(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】灯具
(51)【国際特許分類】
F21K 9/232 20160101AFI20240215BHJP
F21K 9/00 20160101ALI20240215BHJP
F21K 9/238 20160101ALI20240215BHJP
F21K 9/64 20160101ALI20240215BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240215BHJP
【FI】
F21K9/232 100
F21K9/00 100
F21K9/238 100
F21K9/64
F21Y115:10 500
(21)【出願番号】P 2021567428
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047625
(87)【国際公開番号】W WO2021132131
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019233867
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小西 正宏
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195156(JP,A)
【文献】特開2019-009108(JP,A)
【文献】特開2012-227021(JP,A)
【文献】特開2010-103019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/232
F21K 9/00
F21K 9/238
F21K 9/64
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に搭載された発光素子と、
前記発光素子に電力を供給し発光駆動させる駆動回路と、
を備え、
前記基板は、
絶縁基材と、
前記絶縁基材の一面に配置され、前記発光素子の発光を励起光としたときの発光ピーク波長が可視光領域にある蛍光体粒子と、有機樹脂とを含む蛍光体層と、
を備え、
前記絶縁基
材はマザーボードであって、
前記発光素子は、LEDが組み込まれ、チップサイズにパッケージされたCSPからな
り、
前記蛍光体層は、前記発光素子を覆っていない、灯具。
【請求項2】
前記発光素子の発光駆動にともない発生する熱を放熱する放熱手段を備える、請求項1に記載の灯具。
【請求項3】
前記発光素子は複数設けられている、請求項1または2に記載の灯具。
【請求項4】
前記複数の発光素子は、前記基板上に格子状に配列されている、請求項3に記載の灯具。
【請求項5】
前記複数の発光素子は、前記基板上に円環状に配列されている、請求項3に記載の灯具。
【請求項6】
前記駆動回路は、前記複数の発光素子をそれぞれ独立して発光駆動させる、請求項3から5までのいずれか一項に記載の灯具。
【請求項7】
前記絶縁基材は、有機樹脂基板、セラミックス基板およびプラスチック成形体からなる群より選ばれる少なくともいずれかである、請求項1から6までのいずれか一項に記載の灯具。
【請求項8】
前記蛍光体粒子は、CASN、SCASN、LaSiN、Sr2Si5N8、Ba2Si5N8、α型サイアロン、β型サイアロンおよびLuAGからなる群より選ばれるすくなくともいずれかを含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の灯具。
【請求項9】
前記蛍光体層が含む前記有機樹脂は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂およびエポキシ樹脂のいずれかを含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の灯具。
【請求項10】
前記蛍光体層の前記絶縁基材側の面は、前記発光素子がLEDの場合において、前記LEDのジャンクションのレベルより、絶縁基材側に形成されている、請求項1から9までのいずれか一項に記載の灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光素子としてLEDを備えた電球型照明装置が開示されている。具体的には、複数のLEDが基板上に円環状に配置され、それらLEDから出射した光がカバー部材を経由して外部に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の構成において、LEDから出力した光は、そのまま出力されてしまうという課題があった。すなわち、発光素子が搭載された場合に基板から発光される光を発光素子が発光する光と異なる発光色の光に調整することができず、そのような構成の灯具では、所望の発光色が得られず、また、発光色にばらつきが発生することもあるという課題があった。
【0005】
本発明は、発光素子が搭載された場合に蛍光体基板から発光される光を発光素子が発光する光と異なる発光色の光に調整することができる灯具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の灯具は、基板と、
前記基板に搭載された発光素子と、
前記発光素子に電力を供給し発光駆動させる駆動回路と、
を備え、
前記基板は、
絶縁基材と、
前記絶縁基材の一面に配置され、前記発光素子の発光を励起光としたときの発光ピーク波長が可視光領域にある蛍光体粒子と、有機樹脂とを含む蛍光体層と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の灯具では、発光素子が搭載される基板が蛍光体基板として構成され、蛍光体基板から発光される光を発光素子が発光する光と異なる発光色の光に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態のLED電球の斜視図である。
【
図2】第1の実施形態のLED電球の分解斜視図である。
【
図3】第1の実施形態のLEDモジュールの他の形態を示した図である。
【
図4】第1の実施形態のLEDモジュールの駆動回路の例を示した図である。
【
図5】第1の実施形態のLEDモジュールの一形態である発光基板の部分断面図である。
【
図6】第1の実施形態の発光基板の発光動作を説明するための図である。
【
図7】第1の実施形態の発光基板の発光動作を説明するための図である。
【
図8】第1の実施形態の発光基板の相関色温度の第1試験の結果を表すグラフである。
【
図9】第1の実施形態の発光基板の相関色温度の第2試験の結果を表すグラフである。
【
図10】第1の実施形態の発光基板におけるLEDのジャンクションと蛍光体層の位置関係を説明する図である。
【
図11】第1の実施形態の発光基板におけるLEDのジャンクションと蛍光体層の位置関係を説明する図である。
【
図12】第1の実施形態の発光基板におけるLEDのジャンクションと蛍光体層の位置関係を説明する図である。
【
図13】第2の実施形態のLEDランプの平面図である。
【
図14】第3の実施形態のLED電球の平面図である。
【
図15】第3の実施形態のLEDモジュールの形態を示した図である。
【
図17】第4の実施形態の投光器に用いられるLEDランプ本体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1の実施形態≫
以下、本実施形態の灯具の一形態であるLED電球100の構成および機能について
図1~4を参照して説明する。つぎに、LED電球100の発光ユニットであるLEDユニットの構成および機能について、主に発光基板10に着目して
図5を参照しながら説明する。次いで、本実施形態の発光基板10の発光動作について
図6、7を参照しながら説明する。さらに、本実施形態の効果について
図8、
図9等を参照しながら説明する。さらに、
図10~
図12を参照して、発光基板におけるLEDのジャンクションと蛍光体層の位置関係について説明する。なお、以下の説明において参照するすべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
<第1の実施形態のLED電球の構成及び機能>
図1は本実施形態のLED電球100の斜視図である。
図2はLED電球100の分解斜視図である。なお、
図1及び
図2では、便宜的にカバー部材110側を上側、口金132側を下側として説明する。
【0011】
LED電球100は、カバー部材110と、LEDモジュール120と、胴部130と、駆動回路140とを備える。
【0012】
LEDモジュール120は、蛍光体基板122と、LEDチップ121とを備える。ここでは、蛍光体基板122は、上面視で略円形を呈している。また、蛍光体基板122の中心に一つのLEDチップ121が搭載されている。LEDチップ121は、例えば、フリップチップLEDが組み込まれたCSP(Chip Scale Package)である。
【0013】
蛍光体基板122の一例として上面視で略円形を示しているが、LED電球100の形状やLEDチップ121の搭載数、搭載位置、配置等に応じて、矩形やその他の適宜選択される。例えば、
図3の例では、LEDモジュール120bは、矩形(正方形)の蛍光体基板122bの中央に一つのLEDチップ121を配置した構成である。また、後述する第2の実施形態(
図13参照)のように、矩形の蛍光体基板222上に複数のLEDチップ221を格子状に配置した構成であってもよい。また、後述する第3の実施形態(
図15参照)のように、円形の蛍光体基板322上に複数のLEDチップ321を円環状に配置した構成であってもよい。
【0014】
図1、2に戻り、蛍光体基板122は、絶縁基板の一方の面に蛍光体層を設けた構成である。蛍光体基板122の上にLEDチップ121が搭載されている。なお、蛍光体基板122およびLEDチップ121の具体的な構造および特長については、
図5から
図9で後述する。
【0015】
胴部130は、例えばアルミダイキャスト等で形成されている。胴部130の表面に、放熱手段として、放熱フィン131がスリット状に形成されている。また、胴部130の表面には放熱用塗料が塗装され電気的に絶縁されている。胴部130には内部空間が形成されており、胴部130の下部に口金132が取り付けられている。
なお、放熱手段として放熱フィン131を例示したが、その他に放熱ファンや放熱開口、放熱スリットがある。必要とされる放熱性能や騒音性能等に基づき、適宜最適な放熱手段が用いられる。
【0016】
胴部130の内部空間には電源駆動回路140が配置され、その上に内部空間を蓋するように上述のLEDモジュール120が取り付けられる。放熱ファンを設ける場合には、LED電球100内に温度センサを設け、駆動回路140が放熱ファンの駆動制御を行うことで、LED電球100の内部を所望の温度範囲に制御できる。
【0017】
カバー部材110は、例えば熱可塑性樹脂やガラスで形成されており、図示のように球形状を呈し、図示下側(すなわち胴部130側)が開放している。カバー部材110は、LEDモジュール120および駆動回路140が取り付けられた胴部130の上部を覆うように、開放部分で取り付けられる。なお、カバー部材110には、拡散材が含まれてもよい。
【0018】
駆動回路140は、LEDドライバICやコンデンサ等を備え、スイッチング動作で駆動素子Qのオンデューティ(オフデューティ)をPWM(Pulse Width Modulation)制御することで、LEDチップ121に流れる電流を所望の値に制御する。
【0019】
<LED駆動回路例>
図4は、駆動回路140についてLED駆動回路に着目した回路例である。図示のように、駆動回路140は、LEDチップ121の駆動素子Q、駆動素子QをPWM制御するLEDドライバ141、商用交流電源ACの電力を整流する整流回路142、降圧チョッパ回路143、電流検出抵抗144を備える。なお、この回路構成は例示であり、例えば、駆動素子QはLEDドライバ141に含まれる構成でもよく、また、駆動回路140は、LEDモジュール120と一体の構成でもよい。また、商用交流電源ACを直流に変換する機能(例えば整流回路142や降圧チョッパ回路143等)は、外部に別体(例えば専用電源)として設けられてもよい。
【0020】
<本実施形態の発光基板の構成及び機能>
つづいて
図5から
図9を参照して、発光素子20の具体的な構造を説明する。以下で説明する発光素子20は、上述のLEDモジュール120に対応する。
図5は、発光素子20(LEDモジュール120)の具体的構造である発光基板10の部分断面図である。
【0021】
<発光素子>
発光素子20は、それぞれ、上述のようにフリップチップLED22(以下、単に「LED22」という。)が組み込まれたCSP(Chip Scale Package)とされている。一つまたは複数の発光素子20は、蛍光体基板30の表面31(一面の一例)に配置される。複数の場合には、発光素子20は、例えば表面31の全体に亘って規則的に配置された状態で、蛍光体基板30に設けられている。なお、発光素子20が発光する光の相関色温度は、例えば3,018Kである。
【0022】
また、発光素子20は、発光動作時に、例えば上述した放熱手段を用いることで、蛍光体基板30を一例として常温から50℃~100℃の範囲に収まるように放熱(冷却)される。
【0023】
ここで、本明細書で数値範囲に使用する「~」の意味について補足すると、例えば「50℃~100℃」は「50℃以上100℃以下」を意味する。そして、本明細書で数値範囲に使用する「~」は、「『~』の前の記載部分以上『~』の後の記載部分以下」を意味する。
【0024】
<蛍光体基板>
本実施形態の蛍光体基板30は、絶縁層32(絶縁基板の一例)と、電極層34と、蛍光体層36と、裏面パターン層(図示せず)とを備えている。蛍光体層36は、一例として、絶縁層32及び電極層34の表面31における、後述する複数の電極対34A以外の部分に配置されている。
【0025】
なお、本実施形態の蛍光体基板30は、絶縁板の両面に銅箔層が設けられた両面板(以下、「マザーボードMB」という)を加工(エッチング等)して製造されるが、マザーボードMBは一例として利昌工業株式会社製のCS-3305Aが用いられる。
【0026】
<絶縁層>
以下、本実施形態の絶縁層32の主な特徴について説明する。
形状は、前述のとおり、一例として表面31及び裏面33から見て円形や矩形である。
材質は、一例としてビスマレイミド樹脂及びガラスクロスを含む絶縁材である。
厚みは、一例として100μm~200μmである。
縦方向及び横方向の熱膨張係数(CTE)は、それぞれ、一例として、50℃~100℃の範囲において10ppm/℃以下である。また、別の見方をすると、縦方向及び横方向の熱膨張係数(CTE)は、それぞれ、一例として、6ppm/Kである。この値は、本実施形態の発光素子20の場合とほぼ同等(90%~110%、すなわち±10%以内)である。
ガラス転移温度は、一例として、300℃よりも高い。
貯蔵弾性率は、一例として、100℃~300℃の範囲において、1.0×1010Paよりも大きく1.0×1011Paよりも小さい。
【0027】
<電極層>
本実施形態の電極層34は、絶縁層32の表面31側に設けられた金属層である。本実施形態の電極層34は一例として銅箔層(Cu製の層)である。別言すれば、電極層34は、少なくともその表面が銅を含む。
【0028】
電極層34は、絶縁層32に設けられたパターンとされ、コネクタ(図示省略)が接合される端子(図示省略)と導通している。そして、電極層34は、リード線の直付けにより又はコネクタを介して外部電源(第1の実施形態では駆動回路140)から給電された電力を、発光基板10の構成時の発光素子20に供給する。発光素子20が複数の場合には、電極層34の一部は、複数の発光素子20がそれぞれ接合される複数の電極対34Aとされている。図示のように、一例として、複数の電極対34Aは、配線部分34Bよりも絶縁層32(蛍光体基板30)の厚み方向外側に突出している。
【0029】
なお、絶縁層32の表面31における電極層34が配置されている領域(電極層34の専有面積)は、一例として、絶縁層32の表面31の60%以上の領域である。
【0030】
<蛍光体層>
本実施形態の蛍光体層36は、一例として、絶縁層32及び電極層34の表面31における、複数の電極対34A以外の部分に配置されている。そして、本実施形態では、絶縁層32の表面31における蛍光体層36が配置されている領域は、一例として、絶縁層32の表面31における80%以上の領域である。
【0031】
本実施形態の蛍光体層36は、一例として、後述する蛍光体とバインダーとを含む絶縁層である。蛍光体層36に含まれる蛍光体は、バインダーに分散された状態で保持されている微粒子であって、各発光素子20の発光を励起光として励起する性質を有する。具体的には、本実施形態の蛍光体は、発光素子20の発光を励起光としたときの発光ピーク波長が可視光領域にある性質を有する。なお、バインダーは、例えば、エポキシ系、アクリレート系、シリコーン系等で、ソルダーレジストに含まれるバインダーと同等の絶縁性を有するものであればよい。
【0032】
(蛍光体の具体例)
ここで、本実施形態の蛍光体層36に含まれる蛍光体は、一例として、Euを含有するα型サイアロン蛍光体、Euを含有するβ型サイアロン蛍光体、Euを含有するCASN蛍光体及びEuを含有するSCASN蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の蛍光体とされている。なお、前述の蛍光体は、本実施形態の一例であり、YAG、LuAG、BOSその他の可視光励起の蛍光体のように、前述の蛍光体以外の蛍光体であってもよい。
【0033】
Euを含有するα型サイアロン蛍光体は、一般式:MxEuySi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-nで表される。上記一般式中、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(ただし、LaとCeを除く)からなる群から選ばれる、少なくともCaを含む1種以上の元素であり、Mの価数をaとしたとき、ax+2y=mであり、xが0<x≦1.5であり、0.3≦m<4.5、0<n<2.25である。
【0034】
Euを含有するβ型サイアロン蛍光体は、一般式:Si6-zAlzOzN8-z(z=0.005~1)で表されるβ型サイアロンに発光中心として二価のユーロピウム(Eu2+)を固溶した蛍光体である。
【0035】
また、窒化物蛍光体として、Euを含有するCASN蛍光体、Euを含有するSCASN蛍光体等が挙げられる。
【0036】
Euを含有するCASN蛍光体(窒化物蛍光体の一例)は、例えば、式CaAlSiN3:Eu2+で表され、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物からなる結晶を母体とする赤色蛍光体をいう。なお、本明細書におけるEuを含有するCASN蛍光体の定義では、Euを含有するSCASN蛍光体が除かれる。
【0037】
Euを含有するSCASN蛍光体(窒化物蛍光体の一例)は、例えば、式(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+で表され、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物からなる結晶を母体とする赤色蛍光体をいう。
以上が、本実施形態の発光基板10及び蛍光体基板30の構成についての説明である。
【0038】
<本実施形態の発光基板の発光動作>
次に、本実施形態の発光基板10の発光動作について
図6を参照しながら説明する。ここで、
図6は、発光基板10の発光動作を説明するための図であり、複数の発光素子20の発光動作について例示する。
図6の発光素子20は、
図1、2のLEDモジュール120に相当する。
【0039】
まず、発光素子20を作動させる作動スイッチ(例えば
図1や
図2の駆動回路140の機能)がオンになると、商用交流電源ACから駆動回路140を介して電極層34への給電が開始され、複数の発光素子20は光Lを放射状に発散出射する。その光Lの一部は蛍光体基板30の表面31に到達する。以下、出射された光Lの進行方向に分けて光Lの挙動について説明する。
【0040】
各発光素子20から出射された光Lの一部は、蛍光体層36に入射することなく外部に出射される。この場合、光Lの波長は、各発光素子20から出射された際の光Lの波長と同じままである。
【0041】
また、各発光素子20から出射された光Lの一部分の中のLED22自身の光は、蛍光体層36に入射する。ここで、前述の「光Lの一部分の中のLED22自身の光」とは、出射された光Lのうち各発光素子20(CSP自身)の蛍光体により色変換されていない光、すなわち、LED22自身の光(一例として青色(波長が470nm近傍)の光)を意味する。
【0042】
そして、LED22自身の光Lが蛍光体層36に分散されている蛍光体に衝突すると、蛍光体が励起して励起光を発する。ここで、蛍光体が励起する理由は、蛍光体層36に分散されている蛍光体が青色の光に励起ピークを持つ蛍光体(可視光励起蛍光体)を使用しているためである。これに伴い、光Lのエネルギーの一部は蛍光体の励起に使われることで、光Lはエネルギーの一部を失う。その結果、光Lの波長が変換される(波長変換がなされる)。例えば、蛍光体層36の蛍光体の種類によっては(例えば、蛍光体に赤色系CASNを用いた場合には)光Lの波長が長くなる(例えば650nm等)。
【0043】
また、蛍光体層36での励起光はそのまま蛍光体層36から出射するものもあるが、一部の励起光は下側の電極層34に向かう。そして、一部の励起光は電極層34での反射により外部に出射する。以上のように、蛍光体による励起光の波長が600nm以上の場合、電極層34がCuでも反射効果が望める。なお、蛍光体層36の蛍光体の種類によっては光Lの波長が前述の例と異なるが、いずれの場合であっても光Lの波長変換がなされることになる。例えば、励起光の波長が600nm未満の場合、電極層34又はその表面を例えばAg(鍍金)とすれば反射効果が望める。また、蛍光体層36の下側(絶縁層32側)に反射層が設けられてもよい。反射層は、例えば、酸化チタンフィラー等の白色塗料により設けられる。
【0044】
以上のとおり、各発光素子20が出射した光L(各発光素子20が放射状に出射した光L)は、それぞれ、上記のような複数の光路を経由して上記励起光とともに外部に照射される。そのため、蛍光体層36に含まれる蛍光体の発光波長と、発光素子20(CSP)におけるLED22を封止した(又は覆う)蛍光体の発光波長とが異なる場合、本実施形態の発光基板10は、各発光素子20が出射した際の光Lの束を、各発光素子20が出射した際の光Lの波長と異なる波長の光Lを含む光Lの束として上記励起光とともに照射する。例えば、本実施形態の発光基板10は、各発光素子20が出射した際の光Lの束を、各発光素子20が出射した際の光Lの波長よりも長い波長の光Lを含む光Lの束として上記励起光とともに照射する。
これに対して、蛍光体層36に含まれる蛍光体の発光波長と、発光素子20(CSP)におけるLED22を封止した(又は覆う)蛍光体の発光波長とが同じ場合(同じ相関色温度の場合)、本実施形態の発光基板10は、各発光素子20が出射した際の光Lの束を、各発光素子20が出射した際の光Lの波長と同じ波長の光Lを含む光Lの束として上記励起光とともに照射する。
以上が、本実施形態の発光基板10の発光動作についての説明である。
【0045】
<第1の実施形態の効果>
次に、本実施形態の効果について図面を参照しながら説明する。
<第1の効果>
第1の効果については、本実施形態を以下に説明する比較形態(
図7参照)と比較して説明する。ここで、比較形態の説明において、本実施形態と同じ構成要素等を用いる場合は、その構成要素等に本実施形態の場合と同じ名称、符号等を用いることとする。
図7は、比較形態の発光基板10Aの発光動作を説明するための図である。比較形態の発光基板10A(複数の発光素子20を搭載する基板30A)は、蛍光体層36を備えていない点以外は、本実施形態の発光基板10(蛍光体基板30)と同じ構成とされている。
【0046】
比較形態の発光基板10Aの場合、各発光素子20から出射され、基板30Aの表面31に入射した光Lは、波長が変換されることなく反射又は散乱する。より具体的には、表面31は白色反射塗料部となった構造か、電極部がAg鍍金部として露出している構造となっており、そのような構造によって反射、散乱される。そのため、比較形態の基板30Aの場合、発光素子20が搭載された場合に発光素子20が発光する光と異なる発光色の光に調整することができない。換言すると、比較形態の発光基板10Aの場合、発光素子20が発光する光と異なる発光色の光に調整することができない。すなわち、従来のLED電球では、発光色(色度)にバラツキが生じたり、色度コントロールが困難であった。
【0047】
これに対して、本実施形態の場合、
図5や
図6に示すように、絶縁層32の表面31に蛍光体層36が備えられている。そのため、各発光素子20から出射された光Lの一部は、蛍光体層36に入射して、蛍光体層36により波長変換されて、外部に照射される。この場合、各発光素子20から放射状に出射された光Lの一部は、蛍光体層36に入射して、蛍光体層36に含まれる蛍光体を励起させ、励起光を発生させる。
【0048】
ここで、
図8は、本実施形態の発光基板10の相関色温度の第1試験の結果を表すグラフである。また、
図9は、本実施形態の発光基板10の相関色温度の第2試験の結果を表すグラフである。
【0049】
第1試験は、相関色温度が2200K~2300K相当である複数の発光素子20を備えた発光基板10に給電して発光させた場合における、複数の発光素子20に電流(mA)と、相関色温度(K)との関係を調べた結果である。ここで、HE(1)及びHE(2)は電極層34の構造が本実施形態と同じ構造の場合を示し、FLT(1)及びFLT(2)は、電極層34における一対の電極対34Aと配線部分34Bとの厚みが同じ場合(変形例)を示す。
図8の結果のとおり、いずれの場合であっても、発光基板10が発光する光Lの相関色温度は、複数の発光素子20の相関色温度よりも低くなっている。すなわち、本実施形態(上記変形例も含む)の場合、蛍光体層36を備えることで相関色温度をシフトさせることができていた。
【0050】
また、第2試験は、相関色温度が2900K~3000K相当である複数の発光素子20を備えた発光基板10に給電して発光させた場合における、複数の発光素子20に電流(mA)と、相関色温度(K)との関係を調べた結果である。ここで、HE(1)は電極層34の構造が本実施形態と同じ構造の場合を示し、FLT(1)及びFLT(2)は、電極層34における一対の電極対34Aと配線部分34Bとの厚みが同じ場合(変形例)を示す。
図9の結果のとおり、いずれの場合であっても、発光基板10が発光する光Lの相関色温度は、複数の発光素子20の相関色温度よりも低くなっている。すなわち、本実施形態(上記変形例も含む)の場合、蛍光体層36を備えることで相関色温度をシフトさせることができていた。
【0051】
したがって、本実施形態の蛍光体基板30によれば、発光素子20が搭載された場合に、蛍光体基板30から発光される光Lを発光素子20が発光する光Lと異なる発光色の光に調整することができる。これに伴い、本実施形態の発光基板10によれば、蛍光体基板30から発光される光Lを発光素子20が発光する光Lと異なる発光色の光Lに調整することができる。別の見方をすると、本実施形態の発光基板10によれば、発光素子20が発光する光Lと異なる発光色の光Lを外部に照射することができる。
【0052】
なお、蛍光体層36に含まれる蛍光体の発光波長と、発光素子20(CSP)におけるLED22を封止した(又は覆う)蛍光体の発光波長とが同じ場合(同じ相関色温度の場合)、本実施形態の発光基板10は、各発光素子20が出射した際の光Lの束を、各発光素子20が出射した際の光Lの波長と同じ波長の光Lを含む光Lの束として上記励起光とともに照射する。この場合、搭載される発光素子20の色度ばらつきを蛍光体層36により緩和する効果も発現できる。すなわち、このような構成のLEDモジュール120を有する灯具(上述のLED電球100や後述のLEDランプ200、LED電球300、投光器400)によると、色度のバラツキを低減した、高品位の色再現性を実現できる。また、色温度の調整を高い精度で実現できる。
【0053】
<第2の効果>
比較形態の場合、
図7に示されるように、各発光素子20の配置間隔に起因して外部に照射される光Lに斑が発生する。ここで、光Lの斑が大きいほど、グレアが大きいという。
これに対して、本実施形態の場合、隣接する発光素子20同士の間に蛍光体層36が設けられている。そのため、蛍光体層36からも励起光が発光される。
したがって、本実施形態によれば、比較形態に比べて、グレアを小さくすることができる。すなわち、グレアを低減した灯具(上述のLED電球100や後述のLEDランプ200、LED電球300、投光器400)を実現できる。
特に、本効果は、蛍光体層36が絶縁層32の全面に亘って設けられている場合、具体的には、絶縁層32の表面31における蛍光体層36が配置されている領域が表面13の80%以上の領域のような場合に有効である。
【0054】
<第3の効果>
また、本実施形態では、前述の説明のとおり、隣接する発光素子20同士の間に蛍光体層36が設けられている(
図6参照)。また、蛍光体層36のバインダーは、例えばソルダーレジストに含まれるバインダーと同等の絶縁性を有する。すなわち、本実施形態の場合、蛍光体層36がソルダーレジストの機能を果たす。
【0055】
<第4の効果>
また、本実施形態の場合、例えば、蛍光体層36に含まれる蛍光体をEuを含有するCASN蛍光体とし、蛍光体層36をCu製の配線部分34B上に設けている。そのため、例えば、各発光素子20が白色系の光Lを出射した場合に、蛍光体層36に含まれるCASN蛍光体からの励起光は、下層電極を構成しているCuによる反射により発光効率が向上している(本実施形態の構成では、Cuの光反射効果がある)。そして、本実施形態では、当該効果により、白色系の光Lをより暖かい色系の光(相関色温度が低温側にシフトした色)に調整することができる(
図8及び
図9参照)。この場合、発光素子20の白色系光に暖色系光を加味することができ、特殊演色係数R9値を上げることができる。本効果は、YAG系白色光(黄色蛍光体)を用いた擬似白色に特に有効となる。
【0056】
<第5の効果>
また、前述の説明のとおり、複数の発光素子20は、発光動作時に、
図1の放熱フィン131や冷却ファン(
図11で後述する放熱ファン335)などの放熱手段を用いることで、蛍光体基板30を一例として常温から50℃~100℃に収まるように放熱(冷却)される。そのため、LED22の発光の際の発熱を、基板全体に拡散させ筐体への熱引き効果を上げる。そして、本実施形態の場合、絶縁層32の表面31における電極層34が配置されている領域(電極層34の専有面積)は、一例として、絶縁層32の表面31の60%以上の領域(面積)とされている。
したがって、本実施形態の電極層34(配線部分34B)は、給電のための電気経路としての機能以外に、複数の発光素子20から発生する熱の放熱板として機能する。そのため、発光素子20(LED22)は、熱の影響を受け難い状況で安定して光Lを発光することができる。
以上が、第1の実施形態の効果についての説明である。
【0057】
<LEDのジャンクションと蛍光体層の関係>
ここで、
図10~12を参照して、LED22(特にジャンクション部の位置)と蛍光体層36について基板厚み方向の位置関係について、好適な例及び不適な例を説明する。
図10及び
図11が好適な例を示す。
図12が不適な例を示す。
【0058】
発光素子20は、LED22と、チップ電極23と、蛍光体封止層24とを備え、絶縁層32に設けられている。チップ電極23は上述のように電極対34Aの上面を覆うように配置されるが、ここでは簡略化して不図示として、絶縁層32に配置する図として示している。
チップ電極23の上にはLED22が形成される。LED22はN型とP型半導体から構成され、その境界部がジャンクション部と称される発光層となる。以下、発光層の最も下側(すなわち絶縁層32側)の位置を便宜的にジャンクションレベル28と称する。図示の例では、ジャンクションレベル28の位置を、LED22とチップ電極23との境界と同じ位置として例示しているが、発光層の位置や向きに応じて異なる位置となる。
チップ電極23とLED22とが一体となった構造体を上から覆うように蛍光体封止層24が形成されている。図示では、ジャンクションレベル28の側面部分は蛍光体封止層24により覆われている。
【0059】
ここで、
図10の好適な例に示すように、蛍光体層36は、発光素子であるLED22のジャンクションレベル28より絶縁層32側に形成されている。より具体的には、ジャンクションレベル28と蛍光体層36の上面36aのレベルを比較した場合、絶縁層32の上面を基準とした高さ方向(基板積層方向)の位置が、ジャンクションレベル28のレベルの方が高い。例えば
図10では、絶縁層32からジャンクションレベル28までの高さh1が、絶縁層32から蛍光体層上面36aまでの高さh2よりも高くなっている。したがって、ジャンクションレベル28から少なくとも上方向の角度を有して出射した光(図中太線矢印で示す)は、蛍光体封止層24を透過し外部に出射するときに、蛍光体層36に入射することはない。例えば図示で左側の光でも、蛍光体層36に当たることはない。蛍光体封止層24の形成位置にもよるが、蛍光体層36に入射する光は、ジャンクションレベル28から下方向に角度を持って出射した光だけになる。
【0060】
図11の好適な例では、蛍光体層36の蛍光体層上面36aのレベル(すなわちチップ電極23からの高さh3)が、ジャンクションレベル28よりも高く、発光素子20の上面の位置と同じになっている。なお、蛍光体層上面36aのレベルは、発光素子20の上面と同じ位置に限る趣旨ではない。したがって、ジャンクションレベル28から上方向の角度を持って蛍光体封止層24を通過して出射した光の一部(例えば、図中左側の光のように発光素子20の側面から出力した光)が蛍光体層36に入射する。この構成は、発光素子20の側面側から出力された光を蛍光体層36に取り入れたい場合に好適である。
【0061】
図12の不適な例では、蛍光体層36とチップ電極23との間に嵩上げ層37が設けられている。蛍光体層36の蛍光体層下面36bのレベル(すなわち嵩上げ層37の厚さh4)が、ジャンクションレベル28よりも高い位置にある。したがって、ジャンクションレベル28から上方向の角度を持って蛍光体封止層24を通過して出射した光の一部(例えば、図中左側の光)が、嵩上げ層37に邪魔されてしまい、蛍光体層36に入射できない。これは、蛍光体層36の機能が十分に発揮されない。したがって、嵩上げ層37を設ける場合には、蛍光体層下面36bのレベルをジャンクションレベル28より低くすることが望ましい。
【0062】
以上、
図10や
図11に示したように、蛍光体層36の厚さを調整することで、蛍光体層36に入射する光を調整できる。また、蛍光体層36の下側に嵩上げ層37を設ける場合には、
図12に示した構成(蛍光体層下面36bのレベルがジャンクションレベル28より高い構成)は避けて、蛍光体層下面36bのレベルをジャンクションレベル28より低くすることで、嵩上げ層37で邪魔されること無く、発光素子20の光を蛍光体層36に入射させることができる。
【0063】
≪第2の実施形態≫
つづいて、第2の実施形態のLEDランプ200について説明する。
【0064】
<LEDランプ200の構成>
図13は本実施形態にかかるLEDランプ200の概略構成を示す図である。このLEDランプ200は、いわゆる横型LEDランプであって、横状態に取り付けることで、下面に光を照射する構造となっている。具体的には、LEDランプ200は、筒状の筐体210と、LEDモジュール220と、胴部230と、駆動回路(図示せず)を備える。筐体210には透明のカバー211が取り付けられている。カバー211は、透明の他に、半透明、乳白、スモークに構成されてもよい。筐体210の内部にはLEDモジュール220が搭載されている。胴部230は、放熱フィン231と、口金132とを備える。なお、放熱手段として、放熱フィン231の他に、放熱ファンや放熱開口、放熱スリットが設けられてもよい。
【0065】
LEDモジュール220には、矩形の蛍光体基板222に複数のLEDチップ221が格子状に配列されている。ここでは、4×3配列で12個のLEDチップ221が設けられている。なお、蛍光体基板222の基本的な構造は第1の実施形態の蛍光体基板122と同一であり、説明は省略する。異なる点は、LEDチップ221を複数設けた点にある。
【0066】
具体的には、複数のLEDチップ221は列ごとに独立して発光する。すなわち、4個のLEDチップ221を一つの直列体として構成し、3つの直列体を3列に並列配置している。駆動回路は、3つの直列体に対応して3つの駆動出力を有することで、それぞれの直列体を独立して駆動させることができる。このような構成により、LEDチップ221のいずれかの列(すなわち直列体)が故障により不点灯状態となっても、全体が消灯してしまうことはない。なお、一つの直列体に接続するLEDチップ221の数は、LEDチップ221の電圧降下や供給電圧により定まる。
【0067】
<第2の実施形態の効果>
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0068】
≪第3の実施形態≫
つづいて、第3の実施形態のLED電球300について説明する。
【0069】
<LED電球300の構成>
図14は本実施形態に係るLED電球300の概略構成を示した図である。
図15は、LEDモジュール320を示している。
第1の実施形態のLED電球100と異なる点は、本実施形態のLED電球300が放熱ファン335を有する点及びLEDモジュール320が複数のLEDチップ321を有する点にある。
【0070】
具体的には、LED電球300は、カバー部材310と、LEDモジュール320と、胴部330と、駆動回路(図示せず)と、を備える。
【0071】
LEDモジュール320は、
図15に示すように、上面視で略円形の蛍光体基板322と、複数(ここでは8個)のLEDチップ321とを備える。複数のLEDチップ321は蛍光体基板322上に円環状に設けられている。
【0072】
胴部330は、例えばアルミダイキャスト等で形成されている。
胴部330は、上側(すなわちカバー部材310側)から、放熱フィン333と、胴部本体部331と、口金332と、を備える。
【0073】
放熱フィン333は、例えば図示上側(カバー部材310側)に設けられた円盤状のプレートと、そのプレートの下側面から図示下側に向かって所定高さで延出する複数のフィンとを備える。それぞれのフィンは、例えば下面視において、径方向外側に向かって放射状に延びている。また、複数のフィンは径方向に沿って円環状に並んで設けられている。
【0074】
放熱フィン333の下面視中心(軸中心)から所定径の範囲において、複数のフィンの高さが短くなった領域が形成されている。その領域に放熱ファン335が取り付けられる。放熱ファン335は、例えば、ブラシレスモータで駆動するDCファンである。
【0075】
放熱ファン335を構成する複数のフィンの最も外側(すなわち外周縁)は連結されておらず開放した形状となっている。フィンを冷却した空気流が、その開放した部分から外部に排出される。
【0076】
放熱フィン333の上側面(円盤状のプレートの上面)には、LEDモジュール320(蛍光体基板322)に取り付けられる。
【0077】
放熱フィン333の下側には、内部に空間が形成された同心形状の胴部本体部331が設けられている。胴部本体部331は、具体的には、例えばアルミダイキャストで形成されており、その表面には放熱用塗料が塗装され電気的に絶縁されている。
【0078】
胴部本体部331は、下側に行くにつれ小径になる逆円錐台形の形状となっており、その側面に複数のスリット部331aが形成されている。スリット部331aは、胴部本体部331の内部空間と外部とを連通している。胴部本体部331の図示下側には口金332が設けられている。
【0079】
胴部本体部331の内部空間には第1の実施形態と同様に駆動回路(図示せず)が配置され、その上に内部空間を蓋するように上述の放熱フィン333が取り付けられる。
【0080】
<第3の実施形態の効果>
本実施形態のLED電球300は、第1、第2の実施形態と同様の効果を奏する。さらに、以下のような作用・効果を奏する。
放熱ファン335の作用により冷却用の空気流がスリット部331aから胴部本体部331の内部空間に取り込まれ、放熱フィン333に供給される。放熱フィン333を冷却した空気流は、放熱フィン333の外部に開放されている部分から排出される。
本実施の形態のように、放熱フィン333、放熱ファン335及び放熱スリット331aを組み合わせた放熱手段(放熱装置)を設けることで、LEDモジュール320に多数のLEDチップ321が設けられLEDチップ321や駆動回路340の発熱が大きい場合であっても、効果的に冷却(放熱)できる。すなわち、蛍光体基板322を一例として常温から50℃~100℃に収まるように効果的に放熱(冷却)することができる。その結果、LEDモジュール320は、熱の影響を受け難い状況で安定して光Lを発光することができる。
【0081】
≪第4の実施形態≫
つづいて、第4の実施形態の投光器400について、
図16及び
図17を参照して説明する。
図16は投光器400の斜視図である。
図17は、LEDランプ本体401の斜視図であり、
図16の投光器400から筐体402を取り除いた状態を示している。
【0082】
<投光器400の構成>
投光器400は、例えば、大型スポーツ施設や屋外商業施設等の照明として利用される。投光器400は、略直方体のLEDランプ本体401と、それを収納する筐体402と、電源装置(図示せず)とを備える。図示では、投光方向(すなわちLEDモジュール420の配置側の面)を下側として示している。投光器400として、複数のLEDランプ本体401が一つのユニットとして構成され、筐体402に一体に収納されてもよい。
【0083】
LEDランプ本体401は、ランプモジュール410と、放熱板440と、駆動回路(図示せず)とを備える。
【0084】
ランプモジュール410は、平面視(ここでは下側から見た状態)で矩形の蛍光体基板422と、複数のLEDチップ421とを備える。LEDチップ421は、例えば、フリップチップLEDが組み込まれたCSPである。
【0085】
複数のLEDチップ421は、千鳥格子状に配置されている。より具体的には、複数のLEDチップ421は、長手方向(図示で左右方向)に所定ピッチで10個配列した群を、短手方向に3列配置している。ここでは、2列目の群は、1列目及び3列目の群に対して、図示で右方向にLEDチップ421一つ分だけずれている。LEDチップ421の配置は千鳥格子状に限る趣旨では無く、正格子状であってもよいし、各種の配置を適用できる。
【0086】
ランプモジュール410の上面(LEDチップ421が配置されている面と反対側の面)には、放熱手段として放熱板440が取り付けられている。放熱板440は例えばアルミダイキャスト製であって、複数のフィンを図示上側に延出させている。なお、放熱手段として、さらに放熱ファンが設けられてもよい。
【0087】
<第4の実施形態の効果>
第4の実施形態によると、第1~第3の実施形態と同様の効果が得られる。また、投光器400が大型スポーツ施設に設置されるような場合、投光器400から照射される光が強いことから、運動選手等の競技に悪影響を及ぼさず安全な環境を提供することが求められる。すなわち、眩しくて競技を中断したり、怪我が誘発されないようにすることが必要である。本実施形態の投光器400では、蛍光体基板422を経由して投光される光が、LEDチップ421から直接投光される光の眩しさを緩和することができ、安全な活動の環境を実現できる。
【0088】
≪実施形態の変形例≫
以上のとおり、本発明について第1~第4の実施形態を例として説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、下記のような形態(変形例)も含まれる。
【0089】
例えば、本実施形態の説明では、発光素子20の一例をCSPであるとした。しかしながら、発光素子20の一例はCSP以外でもよい。例えば、単にフリップチップを搭載したものでもよい。また、COBデバイスの基板自身に応用することもできる。また、
図5の発光基板10では、蛍光体層36は絶縁層32に積層された電極層34の上に形成された構成であるが、この構成に限らず、蛍光体層36と電極層34の間に、介在層(絶縁材の層)が設けられてもよい。介在層(絶縁材の層)の厚さ、形状を調整することで、蛍光体層36の量や蛍光体層36から出力する光の特性(向き、蛍光量など)を調整できる。
【0090】
≪実施形態の特徴と効果のまとめ≫
発明の実施形態の特徴および効果をまとめると次の通りである。
<1>本発明の実施形態に係る灯具(100、200、300、400)は、
基板(122、222、322、422)と、
前記基板(122、222、322、422)に搭載された発光素子(20)と、
前記発光素子(20、121、221、321、421)に電力を供給し発光駆動させる駆動回路(140、340)と、
を備え、
前記基板(122、222、322、422)は、
絶縁基材(32)と、
前記絶縁基材(32)の一面に配置され、前記発光素子(20)の発光を励起光としたときの発光ピーク波長が可視光領域にある蛍光体粒子と、有機樹脂とを含む蛍光体層(36)と、
を備える。
これにより、基板(122、222、322、422)から発光される光を、発光素子(20、121、222、322)が発光する光と異なる発光色の光に調整することができる。また、別の観点では、蛍光体層(36)は、発光素子(20、121、221、321、421)の色度ばらつきを緩和する。
【0091】
<2>前記発光素子(20、121、221、321、421)の発光駆動にともない発生する熱を放熱する放熱手段(131、231、331、333、335、440)を備える。
これによって、基板(122、222、322、422)を一例として常温から50℃~100℃に収まるように効果的に放熱(冷却)することができる。
また、多数の発光素子(20、121、221、321、421)が設けられ、発光素子(20、121、222、322)が実装された基板(122、222、322、422)や駆動回路の発熱が大きい場合であっても、効果的に冷却(放熱)できる。その結果、熱の影響を受け難い状況で安定して光Lを発光することができる。
【0092】
<3>前記発光素子(20、121、221、321、421)は、LED(22)が組み込まれ、チップサイズにパッケージされたCSP(121、221、321、421)である。
CSPとすることで、基板実装を安定的かつ低コストで実現できる。
【0093】
<4>前記発光素子(20、120、220、320、420)は複数設けられている。
発光素子(20、120、220、320、420)が複数の場合に、隣接する発光素子(20、120、220、320)同士の間に蛍光体層(36)が設けられている。そのため、蛍光体層(36)からも励起光が発光される。
したがって、蛍光体層(36)が無い形態に比べて、グレアを小さくすることができる。すなわち、グレアを低減した灯具を実現できる。
【0094】
<5>前記複数の発光素子(20、220、320、420)は、前記基板(222、422)上に格子状に配列されている。これにより、発光のバラツキを抑えた灯具を実現できる。
【0095】
<6>前記複数の発光素子(20、120、320)は、前記基板(122、322)上に円環状に配列されている。これにより、発光のバラツキを抑えた灯具を実現できる。
【0096】
<7>前記駆動回路(140)は、前記複数の発光素子(20、120、220、320)をそれぞれ独立して発光駆動させる。いずれかの発光素子が不点灯となっても、他の発光素子の発光への影響を排除できる。すなわち、ある発光素子の不点灯による灯具の発光強度低下や品位低下を必要最低限に抑えることができる。
【0097】
<8>前記絶縁基材(32)は、有機樹脂基板、セラミックス基板およびプラスチック成形体からなる群より選ばれる少なくともいずれかである。
これら材料の縦方向及び横方向の熱膨張係数(CTE)は、それぞれ、発光素子(20)の場合とほぼ同等であり、発光素子(20)に作用する熱応力の影響を抑制できる。すなわち、高い信頼性を有する灯具を実現できる。
【0098】
<9>前記蛍光体粒子は、CASN、SCASN、LaSiN、Sr2Si5N8、Ba2Si5N8、α型サイアロン、β型サイアロンおよびLuAGからなる群より選ばれるすくなくともいずれかを含む。
発光素子(光源)と蛍光体粒子を含む波長変換体とを組み合わせることによって高い発光強度を有する光を発光させることができる。
【0099】
<10>前記蛍光体層(36)が含む前記有機樹脂は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂およびエポキシ樹脂のいずれかを含む。本実施形態の場合、蛍光体層36がソルダーレジストの機能を果し、所望の絶縁性が得られる。これによって、前記蛍光体層(36)の信頼性、すなわち灯具の信頼性を向上させることができる。
【0100】
25
<11>前記蛍光体層(36)の前記絶縁基材側の面は、は、前記発光素子がLED22の場合において、前記LED22のジャンクションのレベル(28)より、絶縁基材(32)側に形成されている。
発光層であるジャンクションのレベル(28)から上方向の角度成分を有して出射した光が、他の構成(例えば嵩上げ層37)に邪魔されること無く、蛍光体層36に入射することができる。
【0101】
この出願は、2019年12月25日に出願された日本出願特願2019-233867号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0102】
28 ジャンクションレベル
100、300 LED電球
110、310 カバー部材
120、220、320、420 LEDモジュール
121、221、321、421 LEDチップ
122、222、322、422 蛍光体基板
130、230、330 胴部
131、231、333 放熱フィン
132、232、332 口金
140、240、340 駆動回路
200 LEDランプ
210 筐体
211 カバー
331 胴部本体部
331a 本体上部
331b 放熱スリット
331c 本体下部
440 放熱板
400 投光器
401 LEDランプ本体