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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】加湿装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
F24F6/00 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020201397
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089210
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】今村 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】小川 洸太
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 長
(72)【発明者】
【氏名】井浦 真
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166709(JP,A)
【文献】特開2003-050038(JP,A)
【文献】特開2017-053539(JP,A)
【文献】特開2006-112748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
F24F 11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設置された器具本体と、
当該器具本体内にあり水を貯水する貯水室と、
当該貯水室の水から加湿空気を発生させる加湿空気発生手段と、
当該加湿空気発生手段で発生した加湿空気を送風口から室内へ送風する送風ファンと、
加熱量を変化させ前記送風ファンで送風される加湿空気の吹出し温度を変える加熱手段と、
室内の温度を検知する室温検知手段と、
室内の湿度を検知する湿度センサと、
前記送風ファンにより送風される加湿空気の吹出し温度を検知する送風温度センサと、
当該送風温度センサで検知される加湿空気の吹き出し温度が前記室温検知手段で検知された室温と前記湿度センサで検知された湿度に基づく目標吹出し温度となるよう、前記加熱手段での加熱量を変化させる制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記室温検知手段で検知された室温が所定値以上のときは、湿度値に基づき範囲が設定される区画を第1の区画数だけ設定し、前記室温が所定値未満のときは、湿度値に基づき範囲が設定される区画を前記第1の区画数より多い第2の区画数だけ設定し、
前記区画毎に前記目標吹出し温度がそれぞれ設定され、
前記目標吹出し温度は、大きい湿度値に対応する前記区画よりも小さい湿度値に対応する前記区画の方が高くなるよう設定したことを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記室温検知手段で検知された室温が前記所定値以上のときにおける特定の前記区画の前記目標吹出し温度よりも、前記室温が前記所定値未満のときにおける前記特定の前記区画における湿度値に対応した前記区画の前記目標吹出し温度を低く設定したことを特徴とする請求項1記載の加湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加湿空気を室内へ供給するミスト運転が実施可能な加湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、貯水室に設置された加湿空気発生手段により加湿空気を発生させ、送風ファンにより器具本体内に取り込んだ空気が貯水室を通過することで、加湿空気を室内に送風可能なミスト運転を実施する加湿装置において、湿度センサで検知される室内の湿度に応じて加湿空気の目標吹出し温度を設定し、加熱手段である加熱ヒータのON/OFF状態を切り替えて加熱量を変更することで、加湿空気の吹出し温度を検知する送風温度センサでの検知温度が目標吹出し温度となるよう制御するものがあった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6060023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、室内の湿度に応じてのみ目標吹出し温度を変更していたことから、器具本体が設置された室内の室温が低い場合に目標吹出し温度が高く設定されていると、器具本体の送風口付近に多量の結露水が付着し、結露水が周囲に飛散することで器具本体の設置面が濡れてしまうことから、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、室温が低い場合であっても器具本体の送風口付近に多量の結露水が付着しない加湿装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、室内に設置された器具本体と、
当該器具本体内にあり水を貯水する貯水室と、
当該貯水室の水から加湿空気を発生させる加湿空気発生手段と、
当該加湿空気発生手段で発生した加湿空気を送風口から室内へ送風する送風ファンと、
加熱量を変化させ前記送風ファンで送風される加湿空気の吹出し温度を変える加熱手段と、
室内の温度を検知する室温検知手段と、
室内の湿度を検知する湿度センサと、
前記送風ファンにより送風される加湿空気の吹出し温度を検知する送風温度センサと、
当該送風温度センサで検知される加湿空気の吹き出し温度が前記室温検知手段で検知された室温と前記湿度センサで検知された湿度に基づく目標吹出し温度となるよう、前記加熱手段での加熱量を変化させる制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記室温検知手段で検知された室温が所定値以上のときは、湿度値に基づき範囲が設定される区画を第1の区画数だけ設定し、前記室温が所定値未満のときは、湿度値に基づき範囲が設定される区画を前記第1の区画数より多い第2の区画数だけ設定し、
前記区画毎に前記目標吹出し温度がそれぞれ設定され、
前記目標吹出し温度は、大きい湿度値に対応する前記区画よりも小さい湿度値に対応する前記区画の方が高くなるよう設定したことを特徴としている。
【0007】
また、請求項2では、前記制御部は、前記室温検知手段で検知された室温が前記所定値以上のときにおける特定の前記区画の前記目標吹出し温度よりも、前記室温が前記所定値未満のときにおける前記特定の前記区画における湿度値に対応した前記区画の前記目標吹出し温度を低く設定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、室温検知手段で検知された室温が所定値以上のときは、湿度値に基づき範囲が設定される区画を第1の区画数だけ設定し、室温が所定値未満のときは、湿度値に基づき範囲が設定される区画を第1の区画数より多い第2の区画数だけ設定し、区画毎に目標吹出し温度がそれぞれ設定され、目標吹出し温度は、大きい湿度値に対応する区画よりも小さい湿度値に対応する区画の方が高くなるよう設定したので、目標吹出し温度の設定値を室温が高いときと比較し、室温が低いときの方が細やかに設定することが可能となるので、結露水が発生しやすい低室温の状態において器具本体の送風口付近に結露水が多量に付着して飛散し、器具本体の設置面が濡れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態の外観を説明する斜視図
図2】同実施形態の概略構成図
図3】同実施形態の制御ブロック図
図4】同実施形態の操作部を説明する図
図5】同実施形態の運転開始から終了までの動作を説明するフローチャート
図6】同実施形態の室温値と湿度値による加湿レベルと目標吹出し温度の区画を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、この発明の一実施形態におけるミスト発生装置を図に基づいて説明する。
図1を参照する。1は器具本体、2は器具本体1の正面上部を構成する上面パネル、3は器具本体1の正面下部を構成する下面パネル、4は図示しないブレーカーを隠すブレーカーカバーである。
【0011】
図2を参照する。10は器具本体1内の略中段高さ位置にあって所定量の水を貯水する貯水室である。この貯水室10の内側には、水面より下に設置されON/OFF状態を適宜切り替えることで水の加熱量を変化させる加熱手段としての加熱ヒータ11と、フロートが上下することで水位を検知する水位検知手段としての水位センサ12と、水平方向へ延びる板にミストモータ24が載置され鉛直上方向へ延びる板の上端が気水分離ケース30の下端と当接し支持可能とする仕切板14と、が設置されている。
また、貯水室10内の右側上方には室内空気が流入可能な空気流入口15が形成されている。
【0012】
なお、水位センサ12は、上限水位より高いかを判断する上水位センサ12aと、所定の第1水位である下限水位以下かを判断する下水位センサ12cと、上限水位と下限水位との間にある所定の第2水位である中段水位以下かを判断する中水位センサ12bとで構成されている。
【0013】
上水位センサ12aは、上限水位より高いとON信号を出力し、上限水位以下になるとOFF信号を出力する。
中水位センサ12bは、中段水位より高いとON信号を出力し、中段水位以下になるとOFF信号を出力する。
下水位センサ12cは、下限水位より高いとON信号を出力し、下限水位以下になるとOFF信号を出力する。
【0014】
また、貯水室10の外側には、貯水室10の底面に設置され貯水室10内の貯水温度を検知する貯水温度センサ13が設置されている。
【0015】
図2を参照する。20は貯水室10の水中に下端が水没し駆動軸21に軸支され中空逆円錐形で上方に向かって円周が徐々に拡大する筒状の回転体であり、回転体20は、上部外周に所定間隔を離間させて位置し回転体20と共に回転する円筒状の枠体22と、該枠体22の全周壁に多数のスリットや金網やパンチングメタル等から成る衝突体としての多孔部23が設置されている。
【0016】
図2を参照する。24は貯水室10の上方に設置され駆動軸21と軸支することで回転体20を回転駆動させるミストモータ24であり、当該ミストモータ24が駆動すると回転体20が回転して貯水室10の内壁から汲み上げられた水が回転体20の上端に形成された複数の図示しない飛散口から外周方向へ飛散し多孔部23に衝突することで、水が微細化して粒径がナノメートル(nm)サイズのミストが多量に生成されると同時に、粒径が比較的大きな大粒水滴が発生する。また、前記回転体20、前記多孔部23、及び前記ミストモータ24で加湿空気発生手段が構成されている。
【0017】
なお、ミストモータ24は回転体20を平面視で時計回り方向のみに回転駆動させることが可能なモータを使用しており、後述するミスト運転時において、各設定状態に応じ回転体20を時計回り方向へ回転数を変化させて回動させる。
【0018】
なお、貯水室10内の水位が下限水位を下回ると、回転体20で水を汲み上げることが困難な状態になり、ミストと負イオンの発生量が減少して室内に放出される加湿空気量が減少してしまう。
また、貯水室10内の水位が上限水位を上回ると、水の粘性抵抗により回転体20の回転に対する負荷が増大することから、ミストモータ24に負荷がかかり製品寿命の低下に繋がる。
以上のことから、貯水室10内の水位を下限水位から上限水位の範囲に収めることで、回転体20による水の汲み上げ量を確保すると共にミストモータ24の負荷増大を防止することができる。
【0019】
図2を参照する。30は貯水室10の上方に位置して貯水室10と送風口40とを接続し、貯水室10内で発生したミストを含む加湿空気が通過する気水分離ケース、31は該気水分離ケース30の途中に互い違いとなるよう複数配置された板状のバッフル板である。
【0020】
気水分離ケース30内を加湿空気が通過すると加湿空気に含まれる粒径の大きな大粒水滴がバッフル板31に付着し、バッフル板31に付着した大粒水滴が溜まると気水分離ケース30の側面を流れ落ちて貯水室10へ滴下する。これにより、送風口40まで大粒水滴が案内されることがなく、送風口40に結露水が付着することを未然に防止することができる。
【0021】
また、気水分離ケース30は、図示しない取手を握って器具本体1の前方向に引き出すことが可能である。これにより、定期的に気水分離ケース30を器具本体1内から取り出してメンテナンスや清掃等の作業を実施し、作業終了後に元の設置場所へ戻すことで、気水分離ケース30に起因する製品トラブルを未然に阻止することができる。
【0022】
図2を参照する。40は器具本体1上部の前面方向が開口した状態で形成された送風口であり、送風口40には、上下方向の風向を変更可能な板状のルーバー41と、室内へ送風される加湿空気の温度を検知する送風温度センサ42と、が備えられ、気水分離ケース30を通過したミストを含む加湿空気が送風口40から室内へ送風されることで室内の加湿と空気清浄とが実施可能となる。
【0023】
図2を参照する。50は器具本体1の前面に形成され室内の空気が入り込む吸気口であり、吸気口50内には、所定の回転数で駆動することで室内の空気を吸引して器具本体1の上部方向へ送風する送風ファン51と、吸気口50へ吸い込まれる室内空気の温度を検知する室温検知手段としての吸気温度センサ52と、器具本体1が設置された室内の相対湿度を検知する湿度センサ53と、を備えている。
【0024】
送風ファン51が所定の回転数で駆動すると、吸気口50から吸い込んだ室内空気が器具本体1の上部方向へ送風され、吸気口50と貯水室10とを接続する送風経路54を室内空気が通過し、貯水室10内へ流入した室内空気がミストを含んだ加湿空気となって前記気水分離ケース30内を上昇し、送風口40から室内へ送風されることで、ミストを含んだ加湿空気を室内に供給することができる。
【0025】
また、55は気水分離ケース30に形成されたバイパス流入口であり、送風経路54を通過した後、貯水室10の空気流入口15へ流入せずに分流した室内空気が気水分離ケース30内へ流入する。
これにより、貯水室10を通過し気水分離ケース30を上昇する加湿空気と、バイパス流入口55から流入する室内空気とが混合し、送風口40から送風されるので、大風量で加湿空気を室内へ送風することができ、器具本体1の設置面積が大きい場合における加湿量不足を解消することができる。
【0026】
図2を参照する。60は貯水室10の側面に一端が接続され貯水室10内に市水を給水する給水管であり、給水管60の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室10内への給水を制御する給水弁61と、給水圧を所定値まで減圧する減圧弁62とが備えられている。
【0027】
図2を参照する。70は貯水室10の下部に一端が接続され貯水室10内の水を器具本体1外部に排水する排水管であり、排水管70の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室10内水の排水を制御する排水弁71が備えられている。
【0028】
図3を参照する。80は上面パネル2に設置され複数のスイッチとランプとを備えた操作部である。
操作部80には、ミスト運転の開始及び停止を指示する運転スイッチ81と、加熱ヒータ11のON/OFF状態を切り替えることで加熱量を変化させ、送風温度センサ42で検知される加湿空気の温度が各加湿レベルで設定された所定の目標吹出し温度となるよう湿度センサ53で検知された湿度に基づき自動で三段階の加湿レベルを変化させるオートモードと、手動で加湿レベルを変化させる手動モードとから選択可能な加湿スイッチ82と、ミストモータ24と送風ファン51との回転数の大小を変更可能な三段階の風量レベルを、湿度センサ53で検知された湿度に基づき自動で変化させるオートモードと、手動で変化させる手動モードとから選択可能な風量スイッチ83と、が備えられている。
【0029】
図3を参照する。操作部80の各スイッチ上部には各スイッチに対応したランプが備えられており、運転スイッチ81が操作されたら点灯する運転ランプ84と、ミスト運転が所定時間以上継続したら開始する除菌運転時に点灯する除菌ランプ85と、加湿スイッチ82で選択された加湿レベルを1から3の数値とオートモードを示すAで表示する加湿レベルランプ86と、風量スイッチ83で選択された風量レベルを1から3の数値とオートモードを示すAで表示する風量レベルランプ87と、が備えられている。
【0030】
図4を参照する。90は各センサで検知された検知値や操作部80上に備えられた各スイッチでの設定内容に基づき運転内容や弁の開閉を制御するマイコンで構成された制御部であり、ミストモータ24を所定の回転数で駆動させるミストモータ制御手段91と、送風ファン51を所定の回転数で駆動させる送風ファン制御手段92と、加熱ヒータ11のON/OFF状態を切り替えて貯水室10内の水への加熱量を変化させるSSR(ソリッドステートリレー)で構成される加熱ヒータ制御手段93と、が備えられている。
【0031】
次に、この一実施形態での運転開始から終了までの動作について、図5のフローチャートを参照し説明する。
【0032】
まず、操作部80の運転スイッチ81が操作されたら、制御部90は、排水弁71を開弁して貯水室10内の水を排水し、下限水位以下となって下水位センサ12cでOFF信号が検知されたら、給水弁61を開弁して貯水室10内を水で洗い流すクリーニング動作を行い、所定時間経過したら排水弁71を閉弁することで給水弁61から流入する水を貯水室10内に供給し、図示しないフローセンサにより所定量の水が貯水室10内に供給されたら給水弁61を閉弁する洗浄モードを行う(ステップS101)。
【0033】
ステップS101の洗浄モードが終了したら、制御部90は、貯水温度センサ13で検知される貯水温度が室温と同値になるまで加熱ヒータ制御手段93で加熱ヒータ11をON状態にして、ミストモータ24及び送風ファン51が所定の回転数となるようミストモータ制御手段91及び送風ファン制御手段92で制御する立ち上げ動作を実行する立ち上げモードを行う(ステップS102)。
【0034】
ステップS102の立ち上げモードが終了したら、制御部90は、風量スイッチ83で選択された風量レベルに基づいて、ミストモータ24と送風ファン51とが所定の回転数で駆動するようミストモータ制御手段91と送風ファン制御手段92とで回転数を制御し、また、加湿スイッチ82で選択された加湿レベルに基づいて、加熱ヒータ11のON/OFF状態を加熱ヒータ制御手段93で切り替えるよう制御するオートモード、または手動モードでのミスト運転を実行する通常運転モードを行う(ステップS103)。
【0035】
オートモードでのミスト運転は、湿度センサ53で検知される湿度と吸気温度センサ52で検知される室温とに基づき、送風温度センサ42で検知される加湿空気の温度が各加湿レベルで設定された所定の目標吹出し温度となるよう、加湿レベルと風量レベルとを自動で切り替えるものである。
また、手動モードでのミスト運転は、湿度センサ53で検知される湿度と吸気温度センサ52で検知される室温に関わらず、加湿スイッチ82で選択された加湿レベルと風量スイッチ83で選択された風量レベルとで運転するものである。
【0036】
また、制御部90は、前記ミスト運転中に貯水室10の水位が中段水位以下となって中水位センサ12bがOFF信号を出力したと判断したら、給水弁61を開弁して貯水室10内への給水を開始し、貯水室10の水位が上限水位より高くなって上水位センサ12aがON信号を出力したと判断したら、給水弁61を閉弁して貯水室10内への給水を停止することで、常時ミスト運転が実施可能な水位を保持することができる。
【0037】
また、制御部90は、前記ミスト運転中に貯水室10の水位が低下し、下水位センサ12cがOFF信号を出力したことで下限水位以下になったと判断したら、加熱ヒータ制御手段93により加熱ヒータ11をOFF状態に切り替えるので、加熱ヒータ11が水面上に露出し加熱ヒータ11の周囲に位置する回転体20等の部材が熱損傷を受けることを未然に阻止することができる。
【0038】
また、制御部90は、ミスト運転時における水位センサ12のON/OFF回数と図示しないフローセンサとから貯水室10内への積算給水量を算出し、積算給水量が所定値に達したことで所定の動作開始タイミングになったと判断したら、ミスト運転を継続しつつ貯水室10内の水を入れ替える水入れ替え動作を実施し、貯水室10内におけるスケール発生を抑制する。
【0039】
また、前記水入れ替え動作時において、下水位センサ12cが所定の排水時間内に下限水位以下を検知しなかった場合、制御部90は、エラーと判断してミストモータ24と送風ファン51との駆動を停止させ、運転ランプ84を点滅させることでエラーを報知すると共に、運転スイッチ81を操作することでのミスト運転の実施を禁止するエラー状態に切り替わる。そして、作業者によるメンテナンスが実施された後、制御部90にある図示しない特定のスイッチが操作される等の所定のエラー解除動作が実行されたと制御部90が判断したら、エラー状態を解除して運転スイッチ81を操作することで、ミスト運転の実施が可能な状態に切り替わる。
【0040】
ステップS103の通常運転モードが開始されてから経過した時間が16時間となったか、または通常運転モード中に運転スイッチ81が操作されミスト運転終了の指示があったと判断したら、制御部90は、ミストモータ24を停止させてから排水弁71を開弁して貯水室10内の水を排水し、所定時間経過したら給水弁61を開弁して貯水室10内を洗浄してから排水弁71を閉弁して貯水室10内に所定量だけ貯水する洗浄運転を行い、その後、加熱ヒータ11をON状態にして水を65℃前後に加熱し除菌を行う除菌運転を10分間実施し、10分経過後に貯水室10内を冷却する冷却運転を実行し、貯水温度が60℃未満になったら排水弁71を開弁して排水するクリーニングモードを行う(ステップS104)。
【0041】
ステップS104のクリーニングモードが終了したら、制御部90は、乾燥モード(ステップS105)に移行し、送風ファン51が所定の回転数(例えば、800rpm)で駆動するよう送風ファン制御手段92で制御し、所定時間(例えば3時間)だけ送風ファン51を駆動させ続ける乾燥運転を実施して、3時間経過したと判断したら、送風ファン51を停止させて運転を終了する。
【0042】
次に、通常運転モードでのミスト運転時にオートモードが選択された場合における室温値、及び湿度値に基づく加湿レベルの区画について説明する。
【0043】
図6を参照する。グラフの縦軸は室温値(℃)、横軸は湿度値(%RH)であり、各加湿レベル、及び後述する区画AからDとHの下に記載した数値は目標吹出し温度を示す。
【0044】
湿度値に基づき範囲が設定される区画が各加湿レベルと対応しており、湿度値が90%RHより高い範囲(90%RH<湿度値)は加湿レベル1、湿度値が60%RHより高く90%RH以下の範囲(60%RH<湿度値≦90%RH)は加湿レベル2、湿度値が60%RH以下の範囲(湿度値≦60%RH)は加湿レベル3としている。
【0045】
更に、加湿レベル3の範囲については、室温値が所定値である18℃以上には1つの区画が設定されており、室温値が18℃未満には湿度値に基づき区分けした2つの区画が設定されている。
具体的には、室温値が18℃未満では、湿度値が40%RHより高く60%RH以下の範囲(40%RH<湿度値≦60%RH)と、湿度値が40%RH以下の範囲(湿度値≦40%RH)とで分けた区画が設定される。
【0046】
また、室温値が18℃未満の範囲は、室温値が10℃以上で18℃未満の範囲(10℃≦室温値<18℃)と、室温値が5℃以上で10℃未満の範囲(5℃≦室温値<10℃)とで区分けした区画も設定される。
【0047】
ここで、加湿レベル3における室温値18℃以上の区画、及び室温値18℃未満の区画について、以下のように区画名を付ける。
区画H(湿度値≦60%RHかつ18℃≦室温値の範囲)
区画A(湿度値≦40%RHかつ10℃≦室温値<18℃の範囲)
区画B(40%RH<湿度値≦60%RHかつ10℃≦室温値<18℃の範囲)
区画C(湿度値≦40%RHかつ5℃≦室温値<10℃の範囲)
区画D(40%RH<湿度値≦60%RHかつ5℃≦室温値<10℃の範囲)
【0048】
また、室温値が5℃未満の範囲は、貯水室10内の水が凍結し正常なミスト運転を実施できない虞があるため、制御部90は、吸気温度センサ52で5℃未満が検知されたら、選択された加湿レベル関わらず運転停止処理をするよう制御する。
【0049】
よって、制御部90は、ミスト運転時にオートモードが選択された場合、湿度センサ53で検知された湿度を湿度値により区分けされた区画のいずれに該当するか判断し、該当する区画における加湿レベルを選択する。
【0050】
更に、制御部90は、ミスト運転時に湿度センサ53で検知された湿度が60%RH以下である場合、吸気温度センサ52で検知された室温が18℃以上のときは、湿度値に基づき範囲が設定される区画を加湿レベル1から3の区画で構成された第1の区画数である3つだけ設定し、吸気温度センサ52で検知された室温が18℃未満のときは、湿度値に基づき範囲が設定される区画を加湿レベル1、2の区画、及び区画Aと区画B、または区画Cと区画Dで構成された第2の区画数である4つだけ設定する。
【0051】
各加湿レベルにおける目標吹出し温度について説明する。
【0052】
図6を参照する。加湿レベルが1のときは、加熱ヒータ11がOFF状態で固定されているため、制御部90は、選択された風量レベルに沿った回転数でミストモータ24、及び送風ファン51を駆動させることで、器具本体1に吸気された空気温度とほぼ同等な温度の加湿空気が送風され、目標吹出し温度に基づく制御は実施しない。
【0053】
加湿レベルが2のときは、制御部90は、吸気温度センサ52で検知される室温+4.0℃を目標吹出し温度とし、加熱ヒータ11のON/OFF状態を切り替えて送風温度センサ42での検知温度が目標吹出し温度となるよう制御する。
【0054】
加湿レベルが3のときは、制御部90は、吸気温度センサ52で検知された室温が所定値である18℃以上であれば、区画Hに該当するとして吸気温度センサ52で検知される室温+6.5℃を目標吹出し温度とし、加熱ヒータ11のON/OFF状態を切り替えて送風温度センサ42での検知温度が目標吹出し温度となるよう制御する。
【0055】
また、制御部90は、吸気温度センサ52で検知された室温が所定値である18℃未満であれば、吸気温度センサ52で検知された室温と湿度センサ53で検知された湿度とで、目標吹出し温度を切り替える。
【0056】
具体的には、制御部90は、湿度センサ53で検知された湿度が40%RHより高く60%RH以下の範囲(40%RH<検知湿度≦60%RH)にあり、かつ吸気温度センサ52で検知された室温が10℃以上で18℃未満の範囲(10℃≦検知室温<18℃)であれば、区画Bに該当するとして、吸気温度センサ52で検知される室温+5.0℃を目標吹出し温度とし、加熱ヒータ11のON/OFF状態を切り替えて送風温度センサ42での検知温度が目標吹出し温度となるよう制御する。
【0057】
また、制御部90は、湿度センサ53で検知された湿度が40%RHより高く60%RH以下の範囲(40%RH<検知湿度≦60%RH)にあり、かつ吸気温度センサ52で検知された室温が5℃以上で10℃未満の範囲(5℃≦検知室温<10℃)であれば、区画D に該当するとして、吸気温度センサ52で検知される室温+4.5℃を目標吹出し温度とし、加熱ヒータ11のON/OFF状態を切り替えて送風温度センサ42での検知温度が目標吹出し温度となるよう制御する。
【0058】
また、制御部90は、湿度センサ53で検知された湿度が40%RH以下の範囲(検知湿度≦40%RH)にあり、かつ吸気温度センサ52で検知された室温が10℃以上で18℃未満の範囲(10℃≦検知室温<18℃)であれば、区画Aに該当するとして、吸気温度センサ52で検知される室温+5.0℃を目標吹出し温度とし、加熱ヒータ11のON/OFF状態を切り替えて送風温度センサ42での検知温度が目標吹出し温度となるよう制御する。
【0059】
また、制御部90は、湿度センサ53で検知された湿度が40%RH以下の範囲(検知湿度≦40%RH)にあり、かつ吸気温度センサ52で検知された室温が5℃以上で10℃未満の範囲(5℃≦検知室温<10℃)であれば、区画C に該当するとして、吸気温度センサ52で検知される室温+5.0℃を目標吹出し温度とし、加熱ヒータ11のON/OFF状態を切り替えて送風温度センサ42での検知温度が目標吹出し温度となるよう制御する。
【0060】
よって、湿度値が大きい区画(加湿レベル2の区画)に対応する目標吹出し温度よりも湿度値が小さい区画(加湿レベル3の区画)に対応する目標吹出し温度の方が高くなるので、室内の湿度が低い場合は、目標吹出し温度を高めることで素早く室内湿度を上昇させて室内の快適性を高め、室内の湿度が高い場合は、目標吹出し温度を低くすることで室内湿度の過度な上昇を阻止して送風口40での多量の結露水発生を阻止する。
【0061】
また、湿度値60%RH以下において、室温値が18℃以上の区画H(特定の区画に相当)の目標吹出し温度よりも室温値が18℃未満の区画AからDの目標吹出し温度を低く設定しているので、室温が低いことで送風口40に多量の結露水が付着する虞が高い環境化での結露水付着を、確実に阻止することができる。
【0062】
また、湿度値60%RH以下において、室温値が10℃以上で18℃未満の区画B(特定の区画に相当)の目標吹出し温度よりも室温値が5℃以上で10℃未満の区画D の目標吹出し温度の方が低く設定しているので、室温の低下に従い目標吹出し温度が低下することから、室温が低くかつ湿度が一定範囲にあることで送風口40に多量の結露水が付着しやすい環境下において、送風口40への結露水の付着を確実に阻止することができる。
【0063】
次に、本発明の効果を説明する。
【0064】
図6を参照する。吸気温度センサ52で検知された室温が18℃以上のときは、湿度値に基づき範囲が設定される区画を加湿レベル1から3の区画で構成された第1の区画数である3つだけ設定し、室温が18℃未満のときは、湿度値に基づき範囲が設定される区画を第1の区画数より多い加湿レベル1、2の区画、及び区画Aと区画B、または区画Cと区画Dで構成された第2の区画数である4つだけ設定し、区画毎に目標吹出し温度がそれぞれ設定され、目標吹出し温度は、大きい湿度値に対応する区画よりも小さい湿度値に対応する区画の方が高くなるよう設定したので、室温が低いときは目標吹出し温度の設定値を室温が高いときと比較して湿度に応じて細やかに設定することが可能となり、多量の結露水が発生しやすい低室温の状態において、器具本体1の送風口40付近に多量の結露水が付着して飛散し、器具本体1の設置面が濡れることを防止することができる。
【0065】
また、吸気温度センサ52で検知された室温が18℃以上のときにおける湿度値60%RH以下の区画H(特定の区画に相当)の目標吹出し温度よりも、室温が18℃未満のときにおける湿度値60%RH以下の区画AからDの目標吹出し温度が低くなるよう設定したので、室温が低く送風口40に多量の結露水が付着する虞が高いときは目標吹出し温度を低くするため、送風口40への結露水付着を効果的に阻止し、送風口40に付着した結露水が落下することで器具本体1の設置面が濡れるのを未然に阻止可能となった。
【0066】
また、ミストモータ24の駆動により回転体20が回転し、貯水室10の水を汲み上げて周囲に飛散させ、多孔部23に衝突することで微細水滴を多量に発生させる加湿空気発生手段を備えた加湿装置では、貯水室10内の水を含み回転するフィルタに対して送風ファン51の送風を当てて加湿空気を送風する気化式等の他の加湿装置と比較し、本発明の加湿空気発生手段は多量の微細水滴が発生することから、送風口40への結露水付着の虞が高いため、湿度値と室温値とに基づいて目標吹出し温度の区画を分けた本発明の内容を適用することで、送風口40に多量の結露水が付着することをより効果的に抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では室温検知手段として器具本体1の底部に設置された吸気温度センサ52を用いているが、器具本体1が設置された室内の温度が検知可能であればよいので、室内の任意の場所に設置された室温センサの検知温度に基づいて制御する内容であってもよく、また、湿度センサ53についても器具本体1外で室内に設置されてあればよく、室内の温度と湿度が検知可能であればよいものである。
【0068】
また、本実施形態における構成や制御内容は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 器具本体
10 貯水室
11 加熱ヒータ(加熱手段)
20 回転体(加湿空気発生手段)
23 多孔部(加湿空気発生手段)
24 ミストモータ(加湿空気発生手段)
40 送風口
42 送風温度センサ
51 送風ファン
52 吸気温度センサ(室温検知手段)
53 湿度センサ
90 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6