(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/22 20060101AFI20240215BHJP
B29B 11/08 20060101ALI20240215BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20240215BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20240215BHJP
B29C 49/64 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B29C49/22
B29B11/08
B29C45/16
B29C49/06
B29C49/64
(21)【出願番号】P 2021561452
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043813
(87)【国際公開番号】W WO2021106929
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2019212585
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020101661
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】土屋 要一
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-052234(JP,A)
【文献】特開2000-238116(JP,A)
【文献】特開2001-105478(JP,A)
【文献】特表2010-503565(JP,A)
【文献】特表2011-525880(JP,A)
【文献】特開2016-120691(JP,A)
【文献】特開2016-132183(JP,A)
【文献】特開2016-199053(JP,A)
【文献】国際公開第2013/012067(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/090774(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0291331(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011055011(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/08
B29C 45/16
49/00 - 49/80
51/42 - 51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の樹脂製の中間成形体を第1層となる樹脂材料で射出成形する第1射出成形工程と、
前記中間成形体の外側に第2層となる樹脂材料を射出成形し、前記中間成形体の外周側に樹脂層が積層され
、透光性を有する多層のプリフォームを製造する第2射出成形工程と、
射出成形時の保有熱を有する前記プリフォームをブロー成形に適した温度に調整する温度調整工程と、
射出成形時の保有熱を有するとともに温度調整された前記プリフォームをブロー成形して、厚肉部を有する樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有し、
前記中間成形体および前記プリフォームは、それぞれ胴部に対して底部が径方向外側に突出しない形状をなし、
前記中間成形体の胴部は、周方向の肉厚が均一であり、
前記プリフォームの胴部および底部は、内周側の前記第1層と外周側の前記第2層とが積層して構成されており、前記第1層および前記第2層の厚さは、それぞれ10mm以下であり、
前記プリフォームは、前記胴部の肉厚よりも前記底部の肉厚が厚い、
樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂製容器は、容器胴部の肉厚よりも容器底部の肉厚が厚い
請求項1に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記第1層の材料と前記第2層の材料の組成が異なる
請求項1または請求項2に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
前記温度調整工程において前記プリフォームの少なくとも底部が局所的に冷却される
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
前記温度調整工程では、前記プリフォームの胴部に臨む第1金型よりも低い温度に調整された第2の金型に前記プリフォームの底部を接触させて、前記プリフォームの底部が冷却される
請求項4に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項6】
前記第2射出成形工程において、それぞれ軸方向に延びる凸部と溝が周方向に交互に並ぶ前記樹脂層を、前記中間成形体の外周側に形成した溝付きプリフォームを製造し、
前記ブロー成形工程において、前記溝付きプリフォームをブロー成形して、軸方向に延びる溝を容器胴部の外周面に複数有する樹脂製容器を製造する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項7】
前記ブロー成形工程において、前記溝付きプリフォームの前記凸部をブロー金型の凹部に対向させて前記ブロー成形を行う
請求項6に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項8】
前記溝付きプリフォームの前記凸部の角度は、前記ブロー金型の前記凹部の開き角よりも小さい
請求項7に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項9】
前記溝付きプリフォームを前記ブロー金型に配置したときに、前記溝付きプリフォームの前記凸部と前記ブロー金型の凹部との径方向の第1間隔は、前記溝付きプリフォームの前記溝と前記ブロー金型との径方向の第2間隔よりも小さい
請求項7または請求項8に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項10】
有底筒状の樹脂製の中間成形体を第1層となる樹脂材料で射出成形する第1射出成形部と、
前記中間成形体の外側に第2層となる樹脂材料を射出成形し、前記中間成形体の外周側に樹脂層が積層され
、透光性を有する多層のプリフォームを製造する第2射出成形部と、
射出成形時の保有熱を有する前記プリフォームをブロー成形に適した温度に調整する温度調整部と、
射出成形時の保有熱を有するとともに温度調整された前記プリフォームをブロー成形して、厚肉部を有する樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備え、
前記中間成形体および前記プリフォームは、それぞれ胴部に比べて底部が径方向外側に突出しない形状をなし、
前記中間成形体の胴部は、周方向の肉厚が均一であり、
前記プリフォームの胴部および底部は、内周側の前記第1層と外周側の前記第2層とが積層して構成されており、前記第1層および前記第2層の厚さは、それぞれ10mm以下であり、
前記プリフォームは、前記胴部の肉厚よりも前記底部の肉厚が厚い、
樹脂製容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品や乳液等を収容する容器には、消費者の購買意欲を高めるため、容器自体に美的鑑賞に堪える外観が要求される。この種の化粧品等を収容する容器には、重厚感や高級感があり、繰返し使用しても美麗な状態を保つことが可能なガラス製のびんが好んで用いられている。しかし、ガラス製のびんは重くて割れやすく、輸送や製造にかかるコストも高い。そのため、化粧品等を収容する容器においてもガラス製のびんを樹脂製容器に代替することが検討されている。
【0003】
ここで、樹脂製容器の製造方法の一つとして、ホットパリソン式のブロー成形方法が従来から知られている。ホットパリソン式のブロー成形方法は、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用して樹脂製容器がブロー成形される。そのため、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた樹脂製容器を製造できる点で有利である。
【0004】
化粧品等を収容する容器として樹脂製容器を採用する場合、高級感や重量感を強調するために、底部を肉厚にするとともに胴部を薄く均肉化させた形状に樹脂製容器を成形することが望ましい。ホットパリソン式のブロー成形方法によって上記の肉厚分布の樹脂製容器を成形しようとする場合には、底部の厚さが最も厚く設定された厚肉のプリフォームが適用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ホットパリソン式のブロー成形方法において厚肉のプリフォーム(例えば底部が肉厚のプリフォーム)を射出成形する場合、射出・冷却時間を長く確保する必要が生じる。例えば、射出時間が短い(射出速度が速い)場合、プリフォームの底部にシワが生じてブロー成形後の容器底部にシワの跡が残るおそれがある。また、プリフォーム底部の温度ムラが大きくなることで、ブロー成形後の容器底部の内壁面が波打った形状になったり、プリフォーム底部にヒケ(局所的な凹み)やボイド(気泡)が生じたりするおそれもある。
【0007】
また、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の結晶化しやすい材料で厚肉のプリフォームを成形すると冷却不足による白化(結晶化)も生じやすくなる。これにより、ブロー成形後の容器の品質が損なわれるおそれもある。
【0008】
さらに、ホットパリソン式のブロー成形方法では、容器の成形サイクルにおける各工程の律速はプリフォームの射出・冷却時間で規定される。つまり、肉厚のプリフォームを射出成形する場合には、律速段階であるプリフォームの射出・冷却時間がより長くなることから、容器の成形サイクルも長くなってしまう。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、厚肉部を有するとともに外観が良好な樹脂製容器を短い成形サイクルで製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様である樹脂製容器の製造方法は、有底筒状の樹脂製の中間成形体を第1層となる樹脂材料で射出成形する第1射出成形工程と、中間成形体の外側に第2層となる樹脂材料を射出成形し、中間成形体の外周側に樹脂層が積層され、透光性を有する多層のプリフォームを製造する第2射出成形工程と、射出成形時の保有熱を有するプリフォームをブロー成形に適した温度に調整する温度調整工程と、射出成形時の保有熱を有するとともに温度調整されたプリフォームをブロー成形して、厚肉部を有する樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する。中間成形体およびプリフォームは、それぞれ胴部に対して底部が径方向外側に突出しない形状をなし、中間成形体の胴部は、周方向の肉厚が均一である。プリフォームの胴部および底部は、内周側の第1層と外周側の第2層とが積層して構成されており、第1層および第2層の厚さは、それぞれ10mm以下である。さらに、プリフォームは、胴部の肉厚よりも底部の肉厚が厚く形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、厚肉部を有するとともに外観が良好な樹脂製容器を短い成形サイクルで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】(a)はプリフォームの縦断面図であり、(b)はプリフォームの中間成形体の縦断面図である。
【
図4】第1実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
【
図6】容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図8】(a)は第2実施形態の容器の正面図であり、(b)は
図8(a)のVIIIb-VIIIb線断面図である。
【
図9】(a)は第2実施形態の容器の製造に適用されるプリフォームの縦断面図であり、(b)は
図9(a)のIXb-IXb線断面図である。
【
図10】ブローキャビティ型を型閉じしたときのブローキャビティ型とプリフォームの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0014】
<第1実施形態>
<樹脂製容器の構成例>
まず、
図1、
図2を参照して、第1実施形態に係る樹脂製容器(以下、単に容器とも称する)10の構成例を説明する。
図1は第1実施形態の容器10の正面図であり、
図2は、
図1に示す容器10の縦断面図である。
【0015】
図1に示す容器10は、例えば、PET等の樹脂材料で形成され、例えば、化粧水や乳液等が収容される。容器10は、上端に口部11を有する首部12と、首部12から連続する筒状の胴部13と、胴部13から連続する底部14とを有している。
図2に示すように、容器10の底部14の肉厚t2は、胴部13の肉厚t1よりも厚く形成されている。すなわち、胴部13の肉厚t1は底部14に対してかなり薄く形成されており、また胴部13は均肉化されている。
【0016】
容器10を上記の肉厚分布を有する形状とすることで高級感や重量感が強調され、容器10を消費者の持つ化粧品容器のイメージに近づけることができる。すなわち、容器10の美観を高めることができるため、容器10を見栄えが重要な化粧品容器等として使用することができる。
【0017】
また、
図2に示すように、容器10の胴部13および底部14は、容器内面に臨む第1層と容器外面に臨む第2層とが積層された構造を有している。この構造は、後述するプリフォーム20をブロー成形することで形成される。
【0018】
<プリフォームの構成例>
図3は、第1実施形態の容器10の製造に適用されるプリフォーム20の例を示す。
図3(a)は、プリフォーム20の縦断面図であり、
図3(b)は、プリフォーム20の中間成形体20Aの縦断面図である。
【0019】
プリフォーム20の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム20は、円筒状に形成された胴部21と、胴部21の他端側を閉塞する底部22と、胴部21の一端側の開口に形成された首部23とを備える。
【0020】
また、プリフォーム20は、内周側に位置する第1層24と、外周側に位置する第2層25とが積層された構造を有している。首部23は第1層24の材料で構成されるが、胴部21および底部22においては、第1層24の外周に第2層25が積層されて構成されている。
【0021】
図3(a)のプリフォーム20は、以下のようにして形成される。まず、胴部21、底部22および首部23を有する中間成形体20A(
図3(b))を第1層24の材料で射出成形する。その後、中間成形体20Aの胴部21および底部22の外周に第2層25の材料をさらに射出成形することで、プリフォーム20が形成される。
【0022】
ここで、第1層24および第2層25の材料の組成は、同じでも異なっていてもよい。例えば、第1層24と第2層25で同じ樹脂材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。また、例えば、第1層24、第2層25の各材料で、着色材の分量(色の濃淡)や着色材の種類(色の種類)などを変化させてもよい。なお、第1層24または第2層25は、光を透過させる性質(透光性)を有していてもよい。
【0023】
また、プリフォーム20の寸法や仕様、例えば、第1層24および第2層25の厚さは、製造する容器10の形状に応じて適宜変更できる。
【0024】
図3(a)の例では、第1層24においては底部22の肉厚と胴部21の肉厚がほぼ同様であるが、第2層25においては底部22の肉厚が胴部21の肉厚よりも厚く設定されている。これにより、プリフォーム20の全体としては、底部22の肉厚が胴部21の肉厚よりも厚くなっている。例えば、プリフォームの各層の厚さは10mm以下に設定される。また、第1層24の底部の厚さは約3.5mmに設定され、第2層25の底部の厚さは約6.5mmに設定される。なお、プリフォーム20の長さ(首部23の上端から底部22の第2層25の下端までの長さ)は、容器10より長く設定されるのが望ましい。
【0025】
<容器の製造装置の説明>
図4は、第1実施形態のブロー成形装置30の構成を模式的に示す図である。第1実施形態のブロー成形装置30は、容器の製造装置の一例であって、プリフォーム20を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用して容器をブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)を採用する。
【0026】
ブロー成形装置30は、第1射出成形部31と、第2射出成形部32と、温度調整部33と、ブロー成形部34と、取り出し部35と、搬送機構36とを備える。第1射出成形部31、第2射出成形部32、温度調整部33、ブロー成形部34および取り出し部35は、搬送機構36を中心として所定角度(例えば72度)ずつ回転した位置に配置されている。なお、ブロー成形装置30は、第1射出成形部31と第2射出成形部32の間に、プリフォーム20の第1層24のみを加熱または冷却できる温度調整部を、更に備えていてもよい。この場合、各成形ステーションは、搬送機構36を中心として60度ずつ回転した位置に配置される。
【0027】
(搬送機構36)
搬送機構36は、
図4の紙面垂直方向の軸を中心に回転する回転板(不図示)を備える。回転板には、プリフォーム20の首部23(または容器10の首部12)を保持する不図示のネック型が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構36は、回転板を回転させることで、ネック型で首部23が保持されたプリフォーム20(または容器10)を、第1射出成形部31、第2射出成形部32、温度調整部33、ブロー成形部34、取り出し部35の順に搬送する。なお、搬送機構36は、回転板を昇降させることもでき、第1射出成形部31や第2射出成形部32における型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0028】
(第1射出成形部31)
第1射出成形部31は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型を備え、
図3(B)に示すプリフォーム20の中間成形体20Aを製造する。第1射出成形部31には、プリフォーム20の第1層24の原材料(樹脂材料)を供給する第1射出装置37が接続されている。
【0029】
第1射出成形部31においては、上記の射出キャビティ型、射出コア型と、搬送機構36のネック型とを型閉じして中間成形体20Aの型空間を形成する。そして、上記の型空間内に第1射出装置37から樹脂材料を流し込むことで、第1射出成形部31において、プリフォーム20の第1層24に相当する中間成形体20Aが製造される。
【0030】
ここで、第1層24の原材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器10の仕様に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。また、樹脂材料には、着色材などの添加材が添加されていてもよい。
【0031】
なお、第1射出成形部31の型開きをしたときにも、搬送機構36のネック型は開放されずにそのまま中間成形体20Aを保持して搬送する。第1射出成形部31で同時に成形される中間成形体20Aの数(すなわち、ブロー成形装置30で同時に成形できる容器10の数)は、適宜設定できる。
【0032】
(第2射出成形部32)
第2射出成形部32は、図示を省略する射出キャビティ型を備え、中間成形体20Aの外周部に第2層25を射出成形する。第2射出成形部32には、プリフォーム20の第2層25の原材料(樹脂材料)を供給する第2射出装置38が接続されている。なお、第2射出成形部32は、図示を省略する射出コア型を備えていてもよい。
【0033】
第2射出成形部32においては、射出キャビティ型の内部に中間成形体20Aを収容した後、中間成形体20Aの外周と射出キャビティ型の間に第2射出装置38から樹脂材料が射出される。これにより、第2射出成形部32において、中間成形体20Aの外周部に第2層25が形成され、
図3(a)のプリフォーム20が製造される。なお、樹脂材料の射出前に、中間成形体20Aの内周と接触するように射出コア型を挿入してもよい。
【0034】
第2層25の原材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、具体的な材料の種類は第1層24の原材料の説明と同様である。第2層25の原材料の組成は、第1層24と同じでも異なっていてもよい。例えば、第1層24と第2層25で同じ樹脂材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。また、例えば、第1層24、第2層25の各材料で、着色材の分量や着色材の種類などを変化させてもよい。
【0035】
(温度調整部33)
温度調整部33は、第2射出成形部32から搬送されるプリフォーム20の均温化や偏温除去を行い、プリフォーム20の温度を最終ブローに適した温度(例えば約90℃~105℃)に調整する。また、温度調整部33は、射出成形後の高温状態のプリフォーム20を冷却する機能も担う。
【0036】
図5は、温度調整部33の構成例を示す図である。温度調整部33は、プリフォーム20の胴部21を収容する第1金型(加熱ポット41)と、プリフォーム20の底部22に臨む第2金型(温度調整ポット42)と、プリフォーム20の内部に挿入される第3金型(温度調整ロッド43)とを備える。
【0037】
加熱ポット41には加熱部材(バンドヒーター等)が設けられ、温度調整ポット42および温度調整ロッド43の内部には、それぞれ温度調整媒体(冷却媒体)の流れる流路(不図示)が形成されている。そのため、温度調整部33の各金型は、加熱部材および内部を流れる温度調整媒体により所定の温度に保たれる。
【0038】
加熱ポット41の温度は、温度調整ポット42および温度調整ロッド43の温度(例えば20℃~60℃)よりも高い温度(例えば280℃~330℃)に設定されている。そのため、加熱ポット41に臨むプリフォーム20の胴部21は、底部22と比べて高い温度(例えば100℃~120℃)に調整される。
【0039】
また、温度調整ロッド43は、プリフォーム20の底部22に臨む先端部が、プリフォーム20の胴部21に臨む軸部分よりも径方向に広がった形状を有する。温度調整ロッド43は、プリフォーム20を温度調整ポット42に向けて押圧し、プリフォーム20の底部22を温度調整ポット42に押し当てる機能を担う。なお、温度調整ロッド43と胴部21の内周の間には環状の隙間が生じ、プリフォーム20の胴部21は温度調整ロッド43とは直接接触しない。また、加熱ポット41と胴部21の外周の間にも環状の隙間が設けられ、プリフォーム20の胴部21は加熱ポット41とも直接接触しない。
【0040】
これにより、温度調整部33にプリフォーム20が配置されたときに、プリフォーム20の底部22は、温度調整ポット42と温度調整ロッド43に挟み込まれて接触冷却され、底部22とその近傍は胴部21と比べて低い温度に調整される。一方、胴部21は加熱ポット41からの輻射熱により底部22と比べて高い温度に調整され、ブロー(延伸)し易い温度まで昇温される。
【0041】
(ブロー成形部34)
ブロー成形部34は、温度調整部33で温度調整されたプリフォーム20に対してブロー成形を行い、容器10を製造する。
ブロー成形部34は、容器10の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型と、底型と、延伸ロッドおよびエア導入部材(いずれも不図示)を備える。ブロー成形部34は、プリフォーム20を延伸しながらブロー成形する。これにより、プリフォーム20がブローキャビティ型の形状に賦形されて容器10を製造することができる。
【0042】
(取り出し部35)
取り出し部35は、ブロー成形部34で製造された容器10の首部12をネック型から開放し、容器10をブロー成形装置30の外部へ取り出すように構成されている。
【0043】
<容器の製造方法の説明>
次に、第1実施形態のブロー成形装置30による容器の製造方法について説明する。
図6は、容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【0044】
(ステップS101:第1射出成形工程)
まず、第1射出成形部31において、射出キャビティ型、射出コア型および搬送機構36のネック型で形成された中間成形体20Aの型空間に第1射出装置37から樹脂材料を射出し、プリフォーム20の第1層24に相当する中間成形体20Aが製造される。
【0045】
その後、第1射出成形部31が型開きされると、搬送機構36の回転板が所定角度回転し、ネック型に保持された中間成形体20Aが、射出成形時の保有熱を含んだ状態で第2射出成形部32に搬送される。
【0046】
(ステップS102:第2射出成形工程)
続いて、第2射出成形部32において、射出キャビティ型の内部に中間成形体20Aを収容した後、中間成形体20Aの外周と射出キャビティ型の間に第2射出装置38から樹脂材料が射出される。これにより、中間成形体20Aの外周部に第2層25が形成され、プリフォーム20が製造される。
【0047】
その後、第2射出成形部32が型開きされると、搬送機構36の回転板が所定角度回転し、ネック型に保持されたプリフォーム20が、射出成形時の保有熱を含んだ状態で温度調整部33に搬送される。
【0048】
(ステップS103:温度調整工程)
続いて、温度調整部33において、プリフォーム20の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
温度調整部33では、プリフォーム20が加熱ポット41および温度調整ポット42に配置(収容)され、プリフォーム20内には温度調整ロッド43が挿入される。その後、温度調整ロッド43がプリフォーム20を温度調整ポット42に向けて押圧し、プリフォーム20の底部22は温度調整ポット42に押し当てられた状態となる。
【0049】
このとき、プリフォーム20の底部22は、温度調整ポット42と温度調整ロッド43に挟み込まれて接触冷却される。一方、プリフォーム20の胴部21は、胴部21に臨む加熱ポット41の熱を受けて温度調整される。これにより、プリフォーム20の底部22は、胴部21と比べて低い温度に調整される。つまり、プリフォーム20の胴部21は保有熱の大きな状態となり、プリフォーム20の底部22とその近傍は保有熱の小さい状態となる。
【0050】
その後、搬送機構36の回転板が所定角度回転し、ネック型に保持された温度調整後のプリフォーム20が、ブロー成形部34に搬送される。
【0051】
(ステップS104:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部34において、容器10のブロー成形が行われる。
まず、ブローキャビティ型および底型を型閉じしてプリフォーム20を型空間に収容し、エア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォーム20の首部23にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッドを降下させてプリフォーム20の底部22を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォーム20を横軸延伸する。これにより、プリフォーム20は、ブローキャビティ型の型空間に密着するように膨出して賦形され、容器10にブロー成形される。なお、プリフォーム20が容器10より長い場合、底型は、ブローキャビティ型の型閉じ前はプリフォーム20の底部22と接触しない下方の位置で待機させ、型閉じ後に成形位置まで素早く上昇させる。
【0052】
ホットパリソン方式のブロー成形では、プリフォーム20の保有する内部熱量が大きいほどプリフォーム20が変形しやすくなる。上記のように、加熱ポット41に臨んでいたプリフォーム20の胴部21は保有熱の大きな状態となる一方、温度調整ポット42で接触冷却されたプリフォーム20の底部22とその近傍は保有熱の小さい状態となっている。つまり、プリフォーム20は、内部熱量の大きな胴部21の方が底部22よりも変形しやすい。
【0053】
したがって、プリフォーム20にブローエアが供給されると、内部熱量の大きな胴部21が先行して延伸され、内部熱量の小さい底部22が遅れて延伸される。これにより、プリフォーム20の底部22が延伸されにくくなるので、ブロー成形で賦形される容器10の底部14を肉厚にすることができる。
【0054】
(ステップS105:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ型が型開きされる。これにより、ブロー成形部34から容器10が移動可能となる。
続いて、搬送機構36の回転板が所定角度回転し、容器10が取り出し部35に搬送される。取り出し部35において、容器10の首部12がネック型から開放され、容器10がブロー成形装置30の外部へ取り出される。
【0055】
以上で、容器の製造方法における1つのサイクルが終了する。その後、搬送機構36の回転板を所定角度回転させることで、上記のS101からS105の各工程が繰り返される。なお、ブロー成形装置30の運転時には、1工程ずつの時間差を有する5組分の容器の製造が並列に実行される。
【0056】
また、ブロー成形装置30の構造上、第1射出成形工程、第2射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の各時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0057】
以上のように、第1実施形態では、第1射出成形工程でプリフォーム20の第1層24に相当する中間成形体20Aが射出成形され、第2射出成形工程で中間成形体20Aの外周部に第2層25を射出成形して多層のプリフォーム20が製造される。そして、ブロー成形工程では、上記のプリフォーム20をブロー成形して、容器胴部の肉厚t1よりも容器底部の肉厚t2が厚い容器10が製造される。
【0058】
化粧品容器等に適した厚肉の容器10をホットパリソン式のブロー成形方法で製造する場合、容器底部の肉厚に相応する厚肉のプリフォームを使用する必要が生じる。第1実施形態では、肉厚のプリフォーム20を2回の射出成形工程で製造する。そのため、肉厚のプリフォームを1回の射出成形工程で成形するときの射出・冷却時間と比べて、第1射出成形工程および第2射出成形工程のそれぞれの射出・冷却時間はいずれも短くなる。これにより、律速段階となるプリフォームの射出・冷却時間が短縮されるので、化粧品容器等に適した厚肉の容器10を製造するときの成形サイクルを短縮することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、肉厚のプリフォーム20を2回の射出成形工程で製造するので、肉厚のプリフォームを1回の射出成形工程で成形するときと比べて、第1射出成形工程、第2射出成形工程での成形の難度はいずれも低下する。そのため、プリフォームの底部におけるシワや温度ムラの発生を抑制でき、ブロー成形される容器10の品質を向上させることができる。また、第1射出成形工程、第2射出成形工程での金型での冷却によって、冷却不足による白化(結晶化)も比較的生じにくくなるので、ブロー成形される容器10の品質を向上させることができる。さらに、2回の射出成形工程を行う第1実施形態では、1回の射出成形工程のみ行う場合と比べ、プリフォーム20の底部22をより肉厚に形成させることができ、容器10の底部14もより厚く形成させることができる。
【0060】
また、第1実施形態の温度調整工程では、プリフォーム20の胴部21に臨む加熱ポット41よりも低い温度に調整された温度調整ポット42にプリフォーム20の底部22を接触させることで、プリフォーム20の底部22を冷却する。これにより、プリフォーム20の内部熱量の分布をブロー成形前に適切な状態に調整できるので、容器胴部の肉厚t1よりも容器底部の肉厚t2が厚い容器10を良好に製造できる。
【0061】
また、第1実施形態では、肉厚のプリフォーム20を2回の射出成形工程で製造するので、プリフォーム20の内周側の第1層24の材料と外周側の第2層25の材料の組成を異ならせることができる。これにより、容器10の製造コストの抑制や意匠性の高い容器10の製造を実現することができる。
【0062】
例えば、容器10を着色材で内部着色する場合、第1層24または第2層25の着色材の添加量を抑制することで、製造コストを低下させることができる。例えば、第1層24の材料にのみ着色材を添加させても構わない。
また、第1層24と第2層25とで色彩や模様のパターンを変化させて容器10の意匠性を向上させてもよい。また、第1層24と第2層25で屈折率に差を生じさせて、第1層24と第2層25の界面で内部反射による光の散乱が生じるようにしてもよい。
【0063】
<実施例>
以下、比較例と対比しつつ、本発明の実施例を説明する。
実施例では、上記実施形態と同様に、第1射出成形工程で第1層に相当するプリフォームの中間成形体を形成し、第2射出成形工程で中間成形体の外周に第2層を射出成形して二層構造のプリフォームを得た。実施例のプリフォームの縦断面形状は
図3(a)と同様である。一方、比較例では、1回の射出成形工程で、
図7に示す肉厚のプリフォーム20Bを射出成形した。なお、実施例のプリフォーム20の第1層24および第2層25は同じ材料、具体的には、ベルポリプロダクト株式会社製のPET樹脂(IP252BB1またはPIFG30)を用いて成形した。
【0064】
実施例の第1射出成形工程での射出時間は13秒であり、当該第1射出成形工程での冷却時間は9秒であった。また、実施例の第2射出成形工程での射出時間は14秒であり、当該第2射出成形工程での冷却時間は8秒であった。なお、第1射出成形工程および2射出成形工程におけるPET樹脂の射出重量は各々24グラムおよび33グラムであり、射出総重量は57グラムであった。
一方、比較例の射出成形工程の射出時間は40秒であり、当該射出成形工程での冷却時間は7秒であった。また、比較例の射出成形工程におけるPET樹脂の射出重量は、57グラムであった。
【0065】
実施例のプリフォームを適用するブロー成形装置では、上記実施形態のように、第1射出成形工程、第2射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程、容器取り出し工程をそれぞれ別の装置で行うことが前提となる(5ステーション方式)。この場合、上記の5つの工程のうち所要時間が最も長い工程が律速となって、成形サイクルの1工程の時間が規定される。第1射出成形工程、第2射出成形工程を比較すると、第2射出成形工程での射出時間(14秒)と冷却時間(8秒)の和(22秒)に、ドライサイクルの時間(4秒)を加えたものが実施例における成形サイクルの時間(26秒)となる。
【0066】
一方、比較例のプリフォーム20Bを適用するブロー成形装置では、射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程、容器取り出し工程をそれぞれ別の装置で行うことが前提となる(4ステーション方式)。この場合、上記の4つの工程のうち所要時間が最も長い射出成形工程が律速となって、成形サイクルの1工程の時間が規定される。例えば、射出成形工程での射出時間(40秒)と冷却時間(7秒)の和(47秒)に、ドライサイクルの時間(4秒)を加えたものが比較例における成形サイクルの時間(51秒)となる。
【0067】
以上より、ドライサイクルを同じ時間と仮定して実施例と比較例を比較すると、実施例の成形サイクルの時間は比較例よりも25秒も短縮されうることが分かる。
【0068】
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の変形例であって、軸方向に延びる複数の溝が容器胴部の外周面に形成された容器の構成例を示している。以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の要素には同一符号を付し、重複説明はいずれも省略する。
【0069】
図8(a)は第2実施形態の容器100の正面図であり、
図8(b)は
図8(a)のVIIIb-VIIIb線断面図である。
図8(a)、(b)に示す容器100は、第1実施形態の容器10と同様に、容器内面に臨む第1層24と容器外面に臨む第2層25が積層された構造を有する樹脂製容器であって、例えば、化粧水や乳液等が収容される。
【0070】
容器100は、上端に口部11を有する首部12と、首部12から連続する筒状の胴部13と、胴部13から連続する底部14とを有している。
図8(a)にて破線で示すように、容器100においても、第1実施形態と同様に、底部14の肉厚t2は胴部13の肉厚t1よりも厚く形成されている。すなわち、胴部13の肉厚t1は底部14に対してかなり薄く形成されており、また胴部13は均肉化されている。上記の肉厚分布とすることで、高級感や重量感が強調され、容器100を消費者の持つ化粧品容器のイメージに近づけることができる。
【0071】
図8(a)に示すように、容器100の胴部13の外周面には、それぞれ容器100の軸方向に延びる複数の溝101が形成されている。複数の溝101はいずれも同じ形状であり、容器100の周方向において等間隔に配置されている。
【0072】
図8(b)に示すように、溝101の横断面形状は、内周側の溝底がほぼ平坦で、溝幅が外周側に近づくにつれてテーパー状に拡がる台形状に形成されている。
図8(a)に示すように、溝101の上端は胴部13の上端付近に位置し、溝101の下端は容器100の底部14に臨んでいる。なお、溝101の上端付近においては、溝101の上端側に近づくにつれて溝101の深さが徐々に浅くなっている。
【0073】
また、容器100で隣り合う溝101の間には、それぞれ軸方向に延びる凸部102が形成される。凸部102の横断面形状は、径方向において内周側から外周側に近づくにつれて凸部102の幅が狭まり、外周側の頂部が鋭角なエッジをなす三角形状に形成されている。これにより、容器100の胴部13の横断面形状は、周方向において溝101と凸部102が交互にならぶ形状をなす。
【0074】
以上のように、軸方向に延びる複数の溝101を容器100の胴部13に形成することで、容器100の美観をより高めることができる。これにより、見栄えが重要な化粧品容器等に適した容器100を得ることができる。
【0075】
図9(a)は第2実施形態の容器100の製造に適用される溝付きのプリフォーム200の縦断面図であり、
図9(b)は
図9(a)のIXb-IXb線断面図である。
【0076】
プリフォーム200の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム200は、円筒状に形成された胴部21と、胴部21の他端側を閉塞する底部22と、胴部21の一端側の開口に形成された首部23とを備える。
また、プリフォーム200は、内周側に位置する第1層24と、外周側に位置する第2層25とが積層された構造を有している。首部23は第1層24の材料で構成されるが、胴部21および底部22においては、第1層24の外周に第2層25が積層されて構成されている。
【0077】
第2実施形態のプリフォーム200における第1層24の構成は、第1実施形態のプリフォーム20の第1層24と同様である。第1層24の横断面において内周面および外周面はいずれも円形をなしている。
【0078】
一方、第2実施形態のプリフォーム200の第2層25においては、胴部21の外周面にプリフォームの軸方向に延びる複数の溝201が形成されている。複数の溝201はいずれも同じ形状であり、プリフォーム200の周方向において等間隔に配置されている。
【0079】
図9(b)に示すように、溝201の横断面形状は、例えば半円形状のように、溝内に角を有しない曲面状に形成されている。また、プリフォーム200の隣り合う溝201の間には、外周側の頂部が鋭角なエッジをなし、軸方向に延びる凸部202が形成される。各々の凸部202は径方向において溝201の底よりも外周側に突出している。これにより、プリフォーム200の胴部21の横断面形状は、周方向において溝201と凸部202が交互にならぶ形状をなす。なお、プリフォーム200の凸部202における頂部の角度は、容器100の凸部102の頂部の角度よりも小さく設定されている。
【0080】
第2実施形態においても、第1層24および第2層25の材料の組成は、同じでも異なっていてもよい。例えば、第1層24と第2層25で同じ樹脂材料(例えばPET)を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。また、例えば、第1層24、第2層25の各材料で、着色材の分量(色の濃淡)や着色材の種類(色の種類)などを変化させてもよい。なお、第1層24または第2層25は、光を透過させる性質(透光性)を有していてもよい。一例として、第2実施形態のプリフォーム200において、第1層24を着色し、第2層25を透明にしてもよい。
【0081】
第2実施形態で適用されるブロー成形装置30の構成は、第2射出成形部32で使用する射出キャビティ金型と、ブロー成形部34で使用するブローキャビティ型の形状が異なる点を除き、第1実施形態とほぼ同様である。また、第2実施形態における容器の製造方法の工程は、第2射出成形工程(
図6のS102)およびブロー成形工程(
図6のS104)が第1実施形態と相違する。
【0082】
第2実施形態の第2射出成形工程(
図6のS102)では、プリフォーム200の第2層25に対応する形状の射出キャビティ型(不図示)の内部に、第1射出成形工程で得られた第1層24の中間成形体20A(
図3(b))を収容する。その後、中間成形体20Aの外周と上記の射出キャビティ型の間に第2射出装置38から樹脂材料を射出する。これにより、中間成形体20Aの胴部21および底部22の外周に第2層25が形成され、
図9(a)、(b)に示す溝付きのプリフォーム200が製造される。
【0083】
その後、プリフォーム200は、温度調整部33での温度調整工程(
図6のS103)を経てブロー成形部34に搬送される。ブロー成形部34では、容器100のブロー成形工程(
図6のS104)が行われる。なお、第2実施形態の温度調整工程においても、第1実施形態と同様に、プリフォーム200の底部22は、胴部21と比べて低い温度に調整される。
【0084】
第2実施形態のブロー成形工程(
図6のS104)では、容器100に対応する形状のブローキャビティ型50を型閉じして溝付きのプリフォーム200を型空間に収容する。後述の
図10に示すように、ブローキャビティ型50の形状は容器100の形状に対応している。具体的には、ブローキャビティ型50の凹部51は容器100の凸部102の形状に対応し、ブローキャビティ型50の凸部52は容器100の溝101の底に対応する。
【0085】
図10は、ブローキャビティ型を型閉じしたときのブローキャビティ型50とプリフォーム200の位置関係を示す図である。ブロー成形前において、プリフォーム200の凸部202はブローキャビティ型50の凹部51と対向する位置に配置され、プリフォーム200の溝201はブローキャビティ型50の凸部52と対向する位置に配置される。また、ブロー成形前において、プリフォーム200の凸部202とブローキャビティ型50の凹部51との径方向間隔r1は、プリフォーム200の溝201とブローキャビティ型50の凸部52との径方向間隔r2よりも小さくなるように設定されている。
【0086】
ブローキャビティ型50と上記の位置関係で配置されたプリフォーム200に対してエア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォーム200の首部23にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッドを降下させてプリフォーム200の底部22を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォーム200を横軸延伸する。ブローエアの導入によりプリフォーム200が膨出すると、プリフォーム200の凸部202はブローキャビティ型50の凹部51に入り込むとともに、プリフォーム200の溝201はブローキャビティ型50の凸部52に押し当てられ、容器100の形状に賦形される。
【0087】
上記のように、ブロー成形前においては、プリフォーム200の凸部202はそれぞれブローキャビティ型50の凹部51と対向して配置される。プリフォーム200の凸部202は、溝201の部分よりも径方向に厚く、プリフォーム200の保有する内部熱量も溝201の部分よりも大きくなる。そのため、保有する内部熱量の違いから、プリフォーム200の凸部202は溝201の部分よりもブロー成形時に変形しやすい。つまり、径方向に突出する凸部202が周方向に周期的に形成されたプリフォーム200を使用した場合、内部熱量の大きいプリフォーム200の凸部202がブローキャビティ型50の凹凸の形状に倣って柔軟に変形する。したがって、円筒形のプリフォームを使用して容器100を形成する場合と比べると、第2実施形態のプリフォーム200を使用すると容器100の溝101と凸部102のエッジをシャープに形成することができ、容器100の加工精度や見栄えを向上させることができる。
【0088】
また、プリフォーム200の凸部202における頂部の角度は、容器100の凸部102の頂部の角度(ブローキャビティ型50の凹部51の開き角)よりも小さい。そのため、ブロー成形のときには、ブローキャビティ型50の凹部51に対し、当該凹部51よりも幅の狭いプリフォーム200の凸部202が侵入しやすくなる。したがって、ブローキャビティ型50の凹部51の空間にプリフォーム200の凸部202をより確実に導くことができるので、容器100の加工精度や見栄えをより向上させることができる。
【0089】
また、プリフォーム200の凸部202とブローキャビティ型50の凹部51との径方向間隔r1は、プリフォーム200の溝201とブローキャビティ型50の凸部52との径方向間隔r2よりも小さい。ブロー成形のときには、径方向間隔の短い部位の方がより早くブローキャビティ型50と接触しうるので、プリフォーム200の溝201の部分がブローキャビティ型に到達する前にプリフォーム200の凸部202をブローキャビティ型50の凹部51の空間に導くことができる。これによっても、容器100の加工精度や見栄えをより向上させることができる。
【0090】
さらに、第2実施形態では、横断面が円筒形である第1層24の外周側に、凸部202が周方向に周期的に形成された第2層25を有するプリフォーム200をブロー成形して容器100を形成している。そのため、第2実施形態の容器100では、容器内面(胴部13の内面)は第1層24の内面に倣った曲面(横断面が円形状の曲面)となり、第1層24とは異なる第2層25の変形による容器外面の凹凸の影響が容器内面に生じにくい。例えば、単層のプリフォームを使用して
図8の容器100をブロー成形した場合には、同じ層の容器外面の変形につられて容器内面に凹凸が生じやすいが、第2実施形態の構成では上記の事象を抑制できる。したがって、第2実施形態によれば、容器100の内面に凹凸が生じにくいので、内部に内容物の残りにくい容器を製造することができる。また、第2実施形態によれば、容器内面の凹凸に起因する容器100の色むらを抑制することもできる。
【0091】
なお、第2実施形態のブロー成形工程においても、内部熱量の大きな胴部21が先行して延伸され、内部熱量の小さい底部22が遅れて延伸される。そのため、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ブロー成形で賦形される容器100の底部14を肉厚にすることができる。
【0092】
以上のように、第2実施形態では、外周側の第2層25に溝201と凸部202を周方向に交互に形成した積層構造のプリフォーム200を用いて、軸方向に延びる複数の溝101が周方向に規則的に形成された容器100をブロー成形で製造できる。これにより、第1実施形態と同様の効果に加え、容器100の意匠性をより向上させることができる。
【0093】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0094】
例えば、プリフォーム20の第2層25(外層)の胴部や底部の厚さは、プリフォーム20の第1層24(内層)の胴部や底部の厚さよりも厚く設定してもよい。換言すれば、第2層25の重量を第1層24よりも重くしてもよい。
また、第1射出成形部31で第1層24(内層)を射出金型から離型するときの離型温度は、第2射出成形部32で第2層25(外層)を射出金型から離型するときの離型温度よりも低く設定してもよい。
【0095】
これらにより、結晶性の樹脂材料(PET樹脂等)を用いる場合であっても、第1射出成形工程(第1射出成形部31)で第1層24(内層、プリフォーム20A)を十分に冷却できるため、第2射出成形工程(第2射出成形部32)からブロー成形工程(ブロー成形部34)までに生じ易い、第1層24(内層)と第2層25(外層)との接触面(または接触領域)における白化(徐冷による結晶化)を抑止し易くできる。また、温度調整工程(温度調整部33)の後も第2層25(外層)の内部熱量を一層高く保持することが可能になり、ブロー成形工程(ブロー成形部34)における容器10の賦形性(特に胴部13や底部14の外観の形状出し)も向上できる。さらに、第1射出成形工程(第1射出成形部31)を成形サイクルの律速段階に設定し、第2射出成形工程(第2射出成形部32)で第2層25(外層)をより高温状態で離型する場合、成形サイクルの一層の短縮化が実現できる。
【0096】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
10,100…容器、20,200…プリフォーム、20A…中間成形体、21…胴部、22…底部、23…首部、24…第1層、25…第2層、30…ブロー成形装置、31…第1射出成形部、32…第2射出成形部、33…温度調整部、34…ブロー成形部、37…第1射出装置、38…第2射出装置、41…加熱ポット、42…温度調整ポット、43…温度調整ロッド、50…ブローキャビティ型、101,201…溝、102,202…凸部