(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ベースレンズアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2022062991
(22)【出願日】2022-04-05
(62)【分割の表示】P 2020076331の分割
【原出願日】2015-07-28
【審査請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2014-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313005019
【氏名又は名称】レンスゲン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ブレイディ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シルベストリーニ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、ラムゴパル
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-511245(JP,A)
【文献】特表2011-526822(JP,A)
【文献】特表2009-518146(JP,A)
【文献】特表2009-516570(JP,A)
【文献】特表2010-514507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0078364(US,A1)
【文献】米国特許第4892543(US,A)
【文献】国際公開第2013/166068(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0149183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースレンズアセンブリであって、
ベース光学素子と、
前記
ベース光学素子の周囲に周方向に配置された周方向の触覚システムと
を含み、前記触覚システムは、
患者の眼の水晶体嚢に接触するように構成された外側表面と、
内側表面であって、前記内側表面は前記外側表面に対して半径方向内側に配置されるとともに、前記ベースレンズアセンブリが患者の眼の中に配置された後で眼内レンズを受け入れるように構成された空間を取り囲んでおり、かつ眼内レンズの周縁部に接触するように構成された
前記内側表面と、
前記
ベース光学素子とは反対側に配置された開放端部であって、前記空間へのアクセスを提供する
前記開放端部と、
前記内側表面から半径方向内向きに延びる複数のフランジ
であって、眼内レンズを前記空間に維持するように構成されている
前記複数のフランジと、
前記複数のフランジの後方に配置された複数のレッジであって、前記複数のレッジ及び前記複数のフランジは、それぞれ眼内レンズの対向する表面に係合して、眼内レンズを前記空間に維持するように構成されているとともに、前記複数のレッジのうちの一部は前方に露出している、前記複数のレッジとを含む、ベースレンズアセンブリ。
【請求項2】
前記複数のフランジの位置は前記開放端部から後方にずらされている、請求項1に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項3】
前記眼内レンズは調節性眼内レンズである、請求項1に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項4】
前記複数のレッジのうちの少なくとも一部が、前記複数のフランジの少なくとも一部に対し対向するように配置されている、請求項
3に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項5】
前記複数のレッジのうちの少なくとも一部、前記複数のフランジ、及び前記内側表面が、眼内レンズの周縁部を受け入れるコの字形の空間を形成している、請求項
4に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項6】
前記複数のレッジのうちの少なくとも一部のそれぞれが、眼内レンズに係合するように構成された表面を含み、前記複数のフランジのそれぞれが、眼内レンズに係合するように構成された表面を含み、前記複数のレッジのうちの少なくとも一部のそれぞれの前記表面と、前記複数のフランジのそれぞれの前記表面とは互いに対向するように配置されている、請求項
4に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項7】
前記
ベース光学素子の周縁部から前記触覚システムまで延在する複数のアームをさらに含み、前記複数のレッジのうちの少なくとも一部は前記複数のアームの端部に配置されており、前記複数のアームの端部は前記
ベース光学素子の周縁部とは反対側である、請求項
4に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項8】
前記内側表面は軸方向において実質的に平坦である、請求項1に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項9】
前記外側表面上に配置され、互いに周方向に離間した複数のノッチをさらに含み、前記複数のノッチは、前記触覚システムの半径方向の圧縮を促進するように構成されている、請求項1に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項10】
前記内側表面は、周方向において断続しており、眼内レンズの周縁部に係合するように構成された離間した接触面を画定している、請求項1に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項11】
前記触覚システムの内側部分かつ前記離間した接触面の間に配置された複数のスロットをさらに含む、請求項
10に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項12】
前記触覚システムの前記外側表面に配置された複数のノッチをさらに含み、前記複数のノッチは、前記離間した接触面と共に周方向に整列し、かつ前記触覚システムの半径方向の圧縮を促進するように構成されている、請求項
10に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項13】
前記触覚システムの内側部分かつ前記離間した接触面の間に配置された複数のスロットをさらに含み、前記複数のノッチの位置と前記複数のスロットの位置とは互いに周方向にずらされている、請求項
12に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項14】
前記
ベース光学素子の周縁部から前記触覚システムまで延在する複数のアームをさらに含み、前記離間した接触面のうちの一部は、前記複数のアームのうちの隣り合うアームの間に配置されており、前記離間した接触面のうちの一部は、前記複数のアームと軸方向に整列している、請求項
10に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項15】
2ピース式眼内レンズアセンブリであって、請求項1~
14のいずれか一項に記載のベースレンズアセンブリと眼内レンズとを含み、前記眼内レンズは、光学素子と、
可撓性膜と、周縁部であって、前記周縁部と前記光学素子との間に配置された光学素子カプラによって前記光学素子に結合された
前記周縁部とを含み、前記周縁部は前記光学素子を周方向に取り囲むとともに、前記複数のフランジの後方に配置されるように構成され
ていることにより、前記ベースレンズアセンブリは患者の眼の水晶体嚢内で前記眼内レンズを受け入れて維持することが可能である、2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項16】
前記光学素子は
前記可撓性膜よりも大きい剛性
を有する、請求項
15に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項17】
前記光学素子は両凸光学素子を含む、請求項
15に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項18】
前記眼内レンズは
、前記光学素子と前記可撓性膜とを離す閉鎖容積を含み、前記閉鎖容積は中に流体を保持するように構成されており、前記周縁部に半径方向の圧縮力が加えられたとき、前記可撓性膜は曲率を変化させ、前記光学素子は軸方向に変位するものである、請求項
15に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項19】
前記周縁部に半径方向の圧縮力が加えられたとき、前記可撓性膜は曲率を変化させ、前記光学素子は軸方向に変位する、請求項
15に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項20】
前記周縁部は高さを有する外周面を含む、請求項
15に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項21】
前記周縁部は、前記外周面の高さの一部に沿って力伝達領域を含む、請求項
20に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項22】
前記外周面は連続した周方向リングである、請求項
20に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項23】
前記眼内レンズは膜カプラを含み、
前記力伝達領域は、前記半径方向の圧縮力を前記膜カプラによって前記可撓性膜に集中させる、請求項
21に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項24】
ベースレンズアセンブリであって、
ベース光学素子と、
触覚システムであって、患者の眼の水晶体嚢に接触するように構成された外側表面と、前記
ベース光学素子の前方に配置された開放端部と、前記外側表面に対して内側に配置されるとともに、前記ベースレンズアセンブリが患者の眼の中に配置されているとき、前記開放端部から眼内レンズを受け入れるように構成された内部空間を画定し、眼内レンズの周縁部に接触するように構成されている
離間した接触面を含む内側表面とを含む
前記触覚システムと、
前記内側表面から半径方向内向きに延びるとともに、前記開放端部から後方に離間し、かつ眼内レンズの前面と接触するように構成されている複数のフランジと、
前記
ベース光学素子と前記触覚システムとの間に延びる複数のアームと
を含
み、前記離間した接触面のうちの一部は、前記複数のアームのうちの隣り合うアームの間に配置されている、ベースレンズアセンブリ。
【請求項25】
前記複数のアームは、眼内レンズの後面と接触するように構成された複数のレッジを含み、前記複数のレッジは、前記複数のフランジに対し後方かつ反対側に配置されている、請求項
24に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項26】
前記内側表面は、眼内レンズの周縁部に係合するように構成された離間した接触面を画定するように、周方向において断続している、請求項
24に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項27】
前記触覚システムの前記外側表面に配置された複数のノッチをさらに含み、前記複数のノッチは、前記離間した接触面と共に周方向に整列し、かつ前記触覚システムの半径方向の圧縮を促進するように構成されている、請求項
26に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項28】
2ピース式眼内レンズアセンブリであって、請求項
24~
27のいずれか一項に記載のベースレンズアセンブリと眼内レンズとを含み、前記眼内レンズは、光学素子と、
可撓性膜と、周縁部であって、前記周縁部と前記光学素子との間に配置された光学素子カプラによって前記光学素子に結合された
前記周縁部とを含み、前記周縁部は前記光学素子を周方向に取り囲むとともに、前記複数のフランジの後方に配置されるように構成され
ていることにより、前記ベースレンズアセンブリは患者の眼の水晶体嚢内で前記眼内レンズを受け入れて維持することが可能である、2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項29】
前記光学素子は
、前記可撓性膜よりも大きい剛性
を有する、請求項
28に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項30】
前記光学素子は両凸光学素子を含む、請求項
28に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項31】
前記眼内レンズは
、前記光学素子と前記可撓性膜とを離す閉鎖容積を含み、前記閉鎖容積は中に流体を保持するように構成されており、前記周縁部に半径方向の圧縮力が加えられたとき、前記可撓性膜は曲率を変化させ、前記光学素子は軸方向に変位するものである、請求項
28に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項32】
ベースレンズアセンブリであって、
ベース光学素子と、
前記
ベース光学素子の周囲に配置された周方向の触覚システムであって、前記触覚システムは、患者の眼の水晶体嚢に接触するように構成された外側表面と、前記外側表面に対して半径方向内側に配置されるとともに
、前記ベースレンズアセンブリが患者の眼の中に配置されているときに眼内レンズを受け入れるように構成された内部空間を取り囲む内側表面と、前記内側表面から半径方向内向きに延びる複数のフランジとを有し、前記複数のフランジは、眼内レンズを前記内部空間に維持するように構成され、前記内側表面は、眼内レンズの周縁部に接触するように構成されている、
前記触覚システムと、
前記
ベース光学素子とは反対側に配置された前方開放端部であって、眼内レンズを受け入れるように構成された前記内部空間へのアクセスを提供する
前記前方開放端部と
を含み、前記複数のフランジは、前記前方開放端部から後方にずらされている、ベースレンズアセンブリ。
【請求項33】
前記触覚システムは、前記複数のフランジの後方に配置された複数のレッジをさらに含み、前記複数のレッジ及び前記複数のフランジは、それぞれ眼内レンズの対向する表面に接触するように構成されている、請求項
32に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項34】
2ピース式眼内レンズアセンブリであって、請求項
32又は
33に記載のベースレンズアセンブリと眼内レンズとを含み、前記眼内レンズは、光学素子と、
可撓性膜と、周縁部であって、前記周縁部と前記光学素子との間に配置された光学素子カプラによって前記光学素子に結合された
前記周縁部とを含み、前記周縁部は前記光学素子を周方向に取り囲むとともに、前記複数のフランジの後方に配置されるように構成され
ていることにより、前記ベースレンズアセンブリは患者の眼の水晶体嚢内で前記眼内レンズを受け入れて維持することが可能である、2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項35】
前記光学素子は
前記可撓性膜よりも大きい剛性
を有する、請求項
34に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項36】
前記光学素子は両凸光学素子を含む、請求項
34に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項37】
前記眼内レンズは
、前記光学素子と前記可撓性膜とを離す閉鎖容積を含み、前記閉鎖容積は中に流体を保持するように構成されており、前記周縁部に半径方向の圧縮力が加えられたとき、前記可撓性膜は曲率を変化させ、前記光学素子は軸方向に変位するものである、請求項
34に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項38】
ベースレンズアセンブリであって、
ベース光学素子と、
前記
ベース光学素子の周囲に配置された周方向の触覚システムであって、前記触覚システムは、患者の眼の水晶体嚢に接触するように構成された外側表面と、
前記ベースレンズアセンブリが患者の眼の中に配置されているときに眼内レンズを受け入れるように構成された内部空間を取り囲む内側表面と、前記内側表面から半径方向内向きに延びる複数のフランジとを有し、前記複数のフランジは、眼内レンズを前記内部空間に維持するように構成され、前記内側表面は、眼内レンズの周縁部に接触するように構成されている、
前記触覚システムと、
前記外側表面上に配置され、互いに周方向に離間した複数のノッチであって、眼からの力による前記触覚システムの半径方向の圧縮を促進するように構成されている
前記複数のノッチと
を含む、ベースレンズアセンブリ。
【請求項39】
前記触覚システムは、前記複数のフランジの後方に配置された複数のレッジを含み、前記複数のレッジは前記複数のフランジと協働して眼内レンズを維持するように構成されている、請求項
38に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項40】
2ピース式眼内レンズアセンブリであって、請求項
38又は
39に記載のベースレンズアセンブリと眼内レンズとを含み、前記眼内レンズは、光学素子と、
可撓性膜と、周縁部であって、前記周縁部と前記光学素子との間に配置された光学素子カプラによって前記光学素子に結合された
前記周縁部とを含み、前記周縁部は前記光学素子を周方向に取り囲むとともに、前記複数のフランジの後方に配置されるように構成され
ていることにより、前記ベースレンズアセンブリは患者の眼の水晶体嚢内で前記眼内レンズを受け入れて維持することが可能である、2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項41】
前記光学素子は
前記可撓性膜よりも大きい剛性
を有する、請求項
40に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項42】
前記光学素子は両凸光学素子を含む、請求項
40に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項43】
前記眼内レンズは
、前記光学素子と前記可撓性膜とを離す閉鎖容積を含み、前記閉鎖容積は中に流体を保持するように構成されており、前記周縁部に半径方向の圧縮力が加えられたとき、前記可撓性膜は曲率を変化させ、前記光学素子は軸方向に変位するものである、請求項
40に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項44】
ベースレンズアセンブリであって、
ベース光学素子と、
前記
ベース光学素子の周囲に配置された周方向の触覚システムであって、前記触覚システムは、患者の眼の水晶体嚢に接触するように構成された外側表面と、
前記ベースレンズアセンブリが患者の眼の中に配置されているときに眼内レンズを受け入れるように構成された内部空間を周方向に取り囲む内側表面と、前記内側表面から半径方向内向きに延びる複数のフランジとを有し、前記複数のフランジは、眼内レンズを前記内部空間に維持するように構成され、前記内側表面は、前記内部空間が眼内レンズの周縁部に係合するように構成された離間した接触面を画定するように、周方向において断続している、
前記触覚システムと、
前記触覚システムの内側部分かつ前記離間した接触面の間に配置された複数のスロットと
を含
み、前記複数のスロットは前後方向に開口している、ベースレンズアセンブリ。
【請求項45】
前記触覚システムは、前記複数のフランジの後方に配置された複数のレッジを含み、前記複数のレッジは前記複数のフランジと協働して眼内レンズを前記内部空間に維持するように構成されている、請求項
44に記載のベースレンズアセンブリ。
【請求項46】
2ピース式眼内レンズアセンブリであって、請求項
44又は
45に記載のベースレンズアセンブリと眼内レンズとを含み、前記眼内レンズは、光学素子と、
可撓性膜と、周縁部であって、前記周縁部と前記光学素子との間に配置された光学素子カプラによって前記光学素子に結合された
前記周縁部とを含み、前記周縁部は前記光学素子を周方向に取り囲むとともに、前記複数のフランジの後方に配置されるように構成され
ていることにより、前記ベースレンズアセンブリは患者の眼の水晶体嚢内で前記眼内レンズを受け入れて維持することが可能である、2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項47】
前記光学素子は
前記可撓性膜よりも大きい剛性
を有する、請求項
46に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項48】
前記光学素子は両凸光学素子を含む、請求項
46に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【請求項49】
前記眼内レンズは
、前記光学素子と前記可撓性膜とを離す閉鎖容積を含み、前記閉鎖容積は中に流体を保持するように構成されており、前記周縁部に半径方向の圧縮力が加えられたとき、前記可撓性膜は曲率を変化させ、前記光学素子は軸方向に変位するものである、請求項
46に記載の2ピース式眼内レンズアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して調節性眼内レンズデバイスに関し、より詳細には、患者の眼の水晶体嚢又は溝(sulcus)に埋め込まれるように構成された調節性眼内レンズデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
広範な眼科的状態に対処するための高度な介入が技術的進歩によって可能になるにつれて、眼の外科処置が増加している。このような処置は一般的に安全であることが証明され、患者の生活の質を大幅に向上させる結果をもたらすため、患者の受け入れは過去20年間にわたって増加している。
【0003】
白内障手術は、最も一般的な手術の1つであり、世界中で1,600万件を超える白内障手術が行われている。平均寿命が延び続けるにつれて、この数字は増加し続けると予想される。白内障は、典型的には、眼から水晶体を取り出し、眼内レンズ(intraocular lens)(「IOL」)をその場所に移植することによって治療される。従来のIOLデバイスは、主に遠方視力に焦点を合わせているので、老視を補正することができず、老眼鏡が依然として必要である。したがって、標準的なIOL移植を受けた患者は、もはや白内障からの曇りを経験しないが、遠近調節を行うことができないか、又は遠くから近くに、近くから遠くに、及びその間の距離に焦点を変更することができない。
【0004】
眼の屈折異常を矯正するための手術も非常に一般的になっており、中でもレーシックの人気が高まっており、1年に70万件を超える手術が行われている。屈折異常の高い罹患率と、この手術が比較的安全で有効であることを考慮すると、従来の眼鏡又はコンタクトレンズに比べてますます多くの人々がレーシック又は他の外科手術に向かうことが予想される。近視の治療におけるレーシックの成功にもかかわらず、従来のレーシック手術では治療することができない老視を矯正する効果的な外科的介入に対するニーズはまだ満たされていない。
【0005】
ほぼすべての白内障患者が老視にも苦しんでいるので、市場の要求はこれらの両方の状態の治療に集中している。医師及び患者の間では、白内障の治療において植込み型眼内レンズを用いることが一般的に受け入れられているが、老視を矯正する同様の手術は、米国白内障市場のわずか5%に過ぎない。したがって、老齢人口が増加する中、眼科白内障及び/又は老視の両方に対処する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書に記載の調節性眼内レンズ(IOL)は、可撓性膜のパワー変更特性をベースレンズと組み合わせている。IOLのパワー変更特性は、閉鎖容積内の流体光学素子によって駆動される。IOLの重要な利点の1つは、可撓性膜とベースレンズとを離間させる閉鎖容積が実質的に一定の体積を維持し、体積変化、すなわち流体がリザーバからチャンバ内に供給されることを伴うか又は必要とする流体光学IOLに関連する多くの問題を回避することである。体積変化を必要とする流体光学系によって示される多くの欠点には、可撓性膜の不均一なパワー変化及び/又は不均一な座屈が挙げられる。本明細書で開示されるIOLは、実質的に一定の又は不変の体積を維持し、パワー変化の範囲全体にわたって良好な光学品質を維持することによって、このような問題を回避する。液体は、パワー変化に伴い閉鎖容積内で自身を再分配する。この設計は、リザーバを必要とする既知のIOL流体光学系よりもかなり少量の流体しか必要としない。より小さいIOLであることによる本発明の更なる利点は、より大きなIOLに関連する生体適合性の問題の低減、ならびにレンズを埋め込むために必要な切開サイズの縮小である。これは、より早い治癒及びより安定した屈折をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示されるIOLは、あらゆる方法で構成され得る。一実施形態では、移植されたIOLにかかる半径方向の圧縮力を可撓性膜上に集中させて可撓性膜の曲率を変化させることができる。同時に、IOLは、光学素子に対しては半径方向の圧縮力が最小化又は低減されるように構成される。一実施形態では、半径方向の圧縮力の少なくとも51%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%が可撓性膜にかかる。別の実施形態では、半径方向の圧縮力の1%以下、2%以下、5%以下、10%以下、20%以下、25%以下、30%以下、40%、又は49%以下が光学素子にかかる。しかしながら、光学素子は、可撓性膜の曲率の変化に応じて可撓性膜に向かって軸方向に変位するように構成されてもよい。この軸方向の変位は、光学素子が浮遊するのを可能にするような態様で光学素子をIOLの周縁部に結合させることによって容易にされ得る。可撓性膜の曲率が変化するにつれて、流体接着又は表面張力が作用して、可撓性膜の方に光学素子を引っ張る。好ましくは、光学素子は曲率の変化に抵抗するか、又は曲率が変化しない。
【0008】
別の実施形態では、移植されたIOLにかかる半径方向の圧縮力を光学素子に集中させて光学素子を軸方向に変位させることができる。一実施形態では、半径方向の圧縮力の少なくとも51%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%が光学素子にかかる。別の実施形態では、半径方向の圧縮力の1%以下、2%以下、5%以下、10%以下、20%以下、25%以下、30%以下、40%、又は49%以下が可撓性膜にかかる。好ましい実施形態では、光学素子は曲率の変化に抵抗するか、又は曲率が変化しない。同時に、IOLは、可撓性膜に対して半径方向の圧縮力が最小化又は低減されるように構成される。しかし、可撓性膜は、レンズの軸方向変位に応じて曲率が変化する。
【0009】
更なる実施形態では、移植されたIOLにかかる半径方向の圧縮力は、可撓性膜の曲率の変化及び可撓性膜に向かう光学素子の軸方向変位を引き起こすために、これらの間の空間の体積を一定に維持しながら、可撓性膜及び光学素子の両方に適用されてもよい。好ましくは、可撓性膜の曲率が変化する際に、光学素子は軸方向に変位するが、曲率の変化には抵抗するか又は曲率が変化しない。
【0010】
いずれの実施形態に関しても、膜の厚さは均一であってもよいし、変化していてもよい。一実施形態では、膜は、より薄い中央領域及び中心軸A-Aの周りのより厚い周辺領域を有してもよく、これは所与の力の量に対してより大きなパワー変化を可能にし得る。しかし、膜の中央領域と周辺領域の厚さの比が大きすぎると、顕著な非球面性が生じ、圧縮下での光学品質が低下し、製造がより困難になる。中心のより厚い膜は、IOLの製造をより容易にすることができるが、潜在的なパワー変化を減少させる可能性がある。最適な膜厚及び厚さの均一性の決定は、製造上の問題及びコストを最小限に抑えながら、パワー変化及び光学品質を最大化するように決定される。また、膜は、埋め込み処置中に取り扱うことができる程度に十分に厚くなければならない。
【0011】
本明細書に開示の二部式調節性IOLデバイスは、その別個の二部式構造に起因する多くの利点を提供する。IOLデバイスの2つの部分は別々に移植されるため、移植のための送達外形が非常に小さくなるので、IOLデバイスの移植は、著しく縮小した切開サイズしか必要としない。縮小された切開サイズは、切開部位を閉じるための麻酔及び縫合の必要性を排除し、外科的結果を改善することを含む多くの利点を提供する。
【0012】
さらに、手術中のIOLの大きさ及びパワーの調整に関して、より優れた制御が与えられる。ベースレンズアセンブリを水晶体嚢に移植することは、医師に患者の水晶体嚢の大きさに関する印象を提供し、それにより、次に移植するパワー変更レンズの正しいサイズを確認する助けとなる。
【0013】
一実施形態では、調節性IOLが説明される。IOLは、光学素子と、可撓性膜と、光学素子及び可撓性膜に結合された周縁部とを含むことができる。周縁部は、高さを有する外周面と、外周面の高さの一部に沿って画定された力伝達領域とを含むことができる。閉鎖容積は、光学素子と可撓性膜とを離間させることができる。好ましくは、半径方向の圧縮力が力伝達領域に加えられると、光学素子は軸方向に変位することができ、可撓性膜は中心軸の周りで曲率を変化させることができる。光学素子が軸方向に変位したとき、及び/又は半径方向の圧縮力が力伝達領域に加えられたときに、光学素子が屈曲に抵抗し、又は曲率の変化に抵抗することができるように、光学素子は膜よりも大きな剛性を有することができる。あるいは、IOLを溝(sulcus)に埋め込むことができる。IOLは、天然水晶体と一緒にでも、一緒にでなくても、眼の溝に埋め込むことができるように設計することができる(有水晶体又は偽水晶体IOL)。
【0014】
第1の態様によれば、力伝達領域を周方向リングとしてもよい。好ましくは、周方向リングは、周方向周縁部から外向きに突出することができる。
第2の態様によれば、流体を閉鎖容積内に収容することができる。好ましくは、流体は、シリコーン油、フッ素化シリコーン油及びポリフェニルエーテルからなる群から選択することができる。
【0015】
第3の態様によれば、調節性IOLは、力伝達領域に接触するか、又は力伝達領域に結合された触覚システムをさらに備えることができる。
第4の態様によれば、閉鎖容積を、光学素子、可撓性膜及び周縁部の間に画定することができる。
【0016】
第5の態様によれば、体積を閉鎖容積によって画定することができ、光学素子が軸方向に変位し可撓性膜の曲率が変化したとき、及び/又は半径方向の圧縮力が力伝達領域に加えられたとき、この体積は一定のままであり得る。
【0017】
別の実施形態では、2ピース式調節性眼内レンズアセンブリが記載される。2ピース式調節性眼内レンズアセンブリは、ベースレンズアセンブリ及び本明細書に記載の調節性IOLを備えることができる。ベースアセンブリは、ベースパワー光学素子と、ベースパワー光学素子の周りに周方向に触覚システムを備えることができる。触覚システムは、ベースパワー光学素子に対面する内側表面であって、調節性IOLを取り外し可能に維持することができる内部空間を画定する内側表面を備えることができる。
【0018】
第1の態様によれば、外周面の力伝達領域のみが触覚システムの内側表面と接触している。
第2の態様によれば、ベースレンズアセンブリは、IOLの光学素子及び/又は可撓性膜を含む側に接触するように、内側表面から半径方向内向きに延びる支持フランジを更に備えることができる。
【0019】
第3の態様によれば、複数の離間したノッチを触覚システムの外側表面の周りに配置することができる。
第4の態様によれば、ベースパワー光学素子は、曲率の変化に部分的に又は完全に抵抗することができ、又は触覚システムに加えられる半径方向の圧縮力に応答して曲率を変化させることができる。
【0020】
更なる実施形態では、調節性IOLが記載される。調節性IOLは、光学素子と、可撓性膜と、内方側及び外方側を有する周方向周縁部とを備えることができる。閉鎖容積は、光学素子と可撓性膜とを離間させることができる。周方向周縁部の内方側から光学素子カプラ及び膜カプラを配置することができる。周方向周縁部の外方側に力伝達領域を配置することができる。力伝達領域は、光学素子カプラに対向する外方側の一部に沿って配置することができ、膜カプラに対向する外方側の一部に沿って配置されない。力伝達領域は、自身に加えられる半径方向の圧縮力の伝達を、光学素子カプラを介して光学素子に集中させ、中心軸に沿って光学素子を軸方向に変位させることができる。光学素子の軸方向変位は、閉鎖容積及び流体の膜への接着の結果として、可撓性膜の曲率の変化を引き起こし得る。
【0021】
第1の態様によれば、力伝達領域を周方向リングとしてもよい。好ましくは、周方向リングは、周方向周縁部から外向きに突出することができる。
第2の態様によれば、流体を閉鎖容積内に収容することができる。好ましくは、流体は、シリコーン油、フッ素化シリコーン油及びポリフェニルエーテルからなる群から選択することができる。
【0022】
第3の態様によれば、光学素子は、光学素子が軸方向に変位したとき、及び/又は半径方向の圧縮力が力伝達領域に加えられたときに、屈曲に抵抗し、又は曲率の変化に抵抗することができるように膜よりも大きな剛性を有することができる。
【0023】
第4の態様によれば、周方向周縁部の内方側と可撓性膜との間に周方向の溝を画定することができ、周方向の溝は閉鎖容積内に含まれる内部容積を有する。
第5の態様によれば、触覚システムが、力伝達領域に直接接触するか、又は力伝達領域に結合され得る。
【0024】
第6の態様によれば、閉鎖容積を、光学素子、可撓性膜、及び周方向周縁部の間に画定することができる。
第7の態様によれば、半径方向の圧縮力が力伝達領域に加えられたとき、閉鎖容積の体積は一定のままであることができる。
【0025】
さらに別の実施形態では、2ピース式調節性眼内レンズアセンブリが記載される。2ピース式調節性眼内レンズアセンブリは、ベースレンズアセンブリ及び本明細書に記載の調節性IOLを備えることができる。ベースアセンブリは、ベースパワー光学素子と、ベースパワー光学素子の周りの周方向の触覚システムとを備えることができ、触覚システムは、調節性IOLが取り外し可能に保持される内部空間を画定する内部表面を有する。
【0026】
第1の態様によれば、外方側の力伝達領域のみが触覚システムの内側表面と接触している。
第2の態様によれば、ベースレンズアセンブリは、IOLの光学素子及び/又は可撓性膜を含む側に接触するように、内側表面から半径方向内向きに延びる支持フランジをさらに備えることができる。
【0027】
第3の態様によれば、複数の離間したノッチを触覚システムの外側表面の周りに配置することができる。
第4の態様によれば、ベースパワー光学素子は、曲率の変化に部分的又は完全に抵抗するか、又は触覚システムに加えられる半径方向の圧縮力に応じて曲率を変化させることができる。
【0028】
別の実施形態では、調節性IOLは、光学素子と、可撓性膜と、内方側及び外方側を有する周方向周縁部を含むことができる。閉鎖容積は、光学素子と可撓性膜との間に空間を提供することができる。光学素子カプラ及び膜カプラはそれぞれ周方向周縁部の内方側から配置することができる。周方向周縁部の外方側に力伝達領域を配置することができ、この力伝達領域は、膜カプラと対向する外方側の部分に沿って配置され、光学素子に対向する外方側の部分に沿って配置されない。力伝達領域は、自身に加えられる半径方向の圧縮力の伝達を、膜カプラを介して可撓性膜に集中させ、中心軸の周りで可撓性膜の曲率を変化させることができる。可撓性膜の曲率の変化は、閉鎖容積及び流体の光学素子への接着の結果として、光学素子の対応する軸方向変位を引き起こし得る。
【0029】
第1の態様によれば、力伝達領域を周方向リングとしてもよい。好ましくは、周方向リングは、周方向周縁部から外向きに突出することができる。
第2の態様によれば、流体を閉鎖容積内に収容することができる。好ましくは、流体は、シリコーン油、フッ素化シリコーン油及びポリフェニルエーテルからなる群から選択することができる。
【0030】
第3の態様によれば、可撓性膜の曲率の変化に応答して、かつ/又は、半径方向の圧縮力が力伝達領域に加えられたとき、光学素子が中心軸に沿って軸方向に自由に変位するように、光学素子カプラは複数の折り畳まれた領域を含むことができる。
【0031】
第4の態様によれば、触覚が、力伝達領域に直接接触するか、又は力伝達領域に結合され得る。
第5の態様によれば、閉鎖容積を、光学素子、可撓性膜及び周方向周縁部の間に画定することができる。
【0032】
第6の態様によれば、半径方向の圧縮力が力伝達領域に加えられたとき、閉鎖容積は一定のままであり得る。
さらに別の実施形態では、2ピース式調節性眼内レンズアセンブリが記載される。2ピース式調節性眼内レンズアセンブリは、ベースレンズアセンブリ及び本明細書に記載の調節性IOLを備えることができる。ベースアセンブリは、ベースパワー光学素子と、ベースパワー光学素子の周りに周方向に触覚システムを備えることができる。触覚システムは、調節性IOLが取り外し可能に維持される内部空間を画定することができる。
【0033】
第1の態様によれば、外方側の力伝達領域のみが触覚システムの内側表面と接触している。
第2の態様によれば、ベースレンズアセンブリは、IOLの光学素子及び/又は可撓性膜を含む側に接触するように、内側表面から半径方向内向きに延びる支持フランジをさらに備えることができる。
【0034】
第3の態様によれば、複数の離間したノッチを触覚システムの外側表面の周りに配置することができる。
第4の態様によれば、ベースパワー光学素子は、曲率の変化に部分的に又は完全に抵抗することができ、又は触覚システムに加えられる半径方向の圧縮力に応答して曲率を変化させることができる。
【0035】
更なる実施形態では、調節性IOLが提供される。IOLは、光学素子と、可撓性膜と、光学素子及び可撓性膜に結合された力伝達領域とを含むことができる。閉鎖容積は、光学素子及び可撓性膜を離間させることができる。半径方向の圧縮力が力伝達領域に加えられると、光学素子は軸方向に変位することができ、可撓性膜は中心軸の周りで曲率が変化する。光学素子が軸方向に変位したとき、及び/又は半径方向の圧縮力が力伝達領域に加えられたときに、光学素子が屈曲に抵抗し、又は曲率の変化に抵抗することができるように、光学素子は膜よりも大きな剛性を有することができる。
【0036】
記載された好ましい実施形態の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、限定ではなく例示として与えられていることを理解されたい。本発明の趣旨を逸脱することなく、本発明の範囲内で多くの変更及び改変を行うことができ、本発明はそのような変更すべてを含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A】調節性IOLの代替実施形態の斜視図である。
【
図1B】調節性IOLの代替実施形態の斜視図である。
【
図2A】
図1Aの2AB-2ABに沿った調節性IOLの代替実施形態の断面図である。
【
図2B】
図1Aの2AB-2ABに沿った調節性IOLの代替実施形態の断面図である。
【
図2C】
図1Bの2C-2Cに沿った調節性IOLの別の実施形態の断面図である。
【
図3B】
図3Aの3B-3Bに沿ったベースアセンブリの断面図である。
【
図4A】
図3Aのベースレンズアセンブリ内に組み付けられた
図2Aの調節性IOLを含む2ピース式調節性眼内レンズアセンブリの断面図である。
【
図4B】
図3Aのベースレンズアセンブリ内に組み付けられた
図2Bの調節性IOLを含む2ピース式調節性眼内レンズアセンブリの断面図である。
【
図4C】
図3Aのベースレンズアセンブリ内に組み付けられた
図2Cの調節性IOLを含む2ピース式調節性眼内レンズアセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して本明細書に記載される。
図面のいくつかの図を通じて、同様の参照番号は同様の部分を指す。
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
本発明の特定の非限定的な実施形態を、図面を参照して説明する。そのような実施形態は例示であり、本発明の範囲内の少数の実施形態の単なる例示であることを理解されたい。本発明が属する技術分野の当業者にとって明らかな様々な変更及び改変は、添付の特許請求の範囲でさらに定義される本発明の趣旨、範囲及び思想の範囲内にあるとみなされる。
【0039】
以下の共願かつ同時係属中の米国特許出願の内容は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる:2012年10月26日に出願され、2013年2月28日に米国特許出願公開第2013/0053954号として公開された米国特許出願第13/662,087号;2012年12月21日に出願され、2014年6月26日に米国特許出願公開第2014/0180403号として公開された米国特許出願第13/725,895号;2013年11月1日に出願された米国特許出願第61/899,110号;及び2013年11月1日に出願された米国特許出願第61/899,106号。
【0040】
図1Aは、可撓性膜12と、光学素子14と、可撓性膜12及び光学素子14を結合する周縁部16とを備える調節性IOL10の実施形態を示す。周縁部16は、高さ及び円周を有するものとして示される。可撓性膜12に隣接する高さの一部は力伝達領域18を画定するように外向きに段状にされ、光学素子14に隣接する高さの一部は内向きに段状にされて20、
図4A及び4Bに示すように、移植先の眼の水晶体嚢又は溝(sulcus)、又はベースアセンブリのいずれかとの接触を最小にする領域を、あるいは、これら水晶体嚢又は溝、又はベースアセンブリのいずれかとの隙間又は離間した関係を維持する領域を画定する。好ましい実施形態では、網膜を通って眼の角膜(図示せず)の中心を横切る眼の光軸と、調節性IOL10の中心軸A-Aとは一致することが好ましい。
図1Aの調節性IOL10は、
図2A及び2Bに示す実施形態を含む様々な代替実施形態で構成することができる。
【0041】
図1Bは、可撓性膜52と、光学素子54と、可撓性膜52及び光学素子54を結合する周縁部56とを含む調節性IOL50の別の実施形態を示す。
図1Aの調節性IOL10では、周縁部56は、高さ及び円周を有するものとして示されている。しかし、
図1Bの調節性IOL50では、力伝達領域58を画定するために外向きに段状にされた高さの部分は光学素子54に隣接しており、内向きに段状にされた部分60であって、
図4Cに示すように、移植時に水晶体嚢又は溝、又はベースアセンブリのいずれかとの接触を最小にする領域を、あるいは、これら水晶体嚢又は溝、又はベースアセンブリのいずれかとの隙間又は離間した関係を維持する領域を画定する部分60は、可撓性膜52に隣接している。
図1Aの調節性IOL10の実施形態と同じく、調節性IOL50の中心軸A-Aは、眼の光軸と一致することが好ましい。
図1Bの調節性IOL50は、
図2Cに示す実施形態を含む様々な実施形態で構成することができる。
【0042】
図1A及び
図1Bに示すように、力伝達領域18,58は、周縁部16,56に対して異なる位置に配置される。力伝達領域18,58のこの異なる位置は、眼の水晶体嚢又は溝に移植されたとき、遠近調節中にIOL10,50に加えられる半径方向の圧縮力の伝達を集中させるように機能する。自然な眼の遠近調節のメカニズム及び調節性IOLの移植は、同時係属中の米国特許出願第61/889,106号及び第61/899,110号により十分に記載されており、その全体の内容は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により組み込まれる。眼の水晶体嚢又は溝に移植されると、IOL10,50は、遠近調節中に毛様筋の弛緩から生じる半径方向の圧縮力を受ける。力伝達領域18,58は、水晶体嚢又は溝と直接接触しており、したがって、半径方向の圧縮力の伝達をIOLに、特に、力伝達領域18,58に結合又は隣接した特定のIOL構造に引き寄せ、又は集中させる。
【0043】
一実施形態では、力伝達領域18,58はそれぞれ、周縁部16,56の全体の高さの50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、2%以下又は1%以下の高さを有することができる。
【0044】
図1AのIOL10における力伝達領域18は、可撓性膜12と対向する側に位置する。この位置であることにより、力伝達領域18は半径方向の圧縮力を集中させて可撓性膜12に伝達し、可撓性膜12の変形又は曲率の変化を引き起こす。一実施形態では、半径方向の圧縮力の少なくとも51%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%が可撓性膜にかかる。この実施形態の力伝達領域18は、光学素子14への半径方向の圧縮力の伝達を制限又は防止するように、光学素子14に対向する側には延びないことが好ましい。別の実施形態では、半径方向の圧縮力の1%以下、2%以下、5%以下、10%以下、20%以下、25%以下、30%以下、40%、又は49%以下が光学素子にかかる。かくして、
図4A及び4Bにおいて110及び210としてそれぞれ示されるように、移植先の眼の水晶体嚢又は溝、あるいはベースアセンブリに対し隙間又は離間した関係を提供することにより、部分20の段状部が半径方向の圧縮力を受けることは殆どない。
【0045】
図1BのIOL50における力伝達領域58は、光学素子54と対向する側に位置する。この位置であることにより、力伝達領域58は半径方向の圧縮力を集中させて光学素子54に伝達し、光学素子54をA-Aに沿って軸方向に変位させる。一実施形態では、半径方向の圧縮力の少なくとも51%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%が光学素子にかかる。軸方向変位の方向は、光学素子54が周縁部56に結合される態様、すなわち、可撓性膜52に向かう方向に撓められるか、離れる方向に撓められるかに依存する。
図2Cに示す実施形態では、光学素子304は可撓性膜302に向かって撓められており、したがって、半径方向の圧縮力に対しては可撓性膜302に向かう軸方向変位で応答する。これに対し、
図4Cに示されるように、移植先の眼の水晶体嚢又は溝、あるいはベースアセンブリに対し隙間又は離間した関係を提供することにより、部分310の段状部が半径方向の圧縮力を受けることは殆どない。別の実施形態では、半径方向の圧縮力の1%以下、2%以下、5%以下、10%以下、20%以下、25%以下、30%以下、40%、又は49%以下が可撓性膜にかかる。好ましくは、光学素子54は、軸方向変位中の、又は半径方向圧縮力が力伝達領域58に作用するときの曲率の変化に抵抗する。
【0046】
図2A~
図2Cは、
図1AのIOL10又は
図1BのIOL50のいずれかに基づくIOLの様々な代替の実施形態を示す。
図2Aは、可撓性膜102と、光学素子104と、可撓性膜102及び光学素子104を結合する周方向周縁部106とを備えるIOL100を示す。膜カプラ112が周方向周縁部106の内方側から配置され、膜102を周縁部106に結合する。膜カプラ112は、力伝達領域108の高さとほぼ同じかそれよりも小さい厚さを有することができる。同様に、光学素子カプラ114が、周方向周縁部106の内方側から配置され、光学素子104を周縁部106に結合する。好ましくは、光学素子カプラ114は、光学素子104を可撓性膜102に向かって撓ませるように可撓性膜102に向かって傾斜している。
【0047】
図2Aに示すように、周方向縁部106は、実質的に平坦な表面を有し、中心軸A-Aに沿って規定される高さを有するものとして示されている。この周方向周縁部106は、任意選択で少なくとも2つの領域を含むことができる。眼の遠近調節過程で加えられる半径方向の圧縮力の大部分を受け取り伝達することができる力伝達領域108と、半径方向の圧縮力の大部分を受け取って伝達することのないステップイン領域110である。一実施形態では、力圧縮領域は、眼の遠近調節過程で加えられる圧縮力の約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上、又は100%以上を受け取る。別の実施形態では、ステップイン領域110は、眼の遠近調節過程で加えられる圧縮力の約25%以下、約20%以下、約25%以下、約10%以下、約5%以下、約2%以下、約1%以下を受け取るか又は全く受け取らない。力伝達領域108は、水晶体嚢又は溝に直接移植されたとき、眼の水晶体嚢又は溝に接触して係合するように、あるいは、2ピース式調節性眼内レンズアセンブリの一部として使用されたときにベースレンズアセンブリ400の内側表面422に接触するように意図されている(
図4A)。力伝達領域108は、自身に加えられる半径方向の圧縮力の伝達を、膜カプラ112を介して可撓性膜102に集中させ、可撓性膜102の曲率を変化させる。したがって、力伝達領域108は周方向周縁部106の外方側に位置し、膜カプラ112に対向する外方側の部分に沿って配置され、好ましくは光学素子114に対向する外方側の部分に沿って配置されない。光学素子カプラ114に対向する側の部分は、好ましくはステップイン領域110である。
【0048】
閉鎖容積103は、可撓性膜102と光学素子104とを離間させるようにIOL100の内部に設けられる。閉鎖容積103はIOL100の外部とは連通しておらず、したがってその体積は一定のままである。体積が一定であり、光学素子104の撓みが光学素子カプラ114によって可撓性膜102に向かう結果、半径方向の圧縮力が力伝達領域108に適用されたときに、可撓性膜102及び光学素子104は互いから実質的にそれて離れることはない。光学素子104の外周を越える閉鎖容積103の拡張は、光学素子104を、力伝達領域108にかかる半径方向の圧縮力を直接受けることから更に隔離するように機能する。
【0049】
可撓性膜102の曲率の変化は、半径方向の圧縮力と共に、調節パワーの変化もたらす。可撓性膜102の曲率が変化するにつれて、光学素子104は、軸方向に可撓性膜102に向かって変位する。これにより、可撓性膜102は一定量の流体で光学的に均一な態様にて形状を変化させることができ、可撓性膜の不均一な座屈の問題を回避する。
図2Aの点線は、力伝達領域108への半径方向の圧縮力の存在下での、所望のジオプター変化を生成するための可撓性膜102の曲率の変化及び光学素子104の軸方向変位を示す。
図2Aが示すように、点線での膜の変形は滑らかであり、良好な光学的品質を有すると考えられる。高周期の座屈が排除されることで、低い光学的品質を有し得る波形の表面やさざなみ状の表面が形成されるのを回避する。
【0050】
図2Bは、IOL200の代替の実施形態を示す。
図2AのIOL100と同様に、
図2BのIOL200は、可撓性膜202と、光学素子204と、可撓性膜202及び光学素子204を結合する周方向周縁部206とを含む。膜カプラ212が周方向周縁部206の内方側から配置されて膜202を周縁部206に結合する。光学素子カプラ214が周方向周縁部206の内方側から配置されて光学素子204を周縁部206に結合する。
図2Aに示されるIOL100とは対照的に、光学素子カプラ214は、光学素子204を可撓性膜202に向かって、又は可撓性膜202から離れるように撓ませるようには構成されていない。むしろ、光学素子カプラ214は一連のアコーディオン状の起伏で構成され、力伝達領域208に作用する半径方向の圧縮力によって引き起こされる可撓性膜202の曲率の変化に応答して、光学素子204が光軸又は中心軸A-Aに沿って相反する方向に移動可能に浮動することを許容する。
【0051】
図2AのIOL100と同様に、周方向周縁部206は、膜カプラ212に対向する部分に沿って周縁部206の外方側に配置された力伝達領域208を有する。好ましくは、力伝達領域208は光学素子カプラ214に対向する外方側の部分までは拡張しない。光学素子カプラ214に対向する外方側の部分は、ステップイン部分210である。閉鎖容積203は、可撓性膜203と光学素子204との間の隙間又は離間した関係を維持し、
図2Aの閉鎖容積103に関して説明したのと実質的に同じ機能を果たす。
【0052】
可撓性膜202の曲率の変化は、半径方向の圧縮力と共に、調整パワーの変化をもたらす。可撓性膜202の曲率が変化するにつれて、光学素子204は可撓性膜202に向かって軸方向に変位する。これにより、可撓性膜202は一定量の流体で光学的に均一な態様にて形状を変化させることができ、可撓性膜の不均一な座屈の問題を回避する。
図2Bの点線は、力伝達領域208への半径方向の圧縮力の存在下での、所望のジオプター変化を生成するための可撓性膜202の曲率の変化及び光学素子204の軸方向変位を示す。
図2Bが示すように、点線での膜の変形は滑らかであり、良好な光学的品質を有すると考えられる。高周期の座屈が排除されることで、低い光学的品質を有し得る波形の表面やさざなみ状の表面が形成されるのを回避する。
【0053】
図2Cは、可撓性膜302と、光学素子304と、可撓性膜302及び光学素子304を結合する周方向周縁部306とを含むIOL300を示す。膜カプラ312は、可撓性膜302を周縁部306に結合し、光学素子カプラ314は、光学素子304を周縁部306に結合させる。
【0054】
周縁部306は、力伝達領域308とステップイン領域310とを有する。
図2A及び
図2Bに示される周縁部の構成とは異なり、力伝達領域308は、光学素子カプラ314に対向する部分に沿って周縁部306の外方側に配置される。好ましくは、力伝達領域308は膜カプラ312に対向する外方側の部分までは拡張しない。この構成により、力伝達領域308は、自身に加えられる半径方向の圧縮力の伝達を、光学素子カプラ314を介して光学素子304に集中させ、中心軸A-Aに沿って光学素子314を軸方向に変位させる。一実施形態において、半径方向の圧縮力の少なくとも51%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%が光学素子604にかかる。別の実施形態では、半径方向の圧縮力の1%以下、2%以下、5%以下、10%以下、20%以下、25%以下、30%以下、40%、又は49%以下が可撓性膜302にかかる。光学素子カプラ314は、半径方向の圧縮力が力伝達領域308に適用されたとき、光学素子304を可撓性膜302に向かって軸方向に変位させるように可撓性膜302に向かって傾斜していることが好ましい。
【0055】
図2A及び
図2Bに示される実施形態とは対照的に、可撓性膜302は、半径方向の圧縮力の結果として間接的に曲率が変化する。閉鎖容積304に収容された流体を押し、光学素子304に対面する可撓性膜302の内側表面に力を加えるのは、光学素子304の軸方向変位である。すなわち、光学素子304の軸方向変位がもたらす可撓性膜302に作用する流体の力が、可撓性膜302の曲率の変化を直接引き起こすのである。
【0056】
1つの好ましい実施形態では、IOL300は、閉鎖容積303を画定する容積部と流体連通し、かつそれに含まれる周方向の溝305をさらに備える。周方向の溝305は、周方向周縁部306の内方側と可撓性膜302との間に設けられ、可撓性膜302の曲率の変化が、完全ではないにしても実質的に、光学素子304の軸方向変位からの流体圧力の直接的な結果として生じるように、周縁部306及び/又は力伝達領域308にかかる直接的な半径方向圧縮力から可撓性膜302を更に隔離するように機能する。
【0057】
可撓性膜302の曲率の変化は、半径方向の圧縮力と共に、調節パワーの変化をもたらす。光学素子304が可撓性膜302に向かって軸方向に変位するにつれて、可撓性膜302の曲率が変化する。これにより、可撓性膜302は一定量の流体で光学的に均一な態様にて形状を変化させることができ、可撓性膜の不均一な座屈の問題を回避する。
図2Cの点線は、力伝達領域308への半径方向の圧縮力の存在下での、所望のジオプター変化を生成するための可撓性膜302の曲率の変化及び光学素子304の軸方向変位を示す。
図2Cが示すように、点線での膜の変形は滑らかであり、良好な光学的品質を有すると考えられる。高周期の座屈が排除されることで、低い光学的品質を有し得る波形の表面やさざなみ状の表面が形成されるのを回避する。
【0058】
図2A~Cの閉鎖容積103、203、及び303内に含まれる流体は、任意の流体であってよく、好ましくはシリコーン油、フッ素化シリコーン油及びポリフェニルエーテルからなる群から選択される。一実施形態によれば、流体(213,313,413,513)は、テレダイン・ライセンシング・エルエルシー(Teledyne Licensing,LLC)の「ポリフェニルエーテルを用いた可変焦点液体充填レンズ」と題する米国特許第7,256,943号に記載されているような、ポリフェニルエーテル(「PPE」)であってもよい。この文献の全体の内容は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により組み込まれる。
【0059】
別の実施形態によれば、流体はフッ素化ポリフェニルエーテル(「FPPE」)であってもよい。FPPEは、分散特性を有する化学的に不活性で生体適合性の流体である一方で、屈折率の同調性を提供するという特徴的な利点を有する。同調性は、ポリマーのフェニル含量及びフルオロ含量の増加又は減少によって提供される。フェニル含量を増加させるとFPPEの屈折率が効果的に増加し、反対にフルオロ含量を増加させるとFPPEの屈折率が減少するが、IOLの壁を通るFPPE流体の透過性は減少する。
【0060】
別の好ましい実施形態では、閉鎖容積をゲルで満たすことができる。ゲルは、好ましくは、少なくとも1.46、1.47、1.48、又は1.49の屈折率を有する。ゲルはまた、20psi(138kPa)以下、10psi(68.9kPa)以下、4psi(27.6kPa)以下、1psi(6.89kPa)以下、0.5psi(3.45kPa)以下、0.25psi(1.72kPa)以下、0.01psi(68.9Pa)以下のヤング率を有することが好ましい。好ましい実施形態では、ゲルは、架橋ポリマー、好ましくは架橋シリコーンポリマー、より好ましくは架橋フェニルシロキサンポリマー、例えばビニル末端フェニルシロキサンポリマー又はビニル末端ジフェニルシロキサンポリマーである。閉鎖された空洞を充填するために、シロキサンポリマーに加えて他の光学的に透明なポリマー液体又はゲルを使用することができ、そのようなポリマーは分岐、非分岐、架橋又は未架橋、あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0061】
ゲルは、架橋されることから分子量において増長され、より自己粘着性であり、また、IOLの壁又は対向する側に対して大部分の液体よりも接着性であるという利点を有する。これにより、ゲルがIOLの壁を通って漏出しにくくなる。パワー変更レンズの調節パワーと曲率における比較的小さい変形との組み合わせを得るために、ゲルは、高い屈折率を有するように選択され、かつ低いヤング率を有することによって特徴づけられる光学的に透明な材料で作られる。したがって、好ましい実施形態では、ゲルは1.46以上、好ましくは1.47以上、1.48以上、最も好ましくは1.49以上の屈折率を有する。同時に、ゲルは好ましくは10psi(68.9kPa)以下、好ましくは5psi(34.5kPa)以下、より好ましくは1psi(6.89kPa)以下のヤング率を有する。特に好ましい実施形態では、ゲルは0.5psi(3.45kPa)以下、好ましくは0.25psi(1.72kPa)以下、最も好ましくは0.01psi(68.9Pa)以下のヤング率を有する。低いヤング率では、ゲルは変形に対する抵抗が小さくなり、したがって、適用される力の所与の単位に対するパワー変更レンズ110の変形が大きくなることが理解される。
【0062】
図1及び2A~2Cに記載されたIOLは、可撓性膜又は光学素子のいずれかが後方に配置された状態で、患者の眼の水晶体嚢又は溝に直接埋め込まれてもよい。さらに、IOLは、ベースレンズアセンブリ400及びIOLを備える
図4A~4Cに示すような2ピース式調節性眼内レンズアセンブリの一部として提供されてもよい。
【0063】
図3A~3Bは、ベースパワー光学素子410と、ベースパワー光学素子410の周りに周方向に開示された触覚システムとを含むベースレンズアセンブリ400の実施形態を示す。触覚システムは、内側表面422と、移植されたときに眼の水晶体嚢又は溝に接触するように寸法決め及び成形された外側表面420とを有する。内側表面422は、内側表面422がIOLの力伝達領域と係合接触するようにIOLを収容するような大きさ及び寸法にされている。一実施形態では、内側表面422は実質的に平坦な面である。触覚システムは、光学素子又は可撓性膜の一方を含むIOLの表面に係合するレッジ又は表面424を有する複数のアーム412をさらに備えることができる。触覚システムはまた、光学素子又は可撓性膜を含む他方の表面を含むIOLの表面に係合するように、内側表面422から半径方向内向きに延びる複数のフランジ426を備える。係合表面424及びフランジ426は協働してベースレンズアセンブリ400内にIOLをしっかりと維持し、IOLがベースレンズアセンブリ400から外れることを防止する。触覚システムの半径方向の圧縮を可能にするために、触覚システムの外側表面の周りの複数の離間したノッチ421が更に設けられてもよい。
【0064】
図4A~4Cは、一緒に組み立てられたIOL(100,200,300)及びベースレンズアセンブリ400を含む、完全に組み立てられた2ピース式調節性眼内レンズアセンブリを示す。理解されるように、各IOLの力伝達領域(108,208,308)は、触覚システムの内側表面422と密接に係合接触している。さらに、フランジ426及び係合表面424は、それぞれIOLの可撓性膜を含む側及びIOLの光学素子を含む側と密接に係合接触するように示されている。ベースレンズアセンブリ400内のIOLの1つの向きが示されているが、IOLを反転させてベースレンズアセンブリ400内に反対向きに配置して、光学素子を上方にし、可撓性膜をベースレンズアセンブリ400のベースレンズ410と対面させてもよい。好ましい実施形態では、触覚システム420の内側表面422とステップイン部分(110,210,310)との間に隙間が設けられている。この隙間は、ベースレンズアセンブリ400の半径方向の圧縮によって、力が直接的にはステップイン部分(110,210,310)に伝達されないような空間を提供する。
【0065】
2ピース式調節性眼内レンズアセンブリの移植は、ベースアセンブリ400の移植を最初に行い、続いてベースアセンブリ400内へのIOLの埋め込み及び組み立てを行うという2段階で行われ得る。この2段階プロセスの利点は、実質的により広い範囲の遠近調節範囲を有するレンズを移植するのに必要な切開サイズが減少することである。さらに、2段階プロセスは、IOLの2つの向きのうち1つを提供することに関して柔軟性を提供し、第1の向きは可撓性膜を眼の前方に位置決めし、第2の向きは可撓性膜を眼の後方に位置決めする。臨床医は、患者の視覚ニーズに基づいて適切な向きを決定し、選択することができる。さらに、移植後のベースアセンブリを、移植しようとするIOLのサイズ及びパワーの決定に用いることができる。
【0066】
実施例1
膜の中央を200ミクロン、周辺を100ミクロンとしたことを除いて、
図2Aに示すIOLに類似したIOLをモデリングした。全体の直径は7mm、中心厚さは1.2mmであった。モデリングには、IOLの閉鎖容積の内側に1.49の屈折率を有する流体が含まれていた。様々な係数の材料をモデリングし、有限要素解析によって評価した。結果は、3mmのアパーチャで5Dのパワー変化を示した。初期ジオプターパワーは22.0Dであり、最終ジオプターパワーは27.2Dであった。
【0067】
実施例2
実施例1のIOLは、膜に光学品質のシリコーン材料を使用して構築され、閉鎖容積は、1.49の屈折率を有するシリコーン流体で満たされた。試験は、実施例1と同様の負荷設定下で、人工カプセルを用いて行った。3mmアパーチャを用いて測定されたジオプターパワー変化は5.5Dであった。パワーは23Dから28.5Dに変化し、パワー変化の範囲全体にわたって許容可能な光学品質であった。
【0068】
実施例3
実施例2で試験したIOLを、次に人工レンズカプセルの中に入れたベースレンズアセンブリの内部に配置した。ベースレンズアセンブリは、
図3Aに示すレンズと同様の設計であった。試験は、実施例2と同様の負荷条件で行った。ベースパワーレンズは-8.5Dパワーを有し、パワー変更レンズは23.0Dのパワーを有していた。IOLとベースレンズアセンブリが一緒に組み立てられたとき、3mmのアパーチャで14.5Dの合成パワーが測定された。3mmアパーチャを用いて測定されたジオプターパワー変化は5.5Dであった。ジオプターパワーは14.5Dから21.0Dに変化し、パワー変化の範囲全体にわたって許容可能な光学品質であった。
【0069】
本明細書に記載され請求される本発明は、本発明のいくつかの態様の例示として意図されているので、本明細書に開示される特定の好ましい実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際には、本明細書に示され記載されたものに加えて、本発明の様々な変更が、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。そのような変更も、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。