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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】多能性幹細胞の除去剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/02 20060101AFI20240215BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20240215BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240215BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240215BHJP
   C07D 207/48 20060101ALN20240215BHJP
   C07D 403/12 20060101ALN20240215BHJP
   A61K 35/12 20150101ALN20240215BHJP
【FI】
C12N5/02
C12N5/0735
C12N5/10
C07K16/28
C07D207/48
C07D403/12
A61K35/12
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020572278
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005369
(87)【国際公開番号】W WO2020166613
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019023965
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 篤志
(72)【発明者】
【氏名】藤木 彩加
(72)【発明者】
【氏名】辻内 真紀子
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/072519(WO,A1)
【文献】特表平11-505211(JP,A)
【文献】特表2005-530717(JP,A)
【文献】特表2016-504355(JP,A)
【文献】国際公開第2004/026293(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/031615(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031614(WO,A1)
【文献】SHIOZAKI, M. et al,Circulation,2017年11月14日,2017, 136:A16234
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C07K 1/00- 19/00
C07D 207/00-207/50
C07D 401/00-421/14
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2-1):
【化1】

[式中、
mAbは、多能性幹細胞表面に発現する抗原を認識する抗体を表し、
qは1~20の整数を表し、
bは1~5の整数を表し、
Zは、式(Z-1)又は式(Z-2):
【化2】

(式中、
Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化3】

(式中、
Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化4】

で表される基を表す)
で表される基を表し、
fは1又は2を表し、
は、-(CH-COOHを表し、
uは1又は2を表す)
で表される基である]
で表される、抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【請求項2】
式(2-2):
【化5】

[式中、
mAbは、多能性幹細胞表面に発現する抗原を認識する抗体を表し、
qは1~20の整数を表し、
hは1~5の整数を表し、
Z”は、式(Z-5)、式(Z-6)、式(Z-7)、式(Z-8)又は式(Z-9):
【化6】

(式中、
Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化7】

(式中、
Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化8】

で表される基を表す)
で表される基を表し、
Yは、単結合又は式(Y-1):
【化9】

で表される基を表し、
式(Y-1)で表される基の*1末端は、アミン(b)と共に結合を形成することを表し、
Gは、単結合、*2-Gly-、*2-Gly-Gly-、*2-Lys-、*2-Lys-Phe-、*2-Lys-Val-、*2-Lys-Ala-、*2-Cit-Val-、*2-Cit-Phe-、*2-Cit-Leu-、*2-Arg-Phe-、*2-Cit-Ile-、*2-Cit-Trp-、*2-Lys-Phe-Phe-、*2-Lys-Phe-Ala-、*2-Lys-Phe-Gly-、*2-Asn-、*2-Asn-Ala-、*2-Asn-Ala-Ala-、*2-Asn-Ala-Thr-、*2-Asn-Ala-Pro-、*2-Asn-Ala-Val-、*2-Asn-Ala-Phe-、*2-Asn-Ala-Tyr-、*2-Asn-Ala-Leu-、*2-Asn-Ala-Gly-、*2-Asn-Thr-Ala-、*2-Asn-Thr-Pro-、*2-Asn-Thr-Thr-、*2-Gly-Phe-Gly-Gly-、*2-Gly-Leu-Phe-Gly-又は*2-Leu-Ala-Leu-Ala-を表し、
Gの*2末端はY又は-NH-と結合していることを表し、
fは1又は2を表し、
は、-(CH-COOHを表し、
uは1又は2を表す)
で表される基である]
で表される、抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【請求項3】
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Yが単結合であり
Gが単結合である、
請求項2に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【請求項4】
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Yが式(Y-1)で表される基であり,
Gが、*2-Cit-Val-、*2-Asn-Ala-、*2-Asn-Ala-Ala-、又は*2-Asn-Ala-Pro-である、
請求項2に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【請求項5】
Z”が、式(Z-7)、式(Z-8)又は式(Z-9)で表される基であり、
Gが、*2-Cit-Val-、*2-Asn-Ala-、*2-Asn-Ala-Ala-、又は*2-Asn-Ala-Pro-である、
請求項2に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【請求項6】
Wが、式(W-1)で表される基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【請求項7】
mAbが、抗CD30抗体、抗TRA1-60抗体、抗TRA1-81抗体、抗SSEA3抗体、抗SSEA4抗体、又は抗rBC2LCN抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【請求項8】
mAbが、抗CD30抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【請求項9】
qが1~8の整数である、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【請求項10】
以下の化合物から選択される化合物を放出する、請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【化10】
【請求項11】
以下の化合物から選択される化合物を放出する、請求項2に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【化11】
【請求項12】
以下の化合物から選択される化合物を放出する、請求項1又は2に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【化12】
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の殺傷剤。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の減少剤。
【請求項15】
多能性幹細胞が、ES細胞又はiPS細胞である、請求項1~12のいずれか一項に記載の多能性幹細胞の除去剤。
【請求項16】
多能性幹細胞が、iPS細胞である、請求項1~12のいずれか一項に記載の多能性幹細胞の除去剤。
【請求項17】
多能性幹細胞を含む培養液に、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を添加する工程を含む、多能性幹細胞の除去方法。
【請求項18】
多能性幹細胞を培養することによって製造される細胞塊を含む培養液に、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を添加する工程を含む、多能性幹細胞の除去方法。
【請求項19】
多能性幹細胞が、iPS細胞である、請求項17又は18に記載の除去方法。
【請求項20】
実質的にiPS細胞を含まないiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団を製造するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩の使用。
【請求項21】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩とiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、実質的にiPS細胞を含まないiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団の製造方法。
【請求項22】
以下の工程:
(1)iPS細胞を含む細胞集団を分化細胞へ分化誘導する工程;及び
(2)前記工程(1)で得られる分化細胞を含む細胞集団を、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩と接触させる工程;
を含む、実質的にiPS細胞を含まないiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多能性幹細胞の除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多能性幹細胞の一種である人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced pluripotent stem cell)は自己複製能と分化能を兼ね備える細胞であり、生体内にそのまま移植した場合、未分化状態のiPS細胞が混入されていると奇形腫(Teratoma)と呼ばれる腫瘍を形成する(非特許文献1)。奇形腫はいわゆる癌(悪性腫瘍)とは異なるものの、iPS細胞を出発材料とした細胞製品を開発する際、もし最終製品にiPS細胞が残存し、その細胞から奇形腫が形成されると、製品の安全性と有効性が損なわれる可能性がある。そこで、iPS細胞由来細胞製品を開発する際には、奇形腫形成能のある未分化状態のiPS細胞が製品中に存在しないことが極めて重要となる。
【0003】
現在ではiPS細胞を高感度に検出することが可能となっているものの、検出には技術的な限界があり、特に大量の細胞から構成される細胞製品の場合、微量のiPS細胞の存在を完全には否定できない場合がある。そこで製造面からのアプローチとして、製品の中間体又は最終製品についてiPS細胞を除去する処理を行うことで、微量のiPS細胞が存在する可能性を低減し、安全性を高めることを目的として、様々な手法が開発されている。例えば、細胞死を誘導する物質を用いてiPS細胞を除去する方法が挙げられる。
【0004】
iPS細胞に対して細胞死を誘導できる物質としては、例えば、iPS細胞を認識する糖蛋白と毒素との融合蛋白(非特許文献2)、iPS細胞を認識して細胞死を誘導する抗体(非特許文献3)、脂肪酸不飽和化を阻害する化合物(特許文献1、非特許文献4)、選択的にiPS細胞を認識して細胞死を誘導する抗体薬物複合体(非特許文献5)が知られている。しかしながら、そのような物質として本発明のヘミアスタリン誘導体及びその抗体薬物複合体は知られていない。iPS細胞認識糖蛋白と毒素との融合蛋白、iPS細胞の除去抗体は、平面培養している単層のiPS細胞に対しては効率よく作用するものの、分子量の大きい巨大分子であるという性質上、血管系を持たない細胞塊に添加した場合、細胞塊内部に浸透する効率は極めて悪いと考えられている。
【0005】
抗体薬物複合体は、標的認識分子として抗体を用い、これと薬物を直接的に、又は適切なリンカーを介して、結合させた複合体である。そして、抗体薬物複合体は、標的細胞に発現している抗原に結合する抗体を介して薬物を標的細胞へ送達することにより、細胞選択的に標的細胞を除去する特徴を持つ。
【0006】
例えば、抗CD30抗体にモノメチルオーリスタチンを結合したアドセトリスは、残留するiPS細胞を選択的に細胞死を誘導することが報告されている(特許文献2、非特許文献5)。
【0007】
抗体薬物複合体で、膜透過性を示す薬物は、バイスタンダー効果と呼ばれる、標的細胞周辺から薬物拡散が生じ、抗原非発現細胞にも細胞傷害を示す。例えば、アドセトリスは、バイスタンダー効果があることが報告されている(非特許文献6)。
【0008】
ヘミアスタリンは、海綿から単離される、トリペプチド構造を有する天然化合物であり、細胞中での微小管脱重合及び有糸分裂停止に関与している(非特許文献7)。
【0009】
これまでに、いくつかのグループが、ヘミアスタリン誘導体の構造修飾を行い、構造活性相関を報告している(特許文献3~7、非特許文献8~11)。そして、抗有糸分裂作用に基づく強力な細胞毒性(細胞傷害性)を示すヘミアスタリン誘導体が見いだされてきた。
【0010】
また、抗原発現細胞において細胞傷害活性を示す、ヘミアスタリン誘導体を含む抗体薬物複合体が報告されている(特許文献6、8~12)。
【0011】
さらに、他のいくつかのグループが、抗体のシステイン残基と薬物を直接的に結合させた抗体薬物複合体は、抗体の代謝によって、細胞内で、抗体薬物複合体のCys-薬物部分を放出することを報告している(非特許文献12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特表2015-525207号公報
【文献】国際公開第2016/072519号
【文献】国際公開第2004/026293号
【文献】国際公開第96/33211号
【文献】米国特許第7579323号
【文献】国際公開第2014/144871号
【文献】国際公開第2003/082268号
【文献】国際公開第2016/123582号
【文献】国際公開第2015/095952号
【文献】国際公開第2015/095953号
【文献】国際公開第2013/173393号
【文献】国際公開第2014/057436号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Pros One, 9, 1-11 (2014)
【文献】Stem Cell Reports, 4, 1-10 (2015)
【文献】Journal of Biological Chemistry, 290, 20071-20085 (2015)
【文献】Cell Stem Cell, 12, 167-179 (2013)
【文献】Sci. Rep., 8, 3726 (2018)
【文献】Clin. Cancer. Res., 16, 888-897 (2010)
【文献】Tetrahedron Lett., 35, 4453-4456 (1994)
【文献】Bioorg. Med. Chem. Lett., 14, 4353-4358 (2004)
【文献】J. Med. Chem., 47, 4774-4786 (2004)
【文献】Bioorg. Med. Chem. Lett., 14, 5317-5322 (2004)
【文献】J. Nat. Prod., 66, 183-199 (2003)
【文献】Bioconjugate Chem. 17, 114-124 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、抗体薬物複合体から生成する化合物が、多能性幹細胞に対して特異的に細胞傷害を与える一方で、分化細胞への細胞傷害は抑えられたヘミアスタリン誘導体を含む抗体薬物複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、式(1-1)、式(1-2)又は式(1-3)で表される化合物が、分化細胞への細胞毒性と比較して、iPS細胞に対して強い細胞傷害活性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0017】
[項1]
式(1-1):
【化1】
[式中、
bは1~5の整数を表し、
Zは、式(Z-1)又は式(Z-2):
【化2】
(式中、
Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化3】
(式中、
Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化4】
で表される基を表す)
で表される基を表し、
fは1又は2を表し、
は、-(CH-COOHを表し、
uは1又は2を表す)
で表される基である]
で表される化合物を放出する抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0018】
[項2]
式(1-2):
【化5】
[式中、
hは1~5の整数を表し、
Z’は、式(Z-3)又は式(Z-4):
【化6】
(式中、
Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化7】
(式中、
Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化8】
で表される基を表す)
で表される基である]
で表される化合物を放出する抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0019】
[項3]
式(1-3):
【化9】
[式中、
は、グルタミン酸残基(Glu)、アスパラギン酸残基(Asp)又はリシン残基(Lys)を表し、
のN末端窒素原子はカルボニル(a)と共にアミド結合を形成しており、
Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化10】
(式中、
Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化11】
で表される基を表す)
で表される基である]
で表される化合物を放出する抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0020】
[項4]
Wが、式(W-1)で表される基である、項1~3のいずれか一項に記載の化合物を放出する抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0021】
[項5]
以下の化合物から選択される、項1又は4に記載の化合物を放出する抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【化12】
【0022】
[項6]
以下の化合物から選択される、項2又は4に記載の化合物を放出する抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【化13】
【0023】
[項7]
以下の化合物から選択される、項3又は4に記載の化合物を放出する抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【化14】
【0024】
[項8]
式(2-1):
【化15】
[式中、
mAbは、多能性幹細胞表面に発現する抗原を認識する抗体を表し、
qは1~20の整数を表し、
bは1~5の整数を表し、
Zは、式(Z-1)又は式(Z-2):
【化16】
(式中、
Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化17】
(式中、
Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化18】
で表される基を表す)
で表される基を表し、
fは1又は2を表し、
は、-(CH-COOHを表し、
uは1又は2を表す)
で表される基である]
で表される、抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0025】
[項9]
式(2-2):
【化19】
[式中、
mAbは、多能性幹細胞表面に発現する抗原を認識する抗体を表し、
qは1~20の整数を表し、
hは1~5の整数を表し、
Z”は、式(Z-5)、式(Z-6)、式(Z-7)、式(Z-8)又は式(Z-9):
【化20】
(式中、
Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化21】
(式中、
Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化22】
で表される基を表す)
で表される基を表し、
Yは、単結合又は式(Y-1):
【化23】
で表される基を表し、
式(Y-1)で表される基の*1末端は、アミン(b)と共に結合を形成することを表し、
Gは、単結合、*2-Gly-、*2-Gly-Gly-、*2-Lys-、*2-Lys-Phe-、*2-Lys-Val-、*2-Lys-Ala-、*2-Cit-Val-、*2-Cit-Phe-、*2-Cit-Leu-、*2-Arg-Phe-、*2-Cit-Ile-、*2-Cit-Trp-、*2-Lys-Phe-Phe-、*2-Lys-Phe-Ala-、*2-Lys-Phe-Gly-、*2-Asn-、*2-Asn-Ala-、*2-Asn-Ala-Ala-、*2-Asn-Ala-Thr-、*2-Asn-Ala-Pro-、*2-Asn-Ala-Val-、*2-Asn-Ala-Phe-、*2-Asn-Ala-Tyr-、*2-Asn-Ala-Leu-、*2-Asn-Ala-Gly-、*2-Asn-Thr-Ala-、*2-Asn-Thr-Pro-、*2-Asn-Thr-Thr-、*2-Gly-Phe-Gly-Gly-、*2-Gly-Leu-Phe-Gly-又は*2-Leu-Ala-Leu-Ala-を表し、
Gの*2末端はY又は-NH-と結合していることを表し、
fは1又は2を表し、
は、-(CH-COOHを表し、
uは1又は2を表す)
で表される基である]
で表される、抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0026】
[項10]
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Yが単結合であり
Gが単結合である、
項9に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0027】
[項11]
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Yが式(Y-1)で表される基であり,
Gが、*2-Cit-Val-、*2-Asn-Ala-、*2-Asn-Ala-Ala-、又は*2-Asn-Ala-Pro-である、
項9に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0028】
[項12]
Z”が、式(Z-7)、式(Z-8)又は式(Z-9)で表される基であり、
Gが、*2-Cit-Val-、*2-Asn-Ala-、*2-Asn-Ala-Ala-、又は*2-Asn-Ala-Pro-である、
項9に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0029】
[項13]
Wが、式(W-1)で表される基である、項8~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0030】
[項14]
mAbが、抗CD30抗体、抗TRA1-60抗体、抗TRA1-81抗体、抗SSEA3抗体、抗SSEA4抗体、又は抗rBC2LCN抗体である、項8~13のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0031】
[項15]
mAbが、抗CD30抗体である、項8~13のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0032】
[項16]
qが1~8の整数である、項8~15のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0033】
[項17]
式(3-1):
【化24】
[式中、
bは1~5の整数を表し、
Zは、式(Z-1)又は式(Z-2):
【化25】
(式中、
Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化26】
(式中、
Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化27】
で表される基を表す)
で表される基を表し、
fは1又は2を表し、
は、-(CH-COOHを表し、
uは1又は2を表す)
で表される基である]
で表される化合物から製造される抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0034】
[項18]
式(3-2):
【化28】
[式中、
hは1~5の整数を表し、
Z”は、式(Z-5)、式(Z-6)、式(Z-7)、式(Z-8)又は式(Z-9):
【化29】
(式中、
Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化30】
(式中、
Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化31】
で表される基を表す)
で表される基を表し、
Yは、単結合又は式(Y-1):
【化32】
で表される基を表し、
式(Y-1)で表される基の*1末端は、アミン(b)と共に結合を形成することを表し、
Gは、単結合、*2-Gly-、*2-Gly-Gly-、*2-Lys-、*2-Lys-Phe-、*2-Lys-Val-、*2-Lys-Ala-、*2-Cit-Val-、*2-Cit-Phe-、*2-Cit-Leu-、*2-Arg-Phe-、*2-Cit-Ile-、*2-Cit-Trp-、*2-Lys-Phe-Phe-、*2-Lys-Phe-Ala-、*2-Lys-Phe-Gly-、*2-Asn-、*2-Asn-Ala-、*2-Asn-Ala-Ala-、*2-Asn-Ala-Thr-、*2-Asn-Ala-Pro-、*2-Asn-Ala-Val-、*2-Asn-Ala-Phe-、*2-Asn-Ala-Tyr-、*2-Asn-Ala-Leu-、*2-Asn-Ala-Gly-、*2-Asn-Thr-Ala-、*2-Asn-Thr-Pro-、*2-Asn-Thr-Thr-、*2-Gly-Phe-Gly-Gly-、*2-Gly-Leu-Phe-Gly-又は*2-Leu-Ala-Leu-Ala-を表し、
Gの*2末端はY又は-NH-と結合していることを表し、
fは1又は2を表し、
は、-(CH-COOHを表し、
uは1又は2を表す)
で表される基である]
で表される化合物から製造される抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0035】
[項19]
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Yが単結合であり
Gが単結合である、
項18に記載の化合物から製造される抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0036】
[項20]
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Yが式(Y-1)で表される基であり
Gが、*2-Cit-Val-、*2-Asn-Ala-、*2-Asn-Ala-Ala-、又は*2-Asn-Ala-Pro-である、
項18に記載の化合物から製造される抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0037】
[項21]
Z”が、式(Z-7)、式(Z-8)又は式(Z-9)で表される基であり、
Gが、*2-Cit-Val-、*2-Asn-Ala-、*2-Asn-Ala-Ala-、又は*2-Asn-Ala-Pro-である、
項18に記載の化合物から製造される抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0038】
[項22]
Wが、式(W-1)で表される基である、項17~21のいずれか一項に記載の化合物から製造される抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の除去剤。
【0039】
[項23]
項1~22のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の殺傷剤。
【0040】
[項24]
項1~22のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を含有する、多能性幹細胞の減少剤。
【0041】
[項25]
多能性幹細胞が、ES細胞又はiPS細胞である、項1~22のいずれか一項に記載の多能性幹細胞の除去剤。
【0042】
[項26]
多能性幹細胞が、iPS細胞である、項1~22のいずれか一項に記載の除去剤。
【0043】
[項27]
多能性幹細胞を含む培養液に、項1~22のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を添加する工程を含む、多能性幹細胞の除去方法。
【0044】
[項28]
多能性幹細胞を培養することによって製造される細胞塊を含む培養液に、項1~22のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩を添加する工程を含む、多能性幹細胞の除去方法。
【0045】
[項29]
多能性幹細胞が、iPS細胞である、項27又は28に記載の除去方法。
【0046】
[項30]
実質的にiPS細胞を含まないiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団を製造するための、項1~22のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩の使用。
【0047】
[項31]
項1~22のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩とiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団とを接触させる工程を含む、実質的にiPS細胞を含まないiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団の製造方法。
【0048】
[項32]
以下の工程:
(1)iPS細胞を含む細胞集団を分化細胞へ分化誘導する工程;及び
(2)前記工程(1)で得られる分化細胞を含む細胞集団を、項1~22のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体又はその塩と接触させる工程;
を含む、実質的にiPS細胞を含まないiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団の製造方法。
【0049】
[項33]
項31又は32に記載の製造方法により製造される、実質的にiPS細胞を含まないiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団。
【0050】
[項34]
分化細胞が移植用細胞である、項33に記載の細胞集団。
【0051】
[項35]
項33又は34に記載の細胞集団に含まれる分化細胞を有効成分として含有する医薬組成物。
【発明の効果】
【0052】
本発明の多能性幹細胞の除去剤は多能性幹細胞由来の細胞医薬品から多能性幹細胞を効率的に除去することができる。とりわけ、多能性幹細胞を培養することによって製造される分化細胞を含む細胞集団から、多能性幹細胞を選択的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】モノメチルオーリスタチン(MMAE)、ヘミアスタリン及び実施例1のブタチューブリンの重合阻害活性を示す図である。
図2】実施例ADC1及び実施例ADC23のiPS細胞に対する細胞傷害活性を示す図である。
図3】実施例ADC1及び実施例ADC23の分化細胞に対する細胞傷害活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本明細書において、「C1-6アルキル基」とは、炭素原子数が1~6の直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味する。「C1-6アルキル基」として、好ましくは「C1-4アルキル基」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルキル基」が挙げられ、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基が挙げられ、特に好ましくはメチル基又はエチル基が挙げられる。
【0055】
「C1-3アルキル基」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。「C1-4アルキル基」の具体例としては、例えば、「C1-3アルキル基」の具体例として挙げたものに加え、ブチル基、1、1-ジメチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基等が挙げられる。「C1-6アルキル基」の具体例としては、例えば、「C1-4アルキル基」の具体例として挙げたものに加え、ペンチル基、3-メチルブチル基、2-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0056】
本明細書において、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。好ましくはフッ素原子又は塩素原子が挙げられ、より好ましくはフッ素原子が挙げられる。
【0057】
<ヘミアスタリン誘導体>
式(1-1)、式(1-2)又は式(1-3)で表される化合物及びその塩(以下、「本発明のヘミアスタリン誘導体」と称することもある。)は、以下のとおりである。
【0058】
(1)式(1-1)で表される化合物及びその塩
本発明のヘミアスタリン誘導体のうち、下記の式(1-1)で表される化合物及びその塩について説明する。
【化33】
【0059】
式中、bは、1~5の整数を表す。すなわち、bは、1、2、3、4、又は5である。bの1態様としては、1~4の整数が挙げられ、別の1態様としては、1~3の整数が挙げられ、別の1態様としては、2又は3が挙げられる。
【0060】
式中、Zは、式(Z-1)又は式(Z-2):
【化34】
で表される基を表す。式(Z-1)において置換基Rが結合する炭素原子及び式(Z-2)においてカルボキシル基(-COOH)が結合する炭素原子の立体配置はS体であってもR体であってもよい。
【0061】
式(Z-1)において、Rは、-(CH-COOHを表す。ここで、uは、1又は2である。uの1態様としては、1が挙げられ、別の1態様としては、2が挙げられる。
【0062】
式(Z-2)において、fは、1又は2を表す。fの1態様としては、1が挙げられ、別の1態様としては、2が挙げられる。
【0063】
式(Z-1)又は式(Z-2)において、Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化35】
で表される基を表す。Wの1態様としては、式(W-1)で表される基が挙げられ、別の1態様としては、式(W-2)で表される基が挙げられる。
【0064】
式(W-1)において、Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化36】
で表される基を表す。Qの1態様としては、式(Q-1)で表される基が挙げられ、別の1態様としては、式(Q-2)で表される基が挙げられる。
【0065】
本明細書において、水素原子はHであっても、H(D)であってもよい。すなわち、例えば、式(1-1)で表される化合物の1つ又は2つ以上のHをH(D)に変換した重水素変換体も、式(1-1)で表される化合物に包含される。
【0066】
本発明のヘミアスタリン誘導体の1つの態様としては、以下の(1-1-A)が挙げられる。
(1-1-A)
式(1-1)において、
bが2、3又は4であり、
Zが、式(Z-1)又は式(Z-2)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)で表される基であり、
が、-(CH-COOHであり、
uが、1又は2の整数であり、
fが、1又は2の整数である、
化合物又はその塩。
【0067】
本発明のヘミアスタリン誘導体の1つの態様としては、以下の(1-1-B)が挙げられる。
(1-1-B)
式(1-1)において、
bが2、3又は4であり、
Zが、式(Z-1)又は式(Z-2)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-2)で表される基であり、
が、-(CH-COOHであり、
uが、1又は2の整数であり、
fが、1又は2の整数である、
化合物又はその塩。
【0068】
(2)式(1-2)で表される化合物及びその塩
本発明のヘミアスタリン誘導体のうち、下記の式(1-2)で表される化合物及びその塩について説明する。
【化37】
【0069】
式中、hは、1~5の整数を表す。すなわち、hは、1、2、3、4、又は5である。hの1態様としては、1~4の整数が挙げられ、別の1態様としては、1~3の整数が挙げられ、別の1態様としては、3が挙げられる。
【0070】
式中、Z’は、式(Z-3)又は式(Z-4):
【化38】
で表される基を表す。Z’の1態様としては、式(Z-3)で表される基が挙げられ、別の1態様としては、式(Z-4)が挙げられる。式(Z-3)及び式(Z-4)においてカルボキシル基(-COOH)が結合する炭素原子の立体配置はS体であってもR体であってもよい。
【0071】
式(Z-3)又は式(Z-4)において、Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化39】
で表される基を表す。Wの1態様としては、式(W-1)で表される基が挙げられ、別の1態様としては、式(W-2)で表される基が挙げられる。
【0072】
式(W-1)において、Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化40】
で表される基を表す。Qの1態様としては、式(Q-1)で表される基が挙げられ、別の1態様としては、式(Q-2)で表される基が挙げられる。
【0073】
本発明のヘミアスタリン誘導体の1つの態様としては、以下の(1-2-A)が挙げられる。
(1-2-A)
式(1-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z’が、式(Z-3)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0074】
本発明のヘミアスタリン誘導体の1つの態様としては、以下の(1-2-B)が挙げられる。
(1-2-B)
式(1-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z’が、式(Z-4)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0075】
(3)式(1-3)で表される化合物及びその塩
本発明のヘミアスタリン誘導体のうち、下記の式(1-3)で表される化合物及びその塩について説明する。
【化41】
【0076】
式中、Rは、グルタミン酸残基、アスパラギン酸残基又はリシン残基を表し、好ましくはグルタミン酸残基又はアスパラギン酸残基が挙げられる。本明細書において、特に区別する必要がある場合を除き、α-アミノ酸及び対応するアミノ酸残基の両方を表すのに、下記の3文字略語表記を用いることがある。また、α-アミノ酸の光学活性は、特に指定していない場合は、DL体、D体又はL体のいずれをも含み得るものとする。例えば、「グルタミン酸」又は「Glu」は、DL-グルタミン酸若しくはその残基、D-グルタミン酸若しくはその残基、又はL-グルタミン酸若しくはその残基を表している。
Asp…アスパラギン酸、Glu…グルタミン酸、Lys…リシン
【0077】
のN末端窒素原子はカルボニル基(a)と共にアミド結合を形成している。「RのN末端窒素原子はカルボニル(a)と共にアミド結合を形成している」とは、例えば、RがAspである場合、Aspの窒素原子(b)とカルボニル基(a)が、下式で表すようにアミド結合を形成して連結していることを意味する。
【化42】
【0078】
式中、Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化43】
で表される基を表す。Wの1態様としては、式(W-1)で表される基が挙げられ、別の1態様としては、式(W-2)で表される基が挙げられる。
【0079】
式(W-1)において、Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化44】
で表される基を表す。Qの1態様としては、式(Q-1)で表される基が挙げられ、別の1態様としては、式(Q-2)で表される基が挙げられる。
【0080】
本発明のヘミアスタリン誘導体の1つの態様としては、以下の(1-3-A)が挙げられる。
(1-3-A)
式(1-3)において、
が、グルタミン酸残基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0081】
本発明のヘミアスタリン誘導体の1つの態様としては、以下の(1-3-B)が挙げられる。
(1-3-B)
式(1-3)において、
が、アスパラギン酸残基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0082】
本発明のヘミアスタリン誘導体の1つの態様としては、以下の(1-3-C)が挙げられる。
(1-3-C)
式(1-3)において、
が、リシン残基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0083】
<抗体薬物複合体>
式(2-1)又は式(2-2)で表される抗体薬物複合体又はその塩(以下、「本発明の抗体薬物複合体」と称することもある。)は、以下に示すように、抗体分子由来の抗体部分と薬物分子由来の薬物部分が共有結合している複合体である。本明細書において、「抗体薬物複合体」を「ADC」という場合もある。
【化45】
【0084】
本発明の抗体薬物複合体は、Z又はZ”で表されるヘミアスタリン由来の骨格を有する化合物が、スクシンイミド構造を有するリンカーを介して抗体と結合している。本発明の抗体薬物複合体の薬物部分は、本発明のヘミアスタリン誘導体の構造の一部又は全体を有しており、抗体薬物複合体の抗体以外の構造を指す。抗体薬物複合体は、代謝されることによって薬物部分由来の化合物を放出するが、放出される化合物は薬物部分の一部又は全体であってもよい。すなわち、放出される化合物は、本発明のヘミアスタリン誘導体であっても、その部分構造であるヘミアスタリン由来の骨格を有する化合物であってもよい。本明細書において、抗体薬物複合体から放出される上記化合物を、「薬物部分由来の化合物」という場合もある。
【0085】
式中、qは、抗体薬物複合体分子における、薬物抗体比(Drug Antibody Ratio、又はDARともいう。)を示す。薬物抗体比qは、抗体薬物複合体1分子において、抗体分子1つ当たりの、すなわち、抗体薬物複合体1分子当たりの、薬物分子の数を意味する。なお、化学合成により得られる抗体薬物複合体は、異なる薬物抗体比qを有し得る複数の抗体薬物複合体分子の混合物である場合が多い。本明細書において、このような抗体薬物複合体の混合物における全体の薬物抗体比(すなわち、それぞれの抗体薬物複合体の薬物抗体比qの平均値)を、「平均薬物抗体比」又は「平均DAR」と呼ぶ。
【0086】
qは、1~20の整数を表す。すなわち、qは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。qの1態様としては、1~10の整数が挙げられ、別の1態様としては、11~20の整数が挙げられ、別の1態様としては、1~8の整数が挙げられ、別の1態様としては、4~8の整数が挙げられ、別の1態様としては、8が挙げられる。
【0087】
平均DARの1態様としては、1~20が挙げられ、別の1態様としては、1~10が挙げられ、別の1態様としては、10~20が挙げられる。別の1態様としては、1~8、1~2、2~3、3~4、4~5、6~7、7~8、8~9、9~10、5~15が挙げられる。平均DARは、紫外可視近赤外分光法、SDS-PAGE、質量分析、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)等の、平均DARの決定に通常用いられる方法によって決定することができる。疎水性相互作用カラムクロマトフィー(HIC)HPLC、逆相HPLC、電気泳動等の方法により、異なるDARを有する複数の抗体薬物複合体の混合物から、特定のDARの抗体薬物複合体の分離、精製及び特性決定を行うことができる
【0088】
mAbは「抗体」を示す。ここで、「抗体」は、少なくとも重鎖の可変ドメイン及び軽鎖の可変ドメインを含む抗体であればよく、完全抗体であっても、完全抗体の断片であって抗原認識部位を有する抗原結合断片であってもよい。完全抗体は、2つの全長の軽鎖と2つの全長の重鎖とを有し、それぞれの軽鎖と重鎖とはジスルフィド結合によって連結されている。完全抗体は、IgA、IgD、IgE、IgM及びIgGを含み、IgGは、サブタイプとして、IgG、IgG、IgG及びIgGを含む。また、抗体はモノクローナル抗体であることが好ましい。抗体部分と薬物部分とは、抗体中のジスルフィド結合が還元されて得られるスルフヒドリル基を介して結合している。
【0089】
本明細書において、抗体及びmAbは、多能性幹細胞、具体的にはES細胞又はiPS細胞の表面に発現する抗原を認識する抗体であることが望ましい。多能性幹細胞の表面に存在する抗原は、分化細胞で発現されない又は発現量の少ない、多能性幹細胞に特異的な抗原であることが好ましい。例えば、多能性幹細胞に発現する量が、分化細胞で発現する量の10倍以上、好ましくは100倍以上、更に好ましくは1000倍以上である抗原を選択することができる。ES細胞又はiPS細胞等の多能性幹細胞の表面に発現する抗原としては、例えば、CD30、TRA1-60、TRA1-81、SSEA3、SSEA4、rBC2LCN等が挙げられるが、これらに限定されない。mAbの1態様としては、抗CD30抗体、抗TRA1-60抗体、抗TRA1-81抗体、抗SSEA3抗体、抗SSEA4抗体、又は抗rBC2LCN抗体が挙げられ、別の1態様としては、抗CD30抗体が挙げられる。
【0090】
抗CD30抗体としては、例えば、ブレンツキシマブ、イラツムマブ等が挙げられる。また、抗TRA1-60抗体、抗TRA1-81抗体、抗SSEA3抗体、抗SSEA4抗体、及び抗rBC2LCN抗体は市販品を利用することができる。
【0091】
本発明の抗体薬物複合体の抗体部分は、ES細胞又はiPS細胞等の多能性幹細胞の細胞表面に発現している抗原に対する抗体であればよい。mAbの1態様としては、ブレンツキシマブ、又はイラツムマブが挙げられ、好ましくはブレンツキシマブが挙げられる。ここに具体的に挙げられた抗体は、市販品を利用することができるか、又は公知の方法によって製造することができる。
【0092】
本発明の抗体薬物複合体の抗体部分は、ES細胞又はiPS細胞等の多能性幹細胞の細胞表面に発現している抗原に対する抗体であればよい。mAbとして、例えば、抗CD30抗体、抗TRA1-60抗体、抗TRA1-81抗体、抗SSEA3抗体、抗SSEA4抗体、又は抗rBC2LCN抗体が挙げられる。mAbの別の1態様として、抗CD30抗体が挙げられる。
【0093】
式(2-1)における、Z及びbは、式(1-1)におけるこれらの符号と同義である。
【0094】
式(2-2)における、Z”は、式(Z-5)、式(Z-6)、式(Z-7)、式(Z-8)又は式(Z-9):
【化46】
で表される基を表す。
【0095】
式中、Gは、単結合、*-Gly-、*-Gly-Gly-、*-Lys-、*2-Lys-Phe-、*-Lys-Val-、*-Lys-Ala-、*-Cit-Val-、*-Cit-Phe-、*-Cit-Leu-、*-Arg-Phe-、*-Cit-Ile-、*-Cit-Trp-、*-Lys-Phe-Phe-、*-Lys-Phe-Ala-、*-Lys-Phe-Gly-、*-Asn-、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Thr-、*-Asn-Ala-Pro-、*-Asn-Ala-Val-、*-Asn-Ala-Phe-、*-Asn-Ala-Tyr-、*-Asn-Ala-Leu-、*-Asn-Ala-Gly-、*-Asn-Thr-Ala-、*-Asn-Thr-Pro-、*-Asn-Thr-Thr-、*-Gly-Phe-Gly-Gly-、*-Gly-Leu-Phe-Gly-又は*-Leu-Ala-Leu-Ala-であり、Gの*末端はY又は-NH-と結合していることを表す。Gの1態様としては、単結合、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Pro-又は*-Cit-Val-が挙げられ、別の1態様としては、単結合が挙げられ、別の1態様としては、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Pro-又は*-Cit-Val-が挙げられ、好ましくは、*-Cit-Val-が挙げられる。
【0096】
式中、Yは、単結合又は式(Y-1):
【化47】
で表される基を表す。Yの1態様としては、単結合が挙げられ、別の1態様としては、式(Y-1)で表される基が挙げられる。
【0097】
式(Y-1)中の*1末端は、アミン(b)と共に結合を形成している。
【0098】
式(Z-5)、式(Z-6)、式(Z-8)又は式(Z-9)中、Wは、式(W-1)又は式(W-2):
【化48】
で表される基を表す。Wの1態様としては、式(W-1)で表される基が挙げられ、別の1態様としては、式(W-2)で表される基が挙げられる。
【0099】
式(W-1)及び式(Z-7)において、Qは、式(Q-1)又は式(Q-2):
【化49】
で表される基を表す。Qの1態様としては、式(Q-1)で表される基が挙げられ、別の1態様としては、式(Q-2)で表される基が挙げられる。
【0100】
式(Z-7)及び式(Z-9)において、fは、1又は2を表す。fの1態様としては、1が挙げられ、別の1態様としては、2が挙げられる。
【0101】
式(Z-8)において、Rは、-(CH-COOHを表す。ここで、uは、1又は2である。
【0102】
式中、Gが、*-Gly-、*-Gly-Gly-、*-Lys-、*2-Lys-Phe-、*-Lys-Val-、*-Lys-Ala-、*-Cit-Val-、*-Cit-Phe-、*-Cit-Leu-、*-Arg-Phe-、*-Cit-Ile-、*-Cit-Trp-、*-Lys-Phe-Phe-、*-Lys-Phe-Ala-、*-Lys-Phe-Gly-、*-Asn-、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Thr-、*-Asn-Ala-Pro-、*-Asn-Ala-Val-、*-Asn-Ala-Phe-、*-Asn-Ala-Tyr-、*-Asn-Ala-Leu-、*-Asn-Ala-Gly-、*-Asn-Thr-Ala-、*-Asn-Thr-Pro-、*-Asn-Thr-Thr-、*-Gly-Phe-Gly-Gly-、*-Gly-Leu-Phe-Gly-又は*-Leu-Ala-Leu-Ala-であり、Yが式(Y-1)で表される、本発明の抗体薬物複合体は、生体内において、まず式(Z-5)及び式(Z-6)におけるY-G間の結合、又は式(Z-7)、式(Z-8)及び式(Z-9)における-NH-G間の結合において切断され、次いで、薬物とYの間の結合において切断されることにより、式(1-1)、式(1-2)又は式(1-3)で表されるヘミアスタリン誘導体を放出すると推定される。
【0103】
G-Y結合又はG-NH結合は、細胞内環境中(例えば、リソソーム、エンドソーム又はカベオラ(caveolea)内)に存在する、細胞内ペプチダーゼ、プロテアーゼ(例えば、リソソームプロテアーゼ又はエンドソームプロテアーゼ)等によって切断される。
【0104】
細胞内環境中に存在するプロテアーゼとしては、例えば、カテプシンBが知られている。カテプシンBによるG-Y結合又はG-NH結合の切断については、Dubowchik G.M.,et.al,1998,Bioorg.Med.Chem.Lett.,8:3341-3346等に記載されている。カテプシンBにより切断されるY-Gの具体例としては、例えば、Y-Lys-Phe、Y-Lys-Val、Y-Lys-Ala、Y-Lys-Phe-Phe、Y-Lys-Phe-Ala、Y-Lys-Phe-Gly、Y-Lys、Y-Cit-Val、Y-Cit-Phe、Y-Cit-Leu、Y-Cit-Ile、Y-Cit-Trp、Y-Arg-Phe等が挙げられる。
【0105】
細胞内環境中に存在する他のプロテアーゼとしては、例えば、アスパラギンエンドペプチダーゼが知られている。アスパラギンエンドペプチダーゼによるG-Y結合又はG-NH結合の切断については、Dando M.P.,et.al,1999,Biochem.J.339:743-749等に記載されている。アスパラギンエンドペプチダーゼにより切断されるG-Y結合又はG-NH結合の具体例としては、例えば、Y-Asn-Ala-Ala、Y-Asn-Ala-Thr、Y-Asn-Ala-Val、Y-Asn-Ala-Pro、Y-Asn-Ala-Phe、Y-Asn-Ala-Tyr、Y-Asn-Ala-Leu、Y-Asn-Ala-Gly等が挙げられる。
【0106】
細胞内環境中において、Gが、*-Gly-、*-Gly-Gly-、*-Lys-、*2-Lys-Phe-、*-Lys-Val-、*-Lys-Ala-、*-Cit-Val-、*-Cit-Phe-、*-Cit-Leu-、*-Arg-Phe-、*-Cit-Ile-、*-Cit-Trp-、*-Lys-Phe-Phe-、*-Lys-Phe-Ala-、*-Lys-Phe-Gly-、*-Asn-、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Thr-、*-Asn-Ala-Pro-、*-Asn-Ala-Val-、*-Asn-Ala-Phe-、*-Asn-Ala-Tyr-、*-Asn-Ala-Leu-、*-Asn-Ala-Gly-、*-Asn-Thr-Ala-、*-Asn-Thr-Pro-、*-Asn-Thr-Thr-、*-Gly-Phe-Gly-Gly-、*-Gly-Leu-Phe-Gly-又は*-Leu-Ala-Leu-Ala-であり、Gの*末端が式(Y-1)で表される基又は-NH-と結合している、本発明の抗体薬物複合体から、薬物が放出される推定機構を、Z”が式(Z-7)である式(2-2)で例示する。これらの薬物放出機構は、Toki et. al.,2002,J.Org.Chem.67,1866-1872.等に記載されている抗体薬物複合体の薬物放出機構から推定されたものである。
【化50】
【0107】
本発明の抗体薬物複合体は、ES細胞又はiPS細胞等の多能性幹細胞に取り込まれた後、細胞内で抗体が代謝され、薬物部分由来の化合物、又は抗体の一部(抗体断片)と薬物部分を含む構造に相当する化合物が放出されうる。例えば、Doronina S.O.ら、2006,Bioconjugate Chem.17:114-124では、抗体の代謝によって、細胞内で、抗体薬物複合体のCys-薬物部分が放出されることが記載されている。本発明の抗体薬物複合体において、同様のメカニズムで放出されるCysが結合した薬物部分としては、式(1-1)又は式(1-2)で表される化合物が挙げられる。
【0108】
本明細書において、「化合物を放出する」とは、抗体薬物複合体が、細胞内において抗体部分のプロテアーゼによる代謝を受けることによって、薬物部分由来の化合物を細胞内に放出することを意味する。放出された化合物は細胞内で薬理活性、すなわち細胞障害活性を示し、細胞死を誘導する。「化合物を放出する抗体薬物複合体」とは、細胞内において抗体部分の代謝を受けることによって薬物部分由来の化合物を放出することのできる抗体薬物複合体を意味する。
【0109】
前記化合物を放出する抗体薬物複合体は、適宜当業者に周知の技術で設計し、製造することができる。例えば、Antibody-Drug Conjugates(Laurent Ducry編集、Humana Press刊行、2013年)では、抗体と薬物をつなぐリンカーやその結合形式が記載されており、そのように設計し、製造された抗体薬物複合体が、化学的反応又は酵素的反応によって、目的とする化合物を放出することが記載されている。
【0110】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-1-A)が挙げられる。
(2-1-A)
式(2-1)において、
mAbが、iPS細胞表面に発現する抗原を認識する抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
bが2、3、4又は5であり、
Zが、式(Z-1)又は式(Z-2)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基であり、
fが、1又は2を表し、
が、-(CH-COOHを表し、
uが1又は2である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0111】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-1-B)が挙げられる。
(2-1-B)
式(2-1)において、
mAbが、抗CD30抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
bが2、3、4又は5であり、
Zが、式(Z-1)又は式(Z-2)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基であり、
fが、1又は2を表し、
が、-(CH-COOHを表し、
uが1又は2である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0112】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-2-A)が挙げられる。
(2-2-A)
式(2-2)において、
mAbが、iPS細胞表面に発現する抗原を認識する抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Gが、単結合であり、
Yが、単結合であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0113】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-2-B)が挙げられる。
(2-2-B)
式(2-2)において、
mAbが、抗CD30抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Gが、単結合であり、
Yが、単結合であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0114】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-2-C)が挙げられる。
(2-2-C)
式(2-2)において、
mAbが、iPS細胞表面に発現する抗原を認識する抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Gが、*-Cit-Val-であり、
が、G末端とYと結合していることを表し、
Yが、式(Y-1)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0115】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-2-D)が挙げられる。
(2-2-D)
式(2-2)において、
mAbが、抗CD30抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Gが、*-Cit-Val-であり、
が、G末端とYと結合していることを表し、
Yが、式(Y-1)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0116】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-2-E)が挙げられる。
(2-2-E)
式(2-2)において、
mAbが、iPS細胞表面に発現する抗原を認識する抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-7)で表される基であり、
Gが、*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基であり、
fが、1又は2である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0117】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-2-F)が挙げられる。
(2-2-F)
式(2-2)において、
mAbが、抗CD30抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-7)で表される基であり、
Gが、*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基であり、
fが、1又は2である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0118】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-2-G)が挙げられる。
(2-2-G)
式(2-2)において、
mAbが、iPS細胞表面に発現する抗原を認識する抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-8)で表される基であり、
Gが、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Pro-又は*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し、
が、-(CH-COOHを表し、
uが1又は2を表し、
Wが、式(W-1)で表される基であり
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0119】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-2-H)が挙げられる。
(2-2-H)
式(2-2)において、
mAbが、抗CD30抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-8)で表される基であり、
Gが、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Pro-又は*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し、
が、-(CH-COOHを表し、
uが1又は2を表し、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0120】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-2-I)が挙げられる。
(2-2-I)
式(2-2)において、
mAbが、iPS細胞表面に発現する抗原を認識する抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-9)で表される基であり、
Gが、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Pro-又は*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し、
fが、1又は2であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0121】
本発明の抗体薬物複合体の1つの態様としては、以下の(2-2-J)が挙げられる。
(2-2-J)
式(2-2)において、
mAbが、抗CD30抗体であり、
qが、1~8の整数であり、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-9)で表される基であり、
Gが、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Pro-又は*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し、
fが、1又は2であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)又は式(Q-2)で表される基である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0122】
<ADC中間体>
本発明の抗体薬物複合体を合成するための合成中間体(以下、「本発明のADC中間体」ともいう)は、下記式(3-1)又は式(3-2)で表される、化合物又はその塩である。
【0123】
(1)式(3-1)で表される化合物及びその塩
本発明のADC中間体のうち、下記の式(3-1)で表される化合物及びその塩について説明する。
【化51】
【0124】
式(3-1)における、Z及びbは、式(2-1)におけるこれらの符号と同義である。
【0125】
(2)式(3-2)で表される化合物及びその塩
本発明のADC中間体のうち、下記の式(3-2)で表される化合物及びその塩について説明する。
【化52】
【0126】
式(3-2)における、Z”及びhは、式(2-2)におけるこれらの符号と同義である。
【0127】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-1-A)が挙げられる。
(3-1-A)
式(3-1)において、
bが2、3、4又は5であり、
Zが、式(Z-1)又は式(Z-2)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)で表される基であり、
fが、1又は2を表し、
が、-(CH-COOHを表し、
uが1又は2である、
化合物又はその塩。
【0128】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-1-B)が挙げられる。
(3-1-B)
式(3-1)において、
bが2、3、4又は5であり、
Zが、式(Z-1)又は式(Z-2)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-2)で表される基であり、
fが、1又は2を表し、
が、-(CH-COOHを表し、
uが1又は2である、
化合物又はその塩。
【0129】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-2-A)が挙げられる。
(3-2-A)
式(3-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Gが、単結合であり、
Yが、単結合であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0130】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-2-B)が挙げられる。
(3-2-B)
式(3-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Gが、単結合であり、
Yが、単結合であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-2)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0131】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-2-C)が挙げられる。
(3-2-C)
式(3-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Gが、*-Cit-Val-であり、
が、G末端とYと結合していることを表し、
Yが、式(Y-1)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-1)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0132】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-2-D)が挙げられる。
(3-2-D)
式(3-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-5)又は式(Z-6)で表される基であり、
Gが、*-Cit-Val-であり、
が、G末端とYと結合していることを表し、
Yが、式(Y-1)で表される基であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-2)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0133】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-2-E)が挙げられる。
(3-2-E)
式(3-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-7)で表される基であり、
Gが、*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し、
Qが、式(Q-1)で表される基であり、
fが、1又は2である、
化合物又はその塩。
【0134】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-2-F)が挙げられる。
(3-2-F)
式(3-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-7)で表される基であり、
Gが、*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し、
Qが、式(Q-2)で表される基であり、
fが、1又は2である、
化合物又はその塩。
【0135】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-2-G)が挙げられる。
(3-2-G)
式(3-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-8)で表される基であり、
Gが、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Pro-又は*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し
が、-(CH-COOHを表し、
uが1又は2を表し、
Wが、式(W-1)で表される基であり
Qが、式(Q-1)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0136】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-2-H)が挙げられる。
(3-2-H)
式(3-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-8)で表される基であり、
Gが、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Pro-又は*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し
が、-(CH-COOHを表し、
uが1又は2を表し、
Wが、式(W-1)で表される基であり
Qが、式(Q-2)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0137】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-2-I)が挙げられる。
(3-2-I)
式(3-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-9)で表される基であり、
Gが、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Pro-又は*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し、
fが、1又は2であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり
Qが、式(Q-1)で表される基である、
化合物又はその塩。
【0138】
本発明のADC中間体の1つの態様としては、以下の(3-2-J)が挙げられる。
(3-2-J)
式(3-2)において、
hが2、3、4又は5であり、
Z”が、式(Z-9)で表される基であり、
Gが、*-Asn-Ala-、*-Asn-Ala-Ala-、*-Asn-Ala-Pro-又は*-Cit-Val-であり、
が、G末端と-NH-と結合していることを表し、
fが、1又は2であり、
Wが、式(W-1)で表される基であり、
Qが、式(Q-2)で表される基である、
抗体薬物複合体又はその塩。
【0139】
「塩」は、本発明のヘミアスタリン誘導体の好適な塩及び医薬品原料として許容しうる塩であり、好ましくは慣用の無毒性塩である。「塩」としては、例えば、有機酸塩(例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ギ酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩等)及び無機酸塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩又はリン酸塩等)のような酸付加塩、アミノ酸(例えばアルギニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸等)との塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩又はカリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩等)等の金属塩、アンモニウム塩、又は有機塩基塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩又はN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等)等の他、適当な塩を当業者が適宜選択することができる。
【0140】
一般に、抗体薬物複合体の作製及び解析は、当業者に公知の任意の技術によって行うことができる。このような方法としては、例えば、Antibody-Drug Conjugates(Laurent Ducry編集、Humana Press刊行、2013年)等に記載の方法が挙げられる。
【0141】
本発明の抗体薬物複合体は、例えば、抗体中のジスルフィド結合をスルフヒドリル基に還元し、このスルフヒドリル基を、ADC中間体と反応させることによって形成することができる。
【0142】
本発明ヘミアスタリン誘導体、抗体薬物複合体又はADC中間体の塩を取得したいとき、目的の化合物が塩の形で得られる場合には、それをそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、それを適当な有機溶媒又は緩衝液に溶解若しくは懸濁させ、酸又は塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
【0143】
本発明のヘミアスタリン誘導体、抗体薬物複合体及びADC中間体は、水和物及び/又は各種溶媒との溶媒和物(エタノール和物等)の形で存在することもあり、これらの水和物及び/又は溶媒和物も本発明のヘミアスタリン誘導体、抗体薬物複合体及びADC中間体に含まれる。さらに、本発明には、本発明のヘミアスタリン誘導体、抗体薬物複合体及びADC中間体のあらゆる様態の結晶形も含まれる。
【0144】
本発明のヘミアスタリン誘導体、抗体薬物複合体及びADC中間体の中には、光学活性中心に基づく光学異性体、分子内回転の束縛により生じた軸性又は面性キラリティーに基づくアトロプ異性体、その他のあらゆる立体異性体、互変異性体、及び幾何異性体等が存在し得るものがあるが、これらを含め、全ての可能な異性体は本発明の範囲に包含される。
【0145】
特に、光学異性体やアトロプ異性体は、ラセミ体として得ることができ、また光学活性の出発原料や中間体が用いられた場合には光学活性体として得ることができる。必要であれば、下記製造法の適切な段階で、対応する原料、中間体又は最終品のラセミ体を、光学活性カラムを用いた方法、分別結晶化法等の、公知の分離方法によって、物理的に又は化学的に光学対掌体に光学分割することができる。具体的には、例えばジアステレオマー法では、光学活性分割剤を用いる反応によってラセミ体から2種のジアステレオマーを形成する。この異なるジアステレオマーは一般に物理的性質が異なるため、分別結晶化等の公知の方法によって光学分割することができる。
【0146】
本発明のヘミアスタリン誘導体の製造方法について以下に述べる。式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(3-1)又は式(3-2)で表される本発明のヘミアスタリン誘導体は、例えば、下記の製造法A~Lにより製造することができる。
【0147】
製造法A
Zが式(Z-1)で表される基であり、Wが式(W-1)で表される基であり、Qが式(Q-1)で表される基である場合、式(1-1)又は式(3-1)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化53】
(式中、u及びbは、項1又は項17に定義されるとおりであり、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、C1-6アルキル基又はベンジル基を表し、Pはアミノ基の保護基を意味する。)
【0148】
上記Pで表されるアミノ基の保護基としては、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, PeterG. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載の保護基等を使用できる。上記Pで表されるアミノ基の保護基としては、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, PeterG. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載の保護基等を使用できる。
【0149】
化合物a1は、例えば、J. Med. Chem., 2007, 50, 4329-4339等に記載されている方法により製造できるか、又は市販品として購入できる。化合物a15は、例えば、Tetrahedron Lett., 1997, 38, 317-320等に記載されている方法により製造できるか、又は市販品として購入できる。
【0150】
[A-1工程]
化合物a2は、化合物a1を、適当な塩基存在下、適当な溶媒中で、種々のメチル化試薬を反応させることにより製造することができる。メチル化試薬としては、例えば、ハロゲン化メチル等が挙げられ、好ましくはヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチル等が挙げられる。塩基としては、好ましくはカリウムヘキサメチルジシラジドが挙げられる。溶媒としては、好ましくはテトラヒドロフランが挙げられる。反応時間は、通常5分~48時間であり、好ましくは10分~2時間である。反応温度は、通常-78℃~100℃であり、好ましくは-78℃~10℃である。本工程は、J. Nat. Prod. 2003, 66, 183-199等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0151】
[A-2工程]
化合物a3は、化合物a2より、上記A-1工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0152】
[A-3工程]
化合物a4は、化合物a3を、適当な溶媒中で、適当な還元剤と反応させることにより製造することができる。還元剤としては、通常の有機合成反応に用いられる還元剤から適宜選択されるが、好ましくは水素化ジイソブチルアルミニウムが挙げられる。溶媒としては、好ましくはジエチルエーテルが挙げられる。反応時間は、通常5分~48時間であり、好ましくは10分~24時間である。反応温度は、通常-78℃~100℃であり、好ましくは-78℃~50℃である。本工程は、J. Nat. Prod. 2003, 66, 183-199等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0153】
[A-4工程]
化合物a5は、化合物a4を、適当な溶媒中、適当な酸化剤を用いて酸化することにより製造することができる。酸化剤としては、通常の有機合成反応に用いられる酸化剤から適宜選択することができるが、好ましくは過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウムが挙げられる。溶媒としては、好ましくはジクロロメタンが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常-78℃~100℃であり、好ましくは、-78℃~50℃である。本工程は、J. Nat. Prod. 2003, 66, 183-199等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0154】
[A-5工程]
化合物a6は、化合物a5のアルデヒドを、適当な溶媒中、α-アミノシアノ化することにより製造することができる。溶媒としては、好ましくはトルエン及びジクロロメタンが挙げられる。反応時間は、通常5分~96時間であり、好ましくは24時間~72時間である。反応温度は、通常0℃~200℃であり、好ましくは0℃~100℃である。本工程は、Org. Lett. 2002, 4, 695-697等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0155】
[A-6工程]
化合物a7は、化合物a6を、適当な塩基存在下又は非存在下、適当な溶媒中で、適当な酸化剤を用いて製造することができる。酸化剤としては、通常の有機合成反応で用いられる酸化剤から適宜選択することができるが、好ましくは過酸化水素が挙げられる。塩基としては、好ましくは炭酸カリウムが挙げられる。溶媒としては、好ましくはメタノールが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常0℃~200℃であり、好ましくは0℃~60℃である。本工程は、J. Org. Chem. 2001, 66, 7355-7364等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0156】
[A-7工程]
化合物a8は、化合物a7を、適当な溶媒中、適当な触媒存在下で、還元剤を用いて還元することにより製造することができる。還元剤としては、通常の有機合成反応で用いられる還元剤から適宜選択することができるが、好ましくは水素、ギ酸アンモニウム等のギ酸の塩又はヒドラジンが挙げられる。触媒としては、パラジウム、ニッケル、ロジウム、コバルト、白金等の遷移金属、その塩若しくはその錯体又は上記遷移金属をポリマー等の担体に担持させたものが挙げられる。溶媒としては、好ましくはエタノール又はメタノールが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常0℃~200℃であり、好ましくは0℃~100℃である。本工程は、J. Org. Chem. 2001, 66, 7355-7364等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0157】
[A-8工程]
化合物a9は、化合物a8のアミノ基を保護基Pで保護することにより製造することができる。本工程は、Protective Groups in Organic Synthesis(TheodoraW. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0158】
[A-9工程]
化合物a11は、化合物a9と種々のアシル化試薬(例えば、化合物a10)を、適当な塩基存在下又は非存在下、適当な溶媒中で、反応させることにより製造することができる。アシル化試薬としては、例えば、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物等が挙げられ、好ましくはジ-tertブチルジカルボネートが挙げられる。塩基としては、好ましくはジイソプロピルエチルアミンが挙げられる。溶媒としては、好ましくはクロロホルムが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常0℃~200℃であり、好ましくは0℃~50℃である。
【0159】
[A-10工程]
化合物a12は、化合物a11を、適当な溶媒中、適当なアルカリ金属アルコキシド類と反応させることにより製造することができる。アルカリ金属アルコキシド類としては、通常の有機合成反応で用いられるアルカリ金属アルコキシド類から適宜選択することができるが、好ましくはリチウムメトキシド又はリチウムエトキシドが挙げられる。溶媒としては、好ましくはメタノール又はエタノールが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~6時間である。反応温度は、通常-78℃~200℃であり、好ましくは-78℃~50℃である。
【0160】
[A-11工程]
化合物a13は、化合物a12に、適当な塩基存在下、適当な溶媒中で、種々のメチル化試薬を反応させることにより製造することができる。メチル化試薬としては、例えば、ハロゲン化メチル等が挙げられ、好ましくはヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチル等が挙げられる。塩基としては、好ましくは水素化ナトリウムが挙げられる。溶媒としては、好ましくはテトラヒドロフランが挙げられる。反応時間は、通常5分~48時間であり、好ましくは10分~2時間である。反応温度は、通常-78℃~100℃であり、好ましくは-78℃~10℃である。
【0161】
[A-12工程]
化合物a14は、化合物a13のエステルを、適当な塩基存在下、適当な溶媒中で、加水分解することにより製造できる。塩基としては、好ましくは水酸化リチウムが挙げられる。溶媒としては、好ましくは水又はメタノールが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常0℃~200℃、好ましくは0℃~100℃である。
【0162】
[A-13工程]
化合物a16は、化合物a14と化合物a15を、適当な溶媒中、適当な塩基存在下で、種々の縮合剤を用いて、縮合することにより製造することができる。縮合剤としては、通常の有機合成反応に用いられる種々の縮合剤を使用することができるが、好ましくは(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド又はブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。また、必要に応じて、縮合反応の効率を向上させるために、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等のカルボニル活性化試薬を共に用いることができる。塩基としては、好ましくはジイソプロピルエチルアミンが挙げられる。溶媒としては、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常-78℃~200℃であり、好ましくは0℃~100℃である。本工程は、Tetrahedron Lett., 1997, 38, 317-320等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0163】
[A-14工程]
化合物a17は、化合物a16のエステルを、上記A-12工程に記載の方法に準じて加水分解することにより、製造することができる。本工程は、Tetrahedron Lett., 1997, 38, 317-320等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0164】
[A-15工程]
化合物a18は、化合物a17とN-ヒドロキシスクシンイミドを、適当な溶媒中、適当な塩基存在下で、種々の縮合剤を用いて反応させることにより製造することができる。縮合剤としては、通常の有機合成反応に用いられる種々の縮合剤を使用することができるが、好ましくは(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド又はブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。また、必要に応じて、反応の効率を向上させるために、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等のカルボニル活性化試薬を共に用いることができる。塩基としては、好ましくはジイソプロピルエチルアミンが挙げられる。溶媒としては、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常-78℃~200℃であり、好ましくは0℃~100℃である。
【0165】
[A-16工程]
化合物a19は、化合物a18を、適当な塩基存在下、適当な溶媒中で、アミノ酸のエステル体と反応させることにより製造することができる。塩基としては、好ましくはジイソプロピルエチルアミンが挙げられる。溶媒としては、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常0℃~200℃であり、好ましくは0℃~100℃である。
【0166】
[A-17工程]
化合物a20は、化合物a19とアミノアルキルマレイミド化合物を、上記A-13工程に記載の方法に準じて縮合することにより、製造することができる。
【0167】
[A-18工程]
化合物A1は、化合物a20のアミノ基の保護基Pの脱保護及びエステル(-COOR)の加水分解により製造することができる。本工程は、Protective Groups in Organic Synthesis(TheodoraW. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0168】
[A-19工程]
化合物A2は、化合物A1とシステインを、適当な溶媒中で反応させることで製造することができる。溶媒としては、好ましくは水、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常0℃~約200℃であり、好ましくは0℃~40℃である。
【0169】
製造法B
Zが式(Z-1)で表される基であり、Wが式(W-1)で表される基であり、Qが式(Q-2)で表される基である場合、式(1-1)又は式(3-1)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化54】
(式中、u又はbは、項1又は項17に定義されるとおりであり、R、R及びRは、C1-6アルキル基又はベンジル基を表し、Pはアミノ基の保護基を意味する。)
【0170】
化合物b1は、例えば、市販品として購入できる。化合物b11は、例えば、Tetrahedron Lett., 1997, 38, 317-320等に記載されている方法により製造できるか、又は市販品として購入できる。
【0171】
[B-1工程]
化合物b2は、化合物b1に、種々のルイス酸存在下、ベンゼンを反応させることにより製造することができる。ルイス酸としては、例えば、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化鉄、ハロゲン化チタン等が挙げられ、好ましくは塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。反応時間は、通常5分~48時間であり、好ましくは30分~4時間である。反応温度は、通常-78℃~200℃であり、好ましくは50℃~150℃である。本工程は、J. Nat. Prod. 2003, 66, 183-199等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0172】
[B-2工程]
化合物b3は、化合物b2を、適当な塩基存在下、適当な溶媒中で、種々のカルボン酸ハロゲン化物と反応させた後、アルカリ金属化4-アルキル-2-オキサゾリジノンを反応させることにより製造することができる。塩基としては、好ましくはトリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンが挙げられる。溶媒としては、好ましくはテトラヒドロフランが挙げられる。カルボン酸ハロゲン化物としては、例えば、カルボン酸塩化物等が挙げられ、好ましくはピバロイルクロライド等が挙げられる。アルカリ金属化4-アルキル-2-オキサゾリジノンとしては、4-アルキル-2-オキサゾリジノンリチウム、4-アルキル-2-オキサゾリジノンナトリウム等が挙げられ、好ましくは4-イソプロピル-2-オキサゾリジノンリチウムが挙げられる。反応時間は、通常5分~48時間であり、好ましくは10分~24時間である。反応温度は、通常-78℃~100℃であり、好ましくは-78℃~50℃である。本工程は、J. Nat. Prod. 2003, 66, 183-199等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0173】
[B-3工程]
化合物b4は、化合物b3を、適当な塩基存在下、適当な溶媒中で、種々のアジド化試薬と反応させることにより製造することができる。アジド化試薬としては、例えば、アジ化ナトリウム、トリメチルシリルアジド、ジフェニルリン酸アジド等が挙げられ、好ましくはトリメチルシリルアジドが挙げられる。塩基としては、好ましくはカリウムヘキサメチルジシラジドが挙げられる。溶媒としては、好ましくはテトラヒドロフランが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常-78℃~200℃であり、好ましくは-78℃~75℃である。本工程は、J. Nat. Prod. 2003, 66, 183-199等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0174】
[B-4工程]
化合物b5は、化合物b4より、上記A-7工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0175】
[B-5工程]
化合物b6は、化合物b5より、上記A-8工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0176】
[B-6工程]
化合物b7は、化合物b6を、適当な塩基存在下、適当な溶媒中で、適当な酸化剤を用いることにより製造することができる。塩基としては、好ましくは水酸化リチウムが挙げられる。溶媒としては、好ましくはメタノール、テトラヒドロフラン又は水が挙げられる。酸化剤としては、通常の有機合成反応で用いられる酸化剤から適宜選択することができるが、好ましくは過酸化水素が挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常0℃~200℃であり、好ましくは0℃~60℃である。本工程は、J. Nat. Prod. 2003, 66, 183-199等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0177】
[B-7工程]
化合物b8は、化合物b7に、適当な塩基存在下、適当な溶媒中で、種々のアルキル化試薬を反応させることにより製造することができる。アルキル化試薬としては、例えば、ハロゲン化アルキル等が挙げられ、好ましくはヨウ化アルキル、臭化アルキル、塩化アルキル等が挙げられる。塩基としては、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられる。溶媒としては、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。反応時間は、通常5分~48時間であり、好ましくは10分~2時間である。反応温度は、通常-78℃~100℃であり、好ましくは-10℃~25℃である。本工程は、Protective Groups in Organic Synthesis(TheodoraW. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0178】
[B-8工程]
化合物b9は、化合物b8より、上記A-11工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0179】
[B-9工程]
化合物b10は、化合物b9より、上記A-12工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0180】
[B-10工程]
化合物b12は、化合物b10と化合物b11より、上記A-13工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0181】
[B-11工程]
化合物b13は、化合物b12のエステルを、上記A-12工程に記載の方法に準じて加水分解することにより、製造することができる。
【0182】
[B-12工程]
化合物b14は、化合物b13より、上記A-15工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0183】
[B-13工程]
化合物b15は、化合物b14より、上記A-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0184】
[B-14工程]
化合物b16は、化合物b15より、上記A-17工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0185】
[B-15工程]
化合物B1は、化合物b16より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0186】
[B-16工程]
化合物B2は、化合物B1より、上記A-19工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0187】
製造法C
Zが式(Z-2)で表される基であり、Wが式(W-1)で表される基である場合、式(1-1)又は式(3-1)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化55】
(式中、Q、f及びbは、項1又は項17に定義されるとおりであり、R及びPは上記と同義である。)
【0188】
化合物c1は、製造法Aの化合物a18、製造法Bの化合物b14を表す。
【0189】
[C-1工程]
化合物c2は、化合物c1より、上記A-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0190】
[C-2工程]
化合物c3は、化合物c2より、上記A-17工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0191】
[C-3工程]
化合物C1は、化合物c3より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0192】
[C-4工程]
化合物C2は、化合物c4より、上記A-19工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0193】
製造法D
がリシン(Lys)残基であり、Z”が式(Z-3)又は式(Z-5)で表される基であり、Yが単結合であり、Gが単結合であり、Wが式(W-1)で表される基である場合、式(1-2)、式(1-3)又は式(3-2)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化56】
(式中、Q及びhは、項2、項3又は項18に定義されるとおりであり、R及びPはび上記と同義であり、Pはアミノ基の保護基を意味する。)
【0194】
化合物d1は、製造法Aの化合物a18、製造法Bの化合物b14を表す。化合物d3は、例えば、市販品として購入できる。
【0195】
[D-1工程]
化合物d2は、化合物d1より、上記A-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0196】
[D-2工程]
化合物D1は、化合物d2より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0197】
[D-3工程]
化合物D2は、化合物D1と化合物d3より、上記A-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0198】
[D-4工程]
化合物D3は、化合物D2より、上記A-19工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0199】
製造法E
がリシン(Lys)残基であり、Z”が式(Z-4)又は式(Z-6)で表される基であり、Yが単結合であり、Gが単結合であり、Wが式(W-1)で表される基である場合、式(1-2)、式(1-3)又は式(3-2)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化57】
(式中、Q及びhは、項2、項3又は項18に定義されるとおりであり、R、P及びPは上記と同義である。)
【0200】
化合物e1は、製造法Aの化合物a18、製造法Bの化合物b14を表す。化合物e3は、例えば、市販品として購入できる。
【0201】
[E-1工程]
化合物e2は、化合物e1より、上記A-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0202】
[E-2工程]
化合物E1は、化合物e2より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0203】
[E-3工程]
化合物E2は、化合物E1と化合物e3より、上記A-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0204】
[E-4工程]
化合物E3は、化合物E2より、上記A-19工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0205】
製造法F
がアスパラギン酸(Asp)残基又はグルタミン酸(Glu)残基であり、Wが式(W-1)で表される基である場合、式(1-3)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化58】
(式中、Qは、項3に定義されるとおりであり、sは1又は2を表し、Pは上記と同義である。)
【0206】
化合物f1は、製造法Aの化合物a18、製造法Bの化合物b14を表す。
【0207】
[F-1工程]
化合物f2は、化合物f1より、上記A-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0208】
[F-2工程]
化合物F1は、化合物f2より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0209】
製造法G
Z”が式(Z-7)で表される基であり、Wが式(W-1)で表される基であり、Gがアミノ酸又はペプチドで表される基である場合、式(3-2)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化59】
(式中、Q、f、G及びhは、項18に記載される通りであり、R、R及びPは、上記と同義である。)
【0210】
化合物g1は、例えば、市販品として購入できる。化合物g4は、例えば、J. Nat. Prod. 2003, 66, 183-199、J. Med. Chem., 2004, 47, 4774-4786等に記載されている方法により製造できるか、又は市販品として購入できる。化合物g7は、例えば、Tetrahedron Lett., 1997, 38, 317-320等に記載されている方法により製造できるか、又は市販品として購入できる。
【0211】
[G-1工程]
化合物g2は、化合物g1とG基の原料となるアミノ酸又はペプチドとを、適当な溶媒中、適当な塩基存在下で、種々の縮合剤を用いて、縮合することにより製造することができる。縮合剤としては、通常の有機合成反応に用いられる種々の縮合剤を使用することができるが、好ましくは1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)が挙げられる。また、必要に応じて、縮合反応の効率を向上させるために、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等のカルボニル活性化試薬を共に用いることができる。塩基としては、好ましくはジイソプロピルエチルアミンが挙げられる。溶媒としては、好ましくはジクロロメタンが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常-78℃~200℃であり、好ましくは0℃~50℃である。本工程は、Bioconjugate Chem. 2002, 13, 855-869等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0212】
[G-2工程]
化合物g3は、化合物g2に、適当な塩基存在下、適当な溶媒中で、種々のp-ニトロフェニル炭酸エステル化試薬を反応させることにより製造することができる。p-ニトロフェニル炭酸エステル化試薬としては、例えば、クロロギ酸4-ニトロフェニル、ビス(4-ニトロフェニル)カルボナート等が挙げられ、好ましくはビス(4-ニトロフェニル)カルボナートが挙げられる。塩基としては、好ましくはN,N-ジイソプロピルエチルアミンが挙げられる。溶媒としては、好ましくはテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは1時間~24時間である。反応温度は、通常-78℃~200℃であり、好ましくは10℃~50℃である。本工程は、Bioconjugate Chem. 2002, 13, 855-869やBioconjugate Chem. 2015, 26, 650-659等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0213】
[G-3工程]
化合物g5は、化合物g3と化合物g4とを、適当な塩基存在下、適当な溶媒中で、反応させることにより製造することができる。また、必要に応じて、縮合反応の効率を向上させるために、1-ヒドロキシ-7-ベンゾトリアゾール等のカルボニル活性化試薬を共に用いることができる。塩基としては、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,6-ルチジンが挙げられる。溶媒としては、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは1時間~24時間である。反応温度は、通常-78℃~200℃であり、好ましくは10℃~50℃である。本工程は、Bioconjugate Chem. 2002, 13, 855-869やBioconjugate Chem. 2015, 26, 650-659等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0214】
[G-4工程]
化合物g6は、化合物g5のエステルを、上記A-12工程に記載の方法に準じて加水分解することにより、製造することができる。
【0215】
[G-5工程]
化合物g8は、化合物g6と化合物g7より、上記A-13工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0216】
[G-6工程]
化合物g9は、化合物g8のエステルを、上記A-12工程に記載の方法に準じて加水分解することにより製造することができる。
【0217】
[G-7工程]
化合物g10は、化合物g9より、上記A-15工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0218】
[G-8工程]
化合物g11は、化合物g10より、上記A-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0219】
[G-9工程]
化合物g12は、化合物g11より、上記A-17工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0220】
[G-10工程]
化合物G1は、化合物g12より、上記A-13工程又はA-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0221】
製造法H
Z”が式(Z-8)で表される基であり、Gがアミノ酸又はペプチドで表される基である場合、式(3-2)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化60】
(式中、W、R、u、G及びhは、項18に記載される通りであり、R、P及びPは、上記と同義である。)
【0222】
化合物h1は、製造法Gの化合物g2を表す。
【0223】
[H-1工程]
化合物h2は、化合物h1とグルタミン酸誘導体又はアスパラギン酸誘導体を、適当なスルホニル化試薬及びイミダゾール類存在下、適当な溶媒中で、縮合反応させることにより製造することができる。スルホニル化試薬としては、例えば、メチルスルホニルクロリドやp-トルエンスルホニルクロリド等が挙げられ、好ましくはp-トルエンスルホニルクロリドが挙げられる。イミダゾール類としては、イミダゾールや1-メチルイミダゾール等が挙げられ、好ましくは1-メチルイミダゾールが挙げられる。溶媒としては、好ましくはアセトニトリルが挙げられる。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常-78℃~200℃であり、好ましくは0℃~50℃である。
【0224】
[H-2工程]
化合物h3は、化合物h2より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0225】
[H-3工程]
化合物h4は、化合物h3より、上記A-13工程又はA-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0226】
[H-4工程]
化合物h5は、化合物h4より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0227】
[H-5工程]
化合物H1は、化合物h5より、上記A-13工程又はA-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0228】
製造法I
Z”が式(Z-9)で表される基であり、Gがアミノ酸又はペプチドで表される基である場合、式(3-2)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化61】
(式中、W、f、G及びhは、項18に記載される通りであり、R、P及びPは、上記と同義である。)
【0229】
化合物i1は、製造法Gの化合物g2を表す。
【0230】
[I-1工程]
化合物i2は、化合物i1より、上記H-1工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0231】
[I-2工程]
化合物i3は、化合物i2より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0232】
[I-3工程]
化合物i4は、化合物i3より、上記A-13工程又はA-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0233】
[I-4工程]
化合物i5は、化合物i4より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0234】
[I-5工程]
化合物I1は、化合物i5より、上記A-13工程又はA-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0235】
製造法J
Z”が式(Z-5)で表される基であり、Yが式(Y-1)で表される基であり、Gがアミノ酸又はペプチドで表される基である場合、式(3-2)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化62】
(式中、W、G及びhは、項18に記載される通りであり、Pは、上記と同義である。)
【0236】
化合物j1は、製造法Dの化合物D1又は製造法Lの化合物L5を表す。化合物j2は、製造法Gの化合物g3を表す。化合物j5は、例えば、市販品として購入できる。
【0237】
[J-1工程]
化合物j3は、化合物j1と化合物j2より、上記G-3工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0238】
[J-2工程]
化合物j4は、化合物j3より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0239】
[J-3工程]
化合物J1は、化合物j4と化合物j5より、上記A-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0240】
製造法K
Z”が式(Z-6)で表される基であり、Yが式(Y-1)で表される基であり、Gがアミノ酸又はペプチドで表される基である場合、式(3-2)で表される化合物は、例えば、下記の製法によって製造することができる。
【化63】
(式中、W、G及びhは、項18に記載される通りであり、Pは、上記と同義である。)
【0241】
化合物k1は、製造法Dの化合物D1又は製造法Lの化合物L5を表す。化合物k2は、製造法Gの化合物g3を表す。化合物k5は、例えば、市販品として購入できる。
【0242】
[K-1工程]
化合物k3は、化合物k1と化合物k2より、上記G-3工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0243】
[K-2工程]
化合物k4は、化合物k3より、上記A-18工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0244】
[K-3工程]
化合物K1は、化合物k4と化合物k5より、上記A-16工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0245】
製造法L
化合物l6は、Wが式(W-2)で表される基であり、Zが式(Z-1)又は式(Z-2)で表される基であり、Z'が式(Z-3)又は式(Z-4)で表される基であり、Z”が式(Z-5)、式(Z-6)、式(Z-8)又は式(Z-9)で表される基である場合、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(3-1)又は(3-2)で表される化合物L1、L2、L3、L4又はL5の製造中間体である。化合物l6は、例えば、下記の製法によって製造することができる。また、化合物L1、L2、L3、L4又はL5は、化合物l6より、製造法AのA-16工程からA-19工程に記載の製造法に準じて、製造することができる。
【化64】
(式中、R、b及びhは項1、項2、項3、項17又は項18に定義されるとおりであり、RはC1-6アルキル基を表す。)
【0246】
化合物l1は、例えば、市販品として購入できる。化合物l3は、例えば、Tetrahedron Lett., 1997, 38, 317-320等に記載されている方法により製造できるか、又は市販品として購入できる。
【0247】
[L-1工程]
化合物l2は、例えば、国際公開第2003/082268号等に記載されている方法に準じて製造することができる。
【0248】
[L-2工程]
化合物l4は、化合物l2と化合物l3より、上記A-13工程に記載されている方法に準じて製造することができる。
【0249】
[L-3工程]
化合物l5は、化合物l4より、上記A-14工程に記載されている方法に準じて製造することができる。
【0250】
[L-4工程]
化合物l6は、化合物l5より、上記A-15工程に準じて製造することができる。
【0251】
式(2-1)又は式(2-2)で表される本発明の抗体薬物複合体は、例えば、下記の製造法M又は製造法Nにより製造することができる。
【0252】
製造法M
【化65】
(式中、mAb、q、b及びZは、項8と同義であり、mAb’は、ジスルフィド結合が還元されたmAbを表し、qqは1~20の整数を表す。)
【0253】
[M-1工程]
化合物m2は、化合物m1を、適当なジスルフィド還元剤と、適当な緩衝液中で、反応させることにより製造することができる。ジスルフィド還元剤としては、例えば、ジチオトレイトール、メルカプトエタノール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン等が挙げられ、好ましくはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンが挙げられる。緩衝液としては、Tris-HCl、PBS、HEPES、酢酸系緩衝液、ホウ酸系緩衝液、リン酸系緩衝液、炭酸系緩衝液が挙げられ、好ましくは、Tris-HClやPBSが挙げられる。反応時のpHは、通常2~12であり、好ましくは4~9である。反応時間は、通常5分~24時間であり、好ましくは5分~5時間である。反応温度は、通常-10℃~50℃であり、好ましくは0℃~40℃である。
【0254】
[M-2工程]
化合物M1は、化合物m2と化合物m3を、適当な緩衝液中で、反応させることにより製造することができる。緩衝液としては、Tris-HCl、PBS、HEPES、酢酸系緩衝液、ホウ酸系緩衝液、リン酸系緩衝液、炭酸系緩衝液が挙げられ、好ましくは、Tris-HClやPBSが挙げられる。反応時のpHは、通常2~12であり、好ましくは4~9である。反応時間は、通常5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。反応温度は、通常-78℃~200℃であり、好ましくは0℃~25℃である。
【0255】
製造法N
【化66】
(式中、mAb、q、h及びZ”は、項9と同義であり、mAb’は、ジスルフィド結合が還元されたmAbを表し、qqは1~20の整数を表す。)
【0256】
[N-1工程]
化合物n2は、化合物n1より、上記M-1工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0257】
[N-2工程]
化合物N1は、化合物n2と化合物n3より、上記M-2工程に記載の方法に準じて製造することができる。
【0258】
上記に本発明のヘミアスタリン誘導体及び抗体薬物複合体の製造法を示している。しかし、これら以外の方法であっても、例えば、当業者に公知の方法を適宜組み合わせることによっても、本発明のヘミアスタリン誘導体及び抗体薬物複合体を製造することができる。
【0259】
上記の各製造法の各工程において使用される適当な塩基は、反応や原料化合物の種類等によって適宜選択されるべきであるが、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等の重炭酸アルカリ類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ類;水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド類;ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等の有機金属塩基類;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等の有機塩基類等が挙げられる。
【0260】
上記の各製造法の各工程において使用される適当な溶媒は、反応や原料化合物の種類等によって適時選択されるべきであるが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルケトン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;アセトニトリル等のニトリル類;蒸留水等が挙げられ、これらの溶媒は単独又は2種類以上を混合して用いることができる。また、反応の種類によっては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類を溶媒として用いてもよい。
【0261】
本発明のヘミアスタリン誘導体及び抗体薬物複合体は、当業者に公知の方法で分離、精製することができる。例えば、抽出、分配、再沈殿、カラムクロマトグラフィー(例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー若しくは分取液体クロマトグラフィー)又は再結晶等が挙げられる。
【0262】
再結晶溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;ヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジメチルホルムアミドアセトニトリル等の非プロトン系溶媒;水;又はこれらの混合溶媒等を用いることができる。
【0263】
その他の精製方法としては、実験化学講座(日本化学会編、丸善)1巻等に記載されている方法等を用いることができる。また、本発明のヘミアスタリン誘導体及び抗体薬物複合体の分子構造の決定は、それぞれの原料化合物に由来する構造を参照して、核磁気共鳴法、赤外吸収法、円二色性スペクトル分析法等の分光学的手法、又は質量分析法により容易に行える。
【0264】
また、上記製造方法における中間体又は最終生成物は、その官能基を適宜変換すること、また特に、アミノ基、水酸基、カルボニル基、ハロゲン原子等を足がかりに種々の側鎖を伸張すること、及びその際に必要に応じて上記官能基の保護、脱保護を行うことによって、本発明に含まれる別の化合物へ導く事もできる。官能基の変換及び側鎖の伸張は、通常行われる一般的方法(例えば、Comprehensive Organic Transformations, R. C. Larock, John Wiley& Sons Inc.(1999)等を参照)によって行うことができる。
【0265】
本発明のヘミアスタリン誘導体及び抗体薬物複合体には、不斉が生じる場合又は不斉炭素を有する置換基を有する場合があり、そのような化合物にあっては光学異性体が存在する。光学異性体は通常の方法に従って製造することができる。製造方法としては、例えば、不斉点を有する原料を用いる方法又は途中の段階で不斉を導入する方法が挙げられる。例えば、光学異性体の場合、光学活性な原料を用いるか、製造工程の適当な段階で光学分割等を行うことで、光学異性体を得ることができる。光学分割法としては、例えば、本発明のヘミアスタリン誘導体及び抗体薬物複合体が、塩基性官能基を有する場合には、不活性溶媒中(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;トルエン等の炭化水素系溶媒;アセトニトリル等の非プロトン系溶媒;又は上記溶媒から選択される2種以上の混合溶媒)で、光学活性な酸(例えば、マンデル酸、N-ベンジルオキシアラニン、乳酸等のモノカルボン酸;酒石酸、o-ジイソプロピリデン酒石酸、リンゴ酸等のジカルボン酸;カンファースルホン酸、ブロモカンファースルホン酸等のスルホン酸等)を用いて、塩を形成させるジアステレオマー法が挙げられる。本発明のヘミアスタリン誘導体又はその合成中間体が、カルボキシル等の酸性官能基を有する場合には、光学活性なアミン(例えば、1-フェニルエチルアミン、キニン、キニジン、シンコニジン、シンコニン、ストリキニーネ等の有機アミン)を用いて、塩を形成させることにより、光学分割を行うこともできる。
【0266】
塩を形成させる温度としては、-50℃から溶媒の沸点までの範囲が挙げられ、好ましくは0℃から沸点までの範囲が挙げられ、より好ましくは室温から溶媒の沸点までの範囲が挙げられる。光学純度を向上させるためには、一旦、溶媒の沸点付近まで温度を上げることが望ましい。析出した塩を濾取する際、必要に応じて冷却し、収率を向上させることができる。光学活性な酸又はアミンの使用量は、基質に対し約0.5~約2.0当量の範囲が挙げられ、好ましくは1当量前後の範囲が挙げられる。必要に応じて、結晶を不活性溶媒中(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;トルエン等の炭化水素系溶媒;アセトニトリル等の非プロトン系溶媒;又は上記溶媒から選択される2種以上の混合溶媒)で再結晶し、高純度の光学活性な塩を得ることもできる。また、必要に応じて、光学分割した塩を通常の方法で酸又は塩基で処理し、フリー体として得ることもできる。
【0267】
上記の各々の製造法における原料又は中間体のうち、特にあらためてその製造法を記載しなかったものについては、市販化合物であるか、又は市販化合物から当業者に公知の方法若しくはそれに準じた方法によって合成することができる。
【0268】
本発明における多能性幹細胞は、生体に存在するすべての細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であれば、特に限定されない。多能性幹細胞は、受精卵、クローン胚、生殖幹細胞、組織内幹細胞、体細胞等から誘導することができる。多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞:Embryonic stem cell)、EG細胞(Embryonic germ cell)、人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced pluripotent stem cell)等を挙げることができる。間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell;MSC)から得られるMuse細胞(Multi-lineage differentiating stress enduring cell)、及び生殖細胞(例えば精巣)から作製される精子幹細胞(GS細胞:Germline stem cell)も多能性幹細胞に包含される。ES細胞は、1981年に初めて樹立され、1989年以降ノックアウトマウス作製にも応用されている。1998年にはヒト胚性幹細胞が樹立されており、再生医学にも利用されつつある。ES細胞は、内部細胞塊をフィーダー細胞上又はLIF(白血病抑制因子)を含む培地中で培養することによって製造することができる。ES細胞の製造方法は、例えば、WO96/22362、WO02/101057、US5,843,780、US6,200,806、US6,280,718等に記載されている。ES細胞は、所定の機関から入手でき、また、市販品を購入することもできる。例えば、ヒトES細胞であるKhES-1、KhES-2及びKhES-3は、京都大学再生医科学研究所から入手可能である。ヒトES細胞であるRx::GFP株(KhES-1株由来)は、国立研究開発法人理化学研究所から入手可能である。マウスES細胞であるEB5細胞株及びD3細胞株は、それぞれ国立研究開発法人理化学研究所及びATCCから、入手可能である。
【0269】
ES細胞の一つである核移植胚性幹細胞(ntES細胞)は、核を取り除いた卵子に体細胞の核を移植して作ったクローン胚から樹立することができる。EG細胞は、始原生殖細胞をmSCF、LIF及びbFGFを含む培地中で培養することによって製造することができる(Cell, 70:841-847, 1992)。
【0270】
本発明における人工多能性幹細胞(iPS細胞)とは、体細胞を公知の方法等により初期化することにより、多能性を誘導した細胞である(Cell 126, p663-676, 2006、Cell 131, p861-872, 2007、Science 318, p1917-1920, 2007、Nat Biotechnol 26, p101-106, 2008)。具体的には、線維芽細胞や末梢血単核球等の分化した体細胞をOct3/4、Klf4、Klf1、Klf2、Klf5、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Sox18、c-Myc、N-Myc、L-Myc、TERT、SV40 Large T antigen、Glis1、Nanog、Sall4、lin28及びEsrrb等を含む初期化遺伝子群から選ばれる複数の遺伝子の組合せのいずれかにより初期化された細胞が挙げられる。初期化因子は少なくとも1つ、2つ又は3つ含む組合せがよく、好ましくは4つ以上含む組合せである。好ましい初期化因子の組合せとしては、(1)Oct3/4、Sox2、Klf4、及びMyc(c-Myc又はL-Myc)、(2)Oct3/4、Sox2、Klf4、Lin28、及びL-Mycを挙げることができる。
【0271】
これらの初期化因子は、タンパク質の形態で、例えばリポフェクション、細胞膜透過ペプチドとの融合、マイクロインジェクション等の方法で細胞に導入することも可能であるし、核酸(DNA/RNA)の形態で、例えばリポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクション、ウイルス、プラスミドベクター、エピソーマルベクター、人工染色体ベクター等の方法で細胞に導入することも可能である。ウイルスベクターとしてはレンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクター等が例示される。プラスミドベクターとしては、一般的に利用可能な哺乳動物細胞用プラスミドを用いることができ、初期化因子の発現効率を高めるためにプロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター等の制御配列が一般的に組み込まれ、プラスミド自己複製効率を上げるためにEBNA-1等の因子が組み込まれることもある。また、遺伝子発現による直接初期化で製造する方法以外に、化合物の添加などにより体細胞からiPS細胞を誘導することもできる(Science 341, p651-654, 2013、WO2010/068955)。
【0272】
また、株化されたiPS細胞を入手する事も可能であり、例えば、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)で樹立されたiPS細胞株が、京都大学及びiPSポータル株式会社より入手可能である。
【0273】
iPS細胞を製造する際の出発材料となる体細胞としては、生殖細胞以外のいかなる細胞であってもよく、例えば、線維芽細胞、上皮細胞、粘膜上皮細胞、外分泌腺上皮細胞、ホルモン分泌細胞、肺胞細胞、神経細胞、色素細胞、血球系細胞(例えば、末梢血単核球(PBMC)やT細胞、臍帯血細胞など)、間葉系幹細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、腸上皮細胞、平滑筋細胞、及びこれらの前駆細胞等が挙げられる。組織の分化の程度や採取する動物の齢に制限はなく、全て本発明における体細胞の材料として使用することができる。
【0274】
本発明に用いられるiPS細胞は、例えば、哺乳動物(例、ヒト、サル、ブタ、ウサギ、ラット、マウス)のiPS細胞であり、好ましくはげっ歯類(例、マウス、ラット)又は霊長類(例、ヒト、サル)のiPS細胞であり、より好ましくはヒトiPS細胞である。また、本発明に用いられるiPS細胞は、ゲノム編集などの手法により遺伝子改変されたiPS細胞も含む。
【0275】
ES細胞は、iPS細胞と同じく多能性を有する幹細胞の一種であり、iPS細胞と同じ抗原を細胞表面に発現していることが知られている(Cell, 131:861-872, 2007)。よって本発明の抗体薬物複合体は、iPS細胞だけでなく、ES細胞に対し細胞死を誘導することができる。すなわち、本発明の抗体薬物複合体は、ES細胞由来の分化細胞を含む細胞集団から、ES細胞を選択的に除去することが可能である。また、多能性幹細胞においても、iPS細胞と共通の抗原を細胞表面に発現していることから、本発明の抗体薬物複合体は、多能性幹細胞に対し細胞死を誘導することができ、多能性幹細胞由来の分化細胞を含む細胞集団から、多能性幹細胞を選択的に除去することができる。
【0276】
本明細書において、「多能性幹細胞の除去剤」とは、多能性幹細胞の細胞死を誘導し多能性幹細胞を除去する薬剤を意味する。多能性幹細胞由来の分化細胞を含む細胞集団に対し、多能性幹細胞の除去剤を作用させることで多能性幹細胞の細胞死を誘導し、細胞集団から完全に又は部分的に多能性幹細胞を取り除くことができる。
【0277】
本明細書において、「多能性幹細胞の殺傷剤」とは、多能性幹細胞の細胞死を誘導し多能性幹細胞を殺傷する薬剤を意味する。また、本明細書において、「多能性幹細胞の減少剤」とは、多能性幹細胞の細胞死を誘導し多能性幹細胞の数又は細胞集団におけるその割合を減少する薬剤を意味する。
【0278】
抗体薬物複合体は、抗体-抗原反応を利用した細胞内への取り込みにより、特定の抗原発現細胞内に特異的に送達された後、上述の機構で細胞内において酵素による代謝を受け、薬物部分由来の化合物を抗体薬物複合体から放出することで特定の抗原発現細胞のみで薬効を発揮させることができる。すなわち、本発明の抗体薬物複合体は、多能性幹細胞の細胞表面に発現する抗原に対する抗体部分が多能性幹細胞を認識し、多能性幹細胞特異的に取り込まれ得るため、多能性幹細胞に対しては細胞内で薬物部分由来の化合物を放出し細胞傷害性を発揮する一方、前記抗原を細胞表面に発現しない分化細胞に対しては低い細胞傷害性を示すと期待できる。
【0279】
一方、抗体薬物複合体は、目的とする細胞に送達される前に、培地中に含まれるプロテアーゼ等によって分解され、培地中で薬物部分由来の化合物を放出し、非選択的に細胞に傷害を与えてしまうことが懸念される。従来の抗体薬物複合体の場合は、薬物部分の細胞膜透過性が高いため、培地中に放出された薬物部分由来の化合物は、分化細胞にも受動拡散して取り込まれてしまう。そのため、意図していない暴露となり、分化細胞への傷害が起こりやすいことから、好ましくない。
【0280】
これに対し、本発明の抗体薬物複合体の薬物部分、すなわちヘミアスタリン誘導体は細胞膜透過性が低いため、仮にiPS細胞等の多能性幹細胞に到達する前に培地中で薬物部分由来の化合物が放出されても、薬物は分化細胞に受動拡散して取り込まれにくく、分化細胞への傷害が少ないことが期待できる。
【0281】
さらに、抗体と結合させる薬物部分として低膜透過性の化合物を用いた場合、目的とする多能性幹細胞内で放出された薬物部分由来の化合物が細胞膜を介して細胞の外に流出することが抑えられるため、薬物部分由来の化合物は目的細胞内に長期間滞在でき、良好な細胞除去効果が発揮されることが期待される。
【0282】
すなわち、本発明の抗体薬物複合体は細胞膜透過性の低いヘミアスタリン誘導体を薬物部分として有するため、多能性幹細胞特異的に細胞傷害性を示し、かつ、分化細胞への影響が少ないことが期待される。
【0283】
本発明の抗体薬物複合体は、ES細胞、iPS細胞等の多能性幹細胞に取り込まれ、細胞内で放出された薬物が細胞傷害性を示し、多能性幹細胞の増殖抑制及び細胞死を誘導することから、多能性幹細胞由来の分化細胞を含む細胞集団から残存する多能性幹細胞を効率的に除去することができる。さらに、本発明の抗体薬物複合体は、iPS細胞選択的に細胞死を誘導することから、分化細胞への傷害性を抑えながらiPS細胞の除去を効率的に行うことができる。
【0284】
本発明における細胞塊としては、単層の細胞を2層以上積み重ねる、あるいは単層細胞の上に新たに細胞層を形成させて作製する細胞積層体、細胞を凝集させて作製する細胞凝集体、3Dバイオプリンターなどのデバイスを用いて細胞を立体的に積層させた細胞集合体、三次元的な培養で自己組織化により形成させたオルガノイド等が挙げられる。これらの細胞塊においては、細胞同士が互いに接着することで培養足場を提供し、構造を保持しているが、細胞塊中にハイドロゲルなどの足場器材が含有された状態であってもよい。ハイドロゲルとは水を大量に含むことができる物質であり、酸素や水・栄養素などの生存に必要な物質と老廃物を容易に拡散移動させることができる。通常は生体適合性の物質が用いられ、例えばゼラチンハイドロゲルなどが挙げられる。
【0285】
本発明の適用対象となるiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団は、再生医療等製品を含む細胞医薬品の有効成分又はその製造中間体となる、iPS細胞を分化誘導してできる細胞集団であり、例えば、コロニーを含む平面培養細胞、単細胞での浮遊培養細胞及び上記で定義した細胞塊などが挙げられる。
【0286】
iPS細胞から分化誘導する細胞としては、髪、眼(網膜、角膜)、神経組織(脳、脊髄、末梢神経)、心臓、骨(軟骨)、肺、腎臓、膵臓、腸管、血管、血液、筋肉、半月板、アキレス腱、肝臓、脂肪(乳房)、皮膚、食道などの組織を構成する細胞、又は当該細胞の幹細胞/前駆細胞が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0287】
iPS細胞を含む細胞集団を分化細胞へ分化誘導する工程において、iPS細胞から各組織への分化誘導方法については、分化誘導が可能な方法であれば何でもよく、特に限定されない。iPS細胞から各組織への分化誘導方法としては、例えば、iPS細胞を無血清培地中でBMP阻害剤及びアクチビン/TGFβファミリー阻害剤の存在下で培養することにより神経前駆細胞を分化誘導する方法などが挙げられる。
【0288】
本明細書において、「実質的にiPS細胞を含まないiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団」とは、生体内において奇形種形成を起こす量のiPS細胞を含まないiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団を意味する。iPS細胞が残存しているかどうかは、当業者に周知の方法で検出することができ、全細胞数に占めるiPS細胞の割合を定量することもできる。iPS細胞の定量方法としては、特に限定されないが、細胞の表面又は内部に発現しているマーカー分子の発現量を測定する方法が挙げられる。細胞表面に発現しているマーカー分子としては、例えば、TRA1-60及びSSEA4等が挙げられ、細胞内部(核内)に発現しているマーカー分子としては、例えば、NANOG、OCT4及びLIN28A等が挙げられる。これらのマーカー分子の測定方法としては、例えば、細胞表面の発現マーカーであればフローサイトメトリー等、細胞核内の発現マーカーであれば免疫染色及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)等が挙げられる。実質的にiPS細胞を含まないiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団の1態様としては、全体の細胞数に対してのiPS細胞数の割合が1%未満であるiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団が挙げられ、別の1態様としては、全体の細胞数に対してのiPS細胞数の割合が0.1%未満であるiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団が挙げられ、また別の1態様としては、全体の細胞数に対してのiPS細胞数の割合が0.01%未満であるiPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団が挙げられる。
【0289】
iPS細胞を分化誘導してできる細胞集団において、多能性を維持する未分化の細胞又は分化抵抗性を示す細胞、具体的には残存するiPS細胞又はiPS様細胞を除去するために、当該細胞集団に対し本発明の抗体薬物複合体を作用させることができる。iPS細胞由来の分化細胞を含む細胞集団を本発明の抗体薬物複合体と接触させる工程において、当該細胞集団を抗体薬物複合体と接触させる方法としては、細胞もしくは細胞集団に本発明の抗体薬物複合体を直接接触させればよい。具体的には、抗体薬物複合体を含有する液体(溶液もしくは懸濁液)、又は抗体薬物複合体そのものを細胞もしくは細胞集団の培養液に加えればよく、一般的には抗体薬物複合体の濃縮液を培養液に添加する方法が用いられる。抗体薬物複合体の濃縮液として用いられる溶媒としては、抗体薬物複合体を溶解できるものなら何でもよいが、抗体薬物複合体の物性にかかわらず溶解性が比較的高く、かつ細胞への毒性が低いリン酸緩衝生理食塩水がよく用いられる。濃縮液における抗体薬物複合体の濃度は、例えば、0.01μg/mLから10mg/mLの範囲であり、好ましい様態において、0.1μg/mLから1mg/mLの範囲である。また、細胞もしくは細胞集団を含む培養液において、培養液を本発明の抗体薬物複合体を必要量含む培養液に交換することにより、細胞もしくは細胞集団に本発明の抗体薬物複合体を接触させることもできる。
【0290】
本発明の抗体薬物複合体と細胞集団を接触させる時間は、分化細胞が生存可能であれば特に限定はないが、通常1時間から96時間の範囲であり、好ましくは24時間から96時間の範囲である。
【0291】
本発明の抗体薬物複合体と細胞集団を接触させる温度は、細胞が生存可能な温度であれば特に限定はないが、通常4℃から40℃までの範囲であり、好ましくは20℃から37℃の範囲である。
【0292】
本発明の抗体薬物複合体と細胞集団を接触させる時に使用する培地は、細胞培養に用いられる一般的な培地、又は緩衝液から調製される基礎培地を用いることができ、好ましくは、細胞の分化誘導に用いる培地が用いられる。基礎培地としては、例えば、BME培地、BGJb培地、CMRL1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、ハム培地、RPMI 1640培地、Fischer‘s培地、及びこれらの混合培地など、動物細胞の培養に用いることのできる培地であれば特に限定されない。
【0293】
本明細書において、「移植用細胞」とは、再生医療等においてヒト又はヒト以外の動物の生体内に投与するために用いる細胞を意味する。移植用細胞は、組織又は器官の機能を修復するものであってもよいし、疾病又は損傷を予防又は治療するものであってもよい。移植用細胞の投与方法としては、特に限定されないが、例えば手術的に患部に移植する方法が挙げられる。
【0294】
本発明の、実質的にiPS細胞を含まないiPS細胞由来細胞集団に含まれる細胞を有効成分として含有する医薬組成物は、例えば、再生医療等(好ましくは移植)においてヒト又はヒト以外の動物に投与して使用することができる。当該医薬組成物は、適宜、担体及び/又は添加剤を含有する。
【実施例
【0295】
以下に本発明を、参考例、実施例及び試験例により、さらに具体的に説明するが、本発明はもとよりこれに限定されるものではない。なお、以下の参考例及び実施例において示された化合物名は、必ずしもIUPAC命名法に従うものではない。
【0296】
参考例及び実施例の化合物は、反応後の処理等の方法により、TFA塩等の酸付加塩として得られることもある。
【0297】
明細書の記載を簡略化するために参考例、実施例及び実施例中の表において以下に示すような略号を用いることもある。置換基として用いられる略号として、Meはメチル基、Etはエチル基、Bocはtert-ブトキシカルボニル基、Fmocは9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、trtはトリチル基、Phはフェニル基を意味する。DMSOはジメチルスルホキシド、TFAはトリフルオロ酢酸、THFはテトラヒドロフラン、TCEPはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、Tris-HClはトリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩、PBSはリン酸緩衝生理食塩水、HEPESは2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸、PIPESはピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)を意味する。NMRに用いられる記号としては、sは一重線、dは二重線、ddは二重線の二重線、tは三重線、qは四重線、mは多重線、brは幅広い、brsは幅広い一重線、brdは幅広い二重線、brmは幅広い多重線、Jは結合定数を意味する。
【0298】
高速液体クロマト質量分析計;LCMSの測定条件は、以下の通りであり、観察された質量分析の値[MS(m/z)]を[M+nH]n+/n、[M+Na]、[M-nH]n-/nで、保持時間をRt(min)で示す。なお、各実測値においては、測定に用いた測定条件をA~D又はF~Hで付記する。
【0299】
測定条件A
検出機器:島津 LCMS-IT-TOF
Column:Phenomenex Kinetex(1.7μm C18,50mm×2.10mm)
Solvent:A液:0.1% HCOOH/CHCN、B液:0.1% HCOOH/H
Gradient Condition:
0.0分;A/B=1:99
0.0-1.4分 Linear gradient from A 1% to 95%
1.4-1.6分;A/B=95:5
1.6-2.0分;A/B=1:99
Flow rate:1.2mL/分
UV:220/254nm
カラム温度:40℃
【0300】
測定条件B
検出機器:島津 LCMS-IT-TOF
Column:Phenomenex Kinetex(1.7μm C18,50mm×2.10mm)
Solvent:A液:0.1% HCOOH/CHCN、B液:0.1% HCOOH/H
Gradient Condition:
0.0分;A/B=10:90
0.0-1.4分 Linear gradient from A 10% to 90%
1.4-1.6分;A/B=90:10
1.6-2.0分;A/B=10:90
Flow rate:1.2mL/分
UV:220/254nm
カラム温度:40℃
【0301】
測定条件C
検出機器:島津 LCMS-IT-TOF
Column:Phenomenex Kinetex(1.7μm C8,50mm×2.10mm)
Solvent:A液:0.1 % HCOOH/CHCN、B液:0.1% HCOOH/H
Gradient Condition:
0.0分;A/B=1:99
0.0-1.4分 Linear gradient from A 1% to 95%
1.4-1.6分;A/B=95:5
1.6-2.0分;A/B=1:99
Flow rate:1.2mL/分
UV:220/254nm
カラム温度:40℃
【0302】
測定条件D
検出機器:島津 LCMS-IT-TOF
Column:Phenomenex Kinetex(1.7μm C8,50mm×2.10mm)
Solvent:A液:0.1% HCOOH/CHCN、B液:0.1% HCOOH/H
Gradient Condition:
0.0分;A/B=10:90
0.0-1.4分 Linear gradient from A 10% to 90%
1.4-1.6分;A/B=90:10
1.6-2.0分;A/B=10:90
Flow rate:1.2mL/分
UV:220/254nm
カラム温度:40℃
【0303】
測定条件E
検出機器: Perkin-Elmer Sciex API 150EX Mass spectrometer
HPLC:Shimadzu LC 10ATVP
Column:Shiseido CAPCELL PAK C18 ACR (S-5μm,4.6mm×50mm)
Solvent:A液:0.035%TFA/CHCN、B液:0.05%TFA/H
Gradient Condition:0.0-0.5分 A液10%,0.5-4.8分 A液 Linear gradient from A 10% to 99%,4.8-5.0分
Flow rate:3.5mL/分 A液 99%
UV:220/254nm
カラム温度:25℃
【0304】
測定条件F
検出機器:ACQUITY(登録商標)SQdetecter(ウォーターズ社)
HPLC:ACQUITY(登録商標)system
Column:Waters ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18(1.7μm,2.1mm×30mm)
Solvent:A液:0.06%ギ酸/CHCN、B液:0.06%ギ酸/H
Gradient Condition:0.0-1.3min Linear gradient from A 2% to 96%
Flow rate:0.8mL/分
UV:220/254nm
カラム温度:25℃
【0305】
測定条件G
検出機器:島津 LCMS-IT-TOF
Column:Phenomenex Kinetex(1.7μm C8,50mm×2.10mm)
Solvent:A液:0.1% HCOOH/CHCN、B液:0.1% HCOOH/H
Gradient Condition:
0.0分;A/B=10:90
0.0-1.4分 Linear gradient from A 10% to 95%
1.4-1.6分;A/B=95:5
1.6-2.0分;A/B=10:90
Flow rate:1.2mL/分
UV:220/254nm
カラム温度:40℃
【0306】
測定条件H
検出機器:島津 LCMS-IT-TOF
Column:Phenomenex Kinetex(1.7μm C8,50mm×2.10mm)
Solvent:A液:0.1% HCOOH/CHCN、B液:0.1% HCOOH/H
Gradient Condition:
0.0分;A/B=40:60
0.0-1.4分 Linear gradient from A 40% to 95%
1.4-1.6分;A/B=95:5
1.6-2.0分;A/B=5:95
Flow rate:1.2mL/分
UV:220/254nm
カラム温度:40℃
【0307】
高速液体クロマトグラフ;平均薬物抗体比(平均DAR)を求める測定条件は、以下の通りであり、保持時間をRt(min)で示す。なお、各実測値においては、測定に用いた測定条件をE又はIで付記する。
【0308】
測定条件I
HPLC:Shimadzu LC-10A series
Column:nonporous TSKgel Butyl-NPR column(TosohBioscience,2.5μm,35mm×4.6mm)
Solvent:A液:1.5mol/L硫酸アンモニウム,25mmol/Lリン酸ナトリウム水溶液(pH6.95)、B液:25%イソプロパノール/25 mmol/Lリン酸ナトリウム水溶液(pH6.95)
Gradient Condition:
0.0分;A/B=100:0
0.0-12.0分 Linear gradient from B 0% to 100%
12.1-18.0分;A/B=100:0
Flowrate:0.8mL/分
UV:230nm
カラム温度:25℃
【0309】
測定条件J
HPLC:Shimadzu LC-10A series
Column:nonporous TSKgel Butyl-NPR column(TosohBioscience,2.5μm,35mm×4.6mm)
Solvent:A液:1.5mol/L硫酸アンモニウム,25mmol/Lリン酸ナトリウム水溶液(pH6.95)、B液:25%イソプロパノール/25 mmol/Lリン酸ナトリウム水溶液(pH6.95)
Gradient Condition:
0.0分;A/B=100:0
0.0-24.0分 Linear gradient from B 0% to 100%
24.1-60.0分;A/B=100:0
Flow rate:0.8 mL/分
UV:230nm
カラム温度:25℃
【0310】
参考例1
N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β,1-テトラメチル-L-トリプトフイル-N-{(3S,4E)-6-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ]-2、5-ジメチル-6-オキソヘキサ-4-エン-3-イル}-N,3-ジメチル-L-バリンアミド
【化67】
【0311】
a)メチル 2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパノエート(化合物A1)の製造
窒素雰囲気下、-78℃のインドール-3-酢酸メチルエステル(3.8g)のテトラヒドロフラン(87mL)溶液にカリウムヘキサメチルジシラジド(1mol/Lテトラヒドロフラン溶液、65.5mL)を滴下した後、0℃で2時間撹拌した。反応液を-78℃に冷却後、ヨウ化メチル(23g)を滴下した後、0℃で3時間撹拌した。反応終了後、水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル)で精製することにより化合物A1(3.95g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.60 (3H, d, J =7.1 Hz),3.67 (3H, s), 3.76 (3H, s), 4.02 (1H, q, J = 7.1 Hz), 7.00 (1H, s),7.12 (1H, t,J = 7.8 Hz), 7.23 (1H, t,J = 7.8 Hz), 7.29 (1H, d,J = 7.8 Hz),7.66(1H, d, J= 7.8Hz).
【0312】
b)メチル 2-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパノエート(化合物A2)の製造
窒素雰囲気下、-78℃の化合物A1(3.94g)のテトラヒドロフラン(200mL)溶液にカリウムヘキサメチルジシラジド(1mol/Lテトラヒドロフラン溶液、27.7mL)を滴下した後、0℃で2時間撹拌した。反応液を-78℃に冷却後、ヨウ化メチル(15.4g)を滴下した後、0℃で3時間撹拌した。反応終了後、水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル)で精製することにより化合物A2(3.59g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.66 (6H,s), 3.61 (3H,s), 3.73 (3H,s), 6.91 (1H,s), 7.06 (1H, t,J = 8.0 Hz), 7.19 (1H, t,J = 8.0 Hz), 7.27 (1H,d,J = 8.0 Hz), 7.61 (1H, d,J =7.9 Hz).
【0313】
c)2-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-1-オール(化合物A3)の製造
窒素雰囲気下、-78℃の化合物A2(3.59g)のジエチルエーテル(169mL)及びジクロロメタン(47mL)溶液に水素化ジイソブチルアルミニウム(1mol/L n-ヘキサン溶液、38.8mL)を滴下した後、0℃で1時間撹拌した。反応終了後、水を加えた後、25℃の反応混合物を、飽和酒石酸カリウムナトリウム水溶液を加えた後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル)で精製することにより化合物A3(3.14g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.42 (6H,s), 3.74 (3H,s), 3.77 (2H,s), 6.87 (1H,s), 7.07 (1H,t, J = 7.9 Hz), 7.20 (1H,t, J = 7.9 Hz), 7.29(1H,d, J = 8.0 Hz), 7.75 (1H,d,J = 8.0 Hz).
【0314】
d)2-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパナール(化合物A4)の製造
窒素雰囲気下、化合物A3(3.14g)、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(271mg)、N-メチルモルホリン-N-オキシド(3.26g)及びモレキュラーシーブ4A(7.7g)のジクロロメタン(110mL)混合溶液を、25℃で1時間撹拌した。反応終了後、セライトにて濾過後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル)で精製することにより化合物A4(2.4g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.53 (6H,s), 3.77 (3H,s), 6.94 (1H,s), 7.07 (1H,t, J = 8.0 Hz), 7.22 (1H,t, J = 8.0 Hz), 7.30 (1H,d, J = 8.0 Hz), 7.53(1H,d, J = 8.0 Hz), 9.47 (1H,s).
【0315】
e)(2S)-2-{[(1R)-2-ヒドロキシ-1-フェニルエチル]アミノ}-3-メチル-3-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ブタンニトリル(化合物A5)の製造
窒素雰囲気下、化合物A4(2.4g)及び(R)-(-)-2-フェニルグリシノール(1.63g)のトルエン(47mL)溶液を1.5時間加熱還流し、ディーン・スターク装置で水を留去した後、溶媒を留去した。窒素雰囲気下、残渣に0℃のジクロロメタン(69mL)を加えた後、トリメチルシリルシアニド(2.36g)を加え、25℃で96時間撹拌した。反応溶液にフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1mol/Lテトラヒドロフラン溶液、1mL)を加え、さらに30分間撹拌した後、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル)で精製することにより化合物A5(2.74g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.64 (3H,s), 1.65 (3H,s), 3.49-3.55 (1H,m), 3.73 (1H,dd, J = 10.9, 4.2 Hz), 3.79 (1H,s), 3.80 (3H,s), 4.05 (1H,dd, J = 7.9, 3.6 Hz), 6.96-7.00 (2H,m), 7.11(2H,d, J = 8.0 Hz), 7.21-7.40 (6H,m).
【0316】
f)Nα-[(1R)-2-ヒドロキシ-1-フェニルエチル]-β,β,1-トリメチル-L-トリプトファンアミド(化合物A6)の製造
化合物A5(2.74g)、ジメチルスルホキシド(6.16g)及び炭酸カリウム(10.9g)のメタノール(50mL)及び水(2.1mL)懸濁液に30%過酸化水素水(8.94mL)を0℃で加えた後、45℃で1.5時間撹拌した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を、水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより化合物A6(2.32g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.49 (3H,s),1.51 (3H, s), 2.06-2.14 (1H, br), 2.37 (1H,dd, J = 6.0, 6.0 Hz), 3.44-3.50 (1H, m),3.50-3.54 (1H, m), 3.56-3.63(m, 2H), 3.75 (3H, s), 5.52 (1H, brs), 6.14 (1H, brs), 6.71-6.73 (2H, m), 6.81-6.85(2H, m), 6.97-7.00 (2H, m), 7.10-7.18 (2H, m), 7.24-7.28 (2H, m).
【0317】
g)β,β,1-トリメチル-L-トリプトファンアミド(化合物A7)の製造
化合物A6(2.32g)のメタノール(65mL)溶液に水酸化パラジウム/炭素(2.8g)を加え、水素雰囲気下、室温にて3時間攪拌した。セライトにて濾過後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより化合物A7(1.27g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, DMSO-d6):1.24 (2H, brs), 1.28 (3H, s), 1.42(3H, s), 3.68 (1H, s), 3.71 (3H, s), 6.93-7.00 (2H, m), 7.06 (1H, s), 7.11 (1H,t, J = 7.7 Hz), 7.29 (1H, brs), 7.36 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.88 (1H, d, J = 8.2Hz).
【0318】
h)Nα-(tert-ブトキシカルボニル)-β,β,1-トリメチル-L-トリプトファンアミド(化合物A8)の製造
化合物A7(1.27g)、炭酸水素ナトリウム(522mg)、ジ-tert-ブチルジカルボネート(1.35g)、テトラヒドロフラン(13mL)、クロロホルム(13mL)及び水(6.5mL)の混合液を25℃にて16時間攪拌した。反応終了後、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより化合物A8(1.80g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.33 (3H, s), 1.47 (9H, s),1.50 (3H, s), 3.73 (3H, d, J = 1.3 Hz), 4.51 (1H, brs), 4.86 (1H, brs), 5.02(1H, brd, J = 8.2 Hz), 5.59 (1H, brd, J = 6.4 Hz), 6.83 (1H, d, J = 1.8 Hz),7.15 (1H, t, J = 7.3 Hz), 7.21-7.25 (1H, m), 7.30 (1H, d, J = 8.2 Hz), 8.05(1H, brd, J = 7.3 Hz).
LC-MS:346 (M+H)+ (1.211 min, 測定条件A).
【0319】
i)N,N,Nα-トリス(tert-ブトキシカルボニル)-β,β,1-トリメチル-L-トリプトファンアミド(化合物A9)の製造
化合物A8(1.79g)、ジ-tert-ブチルジカルボネート(2.8g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.68g)、4-ジメチルアミノピリジン(0.19g)及びクロロホルム(20mL)の混合液を25℃にて2.5時間撹拌した。反応終了後、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル)で精製することにより化合物A9(1.99g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.08-1.58 (33H, m), 3.70(3H, s), 4.67-4.90 (0.2H, m), 5.25-5.45 (0.8H, m), 6.00-6.03 (1H, m), 6.81-6.87(1H, m), 7.04-7.09 (1H, m), 7.13-7.18 (1H. m), 7,21-7,27 (1H, m), 7.91-7.94(1H, m).
LC-MS:546 (M+H)+ (1.630 min, 測定条件A)
【0320】
j)メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-β,β,1-トリメチル-L-トリプトファンエート(化合物A10)の製造
窒素雰囲気下、化合物A9(2.29g)のメタノール溶液(21mL)に、リチウムメトキシド(176mg)を0℃で加えた後、25℃にて2時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル)で精製することにより化合物A10(927mg)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3): 1.17-1.59 (15H, m), 3.45 and 3.58 (3H, 2brs), 3.71(3H, s), 4.56-4.73 (1.2H, m), 5.06 (0.8H, brd, J = 7.3 Hz), 6.81-6.82 (1H, m),7.05-7.10 (1H, m), 7.16-7.21 (1H, m), 7.24-7.29 (1H, m), 7.73-7.80 (1H, m).
LC-MS: 361 (M+H)+ (1.379 min, 測定条件A).
【0321】
k)メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β,1-テトラメチル-L-トリプトファナート(化合物A11)の製造
窒素雰囲気下、化合物A10(927mg)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(13mL)に、60%含有水素化ナトリウム(168mg)を0℃で加えた後、25℃にて15分撹拌した。反応懸濁液を0℃にした後、ヨウ化メチル(1.1g)を加え、その後、25℃にて1時間撹拌した。反応終了後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル)で精製することにより化合物A11(915mg)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.42 (9H, s), 1.52 and 1.64 (6H, 2s), 2.80 and 2.86(3H, 2s), 3.46 (3H, s), 3.71 (3H, s), 5.27 and 5.52 (1H, 2s), 6.85 (1H, s),7.07-7.27(3H, m), 7.78 and 7.92 (1H, 2d, J = 7.88 Hz).
LC-MS: 397 (M+Na)+ (1.406 min, 測定条件B)
【0322】
l)N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β,1-テトラメチル-L-トリプトファン(化合物A12)の製造
化合物A11(639mg)の水(11mL)-メタノール(44mL)溶液に、1mol/L水酸化リチウム(13.5mL)を加え、60℃にて24時間撹拌した。反応終了後、1mol/Lシュウ酸水溶液を加え、反応溶液をpH4にした後、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより化合物A12(610mg)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.43 (9H, s), 1.53 (3H, s), 1.63 (3H, s), 2.76 and2.89 (3H, 2s), 3.71 (3H, s), 5.36 and 5.44 (1H, 2s), 6.85 and 6.87 (1H, 2s),7.02-7.11 (1H, m), 7.18 (1H, t, J = 7.3 Hz), 7.24-7.27 (1H, m), 7.81 and 7.96 (1H,2d, J = 7.9 Hz).
LC-MS: 361 (M+H)+, 359 (M-H)-(1.300 min, 測定条件A).
【0323】
m)N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β,1-テトラメチル-L-トリプトフイル-N-[(3S,4E)-6-エトキシ-2,5-ジメチル-6-オキソヘキサ-4-エン-3-イル]-N,3-ジメチル-L-バリンアミド(化合物A13)の製造
化合物A12(500mg)、エチル(2E,4S)-2,5-ジメチル-4-[メチル(3-メチル-L-バリル)アミノ]ヘキサ-2-エノエート(520mg)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(399mg)、1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール・1水和物(425mg)及びN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)の混合液を、25℃にて16時間撹拌した。反応終了後、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル)で精製することにより化合物A13(759mg)を得た。
LC-MS: 655 (M+H)+ (1.714 min, 測定条件A)
【0324】
n)N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β,1-テトラメチル-L-トリプトフイル-N-[(3S,4E)-5-カルボキシ-2-メチルヘキサ-4-エン-3-イル]-N,3-ジメチル-L-バリンアミド(化合物A14)の製造
化合物A13(127mg)の水(1.55mL)-メタノール(4.65mL)溶液に、1mol/L水酸化リチウム(1.65mL)を加え、25℃にて24時間撹拌した。反応終了後、1mol/Lシュウ酸水溶液を加え、反応溶液をpH4にした後、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより化合物A14(93mg)を得た。
LC-MS: 627 (M+H)+ (1.508 min, 測定条件A)
【0325】
o)N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β,1-テトラメチル-L-トリプトフイル-N-{(3S,4E)-6-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ]-2、5-ジメチル-6-オキソヘキサ-4-エン-3-イル}-N,3-ジメチル-L-バリンアミド(参考例1)の製造
化合物A14(185mg)、N-ヒドロキシスクシンイミド(97mg)、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(391mg)、4-ジメチルアミノピリジン(102mg)、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(108mg)及びN,N-ジメチルホルムアミド(2.8mL)の混合液を、25℃にて4時間撹拌した。反応終了後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより参考例1(166mg)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3): 8.27 and 7.96 (1H, 2d, J = 7.9 Hz), 7.16-7.04 (4H,m), 6.88 (1H, d, J = 9.1 Hz), 6.17 and 6.09 (1H, 2d, J = 8.5 Hz), 5.96 and 5.66(1H, 2s), 5.07 (1H, t, J = 9.3 Hz), 4.45 and 3.87 (1H, 2d, J = 8.6 Hz), 3.74and 3.73 (3H, 2s), 2.99 (3H, s), 2.95 (3H, s), 2.83 (4H, brs), 1.97 (3H, s),1.92-1.86 (1H, m), 1.57-1.42 (14H, m), 0.89 (3H, d, J = 6.1 Hz), 0.83-0.80 (3H,m), 0.48 and 0.41 (9H, 2s).
LC-MS: 724 (M+H)+ (1.573 min, 測定条件A)
【0326】
参考例2
tert-ブチル(6S,9S,12S,13E,17R)-9-tert-ブチル-17-(3-{[2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロ-ル-1-イル)エチル]アミノ}-3-オキソプロピル)-2,2,5,11,14-ペンタメチル-6-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-4,7,10,15-テトラオキソ-12-(プロパン-2-イル)-3-オキサ-5,8,11,16-テトラアザオクタデカ-13-エン-18-カルボン酸エステル
【化68】
【0327】
a)(6S,9S,12S,13E,17R)-17-(tert-ブトキシカルボニル)-9-tert-ブチル-2,2,5,11,14-ペンタメチル-6-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-4、7,10,15-テトラオキソ-12-(プロパン-2-イル)-3-オキサ-5,8,11,16-テトラアザイコサ-13-エン-20-カルボン酸(化合物B1)の製造
参考例1(30mg)、D-グルタミン酸 α-tert-ブチルエステル塩酸塩(10.7mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(49.7mg)及びN,N-ジメチルホルムアミド(1.0mL)の混合液を、25℃にて3時間撹拌した。反応終了後、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより化合物B1(14.2mg)を得た。
LC-MS 834 (M+Na)+ (1.574 min, 測定条件D)
【0328】
b)tert-ブチル(6S,9S,12S,13E,17R)-9-tert-ブチル-17-(3-{[2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロ-ル-1-イル)エチル]アミノ}-3-オキソプロピル)-2,2,5,11,14-ペンタメチル-6-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-4,7,10,15-テトラオキソ-12-(プロパン-2-イル)-3-オキサ-5,8,11,16-テトラアザオクタデカ-13-エン-18-カルボン酸エステル(参考例2)の製造
化合物B1(14mg)、N-(2-アミノエチル)マレイミド塩酸塩(3.0mg)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(6.6mg)、1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール・1水和物(5.2mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.4mg)及びN,N-ジメチルホルムアミド(0.5mL)の混合液を、25℃にて2時間撹拌した。反応終了後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより参考例2(16.6mg)を得た。
LC-MS: 934 (M+H)+ (1.597 min, 測定条件D)
【0329】
参考例3
N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β,1-テトラメチル-L-トリプトフイル-N-[(3S,4E)-6-{[(1R)-1,3-ジカルボキシプロピル]アミノ}-2、5-ジメチル-6-オキソヘキサ-4-エン-3-イル]-N,3-ジメチル-L-バリンアミド
【化69】
【0330】
a)(6S,9S,12S,13E,17R)-9-tert-ブチル‐17-(エトキシカルボニル)-2,2,5,11,14-ペンタメチル-6-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-4,7,10,15-テトラオキソ-12-(プロパン-2-イル)-3-オキサ-5,8,11,16-テトラアザイコサ-13-エン-20-カルボン酸(化合物C1)の製造
参考例1(160mg)、α-エチル D-グルタミン酸エステル・トリフルオロ酢酸塩(122mg)、N、N-ジイソプロピルエチルアミン(100mg)及びN,N-ジメチルホルムアミド(2.2mL)の混合液を、25℃にて6時間撹拌した。反応終了後、1mol/Lシュウ酸水溶液でpH4にし、クロロホルムで抽出した。有機層を水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより化合物C1(155mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3):8.26 and 7.97 (1H, 2d, J = 7.9 Hz), 7.32-7.05 (4H, m), 6.71 (1H, t, J = 6.7 Hz),6.45 (1H, d, J = 8.6 Hz), 6.31-6.26 (1H, m), 5.95 and 5.63 (1H, 2s), 4.94-4.82(1H, m), 4.64-4.59 (1H, m), 4.51 and 4.41 (1H, 2d, J = 9.1 Hz), 4.21 (2H, q, J= 7.3 Hz), 3.75 and 3.74 (3H, 2s), 3.00 (3H, s), 2.97 and 2.95 (3H, 2s),2.52-2.38 (2H, m), 2.29-2.20 (1H, m), 2.10-2.00 (1H, m), 1.98-1.90 (1H, m),1.90 (3H, s), 1.57-1.45 (14H, m), 1.28 (3H, t, J = 7.3 Hz), 0.88 (3H, d, J =6.1 Hz), 0.82 (3H, d, J = 6.7 Hz), 0.53 and 0.46 (9H, 2s).
LC-MS 784 (M+H)+ 782 (M-H)- (1.472 min, 測定条件A)
【0331】
b)N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β,1-テトラメチル-L-トリプトフイル-N-[(3S,4E)-6-{[(1R)-1,3-ジカルボキシプロピル]アミノ}-2、5-ジメチル-6-オキソヘキサ-4-エン-3-イル]-N,3-ジメチル-L-バリンアミド(参考例3)の製造
化合物C1(103mg)の水(0.8mL)-メタノール(3.3mL)溶液に、1mol/L水酸化リチウム(1mL)を加え、25℃にて16時間撹拌した。反応終了後、1mol/Lシュウ酸水溶液を加え、反応溶液をpH4にした後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより参考例3(100mg)を得た。
LC-MS 756 (M+H)+ 754 (M-H)- (1.388 min, 測定条件A)
【0332】
参考例4
N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β-トリメチル-L-フェニルアラニル-N-{(3S,4E)-6-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ]-2、5-ジメチル-6-オキソヘキサ-4-エン-3-イル}-N,3-ジメチル-L-バリンアミド
【化70】
【0333】
a)3-メチル-3-フェニルブタン酸(化合物D1)の製造
3-メチル-2-ブテン酸(15g)のベンゼン(100mL)溶液に、10℃にて塩化アルミニウム(24.1g)を加え、30分撹拌した後、40℃で1時間撹拌した。0℃に冷却後、氷水を加え、tert-ブチルメチルエーテルで抽出し、ある程度濃縮し、有機層を飽和炭酸水素化ナトリウム水溶液で抽出した。水層を濃塩酸でpH2にし、tert-ブチルメチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、化合物D1(26.3g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.46 (6H, s), 2.65 (2H, s),7.20 (1H, t, J = 7.2 Hz), 7.31 (1H, t, J = 7.2 Hz), 7.37 (2H, d, J = 7.2 Hz).
【0334】
b)(4S)-3-(3-メチル-3-フェニルブタノイル)-4-(プロパン-2-イル)-1,3-オキサゾリジン-2-オン(化合物D2)の製造
化合物D1(17.2g)のTHF溶液(900mL)に、-78℃でトリエチルアミン(23.7mL)及びピバロイルクロリド(15.3mL)を加えた。0℃に昇温して1時間撹拌した。別途、(S)-イソプロピルオキサゾリジノン(19.5g)のTHF溶液(760mL)に、-78℃でn-ブチルリチウム(1.64mol/Lヘキサン溶液89.8mL)を加え、30分撹拌し、リチウム塩を調製した。先の反応液を-78℃にし、リチウム塩を滴下し、1時間撹拌した後、0℃に昇温し、さらに30分撹拌した後、水を加え、tert-ブチルメチルエーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:tert-ブチルメチルエーテル)で精製し、化合物D2(27.0g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):0.723 (3H, d, J = 6.8 Hz),0.80 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.49 (s, 6H), 2.13-2.18 (m, 1H), 3.36 (s, 3H),3.99-4.09 (m, 2H), 4.20-4.23 (m, 1H), 7.16-7.20 (m, 1H), 7.28-7.32 (m, 2H),7.38-7.40 (m, 2H).
【0335】
c)(4S)-3-[(2S)-2-アジド-3-メチル-3-フェニルブタノイル]-4-(プロパン-2-イル)-1,3-オキサゾリジン-2-オン(化合物D3)の製造
化合物D2(27.0g)のTHF懸濁液(560mL)に、-78℃に冷却し、カリウムヘキサメチルジシラジド(1.06mol/Lテトラヒドロフラン溶液、99.5mL)を加え、1.5時間した。-78℃の2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルアザイド(40g)のTHF溶液(330mL)を加え、10分後、酢酸(24.5mL)を加え、40℃に昇温し、1時間撹拌した。飽和食塩水を加え、tert-ブチルメチルエーテルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:クロロホルム)にて精製し、化合物D3(16.4g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):0.80 (3H, d, J = 6.8 Hz),0.84 (3H, d, J = 7.2 Hz), 1.54 (3H, s), 1.56 (3H, s), 2.28-2.33 (1H, m),3.54-3.59 (1H, m), 3.87-3.90 (1H, m), 3.95-3.98 (1H, m), 5.66 (1H, s),7.23-7.420 (5H, m).
【0336】
d)tert-ブチル{(2S)-3-メチル-1-オキソ-1-[(4S)-2-オキソ-4-(プロパン-2-イル)-1,3-オキサゾリジン-3-イル]-3-フェニルブタン-2-イル}カルバメート(化合物D4)の製造
化合物D3(16.4g)の酢酸エチル溶液(1200mL)に、ジ-tert-ブチルジカルボネート(24.0g)及び10%Pd-C(11.6g、50%ウェット)を加え、水素雰囲気下、2時間撹拌した。セライトろ過し、酢酸エチルで洗浄した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:tert-ブチルメチルエーテル)にて精製し、化合物D4(16.1g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):0.77 (3H, d, J = 6.8 Hz),0.82 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.42 (3H, s), 1.43 (9H, s), 1.48 (3H, s), 2.20-2.29(1H, m), 3.45 (1H, t, J = 8.8 Hz), 3.80-3.83 (1H, m), 3.89-3.92 (1H, dd, J =2.0 Hz, J = 8.4 Hz), 5.16 (1H, brs), 6.13 (1H, d, J = 9.6 Hz), 7.21-7.26 (1H,m), 7.29-7.33 (2H, m). 7.42 (2H, d, J = 7.2 Hz).
【0337】
e)N-(tert-ブトキシカルボニル)-β,β-ジメチル-L-フェニルアラニン(化合物D5)の製造
化合物D4(16.1g)のTHF(468mL)及び水(117mL)溶液に、0℃にて30%過酸化水素水(32.5mL)及び水酸化リチウム水溶液(1mol/L,119mL)を加え、25℃に昇温し、3時間撹拌した。0℃にて硫酸水素ナトリウム水溶液(1.5mol/L,470mL)を加え、25℃に昇温し、1時間撹拌した。クエン酸水溶液(1mol/L)でpH3にし、tert-ブチルメチルエーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、化合物D5(14.2g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.38 (9H, s), 1.44 (3H, s),1.46 (3H, s), 4.56 (1H, brd, J = 11.6 Hz), 4.94 (1H, brd, J = 14.4 Hz),7.21-7.38 (5H, m).
【0338】
f)メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-β,β-ジメチル-L-フェニルアラニンエステル(化合物D6)の製造
化合物D5(14.2g)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(84mL)に、炭酸ナトリウム(8.44g)及びヨウ化メチル(9.91mL)を加え、25℃で15時間撹拌した。0℃に冷却後、冷水を加え、tert-ブチルメチルエーテルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:tert-ブチルメチルエーテル)で精製し、化合物D6(11.1g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3):1.36 (9H, s), 1.37 (3H, s),1.41 (3H, s), 3.48 (3H, brs), 4.49 (1H, brd, J = 9.8 Hz), 4.98 (1H, brd, J =9.1 Hz), 7.18-7.22 (1H, m), 7.27-7.33 (4H, m).
【0339】
g)メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β-トリメチル-L-フェニルアラニンエステル(化合物D7)の製造
参考例1-k)と同様の手法で、化合物D6(307mg)から化合物D7(245mg)を得た。
LC-MS: 344 (M+Na)+ (1.589 min, 測定条件C)
【0340】
h)N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β-トリメチル-L-フェニルアラニン(化合物B8)の製造
参考例1-l)と同様の手法で、化合物D7(235mg)から化合物D8(195mg)を得た。
LC-MS: 330 (M+Na)+ (1.420 min, 測定条件C)
【0341】
i)N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β-トリメチル-L-フェニルアラニル-N-[(3S,4E)-6-エトキシ-2,5-ジメチル-6-オキソヘキサ-4-エン-3-イル]-N,3-ジメチル-L-バリンアミド(化合物D9)の製造
参考例1-m)と同様の手法で、化合物D8(195mg)から化合物D9(307mg)を得た。
LC-MS: 624 (M+Na)+ (1.797 min, 測定条件C)
【0342】
j)N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β-トリメチル-L-フェニルアラニル-N-[(3S,4E)-5-カルボキシ-2-メチルヘキサ-4-エン-3-イル]-N,3-ジメチル-L-バリンアミド(化合物D10)の製造
参考例1-n)と同様の手法で、化合物D9(307mg)から化合物D10(286mg)を得た。
LC-MS: 596 (M+Na)+, 572 (M-H)-(1.596 min, 測定条件C)
【0343】
k)N-(tert-ブトキシカルボニル)-N,β,β-トリメチル-L-フェニルアラニル-N-{(3S,4E)-6-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ]-2、5-ジメチル-6-オキソヘキサ-4-エン-3-イル}-N,3-ジメチル-L-バリンアミド(参考例4)の製造
参考例1-o)と同様の手法で、化合物D10(286mg)から参考例4(227mg)を得た。
LC-MS: 693 (M+Na)+ (1.658 min, 測定条件C)
【0344】
参考例5
文献(国際公開第2003/082268号)に記載の方法に従い、下表1に示す化合物を得た。
【0345】
【表1】
【0346】
参考例6~7
参考例5を用いて、参考例1の工程m)又は参考例1の工程o)と同様に反応及び処理をし、下表2に示す化合物を得た。
【0347】
【表2】
【0348】
参考例8~9
対応する原料化合物を用いて、参考例1のm)工程と同様に反応及び処理をし、下表3に示す化合物を得た。
【0349】
【表3】
【0350】
参考例10~35
対応する原料化合物を用いて、参考例2の工程a)と同様に反応及び処理をし、下表4に示す化合物を得た。
【0351】
【表4】
【0352】
参考例36~53
対応する原料化合物を用いて、参考例2の工程b)と同様に反応及び処理をし、下表5に示す化合物を得た。
【0353】
【表5】
【0354】
参考例54
ジエチル ((S,E)-4-((S)-2-アミノ-N,3,3-トリメチルブタナミド)-2,5-ジメチルヘキサ-2-エノイル)-D-グルタミン酸
【化71】
【0355】
a)(S,E)-4-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-N,3,3-トリメチルブタナミド)-2,5-ジメチルヘキサ-2-エノン酸の製造
参考例1-n)と同様の手法で、エチル (S,E)-4-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-N,3,3-トリメチルブタナミド)-2,5-ジメチルヘキサ-2-エノエート(1.64g)から(S,E)-4-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-N,3,3-トリメチルブタナミド)-2,5-ジメチルヘキサ-2-エノン酸(1.55g)を得た。
LC-MS:385(M+H)/0.986min、測定条件E
【0356】
b)ジエチル((S,E)-4-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-N,3,3-トリメチルブタナミド)-2,5-ジメチルヘキサ-2-エノイル)-D-グルタミン酸の製造
参考例1-m)と同様の手法で、(S,E)-4-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-N,3,3-トリメチルブタナミド)-2,5-ジメチルヘキサ-2-エノン酸(376mg)からジエチル ((S,E)-4-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-N,3,3-トリメチルブタナミド)-2,5-ジメチルヘキサ-2-エノイル)-D-グルタミン酸(500mg)を得た。
【0357】
c)ジエチル((S,E)-4-((S)-2-アミノ-N,3,3-トリメチルブタナミド)-2,5-ジメチルヘキサ-2-エノイル)-D-グルタミン酸(参考例54)の製造
参考例103-a)と同様の手法で、ジエチル ((S,E)-4-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-N,3,3-トリメチルブタナミド)-2,5-ジメチルヘキサ-2-エノイル)-D-グルタミン酸(528mg)から参考例54(515mg)を得た。
LC-MS:470(M+H)/1.223min、測定条件C
【0358】
参考例55
tert-ブチル N5-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-D-グルタミネート
【化72】
【0359】
a)tert-ブチル N2-(tert-ブトキシカルボニル)-N5-(2-(2,5-ジオキシ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-D-グルタミネートの製造
BOC-D-グルタミン酸 α-tert-ブチルエステル(2.061g)、1-(2-アミノ-エチル)-ピロール-2,5-ジオン ハイドロクロリド(1.20g)、2-(1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾールl-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルイソウロニウムヘキサフルオロフォスフェイト(V)(3.87g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.47mL)及びN,Nージメチルホルムアミド(10mL)の混合液を、室温にて1時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム液、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル)で生成することによりtert-ブチル N2-(tert-ブトキシカルボニル)-N5-(2-(2,5-ジオキシ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-D-グルタミネート(2.8g)を得た。
LC-MS:426(M+H)(1.030min、測定条件F)
【0360】
b)tert-ブチル N5-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-D-グルタミネート(参考例5)の製造
tert-ブチル N2-(tert-ブトキシカルボニル)-N5-(2-(2,5-ジオキシ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-D-グルタミネート(51.8mg)、TFA(1mL)の混合液を室温にて1時間20分攪拌した。反応液を氷冷後、減圧濃縮し、参考例55を得た。化合物は、精製せずに次の反応に用いた。
LC-MS:326(M+H)(0.496min、測定条件F)
【0361】
参考例56
N5-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-D-グルタミン
【化73】
【0362】
tert-ブチル N2-(tert-ブトキシカルボニル)-N5-(2-(2,5-ジオキシ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-D-グルタミネート(64.8mg)、TFA(1mL)の混合液を室温にて17時間攪拌した。反応終了後、減圧濃縮し、参考例56を得た。化合物は、精製せずに次の反応に用いた。
LC-MS:270(M+H)(0.254min、測定条件F)
【0363】
参考例101
tert-ブチル((S)-3-メチル-1-(((S)-1-((4-((((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-1-オキソ-5-ウレイドペンタン-2-イル)アミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート
【化74】
【0364】
a)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル (tert-ブトキシカルボニル)-L-バリネート(化合物E1)の製造
参考例1-o)と同様の手法で、(tert-ブトキシカルボニル)-L-バリン(3.72g)から化合物E1(4.9g)を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3): 1.01(3H,d,J=7.2Hz), 1.05(3H,d,J=6.8Hz), 1.44(9H,s), 2.28(1H,m), 2.82(4H,s), 4.58(1H,m), 4.97(1H,m)
【0365】
b)(S)-2-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルブタナミド)-5-ウレイドペンタン酸(化合物E2)の製造
参考例2-a)と同様の手法で、2,5-ジオキソピロリジン-1-イル (tert-ブトキシカルボニル)-L-バリネート(4.9g)から化合物E2(5.31g)を得た。
LC-MS:375(M+H)/0.972min、測定条件C
【0366】
c)tert-ブチル((S)-1-(((S)-1-((4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)-1-オキソ-5-ウレイドペンタン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート(化合物E3)の製造
化合物E2(701mg)、4-アミノベンジルアルコール(461mg)、エチル 2-エトキシキノリン-1(2H)-カルボキシレート(926mg)、メタノール(10mL)及びジクロロメタン(20mL)の混合液を遮光下、室温にて24時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)にて精製することにより、化合物E3(243mg)を得た。
LC-MS:480(M+H)/1.583min、測定条件G
【0367】
d)tert-ブチル((S)-3-メチル-1-(((S)-1-((4-((((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-1-オキソ-5-ウレイドペンタン-2-イル)アミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート(参考例101)の製造
化合物E3(2.0g)、ビス(4-ニトロフェニル)カーボネート(3.81g)、N,N-ジイソプロピルエチレンジアミン(2.179mL)及びN,N-ジメチルホルムアミドの混合液を室温にて2時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後に、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより、参考例101(2.1g)を得た。
LC-MS:645(M+H)/1.225min、測定条件G
【0368】
参考例102
tert-ブチル((S)-3-メチル-1-(((S)-1-((4-((((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート
【化75】
【0369】
a)(tert-ブトキシカルボニル)-L-バリル-L-アラニン(化合物F1)の製造
参考例2-a)と同様の手法で、2,5-ジオキソピロリジン-1-イル (tert-ブトキシカルボニル)-L-バリネート(1.0g)から化合物F1(676mg)を得た。
LC-MS:278(M-H)-/0.925 min、測定条件G
【0370】
b)tert-ブチル((S)-1-(((S)-1-((4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート(化合物F2)の製造
参考例101-c)と同様の手法で、化合物F1(676mg)から化合物F2(400mg)を得た。
LC-MS:394(M+H)+/0.974 min、測定条件G
【0371】
c)tert-ブチル ((S)-3-メチル-1-(((S)-1-((4-((((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート(参考例44)の製造
参考例101-d)と同様の手法で、化合物F2(400mg)から参考例102(567mg)を得た。
LC-MS:559(M+H)+/1.217 min、測定条件G
【0372】
参考例103
L-バリル-N-{4-[(5S,8S,11S,12E,16R)-8-tert-ブチル-16,18-ジカルボキシ-4,10,13-トリメチル-5-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-3,6,9,14-テトラオキソ-11-(プロパン-2-イル)-2-オキサ-4,7,10,15-テトラアザオクタデカ-12-エン-1-イル]フェニル}-N-カルバモイル-L-オルニチンアミド
【化76】
【0373】
a)メチル N,β,β,1-テトラメチル-L-トリプトファンエステル(化合物G1)の製造
化合物A11(402mg)のクロロホルム(5mL)溶液にトリフルオロ酢酸(1mL)を加えて、25℃にて45分間撹拌した。反応終了後、反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;メタノール:クロロホルム)で精製することにより化合物G1(306mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3):1.47-1.48(6H, m), 2.21 (3H, d, J = 1.8 Hz), 3.61 (3H, d, J = 2.3 Hz), 3.71 (1H, d, J =1.8 Hz), 3.72 (3H, d, J = 1.8 Hz), 6.83 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.08 (1H, t, J =8.2 Hz), 7.19 (1H, t, J = 8.2 Hz), 7.27 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.81 (1H, d, J =8.2 Hz).
LC-MS: 275 (M+H)+ (0.856 min, 測定条件D)
【0374】
b)N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-バリル-N-カルバモイル-N-{4-[({[(2S)-1-メトキシ-3-メチル-3-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1-オキソブタン-2-イル](メチル)カルバモイル}オキシ)メチル]フェニル}-L-オルニチンアミド(化合物G2)の製造
化合物G1(306mg)、参考例43(101mg)、2,6-ルチジン(663mg)及びN,N-ジメチルホルムアミド(5.5mL)の混合液を45℃にて8時間撹拌した。反応終了後、水を加え加え、クロロホルムで抽出した。有機層を水と飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール)で精製することにより化合物G2(516mg)を得た。
LC-MS: 780 (M+H)+ (1.369 min, 測定条件D)
【0375】
c)N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-バリル-N-カルバモイル-N-{4-[({[(1S)-1-カルボキシ-2-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロピル](メチル)カルバモイル}オキシ)メチル]フェニル}-L-オルニチンアミド(化合物G3)の製造
参考例1-l)と同様の手法で、化合物G2(516mg)から化合物G3(175mg)を得た。
LC-MS: 766 (M+H)+, 764 (M-H)- (1.285 min, 測定条件D)
【0376】
d)N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-バリル-N-{4-[(5S,8S,11S,12E)-8-tert-ブチル-4、10、13-トリメチル-5-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-3,6,9,14-テトラオキソ-11-(プロパン-2-イル)-2,15-ジオキサ-4,7,10-トリアザヘプタデカ-12-エン-1-イル]フェニル}-N-カルバモイル-L-オルニチンアミド(化合物G4)の製造
参考例1-m)と同様の手法で、化合物G3(130mg)から化合物G4(146mg)を得た。
LC-MS: 1060 (M+H)+ (1.380 min, 測定条件D)
【0377】
e)N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-バリル-N-{4-[(5S,8S,11S,12E)-8-tert-ブチル-13-カルボキシ-4,10-ジメチル-5-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-3,6,9-トリオキソ-11-(プロパン-2-イル)-2-オキサ-4,7,10-トリアザテトラデカ-12-エン-1-イル]フェニル}-N-カルバモイル-L-オルニチンアミド(化合物G5)の製造
参考例1-n)と同様の手法で、化合物G4(148mg)から化合物G5(145mg)を得た。
LC-MS: 1032 (M+H)+ (1.231 min, 測定条件D)
【0378】
f)N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-バリル-N-{4-[(5S,8S,11S,12E)-8-tert-ブチル-14-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ]-4、10、13-トリメチル-5-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-3,6,9,14-テトラオキソ-11-(プロパン-2-イル)-2-オキサ-4,7,10-トリアザテトラデカ-12-エン-1-イル]フェニル}-N-カルバモイル-L-オルニチンアミド(化合物G6)の製造
参考例1-o)と同様の手法で、化合物G5(145mg)から化合物G6(139mg)を得た。
LC-MS: 1129 (M+H)+ (1.271 min, 測定条件D)
【0379】
g)ジエチル(2R)-2-{[(5S,8S,11S,12E)-1-(4-{[(2S)-2-({(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-メチルブタノイル}アミノ)-5-(カルバモイルアミノ)ペンタノイル]アミノ}フェニル)-8-tert-ブチル-4、10、13-トリメチル-5-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-3,6,9,14-テトラオキソ-11-(プロパン-2-イル)-2-オキサ-4,7,10-トリアザテトラデカ-12-エン-14-イル]アミノ}ペンタンジオエート(化合物G7)の製造
参考例3-a)と同様の手法で、化合物G6(139mg)から化合物G7(154mg)を得た。
LC-MS: 1217 (M+H)+ (1.533 min, 測定条件D)
【0380】
h)ジエチル(2R)-2-{[(5S,8S,11S,12E)-1-(4-{[(2S)-2-{[(2S)-2-アミノ-3-メチルブタノイル]アミノ}-5-(カルバモイルアミノ)ペンタノイル]アミノ}フェニル)-8-tert-ブチル-4、10、13-トリメチル-5-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-3,6,9,14-テトラオキソ-11-(プロパン-2-イル)-2-オキサ-4,7,10-トリアザテトラデカ-12-エン-14-イル]アミノ}ペンタンジオエート(化合物G8)の製造
参考例103-a)と同様の手法で、化合物G7(92mg)から化合物G8(87mg)を得た。
LC-MS: 1117 (M+H)+ (1.279 min, 測定条件D)
【0381】
i)L-バリル-N-{4-[(5S,8S,11S,12E,16R)-8-tert-ブチル-16,18-ジカルボキシ-4,10,13-トリメチル-5-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-3,6,9,14-テトラオキソ-11-(プロパン-2-イル)-2-オキサ-4,7,10,15-テトラアザオクタデカ-12-エン-1-イル]フェニル}-N-カルバモイル-L-オルニチンアミド(参考例103)の製造
参考例1-n)と同様の手法で合成を行い、逆相カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;0.1%TFAアセトニトリル:水)で精製することにより化合物G8(87mg)から参考例103(79mg)を得た。
LC-MS: 1061 (M+H)+ (1.124 min, 測定条件D)
【0382】
参考例104
L-プロリル-L-アラニル-N-(4-{[(N-{(2E,4S)-2,5-ジメチル-4-[メチル(N、β、β、1-テトラメチル-L-トリプトフイル-3-メチル-L-バリル)アミノ]ヘキサ-2-エノイル}-L-α-グルタミル)オキシ]メチル}フェニル)-L-アスパルトアミド
【化77】
【0383】
a)9H-フルオレン-9-イルメチル[(2S)-1-{[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]アミノ}-1,4-ジオキソ-4-(トリチルアミノ)ブタン-2-イル]カルバメート(化合物H1)の製造
-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]-N-トリチル-L-アスパラギン(Fmoc-Asn(Trt)-OH、18g)とp-アミノベンジルアルコール(3.9g)のTHF溶液150mL)に1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)(8.6g)を加えて、室温で一晩攪拌した。溶媒を減圧下、留去し得られた残査に酢酸エチルを加えて、室温で撹拌した。得られた固体をろ過によって回収し、酢酸エチルで洗浄し、減圧下で乾燥した。同様の洗浄を再度行い、化合物H1(19.2g)を得た。
LC-MS: 702 (M+H)+ (3.36 min, 測定条件G)
【0384】
b)N-[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]-N-トリチル-L-アスパルトアミド(化合物H2)の製造
化合物H1(3.0g)に30%ピペリジン-THF溶液を加えて、室温で5時間撹拌した。減圧下で濃縮し、得られた残査にジエチルエーテルを加えて、洗浄し固体をろ過によって回収した。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄し、乾燥した。同様の洗浄を再度行い、化合物H2(1.82g)を得た。
LC-MS: 480 (M+H)+ (3.00 min, 測定条件F)
【0385】
c)L-アラニル-N-[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]-N-トリチル-L-アスパルトアミド(化合物H3)の製造
化合物H2(1.5g)、N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]-L-アラニン(Fmoc-Ala-OH、1.23g)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(714mg)、1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール・1水和物(505mg)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(15mL)を室温で一晩撹拌した。酢酸エチルを加えた後に、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し有機溶媒層を回収、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムの除去後、濃縮し、得られたアモルファスをショートカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;メタノール:クロロホルム)によって精製した。得られたアモルファスに30%ピペリジン-THF溶液を加えて、室温で5時間撹拌した。減圧下で濃縮し、得られた残査をカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;メタノール:クロロホルム)によって精製し、化合物H3(562mg)を得た。
LC-MS: 551 (M+H)+ (2.89 min, 測定条件F)
【0386】
d)1-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリル-L-アラニル-N-[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]-N-トリチル-L-アスパルトアミド(化合物H4)の製造
化合物H3(275mg)、1-(tert-ブトキシカルボニル)-L-プロリン(Boc-Pro-OH、118mg)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(714mg)、1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール・1水和物(505mg)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(15mL)を室温で一晩撹拌した。酢酸エチルを加えた後に、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し有機溶媒層を回収、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムの除去後、濃縮し、得られたアモルファスをカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;メタノール:クロロホルム)によって精製し、化合物H4(321mg)を得た。
LC-MS: 748 (M+H)+ (2.42 min, 測定条件G)
【0387】
e)1-(4-{[(2S)-2-{[(2S)-2-({[(2S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン-2-イル]カルボニル}アミノ)プロパノイル]アミノ}-4-オキソ-4-(トリチルアミノ)ブタノイル]アミノ}ベンジル)5-tert-ブチル(2S)-2-{[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]アミノ}ペンタンジオエート(化合物H5)の製造
化合物H4(242mg)、(2S)-5-tert-ブトキシ-2-{[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]アミノ}-5-オキソペンタン酸・1水和物(Fmoc-Glu(OtBu)-OH・HO、150mg)、塩化パラトルエンスルホニル(TsCl)(65mg)をアセトニトリル(5.0mL)に溶解させ、0℃に冷却した。そのアセトニトリル溶液に1-メチルイミダゾール(0.06mL)を加えて、室温に戻しながら一晩撹拌した。酢酸エチルを加えた後に、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し有機溶媒層を回収、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムの除去後、濃縮し、得られたアモルファスをカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;メタノール:クロロホルム)によって精製し、化合物H5(342mg)を得た。
LC-MS: 1155 (M+H)+ (4.60 min, 測定条件G)
【0388】
f)1-(4-{[(2S)-2-{[(2S)-2-({[(2S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン-2-イル]カルボニル}アミノ)プロパノイル]アミノ}-4-オキソ-4-(トリチルアミノ)ブタノイル]アミノ}ベンジル)5-tert-ブチル(2S)-2-アミノペンタンジオエート(化合物H6)の製造
参考例104-b)と同様の手法で、化合物H5(342mg)から化合物H6(110mg)を得た。
LC-MS: 933 (M+H)+ (2.23 min, 測定条件G)
【0389】
g)1-(4-{[(2S)-2-{[(2S)-2-({[(2S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン-2-イル]カルボニル}アミノ)プロパノイル]アミノ}-4-オキソ-4-(トリチルアミノ)ブタノイル]アミノ}ベンジル)5-tert-ブチル(2S)-2-{[(6S,9S,12S,13E)-9-tert-ブチル-2,2,5,11,14-ペンタメチル-6-[2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル]-4,7,10,15-テトラオキソ-12-(プロパン-2-イル)-3-オキサ-5,8,11-トリアザペンタデカ-13-エン-15-イル]アミノ}ペンタンジオエート(化合物H7)の製造
化合物H6(30mg)、化合物A13(22mg)、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(20mg)、4-ジメチルアミノピリジン(5mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶解し、0℃に冷却した。その混合溶液に、N-ジイソプロピルエチルアミン(0.017mL)を滴下し、室温に戻しながら一晩攪拌した。酢酸エチルを加えて、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムの除去後、濃縮し、得られたアモルファスをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;メタノール:クロロホルム)によって精製し、化合物H7(42mg)を得た。
LC-MS: 1541 (M+H)+ (5.23 min, 測定条件G)
【0390】
h)L-プロリル-L-アラニル-N-(4-{[(N-{(2E,4S)-2,5-ジメチル-4-[メチル(N、β、β、1-テトラメチル-L-トリプトフイル-3-メチル-L-バリル)アミノ]ヘキサ-2-エノイル}-L-α-グルタミル)オキシ]メチル}フェニル)-L-アスパルトアミド(参考例104)の製造
参考例103-a)と同様の手法で合成を行い、逆相カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;0.1%TFAアセトニトリル:水)で精製することにより、化合物H7(42mg)から参考例104(10.3mg)を得た。
LC-MS: 1043 (M+H)+ (2.79 min, 測定条件F)
【0391】
参考例105~116
対応する原料化合物を用いて、参考例103及び参考例104と同様に反応及び処理をし、下表6に示す化合物を得た
【0392】
【表6】
【0393】
参考例117~119
対応する原料化合物を用いて参考例104と同様に反応及び処理をし、下表7に示す化合物を得た。
【0394】
【表7】
【0395】
実施例1
N,β,β-テトラメチル-L-トリプトフイル-N-[(3S,4E)-6-{[(1R)-1,3-ジカルボキシプロピル]アミノ}-2,5-ジメチル-6-オキソヘキス-4-エン-3-イル]-N、3-ジメチル-L-バリンアミド
【化78】
参考例3(100mg)のクロロホルム溶液(1.0mL)にトリフルオロ酢酸(0.2mL)を加えて、25℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;メタノール:クロロホルム)で精製することにより実施例1(60mg)を得た。
LC-MS:656(M+H)(1.036min,測定条件C)
【0396】
実施例2
N,β,β-トリメチル-L-フェニルアラニル-N-[(3S,4E)-6-{[(1R)-1,3-ジカルボキシプロピル]アミノ}-2,5-ジメチル-6-オキソヘキス-4-エン-3-イル]-N、3-ジメチル-L-バリンアミド
【化79】
参考例16(20mg)のクロロホルム溶液(1.0mL)にトリフルオロ酢酸(0.2mL)を加えて、25℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液を逆相カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;0.1%TFAアセトニトリル:水)で精製することにより実施例2(9.3mg)を得た。
LC-MS:603(M+H)(0.870min,測定条件D)
【0397】
実施例3
N-[(2E,4S)-2,5-ジメチル-4-(メチル{3-メチル-N-[(2R)-1-(プロパン-2-イル)ピペリジン-2-カルボニル]-L-バリル}アミノ)ヘキサ-2-エノイル]-D-グルタミン酸
【化80】
参考例6(22.1mg)のテトラヒドロフラン(4.0mL)と水(1.0mL)の混合溶液を0℃に冷却した後、水酸化リチウム(3.12mg)を加え、その後25℃にて12時間撹拌した。反応終了後、反応液を逆相カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;0.1%TFAアセトニトリル:水)で精製することにより実施例3(5.8mg)を得た。
LC-MS:567(M+H)(0.80min,測定条件G)
【0398】
実施例4~10
対応する原料化合物を用いて実施例1、2又は3と同様に反応及び処理し、下記表8に示す化合物を得た。
【0399】
【表8】
【0400】
実施例11
N,β,β-トリメチル-L-フェニルアラニル-N-[(3S,4E)-6-({(5R)-5-カルボキシ-5-[4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ブタナミド]ペンチル}アミノ)-2,5-ジメチル-6-オキソヘキサ-4-エン-3-イル]-N,3-ジメチル-L-バリンアミド
【化81】
実施例10の2トリフルオロ酢酸塩(35.1mg)、N-スクシンイミジル 4-マレイミドブチラート(17.7mg)、N-ジイソプロピルエチルアミン(27.3mg)及びN,N-ジメチルホルムアミド(1mL)の混合液を、25℃にて3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を逆相カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;0.1%TFAアセトニトリル:水)で精製することにより実施例11(9.5mg)を得た。
LC-MS:767(M+H)(0.969min,測定条件G)
【0401】
実施例12~32
対応する原料化合物を用いて実施例1、2、3又は11と同様に反応及び処理し、下記表9に示す化合物を得た。
【0402】
【表9】
【0403】
実施例33
N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]-L-バリル-N-{4-[(5S、8S、11S、12E、16R)-8-tert-ブチル-16,18-ジカルボキシ-4,10,13-トリメチル-3,6,9,14-テトラオキソ-5-(2-フェニルプロパン-2-イル)-11-(プロパン-2-イル)-2-オキサ-4,7,10,15-テトラアザオクタデカ-12-エン-1-イル]フェニル}-N-カルバモイル-L-オルニチンアミド
【化82】
参考例116のトリフルオロ酢酸塩(0.7mg)、N-スクシンイミジル 6-マレイミドヘキサノエート(0.4mg)、N-ジイソプロピルエチルアミン(0.16mg)及びN,N-ジメチルホルムアミド(0.5mL)の混合液を、25℃にて3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を逆相カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;0.1%TFAアセトニトリル:水)で精製することにより実施例33(0.73mg)を得た。
LC-MS:1201(M+H)(1.110min,測定条件D)
【0404】
実施例34~36
対応する原料化合物を用いて実施例33と同様に反応及び処理し、下記表10に示す化合物を得た。
【0405】
【表10】
【0406】
実施例37
(3S,6S,9S,10E,14R)-14-(3-{[2-(3-{[(2R)-2-アミノ-2-カルボキシエチル]スルファニル}-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル]アミノ}-3-オキソプロピル)-6-tert-ブチル-8,11-ジメチル-4,7,12-トリオキソ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-9-(プロパン-2-イル)-2,5,8,13-テトラアザペンタデカ-10-エン-15-オイック アシド
【化83】
実施例28(10mg)の水溶液(1.0mL)にシステイン(1.73mg)を加えて、4℃で1時間撹拌した。その後、反応溶液を逆相カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;0.1%TFAアセトニトリル:水)で精製することにより実施例37(10mg)を得た。
LC-MS: 846 (M+H)+, 844 (M-H)-(0.855 min, 測定条件B)
【0407】
実施例38~59
対応する原料化合物を用いて実施例37と同様に反応及び処理し、下表11に示す化合物を得た
【0408】
【表11】
【0409】
実施例ADCの製造に用いる抗体は、購入可能であるか、又は下表に示す文献に従って製造することができる。
【0410】
【表12】
【0411】
実施例ADC1
ブレンツキシマブ-実施例34複合体(平均DAR:7.41)
【化84】
ブレンツキシマブ(91mg)のリン酸緩衝生理水溶液(3.77mL、pH7.4)に、1mmol/Lのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)のトリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸緩衝液(12.2mL、pH7.5)を加え、37℃にて45分間インキュベートした。抗体溶液を0℃に冷却した後、リン酸緩衝生理水溶液(pH7.4)で予備平衡させたPD-10脱塩カラムで処理することにより、還元された抗CD30抗体(ブレンツキシマブ)のリン酸緩衝生理水溶液(pH7.4)を得た。これを0℃に冷却した後、リン酸緩衝生理水溶液(pH7.4)で10倍希釈した、実施例34(12.2mL)の1mmol/L DMSO溶液を修飾化剤として加え、完全に混合し、4℃にて16時間インキュベートした。その後、リン酸緩衝生理水溶液(pH7.4)で予備平衡させたPD-10脱塩カラムで精製した後、遠心濃縮することで、実施例ADC1(78.2mg)を得た。
【0412】
得られたADCの平均DARは、還元性若しくは非還元性SDS-PAGE、又はHPLC-HICによって測定した。また、平均DARは、紫外可視吸収分光法(UV-Vis)、還元性又は非還元性SDS-PAGE、HPLC-HIC、SEC、RP-HPLC、LC-MS等によって、定性的又は定量的に測定することができる。これらの方法は、Antibody Drug Conjugates,Methods in Molecular Biology vol.1045,2013.pp267-284.L.Ducry,Ed.に記載される。
【0413】
ヒトIgG抗体で作製したADCの平均薬物抗体比が8の場合、還元性及び非還元性SDS-PAGEの結果からADCの生成を推定することもできる。具体的には、SeeBlue(登録商標)Plus2(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)をマーカーに、実施例ADCをジスルフィド非還元条件下でSDS-PAGE解析した結果、分子量50kDa及び分子量25kDa付近のバンドを強く検出した場合、これは、抗体の軽鎖-重鎖間及びヒンジのジスルフィド結合に関与するシステイン残基に修飾化剤がコンジュゲートしたことを示し、即ち、平均薬物抗体比が8のADCが得られたことを意味する。
【0414】
HPLC-HIC解析により求めた実施例ADC1の平均DARは、7.41であった。
【0415】
実施例ADC2
ブレンツキシマブ-実施例34複合体(平均DAR:3.76)
【化85】
実施例ADC1のプロトコールにおいて、TCEP又は修飾化剤の添加量を変更することで、ADCのDARを調整することができる。実施例ADC1のプロトコールに従い、TCEPを4当モル量用いることで実施例ADC2を得た。
【0416】
実施例ADC3~26
対応する抗体と修飾化剤を用いて、実施例ADC1と同様に反応及び処理し、下記に示すADCを得た。また、これらのADCの平均DARを、実施例ADC1と同様に、UV-Vis、HPLC-HIC又はSDS-PAGE解析から算出又は推定した。
【化86】
【0417】
【表13】
【0418】
「SDS-PAGEにてADC生成を確認した」とは、SeeBlue(登録商標)Plus2(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)をマーカーに、実施例ADCをジスルフィド非還元条件下でSDS-PAGE解析した結果、分子量50kDa及び分子量25kDa付近のバンドを強く検出したことを意味する。これは、抗体の軽鎖-重鎖間及びヒンジのジスルフィド結合に関与するシステイン残基に修飾化剤がコンジュゲートしたことを示し、ADCが得られたことを意味する。
【0419】
上表13における実施例のADCのHIC保持時間(分)は、HPLC-HIC解析により観測された、DARが8であるADCのピークのものである。また、比較例1のADCのRt(min)は、DARが8であるADCのピークのものである。
【0420】
上表13の比較例化合物1とは、国際公開第2004/010957号に開示されている下記化合物を表す。比較例化合物1はベドチンと呼ばれる。
【化87】
【0421】
上表13の比較例ADC1は、比較例化合物1とブレンツキシマブとの抗体薬物複合体である、ブレンツキシマブ ベドチンに相当する。ブレンツキシマブ ベドチンはアドセトリス(商品名)として日本で薬事承認を受けている。
【0422】
比較例化合物2とは、モノメチルオーリスタチン(MMAE)であり、試薬として購入することができる。ブレンツキシマブ ベドチンは細胞内で代謝を受けることでMMAEを放出することが知られている(非特許文献5)。
【0423】
以下に、本発明の抗体薬物複合体の特定の実施例に係る薬理試験結果を示し、その薬理作用を説明するが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
【0424】
試験例1:ブタチューブリンを用いた微小管重合阻害活性評価(1)
Cytoskeleton社より購入したチューブリン重合阻害アッセイキット(カタログ番号:BK006P)を用い、キットに付属するプロトコールに従って、濃度0.91μMの実施例の化合物の重合阻害活性を評価した。プロトコールを要約すると、96穴マイクロプレートに、評価対象の化合物の80mM PIPES pH6.9、2mM MgCl、0.5mM EGTA、及び5%DMSO緩衝液を、10μLずつ添加し、これらに3mg/mLのブタチューブリン 80mM PIPES pH6.9、2mM MgCl、0.5mM EGTA、1mM GTP、及び10.2%glycerol溶液を100μLずつ添加した。チューブリンの重合する様子を経時的に調べるため、340nmの吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて、37℃にて測定した。チューブリンの重合が進むにつれて340nmの吸光度が上昇する。結果を図1に示す。
【0425】
図1に示すように、モノメチルオーリスタチン(MMAE)、ヘミアスタリン及び実施例1は、微小管重合阻害評価試験において同等の微小管重合阻害活性を示した。
【0426】
試験例2:ブタチューブリンを用いた微小管重合阻害活性評価(2)
Cytoskeleton社より購入したチューブリン重合阻害アッセイキット(カタログ番号:BK006P)を用い、キットに付属するプロトコールに従って、濃度9.1μMの実施例の化合物の重合阻害活性を評価した。96穴マイクロプレートに、評価対象の化合物の80mM PIPES pH6.9、2mM MgCl、0.5mM EGTA、及び5%DMSO緩衝液を、10μLずつ添加し、これらに3mg/mLのブタチューブリン 80mM PIPES pH6.9、2mM MgCl、0.5mM EGTA、1mM GTP、及び10.2%glycerol溶液を100μLずつ添加した。チューブリンが重合する様子を経時的に調べるため、340nmの吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて、37℃にて測定した。チューブリンの重合が進むにつれて、340nmの吸光度は上昇する。
【0427】
チューブリン重合阻害活性は、アッセイ開始60分後における、重合したチューブリンの割合によって評価した。具体的には、化合物を加えていないウェルにおける重合したチューブリンの吸光度で、化合物を加えたウェルにおける重合したチューブリンの吸光度を除し、その値を100倍することで、微小管重合率(%)を算出した。その結果を下表14に示す。
【0428】
【表14】
【0429】
微小管重合率が低い値であるほど、化合物が微小管の重合を強く阻害していることを示す。
【0430】
試験例1及び試験例2の結果が示すように、標的細胞内で抗体薬物複合体が代謝されることによって生成される式(1-1)、式(1-2)及び式(1-3)で表される本発明のへミアスタリン誘導体は、チュ-ブリン重合阻害活性を示すことが明らかとなった。
【0431】
試験例3:iPS細胞に対する細胞傷害活性の評価
ヒトiPS細胞(201B7)を、Scientific Reports,4,3594(2014)に記載の方法に準じてフィーダーフリー培養した。フィーダーフリー培地としてはStemFit培地(AK03N、味の素社製)、フィーダーフリー足場にはiMatrix-511(ニッピ社製)を用いた。サブコンフレントになったヒトiPS細胞を、PBSにて洗浄後、TrypLE Select(Life Technologies社製)を用いて単一細胞へ分散した。その後、このヒトiPS細胞を、iMatrix-511にてコートしたプラスチック培養ディッシュに播種し、Y27632(ROCK阻害物質、10μmol/L)存在下、StemFit培地にて37℃、5%CO下でフィーダーフリー培養した。この時、プラスチック培養ディッシュとして、12ウェルプレート(AGCテクノグラス製、細胞培養用、培養面積3.8cm)を用い、単一細胞へ分散されたヒトiPS細胞の播種細胞数は0.5x10とした。播種から1日後に、Y27632を含まないStemFit培地に交換し、さらに播種から3日後に同様に培地交換を行った。播種から4日後に、このヒトiPS細胞に、PBSに溶解した実施例ADC1、及び実施例ADC23の化合物を、終濃度200μg/mLとなるようにStemFit培地(AK03、味の素社製)に加えて72時間培養した。72時間後、培地を除去しPBSにて洗浄後、TrypLE Select(Life Technologies社製)を用いて単一細胞へ分散し、カウンテス自動セルカウンター付属のトリパンブルー0.4%溶液(Life Technologies社製)で染色した後Countess自動セルカウンターで生細胞数を計測し、コントロールに対する細胞生存率を算出した。結果を図2に示す。
【0432】
図2に示すように、実施例ADC1及び実施例ADC23の化合物はいずれも200μg/mLの濃度でiPS細胞に対して強い細胞傷害活性が認められた。細胞生存率はいずれも1.2%以下であった。
【0433】
試験例4:分化細胞に対する細胞傷害活性の評価
試験例3と同様に、フィーダーフリー培養したサブコンフレント1日前のヒトiPS細胞(201B7)を、TrypLE Select(Life Technologies社製)を用いて単一細胞へ分散した。その後、このヒトiPS細胞を、Vitronectin,truncated recombinant human(Life Technologies社製)にてコートしたプラスチック培養ディッシュに播種し、Y27632(ROCK阻害物質、10μmol/L)存在下、StemFit培地にて37℃、5%CO下でフィーダーフリー培養した。この時、プラスチック培養ディッシュとして、6ウェルプレート(AGCテクノグラス製、細胞培養用、培養面積9.4cm)を用い、単一細胞へ分散されたヒトiPS細胞の播種細胞数は2.5x10とした。その後PSC Definitive Endoderm Induction Kit(Gibco社製)付属のDefinitive Endoderm Induction Medium Aに交換して1日培養し、さらにDefinitive Endoderm Induction Medium Bに交換して1日培養した。その後、TrypLE Select(Life Technologies社製)を用いて単一細胞へ分散し、Cellartis Hepatocyte Differentiation Kit(Takara社製)付属のHepatocyte Coatingでコートしたプラスチック培養ディッシュに播種し、37℃、5%CO下で1日培養した。この時プラスチック培養ディッシュとして24ウェルプレート(AGCテクノグラス製、細胞培養用、培養面積2cm)を用い、播種細胞数は2.5x10とした。播種2日後にPBSに溶解した実施例ADC1、及び実施例ADC23の化合物を、終濃度200μg/mLとなるように、同Kit付属のHepatocyte Progenitor Mediumに加えて72時間培養した。72時間後、培地を除去しPBSにて洗浄後、TrypLE Select(Life Technologies社製)を用いて単一細胞へ分散し、カウンテス自動セルカウンター付属のトリパンブルー溶液(Life Technologies社製)で染色した後自動セルカウンターで生細胞数を計測し、コントロールに対する細胞生存率を算出した。結果を図3に示す。
【0434】
図3に示すように実施例ADC1及び実施例ADC23の化合物は200μg/mLの濃度で分化誘導細胞に対して弱い傷害活性が認められた。細胞生存率は、実施例ADC1が34.7%であり、実施例ADC23が24.6%であった。
【0435】
試験例5:膜透過性試験
人工膜透過性試験(PAMPA)により、次のように実施例の化合物の膜透過性を試験した。Donor plateに実施例の化合物を添加したSystem solution(pION inc.)を200μL、GIT Lipid-0(pION inc.)を4μLずつ添加した。Acceptor plateにAcceptor Sink Buffer(pION inc.)を200μL添加した。両プレートを重ね合わせ、37℃で4時間インキュベートした後、アクセプター側及びドナー側の溶液のUVを、UV plate reader(190-500nm)にて測定した。UV吸収の乏しい化合物はLC-MSにて測定した。薬物の透過係数P(10-6cm/sec)を下式により算出した。結果を表15に示す。
【数1】
【0436】
【表15】
【0437】
試験例5の結果から、式(1-1)、式(1-2)及び式(1-3)で表される実施例の化合物が、モノメチルオーリスタチン(MMAE)及びヘミアスタリンよりも細胞膜透過性が低いことが明らかになった。
【0438】
試験例1~5の結果から、iPS細胞と分化細胞が共存した状態に、式(2-1)及び式(2-2)で表される抗体薬物複合体を作用させると、抗体薬物複合体はiPS細胞選択的に細胞傷害性を示すことが期待される。また、iPS細胞に取り込まれた本発明の抗体薬物複合体が代謝されることで生成される化合物は、低細胞膜透過性のため分化細胞内への移行が抑えられる。それゆえ、本発明の抗体薬物複合体は、iPS細胞と比較して分化細胞に対する細胞傷害性が低いことが期待できる。したがって、本発明の抗体薬物複合体によれば、iPS細胞群を分化誘導させた後、分化細胞と残留iPS細胞の不均一状態から、残留iPS細胞を選択的に除去し、効率的に分化細胞を取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0439】
以上で説明したように、本発明の抗体薬物複合体は、未分化状態のiPS細胞に対し選択的に細胞傷害活性を示す一方、分化細胞に対しての細胞傷害性が低いことから、細胞選択的な多能性幹細胞の除去剤となることが期待される。
図1
図2
図3