(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】表示制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20240215BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20240215BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240215BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240215BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240215BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240215BHJP
【FI】
B60W20/00
B60K35/00
B60L3/00 S
B60L50/16 ZHV
B60L50/60
B60L58/10
(21)【出願番号】P 2021164968
(22)【出願日】2021-10-06
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 泰洋
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-107601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/00
B60K 35/00
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/10
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の状態を検出する状態検出部と、
発電モータの発電量を検出する発電量検出部と、
前記駆動源の状態および前記発電量に基づいて、駆動源から駆動用電池へのエネルギーフローの表示・非表示の制御をする制御部と、を備え、
前記制御部は、前記駆動源の状態を示す値が、予め定められている第1閾値以上である第1条件を満たさない場合、または前記発電量が、予め定められている第2閾値以上である第2条件を満たさない場合、前記駆動源から駆動用電池へのエネルギーフローを非表示にし、エネルギーフローが表示しているか否かに基づいて異なる前記発電量の閾値を設定する、表示制御装置。
【請求項2】
前記駆動源の状態として、前記駆動源のトルクを検出する、請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1条件および前記第2条件を満たす場合、前記発電量に基づいて、前記駆動源から駆動用電池へのエネルギーフローの表示態様を変える、請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記駆動源が燃料停止後、前記駆動源の回転数が落ちる間、前記発電量を検出する場合であっても、エネルギーフローを非表示にする、請求項1に記載の表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるモータと、このモータと電力をやり取りするバッテリとを有する車両において、エネルギーフローを表示する技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エネルギーフローを表示する場合、車両の運転手に誤解を与えないように適切な情報を出力することが望まれる。そこで、適切なエネルギーフローの情報を表示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、表示制御装置では、駆動源の状態を検出する状態検出部と、発電モータの発電量を検出する発電量検出部と、駆動源の状態および発電量に基づいて、駆動源から駆動用電池へのエネルギーフローの表示・非表示の制御をする制御部と、を備え、前記制御部は、前記駆動源の状態を示す値が、予め定められている第1閾値以上である第1条件を満たさない場合、または前記発電量が、予め定められている第2閾値以上である第2条件を満たさない場合、前記駆動源から駆動用電池へのエネルギーフローを非表示にし、エネルギーフローが表示しているか否かに基づいて異なる前記発電量の閾値を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電動車両の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、エネルギーモニタの表示制御処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、エンジンの状態と、発電モータの発電量とに基づくエネルギーフローの点灯状態を示す図である。
【
図4】
図4は、エネルギーモニタの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0008】
< 電動車両>
図1は、本発明の一実施形態に係る電動車両1の構成を示すブロック図である。
【0009】
電動車両1は、シリーズ方式のハイブリッドシステム2を搭載している。ハイブリッドシステム2には、エンジン(ENG)11、発電モータ(MG1)12、駆動モータ(MG2)13、駆動用バッテリ14およびPCU(PowerControlUnit:パワーコントロールユニット)15が含まれる。
【0010】
エンジン11は、たとえば、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンである。エンジン11のクランクシャフト21には、エンジン出力ギヤ22がクランクシャフト21と一体に回転するように設けられている。
【0011】
発電モータ12は、たとえば、永久磁石同期モータからなる。発電モータ12の回転軸23には、発電モータギヤ24が一体に回転するように設けられている。発電モータギヤ24は、エンジン出力ギヤ22と噛合している。発電モータ12は、エンジン11の停止時に、エンジン11をクランキングさせるスタータモータとして使用される。エンジン11の始動後、発電モータ12は、エンジン11の動力を電力に変換する発電機として機能する。
【0012】
駆動モータ13は、たとえば、発電モータ12よりも大型の永久磁石同期モータからなる。駆動モータ13の回転軸25には、モータ出力ギヤ26が回転軸25と一体回転するように設けられている。
【0013】
モータ出力ギヤ26は、電動車両1に搭載されている動力伝達機構3に結合されている。動力伝達機構3には、カウンタ軸31、カウンタギヤ32、出力ギヤ33およびデファレンシャルギヤ34が含まれる。カウンタ軸31は、駆動モータ13の回転軸25と平行に設けられている。カウンタギヤ32および出力ギヤ33は、カウンタ軸31に一体に回転するように設けられている。出力ギヤ33は、デファレンシャルギヤ34のリングギヤ35と噛合している。モータ出力ギヤ26は、カウンタギヤ32と噛合している。
【0014】
駆動モータ13の動力は、モータ出力ギヤ26、カウンタギヤ32および出力ギヤ33を介して、デファレンシャルギヤ34に伝達される。そして、デファレンシャルギヤ34に伝達された動力は、電動車両1の左右のドライブシャフト4を介して、左右の駆動輪5に伝達される。これにより、左右の駆動輪5が回転し、電動車両1が前進または後進走行する。
【0015】
駆動用バッテリ14は、複数の二次電池(たとえば、リチウムイオン電池)を組み合わせた組電池である。駆動用バッテリ14は、たとえば、約200~350V(ボルト)の直流電力を出力する。
【0016】
PCU15は、発電モータ12および駆動モータ13の駆動を制御するためのユニットであり、第1インバータ(MG1INV)41、第2インバータ(MG2INV)42および昇圧コンバータ(BstCONV)43を備えている。
【0017】
電動車両1の加速走行時には、駆動モータ13が力行運転されて、駆動モータ13が力行のための動力を発生する。このとき、駆動用バッテリ14から出力される直流電力が昇圧コンバータ43により必要に応じて昇圧されて、昇圧コンバータ43から出力される直流電力が第2インバータ42で交流電力に変換され、その交流電力が駆動モータ13に供給される。これにより、駆動用バッテリ14の電力が消費される。
【0018】
また、エンジン11の始動時には、駆動用バッテリ14から出力される直流電力が昇圧コンバータ43により昇圧されて、昇圧された直流電力が第1インバータ41で交流電力に変換され、交流電力が発電モータ12に供給される。これにより、発電モータ12がモータリング運転されて、エンジン11が発電モータ12によりモータリングされる。このモータリングによりエンジン11のクランクシャフトが回転し、その回転数が始動に必要な回転数まで上昇すると、エンジン11の点火プラグがスパークされて、エンジン11が始動される。
【0019】
エンジン11が動作している状態で、発電モータ12が発電運転されることにより、発電モータ12が交流電力を発生する。発電モータ12が発電する交流電力は、第1インバータ41により、直流電力に変換される。そして、第1インバータ41から出力される直流電力が第2インバータ42で交流電力に変換され、交流電力が駆動モータ13に供給される。また、駆動モータ13への電力の供給が不要なときには、第1インバータ41から出力される直流電力が昇圧コンバータ43で降圧されて、降圧後の直流電力が駆動用バッテリ14に供給されることにより、駆動用バッテリ14が充電される。
【0020】
電動車両1の減速走行時には、駆動モータ13が回生運転されて、駆動輪5から駆動モータ13に伝達される動力が交流電力に変換される。このとき、駆動モータ13が走行駆動系の抵抗となり、その抵抗が電動車両1を制動する制動力(回生制動力)として作用する。駆動モータ13が発生する交流電力は、第2インバータ42により、直流電力に変換される。そして、第2インバータ42から出力される直流電力が昇圧コンバータ43で降圧されて、降圧後の直流電力が駆動用バッテリ14に供給されることにより、駆動用バッテリ14が充電される。
【0021】
また、電動車両1には、マイコン(マイクロコントローラユニット)51を含む構成のECU(Electronic Control Unit: 電子制御ユニット)6が備えられている。マイコン51には、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
図1には、1つのECU6のみが示されているが、電動車両1には、各部を制御するため、ECU6と同様の構成を有する複数のECUが搭載されている。ECU6を含む複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
【0022】
ECU6は、図示しないアクセルセンサ等の検出結果に基づいて、運転者のアクセルペダルの操作量を特定する。ECU6は、当該アクセルペダルの操作量に基づき、エンジン要求トルクを設定し、当該エンジン要求トルクの制御信号をPCU15へ出力する。
【0023】
また、ECU6は、発電モータ12の発電量を取得する。例えば、ECU6は、発電モータ12の発電量を検出するセンサの検出結果により発電モータ12の発電量を取得する。
【0024】
ECU6は、エンジン要求トルクと、発電モータ12の発電量とに基づいてエネルギーモニタを後述する表示装置52へ表示させる。エネルギーモニタは、エネルギーの動きを示す情報である。エネルギーモニタは、例えば、エンジンから駆動用電池へのエネルギーの動きを示すエネルギーフローを含む。ECU6は、エンジン要求トルクと、発電モータ12の発電量とに基づいてエネルギーフローの表示・非表示を制御する。
【0025】
電動車両1の車室内には、表示装置52が配設されている。表示装置52は、たとえば、タッチパネルでもよい。表示装置52は、液晶ディスプレイ上に感圧式または静電容量式の透明フィルムスイッチを貼付した構成であってもよく、電動車両1の車両設定の情報のほか、ナビゲーション情報や音楽情報など種々の情報を表示するマルチインフォメーションディスプレイとして設けられていてもよい。
【0026】
続いて、ECU6によるエネルギーモニタの表示制御処理について、
図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0027】
ECU6は、アクセルペダルの操作量に基づいてエンジン要求トルクを設定する(ステップS1)。続いて、ECU6は、発電モータ12の発電量を取得する(ステップS2)。ECU6が、エンジン要求トルクが所定値(閾値)以上でない場合(ステップS3:No)、ECU6は、エンジンから駆動用電池へのエネルギーの動きを示すエネルギーフローを消灯した状態で、エネルギーモニタを表示装置52に表示させる(ステップS4)。
【0028】
ステップS3において、ECU6は、エンジン要求トルクが所定値以上である場合(ステップS3:Yes)、発電モータ12の発電量が閾値A以上でない場合(ステップS5:No)、ECU6は、エンジンから駆動用電池へのエネルギーの動きを示すエネルギーフローを消灯した状態で、エネルギーモニタを表示させる(ステップS4)。なお、エネルギーフローが表示しているか否かに基づいて異なる閾値Aを設定してもよい。例えば、エネルギーフローが消灯状態の時に、閾値Aを2kWとして、エネルギーフローが点灯状態の時に、閾値Aを1kWとするようにしてもよい。すなわち、閾値Aにヒステリシスを設けるようにしてもよい。また、後述の閾値Bおよび閾値Cにヒステリシスを設けるようにしてもよい。これにより、ECU6は、エネルギーフローの表示・非表示を頻発に切り替えることを防止することができる。
【0029】
ステップS5において、発電モータ12の発電量が閾値A以上である場合(ステップS5:Yes)、ステップS6へ進む。ステップS6において、発電モータ12の発電量が閾値B以上でない場合(ステップS6:No)、ECU6は、エンジンから駆動用電池へのエネルギーの動きを示すエネルギーフローの大きさを3段階中最も小さい状態で、エネルギーモニタに表示させる(ステップS7)。
【0030】
ステップS6において、発電モータ12の発電量が閾値B以上である場合(ステップS6:Yes)、ステップS8へ進む。ステップS8において、発電モータ12の発電量が閾値C以上でない場合(ステップS8:No)、ECU6は、エンジンから駆動用電池へのエネルギーの動きを示すエネルギーフローの大きさを3段階中真ん中の大きさで、エネルギーモニタに表示させる(ステップS9)。また、ステップS8において、発電モータ12の発電量が閾値C以上である場合(ステップS8:Yes)、ECU6は、エンジンから駆動用電池へのエネルギーの動きを示すエネルギーフローの大きさを3段階中最も大きい大きさで、エネルギーモニタに表示させる(ステップS10)。
【0031】
続いて、エンジンの状態と、発電モータ12の発電量とに基づくエネルギーフローの点灯状態を
図3に示す。
図3に示すエンジンが燃料カットの状態は、エンジン要求トルクが所定値未満であることを示す。また、エンジンが燃料噴射の状態は、エンジン要求トルクが所定値以上であることを示す。また、発電モータ12が発電状態であるとは、発電モータ12の発電量が閾値A以上であることを示す。
図3に示すように、エンジンが燃料噴射であり、且つMG1が発電状態である場合に、ECU6は、エネルギーフローを表示させる。
【0032】
続いて、エネルギーモニタの例を
図4に示す。
図4に示すように、エネルギーモニタは、エンジンアイコン71と、駆動用電池アイコン72と、タイヤアイコン73を含む。ECU6は、エンジン要求トルクが所定値以上であり、発電モータ12の発電量が閾値A以上である場合、エネルギーフロー74を表示させる。
【0033】
以上説明したように、ECU6は、エンジン11のトルクが、所定値以上である条件を満たさない場合、エンジン11のトルクが、所定値以上である条件を満たし、且つエンジン11から駆動用バッテリへのエネルギーフローを非表示にし、発電モータ12の発電量が、閾値に基づく条件を満たす場合、エンジン11から駆動用バッテリ14へのエネルギーフロー74を表示する。このように、ECU6は、エンジン要求トルクと、発電モータ12の発電量とに基づいてエネルギーモニタを後述する表示装置52へ表示させるので、エンジン11の状態を考慮してエネルギーフローを表示させることができる。
【0034】
例えば、電動車両1は、エンジン11が燃料停止後、エンジン回転数が落ちる間にエンジン11の共振領域を素早く通過させるために発電モータ12で発電させる。この場合、エンジン11が停止しているにも関わらず発電モータ12が発電することになるが、エンジン11の状態に基づいてエネルギーフローの表示制御をするので、エンジン11が停止しているにも拘わらずエネルギーフローを表示してしまうことを回避することができる。これにより、電動車両1は、車両の運転手に誤解を与えないように適切な情報を出力することができる。
【0035】
また、ECU6は、発電量が閾値Aに基づく条件を満たす場合、発電量が、閾値Aとは異なる閾値Bに基づく条件を満たすか否かにより、エンジン11から駆動用バッテリ14へのエネルギーフローの表示態様を変える。これにより、ECU6は、発電量の大きさを示すことができる。
【0036】
なお、上述の実施形態では、ECU6が、エンジン要求トルクに基づいてエネルギーフローの表示・非表示を制御する場合について述べたが、エンジン11の回転数等の他のエンジン11の状態を示す情報に基づいてエネルギー表示・非表示を制御するようにしてもよい。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1 電動車両、2 ハイブリッドシステム、6 ECU、12 発電モータ、13 駆動モータ、14 駆動用バッテリ、15 PCU。