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  • 特許-スライド式切換弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】スライド式切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021053597
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150817
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕正
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-257536(JP,A)
【文献】特開2002-221375(JP,A)
【文献】特開2018-105138(JP,A)
【文献】特開2006-281296(JP,A)
【文献】特開2009-172613(JP,A)
【文献】特開2001-214982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00-3/36
11/00-11/24
27/00-27/12
F25B 31/00-31/02
39/00-41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の弁本体と、前記弁本体の内部にスライド自在に設けられた弁体と、前記弁本体に固定されて前記弁体が摺接する板状の摺接部材と、を備えたスライド式切換弁であって、
前記摺接部材は、全体板状に形成されるとともに、前記弁体のスライド方向に並ぶ複数の弁ポートと、前記弁本体の内部側にて前記弁体が摺接する平坦な摺接面と、前記摺接面と反対側にて前記弁本体に固定される平坦な固定面と、を有し、
前記摺接部材の前記固定面の略全面に凹凸部が設けられていることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記凹凸部は、離散的に複数設けられるディンプル状の凹みで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記凹凸部は、前記弁ポートを囲む複数の環状溝で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記凹凸部は、前記弁ポートに連続せずに直線状に延びる複数の直線溝で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記凹凸部は、前記弁ポートに連続せずに直線状に延びる複数の直線溝と、前記直線溝に交差する複数の交差溝、または前記直線溝から分岐する複数の分岐溝と、で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記弁ポート内周縁の摺接面側には面取りが設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
前記摺接部材は前記弁本体に接着剤による接着により固定されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項8】
前記弁本体が樹脂成形により形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項9】
前記摺接部材は前記弁本体にインサート成形により一体化されていることを特徴とする請求項8に記載のスライド式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等の冷凍サイクルシステムに使用するのに適したスライド式切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルなどにおいて冷媒の流路を切り換える切換弁として、筒状の弁本体と、弁本体内部にスライド自在に設けられた碗状の弁体と、弁本体に固定されて複数の継手管が接続される弁座部材と、弁座部材に固定されて複数の弁ポートを有する板状の密封板と、を備えたスライド式切換弁が知られている(特許文献1)。板状の密封板は、弁本体の内部側にて弁体が摺接する摺接面と、摺接面の反対側にて弁座部材に固定される固定面と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許公開第107781455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の切換弁において、板状の密封板は、その素材の板材に元々有る反りが、成形後にも残ってしまうことがあり、平坦度が得られ難い。このため、密封板と弁体との間の安定したシール性が得られない可能性がある。
【0005】
本発明は、スライド式切換弁において、弁体が摺接する板状の摺接部材の平坦度を矯正して反りを抑制することにより良好なシール性を得るとともに、弁本体との密着度を高めて固定強度を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスライド式切換弁は、中空筒状の弁本体と、前記弁本体の内部にスライド自在に設けられた弁体と、前記弁本体に固定されて前記弁体が摺接する板状の摺接部材と、を備えたスライド式切換弁であって、前記摺接部材は、全体板状に形成されるとともに、前記弁体のスライド方向に並ぶ複数の弁ポートと、前記弁本体の内部側にて前記弁体が摺接する平坦な摺接面と、前記摺接面と反対側にて前記弁本体に固定される平坦な固定面と、を有し、前記摺接部材の前記固定面の略全面に凹凸部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この際に、前記凹凸部は、離散的に複数設けられるディンプル状の凹みで構成されていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0008】
また、前記凹凸部は、前記弁ポートを囲む複数の環状溝で構成されていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0009】
また、前記凹凸部は、前記弁ポートに連続せずに直線状に延びる複数の直線溝で構成されていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0010】
また、前記凹凸部は、前記弁ポートに連続せずに直線状に延びる複数の直線溝と、前記直線溝に交差する複数の交差溝、または前記直線溝から分岐する複数の分岐溝と、で構成されていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0011】
また、前記弁ポート内周縁の摺接面側には面取りが設けられていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0012】
また、前記摺接部材は前記弁本体に接着剤による接着により固定されていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0013】
また、前記弁本体が樹脂成形により形成されていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0014】
また、前記摺接部材は前記弁本体にインサート成形により一体化されていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスライド式切換弁によれば、摺接部材の固定面に凹凸が設けられているので、摺接面の平坦度を矯正して弁体との良好なシール性を得ることができ、この摺接部材と弁本体との密着度を高めて固定強度を確保することができる。また、弁本体との密着度が高まることで、摺接部材と弁本体との固定部からの裏漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態のスライド式切換弁の第1状態の縦断面図である。
図2】実施形態のスライド式切換弁の第2状態の縦断面図である。
図3図1のA-A矢視断面図である。
図4】実施形態のスライド式切換弁における弁座部材(摺接部材)の固定面の平面図である。
図5】実施形態のスライド式切換弁における弁座部材(摺接部材)の固定面の変形例を示す図である。
図6】実施形態のスライド式切換弁における弁座部材(摺接部材)の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明のスライド式切換弁の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態のスライド式切換弁の第1状態の縦断面図、図2は実施形態のスライド式切換弁の第2状態の縦断面図、図3図1のA-A矢視断面図、図4は実施形態のスライド式切換弁における弁座部材(摺接部材)の固定面の平面図、図5は実施形態のスライド式切換弁における弁座部材(摺接部材)の固定面の変形例を示す図、図6は実施形態のスライド式切換弁における弁座部材(摺接部材)の一部拡大断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1及び図2の図面における上下に対応する。
【0018】
図1に示すように、このスライド式切換弁は、弁本体1と、弁体2と、「付勢部材」としての板バネ3と、「摺接部材」としての弁座部材4と、ハウジング5と、ホルダ部6と、マグネットロータ7と、ステータコイル8とを備えている。
【0019】
弁本体1は樹脂成形により略円筒形状に形成されており、その内側に略円柱状の弁室1Aを有している。また、弁本体1は、軸線Xと平行な弁体2のスライド方向と平行な側壁部11と、この側壁部11と交差する底部12とを有している。そして、弁本体1の側壁部11には第1ポート13E、出口ポート13Sおよび第2ポート13Cが設けられ、さらに、弁本体1の前記底部12には、入口ポート13Dが設けられている。なお、第1ポート13E、出口ポート13Sおよび第2ポート13Cは、側壁部11の一部に弁体2のスライド方向に沿って一直線状に設けられている。また、弁本体1の外側面には係合突起1Bが形成されており、係合溝5Bと係合することでハウジング5に対する弁本体1の回転位置が規制される。これにより、弁本体1の第1ポート13E,出口ポート13S、および第2ポート13Cと、後述のハウジング5側のハウジング側流路51E、51S、51Cとの相対位置の位置合わせを容易に行える等、ハウジング5に対する弁本体1の組付けが容易になっている。なお、弁本体1側に係合溝を設け、ハウジング5側に係合突起を設けることによりハウジング5に対する弁本体1の回転位置を規制してもよい。なお、本形態では材質をポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂としたが、この他真鍮、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属等、適宜な材質で構成してもよい。
【0020】
弁体2は膨出部21と膨出部21からホルダ部6側に延設されたフック部22とを有し、膨出部21の内側には椀状凹部21Aが形成されている。そして、弁体2は、図1の下側(第1状態)の切換の端部位置において、出口ポート13Sと第1ポート13Eとを椀状凹部21Aにより連通させる。このとき、第2ポート13Cは弁室1A内で入口ポート13Dに連通する。また、弁体2は、図2の上側(第2状態)の切換の端部位置において、出口ポート13Sと第2ポート13Cとを椀状凹部21Aにより連通させる。このとき、第1ポート13Eは弁室1A内で出口ポート13Dに連通する。
【0021】
また、弁体2のフック部22は、軸線Xに沿って延びる角丸角柱状のガイド軸23の端部に係合されている。すなわち、ガイド軸23はホルダ部6に嵌挿されて弁体2側の外周に係合溝231を有し、一対の弁体2のフック部22が係合溝231に係合されている。さらにガイド軸23の中心には、軸線Xと同軸の雌ねじ部23aとそのねじ孔が形成されている。さらに、弁体2の膨出部21の上部には、「付勢部材」としての板バネ3が膨出部21のボス部21aにより取り付けられている。
【0022】
板バネ3は、弁体2のスライド方向(軸線Xに沿った方向)を長手方向とする基部31と、この基部31の両端にスライド方向と交差した方向に折り返された一対の折り返し部32とを有している。そして、この折り返し部32には凸部33がそれぞれ設けられ、折り返し部32の弾性力により凸部33は弁本体1の内周面に当接されている。これにより、図3に示すように、弁体2は後述の弁座部材4の弁座面4Aに押圧される。
【0023】
弁本体1の弁室1A内には、弁本体1に接着剤等で接着して固定された、または弁本体1と共にインサート成形されて固定された薄型金属板からなり、プレス成形等で加工された「摺接部材」としての弁座部材4を備えるとともに、弁本体1の底部12とは反対側の端部にはケース15が固定されている。弁座部材4の軸線X側の面は弁体2が摺接する「摺接面」としての弁座面4Aとなるとともに、この弁座部材4には、第1ポート13Eに対向する弁ポート4Eと、出口ポート13Sに対向する弁ポート4Sと、第2ポート13Cに対向する弁ポート4Cとが形成されている。また、図6図1に一点鎖線の丸Pで示す部分の拡大断面図であり、例えば出口ポート13Sに対向する弁ポート4Sの周囲の例を示している。なお、弁ポート4E,4Cも弁ポート4Sと同様な構造である。弁ポート4Sの弁座面4A側の縁には、「面取り」として図6(A)に示すR面4aまたは図5(B)に示すテーパ面4bが形成されている。これにより、弁体2が弁座面4A上を摺動するとき、弁体2が弁ポート4S,4E,4Cの縁に引っ掛かることなく安定した作動が得られる。そして、弁座部材4の弁座面4Aとは反対側の面は、弁本体1に固定される固定面4Bとなっており、この固定面4Bには後述のように凹凸部が設けられている。なお、弁座部材4の弁ポート4S,4E,4C、弁座面4Aの「面取り」、固定面4Bの凹凸部は、プレス成形で全て形成されてもよく、この際「面取り」はプレス成形等のせん断加工によるダレ面とすることが好ましい。また「面取り」は、弁ポートと後述の「凹凸部」のプレス成形後に、別途機械加工による切削加工や治具押し付けによる塑性加工等、適宜な工法で形成してもよい。弁座部材4の材質は、真鍮、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属等、適宜な材質で構成すればよい。また加工方法も、プレス成形の他に板材から切削加工にて加工してもよい。
【0024】
ハウジング5はアルミダイキャスト製で、軸線Xを中心とする略円筒形状の収容室5Aを有しており、この収容室5A内に弁本体1が収容されている。ハウジング5は、内周に弁本体1の係合突起1Bと係合する係合溝5Bを有している。なお、弁本体1とハウジング5との間には所定位置でOリング10によりシールされている。また、ハウジング5には、収容室5Aの側壁部に開口するハウジング側流路51E,51S,51Cが形成され、弁本体1とハウジング5との間の間隙を介して、弁本体1側の第1ポート13E,出口ポート13S、および第2ポート13Cのそれぞれと連通している。また、ハウジング5の弁本体1の底部12と対向する位置には、ハウジング側流路51Dが形成され、入口ポート13Dを介して弁室1Aと連通している。
【0025】
ホルダ部6は主に樹脂製であり、略円柱状の弁ガイド部61と、弁ガイド部61の上端部に形成された軸受部62と、弁ガイド部61の外周にインサート成形により設けられた金属製で略円盤状の固定蓋63とで構成されている。そして、ホルダ部6は固定蓋63を介して弁本体1に固定されたケース15の上端部に溶接により固定されている。なお、ハウジング5の上端部と固定蓋63との間には、ハウジング5と弁本体1とを固定するCリング20が嵌合されている。弁ガイド部61には、軸線Xと同軸で角丸の角柱空洞のガイド孔61aが形成されている。そして、ガイド孔61a内に、弁体2のフック部22に係合されたガイド軸23が挿通されている。
【0026】
また、固定蓋63には、弁本体の弁室1A及びケース15の内部を密閉するキャン64が固定されており、このキャン64内にマグネットロータ7が収容されている。マグネットロータ7の中心にはロータ軸71が取り付けられ、ロータ軸71の弁体2側の外周には、弁体2に係合されたガイド軸23の雌ねじ部23aに螺合する雄ねじ部71aが形成されている。また、このロータ軸71はホルダ部6の軸受部62にて支持されている。これによりマグネットロータ7は、キャン64内で回動自在に支持されている。なお、ガイド孔61aの上部において、軸受部62とロータ軸71のフランジ部72との間、および、マグネットロータ7と軸受部62との間には摺動ワッシャ66,67が配設されている。
【0027】
ステータコイル8は、樹脂製のボビン81にコイル82A、82Bを巻装することで、軸線X方向に一対のコイル部を積層して構成され、ボビン81には、磁極歯83aを持つ継鉄(ヨーク)83がモールド成形により一体に組み付けられている。また、ステータコイル8は、中央に軸線Xを中心とする円柱形状の嵌挿孔8Hを有しており、この嵌挿孔8Hの内周面の一部に継鉄83の磁極歯83aが配置されている。そして、ステータコイル8は、嵌挿孔8H内に弁本体1のキャン64が嵌挿されることで弁本体1に装着されている。これにより、ステータコイル8の磁極歯83aがキャン64の外周面に対向配置される。
【0028】
以上の構成により、ステータコイル8のコイル82A、コイル82Bへのパルス出力の印加によりコイル82A、コイル82Bが磁力線を発生する。これにより、磁極歯83aの磁極(N、S極)が交互に変化し、マグネットロータ7に対して磁気吸引力及び磁気反発力を発生し、マグネットロータ7とロータ軸71が回転する。これによりロータ軸71の雄ねじ部71aと、弁体2に係合されたガイド軸23の雌ねじ部23aとによるネジ送り機構によりこのガイド軸23が軸線X方向に移動し、このガイド軸23と共に弁体2が軸線X方向にスライドする。そして、図1の第1状態から図2の第2状態へ、あるいは、図2の第2状態から図1の第1状態へと、流路が切換られる。このように、ロータ軸71、マグネットロータ7、及びネジ送り機構が「駆動部」を構成している。
【0029】
ハウジング側流路51Dは、圧縮機の吐出口に接続され、高温高圧の冷媒を弁本体1の弁室1Aに導入し、ハウジング側流路51Sは、圧縮機の吸入口に接続され、圧縮機に冷媒を戻す。また、ハウジング側流路51Eは、冷凍サイクルの蒸発器に連通され、ハウジング側流路51Cは、冷凍サイクルの凝縮器に連通される。そして、図1の第1状態では、入口ポート13Dから流入する高温冷媒は、弁室1Aを介して第2ポート13Cへ流れ、図2の第2状態では、入口ポート13Dから流入する高温冷媒は、弁室1Aを介して第1ポート13Eへ流れる。
【0030】
図4は弁座部材4の固定面4Bの平面図であり、この固定面4Bには、弁座部材4のプレス成形の際に加工された「凹凸部」としての、ディンプル状の凹み41が設けられている。この凹み41は弁ポート4C,4S,4Eの周囲に離散的に複数設けられている。このように、摺接部材である弁座部材4の固定面4Bに凹凸が設けられているので、板状の弁座部材4の平坦度が矯正され、弁座面4A(摺接面)と弁体2との良好なシール性を得ることができる。また、弁本体1と接着またはインサート成形されるときの、弁本体1に対する座部材4の密着度が高まり、固定強度を確保することができる。したがって、弁本体1との密着度が高まることで、弁座部材4の固定面4Bと弁本体1との固定部からの裏漏れを抑制することができる。
【0031】
図5は弁座部材4の凹凸部の変形例を示す図であり、図5(A)の変形例1は、固定面4Bに「凹凸部」としての環状溝42を形成した例であり、この円形の環状溝42は弁ポート4C,4S,4Eを囲む複数の環状溝で構成されている。図5(B)の変形例2は、固定面4Bに「凹凸部」としての多角形の環状溝43を形成した例であり、この環状溝43は弁ポート4C,4S,4Eを囲む複数の環状溝で構成されている。これらの、変形例1と変形例2では、図4の実施形態の作用効果に加え、複数の環状溝によるラビリンス効果を得られるので、更に弁座部材4の固定面4Bと弁本体1との固定部からの裏漏れの発生を抑制することができる。
【0032】
図5(C)の変形例3は、固定面4Bに「凹凸部」としての直線状に延びる複数の直線溝44を形成した例であり、この直線溝44は弁ポート4C,4S,4Eに連続せずに形成したものである。図5(D)の変形例4は、固定面4Bに「凹凸部」としての複数の直線溝45と、直線溝45から分岐する複数の分岐溝46とを形成した例であり、この直線溝45と分岐溝46は弁ポート4C,4S,4Eに連続せずに形成したものである。なお、変形例4について、本形態では直線溝45から分岐する複数の分岐溝46で形成されているが、直線溝45を突き抜けることで交差する複数の交差溝で形成されてもよいし、複数の分岐溝と交差溝を組み合わせて形成されてもよい。これらの、変形例3と変形例4では、図4の実施形の作用効果に加え、弁座部材4の外縁から溝を経由した弁ポート4C,4S,4Eまでの沿面距離が長くなるので、更に弁座部材4の固定面4Bと弁本体1との固定部からの裏漏れの発生を抑制することができる。以上の変形例には、複雑な「凹凸部」の形状もあるが、前記の如くプレス成形の際に成形型にて成形されるので容易に加工ができる。
【0033】
前記弁座部材4の「凹凸部」について、凹み41の深さ、環状溝42,43、直線溝44,45、分岐溝46等の溝深さは、弁座部材4の板厚の約3%から80%とするのが好ましい。また、凹み41のディンプル径、環状溝42,43、直線溝44,45、分岐溝46等の溝幅は、約0.25~2mmとするのが好ましい。また、溝部とその回りの凸部の面積の比率(間隔)は、溝部が約30~60%とするのが好ましい。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 弁本体
1A 弁室
11 側壁部
12 底部
13E 第1ポート
13C 第2ポート
13S 出口ポート
13D 入口ポート
2 弁体
21 膨出部
23 ガイド軸
23a 雌ねじ部
3 板バネ(付勢部材)
31 基部
32 折り返し部
4 弁座部材(摺接部材)
4A 弁座面(摺接面)
4B 固定面
41 凹み(凹凸部)
42 環状溝(凹凸部)
43 環状溝(凹凸部)
44 直線溝(凹凸部)
45 直線溝(凹凸部)
46 分岐溝(凹凸部)
5 ハウジング
51E ハウジング側流路
51C ハウジング側流路
51S ハウジング側流路
51D ハウジング側流路
6 ホルダ部
61 弁ガイド部
62 軸受部
63 固定蓋
7 マグネットロータ
71 ロータ軸
71a 雄ねじ部
8 ステータコイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6