(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】タイヤ用無線周波数トランスポンダ
(51)【国際特許分類】
H04B 1/59 20060101AFI20240215BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240215BHJP
H01Q 9/27 20060101ALI20240215BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240215BHJP
H04B 5/26 20240101ALI20240215BHJP
H04B 5/43 20240101ALI20240215BHJP
H04B 5/45 20240101ALI20240215BHJP
【FI】
H04B1/59
B60C19/00 J
H01Q9/27
G06K19/077 156
G06K19/077 280
G06K19/077 232
H04B5/26
H04B5/43
H04B5/45
(21)【出願番号】P 2021501102
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 FR2019050708
(87)【国際公開番号】W WO2019186068
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-23
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】デストレイヴス ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】カロ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クレルジャット ジャン-マチュー
(72)【発明者】
【氏名】クチュリエ ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ポルティエ ギヨーム
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/193457(WO,A1)
【文献】特表2008-536357(JP,A)
【文献】米国特許第06112102(US,A)
【文献】特開2007-049351(JP,A)
【文献】特表2013-537782(JP,A)
【文献】特表2013-538501(JP,A)
【文献】特開2005-178747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
B60C 19/00
H01Q 9/27
G06K 19/077
H04B 5/00 - 5/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマ配合物で作られた塊体に組み込まれるようになった受動型無線周波数トランスポンダ(1)であって、
放射ダイポールアンテナ(10)であって、中心軸(11)、巻き径(D1,D2)、螺旋ピッチ(P1,P2)、正中面(19)、並びに、当該放射アンテナ(10)の内径(13)及び外径(15)を規定する線径を有する、単一ストランド螺旋ばねから成り、長さ(L0)が、無線周波数送信リーダとの所定の周波数帯での通信に適している、放射ダイポールアンテナ(10)と、
前記放射アンテナ(10)の内側に配置された電子部分(20)と、
を備え、前記電子部分(20)は、
i.電子チップと、
ii.前記電子チップに電気接続され、前記放射アンテナ(10)に電磁結合されたコイルである主アンテナと、
を備え、
iii.前記主アンテナは、前記放射アンテナ(10)の前記中心軸(11)と平行な中心軸を有し、又は、それぞれのアンテナの軸方向により生じる角度は、30度以下であり、
iv.前記主アンテナは、前記放射アンテナ(10)の前記正中面(19)と重なる正中面(21)を有し、又は、前記正中面同士の間の相対距離は、前記放射アンテナの長さの10分の1よりも小さく、
v.前記主アンテナは、円柱に外接し、前記円柱の
中心軸は前記主アンテナの中心軸と平行であり、前記円柱の直径は、前記主アンテナの中心軸に関して前記主アンテナの半径方向外側に配置された前記放射アンテナ(10)の前記内径の3分の1以上の大きさであり、
前記放射アンテナ(10)が前記電子部分(20)の半径方向外方に配置されない領域における前記放射アンテナ(10)の第1領域(101、101a、101b)において、前記螺旋ばねの少なくとも1つのループの前記螺旋ピッチ(P1)と前記巻き径(D1)との比が0.8より大きく、前記無線周波数トランスポンダ(1)の電子部分(20)は円筒に内接し、当該円筒の
中心軸は放射アンテナ(10)の中心軸に平行であり、当該円筒の直径は第1の領域(101)の前記放射アンテナ(10)の内径(13)よりも大きい、ことを特徴とする無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項2】
前記放射アンテナ(10)の第1領域(101,101a,101b)における前記螺旋ばねの各ループの前記螺旋ピッチ(P1)と巻き径(D1)との比が、3よりも小さい、請求項1に記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項3】
前記放射アンテナ(10)の前記第1領域(101,101a,101b)における2つの最終ループ、すなわち、前記電子部分(20)に関して軸方向の最も外側に位置する2つのループが、少なくとも1巻きに亘って隣接する、請求項1又は2に記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項4】
前記主アンテナが前記電子チップを備える回路基板の端子に接続されると、前記主アンテナの電気インピーダンスが、前記回路基板の電気インピーダンスと整合する、請求項1~3のいずれかに記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項5】
前記電子チップと前記主アンテナの少なくとも一部分とが、追加の電気絶縁性の塊体(30)に埋め込まれる、請求項1~4の内のいずれかに記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項6】
前記追加の塊体に埋め込まれない前記主アンテナの一部分が、電気絶縁性の材料で被覆される、請求項5に記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項7】
前記放射アンテナ(10)が前記電子部分(20)の半径方向外方に配置された前記放射アンテナ(10)の第2領域(102)において、前記螺旋ばねの各ループに対する前記螺旋ピッチ(P2)と前記巻き径(D2)との比が0.8以下である、請求項1~6のいずれかに記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項8】
前記無線周波数送信リーダとの無線周波数通信がUHF帯で行われる、請求項1~7のいずれかに記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項9】
前記無線周波数送信リーダとの前記無線周波数通信が、860~960MHzの帯域で行われる、請求項8に記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項10】
前記放射アンテナ(10)の前記長さ(L0)が30~50mmである、請求項9に記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項11】
前記放射アンテナ(10)の前記第1領域(101,101a,101b)における前記放射アンテナ(10)の前記巻き径(D1)が、0.6~2.0mmである、請求項8~10のいずれかに記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項12】
前記放射アンテナ(10)の前記第1領域(101,101a,101b)における前記放射アンテナ(10)の少なくとも1つのループの前記螺旋ピッチ(P1)が、1~4mmである、請求項8~11のいずれかに記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項13】
前記放射アンテナ(10)の線(12)の直径が0.05~0.25mmである、請求項8~12のいずれかに記載の無線周波数トランスポンダ(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の無線周波数トランスポンダ(1)を備える識別タグ(2)であって、前記無線周波数トランスポンダ(1)が、前記エラストマ配合物(3)に埋め込まれる、識別タグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤなど、特に使用中に高い熱機械的応力を受ける識別対象物に固定することのできる電子無線識別デバイス又は無線周波数トランスポンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFIDデバイス(RFIDはRadioFrequency Identification(無線周波数識別)の頭文字である)の分野では、対象物の識別、追跡及び管理を行うために、受動型無線周波数トランスポンダが使用されている。これらのデバイスは、より信頼性が高く、より迅速な自動化管理を可能にする。
【0003】
これらの受動型無線周波数識別トランスポンダは、一般に、少なくとも1つの電子チップと、磁気ループ又は放射アンテナによって形成された1つのアンテナとから構成され、これらは識別対象物に固定される。
【0004】
無線周波数トランスポンダの通信性能は、無線周波数リーダへ又はそれによって伝えられる所与の信号に関して、無線周波数トランスポンダの無線周波数リーダとの通信最大距離を用いて表される。
【0005】
例えば、タイヤなどの伸縮性の高い製品の場合、製品の製造から市場からの回収までその寿命を通して、特にその使用中に製品を識別する必要がある。従って、特に使用状態の下でこの作業を容易にするために高い通信性能が必要とされ、この通信性能は、無線周波数リーダによって、製品から遠い距離(数メートル)で無線周波数トランスポンダに応答指令信号を送る能力を用いて表される。最後に、このようなデバイスの製造コストは、可能な限り競争力のあるものであることが望ましい。
【0006】
タイヤのニーズを満たす受動型無線周波数識別トランスポンダは、従来から公知であり、特に国際公開第2016/193457号から公知である。このトランスポンダは、第1の主アンテナが電気接続されているプリント回路基板に接続された電子チップで構成さる。この主アンテナは、放射ダイポールアンテナを形成する単一ストランド螺旋ばねに電磁結合されている。例えば、外部の無線周波数リーダとの通信には、無線波、特にUHF帯(UHFはUltra-High Frequency(極超高周波数)の頭文字である)を使用する。従って、螺旋ばねの特性は、選択された通信周波数に合わせて調整される。このように、プリント回路基板と放射アンテナとの機械的接合部をなくすことで、無線周波数トランスポンダの機械的抵抗が改善される。
【0007】
しかしながら、このような無線周波数トランスポンダには欠点がある。この無線周波数トランスポンダは、外部の無線周波数リーダの通信周波数での動作には適しているが、特に長距離の問合せに関して、放射アンテナを用いた無線周波数通信は最適ではない。加えて、熱機械的応力の大きい環境において、放射アンテナが機械的にどのように挙動するかを考慮することも必要である。従って、このような無線周波数トランスポンダの潜在的な性能を最適化するためには、アンテナの機械的強度とその放射通信有効性との間で性能に基づく妥協点を最適化することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特にタイヤ業界で利用される無線周波数トランスポンダで行われる、性能に基づく妥協点、及び特に無線電気性能の改善を目的とした高周波トランスポンダに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エラストマ組成物又は配合物などの伸縮性の高い材料で作られた識別対象物に組み込むようになった受動型無線周波数トランスポンダに関する。この無線周波数トランスポンダは、まず第1に、放射ダイポールアンテナを備える。放射アンテナは、単一ストランド螺旋ばねで構成され、回転軸、巻き径、螺旋ピッチ、正中面、並びに放射アンテナの内径及び外径を規定する線径を有する。この放射アンテナは、無線周波数送信リーダとの所定の周波数帯での通信に適した長さL0を有する。また、この無線周波数トランスポンダは、放射アンテナの内側に配置された電子部分を備える。この電子部分は、電子チップと、電子チップに電気接続されて放射アンテナに電磁結合された主アンテナとを備える。主アンテナは、まず第1に、放射アンテナの回転軸と実質的に平行な軸を持ち、第2に、放射アンテナの正中面と実質的に重なる正中面を持つ。最後に、主アンテナは円柱によって外接され、その円柱の回転軸は主アンテナの軸と平行であり、その円柱の直径は、主アンテナと垂直に配置された放射アンテナの内径の3分の1以上の大きさである。このトランスポンダは、放射アンテナが電子部分と垂直に配置されない放射アンテナの第1領域において、螺旋ピッチと螺旋ばねの少なくとも1つのループの巻き径との比が0.8より大きいことを特徴とする。
【0011】
ここで、用語「エラストマ」は、例えばジエン系ポリマ、すなわちジエン単位を備えるポリマ、シリコーン、ポリウレタン及びポリオレフィンなどのTPE(ThermoPlastic Elastomers(熱可塑性エラストマ)の頭文字)を含む、全てのエラストマを意味するものと理解される。
【0012】
用語「電磁結合」は、ここでは、電磁放射による結合、すなわち、エネルギの非接触伝達を意味すると理解される。2つのシステムの間の物理的エネルギは、一方で誘導結合、他方では容量結合を含む。その場合、主アンテナは、コイル、ループ、又は線セグメント、或いはこれらの導電素子の組み合わせを含む群から構成されることが好ましい。
【0013】
ここで、用語「実質的に平行」とは、各アンテナの軸方向により生成される角度が30度以下であることを意味すると理解される。この場合、2つのアンテナ間の電磁結合は最適であり、特に、無線周波数トランスポンダの通信性能を向上させる。
【0014】
ここで、螺旋ばねのコイルの正中面を最初に定義する必要がある。定義によれば、それは対象物を2等分する仮想平面である。本例では、この正中面は各アンテナの軸に垂直である。最後に、ここでは、用語「実質的に重なる」とは、各正中面の間の相対距離が放射アンテナの長さの10分の1よりも小さいことを意味すると理解される。
【0015】
このように、電流が放射アンテナの中心で最大の大きさなので、この電流によって誘導される磁場も放射アンテナの中心で最大となり、従って、2つのアンテナ間の誘導結合が最適であることが保証され、それによって無線周波数トランスポンダの通信性能が向上する。
【0016】
放射アンテナの螺旋ばねの特性に関して主アンテナの相対寸法を規定することで、主アンテナが放射アンテナの内側に位置する場合に、2つのアンテナ間の距離が主アンテナの直径よりも小さくなることが保証される。このようにして、2つのアンテナ間の電磁結合、ひいては無線周波数トランスポンダの通信性能は、送信及び受信において最適化される。
【0017】
同様に、電子部分と、従って主アンテナと垂直に配置された放射アンテナ領域の外側では、放射アンテナのループに関して0.8を超える螺旋ピッチと巻き径との比は、螺旋ばねを引き伸ばす効果を与える。従って、放射アンテナの公称長さをもたらすのに必要な線長が短くなる。従って、放射アンテナの抵抗が減少する。結果として、所与の電界に対して、放射アンテナを流れる電流はアンテナの固有周波数においてより大きく、無線周波数トランスポンダの通信性能を改善することができる。加えて、螺旋ばねを引き伸ばすことで、その放射抵抗と損失抵抗との比を改善することにより、放射アンテナの効率を向上させることができ、これはまた、放射アンテナを流れる所定の電流に対して放射アンテナが放射する電界を最大にすることを可能にする。最後に、所定のピッチの放射アンテナに対して、放射アンテナを引き伸ばすことで、螺旋ばねが占有する体積を減らすことができる。従って、タイヤケーシングの厚さなどの制約された寸法環境では、放射アンテナのこの第1領域において、放射アンテナを取り囲む絶縁ゴムを厚くすることが可能である。この電気絶縁性により、損失が最小化され、ひいては送信時と受信時の両方で無線周波数トランスポンダの通信性能が改善される。もちろん、放射アンテナの第1領域のループの各々が伸長していることが理想であり、これは、それ相応に受動型無線周波数トランスポンダの通信性能を向上させ、特にRFIDタグの場合に当てはまる。
【0018】
好ましくは、放射アンテナの第1領域における螺旋ばねの螺旋ピッチと各ループの巻き径との比は、3よりも小さく、好ましくは2よりも小さい。
【0019】
放射アンテナの無線電気性能を改善することは好都合であるが、果たすべき他の機能もおろそかにしてはならない。特に螺旋ばねは、タイヤに使用された場合に無線周波数トランスポンダが必然的に曝される三次元応力に耐えるのに適した柔軟な構造である。従って、放射アンテナが概ね十分な柔軟性を保つことを保証し、ひいては無線周波数トランスポンダの物理的完全を保証するために、この第1領域で放射アンテナを引き伸ばす量を制限することが推奨される。
【0020】
特定の1つの実施形態によれば、放射アンテナの第1領域における螺旋ばねの2つの最終ループ、すなわち、電子部分に関して軸方向の最も外側に位置する2つのループが、少なくとも1巻きに亘って隣接する。
【0021】
これによって、無線周波数トランスポンダの放射アンテナが取り扱い時に絡み合うことが防止される。従って、無線周波数トランスポンダの取り扱いが容易になり、無線周波数トランスポンダの原価を最適化することができる。この作用を電子部分に対して軸方向の最も外側に位置するループに限定することは、放射アンテナの無線電気性能に僅かに影響を及ぼすだけである。
【0022】
好ましくは、主アンテナが電子チップを備える回路基板の端子に接続されると、主アンテナの電気インピーダンスが、無線周波数トランスポンダの回路基板の電気インピーダンスと整合する。
【0023】
用語「回路基板の電気インピーダンス」は、主アンテナの端子間の電気インピーダンスを意味するものと理解され、これは、少なくとも1つの電子チップと電子チップが接続されたプリント回路基板とを備える回路基板の電気インピーダンスを表す。
【0024】
主アンテナのインピーダンスを回路基板のインピーダンスと整合させることにより、無線周波数トランスポンダは、利得が向上し、より選択性の高い形状因子及び通過帯域の回路基板を実現することで、通信周波数で最適化される。このようにして、無線周波数トランスポンダに送信される所定のエネルギ量に対して、無線周波数トランスポンダの通信性能が改善される。これは特に、無線周波数トランスポンダの読取り距離の増大をもたらす。主アンテナのインピーダンス整合は、例えば線径、この線の材料及び長さなど、主アンテナの幾何学的特徴のうちの少なくとも1つを調整することによって得られる。
【0025】
従って、主アンテナのインピーダンス整合は、例えばインダクタ、コンデンサ及び伝送線路に基づくフィルタなど、主アンテナと電子回路との間に付加的な電子部品から成るインピーダンス整合回路を加えることによって得ることができる。
【0026】
また、主アンテナのインピーダンス整合は、主アンテナの特徴とインピーダンス整合回路の特徴とを組み合わせることで得ることができる。
【0027】
特定の1つの実施形態によれば、電子チップと主アンテナの少なくとも一部分とが、例えば高温エポキシ樹脂などの剛性で電気絶縁性の塊体に埋め込まれる。この組立体は、無線周波数トランスポンダの電子部分を形成する。
【0028】
このように、主アンテナの少なくとも一部分とプリント基板に接続された電子チップとを備える電子部分が強化され、識別対象物が曝される熱機械的応力に関して、その構成部品間の機械的結合がより信頼性の高いものとなる。
【0029】
またこれにより、無線周波数トランスポンダの電子部分を、放射アンテナ又は識別対象物とは独立して製造することが可能となる。特に、例えば主アンテナとして複数巻きのマイクロコイルを用いることで、主アンテナ及び電子チップを備える電子部品の小型化を構想することができる。
【0030】
別の実施形態によれば、剛性のある塊体に埋め込まれていない主アンテナの部分は、電気絶縁性の材料で被覆される。
【0031】
このように、主アンテナが電子部分の剛性で電気絶縁性の塊体に完全に含まれない場合には、電気ケーブルの絶縁シースに採用されるような電気絶縁性材料でできた被覆物によって主アンテナを絶縁することが有用である。
【0032】
1つの好ましい実施形態によれば、放射アンテナが電子部分と垂直に配置された放射アンテナの第2領域において、螺旋ばねの各ループに対する螺旋ピッチと巻き径との比は0.8以下である。
【0033】
具体的には、放射アンテナのこの第2領域、特に主アンテナと垂直に配置された領域では、放射アンテナから予期される効果は、電子部分の主アンテナとの電磁結合、特に誘導結合である。従って、この結合を改善する第1の手段は、この第2領域における放射アンテナのインダクタンスを増大させることであり、これは螺旋ばねを収縮させることに等しい。加えて、この第2領域で放射アンテナを収縮させることは、放射アンテナに向かい合って配置された主アンテナの所定の長さに対して、放射アンテナによって提供される交換領域を増大させることによって、主アンテナと放射アンテナとの間のエネルギ伝達を促進する。このようなエネルギ伝達の改善は、無線周波数トランスポンダからより良い通信性能が得られることに繋がる。
【0034】
特定の1つの実施形態によれば、無線周波数トランスポンダの電子部分の幾何学的形状は、直径が放射アンテナの内径以下で、回転軸が放射アンテナの回転軸と平行な円柱に内接する。
【0035】
このように形成された電子部分は、放射アンテナの内側に配置された場合、無線周波数トランスポンダの受信/送信における通信性能を向上させるために、放射アンテナに対して主アンテナを最適に事前に位置決めすることを可能にする。具体的には、2つのアンテナは実質的に平行であることが機械的に保証され、それらを隔てる距離は高い品質の電磁結合をもたらすことが機械的に保証される。
【0036】
特定の1つの実施形態によれば、無線周波数リーダとの無線電気通信は、UHF帯、最も具体的には860~960MHzの範囲で行われる。
【0037】
具体的には、この周波数帯では、放射アンテナの長さが通信周波数に反比例する。さらに、これらの周波数帯の外側では、標準的なエラストマ材料を介した無線電気通信は大きく乱されるか、不可能な場合さえある。従って、これは、無線周波数トランスポンダのサイズとその無線電気通信との間の最良の妥協点であり、特にファーフィールドにおいて、タイヤ産業にとって満足できる通信距離を得ることが可能となる。
【0038】
別の特定実施形態によれば、放射アンテナの長さL0は、30~50mmである。
【0039】
具体的には、860~960MHzの周波数範囲で、無線周波数トランスポンダを取り囲むエラストマ配合物の比誘電率に応じて、無線周波数トランスポンダが送信又は受信する無線電波の半波長に合わせた螺旋ばねの全長は、30~50mmの間、好ましくは35~45mmの間に決められる。これらの波長における放射アンテナの動作を最適化するために、放射アンテナの長さを波長に合わせて調整することが全く推奨される。
【0040】
有利には、放射アンテナの第1領域における螺旋ばねの巻き径は、0.6~2.0mm、好ましくは0.6~1.6mmである。
【0041】
これにより、放射アンテナが占有する体積を制限し、ひいては無線周波数トランスポンダの周囲の電気絶縁性エラストマ配合物を厚くすることができる。もちろん、放射アンテナの第1領域における螺旋ばねのこの直径は、一定、可変、連続的に可変、又は部分的に可変とすることができる。この直径が一定又は連続的に可変であることは、放射アンテナの機械的完全性の観点から好ましい。
【0042】
好ましい1つの実施形態によれば、放射アンテナの第1領域における放射アンテナの少なくとも1つのループの螺旋ピッチは、1~4mm、好ましくは1.5~2mmである。
【0043】
これにより、放射アンテナの第1領域において、ばね又は少なくとも1つのループの螺旋ピッチと巻き径との比を確実に3よりも小さくすることが可能となり、螺旋ばねの最小限度の伸びが保証される。さらに、このピッチは、放射アンテナの第1領域全体に亘って一定又は可変とすることもできる。もちろん、放射アンテナ内の機械的脆弱部を形成することになる放射アンテナの特異点を回避するために、ピッチは連続的に可変であること、又は変動の小さな移行部でもって可変であることが好ましい。
【0044】
好都合な1つの実施形態によれば、放射アンテナの線径は、0.05~0.25mm、理想的には0.12~0.22mmである。
【0045】
この線径の範囲では、間違いなく損失抵抗が低くなるので、放射アンテナの無線電気性能が向上する。加えて、線径を限定することにより、電気絶縁性のエラストマ配合物を厚くすることで、放射アンテナと導電体との間の距離を大きくすることが可能となる。しかしながら、一般に軟鋼であるこれら線の材料の破断応力を最適化することなく、タイヤケーシングなどの高応力環境下で受ける熱機械的応力に耐えられるようにするためには、線は一定の機械的強度を保つことが必要である。これにより、放射アンテナは、満足の行く技術的/経済的な妥協点を確実に示せるようになる。
【0046】
本発明の他の主題は、エラストマ配合物の柔軟性で電気絶縁性の塊体に埋め込まれた無線周波数トランスポンダから成る識別タグである。
【0047】
ここでは、用語「電気絶縁性」は、エラストマ配合物の電気伝導度が少なくともこの配合物の導電性電荷移動閾値未満であることを意味すると理解される。
【0048】
このようにして、エラストマ系の材料で作られた部分を備える、識別対象物内への無線周波数トランスポンダの取り付けを容易にする識別タグが形成される。識別タグをタイヤなどの識別対象物に固定するために、必要に応じて従来の接合ゴム層を用いることも考えられる。
【0049】
加えて、エラストマ配合物の剛性及び電気伝導度の特性により、識別対象物の構成要素内での無線周波数トランスポンダの質の高い機械的挿入と電気絶縁性とが保証される。従って、無線周波数トランスポンダの動作は、識別対象物によって乱されない。
【0050】
本発明は、空気入りタイヤへの適用事例に関する以下の説明を読むと、よりよく理解することができる。この適用事例は、添付図面を参照して単に例示的に提示され、図面を通して、同じ参照番号は同一の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】従来技術の無線周波数トランスポンダの斜視図であり、この構成では電子部分は放射アンテナの内側に配置される。
【
図2】本発明による無線周波数トランスポンダの斜視図である。
【
図3a】放射アンテナの所定の基本長さに関する、螺旋ばねの螺旋ピッチと巻き径との比に依存する及び一定ピッチの使用に依存する、放射アンテナのワイヤ長を示す図である。
【
図3b】放射アンテナの所定の基本長さに関する、螺旋ばねの螺旋ピッチと巻き径との比に依存する及び一定巻き径の使用に依存する、放射アンテナのワイヤ長を示す図である。
【
図4】特定の特異性を有する、本発明による無線周波数トランスポンダの1つの実施例である。
【
図6】観測周波数帯に依存する、2つの無線周波数トランスポンダに送信された電力のグラフである。
【
図7】本発明による無線周波数トランスポンダを備える識別タグの製造工程の概要である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下では、用語「タイヤ」及び「空気入りタイヤ」は等価的に使用され、空気入りタイヤ又は非空気式タイヤのいずれかのタイヤを指す。
【0053】
図1は、従来技術の無線周波数トランスポンダ1を示し、この構成では電子部分20は放射アンテナ10の内側に配置される。放射アンテナ10は、回転軸11を有する螺旋ばねを形成するために塑性変形された鋼線12で構成される。螺旋ばねは、主として被覆線の巻き径と螺旋ピッチとによって規定される。ここでは螺旋ばねのこれら2つの幾何学的パラメータは一定である。従って、線径が与えられると、螺旋ばねの内側13及び外側15の直径が正確に決定される。ここでは、ばねの長さL0は、エラストマ配合物の塊体の中にあるトランスポンダ1の無線周波数送信信号の半波長に対応する。従って、螺旋ばねの正中面19を定義することが可能であり、正中面は、回転軸11と直交しており、放射アンテナ10を2等分する。電子部分20の幾何学的形状は、円柱が外接しており、この円柱の直径は、螺旋ばねの内径13と同じか又はそれよりも小さい。これにより、電子部分20を放射アンテナ10の中に導入するのが容易になる。主アンテナの正中面21は、放射アンテナ10の正中面19と実質的に重なって配置される。最後に、主アンテナの軸線は、放射アンテナ10の回転軸11と実質的に平行である。放射アンテナは、2つの別の領域に分けることができる。放射アンテナ10の第1領域101は、螺旋ばねが電子部分20に対して垂直に配置されない領域である。放射アンテナ10のこの第1領域101は、実質的に等価な2つの部分101a、101bを備え、これらの部分は、放射アンテナ10の第2領域102と軸方向に隣接する。
【0054】
図2は、本発明による無線周波数トランスポンダ1を示し、従来技術の無線周波数トランスポンダに対して、第1領域の放射アンテナの少なくとも1つのループの巻き径に対する螺旋ピッチの比が0.8よりも大きいという際立った特徴を有する。この事例では、各領域101a及び101bの全てのループは、その比が同等に変えられている。これは、各部分領域101a、101bのループ総数を低減することによって達成される。この特定の事例では、放射アンテナ10の線の巻き径は同じに維持される。しかしながら、このアンテナの第1領域101における放射アンテナ10の鋼線の巻き径を増大させることで、第1領域101の各ループの巻き径に対する螺旋ピッチの比を変更することも可能とされている。この事例では、放射アンテナ10の第2領域102での放射アンテナ10の螺旋ピッチは変更されていない。従って、放射アンテナ10の第2領域102での螺旋ピッチと巻き径との比は、0.8よりも小さい。
【0055】
図3a及び3bは、螺旋ばねの1つのループに関して、放射アンテナの無線電気特性及び電磁気特性に関する、螺旋ピッチと巻き径との比の重要性を示す図である。
【0056】
図3aは、ループの螺旋ピッチとループが形成される線の直径とが一定のままである場合の、ループの螺旋ピッチと巻き径の比の変動を示す説明図である。比が1に等しい完全ループによって占有される領域に等しい長さの放射アンテナの基本長さに関して、このループの曲線距離は、2*PI*PI基本単位に等しい。実線で描かれた曲線500がこのループに対応する。具体的には、このループの半径は、必然的にPI基本単位に等しい。ここで、2に等しい比に対応する点線で描かれた曲線501を検討する。螺旋ピッチが一定であるため、このループの巻き径は、必然的に先のループの巻き径の2分の1、すなわちPI基本単位である。従って、点線曲線501で図示されたループの曲線距離は、PI*PI基本単位に等しい。結果として、第2ループより大きな螺旋ピッチ対巻き径の比を有する第1ループの曲線距離は、この第2ループの曲線距離よりも小さい。破線で描かれた曲線502と一点鎖線で描かれた曲線503は、それぞれ0.8と0.5の比を示す。これら2つのループの曲線長は、それぞれ2.5*PI*PI基本単位と4*PI*PI基本単位に等しい。
【0057】
図3bは、ループの直径とループが形成される線径とが一定のままである場合の、ループの螺旋ピッチと巻き径の比の変動を示す説明図である。比が1に等しい完全ループによって占有される領域に等しい長さの放射アンテナの基本長さに関して、このループの曲線距離は、2*PI*PI基本単位に等しい。実線で描かれた曲線505がこのループに対応する。具体的には、このループの半径が必然的にPI基本単位に等しい。ここで、2に等しい比に対応する点線で描かれた曲線506を検討する。巻き径が一定であるため、このループの螺旋ピッチは、必然的に先のループの螺旋ピッチの2倍、すなわち4*PI基本単位である。しかしながら、基本長さが2*PI基本単位に限定される場合、点線で示されるこのループの曲線距離は、PI*PI基本単位に等しい。同様に、0.5と0.2の比に対応する曲線507と508は、それぞれループ数の2倍化と5倍化を表している。破線で描かれた曲線507の曲線距離は、4*PI*PI基本単位に等しい。さらに、二点鎖線で描かれた曲線508の曲線距離は、10*PI*PI基本単位に等しい。
【0058】
もちろん、単に各ループの螺旋ピッチ又は巻き径を変更するのではなく、両方のパラメータを同時に変更することも可能である。唯一、これら2つの変更によって得られた比が、放射アンテナの通信性能に影響を与えることになる。
【0059】
具体的には、導線の抵抗は、導線の曲線長に比例する。ループの螺旋ピッチと巻き径との比が大きいほど、導線の曲線長は短くなる。従って、ループの電気抵抗は低くなる。要するに、この電気抵抗を最小にすることで、放射アンテナのループの無線電気特性が改善される。放射アンテナの第1領域の電気抵抗を最小化することにより、アンテナの放射効率が送信時と受信時の両方で改善され、アンテナは、主としてこの第1領域で構成される。加えて、アンテナの電気抵抗を最小化することで、所定の電位差に対して最大の電流が発生することが保証される。従って、無線周波数トランスポンダの無線電気性能、結果として通信性能が改善される。
【0060】
放射アンテナの第2領域に関して、第1領域よりも小さいこの第2領域の放射効率は重要ではない。具体的には、この第2領域の主な機能は、電子部分の主アンテナとの電磁結合を保証することである。この電磁結合は、主アンテナが多重巻きコイルである場合は、主として誘導結合による。この結合が起こるためには、放射アンテナはまず、磁場を発生させる必要がある。この磁場は、特に放射アンテナのインダクタンスに依存する。コイルのインダクタンスを最大にするには、コイルの螺旋ピッチと巻き径との比を小さくすること、又はコイルのループ数を増やすことが推奨される。放射アンテナの第2領域のループの巻き径に対する螺旋ピッチの比を小さくすることで、アンテナのインダクタンスが増大うることで誘導結合が最大化になる。さらに、アンテナの螺旋ピッチだけを変更してこの比を小さくする場合、アンテナの第2領域を構成する巻き数が増加し、これにより2つのアンテナ間のエネルギ伝達面積が増加する。このエネルギ伝達面積の増加は、もちろん無線周波数トランスポンダの通信性能に有利である。
【0061】
図4は、860~960MHzの周波数範囲で動作する無線周波数トランスポンダ1の説明図であり、このトランスポンダは、エラストマ材料で作られている識別タグを介してタイヤのケーシングに組み込まれることが意図されている。タイヤのケーシング内で無線周波数トランスポンダ1の無線通信性能と物理的完全性を高めるために、特にコードが金属製の場合、放射アンテナ10の回転軸を軸Uと平行に、すなわちラジアルプライタイヤのケーシングのカーカスプライのコードと直交する方向に配置することが好ましい。
【0062】
ここでの無線周波数トランスポンダ1は、放射アンテナ10と、放射アンテナ10の内側に位置する電子部分とを備える。電子部分は、プリント回路基板に接続された電子チップを備える。主アンテナは、プリント回路基板に接続された矩形の17巻きを備える導線で構成される。プリント回路基板の主アンテナと対向する面は、長さ10mmで幅1mmのラインを形づくる蛇行形状のガルバニック回路を備える。最後に、主アンテナに外接する円柱の直径は0.8mmである。
【0063】
このようにして形成された回路基板は、エポキシ樹脂の塊体30に埋め込まれ、電子部品の機械的信頼性及び回路基板の電気的絶縁性を保証する。剛性のある塊体30に外接する円柱は、直径1.15mm、長さ6mmを有する。
【0064】
放射アンテナ10の長さL0は、ここでは45mmであり、5にほぼ等しい比誘電率の媒体において周波数915MHzの無線波の半波長に対応する。放射アンテナ10は、直径0.225mmの鋼線12を用いて製造され、その表面は真鍮層で被覆される。
【0065】
放射アンテナ10を2つの主領域に分割することができる。第1領域101は、電子部分が垂直に配置されない放射アンテナセグメントに対応する。それは、剛性で絶縁性の塊体30の両側に隣接する2つの部分領域101a及び101bを備える。
【0066】
各部分領域101a、101bは、19mmの長さL1を有し、1.275mmの一定巻き径D1の円形の12回巻きを備える。これにより、1.05mmの内径と1.5mmの外径とがそれぞれに規定される。円形巻きの螺旋ピッチP1は1.55mmである。従って、巻線の螺旋ピッチP1と巻き径D1との比は1.21である。各部分領域101a、101bの軸方向外端は、隣接する2つの巻きで終端する。従って、この大きな比により、この領域101における放射アンテナ10の無線電気特性の有効性が最大となることが保証される。加えて、放射アンテナ10の最も外側に位置する巻き間の接触により、無線周波数トランスポンダの取り扱い時に螺旋ばねが絡み合うのを防ぐことができる。放射アンテナ10の第1領域101の巻きの大部分が0.8よりも大きな比を有するので、無線周波数トランスポンダ1の無線電気性能は明らかに改善される。
【0067】
電子部分が垂直に配置される放射アンテナ10のセグメントに対応する放射アンテナ10の第2領域102では、放射アンテナは7mmの長さを有する。螺旋ばねは、1mmの一定螺旋ピッチP2と、1.575mmの一定巻き径D2とを有する。従って、放射アンテナの第2領域の螺旋ばねの内径は1.35mmである。これにより、約0.63の一定の螺旋ピッチと巻き径との比を得ることができる。この比は、放射アンテナ10の第2領域102のインダクタンスを第1領域101に対して最大化することを可能にし、これにより、電子部分への電磁結合の有効性を改善することができる。
【0068】
この特定の事例では、第1領域101において、1.05mmに等しい放射アンテナ10の内径は、電子部分に外接する円柱で表される塊体30の1.15mmに等しい直径よりも小さい。このように、放射アンテナ10の第1領域101の部分領域101a及び101bは、放射アンテナ10内の塊体30の軸方向移動を制限する機械的な停止部を形成する。電子部分は、剛性で絶縁性の塊体30を放射アンテナ10内に滑り込ませることによって組み込まれる。
【0069】
加えて、主アンテナに外接する円柱の直径は、放射アンテナの第2領域102の螺旋ばねの内径の3分の1よりも遥かに大きい。主アンテナに外接する円柱は、放射アンテナ10の回転軸Uと同軸ではないが、実質的にそれと平行である。さらに、放射アンテナ10の第2領域102と主アンテナとの間の最小距離は、0.3mmよりも小さい、すなわち放射アンテナ10の内径の4分の1よりも遥かに小さい。アンテナのこの近接は、放射アンテナ10の第2領域102における縮められたピッチP2によって可能となり、これにより、ばねの寸法に対し、特に巻き径D2に対してより小さな寸法公差を得ることができる。加えて、この近接は、2つのアンテナ間のより良い品質の電磁結合を保証する。もちろん、この電磁結合は、主アンテナ及び放射アンテナで同一形状の巻き、例えば円形巻きを用いることによって改善できている。また、この結合は、2つのアンテナの軸線を同軸にすることによって最適化できおり、これは、電子部分の軸方向寸法を最小にするような方法で主アンテナの内部に回路基板を配置することに相当する。このようにして、2つのアンテナ間の電磁エネルギの伝達領域の品質は、最適にできている。
【0070】
特に、放射アンテナの第1領域と第2領域との間で螺旋ばねの巻き径が変動する場合であって、放射アンテナの第1領域の内径が電子部分に外接する円柱の直径よりも小さい場合には、他の特定の実施形態を採用することができる。
【0071】
第1の実施形態は、電子部分の放射アンテナへの挿入を容易にするために、放射アンテナを製造するステップと、このアンテナに第1段階で製造された電子部分を組み込むステップとを相乗的に行うことから成る。
【0072】
従って、最初に、放射アンテナの主要部がばね巻き機を用いて製造され、ばね巻き機は、課された動作によって塑性変形された外径150ミクロンの鋼線を供給する。もちろん、この機械は、製造時に、加えられた変形を修正して、螺旋ばねの各ループの巻き径及び螺旋ピッチを変更するために、自動化することができる。放射アンテナの主要部は、必然的に、放射アンテナの第1領域の第1部分領域と、より大きな巻き径を有することになる放射アンテナの第2領域のほぼ全てとを備える。さらに、必要に応じて、螺旋ばねの第2領域のループの螺旋ピッチは、第1領域のループの螺旋ピッチとは異なる。
【0073】
この第1ステップの後、第1段階で製造された電子部分を、製造された放射アンテナの第1部分の内側に組み込むために、螺旋ばねの製造を停止する。この作業は、ばね巻き機自体の中で実行される。
【0074】
これは、最初に、形成された螺旋ばね内の応力を、螺旋ばねの端部の一方を自由にすることによって緩和することが必要とされる。これは、螺旋ばね内の予応力を減少させる効果があり、製造されたばねの巻き径を増大させることにつながる。次に、鋼線を変形させるフィンガの代わりに配置されたピストルを用いて、この緩和された螺旋ばねの主要部に電子部分を組み込む。工具の交換はスピンドルの回転を用いて達成され、スピンドルの角度付き端部は、鋼線を変形させるために一方がピストル、他方がフィンガである。
【0075】
この組み込み作業は、例えば、放射アンテナの主要部の回転軸と電子部分の回転軸との間の平行性又は同軸性さえも保証しながら、電子部分の軸方向端部の一方を放射アンテナの主要部のループに対して当接させることを含む。加えて、放射アンテナの第1部分の中での電子部分の軸方向位置決めにより、電子部分の主アンテナの正中面は、最終放射アンテナに対して実質的に中央に位置付ける必要がある。
【0076】
この組み込み作業は、機械的な推進力を与えるピストルを用いて実行される。しかしながら、何らかの他のタイプの推進力、磁力、空気圧、油圧、又はそれらの組み合わせが想定される。次に、変形用フィンガは所定位置に戻され、電子部分は、既に製造されている放射アンテナの第2領域を用いて所定位置に維持される。
【0077】
最後に、第3ステップは、電子部分の存在のために第1ステップの終わりに停止したところから、螺旋ばねの形成を再開することを含む。電子部分をその把持及び位置決め手段から自由にして、これらの手段を螺旋ばねの製造領域から取り除いた後で、放射アンテナの第1部分の第2部分領域を製造する。次いで、螺旋ばねの長さが所望の長さL0に到達すると鋼線を切断する。
【0078】
本発明の無線周波数トランスポンダの第2の実施形態は、ばねの巻き径が放射アンテナの第1領域と第2領域との間で変化する場合に、電子部分が配置される第2領域を備えた単一ストランド螺旋ばねの形態をとる放射アンテナを最初に製造することにある。この第2領域は、巻き径D2と螺旋ピッチP2を有する。また、螺旋ばねは、第2領域の各端部に位置する放射アンテナの第1領域の2つのセグメントを備える。この第1領域は、巻き径D1及び螺旋ピッチPIを有する螺旋によって規定される。従来、このタイプの螺旋ばねは、標準巻き機の上で、持続時間が最適化された製造サイクルで製造される。
【0079】
次のステップは、第1段階で製造された電子部分を、前のステップで形成された放射アンテナに組み込むステップである。
【0080】
最初に、前のステップで製造された螺旋ばねの上に、概して放射アンテナの第2領域と第1領域の1つのセグメントとの間の巻きを含む移行領域を見つけることが必要である。
【0081】
第1領域から第2領域への移行は、線の巻き径の変動から認知することができ、この変動は潜在的に螺旋ピッチの変動を伴う。この移行領域を見つけるために、例えば、螺旋ばねの少数の巻きに焦点を合わせることのできるカメラを使用することが推奨される。理想的には、螺旋ばねの一端を提示して、カメラの視野を前で螺旋ばねを回転軸Uに沿って移動させる。画像処理ソフトウェアパッケージ又は人間の眼によって、ばねの巻き径は、回転軸Uの螺旋ばねに外接する円柱の直径であると観察することができる。従って、巻き径が一定である2つの領域の間の移行領域に対応する円柱の直径の変動が観察される。
【0082】
次に、巻き径がD2である螺旋ばねの第2領域と接触する、移行領域の最終巻きを見つける。これを行うために、再度、カメラの視野の前で螺旋ばねを連続的な前後移動で回転軸Uに沿って移動させる。
【0083】
螺旋ばねが取り付けられた機械に規定されるばねの直線曲げ線に関して、移行領域の最終巻きの半径方向外端をこの直線曲げ線上に置くことが推奨される。これを行うために、螺旋ばねをばねの回転軸Uに沿った方向に移動させることも推奨される。潜在的に、ばねを横方向に移動させて、この曲げ領域が、移行領域の螺旋バネに外接する円柱に確実に接するようにする必要がある。最後に、最終巻きの一端が直線曲げ線上に配置される位置まで、ばねを回転軸Uの周りで回転させることが必要である。その後、螺旋ばねの位置が回転移動方向に固定される。
【0084】
機械サイクルが開始され、これにより、螺旋ばねの第1領域のセグメントが、螺旋ばねの残部に対して、回転軸Uと垂直な直線折曲げ線の周りで曲げられる。電子部分に外接する円柱の直径が放射アンテナの第2領域の内径に近い本適用例では、従来の90°である、所定の曲げ角によって、螺旋ばねの第2領域の端部に開口部を生成することができる。この開口部の内接直径は、電子部分に外接する円柱の直径に等しいか又はそれよりも大きく、電子部分の容易な挿入を可能にする。
【0085】
電子部分は、この開口を通って放射アンテナの第2領域に挿入される。電子部分に外接する円柱の主軸に沿った電子部分の軸方向端部は、特定の平面上で螺旋ばねの第2領域から螺旋ピッチよりも小さい距離に位置する必要がある。この平面は、法線が機械内でブロックされた螺旋ばねの部分の回転軸であり、屈曲点を通過する。従って、電子部分は、一旦放射アンテナの第2領域に挿入されると、放射アンテナの第1領域のセグメントの曲げを妨げない。理想的には、電子部分は完全にこの特定の平面の下にある。
【0086】
螺旋ばねは、機械内でブロックされた部分の回転軸に垂直な軸の周りに、第1の角度とは反対の第2の角度だけ、屈曲点で再び曲げられる。この角度の大きさは、ここでは直径0.225mmの軟鋼製ワイヤに対して約105度である。この大きさは、少なくとも第1の角度の大きさに等しいか、又はそれよりも大きい。螺旋ばねのブロック部分の回転軸と螺旋ばねの自由部分の回転軸とは、結果として同一線上にある。この場合、第1領域のセグメントの第1の曲げが、屈曲点における鋼の可塑性の局所的な増大をもたらす。最終的なばねが確実に直線形の回転軸を有するように、第2の曲げ角の増加に繋がるので、第2の曲げの間に屈曲点の周囲領域の可塑性を増大させることが推奨される。
【0087】
このようにして形成された放射アンテナは、完全に内部に配置された電子部分を備え、本発明による無線周波数トランスポンダに相当する。随意的に、電子部分は、第2の軸方向端部を螺旋ばねの第1領域と第2領域との間の第2移行領域の巻きと当接させるように、螺旋ばねの第2領域に挿入される。この当接により、電子部分が螺旋ばね内で軸方向に位置決めされるだけでなく、電子部分の主アンテナと螺旋ばねとの同軸性も保証される。
【0088】
図5は、電気絶縁性エラストマ材料で作られた柔軟性のある塊体3に埋め込まれた、本発明による無線周波数トランスポンダ1を備えた識別タグ2を示し、この塊体はブロック3a及び3bで示される。一般に、無線周波数トランスポンダ1は、放射アンテナ10の第1領域101と識別タグ2の外部表面との間の最小距離を最大にするために、タグ2の中央に配置される。
【0089】
鋼線の巻き径を小さくすることにより放射アンテナ10の第1領域101の螺旋ピッチとループの巻き径との比を大きくした場合には、エラストマ材料の塊体3内で無線周波数トランスポンダ1の占める体積が減少する。
【0090】
これにより、第1の適用例では、識別タグ2の外面と放射アンテナ10の第1領域101との距離を同じに保ちながら、識別タグ2の各ブロック3a及び3bの厚さを低減することができる。このように識別タグ2の厚さを低減することにより、同じ電気絶縁電位を維持しながら、識別タグ2の識別対象物への導入が容易になる。第2の適用例では、放射アンテナ10の第1領域101と識別タグ2の外面との距離を大きくすることが可能になる。この第2の適用例により、無線電気性能を、結果として識別タグ2に配置された無線周波数トランスポンダ1の通信性能を改善することができる。具体的には、識別タグ2の電気絶縁性は、放射アンテナ10の第1領域101と識別タグ2の外面との距離に比例する。識別タグ2のより良好な電気的絶縁性により、無線周波数トランスポンダ1の無線電気動作は改善されるか又はこの距離が有効性漸近線に達している場合には同じままである。
【0091】
図6は、ミシュラン製タイヤ(商標XINCITY、サイズ275/70R22.5)の内部に配置された受動型無線周波数トランスポンダによって外部無線周波数リーダに送信される電力のグラフである。無線周波数トランスポンダの通信周波数は915MHzを中心とする。使用する測定プロトコルは、「Identification Electromagnetic Field Threshold and Frequency Peaks(電磁界の閾値及び周波数ピークの識別)」と題された規格ISO/IEC 18046-3に対応する。測定は、従来のように単一の周波数ではなく、広範囲の走査周波数で行った。x軸は通信信号の周波数を表す。y軸は、現行の従来技術の無線周波数トランスポンダが送信した最大電力に関連して、無線周波数リーダが受信した電力を表している(デシベル表示)。破線の曲線1000は、引用文献による無線周波数トランスポンダの応答を表す。実線の曲線2000は、無線周波数リーダが送信した同じ信号に対する、本発明による無線周波数トランスポンダの応答を表す。無線周波数リーダの通信周波数において、本発明による無線周波数トランスポンダの好都合な約2デシベルの改善が注目される。通信周波数の周りの広い周波数帯で、少なくとも約1デシベルの最小限の改善が見られる。
【0092】
図7は、本発明による識別タグ2の製造工程の概要である。識別タグ2を得るために、まず、本発明による無線周波数トランスポンダ1を製造する必要がある。連続した無線周波数トランスポンダ1の製造ステップ、次に識別タグ2の製造ステップが特定される。電気通信又は電子工学の技術に関連したステップは、例えば空気入りタイヤへの応用のためにタイヤ製造業者が行うことのできる組み立てステップとは明確に線引きされている。
【0093】
識別タグ2の製造の概要を示す
図7を参照すると、製造工程が3つの独立した連続する段階を備えることが分かる。
【0094】
電気通信技術に対応する第1段階では、外部無線周波数リーダとの間で無線電波の送受信を保証する放射アンテナ10が形成される。
【0095】
特定の1つの実施形態において、第1ステップは、ばね巻き機などの適切な工業的手段を用いて螺旋ばねを形成するために、外径200ミクロンの鋼線12を塑性変形させるステップから成るが、外径50、100、150又は250ミクロンの線径も使用することができる。本例では、ばねの各ループ間の螺旋ばねの螺旋ピッチを変更することが可能であり、このピッチは4mmより小さい場合がある。同様に、螺旋ばねの各ループに関して、螺旋ばねの巻き径を0.6~2mmの間で変更することが可能である。このようにして、最終的な放射アンテナに望まれる長さに対して小さい可変巻き径のばねが得られ、最終的な放射アンテナは30~50mmで構成され、例えば40mmである。このようにして形成された螺旋ばねの予応力を緩和するために、この塑性変形ステップの後に熱処理(200℃以上で少なくとも30分間の熱処理)を加えることができる。
【0096】
第2ステップは、約40mmのエラストマ媒体における波の伝播速度を考慮して、螺旋ばねをレーザ切断によって所望の長さに切断することから成り、この長さは無線電気通信信号の周波数での半波長に対応する。こうして得られた機械部品は、本発明による放射アンテナ10である。
【0097】
特定の1つの実施形態によれば、製作された第1のループは、隣接するループに接触しており、放射アンテナの最後の2つのループについても同様である。このために、予応力緩和後の最終的な放射アンテナが正確な所望の長さとなるように、螺旋ばねの正確な長さでこれら2つの終端ループを作り出せるよう、放射アンテナの所望の長さを事前に知っておくことが推奨される。
【0098】
第2段階では、電子チップに応答指令信号を送りその応答を放射アンテナに送る、無線周波数トランスポンダの電子部分が製造される。放射アンテナと電子部分との間の情報送信は、主アンテナを用いた電磁結合によって達成される。
【0099】
この電子デバイスは、剛性のある塊体の中に封止され、一方で電子チップから、他方で主アンテナから構成される。
【0100】
この電子デバイスの好ましい1つの実施形態において、主アンテナ及び電子チップの電気機械的キャリアを形成するためにリードフレーム工程を使用し、リードフレームはプリント回路基板の等価物を形成する。この工程は、小型化に好適なので、この構成には特に良く適合する。
【0101】
第1ステップは、回路基板を形成することにある。これを行うために、電子チップは、最初に導電性接着剤、例えばTedella社製の接着剤H20Eを用いてリードフレームに接着される。次に、チップはワイヤボンディングによって接続される、すなわち、電子チップとリードフレームであると言えるプリント回路基板との間に、例えば直径20ミクロンの金線を用いて電気ブリッジが作り出される。その後、インピーダンス計などの適切な電気デバイスを用いて、主アンテナがリードフレームに接着された箇所での回路基板の電気インピーダンスを測定することが可能である。
【0102】
第2ステップは、主アンテナを製造することにある。1つの実施形態において、このアンテナは、ワイヤボンディング技術でリードフレーム上に直接、作成される円形巻きのコイルから形成される。別の変形形態において、主アンテナは、銅線の2つのセグメントを用いてアンテナを作り出すことによって形成され、銅線のセグメントは、電子産業で使用される金属はんだ付け技術を用いて回路基板に接続され、ダイポールアンテナを形成するために反対方向に向けられる。リードフレーム上に複数巻きのコイルを作成するために、直径20ミクロンの金線を用いてリードフレームの裏側にコイルの半巻きを作り出すが、アルミニウム線又はパラジウム被覆の銅線も使用できる。半巻きの直径は400ミクロンであり、半導体産業で従来から使用されている超音波技術を用いて、リードフレーム上に金線を電気接続する。次に、リードフレームの表側では、直径400ミクロンで15回巻きの円筒状コイルを得るために、もう一方の半巻きを作り出す。
【0103】
主アンテナの巻き数は、主アンテナの電気インピーダンスが回路基板の電気インピーダンスと整合するように定められ、この回路基板は、リードフレームであると言えるプリント回路基板と電子チップとを少なくとも備える。本例では、電子チップ単体の電気インピーダンスの値は、例えば(10-j*150)オームの複素数である。従って、直径400ミクロンで15回巻きのコイルは、銅リードフレームで作成された回路基板の電気インピーダンスとの良好な整合に対応する。
【0104】
電子部分の製造の最終ステップは、高温エポキシ樹脂を用いて、プリント回路基板、それに接続される構成部品、及び主アンテナを剛性のある塊体の中に封止することにある。これを行うために、当業者によく知られたグローブトップ技術が使用される。剛性のある塊体は、無線周波数トランスポンダの回路基板を保護するカプセルを形成する。
【0105】
電子デバイスの別の実施形態では、最初に電気絶縁性の熱可塑性シースで被覆された180ミクロンの銅線を用いた主アンテナ24の製造が開始される。この線を剛性で電気絶縁性の管状コアの周りに巻き付けて、0.2mmの螺旋ピッチを有し、2つの未被覆端部で終端する1mm外径の約10回巻きのコイルを製作する。その後、銅線の直径、アンテナの外径、螺旋ピッチ及び総巻き数を使用して、主アンテナの実際の周囲面積sを評価することができる。この場合、螺旋領域の半径は500ミクロンである。
【0106】
回路基板は、可撓性キャリアを用いて製作される。 第1の変形形態では、電子チップは、チップと回路基板との間に電気配線を必要としないACPタイプ(ACPはAnisotropic Conductive Paste(異方性導電ペースト)の頭文字)の導電性接着剤を用いて固定される。第2の変形形態では、電子チップは、電子部品を実装するための非導電性接着剤を用いて固定される。チップの回路基板への接続はワイヤボンディングにより達成され、すなわち、電子チップとプリント回路基板であると言える可撓性キャリアとの間に、例えば直径20ミクロンの金線を用いて電気ブリッジが作り出される。
【0107】
次に、主アンテナ24の2つの未被覆端部は、導電性接着剤、例えばTedellaブランドの接着剤H20Eを用いてプリント回路基板26に接続される。
【0108】
最後に、回路基板と主アンテナの未被覆端部は、当業者にはよく知られたグローブトップ技術を用いて、高温エポキシ樹脂などの剛性で電気絶縁性の材料で覆われる。
【0109】
無線周波数トランスポンダの製造工程の第3段階は、第2ステップで製造された電子部分を第1ステップで製造された放射アンテナと共に組み立てることにある。
【0110】
最初に、適切なニードルノーズピンセットを用いて電子部分を拾い上げるが、この電子部分は、第1のステップで製造された放射アンテナ10の内径、つまり約1mm以下の直径を有する円柱に内接する。
【0111】
主アンテナの対称軸が放射アンテナの回転軸方向に位置するように電子部分を放射アンテナの内部に挿入する。その場合、主アンテナの正中面と放射アンテナの正中面とが一致するまで、電子部分を放射アンテナの奥まで移動させる。次に、電子部分をニードルノーズピンセットから放し、ピンセットを放射アンテナの内部から慎重に取り出す。
【0112】
セルフセンタリング、すなわち、軸の平行性と放射アンテナ及び主アンテナの正中面の相対的な位置決めとがこのように達成され、これは2つのアンテナ間の良質な誘導結合を実現するのに好都合である。
【0113】
こうして形成された組立体が、本発明による無線周波数トランスポンダである。
【0114】
一旦、無線周波数トランスポンダが製作されると、最後のステップは、識別対象物内での無線周波数トランスポンダの使用を容易にするために、部分的にエラストマ配合物から成る識別タグを得ることである。
【0115】
前のステップで形成された無線周波数トランスポンダを柔軟性のある塊体の中心に配置する。例えば
図5に示すように、無線周波数トランスポンダ1は、その寸法と、例えば2~5ミリの厚さとによって決まる寸法のグリーンエラストマ材料で作られた2つのブロック3a及び3bで挟まれる。ブロックの長手方向は、放射アンテナ10の軸に対応している。組立体は、エラストマ塊体の体積に合わせたサイズのプレスツールの金型の内面に予め配置される。
【0116】
この金型に相補的な金属パンチを用いて、例えば空気圧一軸プレスなどのプレスツールによって圧縮力を組立体に加え、本発明による無線周波数トランスポンダの識別タグに対応する直径約20mmの円柱に内接した、例えば60mmの長さの対称軸を有するコンパクトな幾何形状を形成する。
【0117】
1又は2以上のエラストマ配合物の塊体内に無線周波数トランスポンダ1を組み込むために、他のプロセス、例えば押出又は射出成型プロセスなどを使用することができる。
【0118】
特定の1つの実施形態において、無線周波数トランスポンダの電子部分を封止した高温エポキシ樹脂で作られた剛性のある塊体と識別タグのエラストマ配合物との接着を促進するために、当業者によく知られた接着促進剤が使用される。これにより、無線周波数トランスポンダの使用時の耐久性を改善することができる。
【0119】
最後に、本発明による無線周波数トランスポンダは、少なくとも2つの実施形態に従って、空気入りタイヤなどの識別対象物の中に工業的に実装することができる。第1の好ましい実施形態では、空気入りタイヤの製造中に、グリーンエラストマ配合物内の無線周波数トランスポンダ又は識別タグを未完成のタイヤに組み込めばよい。トランスポンダ又は識別タグは、グリーン未完成空気入りタイヤの様々なエラストマ部品間に配置される。理想的には、放射アンテナ10が塑性変形しないように、許容レベルの変形を受ける空間領域に配置される。未完成タイヤは、様々なエラストマ配合物を加硫し、トランスポンダ又は識別タグが、こうして製造された空気入りタイヤの一体部分となるようにするオーブンベークを含めて、タイヤ製造の様々な段階を経る。その後、無線周波数トランスポンダは使える状態となる。
【0120】
別の好ましい実施形態は、識別タグの製造に続くステップで、架橋又は加硫によって識別タグのエラストマ構造をセッティングすることにある。この工程の後に得られたデバイスは、空気入りタイヤの内部ゴムに対して接合ゴム層を冷間架橋することによって達成される接着などの当業者に公知の従来のエラストマ/エラストマ接合技術を用いて、空気入りタイヤの収容領域に固定される。その後、タイヤの無線周波数トランスポンダは使える状態となる。
【符号の説明】
【0121】
1 無線周波数トランスポンダ
10 放射アンテナ
20 電子部分
100 放射アンテナの第1領域
101a 放射アンテナの第1領域の部分領域
100b 放射アンテナの第1領域の部分領域
102 放射アンテナの第2領域