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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】演算方法、及び演算装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/367 20200101AFI20240215BHJP
【FI】
G06F30/367
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021001394
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2021140755
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2020035205
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】伊見 仁
(72)【発明者】
【氏名】岡野 資睦
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/058446(WO,A1)
【文献】特開2016-095689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子の電気特性の情報を有する素子モデルを複数接続する回路モデルを生成するモデル生成工程と、
前記複数の前記素子モデルごとの電気特性の情報を用いて、所定の時系列な入力値に対して前記素子モデルのスイッチングで時間ステップごとに発生する電力を時系列に演算する実行処理工程と、
前記時間ステップごとに発生する前記電力を積算した積算値に基づく出力値を、前記素子モデルのスイッチングに応じて出力する熱モデルを生成する熱モデル生成工程と、
を備える、演算方法。
【請求項2】
前記熱モデル生成工程は、前記積算値を所定の時間で除算した値、又は前記積算値を代表値とし、前記代表値に基づく前記出力値を出力する、請求項1に記載の演算方法。
【請求項3】
前記熱モデルは、前記代表値を用いて、前記所定の入力値に応じた線形演算により前記出力値を出力する、請求項2に記載の演算方法。
【請求項4】
前記実行処理工程は、第1期間の時系列な指令値に従い、前記複数の前記素子モデルごとの電気特性の情報を用いて、時間ステップごとに発生する電力を時系列に演算し、
前記第1期間よりも長い第2期間の時系列な指令値に従い、前記熱モデルを用いて前記素子モデルの時間ステップごとの発生電力を時系列に演算する、請求項1に記載の演算方法。
【請求項5】
前記実行処理工程は、前記熱モデルを用いて発生させた発生電力を用いて、前記素子モデルの前記時間ステップごとの温度を時系列に演算する、請求項4に記載の演算方法。
【請求項6】
前記素子モデルに発生する温度の時間変化を示す表示形態を生成する出力工程を、
更に備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の演算方法。
【請求項7】
スイッチング素子の電気特性の情報を有する素子モデルを複数接続する回路モデルを生成するモデル生成部と、
前記複数の前記素子モデルごとの電気特性の情報を用いて、所定の時系列な入力値に対して前記素子モデルのスイッチングで時間ステップごとに発生する電力を時系列に演算する実行処理部と、
前記時間ステップごとに発生する前記電力を積算した積算値に基づく出力値を、前記素子モデルのスイッチングに応じて出力する熱モデルを生成する熱モデル生成部と、
を備える、演算装置。
【請求項8】
複数の詳細モデルと、前記複数の詳細モデルそれぞれに対応し、計算ステップの間隔が対応する詳細モデルよりも長い簡易モデルを用いて観測したい物理特性を演算する方法であって
システムにおける観測したい物理特性を取得する工程と、
前記観測したい物理特性に対応する動作モデルであって、計算ステップの間隔が対応する詳細モデルよりも長い動作モデルを生成する動作モデル生成工程と、
動作モデル生成工程で生成した動作モデルを用いて、観測したい物理特性をシュミレーションする観測工程と、
を備え、
前記動作モデル生成工程は、前記複数の詳細モデルの応答時間に応じて前記動作モデルを生成する演算方法。
【請求項9】
前記動作モデル生成工程は、
複数の詳細モデルと、前記複数の詳細モデルそれぞれに対応する簡易モデルを用いて、複数の詳細モデルの少なくともいずれかに対応する動作モデルを演算する工程であって、前記複数の詳細モデルの中で応答時間が最も長い第1詳細モデルと、前記複数の詳細モデルの中で前記第1詳細モデルを除く詳細物理モデルに対応する簡易モデルそれぞれとを用いて第1物理モデルを生成する第1モデル生成工程と、
前記第1物理モデルを用いて、前記第1詳細モデルの時間応答に合わせた時間ステップごとに発生する物理現象を時系列に演算する第1実行処理工程と、
前記時間ステップごとに発生する前記物理現象に基づき、前記第1詳細モデルの第1動作モデルを生成する第1生成工程と、
を有する、請求項8に記載の演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、演算方法、及び演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
設計した素子を用いた電気回路について電気的な動作特性を評価するために、回路シミュレーションが実施される。この回路シミュレーションは物理特性を厳密に考慮したSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)などの回路シミュレータによって行われる。
【0003】
また、設計した素子を自動車、航空機に用いる場合の温度特性などが安全保障上で重要視されている。このため、電気回路について電気的な動作特性に加え、温度特性についての温度シミュレーションが実施される場合がある。
【0004】
このような回路シミュレーションは、電気回路が有するトランジスタ、抵抗、容量などの多くの素子を素子モデルとしてモデル化し、過渡現象を演算している。一方で、温度シミュレーションは各素子モデルの発生電力を用いて一般に演算される。
【0005】
ところが、温度シミュレーションは、各素子の応答性の時定数に対して十分長い時間の解析が必要となる。このため、多くの素子を有する電気回路の過渡現象を厳密に演算すると多大な時間がかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-193513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、物理シミュレーションをより短時間に演算可能な演算方法、及び演算装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る演算方法は、モデル生成工程と、実行処理工程と、熱モデル生成工程と、を備える。モデル生成工程は、スイッチング素子の電気特性の情報を有する素子モデルを複数接続する回路モデルを生成する。実行処理工程は、複数の素子モデルごとの電気特性の情報を用いて、所定の時系列な入力値に対して素子モデルのスイッチングで時間ステップごとに発生する電力を時系列に演算する。熱モデル生成工程は、時間ステップごとに発生する電力を積算した積算値に基づく出力値を、素子モデルのスイッチングに応じて出力する熱モデルを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る演算装置の構成を示すブロック図。
図2】モデルの一構成例を示す図。
図3】素子モデルの一例を示す図。
図4】選択可能な複数のモデルの表示例を示す図。
図5】選択可能な複数の素子モデルがモニタに表示される例を示す図。
図6】選択されたモデルに対して選択可能な指令値の例を示す図。
図7】シミュレーション中のモニタに表示される画像例を示す図。
図8】スイッチング時の電力発生シミュレーション結果を示す図。
図9】熱モデルによるシミュレーション中の画像例を示す図。
図10】熱モデル、および高精度モデルのシミュレーション例を示す図。
図11】演算装置の演算例を示すフローチャート。
図12】第2実施形態に係る演算装置の構成を示すブロック図。
図13】素子モデルを簡易化した簡易モデルの例を示す図。
図14】メカモデルを含むモデルの画像例を示す図。
図15】温度シミュレーション中のメカモデルを含むモデルの画像例を示す図。
図16】回路モデルの温度シミュレーション例を示すフローチャート。
図17】第3実施形態に係る演算装置の構成を示すブロック図。
図18】実行処理部の動作例を示すフローチャート。
図19図18のステップS402の詳細な処理例を示すフローチャート。
図20図19の処理例を時系列順に模式的に示す図。
図21】第4実施形態に係る演算装置の構成を示すブロック図。
図22】第4実施形態に係る実行処理部の動作例を示すフローチャート。
図23図22のステップS602の詳細な処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る演算方法、及び演算装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
(第1実施形態)
【0011】
図1は、第1実施形態に係る演算装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る演算装置1は、例えばSPICEなどであり、回路シミュレーションを実行する回路シミュレータ装置である。この演算装置1は、情報入力部10と、記憶部20と、モデル生成部30と、実行処理部40と、出力部50と、熱モデル生成部60と、表示部70と、を備えている。このような演算装置1は、例えばデスクトップ型のパーソナルコンピュータによって実現される。すなわち、演算装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。
【0012】
情報入力部10は、例えばキーボードやポインティングデバイス等を備えており、演算装置1を使用するユーザの操作に応じた指示信号を記憶部20、モデル生成部30、及び実行処理部40に出力する。例えば、情報入力部10が出力する指示信号は、回路モデルを構成する指示情報である回路情報、素子モデルを構成する指示情報である部品情報、および回路シミュレーションを実行する条件である解析設定情報のいずれかを有する。情報入力部10の指示動作の詳細は、図4から図6を用いて後述する。
【0013】
記憶部20は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)等で構成される。記憶部20は、モデルデータベース20aと、素子モデルデータベース20bと、を有する。モデルデータベース20aは、複数のモデル80の情報を記憶している。素子モデルデータベース20bは、モデル80を構成する複数の素子モデル88を記憶している。また、記憶部20は、シミュレーションを実行するための各種のプログラムを記憶している。これにより、演算装置1は、例えば記憶部20に記憶されるプログラムを実行することにより、各部を構成する。なお、本実施形態に係る各部は、記憶部20に記憶されるプログラムを実行することにより構成されるが、これに限定されない。例えば、モデル生成部30と、実行処理部40と、出力部50と、熱モデル生成部60とを回路で構成してもよい。
【0014】
図2は、モデル80の一構成例を示す図である。図2に示すように、モデル80は、例えばモータを回転するインバータ装置のモデルである。このモデル80は、シミュレーション対象となるインバータ装置の特性情報から構成されたモデルである。このモデル80は、例えば回路モデル82と、指令値入力部84と、制御モデル86とを有する。回路モデル82は、複数の素子モデル(詳細モデル)88と、モータモデル(動作モデル)90を有する。モデル80の詳細は後述する。
【0015】
モデル生成部30は、情報入力部10から入力された情報に従いモデル80を構成する。また、モデル生成部30は、入力された情報に従いモデル80内の素子モデル88を構成する。例えば、モデル80内の素子モデル88は、情報入力部10からの入力に従い変更可能である。
【0016】
実行処理部40は、構成されたモデル80の情報を用いて、計算ステップごとに各素子モデル88、及びモデル80内の配線の電流、電圧を演算する。この実行処理部40は、例えば、キルヒホッフなどの物理法則にしたがった1階線形微分方程式、2階線形微分方程式などの回路方程式を計算ステップごとに演算し、電流、電圧の計算ステップごとの過渡応答を演算する。
【0017】
出力部50は、実行処理部40の実行処理結果を計算ステップごとに記憶し、熱モデル生成部60に出力する。すなわち、出力部50は、補助記憶部を有する。この補助記憶部は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)等で構成される。また、出力部50は、表示画像を生成し、表示部70に出力する。
【0018】
熱モデル生成部60は、素子モデル88のスイッチングで発生する電力を積算し、素子モデル88のスイッチングの度に発生する発生電力に対応する値を示す熱モデルを動作モデルとして生成する。熱モデル生成部60の詳細も後述する。
【0019】
本実施形態に係る詳細モデルは、各部品の物理特性が定義されたモデルである。詳細モデルは、例えば、過渡応答なども演算可能な計算ステップで動作可能なモデルである。なお、本実施形態では、詳細モデルを高精度モデルと称する場合がある。
【0020】
本実施形態に係る簡易モデルは、詳細モデルを簡易化したモデルであり、例えば詳細モデルの応答特性をより長い時間間隔で平均化したモデルである。このため、簡易モデルの計算ステップは、詳細モデルの計算ステップの間隔より長く構成可能である。
【0021】
本実施形態に係る動作モデルは、詳細モデルの物理特性を特定の物理現象に特化させて簡略化させたモデルである。動作モデルの計算ステップは、詳細モデルの計算ステップの間隔より長く構成可能であり、簡易モデルの計算ステップの間隔よりも短く構成可能である。
【0022】
表示部70は、例えばモニタである。この表示部70は、出力部50から入力された画像情報を表示する。
【0023】
ここで、モデル80の詳細を説明する。図2に示すように、回路モデル82は、回路を構成する部品の電気特性の情報を有する。回路モデル82は、例えば複数の素子モデル88と、モータモデル90とを有する。素子モデル88は、例えば抵抗素子、容量素子(コンデンサ)、磁場にエネルギーを貯める受動素子(コイル)、及び能動素子であるスイッチング素子(例えばMOSFET)の接続関係の情報と、それぞれの電気特性の情報を有する。素子モデル88の詳細は後述する。
【0024】
モータモデル90は、モータの電気特性の情報を有する。例えば、モータモデル90には、供給される電流及び電圧と、発生するモータトルクとの関係などの情報が規定されている。これにより、モータモデル90に、例えば時系列な電流値及び電圧値を供給すると、時系列なモータトルクが出力される。
【0025】
指令値入力部84は、モデル80を動作させるための時系列な指令値を入力する。指令値は、例えばモデル80がインバータ装置の場合、時系列なモータトルクを発生させる制御値である。なお、モデル80がインバータ装置の場合、不図示の電源モデルも含まれる。この指令値、及びモータトルクの値は、例えば実機などから取得された実データであってもよい。或いは、後述するようにメカモデルとの連動により演算されたシミュレーション値であってもよい。これにより、制御指令値を用いてモータトルクをシミュレーション対象のインバータ装置に発生させる際の、電気、及び電圧値が計算ステップごとに演算可能となる。すなわち、本実施系形態では、時系列なモータトルクを発生させる時系列な指令値と、時系列なモータトルクを発生させる電流値及び電圧値の関係が動作モデルとなる。
【0026】
制御モデル(動作モデル)86は、時系列な指令値に従いモデル80を制御する制御装置の動作を行うモデルである。制御モデル86は、制御装置内の回路構成の情報を有しており、時系列な指令値が制御モデル86に入力された場合に、モデル80内の各構成要素への制御信号を出力可能である。制御モデル86は、例えば、モデル80がインバータ装置の場合、時系列なモータトルクを発生させる時系列な制御値が制御モデル86に入力されると、この時系列なモータトルクを発生するように、各モデル素子88のスイッイングタイミングを制御する。この場合、電力は電源モデルから供給される。
【0027】
図3は、素子モデル88の一例を示す図である。図3に示すように、素子モデル88は、例えば能動素子であるMOSFETのモデルである。素子モデル88が例えば能動素子であるMOSFETのモデルである場合、電気特性として、酸化膜の静電容量Cgs,Cgd、内蔵ダイオードの接合容量Cds、スイッチングタイムの情報、しきい値電圧VGS(th)など、MOSFETの過渡応答を演算するための情報が規定されている。
【0028】
素子モデル88には、能動素子の他に、受動素子である抵抗素子、容量素子(コンデンサ)、磁場にエネルギーを貯める受動素子(コイル)なども含まれる。これらの受動素子の情報は、抵抗値、容量値、インダクタンスとして規定される。
【0029】
ここで、情報入力部10の指示動作の詳細を図4から図6を用いて説明する。
図4は、選択可能な複数のモデル80が表示部70のモニタ700に表示される例を示す図である。
演算装置1の出力部80は、シミュレーションの開始前に、既に電気特性が定義された複数のモデル80を表示部70のモニタ700に表示させる。操作者は情報入力部10を介してシミュレーション対象となるモデル80を選択する。モデル生成部30は、選択されたモデル80の情報を記憶部20から取得し、モデル80を生成する。これにより、操作者は、シミュレーション対象となる装置全体のモデルを簡易に構成することができる。
【0030】
図5は、選択されたモデル80に対して選択可能な複数の素子モデル88がモニタ700に表示される例を示す図である。枠70a内が選択可能な複数の素子モデル88を示す。
【0031】
出力部80は、シミュレーションの開始前に、既に電気特性が定義された複数の素子モデル88を表示部70のモニタ700に表示させる。操作者は、情報入力部10を介してシミュレーション対象となる素子モデル88を選択する。例えば、まず、図2で示すモデル80内の素子モデル88を指示する。続けて、操作者は、情報入力部10を介してモニタ700に表示された素子モデル88を指示する。これにより、素子モデル88を置換可能である。
【0032】
また、操作者は、図5で示す素子モデルを選択する前に、情報入力部10により位置を操作されるマーカを素子モデル88上に配置することで、素子の電気特性をモニタ700上に表示させることも可能である。例えば、素子モデルがMOSFTであれば、設定されている酸化膜の静電容量Cgs,Cgd、内蔵ダイオードの接合容量Cds、スイッチングタイムの情報、しきい値電圧VGS(th)などがモニタ700上に表示される。
【0033】
また、操作者は、新たに設計した素子モデル88の電気特性の情報を素子モデルデータベース20bに登録することも可能である。これにより、出力部80は、選択可能な素子モデル88として、新たに設計した素子モデル88を表示部70のモニタ700に表示させることが可能となる。このため、操作者は、新たに設計した素子モデル88も選択可能となり、新たに設計した素子モデル88の電気、および温度特性を、より簡易な操作によりシミュレーション可能となる。
【0034】
図6は、選択されたモデル80に対して選択可能な指令値の例を示す図である。枠70b内が選択可能な複数の指令値700bを示す。
【0035】
出力部80は、シミュレーションの開始前に、選択可能な複数の指令値700bを表示部70のモニタ700に表示させる。操作者は、情報入力部10を介してシミュレーション対象となる指令値700bを選択する。
【0036】
図7は、シミュレーション中のモニタ700に表示させる画像例を示す図である。上述の説明によりモデル80などが選択されると、例えば図7で示す画像がモニタ700に表示される。
【0037】
枠70cは、シミュレーション中の素子モデル例を示す枠である。上述のように、素子モデル88には、高精度モデル(詳細モデル)、熱モデル(動作モデル)、簡易モデルなど複数の種類があり、使用しているモデルの種類を明示することにより、シミュレーションの種類を容易に判断可能となる。ここで、高精度モデルは、規定された電気特性に従い、過渡現象を演算するモデルである。高精度モデルは、通常の電気特性のシミュレーションに用いられる。熱モデルは、熱の発生状況をモデル化したモデルであり、温度特性のシミュレーションに用いられる。簡易モデルは、後述するメカモデルの特性シミュレーションに用いられる高精度モデルの簡易化モデルである。簡易モデルは、例えば、素子の抵抗値情報を持ったスイッチモデルである。
【0038】
枠70b内には、入力中の指令値と、シミュレーション結果が表示される。モデル80がインバータ装置である場合、指令値700bは、モータトルクを発生させるための制御指令値である。横軸は時間を示し、縦軸は制御指令値を示す。矢印700cは、素子モデル88に高精度モデルを使用する第1期間を示している。
【0039】
シミュレーション結果は、例えば素子モデル88ごとの温度変化である。横軸は時間を示し、縦軸は温度を示す。高精度モデルを用いたシミュレーションは、熱モデル(動作モデル)を生成するための情報を得るために行われる。
【0040】
再び図1に戻り、図8を参照して熱モデル生成部60の詳細を説明する。図8は、右側の図が高精度モデルにおけるスイッチング時の電力発生シミュレーション結果を示す図である。左側の図が熱モデルにおけるスイッチング時の電力発生シミュレーション結果を示す図である。素子モデル88に接続されるリアタンスが10nHの場合と、30nHの場合を示している。
【0041】
上から素子モデル88への所定入力であるドレイン電流Id、ドレインソース間電圧Vds、ゲートソ-ス間電圧Vgs、発生電力Powerを示す。横軸は時間であり、縦軸は、それぞれドレイン電流Id、ドレインソース間電圧Vds、ゲートソ-ス間電圧Vgs、発生電力Powerである。
【0042】
各素子モデル88の電力発生状況は、素子モデル88の組み合わせ、受動素子、抵抗、コンデンサ、コイルの組み合わせなどにより変化する。このため、電力発生状況を解析するためには、過渡現象を厳密にシミュレーションする必要があるので、高精度モデルが使用される。
【0043】
一方で、発生電力Powerの時間変化の形状は変化しない傾向を示す。図8に示すように、例えば、発生電力Powerの時間変化は、スイッチングのタイミングに応じてスパイク状の形状を示す。このスパイク状の形状は、ドレイン電流Id、ドレインソース間電圧Vds、ゲートソ-ス間電圧Vgsの大きさが変動しても維持される。すなわち、ドレイン電流Id、ドレインソース間電圧Vds、ゲートソ-ス間電圧Vgsの大きさが変動すると、スパイク状の形状を相似状に維持したまま、ドレイン電流Id、ドレインソース間電圧Vds、ゲートソ-ス間電圧Vgsの大きさに依存して、スパイクの高さが変化する。
【0044】
素子モデル88の温度は、発生電力Powerの積算値に応じて変化する。このため、MOSFETなどの能動素子の温度特性のシミュレーションは、スイッチングのタイミングに応じて発生する発生電力Powerを演算することによりシミュレーションされる。
【0045】
一方で、温度変化の時定数は、能動素子の時定数よりも大きくなる。このため、温度特性のシミュレーションでは、スパイク状の形状の積算値には依存するが、形状には依存しない傾向を示す。このような特性に注目して、本実施形態に係る熱モデル生成部60は、高精度モデルの発生電力に対応させた熱モデルを生成する。
【0046】
すなわち、まず、素子モデル88の高精度モデルで、スパイク状の形状を厳密にシミュレーションする。次に、熱モデル生成部60は、スパイク状の形状部分の積算値を演算し、積算値に比例する代表値を定める。例えば、積算値を所定時間で除算した値を代表値として演算する。或いは、積算値の値自体を代表値とする。
【0047】
上述のように左図の一番下の図が、熱モデルの積算電力の出力例を示す図である。このように、熱モデルでは、スイッチングのタイミングに応じて四角形状の面積を有する電力値を出力値として出力する。この四角形の高さは、ドレイン電流Id、ドレインソース間電圧Vds、ゲートソ-ス間電圧Vgsに応じて線形演算される。例えば、四角形の高さは、ドレイン電流Id、ドレインソース間電圧Vds、ゲートソ-ス間電圧Vgsに応じて線形比例するように演算される。このように、熱モデルでは、代表値を用いた線形演算により、ドレイン電流Id、ドレインソース間電圧Vds、ゲートソ-ス間電圧Vgsに応じた出力値を出力する。換言すると、熱モデルでは、入出力関係をデジタル化して処理する。これにより、温度特性のシミュレーションでは、能動素子の厳密なシミュレーションの代わりに、ドレイン電流Id、ドレインソース間電圧Vds、ゲートソ-ス間電圧Vgに応じて、より高速に高精度モデルと同等の発生電力Powerの積算値を出力することが可能となる。このように、高精度モデルと同一の発生電力Powerの積算値を所定の入力値に応じた線形演算により、デジタル的に出力するので、計算機の計算負荷が低減され、計算機の計算速度がより高速化される。
【0048】
また、温度シミュレーションでは、受動素子は、電流の二乗に比例した熱を発生する。このため、受動素子では、温度シミュレーションの場合にも、通常の素子モデルが使用される。
【0049】
図9は、熱モデルによるシミュレーション中にモニタ700に表示させる画像例を示す図である。熱モデル生成部60は、温度特性のシミュレーションが開始され、高精度モデルによる厳密なシミュレーション結果が出力部50に蓄積されたタイミングで熱モデルを生成する。次に、熱モデル生成部60は、素子モデル88を高精度モデルから熱モデルに置換する。熱モデルに置換されると、枠70c内は熱モデルを使用中であることを示す表示に変更される。矢印700eは、熱モデルを使用する第2期間を示す。第2期間700eは、第1期間700cよりも長く設定される。これにより、第2期間を高精度モデルにより演算する場合と比較して、演算時間がより短縮化される。
【0050】
図10は、熱モデルを使用したシミュレーションと、高精度モデルを使用したシミュレーションとを比較表示した例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は素子モデルの温度を示す。このように、熱モデルを使用した場合も、高精度モデルを使用した場合と同等のシミュレーション結果を得ることができる。これにより、高精度モデルを使用した温度特性のシミュレーションでは、10時間オーダの計算機負荷が必要であったが、熱モデルを使用することで同様の結果を数分オーダの計算機負荷で演算可能となる。
【0051】
図11は、演算装置1の演算例を示すフローチャートである。図11に示すように、まず、操作者は、情報入力部10を介して温度シミュレーション対象となる高精度モデルの情報を入力する(ステップS100)。
【0052】
次に、モデル生成部30は、入力された情報に基づき、素子モデル88に高精度モデルを使用したモデルを生成する(ステップS102)。
次に、実行処理部40は、設定された時系列な指令値に従い、高精度モデルを用いて、計算ステップごとの過渡応答を演算する(ステップS104)。
【0053】
次に、実行処理部40は、設定された第1期間が終了したか否かを判定する(ステップS106)。終了していない場合(ステップS106のN)、ステップS104からの処理を繰り返す。
【0054】
一方で、実行処理部40は、第1期間が終了した終了したと判断した場合(ステップS106のY)、出力部50に蓄積されたデータを熱モデル生成部60に出力し、熱モデル生成部60は熱モデルを生成する(ステップS108)。続けて、熱モデル生成部60は、高精度モデルを熱モデルに置換する。
【0055】
次に、実行処理部40は、設定された残りの時系列な指令値に従い、熱モデルを用いて、計算ステップごとの温度応答を演算する(ステップS110)。
次に、実行処理部は、設定された第2期間が終了したか否かを判定する(ステップS112)。終了していない場合(ステップS112のN)、ステップS112からの処理を繰り返す。
【0056】
一方で、実行処理部40は、第2期間が終了した終了したと判断した場合(ステップS106のY)、出力部50に素子モデル88ごとの温度の時間変化を示す表示形態を生成させ、表示部70に表示させた後に全体処理を終了する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、実行処理部40が、素子モデル88の電気特性の情報を用いて、入力値(駆動電圧及び駆動電流値)に対して素子モデル88のスイッチングで時間ステップごとに発生する電力を時系列に演算する。そして、熱モデル生成部60は、時間ステップごと発生する電力を積算した積算値に基づき、素子モデル88のスイッチングで発生する発生電力を所定の入力値(駆動電圧及び駆動電流値)に応じて出力する熱モデルを生成する。
【0058】
素子モデル88の高精度モデルにおける発生電力の積算値は入力値に応じて線形に変更されるので、素子モデル88のスイッチングで発生する発生電力を熱モデルが入力値に応じて線形演算が可能となる。これにより、熱モデルは、高精度モデルと同一の発生電力Powerの積算値を所定の入力値に応じた線形演算により、デジタル的に出力するので、計算機の計算負荷が低減され、計算機の計算速度がより高速化される。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る演算装置1は、モデル生成部30が機械的な動作を行うメカモデルを生成可能である点で、第1実施形態に係る演算装置1と相違する。以下では、第1実施形態に係る演算装置1と相違する点を説明する。
【0060】
図12は、第2実施形態に係る演算装置1の構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る演算装置1は、メカモデルを生成可能である。より具体的には、記憶部20は、メカモデルデータベース20cと、メカ部品データベース20dとを更に有する。なお、本実施形態に係る各部は、記憶部20に記憶されるプログラムを実行することにより構成されるが、これに限定されない。例えば、後述する簡易メカモデル生成部75を更に回路で構成してもよい。
【0061】
また、素子モデルデータベース20bは、素子モデル88を簡易化した簡易モデルを更に記憶している。
図13は、素子モデル88を簡易化した簡易モデル88aの例を示す図である。能動素子の一例であるMOSFETなどは、より大きな時定数で近似すると受動素子の組み合わせで表すことが可能である。このため、簡易モデル88aは、上述のように、素子の抵抗値情報を持ったスイッチモデルで構成可能である。
【0062】
メカモデルデータベース20cは、複数のメカモデル(詳細モデル)92の情報を記憶する。メカ部品データベース20dは、メカモデル92内のメカ部品の情報を記憶する。これにより、モデル生成部30は、情報入力部10の入力に従い、例えば回路モデル(簡易モデル)82と連携して動作するメカモデル92を生成可能である。また、モデル生成部30は、情報入力部10の入力に従い、メカモデル92内のメカ部品94を置換可能である。メカ部品94は、例えばギア、ハンドル、タイヤなどである。
【0063】
簡易メカモデル生成部75は、メカモデル92に関する動作モデルを生成する。例えば、後述するモータモデル90の時系列なモータトルク700gと、モータトルク700gを発生させる指令値700bとが、メカモデル92に関する動作モデルとなる。回路モデル82と、メカモデル92と、は時定数が大幅に異なり、メカモデル92のシミュレーションに回路モデル82の高精度モデルを用いると、現実的でない計算時間がかかってしまう。そこで、メカモデル92のシミュレーションを行う場合には、簡易モデル88aを使用する。一方で、回路モデル82のシミュレーションを行う場合には、メカモデル92の動作を簡易的に表現する簡易メカモデル(動作モデル)、例えば、時系列なモータトルク700gと、モータトルク700gを発生させる指令値700bとを用いて、メカモデル92を切り離し、シミュレーションを行う。
【0064】
図14は、シミュレーション中のモニタ700に表示させるメカモデル92を含むモデル80の画像例を示す図である。上述のように、枠70cは、シミュレーション中の素子モデル例を示す枠であり、簡易モデルを使用中であることを示している。すなわち、メカモデル92の動作をシミュレーション中である。メカモデル92の動作をシミュレーションの計算ステップの長さは、回路モデル80をシミュレーションする際の計算ステップの時間よりも、例えば100倍程度長く設定される。
【0065】
図14に示すように、メカモデル92は、例えばインバータ装置の回路モデル82に駆動される自動車のハンドル補助駆装置のモデルである。
【0066】
図14では、モデル80への入力指令値は時系列な自動車のハンドルの角度700fである。メカモデル92の応答時間の時定数は、回路モデル82の時定数よりもかなり大きな時定数である。このため、上述のように、メカモデル92を演算する際の素子モデル88を簡易モデルに変更する。これにより、より高速に演算可能となる。
【0067】
すなわち、メカモデル92は、時系列な自動車のハンドルの角度700fを入力とし、シミュレーションの結果として、ハンドルを補助駆動する際に必要となるモータモデル90の時系列なモータトルク700gと、モータトルク700gを発生させる指令値700bを出力する。
【0068】
簡易メカモデル生成部75は、モータトルク700gと、指令値700bとをスプラインモデルなどで近似する。これにより、メカモデル92の計算ステップよりも1/100倍程度短い、回路モデル80の計算ステップに対応させたモータトルク700gと指令値700bとを動作モデルとして生成する。
【0069】
次に、実行処理部40は、簡易メカモデル生成部75が生成した指令値700bとモータトルク700gとを用いて、第1実施形態と同様の温度シミュレーションを実行する。
【0070】
図15は、回路モデル82の温度シミュレーション中のモニタ700に表示させるメカモデル92を含むモデル80の画像例を示す図である。上述のように、枠70cは、シミュレーション中の素子モデル例を示す枠であり、熱モデルを使用中であることを示している。すなわち、回路モデル82の温度をシミュレーション中である。
【0071】
回路モデル82とメカモデル92の計算ステップの長さは異なるので、例えば回路モデル82の温度シミュレーション中は、メカモデル92を切り離してシミュレーションする。このため、メカモデル92と連携して動作するモータモデル90のモータトルクは、モータトルク700gが使用される。
【0072】
図16は、メカモデル92と連携して動作する回路モデル82の温度シミュレーション例を示すフローチャートである。図16に示すように、まず、操作者は、情報入力部10を介して温度シミュレーション対象となるメカモデル92と回路モデル82の情報を入力する(ステップS300)。
【0073】
次に、モデル生成部30は、入力された情報に基づき、素子モデル88に簡易モデルを使用したモデル80を生成する(ステップS302)。
次に、実行処理部40は、設定された時系列な指令値に従い、簡易モデルを用いて、第1計算ステップごとのモータトルク700gと、指令値700bとを出力部50に出力し、記憶される(ステップS304)。
【0074】
次に、実行処理部40は、設定された期間が終了したか否かを判定する(ステップS306)。終了していない場合(ステップS306のN)、ステップS304からの処理を繰り返す。
【0075】
一方で、実行処理部40は、期間が終了した終了したと判断した場合(ステップS306のY)、蓄積されたデータを出力部50から簡易メカモデル生成部75に出力し、簡易メカモデル生成部75は、第2計算ステップごとのモータトルク700gと、指令値700bとを生成する(ステップS108)。第2計算ステップは、例えば第1計算ステップの100分の1の時間である。続けて、熱モデル生成部60は、高精度モデルを熱モデルに置換する(ステップS310)。
【0076】
次に、実行処理部40は、設定された時系列な指令値700bとモータトルク700gとに従い、熱モデルを用いて、計算ステップごとの温度応答を演算する(ステップS320)。
次に、実行処理部は、設定された第2期間が終了したか否かを判定する(ステップS322)。終了していない場合(ステップS332のN)、ステップS320からの処理を繰り返す。
【0077】
一方で、実行処理部40は、第2期間が終了したと判断した場合(ステップS322のY)、出力部50に素子モデル88ごとの温度の時間変化を示す表示形態を生成させ、表示部70に表示させた後に全体処理を終了する。
【0078】
以上に説明したように、本実施形態によれば、まず、回路モデル82の簡易モデルを用いてメカモデル92の動作を第1計算ステップでシミュレーションし、メカモデル92が制御モデル86に出力する時系列な指令値700bとモータトルク700gとを記憶する。続けて、簡易メカモデル生成部75に時系列な指令値700bとモータトルク700gとを第2計算ステップに対応させて生成させる。そして、第2計算ステップに対応した時系列な指令値700bとモータトルク700gとを用いて回路モデル82の温度シミュレーションを第2計算ステップで行う。これにより、計算ステップのオーダが100倍程度異なるメカモデル92と連携する回路モデル82の温度シミュレーションをより短時間に演算できる。
【0079】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る演算装置1は、モデル生成部30が複数モデルの中から
動作モデルを自動的に生成する機能を更に有する点で、第2実施形態に係る演算装置1と相違する。以下では、第1実施形態に係る演算装置1と相違する点を説明する。
【0080】
図17は、第3実施形態に係る演算装置1の構成を示すブロック図である。図17に示すように、本実施形態に係る演算装置1は、複数モデルを用いて動作モデルを自動的に生成可能であり、動作モデル生成部100を備える。
【0081】
記憶部20は、例えば複数のモデル20e~20gを有する。複数のモデル20e~20gは物理モデルであり、時間応答性に関する情報と、詳細モデルと、簡易モデルとを有する。すなわち、初期状態では、動作モデルは生成されていない。
【0082】
動作モデル生成部100は、モデル20e~20gの詳細モデルと簡易モデルを用いて、目的に応じた動作モデルを生成する。
上述のように、本実施形態に係る詳細モデルは、各部品の物理特性が定義されたモデルであり、例えば、過渡応答なども演算可能である。簡易モデルは、詳細モデルを簡易化したモデルであり、例えば詳細モデルの応答特性をより長い時間間隔で平均化したモデルである。動作モデルは、例えば、細モデルの応答特性をより長い時間間隔且つ簡易モデルより短い間隔で平均化した、特定の物理現象に対応するモデルである。
【0083】
例えば、モデル20eは回路モデルである。モデル20eの詳細モデルは、スイッチング素子の電気特性の情報を有する素子モデルを複数接続する回路モデルである。この詳細モデルは、スイッチング素子の過渡応答なども演算可能である。モデル20eの簡易モデルは、例えば素子モデル内のスイッチング素子の電気特性を、詳細モデルの応答特性をより長い時間間隔で平均化し、抵抗特性で示すモデルである。モデル20eの動作モデルは、例えば素子モデルのスイッチングに応じて熱を出力する熱モデルである。しかしなが、上述のように、熱モデルは「null」状態であり、初期状態では生成されていない。
【0084】
モデル20eの詳細モデルの時間応答性は、例えば100ナノ秒であり、モデル20fの詳細モデルの時間応答性は、例えば0.1秒であり、時間オーダが数桁異なる。同様に、モデル20gの詳細モデルの時間応答性は、例えばモデル20fの詳細モデルの時間応答性と時間オーダが数桁異なり大きくなる。
【0085】
このように、時間オーダの異なる詳細モデルを連結して物理モデルを生成すると、上述のように、時間応答性の短い詳細モデルがシミュレーション時間の律速となり、ミュレーション時間は現実的ではなくなってしまう。そこで、本実施形態に係る実行処理部40では、詳細モデルの時間応答性に応じて、詳細モデル、簡易モデルを組合わせ、目的とする動作モデルをまず生成する。
【0086】
図18は、実行処理部40の動作例を示すフローチャートである。図18に示すように、先ず、実行処理部40は、システムにおける観測したい特性を決定する(ステップS400)。観測したい特性は、例えば、モータを駆動する回路の熱特性である。
【0087】
次に、動作モデル生成部100は、より長時間の観察を可能とするため、観測したい特性に応じた動作モデルを生成する(ステップS402)。動作モデルを生成するステップでは、動作モデル生成部100は、複数の詳細モデルの応答時間に応じて動作モデルを生成する。動作モデルを生成するステップの詳細は、図19及び図20を用いて後述する。
【0088】
次に、生成した動作モデルを用いて観測したい特性をシミュレーションにより演算する(ステップS404)。このように、観測したい特性に応じた動作モデルを生成し、より効率的なシミュレーションを行うことにより、より短時間で観測したい特性に応じたシミュレーション結果を得ることが可能となる。
【0089】
図19は、図18のステップS402の詳細な処理例を示すフローチャートである。図20は、図19の処理例を時系列順に模式的に示す図である。
【0090】
図19に示すように、実行処理部40は、動作モデルを有さない複数のモデル20e~20gのなかから最も応答性の大きい詳細モデルを選択する(ステップS500)。すなわち、図20のS20に示すように、モデル20gの詳細モデルが選択される。
【0091】
次に、モデル生成部30は、図20のS20に示すように、モデル20gの詳細モデル、及びモデル20e、fの簡易モデルを用いた第1物理モデルを生成する(ステップS502)。ここでは、動作モデルを有さない残りのモデル20e、fは、簡易モデルを用いる。
【0092】
次に、実行処理部40は、第1物理モデルを用いたモデルシュミレーションを行い、モデル20gの動作モデルを生成するためのデータを生成する(ステップS504)。続けて、動作モデル生成部100は、ステップS502で得られたデータを用いて、モデル20gの動作モデルを生成する。
【0093】
そして、モデル生成部30は、図20のS22に示すように、モデル20gの詳細モデルを動作モデルに置換する(ステップS506)。
【0094】
次に、実行処理部40は、全てのモデルが動作モデルに置換されたか否かを判定する(ステップS508)。全てのモデルが動作モデルに置換さていない場合(ステップS508のN)、ステップS500からの処理を繰り返す。これにより、図20のS24,26に示すように、順に詳細モデルが動作モデルに置換される。一方で、全てのモデルが動作モデルに置換された場合(ステップS508のY)、処理を終了する。
【0095】
以上説明したように、本実施形態によれば、詳細モデルの時間応答性に応じて、詳細モデル、簡易モデルを組合わせ、目的とする動作モデルを生成し、全ての動作モデルが生成された後に、観測したい特性に応じたシミュレーションを行うこととした。これにより、より効率的なシミュレーションを行うことが可能となり、より短時間で観測したい特性に応じたシミュレーション結果を得ることができる。
【0096】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る演算装置1は、モデル生成部30がFETモデル、及びメカモデルの中から動作モデルを自動的に生成する機能を更に有する点で、第2実施形態に係る演算装置1と相違する。以下では、第2実施形態に係る演算装置1と相違する点を説明する。
【0097】
図21は、第4実施形態に係る演算装置1の構成を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係る演算装置1は、FETモデルh、及びメカモデルiを用いて動作モデルを自動的に生成可能であり、動作モデル生成部100を備える。動作モデル生成部100は、熱モデル生成部60と、簡易メカモデル生成部75とを有する。
【0098】
記憶部20は、例えばFETモデル20hと、メカモデル20iと、を有する。FETモデル20h、及びメカモデル20iは物理モデルであり、時間応答性に関する情報と、詳細モデルと、簡易モデルとを有する。すなわち、初期状態では、動作モデルは生成されていない。
【0099】
動作モデル生成部100は、FETモデル20h、及びメカモデル20iの詳細モデルと簡易モデルとを用いて、目的に応じた動作モデルを生成する。FETモデル20hの詳細モデルは、例えば抵抗素子、容量素子(コンデンサ)、磁場にエネルギーを貯める受動素子(コイル)、及び能動素子であるスイッチング素子(例えばMOSFET)の接続関係の情報と、それぞれの電気特性の情報を有する。例えば、スイッチング素子に設定されている酸化膜の静電容量Cgs,Cgd、内蔵ダイオードの接合容量Cds、スイッチングタイムの情報、しきい値電圧VGS(th)などの情報を有する。FETモデル20hの簡易モデルは、例えば素子の抵抗値情報を持ったスイッチモデルである。
【0100】
メカモデル20iの詳細モデルは、機械的な動作を行うモデルである。メカモデル20iの詳細モデルは、例えばギア、ハンドル、タイヤなどのメカ部品の組合せであり、メカ部品には動作特性が定義されている。メカモデル20iの簡易モデルは、各メカ部品の動作を簡易化したモデルであり、例えば詳細モデルよりも長い計算ステップでの平均的な入出力特性を示す。
【0101】
FETモデル20hの動作モデルは、例えば素子モデルのスイッチングに応じて熱を出力する熱モデルである。しかしなが、熱モデルは「null」状態であり、初期状態では生成されていない。同様に、メカモデル20iの動作モデルは、例えばFETモデル20hの計算ステップに対応させたモータトルクと指令値700bとの関係を示すモデルである。メカモデル20iの動作モデルは「null」状態であり、初期状態では生成されていない。
【0102】
FETモデル20hの詳細モデルの時間応答性は、例えば100ナノ秒であり、メカモデル20iの詳細モデルの時間応答性は、例えば0.1秒である。このように、FETモデル20hの詳細モデルの時間応答性と、メカモデル20iの詳細モデルの時間応答性とは時間オーダが数桁異なる。
【0103】
時間オーダの異なる詳細モデルを連結して物理モデルを生成すると、上述のように、時間応答性の短い詳細モデルがシミュレーション時間の律速となり、ミュレーション時間は現実的ではなくなってしまう。そこで、本実施形態に係る実行処理部40では、ETモデル20h、及びメカモデル20iにおける詳細モデルの時間応答性に応じて、詳細モデル、簡易モデルを組合わせ、目的とする動作モデルをまず生成する。
【0104】
図22は、実行処理部40の動作例を示すフローチャートである。図22に示すように、先ず、実行処理部40は、システムにおける観測したい特性を決定する(ステップS600)。観測したい特性は、例えば、モータを駆動するFETの熱特性である。
【0105】
次に、動作モデル生成部100は、より長時間の観察を可能とするため、観測したい特性に応じた動作モデルを生成する(ステップS602)。動作モデルを生成するステップでは、動作モデル生成部100は、複数の詳細モデルの応答時間に応じて動作モデルを生成する。動作モデルを生成するステップの詳細は、図23を用いて後述する。
【0106】
次に、生成した動作モデルを用いて観測したい特性をシミュレーションにより演算する(ステップS604)。このように、観測したい特性に応じた動作モデルを生成し、より効率的なシミュレーションを行うことにより、より短時間で観測したい特性に応じたシミュレーション結果を得ることが可能となる。
【0107】
図23は、図22のステップS602の詳細な処理例を示すフローチャートである。図23に示すように、実行処理部40は、動作モデルを有さないFETモデル20h、及びメカモデル20iのなかから最も応答性の大きい詳細モデルを選択する(ステップS500)。すなわち、メカモデル20iの詳細モデルが選択される。
【0108】
次に、モデル生成部30は、メカモデル20iの詳細モデル、及びFETモデル20hの簡易モデルを用いた第1物理モデルを生成する(ステップS702)。
【0109】
次に、実行処理部40は、第1物理モデルを用いたモデルシュミレーションを行い、メカモデル20iの動作モデルを生成するためのデータを生成する(ステップS704)。続けて、動作モデル生成部100の簡易メカモデル生成部75は、ステップS704で得られたデータを用いて、メカモデル20iの動作モデルを第1動作モデルとして生成する(ステップS706)。
【0110】
そして、モデル生成部30は、FETモデル20hの簡易モデルを詳細モデルに置換する(ステップS708)。そして、更にメカモデル20iの詳細モデルを第1動作モデルに置換し、第2物理モデルを生成する(ステップS710)。
【0111】
次に、実行処理部40は、第2物理モデルを用いたモデルシュミレーションを行い、FETモデル20hの動作モデルを生成するためのデータを生成する(ステップS712)。続けて、動作モデル生成部100の熱モデル生成部60は、ステップS712で得られたデータを用いて、FETモデル20hの熱モデルを第2動作モデルとして生成する(ステップS714)。
【0112】
そして、モデル生成部30は、FETモデル20hの詳細モデルを第2動作モデルに置換して、第3物理モデルを生成し(ステップS716)、処理を終了する。
【0113】
以上説明したように、本実施形態によれば、FETモデル20h及びメカモデル20iの詳細モデルの時間応答性に応じて、詳細モデル、簡易モデルを組合わせ、目的とする動作モデルを生成し、全ての動作モデルが生成された後に、観測したいFETモデル20hの熱特性に応じたシミュレーションを行うこととした。これにより、より効率的なシミュレーションを行うことにより、より短時間に観測したいFETモデル20hの熱特性に応じたシミュレーション結果を得ることが可能となる。
【0114】
上述した演算装置1の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、演算装置の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク部やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0115】
また、演算装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0116】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
【0117】
なお、以下の付記に記載されているような演算方法、及び演算装置が考えられる。
【0118】
(付記1)
スイッチング素子の電気特性の情報を有する素子モデルを複数接続する回路モデルを生成するモデル生成工程と、
前記複数の前記素子モデルごとの電気特性の情報を用いて、所定の時系列な入力値に対して前記素子モデルのスイッチングで時間ステップごとに発生する電力を時系列に演算する実行処理工程と、
前記時間ステップごとに発生する前記電力を積算した積算値に基づく出力値を、前記素子モデルのスイッチングに応じて出力する熱モデルを生成する熱モデル生成工程と、
を備える、演算方法。
【0119】
(付記2)
前記熱モデル生成工程は、前記積算値を所定の時間で除算した値、又は前記積算値を代表値とし、前記代表値に基づく前記出力値を出力する、付記1に記載の演算方法。
【0120】
(付記3)
前記熱モデルは、前記代表値を用いて、前記所定の入力値に応じた線形演算により前記出力値を出力する、付記2に記載の演算方法。
【0121】
(付記4)
前記実行処理工程は、第1期間の時系列な指令値に従い、前記複数の前記素子モデルごとの電気特性の情報を用いて、時間ステップごとに発生する電力を時系列に演算し、
前記第1期間よりも長い第2期間の時系列な指令値に従い、前記熱モデルを用いて前記素子モデルの時間ステップごとの発生電力を時系列に演算する、付記1に記載の演算方法。
【0122】
(付記5)
前記実行処理工程は、前記熱モデルを用いて発生させた発生電力を用いて、前記素子モデルの前記時間ステップごとの温度を時系列に演算する、付記4に記載の演算方法。
【0123】
(付記6)
前記素子モデルに発生する温度の時間変化を示す表示形態を生成する出力工程を、
更に備える、付記1乃至5のいずれかに記載の演算方法。
【0124】
(付記7)
前記回路モデルは、複数の異なる回路モデルの中から選択可能である、付記1乃至6のいずれかに記載の演算方法。
【0125】
(付記8)
前記素子モデルは、複数の異なる素子モデルの中から選択可能である、付記1乃至7のいずれかに記載の演算方法。
【0126】
(付記9)
前記回路モデルは、更にモータモデルの情報を有し、
前記モデル生成工程は、前記モータモデルに駆動される機械構造のメカモデルを生成する、付記1乃至8のいずれかに記載の演算方法。
【0127】
(付記10)
前記実行処理工程は、前記メカモデルが含まれる場合に、時系列なメカモデル用指令値に従い前記メカモデルの動作を前記時間ステップよりも長い第2時間ステップごとに演算する、付記9に記載の演算方法。
【0128】
(付記11)
前記回路モデルの指令値は、前記メカモデルから出力される前記モータモデルのトルク出力を指示するトルク指示値と、前記モータのモータトルクとであり、
前記実行処理工程は、前記トルク指示値及び前記モータトルクを演算する場合には、前記素子モデル内のスイッチング素子の電気特性を抵抗特性で示す簡易モデルに置き換えて演算する、付記10に記載の演算方法。
【0129】
(付記12)
前記実行処理工程は、前記メカモデルを駆動する際の前記素子モデルの温度を演算する場合に、前記メカモデルの代わりに前記トルク指示値、前記モータトルク、及び前記熱モデルを用いて、前記時間ステップごとに温度を演算する、付記11に記載の演算方法。
【0130】
(付記13)
スイッチング素子の電気特性の情報を有する素子モデルを複数接続する回路モデルを生成するモデル生成部と、
前記複数の前記素子モデルごとの電気特性の情報を用いて、所定の時系列な入力値に対して前記素子モデルのスイッチングで時間ステップごとに発生する電力を時系列に演算する実行処理部と、
前記時間ステップごとに発生する前記電力を積算した積算値に基づく出力値を、前記素子モデルのスイッチングに応じて出力する熱モデルを生成する熱モデル生成部と、
を備える、演算装置。
【0131】
(付記14)
複数の詳細モデルと、前記複数の詳細モデルそれぞれに対応し、計算ステップの間隔が対応する詳細モデルよりも長い簡易モデルを用いて観測したい物理特性を演算する方法であって
システムにおける観測したい物理特性を取得する工程と、
前記観測したい物理特性に対応する動作モデルであって、計算ステップの間隔が対応する詳細モデルよりも長い動作モデルを生成する動作モデル生成工程と、
動作モデル生成工程で生成した動作モデルを用いて、観測したい物理特性をシュミレーションする観測工程と、
を備え、
前記動作モデル生成工程は、前記複数の詳細モデルの応答時間に応じて前記動作モデルを生成する演算方法。
【0132】
(付記15)
前記動作モデル生成工程は、
複数の詳細モデルと、前記複数の詳細モデルそれぞれに対応する簡易モデルを用いて、複数の詳細モデルの少なくともいずれかに対応する動作モデルを演算する工程であって、
前記複数の詳細モデルの中で応答時間が最も長い第1詳細モデルと、前記複数の詳細モデルの中で前記第1詳細モデルを除く詳細物理モデルに対応する簡易モデルそれぞれとを用いて第1物理モデルを生成する第1モデル生成工程と、
前第1物理モデルを用いて、前記第1詳細モデルの時間応答に合わせた時間ステップごとに発生する物理現象を時系列に演算する第1実行処理工程と、
前記時間ステップごとに発生する前記物理現象に基づき、前記第1詳細モデルの第1動作モデルを生成する第1生成工程と、
を有する、付記14に記載の演算方法。
【0133】
(付記16)
前記第1動作モデルと、前記複数の詳細物理モデルのなかで応答時間が2番目に長い第2詳細モデルと、を少なくとも用いて第2物理モデルを生成する第2モデル生成工程と、
前記第2物理モデルを用いて、前記第2詳細モデルの時間応答に合わせた時間ステップごとに発生する物理現象を時系列に演算する第2実行処理工程と、
前記時間ステップごとに発生する前記物理現象に基づき、前記第2詳細モデルの第2動作モデルを生成する第2生成工程と、
を有する、付記15に記載の演算方法。
【0134】
(付記17)
前記第2詳細モデルに対応する簡易モデルを用いて前記第2物理モデルを生成する、付記16に記載の演算方法。
【0135】
(付記18)
前記第1動作モデル、及び第2動作モデルと、複数の詳細物理モデルのなかで応答時間が3番目に長い第3詳細モデルと、を少なくとも用いて第3物理モデルを生成する第3モデル生成工程と、
前記第3物理モデルを用いて、前記第3詳細モデルの時間応答に合わせた時間ステップごとに発生する物理現象を時系列に演算する第3実行処理工程と、
前記時間ステップごとに発生する前記物理現象に基づき、前記第3詳細モデルの第3動作モデルを生成する第3生成工程と、
を有する、付記17に記載の演算方法。演算方法。
【0136】
(付記19)
前記第1動作モデル、第2動作モデル、及び第3動作モデルを少なくとも用いて第4物理モデルを生成する第4モデル生成工程と、
前記第4物理モデルを用いて、前記第1動作モデル、第2動作モデル、及び第3動作モデルのいずれかの時間応答に合わせた時間ステップごとに発生する物理現象を時系列に演算する第3実行処理工程と、
を有する、付記18に記載の演算方法。演算方法。
【0137】
(付記20)
前記第1詳細モデルはメカモデルであり、前記第2詳細モデルはスイッチング素子の電気特性の情報を有するFETモデルを複数接続する回路モデルであり、
前記第1モデル生成工程は、前記メカモデルと、前記回路モデルの前記FETモデル内のスイッチング素子の電気特性を抵抗特性で示す簡易モデルとを、用いて前記物理モデルを生成し、
前記第1生成工程は、前記メカモデルのトルク指示値に応じたモータトルクの時系列値を前記第1動作モデルとして生成する、付記15に記載の演算方法。
【符号の説明】
【0138】
1:演算装置、30:モデル生成部、40:実行処理部、50:出力部、60:熱モデル生成部、70:表示部、75:簡易メカモデル生成部、82:回路モデル、88:素子モデル、90:モータモデル、92:メカモデル、700b:指令値、700f:ハンドル角度、700g:モータトルク。
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