(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】外科用糸の切断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20240215BHJP
A61B 17/58 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A61B17/04
A61B17/58
(21)【出願番号】P 2021503885
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 IB2019055872
(87)【国際公開番号】W WO2020021371
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】102018000007518
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】トロンベッタ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルドーニ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-500109(JP,A)
【文献】特表2006-513780(JP,A)
【文献】特表2012-524635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用糸のための切断装置(100)であって、
長手方向軸(120a)に沿って延びる管状形状を有するガイド本体(120)であって、外科用糸を受け入れるように適合されたハウジング部分(121)を規定する内部軸方向空洞(129)を有し、当該ガイド本体(120)は、前記外科用糸の挿入を可能にするために少なくとも部分的に開いている第1の端部(120’)であって、当該ガイド本体(120)の前記長手方向展開軸(120a)に対して横断するように方向付けられた当接表面(122’)によって規定された第1の切断領域(122)を有する第1の端部(120’)を備える、ガイド本体(120)と、
長手方向軸(230a)に沿って延在し且つ前記ハウジング部分(121)に挿入されるように適合された中央部分(231)を含む切断本体(230)であって、前記中央部分(231)は、前記ハウジング部分(121)に結合されたときに、前記外科用糸を収容するための、前記長手方向軸(120a)に平行に延びる通路チャネル(300)を規定するような、前記長手方向軸(230a)を横断する断面を有し、当該切断本体(230)は、当該切断本体(230)の前記長手方向展開軸(230a)に対して横断するように方向付けられた当接表面(232’)によって規定された第2の切断領域(232)を備えた第1の端部(230’)を備え、当該切断本体(230)が少なくとも部分的に前記ハウジング領域(121)に受け入れられたときに、前記第2の切断領域(232)が前記第1の切断領域(122)に隣接し、前記第2の切断領域(232)における前記長手方向軸(230a)を横断する断面は扇形であり、当該断面において前記扇形を形成する2つの半径部分がなす角度であって、前記外科用糸のハウジング区域を規定するための開口部分の角度は、150°から170°の間に含まれる、切断本体(230)と、
第1の位置と第2の位置との間で、前記切断本体(230)を前記ガイド本体(120)に対して前記長手方向展開軸(230a)の周りで回転させることができるアクチュエータ要素(233)であって、前記第1の位置では、前記第1の切断領域(122)の前記当接表面(122’)および前記第2の切断領域(232)の前記当接表面(232’)がそれぞれ、前記ガイド本体(120)の前記第1の端部(120’)および前記切断本体(230)の前記第1の端部(230’)にそれぞれ、前記内部軸方向空洞(129)と連通する通路(235)を特定するように、互いに対して配置されており、前記第2の位置では、前記通路(235)は、前記第1の切断領域(122)の前記当接表面(122’)および前記第2の切断領域(232)の前記当接表面(232’)の間の前記外科用糸を切断するための、前記第1の切断領域(122)の前記当接表面(122’)および前記第2の切断領域(232)の前記当接表面(232’)の相対回転運動
であって、前記第1の切断領域(122)の前記当接表面(122’)および前記第2の切断領域(232)の前記当接表面(232’)を相互作用させることによって前記外科用糸を切断する相対回転運動によって、少なくとも部分的に閉塞している、アクチュエータ要素(233)と、を備え、
前記ガイド本体(120)は、前記ガイド本体(120)と前記切断本体(230)との間に軸方向の安定した接続を提供するように適合された結合領域(125)を有し、
前記切断本体(230)の第2の端部(230’’)には半径方向の突起(236)が設けられており、
前記切断本体(230)と前記ガイド本体(120)との間の相対的な回転、正確且つ安定した相対的な軸方向の位置決め、および相互係合を可能にするように、前記結合領域(125)が、前記ガイド本体(120)の第2の端部(120’’)に形成され且つ前記半径方向の突起(236)を受け入れるように適合された環状溝(126)を含み、前記ガイド本体(120)は、前記突起(236)を前記溝(126)に挿入するためのノッチ(128)を前記第2の端部に有する、切断装置(100)。
【請求項2】
前記ガイド本体(120)は、前記第1の端部(120’)と軸方向に反対であり且つ前記外科用糸の出口のための開口部(1)を有する前記第2の端部(120’’)を有する、請求項1に記載の外科用糸のための切断装置(100)。
【請求項3】
前記切断本体(230)は、前記第1の端部(230’)と軸方向に反対であり且つ前記外科用糸の出口のための開口部(237)を有する前記第2の端部(230’’)を有する、請求項1に記載の外科用糸のための切断装置(100)。
【請求項4】
前記ガイド本体(120)が、前記ガイド本体(120)を把持することを可能にする把持領域(123)を有する、請求項1に記載の外科用糸のための切断装置(100)。
【請求項5】
前記アクチュエータ要素(233)が前記切断本体(230)に接続されている、請求項1に記載の外科用糸のための切断装置(100)。
【請求項6】
前記ガイド本体(120)の前記第1の切断領域(122)が、前記ガイド本体(120)の前記長手方向軸(120a)を横断する基部を持つ実質的に半円筒形の構造を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の切断装置(100)。
【請求項7】
前記第1の切断領域(122)の前記当接表面(122’)は、前記内部軸方向空洞(129)内に部分的に延在し且つ前記内部軸方向空洞(129)の近位開口部を部分的に塞ぐ肩の形状であり、前記内部軸方向空洞(129)の前記近位開口部における前記当接表面(122’)に塞がれていない部分は、前記ガイド本体(120)の前記長手方向展開軸(120a)に沿った方向から見た場合に扇形であり、その中心角は、150°から170°の間の角度である、請求項1から5のいずれか1項に記載の切断装置(100)。
【請求項8】
前記切断本体(230)が実質的に半円形の断面を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の切断装置(100)。
【請求項9】
前記アクチュエータ要素(233)は、前記ガイド本体(120)の前記把持領域(123)に設けられたロック要素(127)をその中に受け入れるように適合された空洞(234)を有し、その結果、前記ロック要素(127)が前記空洞(234)に係合する場合に、前記アクチュエータ要素(233)および前記把持領域(123)が位置合わせされ、前記ガイド本体(120)および前記切断本体(230)を前記第1の位置に強制する、請求項4に記載の外科用糸のための切断装置(100)。
【請求項10】
前記ロック要素(127)が弾性当接部を有する、請求項9に記載の外科用糸のための切断装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術中に操作ワイヤを切断するためのツールに関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術中に操作ワイヤを使用することが知られている。外科用ワイヤが使用される必要性に応じて、それらは、例えば、異なる剛性度合い、異なる材料、異なる直径など、異なる構造的特徴を有することになる。
【0003】
外科用糸の第1の例は、縫合糸、すなわち、患者の身体内または身体上の傷を閉じるために使用される糸である。外科用糸の第2の例は、セルクラージュワイヤ(cerclage wire)であり、これを介して、互いに合わない骨片を結合することが可能である。
【0004】
外科手術中に外科医が使用する種々のタイプの外科用糸を切断するための様々な装置が知られている。各装置は、使用される糸の特定の特徴によって課せられる切断要件を満たすように最適化されている。
【0005】
外科手術中に患者の身体構造の2つ以上の部分を結合するために外科用糸を使用する必要がある場合、例えば、患者の身体内の傷を閉じるために、または骨片を結合するために、そのような必要がある場合、進行中の手術に適したタイプの外科用糸が使用される。患者の身体内の傷を閉じる典型的なケースでは、外科用糸は、一方の側および次に他方の側に対して交互に、閉じる必要のある傷を取り囲む患者の軟組織に通される。次に、縫合糸が伸ばされて傷の端を互いにより近づけ、全てが特別な結び目を介して固定される。結び目を結んだ後、ある長さのワイヤが結び目の外側に残ることが知られている。したがって、結び目の外側に突出している糸の端を切断して、傷の完全な治癒を損なう、縫合糸への意図しない悪影響を回避する必要がある。
【0006】
他方、解剖学的構造が正しく必要とするように骨構造が密接していないように見えるケースでは、非密接部分は、先行技術においてセルクラージュワイヤとして知られている外科用ワイヤを使用して主構造に結合され得る。
【0007】
セルクラージュワイヤの使用は、例えば、大腿骨の骨折が大腿骨構造に関して大腿骨の一部の密接の欠如につながる場合に必要である。この場合、外科医は、骨の再生および2つの骨片の固定を促進し、したがって、骨折を治癒するために、大腿骨の2つの部分を金属ワイヤであるセルクラージュワイヤで結合し、それらを互いに締める。骨の2つの部分が必要に応じて配置されると、外科医は、例えば結び目で、セルクラージュワイヤの両端を結合する。縫合糸に関して上で説明したように、そして一般的な経験から知られているように、このようにして結ばれた結び目は、除去されなければならない、結び目から突出しているワイヤ端を有する。
【0008】
従来技術は、この目的のために外科医が例えばワイヤカッタなどの切断ツールを使用することを含む。これらのツールは、患者の身体に、結び目にできるだけ近く挿入され、結び目から突出しているワイヤ端が切断される。
【0009】
一方、縫合糸を切るためには、結び目から突出したままの糸の量を最小限に抑えるために、患者の組織にできるだけ近づくように形作られた外科用はさみが使用される。
【0010】
低侵襲手術の規定によれば、回復を早めるために、これらの外科手術中に患者に可能な限り最小の切開を行う傾向がある。したがって、外科医が患者の身体内を安全に手術できることを保証しながら、同時に、外科用ツールのサイズを最小限に抑える必要があることは明らかである。
【0011】
したがって、当業者には、上記の既知のツールの典型的な形状には、本発明が解決することを意図している欠点があることがすぐに理解できる。実際に、一般的なツールの構造は、支点で互いにヒンジで固定され且つハンドグリップによって制御される場合に互いに対して近づいたり遠ざかったりすることができる2つのブレードに基づいている。これらの既知の手段を使用して糸を切るために、互いに接触してはならないブレード間に糸を集める必要がある。言い換えれば、切断する前に糸を収容するスペースが2つのブレード間になければならない。これにより、切断ツールが使用構成にない場合、切断ツールの全体的なサイズが大きくなる。さらに、一般的なツールは、外科医がスムーズに切断できるように十分な大きさの切断面を提供するために、2つのブレードがかなりの特徴的なサイズを有することを必要とする。これは、血液および他の体液が外科医の手術の視界を制限し得る手術部位の状態のような、視界不良の状態において特に当てはまる。既知の切断装置の設置ステップ中に外科医を組織に損傷を与えるリスクにさらすだけでなく、制限された視界は、切断ステップおよび切断ステップの直後のステップ中、並びに患者の体からツールを取り外すステップ中に、外科医が組織に損傷を与えるリスクを高めることを促す。
【0012】
先行技術の別の欠点は、患者の組織の近くに鋭利な物体が存在することであり、これは、外科医が周囲の組織に損傷を与えないように細心の注意を払って手術することを必要とする。これにより、外科手術に必要な時間とそれに関連する外科医のストレスが増加する。
【0013】
別の欠点は、手術部位内のブレードの位置の選択である。実際、この手術は、患者の体内の結び目の位置を特定することを含み、ここで、体液がしばしば視界を低下させる。この視界の低下により、ブレードを正しく配置するために、触覚を使用して続行することがしばしば必要である。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、上記の従来技術の欠点を克服する、外科用糸のための切断装置を提示することである。
【0015】
本発明の目的の1つは、実際、低侵襲であり且つ周囲の軟組織に損傷を与えることなく完全に安全な切断を患者に保証する、外科用糸のための切断装置を提供することである。
【0016】
さらに、本発明の目的は、外科医が使用しやすく且つ手術部位が外科医に良好な視界を許容しないという事実にもかかわらず、迅速且つ安全な切断を可能にする、外科用糸の切断装置を提供することである。
【0017】
これらおよび他の目的は、添付の特許請求の範囲の請求項の1つまたは複数に記載されるように、外科用糸のための切断装置によって、および前記装置を用いた外科用糸のための切断方法によって広く達成される。
【0018】
追加の特徴および利点は、本発明による、外科用糸のための切断装置の好ましいが排他的ではない実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0019】
追加の有利な特徴は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
次に、本発明は、単に例として提供される添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【
図1】断面構成における本発明による切断装置を示す。
【
図2】本発明の主題である切断装置の第1の部分の正面斜視図である。
【
図3】
図2に示される、本発明の主題である切断装置の第1の部分の背面斜視図である。
【
図4】
図2および3の切断装置の第1の部分の側面断面図である。
【
図5】本発明の主題である切断装置の第2の部分の正面斜視図である。
【
図6】
図5に示される、本発明の主題である切断装置の第2の部分の背面斜視図である。
【
図7】
図5および6の切断装置の第2の部分の側面斜視図である。
【
図8】本発明の主題である切断装置の組み立てステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記の図において、番号100は、本発明による外科用糸のための切断装置を全体として示す。
【0022】
示される例では、装置100は、縫合糸、セルクラージュワイヤなどの任意の種類の外科用糸が使用される外科手術中の使用に適している。
【0023】
本明細書では、「近位」および「遠位」という用語は、患者に対する要素の位置に関連して使用される。
【0024】
外科用糸のための切断装置は、ガイド本体120を備え、ガイド本体120は、長手方向軸120aに沿って延在する管状のハウジング部分121を有し、管状のハウジング部分121は、内部に外科用糸を受け入れるように適合された軸方向空洞129を備える。
【0025】
ガイド本体120、特にハウジング部分121は、外科用糸の挿入を可能にするために少なくとも部分的に開いている第1の端部120’と、第1の端部120’と軸方向に反対側の、空いている第2の端部120’’とを備える。
【0026】
より具体的には、ハウジング部分121は貫通軸方向空洞129を有する円筒形を有し、貫通軸方向空洞129は、ハウジング部分121の長手方向の全展開に沿って延在し且つ端部120’および120’’に、軸方向空洞129を外部環境と流体連通している状態に置くことができる開口部124および130をそれぞれ有する。
【0027】
既に述べたように、本明細書では、「近位」および「遠位」という用語は、患者に対する要素の位置に関連して使用される。
【0028】
これに基づいて、開口部124を近位開口部として規定し、開口部130を遠位開口部として規定することが可能である。
【0029】
したがって、主の展開方向Yを特定することが可能であり、主の展開方向Yに沿ってハウジング部分121が展開する。
【0030】
ガイド本体120は、ハウジング部分121の長手方向展開軸120aに平行に方向付けられた当接表面122’によって規定される第1の切断領域122を有する。
【0031】
具体的には、ガイド本体120の第1の切断領域122は、その基部122aがハウジング部分121の長手方向軸120aを横断するように、実質的に半円筒形の形状を有する。当接表面122’は、軸方向空洞129内に部分的に延在し且つ近位開口部124を部分的に塞ぐ肩の形状をとる。
【0032】
この構成は、外科用糸の結び目を収容し且つ手術部位の軟組織から切断領域を離すのに適した領域を生成することを可能にし、軟組織が切断領域に干渉するのを防ぐ。
【0033】
好ましい実施形態では、第1の切断領域は、遠位開口部124の約半分を塞ぐのに十分な大きさである。言い換えれば、当接表面122’は平坦であり、あるいは、150°と170°との間の角度を形成するように互いに向かって傾斜した2つの面を有する。この第1の切断領域は、本物のブレードではなく、軸方向空洞129内の当接表面122’の端に鋭いエッジを有する。本発明の主題である切断装置100はまた、切断本体230を含み、切断本体230は、長手方向軸230aに沿った主の展開方向Xに沿って延びる細長い中央部分231を含む。切断本体230の中央部分231は、ガイド本体120のハウジング部分121への挿入に適している。
【0034】
中央部分231は、ハウジング部分121の軸方向空洞129の内側に結合および挿入されると、外科用糸のハウジングのための、長手方向軸120aに平行に延びる通路チャネル300を規定するように、長手方向軸230aに断面を有する。
【0035】
切断本体230は第1の端部230’を備え、第1の端部230’は、切断本体230の長手方向展開軸230aに平行に方向付けられた当接表面232’によって規定される第2の切断領域232を備える。
【0036】
切断本体230はまた、第1の端部230’と軸方向に反対側の第2の端部230’’を有し、第2の端部230’’は外科用糸の出口のための開口部237を有する。
【0037】
中央部分231は、様々な幾何学的配置を有する断面を有し得る。すなわち、平面、十字形、半円形、扇形、または完全に円形の断面を有さない任意の他の幾何学的形状を有する断面である。なぜなら、それは、上記のように、長手方向展開軸230aに平行に延びる当接表面232’を規定しなければならず、当接表面232’は、以下に説明するように、外科用糸を切断できるようにガイド本体120の当接表面122’と相互作用できる。
【0038】
第1の端部230’の近くに配置された当接表面232’の外側エッジは、鋭利であってもよいし、または、鋭利ではないが、当接表面122’の切断エッジと干渉することにより、2つの表面の間にある外科用糸の切断を生じさせる切断エッジを有してもよい。
【0039】
単に例としてここに示される好ましい実施形態では、切断本体230は好ましくは半円形である断面を有し、当該断面は、非平面の当接表面232’を有し、当接表面232’は、150°から180°(排他的)の間、好ましくは150°から170°の間の角度を形成するように互いに向かって傾斜した2つの面を有する。換言すれば、中央部分231は、扇形であってその角度が90度を超える扇形の形をとる断面を有する細長い形状を有する。中央部分231は、くぼみまたはVのような形状の表面240を有する。このようにして、外科用糸は、通路チャネル300内に挿入されると、切断装置100の内部に安定して案内され且つ切断動作中に静止したままとなるように、この表面のくぼみ240に受け入れられる。切断本体230がハウジング部分121に少なくとも部分的に受け入れられる場合、第2の切断領域232は、第1の切断領域122に隣接する。
【0040】
切断装置100はまた、アクチュエータ要素233を備え、アクチュエータ要素233は、第1の位置と第2の位置との間で、切断本体230をガイド本体120に対して長手方向展開軸230aの周りで回転させることができ、第1の位置では、第1の切断領域122および第2の切断領域232の当接表面122’、232’がそれぞれ、ガイド本体120および切断本体230の第1の端部120’、230’にそれぞれ、内部軸方向空洞129と連通する通路235(
図10)を特定するように互いに対して配置され、第2の位置では、通路235は、当接表面122’、232’の間に挿入された外科用糸を切断するように接線方向に交差/横断する当接表面122’、232’の逆回転運動によって、少なくとも部分的に閉塞している(
図9)。
【0041】
有利には、アクチュエータ要素233は、好ましくは切断部分230の第2の端部230’’で、切断本体230に接続される。
【0042】
図示の実施形態では、アクチュエータ要素233は、切断部分230の遠位端230’’から半径方向の展開において細長い。
【0043】
外科用ワイヤのための切断装置100、特にガイド本体120は、動作中に装置が保持されることを可能にするための把持領域123を有する。
【0044】
把持領域123は、ハウジング部分121の中心軸120aに対して角度が付けられ且つハウジング部分121に接続されており、切断装置100の容易な把持を可能にする。軸120aに対する把持領域123の好ましい角度は、30度から120度の間、より正確には、約90度である。前記把持領域123の異なる角度は、本発明の範囲から除外されると見なされるべきではない。
【0045】
前述のように、把持領域123は、ガイド本体120に接続されている。前記接続は、好ましくは、ハウジング領域121の第2の端部120’’に設けられた開口部130の近くに形成されている。ガイド本体120の軸方向の展開に沿ったような、他の位置も可能であり得る。
【0046】
切断装置100を使用する場合、把持領域123は、患者から遠位である切断装置100の一部であり、開口部124は、第1の端部120’で、患者の体の近位位置にある。
【0047】
ガイド本体120は、ガイド本体120を切断本体230に結合するのに適した結合領域125を有する。
【0048】
この結合領域125は、有利には、患者に対して遠位位置に、すなわち、ガイド本体120および切断本体230のそれぞれ第2の端部120’’および230’’に、配置されている。
【0049】
結合領域125は、好ましくはハウジング部分121の直径よりも大きい円形断面を有するブッシング131を備える。このブッシング131は、好ましくは、把持領域123と切断部分230の中央部分231との間の接続領域に配置される。
【0050】
結合領域125はまた、切断領域230の第2の端部230’’に設けられた、前述のブッシング131から突出する半径方向の突起236を有する。突起236は、中央部分231の長手方向展開軸230aに対して半径方向である。
【0051】
結合領域125はまた、ガイド本体120の第2の端部120’’に設けられた半径方向の環状溝の形態の溝126を備える。この溝126は、相互係合、正確で安定した相対的な軸方向の位置決め、および切断本体230とガイド本体120との間の相対的な回転を可能にするように、前述の突起236を受け入れるように適合されている。
【0052】
結合領域125は、ガイド本体120の遠位端を取り囲み、近位開口部130を内部に収容する。
【0053】
さらに、結合領域125は、ガイド本体120上に、溝126を遮断するノッチ128を有し、外側からその溝126への突起236へのアクセスを可能にする。
【0054】
有利には、ノッチ128は、把持領域123が始まる位置と正反対の位置に形成されている。
【0055】
ガイド本体120と切断本体230との間の結合は、第2の切断領域232を第1の切断領域122に隣接させるように、中央部分231をハウジング部分121に挿入し、突起236をノッチ128に軸方向に位置合わせし、突起236をノッチ128に挿入することによって、行われる。
【0056】
このようにしても、突起236は、溝126と半径方向に位置合わせされる。ガイド本体120に対して切断本体230を回転させることにより、突起236は、溝126に挿入されてスライドされ、したがって、切断本体230とガイド本体120との間の相対的な軸方向の動きを遮断する。
【0057】
ガイド本体120の把持領域123に沿って、そして、好ましくはその遠位表面に配置されたロック要素127が存在する。代わりに、アクチュエータ要素233は空洞234を有し、空洞234は、その内部に前述のロック要素127を受け入れるように適合されている。
【0058】
このロック要素127は、有利には、収容部141内に収容され且つそこから突出する球体140を有する。収容部141の下壁と球体140との間に、弾性当接部として、例えばばねとして機能する弾性要素(図示せず)が存在する。
【0059】
中央部分231のハウジング部分121への挿入、および長手方向軸230a周りのガイド本体120に対する切断本体230の相対回転に続いて、アクチュエータ要素233およびハンドグリップ123は、初期係合位置から動作位置まで互いに対して相対的に回転し、初期係合位置(
図8)では、それらは、長手方向軸230aに対して正反対の方向に位置合わせされおよび方向付けられており、動作位置(
図10)では、それらは、長手方向展開軸230aに対して同じ方向に位置合わせされ、重ね合わされ、方向付けられている。
【0060】
この最後の動作位置において、ロック要素127は、空洞234に係合し、ガイド部分120および切断部分230を第1の位置に強制する。装置が組み立てられたら、外科用糸を切断することができる。
【0061】
組み立て作業の終わりに、外科用糸の余分な部分が挿入され、これは、第1の端部120’に配置された開口部124を通してガイド本体120の軸方向空洞129の内部で除去されなければならない。切断装置は、
図10に示される第1の動作位置にある、すなわち、アクチュエータ要素233およびハンドグリップ123が、長手方向展開軸230aに対して同じ方向に位置合わせされ、重ね合わされ、方向付けられている。
【0062】
外科用糸は、通路チャネル300を完全に通過し、ガイド本体120および切断本体230のそれぞれの第2の端部120’’および230’’の開口部130から出てくる。
【0063】
切断装置100は、所望の切断長さを選択するように、外科用糸に沿って動かされる。
【0064】
次に、アクチュエータ要素233は、ガイド本体120に対して切断本体230を第1の動作位置(
図10)から第2の動作位置(
図8)に移動させるように操作される。
【0065】
切断本体230とガイド本体120との間の相対的な動きは、ガイド本体120をハンドグリップ123によって適切な位置に保持し、アクチュエータ要素233をハンドグリップに対して長手方向軸230aの周りで回転させることによって、行われる。
【0066】
この回転は、切断本体230の第2の切断領域232の当接表面232’に伝達される。この回転は、第1の切断領域122の当接表面122’と第2の切断領域232の当接表面232’との間の接線方向の交差を決定し、したがって、はさみのブレードを用いるように糸を切断する。
【0067】
切断されると、外科用糸は軸方向空洞129内に留まり、装置を患者の体から取り外すことができる。
【0068】
この装置は、患者にとって完全に安全な糸の切断を可能にし、切断要素が患者の軟組織または他の部分に露出して直接接触するのを回避するので、かなりの利点を得ることを可能にする。
【0069】
外科用糸は装置内に留まり、取り外し動作を容易にし、外科医が手術部位でツール全体をより簡単に取り扱うことを可能にする。
【0070】
切断装置は非常に使いやすく且つ迅速な切断を可能にする。
【0071】
先行技術で知られていることとは反対に、本発明は、患者の組織と接触する可動ブレードを有さない。実際、ガイド本体の特定の形状および2つの切断領域の配置のおかげで、患者の組織とブレードとの間の接触の可能性なしに、結び目から突出している糸を切断することが可能である。
【0072】
さらに、ガイド本体21および中央部分の特定の形状、並びにそれらの特定の相互作用は、外科医が低侵襲手術の指示に従って必要な切開のサイズを大幅に制限することを可能にし、したがって、患者が迅速に回復すること、および彼/彼女が受ける痛みと不快感を制限することを可能にする。
【0073】
さらに、ガイド本体の外側部分は、切断動作のためのガイドとして機能するだけでなく、装置の可動部分に対して患者の組織を保護するという利点も持つ。
【0074】
外科医は、結び目の近くのツールのプリ切断位置決めステップ中の貫通空洞の存在を特に高く評価している。実際、ブレードの視界を制限する体液が存在するという理由で、外科医が触覚の助けを借りて手術部位内のブレードの位置を選択する必要がなくなる。
【0075】
代わりに、本発明では、患者の体から突出している外科用糸を貫通空洞内で所望の位置にスライドさせることによって、切断すべき外科用糸に切断装置を適合するだけで十分である。最後に、鋭利な部分が露出せず且つ丸い輪郭を持つ2つの本体を単に回転させることによって切断を実行し、患者の体から切断装置を取り出すだけで十分である。
【0076】
上記から、切断された糸は切断装置内に閉じ込められたままであり、外科医が、従来技術によって要求されるように、切断された糸の端部をしっかりと握る必要性を回避することは明らかである。実際、切断された外科用糸のこれらの端は、患者の体内から除去されることが不可欠である。現在、この作業は、結び目から突き出ている端をしっかりと握りながら、切断が完了すると患者の体からそれらを取り除く外科医またはその助手のうちの1人の責任である。外科用糸は、体液で覆われている可能性があり、体液は外科用糸を滑りやすく且つ一度切断されるとその除去を困難にするので、この作業がいかに煩わしいのかを簡単に理解できる。