(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】アクティブマトリクス基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20240215BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240215BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240215BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20240215BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20240215BHJP
H01L 29/49 20060101ALI20240215BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240215BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240215BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20240215BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240215BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 617S
H01L29/78 616V
H01L29/78 612B
H01L21/28 301B
H01L29/50 M
H01L29/58 G
H01L21/90 A
H01L27/088 D
H01L27/088 C
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
G02F1/1368
(21)【出願番号】P 2021139961
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】原 健吾
(72)【発明者】
【氏名】大東 徹
(72)【発明者】
【氏名】菊池 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正彦
(72)【発明者】
【氏名】西宮 節治
(72)【発明者】
【氏名】高畑 仁志
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-49529(JP,A)
【文献】特開2015-35597(JP,A)
【文献】国際公開第2021/166067(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/061969(WO,A1)
【文献】特開2014-241404(JP,A)
【文献】特開2005-317983(JP,A)
【文献】特開2020-21935(JP,A)
【文献】特開2015-15459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/28
H01L 29/417
H01L 29/423
H01L 21/768
H01L 27/088
H01L 21/8234
G09F 9/30
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に支持された、第1TFTおよび第2TFTを含む複数の酸化物半導体TFTとを備え、
前記第1TFTは、
第1チャネル領域を含む第1酸化物半導体層と、
前記第1酸化物半導体層の前記基板側に、下部絶縁層を介して配置された第1ゲート電極であって、前記基板の法線方向から見たとき、前記第1チャネル領域に重なる、第1ゲート電極と、
前記第1酸化物半導体層の前記基板と反対側に配置され、前記第1チャネル領域を少なくとも覆うチャネル保護層と、
前記チャネル保護層よりも上層に配置され、前記第1酸化物半導体層に電気的に接続された第1ソース電極および第1ドレイン電極と、
を有
するボトムゲート型TFTであり、
前記第2TFTは、
第2チャネル領域を含む第2酸化物半導体層と、
前記第2酸化物半導体層の前記基板と反対側に、ゲート絶縁層を介して配置された第2ゲート電極であって、前記基板の法線方向から見たとき、前記第2チャネル領域に重なる、第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極を覆う層間絶縁層上に配置され、かつ、前記第2酸化物半導体層に電気的に接続された第2ソース電極および第2ドレイン電極と、を有し、
前記第1酸化物半導体層および前記第2酸化物半導体層は、同じ積層酸化物半導体膜から形成されており、前記積層酸化物半導体膜は、相対的に高い移動度を有する高移動度酸化物半導体膜と、前記高移動度酸化物半導体膜の前記基板側に配置され、前記高移動度酸化物半導体膜よりも低い移動度を有する低移動度酸化物半導体膜とを含む積層構造を有し、
前記第1TFTの前記チャネル保護層と前記第2TFTの前記ゲート絶縁層とは同じ絶縁膜から形成されている、アクティブマトリクス基板。
【請求項2】
前記下部絶縁層の厚さは、前記ゲート絶縁層の厚さよりも大きい、請求項1に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項3】
前記第2TFTは、前記第1TFTの前記第1ゲート電極と同じ導電膜から形成された下部導電層をさらに含み、前記下部導電層は、前記基板の法線方向から見たとき、前記第2酸化物半導体層の少なくとも一部に重なっている、請求項1または2に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項4】
前記下部導電層は、前記第2ゲート電極と電気的に接続されており、前記第2TFTの下部ゲート電極として機能する、請求項3に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項5】
前記第1TFTの前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極のうちの少なくとも一方は、前記第2TFTの前記第2ゲート電極と同じ導電膜から形成されている、請求項1から4のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項6】
前記第1TFTの前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極のうちの少なくとも一方と、前記第2TFTの前記第2ソース電極および前記第2ドレイン電極とは、同じ導電膜から形成されている、請求項1から5のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項7】
前記第1TFTの前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極のうち少なくとも一方は、前記第2TFTの前記第2ゲート電極と同じ導電膜から形成された電極であり、前記電極は、前記第2TFTの前記第2ソース電極および前記第2ドレイン電極と同じ導電膜から形成された上部電極に電気的に接続されている、請求項1から6のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項8】
前記第1TFTの前記チャネル保護層および前記第2TFTの前記ゲート絶縁層は、互いに分離している、請求項1から7のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項9】
前記第1TFTの前記チャネル保護層および前記第2TFTの前記ゲート絶縁層は、互いに繋がっている、請求項1から7のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項10】
前記絶縁膜は、前記基板の法線方向から見たとき、前記ゲート絶縁層の両側に位置し、かつ、前記第2酸化物半導体層の一部を露出するソース側開口部およびドレイン側開口部を有する、請求項9に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項11】
前記第1酸化物半導体層は、前記基板の法線方向から見たとき、前記第1チャネル領域の両側に位置する第1ソースコンタクト領域および第1ドレインコンタクト領域をさらに含み、前記第1ソースコンタクト領域は前記第1ソース電極に電気的に接続され、前記第1ドレインコンタクト領域は前記第1ドレイン電極に電気的に接続されており、
前記チャネル保護層は、前記第1酸化物半導体層のうち前記第1チャネル領域を覆い、かつ、前記第1ソースコンタクト領域および前記第1ドレインコンタクト領域を露出し、
前記第2酸化物半導体層は、前記基板の法線方向から見たとき、前記第2チャネル領域の両側に位置する第2ソースコンタクト領域および第2ドレインコンタクト領域を含み、前記第2ソースコンタクト領域は前記第2ソース電極に電気的に接続され、前記第2ドレインコンタクト領域は前記第2ドレイン電極に電気的に接続されており、
前記ゲート絶縁層は、前記第2酸化物半導体層のうち前記第2チャネル領域を含む第1領域を覆い、かつ、前記第2ソースコンタクト領域および前記第2ドレインコンタクト領域を含む第2領域を露出している、請求項1から10のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項12】
前記第2酸化物半導体層において、前記第2領域は、前記第1領域よりも比抵抗の低い領域であり、
前記第1酸化物半導体層において、前記第1ソースコンタクト領域および前記第1ドレインコンタクト領域は、前記チャネル保護層で覆われた部分よりも比抵抗の低い領域である、請求項11に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項13】
前記第1領域は、前記基板の法線方向から見たとき、前記第2ゲート電極に重なる前記第2チャネル領域と、前記ゲート絶縁層に重なるが前記第2ゲート電極に重ならないサイド領域とを有し、前記サイド領域は、前記第2チャネル領域と、前記第2ソースコンタクト領域および前記第2ドレインコンタクト領域との間に位置し、
前記第2チャネル領域の比抵抗は、前記サイド領域の比抵抗および前記第1チャネル領域の比抵抗よりも高い、請求項12に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項14】
前記アクティブマトリクス基板は、複数の画素領域を含む表示領域と、前記表示領域の周辺に設けられた非表示領域とを有し、
前記複数の画素領域のそれぞれは、選択用画素TFTと、駆動用画素TFTと、容量素子とを含む画素回路を有し、
前記駆動用画素TFTは、前記第1TFTであり、
前記選択用画素TFTは、前記第2TFTである、請求項1から13のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項15】
前記アクティブマトリクス基板は、複数の画素領域を含む表示領域と、前記表示領域の周辺に設けられた非表示領域とを有し、
前記複数の画素領域のそれぞれに配置された画素TFTと、
前記非表示領域に配置され、かつ、複数の回路TFTを含む周辺回路と、をさらに備え、
前記画素TFTは、前記第1TFTであり、
前記複数の回路TFTは、前記第2TFTを含む、請求項1から13のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項16】
前記低移動度酸化物半導体膜および前記高移動度酸化物半導体膜は、いずれも、In-Ga-Zn-O系半導体を含み、
前記高移動度酸化物半導体膜における全金属元素に対するInの原子数比は、前記低移動度酸化物半導体膜における全金属元素に対するInの原子数比よりも高い、請求項1から15のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項17】
前記高移動度酸化物半導体膜はSnを含み、前記低移動度酸化物半導体膜はSnを含まないか、または、前記高移動度酸化物半導体膜よりも低い濃度でSnを含む、請求項1から15のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項18】
前記低移動度酸化物半導体膜および/または前記高移動度酸化物半導体膜はIn-Ga-Zn-O系半導体を含み、前記In-Ga-Zn-O系半導体は、結晶質部分を含む、請求項1から15のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板の製造方法であって、
前記第1酸化物半導体層の少なくとも一部を前記チャネル保護層で覆い、かつ、前記第2酸化物半導体層の一部を前記ゲート絶縁層で覆った状態で、前記積層酸化物半導体膜を低抵抗化させる低抵抗化処理を行うことにより、前記第2酸化物半導体層のうち前記ゲート絶縁層で覆われていない部分の比抵抗を、前記第1酸化物半導体層のうち前記チャネル保護層で覆われた部分および前記第2酸化物半導体層のうち前記ゲート絶縁層で覆われた部分の比抵抗よりも小さくする工程を包含する、アクティブマトリクス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置等に用いられるアクティブマトリクス基板は、複数の画素を有する表示領域と、表示領域以外の領域(非表示領域または額縁領域)とを有している。表示領域には、画素毎に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、「TFT」)などのスイッチング素子を備えている。このようなスイッチング素子としては、従来から、非晶質シリコン膜を活性層とするTFT(以下、「非晶質シリコンTFT」)や多結晶シリコン膜を活性層とするTFT(以下、「多結晶シリコンTFT」)が広く用いられている。
【0003】
TFTの活性層の材料として、非晶質シリコンや多結晶シリコンに代わって、酸化物半導体を用いることが提案されている。このようなTFTを「酸化物半導体TFT」と称する。酸化物半導体は、非晶質シリコンよりも高い移動度を有している。このため、酸化物半導体TFTは、非晶質シリコンTFTよりも高速で動作することが可能である。
【0004】
TFTの構造は、ボトムゲート構造と、トップゲート構造とに大別される。現在、酸化物半導体TFTには、ボトムゲート構造が採用されることが多いが、トップゲート構造を用いることも提案されている(例えば特許文献1)。トップゲート構造では、ゲート絶縁層を薄くできるので、高い電流供給性能が得られる。
【0005】
アクティブマトリクス基板の非表示領域に、TFTを含む周辺回路がモノリシック(一体的)に形成される場合がある。例えば、駆動回路をモノリシックに形成することによって、非表示領域の狭小化や、実装工程簡略化によるコストダウンが実現される。非表示領域において、ゲート駆動回路がモノリシックに形成され、ソース駆動回路がCOG(Chip on Glass)方式で実装されてもよい。スマートフォンなどの狭額縁化の要求の高いデバイスでは、ソース切替(Source Shared Driving:SSD)回路とも呼ばれるデマルチプレクサ回路をモノリシックに形成することもある。
【0006】
本明細書では、表示領域の各画素に配置されるTFT(有機EL表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板においては、画素回路を構成する複数のTFT)を「画素TFT」と呼ぶ。また、非表示領域に設けられる周辺回路を構成するTFTを「周辺回路TFT」と呼ぶ。
【0007】
アクティブマトリクス基板では、製造プロセスの観点から、周辺回路TFTも、画素TFTと同じ酸化物半導体膜を用い、かつ、共通のプロセスを利用して形成されることが好ましい。このため、周辺回路TFTおよび画素TFTは、通常、同じ構造を有する。これらのTFTの特性もほぼ同じであり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、周辺回路TFTおよび画素TFTに求められる特性はそれぞれ異なっている。また、周辺回路TFTのなかでも、用途に応じて求められる特性は異なる。
【0010】
さらに、有機EL表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板では、1つの画素内に、少なくとも2種類の画素TFT(「駆動用画素TFT」および「選択用画素TFT」と呼ぶ。)を含む画素回路が設けられる。選択用画素TFTは、駆動用画素TFTへの印加電圧を変化させて画素を選択する機能を有する。駆動用画素TFTは、発光に必要な電流を供給する機能を有する。選択用画素TFTと駆動用画素TFTとは異なる機能を担うので、それぞれに求められる特性も異なり得る。
【0011】
このように、用途の異なる複数のTFTを備えたアクティブマトリクス基板においては、各TFTが用途に応じて要求される特性を有することができるように、異なる特性を有する複数の酸化物半導体TFTを作り分けることが求められている。
【0012】
本発明の実施形態は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、互いに特性の異なる複数の酸化物半導体TFTを備えたアクティブマトリクス基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書は、以下の項目に記載のアクティブマトリクス基板およびアクティブマトリクス基板の製造方法を開示している。
[項目1]
基板と、前記基板に支持された、第1TFTおよび第2TFTを含む複数の酸化物半導体TFTとを備え、
前記第1TFTは、
第1チャネル領域を含む第1酸化物半導体層と、
前記第1酸化物半導体層の前記基板側に、下部絶縁層を介して配置された第1ゲート電極であって、前記基板の法線方向から見たとき、前記第1チャネル領域に重なる、第1ゲート電極と、
前記第1酸化物半導体層の前記基板と反対側に配置され、前記第1チャネル領域を少なくとも覆うチャネル保護層と、
前記チャネル保護層よりも上層に配置され、前記第1酸化物半導体層に電気的に接続された第1ソース電極および第1ドレイン電極と、を有し、
前記第2TFTは、
第2チャネル領域を含む第2酸化物半導体層と、
前記第2酸化物半導体層の前記基板と反対側に、ゲート絶縁層を介して配置された第2ゲート電極であって、前記基板の法線方向から見たとき、前記第2チャネル領域に重なる、第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極を覆う層間絶縁層上に配置され、かつ、前記第2酸化物半導体層に電気的に接続された第2ソース電極および第2ドレイン電極と、を有し、
前記第1酸化物半導体層および前記第2酸化物半導体層は、同じ積層酸化物半導体膜から形成されており、前記積層酸化物半導体膜は、相対的に高い移動度を有する高移動度酸化物半導体膜と、前記高移動度酸化物半導体膜の前記基板側に配置され、前記高移動度酸化物半導体膜よりも低い移動度を有する低移動度酸化物半導体膜とを含む積層構造を有し、
前記第1TFTの前記チャネル保護層と前記第2TFTの前記ゲート絶縁層とは同じ絶縁膜から形成されている、アクティブマトリクス基板。
[項目2]
前記下部絶縁層の厚さは、前記ゲート絶縁層の厚さよりも大きい、項目1に記載のアクティブマトリクス基板。
[項目3]
前記第2TFTは、前記第1TFTの前記第1ゲート電極と同じ導電膜から形成された下部導電層をさらに含み、前記下部導電層は、前記基板の法線方向から見たとき、前記第2酸化物半導体層の少なくとも一部に重なっている、項目1または2に記載のアクティブマトリクス基板。
[項目4]
前記下部導電層は、前記第2ゲート電極と電気的に接続されており、前記第2TFTの下部ゲート電極として機能する、項目3に記載のアクティブマトリクス基板。
[項目5]
前記第1TFTの前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極のうちの少なくとも一方は、前記第2TFTの前記第2ゲート電極と同じ導電膜から形成されている、項目1から4のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目6]
前記第1TFTの前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極のうちの少なくとも一方と、前記第2TFTの前記第2ソース電極および前記第2ドレイン電極とは、同じ導電膜から形成されている、項目1から5のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目7]
前記第1TFTの前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極のうち少なくとも一方は、前記第2TFTの前記第2ゲート電極と同じ導電膜から形成された電極であり、前記電極は、前記第2TFTの前記第2ソース電極および前記第2ドレイン電極と同じ導電膜から形成された上部電極に電気的に接続されている、項目1から6のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目8]
前記第1TFTの前記チャネル保護層および前記第2TFTの前記ゲート絶縁層は、互いに分離している、項目1から7のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目9]
前記第1TFTの前記チャネル保護層および前記第2TFTの前記ゲート絶縁層は、互いに繋がっている、項目1から7のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目10]
前記絶縁膜は、前記基板の法線方向から見たとき、前記ゲート絶縁層の両側に位置し、かつ、前記第2酸化物半導体層の一部を露出するソース側開口部およびドレイン側開口部を有する、項目9に記載のアクティブマトリクス基板。
[項目11]
前記第1酸化物半導体層は、前記基板の法線方向から見たとき、前記第1チャネル領域の両側に位置する第1ソースコンタクト領域および第1ドレインコンタクト領域をさらに含み、前記第1ソースコンタクト領域は前記第1ソース電極に電気的に接続され、前記第1ドレインコンタクト領域は前記第1ドレイン電極に電気的に接続されており、
前記チャネル保護層は、前記第1酸化物半導体層のうち前記第1チャネル領域を覆い、かつ、前記第1ソースコンタクト領域および前記第1ドレインコンタクト領域を露出し、
前記第2酸化物半導体層は、前記基板の法線方向から見たとき、前記第2チャネル領域の両側に位置する第2ソースコンタクト領域および第2ドレインコンタクト領域を含み、前記第2ソースコンタクト領域は前記第2ソース電極に電気的に接続され、前記第2ドレインコンタクト領域は前記第2ドレイン電極に電気的に接続されており、
前記ゲート絶縁層は、前記第2酸化物半導体層のうち前記第2チャネル領域を含む第1領域を覆い、かつ、前記第2ソースコンタクト領域および前記第2ドレインコンタクト領域を含む第2領域を露出している、項目1から10のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目12]
前記第2酸化物半導体層において、前記第2領域は、前記第1領域よりも比抵抗の低い領域であり、
前記第1酸化物半導体層において、前記第1ソースコンタクト領域および前記第1ドレインコンタクト領域は、前記チャネル保護層で覆われた部分よりも比抵抗の低い領域である、項目11に記載のアクティブマトリクス基板。
[項目13]
前記第1領域は、前記基板の法線方向から見たとき、前記第2ゲート電極に重なる前記第2チャネル領域と、前記ゲート絶縁層に重なるが前記第2ゲート電極に重ならないサイド領域とを有し、前記サイド領域は、前記第2チャネル領域と、前記第2ソースコンタクト領域および前記第2ドレインコンタクト領域との間に位置し、
前記第2チャネル領域の比抵抗は、前記サイド領域の比抵抗および前記第1チャネル領域の比抵抗よりも高い、項目12に記載のアクティブマトリクス基板。
[項目14]
前記アクティブマトリクス基板は、複数の画素領域を含む表示領域と、前記表示領域の周辺に設けられた非表示領域とを有し、
前記複数の画素領域のそれぞれは、選択用画素TFTと、駆動用画素TFTと、容量素子とを含む画素回路を有し、
前記駆動用画素TFTは、前記第1TFTであり、
前記選択用画素TFTは、前記第2TFTである、項目1から13のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目15]
前記アクティブマトリクス基板は、複数の画素領域を含む表示領域と、前記表示領域の周辺に設けられた非表示領域とを有し、
前記複数の画素領域のそれぞれに配置された画素TFTと、
前記非表示領域に配置され、かつ、複数の回路TFTを含む周辺回路と、をさらに備え、
前記画素TFTは、前記第1TFTであり、
前記複数の回路TFTは、前記第2TFTを含む、項目1から13のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目16]
前記低移動度酸化物半導体膜および前記高移動度酸化物半導体膜は、いずれも、In-Ga-Zn-O系半導体を含み、
前記高移動度酸化物半導体膜における全金属元素に対するInの原子数比は、前記低移動度酸化物半導体膜における全金属元素に対するInの原子数比よりも高い、項目1から15のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目17]
前記高移動度酸化物半導体膜はSnを含み、前記低移動度酸化物半導体膜はSnを含まないか、または、前記高移動度酸化物半導体膜よりも低い濃度でSnを含む、項目1から15のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目18]
前記低移動度酸化物半導体膜および/または前記高移動度酸化物半導体膜はIn-Ga-Zn-O系半導体を含み、前記In-Ga-Zn-O系半導体は、結晶質部分を含む、項目1から15のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板。
[項目19]
項目1から18のいずれかに記載のアクティブマトリクス基板の製造方法であって、
前記第1酸化物半導体層の少なくとも一部を前記チャネル保護層で覆い、かつ、前記第2酸化物半導体層の一部を前記ゲート絶縁層で覆った状態で、前記積層酸化物半導体膜を低抵抗化させる低抵抗化処理を行うことにより、前記第2酸化物半導体層のうち前記ゲート絶縁層で覆われていない部分の比抵抗を、前記第1酸化物半導体層のうち前記チャネル保護層で覆われた部分および前記第2酸化物半導体層のうち前記ゲート絶縁層で覆われた部分の比抵抗よりも小さくする工程を包含する、アクティブマトリクス基板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によると、特性の異なる複数の酸化物半導体TFTを備えたアクティブマトリクス基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】アクティブマトリクス基板における第1TFT100および第2TFT200を例示する平面図である。
【
図2】第1TFT100および第2TFT200のVg-Id特性を例示する図である。
【
図3A】アクティブマトリクス基板における第1TFT100および第2TFT200の他の例を示す平面図である。
【
図3B】
図3Aに示すIIIb-IIIb線における断面図である。
【
図4】第1TFT100および第2TFT200のさらに他の例を示す平面図である。
【
図5A】第1TFT100および第2TFT200のさらに他の例を示す平面図である。
【
図6A】アクティブマトリクス基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図6B】アクティブマトリクス基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図6C】アクティブマトリクス基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図6D】アクティブマトリクス基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図6E】アクティブマトリクス基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図6F】アクティブマトリクス基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図6G】アクティブマトリクス基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図7A】アクティブマトリクス基板の他の製造方法を示す工程断面図である。
【
図7B】アクティブマトリクス基板の他の製造方法を示す工程断面図である。
【
図7C】アクティブマトリクス基板の他の製造方法を示す工程断面図である。
【
図7D】アクティブマトリクス基板の他の製造方法を示す工程断面図である。
【
図8A】アクティブマトリクス基板のさらに他の製造方法を示す工程断面図である。
【
図8B】アクティブマトリクス基板のさらに他の製造方法を示す工程断面図である。
【
図8C】アクティブマトリクス基板のさらに他の製造方法を示す工程断面図である。
【
図9】アクティブマトリクス基板1001の平面構造の一例を示す概略図である。
【
図10A】アクティブマトリクス基板1001における画素TFT101を示す断面図である。
【
図10B】アクティブマトリクス基板1001における画素TFT101の他の例を示す断面図である。
【
図11】アクティブマトリクス基板1002の平面構造の一例を示す概略図である。
【
図13】アクティブマトリクス基板1002における駆動用画素TFT102および選択用画素TFT202を示す断面図である。
【
図14】アクティブマトリクス基板のさらに他の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
アクティブマトリクス基板に設けられたTFTには、その用途ごとに求められる特性が異なっている。以下、好適なTFT特性の例を説明する。なお、TFTの用途および求められる特性は、以下の例に限定されず、多様化している。
【0017】
前述したように、有機EL表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板においては、1つの画素内に、駆動用画素TFTおよび選択用画素TFTを少なくとも含む画素回路が設けられる。駆動用画素TFTは、電流制御の観点から、また、多階調表示を好適に行うためには、駆動用画素TFTのVg(ゲート電圧)-Id(ドレイン電流)特性がある程度なだらかである(つまり急峻でない)ことが好ましい。このため、駆動用画素TFTには、サブスレッショルド係数(S値)が大きいことが求められる。駆動用画素TFTは、また、正の閾値電圧を有するエンハンスメント特性を有してもよい。一方、選択用画素TFTは、高い移動度を有する(すなわちオン電流が大きい)ことが好ましい。選択用画素TFTでは、S値は大きくなくてもよい。むしろS値が小さく(つまり、Vg-Id特性が急峻であり)、スイッチング速度が高いことが求められる。選択用画素TFTは、負の閾値電圧を有するデプレッション特性を有してもよい。
【0018】
周辺回路TFTにおいても、用途および機能により、TFTに求められる特性が異なる。例えば、周辺回路TFTのうち、デマルチプレクサ回路に使用されるTFT(以下、「DMX回路用TFT」)や、駆動回路を構成する一部のTFT(出力トランジスタなど)には、比較的大きいオン電流を流す必要があり、高い電流駆動力が求められる。
【0019】
上記知見に基づいて、本発明者が検討した結果、同じ酸化物半導体膜を活性層として用いつつ、TFT構造を異ならせることで、互いに特性の異なる複数のTFTを作り分ける方法を見出し、本願発明に想到した。具体的には、ボトムゲート型TFTとトップゲート型TFTとを作り分けるとともに、酸化物半導体膜として高移動度酸化物半導体膜と低移動度酸化物半導体膜との積層膜を用いる。これにより、ボトムゲート型TFTとトップゲート型TFTとで、チャネルとして主に寄与する酸化物半導体膜を互いに異ならせることができるので、各TFTを所望の特性に制御できる。
【0020】
(第1の実施形態)
本実施形態のアクティブマトリクス基板は、基板と、基板に支持された複数の酸化物半導体TFTとを備える。複数の酸化物半導体TFTは、少なくとも1つの第1TFTと、少なくとも1つの第2TFTとを含む。以下、図面を参照しながら、各TFTの構造を説明する。
【0021】
図1Aおよび図1Bは、それぞれ、アクティブマトリクス基板1000に形成された第1TFT100および第2TFT200を例示する平面図および断面図である。アクティブマトリクス基板1000は、複数の第1TFT100および複数の第2TFT200を有し得る。ここでは、簡単のため、単一の第1TFT100および単一の第2TFT200のみを図示し、説明を行う。
【0022】
まず、アクティブマトリクス基板1000の層構造を説明する。アクティブマトリクス基板1000は、基板1側から、第1メタル層M1、下部絶縁層3、積層酸化物半導体膜OS、第1の絶縁膜L1、第2メタル層M2、層間絶縁層10、および、第3メタル層M3をこの順で含む。
【0023】
積層酸化物半導体膜OSは、低移動度酸化物半導体膜S1と、その上に配置された高移動度酸化物半導体膜S2とを含む積層膜である。なお、積層酸化物半導体膜OSは、少なくとも、低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2をこの順で含んでいればよく、3層以上の積層構造を有してもよい。
【0024】
各メタル層は、同じ導電膜から形成された電極・配線などを含む層である。アクティブマトリクス基板1000に形成されるソースバスラインは、第1メタル層M1~第3メタル層M3のいずれかに形成され、ゲートバスラインは、第1メタル層M1~第3メタル層M3のうちソースバスラインと異なるメタル層に形成され得る。例えば、第1メタル層M1にゲートバスライン、第2メタル層M2にソースバスラインが形成されてもよい。あるいは、第2メタル層M2にゲートバスライン、第3メタル層M3にソースバスラインが形成されてもよい。
【0025】
図面において、各構成要素の参照符号の後に、括弧書きで、メタル層または絶縁膜を示す符号を付すことがある。例えば、第1メタル層M1内に形成されている電極または配線には、その参照符号の後に「(M1)」と付すことがある。
【0026】
本実施形態では、第1TFT100はボトムゲート型TFTであり、第2TFT200はトップゲート型TFTである。第1TFT100は、例えば、画素回路の駆動用画素TFTであり、第2TFT200は、例えば、選択用画素TFTであってもよい。
【0027】
第1TFT100は、ゲート電極21と、ゲート電極21上に下部絶縁層3を介して配置された酸化物半導体層41と、酸化物半導体層41の少なくとも一部を覆うチャネル保護層(エッチストップ層)61と、ソース電極71およびドレイン電極72とを備える。第1TFT100におけるゲート電極、酸化物半導体層、ソース電極およびドレイン電極を、それぞれ、「第1ゲート電極」、「第1酸化物半導体層」、「第1ソース電極」、「第1ドレイン電極」と呼ぶことがある。
【0028】
ゲート電極21は、第1メタル層M1内に形成されている。第1TFT100では、下部絶縁層3は、ゲート電極21と酸化物半導体層41との間に位置し、ゲート絶縁層として機能する。
【0029】
酸化物半導体層41は、低移動度酸化物半導体膜S1と、低移動度酸化物半導体膜S1の上に配置された高移動度酸化物半導体膜S2とを含む積層酸化物半導体膜OSから形成されている。
【0030】
酸化物半導体層41は、基板1の法線方向から見たとき、チャネル領域41cと、チャネル領域41cの両側に位置するソースコンタクト領域41sおよびドレインコンタクト領域41dとを有する。ソースコンタクト領域41sは、ソース電極71に電気的に接続される領域であり、ドレインコンタクト領域41dは、ドレイン電極72に電気的に接続される領域である。チャネル領域41cは、基板1の法線方向から見たとき、ソースコンタクト領域41sとドレインコンタクト領域41dとの間に位置し、かつ、ゲート電極21に重なる領域である。
【0031】
チャネル保護層61は、第1の絶縁膜L1から形成されている。チャネル保護層61は、酸化物半導体層41のうち少なくともチャネル領域41cの上面を覆うことが好ましい。チャネル保護層61は、チャネル領域41cに直接接していてもよい。図示する例では、チャネル保護層61は、ソースコンタクト領域41sおよびドレインコンタクト領域41dを露出する開口部51、52を有している。チャネル保護層61は、酸化物半導体層41の上面のうちソースコンタクト領域41sおよびドレインコンタクト領域41d以外の部分の全体を覆っていてもよい。また、チャネル保護層61は、酸化物半導体層41の側面全体を覆っていてもよい。これにより、第2メタル層M2のパターニングに起因する酸化物半導体層41へのダメージをより効果的に低減できる。
図1Aに示すように、チャネル保護層61は、酸化物半導体層41よりも一回り大きい島状のパターンを有し、基板1の法線方向から見たとき、チャネル保護層61の内部に酸化物半導体層41が位置してもよい。
【0032】
ソース電極71およびドレイン電極72は、第2メタル層M2に形成されている。この例では、ソース電極71は、チャネル保護層61上および開口部51内に配置され、開口部51内でソースコンタクト領域41sに接続されている。ドレイン電極72は、チャネル保護層61上および開口部52内に配置され、開口部52内でドレインコンタクト領域41dに接続されている。
【0033】
酸化物半導体層41におけるソースコンタクト領域41sおよびドレインコンタクト領域42dは、第2メタル層M2内の電極に直接接することで還元され、チャネル領域41cよりも低い比抵抗を有し得る。本明細書では、基板1の法線方向から見たとき、酸化物半導体層41のうちチャネル保護層61に重なる領域(少なくともチャネル領域41cを含む)a1を「第1領域」、ソースコンタクト領域41sおよびドレインコンタクト領域42dを含み、第1領域a1よりも比抵抗の低い領域a2を「第2領域」と呼ぶ。
【0034】
チャネル保護層61、ソース電極71およびドレイン電極72は、層間絶縁層10で覆われている。酸化物半導体層41の少なくとも第1領域a1は、チャネル保護層61で覆われているため、層間絶縁層10に直接接していない。これにより、例えば層間絶縁層10が、酸化物半導体を還元し得る還元性の絶縁膜(例えばSiN膜)である場合でも、酸化物半導体層41の少なくともチャネル領域41cを含む第1領域a1が、層間絶縁層10によって還元されて低抵抗化されることを抑制できる。図示するように、酸化物半導体層41は、全体に亘って層間絶縁層10に直接接していなくてもよい。また、後述する低抵抗化処理工程(プラズマ処理など)において、チャネル保護層61がマスクとして機能するので、第1領域a1の低抵抗化が抑制され得る。
【0035】
一方、第2TFT200は、酸化物半導体層42と、酸化物半導体層42の一部上に配置されたゲート絶縁層62と、ゲート絶縁層62上に配置されたゲート電極73と、ソース電極83およびドレイン電極84とを備える。第2TFT200におけるゲート電極、酸化物半導体層、ソース電極およびドレイン電極を、それぞれ、「第2ゲート電極」、「第2酸化物半導体層」、「第2ソース電極」、「第2ドレイン電極」と呼ぶことがある。
【0036】
酸化物半導体層42は、第1TFT100と同じ積層酸化物半導体膜から形成されている。すなわち、酸化物半導体層42は、低移動度酸化物半導体膜S1と、低移動度酸化物半導体膜S1の上に配置された高移動度酸化物半導体膜S2とを含む積層酸化物半導体膜OSから形成されている。
【0037】
酸化物半導体層42は、基板1の法線方向から見たとき、チャネル領域42cと、チャネル領域42cの両側にそれぞれ配置された、ソースコンタクト領域42sおよびドレインコンタクト領域42dを含む。ソースコンタクト領域42sは、ソース電極83に電気的に接続される領域であり、ドレインコンタクト領域42dは、ドレイン電極84に電気的に接続される領域である。チャネル領域42cは、基板1の法線方向から見たとき、ソースコンタクト領域42sとドレインコンタクト領域42dとの間に位置し、かつ、ゲート電極73に重なる領域である。
【0038】
酸化物半導体層42は、また、ゲート絶縁層62で覆われた第1領域b1と、ゲート絶縁層62で覆われていない第2領域b2とを含む。第1領域b1は、チャネル領域42cを含む。第2領域b2は、第1領域b1よりも比抵抗の低い低抵抗領域であり、ソースコンタクト領域42sおよびドレインコンタクト領域42dを含む。第2TFT200における第2領域b2は、例えば、ゲート絶縁層62およびゲート電極73をマスクとして、酸化物半導体層42に対してプラズマ処理などの低抵抗化処理を行うことで低抵抗化された領域である。
【0039】
ゲート絶縁層62は、第1TFT100のチャネル保護層61と同じ第1の絶縁膜L1から形成されている。ゲート電極73は、第1TFT100のソース電極71およびドレイン電極72と同じ第2メタル層M2に形成されている(つまり、同じ導電膜を用いて形成されている)。この例では、ゲート絶縁層62のエッジは、ゲート電極73のエッジと整合しているが、第2TFT200のチャネル長方向の断面において、ゲート電極73のエッジは、ゲート絶縁層62のエッジよりも内側に位置してもよい。後述するように、第1の絶縁膜L1のパターニング後に、第2メタル層M2のパターニングを行う場合には、ゲート電極73のチャネル長方向の幅は、ゲート絶縁層62のチャネル幅方向の幅よりも小さくなるように設定され得る。
【0040】
酸化物半導体層42、ゲート絶縁層62およびゲート電極73は、層間絶縁層10で覆われている。層間絶縁層10は、酸化物半導体層42の第2領域b2の上面の一部に接していてもよい。
【0041】
ソース電極83およびドレイン電極84は、第3メタル層M3内に形成されている。この例では、層間絶縁層10には、酸化物半導体層42のソースコンタクト領域42sを露出する開口部93と、ドレインコンタクト領域42dの一部を露出する開口部94とが設けられている。ソース電極83は、層間絶縁層10上および開口部93内に配置され、開口部93内でソースコンタクト領域42sに接続されている。ドレイン電極84は、層間絶縁層10上および開口部94内に配置され、開口部94内でドレインコンタクト領域42dに接続されている。
【0042】
第2TFT200は、酸化物半導体層42の基板1側に、遮光層として機能する下部導電層22を有してもよい。下部導電層22は、第1TFT100のゲート電極21と同じ第1メタル層M1内に形成されている。下部導電層22は、下部絶縁層3で覆われている。酸化物半導体層42は、下部絶縁層3上に配置されている。下部導電層22は、基板1の法線方向から見たとき、酸化物半導体層42のうち少なくともチャネル領域42cと重なるように配置されていてもよい。これにより、基板1側からの光(バックライト光)に起因する酸化物半導体層42の特性劣化を抑制できる。
【0043】
下部導電層22は、電気的にフローティング状態であってもよいし、GND電位(0V)に固定されていてもよい。または、下部導電層22を、図示しない接続部(以下、「ゲート接続部」)によってゲート電極73に電気的に接続することで、下部ゲート電極として機能させてもよい(ダブルゲート構造)。これにより、第2TFT200のオン電流をさらに高めることができる。
【0044】
本実施形態では、第2TFT200のゲート絶縁層62となる第1の絶縁膜L1を利用して、第1TFT100のチャネル保護層61を形成している。チャネル保護層61は、第2メタル層M2のエッチング工程(この例では、ソース・ドレイン分離工程)において、酸化物半導体層41のエッチングダメージを低減するエッチストップ層として機能し得る。また、第2TFT200の酸化物半導体層42に低抵抗領域を形成するための低抵抗処理工程(例えばプラズマ処理)において、チャネル保護層61は、酸化物半導体層41のチャネル領域41cの低抵抗化を抑制するためのマスクとして機能する。これにより、第2TFT200の低抵抗処理工程に起因する第1TFT100のTFT特性の低下を抑制できる。さらに、例えば層間絶縁層10が、酸化物半導体を還元し得る還元性の絶縁膜(例えばSiN膜)である場合でも、層間絶縁層10と酸化物半導体層41の少なくともチャネル領域41cとの間にチャネル保護層(例えばSiO2膜などの酸化物膜)61が介在することで、チャネル領域41cが層間絶縁層10によって低抵抗化されることを抑制できる。
【0045】
<TFT特性>
本実施形態によると、共通の酸化物半導体膜(ここでは低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2を含む積層酸化物半導体膜OS)を用いつつ、互いに特性の異なる、ボトムゲート構造の第1TFT100と、トップゲートまたはダブルゲート構造の第2TFT200とを作り分けることが可能である。
【0046】
ボトムゲート構造を有する第1TFT100においては、ゲート絶縁層である下部絶縁層3側に位置する低移動度酸化物半導体膜S1が高移動度酸化物半導体膜S2よりもチャネルとして大きく寄与する。つまり、第1TFT100のチャネルは主に低移動度酸化物半導体膜S1に形成され得る。一方、トップゲート構造を有する第2TFT200においては、ゲート絶縁層62側に位置する高移動度酸化物半導体膜S2がチャネルとして大きく寄与する。つまり、第2TFT200のチャネルは主に高移動度酸化物半導体膜S2に形成され得る。このため、第2TFT200のTFTとしての移動度(TFT移動度)は、第1TFT100よりも高くなる。つまり、第2TFT200の方が高い電流駆動力を有し得る。また、第1TFT100のVg-Id特性は相対的になだらかになり、第2TFT200のVg-Id特性は、第1TFT100よりも急峻になる。
【0047】
第1TFT100のゲート絶縁層となる下部絶縁層3の厚さt1は、第2TFT200のゲート絶縁層62の厚さt2よりも大きくてもよい。これにより、第1TFT100のVg-Id特性をさらに寝かせ、かつ、第2TFT200のVg-Id特性をさらに立たせることが可能になる。例えば、下部絶縁層3およびゲート絶縁層62がいずれもSiO2膜であれば、下部絶縁層3の厚さt1は、200nm以上450nm以下(例えば300nm程度)であり、ゲート絶縁層62の厚さt2は、100nm以上200nm以下であってもよい。
【0048】
図2は、第1TFT100および第2TFT200のVg-Id特性を例示する図である。グラフの横軸は、ドレイン電極の電位を基準としたゲート電極の電位(ゲートードレイン間電圧)
Vgを表し、グラフの縦軸はドレイン電流Idを表す。第2TFT200の方が、第1TFT100よりも高いTFT移動度を有するので、第2TFT200の閾値電圧は、第1TFT100よりもマイナス方向にシフトしている。また、第1TFT100のVg-Id特性は、第2TFT200よりもなだらかである。つまり、第1TFT100のS値は、第2TFT200よりも小さい。なお、各TFTの閾値電圧の正負やその大きさ、Vg-Id特性の傾き等は、図示する例に限定されない。
【0049】
第1TFT100は、S値が大きいことから、有機EL表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板において、各画素に設けられる画素回路の駆動用画素TFTとして好適に用いられる。これにより、多階調表示を好適に行うことができる。また、図示するように、第1TFT100がエンハンスメント特性を有する場合、駆動回路などの周辺回路を構成する一部のTFTに好適に用いられ得る。これにより、回路誤動作を抑制でき、歩留まりの低下を抑制できる。
【0050】
一方、第2TFT200は高い電流駆動力(オン電流)を有し、かつ、高いスイッチング速度を有する。第2TFT200は、例えば、画素回路の選択用画素TFTとして好適に用いられる。これにより、高周波や高精細機種への適用が可能となる。また、第2TFT200を、周辺回路に用いられる一部のTFT、例えばデマルチプレクサ回路用のTFTや、ゲート駆動回路の出力トランジスタとして用いてもよい。
【0051】
(変形例)
第1TFT100および第2TFT200のTFT構造は、
図1Aおよび
図1Bに示した構造に限定されない。以下、本実施形態のTFT構造の変形例を説明する。以下の説明では、
図1Aおよび
図1Bと同様の構造については適宜説明を省略する。
【0052】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ、第1TFT100および第2TFT200の他の例を示す平面図および断面図である。図示するように、第3メタル層M3内に、ソース電極71に電気的に接続される上部ソース電極81と、ドレイン電極72に電気的に接続される上部ドレイン電極82とを形成してもよい。この例では、層間絶縁層10は、ソース電極71(またはソース電極71を含む配線)の一部を露出する開口部91と、ドレイン電極72(またはドレイン電極72を含む配線)の一部を露出する開口部92とを有している。上部ソース電極81は、層間絶縁層10上および開口部91内に配置され、開口部91内でソース電極71に電気的に接続されている。上部ドレイン電極82は、層間絶縁層10上および開口部92内に配置され、開口部92内でドレイン電極72に電気的に接続されている。基板1の法線方向から見たとき、開口部91、92は、それぞれ、チャネル保護層61に形成された開口部51、52に少なくとも部分的に重なっていてもよいし、開口部51、52に重なっていなくてもよい。例えば、ソース電極71およびドレイン電極72は、基板1の法線方向から見て酸化物半導体層41とは重ならない領域まで延設されており、ソース電極71の延設部およびドレイン電極72の延設部と、上部ソース電極81および上部ドレイン電極82とが、それぞれ、層間絶縁層10に設けられた開口部91、92内で接続されていてもよい。
【0053】
図4は、第1TFT100のさらに他の例を示す断面図である。
図4に示す例では、第3メタル層M3内にソース電極81aおよびドレイン電極82aが形成されている。層間絶縁層10には、酸化物半導体層41のソースコンタクト領域41sおよびドレインコンタクト領域41dを露出する開口部91a、92aが形成されている。ソース電極81aは、層間絶縁層10に形成された開口部91a内で、酸化物半導体層41のソースコンタクト領域41sに電気的に接続されている。ドレイン電極82aは、層間絶縁層10に形成された開口部92a内で、酸化物半導体層4
1のドレインコンタクト領域41dに電気的に接続されている。
【0054】
このように、本実施形態では、第1TFT100のソース電極およびドレイン電極を、それぞれ、回路の構成やレイアウトを考慮して、第2メタル層M2、第3メタル層M3および他のメタル層(例えば画素電極を含む透明導電層など)のいずれかに形成することが可能である。これにより、第1TFT100を回路内の他の素子や配線により容易に接続させることや、回路面積を低減することが可能になる。図示していないが、ソース電極およびドレイン電極の一方のみを第2メタル層M2に形成したり、ソース電極およびドレイン電極の一方のみを第3メタル層M3に形成したりしてもよい。例えば、ソース電極およびドレイン電極の一方を第2メタル層M2に形成し、他方を第3メタル層M3に形成してもよい。
【0055】
図1Aおよび
図1Bに示す例では、基板1の法線方向から見たとき、チャネル保護層61およびゲート絶縁層62は、互いに分離した島状のパターンを有するが、チャネル保護層61およびゲート絶縁層62は、互いに繋がっていてもよい。つまり、チャネル保護層61およびゲート絶縁層62は、それぞれ、第1の絶縁膜L1から形成された連続した膜の一部であってもよい。
【0056】
図5Aおよび
図5Bは、それぞれ、アクティブマトリクス基板の他の例を示す平面図および断面図である。図示するように、アクティブマトリクス基板1000aは、第1の絶縁膜L1から形成され、かつ、チャネル保護層61およびゲート絶縁層62を含む連続した絶縁層60を備える。第1TFT100において、絶縁層60は、酸化物半導体層41のソースコンタクト領域41sおよびドレインコンタクト領域41dをそれぞれ露出する開口部51、52を有する。また、第2TFT200において、絶縁層60は、酸化物半導体層42の一部を露出する開口部53、54を有している。酸化物半導体層42のうち開口部53、54によって露出された領域(第2領域)b2は、絶縁層60で覆われた領域(第1領域)b1よりも比抵抗の低い低抵抗領域である。基板1の法線方向から見たとき、層間絶縁層10の開口部93、94は、それぞれ、開口部53、54の内部に位置してもよい。これにより、低抵抗領域である第2領域b2に、ソースコンタクト領域42sおよびドレインコンタクト領域42dを形成できるので、酸化物半導体層42とソース電極83およびドレイン電極84とのコンタクト抵抗をより小さくできる。
【0057】
アクティブマトリクス基板1000aが複数の第1TFT100および複数の第2TFT200を備える場合、複数のチャネル保護層61および複数のゲート絶縁層62は互いに繋がっていてもよい。これにより、例えば層間絶縁層10を形成する際に、第1の絶縁膜L1による段差が低減されるので、層間絶縁層10のうち、例えば、第1TFT100のソース電極71やドレイン電極72の近傍に位置する部分のカバレッジを向上できる。一方、
図1Aおよび
図1Bに図示したように、チャネル保護層61およびゲート絶縁層62を互いに離して配置する場合には、層間絶縁層10のうち、例えば、第2TFT200のソース電極83やドレイン電極84の近傍に位置する部分のカバレッジを向上できる。
【0058】
また、
図5Aおよび
図5Bに示すように、アクティブマトリクス基板1000aは、第2TFT200の下部導電層22をゲート電極73に電気的に接続するゲート接続部GCをさらに備えてもよい。この例では、ゲート電極73から延設された上部接続部73gと、下部導電層22から延設された下部接続部22gとが、下部絶縁層3および第1の絶縁膜L1に設けられたコンタクトホールCHg内で互いに電気的に接続されている。ゲート電極73および下部導電層22を電気的に接続することで、ダブルゲート構造を有する第2TFT200が得られる。ダブルゲート構造を有する第2TFT200では、下部導電層22は、第2TFT200の「下部ゲート電極」として機能し、下部絶縁層3は、第2TFT200の「下部ゲート絶縁層」として機能する。この場合、第2TFT200のゲート電極73を「上部ゲート電極」、ゲート絶縁層62を「上部ゲート絶縁層」と呼ぶことがある。
【0059】
図示していないが、例えば
図1Aおよび
図1Bに示すアクティブマトリクス基板1000も、ゲート接続部GCを有し得る。アクティブマトリクス基板1000では、ゲート接続部を形成する領域に第1の絶縁膜L1が存在していなくてもよい。この場合、ゲート接続部GCでは、下部絶縁層3に形成された開口部を介して、第2メタル層M2内の上部接続部73gと、第1メタル層M1内の下部接続部22gとが接続されてもよい。
【0060】
<低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2>
各酸化物半導体膜の組成、厚さ、結晶構造、形成方法などは特に限定されない。高移動度酸化物半導体膜S2および低移動度酸化物半導体膜S1は、それぞれ、単層膜でもよいし、複数の酸化物半導体膜を含む積層膜であってもよい。高移動度酸化物半導体膜S2の移動度(高移動度酸化物半導体膜S2が積層膜である場合には、その積層膜全体の移動度)が低移動度酸化物半導体膜S1の移動度よりも高ければよい。
【0061】
高移動度酸化物半導体膜S2および低移動度酸化物半導体膜S1の組成は互いに異なっていてもよい。「組成が異なる」とは、各層に含まれる金属元素の種類または組成比が異なることをいう。一例として、高移動度酸化物半導体膜S2および低移動度酸化物半導体膜S1は、それぞれ、Inおよび/またはSnを含み、高移動度酸化物半導体膜S2における全金属元素に対するInおよびSnの原子数比の合計は、低移動度酸化物半導体膜S1における全金属元素に対するInおよびSnの原子数比の合計よりも大きくてもよい。
【0062】
例えば、高移動度酸化物半導体膜S2および低移動度酸化物半導体膜S1は、いずれもIn-Ga-Zn-O系酸化物半導体層であり、低移動度酸化物半導体膜S1におけるInの原子数比は、高移動度酸化物半導体膜S2におけるInの原子数比よりも小さくてもよい。または、低移動度酸化物半導体膜S1におけるGaの原子数比は、高移動度酸化物半導体膜S2におけるGaの原子数比よりも大きくてもよい。
【0063】
また、高移動度酸化物半導体膜S2はSnを含み、低移動度酸化物半導体膜S1はSnを含んでいなくてもよい。または、低移動度酸化物半導体膜S1は、高移動度酸化物半導体膜S2よりも低い濃度でSnを含んでいてもよい。つまり、低移動度酸化物半導体膜S1における全金属元素に対するSnの原子数比は、高移動度酸化物半導体膜S2におけるSnの原子数比よりも小さくてもよい。
【0064】
低移動度酸化物半導体膜S1として、例えば、In-Ga-Zn-O系半導体膜(In:Ga:Zn=1:1:1等)を用いることができる。高移動度酸化物半導体膜S2として、例えば、In-Ga-Zn-O系半導体膜(In:Ga:Zn=5:1:4等)、In-Sn-Zn-O系半導体膜、In-Al-Sn-Zn-O系半導体膜、In-W-Zn-O系半導体膜、In-Sn-O系半導体膜、In-Zn-O系半導体膜、In-Ga-Sn-O系半導体膜、In-Sn-Ti―Zn―O系半導体膜などを用いることができる。
【0065】
また、低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2は、互いに異なる結晶構造を有してもよい。例えば、これらの酸化物半導体膜の一方が非晶質酸化物半導体膜、他方が、結晶質部分を含む結晶質酸化物半導体膜であってもよい。
【0066】
さらに、各金属元素の比率が同じ場合でも、成膜方法または成膜条件を異ならせることで、酸化物半導体膜の移動度を異ならせることが可能である。例えば、酸化物半導体膜をスパッタ法で形成する際のチャンバー内の雰囲気(例えばチャンバーに供給する酸素およびArの流量比)を異ならせてもよい。具体的には、低移動度酸化物半導体膜S1の形成時には、Arに対する酸素の流量比を大きく(例えば80%)設定し、高移動度酸化物半導体膜S2の形成時には、Arに対する酸素の流量比を低移動度酸化物半導体膜S1よりも小さく(例えば20%)設定してもよい。
【0067】
低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2の厚さは、略同じでもよいし、異なっていてもよい。高移動度酸化物半導体膜S2は、低移動度酸化物半導体膜S1よりも薄くてもよい。高移動度酸化物半導体膜S2の厚さは、例えば3nm以上15nm以下であってもよい。低移動度酸化物半導体膜S1の厚さは、例えば、10nm以上40nm以下であってもよい。
【0068】
<アクティブマトリクス基板の製造方法>
以下、
図5Aおよび
図5Bに示すアクティブマトリクス基板1000aを例に、本実施形態のアクティブマトリクス基板の製造方法を説明する。
図6A~
図6Gは、それぞれ、アクティブマトリクス基板1000aの製造方法を説明するための工程断面図である。各工程断面図は、第1TFT100が形成されるTFT形成領域R1と、第2TFT200が形成されるTFT形成領域R2と、ゲート接続部GCが形成される接続部形成領域Rgとを左側から順に示している。これらの断面図には、簡単のため、第1TFT100、第2TFT200およびゲート接続部GCを1つずつ示しているが、アクティブマトリクス基板1000には、第1TFT100、第2TFT200およびゲート接続部GCが、それぞれ複数個形成され得る。なお、
図1A、
図1B、
図3A、図3Bおよび
図4を参照しながら上述した種々の構造も、第1の絶縁膜L1、第2メタル層M2、第3メタル層M3等のパターンを変えることで、以下と同様の方法で製造され得る。
【0069】
・STEP1:第1メタル層M1の形成(
図6A)
基板1上に、例えばスパッタリング法で、第1導電膜(厚さ:例えば50nm以上500nm以下)を形成する。次いで、公知のフォトリソ工程により、第1導電膜のパターニングを行う。このようにして、
図6Aに示すように、TFT形成領域R1にゲート電極21、TFT形成領域R2に下部導電層22、接続部形成領域Rgに下部接続部22gを形成する。下部接続部22gは、下部導電層22と電気的に接続されている。この例では、下部接続部22gは、下部導電層22の延設部である。
【0070】
基板1としては、透明で絶縁性を有する基板、例えばガラス基板、シリコン基板、耐熱性を有するプラスチック基板(樹脂基板)などを用いることができる。
【0071】
第1導電膜の材料は、特に限定されず、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の金属又はその合金、若しくはその金属窒化物を含む膜を適宜用いることができる。また、これら複数の膜を積層した積層膜を用いてもよい。
【0072】
ここでは、第1導電膜として、CuまたはAlを含む金属膜(合金膜を含む)の単層膜を用いる。または、CuまたはAlを含む金属膜を最上層とする積層膜を用いてもよい。
【0073】
・STEP2:下部絶縁層3の形成(
図6B)
次いで、
図6Bに示すように、ゲート電極21および下部導電層22を覆うように、下部絶縁層(厚さ:例えば300nm)3を形成する。
【0074】
下部絶縁層3は例えばCVD法で形成される。下部絶縁層3としては、酸化珪素(SiOx)層、窒化珪素(SiNx)層、酸化窒化珪素(SiOxNy;x>y)層、窒化酸化珪素(SiNxOy;x>y)層等を適宜用いることができる。下部絶縁層3は単層であってもよいし、積層構造を有していてもよい。例えば、基板側(下層)に、基板1からの不純物等の拡散防止のために窒化珪素(SiNx)層、窒化酸化珪素層等を形成し、その上の層(上層)に、絶縁性を確保するために酸化珪素(SiO2)層、酸化窒化珪素層等を形成してもよい。
【0075】
本実施形態では、下部絶縁層3は第1TFTのゲート絶縁層および第2TFTの下部ゲート絶縁層としても機能する。この観点から、下部絶縁層3の厚さは、第2TFTの上部ゲート絶縁層となる第1の絶縁膜L1よりも厚いことが好ましい。また、下部絶縁層3が酸化珪素層の場合、下部絶縁層3の厚さが例えば200nm以上450nm以下であってもよい。これにより、第1TFTにおいては、所望のオン電流を確保しつつ、第1TFTのVg-Id特性をより寝かせることができる。また、第2TFTにおいては、オン電流をさらに高めることができる。
【0076】
・STEP3:酸化物半導体層41、42の形成(
図6C)
次いで、下部絶縁層3上に、低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2をこの順で形成することにより、積層酸化物半導体膜を得る。
【0077】
低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2は、例えばスパッタ法で形成され得る。ここでは、低移動度酸化物半導体膜S1として、厚さが30nmのIn―Ga-Zn-O系半導体膜(例えばIn:Ga:Zn=1:1:1)を形成する。高移動度酸化物半導体膜S2として、厚さが7nmのIn―Ga-Zn-O系半導体膜(例えばIn:Ga:Zn=5:1:4)を形成する。
【0078】
この後、積層酸化物半導体膜のパターニングを行う。これにより、
図6Cに示すように、TFT形成領域R1に、第1TFTの活性層となる酸化物半導体層41を形成し、TFT形成領域R2に第2TFTの活性層となる酸化物半導体層42を形成する。積層酸化物半導体膜のパターニングは、ドライエッチングで行ってもよいし、ウェットエッチングで行ってもよい。ウェットエッチングの場合、低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2がいずれもIn-Ga-Zn-O系半導体膜であれば、PAN系エッチング液またはシュウ酸系エッチング液を用いることができる。低移動度酸化物半導体膜S1がIn-Ga-Zn-O系半導体膜、高移動度酸化物半導体膜S2がIn-Sn-Zn-O系半導体膜であれば、シュウ酸系エッチング液を用いることができる。積層酸化物半導体膜のパターニングの前または後に、低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2のアニール処理を行ってもよい。
【0079】
なお、ここでは、低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2を同時に(一括して)パターニングする例を示したが、低移動度酸化物半導体膜S1および高移動度酸化物半導体膜S2を別々にパターニングしてもよい。例えば、低移動度酸化物半導体膜S1のパターニングによって酸化物半導体層41を形成した後に、高移動度酸化物半導体膜S2の形成およびパターニングを行ってもよい。
【0080】
・STEP4:第1の絶縁膜L1の形成(
図6D)
次いで、
図6Dに示すように、下部絶縁層3、酸化物半導体層41および酸化物半導体層42の上に、第1の絶縁膜L1を形成し、第1の絶縁膜L1のパターニングを行うことにより、チャネル保護層61およびゲート絶縁層62(として機能する部分)を含む絶縁層60を形成する。この例では、第1の絶縁膜L1のパターニングにより、TFT形成領域R1に酸化物半導体層41の一部を露出する開口部51、52を形成し、TFT形成領域R2に酸化物半導体層42の一部を露出する開口部53、54を形成する。また、接続部形成領域Rgにおいては、第1の絶縁膜L1および下部絶縁層3を同時にエッチングすることにより、下部接続部22gの一部を露出するコンタクトホールCHgを形成する。
【0081】
なお、図1Aおよび図1Bに示したように、第1の絶縁膜L1のパターニングにより、互いに分離したチャネル保護層61およびゲート絶縁層62を形成してもよい。この場合、チャネル保護層61は、開口部51、52を有し、かつ、酸化物半導体層41を覆う島状のパターンを有する。チャネル保護層61は、下部絶縁層3のうち、酸化物半導体層41のエッジの近傍に位置する部分も覆っていてもよい。ゲート絶縁層62は、例えば、酸化物半導体層42の一部上に位置する島状のパターンを有する。
【0082】
第1の絶縁膜L1として、例えば、下部絶縁層3と同様の絶縁膜(下部絶縁層3として例示した絶縁膜)を用いることができる。ここでは、第1の絶縁膜L1として、酸化珪素(SiO2)膜を形成する。ゲート絶縁膜として、酸化珪素膜などの酸化物膜を用いると、酸化物半導体層41、42のチャネル領域に生じた酸化欠損を酸化物膜によって低減できるので、チャネル領域の低抵抗化を抑制できる。
【0083】
第1の絶縁膜L1の厚さは、例えば100nm以上200nm以下であってもよい。第1の絶縁膜L1の厚さが100nm以上であれば、第1TFTの酸化物半導体層41のうちチャネル領域となる部分が、層間絶縁層10によって還元され低抵抗化されるのをより効果的に抑制できる。また、酸化物半導体層42を部分的に低抵抗化する低抵抗化処理工程(後述)において、第1TFTの酸化物半導体層41のうち第1の絶縁膜L1で覆われた部分(チャネル領域となる部分を含む)の低抵抗化を抑制できる。一方、第1の絶縁膜L1の厚さが150nm以下であれば、第2TFTのゲート絶縁層62を薄くできるので、第2TFTのVg-Id特性をより立たせることができ、かつ、高いオン特性(TFT移動度)を実現できる。
【0084】
・STEP5:第2メタル層M2の形成(
図6E)
第1の絶縁膜L1上に第2導電膜(厚さ:例えば50nm以上500nm以下)を形成し、第2導電膜のパターニングを行う。これにより、
図6Eに示すように、TFT形成領域R1にソース電極71およびドレイン電極72を形成し、TFT形成領域R2にゲート電極73を形成する。このようにして、TFT形成領域R1に第1TFT100が得られる。
【0085】
ソース電極71およびドレイン電極72は、それぞれ、開口部51、52内で酸化物半導体層41の露出部分(ソースコンタクト領域41sおよびドレインコンタクト領域41d)に接する。ソースコンタクト領域41sおよびドレインコンタクト領域41dは、例えば金属膜から形成されたソース電極71およびドレイン電極72に接することで、酸化物半導体層41の他の部分(第1領域)a1よりも比抵抗の低い低抵抗化領域(第2領域)a2となる。
【0086】
ゲート電極73は、例えばゲート絶縁層62上に形成される。
図6Eでは、第2TFT200のチャネル長方向の断面において、ゲート電極73およびゲート絶縁層62のエッジ(側面)は整合しているが、
図14に例示するように、第2TFT200の酸化物半導体層42をチャネル長方向に横切る断面において、ゲート電極73のエッジは、ゲート絶縁層62のエッジよりも内側に位置してもよい。この場合、基板1の法線方向から見たとき、酸化物半導体層42のうちゲート電極73に重なる部分がチャネル領域42cとなる。チャネル領域42cの両側には、ゲート絶縁層62には重なるがゲート電極73には重ならない領域(以下、「サイド領域」、オフセット領域ともいう。)42fが形成される。
【0087】
一方、接続部形成領域Rgには、第2導電膜のパターニングにより、コンタクトホールCHg内で下部接続部22gに接する上部接続部73gを形成する。上部接続部73gは、ゲート電極73と電気的に接続されている。この例では、上部接続部73gは、ゲート電極73の延設部である。このようにして、ゲート接続部GCが得られる。
【0088】
第2導電膜として、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)等の金属またはこれらの合金を用いることができる。第2導電膜は、異なる導電材料から形成された複数の層を含む積層構造を有していてもよい。ここでは、第2導電膜として、Cu合金膜を下層、Cu膜を上層とするCu/Cu合金積層膜を用いる。代わりに、Cu/Ti積層膜、あるいは、Cu/Mo積層膜を用いてもよい。
【0089】
この後、第1の絶縁膜L1および第2メタル層M2をマスクとして、積層酸化物半導体膜の低抵抗化処理を行ってもよい。低抵抗化処理として、例えばプラズマ処理を行ってもよい。本実施形態では、チャネル保護層61によって酸化物半導体層41の低抵抗化を抑制しつつ、酸化物半導体層42の所望の領域を低抵抗化することが可能である。基板1の主面の法線方向から見たとき、酸化物半導体層42のうち第1の絶縁膜L1(ゲート絶縁層62を含む)に重ならない領域(第2領域)b2は、酸化物半導体層41、42のうち第1の絶縁膜L1に重なる領域(以下、「高抵抗領域」と呼ぶことがある。)a1、b1よりも比抵抗の低い低抵抗領域となる。低抵抗領域は、導電体領域(例えばシート抵抗:200Ω/□以下)であってもよい。この例では、酸化物半導体層42のうち第1の絶縁膜L1の開口部53、54によって露出した領域が低抵抗化され、第2領域b2となる。この場合、基板1の法線方向から見たとき、第2領域b2は、第1領域b1に包囲されていてもよい。
【0090】
なお、
図14に示す例では、低抵抗化処理において、酸化物半導体層41、42のうち第1の絶縁膜L1および第2メタル層M2の両方に覆われた部分では、第2メタル層M2もマスクとして機能するので、酸化物半導体層41、42のうち第1の絶縁膜L1のみで覆われた部分よりも高い比抵抗を維持し得る。従って、基板1の法線方向から見たとき、酸化物半導体層42のうちゲート絶縁層62およびゲート電極73の両方に重なるチャネル領域42cの比抵抗は、ゲート絶縁層62のみに重なるサイド領域42fの比抵抗、および、酸化物半導体層41のうちチャネル保護層61に重なる第1領域a1の比抵抗よりも高くなり得る。これにより、Id-Vdカーブの飽和領域の特性がより安定化するというメリットが得られる。
【0091】
プラズマ処理は、第2メタル層M2を形成する前に、第1の絶縁膜L1をマスクとして行ってもよい。これにより、酸化物半導体層41、42のうち絶縁層60の開口部51~54によって露出した領域を全て低抵抗化できる。
【0092】
低抵抗化処理の方法はプラズマ処理に限定されない。例えば、酸化物半導体層42の露出領域を、金属膜などの導電膜、または、酸化物半導体を還元し得る還元性の絶縁膜に接触させることで、低抵抗化することも可能である。
【0093】
・STEP6:層間絶縁層10の形成(
図6F)
次いで、酸化物半導体層41、42、第2メタル層M2を覆う層間絶縁層10を形成する。層間絶縁層10は、酸化物半導体層42の第2領域(第1の絶縁膜L1から露出した領域)b2に接してもよい。
【0094】
層間絶縁層10として、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜などの無機絶縁層を単層又は積層させて形成することができる。無機絶縁層の厚さは100nm以上500nm以下でもよい。ここでは、層間絶縁層10として、例えば、SiNx層(厚さ:300nm)をCVD法で形成する。
【0095】
この例では、層間絶縁層10として、窒化シリコン膜などの酸化物半導体を還元させる絶縁膜を用いる。この場合、層間絶縁層10を酸化物半導体層42の第2領域b2に直接接するように配置することで、第2領域b2の比抵抗を低く維持できる。
【0096】
・STEP7:層間絶縁層10のパターニング(
図6G)
この後、公知のフォトリソ工程により、層間絶縁層10のパターニングを行う。これにより、
図6Gに示すように、TFT形成領域R1において、層間絶縁層10に、ソース電極71の一部を露出する開口部91と、ドレイン電極72の一部を露出する開口部92とを形成する。TFT形成領域R2には、層間絶縁層10に、酸化物半導体層42の第2領域b2の一部を露出する開口部93および開口部94を形成する。基板1の法線方向から見たとき、開口部93、94は、第1の絶縁膜L1に形成された開口部53、54の内側に位置していてもよい。
【0097】
・STEP8:第3メタル層M3の形成(
図5Aおよび
図5B)
次いで、層間絶縁層10上に、不図示の第3導電膜(厚さ:例えば50nm以上500nm以下)を形成し、第3導電膜のパターニングを行う。これにより、
図5Aおよび
図5Bに示したように、TFT形成領域R1に、上部ソース電極81および上部ドレイン電極82を形成し、TFT形成領域R2にソース電極83およびドレイン電極84を形成する。上部ソース電極81および上部ドレイン電極82は、それぞれ、開口部91、92内で、ソース電極71およびドレイン電極72に接していてもよい。ソース電極83およびドレイン電極84は、それぞれ、開口部93、94内で酸化物半導体層42の第2領域b2の一部に接続される。これにより、TFT形成領域R2に第2TFT200が得られる。このようにして、アクティブマトリクス基板1000aが製造され得る。
【0098】
ソース用導電膜として、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)あるいはタングステン(W)から選ばれた元素、またはこれらの元素を成分とする合金などを用いることができる。例えば、チタン膜-アルミニウム膜-チタン膜の3層構造、モリブデン膜-アルミニウム膜-モリブデン膜などの3層構造などを有していてもよい。なお、ソース用導電膜は3層構造に限られず、単層、または2層構造、あるいは4層以上の積層構造を有していてもよい。ここでは、Ti膜(厚さ:15~70nm)を下層、Cu膜(厚さ:50~400nm)を上層とする積層膜を用いる。
【0099】
以下、アクティブマトリクス基板の製造方法の変形例を説明する。以下では、上記方法と異なる点を主に説明し、同様の工程については説明を省略する。
【0100】
図7A~
図7Dは、それぞれ、アクティブマトリクス基板の他の製造方法を説明する工程断面図である。
【0101】
まず、上記方法と同様に、第1メタル層M1、下部絶縁層3および酸化物半導体層41、酸化物半導体層42を形成する。次いで、
図7Aに示すように、第1の絶縁膜L1を形成し、パターニングすることで、チャネル保護層61およびゲート絶縁層62を含む絶縁層を得る。この例では、接続部形成領域Rgにおいて、第1の絶縁膜L1および下部絶縁層3にコンタクトホールを形成しない点で、
図6Dに示した工程と異なる。
【0102】
次いで、第1の絶縁膜L1を覆うように第2導電膜を形成し、パターニングすることにより、
図7Bに示すように、ソース電極71、ドレイン電極72、ゲート電極73および上部接続部73gを含む第2メタル層M2を形成する。上部接続部73gは、ゲート電極73と繋がって(一体的に形成されて)いてもよい。
【0103】
この後、
図7Cに示すように、第2メタル層M2を覆うように層間絶縁層10を形成し、パターニングを行う。このとき、接続部形成領域Rgにおいて、層間絶縁層10に、上部接続部73gの一部を露出する開口部CHg1を形成するとともに、層間絶縁層10、第1の絶縁膜L1および下部絶縁層3を同時に(一括して)エッチングすることにより、下部接続部22gの一部を露出する開口部CHg2を形成する。
【0104】
次いで、第3導電膜を形成し、パターニングすることにより、
図7Dに示すように、上部ソース電極81、上部ドレイン電極82、ソース電極83、ドレイン電極84および接続電極85を含む第3メタル層M3を形成する。接続電極85は、開口部CHg1内で上部接続部73gに接続され、かつ、開口部CHg2内で下部接続部22gに接続される。これにより、ゲート接続部GCが得られる。ゲート接続部GCでは、上部接続部73gは、接続電極85を介して、下部接続部22gに電気的に接続される。なお、接続電極85は、第2メタル層M2よりも上層にある導電膜から形成されればよく、第3メタル層M3内に形成されていなくてもよい。例えば画素電極を形成するための透明導電膜を用いて接続電極を形成してもよい。
【0105】
図8A~
図8Cは、それぞれ、アクティブマトリクス基板のさらに他の製造方法を説明する工程断面図である。
【0106】
まず、上記方法と同様の方法で第1メタル層M1を形成した後、
図8Aに示すように、下部絶縁層3を形成する。この例では、下部絶縁層3のパターニングを行い、接続部形成領域Rgにおいて、下部接続部22gの一部を露出する開口部31gを設ける。
【0107】
次いで、
図8Bに示すように、第1の絶縁膜L1を形成する。この後、第1の絶縁膜L1上に不図示のレジスト層を形成し、これをマスクとして第1の絶縁膜L1のパターニングを行い、チャネル保護層61、ゲート絶縁層62を含む絶縁層を得る。また、接続部形成領域Rgにおいては、第1の絶縁膜L1および下部絶縁層3に、下部接続部22gの一部を露出するコンタクトホールCHgを形成する。コンタクトホールCHgは、開口部31gよりも大きいサイズを有してもよい。この例では、レジスト層(不図示)は、接続部形成領域Rgにおいて、基板1の法線方向から見たとき、開口部31gに少なくとも部分的に重なる開口領域を有してもよい。基板1の法線方向から見たとき、レジスト層の開口領域の内部に開口部31gが位置することが好ましい。
【0108】
本変形例によると、コンタクトホールCHgを2段階のエッチングによって形成するので、
図6Dを参照しながら前述した方法よりも、第1の絶縁膜L1のエッチング時間を短くできる。従って、酸化物半導体層41、42へのダメージを抑えつつ、第1の絶縁膜L1および下部絶縁層3を貫通するコンタクトホールCHgが得られる。
【0109】
続いて、
図6Eを参照しながら前述した方法と同様に、第1の絶縁膜L1を覆う第2導電膜を形成し、パターニングすることにより、
図8Cに示すように、ソース電極71、ドレイン電極72、ゲート電極73および上部接続部73gを含む第2メタル層M2を形成する。上部接続部73gは、コンタクトホールCHg内で下部接続部22gに接続される。
【0110】
この後の工程は、
図6F~
図6Gを参照しながら前述した方法と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
(アクティブマトリクス基板の構造1)
図面を参照しながら、液晶表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板の構造を説明する。
【0112】
図9は、本実施形態のアクティブマトリクス基板1001の平面構造の一例を示す概略図である。
【0113】
アクティブマトリクス基板1001は、表示領域DRと、表示領域DR以外の領域(非表示領域または額縁領域)FRとを有している。表示領域DRは、マトリクス状に配列された画素領域PIXによって構成されている。画素領域PIX(単に「画素」と呼ぶこともある)は、表示装置の画素に対応する領域である。非表示領域FRは、表示領域DRの周辺に位置し、表示に寄与しない領域である。
【0114】
非表示領域FRには、例えばゲートドライバ、デマルチプレクサ回路などが一体的(モノリシック)に設けられている。ソースドライバは、例えば、アクティブマトリクス基板1001に実装されている。
【0115】
表示領域DRには、行方向(x方向)に延びる複数のゲートバスラインGLと、列方向(y方向)に延びる複数のソースバスラインSLとが形成されている。各画素領域PIXは、例えばゲートバスラインGLおよびソースバスラインSLで規定されている。ゲートバスラインGLは、それぞれ、ゲートドライバの各端子に接続されている。ソースバスラインSLは、それぞれ、ソースドライバの各端子に接続されている。
【0116】
各画素領域PIXは、画素TFT101と、画素電極PEとを有している。画素TFT101のゲート電極は、対応するゲートバスラインGLに電気的に接続され、ソース電極は、対応するソースバスラインSLに電気的に接続されている。ドレイン電極は画素電極PEに電気的に接続されている。アクティブマトリクス基板1001を、FFS(Fringe Field Switching)モードなどの横電界モードの表示装置に適用する場合には、図示しないが、アクティブマトリクス基板1001に、複数の画素に対して共通の電極(共通電極)が設けられる。
【0117】
アクティブマトリクス基板1001の非表示領域には、駆動回路やデマルチプレクサ回路などの周辺回路を構成する複数の周辺回路TFTが形成されている。周辺回路TFTは、ゲートドライバを構成する駆動回路用TFT、デマルチプレクサ回路を構成するDMX回路用TFTなどを含む。
【0118】
アクティブマトリクス基板1001は、上述した第1TFTおよび第2TFTを含む。オフリークが小さいことが求められる画素TFT101として、ボトムゲート構造を有する第1TFTを用い、一部の周辺回路TFT(例えばDMX回路用TFT、ゲートドライバにおける出力トランジスタなど)に、トップゲート構造を有する第2TFTを用いてもよい。
【0119】
図10Aは、画素TFT101の一例を示す断面図である。
【0120】
画素領域PIXは、第3メタル層M3上に上部絶縁層13を介して配置された画素電極PEを含む。上部絶縁層13は、例えば、無機絶縁層と、その上に配置された有機絶縁層とを含んでもよい。画素電極PEは、例えば、インジウム-亜鉛酸化物、インジウム-錫酸化物(ITO)、ZnO等の金属酸化物などの透明導電膜から形成されている。また、ソースバスラインSLは、例えば第3メタル層M3内に形成されている。
【0121】
画素領域PIXには、画素TFT101が配置されている。画素TFT101は、前述した第1TFTである。画素TFT101のソース電極71は、ソースバスラインSLに電気的に接続されている。ソース電極71は、第3メタル層M3内のソースバスラインSLと繋がっていてもよい。ドレイン電極72は、例えば、第3メタル層M3内の上部ドレイン電極82に接続されている。上部ドレイン電極82は、上部絶縁層13に形成されたコンタクトホールCHp内で画素電極PEに電気的に接続されている。なお、画素電極PEは、直接ドレイン電極72に接続されてもよい。あるいは、ソース電極およびドレイン電極は、第3メタル層M3内に形成されていてもよい(
図4参照)。
【0122】
なお、
図10Bに例示するように、画素TFT101の酸化物半導体層41は、チャネル保護層61、層間絶縁層10および上部絶縁層13に形成されたコンタクトホールCHp内で、画素電極PEに直接接していてもよい。
【0123】
(アクティブマトリクス基板の構造2)
図面を参照しながら、有機EL表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板の構造を説明する。
【0124】
図11は、本実施形態のアクティブマトリクス基板1002の平面構造の一例を示す概略図である。
【0125】
アクティブマトリクス基板1002は、各画素領域PIXに、複数の画素TFTを含む点で、アクティブマトリクス基板1001と異なる。以下、アクティブマトリクス基板1001と異なる点を主に説明し、同様の構造については、説明を省略する。
【0126】
アクティブマトリクス基板1002は、マトリクス状に配列された複数の画素領域PIXを有する。複数の画素領域PIXは、典型的には、赤を表示する赤画素、緑を表示する緑画素および青を表示する青画素に対応する画素領域を含む。
【0127】
複数の画素領域PIXのそれぞれは、基板1と、基板1に設けられた画素回路とを備える。
図12に、画素回路の例を示す。
【0128】
図12に示す画素回路300は、駆動用画素TFT102と、選択用画素TFT202と、容量素子(保持容量)302とを含む。駆動用画素TFT102は第1TFTであり、選択用画素TFT202は第2TFTである。
【0129】
選択用画素TFT202のゲート電極は、ゲートバスラインGLに接続されている。選択用画素TFT202のソース電極は、ソースバスラインSLに接続されている。選択用画素TFT202のドレイン電極は、駆動用画素TFT102のゲート電極と容量素子302とに接続されている。駆動用画素TFT102のソース電極は、電流供給線CLに接続されている。駆動用画素TFT102のドレイン電極は、アクティブマトリクス基板1002上に形成されたOLED(有機発光ダイオード)310に接続されている。
【0130】
ゲートバスラインGLから選択用画素TFT202のゲート電極にオン信号が供給されると、選択用画素TFT202がオン状態となるので、ソースバスラインSLからの信号電圧(OLED80の所望の発光輝度に対応している)が選択用画素TFT202を介して容量素子302および駆動用画素TFT102のゲート電極に印加される。信号電圧によって駆動用画素TFT102がオン状態になると、電流供給線CLからの電流が駆動用画素TFT102を介してOLED310に流れ、OLED310が発光する。
【0131】
本実施形態によると、画素回路300内に、要求される特性が異なる複数の酸化物半導体TFT(ここでは駆動用画素TFT102と選択用画素TFT202)を作り分けることができる。具体的には、駆動用画素TFT102として、電流をより確実に制御するために、Vg-Id特性のよりなだらかな(S値がより大きい)第1TFTを用い、選択用画素TFT202として、電流駆動力の大きい第2TFTを用いる。選択用画素TFT202は、ダブルゲート構造を有することが好ましい(
図5Aおよび
図5B等参照)。
【0132】
図13は、アクティブマトリクス基板1002における駆動用画素TFT102および選択用画素TFT202を示す断面図である。
【0133】
駆動用画素TFT102および選択用画素TFT202は、それぞれ、第1TFTおよび第2TFTと同様の構造を有する。
【0134】
駆動用画素TFT102および選択用画素TFT202上には、平坦化層320が設けられている。平坦化層320の上には、画素電極PEが設けられている。駆動用画素TFT102のドレイン電極72は、画素電極PEに電気的に接続されている。なお、カラーフィルター方式の有機EL表示装置に適用する場合には、平坦化層320の上にカラーフィルター層(不図示)がさらに設けられる。隣接する画素領域間には、平坦化層320および画素電極PEの上に、絶縁性材料から形成されたバンク(不図示)が設けられている。また、図示しないが、画素電極PE上には、有機EL層が配置され、有機EL層上には上層電極が設けられる。例えば、画素電極PEは陽極、上層電極は陰極として機能する。
【0135】
なお、画素回路の構成は、
図12に例示した構成に限定されない。各画素回路は3以上のTFTを有していてもよい。その場合でも、少なくとも駆動用画素TFT102として第1TFTを用い、他のTFTについては、用途に応じて、第1TFTまたは第2TFTを用いてもよい。
【0136】
有機EL表示装置における画素回路の駆動用画素TFTおよび選択用画素TFTと、駆動回路用TFTとの好適な特性を表1に例示する。表1に記載の特性および数値範囲は例示であり、各TFTの特性を限定するものではない。
【0137】
【0138】
<酸化物半導体>
本実施形態における各TFTの酸化物半導体層に含まれる酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体であってもよいし、結晶質部分を有する結晶質酸化物半導体であってもよい。結晶質酸化物半導体としては、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質酸化物半導体などが挙げられる。
【0139】
酸化物半導体層は、2層以上の積層構造を有していてもよい。酸化物半導体層が積層構造を有する場合には、酸化物半導体層は、非晶質酸化物半導体層と結晶質酸化物半導体層とを含んでいてもよい。あるいは、結晶構造の異なる複数の結晶質酸化物半導体層を含んでいてもよい。また、複数の非晶質酸化物半導体層を含んでいてもよい。酸化物半導体層が上層と下層とを含む2層構造を有する場合、2層のうちゲート電極側に位置する層(ボトムゲート構造なら下層、トップゲート構造なら上層)に含まれる酸化物半導体のエネルギーギャップは、ゲート電極と反対側に位置する層(ボトムゲート構造なら上層、トップゲート構造なら下層)に含まれる酸化物半導体のエネルギーギャップよりも小さくてもよい。ただし、これらの層のエネルギーギャップの差が比較的小さい場合には、ゲート電極側に位置する層の酸化物半導体のエネルギーギャップが、ゲート電極と反対側に位置する層の酸化物半導体のエネルギーギャップよりも大きくてもよい。
【0140】
非晶質酸化物半導体および上記の各結晶質酸化物半導体の材料、構造、成膜方法、積層構造を有する酸化物半導体層の構成などは、例えば特開2014-007399号公報に記載されている。参考のために、特開2014-007399号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。
【0141】
酸化物半導体層は、例えば、In、GaおよびZnのうち少なくとも1種の金属元素を含んでもよい。本実施形態では、酸化物半導体層は、例えば、In-Ga-Zn-O系の半導体(例えば酸化インジウムガリウム亜鉛)を含む。ここで、In-Ga-Zn-O系の半導体は、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)の三元系酸化物であって、In、GaおよびZnの割合(組成比)は特に限定されず、例えばIn:Ga:Zn=2:2:1、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:2等を含む。このような酸化物半導体層は、In-Ga-Zn-O系の半導体を含む酸化物半導体膜から形成され得る。
【0142】
In-Ga-Zn-O系の半導体は、非晶質でもよいし、結晶質でもよい。結晶質In-Ga-Zn-O系の半導体としては、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質In-Ga-Zn-O系の半導体が好ましい。
【0143】
なお、結晶質In-Ga-Zn-O系の半導体の結晶構造は、例えば、上述した特開2014-007399号公報、特開2012-134475号公報、特開2014-209727号公報などに開示されている。参考のために、特開2012-134475号公報および特開2014-209727号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。In-Ga-Zn-O系半導体層を有するTFTは、高い移動度(a-SiTFTに比べ20倍超)および低いリーク電流(a-SiTFTに比べ100分の1未満)を有しているので、駆動TFT(例えば、複数の画素を含む表示領域の周辺に、表示領域と同じ基板上に設けられる駆動回路に含まれるTFT)および画素TFT(画素に設けられるTFT)として好適に用いられる。
【0144】
酸化物半導体層は、In-Ga-Zn-O系半導体の代わりに、他の酸化物半導体を含んでいてもよい。例えばIn-Sn-Zn-O系半導体(例えばIn2O3-SnO2-ZnO;InSnZnO)を含んでもよい。In-Sn-Zn-O系半導体は、In(インジウム)、Sn(スズ)およびZn(亜鉛)の三元系酸化物である。あるいは、酸化物半導体層は、In-Al-Zn-O系半導体、In-Al-Sn-Zn-O系半導体、Zn-O系半導体、In-Zn-O系半導体、Zn-Ti-O系半導体、Cd-Ge-O系半導体、Cd-Pb-O系半導体、CdO(酸化カドミウム)、Mg-Zn-O系半導体、In-Ga-Sn-O系半導体、In-Ga-O系半導体、Zr-In-Zn-O系半導体、Hf-In-Zn-O系半導体、Al-Ga-Zn-O系半導体、Ga-Zn-O系半導体、In-Ga-Zn-Sn-O系半導体、In-W-Zn-O系半導体などを含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本開示の実施形態のアクティブマトリクス基板は、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置および無機エレクトロルミネセンス表示装置等の表示装置、イメージセンサー装置等の撮像装置、画像入力装置、指紋読み取り装置、半導体メモリ等の種々の電子装置に適用される。
【符号の説明】
【0146】
1 :基板
3 :下部絶縁層
10 :層間絶縁層
13 :上部絶縁層
21 :ゲート電極
22 :下部導電層
22g :下部接続部
31g :開口部
41 :酸化物半導体層
41c :チャネル領域
41d :ドレインコンタクト領域
41s :ソースコンタクト領域
42 :酸化物半導体層
42c :チャネル領域
42d :ドレインコンタクト領域
42s :ソースコンタクト領域
51~54 :開口部
61 :チャネル保護層
62 :ゲート絶縁層
71、81a、83 :ソース電極
72、82a、84 :ドレイン電極
73 :ゲート電極
73g :上部接続部
81 :上部ソース電極
82 :上部ドレイン電極
85 :接続電極
91、91a、92、92a、93、94、CHg1、CHg2 :開口部
300 :画素回路
302 :容量素子
320 :平坦化層
1000、1000a、1001、1002 :アクティブマトリクス基板
CHg、CHp :コンタクトホール
CL :電流供給線
DR :表示領域
FR :非表示領域
GC :ゲート接続部
GL :ゲートバスライン
L1 :第1の絶縁膜
M1 :第1メタル層
M2 :第2メタル層
M3 :第3メタル層
OS :積層酸化物半導体膜
PE :画素電極
PIX :画素領域
R1、R2 :TFT形成領域
Rg :接続部形成領域
S1 :低移動度酸化物半導体膜
S2 :高移動度酸化物半導体膜
SL :ソースバスライン
a1、b1 :第1領域
a2、b2 :第2領域(低抵抗領域)