に配置される、少なくとも一部に金属を含む少なくとも1以上の板部材を有し、前記板部材には開口部が形成されており、前記第2のアンテナ素子は、平面視において、少なくとも一部が前記開口部に重なるように設けられている、電子時計。
【0013】
(8)(7)において、前記第2のアンテナは、平面視において、その先端部が前記開口部に重なるように設けられている、電子時計。
【0014】
(9)(7)又は(8)において、前記少なくとも1以上の前記板部材は前記文字板を含む、電子時計。
【0015】
(10)(9)において、複数の機能表示が設けられる機能表示板を含み、前記文字板には前記開口部が形成されており、前記機能表示板は、前記複数の機能表示のうちいずれかを前記開口部を介して外部から視認させるように移動可能に設けられている、電子時計。
【0016】
(11)(5)~(10)のいずれかにおいて、前記少なくとも1以上の前記板部材は、光を入射することにより発電するソーラパネルを含む、電子時計。
【0017】
(12)(1)~(11)のいずれかにおいて、前記第2のアンテナ素子は、線状アンテナであって、前記回路基板の縁に沿う孤状である、電子時計。
【0018】
(13)(1)~(12)のいずれかにおいて、前記受信周波数帯域は2.4GHz帯である、電子時計。
【0019】
(14)(1)~(13)のいずれかにおいて、前記第2のアンテナ素子は、前記アンテナユニットよりも薄い、電子時計。
【0020】
(15)外装ケースと、前記外装ケースに収容される回路基板と、前記回路基板に実装されており、所定の受信周波数帯域の信号を受信可能な第1のアンテナ素子を含む複数の電子部品がユニット化されて成るアンテナユニットと、前記回路基板に実装されており、前記第1のアンテナ素子のGND電位と同電位である第2のアンテナ素子と、を有する、電子機器。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の(1)~(15)の側面によれば、受信感度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る電子時計の外観を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係る電子時計の断面を模式的に示す
図1のII-II断面図である。
【
図3】本実施形態における受信部の配置を示す平面図である。
【
図4】本実施形態における受信部の構成を示す図である。
【
図5】
図4に示す受信部と等価な構成を模式的に示す図である。
【
図6】実験結果における配線距離dと受信電力との関係を示すグラフである。
【
図7】変形例におけるソーラパネル及びその周辺の部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という)について図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
[電子時計1の概要]
図1は、本実施形態に係る電子時計の外観を示す平面図である。
図1には、電子時計1の外装ケース10、外装ケース10内に収容された文字板3、時刻を示す指針である時針15、分針16、秒針17が示されている。また、文字板3には所定の位置に時字18が設けられている。また、外装ケース10の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部11が伸びている。また、外装ケース10の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うためのボタン12、竜頭13が配置されている。本実施形態においては、文字板3の平面形状が円形である例について説明する。文字板3は樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。なお、
図1に示した時計のデザインは一例である。
【0025】
図2は、本実施形態に係る電子時計の断面を模式的に示す
図1のII-II断面図である。なお、
図2においては、図面の簡略化のため、外装ケース10と風防30以外の部材についてはハッチングを省略している。また、後述の蓄電池60は
図1のII-II切断線よりも6時側に配置されているため、
図2の断面図には実際には表れないが、その配置を示すため破線にて示している。
【0026】
外装ケース10は、胴10aと、裏蓋10bと、ベゼル10cとを含む。胴10a、裏蓋10b、ベゼル10cは金属から成るとよい。なお、外装ケース10を構成する材料は金属に限られるものでなく、樹脂やセラミック等を含むものであってもよいし、それらの組み合わせから成るものであってもよい。また、胴10a、裏蓋10b、ベゼル10cを構成する材料は互いに異なっていても構わない。
【0027】
また、電子時計1は、文字板3を覆うようにガラス等の透明材料により形成された風防30を有し、風防30は外装ケース10に取り付けられている。
【0028】
裏蓋10bは、風防30の反対側において胴10aに取り付けられている。ベゼル10cは、環状であって、文字板3の縁に沿うように胴10aに取り付けられている。また、電子時計1は、文字板3の縁に沿うようにベゼル10cに取り付けられている環状の見返しリング35を有する。
【0029】
本明細書では、以降、電子時計1において風防30が取り付けられる側(
図2における上側)を視認側、裏蓋10b取り付けられる側(
図2における下側)を裏側と呼ぶ。また、各部材における視認側の面を視認面、裏側の面を裏面と呼ぶ。
【0030】
文字板3の裏側には、ソーラパネル2が配置されている。ソーラパネル2は、文字板3を透過して入射される光により発電する。そのため、文字板3はある程度光を透過する材質で形成される。
図1に示すように、本実施形態においては、平面視における外形が円形のソーラパネル2を文字板3の裏側に配置した例を示す。
【0031】
ソーラパネル2の裏側には、日付を表示する日車31が設けられている。日車31の視認面には、機能表示としての日付を表す数字1~31が印刷等により設けられているとよい。日車31は、例えば樹脂製であるとよい。
【0032】
文字板3には開口部3aが形成されており、ソーラパネル2には開口部2aが形成されている。開口部3aと開口部2aは、平面視において互いに重なっており、日窓を構成する貫通孔であるとよい。ソーラパネル2の開口部2aは発電に寄与しない非発電領域である。
【0033】
日車31は、開口部3a及び開口部2aを介して、日車31に設けられる数字のうちいずれか1つが外部から視認されるように回動する。
図1においては、文字板3の開口部3a及びソーラパネル2の開口部2aを介して、日車31に設けられる30日を表す数字「30」が外部から視認される様子を示している。
【0034】
図2に示すように、電子時計1は、さらに、日車31の裏側に設けられるムーブメントを有する。ムーブメントは、指針を駆動するための輪列やモータやコイル等、各種電子部品を地板(不図示)と呼ばれる枠に一体に組み付けたものである。また、ムーブメントは、後述の回路基板50を含む。
【0035】
また、ムーブメントは、蓄電池60を保持する電池保持板61を含む。ムーブメントに収容される各機構は、蓄電池60から供給される電力により動作する。また、蓄電池60は、ソーラパネル2により発電された電力を蓄積するものであり、例えば、ボタン型のリチウム二次電池であるとよい。なお、図示は省略するが、ソーラパネル2と蓄電池60は、配線を通じて電気的に接続されているとよい。
【0036】
ムーブメントには指針軸19が文字板3の上面から突出するように設けられており、その先端に秒針17、分針16、時針15が取り付けられている。指針軸19は、ユーザによる竜頭13の操作に応じた巻真131及び輪列132(
図2においては簡略化して示す)の動作に伴い動作する。
【0037】
[ソーラパネル2]
ソーラパネル2は、光を入射することで発電する。ソーラパネル2は、少なくとも一部に金属を含んで構成される。具体的には、ソーラパネル2は、基板と、基板上に設けられる下部電極層と、下部電極層上に設けられる半導体層と、半導体層上に設けられる上部電極層とを含んで構成されるとよい。ソーラパネル2の基板は、樹脂材料から成るフィルム基板であってもよいし、金属から成る金属基板であってもよい。
【0038】
上部電極層は、光透過性を有する透明電極からなるとよい。上部電極層は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、FTO(Fluorine-doped Tin Oxide)等からなるとよい。また、下部電極層は、例えば、Al(アルミニウム)、Au(金)、Ag(銀)等の金属からなるとよい。
【0039】
なお、
図2においては、ソーラパネル2が文字板3と日車31との間に配置される例について示すが、これに限られず、ソーラパネル2は日車31の裏側に配置されていてもよい。この場合、ソーラパネル2はムーブメントに一体的に組付けられているとよい。また、この場合、ソーラパネル2は、開口部2aを有していなくてよい。
【0040】
[受信部]
次に、
図3~
図6を参照して、本実施形態の受信部について説明する。
図3は、本実施形態における受信部の配置を示す平面図である。なお、
図3においては、受信部200の配置を示すため、回路基板50より視認側に設けられるソーラパネル2、文字板3、日車31等を省略して図示している。ただし、ソーラパネル2の開口部2a及び文字板3の開口部3aの位置が分かるように図示している。
図4は、本実施形態における受信部の構成を示す図である。
図5は、
図4に示す受信部と等価な構成を模式的に示す図である。
図6は、実験結果における配線距離dと受信電力との関係を示すグラフである。
【0041】
電子時計1は、電波(信号)を受信する受信部200を含む。電子時計1は、例えば、受信部200において、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)、NFC(Near Field Communication、登録商標)を用いた近距離無線通信を行う機能を有するものであるとよい。または、電子時計1は、例えば、受信部200において、標準電波やGPS(Global Positioning System)衛星などの時刻情報を含む衛星信号を受信して内部時刻を修正する機能を有する電波腕時計であってもよい。
【0042】
本実施形態においては、受信部200により受信可能な電波の周波数帯域(以下、受信周波数帯域と呼ぶ)が2.4GHz帯である例について説明する。これは、2.4GHzに相当する波長λが約12[cm]であることより、半波長(λ/2)ダイポールアンテナの構成を採用する場合、電子時計等の電子機器に適しているためである。ただし、受信周波数帯域は2.4GHz帯に限られるものではない。
【0043】
受信部200は、アンテナユニット110と、第2のアンテナ素子120とを含む。アンテナユニット110及び第2のアンテナ素子120は、ムーブメントに収容されている回路基板50に実装されている。なお、第2のアンテナ素子120は、例えば、回路基板50上にパターニングされた電極膜であるとよい。第2のアンテナ素子120を電極膜とすることにより、ムーブメントが厚み方向に大型化することを抑制できる。また、第2のアンテナ素子120は、アンテナユニット110よりも薄いとよい。すなわち、回路基板50の厚み方向における、第2のアンテナ素子120の厚さはアンテナユニット110のハウジング110b(後述)よりも薄いとよい。これにより、回路基板50が全体としてアンテナユニット110の厚さ以上に大型化することを抑制できる。なお、
図2の破線Uは、アンテナユニット110の上面の高さを示している。
図2においては、第2のアンテナ素子120が、アンテナユニット110と回路基板50上の同一面に設けられており、アンテナユニット110の上面よりも低い位置にあることが示されている。
【0044】
図3に示すように、回路基板50は、平面視における外形が円形の基板である。なお、本実施形態の回路基板50の直径は約3.6[cm]である。なお、
図3に示すように、回路基板50には、回路基板50の裏側に設けられる電池保持板61に保持される蓄電池60が嵌る切り欠きが形成されているとよい。
【0045】
アンテナユニット110は、
図4に示すように、第1のアンテナ素子110aや通信制御ICを含む複数の電子部品がハウジング110b内に収容されて成るチップアンテナであるとよい。アンテナユニット110は、市販の既製品であってもよい。
【0046】
第1のアンテナ素子110aは、受信周波数帯域の電波を受信可能ないわゆるモノポールアンテナとして機能するアンテナ素子であるとよい。また、第1のアンテナ素子110aは、線状アンテナであるとよい。また、第1のアンテナ素子110aは、ハウジング110b内に収まるようにコイル状等に曲げられて成るものであってもよい。なお、線状アンテナとは、その幅が全長に比較して十分に短い形状のアンテナである。
【0047】
第2のアンテナ素子120は、線状アンテナであって、平面視において回路基板50の縁に沿う孤状であるとよい。
【0048】
本実施形態において、第2のアンテナ素子120は第1のアンテナ素子のGND電位と同電位となっており、特定の周波数帯域である受信周波数帯域の電波(信号)を受信可能な、いわゆる半波長ダイポールアンテナと同等のアンテナ構成を成す。すなわち、受信部200は、
図5に示すダイポールアンテナを構成する。
【0049】
また、
図5に示すように、第1のアンテナ素子110aと第2のアンテナ素子120は、それらの間に形成される浮遊容量Cにより結合されることとなる。これにより、アンテナユニット110と第2のアンテナ素子120とで、アンテナユニット110単体と比較して大型のアンテナを構成することができる。その結果、利得が向上し、感度の良いアンテナを得ることができる。
【0050】
本実施形態において、受信周波数帯域は上述のように2.4GHz帯である。
図5に示すように、第1のアンテナ素子110aと、第2のアンテナ素子120と、第1のアンテナ素子110aと第2のアンテナ素子120とを接続する配線の長さ(以下、配線距離dという)の合計は、受信周波数帯域に相当する波長λの2分の1であるとよい。ただし、これに限られず、少なくとも、第2のアンテナ素子120と、配線距離dの半分の長さの合計が、受信周波数帯域に相当する波長λの4分の1であるとよい(
図5参照)。なお、配線距離dは、第1のアンテナ素子110a及び第2のアンテナ素子120に発生する電流の進行方向における第1のアンテナ素子110aと第2のアンテナ素子120との間の距離である。
【0051】
ここで、受信部200において同調をとるには、第1のアンテナ素子110aと第2のアンテナ素子120との間の配線距離dは短い方が好ましい。本出願の発明者は、受信電力[dBm]を向上できる配線距離dを実験により導いた。実験の結果、
図6に示すように、第1のアンテナ素子110aと第2のアンテナ素子120との間の配線距離dは、約0.77[cm]以下であるとよいことが分かった。
【0052】
図6は、配線距離dと受信電力との関係を表すグラフであり、本実施形態の構成において配線距離dを可変させて、一定の強さの電波を送信した際に、受信器で観測される受信電力の計測結果をグラフ化したものである。
【0053】
なお、
図6において、本実施形態の構成を採用した場合の実験結果を実線で示しており、第2のアンテナ素子120を用いず、アンテナユニット110のみを電子時計1に搭載した場合(以下、比較例と呼ぶ)の実験結果を破線で示している。
図6に示すように、配線距離dが0.77[cm]よりも大きい場合、本実施形態の構成と比較例の構成とで受信電力の大きさはほぼ同じであった。一方、配線距離dが0.77[cm]よりも小さくなるに従い、本実施形態の構成における受信電力は大きくなった。
【0054】
ここで、2.4GHz帯において受信周波数帯域に相当する波長λは約12.3[cm]となる。しかしながら、回路基板50に誘電体が含まれる場合、波長短縮効果を受けるため、受信周波数帯域に相当する波長λは小さくなる。本実施形態においては、比誘電率が4である誘電体を含む回路基板50を用いた。
【0055】
大気中での波長をλAとし、誘電体による波長短縮効果を受けた波長をλBとし、誘電体の比誘電率をεとした場合、誘電体による波長短縮効果を受けた波長λBは、λA/√εで表される。すなわち、本実施形態において、受信周波数帯域に相当する波長λBは、6.15[cm](=12.3[cm]/√4)となる。
【0056】
ここで、実験により求めた配線距離dとしての0.77[cm]は、受信周波数帯域に相当する波長(波長短縮効果を受けた波長)λBのおよそ8分の1である(0.77[cm]÷6.15[cm]≒約1/8)。すなわち、第1のアンテナ素子110aと第2のアンテナ素子120との間の配線距離dは、受信周波数帯域に相当する波長λBの8分の1以下であることが好ましい。
【0057】
ここで、受信部200における受信感度の低下を抑制するため、受信部200は、平面視において、受信部200よりも視認側に配置される金属製の部材と重ならないように配置されることが好ましい。そこで、本実施形態においては、
図3に示すように、第2のアンテナ素子120を、平面視において、その先端部Eが文字板3の開口部3a及びソーラパネル2の開口部2aと重なるように配置した。なお、
図2の一点鎖線Aは、第2のアンテナ素子120の先端部Eの位置を示している。
【0058】
第2のアンテナ素子120の先端部Eは、受信部200が共振した際の電圧分布における腹となる部分である。すなわち、第2のアンテナ素子120の先端部Eは、電圧値が最大となり、最も受信感度に寄与する部分である。第2のアンテナ素子120の先端部Eを、平面視において、文字板3、及び金属を含むソーラパネル2と重ならないように配置することにより、受信感度が低下することを抑制できる。なお、受信部200が共振した際の電流分布における腹は給電点に対応する部分であり、電流分布における節が第2のアンテナ素子120の先端部Eとなる。
【0059】
以上説明した本実施形態に係る電子時計1においては、チップアンテナであるアンテナユニット110のみを使用する構成と比較して、受信感度が向上する。また、第2のアンテナ素子120の先端部Eを、平面視において受信部200よりも視認側に配置される金属製の部材と重ならないように配置したことより、受信感度が低下することが抑制される。そのため、電波を発信する発信機の距離が電子時計1から離れていても、電子時計1において感度良く受信を行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態においては、機能表示板として日車31を例に挙げたが、これに限られない。例えば、機能表示板として曜日を表示する曜日車等を用いてもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、アンテナユニット110と第2のアンテナ素子120とを平面視において重ならないように回路基板50に実装した。また、アンテナユニット110とアンテナ素子120とを、回路基板50の同一面上に実装した。このような構成のため、ムーブメントが厚み方向に大型化することを抑制できる。
【0062】
また、本実施形態においては、第1のアンテナ素子110a及び第2のアンテナ素子120が線状アンテナである例について説明したが、これに限られない。例えば、第2のアンテナ素子120は、平面形状が矩形の平面アンテナであってもよい。この場合、平面アンテナの縦幅と横幅を足した長さが、本実施形態で説明した受信周波数帯域に相当する波長に応じた長さであるとよい。
【0063】
また、本実施形態においては、ソーラパネル2に貫通孔である開口部2aが形成されており、文字板3に貫通孔である開口部3aが形成されている例について説明したが、これに限られない。例えば、文字板3には、開口部3aの代わりに、日車31の表示を外部から視認させる透明材料からなる部分が設けられていてもよい。この場合、透明材料は非金属製であるとよい。ソーラパネル2においても同様である。
【0064】
また、上述のように第2のアンテナ素子120の先端部Eが最も受信感度に影響のある部分であることより、平面視において先端部Eが受信部200よりも視認側に配置される金属製の部材と重ならないように設けられていることが好ましい。すなわち、第2のアンテナ素子120のうち先端部E以外の部分が平面視において金属製の部材と重なっていてもよい。ただし、これに限られず、第2のアンテナ素子120の少なくとも一部が、平面視において受信部200よりも視認側に配置される金属製の部材と重ならないように配置されている構成であってもよい。
【0065】
なお、
図1等においては、日窓が9時位置に設けられる例について示したが、これに限られない。例えば、日窓は3時位置や4時位置に設けられていてもよい。この場合、第2のアンテナ素子120は、12時位置付近から時計回りに延びており、その先端部Eが3時位置又は4時位置付近に配置されると共に日窓(開口部2a、3a)と重なるように設けられているとよい。また、第1のアンテナ素子は6時位置や7時位置に設けられていてもよい。この場合、第2のアンテナ素子120は、6時位置や7時位置付近から反時計回りに延びており、その先端部Eが3時位置又は4時位置付近に配置されると共に日窓(開口部2a、3a)と重なるように設けられているとよい。
【0066】
また、日窓は6時位置に設けられていてもよい。この場合、第1のアンテナ素子は9時位置に設けられていてもよい。この場合、第2のアンテナ素子120は、9時位置付近から反時計回りに延びており、その先端部Eが6時位置付近に配置されると共に日窓(開口部2a、3a)と重なるように設けられているとよい。
【0067】
なお、受信部200における受信感度への影響を考慮すると、文字板3は樹脂製であることが好ましい。文字板3が樹脂製である場合、開口部3aが形成される位置は任意でよく、または開口部3aを有していなくても構わない。文字板3が金属製である場合、受信部200における受信感度への影響を考慮して、文字板3には、平面視において第2のアンテナ素子120の先端部Eと重なるように開口部3aが形成されていることが好ましい。
【0068】
また、上述のように本実施形態においては、金属製の外装ケース10を用いた。外装ケース10が金属製である場合、受信部200における受信感度への影響を受け易いところ、本実施形態の構成を採用することが特に有効である。
【0069】
なお、本実施形態においては、腕時計を例に挙げて説明したが、これに限られず、例えば、懐中時計等であってもよい。さらには、時計に限られるものではなく、他の電子機器であってもよい。電子機器は、ユーザが装着可能なウェアラブルデバイス等の携帯機器であるとよい。
【0070】
[ソーラパネルの変形例]
図7を参照して、ソーラパネルの変形例について説明する。
図7は、変形例におけるソーラパネル及びその周辺の部材を示す平面図である。なお、
図7においては、第2のアンテナ素子120のうちソーラパネル102と重なっている部分を二点鎖線で示しており、重なっていない部分を実線で示している。
【0071】
変形例におけるソーラパネル102においては、
図7に示すように扇状の切り欠き102bが形成されている。切り欠き102bは、発電に寄与しない非発電領域である。また、
図3等を参照して説明したソーラパネル2と同様に、ソーラパネル102には、日窓を構成する開口部102aが形成されている。
【0072】
非発電領域である切り欠き102bは、平面視において、アンテナユニット110と重なるように形成されているとよい。このような構成を採用することにより、受信部200において受信感度が低下することを抑制できる。
【0073】
なお、
図7においては、ソーラパネル102に扇状の切り欠き102bが形成される例を説明したが、これに限られない。例えば、平面視においてソーラパネルとアンテナユニット110が重ならないように、アンテナユニット110の外形に沿った矩形の開口がソーラパネルに形成されていてもよい。
【0074】
なお、上記本実施形態及びその変形例においては、電子時計1がソーラパネルを備える例について説明したが、ソーラパネルを有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 電子時計、10 外装ケース、10a 胴、10b 裏蓋、10c ベゼル、11 バンド固定部、12 ボタン、13 竜頭、131 巻真、132 輪列、15 時針、16 分針、17 秒針、18 時字、19 指針軸、2 ソーラパネル、2a,102a 開口部、102b 切り欠き、3 文字板、3a 開口部、30 風防、31 日車、35 見返しリング、50 回路基板、60 蓄電池、61 電池保持板、110 アンテナユニット、110a 第1のアンテナ素子、110b ハウジング、120 第2の アンテナ素子、200 受信部。