(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】接触分解触媒およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
B01J 29/14 20060101AFI20240215BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240215BHJP
B01J 35/61 20240101ALI20240215BHJP
B01J 35/69 20240101ALI20240215BHJP
B01J 35/70 20240101ALI20240215BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20240215BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B01J29/14 M
B01J35/60 A
B01J35/61
B01J35/69
B01J35/70
B01J37/00 F
B01J37/10
(21)【出願番号】P 2021557447
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 CN2020081358
(87)【国際公開番号】W WO2020192724
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】201910241402.3
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張傑瀟
(72)【発明者】
【氏名】於善青
(72)【発明者】
【氏名】許明徳
(72)【発明者】
【氏名】嚴加松
(72)【発明者】
【氏名】田輝平
(72)【発明者】
【氏名】李家興
(72)【発明者】
【氏名】楊民
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101745417(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101745373(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104014361(CN,A)
【文献】特開2017-087204(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103936399(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105983446(CN,A)
【文献】特開昭56-005373(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0138317(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C10G 1/00 - 99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子ふるいと、γ-アルミナの結晶相構造を有するアルミナ基質材料とを含む接触分解触媒であって、
前記アルミナ基質材料において、2~100nmの細孔径を有する細孔の容積に対して、2~5nmの細孔径を有する細孔の細孔容積が0~10%を占め、5nm超であり10nm以下の細孔径を有する細孔の細孔容積が、10~25%を占め、10nm超であり100nm以下の細孔径を有する細孔の細孔容積が65~90%を占
める、接触分解触媒。
【請求項2】
前記触媒は、25~50重量%の分子ふるいと、0~50重量%のクレイと、5~35重量%のバインダと、2~30重量%のアルミナ基質材料とを含み、ここで、前記分子ふるいは、Y型分子ふるい、ZSM-5分子ふるいおよびβ-分子ふるいからなる群から選択される1種類以上であることを特徴とする、請求項1に記載の接触分解触媒。
【請求項3】
前記アルミナ基質のγ-アルミナの結晶化度が40~60%であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の接触分解触媒。
【請求項4】
前記アルミナ基質材料の最大頻度細孔径が、10~25nmの範囲であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の接触分解触媒。
【請求項5】
前記アルミナ基質は、ドライベースで、Al
2O
3含有量が95重量%以上であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の接触分解触媒。
【請求項6】
前記アルミナ基質は、ドライベースで、Fe
2O
3含有量が1.5重量%以
下であり;Na
2O含有量が1重量%以
下であり;かつ
SiO
2
含有量が1.5重量%以
下であることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の接触分解触媒。
【請求項7】
前記アルミナ基質材料は、比表面積が200~300m
2/gであり、かつ合計細孔容積が0.35~0.45ml/gであることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の接触分解触媒。
【請求項8】
前記アルミナ基質材料において、細孔径が2~100nmである細孔の細孔容積が0.25~0.40ml/gであることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の接触分解触媒。
【請求項9】
前記アルミナ基質材料において、細孔径が10nm超であり20nm以下である細孔の細孔容積が0.06~0.08ml/gであり、細孔径が20nm超であり30nm以下である細孔の細孔容積が0.06~0.08ml/gであり、細孔径が30nm超であり40nm以下である細孔の細孔容積が0.03~0.04ml/gであり、かつ細孔径が40nm超であり50nm以下である細孔の細孔容積が0.03~0.04ml/gであることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の接触分解触媒。
【請求項10】
前記アルミナ基質材料の、B-酸量が1~3μmol/
gであり、L-酸量が10~40μmol/
gであり、かつL-酸に対するB-酸のモル比が0.06~0.1であることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の接触分解触媒。
【請求項11】
前記アルミナ基質のB-酸/L-酸のモル比が、0.065~0.085であることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の接触分解触媒。
【請求項12】
前記接触分解触媒は、前記アルミナ
基質材料に対する前記分子ふるいの重量比が、ドライベースで、1~7:1であり、および/または分子ふるいおよび前記アルミナの合計含有量が、30~55重量%の範囲であることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の接触分解触媒。
【請求項13】
前記触媒が、二峰性細孔構造を有し、ここで、前記触媒は、0~100nmの範囲である細孔に対して、0~3nmの範囲である細孔を30~55%
、および5~100nmの範囲である細孔を30~55
%含むことを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の接触分解触媒。
【請求項14】
バインダと、クレイと、分子ふるいと、アルミナ基質材料とをパルピングして、触媒スラリーを得ること、および
前記触媒スラリーを噴霧乾燥すること、
を含む、請求項1~
13のいずれか1項に記載の接触分解触媒を調製するための方法であって、
ここで、前記アルミナ基質材料は、請求項1~
11のいずれか1項に定義されるとおりである、接触分解触媒を調製するための方法。
【請求項15】
前記アルミナ基質材料が以下を含む方法によって調製される、請求項
14に記載の方法:
Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)
3構造のアルミニウム源と、細孔拡張剤と、水とを、(0.5~2):(0.5~2):(0.5~2):(5~20)のモル比で混合すること、
水蒸気下でエージング処理を行い、任意で乾燥して、前記アルミナ基質材料の前駆体を得ること
;および
前記アルミナ
基質材料の前記前駆体を焼成して、前記アルミナ
基質材料を得ること、ここで、前記焼成は、500~1000
℃の温度
で行われる。
【請求項16】
前記Al(OH)構造のアルミニウム源は、擬ベーマイトおよびベーマイトからなる群から選択される1種類以上であり、かつ前記Al(OH)
3構造のアルミニウム源は、ギブサイト、バイヤライト、ノーライト、ノルドストランダイトおよび非晶質水酸化アルミニウムからなる群から選択される1種類以上であることを特徴とする、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記細孔拡張剤は、重炭酸アンモニウム、活性炭、EDTA、n-ブチルアミン、ポリアクリルアミド、n-ブタノールおよびクエン酸からなる群から選択される1種類以上であることを特徴とする、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記Al(OH)構造のアルミニウム源と、前記Al(OH)
3構造のアルミニウム源と、前記細孔拡張剤と、水とのモル比は、(0.8~1.2):(0.8~1.2):(0.8~1.2):(8~12)であることを特徴とする、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、接触分解触媒およびその調製方法に関する。
【0002】
〔背景〕
オイル精製産業において、石油資源がより重く、またより劣化するにつれ、粗悪な残留オイルの適正な利用が困難な課題である。接触分解(FCC)は、原料適応性が高い、軽油製品の高収率、ガソリンオクタン価が高い等の利点を有し、中国のオイル精製企業にとって最も重要な原油の二次処理方法である。接触分解の核心は触媒である。しかしながら、粗悪な質の残留オイルは、重金属、S、N、炭素残査等の不純物を高い含有量で含んでいる。これは、容易に接触分解触媒の深刻な中毒および汚染の原因となり、触媒の性能の低下につながり、接触分解製品の分布に影響を与え、それによりオイル精製の収率に影響を与える。
【0003】
従来のFCC触媒は、一般的に基質および分子ふるいから構成される。分子ふるいは、触媒の活性中心である。FCCが良好な重油変換能力を有するために、分解触媒は、より高い反応活性を有することが必要とされる。しかし、単に活性成分の含有量を増加させるだけでは、粗悪なオイルの変換による活性に対する要件を完全に満たすことはできない。同時に、活性成分の含有量が高すぎると、コークスの収率が高くなりすぎるという問題が生じ、これは材料の均衡、熱均衡、および接触分解ユニットの利点に影響を及ぼす。
【0004】
CN104014361Bは、接触分解触媒およびその調製方法を開示している。接触分解触媒は、修飾された二細孔分散アルミナ、分子ふるい、バインダおよびクレイを含む。分子ふるいはFAU構造ゼオライトであり、修飾された二細孔分散アルミナは、対照として修飾された二細孔分散アルミナの重量に基づき希土類元素および修飾されたケイ素を含む。修飾された二細孔分散アルミナは、γ-アルミナの結晶相構造を有しており、最大頻度細孔径は、4~10nmおよび10~25nmであり、比表面積は、250~500m2/gであり、細孔容積は0.6~1.8cm3/gである。触媒の調製方法は、噴霧乾燥を行う工程と、修飾された二細孔分散アルミナ、分子ふるい、クレイおよびバインダを含むスラリー上に、鋳造および焼成する工程と、次いで、最終触媒製品を得るために洗浄、濾過および乾燥する工程とを含む。接触分解触媒は、ガソリンの質および液体製品の収率を改善し、金属汚染条件下でより高い重油分解能力を有する。しかしながら、触媒が粗悪な質のオイル製品を処理するために使用される場合、触媒は炭素析出耐性および重金属汚染耐性に乏しい。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明によって解決されるべき技術的課題は、先行技術の欠点に着目して、粗悪な重油の分解のためのアルミナ基質材料および前記アルミナ基質材料を含む接触分解触媒を提供することである。本発明によって解決されるべき別の技術的課題は、基質材料および触媒の調製方法および使用を提供することである。
【0006】
本発明は、γ-アルミナの結晶相構造を有するアルミナ材料を提供することであり、ここで、γ-アルミナの結晶化度は40~60%であり、細孔径が2~100nmである細孔の容積に対して、細孔径が2~5nmである細孔の細孔容積は0~10%を占め、細孔径が5nm超であり10nm以下である細孔の細孔容積は10~25%を占め、細孔径が10nm超であり100nm以下である細孔の細孔容積は65~90%を占め、かつ最大頻度細孔径は10~25nmであり、かつL-酸に対するB-酸の比率は0.06~0.1である。
【0007】
本発明において、比表面積は、低温窒素吸着法(BET法、触媒および吸着表面積の測定についてはGB/T5816-1995を参照)によって決定する。
【0008】
本発明において、細孔容積は、低温窒素吸着法(BET法)によって測定する。
【0009】
元素組成は、X線蛍光分光分析によって決定する。
【0010】
相および結晶化度データは、X線回折法によって測定する(RIPP 141-90, γ-アルミナ Crystallinity Assay, petrochemical analysis (RIPP test methods), Scientific Press, 1990を参照)。
【0011】
活性中心型および酸量は、吸着温度200度でのin-situピリジン吸着赤外線計測法によって、分析および測定する。
【0012】
本発明のアルミナ材料は、ドライベースの重量(ドライベースと略称する)に対してAl2O3を、95重量%以上、例えば95~99.5重量%、または95~99重量%、または96~98重量%の量で含む。ドライベースの重量は、800℃で1時間、焼成することによって測定される。アルミナ以外の酸化物(他の酸化物)の含有量は、5重量%以下、例えば0.5~5重量%または1~5重量%または2~4重量%である。
【0013】
本発明に係るアルミナ材料は、ドライベースに対して(ドライベースの重量に対して)、Fe2O3を、1.5重量%以下、例えば0.5重量%以下、または0.1~0.5重量%、または0.2~0.4重量%の量で含む。
【0014】
本発明に係るアルミナ材料は、ドライベースの重量に対して、Na2Oを、好ましくは1重量%以下、例えば0.5重量%以下、または0.01~0.5重量%、または0.01~0.2重量%、より好ましくは0.1重量%以下の量で含む。
【0015】
本発明に係るアルミナ材料は、ドライベースの重量に対して、SiO2を、1.5重量%以下、例えば0.5重量%以下、または0.1~1.5重量%、好ましくは0.4重量%以下または0.3重量%以下の量で含む。
【0016】
本発明に係るアルミナ材料の比表面積は、200~300m2/gである。
【0017】
本発明に係るアルミナ材料の合計細孔容積は、好ましくは0.35~0.45ml/gである。合計細孔容積は、水滴法によって測定する。(RIPP28-90, edited by Yang Cuiding et al, Petrochemical Analysis Method (RIPP test method), Scientific Press, 1990を参照)。
【0018】
本発明に係るアルミナ材料において、細孔径が2~100nmである細孔のBET法によって測定される細孔容積は、0.25~0.40ml/gである。
【0019】
本発明に係るアルミナ材料において、細孔径が10nm超であり20nm以下である細孔の細孔容積は、好ましくは0.06~0.08ml/gである。
【0020】
本発明に係るアルミナ材料において、細孔径が20nm超であり30nm以下である細孔の細孔容積は、好ましくは0.06~0.08ml/gである。
【0021】
本発明に係るアルミナ材料において、細孔径が30nm超であり40nm以下である細孔の細孔容積は、好ましくは0.03~0.04ml/gである。
【0022】
本発明に係るアルミナ材料において、細孔径が40nm超であり50nm以下である細孔の細孔容積は、好ましくは0.03~0.04ml/gである。
【0023】
本発明のアルミナ材料によれば、アルミナ材料は、好ましくは1~3μmol/g、例えば1.1~2.5μmol/gの量のB-酸を有する。
【0024】
本発明のアルミナ材料によれば、アルミナ材料は、好ましくは10~40μmol/g、例えば13~31μmol/gの量のL-酸を有する。
【0025】
本発明に係るアルミナ材料は、B-酸/L-酸比率が、好ましくは0.065-0.085である。
【0026】
本発明はまた、アルミナ材料を調製するための調製方法を提供する。当該調製方法は、
以下の工程を含む:
-Al(OH)構造のアルミニウム源(アルミナとして計算される)と、Al(OH)3構造のアルミニウム源(アルミナとして計算される)と、細孔拡張剤と、水とを、0.5~2:0.5~2:0.5~2:5~20のモル比で、混合する工程(例えばAl(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、細孔拡張剤と、水とのモル比は、0.8~1.2:0.8~1.2:0.8~1.2:8~12であり得る);
-水蒸気下でエージング処理を行い、任意で乾燥して、アルミナ材料の前駆体を得る工程であって、ここで、エージング処理は、100~200℃超、好ましくは110~180℃(例えば120~150℃)の温度で、好ましくは2~5時間行われ、乾燥温度は、200℃以下、例えば100~140℃である;
-アルミナ材料の前駆体を焼成して、本発明により提供されるアルミナ材料(アルミナ基質またはアルミナ基質材料とも称する)を得る工程であって、ここで、焼成は、500~1000℃、例えば500~700℃の温度で、好ましくは2~6時間、例えば2.5~4時間行われる。
【0027】
アルミナ材料の調製方法によれば、Al(OH)構造のアルミニウム源(Al(OH)源または第1のアルミニウム源とも称する)は、擬ベーマイト、ベーマイトおよびベーマイトからなる群から選択される1種類以上であり得、Al(OH)3構造のアルミニウム源(Al(OH)3源または第2のアルミニウム源とも称する)は、ギブサイト、バイヤライト、ノルドストランダイト、および非晶質水酸化アルミニウムからなる群から選択される1種類以上であり得る。
【0028】
非晶質水酸化アルミニウムは、商業的に入手可能であり、可溶性アルミニウム塩をアルカリと反応させることによって得ることができ、例えば硫酸アルミニウムまたは塩化アルミニウムを水酸化ナトリウムまたはメタアルミン酸ナトリウムと反応させることによって調製される非晶質アルミナである。
【0029】
本発明のアルミナ材料の調製方法によれば、一実施形態において、Al(OH)構造のアルミニウム源は、以下の特性を有する:ドライベースに対して、Al2O3の含有量が95重量%以上であり、Fe2O3含有量が1.5重量%以下、例えば0.01~1.5重量%、より好ましくは0.5重量%以下または0.3重量%以下であり、Na2O含有量が1重量%以下、例えば0.01~1重量%、より好ましくは0.5重量%または0.2重量%以下であり、SiO2含有量が1.5重量%以下、例えば、0.1~1.5重量%、より好ましくは0.5重量%以下または0.3重量%以下である、かつAl(OH)3構造のアルミニウム源は、以下の特性を有する:ドライベースに対して、Al2O3含有量は、95重量%以上であり、O2含有量は、1.5重量%以下、例えば、0.01~1.5重量%、より好ましくは0.5重量%以下または0.3重量%以下であり、Fe3O2含有量は、1重量%以下、例えば0.01~1重量%、より好ましくは0.5重量%以下または0.2重量%以下であり、Na2O含有量は1.5重量%以下、例えば0.1~1.5重量%、より好ましくは0.5重量%以下または0.3重量%以下である。
【0030】
アルミナ材料の調製方法によれば、細孔拡張剤は、重炭酸アンモニウム、活性炭、EDTA、n-ブチルアミン、ポリアクリルアミド、n-ブタノールおよびクエン酸からなる群から選択される1種類以上であり、例えばクエン酸、重炭酸アンモニウム、n-ブチルアミンおよび活性炭からなる群から選択される1種類以上であり、好ましくは重炭酸アンモニウム、クエン酸および活性炭からなる群から選択される1種類以上である。
【0031】
本発明のアルミナ材料を調製するための調製方法によれば、アルミナ材料前駆体は、ドライベースに対して、Al2O3含有量が95重量%以上であり、Fe2O3含有量が1.5重量%以下、例えば0.1~1.5重量%の範囲であり、Na2O含有量が、1重量%以下、例えば0.01~1重量%の範囲であり、SiO2含有量が1.5重量%以下、例えば0.1~1.5重量%の範囲であり、かつ比表面積が300~380m2/gである。比表面積は、低温窒素吸着法によって決定し、元素組成は、X線蛍光分光分析によって決定する。
【0032】
本発明はさらに、ドライベースに対して(ドライベースとして略称される、ドライベースの重量とは、800℃で1時間焼成後の固体の重量である)25~50重量%、好ましくは25~35重量%の量の分子ふるいと、0~50重量%、例えば10~40重量%、好ましくは0~30重量%の量のクレイと、5~35重量%または10~30重量%、好ましくは15~28重量%の量のバインダと、2~30重量%、好ましくは5~25重量%、または5~15重量%、または10~20重量%の量の本発明によって提供されるアルミナ材料(アルミナ基質とも称する)と、を含む接触分解触媒を提供する。分子ふるいは、Y型分子ふるい、ZSM-5分子ふるいおよびβ-分子ふるいからなる群から選択される1種類以上である。高いガソリン収率を得るために、分子ふるいは、好ましくはY型分子ふるいである。Y型分子ふるいは、HY、USY、REY、REHY、REUSY、リンを含むY型分子ふるい、リンおよび希土類元素を含むY型分子ふるい、リンおよび希土類元素を含むUSY分子ふるい、並びに、気相化学法(SiCl4に対してAlを除去およびSiを添加する方法)、液相化学法((NH4)2SiF6)に対してAlを除去およびSiを添加する方法)および他の方法によって調製される、種々のシリカ-アルミナ比を有する修飾されたYゼオライトからなる群から選択される1種類以上である。バインダは、アルミナバインダ、シリカバインダ、シリカ-アルミナバインダ、マグネシウム-アルミニウムバインダ、ジルコニウムバインダおよびチタニウムバインダからなる群から選択される1種類以上であり、好ましくはアルミナバインダである。アルミナバインダは擬ベーマイトおよび/またはアルミナゾルである。クレイは、好ましくは、カオリン、モンモリロナイト、珪藻土、ハロイサイト、擬ハロイサイト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルガイト、ハイドロタルサイトおよびベントナイトからなる群から選択される1種類以上であり、例えば、クレイは、カオリンおよびハロイサイトからなる群から選択される1種類以上である。
【0033】
本発明に係る接触分解触媒は、ドライベースに対して、分子ふるい対本発明に係るアルミナ材料の重量比が1~7:1、例えば1.2~5:1であり、ここで、分子ふるいは、好ましくはY型分子ふるいである。一実施形態において、分子ふるいおよび本発明に係るアルミナの合計含有量は、30~55重量%、例えば40~50重量%の範囲である。
【0034】
一実施形態において、本発明の触媒は、二峰性細孔構造を有し、ここで、0~100nmの範囲である細孔に対して、触媒は、0~3nmの範囲の細孔を30~55%、好ましくは40~55%含み。5~100nmの範囲である細孔を30~55%、好ましくは40~55%含む。一実施形態において、本発明の触媒は、二峰性細孔構造を有し、ここで、1~100nmの範囲である細孔に対して、触媒は、1~3nmの範囲である細孔を40~55%含み、5~100nmの範囲である細孔を40~55%含む。
【0035】
本発明はさらに、接触分解触媒の調製方法を提供する。当該調製方法は、以下の工程を含む:
-バインダと、クレイと、分子ふるいと、アルミナ基質材料とをパルピングして、触媒スラリーを得る工程
-触媒スラリーを噴霧乾燥する工程であって、ここで、アルミナ基質材料は、本発明に係るアルミナ材料または本発明に係るアルミナ材料の調製方法によって調製されるアルミナ材料である。
【0036】
本発明に係るアルミナ材料は、最適化された能力を有するアルミナ基質材料であり、炭化水素オイルに対して高い接触分解活性を有し、高い安定性を有する。当該アルミナ基質材料は、良好な炭素析出耐性を有しつつ、粗悪な炭化水素オイルを変換するために使用することができる。本発明に係るアルミナ材料を分解触媒のために使用する場合、分解触媒の分子ふるいの適量を低減することができ、分子ふるいの適量を低減した条件下において、重油変換活性が高く維持され、コークスの収率が低い。加えて、本発明に係るアルミナ材料を含む接触分解触媒は、良好な耐摩耗性を有する。
【0037】
本発明に係るアルミナ材料の調製方法は、単純であり、実施が容易であり、高価な有機アルミニウム源を必要としない。その結果、調製費用が低くなる。
【0038】
本発明に係る調製方法によって調製されるアルミナ材料は、粗悪な炭化水素オイルの良好な処理能力、粗悪なオイルの高い変換活性、高いガソリン収率、および低いコークス収率を有する。
【0039】
本発明に係る接触分解触媒は、分子ふるいと、本発明に係るアルミナ材料とを含み、一致する基質の初期分解および保護機能を発達させることにより、全体的な分解能力および触媒の金属汚染耐性を改善することができる。本発明に係る接触分解触媒が、粗悪な重油の接触分解変換のために使用される場合、以下の有益な効果のうち少なくとも1つが達成され得る:(1)重油の高い変換活性;(2)軽油の高い収率;(3)コークスの低い収率;(4)金属汚染後の重油の比較的高い変換活性を有する、優れた重金属汚染耐性;(5)Y型分子ふるいが使用される場合に、アルミナ基質を使用した従来の分解触媒と比較して、分解された製品におけるガソリン収率の顕著な改善および液体収率の増加。
【0040】
〔発明を実施するための形態〕
本発明のアルミナ材料を調製するための方法によれば、Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、細孔拡張剤と、水とが混合物を形成する。混合物を100~200℃超、例えば110~180℃または120~180℃の温度でエージング処理に供する。ここで、エージング処理は、水蒸気存在下で、好ましくは2~5時間実施される。いわゆる「水蒸気存在下で」とは、Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、細孔拡張剤との混合物と接触する雰囲気が、水蒸気を含む水蒸気雰囲気であることを意味する。水蒸気雰囲気は、通常、2~100体積%(例えば5~100体積%、好ましくは50~100体積%)の水蒸気を含む。エージング処理は、一般的に、常圧下、例えば1気圧(atm)の常圧で実施される。エージング処理後の製品は、乾燥の後に焼成されてもよく、または直接焼成されてもよい。乾燥処理で、エージングされた混合物中に保持される水蒸気を除去することができ、これにより、焼成費用が低減される。典型的には、乾燥温度は、200℃以下、例えば110~180℃または120~150℃である。乾燥は、空気雰囲気中で実施してもよい。好ましくは、エージング処理は、固体状の混合物中のAl(OH)3構造のアルミニウム源を、110~200℃、好ましくは120~180℃で、2~5時間、水蒸気と接触させることによって実施され、その後、乾燥する。
【0041】
本発明に係るアルミナ材料を調製するための調製方法の一実施形態は、以下を含む:
-Al(OH)源(Al2O3として計算される)と、Al(OH)3源(Al2O3として計算される)と、細孔拡張剤と、水とを、0.5~2:0.5~2:0.5~2:5~20のモル比(Al2O3として計算される)で、均質に混合すること、および
-得られる混合物を、水蒸気存在下で、110~200℃超、例えば120~180℃または120~150℃の温度で、2~5時間、エージングする工程。
エージング処理中、混合物中の固体外の水を沸点で蒸発させ、混合物を固体状とする。次いで、前記固体状を、110~180℃の温度で水蒸気と接触させ、2~5時間、エージング処理する。得られる固体を、空気雰囲気中で、100~180℃、例えば120~150℃の温度で乾燥させ、アルミナ材料の前駆体を得る。本発明に係るアルミナ材料またはアルミナ基質を提供するために、得られるアルミナ材料の前駆体を、500~1000℃で2~5時間、例えば500~700℃で3~5時間、焼成する。
【0042】
好ましくは、本発明に係るアルミナ材料の調製方法によって得られるアルミナ材料は、ドライベースに対して、Al2O3含有量が95重量%以上、例えば95~99重量%であり、Fe2O3含有量が1.5重量%以下、例えば0.1~1.5重量%であり、Na2O含有量が1重量%以下、例えば0.01~1重量%であり、Si2O含有量が1.5重量%以下、例えば0.1~1.5重量%であり、かつ比表面積が200~300m2/gであり、かつ合計細孔容積が0.35~0.45ml/gである。アルミナ材料の最終製品は、γ-アルミナの結晶相構造を有し、γ-アルミナの結晶化度は、40~60%であり、ここで、細孔径が2~100nmである細孔の容積に対して、細孔径が2~5nmである細孔の細孔容積が0~10%を占め、細孔径が5nm超であり、10nm以下である細孔の細孔容積が10~25%を占め、かつ細孔径が10nm超であり、100nm以下である細孔の細孔容積が65~90%を占め、かつ最大頻度細孔径が10~25nmである。アルミナ材料の最終製品は、B-酸およびL-酸を含み、L-酸に対するB-酸の比率が0.06~0.1である。一実施形態において、アルミナ材料中のB-酸の量は1~3μmol/gであり、L-酸の量は、10~40μmol/gである。
【0043】
一実施形態において、本発明は、以下を含む接触分解触媒を調製するための調製方法を提供する:
-触媒スラリーを得るために、バインダと、クレイと、分子ふるいと、アルミナ材料とをパルピングすること
-触媒スラリーを噴霧乾燥すること。
触媒スラリーの固体含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、例えば、30重量%~40重量%である。
【0044】
本発明の接触分解触媒の調製方法によれば、クレイは、当業者に公知のクレイ原料であり、一般的に使用されるクレイの種類が、本発明で使用され得る。本発明において、クレイは、好ましくは、カオリン、モンモリロナイト、珪藻土、ハロイサイト、擬ハロイサイト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルガイト、ハイドロタルサイトおよびベントナイトからなる群から選択される1種類以上である。例えば、クレイは、カオリンおよびハロイサイトからなる群から選択される1種類以上である。
【0045】
本発明に係る接触分解触媒の調製方法によれば、バインダは、当業者に公知のバインダであり得、擬ベーマイト、アルミニウムゾル、シリカゾル、マグネシウム-アルミニウムゾル、ジルコニウムゾル、およびチタニウムゾルからなる群から選択される1種類以上であり得、好ましくは酸性化擬ベーマイトおよび/またはアルミニウムゾルである。
【0046】
一実施形態において、接触分解触媒の調製方法は、以下を含む:
-分子ふるいと水とをパルピングすることであって、ここで、パルピングの固体含有量は、30%以下であり、パルピング時間は0.5~1時間である、
-次いで、カオリンと、既定量の半量のアルミナ材料と、アルミニウムゾルとを加えること
-2~4時間、パルピングを続けること
-酸性化擬ベーマイトを加えること
-1時間撹拌すること
-最後に規定量の残りの半量のアルミナ材料を加えること、
-0.5~1時間撹拌すること
-得られるスラリーを噴霧形成して、触媒微粒子を得ること。
触媒微粒子を、500℃超(好ましくは650~800℃)の温度で、2時間超、焼成して、得られる触媒を洗浄および乾燥する。
【0047】
いずれかの既知の理論で制限されることなく、本発明の方法における一実施形態では、既定量のアルミナを2回の工程で加える。アルミナゾルが1回の工程で加えられる場合、触媒の外表面が多層マクロ細孔構造の被包を形成し、これにより細孔構造の損失が低減される。一方で、触媒が500℃超の高温で焼成されることで、5~100nmの細孔分布が30~55%の範囲となる。
【0048】
一実施形態では、本発明において有用なアルミニウムゾルは、CN201610124722.7に記載の方法に従って調製され得る。当該方法は、いずれかの既知の理論で制限されることなく、本発明の目的のために、少量の塩化物の自由イオン、高いpH、AlおよびClの高程度の重合、および大粒子のアルミニウムゾルを有するアルミニウムゾルを生成する。このようなアルミニウムゾルは、一方で、分子ふるいおよびアルミナ基質に対するダメージを低下させ、他方で、アルミナ基質のマクロ細孔構造の詰まりを低下させる。その一方で、調製方法の手順中、カオリンおよびアルミナ基質をパルピングおよび分散させるために、粘着剤(アルミニウムゾルおよび擬ベーマイト)が使用された後、分子ふるいが加えられる。その結果、ゲル化期間が短くなり、アルミニウムゾル中の自由塩素がより少なく、アルミナ基質および分子ふるいに対するアルミニウムゾルのダメージが低減される。
【0049】
本発明に係る接触分解触媒の調製方法によれば、分子ふるいは当該分野で公知の分子ふるい原料であり、本発明では、当該分野で一般的に使用される任意の分子ふるいが使用され得る。例えば、分子ふるいはY型分子ふるい、高いシリカ-アルミナ比率を有する任意の他のゼオライト、またはその混合物である。Y型分子ふるいは、例えば、HY、USY、P、RE、MgおよびFeからなる群から選択される1種類以上を含むUSY、REY、REHY、リンを含むY型分子ふるい、リンおよび希土類元素を含むY型分子ふるい、ならびにリンおよび希土類元素を含むUSY分子ふるいからなる群から選択される1種類以上である。ここで、USY分子ふるいは、気相化学法(SiCl4に対してAlを除去し、Siを添加する方法)、液相化学法((NH4)2SiF6に対してAlを除去し、Siを添加する方法)および他の方法によって調製される、異なるSi/Al比率を有するYゼオライト、またはその混合物であり得る。高いシリカーアルミナ比率を有する他のゼオライトとして、例えば、ZSM-5ゼオライト等のMFI構造ゼオライト、および/またはβ-ゼオライト等のBEA構造ゼオライトが挙げられる。
【0050】
本発明に係る接触分解触媒の調製方法によれば、接触分解触媒中の分子ふるいの含有量は、好ましくは25重量%以上である。好ましくは、本発明に係る接触分解触媒の調製方法によって得られる接触分解触媒は、ドライベースに対する重量で、分子ふるいを25~50重量%、好ましくは25~35重量%の量で;クレイを0~50重量%、好ましくは0~40重量%または0~30重量%、例えば10~40重量%の量で;バインダを5~40重量%、例えば10~30重量%、好ましくは15~28重量%の量で;本発明によって提供されるアルミナ材料を2~30重量%、好ましくは3~25重量%、または5~20重量%、または5~15重量%の量で、含む。
【0051】
以下の実施例によって、本発明の特徴をさらに説明する。しかし、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例で使用される原料の詳細は以下の通りである:
カオリン:固体含有量81.2重量%(China Kaolin Clay Co.,Ltd. (Suzhou)製);
クエン酸、重炭酸アンモニウム、n-ブチルアミンおよびグルコース:分析上純粋;
アルミナゾル:22重量%のAl2O3(Qilu Division of Sinopec Catalyst Co.,Ltd.製);
擬ベーマイト:固体含有量72重量%(Shandong division of Aluminum Corporation of Chinaから入手);
Al(OH)構造のアルミニウム源:細孔容積が0.82ml/g、比表面積が285m2/g、ギブサイト含有量が3重量%であるマクロ細孔擬ベーマイト;ドライベースに対して、Al2O3が96重量%、Na2Oが0.1重量%未満(Shandong Shanlvyifeng Aluminum-based New Material Co., Ltd, 製品番号 P-DF-07-Lsi);
Al(OH)3構造のアルミニウム源:ギブサイト、ドライベースに対して、Al2O3の含有量が97重量%、Fe2O3含有量が0.3重量%、Na2Oの含有量が0.4重量%、Na2O含有量が0.3重量%(Zibo Yaohe Aluminum Co., Ltd.から入手);
使用される分子ふるいは、REY型分子ふるいである:固体含有量が80重量%、希土類元素含有量(RE2O3 1によって計算される)が17.2重量%(Qilu Division of Sinopec Catalyst Co.,Ltd.製);
触媒調製の実施例で得られる触媒の組成は、各原料の供給量から計算して決定される。
【0053】
特性評価方法は以下を含む:
(1)XRF蛍光分析(RIPP 117-90標準方法(Yang Cuiding ら編, Petrochemical Analysis Method (RIPP test method), Scientific Press, 1990)
(2)分解触媒の比表面積は、Autosorb-1窒素吸着/脱離装置(Congta, USAから入手)を用いて、GB/T5816-1995方法に沿って測定する。当該方法は、測定前に300℃で6時間、試料を脱ガスする必要がある。細孔径および平均細孔径は、BJHモデルによって計算する。
(3)相および結晶化度は、X線回折によって測定する。X線回折計は、モデルD5005(Siemens Germanyから入手)を使用する。実験条件は以下のとおりである:Cuターゲット、Kα放射、固体検出器、管電圧40kV、管電流40mA、走査ステップ0.02°、プレファブリケーション時間2秒、および走査範囲5°~70°であるステップ走査。
(4)酸性中心の型およびその酸量は、in-situピリジン吸着赤外線計測法によて分析および決定される。実験器具:モデルIFS113V、FT-IR(フーリエ変換赤外)分光光度計(Bruker, USAから入手)。ピリジン吸着赤外線計測法を用いて200℃における酸量を測定するための実験方法:試料に対して自立型成形を行い、試料を赤外分光光度計のin-situセル中に密封し、400℃で加熱し、10-3Paに真空化し、2時間温度を一定に保ち、試料によって吸着されたガス分子を除去する;次いで室温に冷却し、30分間、吸着平衡を維持するために、2.67Paの圧力でピリジン蒸気を加える;次いで200℃に加熱し、脱離のために、30分間、10-3Paに真空化し、室温に冷却し、スペクトログラフィを行った、走査波数範囲:1400cm-1~1700cm-1、200℃で脱離された試料のピリジン吸着赤外スペクトログラムを得る。ピリジン吸着赤外スペクトログラムにおける1540cm-1および1450cm-1での特徴的な吸着ピークの強度に基づいて、分子ふるい中のBronsted酸性中心(B-酸中心)とLewis酸性中心(L-酸中心)との合計の相対量が得られる。
【0054】
[実施例I-1]
Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、クエン酸と、重炭酸アンモニウムと、水とを、1:1:0.5:0.5:10のモル比で混合し、1時間撹拌した。得られた混合物を、130℃、1気圧(絶対圧力、以下同様)、および100体積%の水蒸気(大気中の水蒸気含有量は100体積%であった、以下同様)の条件下で、3時間エージングした。得られた固体を、空気雰囲気中、120℃で乾燥して、アルミナ材料の前駆体Aを得た。
【0055】
得られた前駆体Aを、700℃で3時間焼成し、最終的に本発明に係るアルミナ基質を得た。これをJZ1とした。アルミナ基質の物理的特性および化学的特性の分析データを、表1に示した。
【0056】
アルミナ材料前駆体Aは、ドライベースに対して、Al2O3含有量が96.7重量%、Fe2O3含有量が0.3重量%、Na2O含有量が0.05重量%、SiO2含有量が0.24重量%、かつ比表面積が356m2/gであった。
【0057】
[実施例I-2]
Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、n-ブチルアミンと、水とを、1:1:1:10のモル比で混合し、1時間撹拌した。得られた混合物を、130℃、1気圧および100体積%の水蒸気の条件下で、3時間エージングした。得られた固体を、空気雰囲気中、120℃で乾燥し、700℃で3時間焼成した。最終的に本発明に係るアルミナ材料を得た。これをJZ2とした。アルミナ基質の物理的特性および化学的特性の分析データを、表1に示した。
【0058】
[実施例I-3]
Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、クエン酸と、重炭酸アンモニウムと、水とを、1:1:0.5:0.5:10のモル比で混合し、1時間撹拌した。得られた混合物を、130℃、1気圧、および100体積%の水蒸気の条件下で、3時間エージングした。得られた固体を、空気雰囲気中、120℃で乾燥し、アルミナ材料の前駆体Aを得た。
【0059】
得られた前駆体Aを、500℃で3時間焼成し、最終的に本発明に係るアルミナ基質を得た。これをJZ3とした。アルミナ基質の分析特性評価データを、表1に示した。
【0060】
[実施例I-4]
Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、クエン酸と、重炭酸アンモニウムと、水とを、1:1:0.5:0.5:15のモル比で混合し、1時間撹拌した。得られた混合物を、130℃、1気圧、および100体積%の水蒸気の条件下で、2.5時間エージングした。得られた固体を、空気雰囲気中、120℃で乾燥し、800℃で3時間焼成した。最終的に本発明に係るアルミナ基質を得た。これをJZ4とした。アルミナ基質の物理的特性および化学的特性の分析データを、表1に示した。
【0061】
[比較例I-1]
Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、水とを、1:1:10のモル比で混合し、1時間撹拌した。得られた混合物を、130℃、1気圧、および100体積%の水蒸気(水蒸気100%)の条件下で、3時間エージングした。得られた固体を、120℃で乾燥し(空気雰囲気中、以下同様)、700℃で3時間,焼成して、アルミナ基質を得た。これをDJZ1とした。アルミナ基質の分析データを、表1に示した。
【0062】
[比較例I-2]
Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、クエン酸と、重炭酸アンモニウムと、水とを、1:1:0.5:0.5:10のモル比で混合し、1時間撹拌した。得られた混合物を、120℃で乾燥し、700℃で3時間焼成して、最終的にアルミナ基質を得た。これをDJZ2とした。アルミナ基質の分析データを、表1に示した。
【0063】
[比較例I-3]
Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、クエン酸と、重炭酸アンモニウムと、水とを、1:1:0.5:0.5:10のモル比で混合し、1時間撹拌した。得られた溶液を、130℃、1気圧、および水蒸気の条件下で、3時間エージングした。得られた固体を120℃で乾燥し、アルミナ材料の前駆体Aを得た。得られた前駆体Aを、400℃で6時間焼成して、アルミナ基質を得た。これをDJZ3とした。アルミナ基質の分析データを、表1に示した。
【0064】
[比較例I-4]
Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、グルコースと、水とを、1:1:1:10のモル比で混合し、1時間撹拌した。得られた溶液を、130℃、1気圧、および水蒸気の条件下で3時間エージングした。得られた固体を、120℃で乾燥し、700℃で3時間焼成して、アルミナ基質を得た。これをDJZ4とした。アルミナ基質の分析データを、表1に示した。
【0065】
[比較例I-5]
55℃の中和およびゲル化の温度で、系のpHが8に達するまで、90g Al2O3/Lの濃度のAl2(SO4)3溶液を、アンモニア水に撹拌しながら滴下して加えた。60g Si2O/Lの量の水ガラスを撹拌しながら加え、80℃に加熱して、2時間エージングした。シリカ-アルミナ沈殿物から、60℃で、NH4Cl溶液を用いたイオン交換によってナトリウムイオンを除去した。このとき沈殿物(ドライベース):アンモニウム塩:H2Oの重量比率は、1:0.8:10であった。ここで、イオン交換は、各時間0.5時間で2回行った。次いで、得られた濾過ケーキを予備パルピングして、必要量のフルオロケイ酸を、材料スラリーに滴下した。このときフルオロケイ酸:材料(ドライベース):H2Oの重量比率は、0.02:1:10であった。次いで60℃で1時間反応させ、濾過し、水で洗浄して、120℃で15時間乾燥した。その結果、酸性シリカ-アルミナ材料基質を得た。これをDJZ5とし、分析データを、表1に示した。
【0066】
[比較例I-6]
(1)22gの擬ベーマイトを、50mLの脱イオン水に加え、10分間パルピングして、擬ベーマイトパルプを調製した:酸性化および解膠するために、擬ベーマイトスラリーに、30mLの1mol/L硝酸溶液を滴下して加え、滴下後に10~15分間連続して撹拌して、擬ベーマイトゾルを得た。
(2)40mLの脱イオン水に溶解した0.03molのホウフッ化アンモニウムの水溶液を、初めに擬ベーマイトゾルへ滴下して加え、次いで40mLの脱イオン水に溶解した13gPEG水溶液を滴下して加えて、第1の混合物を得た。
(3)第1の混合物を、60~90℃で6時間反応させ、反応後冷却した。アンモニア水を用いてpHを11に調整し、水浴中、75℃で24時間エージングして、第2の混合物を得た。
(4)第2の混合物を濾過および洗浄し、80℃で13時間乾燥した後、650℃で4時間焼成して(加熱速度1℃/分の温度設定を使用)、メソ細孔アルミナ材料を生成した(アルミナ基質DJZ6とした)。比表面積が29m2/g、細孔容積が0.59ml/g、最大頻度細孔径が12.1nm、かつB/L-酸モル比が1.1であった。
【0067】
[比較例I-7]
Al(OH)構造のアルミニウム源と、Al(OH)3構造のアルミニウム源と、クエン酸と、重炭酸アンモニウムと、水とを、1:1:0.5:0.5:30のモル比で混合し、1時間撹拌した。得られた混合物を、130℃、1気圧(絶対圧力、以下同様)、および100体積%の水蒸気(大気中の水蒸気含有量が100体積%であった、以下同様)の条件下で、6時間エージングした。得られた固体を、空気雰囲気中、120℃で乾燥し、アルミナ材料の前駆体Aを得た。得られた前駆体Aを、1100℃で1.5時間焼成して、最終的に本発明に係るアルミナ基質を得た。これをDJZ7とした。アルミナ基質の分析データを、表1に示した。
【0068】
【0069】
[実施例I-5~I-7]
アルミナ材料を、実施例I-1の方法を参照して調製した。調製方法のパラメータおよび製品の特性を、表1に示した。
【0070】
【0071】
低温窒素吸着/脱離の特性評価の結果を参照すると、本発明に係るアルミナ材料は、サイズが10nm超である細孔をより多く有していた。本発明に係るアルミナ材料では、2~100nmの細孔径の範囲内に細孔が連続して分布していた。
【0072】
[触媒調製実施例II-1]
36.36Kgのアルミナゾルを、反応容器に加えて撹拌し、27.78Kgの擬ベーマイト(固体含有量72重量%、Shandong division of Aluminum Corporation of China製)を加え、103.82Kgの脱カチオン化水(本明細書中、酸性水とも称する)を加え、5.26Kgのアルミナ基質JZ1および39.41Kgのカオリンを40分間撹拌し続けながら加えて、60分間撹拌した。31重量%の濃度である、4Kgの塩酸を加え、30分間撹拌した。116.7Kgの分子ふるいスラリー(43.75Kgの分子ふるい(ドライベース)および72.92Kgの脱カチオン化水を含む)、30分間撹拌し、噴霧乾燥して、触媒微粒子を得た。得られた触媒微粒子を、500℃で1時間焼成し、2回洗浄した。ここで、各洗浄は、触媒微粒子のドライベースの重量の8倍の量の脱カチオン化水を用いて行った。次いで、120℃の一定の温度で2時間乾燥して、触媒試料C1を得た。触媒の配合ならびに製品の物理的特性および化学的特性を、表2に示した。
【0073】
[触媒調製実施例II-2]
36.36Kgのアルミナゾルを、反応容器に加えて撹拌し、27.78Kgの擬ベーマイト(固体含有量72重量%、Shandong division of Aluminum Corporation of China製)を加え、103.82Kgの脱カチオン化水(本明細書中、酸性水とも称する)を加え、40分間撹拌しながら5.26Kgのアルミナ基質JZ1および39.41Kgのカオリンを加えて、60分間撹拌した。31重量%の濃度である、4Kgの塩酸を加え、30分間撹拌した。90Kgの分子ふるいスラリー(33.75Kgの分子ふるいおよび56.25Kgの脱カチオン化水を含む)を、30分間撹拌し、噴霧乾燥して、触媒微粒子を得た。触媒微粒子を500℃で1時間焼成し、2回洗浄した。ここで、各洗浄は、触媒微粒子のドライベースの重量の8倍の量の脱カチオン化水を用いて行った。次いで、120℃の一定の温度で2時間乾燥して、触媒試料C2を得た。触媒の配合ならびに製品の特性を、表2に示した。
【0074】
[触媒調製実施例II-3~II-8]
実施例II-2の供給の配合比率および方法に従って、接触分解触媒を調製した。ここで、触媒調製実施例II-3では、触媒調製実施例II-2のアルミナ基質JZ1をJZ2に置き換えた。触媒調製実施例II-4では、アルミナ基質JZ1をJZ3に置き換えた。触媒調製実施例II-5では、アルミナ基質JZ1をJZ4に置き換えた。触媒調製実施例II-6では、アルミナ基質JZ1をJZ5に置き換えた。触媒調製実施例II-7では、アルミナ基質JZ6をJZ1に置き換えた。触媒調製実施例II-8では、アルミナ基質JZ1をJZ7に置き換えた。配合比率および特性を、表2に示した。
【0075】
[触媒調製実施例II-9]
33.75Kgの分子ふるい(ドライベース)および56.25Kgの脱カチオン化水をパルピングし、固体含有量が30%で0.5時間パルピングした;30.79Kgのカオリン、10.52Kgのアルミナ基質JZ1、および36.36Kgのアルミナゾルを加えた。混合物をさらに2時間パルピングし、次いで27.78Kgの擬ベーマイトおよび31重量%の濃度である、4Kgの塩酸を加え、1時間撹拌した。最後に10.52Kgのアルミナ基質JZ1を加え、1時間撹拌して、触媒微粒子を得た。得られた触媒微粒子を、750℃で2時間焼成し、2回洗浄した。各洗浄は、触媒微粒子のドライベースの重量の8倍の量の脱カチオン化水を用いて行った。次いで、120℃の一定の温度で2時間乾燥して、触媒試料C9を得た。触媒の配合および製品の特性を、表2に示した。
【0076】
[触媒調製比較例II-1]
116.7Kgの分子ふるいスラリー(43.75Kgの分子ふるいおよび72.92Kgの脱カチオン化水を含む)を30分間撹拌し、噴霧乾燥して、触媒微粒子を得た。得られた触媒微粒子を、500℃で1時間焼成し、2回洗浄した。各洗浄は、触媒微粒子のドライベースの重量の8倍の量の脱カチオン化水を用いて行った。次いで、120℃の一定の温度で2時間乾燥して、触媒試料D1を得た。触媒の配合および製品の特性を、表2に示した。
【0077】
[触媒調製比較例II-2~II-7]
アルミナ基質JZ1を、比較例I-1~I-6で調製された基質DJZ1~DJZ6ででそれぞれ置き換えたこと以外は、触媒調製実施例II-2を参照して、触媒を調製した。
【0078】
[触媒調製比較例II-8]
分子ふるい(実施例II-2で使用される分子ふるいと同じ)の含有量が、27重量%、アルミナゾルの量が8重量%、擬ベーマイトの含有量が20重量%、および修飾された二峰性細孔構造アルミナ材料(SKA3)の含有量が20重量%であること以外は、CN104014361Bの実施例3を参照して、触媒を調製した。この触媒をD8とした。
【0079】
[触媒の評価]
本発明の触媒および比較例の触媒の分解反応能力を評価した。
【0080】
原油は、粗悪な原油Sinopec Shanghai Gaoqiao Petrochemical Co., Ltd.であった。物理的特性および化学的特性のデータを、表3に示した。
【0081】
固定化流動床装置上での評価の結果を、表4に列挙した。触媒を、800℃で17時間、100%水蒸気によりエージングし、失活させた。触媒の投入量は9gであり、オイルに対する触媒の比率は5(重量比率)であり、反応温度は500℃であった。
【0082】
変換=ガソリン収率+液化ガス収率+乾燥ガス収率+コークス収率
軽油収率=ガソリン収率+ディーゼル収率
液体収率=液化ガス+ガソリン+ディーゼル
コークス選択性=コークス収率/変換
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
表4からわかるように、先行技術に従って調製された触媒と比較して、本発明の方法によって調製された触媒は、分子ふるいの使用量が同じ場合に、粗悪な重油に対するより良好な分解能力、より高い変換率、より高いガソリン収率、より低い重油収率、より高い軽油収率、より高い液化ガス収率および良好なコークス選択性という利点を有していた。実施例II-2~II-8からわかるように、分子ふるいの含有量がより少ない場合、本発明に係る触媒C2~C8は、比較例によって得られた触媒と比較して、より高い変換率およびより高いガソリン収率を有しつつ、粗悪な質の有油に対するより良好な分解能力を依然として有していた。
【0089】
触媒C1~C8およびD1を、循環エージングユニット上での循環汚染に供し(NiおよびVを堆積させるため)、循環汚染された触媒のNiおよびV含有量を、表5に示した。ここで、循環汚染方法は、以下の工程を含む:
-Michelle含浸法によって、重金属(NiおよびV)を触媒混合物に導入する工程、
-次いで重金属を導入された触媒材料を、小さな固定化流動床に投入する工程、
-および小さな固定化流動床装置上で、以下の工程で処理する工程:
(a)窒素雰囲気下、加熱速度20℃/分で、600℃に加熱する工程
(b)加熱速度1.5℃/分で、780℃に加熱し、780℃の温度を維持し、一定の温度プロセス中に以下の工程に従って処理雰囲気を変化させる工程
(i)40体積%の窒素(5体積%のプロピレンを含む)および60体積%の水蒸気を含む雰囲気中で、10分間処理する工程
(ii)40体積%の窒素(純粋な窒素、プロピレンを含まない)および60体積%の水蒸気を含む雰囲気中で、10分間処理する工程
(iii)40体積%の空気(4000ppmのSO2を含む)および60体積%の水蒸気を含む雰囲気中で、10分間処理する工程、および
(iv)40体積%の窒素および60体積%の水蒸気を含む雰囲気中で、10分間処理し;次いでステップ(i)~(iv)を上述した順番でもう1度繰り返す工程、次いで、ステップ(i)を繰り返し、循環汚染手順を終了する工程;
次いで、エージングステップを行った:循環汚染の後、100体積%の水蒸気を含む雰囲気中で、800℃で8時間、触媒混合物をエージングする;
次いで、循環汚染-エージングの後、ACEユニット上で、触媒混合物の触媒能力を評価する工程、ここで、原油(表3に示された特性)を、反応器の底部の触媒混合物と接触させた。具体的な評価条件および結果を、表5に示した。
【0090】
【0091】
表5からわかるように、本発明に係るアルミナ基質を用いて調製された接触分解触媒は、より良好な汚染耐性を有していた;汚染されていない新鮮な触媒と比較して、ある程度分解活性が低減され;比較例の触媒と比較して、良好な分解活性を示し;汚染された比較例の物質と比較して、より高い変換率およびより高いガソリン収率、およびより高い軽油収率をもたらした。