(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】非対称サージ保護デバイス、DC回路構成、およびDCネットワーク
(51)【国際特許分類】
H02H 9/04 20060101AFI20240215BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20240215BHJP
H02H 9/06 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
H02H9/04 A
H02M3/155 C
H02H9/06
(21)【出願番号】P 2021564737
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(86)【国際出願番号】 EP2020062282
(87)【国際公開番号】W WO2020221933
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】102019111378.4
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522067846
【氏名又は名称】デーン エスエー
【氏名又は名称原語表記】DEHN SE
【住所又は居所原語表記】Hans-Dehn-Strasse 1 92318 Neumarkt i.d.OPf. Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテーレ、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ショールク、フランツ
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0047733(US,A1)
【文献】特開平06-245372(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109643892(CN,A)
【文献】特開昭54-008847(JP,A)
【文献】特開昭54-120847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 9/04
H02M 3/155
H02H 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流入力部(26)と電流出力部(28)とを有するDC回路(16)用の非対称サージ保護デバイスであって、該DC回路(16)の該電流出力部(28)に接続可能な負の側(32)と、該DC回路(16)の該電流入力部(26)に接続可能な正の側(30)と、非対称中性セクション(34)と
、DC電源(12)と該DC回路(16)の間に配置可能なサージ保護デバイス(18)とを備え、該非対称中性セクション(34)は、該正の側(30)と該負の側(32)の間の正電圧(V)に対する正の保護レベル(Vp)と、該正の側(30)と該負の側(32)の間の負電圧(V)に対する負の保護レベル(Vn)と、を有し、該正の保護レベル(Vp)は該負の保護レベル(Vn)とは異なっており、
該正の保護レベル(Vp)が400Vより大きく、かつ、該負の保護レベル(Vn)が100V未満であり、
前記非対称中性セクション(34)は、正電圧(V)を低減するための正放電分岐(56)と、負電圧(V)を低減するための負放電分岐(58)とを有し、
前記正放電分岐(56)は、第1の受動放電構成要素(60)を備える、非対称サージ保護デバイス。
【請求項2】
前記正放電分岐(56)と前記負放電分岐(58)とは並列であることを特徴とする、請求項
1記載のサージ保護デバイス。
【請求項3】
前記正放電分岐(56)の前記第1の受動放電構成要素(60)は、バリスタ(62)、スパーク・ギャップ(72)、および/またはガス放電管(63)であって、特に、前記正放電分岐(56)は完全に受動的であることを特徴とする、請求項
2記載のサージ保護デバイス。
【請求項4】
前記負放電分岐(58)はスイッチング可能な構成要素(64)を有し、前記サージ保護デバイス(18)は該スイッチング可能な構成要素(64)用のドライブ(65)を有し、特に、該スイッチング可能な構成要素はIGBT、サイリスタ、またはMOSFETであり、
該ドライブ(65)は、前記正の側(30)と前記負の側(32)の間の前記電圧(V)が負でありかつ前記電圧(V)の大きさが前記負の保護レベル(Vn)を超えているときに、該スイッチング可能な構成要素(64)を相応にスイッチングするように構成されていることを特徴とする、請求項
2または
3記載のサージ保護デバイス。
【請求項5】
前記負放電分岐(58)は少なくとも1つの第2の受動放電構成要素(68)を含み、特に、前記負放電分岐(58)は完全に受動的であることを特徴とする、請求項
2または
3記載のサージ保護デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2の受動放電構成要素(68)はダイオード(70)であること、または、前記第2の受動放電構成要素(68)は複数の直列接続されたダイオード(74)を備えることを特徴とする、請求項
5記載のサージ保護デバイス。
【請求項7】
前記DC回路(16)はコンバータ(20)、特にインバータ(38)またはDC電圧コンバータ(48)であることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項記載のサージ保護デバイス。
【請求項8】
前記サージ保護デバイス(18)は、少なくとも1つの第3の側(78)と、各々が前記サージ保護デバイス(18)の前記側(30、32)および該側(78)のうちの2つを互いに接続している、少なくとも2つの中性セクション(34)と、を有することを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項記載のサージ保護デバイス。
【請求項9】
DC回路(16)、特にインバータ(38)またはDC電圧コンバータ(48)などのコンバータ(20)と、請求項1から
8のいずれか一項記載の非対称サージ保護デバイス(18)と、を備えるDC回路構成であって、
該DC回路(16)は電流入力部(26)と電流出力部(28)とを有し、
前記サージ保護デバイス(18)の前記正の側(30)は該電流入力部(26)に電気接続されており、前記サージ保護デバイス(18)の前記負の側(32)は該電流出力部(28)に電気接続されている、DC回路構成。
【請求項10】
前記DC回路構成(14)はDC端子(36)を備え、前記サージ保護デバイス(18)は該DC端子(36)と前記DC回路(16)の間に配置されていることを特徴とする、請求項
9記載のDC回路構成。
【請求項11】
請求項
9または
10記載のDC回路構成(14)と、第1の電極(21)および第2の電極(23)を有するDC電源(12)と、を備えるDCネットワークであって、該第1の電極(21)は前記サージ保護デバイス(18)の前記正の側(30)に電気接続されており、該第2の電極(23)は前記サージ保護デバイス(18)の前記負の側(32)に電気接続されている、DCネットワーク。
【請求項12】
前記DC電源(12)は少なくとも1つの第3の電極(76)を有する多極性DC電源であり、前記サージ保護デバイス(18)の前記少なくとも1つの第3の側(78)は該第3の電極(76)に接続されていることを特徴とする、請求項
11記載のDCネットワーク。
【請求項13】
前記サージ保護デバイス(18)は前記DC電源(12)と前記DC回路(16)の間に配置されていることを特徴とする、請求項
11または
12記載のDCネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称サージ保護デバイス、DC回路構成、およびDCネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
落雷などの特異な事例において負荷または回路の損傷を防止するために、電力ネットワークまたは負荷のサージ保護が必要である。
【0003】
DC回路およびDC接続系統またはDCネットワーク用の電子デバイスに対する効果的なサージ保護手段は、特にDC回路またはデバイスが逆極性保護ダイオードなどの逆極性保護手段を有さない場合、存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、過電圧に起因する損傷を効果的に防止できるサージ保護デバイス、DC回路構成、およびDCネットワークを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、電流入力部と電流出力部とを有するDC回路用の非対称サージ保護デバイスであって、DC回路の電流出力部に接続可能な負の側と、DC回路の電流入力部に接続可能な正の側と、非対称中性セクションと、を備える、非対称サージ保護デバイス、によって達成される。非対称中性セクションは、正の側と負の側の間の正電圧に関する正の保護レベルと、正の側と負の側の間の負電圧に関する負の保護レベルと、を有し、正の保護レベルは負の保護レベルとは異なっている。
【0006】
正の保護レベルと負の保護レベルは異なっているので、サージ保護は非対称となるように構成され得る。このようにして、正および負の過電圧を別々に取り扱うことができ、その結果、DC回路または電気デバイスの非対称性が、および、このような過電圧に対する非対称な感度が考慮される。
【0007】
負の保護レベルは、DC回路の負の還流電圧未満であり得る。
【0008】
例えば、DC回路は逆極性保護手段を有さない。
【0009】
正の側は、単極性の直流に対して「DCプラス」または「L+」とも呼ばれる。これに対応して、負の側は、単極性の直流に対して「DCマイナス」または「L-」とも呼ばれる。
【0010】
例えば、中性セクションは放電構成要素を含み、サージ保護デバイスは中性セクション用のドライブを含み、ドライブは、正の側と負の側の間の電圧が正であり、かつ電圧の大きさが正の保護レベルを超えているときに、または、電圧が負であり、かつ電圧の大きさが負の保護レベルを超えているときに、放電構成要素を相応に動作可能にする(release)ように構成されている。ドライブによって、保護レベルを柔軟に調整することが可能になる。
【0011】
放電構成要素は特に、パルス電流に耐えることができる。
【0012】
信頼できるサージ保護デバイスを実現するために、放電構成要素は、スパーク・ギャップ、ガス放電管、バリスタ、サイリスタ、IGBT、および/またはMOSFETを備えてもよく、および/または、ドライブは、少なくとも1つのダイオード、IGBT、サイリスタ、および/またはMOSFETを備えてもよい。
【0013】
一実施形態では、中性セクションは、正電圧を低減するための正放電分岐と負電圧を低減するための負放電分岐とを有し、特に、これらの分岐は並列である。このようにして、中性セクションの構造は単純な構成要素によって実現され得る。
【0014】
効率的な放電のために、正放電分岐は、第1の受動放電構成要素、特にバリスタ、スパーク・ギャップ、および/またはガス放電管を有する。
【0015】
正放電分岐は完全に受動的であってもよい。放電構成要素は特に、パルス電流に耐えることができる。
【0016】
例えば、正放電構成要素の降伏電圧または閾値電圧は、正の保護レベルである。
【0017】
ある構成では、負放電分岐はスイッチング可能な構成要素を含み、サージ保護デバイスはスイッチング可能な構成要素用のドライブを含み、特に、スイッチング可能な構成要素は、IGBT(insulated-gate bipolar transistor;絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)、サイリスタ、またはMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor;金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)である。ドライブは、正の側と負の側の間の電圧が負でありかつ電圧の大きさが負の保護レベルを超えているときに、スイッチング可能な構成要素を相応にスイッチングするように構成されている。このようにして、負の保護レベルが柔軟に調整され得る。
【0018】
例えば、負放電分岐は、スイッチング可能な構成要素だけを含む。しかしながら、負放電分岐が、スパーク・ギャップ、ガス放電管、および/またはバリスタなどの更なる構成要素を備えることも考えられる。
【0019】
ある構成では、負放電分岐は少なくとも1つの第2の受動放電構成要素を備え、特に、負放電分岐は完全に受動的であり、その結果、サージ保護デバイスは特に単純な方法で構成され得る。第2の受動放電構成要素は例えば、パルス電流に耐えることができる。
【0020】
負電圧についての第2の受動放電構成要素の順電圧または閾値電圧は、負の保護レベルであり得る。特に、正電圧についての降伏電圧は、正の保護レベルよりも大きい。
【0021】
例えば、中性セクションのどこにも能動構成要素またはスイッチング構成要素は存在しない。
【0022】
サージ保護デバイスを更に単純化するために、少なくとも1つの第2の受動放電構成要素はダイオードであってもよく、または、第2の受動放電構成要素は複数の直列接続されたダイオードであってもよい。
【0023】
特に、1つのダイオードまたは複数のダイオードは、それらのカソードが正の側に接続されており、それらのアノードが負の側に接続されている。
【0024】
本発明の更なる実施形態では、中性セクションは、カソードが正の側に接続されておりアノードが負の側に接続されている、少なくとも1つの単極過渡電圧抑制ダイオードを有し、特に、中性セクションは、複数の並列接続された単極性過渡電圧抑制ダイオードを有する。このようにして、中性セクションは、単一の構成要素または僅かな構成要素を有して実装され得る。
【0025】
例えば、過渡電圧抑制ダイオードの順電圧は負の保護レベルであり、降伏電圧は正の保護レベルである。
【0026】
1つの変形の実施形態では、正の保護レベルは100Vよりも大きく、特に400Vよりも大きく、かつ/または、負の保護レベルは100V未満であり、この結果DC回路が確実に保護される。
【0027】
電圧データとは電圧の大きさを指す。
【0028】
高電力DC回路を保護するために、DC回路はコンバータ、特にインバータまたはDC電圧コンバータであってもよい。
【0029】
この目的は、DC回路、特にインバータまたはDC電圧コンバータなどのコンバータと、既に記載したようなに非対称サージ保護デバイスと、を備えるDC回路構成によって、更に達成される。DC回路は電流入力部と電流出力部とを有し、サージ保護デバイスの正の側は電流入力部に電気接続され、サージ保護デバイスの負の側は電流出力部に電気接続される。
【0030】
サージ保護デバイスに関して検討される特徴および利点はDC回路構成に対しても等しく当てはまり、その逆も成り立つ。
【0031】
特に、DC回路は逆極性保護手段を有さない。
【0032】
DC回路の確実な保護を可能にするために、DC回路構成はDC端子を有してもよく、サージ保護デバイスはDC端子とDC回路の間に配置される。
【0033】
この目的は、既に記載したようなDC回路構成を備えるDCネットワークと、正電極および負電極を有するDC電源とによって、更に達成される。正電極はサージ保護デバイスの正の側に電気接続され、負電極はサージ保護デバイスの負の側に電気接続される。
【0034】
サージ保護デバイスおよびDC回路構成に関して検討される特徴および利点はDCネットワークに対しても等しく当てはまり、その逆も成り立つ。
【0035】
例えば、DCネットワークは建築物内のDCネットワークである。
【0036】
サージ保護デバイスは例えば、DC回路を確実に保護するために、DC電源とDC回路の間に配置される。
【0037】
本発明の更なる特徴および利点が、以下の説明から、および参照される以下の添付の図面から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に係る非対称サージ保護デバイスを備える本発明に係るDC回路構成を有する、本発明に係るDCネットワークのブロック図である。
【
図2】本発明に係るサージ保護デバイスの、本発明に係るDC回路構成の、および本発明に係るネットワークの、第2の実施形態のブロック図である。
【
図3】本発明に係るサージ保護デバイスの、本発明に係るDC回路構成の、および本発明に係るネットワークの、第3の実施形態のブロック図である。
【
図4】本発明に係るサージ保護デバイスの、本発明に係るDC回路構成の、および本発明に係るネットワークの、第4の実施形態のブロック図である。
【
図5a-5c】
図4に示すような本発明に係るサージ保護デバイスの様々な実施形態を示すブロック図である。
【
図6a】本発明に係るサージ保護デバイスの、本発明に係るDC回路構成の、および本発明に係るネットワークの、第5の実施形態のブロック図である。
【
図6b】
図6aに係るサージ保護デバイスの可能な構成のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明に係る、DC電源12と、DC回路16および非対称サージ保護デバイス18を備えるDC回路構成14と、を有する、DCネットワーク10を示す。
【0040】
DCネットワーク10は例えば、建築物のDCネットワーク、電気車両用の充電インフラストラクチャのDCネットワーク、または任意の他のDCネットワークである。例えば、DCネットワーク10は単極性である。
【0041】
DC回路16はコンバータ20であってもよく、またはこれは、負荷などの任意の他のDC回路であってもよい。
【0042】
DC電源12は任意のDC電源であってもよく、本発明の文脈では、それにはより高レベルのネットワークへの接続も含まれる。これに応じて、DC電源12は、第1の電極21、記載した単極性DC電源12の場合には正電極22と、第2の電極23、この場合には負電極24と、を有する。簡潔にするために、以下では正電極22および負電極24のみに言及するが、当然ながらこのことは、一般的に第1の電極21および第2の電極23も意味する。
【0043】
DC回路16はDC電源12の電流によって動作し、したがって電流入力部26と電流出力部28とを含む。
【0044】
特に、DC回路16は逆極性保護手段を有さない。
【0045】
サージ保護デバイス18は、正の側30と、負の側32と、中性セクション34と、を有する。
【0046】
サージ保護デバイス18内で、正の側30および負の側32は、中性セクション34によって互いに接続されている。
【0047】
正の側30および負の側32は各々、DC電源12の正電極22をDC回路16の電流入力部26に、およびDC回路16の電流出力部28をDC電源12の負電極24に、それぞれ電気接続する、配線によって形成されている。
【0048】
この場合、サージ保護デバイス18は、DC電源12とDC回路16の間に配置される。
【0049】
言い換えれば、DC回路構成14は、DC電源12に接続されたDC端子36を有する。サージ保護デバイス18は、DC端子36とDC回路16の間に配置される。
【0050】
DC電源12に面する正の側30または負の側32の端子がDC回路構成14のDC端子36を形成することも考えられる。
【0051】
DCネットワーク10の通常動作中、DC電源12は正電圧を提供する。
【0052】
その結果、サージ保護デバイス18の正の側30の電位は負の側32よりも高くなり、正の側30と負の側32の間の電圧Vは正になる。本発明の文脈では、この場合これは正電圧と呼ばれる。
【0053】
特別な場合には、負の側32の電位は正の側30よりも高くなり得る。この状況は例えば、DCネットワーク10における落雷の場合に生じ得る。この場合、電圧Vは負であり、これは本発明の文脈では負電圧と呼ばれる。
【0054】
中性セクション34はここでは、2つの異なる保護レベル、すなわち正の保護レベルVpおよび負の保護レベルVnを提供するように構成されている。「異なる」はこの場合、異なる大きさを意味する。
【0055】
正の保護レベルVpは正電圧Vに関連しており、負の保護レベルVnは負電圧Vに関連している。
【0056】
このことは、正の保護レベルVpを超える正電圧V、および負の保護レベルVnよりも大きさの大きい負電圧Vが、中性セクション34を介して低減されることを意味する。
【0057】
言い換えれば、正の保護レベルVpおよび負の保護レベルVnは、DC回路16の動作範囲を-Vn<V<Vpによって定める。
【0058】
例えば、正の保護レベルVpは100Vよりも大きく、例えば400Vであり、負の保護レベルVnは100V未満、例えば80Vであり、結果的に-80Vから400Vの安全動作範囲となる。正の保護レベルVpが400Vよりも大きく、負の保護レベルVnが80V未満であることも、当然ながら考えられる。
【0059】
このようにして、DC回路16は、負および正の電圧に対するDC回路16の感度の違いを考慮に入れて、正電圧および負電圧の両方に関して電流パルスから確実に保護される。
【0060】
図2から
図5には、DCネットワーク10、DC回路構成14、およびサージ保護デバイス18の更なる実施形態がそれぞれ図示され記載されているが、これらは
図1に係る第1の実施形態と実質的に同じである。したがって、以下では相違点のみを検討し、同一の部分および機能的に同一の部分には同じ参照符号を付す。
【0061】
図2に係る実施形態では、DC回路16はインバータ38である。
【0062】
この実施形態では、中性セクション34は、放電構成要素40と、放電構成要素40用のドライブ42と、を有する。
【0063】
放電構成要素40は、特に正および負の電圧に関して対称的な保護レベルで、電流パルスに耐えることができる。例えば、放電構成要素40は、ガス放電管、スパーク・ギャップ、またはバリスタである。
【0064】
放電構成要素40用のドライブ42については十分に知られている。
【0065】
示されている第2の例示の実施形態では、ドライブ42は、スイッチング素子44と、ダイオード45と、スイッチング素子44を制御するように配置されている制御ユニット46と、を含む。
【0066】
放電構成要素40は、直接的に正の側30に、および、スイッチング素子44およびダイオード45によって負の側32に、接続されている。ダイオード45およびスイッチング素子44は、並列に配置されている。
【0067】
ダイオード45は、そのアノードが負の側32に接続されており、そのカソードが放電構成要素40に接続されている。
【0068】
スイッチング素子44は例えば、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)、サイリスタ、および/またはMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)である。
【0069】
制御ユニット46は、制御のためにスイッチング素子44に、例えばスイッチング素子44のゲート電極に、ならびに、電圧Vを測定するために正の側30および負の側32に、接続される。
【0070】
動作中、制御ユニット46は、電圧Vを連続的にまたは規則的な間隔で測定する。制御ユニット46によって測定された電圧Vが正でありかつその大きさが正の保護レベルVpを超えている場合には、制御ユニット46は、スイッチング素子44をスイッチングして、放電構成要素40を介して電圧Vを低減する。
【0071】
正の保護レベルVpはこの場合、制御ユニット46に閾値として記憶され、DC回路16に適合される。
【0072】
負の保護レベルVnは、ダイオード45の順電圧によって提供される。電圧Vが負でありかつ電圧Vの大きさが負の保護レベルVnを超えているとき、ダイオード45は導通状態となり、放電構成要素40を動作可能にする。その結果、ダイオード45および放電構成要素40を通して負電圧が低減される。
【0073】
図2において点線で示されているように、スイッチング素子44およびダイオード45を放電構成要素40と正の側30の間に配置することが、当然ながら可能である。
【0074】
ダイオード45の代わりに、制御ユニット46によってスイッチングされる更なるスイッチング素子47を使用することも考えられる。更なるスイッチング素子47は、スイッチング素子44と同様だが逆並列に設計され得る。この場合、制御ユニット46は、制御ユニット46によって測定された電圧Vが負でありかつその大きさが負の保護レベルVnを超えているときに、更なるスイッチング素子47をスイッチングして、放電構成要素40を介して電圧Vを低減する。この場合、正の保護レベルVpおよび負の保護レベルVnの両方が、制御ユニット46に閾値として記憶され得る。
【0075】
図3に示されている第3の実施形態では、DC回路16は、概略的に示されているDC電圧コンバータ48である。
【0076】
示されている第3の例示の実施形態では、DC電圧コンバータ48は、DC電圧コンバータ48のおよびDC回路16の、それぞれの還流電圧VFを定める2つの基板ダイオードまたはフリーホイーリング・ダイオード52を有する、ハーフ・ブリッジ回路50を有する。
【0077】
同様に、DC回路16は示されている例示の実施形態の全てを有するか、または、DC回路16の全ては還流電圧VFを有する。還流電圧VFよりも大きい大きさを有する負電圧は、特に高電圧において、DC回路16に損傷をもたらすことになる。
【0078】
したがって、負電圧レベルVnは常に、還流電圧VFよりも小さくなるように選択される。
【0079】
図3に係る第3の実施形態では、中性セクション34は単極性過渡電圧抑制ダイオード54を有し、そのカソードは正の側30に接続されており、そのアノードは負の側32に接続されている。
【0080】
図3において点線の図示で示されているように、複数の単極性過渡電圧抑制ダイオード54を並列に接続することも考えられる。
【0081】
単極性過渡電圧抑制ダイオード54の順電圧は負の保護レベルVnを表し、単極性過渡電圧抑制ダイオード54の降伏電圧は正の保護レベルVpを表す。この場合、この第3の実施形態では、スイッチング構成要素または能動構成要素が必要とされないので、中性セクション34は完全に受動的である。特に、中性セクション34はただ1つの、またはより多くの単極性過渡電圧抑制ダイオード54を含む。
【0082】
図4に示す第4の実施形態では、中性セクション34は、2つの並列の分岐、すなわち正放電分岐56および負放電分岐58を有する。
【0083】
正放電分岐56は、電圧Vが正である場合に電圧Vを放電する役割を果たし、負放電分岐58は、電圧Vが負である場合に電圧Vを放電する役割を果たす。
【0084】
例えば、第4の実施形態では、正放電分岐56は、電流パルスに耐えることができかつ正の保護レベルVpを形成する高い降伏電圧を有する、第1の受動放電構成要素60だけを有する。第1の受動放電構成要素60または正放電分岐56の降伏電圧も対称的であり得る。
【0085】
負放電分岐58は非対称となるように構成されている。このことは、正電圧についての負放電分岐58の降伏電圧が、正放電分岐56の降伏電圧を超えていることを意味する。ただし、負放電分岐58の負電圧についての順電圧は比較して顕著に小さく、これは保護レベルVnを表す。
【0086】
負電圧についての順電圧、およびしたがって負の保護レベルVnは、DC回路16の還流電圧VF未満であり、また正放電分岐56の対称的な降伏電圧未満でもある。
【0087】
図5a、
図5b、および
図5cには放電分岐56、58の様々な構成が示されているが、放電分岐56、58の構成の組合せは単に例示的なものである。
【0088】
放電分岐56、58は当然ながら、中性セクション34を形成するように任意の組合せで組み合わされ得る。
【0089】
図5aに示す例示の実施形態では、第1の受動放電構成要素60はバリスタ62である。
【0090】
この例示の実施形態では、負放電分岐58はスイッチング可能な構成要素64を含み、サージ保護デバイス18は、スイッチング可能な構成要素64用のドライブ65を形成する制御ユニット66を含む。
【0091】
スイッチング可能な構成要素64は正電圧に対して高い降伏電圧を有し、特に、電流パルスに耐えることができる。特に、負放電分岐58は、スイッチング可能な構成要素64だけを含む。
【0092】
スイッチング可能な構成要素64は例えば、IGBT、サイリスタ、またはMOSFETである。
【0093】
ドライブ42と同様に、制御ユニット66は、正の側30、負の側32に、および更に制御用のスイッチング可能な構成要素64に接続されている。
【0094】
制御ユニット66は、電圧Vを連続的にまたは規則的な間隔で測定し、電圧Vが負でありかつ大きさに関して負の保護レベルVnよりも大きくなった時点で、制御ユニット66は、電圧Vが負放電分岐58を介して低減されるように、スイッチング可能な構成要素64をスイッチングする。
【0095】
図5bに示す実施形態では、第1の受動放電構成要素60はガス放電管63である。
【0096】
この実施形態では、負放電分岐58はスイッチング可能な構成要素64を有さず、完全に受動的である。この場合、負放電分岐58は第2の受動放電構成要素68を有する。したがって、中性セクション34全体が受動的である。
【0097】
第2の受動放電構成要素68も、パルス電流に耐えることができる。
【0098】
この場合、数に関する単語「第2の」は、第1の受動放電構成要素60から区別するために使用されている。この使用は、負放電分岐58が第1の受動放電構成要素も含むことは示唆していない。
【0099】
図5bに示す例示の実施形態では、第2の受動放電構成要素68は、カソードが正の側30に接続されておりアノードが負の側32に接続されているダイオード70である。
【0100】
図5bの例示の実施形態と実質的に同じである
図5cの例示の実施形態では、第1の受動放電構成要素60はスパーク・ギャップ72である。
【0101】
この実施形態では、第2の受動放電構成要素68は、複数の直列接続されたダイオード74を含む。
【0102】
図5cには3つのダイオード74が示されているが、所望の降伏電圧および/または順電圧を達成するために、当然ながら任意の数のダイオード74が使用され得る。
【0103】
図6aおよび
図6bは第5の実施形態を示す。この第5の実施形態では、DCネットワーク10は単極性DCネットワークではなく多極性DCネットワーク、この場合は二極性DCネットワークである。
【0104】
したがって、DC電源12はこの実施形態ではやはり多極性DC電源12、この場合は二極性DC電源である。
【0105】
同様に、DCネットワーク10のその他の構成要素、特にDC回路構成14、DC回路16、およびサージ保護デバイス18も、多極性となるように構成されている。
【0106】
動作のモードについては、以下に二極性DCネットワークを参照して記載するが、これは当然ながら、4つ以上の電極を有するDCネットワークに拡張することができる。
【0107】
第1の電極21および第2の電極23に加えて、DC電源12は第3の電極76を有する。例えば、第1の電極21はL+と呼ばれ、第2の電極はL-と呼ばれ、第3の電極76はMと呼ばれる。第3の電極76はまた、共通のゼロ電極と呼ばれる場合もある。
【0108】
通常動作電圧は、第1の電極21と第3の電極76の間で400Vであり得、また第3の電極76と第2の電極23の間でも400Vであり得る(
図6bを参照)。第1の電極21および第2の電極23はその場合、800Vの電位差を有する。
【0109】
したがって、DC回路16は、3つの電流入力部または電流出力部26、27、80を有する。
【0110】
この実施形態では、サージ保護デバイス18は、2つの中性セクション34と、3つの側、すなわち正の側30および負の側32に第3の側78を加えたものと、を有する。
【0111】
第1の中性セクション34は正の側30と第3の側78の間に設けられ、第2の中性セクション34は負の側32と第3の側78の間に設けられる。
【0112】
この第5の実施形態の中性セクション34は、既出の実施形態に従って形成され得る。
【0113】
図6bに示されている例では、中性セクション34は、
図5bの実施形態の中性セクションに対応している。ただし他のあらゆる実施形態も考えられる。
【0114】
したがって、第5の実施形態の中性セクション34のモード動作も、先行する実施形態の中性セクション34の場合と同じである。第1の中性セクション34に関して、第3の側78は既出の実施形態の負の側に対応しており、第2の中性セクション34に関して、第3の側78は正の側に対応している。
【0115】
このようにして、DC回路16を、多極性DCネットワーク10においてさえ、確実に保護することができる。