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  • 特許-継手装置および被接続部材の接続方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】継手装置および被接続部材の接続方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/18 20060101AFI20240215BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20240215BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
E21D11/18
E21D11/04 A
E04B1/58 502
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021172897
(22)【出願日】2021-10-22
(65)【公開番号】P2023062793
(43)【公開日】2023-05-09
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】山下 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 将太
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-096099(JP,A)
【文献】特開2005-042375(JP,A)
【文献】国際公開第2019/074050(WO,A1)
【文献】特開平10-072866(JP,A)
【文献】特開平02-217507(JP,A)
【文献】特開2020-037994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/18
E21D 11/04
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部の背後に形成された接続部と、を備える被接続部材を前記接続部の位置で接続する継手装置であって、
一の前記被接続部材の前記接続部と他の前記被接続部材の前記接続部とに亘りこれら接続部の両側に配置される連結体と、
一端部に頭部を有し、他端部に螺合部を有して、一の前記被接続部材と他の前記被接続部材とのそれぞれに対し、一の前記連結体から前記接続部を介し他の前記連結体に亘り挿入されるボルトと、
前記ボルトの前記螺合部に螺着されるナットと、
前記ボルトの前記頭部と前記ナットとを前記本体部の一側と他側とから突出する位置に規制するスペーサと、
を備えることを特徴とする継手装置。
【請求項2】
連結体は、スプライスプレートである
ことを特徴とする請求項1記載の継手装置。
【請求項3】
被接続部材は、トンネル用の支保工を構成する部材である
ことを特徴とする請求項1または2記載の継手装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一記載の継手装置を用いて、本体部と、前記本体部の背後に形成された接続部と、を備える被接続部材を前記接続部の位置で接続する被接続部材の接続方法であって、
一のスペーサに挿入したボルトを、一の前記被接続部材の前記接続部と他の前記被接続部材の前記接続部との一側に亘り重ねた一の連結体と、前記接続部と、一の前記被接続部材の前記接続部と他の前記被接続部材の前記接続部との他側に亘り重ねた他の前記連結体と、に亘り挿入し、
前記ボルトの他端部側に他のスペーサを挿入し、
前記ボルトの螺合部にナットを螺着させることで、前記ボルトの頭部と前記ナットとの間に一の前記スペーサ、一の前記連結体、前記接続部、他の前記連結体、および、他の前記スペーサを介在させて一の前記被接続部材と他の前記被接続部材とを接続する
ことを特徴とする被接続部材の接続方法。
【請求項5】
螺合部にナットを螺着させる際、前記ナットを仮締めし、連結体の位置を調整した後、前記ナットを本締めする
ことを特徴とする請求項4記載の被接続部材の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一および他の被接続部材を本体部の背後の接続部の位置で接続する継手装置および被接続部材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル工事の際に用いられるアーチ状の鋼製の支保工は、複数に分割されてトンネル内に持ち込まれ、一般に、ボルト、ナットなどを用いて連結される(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-129985号公報
【文献】登録実用新案第3211895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような支保工は、H形鋼、あるいはT形鋼などの鋼材が用いられ、トンネル(地山)と接する場所に設置されて端部が突き当てられ、トンネルの内空側からフランジ部の背後にて地山との間に位置するウェブ部の位置で連結される。そのため、作業者はフランジ部が邪魔となってボルトの接続位置を直接目視することが困難であるとともに、フランジ部の背後の地山との間の作業スペースが狭く、ボルトにナットを締め付けることが容易でないなど、作業性が良好でない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被接続部材の接続の作業性が良好な継手装置および被接続部材の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の継手装置は、本体部と、前記本体部の背後に形成された接続部と、を備える被接続部材を前記接続部の位置で接続する継手装置であって、一の前記被接続部材の前記接続部と他の前記被接続部材の前記接続部とに亘りこれら接続部の両側に配置される連結体と、一端部に頭部を有し、他端部に螺合部を有して、一の前記被接続部材と他の前記被接続部材とのそれぞれに対し、一の前記連結体から前記接続部を介し他の前記連結体に亘り挿入されるボルトと、前記ボルトの前記螺合部に螺着されるナットと、前記ボルトの前記頭部と前記ナットとを前記本体部の一側と他側とから突出する位置に規制するスペーサと、を備えるものである。
【0007】
請求項2記載の継手装置は、請求項1記載の継手装置において、連結体は、スプライスプレートであるものである。
【0008】
請求項3記載の継手装置は、請求項1または2記載の継手装置において、被接続部材は、トンネル用の支保工を構成する部材であるものである。
【0009】
請求項4記載の被接続部材の接続方法は、請求項1ないし3いずれか一記載の継手装置を用いて、本体部と、前記本体部の背後に形成された接続部と、を備える被接続部材を前記接続部の位置で接続する被接続部材の接続方法であって、一のスペーサに挿入したボルトを、一の前記被接続部材の前記接続部と他の前記被接続部材の前記接続部との一側に亘り重ねた一の前記連結体と、前記接続部と、一の前記被接続部材の前記接続部と他の前記被接続部材の前記接続部との他側に亘り重ねた他の前記連結体と、に亘り挿入し、前記ボルトの他端部側に他のスペーサを挿入し、前記ボルトの前記螺合部に前記ナットを螺着させることで、前記ボルトの前記頭部と前記ナットとの間に一の前記スペーサ、一の前記連結体、前記接続部、他の前記連結体、および、他の前記スペーサを介在させて一の前記被接続部材と他の前記被接続部材とを接続するものである。
【0010】
請求項5記載の被接続部材の接続方法は、請求項4記載の被接続部材の接続方法において、螺合部にナットを螺着させる際、前記ナットを仮締めし、連結体の位置を調整した後、前記ナットを本締めするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被接続部材の接続の作業性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態の継手装置を示す正面図である。
図2】同上継手装置を示す側面図である。
図3】同上継手装置により接続される被接続部材からなる支保工の一例を示す断面図である。
図4図3のI-I相当位置の断面図である。
図5】同上被接続部材の接続方法の一工程を示す平面図である。
図6】同上被接続部材の接続方法の図5に示される工程に続く工程を示す平面図である。
図7】同上被接続部材の接続方法の図6に示される工程に続く工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1および図2において、1は継手装置を示す。継手装置1は、複数の被接続部材2を互いに接続する。被接続部材2は、例えば鋼製のものが用いられる。本実施の形態において、図3および図4に示されるように、被接続部材2はトンネルTの覆工に用いられる支保工3を構成する部材である。被接続部材2は、アーチ状に形成され、互いに端部が突き当てられた状態で継手装置1により接続されることで、トンネルTの断面形状の周方向に沿うように配置される。
【0015】
本実施の形態において、被接続部材2は、一つの支保工3につき例えば六つ用いられる。図示される例では、被接続部材2は、トンネルTの上側のアーチ部分を構成する三つの被接続部材2a,2b,2cと、トンネルTの両側壁部分を構成する二つの被接続部材2d,2eと、トンネルTの下側のインバート部分を構成する一つの被接続部材2fと、が設定されている。継手装置1により、被接続部材2aの両端部と被接続部材2b,2cとが接続され、被接続部材2bの下端部と被接続部材2dの上端部とが接続され、被接続部材2cの下端部と被接続部材2eの上端部とが接続され、被接続部材2d,2eの下端部と被接続部材2fの両端部とが接続されて環状の一つの支保工3が構成される。本実施の形態では、継手装置1が六つ設定されている。このように、支保工3を複数の被接続部材2に分割することで、作業者が被接続部材2を容易に持ち運びできるようになっている。
【0016】
そして、複数の被接続部材2が接続されて構成された支保工3は、それぞれ架台4上に固定部材5により固定されてトンネルTの軸方向に複数配置され、これら軸方向に離れる支保工3間にて連結部材6によって軸方向に連結されるとともに、トンネルTの被設置部である地山7に固定部材8によって固定される。
【0017】
架台4は、例えばH形鋼が用いられる。架台4は、トンネルTの両側方向に沿って延びるように配置される。本実施の形態では、架台4の上部に対し、支保工3の下部の被接続部材2fが中央部の位置で固定部材5により固定される。
【0018】
固定部材5は、例えばホールインアンカーボルトなどである。固定部材5は、被接続部材2fの長手方向と交差または直交する方向にて被接続部材2f側から架台4側へとトンネルTの断面放射方向に沿って配置される。
【0019】
連結部材6は、例えばH形鋼が用いられる。本実施の形態では、被接続部材2fの両端部近傍の位置の下部に連結部材6がブラケットおよびボルト・ナットを用いて取り付けられる。連結部材6は、架台4に対し交差または直交する方向に延びている。
【0020】
固定部材8は、例えばホールインアンカーボルトなどである。固定部材8は、被接続部材2a~2eの長手方向と交差または直交する方向にて被接続部材2a~2e側から地山7側へとトンネルTの断面放射方向に沿って配置される。
【0021】
図1および図2に示されるように、被接続部材2は、一例として、形鋼が用いられる。本実施の形態では、被接続部材2は、T形鋼が用いられる。図示される例では、被接続部材2は、フランジ部である本体部10と、この本体部10に突設されたウェブ部である補強部11と、を一体的に有する。そして、図3に示されるように、被接続部材2は、トンネルTの内空側に本体部10を位置させ、地山7側に補強部11を対向させた状態で設置される。
【0022】
図1に示されるように、本体部10は、少なくとも幅Wを有する。本実施の形態において、本体部10は、幅Wが一定または略一定に設定されている。本体部10は、板状に形成され、被接続部材2の長手方向に帯状に連なって形成されている。
【0023】
補強部11は、本体部10よりも幅狭に形成されている。補強部11は、本体部10の背後からこの本体部10に対して交差または直交する方向に突出している。補強部11は、本体部10の幅方向に両面を有する板状となっている。図3に示されるように、補強部11は、本体部10と地山7との間に介在される。すなわち、補強部11は、本体部10と地山7との間のスペースSに配置される。このスペースSは、継手装置1により被接続部材2を接続するための作業スペースである。このスペースSは、本体部10の幅Wよりも前後方向に狭いスペースとなっている。
【0024】
補強部11には、固定部材5または固定部材8が挿入される取付部12が一体的に形成されている。取付部12は、板状に形成され、本体部10に対して平行または略平行に位置する。取付部12は、被接続部材2の両端部近傍、あるいは、両端方向の中央部に配置されている。取付部12は、本体部10の両側よりも側方に突出するように形成されている。そのため、取付部12に対し、作業者Mが本体部10側から固定部材5または固定部材8を容易に挿入できるようになっている。
【0025】
また、図1および図2に示されるように、補強部11には、少なくとも被接続部材2を継手装置1によって連結するための接続部13が形成されている。すなわち、接続部13は、本体部10の背後に位置する。接続部13は、少なくとも補強部11の長手方向の端部に位置する。接続部13の近傍に取付部12が位置している。接続部13は、補強部11に対し、補強部11を厚み方向に貫通する穴部14が形成されて構成されている。すなわち、接続部13は、本体部10の幅方向に所定の厚みt1を有する。穴部14は、所定の穴径を有する丸穴である。図示される例では、一つの接続部13につき、二つずつの穴部14が形成されている。これら穴部14は、被接続部材2の長手方向に所定の間隔で離れて配置されている。
【0026】
そして、継手装置1は、隣接する被接続部材2,2の接続部13,13に亘り配置される連結体15を備える。連結体15は、長手板状に形成されている。連結体15は、所定の厚みt2を有するスプライスプレートである。本実施の形態において、連結体15の厚みt2は、接続部13の厚みt1と等しくまたは略等しく設定されている。連結体15には、接続部13の穴部14に対応する挿入穴部16が形成されている。挿入穴部16は、穴部14と等しいまたは略等しい穴径を有する丸穴である。本実施の形態において、挿入穴部16は、一つの連結体15につき四つ設定されている。二つの挿入穴部16が、互いに隣接する被接続部材2のうちの一の被接続部材2の接続部13の穴部14に対応し、残りの二つの挿入穴部16が、互いに隣接する被接続部材2のうちの他の被接続部材2の接続部13の穴部14に対応する。挿入穴部16は、穴部14と等しいまたは略等しい間隔に配置されている。
【0027】
本実施の形態において、連結体15は、接続部13の一側に位置する一の連結体15aと、接続部13の他側に位置する他の連結体15bと、の一対が設定されている。
【0028】
一の連結体15aから被接続部材2の接続部13を介し他の連結体15bに亘り、ボルト17が挿入される。つまり、ボルト17は、一の連結体15aの挿入穴部16、接続部13の穴部14、および、他の連結体15bの挿入穴部16に亘り挿入される。本実施の形態のボルト17は、長ボルトであり、被接続部材2の本体部10の幅Wよりも長さL1が長く形成されている。ここで、本体部10の幅Wとは、ボルト17が位置する部分における本体部10の幅Wで定義する。すなわち、本体部10が幅方向に部分的な凹凸を有する形状なども想定されるが、その場合、幅Wとは継手装置1により被接続部材2,2が接続された状態でボルト17が位置する部分における幅として定義されるものとする。
【0029】
ボルト17は、一端部に頭部18を有し、他端部に螺合部19を有する。本実施の形態において、ボルト17は、例えば頭部18が六角形状の六角ボルトである。螺合部19は、ボルト17の頭部18から他端部に亘り配置されていてもよいし、他端部にのみ配置されていてもよい。
【0030】
ボルト17の螺合部19には、ナット20が螺着される。本実施の形態において、ナット20は、ボルト17の頭部18と同程度の大きさに形成された六角ナットである。
【0031】
また、ボルト17およびナット20と連結体15との間には、スペーサ21が介在される。本実施の形態において、スペーサ21は、筒状、例えば円筒状に形成され、ボルト17が挿入可能な筒状体である。図示される例では、スペーサ21は、径寸法に対して軸方向長さL2が大きい、長パイプ状に形成されている。
【0032】
スペーサ21の軸方向長さL2は、被接続部材2の本体部10の幅Wから接続部13の厚みt1と、連結体15の厚みt2の2倍と、を差し引いた値の半分以上に設定されている。すなわち、L2≧(W-t1-2・t2)/2である。また、スペーサ21の軸方向長さL2の2倍に対し、接続部13の厚みt1と、連結体15の厚みt2の2倍と、を加えた値よりもボルト17の長さL1が長く設定されている。すなわち、L1>(2・L2+t1+2・t2)である。そのため、スペーサ21は、ボルト17の頭部18とナット20との位置を、本体部10の一側と他側とに突出する位置に規制するように構成されている。
【0033】
また、スペーサ21の内径は、ボルト17の頭部18およびナット20の外形よりも小さく形成されている。そのため、スペーサ21は、ボルト17の頭部18とナット20との間で挟持されるようになっている。本実施の形態において、スペーサ21には、ボルト17の頭部18と一の連結体15aとの間に介在される一のスペーサ21aと、ナット20と他の連結体15bとの間に介在される他のスペーサ21bと、の一対が設定されている。したがって、一のスペーサ21aの端部は、ボルト17の頭部18の座部となっており、他のスペーサ21bの端部は、ナット20の座部となっている。
【0034】
次に、一実施の形態の継手装置1を用いた被接続部材2の接続方法を説明する。
【0035】
図3に示されるように、作業者Mは、隣接する被接続部材2に対し、本体部10側、すなわちトンネルTの内空側から継手装置1によって被接続部材2を接続する。
【0036】
まず、被接続部材2の端部同士を突き合せ、これら被接続部材2を幅方向、つまりトンネルTの軸方向に位置合わせする。このとき、作業者Mは、本体部10の背後、すなわち本体部10と地山7との間に位置する接続部13について、トンネルTの内空側から目視することが困難な状態である。
【0037】
次いで、作業者Mは、図5に示されるように、ボルト17を一のスペーサ21aに挿入するとともに一の連結体15aの挿入穴部16に挿入して通し、一の連結体15aを隣接する被接続部材2の接続部13,13に亘り重ねつつ、ボルト17をさらに接続部13の穴部14に挿入して他側へと通す。このとき、一のスペーサ21aの軸方向長さL2が本体部10の幅Wから接続部13の厚みt1と、連結体15の厚みt2の2倍と、を差し引いた値の半分以上に設定され、かつ、ボルト17の長さL1が被接続部材2の本体部10の幅Wよりも長く、かつ、スペーサ21の軸方向長さL2の2倍と接続部13の厚みt1と連結体15の厚みt2の2倍との和よりも大きく形成されていることから、一のスペーサ21aがボルト17の頭部18と一の連結体15aとの間に挟持された状態で、ボルト17の頭部18が本体部10の一側にスペースSから突出し、ボルト17の先端部の螺合部19が本体部10の他側にスペースSから突出した位置となり、それぞれトンネルTの内空側に位置する作業者Mから直接目視可能となる。
【0038】
この状態で、作業者Mは、図6に示されるように、突出したボルト17の先端部に、他の連結体15bの挿入穴部16および他のスペーサ21bを順次通す。
【0039】
そして、図7に示されるように、本体部10の他側から突出するボルト17の螺合部19に対し、ナット20を螺着させることで、ボルト17の頭部18とナット20との間に一のスペーサ21a、一の連結体15a、接続部13、他の連結体15b、および、他のスペーサ21bを介在させる。なお、ナット20は、作業者Mが手作業によって仮締めしておく。このとき、他のスペーサ21bの軸方向長さL2が本体部10の幅Wから接続部13の厚みt1と、連結体15の厚みt2の2倍と、を差し引いた値の半分以上に設定され、かつ、ボルト17の長さL1が被接続部材2の本体部10の幅Wよりも長く、かつ、スペーサ21の軸方向長さL2の2倍と接続部13の厚みt1と連結体15の厚みt2の2倍との和よりも大きく形成されていることから、他のスペーサ21bがナット20と他の連結体15bとの間に挟持された状態でナット20が本体部10の他側にスペースSから突出した位置となり、トンネルTの内空側に位置する作業者Mから直接目視可能となる。
【0040】
続いて、接続部13の他の穴部14に対しても、別のボルト17を別の一のスペーサ21aに挿入するとともに一の連結体15aの挿入穴部16に挿入して通し、本体部10の側部の本体部10と地山7との隙間から接続部13を目視しながら、一の連結体15aを隣接する被接続部材2の接続部13,13に亘り重ねつつ、ボルト17をさらに接続部13の穴部14および接続部13に重ねられている他の連結体15bの挿入穴部16に挿入して他側へと通し、さらにボルト17の先端部に別の他のスペーサ21bを通し、ナット20を螺合部19に螺着させる。この作業を、互いに隣接する一の被接続部材2と他の被接続部材2とに対してそれぞれ行う。
【0041】
そして、一および他の連結体15a,15bの位置を一の被接続部材2と他の被接続部材2とに対してトンネルTの周方向(図1および図2の上下方向)に調整した後、ナット20をそれぞれ本締めする。本締めの際には、例えばめがねレンチ、あるいはラチェットレンチなどの締付工具が好適に用いられる。ボルト17の頭部18とナット20とがそれぞれ本体部10の両側に突出していることで、ボルト17の頭部18を保持工具で保持した状態で、ナット20を締付工具により容易に本締めできる。この結果、一の被接続部材2と他の被接続部材2とが継手装置1により接続される。
【0042】
このように、一実施の形態によれば、本体部10の幅Wより長く形成されたボルト17を用いるとともに、ボルト17の頭部18とナット20とを一のスペーサ21aと他のスペーサ21bとによって本体部10の一側と他側とから突出する位置に規制することで、作業者Mが本体部10側から、本体部10の一側と他側に突出するボルト17の頭部18とナット20とを目視しながら、本体部10と地山7との間のスペースSの外側の空間を利用し、締付工具などを用いて締め付け作業を行うことができる。したがって、作業者Mの視界や作業空間を確保でき、作業性を向上できる。
【0043】
具体的には、一のスペーサ21aに挿入したボルト17を、一の被接続部材2の接続部13と他の被接続部材2の接続部13との一側に亘り重ねた一の連結体15aと、接続部13と、一の被接続部材2の接続部13と他の被接続部材2の接続部13との他側に亘り重ねた他の連結体15bと、に亘り挿入し、ボルト17の他端部側に他のスペーサ21bを挿入し、ボルト17の螺合部19にナット20を螺着させることで、ボルト17の頭部18とナット20との間に一のスペーサ21a、一の連結体15a、接続部13、他の記連結体15b、および、他のスペーサ21bを介在させて一の被接続部材2と他の被接続部材2とを接続するので、本体部10側に位置する作業者Mが、スペーサ21によってボルト17の頭部18とナット20とが本体部10の一側と他側とに突出した状態でボルト17の頭部18およびナット20をそれぞれ目視しながら作業することが可能となり、作業性が良好になる。
【0044】
連結体15をスプライスプレートとすることで、継手装置1により接続された支保工3の耐力を向上できるとともに、予め規格化されたものから、必要な耐力に応じて容易に選択できる。
【0045】
被接続部材2がトンネルT用の支保工3を構成する部材であることで、スペースが限られるトンネルT内であっても、良好な作業性で継手装置1により支保工3を組み立てることができる。
【0046】
螺合部19にナット20を螺着させる際、ナット20を仮締めし、連結体15の位置を調整した後、ナット20を本締めすることで、良好な作業性で連結体15の位置を容易に調整できる。
【0047】
なお、上記一実施の形態において、被接続部材2は、H形鋼でもよい。
【0048】
また、スペーサ21は、ボルト17の頭部18とナット20との位置を本体部10の一側と他側とに規制できるものであれば、筒状である必要はない。また、連結体15とボルト17の頭部18またはナット20との間に直接介在されるものに限らず、他の部材を挟んで介在されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 継手装置
2 被接続部材
3 支保工
10 本体部
13 接続部
15 連結体
17 ボルト
18 頭部
19 螺合部
20 ナット
21 スペーサ
T トンネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7