(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】扉開閉機構および冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
F25D23/02 306L
F25D23/02 306D
(21)【出願番号】P 2020545921
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2019034325
(87)【国際公開番号】W WO2020054471
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018170314
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康雄
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-045458(JP,A)
【文献】特開2008-134002(JP,A)
【文献】特開平11-248341(JP,A)
【文献】特開2001-033150(JP,A)
【文献】特開昭59-170674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
E05D 7/02
E05F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、少なくとも一つの扉と、ヒンジ部とを備えている扉開閉機構であって、
前記ヒンジ部は、前記扉の上方に差し込まれて回動軸となる上方ヒンジピンと、前記扉の下方に差し込まれて回動軸となる下方ヒンジピンと、を含み、
前記上方ヒンジピンおよび前記扉を前記本体部から取り外してから、前記下方ヒンジピンを付け替えることで、前記ヒンジ部を前記本体部の左側および右側に付け替え可能に構成されており、
前記扉の下方に位置する前記ヒンジ部は、前記下方ヒンジピンとなる軸部と、
前記下方ヒンジピンと一体化され、前記扉の自閉力を促進させる自閉性向上部材とを有しており、
前記自閉性向上部材は、前記本体部の左側に取り付けられたときと、前記本体部の右側に取り付けられたときとの間で、配置の仕方が変更されている、
扉開閉機構。
【請求項2】
前記自閉性向上部材は、左右付け替え時に水平方向に回転または上下方向に反転させることによって、前記配置の仕方が変更される構成を有しており、
前記自閉性向上部材には、前記本体部の左側に取り付けられたときと、前記本体部の右側に取り付けられたときで、それぞれ適切な配置とするための位置決め部が形成されている、
請求項1に記載の扉開閉機構。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記下方ヒンジピンを前記本体部に取り付けた状態で前記下方ヒンジピンの内側の斜め後方の位置に形成されている、請求項2に記載の扉開閉機構。
【請求項4】
上下方向に少なくとも2つの扉を備えている冷蔵庫であって、
前記少なくとも2つの扉の少なくとも何れか一方の扉が、請求項1から3の何れか1項に記載の扉開閉機構を有している、冷蔵庫。
【請求項5】
前記少なくとも2つの扉の何れもが前記扉開閉機構を有しており、
前記少なくとも2つの扉のうちの隣接する2つの扉の間には、前記ヒンジ部として中間ヒンジ部が配置されており、
前記中間ヒンジ部の前記軸部は、前記隣接する2つの扉うちの双方の開閉時の回転軸となり、
前記中間ヒンジ部に設けられている自閉性向上部材は、前記隣接する2つの扉のうちの上方側の扉の自閉力を促進させるものである、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記少なくとも2つの扉のうちの隣接する2つの扉の間には、各扉の間に空間を確保する空間保持部が設けられている、請求項5に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、扉の左右開きを変更することのできる扉開閉機構、およびこの扉開閉機構を有する扉を備えている冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫扉の開閉機構として、部品を付け替えることによって扉の左右の開閉方向を変更可能に構成されているものがある。例えば、特許文献1には、冷蔵庫扉の左右開きを変更することができる冷蔵庫扉の開閉構造が開示されている。
【0003】
この冷蔵庫扉の開閉構造は、冷蔵庫本体と、左右両側のそれぞれの上部に取付孔を有する扉と、上記冷蔵庫本体の左右両側のそれぞれに設けられると共に、上記取付孔の上側でこの取付孔に重なる貫通孔を有するヒンジ保持部材と、上記貫通孔の上側からこの貫通孔に挿通され上記取付孔に抜き取り自在に差し込まれて、上記扉を上記冷蔵庫本体に対して回転可能に取り付けるヒンジピンと、上記扉の下側に配置されると共に上記扉を上記冷蔵庫本体に対して上記ヒンジピンの軸回りに回転可能に取り付ける下ヒンジ部とを備えている。そして、扉の左右一方の取付孔、および、左右一方のヒンジ保持部材の貫通孔に差し込まれているヒンジピンを抜き取って、このヒンジピンを、扉の左右他方の取付孔、および、左右他方のヒンジ保持部材の貫通孔に差し込むことで、扉の左右開きを簡単に変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような冷蔵庫扉の開閉機構では、使用者が扉を閉じる動作を行う際に扉の自閉力を高めるために、扉のパッキン部分に磁石を取り付けているものがある。しかし、磁石によって扉の自閉力を付与する構成だけでは扉の自閉力が不足することがあり、例えば、扉に重量物が収納されている場合には、自閉力不足で扉が閉まらない状態となることがある。
【0006】
そこで、本開示では、左右開きを変更することのできる扉において、扉を閉じる動作を行うときにより確実かつ容易に扉を閉じることのできる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面にかかる扉開閉機構は、本体部と、少なくとも一つの扉と、ヒンジ部とを備えている。この扉開閉機構において、前記ヒンジ部は、前記本体部の左側および右側に付け替え可能に構成されており、前記ヒンジ部は、軸部と、前記扉の自閉力を促進させる自閉性向上部材とを有しており、前記自閉性向上部材は、前記本体部の左側に取り付けられたときと、前記本体部の右側に取り付けられたときとの間で、配置の仕方が変更されている。
【0008】
上記の本発明の一局面にかかる扉開閉機構において、前記自閉性向上部材は、左右付け替え時に水平方向に回転させることによって、前記配置の仕方が変更される構成を有していてもよい。
【0009】
上記の本発明の一局面にかかる扉開閉機構において、前記自閉性向上部材は、左右付け替え時に上下方向に反転させることによって、前記配置の仕方が変更される構成を有していてもよい。
【0010】
本発明のもう一つの局面にかかる冷蔵庫は、上下方向に少なくとも2つの扉を備えている。この冷蔵庫では、前記少なくとも2つの扉の少なくとも何れか一方の扉が、上記の本発明の一局面にかかる扉開閉機構を有している。
【0011】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫において、前記少なくとも2つの扉の何れもが前記扉開閉機構を有していてもよい。そして、前記少なくとも2つの扉のうちの隣接する2つの扉の間には、前記ヒンジ部として中間ヒンジ部が配置されている。この中間ヒンジ部の前記軸部は、前記隣接する2つの扉うちの双方の開閉時の回転軸となり、前記中間ヒンジ部の前記自閉性向上部材は、前記隣接する2つの扉のうちの上方側の扉の自閉力を促進させるものであってもよい。
【0012】
上記の本発明の一局面にかかる冷蔵庫において、前記少なくとも2つの扉のうちの隣接する2つの扉の間には、各扉の間に空間を確保する空間保持部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一局面によれば、左右開きを変更することのできる扉において、扉を閉じる動作を行うときにより確実かつ容易に扉を閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる冷蔵庫の外観構成を示す正面図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の各扉を左側から開けた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す冷蔵庫の本体部を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す冷蔵庫の本体部を上方側から見た斜視図である。
【
図5】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の冷蔵室扉を右側から開けた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す冷蔵庫の本体部を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す冷蔵庫の本体部を上方側から見た斜視図である。
【
図8】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の冷蔵室扉を下方側から見た斜視図である。
【
図9】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の中間のヒンジ部を分解した状態で示す斜視図である。
【
図10】第1の実施形態にかかる冷蔵庫に備えられているヒンジピンおよびばね受け部材を示す斜視図である。
【
図11】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の本体部に冷蔵室扉を取り付ける様子を示す断面図である。
【
図12】
図11に示す冷蔵庫の中間のヒンジ部周辺を拡大して示す断面図である。
【
図13】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の冷蔵室扉が閉じている状態のときの中間のヒンジ部周辺の構成を示す図である。
【
図14】第1の実施形態にかかる冷蔵庫の冷蔵室扉が開いている状態のときの中間のヒンジ部周辺の構成を示す図である。
【
図15】第2の実施形態にかかる冷蔵庫の冷蔵室扉が閉じている状態のときの中間のヒンジ部周辺の構成を示す図である。
【
図16】第2の実施形態にかかる冷蔵庫の冷蔵室扉が開いている状態のときの中間のヒンジ部周辺の構成を示す図である。
【
図17】第2の実施形態にかかる冷蔵庫に備えられているヒンジピンおよびばね受け部材を示す斜視図である。
【
図18】第3の実施形態にかかる冷蔵庫の本体部を上方側から見た斜視図である。この図は、各扉を左側から開ける構成のときの図である。
【
図19】第3の実施形態にかかる冷蔵庫の本体部を上方側から見た斜視図である。この図は、各扉を右側から開ける構成のときの図である。
【
図20】第3の実施形態にかかる冷蔵庫の冷蔵室扉が閉じている状態のときの中間のヒンジ部周辺の構成を示す図である。この図では、中間のヒンジ部を下方側から見た状態を示す。
【
図21】第3の実施形態にかかる冷蔵庫に備えられているヒンジピンおよびばね受け部材を示す斜視図である。
【
図22】第3の実施形態にかかる冷蔵庫の変形例を示す図である。この図は、冷蔵室扉が閉じている状態のときの中間のヒンジ部周辺の構成を示す図である。この図では、中間のヒンジ部を下方側から見た状態を示す。
【
図23】第4の実施形態にかかる冷蔵庫の中間のヒンジ部周辺の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
〔第1の実施形態〕
(冷蔵庫の全体構成)
本実施形態では、2つの収納庫(冷蔵室2および冷凍室3)を有している冷蔵庫1を例に挙げて説明する。冷蔵庫1は、本発明の一例の扉開閉機構を備えている。
図1には、本実施形態にかかる冷蔵庫1の外観を示す。
図2には、冷蔵庫1の各扉を開けた状態の外観を示す。冷蔵庫1は、主として、本体部10と、冷蔵室扉11および冷凍室扉12とで構成されている。本体部10は、断熱箱体でその外形が形成されている。
【0017】
冷蔵庫1の上段には冷蔵室2が配置されている。冷蔵室2の正面の開口部には、冷蔵室扉11が取り付けられている。冷蔵庫1の下段には冷凍室3が配置されている。冷凍室3の正面の開口部には、冷凍室扉12が取り付けられている。冷蔵室扉11および冷凍室扉12は、本発明の一例の扉開閉機構を有している。そして、ヒンジ部を構成する部品(具体的には、ヒンジピン31・41・61など)を付け替えることによって扉の左右の開閉方向を変更可能に構成されている。
【0018】
なお、冷蔵庫1における各貯蔵室の構成や配置は、上記のものに限定はされない。各貯蔵室の構成および配置は、冷蔵庫の容量、用途などに応じて適宜変更することができる。
【0019】
本実施形態では、扉が設けられている面を冷蔵庫1の前面(正面)とする。そして、前面を基準にして、冷蔵庫1を通常の状態で設置した場合に存在する位置に基づいて、冷蔵庫1の本体部10の各面を、上面、側面、背面、及び底面とする。また、冷蔵庫1を正面側から見た状態で、左に位置する側を冷蔵庫1(または冷蔵室扉11)の左側と呼び、右に位置する側を冷蔵庫1(または冷蔵室扉11)の右側と呼ぶ。
【0020】
図1および
図2には、冷蔵室扉11および冷凍室扉12が、左側から開閉される状態を示す。この状態では、各ヒンジピン(軸部)31・41・61は、冷蔵庫1の右側の端部に取り付けられている。
図5には、冷蔵室扉11および冷凍室扉12が、右側から開閉される状態を示す。この状態では、各ヒンジピン31・41・61は、冷蔵庫1の左側の端部に取り付けられている。
【0021】
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫1は、ヒンジピン31・41・61が本体部10の右側に配置された状態で、各扉11および12が本体部10に取り付けられると、左側の端部から各扉11および12を開閉する構成となる。また、ヒンジピン31・41・61が本体部10の左側に配置された状態で、各扉11および12が本体部10に取り付けられると、右側の端部から各扉11および12を開閉する構成となる。
【0022】
(扉開閉機構について)
続いて、冷蔵庫1に取り付けられた冷蔵室扉11の扉開閉機構について説明する。
図3、
図4、
図6、および
図7には、冷蔵庫1から各扉11および12を取り外した状態の本体部10の外観を示す。
図3および
図4は、冷蔵室扉11および冷凍室扉12が、ともに左側から開閉されるときの本体部10の構成を示す。
図6および7は、冷蔵室扉11および冷凍室扉12が、ともに右側から開閉されるときの本体部10の構成を示す。
【0023】
また、
図8には、冷蔵室扉11の底面部分の構成を示す。
図9には、冷蔵庫1の中間のヒンジ部を構成する各部品を分解した状態で示す。
図10には、中間ヒンジピン41にばね受け部材(自閉性向上部材)42を取り付けた状態を示す。
【0024】
冷蔵室扉11は、扉本体部分の上部に取り付けられる扉上方部材21、および扉本体部分の下部に取り付けられる扉下方部材22を有している。冷凍室扉12は、扉本体部分の上部に取り付けられる扉上方部材23、および扉本体部分の下部に取り付けられる扉下方部材24を有している。各扉部材21から24には、左右両側の端部付近に、ヒンジピン31、41、または61が差し込まれる穴が形成されている。
【0025】
ヒンジピン31は、本体部10の上部に取り付けられるため、上方ヒンジピンとも呼ばれる。ヒンジピン41は、本体部10の中間部(本実施形態では、仕切り部10a)に取り付けられるため、中間ヒンジピンとも呼ばれる。ヒンジピン61は、本体部10の下部に取り付けられるため、下方ヒンジピンとも呼ばれる。各ヒンジピン31・41・61は、冷蔵室扉11および冷凍室扉12の枢支軸となる。
【0026】
本体部10には、冷蔵室2と冷凍室3との間を仕切る仕切り部10aが設けられている。また、本体部10の上面部の前方には、カバー部材32が取り付けられている。カバー部材32の下方には上方部材33が設けられている(
図11参照)。上方部材33には、上方ヒンジピン31が差し込まれる穴34が左右両側に形成されている。
【0027】
仕切り部10aの間口部分には、ヒンジピン41が差し込まれる軸受け部40aおよび40bが設けられている。軸受け部40aは、本体部10の右側の端部近傍に設けられている。軸受け部40bは、本体部10の左側の端部近傍に設けられている。
【0028】
本体部10の下端部の間口部分には、ヒンジピン61が差し込まれる軸受け部60aおよび60bが設けられている。軸受け部60aは、本体部10の右側の端部近傍に設けられている。軸受け部60bは、本体部10の左側の端部近傍に設けられている。
【0029】
軸受け部40aは、支持部材44aと、カバー部材45aとで構成されている。軸受け部40bは、支持部材44bと、カバー部材45bとで構成されている。軸受け部40aと軸受け部40bとは、左右対称な構成となっている。
【0030】
図4および
図7に示すように、各軸受け部40aおよび40bには、冷蔵庫1の前方側へ張り出した張り出し部46が形成されている。この張り出し部46には、中間ヒンジピン41が差し込まれる穴47が形成されている。また、張り出し部46には、穴47の斜め後方側に、第2の穴48が形成されている。第2の穴48には、ばね受け部材(自閉性向上部材)42の固定ピン42d(
図10参照)が差し込まれる。固定ピン42dが、軸受け部40aまたは40bの第2の穴48に差し込まれることで、ばね受け部材42および中間ヒンジピン41を、軸受け部40aまたは40bの所定の位置に固定させることができる。
【0031】
軸受け部60aおよび軸受け部60bは、軸受け部40aおよび軸受け部40bとそれぞれ同様の構成を有している。すなわち、軸受け部60aは、支持部材64aと、カバー部材65aとで構成されている。軸受け部60bは、支持部材64bと、カバー部材65bとで構成されている。軸受け部60aと軸受け部60bとは、左右対称な構成となっている。
【0032】
図4および
図7に示すように、各軸受け部60aおよび60bには、冷蔵庫1の前方側へ張り出した張り出し部66が形成されている。この張り出し部66には、下方ヒンジピン61が差し込まれる穴67が形成されている。また、張り出し部66には、穴67の斜め後方側に、第2の穴68が形成されている。第2の穴68には、ばね受け部材(自閉性向上部材)62の固定ピン(図示せず)が差し込まれる。固定ピンが、軸受け部60aまたは60bの第2の穴68に差し込まれることで、ばね受け部材62および下方ヒンジピン61を、軸受け部60aまたは60bの所定の位置に固定させることができる。
【0033】
また、
図8に示すように、冷蔵室扉11の底面には、ヒンジ補助部材81aおよび81bが備えられている。ヒンジ補助部材81aおよび81bは、扉下方部材22に取り付けられている。具体的には、ヒンジ補助部材81aは、扉下方部材22の右側の端部に取り付けられている。また、ヒンジ補助部材81bは、扉下方部材22の左側の端部に取り付けられている。ヒンジ補助部材81aおよび81bは、左右対称の構成を有している。
【0034】
ヒンジ補助部材81aおよび81bには、中間ヒンジピン41が差し込まれる穴27が設けられている。また、ヒンジ補助部材81aおよび81bには、冷蔵室扉11の開閉動作をより円滑に行わせるために、ばね部82が形成されている。ばね部82は、弾性またか可撓性を有する板ばね状に形成されている。ばね部82の先端部分には、下方側へ突出する突起83が設けられている。ばね部82は、冷蔵室扉11の開閉動作時に、ばね受け部材42の第1棒状部42aの尾根形状A(
図9および10など参照)に、突起83が乗り上がることによって上方向に弾性変形する。そして、変形したばね部82が復元しようとする力が、第1棒状部42aの尾根形状Aにおける本体部10の間口側の斜面に作用して、扉の自閉力を促進させる。
【0035】
なお、冷凍室扉12の扉下方部材24にも、ヒンジ補助部材81aおよび81bと同様の構成を有しているヒンジ補助部材が備えられている。
【0036】
冷蔵室扉11および冷凍室扉12が左側から開閉される構成の場合には、上方ヒンジピン31は、本体部10の右側の上方部に取り付けられる。また、中間ヒンジピン41およびばね受け部材42、並びに下方ヒンジピン61およびばね受け部材62は、本体部10の右側の軸受け部40aおよび軸受け部60aにそれぞれ取り付けられる(
図3および
図4参照)。
【0037】
一方、冷蔵室扉11および冷凍室扉12が右側から開閉される構成の場合には、上方ヒンジピン31は、本体部10の左側の上方部に取り付けられる。また、中間ヒンジピン41およびばね受け部材42、並びに下方ヒンジピン61およびばね受け部材62は、本体部10の左側の軸受け部40bおよび軸受け部60bに取り付けられる(
図6および
図7参照)。
【0038】
このように、本実施形態にかかる冷蔵庫1では、ヒンジピン31・41・61、並びにばね受け部材42および62という一組のセットを左右に付け替えることで、冷蔵庫1の各扉11および12の開閉方向を左右に変更することができる。
【0039】
図10には、中間ヒンジピン41にばね受け部材42を取り付けた状態を示す。
図10に示すように、ばね受け部材42のピン挿入孔に中間ヒンジピン41が差し込まれている。ばね受け部材42は中間ヒンジピン41に固定されて一体化されていてもよい。例えば、ばね受け部材42を中間ヒンジピン41にインサート成形することで、両者を一体化した構成とすることができる。
【0040】
扉開閉機構のヒンジ部を右側から左側、あるいは左側から右側に変更する場合には、中間ヒンジピン41およびばね受け部材42は、この状態で付け替えらえる。すなわち、中間ヒンジピン41およびばね受け部材42は、一方の軸受け部40aまたは40bから取り外され、他方の軸受け部40bまたは40aへ取り付けられる。
【0041】
ばね受け部材42は、ピン挿入孔が形成されている基点部42’から延伸する2つの棒状部(第1棒状部42aおよび第2棒状部42b)を有している。第1棒状部42aと第2棒状部42bとは、基点部42’を基準として、互いに約90度(略直角)の位置関係に延びている(
図9など参照)。また、第1棒状部42aおよび第2棒状部42bの上面は、尾根形状Aを有している。冷蔵室扉11を閉じる時、この尾根形状Aが扉側に設けられたばね部82と作用することによって、扉の自閉力が促進される。
【0042】
また、第1棒状部42aと第2棒状部42bとの間には、第1棒状部42aと第2棒状部42bとを橋渡しするように中間部42cが設けられている。中間部42cには、下方へ向かって延びる固定ピン42dが形成されている。上述したように、固定ピン42dは、軸受け部40aまたは40bの第2の穴48に差し込まれる。これにより、本体部10の軸受け部40aまたは40bに対して、中間ヒンジピン41およびばね受け部材42が固定され、中間ヒンジピン41は、冷蔵室扉11の下方側の枢支軸および冷凍室扉12の上方側の枢支軸となる。
【0043】
例えば、冷蔵室扉11の開閉方向を左側開きから右側開きへ変更する場合には、右側の軸受け部40aに取り付けられた中間ヒンジピン41およびばね受け部材42を、左側の軸受け部40bに付け替える。このとき、ばね受け部材42を、水平方向に略90度回転させることによって、ばね受け部材42の配置の仕方が変更される。
【0044】
本実施形態では、冷蔵室扉11が左側開きのときには、第1棒状部42aが本体部10の間口部分の前方側に位置している(
図4参照)。これにより、第1棒状部42aの尾根形状Aが扉側に設けられたばね部82と作用し、扉の自閉力を促進させる。一方、冷蔵室扉11が右側開きのときには、第2棒状部42bが本体部10の間口部分の前方側に位置している(
図7参照)。これにより、第2棒状部42bの尾根形状Aが扉側に設けられたばね部82と作用し、扉の自閉力を促進させる。
【0045】
なお、下方ヒンジピン61およびばね受け部材62の構成も、
図10に示す構成と同様の構成が適用できる。すなわち、扉開閉機構のヒンジ部を右側から左側、あるいは左側から右側に変更する場合には、下方ヒンジピン61およびばね受け部材62を、一方の軸受け部60aまたは60bから取り外し、他方の軸受け部60bまたは60aへ取り付ける。このとき、ばね受け部材42と同様に、ばね受け部材62を、水平方向に略90度回転させることによって、ばね受け部材62の配置の仕方が変更される。このようにして、下方ヒンジピン61は、冷凍室扉12の下方側の枢支軸となる。
【0046】
そして、冷凍室扉12が左側開きのときには、第1棒状部62aの尾根形状が扉側に設けられたばね部(図示せず)と作用し、扉の自閉力を促進させる。一方、冷凍室扉12が右側開きのときには、第2棒状部62bの尾根形状が扉側に設けられたばね部(図示せず)と作用し、扉の自閉力を促進させる。
【0047】
また、
図9に示すように、冷蔵庫1の中間のヒンジ部には、スペーサ部材(空間保持部)43が設けられている。スペーサ部材43は、より径の大きな頭部43aと、より径の小さな脚部43bとを有している。脚部43bは、冷凍室扉12の扉上方部材23に形成された穴28に差し込まれる。また、頭部43aには、中間ヒンジピン41が差し込まれる差し込み穴43cが形成されている。スペーサ部材43は、中間ヒンジピン41の軸受けとして機能する。また、スペーサ部材43は、上下に隣接して配置されている冷蔵室扉11と冷凍室扉12との空間を確保するためのスペーサとしての機能も果たしている。
【0048】
以上のような構成を有する扉開閉機構において、冷蔵室扉11および冷凍室扉12の左右の開閉位置を変更する場合には、先ず、上方ヒンジピン31、冷蔵室扉11、中間ヒンジピン41およびばね受け部材42、冷凍室扉12の順に、冷蔵庫1から取り外す。次に、下方ヒンジピン61およびばね受け部材62を、一方の軸受け部60a(または60b)から他方の軸受け部60b(または60a)へ付け替える。次に、冷凍室扉12を下方ヒンジピン61に対して取り付ける。このとき、下方ヒンジピン61の上方に位置する冷凍室扉12の扉上方部材23に形成された穴28に、スペーサ部材43を付け替えておく。その後、中間ヒンジピン41およびばね受け部材42を、下方ヒンジピン61と同じ側へ付け替える。
【0049】
そして、
図11に示すように、冷蔵室扉11を中間ヒンジピン41に対して取り付けた後、冷蔵室扉11の上方部分を本体部10の上方部材33へ位置合わせし、冷蔵室扉11および上方部材33を上方ヒンジピン31で支持固定する。最後に、本体部10の上面にカバー部材32を取り付ける。
【0050】
冷蔵室扉11を本体部10に対して取り付ける際には、
図11に示すように、冷蔵室扉11の下方側が本体部10へより近づくように冷蔵室扉11を傾斜させる。この状態で、冷蔵室扉11の下面に設けられたヒンジ補助部材81aまたは81bの穴27に対して、中間ヒンジピン41を差し込む。
【0051】
図12には、冷蔵室扉11の取付け時の中間ヒンジピン41周辺の構成を拡大して示す。
図12に示すように、中間ヒンジピン41が差し込まれる穴27の側面(具体的には、冷蔵室扉11の後方側の側面)には、穴の奥側へ向かって径が拡がるように傾斜した傾斜部27aが形成されている。また、中間ヒンジピン41が差し込まれる穴27の入り口部分(具体的には、冷蔵室扉11の前方側の入り口部分)には、穴の入り口側へ向かって径が拡がるように傾斜した傾斜部27bが形成されている。
【0052】
図12では、右側のヒンジ補助部材81aの穴27の形状を図示しているが、左側のヒンジ補助部材81bの穴27も同様の形状を有している。ヒンジ補助部材81aおよび81bの各穴27に、このような傾斜部27aおよび27bが形成されていることで、冷蔵室扉11を前傾させた状態で、穴27を中間ヒンジピン41に差し込むことができる。これにより、冷蔵室扉11の上方部分が本体部10の上方部材33にぶつからずに冷蔵室扉を中間ヒンジピン41に差し込むことができる。その後は、冷蔵室扉11を垂直に立たせて、冷蔵室扉11を上方ヒンジピン31で支持固定する。このような手順で作業を行うことで、冷蔵室扉11の取付け作業がより行い易くなる。
【0053】
また、軸受け部40aおよび40bの支持部材44aおよび44bと、冷凍室扉12の扉上方部材23との間に空間Cが形成されている。これにより、冷蔵室扉11の取付け時に扉を傾斜させた場合にも、冷蔵室扉11の下端部が冷凍室扉12の上端部に当たることが避けられる。そして、中間ヒンジピン41が差し込まれる冷凍室扉12の穴28に、スペーサ部材43を差し込むことで、上記の空間Cを設けたことによる冷凍室扉12の上下方向のガタつきを抑えることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫1では、扉開閉機構のヒンジ部を構成する一部の部品を右側から左側(あるいは、左側から右側)へ付け替えることによって、各扉11および12の左右開きを変更することができる。この構成によれば、1台の冷蔵庫1には、各ヒンジピン31・41・61、ばね受け部材42・62、およびスペーサ部材43が、それぞれ一つずつ備えられていればよい。
【0055】
ばね受け部材42および62を扉の左右両側に同時につけた状態にすると、扉の開閉動作時に、開放側に位置するばね受け部材が動作の妨げになる可能性がある。これに対して、上記の構成によれば、扉の左右開きを変更する場合に、一組の部品を付け替えることで、扉の開放側には部品が存在しない状態にすることができる。したがって、扉の開閉動作をより円滑に行うことができる。そして、一組の部品を付け替えることで、非使用の部品がなくなり、非使用部品の保管や管理をしなくてもよい。
【0056】
(扉の開閉動作について)
続いて、冷蔵室扉11の開閉時のヒンジ部の動作を説明する。
図13には、冷蔵室扉11が閉じている状態における中間ヒンジピン41を含む中間のヒンジ部の構成を示す。
図14には、冷蔵室扉11が約30度開いている状態における中間ヒンジピン41を含む中間のヒンジ部の構成を示す。
図13および
図14では、説明の便宜上、一部の部品を透視した状態で示す。また、以下では、冷蔵室扉11が左側から開閉される場合を例に挙げて説明するが、冷蔵室扉11が右側から開閉される場合にも同様の動作が適用できる。
【0057】
冷蔵室扉11が閉じられるときには、扉と本体部10の間口部分との角度は徐々に狭まり、
図14に示すように、扉が約30度程度開いた状態となる。このとき、冷蔵室扉11の下面に設けられたヒンジ補助部材81aのばね部82の先端部分は、ばね受け部材42の第1棒状部42aへと近づく。ばね部82の下面には、突起83が形成されているため、ばね部82が第1棒状部42aと接触した当初は、扉の閉鎖動作に対して抵抗するような力が働く。
【0058】
しかし、使用者の手の動きなどによって、さらに冷蔵室扉11を閉じる方向への力が加えられると、可撓性を有するばね部82は、第1棒状部42aの上面の尾根形状Aに乗り上げる。ばね部82が一旦尾根形状Aに乗り上がると、その後は、尾根形状Aの下方への傾斜面に沿って、ばね部82には扉を閉じる方向への力が働く。これにより、冷蔵室扉11をよりスムーズに閉じることができる。また、この構成によれば、一旦閉じられた扉が再度本体部10から離れることが抑制されるため、冷蔵室扉11をより確実に閉じることができる。
【0059】
このように、ばね受け部材42は、ヒンジ補助部材81aのばね部82とともに、扉の自閉力が促進させる自閉性向上部材としての機能を果たす。
【0060】
冷蔵室扉11が開けられるときには、ヒンジ補助部材81aのばね部82は、上記とは逆の方向に動作する。これにより、使用者がある程度の力で冷蔵室扉11を開けることによってばね部82が一旦尾根形状Aに乗り上がった後は、尾根形状Aの下方への傾斜面に沿って、ばね部82には扉を開ける方向への力が働く。これにより、扉の開放動作をよりスムーズに行うことができる。
【0061】
なお、尾根形状Aの傾斜面を前後非対称としてもよい。この場合には、本体部10の間口側に対向する側に位置する傾斜面の勾配を、反対側の傾斜面の勾配よりも急とすることが好ましい。これにより、冷蔵室扉11が閉じられる際に、突起83が第1棒状部42aの尾根形状Aに乗り上がるのに必要な力を低減し、かつ、突起83が尾根形状Aに乗り上がった後は、扉を閉じる方向への力をより強く作用させることができる。
【0062】
以上の説明は、冷蔵室扉11が左側から開閉される場合であるが、冷蔵室扉11が右側から開閉される場合には、右側に付け替えられたばね受け部材42(またはばね受け部材62)の第2棒状部42bの上面の尾根形状Aの作用によって、扉の自閉力が促進される。すなわち、冷蔵室扉11を閉じる時、第2棒状部42bの上面の尾根形状Aが扉側に設けられたばね部82と作用することによって、扉の自閉力が促進される。
【0063】
このように、冷蔵室扉11が左側開きのときは、第1棒状部42aが扉の自閉力に影響を与える一方で第2棒状部42bの形状は影響せず、冷蔵室扉11が右側開きのときは第2棒状部42bが扉の自閉力に影響を与える一方で第1棒状部42aの形状は影響しない。そのため、例えば、各棒状部42aおよび42bに形成される尾根形状を上記のように非対称形状としても、互いに影響しない。
【0064】
なお、冷凍室扉12の開閉時には、ヒンジピン61を含む下方のヒンジ部が上記と同様の動作をする。すなわち、ばね受け部材62は、扉の自閉力が促進させる自閉性向上部材としての機能を果たす。
【0065】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫1は、本発明の一実施形態にかかる扉開閉機構を有している。扉開閉機構は、本体部10と、少なくとも一つの扉(すなわち、冷蔵室扉11、冷凍室扉12)と、ヒンジ部(すなわち、ヒンジピン41およびばね受け部材42、並びにヒンジピン61およびばね受け部材62)とを備えている。ヒンジ部は、本体部10の左側および右側に付け替え可能に構成されている。このヒンジ部は、軸部(すなわち、ヒンジピン41および61)と、扉の自閉力を促進させる自閉性向上部材(すなわち、ばね受け部材42および62)とを有している。
【0066】
自閉性向上部材は、本体部10の左側に取り付けられたときと、本体部10の右側に取り付けられたときとの間で、配置の仕方が変更されている。具体的には、左右付け替え時に水平方向に略90度回転させることによって、ばね受け部材42および62の配置の仕方が変更される(
図4および
図7参照)。なお、本実施形態では、ばね受け部材42を構成する2つの棒状部が、互いに約90度(略直角)の位置関係に延びているが、これに限らず、例えば、2つの棒状部が互いに60度など鋭角の位置関係としてもよく、または、互いに120度など鈍角の位置関係としてもよい。いずれの場合にも、自閉性向上部材が軸受け部からはみ出さず、かつ、自閉性向上部材として機能しない側の棒状部が扉の開閉動作に干渉しない形状および配置とすることが好ましい。
【0067】
この構成によれば、一つのばね受け部材42(あるいは、ばね受け部材62)を左右に付け替えることによって、左右何れの側から扉を開閉する場合であっても、扉を閉じる動作を行うときにより確実かつ容易に扉を閉じることができる。
【0068】
また、本実施形態にかかる冷蔵庫1では、上下方向に並んで配置された2つの扉(すなわち、冷蔵室扉11および冷凍室扉12)の両方に、扉の自閉力を促進させる自閉性向上部材が備えられている。そのため、上下どちらの扉に関しても、扉を閉じる動作を行うときにより確実かつ容易に扉を閉じることができる。
【0069】
具体的には、中間のヒンジ部を構成するばね受け部材42が、上方に位置する冷蔵室扉11の自閉性向上部材となり、下方のヒンジ部を構成するばね受け部材62が、上方に位置する冷凍室扉12の自閉性向上部材となる。また、中間のヒンジ部を構成する中間ヒンジピン41は、上下両方の扉(すなわち、冷蔵室扉11および冷凍室扉12)の枢支軸となる。
【0070】
なお、別の態様では、上下に隣接する扉のうち、いずれか一方のみを、左右開きを変更可能な構成の扉とし、他方の扉を引き出し式の扉としてもよい。例えば、上方の扉のみが左右開きを変更可能な構成の場合には、上方の扉のみに本発明の一実施態様にかかる扉開閉機構が備えられている。
【0071】
〔第2の実施形態〕
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、冷蔵室扉の扉開閉機構を構成するばね受け部材およびばね部の構成が、第1の実施形態とは異なっている。これ以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、本実施形態では、第1の実施形態とは異なる構成を中心に説明する。
【0072】
図15および
図16には、第2の実施形態にかかる冷蔵庫1の中間のヒンジ部周辺の構成を示す。
図15は、第1の実施形態における
図13と同様の状態を示す図である。
図16は、第1の実施形態における
図14と同様の状態を示す図である。
【0073】
第2の実施形態にかかる冷蔵庫1では、冷蔵室扉11に設けられたヒンジ補助部材181aおよび181bのばね部182の構成が、第1の実施形態とは異なっている。具体的には、ばね部182には、突起83が形成されていない点が第1の実施形態とは異なっている。
【0074】
また、第2の実施形態にかかる冷蔵庫1では、ばね受け部材142の構成が、第1の実施形態とは異なっている。
図17には、ばね受け部材142の外観を示す。
図17では、中間ヒンジピン41にばね受け部材142を取り付けた状態を示す。
【0075】
ばね受け部材142は、ピン挿入孔が形成されている基点部142’から延伸する2つの棒状部(第1棒状部142aおよび第2棒状部142b)を有している。第1棒状部142aと第2棒状部142bとは、基点部142’を基準にして、互いに約90度(略直角)の位置関係に延びている。
【0076】
第1棒状部142aと第2棒状部142bとの間には、中間部142cが設けられている。中間部142cには、下方へ向かって延びる固定ピン142dが形成されている。第1の実施形態と同様に、固定ピン142dは、軸受け部40aまたは40bの第2の穴48に差し込まれる。
【0077】
第1の実施形態で説明したばね受け部材42では、第1棒状部42aおよび第2棒状部42bの上面は、尾根形状Aを有している。そして、ばね部82(具体的には、突起83)とばね受け部材42(具体的には、尾根形状A)とは、上下方向に当接するような構成となっている。
【0078】
これに対して、第2の実施形態では、ばね部182とばね受け部材142とは、互いの先端部同士が水平方向に当接するような構成となっている(
図16参照)。使用者の手の動きなどによって、冷蔵室扉11を閉じる方向への力が加えられると、水平方向に可撓性を有するばね部182は、前方側へ撓みながら第1棒状部142a(右側開きの場合には第2棒状部142b)の先端部の後方側へ移動する。ばね部182が一旦第1棒状部142a(右側開きの場合には第2棒状部142b)の後方側へ移動すると、その後は、ばね部182が第1棒状部142a(右側開きの場合には第2棒状部142b)に噛みこむように動作するため、ばね部182には扉を閉じる方向への力が働く。これにより、冷蔵室扉11を確実に閉じることができる。
【0079】
また、上記の構成によれば、扉の開閉動作時に上下方向の移動が抑制される。したがって、第1の実施形態と比較して、上下方向に隣接して配置される各扉(すなわち、冷蔵室扉11および冷凍室扉12)間の上下方向のクリアランスを小さくすることができる。また、ばね部182が撓む方向が水平方向であるため、ばね部182の撓み量の制限が少ない。したがって、より強い自閉力、および、より広い範囲での自閉作用を働かせることができる。
【0080】
なお、図示はしていないが、ヒンジピン61を含む下方のヒンジ部を構成するばね部およびばね受け部材についても、上述のばね部182およびばね受け部材142と同様の構成が適用できる。
【0081】
〔第3の実施形態〕
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、冷蔵室扉の扉開閉機構を構成するばね受け部材の構成が、第1の実施形態とは異なっている。これ以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、本実施形態では、第1の実施形態とは異なる構成を中心に説明する。
【0082】
図18および
図19には、第3の実施形態にかかる冷蔵庫の本体部10の構成を示す。
図18は、冷蔵室扉11および冷凍室扉12が、ともに右側から開閉されるときの本体部10の構成を示す。
図19は、冷蔵室扉11および冷凍室扉12が、ともに左側から開閉されるときの本体部10の構成を示す。
【0083】
第1の実施形態と同様に、本体部10の仕切り部10aの間口部分には、ヒンジピン41が差し込まれる軸受け部40aおよび40bが設けられている。また、本体部10の下端部の間口部分には、ヒンジピン61が差し込まれる軸受け部60aおよび60bが設けられている。
【0084】
なお、第1の実施形態では、各軸受け部40aおよび40bの張り出し部46には、ばね受け部材42の固定ピン42dが差し込まれる第2の穴48が形成されている。これに対して、本実施形態にかかる冷蔵庫1では、各軸受け部40aおよび40bの張り出し部46には、ばね受け部材242の貫通孔244に挿入される凸部248が形成されている。これ以外の構成については、第1の実施形態の軸受け部40aおよび40bと同様の構成が適用できる。
【0085】
また、各軸受け部60aおよび60bの張り出し部66にも、同様の凸部268が形成されている。凸部268は、ばね受け部材262の貫通孔に挿入される。これ以外の構成については、第1の実施形態の軸受け部60aおよび60bと同様の構成が適用できる。
【0086】
また、第3の実施形態にかかる冷蔵庫1では、ばね受け部材242の構成が、第1の実施形態とは異なっている。
図21には、ばね受け部材242の外観を示す。
図21では、中間ヒンジピン41にばね受け部材242を取り付けた状態を示す。
【0087】
ばね受け部材242は、ピン挿入孔が形成されている基点部242’から延伸する、1つの棒状部242aを有している。棒状部242aの上面には、尾根状部242Aが形成されている。また、棒状部242aの下面には、尾根状部242Bが形成されている。
【0088】
また、棒状部242aの後方側には、支持部243が形成されている。支持部243には、貫通孔244が形成されている。ばね受け部材242を軸受け部40aまたは40bに取り付ける際には、この貫通孔244に軸受け部40aまたは40bの凸部248が挿入される。これにより、本体部10の軸受け部40aまたは40bに対して、中間ヒンジピン41およびばね受け部材242が固定される。
【0089】
上記の構成を有するばね受け部材242は、上面と下面とが対称となるように形成されており、左右両側の軸受け部40aおよび40bに取り付けることができる。例えば、冷蔵室扉11の開閉方向を左側開きから右側開きへ変更する場合には、右側の軸受け部40aに取り付けられた、中間ヒンジピン41およびばね受け部材242を、左側の軸受け部40bに付け替える。このとき、
図18および
図19に示すように、ばね受け部材242を上下方向に反転させる(鉛直方向に約180度回転させる)ことによって、ばね受け部材242の配置の仕方が変更される。
【0090】
本実施形態では、冷蔵室扉11が左側開きのときには、棒状部242aの尾根状部242Aが上方側に位置している(
図18参照)。これにより、棒状部242aの尾根状部242Aが扉側に設けられたばね部82と作用し、扉の自閉力を促進させる(
図20参照)。一方、冷蔵室扉11が右側開きのときには、棒状部242aの尾根状部242Bが上方側に位置している(
図19参照)。これにより、棒状部242aの尾根状部242Bが扉側に設けられたばね部82と作用し、扉の自閉力を促進させる。
【0091】
このようにして、1つのばね受け部材242を、左右両側のヒンジ部の自閉性向上部材として利用することができる。
【0092】
なお、本実施形態においても、ばね受け部材242を中間ヒンジピン41とは別部品とすることなく、両者が一体化された構成とすることもできる。この場合には、中間ヒンジピン41も上下対称の形状とすることが望ましい。そして、ばね受け部材242および中間ヒンジピン41を上下方向に反転させて、ばね受け部材242の配置の仕方を変更する。
【0093】
なお、ヒンジピン61を含む下方のヒンジ部を構成するばね受け部材262については、ばね受け部材242と同様の構成が適用できるため、詳しい説明は省略する。
【0094】
図22には、第3の実施形態の変形例を示す。この変形例では、ばね受け部材242の棒状部342aの構造が、上述の棒状部242aとは異なっている。この変形例では、棒状部342aの構造は、第2の実施形態で説明したばね受け部材142の第1棒状部142aと同様の形状を有している。
【0095】
そして、ばね部182とばね受け部材242の棒状部342aとは、互いの先端部同士が水平方向に当接するような構成となっている(
図22参照)。使用者の手の動きなどによって、冷蔵室扉11を閉じる方向への力が加えられると、水平方向に可撓性を有するばね部182は、前方側へ撓みながら棒状部342aの先端部の後方側へ移動する。ばね部182が一旦棒状部342aの後方側へ移動すると、その後は、ばね部182が棒状部342aに噛みこむように動作するため、ばね部182には扉を閉じる方向への力が働く。これにより、冷蔵室扉11を確実に閉じることができる。
【0096】
なお、変形例において、冷蔵室扉11の開閉方向を左側開きから右側開きへ変更する場合には、第3の実施形態と同様に、右側の軸受け部40aに取り付けられたばね受け部材242を上下方向に反転させ(鉛直方向に約180度回転させ)ればよい。
【0097】
〔第4の実施形態〕
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、スペーサ部材43の代わりに中間ヒンジピン441を空間保持部として利用する構成例について説明する。これ以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、本実施形態では、第1の実施形態とは異なる構成を中心に説明する。
【0098】
図23には、第4の実施形態にかかる冷蔵庫1の中間のヒンジ部周辺の断面構成を示す。本実施形態では、中間ヒンジピン441が冷蔵室扉11の下方側の枢支軸となる。本実施形態では、スペーサ部材43を介することなく、中間ヒンジピン441が、冷凍室扉12の扉上方部材23に形成された穴428に直接差し込まれる。
【0099】
中間ヒンジピン441は、上方部441aと、下方部441bとを有している。上方部441aは、冷蔵庫1の本体部10に取り付けられたときに上方側に位置し、冷蔵室扉11の下方側に設けられた穴27に差し込まれる。また、下方部441bは、冷蔵庫1の本体部10に取り付けられたときに下方側に位置し、冷凍室扉12の上方側に設けられた穴428に差し込まれる。
【0100】
図23と
図12とを比較すればわかるように、穴428の深さは、穴28の深さよりも浅くなっている。そして、中間ヒンジピン441の下方部441bの下部が穴428内に位置し、下方部441bの上部が冷凍室扉12の上面から上方に露出している。下方部441bの上部が上方に露出していることで、軸受け部40aおよび40bの支持部材44aおよび44bと、冷凍室扉12の扉上方部材23との間に空間Cが形成される。つまり、この下方部441bの露出部分は、上下に隣接して配置されている冷蔵室扉11と冷凍室扉12との空間を確保するためのスペーサとしての機能を果たしている。
【0101】
このようなスペーサ機能が設けられていることで、第1の実施形態のスペーサ部材43と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、スペーサ部材が不要となるため、より簡便に各扉11および12の左右開きを変更することができる。
【0102】
また、
図23に示すように、中間ヒンジピン441の下方部441bの径は、上方部441aの径よりも大きくしてもよい。冷凍室扉12の上方側に設けられた穴428の深さが浅くなる分、中間ヒンジピン441の下方部441bと穴428との係合部分の面積が小さくなるが、ヒンジピンおよび穴の径を大きくすることでこれを補償して、ヒンジ部の強度を確保することができる。また、中間ヒンジピン441の上方部441aと下方部441bとの径を変えることで、中間ヒンジピン441や中間ヒンジピンに一体に形成されたばね受け部材42が上下非対称である場合に、逆に挿すことを防止できる。
【0103】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1 :冷蔵庫
10 :本体部
11 :冷蔵室扉(扉)
12 :冷凍室扉(扉)
31 :上方ヒンジピン
40a :(右側の)軸受け部
40b :(左側の)軸受け部
41 :中間ヒンジピン(ヒンジ部、軸部)
42 :ばね受け部材(ヒンジ部、自閉性向上部材)
43 :スペーサ部材(空間保持部)
60a :(右側の)軸受け部
60b :(左側の)軸受け部
61 :下方ヒンジピン(ヒンジ部、軸部)
62 :ばね受け部材(ヒンジ部、自閉性向上部材)
142 :ばね受け部材(ヒンジ部、自閉性向上部材)
242 :ばね受け部材(ヒンジ部、自閉性向上部材)
441b:(中間ヒンジピンの)下方部(空間保持部)