(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】プレスシステム及びプレスシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B30B 13/00 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
B30B13/00 C
(21)【出願番号】P 2022094487
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】五島 紘一
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/096271(WO,A1)
【文献】特開2008-137015(JP,A)
【文献】特開2003-245800(JP,A)
【文献】特開2005-021934(JP,A)
【文献】特開平01-293999(JP,A)
【文献】特開2013-091078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 13/00
B21D 43/00 - 43/10
B30B 15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸と、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドと、を有し、前記スライドに装着された金型によりワークへ加工を行うプレス装置と、
前記プレス装置に前記ワークを搬入し、又は、前記プレス装置から前記ワークを搬出し、前記ワークを搬送する搬送装置と、
前記プレス装置と前記搬送装置とを制御する制御手段と、
を備えるプレスシステムであって、
所定搬送装置と、
前記所定搬送装置に対して前記ワークの搬送方向における上流側に配置された前段プレス装置と、
前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における下流側に配置された後段プレス装置と、
前記
前段プレス装置に対して前記搬送方向における上流側に配置された前段搬送装置と、
前記
後段プレス装置に対して前記搬送方向における下流側に配置された後段搬送装置と、
前記所定搬送装置と前記前段プレス装置との干渉、前記所定搬送装置と前記後段プレス装置との干渉、前記所定搬送装置と前記前段搬送装置との干渉及び前記所定搬送装置と前記後段搬送装置との干渉、を避けるために設定された複数の領域の情報が記憶された記憶部と、
を備え、
前記前段プレス装置及び前記後段プレス装置は、前記クランク軸の角度に応じた信号をそれぞれ前記制御手段に送信し、
前記所定搬送装置、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置は、前記ワークの搬送の状態に応じた信号をそれぞれ前記制御手段に送信し、
前記制御手段は、前記前段プレス装置及び前記後段プレス装置からそれぞれ送信された前記クランク軸の角度に応じた信号、並びに、前記所定搬送装置、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置からそれぞれ送信された前記ワークの搬送の状態に応じた信号に基づいて、前記複数の領域ごとに前記領域内への進入を許可するか否かを判断し、判断した結果に応じた前記複数の領域ごとの進入許可信号を前記所定搬送装置に送信し、
前記所定搬送装置は、前記進入許可信号に基づいて前記搬入又は前記搬出を行
い、
前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置は、それぞれを前記所定搬送装置とみなした場合のそれぞれの前記進入許可信号に基づいてそれぞれ前記搬入又は前記搬出を行う、プレスシステム。
【請求項2】
前記複数の領域は、次の第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域、第6領域を含む、請求項1に記載のプレスシステム。
前記第1領域は、前記所定搬送装置と前記前段プレス装置のスライドとの干渉を避けるために、前記前段プレス装置の金型の大きさ及び前記所定搬送装置の動作に基づき設定された領域である。
前記第2領域は、前記所定搬送装置と前記前段プレス装置の金型との干渉を避けるために、前記前段プレス装置の金型の大きさに基づき設定された領域である。
前記第3領域は、前記所定搬送装置と前記前段搬送装置との干渉を避けるために、前記所定搬送装置及び前記前段搬送装置の動作に基づき設定された領域である。
前記第4領域は、前記所定搬送装置と前記後段プレス装置のスライドとの干渉を避けるために、前記後段プレス装置の金型の大きさ及び前記所定搬送装置の動作に基づき設定された領域である。
前記第5領域は、前記所定搬送装置と前記後段プレス装置の金型との干渉を避けるために、前記後段プレス装置の金型の大きさに基づき設定された領域である。
前記第6領域は、前記所定搬送装置と前記後段搬送装置との干渉を避けるために、前記所定搬送装置及び前記後段搬送装置の動作に基づき設定された領域である。
【請求項3】
前記第5領域において、前記所定搬送装置を前記前段搬送装置と読み替え、前記後段プレス装置を前記前段プレス装置と読み替えたとき、
前記制御手段は、前記前段搬送装置が前記第5領域の外にいる、かつ、前記所定搬送装置が前記第2領域の外にいる場合に、前記前段プレス装置による前記加工が開始されてから終了するまでの前記クランク軸の角度である加工角度内への進入を許可する、請求項2に記載のプレスシステム。
【請求項4】
前記第1領域及び前記第2領域は、前記前段プレス装置に装着することが可能な金型の大きさの数に対応して設けられ、
前記第4領域及び前記第5領域は、前記後段プレス装置に装着することが可能な金型の大きさの数に対応して設けられる、請求項2又は請求項3に記載のプレスシステム。
【請求項5】
前記プレス装置は、前記クランク軸の角度を検知する角度検知手段を有し、
前記クランク軸の角度に応じた信号は、
前記角度検知手段により検知した角度が、前記プレス装置による前記加工が開始されてから終了するまでの前記クランク軸の角度である加工角度外か否かに応じたロボット干渉エリア外信号と、
前記角度検知手段により検知した角度が下死点か否かに応じた下死点信号と、
を含み、
前記搬送装置は、前記ワークを把持するハンドを有し、
前記ワークの搬送の状態に応じた信号は、
前記搬送装置が前記第1領域の外にいるか否かに応じた第1領域外信号と、
前記搬送装置が前記第2領域の外にいるか否かに応じた第2領域外信号と、
前記搬送装置が前記第3領域の外にいるか否かに応じた第3領域外信号と、
前記搬送装置が前記第4領域の外にいるか否かに応じた第4領域外信号と、
前記搬送装置が前記第5領域の外にいるか否かに応じた第5領域外信号と、
前記搬送装置が前記第6領域の外にいるか否かに応じた第6領域外信号と、
前記ハンドが前記ワークを把持したか否かに応じた吸着信号と、
前記ハンドが前記ワークを搬送しているか否かに応じた搬送中信号と、
を含む、請求項2に記載のプレスシステム。
【請求項6】
前記第1領域には次の第1条件が設定され、前記第2領域には次の第2条件が設定され、前記第3領域には次の第3条件が設定され、前記第4領域には次の第4条件が設定され、前記第5領域には次の第5条件が設定され、前記第6領域には次の第6条件が設定されている、請求項5に記載のプレスシステム。
前記第1条件は、前記第1領域に設定され、前記第6領域外信号に基づき前記前段搬送装置が前記第6領域の外にいると判断されること、かつ、前記吸着信号に基づき前記前段プレス装置内に前記ワークがあると判断されること、かつ、前記搬送中信号に基づき前記所定搬送装置が搬出中ではないと判断されること、という条件である。
前記第2条件は、前記第2領域に設定され、前記第6領域外信号に基づき前記前段搬送装置が前記第6領域の外にいると判断されること、かつ、前記ロボット干渉エリア外信号に基づき前記前段プレス装置が前記加工角度外にいると判断されること、かつ、前記下死点信号に基づき前記前段プレス装置内に加工済みのワークがあると判断されること、かつ、前記搬送中信号に基づき前記所定搬送装置が搬出中でないと判断されること、という条件である。
前記第3条件は、前記第3領域に設定され、前記第6領域外信号に基づき前記前段搬送装置が前記第6領域の外にいると判断されること、という条件である。
前記第4条件は、前記第4領域に設定され、前記第3領域外信号に基づき前記後段搬送装置が前記第3領域の外にいると判断されること、かつ、前記吸着信号に基づき前記後段プレス装置内にワークがないと判断されること、かつ、前記吸着信号に基づき前記所定搬送装置がワークを把持していない、という条件である。
前記第5条件は、前記第5領域に設定され、前記第3領域外信号に基づき前記後段搬送装置が前記第3領域の外にいると判断されること、かつ、前記ロボット干渉エリア外信号に基づき前記後段プレス装置が前記加工角度外にいると判断されること、かつ、前記吸着信号に基づき前記後段プレス装置内にワークがないと判断されること、かつ、前記吸着信号に基づき前記所定搬送装置がワークを把持していないと判断されること、という条件である。
前記第6条件は、前記第6領域に設定され、前記第3領域外信号に基づき前記後段搬送装置が前記第3領域の外にいると判断されること、という条件である。
【請求項7】
前記進入許可信号は、第1進入許可信号、第2進入許可信号、第3進入許可信号、第4進入許可信号、第5進入許可信号、第6進入許可信号を含み、
前記制御手段は、
前記第1条件が満たされた場合に、前記第1進入許可信号により前記所定搬送装置に第
1領域への進入を許可する、
前記第2条件が満たされた場合に、前記第2進入許可信号により前記所定搬送装置に第
2領域への進入を許可する、
前記第3条件が満たされた場合に、前記第3進入許可信号により前記所定搬送装置に第
3領域への進入を許可する、
前記第4条件が満たされた場合に、前記第4進入許可信号により前記所定搬送装置に第
4領域への進入を許可する、
前記第5条件が満たされた場合に、前記第5進入許可信号により前記所定搬送装置に第
5領域への進入を許可する、
前記第6条件が満たされた場合に、前記第6進入許可信号により前記所定搬送装置に第
6領域への進入を許可する、請求項6に記載のプレスシステム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記プレス装置及び前記搬送装置とは独立して設けられている、請求項1から請求項3、請求項5から請求項7のうちのいずれか1項に記載のプレスシステム。
【請求項9】
クランク軸と、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドと、を有し、前記スライドに装着された金型によりワークへ加工を行うプレス装置と、前記プレス装置に前記ワークを搬入し、又は、前記プレス装置から前記ワークを搬出し、前記ワークを搬送する搬送装置と、前記プレス装置と前記搬送装置とを制御する制御手段と、を備えるプレスシステムの制御方法であって、
前記プレスシステムは、所定搬送装置と、前記所定搬送装置に対して前記ワークの搬送方向における上流側に配置された前段プレス装置と、前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における下流側に配置された後段プレス装置と、前記
前段プレス装置に対して前記搬送方向における上流側に配置された前段搬送装置と、前記
後段プレス装置に対して前記搬送方向における下流側に配置された後段搬送装置と、前記所定搬送装置と前記前段プレス装置との干渉、前記所定搬送装置と前記後段プレス装置との干渉、前記所定搬送装置と前記前段搬送装置との干渉及び前記所定搬送装置と前記後段搬送装置との干渉、を避けるために設定された複数の領域の情報が記憶された記憶部と、を備え、
前記前段プレス装置及び前記後段プレス装置が、前記クランク軸の角度に応じた信号をそれぞれ前記制御手段に送信するプレス装置側送信工程と、
前記所定搬送装置、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置が、前記ワークの搬送の状態に応じた信号をそれぞれ前記制御手段に送信する搬送装置側送信工程と、
前記制御手段が、前記前段プレス装置及び前記後段プレス装置からそれぞれ送信された前記クランク軸の角度に応じた信号、並びに、前記所定搬送装置、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置からそれぞれ送信された前記ワークの搬送の状態に応じた信号に基づいて、前記複数の領域ごとに前記領域内への進入を許可するか否かを判断し、判断した結果に応じた前記複数の領域ごとの進入許可信号を前記所定搬送装置に送信する制御手段側送信工程と、
前記所定搬送装置が、前記進入許可信号に基づいて前記搬入又は前記搬出を行
い、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置が、それぞれを前記所定搬送装置とみなした場合のそれぞれの前記進入許可信号に基づいてそれぞれ前記搬入又は前記搬出を行う搬送工程と、
を備えるプレスシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスシステム及びプレスシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを搬送するロボットをプレス装置とプレス装置との間に配置した、複数のプレス装置及び複数のロボットを備えるタンデム式のプレスシステムがある(例えば、特許文献1参照)。このようなプレスシステムでは、プレス装置とロボット、ロボット同士等が互いに衝突することを避けるために、ロボットによるワークの搬送とプレス装置によるワークへの加工とが交互に行われている(以下、「交互運転」という)。交互運転では、ロボットによるワークの搬入・搬出が一斉に行われてロボットが所定の位置に戻ってから、プレス装置による加工が一斉に行われる。そして、プレス装置による加工が終了してから、ロボットによるワークの搬入・搬出が一斉に行われ、ロボットが所定の位置に戻ってから、プレス装置による加工が一斉に行われる、・・・、という一連の動作が繰り返される。すなわち、ロボットが所定の位置に戻るまではプレス装置は加工ができず、プレス装置の加工が終わるまではロボットはワークの搬入・搬出ができない。交互運転では、各装置同士の衝突は回避できるが、生産性が低下する。衝突を回避しつつ生産性を高める方法として、例えば、プレスシステムを稼動させる前に、ワークを搬送するシミュレーションを行い、各ロボットの起動を開始させるタイミング(以下、「起動タイミング」という)を決定する方法等がある。また、実際にプレスシステムを動かして試行を繰り返し、ロボットの起動タイミングを設定する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プレスシステムを稼動させる前にシミュレーションを行う方法では、ロボットによる搬送パターンごとにシミュレーションを行う必要がある。また、シミュレーションを行うためには専用のアプリケーションが必要である。また、実際にプレスシステムを動かして試行を繰り返す方法では、試行を繰り返すこと自体、時間を必要とする。このため、プレスシステムの稼動前のシミュレーションを必要とせず、また、実際に試行を繰り返すことを必要とせずに、衝突の回避と生産性の向上とを両立させることが求められる。すなわち、ロボットによるワークの搬送パターンによらず、容易に衝突を回避し生産性を向上させることが求められている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、ワークの搬送装置によるワークの搬送パターンによらず、容易に衝突を回避し生産性を向上させることができるプレスシステム及びプレスシステムの制御方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
(1)クランク軸と、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドと、を有し、前記スライドに装着された金型によりワークへ加工を行うプレス装置と、前記プレス装置に前記ワークを搬入し、又は、前記プレス装置から前記ワークを搬出し、前記ワークを搬送する搬送装置と、前記プレス装置と前記搬送装置とを制御する制御手段と、を備えるプレスシステムであって、所定搬送装置と、前記所定搬送装置に対して前記ワークの搬送方向における上流側に配置された前段プレス装置と、前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における下流側に配置された後段プレス装置と、前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における上流側に配置された前段搬送装置と、前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における下流側に配置された後段搬送装置と、前記所定搬送装置と前記前段プレス装置との干渉、前記所定搬送装置と前記後段プレス装置との干渉、前記所定搬送装置と前記前段搬送装置との干渉及び前記所定搬送装置と前記後段搬送装置との干渉、を避けるために設定された複数の領域の情報が記憶された記憶部と、を備え、前記前段プレス装置及び前記後段プレス装置は、前記クランク軸の角度に応じた信号をそれぞれ前記制御手段に送信し、前記所定搬送装置、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置は、前記ワークの搬送の状態に応じた信号をそれぞれ前記制御手段に送信し、前記制御手段は、前記前段プレス装置及び前記後段プレス装置からそれぞれ送信された前記クランク軸の角度に応じた信号、並びに、前記所定搬送装置、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置からそれぞれ送信された前記ワークの搬送の状態に応じた信号に基づいて、前記複数の領域ごとに前記領域内への進入を許可するか否かを判断し、判断した結果に応じた前記複数の領域ごとの進入許可信号を前記所定搬送装置に送信し、前記所定搬送装置は、前記進入許可信号に基づいて前記搬入又は前記搬出を行う、プレスシステム。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワークの搬送装置によるワークの搬送パターンによらず、容易に衝突を回避し生産性を向上させることができるプレスシステム及びプレスシステムの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態のプレスシステムの構成を示す概略斜視図
【
図2】
図2は、実施形態のプレス装置の構成を示す概略斜視図
【
図3】
図3は、実施形態のロボットの構成を示す概略斜視図
【
図4】
図4は、実施形態のプレスシステムのブロック図
【
図5】
図5は、実施形態の各装置間で送受信される信号を説明する図
【
図6】
図6は、実施形態のクランク軸の角度と各領域や加工における所定のタイミングとの関係を示す図
【
図8】
図8は、実施形態のロボットの動作を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、ワークが搬送される方向を「搬送方向」又は「左右方向」という。ここで、搬送方向の上流側が左、搬送方向の下流側が右と定義する。また、水平面内で搬送方向(左右方向)に直交する方向を前後方向とし、前後方向における前側がプレスシステムの正面、前後方向における後側がプレスシステムの背面とする。さらに、水平面に直交する方向、すなわち、搬送方向(左右方向)及び前後方向に直交する方向を上下方向とする。プレスシステムのプレス装置において加工が行われているときに搬送されているワークの高さ(例えば、プレスシステムが設置されている床面を基準とした高さ)を「加工高さ」という。
【0011】
[実施形態]
<プレスシステム>
図1は、本実施形態のプレスシステム1の構成を示す概略斜視図である。
図1にはワークの搬送方向及び上流、下流、前後方向、上下方向も示す。本実施形態のプレスシステム1は、ラインコントローラ10、リフタ100、水平フィーダ200、金型プレス装置(以下、「プレス装置」という)300、ワークの搬送装置であるロボット400を備えている。リフタ100、水平フィーダ200、プレス装置300、ロボット400は、プレス装置300の加工動作に連動して動作する。
【0012】
ラインコントローラ10は、プレスシステム1全体を制御する。詳細は後述する。プレス装置300は、ワークの搬送方向の上流から下流に複数台設けられている。プレス装置300について、搬送方向の上流から下流に向かい、プレス装置P1、プレス装置P2、・・・、プレス装置Pn、・・・と表記する。ここで、nは1以上の整数である(n≧1)。
【0013】
ロボット400は、ワークの搬送方向の上流から下流に複数台設けられている。ロボット400について、搬送方向の上流から下流に向かい、ロボットR1、ロボットR2、・・・、ロボットRm、・・・と表記する。ここで、mは1以上の整数である(m≧1)。なお、
図1ではプレス装置P1~P5、ロボットR1~R5を示している。ロボット400は、プレスシステム1を正面から見たときに、プレス装置300とプレス装置300との間に配置されている。なお、ロボット400は、プレスシステム1を上面から見たときに、プレス装置300とプレス装置300との間に配置されていなくてもよい。例えば、
図1のように、搬送方向(左右方向)においてはプレス装置300とプレス装置300との間であって、上面から見たときにプレス装置300の前側に配置されていてもよい。以下の説明において、ロボット400がプレス装置300とプレス装置300との間に配置される、と表現するときは、
図1のように配置されていることを指すものとする。
【0014】
ここで、ロボット400がプレス装置300とプレス装置300との間に配置されている場合、詳細には次のような配置となる。ロボットR1は、プレス装置P1とプレス装置P2との間に配置される。このとき、ロボットR1から見ると、プレス装置P1は搬送方向の上流側のプレス装置であり、プレス装置P2は下流側のプレス装置である。なお、プレス装置P1から見ればロボットR1は搬送方向の下流側に配置されており、プレス装置P2から見ればロボットR1は上流側に配置されている。同様に、ロボットR2は、プレス装置P2とプレス装置P3との間に配置される。このとき、ロボットR2から見ると、プレス装置P2は搬送方向の上流側のプレス装置であり、プレス装置P3は下流側のプレス装置である。なお、プレス装置P2から見ればロボットR2は搬送方向の下流側に配置されており、プレス装置P3から見ればロボットR2は上流側に配置されている。
【0015】
同様に、所定搬送装置であるロボットRmは、前段プレス装置であるプレス装置Pnと後段プレス装置であるプレス装置Pn+1との間に配置される。このとき、ロボットRmから見ると、プレス装置Pnは搬送方向の上流側のプレス装置であり、プレス装置Pn+1は下流側のプレス装置である。なお、プレス装置Pnから見ればロボットRmは搬送方向の下流側に配置されており、プレス装置Pn+1から見ればロボットRmは上流側に配置されている。また、前段搬送装置であるロボットRm-1は、ロボットRmの上流側のロボットであり、後段搬送装置であるロボットRm+1は、ロボットRmの下流側のロボットである。
【0016】
<リフタ及び水平フィーダ>
リフタ100は、ワーク120を保持し、保持したワーク120を加工高さまで上昇させて水平フィーダ200によりワーク120が把持されるのを待機する。水平フィーダ200は、アーム240、アーム240の搬送方向の上流側に設けられたハンド210、アームの下流側に設けられたハンド220、テーブル230を有している。アーム240は搬送方向及び上下方向に移動することが可能である。ハンド210、220は、例えばエアによりワーク120を吸着して把持することができ、吸着を解除してワーク120を離すことができる。テーブル230はワーク120をハンド210からハンド220に渡すための一時的なワーク120の載置場所である。
【0017】
水平フィーダ200は、リフタ100において加工高さで待機しているワーク120を吸着により把持し、ハンド210を水平移動させて吸着を解除し、ワーク120をテーブル230に置く。ハンド220はテーブル230に載置されたワーク120を吸着により把持し、プレス装置300、具体的にはプレス装置P1にワーク120を搬送して(移動させて)吸着を解除し、プレス装置P1の加工位置(後述する下型の所定の位置)に置く。なお、
図1のプレスシステム1では、リフタ100とプレス装置P1との間に水平フィーダ200を配置したが、これに限定されない。例えば、リフタ100とプレス装置P1との間に、ロボット400を配置し、ロボット400によりリフタ100とプレス装置P1との間でワーク120を搬送させてもよい。
【0018】
<プレス装置>
図1のプレス装置300について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態のプレス装置300の構成を示す概略斜視図であり、例えば、一体型ストレートサイドフレーム型又はCフレーム型のプレス装置300の概略図である。
図3には、ワーク120の搬送方向や搬送方向における上流(左)、下流(右)、上下方向、及び前後方向(正面、背面)も示している。プレス装置300は、筐体302の内外に、駆動モータ304(駆動手段)、伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310、スライド312、ボルスタ322を有して構成される。また、プレス装置300は、コントローラ314、記憶部315、表示部316、入力部318、を有している。さらに、プレス装置300は、センサ324、ロータリーエンコーダ325、ギブ326を有している。
【0019】
駆動モータ304は、例えばサーボ制御されるサーボモータであり、回転量及び回転方向を制御しつつ伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310を介して後述する金型303を上下移動させるものである。伝達機構306は、例えばギヤやベルト等の伝達部材を有して構成され、駆動モータ304のモータ軸の回転をクランク軸308へと伝達するものである。駆動モータ304への制御信号はコントローラ314から送られるようになっている。
【0020】
クランク軸308及びコンロッド310は、伝達機構306により伝達されたモータ軸の回転移動を往復移動(本実施形態では、上下移動)に変換するためのものである。モータ軸の回転によりクランク軸308が回転し、クランク軸308に一端近傍が連結されたコンロッド310にその回転が伝達されてコンロッド310が上下移動(昇降移動)するようになっている。
【0021】
また、クランク軸308には、クランク軸308の回転に連動して、オン信号又はオフ信号を出力するロータリーカムスイッチ(不図示)が設けられている。ロータリーカムスイッチは、例えばクランク軸308の回転が所定の角度となったとき、言い換えれば加工動作中の所定のタイミングとなったときに、オン信号又はオフ信号を出力する。ロータリーカムスイッチがオン信号(又はオフ信号)を出力するタイミングを、以下、「出力タイミング」という。コントローラ314は、ロータリーカムスイッチから出力される信号に基づいて、プレスシステム1の他の装置と連動し、加工動作を行っている。
【0022】
コンロッド310の他端近傍にはスライド312が連結されている。コンロッド310の上下移動に伴いスライド312がギブ326に沿って上下移動するようになっている。プレス装置300においては、スライド312と対向するようにボルスタ322が配置されている。スライド312のボルスタ322と対向する側の面(本実施形態では下面)に金型303の一部としての上型303aが装着される。ボルスタ322のスライド312と対向する側の面(本実施形態では上面)に金型303の一部として、上型303aと対になる下型303bが装着される。
【0023】
上型303aと下型303bとの間に加工の対象物としてのワーク120を配置し、上型303aと下型303bとで押圧することにより、プレス装置300によるワーク120に対するプレス加工(以下、単に「加工」ともいう)が行われる。ワーク120は、例えば
図2中左(上流)側から右(下流)側に搬送される。
【0024】
詳しくは、コントローラ314により制御されて駆動モータ304が回転する。駆動モータ304の回転が伝達機構306、クランク軸308を介してコンロッド310へと伝達され、スライド312が上下移動する。スライド312の下方移動によって上型303aと下型303bとが押圧され、ワーク120のプレス加工が行われる。すなわち、プレス装置300において、駆動モータ304、伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310、スライド312がプレス部を構成する。伝達機構306には、クランク軸308の回転数を検知するための回転数検知手段であるロータリーエンコーダ325が設けられている。コントローラ314は、ロータリーエンコーダ325によりクランク軸308の回転数を検知することで、スライド312の位置を検知することが可能である。また、コントローラ314は、ロータリーエンコーダ325の検知結果に基づいてクランク軸308の角度を検知することも可能であり、角度検知手段としても機能する。なお、角度検知手段には上述したロータリーカムスイッチを含めてもよい。
【0025】
加工の際の荷重を検知する荷重検知手段であるセンサ324は、プレス装置300がワーク120にプレス加工を行う際に、コンロッド310に働く荷重を検知するためのセンサで、例えばロードセルである。センサ324は、例えば、筐体302に設置された歪ゲージであってもよい。センサ324は、コンロッド310のいずれかの位置(例えば、中央近傍位置)に設置されていてもよい。さらに、センサ324は複数設置されていてもよく、例えば、筐体302の左右の歪をそれぞれ検知し、検知した結果を加算してトータルの荷重としてもよい。なお、
図2において、表示部316が配置されている側がプレス装置300の前側である。
【0026】
コントローラ314は、記憶部315に記憶されている各種プログラムに従ってプレス装置300を制御する。記憶部315には、使用される金型303ごとに対応するプログラム(モーションプログラム)が記憶されている。表示部316は、プレス装置300の状態を示すデータを表示する。入力部318は、プレス装置300を操作するために必要なデータを入力するために用いられる。入力部318は、加工に必要なパラメータをユーザーが入力する際に用いられる。コントローラ314は、ラインコントローラ10による制御に従いつつ、プレス装置300とプレスシステム1の他の装置とが互いに連動して加工を行うように制御している。
【0027】
<ロボット>
図3は、本実施形態のロボット400の構成を示す外観斜視図である。プレスシステム1が備えるロボット400は、例えば多関節型のロボットである。ロボット400は、支持台410、回転部420、第1アーム430、第2アーム440、第3アーム450、ハンド460、制御部470、記憶部480を有している。
【0028】
回転部420は、矢印Rt1方向に回転することが可能である。第1アーム430は、一端が回転部420に接続され、他端が第2アーム440に接続されている。第1アーム430は、矢印Rt2方向に回転することが可能である。第2アーム440は、一端が第1アーム430に接続され、他端が第3アーム450に接続されている。第2アーム440は、矢印Rt3方向に回転することが可能であり、また、矢印Rt4方向に回転することも可能である。
【0029】
第3アーム450は、一端が第2アーム440に接続され、他端がハンド460に接続されている。第3アーム450は、矢印Rt5方向に回転することが可能であり、また、矢印Rt6方向に回転することも可能である。ハンド460は、一端が第3アーム450に接続されており、他端にはワーク120を吸着する吸着部462を有している。ハンド460は、例えばエアの気圧を制御することにより、ワーク120を吸着させてワーク120を把持すること、ワーク120の吸着を解除しワーク120を離すことが可能である。なお、ワーク120を吸着しているときを吸着ON、吸着を解除しているときを吸着OFFとも表現する。
【0030】
以下、プレス装置Pnにおいて加工が終了したワーク120を、ロボットRmがプレス装置Pnから搬送することを「搬出する」という。また、プレス装置Pn+1でワーク120を加工するために、ロボットRmがプレス装置Pn+1にワーク120を搬送することを「搬入する」という。さらに、ロボットRmが、所定の位置から動作を開始してプレス装置Pnからワーク120を搬出し、プレス装置Pn+1にワーク120を搬入してから所定の位置に戻るまでの一連の動きを「搬送パターン」という。搬送パターンは、ワーク120の形状や金型303の形状、加工の種類等に応じて決定される。
【0031】
制御部470は、ロボット400が有するモータ(不図示)、シリンダ(不図示)、エア(不図示)等を制御する。これにより、制御部470は、回転部420の矢印Rt1方向の回転、第1アーム430の矢印Rt2方向の回転、第2アーム440の矢印Rt3方向の回転、矢印Rt4方向の回転、第3アーム450の矢印Rt5方向の回転、矢印Rt6方向の回転を制御する。制御部470がこのような制御を行うことで、ハンド460は、3次元空間内を自在に移動することができる。また、制御部470は、これらの回転速度も制御することで、ハンド460が3次元空間内を早く移動したり遅く移動したり等、所定の移動速度で移動することもできる。さらに、制御部470は、ハンド460によるワーク120の把持、把持の解除を制御する。
【0032】
なお、制御部470は、基準となる3次元座標系(例えば、x、y、zの数値)でハンド460の位置を制御している。3次元座標は、直交座標、極座標、円筒座標等、3次元空間内の所定の位置を指定し制御できるものであればよく、制御部470は、公知技術を用いてロボット400の姿勢制御及び速度制御等を行っているものとする。
【0033】
記憶部480には、3次元空間内の所定の空間形状、又は、2次元の所定の面形状の領域(以下、単に「領域」という)が定義され、定義された領域に関する情報が記憶されている。定義された領域は、ロボット400と他の構造物とが干渉しないようにロボット400を制御するために用いられる。例えば、定義された領域は、ロボット400が把持する物体、具体的にはワーク120が、プレス装置300又は別のロボット400若しくはプレス装置300による加工品又は他のロボット400が把持した物体、と干渉しないように設けられた領域である。なお、「干渉」とは、衝突、接触だけでなく、実際に接触はしないものの、互いの動作に影響を与える位置関係になることも含むものとする。一般に、ロボット400の記憶部480には、複数の領域、例えばj個(j≧1)の領域を設定することが可能となっている。本実施形態では、10個(j≦10)の領域が設定され、記憶部480に記憶されている。ここで、複数の領域を、領域C1、領域C2、・・・、領域Cj、・・・、領域C10と表現し、総称する場合は単に領域Cjと表現する。領域Cjの詳細な設定については後述する。
【0034】
なお、ハンド460によるワーク120の把持は、エアによる吸着で行うが、これに限定されない。例えば、ハンド460が爪部を有し、爪部を開状態又は閉状態にしてワーク120の把持及び把持の解除を行ってもよい。この場合、ワーク120を把持したこと、把持を解除したこと、等は、爪部に設けられたセンサにより検知してもよい。センサは、例えば、光学式、圧電式等種々のセンサが用いられてよい。
【0035】
また、ロボット400は、起動前及び正常に動作が完了した後は、所定の姿勢で所定の位置に戻っているものとし、所定の姿勢及び所定の位置をホームポジションともいう。制御部470は、ロボット400がホームポジションに位置するときの3次元座標を原点(又は定点)とすることができる。
【0036】
<ブロック図>
図4は、実施形態のプレスシステム1のブロック図である。ラインコントローラ10は、プレスシステム1全体を制御し、演算装置20、入力装置30、表示装置40、記憶装置50、インターフェース(以下、I/Fとする)ボード60を有している。
【0037】
演算装置20は、I/Fボード60を介してプレス装置300及びロボット400から受信した後述する各種信号と、領域Cjと、に基づいて、プレス装置300によるワーク120の加工、及び、ロボット400によるワーク120の搬送を制御する。各種信号は、プレス装置300がワーク120に加工を行っているときの各タイミングで出力されるタイミング信号、ロボット400がワーク120を搬送しているときの各タイミングで出力されるタイミング信号を含む。演算装置20は、内部で生成した各種信号をI/Fボード60を介してプレス装置300、ロボット400に送信する。なお、演算装置20により行われる各種演算、各種制御、各種判断等について、以下の説明ではラインコントローラ10が行うように表現する。ラインコントローラ10とプレス装置300、ロボット400は、有線若しくは無線の通信手段によって、又は、ハードワイヤによって接続され、各種信号の送受信が可能となっている。
【0038】
入力装置30は、プレス装置300によるワーク120の加工、及び、ロボット400によるワーク120の搬送を制御する際に必要な各種情報の入力に用いられる。表示装置40は、プレスシステム1の状態に関する情報、プレスシステム1の各種設定の入力を促す情報、その他種々の情報を表示する。
【0039】
記憶装置50は、プレス装置300によるワーク120の加工、及び、ロボット400によるワーク120の搬送を制御する際に必要な各種情報の保存に用いられる。ラインコントローラ10は、ロボット400の記憶部480に記憶された複数の領域Cjに関する情報を、プレスシステム1による加工が開始される前に、予めI/Fボード60を介して受信し、記憶装置50に記憶しておく。
【0040】
<各種信号について>
図5は、実施形態の各装置間で送受信される信号を説明する図である。
【0041】
(ラインコントローラ10からプレス装置300へ送信される信号)
ラインコントローラ10は、起動信号、停止信号をプレス装置300のコントローラ314に送信する。起動信号は、プレス装置300を起動させるため、言い換えれば、ワーク120への加工を開始させるための信号である。停止信号は、プレス装置300を種々の状況で停止させるための信号であり、例えば、緊急停止信号、その場停止信号、サイクル停止信号等が含まれる。緊急停止信号は、安全が確保できる位置に各装置を移動させた後、駆動モータ等からの動力を遮断して停止させるための信号である。その場停止信号は、各装置を信号が出力されたときの位置に維持した状態で(すなわち、その場で)停止させるための信号であり、後述するプレス装置300のインターロックが含まれる。サイクル停止信号は、連続運転中に停止させる際に、各装置の動作の1サイクルを終えてから各装置がホームポジションに戻って停止させるための信号である。なお、停止信号はこれらに限定されず、より少なくてもよいし、より多くてもよい。
【0042】
(プレス装置300からラインコントローラ10へ送信される信号)
図6は、クランク軸308の角度と各領域や加工における所定のタイミングとの関係を示す図である。
図6では、上死点及び下死点を黒丸で示し、加工開始及び加工終了を白丸で示す。また、始動位置領域を右上がり斜線のハッチングで示し、ロボット干渉エリア外領域を右下がり斜線で示す。なお、ロボット干渉エリア外領域の一部は始動位置領域とも重複している。また、下死点領域を横線で示し、加工領域を縦線で示す。なお、加工領域の一部は下死点領域とも重複している。
【0043】
プレス装置300のコントローラ314は、始動位置信号、下死点(最下降位置)信号、ロボット干渉エリア外信号をラインコントローラ10に送信する(プレス装置側送信工程)。始動位置信号は、加工が開始されるときのスライド312の位置、言い換えれば、クランク軸308の回転の角度を示す信号である。始動位置信号は、例えば、350度~10度の範囲でONする。プレス装置300のコントローラ314は、クランク軸308の角度が加工を開始する角度になると、始動位置信号をラインコントローラ10に送信する。なお、加工の開始位置は上死点であってもよい。始動位置信号は、例えば、クランク軸308が始動位置に対応する角度となったときにON、それ以外の角度でOFFとしてよい。
【0044】
下死点信号は、クランク軸308が下死点に達したことを示す信号である。下死点信号は、例えば、クランク軸308が下死点に対応する角度となったときにON、それ以外の角度でOFFとしてよい。下死点信号は、例えば、175度~185度の範囲でONする。
【0045】
ロボット干渉エリア外信号は、プレス装置300がロボット400と干渉するエリアの外にいることを示す信号である。プレス装置300の加工は、プログラムによって設定されており、加工が開始されるクランク軸308の角度(以下、「加工開始角度」という)と、加工が終了するクランク軸308の角度(以下、「加工終了角度」という)は予め設定されている。加工開始角度から加工終了角度までの間を「加工角度」(または、「加工領域」)という。加工角度は、例えば、90度~270度、120度~240度等である。加工角度内では、プレス装置300によるワーク120への加工が行われているため、ロボット400はプレス装置300の領域内に進入することができない。また、下型303bと上型303aとの間に少なくともハンド460及びワーク120の高さ分以上の空間がないとハンド460は金型内に進入することができない。上述したように、プレス装置300のコントローラ314は、クランク軸308の角度を検知しており、検知した角度に基づいてロボット干渉エリア外信号を送信する。ロボット干渉エリア外信号は、例えば、クランク軸308がロボット干渉エリア内(例えば、60度~300度)となったときにON、ロボット干渉エリア外(例えば、300度~60度)でOFFとしてよい。
【0046】
(ラインコントローラ10からロボット400へ送信される信号)
ラインコントローラ10は、起動信号、停止信号、C1進入許可信号、・・・、Cj進入許可信号、・・・をロボット400の制御部470に送信する(制御手段側送信工程)。起動信号は、ロボット400を起動させるため、言い換えれば、ワーク120の搬送を開始させるための信号である。停止信号は、ロボット400を種々の状況で停止させるための信号であり、例えば、緊急停止信号、その場停止信号、サイクル停止信号等が含まれる。なお、停止信号についてはプレス装置300の停止信号と同様であり、説明を省略する。
【0047】
C1進入許可信号、・・・、Cj進入許可信号、・・・は、領域C1、・・・、Cj、・・・に対応した信号であり、本実施形態では、10個の信号がある(1≦j≦10)。Cj進入許可信号は、後述する領域Cjへのロボット400の進入を許可するか否かを表す信号であり、例えば、領域Cjへの進入が許可される場合にON、禁止される場合にOFFとしてよい。ラインコントローラ10は、プレス装置300及びロボット400から入力された信号に基づいて、C1進入許可信号、・・・、Cj進入許可信号、・・・の全てについて、ON又はOFFを設定し、ロボット400に出力する。
【0048】
(ロボット400からラインコントローラ10へ送信される信号)
ロボット400の制御部470は、C1干渉エリア外信号、・・・、Cj干渉エリア外信号、・・・、吸着信号、搬送中信号をラインコントローラ10に送信する(搬送装置側送信工程)。ロボット400の制御部470は、ロボット400の記憶部480に記憶された複数の領域Cjと、ハンド460の座標とに基づいて、ハンド460が領域Cj外か否かを判断することができる。ロボット400の制御部470は、ハンド460が領域Cj外か否かに応じてCj干渉エリア外信号を送信する。Cj干渉エリア外信号は、例えば、ハンド460が領域Cj外にあるときにON(干渉エリア外)、領域Cj内にあるときにOFF(干渉エリア内)としてよい。なお、干渉エリアとハンド460との関係において、干渉エリアは、ワーク120がプレス装置300に装着された金型303や他のワークや他のロボット400と干渉しないための領域なので、加工するワーク120のサイズによって、エリアは変化するものであり、ワーク120を把持したハンド460の稼働可能領域もそのワークサイズによって変化するものである。
【0049】
吸着信号は、ロボット400のハンド460がワーク120を吸着し把持していることを示す信号であり、例えば、ワーク120を吸着しているときにON、吸着していないときにOFFとしてよい。搬送中信号は、ロボット400のハンド460がワーク120を吸着した後、吸着の解除をしていないこと、言い換えれば、ワーク120を把持し搬送中であることを示す信号である。搬送中信号は、例えば、ワーク120を搬送中であるときにON、搬送していないときにOFFとしてよい。
【0050】
<複数の領域の設定>
図7は、実施形態の領域を説明する図であり、プレスシステム1の一部を上から見た模式図である。
図7には搬送方向及び前後方向も示す。
図7では、プレスシステム1はワーク120の搬送方向の上流側から、ロボットRm-1、プレス装置Pn、ロボットRm、プレス装置Pn+1、ロボットRm+1の順に配置されている。ここでは、ロボットRmの搬送制御を行うために設定される領域Cjについて説明する。このため、ロボットRmから見れば、プレス装置Pnは前段のプレス装置であり、プレス装置Pn+1は後段のプレス装置と言える。
【0051】
本実施形態では、プレス装置300の加工中にワーク120を搬送するロボットRmの搬送制御を行うために、10個の領域C1~C10が設定される。領域C1~領域C5は、ロボットRmと上流側の装置、すなわちプレス装置Pn又はロボットRm-1との干渉を回避するために設定された領域である。領域C6~領域C10は、ロボットRmと下流側の装置、すなわち、プレス装置Pn+1又はロボットRm+1との干渉を回避するために設定された領域である。
【0052】
また、10個の領域C1~C10には、プレス装置300の仕様により制限される領域、ロボット400の仕様により制限される領域が含まれる。例えば、プレス装置300によるワーク120への加工の際には、種々の大きさの金型303が用いられ、領域Cjは金型303の大きさによって設定される領域が含まれる。なお、プレス装置のコントローラ314は、プレス装置300の表示部316からの入力に基づいて金型303のサイズを検知してもよい。また、コントローラ314は、プレス装置300が金型303のサイズを検知する手段を備え、その検知結果に基づいて金型303のサイズを検知してもよい。
【0053】
ロボット400の動作は、プレス装置300に装着される金型303の大きさに応じて制限される。例えば、小さな金型303が用いられる場合、ロボット400のハンド460が所定位置に進入することが可能であっても、大きな金型303が用いられる場合には、同じ所定位置にハンド460が進入できない場合がある。
図7に、プレス装置300で用いられる金型303の中で最も小さな金型303に相当する領域を金型干渉エリアK1として縦線のハッチングで示す。また、プレス装置300で用いられる金型303の中で最も大きな金型303、言い換えればスライド312の大きさに相当する領域を金型干渉エリアK2として横線のハッチングで示す。
図7では、金型干渉エリアK2は、一部が金型干渉エリアK1と重複しているが、金型干渉エリアK1も含めた領域である。なお、K1とK2とを特に区別する必要がない場合には、「金型干渉エリアK」という。
【0054】
また
図7に、ロボット400同士の可動域に応じて、ロボット400同士が干渉することを避けるために設けられた領域を、ロボット干渉エリアLとしてひし形格子のハッチングで示す。ロボット干渉エリアLは、ロボット400同士の干渉だけでなく、ロボット400とワーク120との衝突も避けるために設けられている。なお、金型干渉エリアK1の搬送方向の長さがロボット干渉エリアLの搬送方向の長さよりも短かったとしても、ロボット干渉エリアLはこれ以上短くすることはできず、金型303の大きさに依存しないエリアである。
【0055】
図7に右上がり線のハッチングで示す部分Qは、ロボットRmが停止信号を受信してから実際に停止するまでに要する距離(又は時間)に応じた部分である。部分Qは、搬送方向に例えば幅qで設けられている。部分Qは、ロボットRmの移動速度、停止信号の受信からロボットRmの停止までの時間等、言い換えればロボットRmの動作に基づいて設定される。
【0056】
以上をふまえ、ロボットRmの記憶部480には、領域C1~C10が次のように設定される。
【0057】
[第1領域である領域C1]
ロボットRmがプレス装置Pnのスライド312と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pnの金型干渉エリアK2及び部分Qに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。
【0058】
[第2領域である領域C2]
ロボットRmがプレス装置Pnの金型303と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pnの金型干渉エリアK2に基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)と搬送方向に平行な面(壁)として設定される。領域C2は、金型303が最も大きいサイズ、すなわち、スライド312の大きさである場合に対応して設定される領域である。
【0059】
[第2領域である領域C3]
ロボットRmがプレス装置Pnの金型303と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pnの金型干渉エリアK1に基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)と搬送方向に平行な面(壁)として設定される。領域C3は、金型303が小さいサイズである場合に対応して設定される領域である。領域C2と領域C3は、金型303の大きさに応じていずれかが用いられる。
【0060】
[第3領域である領域C4]
ロボットRmとロボットRm-1とが干渉しないように設定された領域であり、ロボットRmとロボットRm-1とのロボット干渉エリアLに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。
【0061】
[第1領域である領域C5]
ロボットRmがプレス装置Pnのスライド312と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pnの金型干渉エリアK1及び部分Qに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。領域C1と領域C5は、金型303の大きさに応じていずれかが用いられる。
【0062】
[第4領域である領域C6]
ロボットRmがプレス装置Pn+1のスライド312と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pn+1の金型干渉エリアK2及び部分Qに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。また、領域C6は、プレス装置Pn(又はPn+1)の搬送方向における、一点鎖線で示す中心PCn(又はPCn+1)を基準として領域C1と対称となる領域である。
【0063】
[第5領域である領域C7]
ロボットRmがプレス装置Pn+1の金型303と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pn+1の金型干渉エリアK2に基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)と搬送方向に平行な面(壁)として設定される。領域C7は、金型303が最も大きいサイズ、すなわち、スライド312の大きさである場合に対応して設定される領域である。また、領域C7は、プレス装置Pn(又はPn+1)の搬送方向における中心PCn(又はPCn+1)を基準として領域C2と対称となる領域である。
【0064】
[第5領域である領域C8]
ロボットRmがプレス装置Pn+1の金型303と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pn+1の金型干渉エリアK1に基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)と搬送方向に平行な面(壁)として設定される。領域C8は、金型303が小さいサイズである場合に対応して設定される領域である。また、領域C8は、プレス装置Pn(又はPn+1)の搬送方向における中心PCn(又はPCn+1)を基準として領域C3と対称となる領域である。領域C7と領域C8は、金型303の大きさに応じていずれかが用いられる。
【0065】
[第6領域である領域C9]
ロボットRmとロボットRm+1とが干渉しないように設定された領域であり、ロボットRmとロボットRm+1とのロボット干渉エリアLに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。また、領域C9は、プレス装置Pn(又はPn+1)の搬送方向における中心PCn(又はPCn+1)を基準として領域C4と対称となる領域である。
【0066】
[第4領域である領域C10]
ロボットRmがプレス装置Pn+1のスライド312と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pn+1の金型干渉エリアK1及び部分Qに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。また、領域C10は、プレス装置Pn(又はPn+1)の搬送方向における中心PCn(又はPCn+1)を基準として領域C5と対称となる領域である。領域C6と領域C10は、金型303の大きさに応じていずれかが用いられる。
【0067】
以上をまとめると、領域C1、C5は第1領域に相当し、領域C2、C3は第2領域に相当し、領域C4は第3領域に相当する。領域C6、C10は第4領域に相当し、領域C7、C8は第5領域に相当し、領域C9は第6領域に相当する。なお、C1干渉エリア外信号、C5干渉エリア外信号は、第1領域に対応する第1領域外信号に相当する。C2干渉エリア外信号、C3干渉エリア外信号は、第2領域に対応する第2領域外信号に相当する。C4干渉エリア外信号は、第3領域に対応する第3領域外信号に相当する。C6干渉エリア外信号、C10干渉エリア外信号は、第4領域に対応する第4領域外信号に相当する。C7干渉エリア外信号、C8干渉エリア外信号は、第5領域に対応する第5領域外信号に相当する。C9干渉エリア外信号は、第6領域に対応する第6領域外信号に相当する。
【0068】
図7では、ロボットRmの記憶部480に記憶された領域C1~C10を実線で示している。なお、プレス装置Pnにおいて破線で示された領域C6~C10は、ロボットRm-1の記憶部480に記憶された領域である。また、プレス装置Pn+1において破線で示された領域C1~C5は、ロボットRm+1の記憶部480に記憶された領域である。
【0069】
<ロボットRmの搬送経路の区間>
領域Cjに設定される後述する所定の条件に用いるために、ロボットRmの搬送中の経路(以下、搬送経路ともいう)における状態について、次の区間D1~D4を定義する。なお、ロボットRmは実際には効率の良い自由な搬送経路を描いてワーク120の搬入・搬出を行っているが、説明を簡単にするため、
図7ではロボットRmの区間を搬送方向に平行に図示している。ラインコントローラ10は、ロボットRmから送信された吸着信号及び搬送中信号に基づいて、ロボットRmがどの区間にいるかを判断する。
【0070】
[区間D1]加工済のワーク120をプレス装置Pnから搬出するために、ロボットRmの吸着をONとして移動する(ワーク120を迎えに行く)区間
[区間D2]ロボットRmが、加工済のワーク120を吸着して、プレス装置Pnから搬出している(搬送中の)区間
[区間D3]ロボットRmが、ワーク120を吸着して、次の加工のためにワーク120をプレス装置Pn+1に搬入している(搬送中の)区間
[区間D4]プレス装置Pn+1にワーク120を搬入した後で、ロボットRmの吸着をOFFとしてホームポジションに戻る区間
【0071】
<複数の領域の進入条件>
領域Cjには、所定の条件が設定される。ラインコントローラ10は、所定の条件が満たされないうちは、ロボット400、具体的にはハンド460のその領域Cjの先への進入を禁止する。言い換えれば、ラインコントローラ10は、所定の条件が満たされない場合、ロボット400が動作できないようにインターロックをかける。インターロックとは、所定の条件が満たされない間は、例えば電気錠が解錠しない機構をいう。一方、ラインコントローラ10は、所定の条件が満たされると、ロボット400、具体的にはハンド460のその領域Cjの先への進入を許可する。
【0072】
ラインコントローラ10は、Cj進入許可信号をロボットRmに送信することで、ロボットRmの領域Cjへの進入の許可又は禁止を制御する。ロボット400から見れば、進行方向(進入方向)に壁があり、所定の条件が満たされないうちはその壁を突破できず、所定の条件が満たされるとその壁の向こうに進入することができる。以下の説明において、ロボットRmのハンド460の干渉を、単に、ロボットRmの干渉、と表現する。
【0073】
[領域C1の進入条件]
領域C1へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C1-1 ロボットRm-1が領域C9の外にいること
条件C1-2 プレス装置Pn内にワーク120があること
ただし、ロボットRmが区間D2に位置する間を除く。これは、ロボットRmが区間D2にあるときは、ロボットRm自身の搬出動作によりプレス装置Pnにはワーク120がなく、C1-2の条件が満たされなくなるからである。
【0074】
[領域C2の進入条件]
領域C2へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C2-1 ロボットRm-1が領域C9の外にいること
条件C2-2 プレス装置Pnがロボット干渉エリア外にいること
条件C2-3 プレス装置Pn内に加工済みのワーク120があること
ただし、ロボットRmが区間D2に位置する間を除く。これは、領域C1で区間D2を除いたことと同様の理由により、以下、同様である。
【0075】
[領域C3の進入条件]
領域C3へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C3-1 ロボットRm-1が領域C9の外にいること
条件C3-2 プレス装置Pnがロボット干渉エリア外にいること
条件C3-3 プレス装置Pn内に加工済みのワーク120があること
ただし、ロボットRmが区間D2に位置する間を除く。
【0076】
[領域C4の進入条件]
領域C4へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C4-1 ロボットRm-1が領域C9の外にいること
【0077】
[領域C5の進入条件]
領域C5へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C5-1 ロボットRm-1が後述する領域C9の外にいること
条件C5-2 プレス装置Pn内にワーク120があること
ただし、ロボットRmが区間D2に位置する間を除く。
【0078】
[領域C6の進入条件]
領域C6へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C6-1 ロボットRm+1が領域C4の外にいること
条件C6-2 プレス装置Pn+1内にワーク120がないこと
ただし、ロボットRmが区間D4に位置する間を除く。
【0079】
[領域C7の進入条件]
領域C7へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C7-1 ロボットRm+1が領域C4の外にいること
条件C7-2 プレス装置Pn+1がロボット干渉エリア外にいること
条件C7-3 プレス装置Pn+1内にワーク120がないこと
ただし、ロボットRmが区間D4に位置する間を除く。
【0080】
[領域C8の進入条件]
領域C8へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C8-1 ロボットRm+1が領域C4の外にいること
条件C8-2 プレス装置Pn+1がロボット干渉エリア外にいること
条件C8-3 プレス装置Pn+1内にワーク120がないこと
ただし、ロボットRmが区間D4に位置する間を除く。
【0081】
[領域C9の進入条件]
領域C9へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C9-1 ロボットRm+1が領域C4の外にいること
【0082】
[領域C10の進入条件]
領域C10へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C10-1 ロボットRm+1が領域C4の外にいること
条件C10-2 プレス装置Pn+1内にワーク120がないこと
ただし、ロボットRmが区間D4に位置する間は除く。
【0083】
<ワークの状態>
上述した領域Cjの条件C1-2、C5-2で、プレス装置Pn内にワーク120があること、という条件がある。また、条件C2-3、C3-3で、プレス装置Pn内に加工済みのワーク120があること、C6-2、C7-3、C8-3、C10-2で、プレス装置Pn+1内にワーク120がないことという条件がある。ラインコントローラ10は、次のようにしてワーク120の状態を「ワークあり」、「ワークなし」、「加工済ワークあり」と判断する。
【0084】
ラインコントローラ10は、ロボットRm-1から、金型干渉エリアK内で吸着信号のOFFを受信したときに、プレス装置Pnに「ワークあり」と判断する。ラインコントローラ10は、ロボットRm+1から、金型干渉エリアK内で吸着信号のONを受信したときに、プレス装置Pn+1に「ワークなし」と判断する。ラインコントローラ10は、プレス装置Pn、Pn+1から下死点信号のONを受信したときに、プレス装置Pn、Pn+1に「加工済ワークあり」と判断する。
【0085】
<プレス装置のインターロック>
本実施形態では、領域Cjを用いて、ラインコントローラ10がプレス装置300の加工の許可又は禁止を制御することも可能である。すなわち、ロボット400の状態に応じて、クランク軸308の加工角度内への進入を許可又は禁止することが可能である。言い換えれば、ラインコントローラ10は、所定の条件が満たされない場合、プレス装置300が動作できないようにインターロックをかける。ラインコントローラ10は、金型303のサイズに応じてプレス装置300の加工の許可又は禁止を次の条件で判断する。なお、プレス装置Pnと前段のロボットRm-1、プレス装置Pnと後段のロボットRmとの関係で説明する。
【0086】
(小さなサイズの金型の場合)
条件S1-1 ロボットRm-1が領域C8の外にいること
条件S1-2 ロボットRmが領域C3の外にいること
【0087】
(大きなサイズの金型の場合)
条件S2-1 ロボットRm-1が領域C7の外にいること
条件S2-2 ロボットRmが領域C2の外にいること
【0088】
ラインコントローラ10は、条件S1-1及び条件S1-2が両方満たされた場合、又は、条件S2-1及び条件S2-2が両方満たされた場合に、プレス装置Pnに加工を許可する。なお、ラインコントローラ10は、加工を禁止している間、
図5で説明した停止信号により、プレス装置Pnの加工動作を一時停止させてもよい。一時停止位置は、始動位置の範囲にかかわらず、ロボット干渉エリア外の範囲であればよい(
図6参照)。また、別途、加工許可信号等を設けて加工許可信号等がONで許可、OFFで禁止のようにし、加工許可信号に基づきプレス装置Pnが一時停止等してもよい。
【0089】
<ロボットRmの搬送制御>
ラインコントローラ10は、プレスシステム1が連続運転を開始してから連続運転を終了するまでの間、
図5で説明した始動位置信号、下死点信号、ロボット干渉エリア外信号を所定の時間間隔で全てのプレス装置300から受信している。同様に、ラインコントローラ10は、プレスシステム1が連続運転を開始してから連続運転を終了するまでの間、
図5で説明したCj干渉エリア外信号、吸着信号、搬送中信号を所定の時間間隔で全てのロボット400から受信している。さらに、ラインコントローラ10は、プレスシステム1が連続運転を開始してから連続運転を終了するまでの間、
図5で説明したCj進入許可信号を所定の時間間隔で全てのロボット400に送信している。
【0090】
このように、ラインコントローラ10は、プレスシステム1を構成する全てのプレス装置300及び全てのロボット400から各種信号を受信する。そしてラインコントローラ10は、全てのロボット400の領域Cjへの進入の禁止又は許可を判断し、全てのロボット400にCj干渉エリア外信号を送信している。また、上述したように、プレス装置300にインターロックをかけることも可能である。本実施形態では、このようにしてラインコントローラ10が集中管理を行っている。このため、プレス装置300はワーク120の加工制御に専念することができ、ロボット400はワーク120の搬送制御に専念することができる。領域Cjへの進入が可能か否かの判断はラインコントローラ10が集中して行い、ロボット400は、ラインコントローラ10から受信したCj進入許可信号に基づき許可が出た場合に、許可が出た領域Cjの先に進入する。ラインコントローラ10が集中管理を行うことで、プレスシステム1全体の加工工程、搬送工程におけるクリティカルパスを解消、又は、少なくとも所要時間を低減させることもできる。
【0091】
以上をふまえ、ロボットRmがホームポジションから動作を開始してプレス装置Pnからワーク120を搬出し、プレス装置Pn+1にワーク120を搬入してホームポジションに戻るまでの動作を説明する。
図8は、本実施形態のロボットRmの搬送制御を、ロボットRm側の制御部470の制御として説明するフローチャートである。
図8の説明においては、プレス装置Pn、Pn+1に大きな金型303が装着され、領域C1、領域C2、領域C6、領域C7について進入の許可、禁止が判断されるものとする。また、領域C4、領域C9は、金型303の大きさに依存せず、進入の許可、禁止が常に判断される。なお、小さな金型303が装着されている場合には、領域C1、領域C2、領域C6、領域C7の代わりに、領域C5、領域C3、領域C10、領域C8を用いればよい。
【0092】
ロボットRmの制御部470は、ラインコントローラ10から起動信号が入力されると、ステップ(以下、Sとする)110以降の処理を開始する。S110で制御部470は、ハンド460の吸着を開始し、吸着信号をON、搬送中信号をOFFにし、プレス装置Pnのワーク120を搬入するためにハンド460の移動を開始する。S112で制御部470は、ラインコントローラ10から送信されたC1進入許可信号がON(許可)か否かを判断する。S112で制御部470は、C1進入許可信号がOFFであると判断した場合、移動を一時停止し、処理をS112に戻し、C1進入許可信号がONであると判断した場合、処理をS114に進める。S114で制御部470は、ハンド460を領域C1の先に進入させる。
【0093】
S116で制御部470は、ラインコントローラ10から送信されたC2進入許可信号がON(許可)か否かを判断する。S116で制御部470は、C2進入許可信号がOFFであると判断した場合、移動を一時停止し、処理をS116に戻し、C2進入許可信号がONであると判断した場合、処理をS118に進める。S118で制御部470は、ハンド460を領域C2の先に進入させる。S120で制御部470は、プレス装置Pnの加工済のワーク120をハンド460により把持し、搬送中信号をONにして、プレス装置Pn+1にワーク120を搬入するために移動する。
【0094】
S122で制御部470は、ラインコントローラ10から送信されたC6進入許可信号がON(許可)か否かを判断する。S122で制御部470は、C6進入許可信号がOFFであると判断した場合、移動を一時停止し、処理をS122に戻し、C6進入許可信号がONであると判断した場合、処理をS124に進める。S124で制御部470は、ハンド460を領域C6の先に進入させる。
【0095】
S126で制御部470は、ラインコントローラ10から送信されたC7進入許可信号がON(許可)か否かを判断する。S126で制御部470は、C7進入許可信号がOFFであると判断した場合、移動を一時停止し、処理をS126に戻し、C7進入許可信号がONであると判断した場合、処理をS128に進める。S128で制御部470は、ハンド460を領域C7の先に進入させる。S130で制御部470は、プレス装置Pn+1にワーク120を搬入し、ハンド460による把持を解除して、吸着信号をOFFにし、搬送中信号をOFFにする。
【0096】
S132で制御部470は、連続運転を終了するか否かを判断する。例えば制御部470は、ラインコントローラ10から停止信号を受信した場合に連続運転を終了すると判断すればよい。S132で制御部470は、連続運転を続行すると判断した場合、処理をS110に戻し、連続運転を終了すると判断した場合、処理をS134に進める。S134で制御部470は、ロボットRmをホームポジションに戻し、処理を終了する。
【0097】
なお、
図8では、S112、S116、S122、S126の判断処理が順番に行われているように説明した。しかし、ロボットRmの制御部470は、S112、S116、S122、S126の判断処理を同じタイミングで行い、許可された領域Cjについてはその先へ進入し、許可されていない領域Cjについてはその領域の手前で待機するようにしてもよい。
【0098】
以上のように、ラインコントローラ10がロボットRmにCj干渉エリア外信号を送信することで、進入が許可された領域Cjについてはその先に進入することができる。また、進入が許可されていない領域Cjにロボット400を最大限近づけた状態で待機させておくことができる。これにより、ロボット400によるワーク120の搬入、搬出に要する時間を短縮することができ、装置同士の干渉を回避しつつ、プレスシステム1による生産性を向上させることができる。また、領域Cjには、金型に応じて設定された領域もあるため、ロボット400のハンド460によるワーク120の搬送が、金型303の横からである場合に限らず、金型303の前からの搬送の場合にも適用可能である。さらに、本実施形態では、事前に搬送パターンのシミュレーションを実施することや実機による複数回の試行も必要ない。
【0099】
以上本実施形態では、ロボット400の記憶部480に記憶されている複数の領域Cj(装置同士の衝突を防止するために設定された空間)への進入許可とワーク120の状態、プレス装置300の状態を組み合わせてロボット400にインターロックをかける。これにより、ロボット400によるワーク120の搬送軌道が変わっても、連続運転の初回の動作からプレスシステム1の各装置が互いに衝突することなく、生産性の高い搬送タイミングを自動的に作り出すことが可能となる。
【0100】
以上、本実施形態によれば、ワークの搬送装置によるワークの搬送パターンによらず、容易に衝突を回避し生産性を向上させることができるプレスシステム及びプレスシステムの制御方法を提供することができる。
【0101】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能であり、例えば以下のような変形例や趣旨がある。
【0102】
・上述したプレスシステムは、ワークの搬送装置として多関節型ロボットを備える構成としたがこれに限定されない。例えば、プレスシステムが、多関節型ではない、例えば水平フィーダによりワークの搬送を行う構成にも適用可能である。
・上述した実施形態では、ロボットに定義された複数の領域を用いてラインコントローラ10がロボット400の搬送制御を行ったが、これに限定されない。ロボットに記憶された領域とは別に、ラインコントローラ10の記憶装置50に複数の領域を定義し、記憶装置に記憶された複数の領域をロボットの搬送制御に用いてもよい。
・上述した実施形態の各種信号のONとOFFは、逆であってもよい。すなわち、例えばハンドがワークを吸着しているときにONとしたが逆にOFFとしてもよいし、吸着していないときにOFFとしたが逆にONとしてもよい。他の信号についても同様である。
・ロボットによる搬入、搬出の各ステージにおいて、ワークの有無を他のセンサを用いて検知してもよい。
・ワークの搬送方向について、
図1では左から右へと搬送したが、逆に右から左へ搬送しても、上述した本実施形態の構成を適用することが可能である。
・上述した実施形態では、金型のサイズについて大サイズの金型と小サイズの金型の2通りに対応できる構成としたがこれに限定されない。単一のサイズの金型や3つ以上のサイズの金型について、領域を設定することも可能である。なお、1つのサイズの金型に対応して、前段の装置に対して2つの領域(例えばC1とC2)、後段の装置に対して2つの領域(例えばC6とC7)、の合計4つの領域の設定が必要となる。このため、何通りのサイズの金型に対応できるか、言い換えれば設定できる領域の上限がいくつになるかは、ロボットで設定できる領域の上限数に依存する。
・
図7では、領域を左右方向(搬送方向)及び前後方向で定義したが、これに限定されない。さらに、上下方向についても定義し、3次元的な領域として定義してもよい。また、左右方向と上下方向、前後方向と上下方向等の2次元的な領域として定義してもよい。
・ロボットは、ロボットの制御部が3次元座標によりロボットの姿勢や動き、移動の速さ等、すなわち、座標や速度等を制御したが、これに限定されない。例えば、ロボットの外部にロボットを撮像する撮像部を備え、撮像部によって撮像した画像を解析することで、ロボットの姿勢や動き、移動の速さ等、すなわち、座標や速度等を制御してもよい。
・上述した実施形態では、プレス装置及びロボットとは独立したラインコントローラが領域Cjへの進入の許可又は禁止を判断したが、これに限定されない。所定のプレス装置のコントローラがラインコントローラの機能を発揮してもよいし、所定のロボットの制御部がラインコントローラの機能を発揮してもよい。
【0103】
[趣旨1]
本発明のプレスシステムは、
クランク軸と、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドと、を有し、前記スライドに装着された金型によりワークへ加工を行うプレス装置と、
前記プレス装置に前記ワークを搬入し、又は、前記プレス装置から前記ワークを搬出し、前記ワークを搬送する搬送装置と、
前記プレス装置と前記搬送装置とを制御する制御手段と、
を備えるプレスシステムであって、
所定搬送装置と、
前記所定搬送装置に対して前記ワークの搬送方向における上流側に配置された前段プレス装置と、
前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における下流側に配置された後段プレス装置と、
前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における上流側に配置された前段搬送装置と、
前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における下流側に配置された後段搬送装置と、
前記所定搬送装置と前記前段プレス装置との干渉、前記所定搬送装置と前記後段プレス装置との干渉、前記所定搬送装置と前記前段搬送装置との干渉及び前記所定搬送装置と前記後段搬送装置との干渉、を避けるために設定された複数の領域の情報が記憶された記憶部と、
を備え、
前記前段プレス装置及び前記後段プレス装置は、前記クランク軸の角度に応じた信号をそれぞれ前記制御手段に送信し、
前記所定搬送装置、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置は、前記ワークの搬送の状態に応じた信号をそれぞれ前記制御手段に送信し、
前記制御手段は、前記前段プレス装置及び前記後段プレス装置からそれぞれ送信された前記クランク軸の角度に応じた信号、並びに、前記所定搬送装置、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置からそれぞれ送信された前記ワークの搬送の状態に応じた信号に基づいて、前記複数の領域ごとに前記領域内への進入を許可するか否かを判断し、判断した結果に応じた前記複数の領域ごとの進入許可信号を前記所定搬送装置に送信し、
前記所定搬送装置は、前記進入許可信号に基づいて前記搬入又は前記搬出を行う。
【0104】
[趣旨2]
前記複数の領域は、次の第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域、第6領域を含んでもよい。
前記第1領域は、前記所定搬送装置と前記前段プレス装置のスライドとの干渉を避けるために、前記前段プレス装置の金型の大きさ及び前記所定搬送装置の動作に基づき設定された領域である。
前記第2領域は、前記所定搬送装置と前記前段プレス装置の金型との干渉を避けるために、前記前段プレス装置の金型の大きさに基づき設定された領域である。
前記第3領域は、前記所定搬送装置と前記前段搬送装置との干渉を避けるために、前記所定搬送装置及び前記前段搬送装置の動作に基づき設定された領域である。
前記第4領域は、前記所定搬送装置と前記後段プレス装置のスライドとの干渉を避けるために、前記後段プレス装置の金型の大きさ及び前記所定搬送装置の動作に基づき設定された領域である。
前記第5領域は、前記所定搬送装置と前記後段プレス装置の金型との干渉を避けるために、前記後段プレス装置の金型の大きさに基づき設定された領域である。
前記第6領域は、前記所定搬送装置と前記後段搬送装置との干渉を避けるために、前記所定搬送装置及び前記後段搬送装置の動作に基づき設定された領域である。
【0105】
[趣旨3]
前記第5領域において、前記所定搬送装置を前記前段搬送装置と読み替え、前記後段プレス装置を前記前段プレス装置と読み替えたとき、
前記制御手段は、前記前段搬送装置が前記第5領域の外にいる、かつ、前記所定搬送装置が前記第2領域の外にいる場合に、前記前段プレス装置のクランク軸の前記加工角度内への進入を許可してもよい。
【0106】
[趣旨4]
前記第1領域及び前記第2領域は、前記前段プレス装置に装着することが可能な金型の大きさの数に対応して設けられ、
前記第4領域及び前記第5領域は、前記後段プレス装置に装着することが可能な金型の大きさの数に対応して設けられてもよい。
【0107】
[趣旨5]
前記プレス装置は、前記クランク軸の角度を検知する角度検知手段を有し、
前記クランク軸の角度に応じた信号は、
前記角度検知手段により検知した角度が、前記プレス装置による前記加工が開始されてから終了するまでの前記クランク軸の角度である加工角度外か否かに応じたロボット干渉エリア外信号と、
前記角度検知手段により検知した角度が下死点か否かに応じた下死点信号と、
を含み、
前記搬送装置は、前記ワークを把持するハンドを有し、
前記ワークの搬送の状態に応じた信号は、
前記搬送装置が第1領域の外にいるか否かに応じた第1領域外信号と、
前記搬送装置が第2領域の外にいるか否かに応じた第2領域外信号と、
前記搬送装置が第3領域の外にいるか否かに応じた第3領域外信号と、
前記搬送装置が第4領域の外にいるか否かに応じた第4領域外信号と、
前記搬送装置が第5領域の外にいるか否かに応じた第5領域外信号と、
前記搬送装置が第6領域の外にいるか否かに応じた第6領域外信号と、
前記ハンドが前記ワークを把持したか否かに応じた吸着信号と、
前記ハンドが前記ワークを搬送しているか否かに応じた搬送中信号と、
を含んでもよい。
【0108】
[趣旨6]
前記第1領域から前記第6領域までには、次の第1条件から第6条件までがそれぞれ設定されていてもよい。
前記第1条件は、前記第1領域に設定され、前記第6領域外信号に基づき前記前段搬送装置が前記第6領域の外にいると判断されること、かつ、前記吸着信号に基づき前記前段プレス装置内に前記ワークがあると判断されること、かつ、前記搬送中信号に基づき前記所定搬送装置が搬出中ではないと判断されること、という条件である。
前記第2条件は、前記第2領域に設定され、前記第6領域外信号に基づき前記前段搬送装置が前記第6領域の外にいると判断されること、かつ、前記ロボット干渉エリア外信号に基づき前記前段プレス装置が前記加工角度外にいると判断されること、かつ、前記下死点信号に基づき前記前段プレス装置内に加工済みのワークがあると判断されること、かつ、前記搬送中信号に基づき前記所定搬送装置が搬出中でないと判断されること、という条件である。
前記第3条件は、前記第3領域に設定され、前記第6領域外信号に基づき前記前段搬送装置が前記領域3の外にいると判断されること、という条件である。
前記第4条件は、前記第4領域に設定され、前記第3領域外信号に基づき前記後段搬送装置が前記第3領域の外にいると判断されること、かつ、前記吸着信号に基づき前記後段プレス装置内にワークがないと判断されること、かつ、前記吸着信号に基づき前記所定搬送装置がワークを把持していない、という条件である。
前記第5条件は、前記第5領域に設定され、前記第3領域外信号に基づき前記後段搬送装置が前記第3領域の外にいると判断されること、かつ、前記ロボット干渉エリア外信号に基づき前記後段プレス装置が前記加工角度外にいると判断されること、かつ、前記吸着信号に基づき前記後段プレス装置内にワークがないと判断されること、かつ、前記吸着信号に基づき前記所定搬送装置がワークを把持していないと判断されること、という条件である。
前記第6条件は、前記第6領域に設定され、前記第3領域外信号に基づき前記後段搬送装置が前記第3領域の外にいると判断されること、という条件である。
【0109】
[趣旨7]
前記進入許可信号は、第1進入許可信号、第2進入許可信号、第3進入許可信号、第4進入許可信号、第5進入許可信号、第6進入許可信号を含み、
前記制御手段は、
前記第1条件が満たされた場合に、前記第1進入許可信号により前記所定搬送装置に第N領域への進入を許可する、
前記第2条件が満たされた場合に、前記第2進入許可信号により前記所定搬送装置に第N領域への進入を許可する、
前記第3条件が満たされた場合に、前記第3進入許可信号により前記所定搬送装置に第N領域への進入を許可する、
前記第4条件が満たされた場合に、前記第4進入許可信号により前記所定搬送装置に第N領域への進入を許可する、
前記第5条件が満たされた場合に、前記第5進入許可信号により前記所定搬送装置に第N領域への進入を許可する、
前記第6条件が満たされた場合に、前記第6進入許可信号により前記所定搬送装置に第N領域への進入を許可する、としてもよい。
【0110】
[趣旨8]
前記制御手段は、前記プレス装置及び前記搬送装置とは独立して設けられていてもよい。
【0111】
[趣旨9]
本発明のプレスシステムの制御方法は、
クランク軸と、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドと、を有し、前記スライドに装着された金型によりワークへ加工を行うプレス装置と、前記プレス装置に前記ワークを搬入し、又は、前記プレス装置から前記ワークを搬出し、前記ワークを搬送する搬送装置と、前記プレス装置と前記搬送装置とを制御する制御手段と、を備えるプレスシステムの制御方法であって、
前記プレスシステムは、所定搬送装置と、前記所定搬送装置に対して前記ワークの搬送方向における上流側に配置された前段プレス装置と、前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における下流側に配置された後段プレス装置と、前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における上流側に配置された前段搬送装置と、前記所定搬送装置に対して前記搬送方向における下流側に配置された後段搬送装置と、前記所定搬送装置と前記前段プレス装置との干渉、前記所定搬送装置と前記後段プレス装置との干渉、前記所定搬送装置と前記前段搬送装置との干渉及び前記所定搬送装置と前記後段搬送装置との干渉、を避けるために設定された複数の領域の情報が記憶された記憶部と、を備え、
前記前段プレス装置及び前記後段プレス装置が、前記クランク軸の角度に応じた信号をそれぞれ前記制御手段に送信するプレス装置側送信工程と、
前記所定搬送装置、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置が、前記ワークの搬送の状態に応じた信号をそれぞれ前記制御手段に送信する搬送装置側送信工程と、
前記制御手段が、前記前段プレス装置及び前記後段プレス装置からそれぞれ送信された前記クランク軸の角度に応じた信号、並びに、前記所定搬送装置、前記前段搬送装置及び前記後段搬送装置からそれぞれ送信された前記ワークの搬送の状態に応じた信号に基づいて、前記複数の領域ごとに前記領域内への進入を許可するか否かを判断し、判断した結果に応じた前記複数の領域ごとの進入許可信号を前記所定搬送装置に送信する制御手段側送信工程と、
前記所定搬送装置が、前記進入許可信号に基づいて前記搬入又は前記搬出を行う搬送工程と、
を備える。
【符号の説明】
【0112】
1 プレスシステム
10 ラインコントローラ
20 演算装置
30 入力装置
40 表示装置
50 記憶装置
100 リフタ
120 ワーク
200 水平フィーダ
210、220 ハンド
230 テーブル
240 アーム
300 プレス装置
302 筐体
303 金型、303a 上型、303b 下型
304 駆動モータ
306 伝達機構
308 クランク軸
310 コンロッド
312 スライド
314 コントローラ
315 記憶部
316 表示部
318 入力部
322 ボルスタ
324 センサ
325 ロータリーエンコーダ
326 ギブ
400 ロボット
410 支持台
420 回転部
460 ハンド
462 吸着部
470 制御部
480 記憶部
C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、Cj 領域
D1、D2、D3、D4 区間
K、K1、K2 金型干渉エリア
L ロボット干渉エリア
P1、P2、・・・、Pn、Pn+1、・・・ プレス装置
Q 部分
R1、R2、・・・、Rm-1、Rm、Rm+1・・・ ロボット
q 幅