(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】共重合体を含む洗剤用添加剤、ソイルリリース剤、微生物付着防止剤、繊維処理剤、水処理薬剤配合物及び塗料配合物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/37 20060101AFI20240215BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240215BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20240215BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20240215BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240215BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240215BHJP
D06L 1/12 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C11D3/37
C02F1/00 U
C08F220/12
C08F220/30
C09D7/65
C09D201/00
D06L1/12
(21)【出願番号】P 2021551310
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036911
(87)【国際公開番号】W WO2021065910
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2019180708
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】張替 尊子
(72)【発明者】
【氏名】金尾 竜佑
(72)【発明者】
【氏名】牧野 勇樹
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-292394(JP,A)
【文献】特開平09-267034(JP,A)
【文献】特開2004-285339(JP,A)
【文献】特開2007-231260(JP,A)
【文献】特開2008-138014(JP,A)
【文献】特開2007-247126(JP,A)
【文献】特開2009-051821(JP,A)
【文献】特表2007-529604(JP,A)
【文献】特開2008-038078(JP,A)
【文献】特表2003-500496(JP,A)
【文献】特開2010-121045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00- 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基、オキシアルキレン基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する単量体(A)由来の構造単位(a)と、芳香族基含有単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体を含み、
該
構造単位(a)及び(b)の含有割合が、それぞれ、全構造単位100質量%に対して50~99質量%、1~50質量%であり、
該親水性基含有単量体(A)は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体を含み、
該芳香族基含有単量体(B)は、下記式(3);
【化1】
(式中、R
4、R
5、R
6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。R
7は、芳香族基を表す。)で表される化合物である、洗剤用添加剤(但し、Smallの計算式にHoyの凝集エネルギー定数を代入して得られる溶解度パラメーター(SP値)が9以下であって、分子中に1個の重合性基を有する単量体を50質量%以上含有する単量体成分を重合して得られる重合体を含むものを除く)。
【請求項2】
前記共重合体は、構造単位(a)が、下記式(1);
【化2】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子、若しくは、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基、又は、該親水性基を有していてもよい炭素数1~3のアルキル基を表す。Zは、水素原子、メチル基、又は、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する炭素数2~30の炭化水素基を表す。Aは、同一又は異なって、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有していてもよいアルキレン基を表す。nは、(AO)の平均付加モル数を表し、0~200である。x、wは、同一又は異なって、0~4の数を表す。y、vは、同一又は異なって、0又は1を表す。)で表される、請求項1に記載の洗剤用添加剤。
【請求項3】
水酸基、オキシアルキレン基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する単量体(A)由来の構造単位(a)と、芳香族基含有単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体を含み、
該親水性基含有単量体(A)は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体であり、
該芳香族基含有単量体(B)は、下記の方法で算出される単独重合体の溶解性パラメータが5~12(cal/cm
3)
1/2であり、
全構造単位100質量%に対する構造単位(a)の含有割合が45~90質量%であり、全構造単位100質量%に対する構造単位(b)の含有割合が10~50質量%である、洗剤用添加剤(
但し、下記式(7)で示される単量体(A1)70~10重量%、
CH
2
=C(R
12
)COO-R
13
(7)
(式中、R
12
は水素原子またはCH
3
、R
13
は炭素数4~22のアルキル基をそれぞれ表す。)
下記式(8)で示される単量体(B1)30~90重量%、
CH
2
=C(R
12
)COO(C
n1
H
2n1
O)
m1
R
14
(8)
(式中、R
12
は水素原子またはCH
3
、R
14
は水素原子または炭素数1~4のアルキル基、n1は1~3の整数、m1は4~25の整数をそれぞれ表す。)
及び、上記単量体(A1)、(B1)以外の重合性ビニル単量体(C1)0~50重量%を共重合させた数平均分子量が10,000~2,000,000である重合体を含むものを除く)。
<溶解性パラメータの算出方法>
単独重合体の溶解性パラメータ(δ)(cal/cm
3)
1/2は、該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー(△ei)及びモル体積(△vi)に基づいて、下記の計算法により算出される。
δ=(△ei/△vi)
1/2
【請求項4】
前記芳香族基含有単量体(B)は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン、スチレンスルホン酸及び下記式(3);
【化3】
(式中、R
4、R
5、R
6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。R
7は、芳香族基を表す。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の洗剤用添加剤。
【請求項5】
前記共重合体は、前記芳香族基含有単量体(B)由来の構造単位(b)以外の疎水性単量体(C)由来の構造単位(c)、及び/又は、前記構造単位(a)、(b)及び(c)以外のその他の構造単位(e)を有していてもよく、全構造単位100質量%に対する構造単位(e)の割合が0~20質量%である、請求項3又は4に記載の洗剤用添加剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の共重合体を含む、ソイルリリース剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体を含む洗剤用添加剤、ソイルリリース剤、微生物付着防止剤、繊維処理剤、水処理薬剤配合物及び塗料配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料類に用いられる洗剤には、洗剤の洗浄効果を向上させることを目的として、ゼオライト、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールなどの洗剤ビルダー(洗剤助剤)を配合することが行われている。
上記の各種洗剤ビルダーに加えて、近年では、重合体が洗剤ビルダーとして洗剤組成物に配合されている。このような重合体に関して、例えば、特許文献1、2には、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸系単量体と(ポリ)アルキレングリコール系単量体との共重合体が開示されている。また、このようなポリカルボン酸系共重合体以外にも、洗剤用途に用いられる重合体として、例えば特許文献3には、所定の構成単位(A)及び所定の構成単位(B)を有するポリマーを含有する再汚染防止剤が開示されている。特許文献4には、1~3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマー由来の構成単位(A)、及び炭素数4~22の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基、あるいはアリールアルキル基又はアリール基から選ばれる少なくとも1種の疎水性基を有し、且つ、1~3級アミノ基を有しない不飽和結合含有モノマー由来の構成単位(B)を有し、ポリマー中の構成単位(A)の含有量が50~99重量%、構成単位(B)の含有量が1~50重量%であり、重量平均分子量2,000~30,000のポリマーからなる繊維用汚れ放出剤が開示されている。
【0003】
また、衛生に対する意識の高まりから、衣料用洗剤においても、洗浄効果に加えて部屋干し等で増殖しがちな菌の増殖を防止する目的で、抗菌性や微生物付着防止能を付与した製品が上市されている。例えば特許文献5には、ジカルボン酸単位、アルキレングリコール単位およびポリアルキレングリコール単位がエステル結合を介して結合しているポリマーの、繊維表面の微生物コロニー形成を防止するための使用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-231260号公報
【文献】特開2002-003551号公報
【文献】特開2009-249743号公報
【文献】特開2007-247126号公報
【文献】欧州特許第2922942号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、衣類等に用いられる素材として、耐久性に優れ、乾燥が速く、皺になりにくい等の点から、ポリエステル等の化繊が増加している。ポリエステルには上記のようなメリットがある一方で、疎水性繊維であるため皮脂汚れとの吸着力が強く、綿等に比べて汚れが落ちにくいというデメリットがある。また、近年、共働き世帯が増えていることに伴い、洗濯物をまとめて洗うことが多くなっており、洗濯物が汚れたまま長時間放置されることも、汚れが落ちにくいことの一因である。上述のとおり、洗剤や繊維の表面コートに用いられる種々の重合体が開示されているが、このような状況の中で、従来の種々の重合体は、洗浄力において充分とはいえず、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、従来の重合体よりも洗浄力に優れる共重合体を含む洗剤用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、重合体について種々検討したところ、特定の親水性基を有する単量体と芳香族基を有する単量体との共重合体において、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位の含有割合を特定の範囲とすることにより、従来の重合体よりも優れた洗浄力を発揮することを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、水酸基、オキシアルキレン基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する単量体(A)由来の構造単位(a)と、芳香族基含有単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体を含む洗剤用添加剤である。
【0009】
上記構造単位(a)は、下記式(1);
【0010】
【0011】
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、若しくは、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基、又は、該親水性基を有していてもよい炭素数1~3のアルキル基を表す。Zは、水素原子、メチル基、又は、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する炭素数2~30の炭化水素基を表す。Aは、同一又は異なって、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有していてもよいアルキレン基を表す。nは、(AO)の平均付加モル数を表し、0~200の数である。x、wは、同一又は異なって、0~4の数を表す。y、vは、同一又は異なって、0又は1を表す。)で表されることが好ましい。
【0012】
上記芳香族基含有単量体(B)は、単独重合体の溶解性パラメータが13以下であることが好ましい。
【0013】
上記共重合体は、構造単位(a)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して10~99質量%であることが好ましい。
【0014】
上記共重合体は、構造単位(b)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して1~74質量%であることが好ましい。
【0015】
上記共重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位の含有割合が49質量%以下であることが好ましい。
【0016】
上記共重合体は、芳香族基含有単量体(B)由来の構造単位(b)以外の疎水性単量体(C)由来の構造単位(c)を有していてもよく、構造単位(b)と構造単位(c)との合計割合が全構造単位100質量%に対して1~90質量%であることが好ましい。
【0017】
上記共重合体は、前記単量体(A)、芳香族基含有単量体(B)及び疎水性単量体(C)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合が、全構造単位100質量%に対して0~30質量%であることが好ましい。
【0018】
上記芳香族基含有単量体(B)は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン、スチレンスルホン酸及び下記式(3);
【0019】
【0020】
(式中、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。R7は、芳香族基を表す。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
上記疎水性単量体(C)は、下記式(5);
【0022】
【0023】
(式中、R8、R9、R10は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。R11は、炭素数1~30の鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
【0024】
上記共重合体は、重量平均分子量が、3000~300000であることが好ましい。
【0025】
本発明はまた、上記共重合体と該共重合体以外の洗剤用添加剤とを含むことを特徴とする洗剤組成物でもある。
【0026】
本発明は更に、上記共重合体を含む、ソイルリリース剤でもある。
【0027】
本発明は更に、上記共重合体を含む微生物付着防止剤でもある。
【0028】
本発明は更に、上記共重合体を含む繊維処理剤でもある。
【0029】
本発明は更に、上記共重合体を含む、水処理薬剤配合物でもある。
【0030】
本発明は更に、上記共重合体を含む、塗料配合物でもある。
【0031】
本発明は更に、上記共重合体を洗剤用添加剤として使用する共重合体の使用方法でもある。
【0032】
本発明は更に、上記共重合体をソイルリリース剤として使用する共重合体の使用方法でもある。
【0033】
本発明は更に、上記共重合体を微生物付着剤として使用する共重合体の使用方法でもある。
【0034】
本発明は更に、上記共重合体を用いて微生物の付着を防止する微生物付着防止方法でもある。
【0035】
本発明は更に、上記共重合体を水処理剤として使用する共重合体の使用方法でもある。
【0036】
本発明は更に、上記共重合体を塗料添加剤として使用する共重合体の使用方法でもある。
【0037】
本発明は更に、上記共重合体を用いて繊維を処理する繊維処理方法でもある。
【0038】
本発明は更に、機能性繊維を製造する方法であって、上記製造方法は、上記共重合体を用いて繊維を処理する工程を含む機能性繊維の製造方法でもある。
【発明の効果】
【0039】
本発明の洗剤用添加剤は、上述の構成よりなり、従来の重合体よりも洗浄力に優れるため、ポリエステル等の繊維製品に対する洗剤等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】実施例6、比較例4、5の微生物付着評価結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0042】
本発明の洗剤用添加剤に含まれる共重合体は、水酸基、オキシアルキレン基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する単量体(A)(以下、親水性基含有単量体(A)ともいう。)由来の構造単位(a)と芳香族基含有単量体(B)由来の構造単位(b)とを有するものである。
本発明の洗剤用添加剤が優れた洗浄力を発揮する作用機序は以下のように推定される。上記共重合体は、構造単位(b)に繊維への吸着力が強い芳香族基を有するため、この共重合体を含む洗剤を用いてポリエステル等の衣類等を洗濯することで、構造単位(b)における芳香族基がポリエステル等の疎水性繊維に対して吸着し、洗濯後においても共重合体が繊維に吸着した状態を維持することができる。このような衣類には、吸着した共重合体の上から汚れが付着することになるため、汚れが繊維の奥に浸透することが充分に抑制され、界面活性剤の作用により、共重合体とともに汚れが容易に除去されると考えられる。また、上記共重合体が親水性基を有することにより、洗濯水の衣類等への浸透速度を向上させることができ、これによっても汚れが落ちやすくなると考えられる。更に、本発明の上記共重合体のもう一つの機能は、界面活性剤と相互作用し、布に付着した汚れに働きかけ、汚れを浮かびあがらせることができるというものである。ポリマーが付着した汚れ粒子は分散安定性が良好なため、再度布に付着することを防止することができる。
これらの作用により、上記共重合体は洗浄力に優れる。また上記共重合体を用いて洗濯を繰り返すことにより、衣類等に共重合体が定着することで優れた防汚性を発揮し、また汚れを落としやすくすることができるソイルリリース性を充分に発揮する。
【0043】
上記共重合体は、上述のとおり構造単位(b)に繊維への吸着力が強い芳香族基を有するため、上記共重合体を用いて繊維を処理することにより共重合体が繊維に充分に固定され、細菌や真菌等の微生物の繊維への付着を抑制することもできる。
また、繊維以外であっても疎水性の表面を有するものであれば、構造単位(b)における芳香族基により共重合体が疎水性の表面に吸着し、充分に固定されて微生物付着抑制効果を発揮することができるため、防菌性が求められる種々の用途に好適に用いられる。
【0044】
上記共重合体は、構造単位(a)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して10~99質量%であることが好ましい。これにより、上記共重合体の親水性と疎水性のバランスがより好適な範囲となり、洗浄力により優れることとなる。より好ましくは15~95質量%であり、更に好ましくは20~90質量%であり、特に好ましくは25~80質量%であり、一層好ましくは30~80質量%であり、より一層好ましくは45~75質量%であり、最も好ましくは50~70質量%である。
【0045】
上記共重合体は、構造単位(b)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して1~74質量%であることが好ましい。これにより、上記洗剤用共重合体が繊維への吸着性により優れたものとなり、洗浄力により優れることとなる。より好ましくは1~70質量%であり、更に好ましくは5~70質量%であり、特に好ましくは10~70質量%であり、一層好ましくは10~65質量%であり、より一層好ましくは15~60質量%であり、最も好ましくは20~50質量%である。
【0046】
上記共重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位を含んでもよい。該構造単位の含有割合は、全構造単位100質量%に対して49質量%以下であることが好ましい。これにより、液体洗剤との相溶性や配合安定性が向上する。(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位の含有割合として好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、最も好ましくは15質量%以下である。
【0047】
上記共重合体は、芳香族基含有単量体(B)由来の構造単位(b)以外の疎水性単量体(C)由来の構造単位(c)を有していてもよい。
上記共重合体における構造単位(c)の割合は、全構造単位100質量%に対して構造単位(b)と構造単位(c)との合計割合が1~90質量%となる割合であることが好ましい。より好ましくは、構造単位(b)と構造単位(c)との合計割合が5~85質量%となる割合であり、更に好ましくは、合計割合が10~80質量%となる割合であり、一層好ましくは15~70質量%であり、より一層好ましくは20~60質量%であり、最も好ましくは20~50質量%である。
【0048】
上記共重合体は、上記構造単位(a)、(b)及び(c)以外のその他の構造単位(e)を有していてもよい。
上記共重合体における構造単位(e)の割合は、全構造単位100質量%に対して0~30質量%であることが好ましい。
より好ましくは0~20質量%であり、更に好ましくは0~10質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
【0049】
上記共重合体は、重量平均分子量が、3000~300000であることが好ましい。これにより上記共重合体の繊維への吸着力がより向上する。より好ましくは5000~250000であり、更に好ましくは7000~220000であり、特に好ましくは10000~200000であり、一層好ましくは12000~170000であり、より一層好ましくは15000~100000であり、最も好ましくは17000~90000である。
上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0050】
<親水性基含有単量体(A)>
上記親水性基含有単量体(A)は、水酸基、オキシアルキレン基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有するものである。
上記親水性基における塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属等の1価金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属等の2価金属塩;アンモニウム塩;有機アミン塩等が挙げられる。
上記親水性基として好ましくは水酸基、オキシアルキレン基である。
上記親水性基含有単量体(A)は、親水性基を同一又は異なって複数有していてもよく、例えば、2以上の水酸基を有する形態や、水酸基とオキシアルキレン基とを有する形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0051】
上記親水性基含有単量体(A)は、下記式(2);
【0052】
【0053】
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、若しくは、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基、又は、該親水性基を有していてもよい炭素数1~3のアルキル基を表す。Zは、水素原子、メチル基、又は、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する炭素数2~30の炭化水素基を表す。Aは、同一又は異なって、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有していてもよいアルキレン基を表す。nは、(AO)の平均付加モル数を表し、0~200の数である。x、wは、同一又は異なって、0~4の数を表す。y、vは、同一又は異なって、0又は1を表す。)で表される単量体を含むことが好ましい。すなわち、上記共重合体は、上記式(1)で表される構造単位(a)を有することが好ましい。
【0054】
上記式(1)、(2)におけるR1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、若しくは、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基、又は、該親水性基を有していてもよい炭素数1~3のアルキル基を表す。
上記アルキル基として好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基であり、1又は2であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基であることが好ましい。より好ましくはR1、R2が水素原子であって、R3が水素原子又はメチル基である。更に好ましくは、R1、R2が水素原子であって、R3がメチル基である。
【0055】
上記式(1)、(2)におけるZは、水素原子、メチル基、又は、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する炭素数2~30の炭化水素基を表す。
上記炭化水素基としては、特に制限されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の鎖状炭化水素基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の環状炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基は、分岐を有していてもよく、分岐を有する場合の炭化水素基の炭素数は、主鎖及び分岐鎖の合計の炭素数を意味する。
上記アルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルへキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基、イコシル基等が挙げられる。
上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
上記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基、イコシニル基等が挙げられる。
【0056】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、1-メトキシ-4-メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ブチルメチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジブチルフェニル基、ビフェニル基、ビフェニルメチル基、ビフェニルエチル基、ナフチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル等が挙げられる。
【0057】
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記シクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
上記炭化水素基として、好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、より好ましくはアルキル基である。
【0058】
上記炭化水素基の炭素数として好ましくは2~20であり、より好ましくは2~15であり、更に好ましくは2~10であり、特に好ましくは2~5である。
【0059】
上記Zとして好ましくは、水素原子、メチル基である。
【0060】
上記Aは、同一又は異なって、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有していてもよいアルキレン基を表す。これは、ポリアルキレングリコール中にn個存在するAOのオキシアルキレン基が全て同一であってもよく、異なっていてもよいことを意味する。
上記Aで表されるアルキレン基は、炭素数2~18であることが好ましく、より好ましくは、炭素数2~4である。
【0061】
AOで表されるオキシアルキレン基としては例えば、アルキレンオキシドの付加反応により形成される基及びこれに上記親水性基を付加した構造の基であり、このようなアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド及び炭素数2~18のアルキレンオキシド等が挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
なお、上記式(1)におけるAOで表されるオキシアルキレン基は、アルキレンオキシドの付加反応により形成される基に限られない。
【0062】
また、上記ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物である場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基として、オキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0063】
上記式(1)、(2)中、nは、(AO)の平均付加モル数を表し、0~200の数である。これにより上記共重合体が洗浄力に優れることとなる。好ましくは0~150であり、より好ましくは0~100であり、更に好ましくは0~80であり、特に好ましくは0~75であり、一層好ましくは10~70であり、より一層好ましくは15~65であり、最も好ましくは20~50である。
nが1である場合、上記Aは、水酸基を有するアルキレン基であることが好ましい。
【0064】
上記式(1)、(2)中、x、wは、同一又は異なって、0~4の数を表し、y、vは、0又は1を表す。
xとして好ましくは0~3であり、より好ましくは0~2であり、更に好ましくは0又は1である。
wとして好ましくは0~3であり、より好ましくは0~2であり、更に好ましくは0又は1であり、最も好ましくは0である。
(x,y,v,w)の組み合わせとしては、(0,1,0,0)、(0,1,1,2)、(1,0,0,0)、(2,0,0,0)等が挙げられる。好ましくは(0,1,0,0)、(1,0,0,0)、(2,0,0,0)であり、より好ましくは(0,1,0,0)、(2,0,0,0)であり、最も好ましくは、(0,1,0,0)である。
【0065】
上記親水性基含有単量体(A)として具体的には例えば、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等や、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オールのいずれかにアルキレンオキシドを10~100モル付加した化合物等の(ポリ)アルキレングリコール系単量体;グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-アリルオキシアクリル酸及びこれらの塩等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの塩、それらの無水物等の不飽和ジカルボン酸類等が挙げられる。これらの中でも(ポリ)アルキレングリコール系単量体や水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
【0066】
<芳香族基含有単量体(B)>
本発明における芳香族基含有単量体(B)は、構造中に芳香族基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であればよい。
芳香族含有単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン、スチレンスルホン酸等の構造中に芳香族基とエチレン性不飽和基とを有し、エステル構造を有さない単量体や、後述する式(3)で表される単量体のような、構造中に芳香族基とエチレン性不飽和基とエステル構造とを有する単量体等が挙げられる。
【0067】
本発明における芳香族基含有単量体(B)はさらに、単独重合を行って得られた単独重合体(ホモポリマー)の溶解性パラメータが13以下であるものが好ましい。芳香族基含有単量体の中でも、このような単量体は、繊維への吸着力に特に優れ、上記共重合体をより防汚性やソイルリリース性に優れたものとすることができる。
上記溶解性パラメータとして好ましくは12以下であり、より好ましくは11以下である。上記溶解性パラメータとしては通常5以上である。
なお、溶解性パラメータが13以下であっても、水酸基、オキシアルキレン基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有するものについては、親水性基含有単量体(A)に分類する。
ここで、上記溶解性パラメータは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE」(1974年、Vol.14、No.2)の147~154ページに記載の方法によって計算される値である。
以下にその方法を概説する。単独重合体の溶解性パラメータ(δ)(cal/cm3)1/2は、該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー(△ei)及びモル体積(△vi)に基づいて、下記の計算法により算出される。
δ=(△ei/△vi)1/2 (cal/cm3)1/2
【0068】
本発明における芳香族基含有単量体(B)として好ましくは、下記式(3);
【0069】
【0070】
(式中、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。R7は、芳香族基を表す。)で表される化合物である。
すなわち、上記共重合体は、下記式(4);
【0071】
【0072】
(式中、R4~R7は、式(3)と同じである。)で表される構造単位を有することが好ましい。
なお、上記共重合体が上記式(4)で表される構造単位を有する場合、当該構造単位は上記式(3)で表される化合物を用いて重合することで得られるものであってもよく、その他の方法で得られるものであってもよい。
【0073】
上記R4、R5、R6におけるアルキル基として好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基であることが好ましい。より好ましくはR4、R5が水素原子であって、R6が水素原子又はメチル基である。
【0074】
上記R7における芳香族基としては、置換基を有していてもよい芳香族化合物から水素原子を1つ除いてできる基が挙げられる。
芳香族化合物としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル等が挙げられる。
芳香環が有していてもよい置換基としては、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられる。置換基は、炭素数1~12のものが好ましい。より好ましくは、炭素数1~8のものである。
【0075】
上記R7における芳香族基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、1-メトキシ-4-メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ブチルメチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジブチルフェニル基、2-(2-メチルフェニル)エチル基、2-(3-メチルフェニル)エチル基、2-(4-メチルフェニル)エチル基、2-(4-プロピルフェニル)エチル基、ビフェニル基、ビフェニルメチル基、ビフェニルエチル基、ナフチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0076】
上記式(3)で表される芳香族基含有単量体(B)の具体例としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチルフェニル(メタ)アクリレート、プロピルフェニル(メタ)アクリレート、ブチルフェニル(メタ)アクリレート、ペンチルフェニル(メタ)アクリレート、ヘキシルフェニル(メタ)アクリレート、ブチルメチルフェニル(メタ)アクリレート、ジメチルフェニル(メタ)アクリレート、ジエチルフェニル(メタ)アクリレート、ジブチルフェニル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、4-メチルフェニル(メタ)アクリレート、4-メチルベンジル(メタ)アクリレート、1-メトキシ-4-メチルフェニル(メタ)アクリレート、2-(2-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-プロピルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、ビフェニルエチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレート、ナフチルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも好ましくはフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートである。
【0077】
上記共重合体は、芳香族基含有単量体(B)以外の疎水性単量体(C)由来の構造単位(c)を有していてもよい。
芳香族基含有単量体(B)以外の疎水性単量体(C)は、単独重合を行って得られた単独重合体(ホモポリマー)に対する溶解性パラメータが13以下であるものが好ましい。このような疎水性単量体は、上記共重合体における疎水性を高め、疎水性の繊維への吸着性を高めることができる。上記溶解性パラメータとして好ましくは12以下であり、より好ましくは11以下である。上記溶解性パラメータとしては通常5以上である。
なお、溶解性パラメータが13以下であっても、水酸基、オキシアルキレン基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有するものについては、親水性基含有単量体(A)に分類する。
溶解性パラメータの意味は上述のとおりである。
【0078】
上記疎水性単量体(C)としては、エチレン性不飽和基と炭素数1~30のアルキル基を有する単量体であることが好ましい。
疎水性単量体(C)としては、例えば(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコールとのエステル類;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;酢酸ビニル等の不飽和アルコールと炭素数3~8のカルボン酸とのエステル;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;N-ビニルピロリドン等の環状ビニル系単量体が挙げられる。
【0079】
上記アルコールが有していてもよい置換基は、水酸基、オキシアルキレン基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基以外の置換基であればよいが、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記アルコールの炭素数として好ましくは2~22であり、より好ましくは2~16であり、更に好ましくは4~8である。
上記炭素数1~30のアルコールとして好ましくは、炭素数1~30のアルキルアルコール等が挙げられる。
【0080】
上記炭素数1~30のアルキルアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール(ラウリルアルコール)、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール及びイコシルアルコール等である。
【0081】
上記疎水性単量体(C)として好ましくは、下記式(5);
【0082】
【0083】
(式中、R8、R9、R10は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。R11は、炭素数1~30の鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基を表す。)で表される化合物である。
すなわち、上記共重合体が芳香族基含有単量体(B)以外の疎水性単量体(C)由来の構造単位(c)を有する場合、下記式(6);
【0084】
【0085】
(式中、R8~R11は、式(5)と同じである。)で表される構造単位を有することが好ましい。
なお、上記共重合体が上記式(6)で表される構造単位を有する場合、当該構造単位は上記式(5)で表される化合物を用いて重合することで得られるものであってもよく、その他の方法で得られるものであってもよい。
【0086】
上記R8、R9、R10におけるアルキル基は、上記式(3)におけるR4、R5、R6と同様である。
上記R7における炭化水素基の炭素数は、1~22であることが好ましい。より好ましくは2~16であり、更に好ましくは2~12であり、特に好ましくは4~12であり、最も好ましくは4~8である。
【0087】
上記R11における鎖状炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。
【0088】
上記R11におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルへキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基、イコシル基等が挙げられる。
上記R7におけるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
上記R7におけるアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基、イコシニル基等が挙げられる。
【0089】
上記R11におけるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記シクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0090】
上記疎水性単量体(C)として好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートである。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートであり、より好ましくはエチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0091】
上記共重合体は、親水性基含有単量体(A)、芳香族基含有単量体(B)、芳香族基含有単量体(B)以外の疎水性単量体(C)、以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。
単量体(E)は、水酸基並びにカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基及びこれらの塩の基を有さず、構造中に芳香族基を有さず、かつ、単独重合体の溶解性パラメータが13より大きいものであれば特に制限されないが、例えばアクリロニトリル等が挙げられる。
【0092】
<共重合体の製造方法>
上記共重合体の製造は、特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例、並びに、各単量体の好ましい割合は、上述のとおりである。
上記共重合体の製造方法は、親水性基含有単量体(A)及び芳香族基含有単量体(B)を含む単量体成分を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)を含むことが好ましい。
このような共重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0093】
上記重合工程における、単量体成分の重合を開始する方法としては、特に制限されないが、例えば、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光重合開始剤存在下に光を照射する方法等が挙げられる。
上記重合工程では、重合開始剤を用いることが好ましい。
上記重合開始剤としては、反応溶媒やモノマー種によって、適時選択されるが、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(2,2’-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾジイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アスコルビン酸と過酸化水素、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が好適である。これらの重合開始剤のうち、残存単量体が減少する傾向にあることから、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ系化合物が好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0094】
上記重合開始剤の使用量としては、単量体の使用量(親水性基含有単量体(A)、疎水性単量体(B)及びその他の単量体(E)の合計の使用量)100gに対して、0.1g以上、10g以下であることが好ましく、0.2g以上、8g以下であることがより好ましく、0.25g以上、7g以下であることが更に好ましく、0.3g以上、5g以下が最も好ましい。
【0095】
上記重合工程では、必要に応じ重合体の分子量調整剤として連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤として具体的には、チオグリコール酸(メルカプト酢酸)、3-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸(チオ乳酸)、4-メルカプトブタン酸、チオリンゴ酸及びこれらの塩等のメルカプトカルボン酸やメルカプトエタノール、チオグリセロール、2-メルカプトエタンスルホン酸等;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、次亜リン酸塩及びこれらの水和物等;亜硫酸水素(塩)や亜硫酸水素(塩)を発生し得る化合物(重亜硫酸(塩)、ピロ亜硫酸(塩)、亜ジチオン酸(塩)、亜硫酸(塩)等);等が挙げられる。中でもメルカプトカルボン酸等のメルカプト基を有する化合物が好ましく、より好ましくはカルボキシル基を有するメルカプト基含有化合物(メルカプトカルボン酸)である。
【0096】
上記共重合体の製造における連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量100モル%に対して、0.5モル%以上、30モル%以下が好ましく、より好ましくは0.7モル%以上、25モル%以下であり、更に好ましくは0.8モル%以上、20モル%以下であり、最も好ましくは1モル%以上、10モル%以下である。
【0097】
上記重合工程において、重合温度としては、40℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは55℃以上である。また、より好ましくは120℃以下であり、更に好ましくは110℃以下である。
【0098】
上記重合工程において単量体成分の反応容器への投入方法は特に限定されず、全量を反応容器に初期に一括投入する方法;全量を反応容器に分割又は連続投入する方法;一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割又は連続投入する方法等が挙げられる。なお、ラジカル重合開始剤を使用する場合、反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
上記のようにして得られた共重合体は、そのままでも液体洗剤用添加剤等の洗剤添加剤として用いることができるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミンが好適である。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。
【0099】
重合時に使用される溶媒は、使用するモノマーや開始剤、製造するポリマーを溶解できるものから適時選択され、水;エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、フェノキシエタノール等の炭素数1~8のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキルエーテル類;スルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホンなどのスルホキシド(ジメチルスルホキシド等)等;環状エーテル(テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン等);ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル及びメタクリルニトリル等);カーボネート(エチレンカーボネート及びプロピオンカーボネート等);ケトン(アセトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン及びジアセトンアルコール等)が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも好ましくは水、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、フェノキシエタノールである。
【0100】
<共重合体の用途>
上記共重合体は、洗剤用途、ソイルリリース剤、微生物付着防止剤、繊維処理剤、機能性繊維の製造、水処理薬剤配合物、塗料配合物等に用いられることが好ましい。
【0101】
(洗剤用途)
上記洗剤とは、家庭用の衣料用、食器用合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
本発明は、上記共重合体を含む洗剤用添加剤でもある。
本発明は更に、上記共重合体を洗剤用添加剤として使用する方法でもある。
本発明はまた、上記共重合体と該共重合体以外の洗剤用添加剤とを含む洗剤組成物でもある。
上記共重合体は、界面活性剤との相溶性に優れるため、液体洗剤用途に好適に用いることができる。上記洗剤組成物は、液体洗剤組成物であることが好ましい。
本発明は更に、洗剤組成物を製造する方法であって、上記製造方法は、上記共重合体を該共重合体以外の洗剤用添加剤に添加する工程を含む洗剤組成物の製造方法でもある。
上記共重合体以外の洗剤添加剤としては、界面活性剤や通常洗剤に用いられる添加剤であれば特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見を適宜参照することができ、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤を用いることができる。
【0102】
界面活性剤以外の添加剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン-チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、粉末洗剤組成物の場合には、ゼオライトを配合することが好ましい。
【0103】
上記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0104】
上記アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0105】
上記ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0106】
上記カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0107】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10~80質量%であり、好ましくは15~75質量%であり、更に好ましくは18~70質量%であり、特に好ましくは20~68質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
【0108】
上記界面活性剤の中でも好ましくはアニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤であり、特に好ましくはノニオン界面活性剤である。ノニオン性系界面活性剤は油汚れに強いため、上記共重合体とノニオン性系界面活性剤とを含む液体洗剤組成物は、油汚れに対する洗浄力により優れることとなる。上記共重合体とノニオン性系界面活性剤とを含む液体洗剤組成物は本発明の好適な実施形態の1つである。
【0109】
上記ノニオン性界面活性剤の含有割合は、洗剤組成物100質量%に対して1~60質量%であることが好ましい。より好ましくは3~60質量%であり、更に好ましくは5~50質量%である。
上記ノニオン性界面活性剤の含有割合はまた、界面活性剤の全量100質量%に対して、10~100質量%であることが好ましい。より好ましくは15~90質量%であり、更に好ましくは20~90質量%である。
【0110】
上記洗剤組成物は、親水性溶剤を含むことが好ましい。
親水性溶剤としては特に制限されず、液体洗剤に通常用いられるものを使用することができるが、例えば、水;エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、フェノキシエタノール等の炭素数1~8のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキルエーテル類;スルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホンなどのスルホキシド(ジメチルスルホキシド等)等;環状エーテル(テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン等);ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル及びメタクリルニトリル等);カーボネート(エチレンカーボネート及びプロピオンカーボネート等);ケトン(アセトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン及びジアセトンアルコール等)が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも好ましくはエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、フェノキシエタノールである。
【0111】
上記洗剤組成物は、親水性溶剤を液体洗剤組成物100質量%に対して0.1~30質量%の割合で含むことが好ましい。より好ましくは1~27質量%であり、更に好ましくは2~25質量%である。
【0112】
上記洗剤組成物は、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダー;トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー;カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体;等が挙げられる。上記の他の洗剤ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、アンモニウム、アミン等のアルカリ剤が挙げられる。
【0113】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1質量%~80質量%であり、より好ましくは2質量%~70質量%であり、更に好ましくは3質量%~60質量%であり、一層好ましくは5質量%~55質量%であり、特に好ましくは5質量%~50質量%であり、最も好ましくは10質量%~50質量%である。
【0114】
上記洗剤組成物は酵素を含んでいてもよい。このような酵素としては、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼなどが挙げられる。
上記酵素の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは5質量%以下である。
【0115】
(ソイルリリース剤)
上記共重合体は、衣類等への吸着性に優れ、上記共重合体が吸着した衣類に汚れが付着した場合に、汚れを落としやすくすることができるソイルリリース性を発揮することができる。
本発明はまた、上記共重合体を含むソイルリリース剤でもある。
本発明は更に、上記共重合体をソイルリリース剤として使用する方法でもある。
【0116】
(微生物付着防止剤、繊維処理剤)
上記共重合体は、共重合体を繊維に処理することにより、繊維に充分に吸着及び/又は固定され、細菌や真菌等の微生物の繊維への付着を抑制することもできる。
本発明は、上記を含む微生物付着防止剤でもある。
本発明は更に、上記共重合体を微生物付着防止剤として使用する共重合体の使用方法でもある。
本発明は更に、上記共重合体を用いて微生物の付着を防止する微生物付着防止方法でもある。
例えば上記共重合体を微生物付着防止剤として使用する際、共重合体を洗剤に添加して用いてもよく、洗剤以外の形態で共重合体を繊維に処理することもできる。
【0117】
本発明は、上記共重合体を含む繊維処理剤でもある。
本発明は更に、上記共重合体を用いて繊維を処理する繊維処理方法でもある。
上記繊維処理方法としては、原糸改質法(練り込み法・原糸表面改質法等)及び後加工法(吸尽法、含浸パッド法及び塗布法等)といった種々の繊維の加工方法が挙げられる。繊維の表面に共重合体をコーティングする観点から、後加工法により繊維を処理することが好ましい。より好ましくは紡糸後の繊維に共重合体を吸着及び/又は固定化することである。
上記共重合体を用いて処理された繊維もまた、本発明の1つである。
【0118】
(機能性繊維の製造方法)
上記共重合体は、繊維に防汚性や微生物付着防止能を付与することができるため、このような機能を有する機能性繊維の製造に好適に用いられる。
すなわち、本発明は、機能性繊維を製造する方法であって、上記製造方法は、上記共重合体を用いて繊維を処理する工程を含む機能性繊維の製造方法でもある。
上記製造方法は、後加工工程において、上記共重合体を紡糸工程後の繊維に吸着及び/又は固定化することが好ましい。
紡糸工程後の繊維に共重合体を吸着及び/又は固定化する方法は特に制限されないが、繊維に共重合体を浸漬させて乾燥させることが好ましい。
紡糸工程後の繊維は、繊維状であっても、繊維生地に加工されたものであってもよい。
【0119】
(水処理剤、塗料)
上記共重合体は、細菌や真菌等の微生物の付着を抑制することができるため、水処理剤、塗料等の抗菌性が求められる用途にも好適に用いることができる。
本発明はまた、上記共重合体を含む水処理薬剤配合物でもある。
本発明は更に、上記共重合体を水処理剤として使用する方法でもある。
冷却水系、冷温水系、集塵水系、紙パルプ工程水系、製鉄工程水系、金属加工工程水系等の各種工程水中に生育する微生物は、系内で増殖してスライムやバイオファウリングと呼ばれる微生物性の付着物を形成し、熱交換器の伝熱効率低下、逆浸透膜の流路の閉塞及び嫌気性菌による微生物腐食などの微生物障害を引き起こす原因となる。本発明は、上記防菌性を有する共重合体を含む水処理薬剤でもある。上記共重合体を含む水処理薬剤を冷却水やRO膜に通水する処理水に用いると、共重合体が熱交換器やRO膜等に付着し、微生物の付着・増殖を防止できることから、熱交換効率を維持できたり、RO膜の透過流速を確保できる。
上記水処理剤配合物には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤、pH調整剤を用いてもよい。
上記水処理剤配合物は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0120】
本発明は更に、上記共重合体を含む塗料配合物でもある。
本発明は更に、上記共重合体を塗料添加剤として使用する方法でもある。
近年の衛生思想の高まりによって、食品や医薬品の工場、病院や養護施設等の建物、食品厨房器具、医療器具、医療機器等の装置において、又は一般家庭用品においてまでも、細菌、かび等の真菌の拡大・感染防止のため、抗菌剤、抗カビ剤、防菌剤、消毒剤等が使用されている。
そのため、公共施設のみならず一般家庭においても、様々な部材に抗菌性や抗カビ性、防菌性を付与することが望まれており、一般的な抗菌剤としては銀が使用されているが、コストが高いことや銀を担持させた粒子の分散安定性が課題となっていた。本発明の共重合体を含む塗料組成物はそのような課題を克服することが可能であり、塗料中に配合することで、塗膜表面の菌の付着を防止できることから、感染症などの拡大を防止可能である。
上記塗料配合物は、上記共重合体以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては特に制限されないが、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等のイオン性を有する親水性の高い高分子、中でも、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコール系などの親水性水溶性樹脂;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が好適に挙げられる。また、樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、顔料、有機溶剤、硬化触媒、分散剤、乾燥剤、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、脱水剤、レベリング剤、沈降防止剤、ダレ止め剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。本発明の塗料配合物(塗料組成物)は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。
【実施例】
【0121】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0122】
<共重合体の重量平均分子量測定>
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定条件、装置などは以下の通りである。
装置:東ソー社製 EcoSEC HLC-8320GPC
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel α-M、α-2500
カラム温度:40℃
流速:0.4mL/min
注入量:20μL(試料濃度0.4wt%の溶離液調製溶液)
検量線:ジーエルサイエンス社製 ポリエチレングリコール
GPCソフト:東ソー社製 EcoSEC-WS
溶離液:0.5M酢酸+0.2M硝酸Na/アセトニトリル=50/50(v/v)
【0123】
実施例1
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、エタノール90gを仕込み、攪拌下、70℃に昇温した。次いで攪拌下、70℃一定状態の重合反応系中に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23、新中村化学工業社製の商品名「M-230G」、以下、PGM23Eともいう)91g、イオン交換水30.3gからなるモノマー溶液1;ベンジルメタクリレート(以下、BnMAともいう。溶解性パラメータ:9.8)39gからなるモノマー溶液2;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製の商品名「V-65」)の5%エタノール溶液15.1gからなる開始剤水溶液をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。滴下時間に関して、モノマー溶液1と開始剤水溶液は同時に滴下を開始し、モノマー溶液1は120分間、モノマー溶液2と開始剤水溶液は180分間滴下した。
全滴下終了後、さらに60分間反応溶液を70℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体1を得た。
得られた共重合体1の固形分は49.1%、重量平均分子量は28500であった。
【0124】
実施例2
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、溶媒として2-プロパノール20.0部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23モル、新中村化学工業社製の商品名「M-230G」)55.7部、ベンジルメタクリレート23.9部、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製の商品名「V-65」)0.461部を仕込んだ。攪拌下、反応容器内を500mL/分で30分間窒素置換した後、70℃に昇温し、5時間引き続いて70℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。途中、2時間30分、3時間、3時間30分、4時間経過時において2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製の商品名「V-70」)0.572部ずつを添加した。重合反応完結後に室温まで冷却し、重量平均分子量(Mw)152200の重合体の溶液を得た。エバポレーターで溶媒を除き、水で10倍に希釈することで共重合体2の水溶液を得た。
【0125】
実施例3
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、エタノール90gを仕込み、攪拌下、70℃に昇温した。次いで攪拌下、70℃一定状態の重合反応系中に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23、新中村化学工業社製の商品名「M-230G」)69.7g、メタクリル酸(以下、MAAともいう。)14.1g、イオン交換水22.4gからなるモノマー溶液1;ベンジルメタクリレート36gからなるモノマー溶液2;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製の商品名「V-65」)の5%エタノール溶液13gからなる開始剤水溶液をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。滴下時間に関して、モノマー溶液1と開始剤水溶液は同時に滴下を開始し、モノマー溶液1は120分間、モノマー溶液2と開始剤水溶液は180分間滴下した。
全滴下終了後、さらに60分間反応溶液を70℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体3を得た。
得られた共重合体3の固形分は47.8%、重量平均分子量は77800であった。
【0126】
実施例4
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、エタノール90gを仕込み、攪拌下、70℃に昇温した。次いで攪拌下、70℃一定状態の重合反応系中に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数4、以下、PGM4Eともいう)99.6g、イオン交換水33.2gからなるモノマー溶液1;ベンジルメタクリレート20.4gからなるモノマー溶液2;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製の商品名「V-65」)の5%エタノール溶液23.7gからなる開始剤水溶液をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。滴下時間に関して、モノマー溶液1と開始剤水溶液は同時に滴下を開始し、モノマー溶液1は120分間、モノマー溶液2と開始剤水溶液は180分間滴下した。
全滴下終了後、さらに60分間反応溶液を70℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体4を得た。
得られた共重合体4の固形分は45.7%、重量平均分子量は18900であった。
【0127】
実施例5
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、エタノール90gを仕込み、攪拌下、70℃に昇温した。次いで攪拌下、70℃一定状態の重合反応系中に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9、以下、PGM9Eともいう)84g、イオン交換水28gからなるモノマー溶液1;ベンジルメタクリレート36gからなるモノマー溶液2;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製の商品名「V-65」)の5%エタノール溶液18.6gからなる開始剤水溶液をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。滴下時間に関して、モノマー溶液1と開始剤水溶液は同時に滴下を開始し、モノマー溶液1は120分間、モノマー溶液2と開始剤水溶液は180分間滴下した。
全滴下終了後、さらに60分間反応溶液を70℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体5を得た。
得られた共重合体5の固形分は47.8%、重量平均分子量は24500であった。
【0128】
比較例1
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に水480部を仕込み、200rpmで攪拌下、反応容器内を窒素置換しながら80℃まで加熱した。メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23、新中村化学工業社製の商品名「M-230G」)401.3部、メタクリル酸78.7部、水120部及び連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸(以下、MPAともいう)5.47部を混合したモノマー水溶液を4時間、過硫酸アンモニウム(以下、APSともいう)5.52部及び水110.6部を混合した水溶液を5時間かけて同時刻から滴下した。滴下終了後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、重量平均分子量17000の比較共重合体1の水溶液を得た。
【0129】
比較例2
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた、500mlセパラブルフラスコに、80質量%の3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル(以下、MB-50ともいう。)MB-50水溶液:260.2g、イオン交換水:66.6gを仕込み、窒素置換後、攪拌しながら58℃まで昇温した。所定の温度になった時点で、35質量%の過酸化水素水(H2O2):0.57gを一括で投入した。その後、100質量%のアクリル酸(以下、AAともいう。):14.8g、1.6質量%のL-アスコルビン酸(以下、L-Asともいう。)水溶液:16.7g、3.5質量%のMPA水溶液:17.4gをそれぞれ滴下した。ただし、AAは180分かけて滴下し、L-As水溶液とMPA水溶液は210分かけて滴下した。L-As水溶液の滴下終了後、同温度で60分間熟成し、重合を完結させ、重合後、49質量%のNaOH水溶液:3.69gを加えることで、比較共重合体2の水溶液を得た。得られた水溶性共重合体の重量平均分子量は25700、固形分は59.7質量%であった。
【0130】
洗浄力評価
実施例1~5、比較例1、2で製造した共重合体1~5、比較共重合体1、2及び比較例3としてブランクについて、以下の方法により洗浄力評価を行った。結果を表1に示す。
<布の前処理方法>
Testfabiric社製 Style703(ポリエステル繊維)を5×5cmに裁断したものを用意した。実施例、比較例で得られた共重合体を25ppmに調整した水溶液300gを準備し、マグネティックスターラーで撹拌しながら、上記布5gを添加し、10分間撹拌した。10分後、布の重量の3倍になるように脱水し、1日間風乾した。
<汚染布の作成>
オリーブオイル61.5g、オレイン酸37g、酸化鉄(III)1g、オイルレッド0.5gを混合し、油脂汚染液を作成した。この汚染液を50μL、上記前処理方法1で得られたポリマー処理布に滴下し、1時間放置した後、余計な油脂を濾紙で挟んでふき取り、汚染布を作成した。
<洗浄力評価>
(1)-1:硬度母液の調製
塩化カルシウム2水和物8.39g、塩化マグネシウム6水和物2.9gをビーカーにはかりとり、イオン交換水を加え1000gとした。
(1)-2:硬水の調製
炭酸水素ナトリウム1.54g、0.1N塩化水素10g、硬度母液(1)-1;200gをビーカーに入れてイオン交換水で希釈して20000gとした。
(1)-3:界面活性剤水溶液の作成
ペレックスG-65(花王社製)13.85gとエマルゲン108(花王社製)3gをビーカーに測りとり、イオン交換水を加えて200gとし、界面活性剤溶液を調整した。
(2):洗浄力試験
(1)-3の界面活性剤水溶液16.67gと(1)-2の硬水を混合し、4000gの洗浄液を作成した。ターゴットメーターを25℃にセットし、洗浄液500gをポットにいれた。予め色差計(日本電色工業社製:SE-6000)で反射率を測定した汚染布5枚、浴比調整布とを合わせて16.67gポットに入れて、120rpmで10分間撹拌して洗浄した。ポットの水を捨て、すすぎ1回を行った後、布を脱水し1日間風乾させた。
風乾後、色差計にて再度、白布の反射率を測定し、下記式により洗浄率を求めた。得られた洗浄率に基づき、以下の判定基準で洗浄力を評価した。結果を表1に示す。
◎:洗浄率90%以上
〇:洗浄率50%以上、90%未満
×:洗浄率50%未満
【0131】
【0132】
【0133】
微生物付着評価
菌株はStaphylococcus aureus NBRC12732株を用いた。培養試験管に入れたBacto(登録商標)Brain Heart Infusion培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製 製品番号237500)5mLに対して、凍結保存株から植菌して37℃、300rpmで撹拌(振とう培養機:高崎科学器械株式会社製、TXY-16R-3F)しながら復元培養したのち、継代培養(20mL)を18時間実施した。その後、5000×gの遠心力で、5分間遠心して菌体を回収したのち、上清を除きPBS(-)15mLで洗浄を行なった。この洗浄作業を計2回実施した。別途作成しておいたOD660-生菌数の換算式を用いて、菌液が1×109cells/mLとなるようPBS(-)で調製し、6穴マイクロプレート(IWAKI社製 製品コード3810-006)に3mL/ウェルで添加した。続いて、2×2cm2四方のポリマーコートフィルムをウェルに入れた菌液に浸漬し、37℃、3.5時間静置した。その後、フィルムをピンセットでゆっくりと取り出し、別途用意しておいたPBS(-)30mLにゆっくりとディッピングを5回行った。別途用意した6穴マイクロプレートに洗浄したフィルムを移し、2.5%グルタルアルデヒド水溶液(富士フイルム和光純薬社製、販売元コード072-02262、PBS(-)で希釈)を3mL/ウェルでゆっくりと添加し、2時間常温静置することで固定化処理を実施した。続いてフィルムをPBS(-)30mLにゆっくりとディッピングを1回行った。その後、凍結乾燥を実施して脱水処理を実施した。フィルム中央部分0.75×0.75cm2四方分を裁断してSEM台に乗せて金蒸着(JEOL社製、Smart coater)したのち、SEM(日本電子社製、JSM7600F)でフィルム全体を観察後、平均的な5箇所の撮影を実施した。得られたSEM写真に対してImageJソフトウェアを用いて細菌の表面被覆率を算出し、t検定を実施した。
【0134】
<実施例6>
スピンコーター(MIKASA CO.LTD.、SPIN COATER 1H-D7)を用いて、易接着PETフィルム(東洋紡株式会社製 コスモシャイン(登録商標)A4100 ♯125)に対して、1(w/w)%実施例1のポリマー溶液(75(w/w)%エタノール水溶液で希釈)を滴下、スピンコート後、一晩風乾して成膜した。作製したフィルムを用いて、微生物付着評価を実施した。その結果を表2及び
図1に示す。
【0135】
<比較例4>
易接着PETフィルム(東洋紡株式会社製 コスモシャイン(登録商標)A4100 ♯125)を用いた。作製したフィルムを用いて、微生物付着評価を実施した。その結果を表2及び
図1に示す。
【0136】
<比較例5>
スピンコーター(MIKASA CO.LTD.、SPIN COATER 1H-D7)を用いて、易接着PETフィルム(東洋紡株式会社製 コスモシャイン(登録商標)A4100 ♯125)に対して、1(w/w)%に希釈したTexcare(登録商標)260(クラリアントジャパン株式会社製)溶液(75(w/w)%エタノール水溶液で希釈)を滴下、スピンコート後、一晩風乾して成膜した。作製したフィルムを用いて、微生物付着評価を実施した。その結果を表2及び
図1に示す。
【0137】