(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ポリイミド系複合フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20240215BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240215BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240215BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240215BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240215BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240215BHJP
C08J 7/046 20200101ALN20240215BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/30 A
B32B27/40
B32B27/38
B32B27/20 Z
G09F9/00 313
G09F9/00 302
C08J7/046
(21)【出願番号】P 2022009593
(22)【出願日】2022-01-25
(62)【分割の表示】P 2020130386の分割
【原出願日】2020-07-31
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0099628
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】520287378
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス ソリューションズ 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks solutions Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】112, Seonggeo-gil, Seonggeo-eup, Seobuk-gu, Cheonan-si,Chungcheongnam-do 31044, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】キ、ジョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ダウ
(72)【発明者】
【氏名】ピョン、スンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ユンヒ
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/200042(WO,A1)
【文献】特許第6556317(JP,B1)
【文献】特開2016-054734(JP,A)
【文献】特開2017-163898(JP,A)
【文献】特許第6538259(JP,B1)
【文献】特開2011-221528(JP,A)
【文献】特開平05-032953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
7/04-7/06
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層と、を含み、
前記ベースフィルムがフィラーをさらに含み、
前記機能層は、有機樹脂、無機フィラー、および添加剤を含み、
前記有機樹脂は、アクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、およびエポキシアクリレート系オリゴマーからなる基より選択された1種以上であり、
前記フィラーが、
硫酸バリウムであり、
前記フィラーの粒径が0.05μm~0.9μmであり、
前記機能層の伸び率が2%以上であり、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、
前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とするとき、
下記数式3で表示される表面極性指数(SP)が
0.1~0.2である、ポリイミド系複合フィルム:
[数3]
ここで、前記A1は前記第1面の接触角であり、前記A2は前記第2面の接触角である。
【請求項2】
ヘイズが3%以下であり、
黄色度が5以下であり、
モジュラスが5GPa以上であり、
透過度が80%以上である、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム。
【請求項3】
ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネル上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウが、ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、
前記ベースフィルムがフィラーをさらに含み、
前記機能層は、有機樹脂、無機フィラー、および添加剤を含み、
前記有機樹脂は、アクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、およびエポキシアクリレート系オリゴマーからなる基より選択された1種以上であり、
前記フィラーが、
硫酸バリウムであり、
前記フィラーの粒径が0.05μm~0.9μmであり、
前記機能層の伸び率が2%以上であり、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とするとき、
下記数式3で表示される表面極性指数(SP)が
0.1~0.2である、ディスプレイ装置:
[数3]
ここで、前記A1は前記第1面の接触角であり、前記A2は前記第2面の接触角である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、無色透明で、かつ、機械的物性と光学的物性とに優れているポリイミド系複合フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドイミド(polyamide-imide、PAI)のようなポリイミド系樹脂は、摩擦、熱、および化学的抵抗力に優れており、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
このようなポリイミド系樹脂は、様々な分野で活用されている。例えば、ポリイミド系樹脂は、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリイミド系樹脂は、フッ素重合体とともに腐食防止や装飾のための塗料として使用され、フッ素重合体を金属基板に接着させる役割をする。また、ポリイミド系樹脂は、厨房調理器具にコーティングをするためにも使用され、耐熱性と耐薬品性の特徴があって、ガス分離に使用するメンブレンとしても使用され、天然ガス油井において二酸化炭素、硫化水素および不純物などの汚染物のろ過装置にも使用される。
【0004】
最近では、ポリイミド系樹脂をフィルム化することによって、より安価で、かつ、光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリイミド系フィルムが開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実現例は、無色透明で、かつ、機械的物性および光学的物性に優れているポリイミド系複合フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実現例に係るポリイミド系複合フィルムは、ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置される機能層と、を含み、前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面としたとき、下記数式1で表示されるレベリング指数が0.75未満である。
【0007】
[数1]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。
【0008】
他の実現例に係るディスプレイ装置は、ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネル上に配置されるカバーウィンドウと、を含み、前記カバーウィンドウが、ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置される機能層と、を含み、前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面としたとき、前記数式1で表示されるレベリング指数が0.75未満である。
【発明の効果】
【0009】
実現例によるポリイミド系複合フィルムは、第1面のSz粗さ(Sz1)と第2面のSz粗さ(Sz2)とが適切な範囲を有し、前記数式1が0.75未満であると言う特徴を満足することにより、前記機能層が向上された機械的強度を有することができ、これにより、実現例によるポリイミド系複合フィルムは、向上された機械的物性および光学的物性を有し得る。
【0010】
また、他の実現例によるディスプレイ装置もまた、向上された機械的物性および光学的物性を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実現例に係るポリイミド系複合フィルムの断面図を示すものである。
【
図2】
図2は、一実現例に係るディスプレイ装置の断面図を示すものである。
【
図3】
図3は、一実現例に係るベースフィルムの製造方法の概略的手順を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、一実現例に係るベースフィルムの工程設備を概略的に示すものである。
【
図5】
図5は、一実現例に係るポリイミド系複合フィルムの断面図を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実現例により、本発明を詳細に説明する。実現例は、以下に開示されている内容に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限り、様々な形態に変形され得る。
【0013】
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものとして記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。
【0014】
本明細書において、「含む」と言うことは、特に記載がない限り、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0015】
本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0016】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素として区別するためにのみ用いられる。
【0017】
また、本明細書で「置換された」ということは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
【0018】
<ポリイミド系複合フィルム>
図1を参照すると、実現例に係るポリイミド系複合フィルムは、ベースフィルム110および前記ベースフィルム110上に配置された機能層120を含む。
【0019】
前記ベースフィルム110は、前記機能層120を支持する支持層であり得る。また、前記ベースフィルム110は、ポリイミド系樹脂を含み得る。例えば、前記ベースフィルム110はポリイミド系フィルムであり得る。
【0020】
前記機能層120は、前記ベースフィルム110上にコーティングされ形成され得る。前記機能層120は、前記ベースフィルム110上に接合され得る。前記機能層120は、前記ベースフィルム110上に接着され得る。
【0021】
前記機能層120は、前記ベースフィルム110上にコーティングされたコーティング層であり得る。前記機能層120は硬化性樹脂を含み得る。具体的に、前記機能層120は硬化性コーティング層であり得る。
【0022】
前記機能層120は、前記ベースフィルム110の機械的物性および/または光学的物性を向上させる機能を果たせる。前記機能層は、反射防止層、防眩層、ハードコート層および耐スクラッチ層などを含み得る。
【0023】
図1に示すように、前記機能層120は第1面101を含む。前記第1面101は、前記機能層120において前記ベースフィルム110が配置された面に対向する面であり、前記第1面101は、前記機能層120において前記ベースフィルム110が接する面の反対側に位置する面である。前記第1面101は、前記機能層120の上面であり得る。例えば、前記第1面101は前記機能層120の最上面であり得る。
【0024】
前記ベースフィルム110は第2面102を含む。前記第2面102は、前記ベースフィルム110において前記機能層120が配置された面であり、前記第2面102は前記ベースフィルム110において前記機能層120が接する面である。前記第2面102は、前記ベースフィルム110の上面であり得る。例えば、前記第2面102は、前記ベースフィルム110の最上面であり得る。
【0025】
実現例に係るポリイミド系複合フィルムにおいて、前記機能層120は前記第2面102を覆う。これにより、前記機能層120の下面に前記第2面102の形状が転写され得る。
【0026】
<ベースフィルム110>
一実現例に係るベースフィルム110は、ポリイミド系樹脂を含む。前記ベースフィルム110は、フィラーをさらに含み得る。例えば、前記ベースフィルム110は、ポリイミド系樹脂およびフィラーを含む。
【0027】
前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物とを含む反応物が、同時または順次反応して形成され得る。具体的に、前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物とが重合して形成されたポリイミド重合体を含み得る。
【0028】
また、前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含み得る。前記ポリアミドイミド重合体は、イミド(imide)繰り返し単位を含むので、広い意味でポリイミド系樹脂に該当し得る。
【0029】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して共重合体を形成する化合物である。
【0030】
前記ジアミン化合物は、特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
【0031】
[化1]
H2N-(E)e-NH2
【0032】
前記化学式1において、
Eは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0033】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0034】
前記化学式1の(E)eは、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0035】
【0036】
具体的に、前記化学式1の(E)eは、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0037】
【0038】
より具体的に、前記化学式1の(E)eは、前記化学式1-6bで表される基であり得る。
【0039】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物を含み得る。または、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり得、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0040】
他の実現例において、前記ジアミン化合物は、1種のジアミン化合物を使用し得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0041】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminodiphenyl、TFDB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0042】
【0043】
前記ジアンヒドリド化合物は、複屈折値が低いため、前記ポリイミド系樹脂を含むフィルムの透過度のような光学的物性の向上に寄与し得る化合物である。
【0044】
前記ジアンヒドリド化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアンヒドリド化合物であり得る。例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2の化合物であり得る。
【0045】
【0046】
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC4-C30ヘテロ芳香族環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基または前記ヘテロ芳香族環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、または置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2の中から選択された連結基によって結合されている。
【0047】
前記化学式2におけるGは、下記化学式2-1a~2-9aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0048】
【0049】
例えば、前記化学式2におけるGは、前記化学式2-8aで表される基であり得る。
【0050】
一実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物を含み得る。または、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基は、フッ素化炭化水素基であり得、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0051】
他の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、1種の単一成分または2種の混合成分からなり得る。
【0052】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6-FDA)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とが重合してポリアミック酸を生成し得る。
【0054】
次いで、前記ポリアミック酸は、脱水反応によりポリイミドに転換され得、前記ポリイミドはイミド繰り返し単位を含む。
【0055】
前記ポリイミドは、下記化学式Aで表される繰り返し単位を形成し得る。
【0056】
[化A]
前記化学式Aにおいて、E、G、およびeに関する説明は、前述の通りである。
【0057】
例えば、前記ポリイミドは、下記化学式A-1で表される繰り返し単位を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0058】
[化A-1]
前記化学式A-1のnは1~400の整数である。
【0059】
前記ジカルボニル化合物は特に制限されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
【0060】
【0061】
前記化学式3において、
Jは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0062】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
【0063】
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記化学式3の(J)jは、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0065】
【0066】
具体的に、前記化学式3の(J)jは、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0067】
【0068】
より具体的に、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、または3-3bで表される基であり得る。
【0069】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)jが前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0070】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0071】
例えば、前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または第2ジカルボニル化合物を含み得る。
【0072】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。
【0073】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに異なる化合物であり得る。
【0074】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0075】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物がそれぞれ芳香族ジカルボニル化合物である場合、ベンゼン環を含んでいるので、製造されたポリアミドイミド樹脂を含むフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性を向上させるために寄与し得る。
【0076】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0077】
【0078】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物はBPDCを含み得、前記第2ジカルボニル化合物はTPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0079】
具体的に、前記第1ジカルボニル化合物としてBPDCを、前記第2ジカルボニル化合物としてTPCを、適切に組み合わせて使用すると、製造されたポリアミドイミド樹脂を含むフィルムは、高い耐酸化性を有し得る。
【0080】
または、前記第1ジカルボニル化合物はIPCを含み得、前記第2ジカルボニル化合物はTPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0081】
具体的に、前記第1ジカルボニル化合物としてIPCを、前記第2ジカルボニル化合物としてTPCを、適切に組み合わせて使用すると、製造されたポリアミドイミド樹脂を含むフィルムは、高い耐酸化性を有し得るだけでなく、コスト削減をもできて経済的である。
【0082】
前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
【0083】
[化B]
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
【0084】
例えば、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0085】
[化B-1]
前記化学式B-1のxは1~400の整数である。
【0086】
[化B-2]
前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
【0087】
前記フィラーは、硫酸バリウム、シリカ、および炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記ベースフィルムは前記フィラーを含むことにより、表面粗さおよび巻取性を向上させ得ることは無論のこと、フィルム作製時、走行の際に生じるスクラッチの改善効果を向上させ得る。
【0088】
また、前記フィラーの粒径は、0.01μm以上~1.0μm未満であり得る。例えば、前記フィラーの粒径は、0.05μm~0.9μmまたは0.1μm~0.8μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0089】
前記ベースフィルムは、前記ベースフィルムの総重量を基準に、前記フィラーを0.01重量%~3重量%の量で含み得る。例えば、前記ベースフィルムは、前記ベースフィルムの総重量を基準に、前記フィラーを0.05重量%~2.5重量%、0.1重量%~2重量%、または0.2重量%~1.7重量%の量で含み得るが、これに限定されるものではない。
【0090】
一実現例によると、前記Sz1は0.01μm~4μmであり、前記Sz2は0.01μm~5μmである。
【0091】
具体的に、前記Sz1は、0.01μm~3μm、0.05μm~3μmまたは0.1μm~3μmであり得るが、これに限定されるものではない。また、前記Sz2は、0.01μm~4μm、0.05μm~4μmまたは0.1μm~4μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0092】
例えば、前記Sz1が0.05μm~3μmであり、前記Sz2が0.05μm~4μmであり得る。または、前記Sz1が0.1μm~3μmであり、前記Sz2が0.1μm~4μmであり得る。
【0093】
前記第2面は、前記ベースフィルムが製造される過程において、ポリイミド系樹脂をキャスティングするための注型体30と直接接触しない面であり得る。すなわち、前記第2面は、前記ポリイミド系樹脂がキャスティングされるとき、空気と接するエアー面であり得る。
【0094】
これとは異なり、前記第2面は、前記ベースフィルムが製造される過程において、前記注型体30と直接接触する面であり得る。すなわち、前記第2面は、前記ポリイミド系樹脂がキャスティングされるとき、前記注型体、例えば、ベルトなどに接するベルト面であり得る。
【0095】
一実現例によるベースフィルムは、無色透明でありながらも、ヘイズ、黄色度、およびモジュラスのような機械的物性および光学的物性を向上させ得る。
【0096】
一実現例によると、前記ベースフィルムのヘイズは3%以下であり得る。例えば、前記ヘイズは、2%以下、1.5%以下または1%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0097】
一実現例によると、前記ベースフィルムの黄色度(yellow index、YI)は5以下であり得る。例えば、前記黄色度が、4以下、3.8以下、2.8以下、2.5以下、2.3以下、または2.1以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0098】
一実現例によると、前記ベースフィルムのモジュラスは5GPa以上であり得る。例えば、前記モジュラスは、5.2GPa以上、5.5GPa以上、6.0GPa以上、10GPa以下、5GPa~10GPaまたは7GPa~10GPaであり得るが、これに限定されるものではない。
【0099】
一実現例によると、前記ベースフィルムの透過度は80%以上であり得る。例えば、前記透過度は、85%以上、88%以上、89%以上、80%~99%、または85%~99%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0100】
前記ベースフィルムは、前記フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを使用して、10mm/minの速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下である。具体的に、前記穿孔最大径が、5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0101】
前記ベースフィルムの圧縮強度は、0.4kgf/μm以上である。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0102】
前記ベースフィルムは、表面硬度がHB以上である。具体的に、前記表面硬度がH以上または2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0103】
前記ベースフィルムは、引張強度が15kgf/mm2以上である。具体的に、前記引張強度が、18kgf/mm2以上、20kgf/mm2以上、21kgf/mm2以上、または22kgf/mm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0104】
前記ベースフィルムは、伸び率が15%以上である。具体的に、前記伸び率が、16%以上、17%以上、または17.5%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0105】
一実現例によるベースフィルムは、高い耐酸化性を有し、高い光透過率、低いヘイズおよび低い黄色度(YI)などの優れた光学的物性を確保することができる。さらには、モジュラス、伸び率、引張特性および弾性復元力の点から柔軟性が求められる基材に対して、長期的に安定した機械的物性を実現することができる。
【0106】
<ベースフィルム110の製造方法>
図3は、一実現例に係るベースフィルムの製造方法の概略的な手順を示すフロー図である。
【0107】
図3を参照すると、前記ベースフィルムの製造方法は、重合設備内において、有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合および反応させて重合体溶液を調製する段階(S100)と、前記重合体溶液をタンクに移動させる段階(S200)と、不活性ガスによりパージする段階(S300)と、前記タンク内の重合体溶液をベルト上にキャスティングした後、乾燥させて、ゲルシートを製造する段階(S400)と、前記ゲルシートを移動させながら熱処理して硬化フィルムを製造する段階(S500)と、前記硬化フィルムを移動させながら冷却させる段階(S600)と、前記冷却された硬化フィルムをワインダー(winder)により巻き取る段階(S700)と、を含む。
【0108】
前記ベースフィルム110の製造方法において、前記重合体溶液は、重合設備内で有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合および反応させて調製される(S100)。
【0109】
一実現例によると、前記重合体溶液は、有機溶媒中に前記ジアミン化合物、前記ジアンヒドリド化合物および前記ジカルボニル化合物を同時に投入して反応させることにより調製され得る。
【0110】
他の実現例によると、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させて、ポリアミック酸(Polyamic acid、PAA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸(PAA)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させて、アミド結合およびイミド結合を同時に形成する段階と、を含み得る。前記ポリアミック酸溶液はポリアミック酸を含む溶液である。
【0111】
また他の実現例によると、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させて、ポリアミック酸溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸溶液を脱水させて、ポリイミド(Polyimide、PI)溶液を調製する段階と、前記ポリイミド(PI)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させて、アミド結合を追加形成する段階と、を含み得る。前記ポリイミド溶液はイミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0112】
他の実現例によると、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを1次混合および反応させて、ポリアミド(Polyamide、PA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミド(PA)溶液に前記ジアンヒドリド化合物を2次混合および反応させて、イミド結合を追加形成する段階と、を含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0113】
このように調製された前記重合体溶液は、ポリアミック酸(PAA)繰り返し単位、ポリアミド(PA)繰り返し単位、およびポリイミド(PI)繰り返し単位からなる群より選択された1種以上を含む重合体が含有されている溶液であり得る。
【0114】
または、前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位と、を含む。
【0115】
一実現例によると、前記重合体溶液を調製する段階は、触媒を投入する段階をさらに含み得る。
【0116】
前記触媒は、例えば、β-ピコリンおよび/または無水酢酸を含み得るが、これに限定されるものではない。前記触媒を投入すると、反応速度を向上させ得、繰り返し単位構造間または繰り返し単位構造内の化学的結合力を向上させ得る。
【0117】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液の粘度を調節する段階をさらに含み得る。
【0118】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、(a)有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、およびジカルボニル化合物を同時または順次混合および反応させて第1重合体溶液を調製する段階と、(b)前記第1重合体溶液の粘度を測定して、目標粘度に到達するか否かを評価する段階と、(c)前記第1重合体溶液の粘度が目標粘度に達しない場合、前記ジカルボニル化合物を追加投入して、目標粘度を有する第2重合体溶液を調製する段階と、を含み得る。
【0119】
前記目標粘度は、常温にて10万cps~50万cpsであり得る。具体的に、前記目標粘度は、常温にて10万cps~40万cps、10万cps~35万cps、10万cps~30万cps、15万cps~30万cps、または15万cps~25万cpsであり得るが、これに限定されるものではない。
【0120】
他の実現例において、前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は、10重量%~20重量%であり得る。具体的に、前記第2重合体溶液に含まれている固形分の含有量は、12重量%~18重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0121】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において効率的にベースフィルムが製造され得る。また、製造されたベースフィルムは、向上されたモジュラスなどの機械的物性および低い黄色度などの光学的物性を有し得る。
【0122】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調節する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7または4.5~7に調節され得るが、これに限定されるものではない。
【0123】
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することによって調節され得る。前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミン、アルカノールアミン等のアミン系化合物を含み得る。
【0124】
前記重合体溶液のpHを前述の範囲に調節することにより、後続する工程において機器の損傷を防止することができ、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面から目的とする光学的物性および機械的物性を実現し得る。
【0125】
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得るが、これに限定されるものではない。
【0126】
前記重合体溶液を調製する段階は、不活性ガスによりパージする段階をさらに含み得る。前記不活性ガスパージ段階により水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの優れた表面外観および機械的物性などを実現することができる。
【0127】
この際、前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これらに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0128】
前記重合体溶液を調製するために使用されるポリイミド系樹脂は、イミド繰り返し単位:アミド繰り返し単位のモル比が20:80~80:20であり得、例えば、20:80~50:50であり得る。この際、前記イミド繰り返し単位は、前述の化学式Aで表される繰り返し単位であり得、前記アミド繰り返し単位は、前述の化学式Bで表される繰り返し単位であり得る。
【0129】
前記ポリイミド系樹脂のモル比が前記範囲を満足すると、これを調製するための前述したモノマーを用いて前記重合体溶液の粘度を調整することが容易であり、これにより前記ゲルシートと硬化フィルムが、表面に欠陥のない均一なフィルムを製造するのが容易である。
【0130】
前記イミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位の含有量を適切に調節することにより、複雑なプロセスがなくても光学的特性、機械的物性、および柔軟性がバランスよく改善されたポリイミド系フィルムを得ることができる。また、従来のように、沈殿、ろ過および乾燥、再溶解などの過程を経なくても、光学的特性、機械的特性、および柔軟性がバランスよく改善されたポリイミド系フィルムを得ることができる。前記イミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位のそれぞれの含有量は、前記芳香族ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物の投入量により調節され得る。
【0131】
図4は、一実現例に係るベースフィルムの工程設備を概略的に示したものである。
【0132】
具体的に、前述の前記重合体溶液は重合設備10において調製され、このように調製された前記重合体溶液は、タンク20に移動し、保管される(S200)。この際、前記重合体溶液の調製後、別途の工程なく前記重合体溶液をタンクに移動する段階を行う。
【0133】
前記重合設備において調製された重合体溶液は、不純物を除去するための別途の沈殿および再溶解の過程なく、そのまま前記タンクに移動して保管される。従来は、前記重合体溶液の調製過程で生成される塩酸(HCl)などの不純物を除去するために、調製された重合体溶液を別の工程により精製して不純物を除去し、これを溶媒に再溶解させる工程を行っていた。ただし、この場合は、不純物を除去する過程で有効成分の損失が大きくなり、その結果、収率が低下する問題があった。
【0134】
そこで、一実現例による前記調製方法は、前記重合体溶液の調製過程において根本的に不純物の含有量を最小化するか、所定の不純物が存在しても、後続の工程においてこれらを適切に制御して、最終フィルムの物性を低下させないようにすることにより、別の沈殿または再溶解過程なくフィルムを製造する利点を有する。また、前記重合体溶液を別途沈殿、ろ過、乾燥および再溶解する過程を省略することができ、重合過程で生成された溶液をそのままキャスティング工程に適用するので、収率を著しく向上させ得る。
【0135】
前記タンク20は、前記重合体溶液をフィルム化する前にこれを保管する場所であり、その内部温度が-20℃~20℃であり得る。
【0136】
具体的に、前記内部温度は-20℃~15℃、-20℃~10℃、-20℃~5℃または-20℃~0℃であり得るが、これに限定されるものではない。
【0137】
前記タンク20の温度を前記範囲に調節することにより、前記重合体溶液が保管中に変質されるのを防止することができ、含水率を低下させ、これから製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止することができる。
【0138】
前記ベースフィルムの製造方法は、前記タンク20に移動された前記重合体溶液に真空脱泡を行う段階をさらに含み得る。
【0139】
前記真空脱泡は、前記タンクの内部圧力を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間の間に行われ得る。このような条件で真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内部の気泡を低減させることができ、その結果、それから製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学的物性が実現できる。
【0140】
また、前記ポリイミド系フィルムの製造方法は、前記タンク20に移動された前記重合体溶液に、不活性ガスを用いてパージ(purging)する段階をさらに含み得る(S300)。
【0141】
具体的に、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧にパージする方法により行われる。このような条件で窒素パージを実施することによって、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの光学的物性と機械的物性などを優秀に実現できる。
【0142】
前記真空脱泡する段階と、前記タンクを窒素ガスでパージする段階とは、別途の工程により行われる。
【0143】
例えば、前記真空脱泡する段階が行われ、その後、前記タンクを窒素ガスによりパージする段階が行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0144】
前記真空脱泡する段階および/または前記タンクを窒素ガスでパージする段階を行うことにより、製造されたポリイミド系フィルム表面の物性が向上され得る。
【0145】
以降、前記重合体溶液をタンク20内で12時間~360時間保管する段階をさらに含み得る。この際、タンクの内部温度は-20℃~20℃に維持され得る。
【0146】
前記ベースフィルムの製造方法は、前記タンク20内の重合体溶液をキャスティングした後、乾燥させて、ゲルシートを製造する段階をさらに含む(S400)。
【0147】
前記重合体溶液は、キャスティングロール(roll)またはキャスティングベルト(belt)のような注型体にキャスティングされ得る。
【0148】
図4を参照すると、一実現例において、前記重合体溶液は、注型体30としてのキャスティングベルト上に塗布され、移動しながら乾燥され、ゲル状のシートに製造され得る。
【0149】
前記重合体溶液が、前記ベルト30上に注入されるとき、その注入量は300g/min~700g/minであり得る。前記重合体溶液の注入量が前記範囲を満足することにより、前記ゲルシートが適切な厚さで均一に形成され得る。
【0150】
また、前記重合体溶液のキャスティング厚さは200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液がこのような厚さ範囲にキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一性とを確保することができる。
【0151】
前記重合体溶液をキャスティングした後、60℃~150℃の温度で、5分~60分間乾燥させてゲルシートを製造し得る。前記乾燥中に前記重合体溶液の溶媒が、一部または全部揮発され前記ゲルシートが製造される。
【0152】
前記重合体溶液の粘度は、前述したように、常温にて10万cps~50万cpsであり得、例えば10万cps~40万cpsであり得、例えば10万cps~35万cpsであり得、例えば15万cps~35万cpsであり得る。このような粘度範囲を満足することにより、前記重合体溶液がベルト上にキャスティングされる際、欠陥なく均一な厚さにキャスティングされ得る。
【0153】
前記ベースフィルムの製造方法は、前記ゲルシートを移動させながら熱処理して、硬化フィルムを製造する段階を含む(S500)。
【0154】
図4を参照すると、前記ゲルシートの熱処理は、熱硬化装置40を通過することにより行われ得る。
【0155】
前記ゲルシートの熱処理は、80℃~500℃の範囲で2℃/min~80℃/minの速度で昇温させながら、5分~40分間行われ得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~470℃の温度範囲内で10℃/min~80℃/minの速度で昇温させながら、5分~30分間行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0156】
この際、前記ゲルシートの熱処理開始温度は80℃以上であり得、熱処理中の最高温度は300℃~500℃であり得る。例えば、前記熱処理中の最高温度は350℃~500℃、380℃~500℃、400℃~500℃、410℃~480℃、410℃~470℃、または410℃~450℃であり得る。
【0157】
すなわち、
図4を参照すると、前記熱硬化装置40の入口温度が熱処理開始温度であり得、前記熱硬化装置40内部の所定の領域の温度が熱処理中の最高温度であり得る。
【0158】
このような条件で熱処理することにより、前記ゲルシートが適切な表面硬度とモジュラスを有するように硬化され得、前記硬化フィルムが高い光透過率および低いヘイズを同時に確保することができる。
【0159】
前記ベースフィルムの製造方法は、前記硬化フィルムを移動させながら冷却させる段階を含む(S600)。
【0160】
図4を参照すると、前記硬化フィルムは、前記熱硬化装置40を通過した後に行われ、別途の冷却チャンバー(図示せず)を用いて行われても良く、別途の冷却チャンバーなしに、適切な温度雰囲気を造成して行われても良い。
【0161】
前記硬化フィルムを移動させながら冷却させる段階は、100℃/min~1000℃/minの速度で減温させる第1減温段階と、40℃/min~400℃/minの速度で減温させる第2減温段階と、を含み得る。
【0162】
この際、具体的に、前記第1減温段階の後、前記第2減温段階が行われ、前記第1減温段階の減温速度は、前記第2減温段階の減温速度よりも速くて良い。
【0163】
例えば、前記第1減温段階中の最大速度が、前記第2減温段階中の最大速度よりも速い。または、前記第1減温段階中の最低速度が、前記第2減温段階中の最低速度よりも速い。
【0164】
前記硬化フィルムの冷却段階がこのように多段階で行われることにより、前記硬化フィルムの物性をより安定化させることができ、前記硬化過程において確立されたフィルムの光学的物性および機械的物性をより安定して長期間維持させ得る。
【0165】
前記ゲルシートおよび前記硬化フィルムの移動速度は同一である。
【0166】
前記ベースフィルムの製造方法は、前記冷却された硬化フィルムをワインダー(winder)により巻き取る段階を含む(S700)。
【0167】
図4を参照すると、前記冷却された硬化フィルムの巻取りは、ロール状のワインダー50を用いられる。
【0168】
この際、前記乾燥時のベルト上におけるゲルシートの移動速度:巻取り時の硬化フィルムの移動速度の比は、1:0.95~1:1.40である。具体的に、前記移動速度の比は、1:0.99~1:1.20、1:0.99~1:1.10、1:1.01~1:1.10、または1:1.05~1:1.10であり得るが、これに限定されるものではない。
【0169】
前記移動速度の比が前記範囲を外れると、前記硬化フィルムの機械的物性が損なわれるおそれがあり、柔軟性および弾性特性が低下するおそれがある。
【0170】
具体的に、前記乾燥時のベルト上におけるゲルシートの移動速度は、0.1m/分~15m/分であり得、例えば、0.5m/分~10m/分であり得る。
【0171】
前記ベースフィルムの製造方法において、下記一般式1による厚さ偏差(%)は3%~30%であり得、例えば、5%~20%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0172】
[一般式1]
厚さ偏差(%)=(M1-M2)/M2×100
【0173】
前記一般式1において、M1は前記ゲルシートの厚さ(μm)であり、M2は巻取りの際に冷却された硬化フィルムの厚さ(μm)である。
【0174】
前述の前記ベースフィルムの物性は、40μm~60μmの厚さを基準とする。例えば、前記ベースフィルムの物性は、50μmの厚さを基準とする。
【0175】
前記ベースフィルムは、前述の製造方法により製造されることによって、光学的、機械的に優れた物性を示し得る。このような前記ベースフィルムは、柔軟性と透明性とが求められる様々な用途に適用可能である。例えば、前記ベースフィルムは、太陽電池、ディスプレイ、半導体素子、センサーなどに適用され得る。
【0176】
<機能層120>
前記機能層120は、有機樹脂、無機フィラー、およびその他の添加剤を含み得る。
【0177】
前記有機樹脂は硬化性樹脂であり得る。前記有機樹脂はバインダー樹脂であり得る。前記有機樹脂は、アクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、およびエポキシアクリレート系オリゴマーからなる基より選択された1種以上であり得る。
【0178】
前記アクリレート系モノマーは、置換または非置換のアクリレートおよび置換または非置換のメタクリレートからなる基より選択された1種以上であり得る。
【0179】
前記アクリレート系モノマーは、1~10官能基を含み得る。前記ウレタンアクリレート系オリゴマーは、2~15官能基を含み得る。前記エポキシアクリレート系オリゴマーは、1~10官能基を含み得る。
【0180】
前記アクリレート系モノマーの例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシトリアクリレート(GPTA)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETA)、またはジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられる。
【0181】
前記ウレタンアクリレート系オリゴマーの例としては、重量平均分子量1400~25000の2官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量1700~16000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量1000の4官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量818~2600の6官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量3500~5500の9官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量3200~3900の10官能ウレタンアクリレートオリゴマー、または重量平均分子量2300~20000の15官能ウレタンアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0182】
前記エポキシアクリレート系オリゴマーの例としては、重量平均分子量100~300の1官能エポキシアクリレートオリゴマー、重量平均分子量250~2000の2官能エポキシアクリレートオリゴマー、または重量平均分子量1000~3000の4官能エポキシアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0183】
前記アクリレート系モノマーの重量平均分子量(Mw)は、約200g/mol~約2000g/mol、約200g/mol~約1000g/mol、または約200g/mol~約500g/molの範囲であり得る。
【0184】
前記アクリレート系モノマーのアクリレート当量(equivalent weight)は、約50g/eq~約300g/eq、約50g/eq~約200g/eq、または約50g/eq~約150g/eqの範囲であり得る。
【0185】
前記エポキシアクリレートオリゴマーのエポキシ当量は、約50g/eq~約300g/eq、約50g/eq~約200g/eq、または約50g/eq~約150g/eqの範囲であり得る。
【0186】
前記有機樹脂の含有量は、前記機能層の総重量を基準に30wt%~100wt%であり得る。具体的に、前記有機樹脂の含有量は、前記機能層の総重量を基準に40wt%~90wt%、または50wt%~80wt%であり得る。
【0187】
前記無機フィラーの例としては、シリカ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、またはアルミナなどが挙げられる。
【0188】
前記無機フィラーの粒径は、1nm~100nmであり得る。具体的に、前記無機フィラーの粒径は、5nm~50nmまたは10nm~30nmであり得る。
【0189】
前記無機フィラーは、互いに異なる粒径の分布を有する無機フィラーを含み得る。例えば、前記無機フィラーは、d50が20nm~35nmである第1無機フィラーおよびd50が40nm~130nmである第2無機フィラーを含み得る。
【0190】
前記無機フィラーの含有量は、前記機能層の総重量を基準に、約25wt%以上、約30wt%以上、または約35wt%以上であり得る。また、前記無機フィラーの含有量は、前記機能層の総重量を基準に、約50wt%以下、約45wt%以下、または約40wt%以下であり得る。
【0191】
前記無機フィラーは表面処理され得る。前記無機フィラーは、シランカップリング剤等で表面処理され得る。前記シランカップリング剤の例としては、(メタ)アクリルシラン((meth)acrylsilane)、メタクロキシシラン(methacroxysilane)、ビニールシラン(vinylsilane)、エポキシシラン(epoxysilane)、またはメルカプトシラン(mercaptosilane)などが挙げられる。
【0192】
前記機能層は、光開始剤をさらに含み得る。
前記光開始剤の例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、ジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、現在市販の商品として、Irgacure 184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur 1173、Darocur MBF、Irgacure 819、Darocur TPO、Irgacure 907、Esacure KIP 100Fなどが挙げられる。前記光開始剤は、単独で、または互いに異なる2種以上を混合して使用し得る。
【0193】
前記機能層は、界面活性剤、UV吸収剤、UV安定剤、黄変防止剤、レベリング剤、防汚剤、または色相値改善のための染料などを、その他の添加剤として含み得る。また、前記添加剤の含有量は、前記機能層の物性を低下させない範囲内で多様に調節され得る。例えば、前記添加剤の含有量は、前記機能層を基準に、約0.01wt%~約10wt%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0194】
前記界面活性剤は、1~2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤、またはシリコン系界面活性剤であり得る。前記界面活性剤は、前記機能層内に分散または架橋されている形態で含まれ得る。
【0195】
前記UV吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、またはトリアジン系化合物などが挙げられ、前記UV安定剤としては、テトラメチルピペリジン(tetramethyl piperidine)などが挙げられる。
【0196】
前記機能層を形成するために、コーティング組成物が調製され得る。前記コーティング組成物は、前記有機樹脂、前記無機フィラー、前記添加剤、および有機溶媒を含む。
【0197】
前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒;などを単独でまたは混合して使用し得る。
【0198】
前記有機溶媒の含有量は、コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節できるので特に制限はないが、前記コーティング組成物に含まれる成分のうち固形分に対して、固形分:有機溶媒の重量比が約30:70~約99:1となるように含み得る。前記有機溶媒が前記範囲にあるとき、適切な流動性および塗布性を有し得る。
【0199】
前記機能層が調製される過程において、前記有機溶媒が使用されるため、前記機能層には前記有機溶媒が微量で残り得る。
【0200】
前記コーティング組成物は、前記ベースフィルムの前面または裏面に塗布され得る。前記コーティング組成物は、バーコート方式、ナイフコート方式、ロールコート方式、ブレードコート方式、ダイコート方式、マイクログラビアコート方式、コンマコート方式、スロットダイコート方式、リップコート方式、またはソリューションキャスティング(solution casting)方式などを利用し得る。
【0201】
以降、前記コーティング組成物に含まれている有機溶媒が除去され得る。前記有機溶媒は、蒸発によって除去され得る。
【0202】
その後、前記コーティング組成物の層は、光および/または熱によって硬化され得る。
【0203】
前記機能層は、完全に硬化した後、厚さが約2μm以上、または約3μm以上、例えば、約2μm~約20μm、約2μm~約15μm、約2μm~約10μm、約3μm~約10μmの厚さを有し得る。
【0204】
前記ベースフィルムおよび前記機能層の間に追加層がさらに配置され得る。前記追加層は帯電防止層で、帯電防止機能を果たすか、低屈折率層で、低反射(low reflection)機能を果たし得る。これとは異なり、前記機能層自体が帯電防止機能および/または低反射機能を果たすこともできる。
【0205】
<ポリイミド系複合フィルムの物性>
実現例によるポリイミド系複合フィルムは、下記数式1で表示されるレベリング指数が0.75未満である。
【0206】
【0207】
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。
【0208】
一実現例において、前記Sz2が0.01μm~5μmであり、前記Sz1が0.01μm~4μmであり得る。
【0209】
一実現例において、前記Sz2が0.05μm~4μmであり、前記Sz1が0.05μm~3μmであり得る。
【0210】
一実現例において、前記Sz2が0.1μm~4μmであり、前記Sz1が0.1μm~3μmであり得る。
【0211】
一実現例において、前記レベリング指数が0.11~0.7であり得る。
一実現例において、前記レベリング指数は0.7未満であり得る。
一実現例において、前記レベリング指数は0.65未満であり得る。
他の実現例において、前記レベリング指数は0.53以上であり得る。
【0212】
前記ポリイミド系複合フィルムが前記のようなレベリング指数を有すると、前記機能層は、延伸される過程でクラックが生じ得る欠陥を減少させ得る。
【0213】
一実現例において、前記機能層の厚さは、2μm~10μmであり、下記数式2で表示されるFTが0.7未満である。
【0214】
【0215】
ここで、前記Thは、前記機能層の厚さ(μm)である。
具体的に、前記数式2で表示されるFTが0.6未満、0.55未満、または0.13~0.6、または0.14~0.6であり得るが、これに限定されるものではない。
【0216】
また、前記ポリイミド系複合フィルムが前記のようなFTを有すると、前記機能層が延伸される過程でクラックが生じ得る欠陥を減少させ得る。
【0217】
一実現例において、前記機能層の伸び率は2%以上であり得る。具体的に、前記機能層の伸び率は、2.5%以上、3%以上、2%~20%、または2.5%~15%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0218】
一実現例において、下記数式3で表示される表面極性指数(SP)が1/40以上であり得る。
【0219】
【0220】
ここで、前記A1は前記第1面の接触角であり、前記A2は前記第2面の接触角である。
【0221】
具体的に、前記数式3で表示される表面極性指数(SP)が0.08以上、0.09~0.25または0.1~0.2であり得るが、これに限定されるものではない。
【0222】
また、前記ポリイミド系複合フィルムは、前記のような表面極性指数を有すると、前記機能層は前記欠陥を減少させ得る。
【0223】
一実現例において、前記ポリイミド系複合フィルムのヘイズが3%以下であり、黄色度(yellow index、YI)が5以下であり、モジュラスが5GPa以上であり、透過度が80%以上であり得る。
【0224】
図5に示すように、前記第2面102が第2突起111を含む場合、前記第2突起111に対応するように、前記第1面101が第1突起121を含み得る。これにより、前記機能層120は、厚さが極めて薄い欠陥を減少させ得る。
【0225】
また、前記のようなレベリング指数を有すると、前記機能層は水平方向に引張力に対して高い抵抗を有し得る。例えば、前記機能層は、前記第2突起に対応するように前記第1突起を有し得る。これにより、前記機能層は、水平方向に断面を見たとき、ジグザグ形状を有し得る。これにより、前記機能層は、水平方向に向上された水平方向の変形に対して、高い機械的強度を有し得る。
【0226】
実現例によるポリイミド系複合フィルムは、前記のようなレベリング指数を満足することにより、前記第1面の粗さと前記第2面の粗さとが適切な範囲を有し得る。これにより、前記機能層は向上された機械的強度を有し得る。具体的に、前記機能層の伸び率は約2%以上であり得る。
【0227】
実現例によるポリイミド系複合フィルムは、向上された機械的物性および光学的物性を有し得る。
【0228】
<ディスプレイ装置>
一実現例によるディスプレイ装置は、ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネル上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウがベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含む。
【0229】
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とすると、前記数式1で表示されるレベリング指数が0.75未満である。
なお、ベースフィルム、機能層等に関する説明は、前述の通りである。
【0230】
図2は、一実現例に係るディスプレイ装置の断面図を示したものである。具体的に、
図2には、ディスプレイパネル300および前記ディスプレイパネル300上にカバーウィンドウ100が配置され、前記カバーウィンドウ100がベースフィルム110および機能層120を含み、前記ディスプレイパネル300と前記カバーウィンドウ100との間に接着層200が配置されたディスプレイ装置400の断面図が例示されている。前記機能層120は、前記ベースフィルム110を基準に視認側に配置される。
【0231】
前記ディスプレイパネル300は、映像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)特性を有し得る。
【0232】
前記ディスプレイパネル300は、映像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。具体的に、前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0233】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、映像が表示される面に接着され得る。
【0234】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自己発光により映像を表示する。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などの駆動信号を印加できるように結合されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動することができる。
【0235】
一実現例によると、前記ディスプレイパネル300と前記カバーウィンドウ100との間に接着層200が含まれ得る。前記接着層200は光学的に透明な接着層であり得、特に限定されない。
【0236】
前記カバーウィンドウ100は、前記ディスプレイ部300上に配置される。前記カバーウィンドウ100は、実現例に係るディスプレイ装置の最外郭に位置して、前記ディスプレイ部300を保護し得る。
【0237】
前記カバーウィンドウ100は、前記ベースフィルム110および前記機能層120を含み得る。前記機能層120は、ハードコート層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層120は、前記ベースフィルム110の少なくとも一面にコーティングされ得る。
【0238】
前記の内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。但し、下記実施例は、発明を例示するためのものであるのみ、実施例の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【0239】
(実施例)
(実施例1)
温度調節が可能な二重ジャケットの1000L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下において有機溶媒のジメチルアセトアミド(DMAc)250kgを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFDB)32.02kgを徐々に投入しながら溶解させた。
【0240】
次いで、芳香族ジアンヒドリドの2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)13.3kgを徐々に投入しながら1時間撹拌した。
また、フィラーとして硫酸バリウムを700g投入した後、1時間撹拌した。
【0241】
そして、第1ジカルボニル化合物として1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(BPDC)12.56kgを投入して1時間撹拌させ、第2ジカルボニル化合物としてテレフタロイルクロリド(TPC)を、投入モル対比94%である4.77kgを投入してから1時間撹拌して、第1重合体溶液を調製した。
【0242】
調製された第1重合体溶液の粘度を測定して、測定した粘度が目標とする粘度に達していない場合は、200000cpsの粘度になるまで、DMAc有機溶媒に10重量%のTPC溶液を調製して1mL添加した後、30分間撹拌する過程を繰り返して、第2重合体溶液を調製した。
【0243】
前記第2重合体溶液を-10℃のタンクに移動させて保管し、タンク内の圧力が0.3barになるように1.5時間脱泡した後、窒素ガスによりタンクの内部圧力を1.5気圧にパージした。パージした後、前記第2重合体溶液をタンク内で30時間保管した。
【0244】
次いで、前記第2重合体溶液をステンレススチールベルトにキャスティングした後、80℃の熱風により30分乾燥させてゲルシートを製造した。続いて、ゲルシートを移動させながら、80℃から350℃までの範囲で2℃/min~80℃/minの速度で昇温させ、最高温度にて約25分間熱処理し、その後約800℃/minの速度で第1段階減温させた後、約100℃/minの速度で第2段階減温させてベースフィルムを得ており、これをワインダーにより巻き取った。この際、乾燥時のベルト上におけるゲルシートの移動速度は1m/sであり、前記乾燥時のベルト上におけるゲルシートの移動速度:巻取り時のフィルム移動速度の比が1:1.01~1:1.10の範囲になるようにワインダーの速度を調節した。
【0245】
このように製造されたポリイミド系フィルムの一面にハードコート層が形成される。前記ハードコート層を形成するために、多官能アクリレート(M600、MIWON Specialty Chemical社)12重量部、ウレタンアクリレート(PU2050、MIWON Specialty Chemical社)20重量部、ナノシリカゾル(平均粒径12nm)8重量部、メチルイソブチルケトン60重量部、光開始剤(Irgacure 184、BASF社)0.8重量部、およびレベリング剤(601ADH2、ネオス社)0.2重量部を撹拌機で配合してハードコート形成用組成物を調製した。その後、スロットダイコート工程により、前記混合されたコーティング組成物を、前記ポリイミド系フィルムの一面に約5μmの厚さでコーティングした。その後、前記コーティングされた組成物は、約90℃にて約2分間乾燥され、600mJ/cm2のUVにより硬化された。これにより、ポリイミド系フィルムおよびハードコート層を含むポリイミド系複合フィルムを製造した。
【0246】
(実現例2、実現例3、比較例1および比較例2)
下記表1に示すように、それぞれの反応物の含有量、フィラーの含有量、フィラーの粒径、熱処理の最高温度、および熱処理時間を異にしたことを除いて、実施例1と同様に実験した。また、ハードコート層の形成に関して、表2に示すように、それぞれの多官能アクリレート、ウレタンアクリレート、ナノシリカゾル、およびレベリング剤(KY1203信越化学工業社またはDAC-HPダイキン工業社)の含有量を異にしたことを除いて、実施例1と同様に実験した。
【0247】
【0248】
【0249】
(評価例)
前記実施例1~3、比較例1および2で製造されたフィルムについて、下記のような物性を測定および評価した。
【0250】
<評価例1:接触角の測定>
携帯式接触角計(MSA:Mobile Surface Analyzer、ドイツKruess社)を用いて、ドイツ工業規格(DIN55660)に基づいて測定した。
【0251】
具体的に、前記ポリイミド系フィルムの製造後、ハードコート層と接する一面(第2面)の接触角を測定し、ハードコート層を形成した後、前記ポリイミド系フィルムと接する面の反対側に位置するハードコート層の一面(第1面)の接触角を測定した。
【0252】
<評価例2:表面極性指数の計算>
下記数式3に基づいて、表面極性指数を計算した。
【0253】
[数3]
ここで、前記A1は前記第1面の接触角であり、前記A2は前記第2面の接触角である。
【0254】
<評価例3:表面粗さの測定>
前記表面粗さは、ブリューカー(BRUKER)社の3D光学プロファイラー(Optical Profiler Contour GT)を用いて測定した。実施例および比較例の任意の3点の位置において、表面のSz粗さが測定されており、各数値は平均値を示した。
【0255】
各位置において、220μm×220μmの領域で前記3D光学プロファイラーによって画像を撮影し、これを基にSz粗さを測定した。粗さ測定の際、SzはISO 25178-2:2012に準じて定義される値である。Szは最大高さ(maximum height)であり、最大ピーク高(maximum peak height、Sp)、および最大谷深さ(maximum pit height、Sv)の合計である。
【0256】
具体的に、前記ポリイミド系フィルムの製造後、ハードコート層と接する一面(第2面)の表面粗さを測定しており、ハードコート層を形成した後、前記ポリイミド系フィルムと接する面の反対側に位置するハードコート層の一面(第1面)の表面粗さを測定した。
【0257】
<評価例4:レベリング指数の計算>
下記数式1に基づいてレベリング指数を計算した。
【0258】
[数1]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。
前記評価例1~4の結果を下記表3に示す。
【0259】
【0260】
前記表3に示すように、実施例1~3により製造された複合フィルムは、比較例1および2により製造された複合フィルムに比べて、適切なレベリング指数および表面極性指数を有することが確認できた。
【0261】
<評価例5:ヘイズ測定>
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、ヘイズを測定した。
【0262】
<評価例6:モジュラスの測定>
インストロン社の万能試験機UTM 5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交する方向に5cm以上および主収縮方向に10mmに切り、5cm間隔のクリップに装着した後、常温にて5mm/minの速度で延ばしながら破断が起きるまでの応力-ひずみ曲線を得た。前記応力-ひずみ曲線において、初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
【0263】
<評価例7:黄色度(YI)の測定>
黄色度(Yellow Index、YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)により、CIE表色系を用いて測定した。
【0264】
<評価例8:透過度の測定>
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて550nmにおける光透過度を測定した。
【0265】
<評価例9:ハードコート層の伸び率測定>
韓国Qmersys社のUniversal testing machineを用いて、100mm×10mmサイズに裁断したハードコート済みの透明ポリイミド系複合フィルムを縦方向に引いて、ハードコート層のみの伸び率を測定した。
【0266】
<評価例10:ハードコート層の厚さ測定>
フィルメトリクス(Filmetrics)社の光学厚さ測定装置F20を用いて、複合フィルムのハードコート層の厚さを測定した。
【0267】
<評価例11:FT計算>
下記数式2に基づいてFTを計算した。
【0268】
[数2]
ここで、前記Thは前記機能層の厚さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。
【0269】
<評価例12:光学欠陥テスト>
付着異物および取扱性スクラッチが発生しないように注意して、複合フィルムを暗室検査台に貼り付けた。暗室の灯りを消灯してハロゲンランプによりフィルムの表面を確認した。これにより、光学欠陥が目視で確認される場合は×と評価し、光学欠陥が目視で確認されない場合は○と評価した。
前記評価例5~12の結果を下記表4に示した。
【0270】
【0271】
前記表4に示すように、実施例1~3により製造されたフィルムは、比較例1および2により製造されたフィルムに比べて、ハードコート層が高い伸び率を有し、適切なFT値を示すのみならず、光学欠陥も現れないことが確認できた。
【0272】
<評価例13:フィルムの厚さ測定>
ミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547-401を用いて、幅方向に5ポイント測定して平均値をもって厚さを測定した。
【0273】
<評価例14:接着力テスト>
10cm×10cmの大きさに切断されたポリイミド系複合フィルム2枚を用意した。前記2枚のポリイミド系複合フィルムの第1面および第2面が互いに接触するように重ね、40℃の温度にて20kgの荷重で24時間圧縮した。その後、前記圧縮されたポリイミド系複合フィルムを常温に冷却した後、下部に配置されたフィルムが自重によって分離される場合をOで表示し、分離されない場合をXで表示した。
【0274】
<評価例15:スクラッチテスト>
ロール状のポリイミド系複合フィルムを1mずつ3回取って、目視観察したときに確認される縦方向または横方向のスクラッチが10個未満の場合にOで表示し、10個以上の場合にXで表示した。
前記評価例13~15の結果を下記表5に示した。
【0275】
【0276】
前記表5に示すように、実施例1~3により製造されたフィルムは、比較例1および2により製造されたフィルムに比べて、高いハードコーティング接着力および優れたスクラッチテストの結果を示すことを確認した。
【符号の説明】
【0277】
10:重合設備
20:タンク
30:注型体
40:熱硬化装置
50:ワインダー
100:カバーウィンドウ
101:第1面
102:第2面
110:ベースフィルム
111:第2突起
120:機能層
121:第1突起
200:接着層
300:ディスプレイパネル
400:ディスプレイ装置