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特許7437385保管が改善されたポックスウイルス組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】保管が改善されたポックスウイルス組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/275 20060101AFI20240215BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240215BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240215BHJP
【FI】
A61K39/275
A61K47/26
A61K47/42
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021511549
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019073825
(87)【国際公開番号】W WO2020049151
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】18192857.3
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509296443
【氏名又は名称】バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ケーア・カトリーネ
(72)【発明者】
【氏名】マンメリ・ケルスティン
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518557(JP,A)
【文献】国際公開第2018/060368(WO,A1)
【文献】特表2017-537910(JP,A)
【文献】特開昭63-307827(JP,A)
【文献】特表2017-530114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 47/00
A61K 9/00
A61K 35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポックスウイルス、少なくとも1つの二糖、ソルビトール、ゼラチン、アルブミン、医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価塩を含む水性組成物であって、pH7.0~pH8.5の範囲のpHを有し、前記二糖がトレハロース、スクロース、またはそれらの組み合わせであり、前記ポックスウイルスがワクシニアウイルスである、前記組成物。
【請求項2】
前記緩衝液がTris緩衝液またはリン酸緩衝液である、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
1mMと50mMとの間の範囲の濃度の前記Tris緩衝液を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
2%(w/v)と12%(w/v)との間の範囲の濃度の前記二糖を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
0.2%(w/v)と5%(w/v)との間の範囲の濃度のソルビトールを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ゼラチンゼラチン加水分解物である、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ゼラチンが、0.25%(w/v)と5%(w/v)との間の範囲の濃度のゼラチン加水分解物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
0.1%(w/v)と5%(w/v)との間の範囲の濃度のアルブミンを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物であって、前記組成物が、4%(w/v)と12%(w/v)との間の範囲の濃度の二糖、1%(w/v)と3%(w/v)との間の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)と1.2%(w/v)の間の範囲の濃度のアルブミン、0.5%(w/v)と3%(w/v)との間の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液含み、前記組成物は7.3と8.1との間の範囲のpHを有する、前記組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物であって、前記組成物が、4%(w/v)と12%(w/v)との間の範囲の濃度の二糖、1%(w/v)と3%(w/v)との間の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)と1.2%(w/v)の間の範囲の濃度のアルブミン、0.5%(w/v)と3%(w/v)との間の濃度のゼラチン加水分解物、及び5と25mMとの間の範囲の濃度のTris緩衝液を含み、前記組成物は7.3と8.1との間の範囲のpHを有する、前記組成物。
【請求項11】
前記組成物が塩化ナトリウムまたは塩化カリウム含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
水性の生ポックスウイルス組成物を作製する方法であって、以下のステップ:
a.医薬的に許容される緩衝液中に少なくとも1つの生ポックスウイルスを含む調製物を提供するステップと、
b.ステップa)の前記ポックスウイルス調製物を、少なくとも1つの二糖、ソルビトール、ゼラチン、アルブミン、及び医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価の塩を含む溶液と組み合わせるステップと、を含み、
ここで、a)及びb)の前記緩衝液が、pH7.0とpH8.5との間の範囲のpHを有し、前記二糖がトレハロース、スクロース、またはそれらの組み合わせであり、前記ポックスウイルスがワクシニアウイルスである、前記方法。
【請求項13】
前記緩衝液がTris緩衝液またはリン酸緩衝液である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、ここで、a)及びb)を組み合わせた後、前記組み合わせた組成物が、2%(w/v)と12%(w/v)との間の範囲の濃度の二糖、0.5%(w/v)と3%(w/v)との間の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)と3%(w/v)との間の濃度のゼラチン加水分解物、0.2%(w/v)と1.2%(w/v)との間の範囲の濃度のアルブミン、及び医薬的に許容される緩衝液含み、ここで前記組成物が7.3と8.1との間の範囲のpHを有する、前記方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法であって、ここで、a)及びb)を組み合わせた後、前記組み合わせた組成物が、2%(w/v)と12%(w/v)との間の範囲の濃度の二糖、0.5%(w/v)と3%(w/v)との間の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)と3%(w/v)との間の濃度のゼラチン加水分解物、0.2%(w/v)と1.2%(w/v)との間の範囲の濃度のアルブミン、及び5mMと25mMとの間の範囲の濃度のTris緩衝液を含み、ここで前記組成物が7.3と8.1との間の範囲のpHを有する、前記方法。
【請求項16】
前記ワクシニアウイルスが改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスである、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ワクシニアウイルスが改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスである、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ウイルスが組換えウイルスである、請求項1~11もしくは16のいずれか1項に記載の組成物
【請求項19】
前記組換えウイルスが呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原をコードする核酸を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ウイルスが組換えウイルスである、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記組換えウイルスが呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原をコードする核酸を含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、冷蔵庫温度及び/または-20℃でより長期間、具体的には少なくとも12ヶ月間保管するためのポックスウイルス組成物の安定化に関する。本発明はさらに、高温多湿で保管するための安定化ポックスウイルス組成物に関する。本発明はまた、長期保管のためのそのような組成物の処方の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ワクシニアウイルス、特に改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスを含むポックスウイルスは、HIV、インフルエンザ、マラリア、及び呼吸器合胞体ウイルス(RSV)などの感染症に対するワクチンのため、ならびにがんに対する免疫療法及び腫瘍溶解性療法のためのベクターとして開発された(Choi and Chang Clin Exp Vaccine Res 2013,2:97-105;Rezaee et al.Curr Opin Virol 2017,24:70-78;Al Yaghchi et al.Immunotherapy 2015,7:1249-1258;Verheust et al.Vaccine 2012,30:2623-2632;Mastrangelo et al.J Clin Invest 2000,105:1031-1034)。いくつかの固有の特徴により、ポックスウイルスは、ワクチン開発または遺伝子送達の理想的な候補となっている:(i)組換えDNAの大きなパッケージング容積;(ii)強力なポックスウイルスプロモーターによって調節される正確な組換えDNA発現;(iii)細胞質複製に起因する、宿主における持続性またはゲノム組み込みの喪失;(iv)ワクチンとしての高い免疫原性;ならびに(v)ベクター及びワクチンの製造の容易さ(Verheust et al.Vaccine 2012,30:2623-2632)。
【0003】
しかし、弱毒化生ワクチンは、ウイルスの高分子構造が複雑であるため、製剤化の課題がもたらされる。これは、ポックスウイルスなどの大きなエンベロープウイルスではさらに困難である。例えば、MVAなどのワクシニアウイルスは、リポタンパク質コア膜に包まれたウイルスDNA及びさまざまな酵素で構成されるコア領域からなる、サイズが約192kbpsという非常に大きな(約200~300nm)のエンベロープ二本鎖DNAウイルスである。外層は二重脂質膜エンベロープからなる(Al Yaghchi et al.Immunotherapy 2015,7:1249-1258)。ビリオンには、形態学的に異なる2つの主要な感染型、細胞内成熟ウイルス(IMV)及び細胞外エンベロープウイルス(EEV)がある。IMVとは、細胞が溶解するまで、細胞質に残る感染性粒子の大部分に相当する。EEVは細胞から放出され、そしてIMVには存在しない少なくとも10個の関連タンパク質を含む余分な脂質エンベロープを保有している。脂質膜は非常に壊れやすく、ウイルスエンベロープが失われるとウイルスが不活化されるので、重要な考慮事項である。安定性は、精製されたウイルスの調製及びその保管に使用される調製物及び賦形剤に応じてさらに大きく変化し得る。
【0004】
1つの困難は、凍結及び解凍中のウイルスの不安定化及び/または破壊を回避するために、水の凝固点より下に保管することである。安定性を確保するために、過去に精製された感染性ウイルスのストックは、一般的に摂氏マイナス60度未満で保管されていた。このような低温で保管する場合の問題の1つは、輸送中または投与場所で、解凍及び再凍結する可能性である。
【0005】
水性組成物中の生ウイルスの安定性の限界は周知であり、弱毒化ウイルスのほとんどは、例えば完全複製能力のワクシニアウイルスACAM2000などの凍結乾燥製品である。ACAM2000は、6~8mMのHEPES(pH6.5~7.5)、2%ヒト血清アルブミン、0.5~0.7%塩化ナトリウム、5%マンニトール、及び微量のネオマイシン及びポリミキシンBを含む凍結乾燥調製物として承認された。凍結乾燥ワクシニアウイルスは、注射用水中の50%(v/v)グリセロール、0.25%(v/v)フェノールで再構成した(Berhanu et al.Vaccine 2010,29:289-303)。
【0006】
Hekkerらは、2%ヘマセルまたは2%ポリビニルピロリドンとのペプトン-ソルビトールの組み合わせを含む凍結乾燥天然痘ワクチン組成物を記載した(Hekker et al.Journal of Biological Standardization 1973,1:21-32、以下に要約Burke et al.Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 1999,16:1-83)。MVAまたはALVACを含むさらなる凍結乾燥組成物は、WO03/053463、WO05/066333、WO07/056847、WO2011/121306、WO2014/053571、及びZhang et al.Chemical Research in Chinese Universities2007,23:329-332に記載されている。WO2010/135495は、マンニトールを含む噴霧乾燥粉末組成物中のウイルスを安定化するための方法を記載している。
【0007】
Just及びFinkeは、アルブミン、ソルビトール、デキストラン、システイン、ヘマセルなどの安定剤を含む凍結乾燥MVA組成物を分析し、+4℃で保管した場合の凍結乾燥組成物に優れた5%(w/v)ソルビトール及び1%(w/v)ヒトアルブミンについて説明した。(Just and Finke Zentralbl Bakteriol Orig A1979,245:276-282)。彼らはまた、1%(w/v)ヒトアルブミンを含む非凍結乾燥MVA懸濁液の安定性を分析したが、-70℃で8か月間以上保管すると、これらの製剤でウイルス力価の低下が観察された。
【0008】
Prabhuらは、ラクダ痘の3つの凍結乾燥ワクチン製剤について説明しており(Prabhu et al.Biologicals2014,42:169-175)、これは、リン酸カリウム緩衝液pH6.2に3.5%の加水分解ゼラチン及び3.5%のソルビトールを含むもので、再構成後、4℃でもウイルス力価の低下を示した。
【0009】
凍結乾燥ワクチンは通常、凍結乾燥されていない代替ワクチンよりも熱安定性が高いが、凍結乾燥には、コスト、使用前の再構成、再構成後の不安定性、ならびにウイルス粒子の凍結及び乾燥ストレスなど、いくつかの欠点がある(Capelle et al.Eur J Pharm Biopharm 2018,129:215-221)。さらに、凍結乾燥ワクチンは、再構成の必要性に起因して液体ワクチンと比較して、投与及び投薬エラーを起こしやすく、ワクチンの浪費または無効なワクチン用量につながる可能性がある(Capelle et al.Eur J Pharm Biopharm 2018,129:215-221)。
【0010】
経口ワクチン適用のためにワクシニアウイルスを使用する試みもあった(米国特許第6,969,345号)。記載されている組成物は、ヒドロキシエチルスターチ、魚油、グリセロール、及びゼラチンなどの他の成分を含むマンニトールを含む。
【0011】
さらに、弱毒化生ウイルスワクチンの液体安定化は、分解速度論及び動的プロセスがより有利であるため、最も困難である(Tlaxca et al.Adv Drug Deliv Rev 2015,93:56-78)。
【0012】
WO2010/056991は、MVAウイルス及びマンニトールを含む液体または液体凍結組成物を記載しており、ここではマンニトールが、組成物の唯一の安定剤である。
【0013】
例えば+5℃で12~24ヶ月間保存された場合のキレート剤及びエタノールを使用するポックスウイルスの安定性に対する有益な効果は、WO2016/087457に開示されている。
【0014】
WO2011/121301は、37℃で1週間の液体設定におけるMVAの安定化のためのN,N-ジメチルグリシンまたはN,N,N-トリメチルグリシンの使用を記載している。
【0015】
しかし、ポックスウイルスベースの材料の安定化を可能にし、大規模な産業用途を可能にし、製品の生物学的活性に影響を与えずに保管用の組成物を提供し、ウイルスの所望の特性を維持して、さらに具体的にはウイルス力価の損失を回避または低減することを可能にする新しい製剤の必要性が残っている。具体的には、長期間安定性を提供する、マイナス60℃未満で保管する必要のない液体医薬品ポックスウイルス調製物が必要である。さらに、冷蔵庫の温度及び/または約-20℃の温度での保管に適した高力価の少量の組成物を提供することが望ましい。
【0016】
具体的には、約-20℃で約1年以上、続いて+2~+8℃での保管(好ましくは、少なくとも6または9か月間)に適切で、かつ皮下、筋肉内及び/または鼻腔内投与と適合している、ポックスウイルス液体組成物の開発の必要性が残っている。+2~+8℃で約1年以上安定である液体ポックスウイルス組成物もまた望ましい。そのような液体組成物は、低コストの商品、開発及び/または製造時間の短縮、ならびにユーザーの利便性を含む利点を提供する。本発明は、改善されたポックスウイルス組成物、特に-20℃及び/または+2~+8℃の範囲の温度で長期間にわたって増強された安定性を示すMVA組成物を開示することによってこれらの必要性に対処し、かつ満たす。さらに開示されているのは、+25℃及び60%の相対湿度で増強された安定性を示すポックスウイルス組成物である。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、MVAなどの生ポックスウイルスの安定性が改善された水性組成物を提供する。少なくとも1つの二糖、糖アルコール、ゼラチン、アルブミン、医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価の塩を含めることにより、液体及び液体凍結状態の両方で安定性が改善される。
【0018】
したがって、一態様では、本発明は、少なくとも1つのポックスウイルス、二糖、糖アルコール、ゼラチン、アルブミン、医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価塩を含む水性組成物を提供し、このような組成物は、pH7.0~pH8.5の範囲のpHを有する。
【0019】
本発明の別の態様は、本発明の水性組成物を含むワクチンまたは医薬組成物を提供する。
【0020】
本発明の別の態様は、水性生ポックスウイルス組成物を製造する方法を提供し、この方法は、以下のステップ:
a)医薬的に許容される緩衝液中に少なくとも1つのポックスウイルスを含む調製物を提供するステップと、
b)ステップa)のポックスウイルス調製物を、少なくとも1つの二糖、糖アルコール、ゼラチン、アルブミン、医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価の塩を含む溶液と組み合わせるステップと、を含み、
ここで、a)及びb)の上記緩衝液は、pH7.0~pH8.5の範囲のpHを有する。
【0021】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を示し、説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】対照製剤(10mM Tris、140mM NaCl、pH 7.7)と比較した-20℃での製剤(F17、F23、F9、F27)のlog10(InfU/mL)の効力力価。平均効力(感染力)は、実施例1の蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定した。
図2】対照製剤(10mM Tris、140mM NaCl、pH 7.7)と比較した+5℃での製剤(F17、F23、F9、F27)のlog10(InfU/mL)の効力力価。平均効力(感染力)は、実施例1の蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定された。
図3】ウイルス力価、すなわち、対照製剤(10mM Tris、140mM、pH7.7)と比較した+25℃/相対湿度60%での製剤(F23、F55、F62、F66)のlog10(InfU/mL)における効力力価。平均効力(感染力)は、実施例1の蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定された。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の水性組成物中に存在するポックスウイルス、特にMVAの保存された生物学的機能を含む長期安定性は、少なくとも1つの二糖、糖アルコール、ゼラチン、アルブミン、医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価の塩を含む賦形剤の組み合わせによって提供されることが見出された。優れた保護は、pH7.0~pH8.5の範囲のpHを有する水性組成物に含まれるそれらの賦形剤によって得ることができた。
【0024】
したがって、本発明の一態様は、少なくとも1つのポックスウイルス、少なくとも1つの二糖、糖アルコール、ゼラチン、アルブミン、医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価塩を含む水性組成物を提供し、このような組成物は、pH7.0~pH8.5の範囲のpHを有する。
【0025】
ポックスウイルス
ポックスウイルスは、一般的にエンベロープウイルスであり、二本鎖DNAを運ぶ大きなウイルスである。ポックスウイルスは、ポックスウイルス科に属し、16属に分類される71種のウイルスが含まれている(Virus Taxonomy:2017公表)。最もよく知られているオルソポックスウイルスのうち2つは、天然痘の原因物質である天然痘ウイルス、及びワクチンへの変換により天然痘の根絶を可能にしたワクシニアウイルスである。
【0026】
ワクシニアウイルスなどのポックスウイルスは当業者に公知であり、感染性生物及び最近ではがんとの闘いにおいて組換えワクチンを生成するために使用されてきた(Mastrangelo et al.J Clin Invest 2000,105:1031-1034)。
【0027】
本開示の文脈内で、ポックスウイルスとしては、好ましくは、オルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルスが挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、ポックスウイルスはオルソポックスウイルスである。
【0028】
オルソポックスウイルスとしては、限定するものではないが、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、及びサル痘ウイルスが挙げられる。好ましくは、オルソポックスウイルスはワクシニアウイルスである。
【0029】
「ワクシニアウイルス」という用語は、例えば、アンカラ、VACV西部保護区(WR)、VACVコペンハーゲン(VACV-COP)、テンプルオブヘブン(Temple of Heaven)、Paris(パリ)、Budapest(ブダペスト)、Dairen、Gam、MRIVP、Per、Tashkent、TBK、Tian Tan、Tom、Bern、Patwadangar、BIEM、B-15、EM-63、IHD-J、IHD-W、イケダ(Ikeda)、DryVax(VACV Wyethまたはニューヨーク市保健委員会[NYCBH]株としても公知)、NYVAC、ACAM1000、ACAM2000、ワクシニアリスター(Elstreeとしても公知)、LC16mOまたはLC16m8を含む、複製ワクシニアウイルス(VACV)の様々な株または分離株を指す場合がある。
【0030】
さらなる実施形態では、本発明のポックスウイルスは、MVAウイルスである。
【0031】
MVAウイルスは、ワクシニアウイルス(CVA)のアンカラ株のニワトリ胚線維芽細胞での516回の連続継代によって生成された(レビューについては、Mayr et al.Infektion1975,3:6-14を参照のこと)。これらの長期継代の結果として、得られたMVAウイルスのゲノムは、そのゲノム配列の約31キロベースが削除されたため、鳥類細胞への複製が制限された高度な宿主細胞として説明された(Meyer et al.J Gen Virol 1991,72(Pt 5):1031-1038)。さまざまな動物モデルで、結果として得られたMVAは、完全に複製可能な出発物質と比較して有意に無毒性であることが示された(Mayr and Danner Dev Biol Stand 1978,41:225-234).
【0032】
本発明の実施に有用なMVAウイルスにとしては、限定するものではないが、MVA-572(1994年1月27日にECACC V94012707として寄託された);MVA-575(2000年12月7日にECACC V00120707として寄託)、MVA-I721(Suter et al.Vaccine2009,27:7442-7450に引用される)、NIHクローン1(2003年3月27日にATCC(登録商標)PTA-5095として寄託)及びMVA-BN(2000年8月30日に欧州細胞培養コレクション(ECACC)に番号V00083008で寄託)が挙げられ得る。
【0033】
より好ましくは、本発明に従って使用されるMVAとしては、MVA-BN及びMVA-BN誘導体が挙げられる。MVA-BNは、国際PCT公開WO02/042480に記載されている。「MVA-BN誘導体」とは、本明細書に記載されるように、MVA-BNと本質的に同じ複製特徴を示すが、それらのゲノムの1つ以上の部分に相違を示す任意のウイルスを指す。
【0034】
MVA-BN及びMVA-BN誘導体は複製能力がなく、これは、インビボ及びインビトロでの複製の失敗を意味する。より具体的には、インビトロでは、MVA-BNまたはMVA-BN誘導体は、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)で生殖複製可能であるが、ヒトケラチノサイト細胞株HaCat(Boukamp et al(1988),J.Cell Biol.106:761-771)、ヒト骨肉腫細胞株143B(ECACC寄託番号91112502)、ヒト胚腎臓細胞株293(ECACC寄託番号85120602)、及びヒト子宮頚部腺癌細胞株HeLa(ATCC寄託番号CCL-2)では生殖複製不能であると記載されている。さらに、MVA-BNまたはMVA-BN誘導体は、Hela細胞及びHaCaT細胞株において、MVA-575よりも少なくとも2倍、より好ましくは3倍低いウイルス増幅比を有する。MVA-BN及びMVA-BN誘導体のこれらの特性に関する試験及びアッセイは、WO02/42480(米国特許出願第2003/0206926号)及びWO03/048184(米国特許出願第2006/0159699号)に記載されている。
【0035】
前の段落で説明したように、インビトロでのヒト細胞株における「生殖複製不能である」または「生殖複製能力がない」という用語は、例えば、WO02/42480に記載されており、これはまた、上記のような望ましい特性を有するMVAを得る方法も教示する。この用語は、WO02/42480または米国特許第6,761,893号に記載されているアッセイを使用して、感染後4日でインビトロでウイルス増幅率が1未満であるウイルスに当てはまる。
【0036】
「生殖複製の失敗」という用語は、感染後4日で1未満という、前段落に記載されているような、インビトロでのヒト細胞株におけるウイルス増幅率を有するウイルスを指す。WO02/42480または米国特許第6,761,893号に記載されているアッセイは、ウイルス増幅率の決定に適用可能である。
【0037】
前の段落で説明したように、インビトロでのヒト細胞株におけるウイルスの増幅または複製は、通常、「増幅率」と呼ばれる、感染細胞から産生されたウイルス(出力)と、最初の位置で細胞に感染するために最初に使用された量(入力)との比率として表される。増幅率「1」は、感染細胞から産生されるウイルスの量が、細胞に感染するために最初に使用された量と同じである増幅状態を定義し、すなわち、感染細胞とはウイルスの感染及び再生を許容するということである。対照的に、1未満の増幅率、すなわち入力レベルと比較した出力の減少は、生殖複製の欠如、したがってウイルスの弱毒化を示す。
【0038】
別の実施形態では、本発明のポックスウイルスは、鶏痘ウイルスなどの(ただしこれに限定されない)アビポックスウイルスである。
【0039】
「アビポックスウイルス」という用語は、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、アンコポックスウイルス(Uncopoxvirus)、マイナ痘ウイルス(Mynahpoxvirus)、鳩痘ウイルス、オウム痘ウイルス(Psittacinepoxvirus)、ウズラ痘ウイルス、クジャク痘ウイルス、ペンギン痘ウイルス、スズメ痘ウイルス、ムクドリ痘ウイルス及びシチメンチョウ痘ウイルスなどの任意のアビポックスウイルスを指す。好ましいアビポックスウイルスは、カナリア痘ウイルス及び鶏痘ウイルスである。
【0040】
アビポックスウイルスはポックスウイルス科の属であり、そのウイルスは鳥に感染して複製し得るが、鳥類以外の種では複製し得ない(Vanderplasschen and Pastoret Curr Gene Ther 2003、3:583-595)。鶏痘ウイルスなどのアビポックスウイルスは、鳥類以外の種で使用した場合、安全かつ効果的な非複製ベクターであることが示されている。(同上)。
【0041】
カナリア痘ウイルスの例は、Rentschler株である。ALVAC(米国特許第5,766,598号)と呼ばれるプラーク精製カナリア痘株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、アクセッション番号VR-2547とブダペスト条約の条件の下で寄託された。別のカナリア痘株は、Institute Merieux,Inc.から入手可能なLF2 CEP 524 24 10 75と呼ばれる市販のカナリア痘ワクチン株である。
【0042】
鶏痘ウイルスの例は、FP-1株、FP-5株、TROVAC(米国特許第5,766,598号)、POXVAC-TC(米国特許第7,410,644号)、TBC-FPV(Therion Biologics-FPV)である。FP-1は、1日齢の鶏のワクチンとして使用するように改変されたDuvette株である。この株は、O DCEP 25/CEP67/2309 1980年10月に指定された市販の鶏痘ウイルスワクチン株であり、Institute Merieux,Inc.から入手可能である。FP-5は、American Scientific Laboratories(Division of Schering Corp.)Madison,Wis.,United States Veterinary License No.165,serial No.30321から入手可能なニワトリ杯由来の市販の鶏痘ウイルスワクチン株である。
【0043】
別の実施形態では、本発明の任意の実施形態のポックスウイルスまたは任意の好ましいポックスウイルスは、生ウイルスである。
【0044】
ポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、好ましくは、少なくとも10InfU/mL、好ましくは少なくとも2×10InfU/mL、少なくとも3×10InfU/mL、少なくとも5×10InfU/mL、少なくとも6×10InfU/mL、少なくとも7×10InfU/mL、少なくとも8×10InfU/mL、少なくとも9×10InfU/mL、少なくとも1×10InfU/mL、少なくとも2×10InfU/mL、少なくとも3×10InfU/mL、少なくとも4×10InfU/mL、少なくとも5×10InfU/mL、少なくとも6×10InfU/mL、少なくとも7×10InfU/mL、少なくとも8×10InfU/mL、少なくとも9×10InfU/mL、少なくとも1×10InfU/mL、少なくとも2×109InfU/mL、少なくとも3×10InfU/mL、少なくとも4×10InfU/mL、少なくとも5×10InfU/mL、少なくとも6×10InfU/mL、または少なくとも7×10InfU/mLの力価で、水性組成物または本発明の方法に存在する。実用上の理由から、ポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、最大で1×1011InfU/mL、最大5×1010InfU/mL、または好ましくは最大1×1010InfU/mLの力価で、本発明の水性組成物または方法に存在する。
【0045】
具体的には、ポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、約1×10InfU/mL~1×1011InfU/mLの力価で、本発明の水性組成物または方法に存在する。
【0046】
具体的には、ポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、約1×10InfU/mL~5×1010InfU/mLの力価で、本発明の水性組成物または方法に存在する。
【0047】
具体的には、ポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、約1×10InfU/mL~1×1010InfU/mLの力価で、本発明の水性組成物または方法に存在する。
【0048】
具体的には、ポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、約1×10InfU/mL~6×10InfU/mLの力価で、本発明の水性組成物または方法に存在する。
【0049】
特定の実施形態では、本明細書で提供される水性組成物は、単回投与、または複数回(すなわち、2、3、4など)の投与量で、好ましくは0.1~0.5mlの容積で対象に投与される。特定の実施形態では、本明細書で提供される水性組成物は、水性組成物中のウイルスの10~1010InfUの用量で、好ましくは0.1~0.5mlの容積で対象に投与される。特定の他の実施形態では、水性組成物は、第1の(プライミング)接種及び1回以上のその後の追加免疫投与で投与される。特定の実施形態では、第1の用量は、水性組成物中に10~1010InfUのポックスウイルスを含み、第2の用量は、好ましくは0.1~0.5mlの容積で、10~1010InfUのウイルスの水性組成物を含む。
【0050】
特定の実施形態では、1回以上のその後の追加免疫投与は、以前に投与されたものと同じ組換えポックスウイルスを含み、そしてこの方法は、相同なプライム-ブースト(初回-追加投与)ワクチン接種を含む。特定の実施形態では、1回以上のその後の追加免疫投与は、以前に投与されたものと異なる組換えポックスウイルスを含み、そしてこの方法は、相同なプライム-ブースト(初回-追加投与)ワクチン接種を含む。
【0051】
特定の実施形態では、1回以上のその後の投与(すなわち、1回以上の追加免疫ワクチン接種)は、最初のプライミングワクチン接種の投与後、数日、数週間、または数ヶ月を含む間隔で投与される。特定の実施形態では、組換えポックスウイルスの1回以上のその後の投与(すなわち、1回以上の追加免疫ワクチン接種)は、組換えポックスウイルスの初期量(すなわち、プライミングワクチン接種)投与後1、2、3、4、5、6、7週またはそれ以上の週数の間隔で投与される。特定の実施形態では、組み換えポックスウイルスの1回以上のその後の投与(すなわち、1回以上の追加免疫ワクチン接種)は、最初のプライミングワクチン接種の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月またはそれ以上の月数の間隔で投与される。
【0052】
本発明の組成物または方法に含まれるポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、野生型ポックスウイルス、弱毒化ポックスウイルスまたは組換えポックスウイルスであり得る。
【0053】
本明細書に記載の任意の実施形態の「組換え」ウイルスという用語は、親ウイルスには天然に存在しない、そのゲノムに挿入された外因性核酸配列を含むウイルス、より具体的にはポックスウイルスを指す。したがって、組換えウイルス(例えば、具体的には、オルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)とは、自然には存在しないか、または自然には見られない配置で別の核酸に連結されている、合成または半合成起源の核酸配列の2つ以上のセグメントの人工的な組み合わせによって作製されたウイルスを指す。人工的な組み合わせは、最も一般的には、十分確立された遺伝子工学技術を使用して、核酸の単離されたセグメントを人工的に操作することによって達成される。一般に、本明細書に記載の「組換え」ポックスウイルスとは、標準的な遺伝子工学的方法によって産生されるポックスウイルスを指し、したがって、例えば、本発明のMVAウイルスとは、遺伝子操作または遺伝子改変されたMVAウイルスである。したがって、「組換えMVA」という用語は、少なくとも1つの組換え核酸を、好ましくは転写ユニットの形態で、そのゲノムに組み込んだMVAウイルス(例えば、MVA-BN)を含む。転写ユニットは、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター及び/またはサイレンサーを含んでもよい。本発明の組換えMVAウイルスは、調節要素、例えば、プロモーターの誘導時に、異種の抗原決定基、ポリペプチドまたはタンパク質(抗原)を発現し得る。
【0054】
組換えポックスウイルスの生成方法
組換えポックスウイルス(例えば、VACVまたはMVA)を取得する方法、または外因性コード配列をポックスウイルス(例えば、VACVまたはMVA)ゲノムに挿入する方法は、当業者に周知である。例えば、そのようなDNAのクローニング、DNA及びRNAの単離、ウェスタンブロット分析、RT-PCR及びPCR増幅技術などの標準的な分子生物学的技術のための方法は、Molecular Cloning,A laboratory Manual 2nd Ed.(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))に記載されており、そしてウイルスの取り扱い及び操作の技術は、Virology Methods Manual(B.W.J.Mahy et al.(eds.),Academic Press(1996))に記載されている。同様に、ポックスウイルスの取り扱い、操作、及び遺伝子工学の技術及びノウハウは、Molecular Virology:A Practical Approach(A.J.Davison & R.M.Elliott(Eds.),The Practical Approach Series,IRL Press at Oxford University Press,Oxford,UK(1993)に記載されており、例えば、Chapter 9:Expression of genes by Vaccinia virus vectors);Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Son,Inc.(1998)、例えば、Chapter 16,Section IV:Expression of proteins in mammalian cells using vaccinia viral vectorを参照のこと);ならびにGenetic Engineering,Recent Developments in Applications,Apple Academic Press(2011),Dana M.Santos、例えば、Chapter 3:Recombinant-mediated Genetic Engineering of a Bacterial Artificial Chromosome Clone of Modified Vaccinia Virus Ankara(MVA)を参照のこと)を参照のこと。組換えMVAの構築及び単離は、Methods and Protocols,Vaccinia Virus and Poxvirology,ISBN 978-1-58829-229-2(Staib et al.),Humana Press(2004)にも記載されており、例えば、Chapter 7も参照のこと。
【0055】
大量の組換えポックスウイルスを生成し、本発明に従って使用されるウイルスベクター及び/またはウイルスなどのウイルスベースの材料を精製するための方法は、当業者に公知である。利用可能な方法は、CEF細胞または細胞株、具体的にはDF-1(米国特許第5,879,924号)、EBxニワトリ細胞株(WO2005/007840)、EB66アヒル細胞(WO08/129058)、またはCairina moschata不死化鳥類細胞におけるウイルスの複製を含む(WO2007/077256またはWO2009/004016)。それらは、当業者に周知の条件下で培養され得る。ウイルス培養及びウイルス増幅には無血清法が好ましい。CEF細胞におけるウイルス培養及びウイルス増幅のための特定の無血清法は、例えば、WO2004/022729に記載されている。ウイルスを産生するための上流及び下流のプロセスは、当業者に周知である。それらは、WO2012/010280またはWO2016/087457から入手できる。本出願のウイルスを精製するために有用な方法は、WO03/054175、WO07/147528、WO2008/138533、WO2009/100521、及びWO2010/130753に開示されている。アヒル胚由来細胞における組換えポックスウイルスの増殖及び精製の例示的な方法は、Leon et al.Vaccine 2016,34:5878-5885に記載されている。
【0056】
組換えMVAウイルスの例示的な生成
本明細書に開示される様々な組換えMVAウイルスの生成のために、異なる方法が適用可能であり得る。ウイルスに挿入されるDNA配列は、ポックスウイルスのDNAのセクションに相同なDNAが挿入されているE.coliプラスミド構築物に配置されてもよい。これとは別に、挿入するDNA配列をプロモーターにライゲーションしてもよい。プロモーター-遺伝子連結は、プロモーター-遺伝子連結が、非必須遺伝子座を含むポックスウイルスDNAの領域に隣接するDNA配列に相同なDNAによって両端に隣接するように、プラスミド構築物に配置されてもよい。得られたプラスミド構築物は、E.coli細菌内で増殖させることにより増幅してもよく、単離してもよい。挿入されるDNA遺伝子配列を含む単離されたプラスミドを、培養物がMVAウイルスに感染すると同時に、例えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)の細胞培養物にトランスフェクトしてもよい。プラスミド内の相同MVAウイルスDNAとウイルスゲノムとの間の組換えは、それぞれ、外来DNA配列の存在によって修飾されたポックスウイルスを生成し得る。
【0057】
好ましい実施形態によれば、例えば、CEF細胞として適切な細胞培養物の細胞に、MVAウイルスを感染させてもよい。続いて、感染した細胞に、本開示で提供される1つ以上の核酸などの外来または異種の遺伝子(複数可)を含む第1のプラスミドベクターをトランスフェクトしてもよい(好ましくは、ポックスウイルス発現制御エレメントの転写制御下で)。上で説明したように、プラスミドベクターはまた、MVAウイルスゲノムの選択された部分への外因性配列の挿入を指示し得る配列も含む。場合により、プラスミドベクターはまた、ポックスウイルスプロモーターに作動可能に連結されたマーカー及び/または選択遺伝子を含むカセットを含む。選択カセットまたはマーカーカセットを使用すると、生成された組換えポックスウイルスの識別及び分離が簡単になる。ただし、組換えポックスウイルスは、PCR技術によっても識別され得る。続いて、さらなる細胞を、上記のように得られた組換えポックスウイルスに感染させてもよく、第2の外来または異種の遺伝子(複数可)を含む第2のベクターでトランスフェクトしてもよい。この遺伝子がポックスウイルスゲノムの異なる挿入部位に導入される場合、この第2のベクターはまた、ポックスウイルスのゲノムへの第2の外来遺伝子(複数可)の組み込みを指示するポックスウイルス相同配列においても異なる。相同組換えが起こった後、2つ以上の外来または異種の遺伝子を含む組換えウイルスを単離してもよい。追加の外来遺伝子を組換えウイルスに導入するために、感染及びトランスフェクションのステップは、感染のための前のステップで単離された組換えウイルスを使用することによって、及びトランスフェクションのためのさらなる外来遺伝子(複数可)を含むさらなるベクターを使用することによって、繰り返してもよい。
【0058】
他の実施形態では、本発明の任意の実施形態の組換えポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、抗原、好ましくは少なくとも1つの抗原をコードする核酸を含む。
【0059】
例えば、本発明による適切な抗原は、ウイルスがワクチン接種の目的で使用される場合に免疫応答が望まれる1つ以上のポリペプチド(複数可)をコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上の導入遺伝子(複数可)を含んでもよい。例としては、例えば、限定するものではないが、RSV、HIV、HPV、HBV、マラリア、エボラ、MARV、FMDV、デング、ウマ脳炎ウイルスまたはそれらの任意の組み合わせを含む、ウイルスまたは病原体に対する免疫応答を生成するのに適した1つ以上の導入遺伝子が挙げられる。
【0060】
好ましい実施形態では、抗原とは、ウイルス抗原、共刺激分子、及び/または腫瘍関連抗原(TAA)である。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、ウイルス抗原は、フィロウイルス、ピコルナウイルス、乳頭腫ウイルス、肝炎ウイルス、フラビウイルス、レトロウイルス、オルトミクソウイルス、ウマ脳炎ウイルス、パラミクソウイルス、及び/またはそれらの組み合わせから選択される免疫原性抗原である。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、免疫原性抗原は、タンパク質、好ましくは全長タンパク質である。
【0063】
本発明の好ましい実施形態では、パラミクソウイルスは、例えば、WO2014/019718に記載されているように、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)である。
【0064】
別の好ましい実施形態では、本発明の任意の実施形態の組換えポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、RSV抗原をコードする核酸を含む。
【0065】
別の好ましい実施形態では、任意の実施形態の組換えポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、RSVタンパク質をコードする核酸を含む。
【0066】
別の好ましい実施形態では、任意の実施形態の組換えポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、RSV F糖タンパク質をコードする核酸を含む。
【0067】
別の好ましい実施形態では、任意の実施形態の組換えポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、RSV F糖タンパク質及びRSV G糖タンパク質をコードする核酸を含む。
【0068】
別の好ましい実施形態では、任意の実施形態の組換えポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、RSV F糖タンパク質及び2つのRSV G糖タンパク質をコードする核酸を含む。
【0069】
別の好ましい実施形態では、任意の実施形態の組換えポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、RSV F糖タンパク質、2つのRSV G糖タンパク質及びRSV Nタンパク質をコードする核酸を含む。
【0070】
別の好ましい実施形態では、任意の実施形態の組換えポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、RSV F糖タンパク質、2つのRSV G糖タンパク質、RSV Nタンパク質及びRSVマトリックスタンパク質をコードする核酸を含む。
【0071】
別の好ましい実施形態では、任意の実施形態の組換えポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、RSV F糖タンパク質、2つのRSV G糖タンパク質、RSV Nタンパク質及びRSV M2-1タンパク質をコードする核酸を含む。
【0072】
本発明の好ましい実施形態では、フィロウイルスは、例えば、WO2016 /036955、WO2016/036971またはWO2016/034678に記載されているように、エボラウイルス及び/またはマールブルグウイルス(MARV)である。
【0073】
本発明の好ましい実施形態では、ピコルナウイルスは、例えば、WO2016/202828に記載されているように、口蹄疫ウイルス(FMDV)である。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、パピローマウイルスは、例えば、WO2017/192418、WO90/10459、WO05/09241、WO98/04705、WO99/03885またはWO2007/121894に記載されるようなヒトパピローマウイルスである。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、肝炎ウイルスは、例えば、WO2004/111082に記載されるように、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス及びE型肝炎ウイルスの群から選択される。
【0076】
本発明の好ましい実施形態では、フラビウイルスはデング熱ウイルス(DENV)である。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、レトロウイルスはHIV-1である。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、オルトミクソウイルスはインフルエンザウイルスである。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、ウマ脳炎ウイルス(EEV)は、例えば、WO2017/129765に記載されているように、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)及び/またはベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)である。
【0080】
本発明の好ましい実施形態では、ウイルス抗原は、RSV、エボラウイルス、MARV、FMDV、HPV、HBV、HIV、インフルエンザウイルス、DENV、RSV、EEV及びそれらの任意の組み合わせの群から選択される免疫原性抗原である。
【0081】
様々な共刺激分子が当業者に公知である。それらとしては、限定するものではないが、ICAM-1、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、CD40、CD40リガンド(CD40L)もしくは他のB7関連分子、またはTRICOMなどのそれらの組み合わせが挙げられる。
【0082】
「TRICOM.」三つ組みの同時刺激分子(Triad of COstimlatory Molecules)(TRICOMとしても公知)としては、B7-1(B7.1またはCD80としても公知)、細胞内接着分子-1(ICAM-1であり、CD54としても公知)及びリンパ球機能関連抗原-3(LFA-3であり、CD58としても公知)が挙げられ、そして一般的に、抗原特異的免疫応答を増大させるために、特定の抗原を発現する組換えウイルスベクター(例えば、ポックスウイルスベクター)に含まれる。TRICOMの個々の成分は、同じまたは異なるプロモーター(複数可)の制御下にあり得、特定の抗原と同じベクター上に提供されても、または別のベクター上に提供されてもよい。例示的なベクターは、例えば、Hodge et al.Cancer Res 1999,59:5800-5807 et al.,“A Triad of Costimulatory Molecules Synergize to Amplify T-Cell Activation,” Cancer Res.59:5800-5807(1999)及び米国特許第7,211,432B2号(これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる)に開示される。
【0083】
TAAとは当業者に周知であり、非腫瘍組織または非腫瘍細胞と比較して、腫瘍組織または腫瘍細胞において、より高い頻度または密度で検出される自己細胞抗原を指す。
【0084】
好ましい実施形態では、TAAは、CEA、MUC-1、TRP-1、NY-ESO-1、TRP-2、p53、PSA、HER-2、PAP、サバイビン、TYRP1、TYRP2、またはBrachyury(ブラキュリ)の群またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0085】
他の実施形態では、本発明の任意の実施形態の組換えポックスウイルス(特にオルソポックスウイルス、より具体的にはワクシニアウイルスまたは好ましくはMVA)は、TAA類の組み合わせをコードする核酸を含む。そのような例示的な組み合わせとしては、HER2とBrachyury(ブラキュリ)、CEAとMUC-1、またはPAPとPSAが挙げられ得る。
【0086】
組成物の安定剤
本発明による二糖は、トレハロース、スクロース、またはそれらの組み合わせであり得る。本発明の好ましい実施形態では、二糖はトレハロースまたはスクロースである。
【0087】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、2%(w/v)~12%(w/v)、好ましくは4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度で二糖類(好ましくは、トレハロースまたはスクロース)を含む。具体的には、本発明による水性組成物または方法は、ある濃度の二糖(好ましくはトレハロースまたはスクロース)を含み、この濃度は、2%(w/v)~11%(w/v)、2%(w/v)~10%(w/v)、2%(w/v)~9%(w/v)、2%(w/v)~8%(w/v)、2%(w/v)~7%(w/v)、2%(w/v)~6%(w/v)、2%(w/v)~5%(w/v)、4%(w/v)~12%(w/v)、4%(w/v)~11%(w/v)、4%(w/v)~10%(w/v)、4%(w/v)~9%(w/v)、4%(w/v)~8%(w/v)、4%(w/v)~7%(w/v)、5%(w/v)~12%(w/v)、5%(w/v)~11%(w/v)、5%(w/v)~10%(w/v)、5%(w/v)~9%(w/v)、5%(w/v)~8%(w/v)、6%(w/v)~12%(w/v)、6%(w/v)~11%(w/v)、6%(w/v)~10%(w/v)、6%(w/v)~9%(w/v)、6%(w/v)~8%(w/v)、7%(w/v)~12%(w/v)、7%(w/v)~11%(w/v)、7%(w/v)~10%(w/v)、7%(w/v)~9%(w/v)、または7%(w/v)~8%(w/v)の範囲である。
【0088】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、10%(w/v)の濃度の二糖を含む。
【0089】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のトレハロースを含む。
【0090】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、10%(w/v)の濃度のトレハロースを含む。
【0091】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のスクロースを含む。
【0092】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、10%(w/v)の濃度のスクロースを含む。
【0093】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、ソルビトールを含む。
【0094】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、0.2%(w/v)~5%(w/v)の範囲の濃度のソルビトールを含む。
【0095】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、0.2%(w/v)~4%(w/v)の範囲の濃度のソルビトールを含む。
【0096】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、0.5%(w/v)~4%(w/v)、好ましくは、0.5%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトールを含む。
【0097】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、0.2%(w/v)~2.2%(w/v)の範囲の濃度、好ましくは、0.5%(w/v)~2.2%(w/v)の範囲の濃度のソルビトールを含む。
【0098】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、1%(w/v)~4%(w/v)の範囲の濃度、好ましくは、1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトールを含む。
【0099】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、2%(w/v)の濃度のソルビトールを含む。
【0100】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、2%(w/v)の濃度のソルビトールを含む。
【0101】
本発明に使用されるゼラチンは、当業者に周知である。ゼラチンは、天然の水溶性タンパク質で、ゲル化または非ゲル化しており、これはブタ、ウシ、魚、及び家禽などの動物の骨、皮革、及び皮膚、腱(tendon)、及び腱(sinew)から生成されるコラーゲンの部分的な加水分解によって得られ得る。Aタイプのゼラチンは、コラーゲン原料の酸処理によって製造されるが、Bタイプはコラーゲン原料のアルカリ処理によって製造される。医薬製剤用のゼラチンとしては、例えば、欧州薬局方(Ph.Eur.)または米国薬局方(USP)に記載されている精製ゼラチンが挙げられ得る。
【0102】
本発明による「ゼラチン加水分解物」という用語はまた、加水分解ゼラチン、加水分解コラーゲン、コラーゲン加水分解物、コラーゲンペプチド、ゼラチン加水分解物及び加水分解ゼラチンとも呼ばれる。これらの用語は交換可能に使用され得る。
【0103】
「ゼラチン加水分解物」という用語は、ゼラチンを加水分解切断によって分解することによって得られる加水分解ポリペプチド、または上記の加水分解ポリペプチドを重合することによって得られるポリペプチドのいずれかを意味する。ゼラチン加水分解物は水溶性であり、かつ好ましくは約35,000以下の分子量を有する。本発明で使用可能なゼラチンの実例として、VacciPro(登録商標)(Gelita(登録商標)、AG、Germanyによって製造及び販売されている加水分解ゼラチンまたはその化学誘導体の商品名)、Gelysate(登録商標)(加水分解ゼラチンまたはBBL Co.、Ltd.、USAによって製造及び販売されているその化学誘導体の商品名)、及びRousselot(登録商標)医薬ゼラチン(Rousselot B.V,NLによって製造及び販売されている加水分解ゼラチンまたはその化学誘導体の商品名)などの市販の製品が挙げられる。
【0104】
他の実施形態では、本発明の水性組成物または方法のゼラチンは、好ましくはウシまたはブタゼラチン、好ましくはブタまたはウシゼラチン加水分解物である。ブタゼラチンが好ましくは使用される。
【0105】
本発明の他の実施形態では、ゼラチンはブタのAタイプゼラチンである。本発明の他の実施形態では、ゼラチンはブタのBタイプゼラチンである。
【0106】
他の実施形態では、本発明の水性組成物または方法は、ゼラチンもしくはゼラチン加水分解物、または約0.02%(w/v)~5%(w/v)の間の濃度の任意の好ましいゼラチンを含む。さらなる実施形態では、本発明の水性組成物または方法は、ゼラチンもしくはゼラチン加水分解物、または約0.1%(w/v)~5%(w/v)の濃度の任意の好ましいゼラチンを含む。他の実施形態では、本発明の水性組成物または方法は、ゼラチンもしくはゼラチン加水分解物、または約0.2%(w/v)~5%(w/v)の濃度の任意の好ましいゼラチンを含む。他の実施形態では、本発明の水性組成物または方法は、ゼラチンもしくはゼラチン加水分解物、または約0.25%(w/v)~5%(w/v)の濃度の任意の好ましいゼラチンを含む。他の実施形態では、本発明の水性組成物または方法は、ゼラチンもしくはゼラチン加水分解物、または約0.25%(w/v)~4%(w/v)の濃度の任意の好ましいゼラチンを含む。他の実施形態では、本発明の水性組成物または方法は、ゼラチンもしくはゼラチン加水分解物、または約0.2%(w/v)~3.2%(w/v)の濃度の任意の好ましいゼラチンを含む。他の実施形態では、本発明の水性組成物または方法は、ゼラチンもしくはゼラチン加水分解物、または約1%(w/v)~3.2%(w/v)、好ましくは2.5%(w/v)~3%(w/v)の濃度の任意の好ましいゼラチンを含む。他の実施形態では、本発明の水性組成物または方法は、ゼラチンもしくはゼラチン加水分解物、または約0.2%(w/v)~1.2%(w/v)の濃度の任意の好ましいゼラチンを含む。他の実施形態では、本発明の水性組成物または方法は、ゼラチンもしくはゼラチン加水分解物、または約0.25%(w/v)、0.5%(w/v)、1%(w/v)、2%(w/v)もしくは3%(w/v)の濃度の任意の好ましいゼラチンを含む。
【0107】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、アルブミンを含む。アルブミンは、哺乳類の血漿中に自然に見られるタンパク質であり、最も豊富なタンパク質である。それは、血液の所望の浸透圧を維持すること、及び血流中の様々な物質の輸送においても重要な役割を果たす。本発明に使用されるアルブミンは、好ましくは、ヒト、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、またはヤギのアルブミンであるが、WO2011/051489、WO2011/051489、WO2010/092135、WO2012/150319、WO2014/072481、WO2011124718、WO 2015/036579、WO2018/065491、WO2017/029407、WO2013/075066、またはOtagiri and Chuang Biol Pharm Bull 2009,32:527-534に記載されるようなバリアントも含む。当業者はまた、当該技術分野で公知である任意の手段、例えば、組換えDNA技術、翻訳後修飾、タンパク質分解切断、及び/または化学的手段によって、アルブミンに修飾を加えることができることを認識するであろう。置換も変更もなしにアルブミンに対して本質的に同等の安定化機能を提供する、アルブミンに対するこれらの置換及び変更が、本明細書では、企図されている。好ましくは、アルブミンはヒト血清アルブミンである。他の実施形態では、アルブミンは、組換えアルブミン、好ましくは、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiaeまたはOryza sativaから発現及び精製された組換えヒト血清アルブミンである。好ましくは、本発明に従って使用されるアルブミンは、Saccharomyces cerevisiaeで発現されるRecombumin(登録商標)である。しかしながら、他の組換えアルブミンは、例えば、Pichia pastorisで発現されるヒト組換えアルブミンのように本発明に適している(例えば、Albagen(商標)、rHSA、CAS番号70024-90-7、Sigma-Aldrich)。
【0108】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、0.02%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度で、好ましくは0.02%(w/v)~2%(w/v)の範囲の濃度で、アルブミン(好ましくは本明細書で言及される任意の好ましいアルブミン)を含む。
【0109】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、0.2%(w/v)~2%(w/v)の範囲の濃度で、好ましくは0.2%(w/v)~1.5%(w/v)の範囲の濃度で、アルブミン(好ましくは本明細書で言及される任意の好ましいアルブミン)を含む。
【0110】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、0.5%(w/v)~2%(w/v)の範囲の濃度で、好ましくは0.5%(w/v)~1.5%(w/v)の範囲の濃度で、アルブミン(好ましくは本明細書で言及される任意の好ましいアルブミン)を含む。
【0111】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、0.8%(w/v)~1.2%(w/v)の範囲の濃度で、アルブミン(好ましくは本明細書で言及される任意の好ましいアルブミン)を含む。
【0112】
他の実施形態では、本発明による水性組成物または方法は、1%(w/v)の濃度で、アルブミン(好ましくは本明細書で言及される任意の好ましいアルブミン)を含む。
【0113】
緩衝液及びpH
本発明の任意の実施形態による水性組成物または方法は、好ましくは、pH7.0~pH8.5の範囲のpHを有する。
【0114】
本発明の他の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法は、pH7.3~pH8.1の範囲のpHを有する。
【0115】
本発明の他の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法は、7.7というpHを有する。
【0116】
医薬品開発に精通している当業者は、例えば、pH7.0~pH8.5というpHを達成するために使用され得る緩衝液を周知である。そのような緩衝液は、好ましくは、リン酸緩衝液、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、トリス-HCl(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン-HCl)、トリシン(N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル)-メチル]-グリシン)、及びHEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)の群から選択される。リン酸緩衝液は、好ましくは、NaHPOとKHPOの混合物、またはNaHPOとNaHPOの混合物を含む。特定の実施形態では、水性組成物の緩衝液は、Tris緩衝液、好ましくはトリス-HCl緩衝液である。
【0117】
特定の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法は、クエン酸塩もクエン酸塩緩衝液も含まない。
【0118】
特定の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法の緩衝液は、好ましくは、1mM~50mMの範囲、好ましくは1mM~25mMの範囲の濃度で存在する。
【0119】
特定の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法の緩衝液は、1mM~15mMの範囲、好ましくは5mM~11mMの範囲、さらに好ましくは7mM~10mMの範囲の濃度で存在する。
【0120】
特定の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法の緩衝液は、10mMの濃度で存在する。
【0121】
特定の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法の緩衝液は、7.5mMの濃度で存在する。
【0122】

他の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法は、一価の塩を含む。上記一価塩は、好ましくは塩化ナトリウム(NaCl)または塩化カリウム(KCl)、好ましくはNaClである。上記NaClは、好ましくは40mM~200mMの間、好ましくは40mM~150mMの間の濃度で存在する。
【0123】
別の実施形態では、NaClは、40mM~140mM、40mM~130mM、40mM~120mM、40mM~110mM、40mM~100mM、40mM~90mM、40mM~80mM、50mM~150mM、50mM~140mM、50mM~130mM、50mM~120mM、50mM~110mM、50mM~100mM、50mM~90mM、50mM~80mM、60mM~150mM、60mM~140mM、60mM~130mM、60mM~120mM、60mM~110mM、60mM~100mM、60mM~90mM、60mM~80mM、70mM~150mM、70mM~140mM、70mM~130mM、70mM~120mM、70mM~110mM、70mM~100mM、70mM~90mM、または70mM~80mMの間の濃度で存在し得る。
【0124】
別の実施形態では、NaClは、60mM~80mMの濃度で存在し得る。
【0125】
別の実施形態では、NaClは、70mMの濃度で存在し得る。
【0126】
他の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法は、二価の塩を含む。上記二価の塩は、好ましくは塩化マグネシウム(MgCl)である。上記MgClは、好ましくは、1mM~300mMの間の濃度で存在する。
【0127】
別の実施形態では、MgClは、2mM~300mM、5mM~300mM、10mM~300mM、20mM~300mM、30mM~300mM、40mM~300mM、50mM~300mM、60mM~300mM、70mM~300mM、80mM~300mM、90mM~300mM、100mM~300mM、150mM~300mM、180mM~300mM、200mM~300mM、2mM~260mM、5mM~260mM、10mM~260mM、20mM~260mM、30mM~260mM、40mM~260mM、50mM~260mM、60mM~260mM、70mM~260mM、80mM~260mM、90mM~260mM、100mM~260mM、150mM~260mM、180mM~260mM、200mM~260mM、75mM~300mM、75mM~260mM、100mM~260mM、120mM~260mM、150mM~260mM、200mM~260mM、2mM~200mM、5mM~200mM、10mM~200mM、20mM~200mM、30mM~200mM、40mM~200mM、50mM~200mM、60mM~200mM、70mM~200mM、80mM~200mM、90mM~200mM、2mM~150mM、5mM~150mM、10mM~150mM、20mM~150mM、30mM~150mM、40mM~150mM、50mM~150mM、60mM~150mM、70mM~150mM、80mM~150mM、90mM~150mM、2mM~100mM、5mM~100mM、10mM~100mM、20mM~100mM、30mM~100mM、40mM~100mM、50mM~100mM、60mM~100mM、70mM~100mM、80mM~100mM、90mM~100mM、2mM~75mM、5mM~75mM、10mM~75mM、20mM~75mM、30mM~75mM、40mM~75mM、50mM~75mM、60mM~75mM、70mM~75mM、2mM~50mM、5mM~50mM、10mM~50mM、20mM~50mM、30mM~50mM、40mM~50mM、2mM~40mM、5mM~40mM、10mM~40mM、20mM~40mM、または30mM~40mMの濃度で存在し得る。
【0128】
別の実施形態では、MgClは、75mM~300mMの濃度で存在し得る。
【0129】
別の実施形態では、MgClは、100mM~300mMの濃度で存在し得る。
【0130】
別の実施形態では、MgClは、200mM~300mMの濃度で存在し得る。
【0131】
別の実施形態では、MgClは、220mM~260mMの濃度で存在し得る。
【0132】
別の実施形態では、MgClは、240mM~260mMの間の濃度で存在し得る。
【0133】
他の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法は、好ましくは上記の任意の濃度で、一価の塩及び二価の塩を含む。
【0134】
別の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法は、60mM~80mMの濃度の一価の塩、及び220~260mMの濃度の二価の塩を含む。
【0135】
別の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法は、40mM~150mMの濃度のNaCl、及び220mM~260mMの濃度のMgClを含む。
【0136】
別の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法は、70mM~150mMの濃度のNaCl、及び220mM~260mMの濃度のMgClを含む。
【0137】
別の実施形態では、任意の実施形態による水性組成物または方法は、60mM~80mMの濃度のNaCl、及び220mM~260mMの濃度のMgClを含む。
【0138】
さらに好ましい実施形態
本明細書に記載の任意の実施形態による水性組成物または方法は、1つ以上のアミノ酸(複数可)を含み得る。好ましいアミノ酸は、ヒスチジン、アルギニン、リジングリシン及び/またはグルタミン酸またはそれらの塩、特にL-異性体L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-リジン、L-グリシン及び/またはL-グルタミン酸またはそれらの塩である。前記アミノ酸(複数可)は、本発明の組換えウイルスまたは非組換えウイルスによってコードされるアミノ酸ではない。したがって、このアミノ酸は、ウイルス(例えば、MVA)の精製プロセスを通じて組成物に含まれるのではなく、ワクチンを製造するための組成物の生成の間に添加される。
【0139】
アミノ酸は、好ましくは、150mM未満、130mM未満、120mM未満、好ましくは110mM未満の濃度で存在する。
【0140】
さらなる実施形態では、アミノ酸は、10mM~110mM、20mM~110mM、30mM~110mM、40mM~110mM、50mM~110mM、60mM~110mM、70mM~110mM、または80mM~110mMの範囲の濃度で存在する。
【0141】
さらなる実施形態では、アミノ酸は、40mM~110mMの範囲の濃度で存在する。
【0142】
さらなる実施形態では、アミノ酸は、90mM~110mMの範囲の濃度で存在する。
【0143】
さらなる実施形態では、アミノ酸は、100mMの濃度で存在する。
【0144】
さらなる実施形態では、アミノ酸は、50mMの濃度で存在する。
【0145】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、40mM~60mMの濃度でヒスチジン(好ましくはL-ヒスチジン)を含んでもよい。
【0146】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、40mM~60mMの濃度でアルギニン(好ましくはL-アルギニン)を含んでもよい。
【0147】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、40mM~60mMの濃度でリジン(好ましくはL-リジン)を含んでもよい。
【0148】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、40mM~60mMの濃度でグリシン(好ましくはL-グリシン)を含んでもよい。
【0149】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、ヒスチジン、アルギニン、リジン及びグリシンを、好ましくは各々40mM~60mMの濃度で含んでもよい。
【0150】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、ヒスチジン、アルギニン、リジン及びグリシンを、好ましくは各々40mM~60mMの濃度で含んでもよい。
【0151】
上記のアミノ酸の濃度は、上記のセクションで言及された任意の特定のアミノ酸(例えば、ヒスチジン、アルギニン、リジン及び/またはグリシン)に使用してもよい。
【0152】
グルタミン酸またはその塩(例えば、グルタミン酸ナトリウムまたはグルタミン酸ナトリウム一水和物)は、好ましくは、2.5mM~7.5mMの間の濃度で存在する。
【0153】
さらなる実施形態では、グルタミン酸またはその塩(例えば、グルタミン酸ナトリウム一水和物またはグルタミン酸一ナトリウム一水和物)は、3mM~6mMの範囲の濃度で存在する。好ましくは、グルタミン酸またはその塩(例えば、グルタミン酸ナトリウム一水和物またはグルタミン酸一ナトリウム一水和物)は、5mMの濃度で存在する。
【0154】
本明細書に記載の任意の実施形態よる水性組成物または方法は、オクタン酸塩をさらに含んでもよい。好ましくは、任意の実施形態による水性組成物または方法は、5mM以下、好ましくは1mM以下、より好ましくは0.001~1mMの濃度のオクタン酸イオンを含む。
【0155】
本明細書に記載の任意の実施形態による水性組成物または方法は、1つ以上の追加の担体、添加剤、抗生物質、防腐剤、アジュバント、及び/または希釈剤、好ましくは、任意の追加の担体、添加剤、抗生物質、防腐剤、アジュバント、及び/または希釈剤(医薬的に許容される)をさらに含んでもよい。
【0156】
他の実施形態では、本発明の水性組成物は、ワクチンまたは医薬組成物である。
【0157】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、HPBCDを実質的に含まない。
【0158】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、HPBCDを含まない。
【0159】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、マンニトールを実質的に含まない。
【0160】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、マンニトールを含まない。
【0161】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、クエン酸塩を実質的に含まない。
【0162】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、クエン酸塩を含まない。
【0163】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、キレート剤を実質的に含まない。キレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N’,N’-四酢酸(BAPTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、及び2,3-ジメルカプト-1-プロパンスルホン酸(DMPS)が挙げられる。本発明による「キレート剤を実質的に含まない」とは、キレート剤が50μM未満であることを意味する。
【0164】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、キレート剤を含まない。
【0165】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、ポリソルベートを実質的に含まない。ポリソルベートの例としては、ポリソルベート80が挙げられる。
【0166】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、ポリソルベートを含まない。
【0167】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、C-Cアルコールを実質的に含まず、ここで、C-Cアルコールは、エタノール及び/またはイソプロパノールである。本発明による「C-Cアルコールを実質的に含まない」とは、0.05(v/v)未満のエタノールまたはイソプロパノールを意味する。
【0168】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、C-Cアルコールを実質的に含まず、ここで、C-Cアルコールは、エタノール及び/またはイソプロパノールである。
【0169】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、マンニトール、クエン酸塩、キレート剤、C-Cアルコール(すなわち、エタノール及び/またはイソプロパノール)及び/またはポリソルベートを実質的に含まない。
【0170】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、マンニトール、クエン酸塩、キレート剤、C-Cアルコール(すなわち、エタノール及び/またはイソプロパノール)及び/またはポリソルベートを実質的に含まない。
【0171】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、HPBCD及びマンニトールを実質的に含まない。
【0172】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、HPBCD及びマンニトールを含まない。
【0173】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、HPBCD、マンニトール及びクエン酸塩を実質的に含まない。
【0174】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、HPBCD、マンニトール及びクエン酸塩を含まない。
【0175】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、HPBCD、マンニトール、クエン酸塩、キレート剤、及びC-Cアルコール(すなわち、エタノール及び/またはイソプロパノール)を実質的に含まない。
【0176】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、HPBCD、マンニトール、クエン酸塩、キレート剤、及びC-Cアルコール(すなわち、エタノール及び/またはイソプロパノール)を含まない。
【0177】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、HPBCD、マンニトール、クエン酸塩、キレート剤、C-Cアルコール(すなわち、エタノール及び/またはイソプロパノール)及びポリソルベートを実質的に含まない。
【0178】
さらなる実施形態では、本発明の水性組成物は、HPBCD、マンニトール、クエン酸塩、キレート剤、C-Cアルコール(すなわち、エタノール及び/またはイソプロパノール)及びポリソルベートを実質的に含まない。
【0179】
他の実施形態では、本発明による水性組成物は、バイアルに含まれる。「バイアル」という用語は、本明細書に開示されるようなウイルスなどの有効な医薬品成分を保管し得る任意のコンテナ、容器、カートリッジ、デバイス、ガラスアンプル、または注射器を指す。したがって、バイアル、コンテナ、容器、カートリッジ、デバイス、ガラスアンプル、またはシリンジという用語は、交換可能に使用され得る。バイアルは通常、不活性材料、特にガラス(DIN 2RタイプIホウケイ酸ガラスウイルスなど)または高分子材料でできている。好ましい実施形態では、組成物は、DIN 2RタイプIホウケイ酸ガラスバイアルに含まれる。好ましい実施形態では、組成物は注射器に含まれる。
【0180】
本発明の組成物は、当該技術分野で公知の任意の手段によって、対象、好ましくはヒトに投与され得る。投与経路としては、限定するものではないが、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、静脈内投与、鼻腔内投与、経皮(transdermal)投与、経皮(transcutaneous)投与、または経皮(percutaneous)投与が挙げられる。投与様式、投与量及び投与回数は、公知の方法で当業者によって最適化され得る。好ましい実施形態では、本発明の水性組成物は、非経口投与または適用に適している。他の好ましい実施形態では、本発明の水性組成物は、鼻腔内の投与または適用に適している。他の好ましい実施形態では、本発明の水性組成物は、筋肉内または皮下の投与または適用に適している。
【0181】
特定の実施形態では、本発明の任意の実施形態の水性組成物は、3か月にわたって、+5℃で保管された場合、開始感染力(0日目)の少なくとも50%、60%、79%、80%または90%の感染力を有するとさらに定義される。
【0182】
特定の実施形態では、本発明の任意の実施形態の水性組成物は、3か月にわたって、-20℃で保管された場合、開始感染力(0日目)の少なくとも70%、80%または90%の感染力を有するとさらに定義される。
【0183】
特定の実施形態では、本発明の任意の実施形態の水性組成物は、6か月にわたって、+5℃で保管された場合、開始感染力(0日目)の少なくとも70%、80%または90%の感染力を有するとさらに定義される。
【0184】
特定の実施形態では、本発明の任意の実施形態の水性組成物は、6か月にわたって、-20℃で保管された場合、開始感染力(0日目)の少なくとも70%、80%または90%の感染力を有するとさらに定義される。
【0185】
特定の実施形態では、本発明の任意の実施形態の水性組成物は、5か月にわたって、+25℃/相対湿度60%で保管された場合、開始感染力(0日目)の少なくとも70%、80%または90%の感染力を有するとさらに定義される。
【0186】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は安定している。
【0187】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、+5℃で少なくとも3ヶ月間のウイルス力価の全体的な損失が0.5log10InfU/mL未満、好ましくは0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定される)である場合、安定である。
【0188】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、+5℃で少なくとも6ヶ月間のウイルス力価の全体的な損失が0.5log10InfU/mL未満、好ましくは0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定される)である場合、安定である。
【0189】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、+5℃で少なくとも9ヶ月間のウイルス力価の全体的な損失が0.5log10InfU/mL未満、好ましくは0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定される)である場合、安定である。
【0190】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、+5℃で少なくとも12ヶ月間のウイルス力価の全体的な損失が0.5log10InfU/mL未満、好ましくは0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定される)である場合、安定である。
【0191】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、-20℃で少なくとも3ヶ月間のウイルス力価の全体的な損失が0.5log10InfU/mL未満、好ましくは0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定される)である場合、安定である。
【0192】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、-20℃で少なくとも6ヶ月間のウイルス力価の全体的な損失が0.5log10InfU/mL未満、好ましくは0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定される)である場合、安定である。
【0193】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、-20℃で少なくとも9ヶ月間のウイルス力価の全体的な損失が0.5log10InfU/mL未満、好ましくは0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定される)である場合、安定である。
【0194】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、-20℃で少なくとも12ヶ月間のウイルス力価の全体的な損失が0.5log10InfU/mL未満、好ましくは0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定される)である場合、安定である。
【0195】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、+25℃/相対湿度60%で少なくとも5ヶ月間のウイルス力価の全体的な損失が0.5log10InfU/mL未満、好ましくは0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定される)である場合、安定である。
【0196】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、約-20℃で少なくとも12ヶ月の期間、その後、+2~+8℃で3ヶ月間の保管の間安定であり、ここで-20℃で少なくとも12か月の指定された期間-20℃で、その後+2~+8℃で少なくとも3か月の保管の間、ウイルス力価の全体的損失が、0.5log10InfU/mL未満である。好ましくは、ウイルス力価の全体的な損失は、0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満である(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)によって決定される)。
【0197】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、約-20℃で少なくとも12ヶ月の期間、その後、+2~+8℃で9ヶ月間の保管の間安定であり、ここで少なくとも12か月の指定された期間-20℃で、その後+2~+8℃で少なくとも9か月の保管の間、ウイルス力価の全体的損失が、0.5log10InfU/mL未満である。好ましくは、ウイルス力価の全体的な損失は、0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満である(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定される)。
【0198】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、約-20℃で少なくとも24ヶ月の期間、その後、+2~+8℃で9ヶ月間の保管の間安定であり、ここで少なくとも24か月の指定された期間-20℃で、その後+2~+8℃で少なくとも9か月の保管の間、ウイルス力価の全体的損失が、0.5log10InfU/mL未満である。好ましくは、ウイルス力価の全体的な損失は、0.4log10InfU/mL未満、より好ましくは0.3log10InfU/mL未満、最も好ましくは0.2log10InfU/mL未満である(好ましくは実施例1による蛍光活性化セルソーター(FACS)によって決定される)。
【0199】
本発明による「ウイルス力価の全体的な損失」は、示された温度n(例えば、+5℃)及び時間t(例えば、6か月)での組成物の保管中に測定されたウイルス力価の累積損失(log10InfU/mLとして示される)として定義される。ウイルス力価の全体的な損失は、xlog10として示される(例えば、+5℃で6か月間0.5log10として)。
【0200】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、安定であり、-20℃で12ヶ月の期間保存した場合、この組成物は0.3log10InfU/mL未満という効力の損失を示す。
【0201】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、安定であり、+4℃~+8℃で12ヶ月の期間保管した場合、この組成物は0.3log10InfU/mL未満という効力の損失を示す。
【0202】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、安定であり、-20℃で12ヶ月の期間保管した場合、この組成物は0.2log10InfU/mL未満という効力の損失を示す。
【0203】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、安定であり、+4℃~+8℃で12ヶ月の期間保管した場合、この組成物は0.2log10InfU/mL未満という効力の損失を示す。
【0204】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、安定であり、-20℃で12ヶ月の期間保管した場合、この組成物は0.1log10InfU/mL未満という効力の損失を示す。
【0205】
特定の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、安定であり、+4℃~+8℃で12ヶ月の期間保管した場合、この組成物は0.1log10InfU/mL未満という効力の損失を示す。
【0206】
特定の他の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、液体組成物または液体凍結組成物である。
【0207】
特定の他の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、水性凍結組成物である。
【0208】
特定の他の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、水性液体成物である。
【0209】
特定の他の実施形態によれば、本発明の水性組成物は、乾燥組成物ではなく、好ましくは、フリーズドライ組成物でも凍結乾燥組成物でもない。
【0210】
別の態様では、医薬またはワクチンとしての使用のための本発明の水性組成物を提供する。
【0211】
別の態様は、疾患、好ましくは感染症またはがんを処置または予防するための本発明の水性組成物を提供する。
【0212】
別の態様は、感染症またはがんを処置または予防するための医薬またはワクチンを製造するための本発明の水性組成物の使用を提供する。
【0213】
別の態様は、本発明の任意の実施形態の組成物を対象に投与する、感染症を処置または予防する方法を提供する。
【0214】
本発明はまた、以下の非限定的な実施形態もさらに提供する。
1.少なくとも1つのポックスウイルス、少なくとも1つの二糖、ソルビトール、ゼラチン、アルブミン、医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価塩を含む水性組成物であって、このような組成物は、pH7.0~pH8.5の範囲のpHを有する。
2.上記緩衝液がTris緩衝液またはリン酸緩衝液である、実施形態2に記載の組成物。
3.1mM~50mMの範囲の濃度のTris緩衝液を含む、実施形態2に記載の組成物。
4.1mM~15mMの範囲の濃度のTris緩衝液を含む、実施形態2に記載の組成物。
5.5mM~11mMの範囲の濃度のTris緩衝液を含む、実施形態2に記載の組成物。
6.7mM~10mMの範囲の濃度のTris緩衝液を含む、実施形態2に記載の組成物。
7.上記二糖がトレハロース、スクロース、またはそれらの組み合わせである、実施形態1~6のいずれか1項に記載の組成物。
8.上記二糖がトレハロースである、実施形態1~6のいずれか1項に記載の組成物。
9.上記二糖がスクロースである、実施形態1~6のいずれか1項に記載の組成物。
10.2%(w/v)~12%(w/v)、4%(w/v)~12%(w/v)、または7%(w/v)~11%(w/v)の範囲の濃度の上記二糖を含む、実施形態1~9のいずれか1つの組成物。
11.7%(w/v)~11%(w/v)の範囲の濃度の上記二糖を含む、実施形態1~10のいずれか1項に記載の組成物。
12.7%(w/v)~11%(w/v)の範囲の濃度の上記二糖を含む、実施形態1~10のいずれか1項に記載の組成物。
13.0.2%(w/v)~5%(w/v)、0.1%(w/v)~3%(w/v)、好ましくは、1%(w/v)と3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトールを含む、実施形態1~12のいずれか1項に記載の組成物。
14.2%(w/v)の濃度のソルビトールを含む、実施形態12に記載の組成物。
15.上記組成物がpH7.3~pH8.1の範囲のpHを有する、実施形態1~14のいずれか1項に記載の組成物。
16.上記組成物が7.7のpHを有する、実施形態1~14のいずれか1項に記載の組成物。
17.0.1%(w/v)~5%(w/v)、0.1%(w/v)~1.2%(w/v)、好ましくは、0.2%(w/v)~1.2%(w/v)の範囲の濃度のアルブミンを含む、実施形態1~16のいずれか1項に記載の組成物。
18.上記ゼラチンがゼラチン加水分解物である、実施形態1~17のいずれか1項に記載の組成物。
19.0.25%(w/v)~5%(w/v)、0.2%(w/v)~4%(w/v)、0.5%(w/v)~3%(w/v)、0.5%(w/v)~2.2%(w/v)、または1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度、好ましくは2%(w/v)濃度のゼラチンを含む、実施形態1~18のいずれか1項に記載の組成物。
20.実施例1の組成物であって、上記組成物は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度の二糖、1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.8%(w/v)~1.2%(w/v)の範囲の濃度のアルブミン、1%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
21.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のトレハロース及びスクロースから選択される二糖、0.5%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
22.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のトレハロース、0.5%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は、7.3~8.1の範囲のpHを有する。
23.少なくとも1つのポックスウイルス、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のスクロース、0.5%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含む水性組成物であって、上記組成物は、7.3~8.1の範囲のpHを有する。
24.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のトレハロース及びスクロースから選択される二糖、1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、1%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
25.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のトレハロース、1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、1%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は、7.3~8.1の範囲のpHを有する。
26.少なくとも1つのポックスウイルス、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のスクロース、1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、1%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含む水性組成物であって、上記組成物は、7.3~8.1の範囲のpHを有する。
27.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のトレハロース及びスクロースから選択される二糖、0.5%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)~1.2%(w/v)の濃度のアルブミン、0.2%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
28.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のトレハロース、0.5%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)~1.2%(w/v)の濃度のアルブミン、0.2%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
29.少なくとも1つのポックスウイルス、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のスクロース、0.5%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)~1.2%(w/v)の範囲の濃度のアルブミン、0.2%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含む水性組成物であって、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
30.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のトレハロース及びスクロースから選択される二糖、1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.8%(w/v)~1.2%(w/v)の範囲の濃度のアルブミン、1%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
31.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のトレハロース、1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.8%(w/v)~1.2%(w/v)の範囲の濃度のアルブミン、1%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
32.少なくとも1つのポックスウイルス、4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度のスクロース、1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.8%(w/v)~1.2%(w/v)の濃度のアルブミン、1%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含む水性組成物であって、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
33.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、10%(w/v)の範囲の濃度のトレハロース及びスクロースから選択される二糖、2%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、1%(w/v)の濃度のアルブミン、3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
34.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、10%(w/v)の濃度のトレハロースから選択される二糖、2%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、1%(w/v)の濃度のアルブミン、3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
35.少なくとも1つのポックスウイルスを含む水性組成物であって、上記組成物は、10%(w/v)のスクロース、2%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、1%(w/v)の濃度のアルブミン、3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mM~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
36.上記組成物が塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、好ましくは塩化ナトリウムを含む、実施形態1~35のいずれか1項に記載の組成物。
37.50mM~150mMの範囲の濃度の塩化ナトリウムを含む実施形態36に記載の組成物。
38.50mM~110mMの範囲の濃度の塩化ナトリウムを含む、実施形態36に記載の組成物。
39.塩化マグネシウムをさらに含む、実施形態36~38のいずれか1項に記載の組成物。
40.1mM~300mMの範囲の濃度の塩化マグネシウムを含む実施形態39に記載の組成物。
41.100mM~300mMの範囲の濃度の塩化マグネシウムを含む実施形態39に記載の組成物。
42.200mM~300mMの範囲の濃度の塩化マグネシウムを含む実施形態39に記載の組成物。
43.アルギニン、セリン、ヒスチジン、リジン、及びグリシンから選択される最大4つの異なるタイプのアミノ酸をさらに含む、実施形態1~42のいずれか1項に記載の組成物。
44.前記アミノ酸が、120mM未満、好ましくは60mM未満の濃度で組成物中に存在する、実施形態44に記載の組成物。
45.グルタミン酸またはその塩をさらに含む、実施形態1~44のいずれか1項に記載の組成物。
46.グルタミン酸またはその塩が、12mM未満、好ましくは6mM未満の濃度で上記組成物中に存在する、実施形態45に記載の組成物。
47.上記組成物が非経口使用に適している、実施形態1~46のいずれか1項に記載の組成物。
48.上記組成物が鼻腔内使用に適している、実施形態1~46のいずれか1項に記載の組成物。
49.上記組成物が筋肉内使用または皮下使用に適している、実施形態1~46のいずれか1項に記載の組成物。
50.上記組成物が液体組成物または液体凍結組成物である、実施形態1~49のいずれか1項に記載の組成物。
51.上記組成物が水性凍結組成物である、実施形態1~49のいずれか1項に記載の組成物。
52.上記ポックスウイルスがワクシニアウイルスである、実施形態1~51のいずれか1項に記載の組成物。
53.上記ポックスウイルスが改変ワクシニアアンカラウイルス(MVA)である、実施形態1~52のいずれか1項に記載の組成物。
54.上記ウイルスが組換えウイルスである、実施形態1~53のいずれか1項に記載の組成物。
55.上記組換えウイルスが抗原、好ましくはウイルス抗原を発現する核酸を含む、実施形態54に記載の組成物。
56.上記組換えウイルスが、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原をコードする核酸を含む、実施形態54または55に記載の組成物。
57.上記組換えウイルスが、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)タンパク質をコードする核酸を含む、実施形態54~56のいずれか1項に記載の組成物。
58.上記組換えウイルスがRSV F糖タンパク質をコードする核酸を含む、実施形態54~57のいずれか1項に記載の組成物。
59.上記組換えウイルスが、RSV F糖タンパク質、2つのRSV G糖タンパク質、RSV Nタンパク質、及びRSVM2-1タンパク質をコードする核酸を含む、実施形態54~58のいずれか1項に記載の組成物。
60.上記組成物中の上記ウイルス力価が、1×10InfU/mL~1×1010InfU/mLである、実施形態1~59のいずれか1項に記載の組成物。
61.上記組成物が実質的にクエン酸塩を含まない、実施形態1~60のいずれか1項に記載の組成物。
62.上記組成物が実質的にマンニトールを含まない、実施形態1~61のいずれか1項に記載の組成物。
63.上記組成物がクエン酸塩を含まない、実施形態1~60のいずれか1項に記載の組成物。
64.上記組成物がマンニトールを含まない、実施形態1~61のいずれか1項に記載の組成物。
65.+4℃~+8℃で12ヶ月の期間保管した場合、上記組成物が0.3(好ましくは0.2、最も好ましくは0.1)log10InfU/mL未満の効力の損失を示す、実施形態1~64のいずれか1項に記載の組成物。
66.実施形態1~65のいずれか1項に記載の実施形態の組成物を含む、ワクチンまたは医薬組成物。
67.医薬またはワクチンとして使用するための、実施形態1~65のいずれか1項に記載の組成物。
68.疾患、好ましくは感染症を治療または予防するための実施形態1~65のいずれか1項に記載の組成物。
69.感染症を処置または予防するための医薬またはワクチンを製造するための、本発明の実施形態1~65のいずれか1項に記載の組成物の使用。
70.実施形態1~65のいずれか1項に記載の組成物の治療有効量を対象に投与する、感染症を処置または予防する方法。
71.水性の生ポックスウイルス組成物を作製する方法であって、以下のステップ:
a.医薬的に許容される緩衝液中に少なくとも1つの生ポックスウイルスを含む調製物を提供するステップと、
b.ステップa)のポックスウイルス調製物を、二糖、ソルビトール、ゼラチン、アルブミン、及び医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価の塩を含む溶液と組み合わせるステップと、を含み、
ここで、a)及びb)の前記緩衝液が、pH7.0~pH8.5の範囲のpHを有する、上記方法。
72.上記緩衝液がTris緩衝液またはリン酸緩衝液である、実施形態71に記載の方法。
73.上記Tris緩衝液が1mM~25mMの範囲の濃度を有する、実施形態72に記載の方法。
74.上記Tris緩衝液が1mM~15mMの範囲の濃度を有する、実施形態72または73のいずれか1項に記載の方法。
75.上記Tris緩衝液が5mM~11mMの範囲の濃度を有する、実施形態72~73のいずれか1項に記載の方法。
76.上記Tris緩衝液が7mM~10mMの範囲の濃度を有する、実施形態72~73のいずれか1項に記載の方法。
77.a)及びb)の上記緩衝液が7.3~8.1の範囲のpHを有する、実施形態71~76のいずれか1項に記載の方法。
78.上記二糖がトレハロース、スクロース、またはそれらの組み合わせである、実施形態71~77のいずれか1項に記載の方法。
79.上記二糖がトレハロースである、実施形態71~77のいずれか1項に記載の方法。
80.上記二糖がスクロースである、実施形態71~77のいずれか1項に記載の方法。
81.a)及びb)を組み合わせた後、上記組み合わせた組成物が4%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度の二糖を含む、実施形態71~80のいずれか1項に記載の方法。
82.a)及びb)を組み合わせた後、この組み合わせた組成物が10%(w/v)の濃度の二糖を含む、実施形態71~80のいずれか1項に記載の方法。
83.a)及びb)を組み合わせた後、この組み合わせた組成物が1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトールを含む、実施形態71~82のいずれか1項に記載の方法。
84.a)及びb)を組み合わせた後、この組み合わせた組成物が2%(w/v)の濃度のソルビトールを含む、実施形態71~82のいずれか1項に記載の方法。
85.a)及びb)を組み合わせた後、この組み合わせた組成物が、0.2%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度、好ましくは、1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度でゼラチンを含む、実施形態71~84のいずれか1項に記載の方法。
86.a)及びb)を組み合わせた後、この組み合わせた組成物が、0.2%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度、好ましくは、1%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度でゼラチン(好ましくはゼラチン加水分解物)を含む、実施形態71~85のいずれか1項に記載の方法。
87.a)及びb)を組み合わせた後、この組み合わせた組成物が、0.2%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度、好ましくは、0.2%(w/v)~1.2%(w/v)の範囲の濃度でアルブミンを含む、請求項71~86のいずれか1項に記載の方法。
88.実施形態71に記載の方法であって、ここで、a)及びb)を組み合わせた後、この組み合わせた組成物が、2%(w/v)~12%(w/v)の範囲の濃度の二糖(好ましくは、トレハロース、スクロースまたはそれらの組み合わせ)、0.5%(w/v)~3%(w/v)の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)~3%(w/v)の濃度のゼラチン加水分解物、0.2%(w/v)~1.2%(w/v)の範囲の濃度のアルブミン、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5~25mMの範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、ここで上記組成物は7.3~8.1の範囲のpHを有する。
89.上記一価の塩が塩化ナトリウムまたは塩化カリウムであり、好ましくはa)及びb)を組み合わせた後、この組み合わせた組成物が50mM~150mMの範囲の濃度の塩化ナトリウムを含む、実施形態71~88のいずれか1項に記載の方法。
90.塩化マグネシウムをさらに含み、好ましくはa)及びb)を組み合わせた後、この組み合わせた組成物が1mM~300mMの範囲の濃度の塩化マグネシウムを含む、実施形態89に記載の方法。
91.塩化マグネシウムをさらに含み、好ましくはa)及びb)を組み合わせた後、この組み合わせた組成物が200mM~300mMの範囲の濃度の塩化マグネシウムを含む、実施形態89に記載の方法。
92.上記ポックスウイルスがワクシニアウイルスである、実施形態71~91のいずれか1項に記載の方法。
93.上記ポックスウイルスが改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスである、実施形態71~91のいずれか1項に記載の方法。
94.前記ウイルスが組換えウイルスである、実施形態71~93のいずれか1項に記載の方法。
95.上記組換えウイルスが抗原、好ましくはウイルス抗原を発現する核酸を含む、実施形態94に記載の方法。
96.上記組換えウイルスが、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原をコードする核酸を含む、実施形態94に記載の組成物。
97.上記組換えウイルスが、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)タンパク質をコードする核酸を含む、実施形態94に記載の組成物。
98.上記組換えウイルスが、RSV F糖タンパク質をコードする核酸を含む、実施形態96または97のいずれか1項に記載の方法。
99.上記組換えウイルスが、RSV F糖タンパク質、2つのRSV G糖タンパク質、RSV Nタンパク質、及びRSVM2-1タンパク質をコードする核酸を含む、実施形態98に記載の方法。
【0215】
定義及び専門用語
前述の要約および詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される、本発明を限定するものではないことを理解されたい。本発明は、変化し得るので、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、および試薬に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される、本発明の範囲を限定するものとしては意図されないことも理解されたい。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0216】
用語は、本発明がより容易に理解され得るように定義及び説明される。さらなる定義は、詳細な説明の全体を通して記載されている。
【0217】
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別途指示しない限り、複数形の言及を含むことに注意のこと。したがって、例えば、「核酸」への言及には、1つ以上の核酸配列を含み、「その方法」への言及には、本明細書に記載される方法に修正を加えるかまたはそれと置き換えることが可能な、当業者に公知の同等のステップ及び方法への言及を含む。
【0218】
特に明記しない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の要素のあらゆる要素を指すと理解されるべきである。当業者は、ほんの日常的な実験を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確認し得るであろう。このような等価物は、本発明によって包含されるものとする。
【0219】
本明細書で使用される場合、複数の列挙された要素間の接続詞「及び/または」とは、個々の選択肢及び組み合わされた選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/または」で結合されている場合、第1の選択肢とは、第2の要素がない場合の第1の要素の適用可能性を指す。第2の選択肢とは、第1の要素がない場合の第2の要素の適用可能性を指す。第3の選択肢は、第1の要素と第2の要素とを一緒に適用できることを示す。これらの選択肢の任意の1つが意味の範囲内にあると理解され、したがって、本明細書で使用される「及び/または」という用語の要件を満たす。複数の選択肢の同時適用性も意味の範囲内にあると理解されており、したがって「及び/または」という用語の要件を満たしている。
【0220】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通じて、文脈上他の要件がない限り、単語「comprise(含む)」、ならびに「comprises(含む)」及び「comprising(含むこと)」などの変形は、言及された整数もしくはステップ、または整数群もしくはステップの群を包含するが、いかなる他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群も排除しないことを意味することが理解されよう。本発明の説明における態様または実施形態の文脈で使用される場合、「含むこと」という用語は改変されてもよく、したがって「含むこと」または「含んでいること」という用語に置き換えられてもよいし、または本明細書で用いる場合「有する」という用語で置き換えられてもよい。同様に、本発明の説明における態様または実施形態の文脈で使用される場合はいつでも、前述の用語(含む(comprising)、含む(containing)、含む(including)、有する(having))のいずれも、おかげで、「からなる」または「本質的にからなる」という用語を含み、それぞれが法域に応じて特定の法的意味を示す。
【0221】
本明細書で使用される場合、「からなる」は、特許請求の要素で指定されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。本明細書で使用される場合、「本質的にからなる」とは、特許請求の範囲の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料もステップも除外しない。
【0222】
本明細書で使用される成分を「実質的に含まない」という用語は、本明細書で別段の記載がない場合、本発明の組成物の安定性に実質的に影響を及ぼさない微量の成分を除外しない。例えば、マンニトールの前の「含まない(free of)」という用語は、本発明の水性組成物がマンニトールを含まないことを意味する。
【0223】
本出願で使用される「約」とは、特に明記しない限り、±10%を意味する。また、特に明記しない限り、本明細書に記載の濃度または濃度範囲などの任意の数値は、全ての場合において「約」という用語によって変更されると理解されるべきであることにも留意されたい。本明細書を通じて、任意の量または濃度に関する「約」という用語は、その量を含むと考えられる。例えば、「約5mM」とは、本明細書では、5mM、ならびに記載された実体に関して約5mMであると理解される値を含むことを企図している。本明細書で使用される場合、数値範囲の使用は、文脈が明確に他を示さない限り、そのような範囲内の整数及び値の小数部を含む、全ての可能なサブ範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。同様に、本発明の文脈で本明細書で使用される任意の数値または範囲に先行する「約」という用語は、あまり好ましくないが「約」という用語なしで、削除されてもよく、及びこの数値または範囲と置き換えられてもよい。
【0224】
「核酸」、「ヌクレオチド配列」、「核酸配列」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用され得、線状もしくは分枝状、一本鎖もしくは二本鎖、またはそれらのハイブリッドであるRNAまたはDNAを指す。ポリヌクレオチドは、化学合成によって得てもよいし、または微生物に由来してもよい。組換えウイルスに関連して使用される場合の「外因性」核酸配列という用語は、外来核酸配列、組換えウイルスの生成に使用される非組換えウイルスに含まれない核酸配列、または組換えウイルス生成中にウイルスゲノムに挿入される核酸配列を意味する。
【0225】
「医薬的に許容される」とは、使用される投与量及び濃度の担体、添加剤、抗生物質、防腐剤、アジュバント、希釈剤、安定剤または賦形剤が、それらが投与される対象(複数可)に望ましくないかまたは有害な影響(複数可)を実質的に引き起こさないことを意味する。「医薬的に許容される」賦形剤とは、好ましいかまたは便利な剤形を調製するためにウイルスなどの活性分子と組み合わされる任意の不活性物質である。「医薬的に許容される」賦形剤とは、使用される投薬量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、ウイルス調製物を含む製剤の他の成分と適合性である。賦形剤の例は、凍結防止剤、非イオン性界面活性剤、緩衝液、塩、及びフリーラジカル酸化の阻害剤である。「医薬的に許容される担体」は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R.Gennaro,Ed.,Mack Publishing Company(1990);Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins,S.Frokjaer and L.Hovgaard,eds.,Taylor & Francis [2000];and Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd edition,A.Kibbe,Ed.,Pharmaceutical Press(2000)に記載されている。
【0226】
全て交換可能に使用することができる「安定な」、「安定化」、「安定性」または「安定化(すること)」とは、本発明の組成物に含まれるポックスウイルスが、本質的にその物理的安定性、同一性、完全性、及び/または、化学的安定性、同一性、完全性、粒子形態及び/もしくは生物学的活性もしくは効力を、医薬組成物の保存期間に必要な保管の際に保持することであることが理解される。本明細書で使用される場合、「保存期間(shelf-life)」という用語は、ヒトの医薬としての使用のために特定の保管条件下(例えば、+2℃~+8℃での保管)の下で製品特性に従って製品が活性及び/または安定を保持する時間を意味する。保存期間とは、特定の仕様の下限または上限を超えた時点に相当する。
【0227】
安定性とは、一定期間及び特定の保管下での製剤中のポックスウイルス(例えば、MVA)の量(製剤中のポックスウイルスの量)、効力、及び/または他の品質面などのさまざまな特徴を決定することによって評価され得る。ポックスウイルス(例えば、MVA)製剤のこれらの特徴は、高温(リアルタイム温度を予測)または他のストレス条件下で測定され得る。例えば、製剤は、+20℃のインキュベーション、+25℃、-20℃もしくは+5℃に供してもよいし、または凍結/解凍サイクル及び攪拌に供して、保管期間を最大化するさまざまな製剤の効果を研究してもよい。ポックスウイルス(例えば、MVA)の安定性を決定する方法は、当業者に周知であり、目視検査、pH測定、濁度アッセイ、粒子形態及び効力(感染力)アッセイの群から選択される少なくとも1つの方法によって決定され得る。
【0228】
濁度測定は、試料内の分子が光を吸収しない波長(例えば、タンパク質が主な発色団である試料の場合は350nm)で検出された、試料内の粒子の散乱に起因する透過光の強度の損失(見かけの吸光度)を測定する。分子が凝集するかまたは超分子複合体を形成すると、別々の粒子から来るときにランダムであった光散乱がここでコヒーレントになり、それによって測定された強度が増大する。これにより、光散乱及び濁度測定は、凝集及び複合体の形成または解離を検出するための有用な技術となる。
【0229】
濁度アッセイでは、試料を3連でUV透過性の平底マイクロプレートに移す。吸光度スペクトルは、230~500nmのマイクロプレートリーダーによって記録し、975nmでの吸光度を測定して、光路長の違いを決定し、場合によっては補正する。必要に応じてマトリックス成分の散乱または吸収を補正するために、MVAを含まない製剤からなる対照試料をアッセイに含めた。350nmでの見かけの吸光度を、濁度の定量的尺度として使用した。
【0230】
濁度アッセイは、MVA試料の安定性を示す。MVAの凝集により、濁度が増大し、キャプシドの解離が減少する。アッセイの精度は、濁度値>1 NTUで、<5%(CV%)である。
【0231】
粒子の形態を決定する方法は、当業者に周知である。例えば、粒子形態は、例えば、Schweneker et al.J Virol 2017,91:e00343-00317に記載されているように、透過型電子顕微鏡法及び免疫電子顕微鏡法(免疫EM)を使用して決定してもよい。粒子形態を決定するための代替方法は、例えば、Filipe et al.Pharm Res 2010,27:796-810に記載されているナノ粒子追跡分析(Nanoparticle Tracking Analysis)(NTA)である。ナノ粒子追跡分析(NTA)は、液体中の粒子サイズ分布及び凝集を直接かつリアルタイムで視覚化及び分析するための方法である。レーザー照射顕微鏡技術に基づいて、ナノ粒子のブラウン運動は、電荷結合素子(CCD)カメラによってリアルタイムで分析され、各粒子は同時に、ただし別々に視覚化され、専用の粒子追跡画像分析プログラムによって追跡される。NTAが粒子サイズ及び粒子散乱強度を同時に測定する能力によって、不均一な粒子混合物を分離し、粒子濃度を直接推定することが可能になる。
【0232】
本明細書で使用されるウイルスに関連して使用される場合、「効力」または「感染力」という用語は、細胞または生物におけるウイルスの侵入及び増殖を指す、細胞に感染するウイルスの能力を指している。したがって、感染性とは、通常InfU/mLとして与えられる感染単位(InfU)として表されるポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルスまたはMVA)の活性を指す。「効力」及び「感染力」の両方の用語は、本発明において交換可能に使用され得る。MVAなどのポックスウイルスの効力は、例えば、ウイルス感染後のベビーハムスター腎臓細胞21(BHK-21)などのウイルス陽性細胞のパーセンテージを決定するなど、当業者に公知の様々な方法を使用して決定してもよい。好ましいアッセイは、例えば、実施例に記載されているような蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイである。
【0233】
「対象」及び「患者」という用語は、交換可能に使用される。本明細書で使用する場合、対象は、通常は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長類(例えば、サル及びヒト)のような哺乳動物であり、及びいくつかの好ましい実施形態ではヒトである。
【0234】
本発明によれば、「ウイルス」は、ウイルス、ウイルス粒子、及びウイルスベクターを意味する。これらの用語は全て、交換可能に使用され得る。この用語には、野生型ウイルス、組換え型及び非組換え型ウイルス、生ウイルス、及び弱毒生ウイルスが含まれる。
【0235】
本発明によれば、%(w/v)で与えられる濃度は、100mL中の容積あたりのグラム(g)での重量を意味し、例えば、20%(w/v)とは、20g/100mLを意味する。%(v/v)で示される濃度は、100mLの容積あたりのmLでの重量を意味し、例えば、20%(v/v)とは、20mL/100mLを意味する。
【0236】
仕様全体を通して、特に明記されていない限り、pHなどの物理的パラメータの値は、+25℃で測定された値である。
【0237】
本明細書の本文全体を通じて、いくつかの文書を引用している。本明細書で引用された各文書(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様、説明書などを含む)は、上記または下記を問わず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる資料が本明細書と矛盾するか一致しない場合、本明細書はそのような資料に優先する。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明のおかげでそのような開示に先行する権利がないことを承認するものと解釈されるべきではない。
【0238】
本発明の実施は、他に特定されない限り、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、及び組換え技術の従来の技術を使用し、これらは全て当該技術分野の技術の範囲内である。例えばSambrook,Fritsch and Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,1989;Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel FM,et al.,eds,1987;the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);PCR2:A Practical Approach,MacPherson MJ,Hams BD,Taylor GR,eds,1995;Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane,eds,1988を参照のこと。
【実施例
【0239】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、決して特許請求の範囲を制限すると解釈されるべきではない。それらは単に発明を明確にするのに役立つにすぎない。
【0240】
実施例1:効力(感染力)アッセイ
組換えまたは非組換えMVAの力価(InfU/mL)は、蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイによって決定された。MVA感染したベビーハムスター腎臓細胞(Baby Hamster Kidney Cell)21(BHK-21)細胞を、ワクシニアウイルス(VACV)に特異的な蛍光色素結合抗体を用いて免疫染色し、その後、定量的な細胞カウント用BDフローセンサーを装備したFACSVerse(商標)(BD Bioscience)機器を用いて取得して、定量した。
【0241】
より詳細には、2.5x10個のBHK 21細胞(ソースATCC)を、GMEM/9%のFBS/1.8%のAla-Glnに12ウェルプレート中で播種した。翌日、目的のMVAウイルスストックの段階希釈液で細胞を感染させた。37度で1時間インキュベートした後、リファンピン(GMEM中100 μg/mL/9%のFBS/1.8%のAla-Gln)を添加した。感染の19±2時間後に細胞を回収し、抗体染色の前にBD Perm / Wash(商標)キットで固定及び透過処理した。固定した細胞を、抗ワクシニアFITC(Fitzgerald Industries International、カタログ番号60-v68)と60~90分間インキュベートした。次に、BDFACSVerse(商標)サイトメーターを使用したフローサイトメトリーにより、ウイルス陽性細胞の割合を決定した。総細胞数は、並行して固定された未染色の細胞でBDFACSVerse(商標)フローセンサーを使用して決定した。ウイルス力価(InfU/mL)の計算は、ウイルス陽性細胞の割合、感染中に使用されたウイルス希釈、感染容積、及びウェルあたりの平均細胞数に基づいていた。細胞数のウェルの変動に対するウェルの影響を制限するために、複数のウェルの細胞数を平均することによって細胞数を確立した。ウイルス試料のInfU/mLの計算には、2~35%のVACV陽性細胞を含む希釈液のみが含まれていた。試料希釈1mLあたりのInfU(InfU/mL)の計算は、以下の式に従って行った。
【数1】
【0242】
実施例2:組換えMVAの生成
実施例の安定性研究に使用された組換えMVAは、参照により本明細書に組み込まれるWO2015/136056に記載されているMVA-BN RSV(MVA-mBN294B)であった。MVA-mBN294Bは、RSV-F(Along)タンパク質、G(A)及びG(B)タンパク質、ならびにN及びM2-1タンパク質をコードし、ここでN及びM2-1配列は、FMDVウイルスの2A自己切断プロテアーゼドメインによって分離された単一のオープンリーディングフレームによってコードされる。抗原の組み込み部位として、IGR64/65及びIGR148/149を使用した。この遺伝子は、WO2015/136056に記載されるように、ポックスウイルスプロモーターPr7.5e/lの下で発現された(Cochran et al.J Virol 1985,54:30-37)、PrS(Chakrabarti et al.Biotechniques 1997,23:1094-1097)、PrLE1(Baur et al.J Virol 2010,84:8743-8752)及びPrH5m(Wennier et al.PLoS One 2013,8:e73511)。
【0243】
MVA-BN RSV(MVA-mBN294B)は、ニワトリ胚性線維芽細胞(CEF)細胞で産生された。CEF細胞は、WO2012/010280に記載されているような当業者に周知の標準的な方法を使用して製造された。組換えMVAウイルスを増幅し、当業者にも周知であるバルク原薬を精製するためにいくつかの方法が利用可能である(例えば、WO2006/052826に記載されているように)。使用される1つの例示的な方法を以下に説明する。
【0244】
MVA-BN RSV(MVA-mBN294B)は、4mM L-グルタミン、0.01%プルロニック及び抗生物質(例えば、ゲンタマイシン100μg/mL)を添加したVP-SFM培地での50Lウェーブバッグ培養を使用して、CEF細胞で産生した。細胞を回収し、超音波処理によってホモジナイズして、細胞を溶解し、生成されたウイルス粒子を放出した。遠心分離、深層濾過及びベンゾナーゼ処理の後、ウイルス調製物をさらに精製し、限外濾過及びダイアフィルトレーションによって濃縮して、最終的に、pH7.7±0.4のTris10mM、140mM NaCl中の精製バルク原薬を得た。BDSは-80℃±10℃で保管した。
【0245】
実施例3:ワクチン製剤
出発物質として、2つのMVA-BN RSVバッチのブレンドを使用した(BDS)。2つのバッチは、1.35×10InfU/mLに対応する9.129Log10(InfU/mL)の最終力価に濃縮して、10mMのTris及び140mMの塩化ナトリウムを含むpH7.7±0.4のダイアフィルトレーション緩衝液で処方した。残留宿主細胞DNAは46μg/mLであった。
【0246】
MVA-BN RSVのこのような濃縮BDSは、使用前に0.2μmシリンジを使用してろ過されたさまざまな安定剤を含む2倍濃縮製剤緩衝液(最終1倍濃度10mM Tris、70mM NaCl)に混合した。その試料をDIN2-Rガラスバイアル(0.25mL)に充填した。液体製剤及び使用した成分の詳細を表1に示す。2倍の製剤緩衝液の調製には、以下の原材料を使用した:NEOSORB(登録商標)PFパイロジェンフリーソルビトール、GMP、Roquette(ロケット)、FR;スクロース、Sigma Aldrich;トレハロース、GMP、Pfanstiehl GmbH;塩化マグネシウム六水和物、Ph.Eur.Sigma;グリシン,Pharmagrade,USP,Sigma Aldrich;L-グルタミン酸,一ナトリウム塩、PharmaGrage(MSG),Sigma;組み換えヒトアルブミン、Recombumin(登録商標)、Albumedix,加水分解ゼラチン、Vaccipro(登録商標)、Gelita;L-アルギニン、PharmaGrade,USP,Sigma Aldrich;L-ヒスチジン、PharmaGrade,USP,Sigma Aldrich;デキストラン70,USP,Pharmacosmos;Sodium Chloride BioXtra Sigma;Tris塩酸塩,PharmaGrade,Sigma Aldrich。10mM Tris及び140mM塩化ナトリウム(pH7.7±0.4)中のMVA-mBN294Bを、対照として使用した。
【0247】
各製剤について、試料は、+5±3℃(0、3、5、6、7、8、及び12か月)または-20℃(0、4、6か月及び12か月)3回使用でのさまざまな時点での保管及び分析のためにアリコートにされている。各時点で、バイアルを、実施例1による安定性表示試験として蛍光活性化セルソーター(FACS)アッセイを使用する効力分析のために、それぞれの保管条件下で保管された、対応するMVA-BN RSV製剤のそれぞれ0.25mLで満たす。また、pH及び外観も試験した。
【0248】
実施例4:線形回帰分析-+5及び-20℃
製剤の安定性勾配は、線形回帰によって分析し、+5±3℃(表1を参照)及び-20±3℃(表2を参照)について12か月にわたって、降順(すなわち、最小絶対勾配値/最も安定したものが最初)に列挙している。
【0249】
【表1】
【0250】
【表2】
【0251】
結果の要約
リアルタイム安定性データは、F23、F9、及びF17の水性組成物が、冷蔵庫温度(すなわち、+5℃)で保管された場合、従来技術の組成物(対照)及びF27などのデキストランベースの製剤よりも改善された安定性を示したことを示している。二糖、特にトレハロースまたはスクロースに添加されたゼラチン加水分解物及びアルブミン、ソルビトール組成物は、+5℃の間で保存された場合、少なくとも12ヶ月にわたって、最高の安定性結果をもたらし、ウイルス損失は限られていた(表1)。これにより、+2°C~+8°Cでの非凍結ワクチン製品の供給が可能になる。さらなる製剤開発研究により、水性MVA-mBN294Bの安定性は、医薬品製造後、-20°Cで少なくとも12か月間凍結保存することでさらに改善され得、解凍して+2℃~+8℃の温度で最大9ヶ月の限られた時間保管したとき、十分な保管を提供したことが示された。このことは、Prabhuらによって記述された結果に基づいては予想されず、Prabhuらは、再構成後、3.5%の加水分解ゼラチン及び3.5%のソルビトールを含むラクダ痘の凍結乾燥ワクチン製剤は、4℃でウイルス力価の即時低下を示し、10日以内に2log10TCID50というウイルスの損失を示した(Prabhu et al.Biologicals2014,42:169-175)。
【0252】
実施例5:線形回帰分析-+25℃/60%の相対湿度
表3に指定されているウイルス製剤を、相対湿度60%±5%で+25±2℃に曝した。研究開始時に、時点ゼロに対応する試料を-80℃に移した。5週間(35日)のインキュベーション後、ウイルス力価を決定するために各製剤の試料を入手した。
【0253】
製剤のインキュベーションは、合計10週間続けた。ウイルス製剤のpH安定性を評価するために、研究の開始時及び10週間後にpHを測定した。
【0254】
実施例1に記載されるように、FACSアッセイを使用してウイルス力価を決定した。試料を並行して分析した(同じアッセイ)。ウイルス力価の低下を3回測定し、各複製のペアを異なる日に分析した。
【0255】
+25±2℃及び60%±5%相対湿度(RH)で5週間(週)インキュベートした製剤の安定性勾配を線形回帰分析によって決定し、降順で表3に示した(すなわち、最小絶対勾配値/再安定が最初)。表3はまた、力価log10(InfU/mL)の減少及びpHの減少も示している。
【0256】
【表3】
【0257】
結果の要約
実施例4に記載されるように、製剤F23は、対照と比較して、+5℃または-20℃で12ヶ月間保存された場合、MVA-BN-RSVの改善された安定性を示した。さらに、製剤F23の安定性は、-20℃で26か月後でも、対照よりも改善された(データは示さず)。
【0258】
F23で処方されたMVA-BN-RSVを+25±2℃/60%±5%の相対湿度で5週間保管した場合にも、安定性の向上が見られた(表3、図3を参照のこと)。同様に、+25℃/相対湿度60%で10週間保管した場合、F23のpHは対照製剤よりも安定していた(表3を参照のこと)。
【0259】
より具体的には、他の製剤と比較して、製剤F23は、力価の低下及び勾配(表3、図3)、ならびにpHの低下(表3)に関して最良の結果を示した。
【0260】
製剤F66、F55、及びF62にはトレハロースが含まれていたが、F23には代わりにスクロースが含まれていた。ただし、この違いは、ウイルスの安定性に関しては関係ないと見なされる。
【0261】
さらに、F23はゼラチンを含むという点で他の製剤とは異なった。F23とF66を比較すると、ゼラチン及びアルブミンがアルブミン単独よりも優れた安定性を提供することが明らかであった。
【0262】
したがって、ソルビトール及び二糖(例えば、スクロース)を含む組成物に添加されたゼラチン及びアルブミンは、+25℃及び相対湿度60%で保管した場合、最高の安定性結果をもたらし、少なくとも5週間にわたってウイルス損失を限定していた。これにより、例えば温暖で湿度の高い気候が優勢である地域など、周囲の温度及び湿度が高い条件下での非凍結ワクチン製品の出荷及び保管が可能になる。
【0263】
本明細書の本発明の多くの態様は、MVA-BN、特にMVA-mBN294Bで例示または図示されているが、本発明によって具体化される原理は、他のポックスウイルス株ならびにそれらを含む他の組換えポックスウイルス株及び組成物にも適用可能であり、また、本明細書で使用される特定の株/ウイルスに必ずしも限定されるべきではない。したがって、他の組換え及び非組換えポックスウイルス及びそれらを含む組成物もまた、本発明の範囲内である。
【0264】
本明細書に記載の方法または組成物の正確な詳細は、記載された本発明の趣旨から逸脱することなく変更または修正され得ることが明らかであろう。本発明者らは、以下の特許請求の範囲及び趣旨に該当する全てのそのような変更及びバリエーションを特許請求する。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.少なくとも1つのポックスウイルス、少なくとも1つの二糖、ソルビトール、ゼラチン、アルブミン、医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価塩を含む水性組成物であって、pH7.0~pH8.5の範囲のpHを有する、前記組成物。
2.前記緩衝液がTris緩衝液またはリン酸緩衝液である、上記2に記載の組成物。
3.1mMと50mMとの間の範囲の濃度の前記Tris緩衝液を含む、上記2に記載の組成物。
4.前記二糖がトレハロース、スクロース、またはそれらの組み合わせである、上記1~3のいずれか1つに記載の組成物。
5.2%(w/v)と12%(w/v)との間の範囲の濃度の前記二糖を含む、上記1~4のいずれか1つに記載の組成物。
6.0.2%(w/v)と5%(w/v)との間の範囲の濃度のソルビトールを含む、上記1~5のいずれか1つに記載の組成物。
7.前記ゼラチンが、好ましくは0.25%(w/v)と5%(w/v)との間の範囲の濃度のゼラチン加水分解物である、上記1~6のいずれか1つに記載の組成物。
8.0.1%(w/v)と5%(w/v)との間の範囲の濃度のアルブミンを含む、上記1~7のいずれか1つに記載の組成物。
9.上記1に記載の組成物であって、前記組成物が、4%(w/v)と12%(w/v)との間の範囲の濃度の二糖、1%(w/v)と3%(w/v)との間の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)と1.2%(w/v)の間の範囲の濃度のアルブミン、0.5%(w/v)と3%(w/v)との間の濃度のゼラチン加水分解物、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5と25mMとの間の範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、前記組成物は7.3と8.1との間の範囲のpHを有する、前記組成物。
10.前記組成物が塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、好ましくは塩化ナトリウムを含む、上記1~9のいずれか1つに記載の組成物。
11.水性の生ポックスウイルス組成物を作製する方法であって、以下のステップ:
a.医薬的に許容される緩衝液中に少なくとも1つの生ポックスウイルスを含む調製物を提供するステップと、
b.ステップa)の前記ポックスウイルス調製物を、少なくとも1つの二糖、ソルビトール、ゼラチン、アルブミン、及び医薬的に許容される緩衝液、及び少なくとも1つの一価の塩を含む溶液と組み合わせるステップと、を含み、
ここで、a)及びb)の前記緩衝液が、pH7.0とpH8.5との間の範囲のpHを有する、前記方法。
12.前記緩衝液がTris緩衝液またはリン酸緩衝液である、上記11に記載の方法。
13.上記11に記載の方法であって、ここで、a)及びb)を組み合わせた後、前記組み合わせた組成物が、2%(w/v)と12%(w/v)との間の範囲の濃度の二糖(好ましくは、トレハロース、スクロースまたはそれらの組み合わせ)、0.5%(w/v)と3%(w/v)との間の範囲の濃度のソルビトール、0.2%(w/v)と3%(w/v)との間の濃度のゼラチン加水分解物、0.2%(w/v)と1.2%(w/v)との間の範囲の濃度のアルブミン、及び医薬的に許容される緩衝液(好ましくは5mMと25mMとの間の範囲の濃度のTris緩衝液)を含み、ここで前記組成物が7.3と8.1との間の範囲のpHを有する、前記方法。
14.前記ポックスウイルスがワクシニアウイルス、好ましくは改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスである、上記1~10のいずれか1つに記載の組成物または上記11~13のいずれか1つに記載の方法。
15.前記ウイルスが組換えウイルスであり、好ましくは前記組換えウイルスが呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原をコードする核酸を含む、上記1~10もしくは14のいずれか1つに記載の組成物、または上記11~14のいずれか1つに記載の方法。
【0265】
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図1
図2
図3