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特許7437398冷却が改良された自動二輪車前車部及び関連する自動二輪車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】冷却が改良された自動二輪車前車部及び関連する自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/10 20200101AFI20240215BHJP
   B62J 41/00 20200101ALI20240215BHJP
   B62J 50/30 20200101ALI20240215BHJP
   B62J 23/00 20060101ALI20240215BHJP
   B62J 15/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B62J17/10
B62J41/00
B62J50/30
B62J23/00 H
B62J15/00 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021529473
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2019060360
(87)【国際公開番号】W WO2020115636
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】102018000010889
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ・アルベジアーノ
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-289780(JP,A)
【文献】特開2008-179336(JP,A)
【文献】米国特許第06544115(US,B1)
【文献】特開平06-171568(JP,A)
【文献】特開2007-062549(JP,A)
【文献】実開昭60-110187(JP,U)
【文献】実公昭43-014018(JP,Y1)
【文献】米国特許第04445587(US,A)
【文献】実開昭63-197792(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 17/10
B62J 41/00
B62J 50/30
B62J 23/00
B62J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車であって、前記自動二輪車は、
前輪(50)を支持するための制動支持体(70)と、
前記前輪(50)を操舵するために前記制動支持体(70)に接続されたハンドル(80)と、
前記自動二輪車(10)のエンジン(75)の少なくとも1つの液体を冷却するように構成され、前記自動二輪車(10)の正面視において前記前輪(50)によって少なくとも部分的に覆われている、少なくとも1つのラジエータ(15)と、
前記自動二輪車(10)の前方に向けられた吸気口(91、91’、91’’、91’’’)と、前記ラジエータ(15)に向けられた排気口(94、94’)と、を有する少なくとも1つのエアコンベヤ(90、90’)と、
を備えており、
前記少なくとも1つのエアコンベヤ(90、90’)は、前記吸気口(91、91’、91’’、91’’’)に流入する空気を前記排気口(94、94’)に向かって誘導するように形作られており、
前記少なくとも1つのエアコンベヤ(90、90’)は、前記自動二輪車(10)を上方から見たときに、前記前輪(50)を少なくとも部分的に囲むように形作られ、前記前輪(50)および前記少なくとも1つのエアコンベヤ(90、90’)は、前記自動二輪車(10)の側面視において少なくとも部分的に重なり、
前記自動二輪車(10)の側面視において、前記少なくとも1つのエアコンベヤ(90、90’)は、実質的に前記前輪(50)の回転軸まで前記自動二輪車のフェアリング(20)から突出した独立した機器である、自動二輪車(10)。
【請求項2】
前記吸気口(91、91’、91’’、91’’’)は、前記制動支持体(70)の側方に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動二輪車(10)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのエアコンベヤ(90、90’)の前記吸気口(91、91’、91’’、91’’’)は、自動二輪車(10)の中心線平面(M)に実質的に垂直な平面上にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動二輪車(10)。
【請求項4】
前記排気口(94、94’)は、前記ラジエータ(15)の少なくとも一部を覆う、請求項1~3のいずれか1つに記載の自動二輪車(10)。
【請求項5】
前記排気口(94、94’)は、前記少なくとも1つのラジエータ(15)にシールプロファイル(98、98’)を介して液体密封に接続されている、請求項1~4のいずれか1つに記載の自動二輪車(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのエアコンベヤ(90、90’)は、前記前輪(50)の任意の操舵度で前記制動支持体(70)を包むように形作られている、請求項1~5のいずれか1つに記載の自動二輪車(10)。
【請求項7】
前記エアコンベヤ(90、90’)が2つ以上であるとき、前記エアコンベヤ(90、90’)は、前記前輪(50)の反対側に配置されている、又は全てが前記前輪(50)の同一側に配置されている、請求項1~6のいずれか1つに記載の自動二輪車(10)。
【請求項8】
前記エアコンベヤ(90、90’)が2つ以上である場合、前記エアコンベヤ(90、90’)は、互いに流動的に分割されている、請求項1~7のいずれか1つに記載の自動二輪車(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのエアコンベヤ(90、90’)は、正面視で前記自動二輪車(10)のフェアリング(20)が側方に張り出さないように形作られている、請求項1~8のいずれか1つに記載の自動二輪車(10)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのエアコンベヤ(90、90’)は、前記吸気口(91、91’、91’’、91’’’)から前記排気口(94、94’)に進むにつれて増加する横方向の断面を有する、請求項1~9のいずれか1つに記載の自動二輪車(10)。
【請求項11】
前記エアコンベヤ(90、90’)の内部には、前記エアコンベヤ(90、90’)内の空気横断面を変更するように構成された少なくとも1つの可動シャッタ(99)が配置されている、請求項1~10のいずれか1つに記載の自動二輪車(10)。
【請求項12】
前記ラジエータ(15)は、第2の冷却ラジエータ(17)に流入する交換用液体を介して前記第2の冷却ラジエータ(17)と熱的に接続される、請求項1~11のいずれか1つに記載の自動二輪車(10)。
【請求項13】
前記ラジエータ(15)は、ラジエータ(18)の第1の部分と、前記ラジエータ(18)の前記第1の部分から分割されたラジエータ(19)の第2の部分と、を備え、前記ラジエータの各部分は、前記自動二輪車(10)のそれぞれの液体を冷却するように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の自動二輪車(10)。
【請求項14】
前記前輪(50)の上方に配置されたフェンダ(60)を備え、前記フェンダ(60)は、前進する自動二輪車に衝突する空気を側方にそらすように構成された少なくとも1つのフラップ(65)を備える、請求項1~13のいずれか1項に記載の自動二輪車(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却が改良された自動二輪車の前車部に関するものであり、特に、レーシング用途のために意図されたものであり、この前車部を含む関連するスポーツ自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示されているように、自動二輪車1、特にレーシング用の自動二輪車の空気冷却システムの口部4は、フェアリング2の前部にあることが知られている。具体的には、それは、自動二輪車1のカウル3の下方に位置し、通常、図1に示されるように、略楕円形である。図1に示すように、その車両を前方から見ると、前記口部4は、前輪5、そのフェンダ6、及び車両1の前輪指示システム、すなわち、フロントサスペンション7によって覆われている。つまり、前進中に車両1にあたる空気流は、車輪5、フェンダ6およびサスペンション7に接触し、口部4に入るが、空気流の別の部分は、前輪5、そのフェンダ6およびフロントサスペンション7によって覆われていない口部4の部分に直接入る。制動時には、自動二輪車1が前方にアンバランスになり、サスペンション7が短くなる。カウル3は、シャーシ及びフェアリング2と共に前輪5に対して垂直方向に移動し、その結果、前輪5’及びサスペンション7’によるフェンダ6’によって覆われていない口部4の部分は、かなり減少する。さらに、制動時には、自動二輪車1に遭遇する空気流は、自動二輪の速度が遅いために、遅くなる。特に、気象が高温時である場合、これら2つの要因は、自動二輪車1のエンジンの実質的なオーバーヒートを発生させ得る。逆に、加速時には、フェアリング2、シャーシ、及びカウル2が地面から上昇し、前輪5から離れるように移動する。この場合には、口部4の障害物のない部分が大きくなる。空気流は、より速い速度により加速するので、エンジン流体を冷却するための空気量は、場合によっては過剰になる。サスペンション7の延伸と、空気流に直接さらされる口部4の部分の増加とにより、自動二輪車1を減速させ、その速度を減速させる、望ましくないパラシュート効果を生じさせる。
【0003】
クーリングダクトのセクションのこのような強い可変性は、常にエンジンの適切なクーリングを保証するために、(水および/またはオイルである)液体ラジエータのオーバーサイジングを強いる。このオーバーサイジングは、明らかに、全体的な寸法、重量及びコストの点でさらに欠点がある。
【0004】
上述したように、例えば1周する車両で測定したところ、冷却流が最大になる場合、水及びオイルの温度が直進路で激しく低下し、制動時に激しく上昇することが確認された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、制動時及び加速時の両方において実質的に均一な性能を確保することができるエンジン冷却液冷却システムを有することが有用である。また、上記と組み合わせて、加速段階中の自動二輪車の空力抵抗係数に関して性能を低下させないシステムを有することも有用である。
【0006】
従って、従来技術を参照して述べた欠点及び制限を解決する必要性があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような必要性は、請求項1に記載の自動二輪車によって達成され、本発明のさらなる特徴は、従属請求項によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の好ましい非限定的な実施形態の説明からより明らかになる。
図1図1は、従来技術の自動二輪車の正面図である。
図2A図2Aは、本発明の第1実施形態に係る自動二輪車の正面図である。
図2B図2Bは、図2Aの自動二輪車を上から見た図である。
図3A図3Aは、本発明の第2実施形態に係る自動二輪車の正面図である。
図3B図3Bは、図3Aの自動二輪車を上から見た図である。
図4A図4Aは、本発明の第3実施形態に係る自動二輪車の正面図である。
図4B図4Bは、図4Aの自動二輪車を上から見た図である。
図5図5は、本発明に係る自動二輪車の側面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態による、ラジエータおよびエアコンベヤを含む冷却システムの不等角投影図を示す。
図7図7は、エアコンベヤの特定のバージョンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1つまたは複数の実施形態の以下の説明は、添付の図面に関する。図面中の同一符号は、同一または類似の要素を識別する。本発明の目的は、添付の特許請求の範囲によって定義される。以下に説明する解決策の技術的詳細、構造または特徴は、任意の方法で互いに組み合わせることができる。
【0010】
上記の図を参照すると、符号10は、本発明に係る自動二輪車である。
【0011】
自動二輪車10は、後輪55を支持する後車軸に前輪50を支持する前車部から延びている。
【0012】
前輪50は、制動支持体70、典型的には、ハンドル80に連結されたサスペンションを含むフォークによって支持されている。本発明の目的のために、前輪50のための他のタイプの制動支持体が提供されてもよい。従って、典型的な従来のフォーク解決策及び上下逆さまステムを備える従来のフォーク解決策だけでなく、部分的に片持ち梁のようにされた前輪を備えた、いわゆるシングルアーム解決策も提供できる。
【0013】
自動二輪車10は、冷却システムを備えた内燃機関75を備えている。特に、冷却システムは、水、すなわち冷却液や、エンジン75の潤滑油のような1以上の液体に関する少なくとも1つの冷却ラジエータ15を含む。
【0014】
前記冷却ラジエータ15は、その中で循環する液体(水またはオイル)と、既知の方法で適切にフィン付けされた冷却ラジエータ15の熱交換面に適宜運ばれる外気と、の間の熱交換を行う。
【0015】
有利には、少なくとも1つのエアコンベヤ90が、自動二輪車10の前車部に設けられる。前記コンベヤ90は、排気口94を有する第1のベース部分93と、少なくとも1つの吸気口91を含む第2の細長い部分92とを含む。コンベヤ91の前記部分92、93は、互いに連続しており、実質的に内部のリリーフがなく、コンベヤ90の少なくとも1つの吸気口91からコンベヤ排気口94までの実質的に層状のパターンに従って空気を運ばれるように成形されたチャンネルを内部に画定する。
【0016】
細長い部分92は、そのステアリング運動の各々において前輪50と並ぶように配置されている。細長い部分92は、図5に示すように車両を側方から見ると、吸気口91が自動二輪車10の制動支持体70と実質的に並んで配置されるように形成される。前輪50は部分的に、または少なくとも部分的にラジエータ15を覆い、自動二輪車10の前方を観察すると、流入する空気の流れを制限する。従って、吸気口91は、ラジエータ15に対して前方位置にあるので、前輪50及び制動支持体70の動きに関係なく空気を捕捉することができる。
【0017】
コンベヤ90の吸気口91は、自動二輪車10の正面に対向するように配置されている。特に、吸気口91は、自動二輪車10の中心線平面Mに対して略垂直な平面上に位置している。この平面は、中心線平面Mに対して実質的に垂直であることに加えて、地面に対する垂直方向に対しては傾斜しており、吸気口91の上部が下部に対して後方に位置するようになっている。この傾斜は、自動二輪車10が制動により前方にピッチすると、吸気口が地面に対してほぼ垂直な位置にあるので、コンベヤ90に入る空気流量を向上させることができる。あるいは、図5に示すように、吸気口91を制動支持体70の傾斜角度と同じだけ地面に対して傾斜させることができる。この場合、後述するように、フェンダ60が空気を側方にそらすような形状であれば、この傾斜した吸気口91は、フェンダによってそれた空気を集めることができる。
【0018】
図2B図3B、及び図4Bに示すように、エアコンベヤ90は、一般に、前輪50、特にその後方部を少なくとも部分的に包囲するような形状をしている。コンベヤ90は、側面から見ると、図5に示すように、少なくとも部分的に車輪50と重なっている。コンベヤ90はまた、前輪50のステアリングの妨げとならないように形成されている。MotoGpTM(登録商標)で競争するもののような、スピード競争のための自動二輪車10において、前輪50のステアリング角度は、他のタイプの自動二輪車、例えば、スクータまたはエンデューロバイクに比べて小さいことに留意されたい。
これらのスポーツバイクにおけるラジエータ15は、前輪50の後方に位置し、自動二輪車10の前進動作によりラジエータ15に入る空気流の一部が前輪50自体によって遮られる。前輪50の回転軸は、自動二輪車10を側方から見ると、ラジエータ15の上端と下端との間に配置されている。自動二輪車が積み荷を降ろされて直立位置にあるときに、自動二輪車10を側方から見ると、コンベヤ90は、前輪50を囲み、前輪50と重なる。特に、各コンベヤ90の吸気口91は、自動二輪車10を側方から見ると、少なくとも部分的に前輪50の輪郭内にある。コンベヤ90及び関連する吸気口91のこの配置は、それが部分的に前輪50によって覆われているので、該配置でない場合にラジエータ15が受け入れない空気を部分的に又は完全に回収することを可能にする。好ましくは、少なくとも1つのエアコンベヤ90、90’の吸気口91、91’、91’’、91’’’は、自動二輪車10を前方から見た場合に、前輪50の側方に位置する。
【0019】
ベース部93は、コンベヤ90から回収された全ての空気をラジエータ15に向けて運ばれるようにラジエータ15を完全に又は部分的に覆うように形成されている。コンベヤ90のベース部分93は、ラジエータ15に直接接続する、またはシーリングプロファイル98を介して接続することができ、そのため、コンベヤ90とラジエータ15との間の流体接続は液体密封である。
【0020】
従って、コンベヤ90に入る空気は、全体的にラジエータ15に向かって運ばれ、そこを通過する。また、自動二輪車10は、ラジエータ15を通過した空気が、図5に示すように、開口部85を通って車両10から逃げることができるように、フェアリング20上に開口部85を有する。
【0021】
図2Aおよび図2Bに示すように、エアコンベヤ90は、1つであってもよく、単一の吸気口91を備えていてもよい。図2Bに示されたこの実施形態では、コンベヤ90は、ラジエータ15の一部に入ってくる空気を運ぶことができ、ラジエータ15の残りの部分16を、コンベヤがない従来の方法で、空気によって冷却することができる。別の実施形態(図示せず)では、コンベヤ90は、ラジエータ15を完全に覆うような形状である。
【0022】
図3Aおよび図3Bに示すように、エアコンベヤ90、90’は、2つであってもよく、それぞれ自身の吸気口91、91’を備えていてもよい。この第2の実施形態では、ラジエータ15は、2つのラジエータ部分18、19’を備える。第1コンベヤ90は、第1ラジエータ部分18に向けて集められた空気を運び、第2コンベヤ90’は、第2ラジエータ部分19’に向けて集められた空気を運ぶ。第1ラジエータ部分18は、第1の液体、例えば、エンジンオイルを冷却するように構成されてもよく、第2ラジエータ部分19’は、第2の液体、例えば、エンジン75の冷却水を冷却するように構成されてもよい。図示されていない代替実施形態において、両コンベヤ90、90’は、自動二輪車10の単一の液体を冷却するように構成された単一のラジエータ15に集められた空気を運ぶ。図示されていないさらなる代替実施形態において、2つのコンベヤ90、90’は、実際には単一の部品であり、すなわち、冷却ラジエータに面する共通のベース部分と、この共通のベース部分から分岐して、前輪50の左右の側方に位置する2つの細長い部分と、を含む。この形態は、コンベヤの内部の空気流を最適化することを可能にし、これにより、ラジエータとの空気の交換を可能にする。この概念をより良く理解するために、以下の実施形態のコンベヤを参照することができる。
【0023】
図4Aおよび図4Bに示すように、エアコンベヤ90は1つであってもよいが、2つの細長い部分92、92’と、各細長い部分92、92’のための2つの吸気口91、91’、91’’、91’’’とを備えていてもよい。この第3実施形態では、コンベヤは、単一の部品であり、共通のベース部分93と、前輪50の左右にそれぞれ分岐する2つの細長い部分92、92’と、を有する。コンベヤ90はまた、構造及び組立を容易にするために、自動二輪車10の中心線Mであわせられた2つの部材に形成されてもよい。コンベヤ90の2つの細長い部分92、92’はそれぞれ2つの吸気口を備えている。左の細長い部分92は、第1の吸気口91および第2の吸気口91’を有するが、右の細長い部分92’は、第3の吸気口91’’および第4の吸気口91’’’’を含む。左右の用語は、図2B図3Bおよび図4Bに示されるように、上から見た自動二輪車10を指す。前記吸気口はまた、3つであってもよく、3つのうち2つが一方の細長い部分上にあり、1つが他方の細長い部分上にあってもよい。コンベヤ90は、1つの上側部分及び1つの下側部分である2つの部分によってコンベヤ90を分割する実質的に長手方向の仕切り(図示せず)によって内部で分割されてもよい。上側吸気口91’、91’’’はコンベヤ90の上側部分における吸気口として機能し、下側吸気口91、91’’’はコンベヤ90の下側部分における吸気口として機能する。この上側部分および下側部分は、ラジエータ15の2つのそれぞれの部分、上側部分および下側部分、に空気を送達するように形作られ、配置されている。ラジエータ15の上側部分および下側部分のそれぞれは、例えば1種類のオイルやそうでなければ水である、自身の冷却液を空気で冷却するように構成されている。それゆえ、この実施形態では、排気口は、1つの上側及び1つの下側の2つであってもよい。代替的には、排気口94がコンベヤ90の上側部分および下側部分の両方のためのものであるように、排気口の前で内部仕切りを遮ってもよい。図6に示す形態では、各エアコンベヤ90、90’は、それを2つの流路(上側及び下側)に分離する仕切り(視覚化されていない)を備える。この仕切りは、吸気口91、91’の下流のエアコンベヤ90、90’に配置されている。従って、上側空気流路は、下側空気流路からそれぞれの排気口94、94’まで分離される。排気口94、94’には、一方の上方に配置された2つの独立したラジエータ18、19がある。別の実施形態では、仕切りは存在せず、2つのエアコンベヤ90、90’の各々は、ラジエータ15の上側部分18および下側部分19の両方に空気を運ぶ。エアコンベヤ90、90’とラジエータ部分18、19との間の流体接続は、それぞれのシールプロファイル98、98’を介して実施される。
【0024】
上述した3つの実施形態の各々において、コンベヤ90内への空気の流入は、図2A図3A図4Aに見られるように、制動支持体70、71の車輪50、51の位置とフロントフェンダ60、61の位置とは無関係である。コンベヤ90の通路部は自動二輪車10の姿勢の変化に伴って変化しないので、例えば、(既知の解決策で起こるような)加速時に大きくなり、制動時に小さくなることがないので、冷却ラジエータ15の冷却効率のより高い安定性を保証することができる。
【0025】
別の数のコンベヤ90は、車両の冷却ラジエータの数及び配置に従って容易に設計するできることは明らかである。例えば、コンベヤはすべて前輪50の同じ側から配置されていてもよいし、又は3個であってもよい。
【0026】
前輪50の側方にあるエアコンベヤ90の場合、これらは、吸気口91及び/又は排気口94の位置(車輪中心に対する高さ及び距離)及び面積に関して、対称的であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
この少なくとも1つのコンベヤ90は、好ましくは、炭素繊維のようなポリマー材料または複合材料から作られる。
【0028】
走行中の自動二輪車10の空気力学を最適化するために、少なくとも1つのエアコンベヤ90は、前方から自動二輪車10を見ると、フェアリング20を越えて突出しない。このようにして、自動二輪車10の空気力学が損なわれず、冷却ラジエータ15へ向かう空気流の運搬能力が最大となる。駐車した自動二輪車10を前方から見ると、コンベヤ90の吸気口91は、カウル30の下方でかつフェアリング20が占める最大空間内で、前輪50の軸の上方に配置されている。
【0029】
さらに、コンベヤ90の内部では、流れ方向に垂直な部分は、吸気口91から排気口94に向かうにつれて次第に大きくなり、コンベヤ90を出る空気の速度を減少させ、それゆえ、ラジエータ15との熱交換を向上させることができる。
【0030】
図7に示すように、エアコンベヤ90は、コンベヤ90自体の空気通路部分を修正するために、コンベヤ90内に配置された可動シャッタ99を備えてもよい。また、可動シャッタ99は、吸気口91の近傍に配置されていることが好ましい。この可動シャッタ99は、自動二輪車が配置されている場所の環境条件、またはその運転状態に応じて、コンベヤ91内を通過する空気を調節し、エンジン75の冷却流体を加熱または冷却するように手動で駆動されてもよいし、モータ駆動されてもよい。
【0031】
前述したように、冷却ラジエータは、1つよりも多く、互いに並んで又は一方が他方のよりも上方に配置されていてもよい。したがって、ラジエータ15は、2つの独立したラジエータまたは2つの独立し、分離したラジエータであるかのように、2つの独立した部分18、19を有する単一のラジエータであってもよい。後者の場合、図5に模式的に示すように、ラジエータは2つであってもよく、他方の15、17の前方に一方が配置されてもよい。この場合、前方に配置されたラジエータは、後方に配置されたラジエータを覆う。このため、後方にあるラジエータ17は、2つのラジエータ15、18の間で交換流体を運搬するダクト21によって、前方にあるラジエータに熱的に接続される。前方のラジエータ15は、第2のラジエータ17を冷却するだけでなく、自動二輪車10の液体、例えばエンジンオイルを冷却するために使用されてもよい。
【0032】
自動二輪車10は、図5に示すように、フラップ65が取り付けられたフェンダをさらに備えていてもよい。このフラップ65は、前進するにつれて自動二輪車10に衝突する空気流を側方にずらすように形成されている。このフラップ65は、前輪50が操舵されていないときに、中心線平面Mにリッジを有していてもよい。このフラップ65は、自動二輪車10のフェアリング20の側部に向かって頂点から下がる2つの面を有する。このフラップ65は、そらされなければ自動二輪車10のカウル30とフェンダ60との間の領域に入るであろう空気を側方へ、かつフェアリング20を超えて、そらすように形作られている。このようにして、ラジエータが通常搭載された自動二輪車10の部分によって生じる、いわゆるパラシュート効果を最小限にする。特に、フラップ65は、コンベヤ90の吸気口に向かって移動することによって自動二輪車10にあたる空気をそらし、それに入る空気流を増加させるような形状とすることができる。
【0033】
当業者は、以下の特許請求の範囲に定義された保護の範囲内にある特定の及び付随的な必要性を満たすために、上記の解決策に対するいくつかの変更及び調整を行うことができる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7