IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール ツァイス エスエムエス リミテッドの特許一覧

特許7437441マスクブランクの欠陥を補償する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】マスクブランクの欠陥を補償する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/70 20120101AFI20240215BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20240215BHJP
【FI】
G03F1/70
G03F1/84
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022066431
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2020503924の分割
【原出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2022106773
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】102017212848.8
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519046797
【氏名又は名称】カール ツァイス エスエムエス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルテ ヨアヒム
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-090095(JP,A)
【文献】特開2012-058558(JP,A)
【文献】特表2002-532738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0106263(US,A1)
【文献】特開2004-170948(JP,A)
【文献】特開2012-022323(JP,A)
【文献】特表2014-521230(JP,A)
【文献】特表2017-526987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20-1/86、7/20-7/24
9/00-9/02
H01L 21/027、21/30、21/64-21/66
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクブランク(800、900、1000)の少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)を補償するための方法であって、
a.前記マスクブランク(800、900、1000)の前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)の位置に関するデータを取得する段階と、
b.前記マスクブランク(800、900、1000)上に生成されるべきであるパターン要素(2470)のための設計データを取得する段階と、
c.前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)が、生成されるパターン要素(2470)に対して、成される前記パターン要素(2470)が設けられた前記マスクブランク(800、900、1000)を用いてウェーハを露光するときに効果を持たないように配置されるかを決定する段階と、
d.段階c.の条件が満たされない場合に、前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)を前記マスクブランク(800、900、1000)上でそれが生成される前記パターン要素(2470)が設けられた前記マスクブランク(800、900、1000)を用いて前記ウェーハを露光するときに効果を持たないように変位させる段階(2530、3130)と、
e.前記少なくとも1つの欠陥(3150)を変位させる段階(3130)の後、それが依然として残りの効果を持つ場合、少なくとも1つのパターン要素(3172)の設計データを局所的に修正し、前記マスクブランク(800、900、1000)上に前記修正された設計データに従って前記少なくとも1つのパターン要素(3172)を生成するを含み、
f.前記少なくとも1つのパターン要素(3172)の設計データを局所的に修正する段階は、その生成前に記少なくとも1つのパターン要素(3172)のうちのパターン要素に対する少なくとも1つの個々の局所変更を含み、前記パターン要素は前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)に隣接し、
g.前記ターン要素(3172)の前記少なくとも1つの個々の局所変更は、前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)に個別に適合される、
方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの欠陥(820、920、3020)は、第1の欠陥及び少なくとも1つの第2の欠陥を含み、前記少なくとも1つのパターン要素を設計データに関して局所的に修正する段階は、その生成前に前記第1の欠陥に隣接する少なくとも1つの第1のパターン要素に対する少なくとも1つの第1の個々の局所変更、及びその生成前に前記少なくとも1つの第2の欠陥に隣接する少なくとも1つの第2のパターン要素に対する少なくとも1つの第2の個々の局所変更を含み、前記少なくとも1つの第1のパターン要素の前記少なくとも1つの第1の個々の局所変更は前記第1の欠陥に個別に適合され、前記少なくとも1つの第2のパターン要素の前記少なくとも1つの第2の個々の局所変更は前記少なくとも1つの第2の欠陥に個別に適合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)の位置に関するデータを取得する段階は、マスクブランク検査ツールを用いて前記マスクブランク(800、900、1000)を解析する段階、及び/又は前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)の位置に関するデータをメモリから読み取る段階を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)の位置に関するデータは、前記マスクブランクの局所隆起又は前記マスクブランクの局所陥凹からの最大偏差の位置と前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)の横広がりとを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)が、生成されるパターン要素(2470)に対して、それが生成される前記パターン要素(2470)が設けられた前記マスクブランク(800、900、1000)を用いてウェーハを露光するときに効果を持たないように配置されるかを決定する段階は、生成される前記パターン要素(2470)の前記設計データと前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)の位置に関するデータとを重ね合わせる段階を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記マスクブランク(800、900、1000)上で前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)を変位させる段階は、前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)が効果を持たないように前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)の変位(2530、3130)を表すベクトルのパラメータを決定する段階を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)を変位させる段階は、前記マスクブランク(800、900、1000)の基板(810、910、1010)の中に少なくとも1つのピクセル配置(2580、2880、3180、3380)を導入する段階を含前記少なくとも1つのピクセル配置(2580、2880、3180、3380)のピクセルは、前記マスクブランク(800、900、1000)内に局所変形要素を生成する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)を補償する目的で生成される少なくとも1つのパターン要素(3172)の前記設計データに対する少なくとも1つの変更(2930、3175)を決定する段階を更に含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
生成される前記少なくとも1つのパターン要素(3172)の前記少なくとも1つの変更(2930、3175)を決定する段階は、生成される前記パターン要素(3172)の前記設計データに対する結像変換(2930)のパラメータを決定する段階を含み、前記結像変換(2930)は、生成される前記パターン要素(3172)の前記設計データに対する生成される前記パターン要素(3172)の変更であり、前記変更は、前記生成されるパターン要素(2670、2970、3270)をウェーハ上に結像するときにスキャナにより補償される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記結像変換(2930)は、線形結像変換(2930)を含み、前記線形結像変換(2930)のための前記パラメータは、生成される前記パターン要素(2470)を前記設計データに対してスケーリングするためのパラメータ、生成される前記パターン要素(2470)を前記設計データに対して変位させる(2930)ためのパラメータ、生成される前記パターン要素(2470)を前記設計データに対して回転させるためのパラメータを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記結像変換(2930)を実施する段階及び前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)を変位させる段階は、生成される前記パターン要素(2470)が設けられた前記マスクブランク(800、900、1000)を用いてウェーハを露光するときに前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)が効果を持たないようにする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記結像変換(2930)の前記パラメータを決定する段階と前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)の変位(2830、3130)の前記パラメータを決定する段階が、各パラメータを同時に変化させる両方のパラメータを変更する共通最適化処理において行われる、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)を変位させた(2830)後に、前記結像変換(2930)が設けられた前記パターン要素(2970、3270)を前記マスクブランク(800、900、1000)上に生成する段階を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)を補償する目的で生成される少なくとも1つのパターン要素(2470)の前記設計データに対する少なくとも1つの変更(2930、3175)を決定する段階は、生成される少なくとも1つのパターン要素(3172)の輪郭を局所的に修正する(3175)段階を含む、請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
生成される前記少なくとも1つのパターン要素(2470)の前記少なくとも1つの変更(2930、3175)を決定する段階は、生成される前記パターン要素(2470)の前記設計データに対する結像変換(2930)のためのパラメータを決定する段階と、生成される少なくとも1つのパターン要素(3172)の輪郭を局所的に修正する(3175)段階とを含む、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記結像変換(2930)の前記パラメータと、前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)の変位(2530、2830、3130)のパラメータと、生成される少なくとも1つのパターン要素(3172)の輪郭を局所的に修正する(3175)ためのパラメータとを決定する段階が、各パラメータを同時に変化させる共通最適化処理において行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マスクブランク(800、900、1000)上に生成される少なくとも1つのパターン要素(3572)を前記生成されるパターン要素(2670、3572)が設けられた前記マスクブランク(800、900、1000)を用いてウェーハを露光するときに前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)が効果を持たないように局所的に修正する(3575)段階を更に含む、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
コンピュータシステム(2160、2180)によって実行されたときに請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の方法段階を実施するように前記コンピュータシステム(2160、2180)を促す命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項19】
マスクブランク(800、900、1000)の少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)を補償するための装置(2000、2040)であって、
a.前記マスクブランク(800、900、1000)の前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)の位置に関するデータを取得するための手段と、
b.前記マスクブランク(800、900、1000)上に生成されるべきであるパターン要素(2470)のための設計データを取得するための手段と、
c.前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)が、生成されるパターン要素(2470、2670、2970、3270)に対して、成される前記パターン要素(2470、2670、2970、3270)が設けられた前記マスクブランク(800、900、1000)を用いてウェーハを露光するときに効果を持たないように配置されるかを決定するための手段と、
d.前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)を前記マスクブランク(800、900、1000)上でそれが生成される前記パターン要素(2470、2670、2970、3270)が設けられた前記マスクブランク(800、900、1000)を用いて前記ウェーハを露光するときに効果を持たないように変位させる(2530)ための手段と、
e.少なくとも1つのパターン要素(3172)の設計データを局所的に修正し、前記マスクブランク(800、900、1000)上に前記修正された設計データに従って前記少なくとも1つのパターン要素(3172)を生成するめの手段を有し、
f.前記少なくとも1つのパターン要素(3172)の設計データを局所的に修正するための手段は、その生成前に記少なくとも1つのパターン要素(3172)のうちのパターン要素に対する少なくとも1つの個々の局所変更含み、前記パターン要素は前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)に隣接し、
前記ターン要素(3172)の前記少なくとも1つの個々の局所変更は、前記少なくとも1つの欠陥(820、920、1020、3020)に個別に適合される、
置(2000、2040)。
【請求項20】
装置(2000、2040)が、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の方法段階を実施するように具現化される、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、ドイツ特許商標庁に2017年7月26日に出願されてその全体がこれにより引用によって本明細書に組み込まれるドイツ特許出願DE 10 2017 212 848.8の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、マスクブランク(mask blank)の欠陥を補償する(compensating)方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体産業での高まる集積密度の結果として、フォトリソグラフィマスクは、益々小さい構造をウェーハ上に結像しなければならない。この傾向を考慮するために、リソグラフィ装置の露光波長は、より短い波長に絶えずシフトされている。将来のリソグラフィシステムは、極紫外(EUV)範囲にある(好ましくは、限定ではないが、10nmから15nmの範囲にある)波長で作動することになる。このEUV波長範囲は、将来のリソグラフィシステムのビーム経路内の光学要素の精度に対して膨大な要求を課する。これらは、EUV範囲での現在公知の材料の屈折率が実質的に1に等しいので、反射光学要素であることが予想される。
【0004】
EUVマスクブランク(EUV mask blanks)は、例えば石英のような熱膨張を殆ど示さない基板を含む。例えばシリコン(Si)とモリブデン(Mo)を含む約40から60の二重層を含む多層構造が基板に付加され、これらの層は、誘電体ミラーとして作用する。更に、EUVマスクブランクは、化学線波長を吸収する全域層を有する。全域吸収層は構造化され、すなわち、マスクブランクからEUVマスクを生成するために、吸収パターン要素の構造又はパターンが生成される。詳細は、図6に関連して説明する。
【0005】
非常に短い波長に起因して、多層構造の微小な凹凸であっても、EUVマスクを用いて露光されたウェーハの結像収差に現れる。基板の面の微小な凹凸は、典型的には、基板の上への多層構造の堆積中に多層構造内で伝播する。従って、EUVマスクを生成するために、2nmよりも小さい面粗度を有する基板(λEUV/4≦4nm)を使用することが必要である。現時点では、それらの面の平坦度に関するこれらの要件を満たす基板を生成することは可能ではない。小さい基板欠陥(≦20nm)は、化学機械研磨処理(CMP)に内因性のものであると現在考えられている。
【0006】
上述のように、基板面の凹凸は、多層構造内でその堆積中に伝播する。この場合に、基板の欠陥は、実質的に変化を受けることなく基板を通って伝播することができる。更に、基板欠陥は、サイズが縮小するように又は他にサイズが拡大するように多層構造内で伝播することが可能である。基板によって引き起こされる欠陥と共に、追加の欠陥が、多層構造の堆積中に多層構造それ自体に生じる可能性がある。これは、例えば、基板面上に又は個々の層の間に及び/又は多層構造の面上に堆積する粒子の結果として発生する可能性がある。更に、欠陥は、不完全な層シーケンスの結果として多層構造に生じる可能性がある。全体として、従って、多層構造に存在する欠陥の個数は、典型的には、基板の面上に存在する個数よりも多い。
【0007】
マスクブランクの欠陥は、通常は各処理段階の終了時に、すなわち、基板に対する研磨処理の後、多層構造を堆積させた後、及び全域吸収層を堆積させた後に測定される。マスクブランクから生成されたEUVマスクの露光時にウェーハ上で可視である欠陥(転写性欠陥)は、典型的には補償又は修復される。欠陥を補償することは、この欠陥がパターン要素によって実質的に覆われる又はオーバーレイされ、従って、欠陥がEUVマスクを用いたウェーハの露光時にもはや事実上可視ではないことをここでは意味する。
【0008】
J.Burns及びM.Abbasによる公表文献「パターン配置によるEUVマスク欠陥の軽減(EUV mask defect mitigation through pattern placement)」、Photomask Technology 2010、M.W.Montgomery、W.Maurer編集、SPIE会報第7823号、782340-1~782340-5は、予め定められたマスクレイアウトに適合するマスクブランクの探索及びこの予め定められたマスクレイアウトに対する選択マスクブランクの位置合わせを説明している。著者Y.Negishi、Y.Fujita、K.Seki、T.Konishi、J.Rankin、S.Nash、E.Gallagher、A.Wagner、P.Thwaite、及びA.Elyatによる論文「EUVLマスク製作中にブランク欠陥を回避するためのパターンシフトの使用(Using pattern shift to avoid blank defects during EUVL mask fabrication)」、SPIE会報第8701号、Photomask and Next-Generation Lithography Mask Technology XX、870112(2013年6月28日)は、吸収体パターンをシフトさせることによってどのようなサイズの欠陥をどれ程多く補償することができるかという疑問に関するものである。Extreme Ultraviolet(EUV) Lithography IIIでのP.Yan、Y.Liu、M.Kamna、G.Zhang、R.Chem、及びF.Martinezによる公表文献「欠陥不在のEUVLマスク製作のためのEUVL多層マスクブランク欠陥軽減(EUVL Multilayer Mask Blank Defect Mitigation for Defect-free EUVL Mask Fabrication)」、P.P.Naulleau.O.R.Wood II編集、SPIE会報、第8322号、83220Z-1~83220Z-10は、吸収体パターンによって覆うことができる欠陥の最大個数と、それらの欠陥サイズと、欠陥の位置を決定することができる変動と、吸収体構造の位置決めでの変動との間の妥協を説明している。特許US 8 592 102 B1は、吸収体パターンに最良適合するマスクブランクの欠陥パターンをマスクブランクのセットから選択することによるマスクブランクの欠陥の補償を説明している。
【0009】
会議寄稿「EUVマスクブランク欠陥の克服:我々ができること及び我々がすべきこと(Overcoming EUV mask blank defects:what we can, and what we should)」、2017年4月5~7日、Photomask,Japan 2017での著者R.Jonckheere他は、生成された変形パターンを有するマスク上に可能な限り少ないマスクブランク欠陥しか可視ではないように、最良ではマスクブランクの欠陥がないようにマスクブランク上に生成されるパターンの意図された変形を説明している。次いで、ウェーハの露光中のマスクのパターンのこの変形は、マスクの変形パターンが、ウェーハ上に配置されたフォトレジスト内にそのために与えられた場所で意図するパターンを生成するように、スキャナのパラメータの特定の設定値によって取り消される。
【0010】
上述の方法は、処理フローをより複雑にする。マスクブランクの欠陥に関する情報は、マスク生産者においてマスクブランク上にパターン又はパターン要素を生成する前に既に存在する必要がある。更に、マスクのパターンの意図的に生成した変形は、マスクに供給され、かつマスクを用いて実施される各露光工程の前にスキャナの特定の設定値によって補償されなければならない。従って、変形マスクの補償は、ウェーハの露光工程を最適化するために実際に与えられるスキャナのパラメータを設定する。その結果、露光工程の処理ウィンドウが狭まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】US 8 592 102 B1
【文献】US 9 658 527 B2
【非特許文献】
【0012】
【文献】J.Burns及びM.Abbasによる公表文献「パターン配置によるEUVマスク欠陥の軽減(EUV mask defect mitigation through pattern placement)」、Photomask Technology 2010、M.W.Montgomery、W.Maurer編集、SPIE会報第7823号、782340-1~782340-5
【文献】著者Y.Negishi、Y.Fujita、K.Seki、T.Konishi、J.Rankin、S.Nash、E.Gallagher、A.Wagner、P.Thwaite、及びA.Elyatによる論文「EUVLマスク製作中にブランク欠陥を回避するためのパターンシフトの使用(Using pattern shift to avoid blank defects during EUVL mask fabrication)」、SPIE会報第8701号、Photomask and Next-Generation Lithography Mask Technology XX、870112(2013年6月28日)
【文献】P.Yan、Y.Liu、M.Kamna、G.Zhang、R.Chem、及びF.Martinezによる公表文献「欠陥不在のEUVLマスク製作のためのEUVL多層マスクブランク欠陥軽減(EUVL Multilayer Mask Blank Defect Mitigation for Defect-free EUVL Mask Fabrication)」、P.P.Naulleau.O.R.Wood II編集、SPIE会報、第8322号、83220Z-1~83220Z-10、Extreme Ultraviolet(EUV) Lithography III
【文献】著者R.Jonckheere他、会議寄稿「EUVマスクブランク欠陥の克服:我々ができること及び我々がすべきこと(Overcoming EUV mask blank defects:what we can, and what we should)」、2017年4月5~7日、Photomask,Japan 2017
【文献】K.Seki他の会議寄稿「EUV埋め込み欠陥の転写性を理解する試み(Endeavour to Understand EUV Buried Defect Printability)」、SPIE9658会報、Photomask Japan 2015:Photomask and Next Generation Lithographic Mask Technology XXII、2015年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従って、上述の従来技術の欠点を少なくとも部分的に回避するマスクブランクの少なくとも1つの欠陥を補償する方法及び装置を指定する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様により、この課題は、請求項1に主張する方法によって解決される。実施形態では、マスクブランクの少なくとも1つの欠陥を補償する方法は、(a)マスクブランクの少なくとも1つの欠陥の位置に関するデータを取得する段階、(b)マスクブランク上に生成すべきパターン要素に関する設計データを取得する段階、(c)生成されるパターン要素が設けられたマスクブランクを用いてウェーハを露光する時に少なくとも1つの欠陥が実質的に効果を持たないように生成されるパターン要素に対してそれが配置されるかを決定する段階、及び(d)そうでない場合に、生成されるパターン要素が設けられたマスクブランクを用いてウェーハを露光する時に少なくとも1つの欠陥が実質的に効果を持たないようにそれをマスクブランク上で変位させる段階を含む。
【0015】
「生成されるパターン要素が設けられたマスクブランクを用いてウェーハを露光する時に欠陥が効果を持たない」という一節は、パターン要素の寸法よりも小さいか又はそれに等しい横寸法を有する欠陥に関して、マスクブランク上に生成されるパターン要素の下に欠陥が位置する、すなわち、欠陥がパターン要素によって覆われるような欠陥の位置の修正又は欠陥の変位を意味する。欠陥の横寸法が、近傍に位置するパターン要素の寸法よりも仮に大きい場合に、上記で指定した一節は、マスクブランクから生成されたマスクを用いたウェーハの露光に対して欠陥が最小効果を有するようにマスクブランク上での欠陥の位置を修正すること又は欠陥を変位させることを意味する。欠陥は、好ましくは、予め決められた変数からの最大偏差を有する欠陥の領域がパターン要素によって覆われる時に露光に対して最小効果を有する。
【0016】
本発明による方法は、マスクブランク上の欠陥をこれらがマスクブランクからマスクを生成する時にウェーハ上で可視である欠陥として、すなわち、転写性欠陥として出現しないように修正することに関する。従って、説明する方法は、マスクブランクの欠陥の予防的補償を提示するものである。本発明による方法は、マスク書込工程に先行し、それは、後者から完全に切り離される。同様に、本発明による方法は、マスクブランクから生成されたマスクの実際の作動に対して効果を持たない。従って、本方法は、マスク生成工程又はマスクを用いて実施される露光工程のいずれの確立された処理フローにも関与しない。特に、本発明による方法は、スキャナのいずれの設定値も設定しない。その結果、本発明による方法は、マスクを用いて実施される露光工程の処理ウィンドウに対して不利な影響を持たない。
【0017】
少なくとも1つの欠陥の位置に関するデータを取得する段階は、マスクブランク検査ツールを用いてマスクブランクを解析する段階、及び/又は少なくとも1つの欠陥の位置に関するデータをメモリから読み取る段階を含む場合がある。
【0018】
上記で定めた方法を実施することは、入力変数としてマスクブランクの欠陥の位置を必要とする。典型的に、これらは、光学測定方法を使用して化学線波長でマスクブランクに対して検査ツールによって測定される。極紫外(UV)波長範囲に対するマスク又はマスクブランクに関して、欠陥の位置は、現時点では約10nmの領域の測定誤差で測定することができる。欠陥の位置は、マスクブランク上に存在するマーク、いわゆる「基準マーク(fiducial marks)」に対して決定される。
【0019】
欠陥の位置に関するデータは、予め決められた変数からの最大偏差の位置と少なくとも1つの欠陥の横広がり(lateral extent)とを含むことができる。予め決められた変数からの偏差は、マスクブランクの局所隆起(バンプ欠陥)又はマスクブランクの局所陥凹とすることができる。更に、予め決められた変数からの偏差は、欠陥それ自体が局所隆起又は陥凹に現れることなしにマスクブランクによって反射された電磁放射線の位相面の局所変化を含む場合がある。
【0020】
少なくとも1つの欠陥が、生成されるパターン要素が設けられたマスクブランクを用いてウェーハを露光する時にそれが実質的に効果を持たないように生成されるパターン要素に対して配置されるかを決定する段階は、パターン要素の設計データと少なくとも1つの欠陥の位置に関するデータとを重ね合わせる段階を含むことができる。
【0021】
マスクブランク上に生成されるパターン要素とマスクブランク上に存在する欠陥との間の幾何学関係は、設計データ、及びマスクブランク上の欠陥の位置から決定することができる。
【0022】
マスクブランク上で少なくとも1つの欠陥を変位させる段階は、少なくとも1つの欠陥が実質的に効果を持たないように少なくとも1つの欠陥の変位を表すベクトルのパラメータを決定する段階を含むことができる。
【0023】
好ましくは、少なくとも1つの欠陥は、マスクブランクの多層構造がその上に配置されたマスクブランクの基板の面と平行に変位される。仮に変位がこのように実施される場合に、変位ベクトルは、2つのパラメータによって特徴付けられる2次元ベクトルである。
【0024】
変位は、ベクトルが最小長さを有するように決定することができる。これは、欠陥の最小変位を必要とし、特に、欠陥がマスクブランク上に孤立して位置する場合、すなわち、この欠陥が、孤立して位置する欠陥の変位が離れて位置する欠陥の位置に実質的に影響を及ぼさないように、マスクブランク上に存在する他の欠陥からの大きい距離を有する場合が好都合である。
【0025】
仮に用語「実質的に」が上記で定めた主旨に使用されない場合に、それは、ここでは本明細書の他の箇所同様に従来技術で通例の測定誤差内の変数の表示又は数値表示を意味する。
【0026】
少なくとも1つの欠陥の変位の分解能は、サブナノメートル範囲にあるとすることができ、及び/又は変位ベクトルは、0.1nmから500nmの範囲の長さを有することができる。欠陥の変位は、500nmの領域を超える可能性がある。しかし、この目的に必要な費用は有意に増加する。更に、500nmよりも長い距離にわたる欠陥の変位は、基板の及び従って例えばマスクブランクの湾曲のような望ましくない副作用を引き起こす場合がある。欠陥の変位の相対誤差は、典型的に5%から10%の範囲にある。
【0027】
上記で定めた方法は、少なくとも1つの欠陥を変位させた後にマスクブランク上にパターン要素を生成する段階を更に含む場合がある。マスク上の欠陥が、これらがマスクブランクによって生成されたマスクに対して効果を持たないように予防的様式で補償されることにより、第1に、生成からの特にマスクブランクから生成されたマスクの作動からの欠陥補償の切り離しが達成され、第2に、例えば補償的修復によるその後の修復が回避される。
【0028】
この出願では、用語「フォトリソグラフィマスク」、「フォトマスク」、又は単に「マスク」を同義的に使用する。
【0029】
マスク上に存在する欠陥のベクトルのパラメータは、マスクブランク上に存在する欠陥が、生成されるパターン要素を生成した後に実質的に効果を持たないように決定することができる。
【0030】
補償される複数の欠陥がマスクブランク上に仮に存在する場合に、欠陥の変位は、1又は2以上の隣接欠陥の位置を修正することができる。補償される欠陥の変位処理は、補償される全ての欠陥を変位させるための費用が最小になるように最適化することができる。
【0031】
少なくとも1つの欠陥を変位させる段階は、マスクブランクの基板の中に少なくとも1つのピクセル配置を導入する段階を含むことができる。少なくとも1つのピクセル配置は、少なくとも1つの欠陥が、生成されるパターン要素に向けて変位されるたように、及び/又は少なくとも1つの欠陥が、マスクブランクの面と実質的に平行にある一定の距離だけ変位されるように基板の中に導入することができる。少なくとも1つのピクセル配置を基板の中に導入する段階は、超短レーザパルスをマスクブランクの基板の少なくとも1つの平面の中に集束させることによってピクセル配置のピクセルを生成する段階を含むことができる。超短レーザパルスは、マスクブランクの後側から基板の中に放射することができる。
【0032】
ピクセルは、材料内に局所変形要素を生成する。ピクセルを材料、例えば、マスクブランクの基板の中に導入するか又は書き込むことにより、材料は、極度に短い期間にわたって局所的に融解される。これは、ピクセルが生成された位置で材料の密度の局所低下をもたらす。ピクセルによって生成された変形要素は、実質的に等方性の変形要素を生成することができる。しかし、ピクセルを書き込むために使用されるレーザシステムのパラメータは、好ましくは、ピクセルを書き込み、それによって局所変形要素を発生させるレーザビームの方向に位置合わせされた長半径を有する回転楕円体の形態にある変形要素が生じるように設定される。多くの場合に望ましいのは、ピクセルが、ビーム方向に対して垂直なそれらの半軸が異なる楕円体の形態にある変形要素を生成することである。
【0033】
空間的に互いの近くに生成された複数のピクセルの効果は累積的である。これは、材料内へのピクセル配置の導入又は書込が材料全体に延伸することを意味する。ピクセル配置は、典型的には、材料平面内のピクセルの2次元配置である。ピクセル配置は、多くの場合に2次元ピクセル密度によって特徴付けられる。ピクセル密度は、ピクセル配置内で一定とすることができ、又はそれは、一方又は両方の空間方向に変化することができる。材料内に大きい変化を引き起こすために、複数のピクセル配置は、フォトマスクの材料又は基板の異なる平面に導入することができる。
【0034】
フォトマスクの基板内への1又は2以上のピクセル配置の導入又は書込によるフォトマスク上の構造の局所変位のための処理の詳細は、US 9 658 527 B2という番号の本出願人の米国特許に説明されている。これらの詳細は、この出願で繰り返さない。
【0035】
本発明による方法は、少なくとも1つの欠陥を補償するために、生成される少なくとも1つのパターン要素の設計データに対する少なくとも1つの変更を決定する段階を更に含む。
【0036】
上記で定めた方法は、マスクブランクから生成されるパターンの1つ、いくつか、又は多数、例えば実質的に全てのパターン要素を修正する方法と組み合わせることができる。欠陥の変位とパターンの修正とを組み合わせることにより、補償されるマスクブランクの欠陥数を必要に応じて有意に増大することができる。更に、2つの独立した補償方策の間で欠陥補償を分割することにより、マスクブランクのいくつかの欠陥を補償するための全費用の最小化への道が開かれる。しかし、これは、欠陥補償とマスク生成又はマスクブランクによって生成されたマスクの作動との上述した切り離しを損ねる。
【0037】
更に、本発明による方法は、マスクブランク上に生成されるパターンを用いた欠陥の補償を改善するために冒頭部分で指定した様々な方策と組み合わせることができる。
【0038】
少なくとも1つのパターン要素の少なくとも1つの修正を決定する段階は、生成されるパターン要素の設計データに対する結像変換(imaging transformation)のためのパラメータを決定する段階を含むことができる。
【0039】
マスクブランク上に生成されるパターンの結像変換は、それが設けられたパターンを有するマスクブランクから生成されたマスクを用いてウェーハを露光する時にスキャナのパラメータ設定値によって取り消す又は補償しなければならない。パターンの生成の前に、マスクブランク上に生成されるパターンが結像変換を受けることにより、マスクブランクの欠陥の補償が2つの独立した補償方策の間で再分割され、それによって簡単になる。しかし、上述のように、この場合の欠点は、欠陥補償が、マスクブランクから生成されたマスクの作動に対して効果を有することにある。
【0040】
結像変換は線形結像変換を含むことができ、線形結像変換のパラメータは、生成されるパターン要素を設計データに対してスケーリングする(scaling)ためのパラメータ、生成されるパターン要素を設計データに対して変位させるためのパラメータ、生成されるパターン要素を設計データに対して回転させるためのパラメータを含むことができる。
【0041】
全体的に、線形結像のためのパラメータセットは、マスクスケーリング、すなわち、マスクのサイズ変更に対する2つのパラメータ、マスクの変位に対する2つのパラメータ、及びマスクの全般的回転に対する2つのパラメータという6つのパラメータを含む。上記で引用した本出願人の特許文献US 9 658 527 B2に詳細を説明している。
【0042】
結像変換は、非線形結像変換を含むことができる。非線形結像変換は、マスクブランク上に生成されるパターンの3乗までの歪みを含むことができる。非線形結像変換のパラメータは、マスクにわたって変えることができる。更に、生成されるパターンの線形結像変換と非線形結像変換とを組み合わせることができる。
【0043】
マスクブランク上に生成されるパターンの実現可能な結像変換のパラメータ値のサイズは、ウェーハを露光する時にマスクのパターンの結像変換を補償するためのスキャナのオプションによって制限される。
【0044】
結像変換を実施する段階及び少なくとも1つの欠陥を変位させる段階は、生成されるパターン要素が設けられたマスクブランクを用いてウェーハを露光する時に当該欠陥が実質的に効果を持たないようにすることができる。
【0045】
結像変換のパラメータと少なくとも1つの欠陥の変位のパラメータを決定する段階は、共通最適化処理(common optimization process)において実施することができる。
【0046】
2つの補償方策のパラメータを同時に決定することにより、共通最適化処理に対する拡張解空間を提供する。その結果、2つの補正方策の段階的最適化処理に基づいて達成可能ではない範囲のマスクブランク上に存在する欠陥の補正が容易になる。その結果、欠陥補償の共通最適化処理は、転写性欠陥を有するブランクからマスクを生成する時に収量を高める。
【0047】
結像変換のパラメータと少なくとも1つの欠陥の変位のパラメータとを決定する段階は、設計データと、当該欠陥の位置に関するデータと、結像変換のパラメータと、当該欠陥の変位のパラメータとを含むターゲット汎関数を定式化する段階と、結像変換のパラメータと変位のパラメータとを同時に変化させることによってターゲット汎関数を最小にする段階とを含むことができる。
【0048】
ここでもまた、この点に関する詳細を上記に引用した本出願人の特許文献US 9 658 527 B2に提供している。
【0049】
上記で定めた方法は、少なくとも1つの欠陥を変位させた後に、結像変換が設けられたパターン要素をマスクブランク上に生成する段階を更に含むことができる。
【0050】
現時点で好ましいのは、マスクブランク上で欠陥を変位させること、及び生成されるパターンにおいて結像変換を実施することの両方の補償方策のパラメータを共通の最適化処理において決定することである。次いで、次の段階では、マスクブランクの欠陥に変位処理を施し、先に結像変換を施したパターンがマスクブランク上に最終的に生成される。
【0051】
生成されるパターンの結像変換と欠陥の変位とは、段階的最適化処理において実施することができる。これは、2つの補償方策を実施するシーケンスとは無関係に適用される。設計データに対する少なくとも1つのパターン要素の少なくとも1つの変更が第1の段階を用いて実施される実施形態が現時点では好ましい。
【0052】
順次最適化処理の欠点は、第1の補償方策を実施した後に、第2の最適化処理に対する入力データを確立するために解析段階を実施しなければならない点である。
【0053】
少なくとも1つの欠陥を補償するように設計データに対する少なくとも1つのパターン要素の少なくとも1つの修正を決定する段階は、生成される少なくとも1つのパターン要素の輪郭を局所的に修正する段階を含むことができる。
【0054】
マスクブランク上に生成されるパターンの結像変換の形態にある上述した広域修正に加えて、生成される少なくとも1つのパターン要素の少なくとも1つの修正は、マスクブランク上に生成される個々又は少数のパターン要素の局所修正を含むことができる。一例として、個々のパターン要素の輪郭の局所修正は、欠陥をそのサイズに起因してパターン要素によって完全には覆うことができない場合に使用することができる。1又は少数のパターン要素を生成する前の当該パターン要素の局所修正、すなわち、設計データに基づく当該パターン要素の局所修正を「事前補償的修復(pre-compensational repair)」と呼ぶことができる。
【0055】
生成されるパターン要素の輪郭の局所修正は、非常に高い空間分解能(≦10nm)で補償される欠陥の位置を入力データとして必要とする。
【0056】
本発明による方法は、上記で指定した方法の段階a.から段階d.を実施する前に、結像変換が設けられた生成されるパターン要素をマスクブランク上に生成する段階を更に含むことができる。
【0057】
しかし、2つの補償方策に対する2つのパラメータセットを決定した後に、結像変換を施したパターンを最初にマスクブランク上に生成し、その上でパターンの局所部分を1又は複数の欠陥と共に変位させることができる。ここでは、実施される補償方策のシーケンスは、共通最適化処理において決定された変位及び結像変換に対するその後のパラメータ値に対して影響を有し、従って、共通最適化処理の開始前に設定する必要があることに注意しなければならない。
【0058】
生成される少なくとも1つのパターン要素の輪郭を局所的に修正する段階及び少なくとも1つの欠陥を変位させる段階は、パターン要素が設けられたマスクブランクを用いてウェーハを露光する時に当該欠陥が実質的に効果を持たないことを引き起こすことができる。
【0059】
生成される少なくとも1つのパターン要素の輪郭を局所的に修正する段階は、生成される隣接パターン要素の輪郭及び/又は位置を実質的に変更することができず、これらの隣接パターン要素は修正されない。これは、生成されるパターン要素の輪郭の局所修正が生成される隣接パターン要素に対して実質的に効果を持たないことを保証する。
【0060】
生成される少なくとも1つのパターン要素の輪郭の局所修正は、当該パターン要素の輪郭を拡大及び/又は縮小する段階を含むことができる。
【0061】
生成される少なくとも1つのパターン要素の少なくとも1つの修正を決定する段階は、生成される当該パターン要素の設計データに対する結像変換のためのパラメータを決定する段階と、生成される少なくとも1つのパターン要素の輪郭を修正する段階とを含むことができる。
【0062】
広域結像変換を実施する段階と、マスクブランク上に生成されるパターンの少なくとも1つのパターン要素の輪郭を局所的に修正する段階とを組み合わせることができる。
【0063】
結像変換のパラメータ、少なくとも1つの欠陥の変位のパラメータ、及び生成される少なくとも1つのパターン要素の輪郭を局所的に修正するためのパラメータを決定する段階は、共通最適化処理において実施することができる。
【0064】
共通最適化処理の利点に関しては上述している。これらの利点は、マスクブランクの欠陥に対する3つの補償方策のためのパラメータを互いに決定する時に更に高まることになる。
【0065】
本発明による方法は、マスクブランク上に生成された少なくとも1つのパターン要素を生成された当該パターン要素が設けられたマスクブランクを用いてウェーハを露光する時に少なくとも1つの欠陥が実質的に効果を持たないように局所的に修正する段階を更に含むことができる。
【0066】
結像変換のパラメータ、少なくとも1つの欠陥の変位のパラメータ、生成される少なくとも1つのパターン要素の輪郭を局所的に修正するためのパラメータ、及びマスクブランク上に生成された少なくとも1つのパターン要素を局所的に修正するためのパラメータを決定する段階は、共通最適化処理において実施することができる。
【0067】
マスクブランク上に生成されるパターン要素は、化学線波長の電磁放射線を実質的に完全に吸収する吸収パターン要素を有することができる。
【0068】
マスクブランクは、極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクのマスクブランクを含むことができる。
【0069】
好ましくは、上記で定めた方法は、EUVマスクを生成するのに使用されるマスクブランクの欠陥を補償するために適用される。冒頭部分で上述のように、これらのマスクに対しては、転写性欠陥に関する最も厳しい要件が存在する。しかし、上述した方法は、透過フォトマスクをもたらすマスクブランクに対する欠陥を補償するために使用することができる。透過フォトマスクの欠陥を補償する時には、少なくとも1つの欠陥を変位させるためのピクセル配置の導入によって引き起こされるマスクの透過率変化は、1又は2以上のピクセル配置を追加的に書き込むことによって補償しなければならない。この点に関する詳細に関しては、上記で引用した本出願人の特許文献(US 9 658 527 B2)に説明されている。
【0070】
コンピュータプログラムは、コンピュータシステムによって実行された時に上記で指定した態様の方法段階をこのコンピュータシステムに実施するように促す命令を含有する。
【0071】
本発明の第2の態様により、上記で指定した課題は、請求項19に記載の装置によって解決される。実施形態では、マスクブランクの少なくとも1つの欠陥を補償するための装置は、(a)マスクブランクの少なくとも1つの欠陥の位置に関するデータを取得するための手段と、(b)マスクブランク上に生成されるパターン要素に関する設計データを取得するための手段と、(c)生成されるパターン要素が設けられたマスクブランクを用いてウェーハを露光する時に少なくとも1つの欠陥が実質的に効果を持たないように生成されるパターン要素に対して当該欠陥が配置されるかを決定するための手段と、(d)生成されるパターン要素が設けられたマスクブランクを用いてウェーハを露光する時に少なくとも1つの欠陥が実質的に効果を持たないようにマスクブランク上で当該欠陥を変位させるための手段とを有する。
【0072】
装置は、上述した態様の方法段階を実施するように具現化することができる。
【0073】
以下の詳細説明において図面を参照して本発明の現時点で好ましい例示的実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】極紫外(EUV)波長範囲のための従来技術からのマスクブランクの欠陥のサイズ分布の例を提示する図である。
図2A】3つの欠陥を有するマスクブランク上の従来技術からの変位パターン(明るい背景)の例を示す図である。
図2B】3つの欠陥を有するマスクブランク上の90℃だけ回転されたパターンの例を示す図である。
図2C】3つの欠陥を有するマスクブランク上の小さい角度だけ回転されたパターンの例を示す図である。
図3】非常に異なるパターンサイズ及びパターン密度を有する従来技術からの4つのパターン要素の例を示す概略図である。
図4A】規則的な距離で配置され(L/S(線/間隔)配置)、小さくする(reducing)幅及び間隔、すなわち、減少する(decreasing)半ピッチを有する線形パターン要素に関する従来技術からの欠陥分布の例を示す図である。
図4B】規則的な距離で配置され(L/S(線/間隔)配置)、小さくする幅及び間隔、すなわち、減少する半ピッチを有する線形パターン要素に関する従来技術からの欠陥分布の例を示す図である。
図4C】規則的な距離で配置され(L/S(線/間隔)配置)、小さくする幅及び間隔、すなわち、減少する半ピッチを有する線形パターン要素に関する従来技術からの欠陥分布の例を示す図である。
図5】従来技術からの変形したL/S配置を有するマスクを再現した図である。
図6】EUV波長範囲のためのマスクブランクの層構造を通る略断面図である。
図7図6に記載のマスクブランクから生成されたEUVマスクを通る略断面図である。
図8】多層構造が付加された面に局所陥凹(ピット)の形態にある欠陥を有する基板を有するマスクブランクを通る略断面図である。
図9】基板面局所隆起(バンプ)の形態にある欠陥を有し、それが多層構造内で横広がりに関して拡大し、高さを失うマスクブランクを通る断面図である。
図10】多層構造が付加された面に局所バンプの形態にある欠陥を有する基板を有するマスクブランクを通る略断面図である。
図11】欠陥の周りに基準マークを更に有する図8のマスクブランクを再現した図である。
図12】12mm×12mmの区域と3つの異なる均一なピクセル密度とを有するピクセル配置のEUVマスク内への導入のシミュレーションを部分画像Aで概略的に明らかにし、ピクセル配置の異なるピクセル密度によって引き起こされたピクセル配置の縁部での変位を部分画像Bに提示する図である。
図13】36mm×36mmの区域を有するピクセル配置に関して図12のシミュレーションを再現した図である。
図14】ランダム分布で存在し、ターゲット位置からのランダム分布偏差を有する9つの欠陥をアクティブ領域内に有するマスクブランクを示し、更にアクティブ領域にわたって変化するピクセル密度を有する4つのピクセル配置のマスクブランクのアクティブ領域の基板内への導入によるターゲット位置への欠陥の接近を再現した平面図である。
図15】3つの初期構成の各々に関して100通りのランダム欠陥分布及びターゲット位置からのランダム欠陥偏差を模擬したマスクブランクのアクティブ領域内への4つのピクセル配置の模擬書込によるこれらの初期構成に関するターゲット位置からのいくつかの欠陥の距離の短縮を示す図である。
図16】ピクセル配置の許容可能ピクセル密度が図15から2倍にされた図15を反復した図である。
図17】マスクブランクのアクティブ領域の範囲に存在する欠陥の個数に関して7.5という平均を有するポアソン分布を仮定し、更にターゲット位置からの偏差に関してランダム分布を仮定した図15を反復した図である。
図18】2倍にした最大許容可能ピクセル密度で図17を再現した図である。
図19】3倍にした最大許容可能ピクセル密度で図17を提示する図である。
図20】マスクブランクの欠陥を補償するための装置の2つの実施形態を示す概略図である。
図21図20の装置の第1の部分のブロック図を示す概略図である。
図22図20の装置の第2の部分を通る略断面図である。
図23】マスクブランクの少なくとも1つの欠陥を補償するための本発明による方法の流れ図である。
図24】線/間隔(L/S)配置の形態にあるパターンがその上に生成されることになる例示するセクション内に欠陥を有するマスクブランクの平面図のセクションを示す図である。
図25】マスクブランクの基板内への1又は2以上のピクセル配置の導入の後にその結果として欠陥がターゲット位置に変位した図24のマスクブランクのセクションを再現した図である。
図26】生成されるパターンが吸収層を構造化することによって生成された後の図25のマスクブランクのセクションを提示する図である。
図27】矢印が欠陥の位置を修正することができる領域を表す図24のマスクブランクのセクションを再現した図である。
図28】1又は2以上のピクセル配置をマスクブランクの基板の中に書き込む段階が欠陥をターゲット位置に変位させた後の図24のマスクブランクのセクションを反復した図である。
図29】設計データに対して変位したL/S配置のパターン要素が吸収層を構造化することによって生成された後の図28のセクションを示す図である。
図30図24のものよりも4倍大きい面積を有する欠陥を有する図24のマスクブランクのセクションを示す図である。
図31】第1に1又は2以上のピクセル配置の導入によって欠陥を変位させ、第2に2つのパターン要素の輪郭を設計データと比較して局所的に修正した共通最適化処理の結果を示す図30のセクションを再現した図である。
図32】局所修正されたパターンを生成した後の図31のセクションを提示する図である。
図33】欠陥を変位させた後の図30の第2のものを表す図である。
図34】設計によって指定されたパターンを生成した後の図33のセクションを示す図である。
図35図22に概略で指定した装置を用いて補償的修復を実施した後の図34のセクションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
下記では、極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクを生成するためのマスクブランクの欠陥を補償するための本発明による方法及び本発明による装置の現時点で好ましい実施形態のうちの一部を後により詳細に議論することができるように、最初に従来技術に関するいくつかの説明を提示する。しかし、マスクブランクの欠陥を補償するための本発明による方法は、下記で議論する例に限定されない。言い換えれば、本方法は、反射性及び透過性のフォトマスクの欠陥を補償するために使用することができる。更に、下記で説明する方法は、パターン要素を用いてマスクブランクの欠陥を補償するための現時点で公知の方法と問題なく組み合わせることができる。
【0076】
図1(従来技術からの)は、K.Seki他の会議寄稿「EUV埋め込み欠陥の転写性を理解する試み(Endeavour to Understand EUV Buried Defect Printability)」、SPIE9658会報、Photomask Japan 2015:Photomask and Next Generation Lithographic Mask Technology XXII、2015年7月から引用したものである。この図は、EUV波長範囲では約1nmの高さ偏差と40nmよりも小さい横広がりとを有する欠陥であっても既にウェーハ内に転写性欠陥をもたらしてしまうことがあることを示している。欠陥によって引き起こされる臨界寸法(CD)の10%の変化は、図1の転写性欠陥に対する基準として定められる。
【0077】
図2A図2C及び図3から図5は、R.Jonckheere他による会議寄稿「EUVマスクブランク欠陥の克服:我々ができること及び我々がすべきこと(Overcoming EUV mask blank defects: what we can, and what we should)」、2017年4月5~7日、Photomask,Japan 2017から引用したものである。図2Aから図2Cでは、マスクブランク内に3つの欠陥が存在し(×印で示す)、目指すことは、マスクを露光した時にこれらの欠陥が不可視であるようにこれらの欠陥をパターン要素によって覆うことである。図2Aから図2Cでは、白い区域が吸収パターン要素であり、暗い区域がEUVマスクの多層構造領域である。図2Aは、マスクブランク上にマーク(基準マーク)によって設定された基準フレーム(黒で示す)に対するパターン要素の変位を示している。生成されるパターンの-x方向及び+y方向の変位により、3つの欠陥のうちの2つがパターン要素の下に静止するように吸収パターンを変位させることができる。
【0078】
図2Bに指定しているように、マスクブランクの多層構造に対して垂直な軸線の周りのマスクブランクのマークに対する生成されるパターンの90℃の回転によってマスクブランクの3つの欠陥のうちの2つがパターン要素によって覆われ、それによって補償される。しかし、図2Aと比較すると、補償される欠陥は、パターン要素の変位によって補償された欠陥と同一ではない。
【0079】
図2Cは、マスクブランクの多層構造の面に対して垂直な軸線の周りの生成されるパターンの数度の回転を提示している。図2Cに指定している回転の結果として、3つ全てのマスクブランク欠陥をパターン要素の下に隠すことができる。露光工程を実施する前にマスクをスキャナによって反対方向に回転させることにより、マスクブランク又はマスクのマークシステムに関するパターン回転の形態にある結像変換が取り消される。
【0080】
下記で議論する全ての他の結像変換と同様に、図2Aから図2Cのパターン要素の様々な結像変換には、設計データに関して意図的に導入するマスク上のパターン要素の変化をリソグラフィシステムのステッパによって補償することができるという制約条件が課せられる。
【0081】
図3(同じく従来技術)は、パターン要素が非常に異なるパターンサイズ及びパターン密度を有する4つの異なるパターンを特徴として示している。図2の場合と同様に、明るい領域は吸収パターン要素を表し、暗い領域はEUVマスクの多層構造を示している。補償されるマスクブランクの欠陥を各部分画像内に例示的に指定している。図3の2つの右手の像は、第1に、補償される欠陥のサイズと比較して大きいパターン要素を有するパターンを示している。第2に、パターン要素の面積は、多層構造が可視である面積よりも有意に大きい。その結果、図3の右手の部分画像の両方のパターンに関して、マスクブランク上に生成されるパターンを欠陥が効果を示さないように、すなわち、欠陥がパターン要素によって覆われるように配置することを容易にすることができる。
【0082】
左手の部分画像内では、パターン要素が平均的に有意に小さく、反射性又は透過性の領域が露光されるマスク面積が、図3の右手の部分画像と比較して有意に大きくなっている。その結果、欠陥の補償はかなり困難になる。特に左上の部分画像からは、規則的な間隔で配置され、パターン要素の幅とこのパターン要素から隣接パターン要素までの距離とが等しい均一な線形パターン要素(L/S(線/間隔)配置)を有するパターン内では、欠陥を補償するのに最も困難な条件が発生することを推察することができる。L/S配置を有するパターンの比較的大きい領域内では、完了する欠陥補償は、最も小さい横寸法が吸収パターン要素の幅よりも大きくない欠陥に限定される。
【0083】
図4Aから図4Cでは、欠陥分布を様々なL/S配置に関するABI(化学線ブランク検査)強度の関数として例示しており、個々のパターン要素の幅又はこれらのパターン要素の間隔は、個々の図のパラメータである。当業技術では、個々のパターン要素の幅又はこれらのパターン要素の間隔を半ピッチとして指定する。この場合に、半ピッチは、パターン要素の距離の半分と隣接パターン要素までの距離の半分とを表している。その結果、L/S配置では、半ピッチという表現は、パターン要素の幅とパターン要素から隣接パターン要素までの距離とを同じく表している。半ピッチという表現は、マスクがウェーハ上に生成するL/S構造に関するものである。マスクとウェーハの間にある投影レンズは、マスクの構造要素又はパターンを典型的に4倍又は5倍の縮小サイズで投影するので、マスクのパターン要素は、4倍又は5倍だけ大きい。歪像投影では、例えば、縮小は、1つの方向(例えば、x方向)に4倍を有することができ、それと垂直な方向(例えば、y方向)に8倍を有することができる。
【0084】
図4Aから図4Cのダイアグラムでは、縦座標のゼロ点は、L/S配置の2つの要素の間の中心を表している。縦座標の最も大きい数値と最も小さい数値は、L/S配置の隣接し合う要素の中心までの距離を指定し、従って、半ピッチの2倍に対応する距離を表している。
【0085】
図4Aは、22nmの半ピッチを有するL/S配置に関する欠陥分布を示している。図4Aから図4Cの分布内に示す全ての欠陥が半ピッチよりも小さい横寸法を有する。垂直の破線の左の領域内では、検出された欠陥のABI強度は、ウェーハ上に転写性欠陥をもたらすには低すぎる。図4Aから図4Cに白い正方形として示す欠陥は、パターン要素の下又は直近に位置し、同じくウェーハ上で可視である効果を引き起こさない。ウェーハ上で可視である変化をもたらす欠陥は、図4Aから図4Cの放物線の範囲に位置する。図4Aから図4Cでは、これらの欠陥を黒の正方形で例示している。一例として、これらの欠陥は、マスクブランク上に生成されるパターンを変位させることによって補償することができる。更に、これらの欠陥は、生成されるパターンを修正することなく本発明による方法を用いて補償することができる。図4Aでは、欠陥分布の補償を必要とする全ての欠陥、すなわち、放物線の範囲に位置し、黒い正方形で示す欠陥を補償することができる。
【0086】
図4Bは、18nmの半ピッチを有するL/S配置を生成することが意図されたマスクブランクの欠陥分布を再現している。図4Aに示したものに加えて、図4Bは、第2の右手の垂直破線を示しており、この線は、その右に、マスクブランク上に存在する欠陥がそのサイズに起因してもはや補償することができない領域を指定している。18nmの半ピッチではこの領域内に欠陥は位置しておらず、従って、全ての欠陥を本発明による方法を用いて補償することができる。
【0087】
図4Cは、16nmの半ピッチを有するL/S配置を生成することが意図されたマスクブランクの欠陥分布を提示している。右手の破線は、図4Bと比較して明らかに左に変位している。ここで、サイズに起因してパターンの結像変換に基づいてもはや完全には補償することができない3つの欠陥が、16nmの半ピッチを有するL/S配置に対するABI強度でのこの領域に位置する。更に、サイズに起因して、これらの欠陥は、本発明による方法によっても同じくもはや完全には補償することができない。下記では、それにも関わらずこれら3つの欠陥の効果をウェーハ露光時にどのようにして殆ど回避することができるかに関して図30から図35の議論に関連して説明する。
【0088】
図5は、従来技術からのEUV波長範囲のためのフォトマスクを示している。図5では、吸収層を有するマスクの領域を斜めハッチングで表している。スキャナの露光スロットをマスクの上方に暗灰色の領域によって示しており、この露光スロットは、ウェーハを露光するためにマスクにわたって移動される。十字の形態にあるマークがマスクの4つのコーナに付加されており、これらのマークは、露光されるウェーハに対してマスクを位置合わせするように作用する。
【0089】
更に、図5のマスク上には5つの欠陥が存在し、これらの欠陥を黒点で提示している。図5のマスクは垂直L/S配置を有する。5つ全ての欠陥をL/S配置のパターン要素の下に同時に隠し、それによってこれらを補償するために、このマスクパターンは、式dx=k・y2及びdy=0によって表される非線形結像変換又は2次歪みを受けている。スキャナによってウェーハを露光する前に、スキャナのパラメータを適切に設定することにより、マスクの結像変換がウェーハ上で再現されないことを保証する。その結果、ウェーハを露光するのに使用されるスキャナのマスクの歪みを補正することに関する可能性が、マスクブランク上に存在する欠陥を補償するために可能な意図的な結像変換の限度を設定する。上述のように、この補償方法の最も深刻な欠点は、スキャナのパラメータ設定値の大部分がマスク生成時に予め設定される点にある。元来、これらのパラメータ設定値は、ウェーハの露光工程を最適化するために提供されるものである。その結果、ウェーハに対する露光工程の処理ウィンドウが劇的に狭まる。
【0090】
図6は、13.5nmの領域内の露光波長のための理想的である、すなわち、欠陥不在のEUVマスクブランク600を通る略断面を示している。EUVマスクブランク100は、例えば、石英のような低い熱膨張率を有する材料で作られた基板610を有する。EUVマスクのための基板としては、例えば、ZERODUR(登録商標)、ULE(登録商標)、又はCLEARCERAM(登録商標)のような他の誘電体、ガラス材料、又は半導体材料を同じく使用することができる。EUVマスクブランク160の基板610の後側617は、EUVマスクブランク600の生成中、EUVマスクのその後の生成中、及びEUVマスクの作動中に基板610を保持するように作用する。
【0091】
典型的には、マスクブランク600又はフォトマスクの生成中に基板602を保持するために基板610の後側617に光学的部分透過性及び/又は導電性の層(図6には例示していない)が付加される。この薄い(20nm程度の)後側層は、例えば、酸化インジウム錫(ITO)を含むことができる。
【0092】
基板610の前側615の上には、下記でMoSi層とも表す交替するモリブデン層(Mo)620及びシリコン(Si)層625の対を20個から80個含む多層膜又は多層構造640が堆積される。Mo層620の厚みは4.15nmであり、Si層625は2.80nmの厚みを有する。多層構造640を保護するために、例えば、二酸化珪素からなり、好ましくは7nmの厚みを典型的に有するキャッピング層630が最上位のシリコン層625に付加される。キャッピング層630を形成するために、例えば、ルテニウム(Ru)のような他の材料を同じく使用することができる。MoSi層において、モリブデンの代わりに、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、レニウム(Re)、及びイリジウム(Ir)のような高質量数を有する他の元素からなる層を使用することができる。多層構造640の堆積は、例えば、イオンビーム蒸着(IBD)によって行うことができる。
【0093】
キャッピング層630の上にはバッファ層635が堆積される。可能なバッファ層材料は、石英(SiO2)、シリコン酸素窒化物(SiON)、Ru、クロム(Cr)、及び/又は窒化クロム(CrN)である。バッファ層635の上には吸収層660が堆積される。吸収層660に適する材料は、取りわけ、Cr、窒化チタン(TiN)、及び/又は窒化タンタル(TaN)である。吸収層660の上には、例えば、酸窒化タンタル(TaON)からなる反射防止層665を付加することができる。
【0094】
図7は、図6のマスクブランク600から生成されたEUVマスク700を通る略断面を提示している。この目的に対して、吸収層660は、例えば、電子ビーム又はレーザビームを用いて吸収層660の全域から吸収体パターン750のパターン要素760、770が生成されるように構造化される。バッファ層635は、パターン750を生成するために吸収層660を構造化する時に多層構造640を保護するように作用する。
【0095】
EUV光子(図7には例示していない)は、EUVマスク700上に入射する。これらのEUV光子は、吸収体パターン750のパターン要素760、770を有するマスク700の領域内では吸収され、吸収体パターン750のパターン要素760、770が不在の領域710内では多層構造640によって反射される。
【0096】
上述のように、図6は、理想的なEUVマスクブランク600を提示している。図8は、局所陥凹(ピット)の形態にある局所欠陥820を有する構造810を有するマスクブランク800を明らかにしている。局所ピットは、例えば、基板810の前側815の研磨中にもたらされたものとすることができる。図8に明らかにしている例では、欠陥820は、多層構造840の中を通って実質的に変化しない形態で伝播する。
【0097】
図8は、マスクブランク800の欠陥820の一例を示している。既に冒頭部分で言及したように、マスクブランク600、800内には様々な更に別のタイプの欠陥が存在する場合がある。基板810のピット820と共に、基板610、810の面615、815上に局所バルジ(バンプ)が発生する可能性がある(次の図9を参照されたい)。更に、基板610、810の面615、815の研磨時に微小なスクラッチがもたらされる可能性がある(図8には例示していない)。既に冒頭部分で議論したように、多層構造640、840の堆積中に基板610、810の面615上に粒子が過成長する場合があり、又は粒子が多層構造640、840内に組み込まれる場合がある(同じく図8には示していない)。
【0098】
マスクブランク600、800の欠陥は、基板610、810内のこれらの欠陥の開始点を基板810の前側又は面615、815に、多層構造640、840内に、及び/又はマスクブランク600、800の吸収層660、860の面830上に有する可能性がある(図8には示していない)。基板610、810の前側615、815上に存在する欠陥820は、図9に示すように、多層構造940での伝播中に横寸法と高さの両方を変化させる。この変化は両方の方向に発生する場合があり、すなわち、欠陥は、多層構造840内で成長又は収縮する場合があり、及び/又はその形状を変化させる場合がある。マスクブランク900の欠陥920は、多層構造940を通過する時に横方向に成長し、同時に高さが減少する。吸収層960の面930では、欠陥920は、外乱のないマスクブランク900から実質的に高さ偏差を持たない。それにも関わらず、このマスクブランク900から生成されたEUVマスクは、マスクブランク900の多層構造940の湾曲した層915、920に起因して埋め込み位相欠陥を示している。
【0099】
専ら吸収層660、960の面830、930上から発するわけではない欠陥820、920を以下では埋め込み欠陥とも呼ぶ。埋め込み欠陥は、ウェーハを露光する時に振幅誤差及び/又は位相誤差をもたらす場合がある。欠陥820は、振幅誤差と位相誤差をもたらし、それに対して欠陥920は、主として位相誤差をもたらす。
【0100】
理想的には、欠陥820、920の横寸法及び高さは、1nmよりも小さい分解能で決定しなければならない。更に、欠陥820、920のトポグラフィは、様々な測定方法によって互いに独立に決定しなければならない。欠陥820、920の輪郭と吸収層860、960の面830、930上でのこれらの欠陥の位置とを測定するために、マスクブランク800、900内に後側617から放射される紫外波長範囲のレーザ放射線を使用することができる。更に、この目的に対して、特に多層構造840、940内の欠陥820、920の範囲を確立するためにX線を使用することができる。
【0101】
面感知方法の検出限界は、これらの方法を用いた欠陥位置(すなわち、その図心)の検出能又は検出率に関連する。走査プローブ顕微鏡、走査粒子顕微鏡、及び光学撮像は、面感知方法の例である。そのような技術によって検出することが意図される欠陥920は、特定の面トポグラフィ又は材料コントラストを有するべきである。分解可能な面トポグラフィ又は必要とされる材料コントラストは、例えば、高さ分解能、感度、及び/又はSN比のようなそれぞれの測定計器の性能に依存する。
【0102】
図10のマスクブランク1000を用いて欠陥の有効欠陥サイズを明らかにする。図10の例は、基板1010の前側1015のバンプの形態を有する局所欠陥1020を通る断面を表している。図8の欠陥820と類似の方式で、局所欠陥1020は、多層構造1040の中を通って実質的に変化することなく伝播する。吸収層1060の面1030の領域1070は、欠陥1020の有効欠陥サイズを表している。このサイズは、欠陥1020の補償に使用される欠陥1020の横寸法に関連する。図10に記号で表すように、典型的には、有効欠陥サイズ1070は、欠陥1020の実横寸法よりも小さい。ガウスプロファイルを有する欠陥1020では、有効欠陥サイズは、欠陥1020の半値全幅(FWHM)の1倍又は2倍に対応することができる。
【0103】
有効欠陥サイズの領域1070が補償された場合に、欠陥1020の残っている残余1080は、マスクブランク1000から生成されたEUVマスクの露光中にウェーハ上で可視である障害にもはや至らない。有効欠陥サイズの概念は、個々の欠陥820、1020のサイズを最小にすることによってEUVマスクの生成中のマスクブランク800、1000の効率的な利用を可能にする。更に、この概念は、欠陥820、1020のリソース効率的補償を可能にする。
【0104】
領域1090は、欠陥1020の位置及びその輪郭を決定する時に考慮することができる安全マージンを示している。この追加の安全マージンを使用することにより、欠陥1020の有効欠陥サイズ1070は、実際の欠陥1020の横寸法よりも小さい、それに等しい、又はそれよりも大きいとすることができる。これに加えて、有効欠陥サイズ(1070)を決定する時、取りわけ、実際の欠陥1020の位置を決定する時に、不可避な誤差、更にマスクの露光に使用される光源の非テレセントリック性に関する更に別の観点を考慮することができる。
【0105】
図11のマスクブランク1100は、マスクブランク1100の座標系に関する図8の欠陥820の図心1110の局在性を明らかにしている。例えば、参照マーク1120の規則的な配置をマスクブランク1100の多層構造840内にエッチングすることにより、このマスクブランク上に座標系が生成される。図11のマスクブランク1100のセクションは、1つの参照マーク1120を表している。欠陥を変位させることによる及び/又はマスクブランク1100から生成されるパターン750の結像変換による欠陥820の補償が可能になるためには、欠陥820の図心1110と参照マーク1120の間の距離1130の位置精度が30nmよりも高く(3σの偏差を有する)、好ましくは5nmよりも高く(3σの偏差を有する)なければならない。現時点で利用可能な測定計器は、10nmから20nmまで(3σの偏差を有する)の領域内の位置精度を有する。
【0106】
欠陥820、920、1020のトポグラフィの決定と類似の方式で、1又は2以上の参照マーク1120に対する図心1110の距離1130は、複数の測定方法を用いて独立に決定しなければならない。一例として、例えば、EUV波長範囲のためのAIMSTM(空中像メッセージングシステム)及び/又はABI(化学線ブランク検査)のための装置、すなわち、EUVブランク600、800、900、1000の埋め込み欠陥を検出し、その位置を決定するための走査暗視野EUV顕微鏡のような化学線撮像方法がこの目的に適している。更に、これを行うために、面感知方法、例えば、走査プローブ顕微鏡、走査粒子顕微鏡、及び/又は化学線波長外の光学撮像を使用することができる。更に、欠陥820、920、1020をマスクブランク800、900、1000、1100の範囲でのこれらの欠陥の物理的位置で測定する例えばX線のような方法をこの目的に使用することができる。
【0107】
例えば、欠陥920のような吸収層960の面930上では目立たないが、それにも関わらずEUVマスクの露光中に可視である障害をもたらす多層構造940の欠陥を検出するのは複雑である。特に、そのような欠陥の正確な位置を定めるのは困難である。
【0108】
しかし、下記で説明する補償方法及び/又は修復方法では、補償及び/又は修復を実施しなければならない位置は、可能な最も高い精度で確立しなければならない。
【0109】
マスクブランク800、900、1000の吸収層860、960、1060の面830、930、1030上でマスクブランク800、900、1000の欠陥820、920、1020をどのように変位させることができるかに関して以下の図に基づいて説明する。ここでは、パターン750を生成する時に欠陥820、920、1020がパターン要素760、770の下に隠れ、それによって不利な効果が発現することができなくなるように欠陥820、920、1020を変位させることが目標である。図12の上側部分画像Aは、152mm×152mmの寸法を有するEUVマスクブランク1200の平面図を示し、すなわち、上側部分画像での諸元を座標系の原点がEUVマスク1200の図心に位置するものとしてマイクロメートルで指定している。12mm×12mmのサイズを有する区域1220において、異なるピクセル密度を有するピクセル配置の導入又は書込を模擬している。異なるピクセル配置の効果を図12の下側部分画像Bのダイアグラム1250に例示している。ダイアグラム1250の横座標をマイクロメートルで指定し、縦座標をナノメートルで指定する。
【0110】
上述のように、マスクブランク800、900、1000の基板内のピクセルは、変形要素と呼ぶ小さい変形領域を生成する。典型的には、ピクセルによって引き起こされた変形要素の中心にある材料は、ピクセルが材料内に導入される前に存在した密度よりも低い密度を有する。その結果、ピクセルを書き込むことによって基板810、910、1010材料の局所拡大が引き起こされる。ピクセルは、変形要素の周りの材料の局所拡大が実質的に等方性のものであるように設計することができる。しかし、変形要素の周りの局所範囲が基板810、910、1010の平面内、すなわち、xy平面内で主として1つの方向のものであるようにピクセルを設計することができる。ピクセルを書き込むという第2の実施形態は、変形要素の領域内で局所拡大の方向を設定することを可能にするので好ましい。互いに空間的に密に生成された複数のピクセル又はその変形要素の効果は累積的である。これは、ピクセル配置を基板810、910、1010内に導入するか又は書き込むことにより、マスクブランク800、900、1000の吸収層860、960、1060の面830、930、1030を1つの方向にターゲット方式で変位させることが可能になることを意味する。密度に加えて、マスクブランク800、900、1000の基板の中にピクセルを導入することにより、マスク800、900、1000の基板810、910、1010の光透過率も局所的に変化する。下記では、ピクセル配置の2次元密度をピクセル配置によってもたらされた光吸収率変化の百分率で指定する。
【0111】
図12及び図13のピクセル配置のピクセルは、変形要素による基板の材料の拡大及び従ってマスクブランク1200の面の拡大が主として水平方向(x方向)に引き起こされるように設計される。図12の部分画像Bのダイアグラム1250には、ピクセル配置1220の範囲で均一であり、マスクブランク1200の基板の10%の光吸収率変化に対応するピクセル密度を有するピクセル配置1220の導入を実線曲線1260で例示している。ピクセル配置1220の左縁部では、基板の光透過率の10%の変化に対応するピクセル密度を有するピクセル配置1220は、マスクブランク1200の面の27nmの変位をもたらしている。ピクセル配置の中心では、マスクブランク1200の面1210の変位は実質的にゼロまで減衰している。これを点線の直線1240に示している。ピクセル配置1220の左端部では、ピクセル配置1220は、同じく27nmの-x方向の変位をもたらす。厳密には、これらの陳述は、ピクセル配置1220をマスクブランク1200の基板の中心に書き込む場合にのみ適用される。選択される構成の非対称性は、これらの曲線が図12の部分画像Bのダイアグラム1250の座標系の正確に原点で交ることを妨げる。
【0112】
図12の下側部分画像B内のダイアグラム1250内の破線曲線1270は、ピクセル配置1220の領域内の20%の光透過率変化に対応する12mm×12mmの大きい区域内のピクセル密度によって引き起こされたマスクブランク1200の面1210の変化を再現している。曲線1270から推察することができるように、ピクセル配置1220の各辺の中点の位置でのピクセル配置1220のこのピクセル密度は、マスクブランク1200の面1210の54nmの局所変位をもたらす。
【0113】
図12の下側部分画像B内のダイアグラム1250内の一点鎖線曲線1280は、ピクセル配置1220の領域内の基板610の30%の光透過率変化をもたらすピクセル密度に対応する部分画像Aのマスクブランク1200の12mm×12mmの大きい区域内のピクセル密度によって引き起こされたマスクブランク1200の面1210の変位を示している。ピクセル配置の垂直中点を覆うマスクブランク1200の面1210の領域は、初期状況、すなわち、ピクセル配置1220のない状況に対して81nmだけ変位している。曲線1260、1270、及び1280から推察することができるように、ピクセル配置1220によって引き起こされるマスクブランクの面1210の変位は、ピクセル配置1220のピクセル密度に伴って線形に増大する。
【0114】
22nmの半ピッチを有するL/S配置では、L/S配置のパターン要素に対して垂直な欠陥820、920、1020の変位の場合の欠陥820、920、1020の最大必要変位は、リソグラフィ装置の投影レンズが4倍の縮小を実施する場合に約45nmの領域に位置する。これらの変位は、曲線1270及び1280のピクセル配置によって達成することができるべきである。
【0115】
曲線1260、1270、及び1280によって説明されるマスク1200の面1210の変位は、ピクセル配置1220からの距離が増大すると共に減少する。しかし、図12の部分画像Bのダイアグラム1250内の垂直線の右では、この減少は、ピクセル配置1220の範囲内の増大よりも有意に小幅である。補償される欠陥820、920、1020は2桁又は低い3桁のナノメートル範囲の横寸法を有するので、マスクブランク1200の一部に空間的に制限されたピクセル配置1220による欠陥820、920、1020の直径の数個分を超えない距離にわたるこれらの欠陥の変位は、これらの欠陥の注目に値する歪みを引き起こさない。
【0116】
図13は、ピクセル配置1320がマスクブランク600の基板610内で36mm×36mmの区域を占有するという違いを用いて図12を再現している。図12のピクセル配置1220の左の各辺の位置とEUVマスクブランク1300に対する図13のピクセル配置1320の左の各辺の位置とは、EUVマスクブランク1200に関して対応する。曲線1360、1370、及び1380から推察することができるように、マスクブランク1300の基板の光透過率の10%、20%、及び30%の減衰に対応するピクセル配置1320のピクセル密度に対してマスクブランク1300の面1310上の変位は、97nm、194nm、及び291nmである。これは、マスクブランク1300内に単一ピクセル配置1320を書き込むことによって欠陥820、920、1020局所パターン要素760、770の数百ナノメートルの変位を達成することができることを意味する。その結果、パターン要素760、770から遠く離れた場所に位置する欠陥がパターン750の生成後に実質的に効果を持たないようにこれらの欠陥を変位させることができる。更に、マスクブランク1300の面1310の変位は、図13のピクセル配置1320を書き込む場合であってもピクセル配置1320のピクセル密度に対して変わらずに線形である。ピクセル配置1220、1320の面に関して、変位は、線形依存性よりも強くなるが、ピクセル配置1220、1320の面積の2次依存性よりも弱い。
【0117】
下記では、複数の欠陥を変位させることができ、従って、マスクブランク800、900、1000の吸収層860、960、1060の面830、930、1030上の共通の最適化処理において同時に補償することができることを示すシミュレーション結果を図14から図19に提示する。下記で説明するシミュレーションは、マスクブランク上に生成されるパターン750を参照しない。代わりに、生成されるマスクブランクのアクティブ領域の範囲内の欠陥のランダム統計分布をシミュレーションに対する入力データとして予め定める。図14は、生成されるアクティブ面1410と非アクティブ面1415又は縁部1415とを有するEUVマスクブランク1400を示している。図14では、数値は、ここでもまたマイクロメートルで指定する。
【0118】
図14の例では、EUVマスク1400のその後のアクティブな領域1410内にランダム統計分布で9つの欠陥を生成した。更に、同じくランダム統計分布を有する予め定められたターゲット位置からの偏差Δx、Δyを9つの欠陥に割り当てた。矢印1420、1425、1430、1435、1440、1445、1450、1455、1460の矢印は、ターゲット位置からの個々の欠陥の位置の偏差を指定している。一例として、|Δx|,|Δy|≦20nm又は100nmを選択することができる。図14に示す例では、|Δx|,|Δy|≦100nmである。初期状態では、9つの欠陥(N=9)の平均偏差は、
である。式中のΔpreは、ターゲット位置に対する9つの欠陥の平均変位ベクトルの長さを表している。
【0119】
図14では、矢印1430及び1435で表すターゲット位置からの偏差を有する2つの欠陥が互いの近くに位置し、これらの欠陥が反対方向に変位していることに注意しなければならない。変位に対する矛盾した要件に起因して、これら2つの欠陥は、困難を伴わずには補正することができず、従って、図14から図19に関連して説明する手法の限界を示している。矢印1430及び1435の下に潜む欠陥の有意に改善された補償を容易にする拡張手法に対しては図27に基づいて議論する。
【0120】
次いで、上述した初期状況に対して、欠陥をターゲット位置の方向に変位させることによってターゲット位置からの欠陥の偏差を可能な最大限度まで補正するピクセル配置をシミュレーション処理において確立した。この目的に対して、マスクブランク1400のアクティブ領域1410の全域にわたって延びる4つのピクセル配置をシミュレーションに向けて予め定めた。4つのピクセル配置の各々が、図14に指定する例では基板の4%の光透過率変化に対応する最大ピクセル密度を有する。それぞれのピクセル配置内のピクセルの密度は、ピクセル配置の範囲、すなわち、アクティブ領域の範囲で可変である。
【0121】
第1のピクセル配置は、アクティブ領域の水平方向(すなわち、x方向及び-x方向)の主な拡大をもたらし、この場合に、図14に示すように、座標原点は、マスクブランク1400の図心に位置する。第2のピクセル配置のパラメータをこのピクセル配置がマスクブランク1400のアクティブ領域1410を垂直方向に可変的に延伸するように設定した。第3のピクセル配置のパラメータは、このピクセル配置がマスクブランク1400のアクティブ領域1410を水平方向に対して+45℃の方向にアクティブ領域1410にわたって可変的に延伸するように設計した。最後に、水平方向に対して-45℃の方向に位置合わせされた変化方向を有する第4のピクセル配置は、マスクブランク1400のアクティブ領域1410をこの方向に可変方式で局所的に拡大する。
【0122】
上述のことは、図14の欠陥のこれらのターゲット位置の方向の変位が共通最適化処理において決定されることを意味する。この最適化処理の詳細は、本出願人の特許文献US 9 658 527 B2に記載されている。
【0123】
図14の9つの欠陥を変位させるための共通最適化処理の結果を矢印又はベクトル1422、1427、1432、1437、1442、1447、1452、1457、1462で指定している。ここでは、ベクトル1422、1427、1432、1437、1442、1447、1452、1457、1462の初期点がそれぞれの欠陥のターゲット場所を指定し、矢印又はベクトルの先端がそれぞれの欠陥の実際の位置を指定している。すなわち、ベクトル1422、1427、1432、1437、1442、1447、1452、1457、1462の長さが短い程、ターゲット場所又はターゲット位置からの欠陥の偏差は小さい。図14に指定している例では、共通最適化処理の後のベクトル1422、1427、1432、1437、1442、1447、1452、1457、1462の平均長さは、
である。得られる改善は、以下の式:
によって測定され、図14に指定している例では36.1%である。
【0124】
図15のダイアグラム1500は、3つの異なる初期構成に対する各々100通りのシミュレーション処理の累積を示し、すなわち、このダイアグラムは、百通りの初期構成が3回ランダムに選択されることに基づいている。点によって示す初期構成1510では、マスクブランク上にランダムに分布する5つの欠陥を仮定した。初期構成1510の5つの欠陥は、領域|Δx|,|Δy|≦20nmの範囲にターゲット位置からのランダム偏差を有する。図15に×印で再現した初期構成1520もまた、マスクブランク1400のアクティブ面1410内にランダムに分布する5つの欠陥を有する。しかし、ターゲット位置からのこれらの欠陥の偏差は、間隔|Δx|,|Δy|≦100nmを含む。最後に、マスクブランク1400の欠陥の個数は、白い円で表した初期構成1530において5から10の範囲でランダムに変化する。ターゲット位置からのこれらの欠陥の偏差は、初期構成1520の場合と同じく|Δx|,|Δy|≦100nmである。
【0125】
図14に関連して上述したように、マスクブランクの面上で4つの異なる方向に拡大方向を有する4つのピクセル配置の効果を模擬した。アクティブ領域1410の範囲で許容可能な最大ピクセル密度は、マスクブランク1400の基板の4%の光透過率変化に対応する。重ね合わせた4つのピクセル配置では、この重ね合わせは、マスクブランク1400の基板の16%までの最大局所光透過率変化をもたらすことができる。
【0126】
図15から図19のダイアグラムには、初期構成でのターゲット位置からの欠陥偏差の分布を横座標上に示している。縦座標は、マスクブランク1400の基板内への4つのピクセル配置の導入後のターゲット位置からの偏差の分布を示している。
【0127】
図15のダイアグラム1500から推察することができることは、マスクブランク1400の基板内へのピクセル配置の導入が、全ての初期構成1510、1520、1530に関して欠陥をターゲット位置にかなり接近させることである。欠陥のターゲット位置からの偏差|Δx|,|Δy|≦20nmを有する初期構成1510では、4つのピクセル配置の組合せ効果は、ターゲット位置からの欠陥の差をほぼ補正する。破線の直線1550は、4つのピクセル配置の組合せ効果によって上記で既に指定した式:
に従って得られた改善を指定している。|Δx|,|Δy|≒10nmの偏差まで、これらのピクセル配置は、欠陥をそのターゲット位置に関して実質的に完全に補償する。|Δx|,|Δy|≦30nmの偏差まで、これらのピクセル配置は、欠陥の位置偏差をほぼ補償する。|Δx|,|Δy|=100nmというターゲット位置からの大きい欠陥偏差の場合であっても、欠陥を変位させることによって初期構成に対して平均で35%と40%の間の改善が依然として得られる。
【0128】
図16のダイアグラム1600は、ピクセル配置の最大許容可能ピクセル密度がこの場合はマスクブランク1400の基板の8%の光透過率変化に対応するという違いを用いて図15に従ってダイアグラム1500を再現している。32%までの局所光透過率変化をもたらすことができる4つのピクセル配置は、この場合に、|Δx|,|Δy|≦20nmの偏差を有する欠陥をターゲット位置に実質的に完全に変位させることができ、すなわち、これらを実質的に完全に補償することができる。|Δx|,|Δy|≦50nmの偏差まで、これらのピクセル配置は、欠陥の位置偏差をほぼ補償する。|Δx|,|Δy|=100nmという大きい偏差の場合であっても、4つのピクセル配置の組合せ効果は、平均でターゲット位置に対する欠陥の偏差の約70%を依然として補償する。
【0129】
図17から図19では、マスクブランク1400の欠陥820、920、1020の個数制限を解除した。欠陥820、920、1020の個数に対して7.5という平均を有するポアソン分布を仮定した。更に、1つの欠陥のみを有する初期構成を除外した。初期位置に関する欠陥の変位は、各初期構成に対して40nmと100nmの間の間隔からランダムに選択され、すなわち、40nm≦|Δx|,|Δy|≦100nmが成り立つ。
【0130】
図17のダイアグラム1700では、4つのピクセル配置の最大ピクセル密度をピクセル配置毎にマスクブランク1400の基板の4%の光吸収率変化に対応するピクセル密度に制限した。この上限は、図18のダイアグラム1800ではピクセル配置毎に8%、図19のダイアグラム1900ではピクセル配置毎に12%の場所にある。
【0131】
図17のダイアグラム1700から推察することができるように、ピクセル配置の既に低いピクセル密度は改善をもたらし、すなわち、全ての初期構成に関して、欠陥はそのターゲット位置に近づく。破線は、図15及び図16と同様に、4つのピクセル配置の組合せ効果によって得られた改善をランダムに選択した全ての初期構成にわたって平均したものとして指定している。ターゲット位置からの欠陥の位置の|Δx|,|Δy|=100nmのオリジナル偏差に対して、図17の低ピクセル密度によって25%の平均改善が得られる。
【0132】
図18のダイアグラム1800は、図17に対するピクセル密度の最大局所2倍化が許される場合に、直近で言及した改善が約50%まで高まることを示している。|Δx|,|Δy|≦15nmの領域内にターゲット位置からの偏差を有する欠陥は、ほぼ完全に補償される。図17に対する最大ピクセル密度の局所三倍化が許される場合に、領域|Δx|,|Δy|≦20nm内にターゲット位置からの偏差を有する欠陥は、それらのターゲット位置にほぼ完全にシフトさせることができる。これを図19に例示している。ターゲット位置から100nmだけ偏位した位置を有する欠陥の場合であっても、ターゲット位置に関して約70%の平均改善を達成することができる。
【0133】
図20は、マスクブランク800、900、1000の欠陥を補償するために使用することができる装置の2つの実施形態を示している。上側部分画像Aは、装置2000、及び通信リンク2030によってリンクされた装置2000の部分2010と部分2020を示している。装置2000の個々の部分2010及び2020を図21及び図22に基づいて下記で説明する。図20の下側部分画像Bは、装置2000の第2の実施形態2050を再現している。実施形態2050では、2つの部分2070と2080は、通信リンク2090と2095を通して両方の部分2070と2080にリンクされた共通制御デバイス2060を有する。
【0134】
図21は、装置2000の部分2010を概略ブロック図として示している。装置2000の部分2010は、マスクブランク800、900、1000の欠陥820、920、1020を補償するために使用することができる。装置2000の部分2010は、3次元で移動可能とすることができる引張装置2120を含む。マスクブランク2110は、様々な技術を用いて、例えば、クランプを用いて引張装置2120に固定することができる。マスクブランク2110は、マスクブランク800、900、又は1000のうちの1つとすることができ、これは、その後側基板面2117がレンズ2140に向けて指向するように逆さに装着される。
【0135】
装置2000の部分2010は、パルスビーム、パルス光ビーム2135、又は光パルスを生成するパルスレーザ源2130を含む。レーザ源2130は、可変持続時間を有する光パルスを生成する。レーザ源2130は、超短レーザパルス、すなわち、フェムト秒範囲のパルス長を有するレーザパルスを生成することができる。しかし、レーザパルスのパルス長は、約100psまで連続的に長くすることができる。パルス式レーザ源2130によって生成される光パルスのパルスエネルギは、0.01μJ毎パルスから10mJ毎パルスまでに至る広大な範囲にわたって調整することができる。更に、光パルスの反復速度は、1Hzから100MHzの範囲を含むことができる。好ましい実施形態では、光パルスは、800nmの波長で作動するTi:サファイアレーザによって生成することができる。しかし、下記で説明する方法は、このタイプのレーザに限定されず、原理的には、マスクブランク2110の基板のバンドギャップよりも小さい光子エネルギを有し、フェムト秒範囲の持続時間を有するパルスを生成することができる全てのレーザタイプを使用することができる。一例として、Nd-YAGレーザシステム又は色素レーザシステムを同じく使用することができる。
【0136】
更に、装置2000の部分2010は、1よりも多いパルスレーザ源2130(図21には示していない)を含むことができる。
【0137】
制御可能ミラー2190は、パルス式レーザビーム2135を集束レンズ2140の中に向ける。レンズ2140は、後側基板面617を通してパルス式レーザビーム2135をマスクブランク2110の基板の中に集束させる。適用されたレンズのNA(開口数)は、焦点の予め定められたスポットサイズと、後側基板面2117に対するマスクブランク2110の基板内の焦点の位置とに依存する。このレンズのNAは、0.9までとすることができ、実質的に1μmの焦点直径と、実質的に1020W/cm2の最大強度とをもたらす。
【0138】
装置2000の部分2010は、xy平面内、すなわち、レーザ源2130のレーザビーム2135に対して垂直であるサンプルホルダ2120の二軸位置決めシステムの変位を制御するコントローラ2180及びコンピュータシステム2160を含む。コントローラ2180及びコンピュータシステム2160は、引張装置2120の平面に対して垂直な(z方向の)レンズ2140の変位をレンズ2140が固定された単軸位置決め台2150によって更に制御する。装置2000のこの部分の他の実施形態では、マスクブランク2110をターゲット位置まで移動するための三軸位置決めシステムを引張装置2120に装備することができ、レンズ2140は固定とすることができ、又は引張デバイス2120を固定とすることができ、レンズ2140を3次元で移動可能にすることができることに注意しなければならない。更に、レンズ2140と引張装置2120との両方に三軸位置決めシステムを装備するように考えることができる。
【0139】
コンピュータシステム2160は、マイクロプロセッサ、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、CPU(中央演算処理装置)、又はGPU(グラフィック処理ユニット)などとすることができる。コンピュータシステム2160は、コントローラ2180に配置するか又は別個のユニットとして、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)、ワークステーション、メインフレーム等として具現化することができる。更に、コンピュータシステム2160は、例えば、キーボード、タッチパッド、マウス、ビデオ/グラフィックディスプレイ、プリンタのような入力/出力ユニットを含むことができる。更に、コンピュータ2160は、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリを更に含むことができる。コンピュータシステム2160は、ハードウエア、ソフトウエア、フレームワーク、又はその組合せに実施することができる。更に、コンピュータシステム2160は、レーザ源2130を制御することができる(図21には示していない)。
【0140】
コンピュータシステム2160は、マスクブランク2110の欠陥800、900、1000の位置と、マスクブランク2110のパターン750に対する設計データとを用いて、欠陥800、900、1000がマスクブランク2110から生成されるマスクに対して実質的に効果を持たないような1又は2以上のピクセル配置を決定するように設計される1又は複数のアルゴリズムを含むことができる。
【0141】
更に、コンピュータシステム2160は、リンク2030を通して装置2000の部分2010を装置2000の部分2020及び/又は外部ネットワークにリンクすることを可能にする少なくとも1つのインタフェース2185を有する。
【0142】
更に、装置2000の部分2010は、独立した装置2040として、すなわち、装置2000の部分2020なしで自律的に作動させることができる。独立した装置2040は、外部ネットワークへのインタフェース2185しか必要としない。装置2000及び/又は装置2040は、欠陥820、920、1020の位置に関するデータと、マスクブランク2110に対する設計データとをインタフェース2185を通して取得する。
【0143】
最後に、装置2000、2040は、引張装置2120に配置された露光源の光を二色ミラー(dichromatic mirror)2145を通して受光するCCDカメラ(電荷結合デバイス回路)を含む観察システムを含むことができる。観察システム2145は、マスク2110をターゲット位置までナビゲートする段階を簡易化する。
【0144】
図22は、装置2000の部分2020の一部の重要な構成要素を通る略断面を示している。装置2040と同様に、装置2000の部分2020は、独立したユニットとして作動させることができる。装置2000の部分2020は、フォトマスク700のパターン750の少なくとも1つのパターン要素760、770の変更を実施するために使用することができる。図22に示す部分装置2020は、例示的な部分装置2020では走査力顕微鏡2220又は原子間力顕微鏡(AFM)2220の形態に具現化される走査プローブ顕微鏡2220を含む。走査プローブ顕微鏡2220は、部分装置2020の任意的な構成要素である。マスクブランク800、900、1000の欠陥820、920、1020の輪郭は、走査プローブ顕微鏡2220によって解析することができる。更に、図22の例示的部分装置2020は、改造(modified)走査電子顕微鏡(SEM)2230として達成された改造走査粒子顕微鏡2230を含む。
【0145】
走査プローブ顕微鏡2220の測定ヘッド2223を図22の部分装置2020内に例示している。測定ヘッド2223は保持装置2225を含む。測定ヘッド2223は、部分装置2020のフレームに保持装置2225を用いて固定される(図22には示していない)。測定ヘッド2223の保持装置2225には、圧電アクチュエータ2228の自由端の3つの空間的方向(図22には例示していない)の移動を容易にする圧電アクチュエータ2228が取り付けられる。圧電アクチュエータ2228の自由端には、曲げバー2226又はカンチレバー2226が固定される。カンチレバー2226は、圧電アクチュエータ2228への取り付けのための保持プレートを有する。カンチレバー2226の自由端は測定先端2229を有する。
【0146】
図22の部分装置2020では、検査されるサンプル2210、例えば、マスクブランク800、900、1000、又はフォトマスク700がサンプル台2205に固定される。検査されるサンプル2210のサンプル面2212は、サンプル台2205に対向する。一例として、サンプル2210は、サンプル2210を真空環境又は高真空環境内のサンプル台2205の支持点上に配置することにより、又はサンプル台2205とサンプル2210の導電性後側の間の静電相互作用によって固定することができる。更に、サンプル2210は、サンプル台2205上にクランプ締めによって保持することができる(図22には示していない)。
【0147】
図22に矢印で表すように、サンプル台2205は、位置決めシステム2207によってAFM2220の測定ヘッド2223及び/又は電子ビーム2235の入射点に対して3つの空間方向に移動することができる。図22の例では、位置決めシステム2207は、複数のマイクロマニピュレータ又は変位要素の形態に具現化される。サンプル台2205のサンプル平面内、すなわち、xy平面内の移動は、2つの干渉計によって制御することができる(図22には示していない)。代替実施形態では、位置決めシステム2207は、圧電アクチュエータを更に含むことができる(図22には例示していない)。位置決めシステム2207は、制御デバイス2280の信号によって制御される。代替実施形態では、制御デバイス2280は、サンプル台2205ではなく、代わりにAFM2220の測定ヘッド2223の保持装置2225を移動する。制御デバイス2280がサンプル2210の高さ(z方向)の大まかな位置決めを実施し、測定ヘッド2223の圧電アクチュエータ2215がAFM2220の正確な高さ設定を実施することが更に可能である。制御デバイス2280は、部分装置2020のコンピュータシステム2285の一部とすることができる。
【0148】
上述のように、図22の例示的走査粒子顕微鏡2230は改造SEM2230を含む。電子銃2232が電子ビーム2235を生成し、この電子ビーム2235は、図5には例示しておらず、円柱2337に配置された結像要素によって場所2245でサンプル台2205上に配置されたサンプル2210上に集束電子ビーム2235として誘導される。更に、SWM2230の円柱2237の結像要素は、電子ビーム2235をサンプル2210にわたって走査することができる。
【0149】
サンプルによって電子ビーム2235から後方散乱された電子及び電子ビーム2235によってサンプル2210内に生成された2次電子が検出器2240によって記録される。電子円柱2237に配置された検出器2240を「レンズ内検出器(in lens detector)」と呼ぶ。検出器2240は、円柱2237内に様々な実施形態に設置することができる。検出器2240は、制御デバイス2280によって制御される。更に、SPM2230の制御デバイス2280は、検出器2240の測定データを受信する。制御デバイス2280は、測定データ及び/又は測定ヘッド2223又は測定先端2229のデータからモニタ2290上に示される画像を生成することができる。
【0150】
更に、制御デバイス2280及び/又はコンピュータシステム2285は、部分装置2020にフォトマスク700のパターン750の少なくとも1つのパターン要素760、770を修正させる1又は複数のアルゴリズムを含むことができる。更に、1又は複数のアルゴリズムは、AFM2220の測定先端2229又はSEM2230の電子ビーム2235を用いてマスクブランク800、900、1000、及び/又はフォトマスク700を検査するために装置2020上で作用することができる。
【0151】
上述の代替として又はそれに加えて走査プローブ顕微鏡2230は、電子円柱2237の外側に配置された後方散乱電子又は2次電子に対する検出器2242を有することができる。検出器2242も同じく制御デバイス2280によって制御される。
【0152】
サンプル2210を撮像するのに加えて、パターン750の少なくとも1つのパターン要素760、770を修正するためにSEM2230の電子ビーム2235を使用することができる。EUVマスク700又は典型的にはフォトマスク700のパターン要素760、770を変更するために、図22の部分装置2020は、3つの異なる供給容器2250、2255、及び2260を有する。
【0153】
第1の供給容器2250は、第1の前駆体ガス、例えば、金属カルボニル、例えば、ヘキサカルボニルクロム(Cr(CO)6)又は例えばTEOSのような金属アルコキシドを格納する。第1の供給容器2250内に格納された前駆体ガスを用いて、局所化学反応において欠如しているパターン要素760、770の材料をフォトマスク700のキャッピング層630の上に堆積させることができ、この場合に、SEM2230の電子ビーム2235は、第1の供給容器2250内に格納された前駆体ガスをマスク700の多層構造840、940、1040のキャッピング層630の上に材料を堆積させるべき位置で分離するためのエネルギ供給器として作用する。これは、電子ビーム2235と前駆体ガスとの組合せ供給によって吸収性材料の局所堆積のためのEBID(電子ビーム誘起堆積)処理が実施されることを意味する。
【0154】
電子ビーム2235は、数ナノメートルのスポット直径上に集束させることができる。その結果、EBID処理は、低い2桁のナノメートル範囲の空間分解能で吸収性材料の局所堆積を可能にする。
【0155】
第2の供給容器2255は、局所電子ビーム誘起エッチング(EBIE)処理を実施することを可能にするエッチングガスを格納する。電子ビーム誘起エッチング処理を用いて1又は2以上のパターン要素760、770の余剰吸収性材料をフォトマスク700から除去することができる。エッチングガスは、例えば、二フッ化キセノン(XeF2)、塩素(Cl2)、酸素(O2)、オゾン(O3)、水蒸気(H2O)、過酸化水素(H22)、一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、硝酸(HNO3)、アンモニア(NH3)、又は六フッ化硫黄(SF6)を含むことができる。
【0156】
第3の供給容器2260内には、第2の供給容器2255内に利用可能状態に保たれているエッチングガスに又は第1の供給容器2250内に格納されている前駆体ガスに必要に応じて添加される添加ガスを格納することができる。これに代えて、第3の供給容器2260は、第2の前駆体ガス又は第2のエッチングガスを格納することができる。
【0157】
図22の部分デバイス2020では、供給容器2250、2255、及び2260の各々は、単位時間毎に供給される対応するガスの量、すなわち、サンプル2210上への電子ビーム2235の入射場所2245でのガス体積流量をモニタ又は制御するための独自の制御弁2251、2256、及び2261を有する。制御弁2251、2256、及び2261は、制御デバイス2280によって制御及びモニタされる。この制御及びモニタを用いて、1又は2以上のパターン要素760、770を変更するための処理場所2245に供給されるガスの分圧を広い範囲で設定することができる。
【0158】
更に、図22の例示的部分装置2020では、各供給容器2250、2255、及び2260は、サンプル2210上への電子ビーム2235の入射点2245の周りでノズル2253、2258、及び2263によって終端する独自のガス給送ラインシステム2252、2257、及び2262を有する。
【0159】
供給容器2250、2255、及び2260は、対応する供給容器2250、2255、及び2260の冷却と加熱の両方を可能にする独自の温度設定要素及び/又は温度制御要素を有することができる。これは、前駆体ガス及び/又はエッチングガスをそれぞれ最適な温度(図22には示していない)で格納すること、特に供給することを可能にする。制御デバイス2280は、供給容器2250、2255、2260の温度設定要素及び温度制御要素を制御することができる。EBID処理及び/又はEBIE処理を用いてサンプル2210を処理する時には、供給容器2250、2255、及び2260の温度設定要素を更に用いてその中に格納された前駆体ガスの蒸気圧を適切な温度の選択によって設定することができる。
【0160】
図22に示す部分装置2020は、雰囲気条件下で又は真空チャンバ2270内で作動させることができる。パターン要素760、770を修正するには、真空チャンバ570内で動雰囲気圧と比較して低い圧力が必要である。この目的のために、図22の部分装置2020は、真空チャンバ2270内で必要とされる低い圧力を生成及び維持するためのポンプシステム2275を含む。制御弁2251、2256、及び2261を閉じることにより、真空チャンバ2270内で10-4Paの残留ガス圧が得られる。ポンプシステム2275は、SEMの電子ビーム2235を供給するための上側部分2274と下側部分2272又は反応チャンバ2272とに対して別個のポンプシステムを含むことができる(図22には示していない)。
【0161】
図23は、本発明による方法の流れ図2300を再現している。本方法は段階2310で始まる。第1の段階2320では、マスクブランク800、900、1000の少なくとも1つの欠陥820、920、1020の位置に関するデータが得られる。一例として、装置2000、2040のコンピュータシステム2160は、検査ツールからインタフェース2185を通して1又は2以上の欠陥820、920、1020の位置データを取得することができる。図14から図19に関連して上述したように、マスクブランクのアクティブ面1410は、典型的には、1よりも多い欠陥820、920、1020を有する。
【0162】
段階2330において、マスクブランク800、900、1000上に生成されるパターン750のパターン要素760、770に関する設計データが得られる。一例として、設計データは、装置2000、2040のコンピュータシステム2160からインタフェース2185を通して得られたものとすることができる。
【0163】
判断ブロック2340において、パターン要素760、770が設けられたマスクブランク800、900、1000を用いてウェーハを露光する時に少なくとも1つの欠陥820、920、1020が実質的に効果を持たないようにパターン要素760、770に対して当該欠陥が静止するか否かが決定される。静止する場合に、本方法は段階2360で終了する。例えば、装置2000、2040のコントローラ2180及び/又はコンピュータシステム2160を用いて、生成されるパターン要素に対する欠陥820、920、1020の位置を決定する段階を実施することができる。
【0164】
図24は、マスクブランク800、900、1000のセクション2400を示している。マスクブランク800、900、1000は、このセクション2400内に欠陥2420を有し、この欠陥は、マスクブランク800、900、1000の吸収層860、960、1060の面830、930、1030上に現れる。欠陥2420は、欠陥820、920、又は1020のうちの1つとすることができる。マスクブランク800、900、1000の吸収層860、960、1060を構造化することによって生成することが意図されるL/S配置のパターン要素2470がセクション2400の上にオーバーレイされる。図24からは、欠陥2420が2つのパターン要素2470の間に位置し、その結果、生成されるパターン要素2470を生成することによってマスクブランク800、900、1000からフォトマスク700が生成された後にウェーハ上に転写性欠陥をもたらすことになることを推察することができる。すなわち、図24は、図23の流れ図2300の判断ブロック2340の条件に対する否定応答を明らかにしている。
【0165】
流れ図2300の判断ブロック2340の条件が満たされなかった場合に、段階2350において、パターン要素2470が設けられたマスクブランク800、900、1000を用いてウェーハを露光する時にマスクブランク800、900、1000の少なくとも1つの欠陥2420が実質的に効果を持たないように欠陥2420が変位される。この段階に続いて、本方法はブロック2360で終了する。
【0166】
図25は、図23に示す方法の段階2350を示している。生成されるL/S配置の半ピッチに対応する距離だけ欠陥2420を変位させるために、生成されるパターン要素2470の幅だけ+x方向又は-x方向に欠陥2420を変位させるピクセル配置2850が計算される。その結果、計算されたピクセル配置2580は、装置2000、2040を用いて後側617を通してマスクブランク800、900、1000の基板の中に導入される。図25及び以下の図では、1又は複数のピクセル配置2580を破線で例示している。マスクブランク800、900、1000の基板の中にピクセル配置2580を書き込むことにより、欠陥2420は、吸収層860、960、1060の面830、930、1030上で半ピッチに対応する距離だけ変位される。図25では、この変位を矢印2530に示している。
【0167】
最後に、生成されるパターン要素2470は、設計データによって最初に提供された通りにマスクブランク800、900、1000の吸収層860、960、1060からパターン要素2670として生成される。その結果、スキャナのパラメータ設定値はマスク生成によって制限されない。変位した欠陥2550は、L/S配置のパターン要素2670の下にほぼ隠れる。図10の範囲で議論した「有効サイズ(effective size)」という表現の関連で上述したように、変位された欠陥2550の依然として可視である周囲セクションは、マスクブランク800、900、1000から生成されたフォトマスクを露光する時に不利な効果を引き起こさない。
【0168】
マスクブランク800、900、1000上に存在する単一欠陥、例えば、図24の欠陥2420を変位させるには、単一ピクセル配置2580で十分である。図25に示すように、このピクセル配置は、マスクブランク800、900、1000のアクティブ領域1410全域にわたって延びることができ、ピクセル配置2580のピクセル密度は、マスク800、900、1000のアクティブ領域1410にわたって変化する。マスクブランク800、900、1000のアクティブ領域1410内に1つの欠陥2420しか存在しない場合に、図12及び図13に関連して議論したように、欠陥2420を定められた距離だけ変位させる目的で、一定のピクセル密度を有する空間的に制限されたピクセル配置1220、1320を使用することができる。
【0169】
しかし、図14図19の議論に関連して上述したように、マスクブランク800、900、1000のアクティブ面1410の範囲には、典型的には複数の欠陥2420が存在する。図14から図19に関連して上述したように、マスクブランク800、900、1000の基板内への1又は2以上のピクセル配置2580の導入は、マスクブランク800、900、1000の残存欠陥2420の位置に影響を及ぼす。従って、マスクブランクのアクティブ領域全域にわたって延び、マスクブランク800、900、1000又はそのアクティブ領域1410にわたって可変のピクセル密度を有し、かつ存在する全ての欠陥2420の変位をもたらして全ての欠陥2420の可能な最良の補償をもたらす1又は2以上のピクセル配置2580が共通の最適化処理において確立される。図14図19では、マスクブランク800、900、1000上に存在する欠陥2420の理想的な補償を達成するために異なる方向に向く主たる拡大方向(predominant expansion direction)を有する4つのピクセル配置2580が使用される。
【0170】
共通最適化処理においてマスクブランク800、900、1000の全ての欠陥を考慮する時に、図24及び図25に示すものではなく個々の欠陥2420を最小距離だけ変位させることを得策とすることができる。図12及び図13に関連して上述したように、単一ピクセル配置1320でも欠陥2420を既に数百ナノメートル変位させることができる。図27は、欠陥2420を例示的な方式で移動することができる移動先の可能な位置を矢印で表している。図27で明らかにして上記で議論したように、欠陥の変位に対してアクセス可能な区域は連続的であり、数百ナノメートルの寸法を有する。欠陥2420の位置を修正することができる大きい解空間は、共通最適化処理においていくつかの欠陥の広範囲にわたる補償を容易にする。これは、特に、例えば互いの近くに位置し、異なる方向に変位させなければならない欠陥の補償を可能にする。一例として、これは、図14に矢印1430及び1435で表す欠陥に適用される。
【0171】
マスクブランク800、900、1000の欠陥820、920、1020は、アクティブ領域1410にわたるランダム発生に加えて系統的分布成分も有することができる。この条件下で、及び/又は共通最適化処理の補償処理の結果をより一層改善するために、欠陥820、920、1020を変位させることに加えて、共通最適化処理においてパターン要素2470又は生成されるパターンの結像変換のパラメータを更に含めることを得策とすることができる。結像変換のパラメータの欠陥820、920、1020の位置の共通変化は、図28及び図30の生成されるパターン要素2470の変位の例を用いて下記で説明する。
【0172】
図28のセクション2800は、マスクブランク800、900、1000の基板810、910、1010内に1又は複数のピクセル配置2880を導入した後のマスクブランク800、900、1000の図24のセクション2400の初期状況を示している。欠陥820、920、1020の変位を表すパラメータと、生成されるパターン要素2470の変位を結像変換の特殊な場合として表すパラメータとの共通最適化処理は、図28図30の例に対してx方向に半ピッチの半分の距離の生成されるパターン要素2470の変位が全ての欠陥(図28には示していない)の最良の補償を容易にするという結果をもたらしている。更に、議論した例に対する共通最適化処理は、-x方向に1.5半ピッチ及びy方向に1.3半ピッチの距離の欠陥2420の変位が欠陥2420及び図24のセクション2400内には再現されていない周囲の欠陥に関する全ての欠陥の可能な最良の補償を可能にするという結果をもたらしている。
【0173】
図28のセクション2800は、マスクブランク800、900、1000の基板内へのピクセル配置2880の導入後の図24のセクション2400を示している。図29のセクション2900は、図9に矢印2930に示す半ピッチの半分だけ設計データに対して-x方向に変位させる方式(図28において生成されるパターン要素2470によって示す)で生成されたL/S配置の生成されたパターン要素2970を提示している。
【0174】
図30は、セクション3000内の欠陥3020が半ピッチの約2倍の横広がりを有するという相違点を用いて図24のセクション2400を再現している。欠陥3020は、L/S配置のパターン要素2470よりも大きいパターン要素を有するマスクブランク800、900、1000の領域の中に変位させることができないので、欠陥3020を完全に補償することはできない。欠陥3020の可能な最良の補償の第1の例示的実施形態を図31及び図32に基づいて説明する。
【0175】
1又は2以上のパターン配置3180による欠陥3020の変位と、欠陥3020の周りにある生成される2つのパターン要素3172の輪郭の局所変更(local change)3175とを表す可能な最良の補償のためのパラメータは、共通最適化処理において決定される。図31は、最適化処理において確立されたピクセル配置3180をマスクブランク800、900、1000の基板の中に書き込んだ後に半ピッチの半分の距離だけ変位した欠陥3150を示している。欠陥3020の変位を図31の矢印3130で明らかにしている。更に、図31では、変位された欠陥3150を取り囲む生成されるパターンの2つのパターン要素3172の共通最適化処理によって計算された局所変更3175をハッチングによって示している。欠陥3020の変位のパラメータと生成されるパターン要素3172の局所変更3175のパラメータとの両方を変化させる最適化処理は、両方の補償方策に対する解空間を広げ、それによって欠陥3020の可能な最良の補償を容易にする。更に、共通最適化処理は、パターン750(図31には例示していない)の結像変換のパラメータを含むことができる。生成されるパターンの変位の形態で結像変換を含む最適化処理に対しては図28及び図29に関して説明している。
【0176】
図32のセクション3200は、パターン要素と局所修正されたパターン要素3272とを有するL/S配置を生成した後の欠陥3020の欠陥補償の完了を示している。説明した方法は、パターン要素3172の製造の前に、すなわち設計データに基づいて、パターン要素3172に対する局所変更を行うので、説明された補償方法は、「補償前修復(pre-compensational repair)」と考えることができる。
【0177】
図30での欠陥3020を補償するための第2の実施形態を図33から図35に基づいて説明する。図33から図35で説明する補償処理は、2つの段を用いて実施される。第1の段では、設計によって予め決められたパターン、すなわち、生成されるパターン要素2470を有するL/S配置を維持しながら欠陥3020を可能な最良の程度まで補償する1又は2以上のピクセル配置3380が確立される。図33は、ピクセル配置3380をマスクブランク800、900、1000の基板の中に導入した後の生成されるL/S配置に対して変位した欠陥3150の位置を明らかにしている。矢印3130は、+x方向の半ピッチの半分の距離の欠陥3020の変位を表している。
【0178】
図34は、設計によって指定されたL/S構造を生成した後の生成されたパターン要素2670を有する図33のセクション3300を示している。パターン要素2470は、変位された欠陥3150の有効サイズを完全には覆わないので、欠陥3150は、ウェーハ上で可視である誤差に至ることになる。
【0179】
従って、変位された欠陥3150に第2の段階でいわゆる補償的修復が設けられる。第2の段階は、装置2000の部分装置2020を用いて実施される。図22の説明に関して明らかにした局所EBIE処理を用いて、欠陥3150を取り囲むパターン要素3572から局所吸収性材料が除去される。吸収パターン材料が不在になったパターン要素3572の部分3575のEUV放射線の反射は、パターン要素2670によって覆われない変位された欠陥3150の部分の吸収を少なくとも部分的に補償する。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35