(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ポリアミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240215BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20240215BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20240215BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G69/26
C08G73/14
G09F9/00 302
(21)【出願番号】P 2022115155
(22)【出願日】2022-07-19
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0115982
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】オ、デソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003781(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094673(WO,A1)
【文献】特開2021-059720(JP,A)
【文献】特開昭60-190314(JP,A)
【文献】国際公開第2017/200042(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2147342(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00-55/30
C08G 69/26
C08G 73/00-73/26
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系重合体を含むポリアミド系フィルムであって、
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位を含み、選択的にジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位を含み、
前記ジアンヒドリド化合物は、2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)および3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(BPDC)、イソフタロイルクロリド(IPC)、またはその組み合わせを含み、
前記ポリアミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を0:100~70:30のモル比で含み、
前記ポリアミド系フィルムの厚さ50μmを基準に、下記式1で表示されるRSR
A値が3.
6mN~5.0
mNであ
り、下記式2で表示されるRSL
A
値が3.7mN~5.0mNである、ポリアミド系フィルム:
[式1]
RSR
A=(RSR
MD+RSR
TD)/2
[式2]
RSL
A
=(RSL
MD
+RSL
TD
)/2
前記式1において、
前記RSR
MDは、常温条件においてフィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
前記RSR
TDは、常温条件においてフィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であ
り、
前記式2において、
前記RSL
MD
は、-20℃にて2時間放置後1分以内にフィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
前記RSL
TD
は、-20℃にて2時間放置後1分以内にフィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値である。
【請求項2】
前記RSR
MDが3.35
mN~5.0
mNであり、
前記RSR
TDが3.3
mN~5.0
mNである、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項3】
前記ポリアミド系フィルムの厚さ50μmを基準に、曲率半径が2mmとなるように折り畳んだ状態で25℃にて24時間静置した後、フィルムに加わる力を解放したとき、前記ポリアミド系フィルムの内角が140°以上である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項4】
モジュラスが5GPa以上であり、
透過度が80%
以上であり、
ヘイズが1%以下であり、
黄色度が5以下である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項5】
前記ポリアミド系フィルムが、フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤からなる群より選択される1種以上をさらに
含む、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項6】
ポリアミド系フィルムおよび機能層を含み、
前記ポリアミド系フィルムがポリアミド系重合体を含み、
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位を含み、選択的にジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位を含み、
前記ジアンヒドリド化合物は、2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)および3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(BPDC)、イソフタロイルクロリド(IPC)、またはその組み合わせを含み、
前記ポリアミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を0:100~70:30のモル比で含み、
前記ポリアミド系フィルムの厚さ50μmを基準に、下記式1で表示されるRSR
A値が3.
6mN~5.0
mNであ
り、下記式2で表示されるRSL
A
値が3.7mN~5.0mNである、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ:
[式1]
RSR
A=(RSR
MD+RSR
TD)/2
[式2]
RSL
A
=(RSL
MD
+RSL
TD
)/2
前記式1において、
前記RSR
MDは、常温条件においてフィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
前記RSR
TDは、常温条件においてフィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であ
り、
前記式2において、
前記RSL
MD
は、-20℃にて2時間放置後1分以内にフィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
前記RSL
TD
は、-20℃にて2時間放置後1分以内にフィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値である。
【請求項7】
表示部と、
前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウがポリアミド系フィルムと機能層とを含み、
前記ポリアミド系フィルムがポリアミド系重合体を含み、
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位を含み、選択的にジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位を含み、
前記ジアンヒドリド化合物は、2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)および3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(BPDC)、イソフタロイルクロリド(IPC)、またはその組み合わせを含み、
前記ポリアミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を0:100~70:30のモル比で含み、
前記ポリアミド系フィルムの厚さ50μmを基準に、下記式1で表示されるRSR
A値が3.
6mN~5.0
mNであ
り、下記式2で表示されるRSL
A
値が3.7mN~5.0mNである、ディスプレイ装置:
[式1]
RSR
A=(RSR
MD+RSR
TD)/2
[式2]
RSL
A
=(RSL
MD
+RSL
TD
)/2
前記式1において、
前記RSR
MDは、常温条件においてフィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
前記RSR
TDは、常温条件においてフィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であ
り、
前記式2において、
前記RSL
MD
は、-20℃にて2時間放置後1分以内にフィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
前記RSL
TD
は、-20℃にて2時間放置後1分以内にフィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値である。
【請求項8】
有機溶媒上でジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して、ポリアミド系重合体溶液を調製する段階と、
前記ポリアミド系重合体溶液をキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、
前記ゲルシートを熱処理する段階とを含み、
前記ゲルシートを熱処理する段階は、
少なくとも1つの熱風機で生成される熱風によって熱処理する第1熱処理段階と、少なくとも1つのヒーターにより熱処理する第2熱処理段階とを含み、
前記ゲルシートを熱処理する段階は、前記ゲルシートの幅方向の両端部を固定部材で固定し、固定した前記ゲルシートの幅を変化させながら熱処理
し、
前記第1熱処理段階を行う区間を第1熱処理区間とし、
前記第2熱処理段階を行う区間を第2熱処理区間とし、
前記第1熱処理区間において前記ゲルシートの最大幅をWa、
前記第1熱処理区間において前記ゲルシートの最小幅をWb、
前記第1熱処理区間および前記第2熱処理区間において前記ゲルシートの最小幅をWcとすると、
Wa>Wb>Wc条件を満足し、
Wb/Wa値が0.955~0.990であり、
Wc/Wa値が0.950~0.975である、請求項1に記載のポリアミド系フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、ポリアミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アミド-イミド)(poly(amide-imide)、PAI)等のようなポリアミド系樹脂は、摩擦、熱、および化学的な抵抗力に優れ、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
ポリアミドは、様々な分野で活用されている。例えば、ポリアミドは、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリアミドは、フッ素重合体とともに装飾や腐食防止のための塗料として使用され、フッ素重合体を金属基板に接着させる役割をする。また、ポリアミドは、厨房調理器具にコーティングをするためにも使用され、耐熱性と耐薬品性の特徴があって、ガス分離に用いるメンブレンとしても使用され、天然ガス油井において二酸化炭素、硫化水素および不純物のような汚染物をろ過する装置にも使用される。
【0004】
最近では、ポリアミドをフィルム化することにより、より安価でありながらも光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリアミド系フィルムが開発されている。このようなポリアミド系フィルムは、有機発光ダイオード(OLED、organic light-emitting diode)または液晶ディスプレイ(LCD、liquid-crystal display)などのディスプレイ材料に適用可能であり、位相差物性の実現時に、反射防止フィルム、補償フィルム、または位相差フィルムに適用可能である。
【0005】
このようなポリアミド系フィルムをカバーウィンドウやフォルダブル、フレキシブルディスプレイ装置に適用する場合、繰り返しのフォルディング駆動により、ヒンジ(hinge)部分において折れ込みキズ(folding mark)が発生すると言う問題があった。
【0006】
したがって、前記問題を解決するとともに、復元力に優れ、機械的特性および光学特性に優れたフィルム開発に対する要求が持続的に増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実現例の目的は、機械的物性および光学的物性を一定レベル以上に確保しつつ、ループ剛性、静的曲げ特性、フォルディング特性に優れたポリアミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実現例は、ポリアミド系重合体を含むポリアミド系フィルムであって、前記フィルムの厚さ50μmを基準に、下記式1で表示されるRSRA値が3.4mN~5.0mNである、ポリアミド系フィルムを提供する。
【0009】
[式1]
RSRA=(RSRMD+RSRTD)/2
前記式1において、
前記RSRMDは、常温条件においてフィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
前記RSRTDは、常温条件においてフィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値である。
【0010】
他の実現例は、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド系フィルムがポリアミド系重合体を含み、前記フィルムの厚さ50μmを基準に、前記式1で表示されるRSRA値が3.4mN~5.0mNである、ディスプレイ装置用カバーウィンドウを提供する。
【0011】
また他の実現例は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウがポリアミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド系フィルムがポリアミド系重合体を含み、前記フィルムの厚さ50μmを基準に、前記式1で表示されるRSRA値が3.4mN~5.0mNである、ディスプレイ装置を提供する。
【0012】
実現例は、有機溶媒上でジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して、ポリアミド系重合体溶液を調製する段階と、前記溶液をキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含み、前記ゲルシートを熱処理する段階は、ゲルシートの幅方向の両端部を固定部材で固定し、固定したゲルシートの幅を変化させながら熱処理する、ポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
実現例によるポリアミド系フィルムは、所定範囲のRSRA値を有することにより、優れた柔軟性および機械的耐久性を示し、フィルムの繰り返しフォルディング駆動に起因して発生し得る折れ込みキズ(folding mark)を最小化し、復元力が改善され得る。
【0014】
前記ポリアミド系フィルムをディスプレイ装置用カバーウィンドウやフォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置に適用すると、適度の力によるフォルディング駆動が可能であるだけでなく、繰り返しフォルディングの際にヒンジ部分で発生し得る変形を最小化することにより、長期使用安定性および品質信頼性を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的分解図である。
【
図2】
図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的斜視図である。
【
図3】
図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的断面図である。
【
図4】
図4は、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法の概略的手順を示すものである。
【
図5】
図5は、一実現例によるポリアミド系フィルムのループ剛性測定方法を概略的に示したものである。
【
図6】
図6は、一実現例によるポリアミド系フィルムの変形角測定方法を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は様々な異なる形態で実現されてよく、本明細書で説明する実現例に限定されない。
【0017】
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものと記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体に亘って、同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0018】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
本明細書において、単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味で解釈される。
【0020】
また、本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0021】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ用いられる。
【0022】
また、本明細書において「置換された」ということは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
【0023】
[ポリアミド系フィルム]
実現例は、所定範囲のRSRA値を有することにより、優れた柔軟性および機械的耐久性を示し、フィルムの繰り返しフォルディング駆動に起因して発生し得るヒンジ部分の折れ込みキズを最小化し、復元力が改善したポリアミド系フィルムを提供する。
【0024】
実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含む。
【0025】
前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に、下記式1で表示されるRSRA値が3.4mN~5.0mNである。
【0026】
[式1]
RSRA=(RSRMD+RSRTD)/2
前記式1において、
前記RSRMDは、常温条件においてフィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
前記RSRTDは、常温条件においてフィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値である。
【0027】
具体的に、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に、前記式1で表示されるRSRA値が、3.4mN以上、3.5mN以上、3.6mN以上、3.7mN以上、または3.8mN以上であり、5.0mN以下、4.8mN以下、4.5mN以下、または4.2mN以下であり得る。
【0028】
前記ポリアミド系フィルムのループ剛性測定方法は、
図5に示す通りである。具体的に、
図5(a)を参照して、ループ剛性テスター(LOOP STIFFNESS TESTER、東洋精機製作所)装置は、固定部10、加圧部20およびセンサ(図示せず)を含む。幅15mm、長さ120mm、厚さ50μmのポリアミド系フィルム100の両端部を固定部10に固定する。次いで、
図5(b)を参照して、加圧部20と固定部10との間の最終離隔距離Lが20mmになるまで、加圧部20を用いて3.3mm/sの加圧速度でポリアミド系フィルム100を加圧した後、センサでポリアミド系フィルム100のループ剛性を測定する。
【0029】
前記ポリアミド系フィルムのRSRA値が前述の範囲に制御されることにより、フィルムがフレキシブルディスプレイ装置に適用される際、フィルムの繰り返しフォルディング駆動に起因して発生し得るヒンジ部分の折れ込みキズを最小化し、復元力が改善されたポリアミド系フィルムを実現し得る。
【0030】
一方、前記ポリアミド系フィルムのRSRA値が前述の範囲を超えると、フィルムの柔軟性が低下してフォルディングのために過度の力を加える必要があるため、フォルディングやベンディングの際に不便さがあり、前記ポリアミド系フィルムのRSRA値が前述の範囲の未満であると、繰り返しフォルディング後にシワが強く視認されるような問題が発生して、製品の品質信頼性が低下し得る。
【0031】
常温条件において、前記ループ剛性測定の際、前記ポリアミド系フィルムのMD方向を長さ方向とする試験片を製造した後に測定したループ剛性値をRSRMDとすると、前記RSRMD値は3.35mN~5.0mNである。
【0032】
具体的に、前記ポリアミド系フィルムのRSRMD値は、3.35mN以上、3.4mN以上、3.5mN以上、または3.6mN以上であり、5.0mN以下、4.8mN以下、4.5mN以下、4.2mN以下、または4.0mN以下であり得る。
【0033】
常温条件において、前記ループ剛性測定の際、前記ポリアミド系フィルムのTD方向を長さ方向とする試験片を製造した後に測定したループ剛性値をRSRTDとすると、前記RSRTD値は3.3mN~5.0mNである。
【0034】
具体的に、前記ポリアミド系フィルムのRSRTD値は、3.3mN以上、3.4mN以上、3.5mN以上、または3.6mN以上であり、5.0mN以下、4.8mN以下、4.5mN以下、4.2mN以下、または4.1mN以下であり得る。
【0035】
前記ポリアミド系フィルムのRSRMD値およびRSRTD値が前記範囲を満足すると、MD方向およびTD方向の両方、すなわちフィルムの方向にかかわらず、目的とするレベルのループ剛性値を有するため、MD/TD方向間の品質のバラツキが少ないので、品質信頼性を確保し製品歩留まりを向上させ得る。
【0036】
一方、前記ポリアミド系フィルムのRSRMD値およびRSRTD値のいずれかが前述の範囲から外れると、フィルムの方向によってフィルムの機械的物性に関わる品質のバラツキが大きくなるため、フィルム自体の品質が低下するだけでなく、最終製品に適用する際に不良率の高い製品に直結し得る。
【0037】
また、前記ポリアミド系フィルムのRSRMD値およびRSRTD値のいずれも前記範囲から外れると、フィルムの柔軟性や機械的耐久性が著しく低下し得る。
【0038】
前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に、下記式2で表示されるRSLA値が3.4mN~5.0mNである。
【0039】
[式2]
RSLA=(RSLMD+RSLTD)/2
前記式2において、
前記RSLMDは、-20℃にて2時間放置後1分以内にフィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
前記RSLTDは、-20℃にて2時間放置後1分以内にフィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値である。
【0040】
具体的に、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に、前記式2で表示されるRSLA値が、3.4mN以上、3.5mN以上、3.6mN以上、3.7mN以上、または3.8mN以上であり、5.0mN以下、4.8mN以下、4.5mN以下、または4.2mN以下であり得る。
【0041】
前記ポリアミド系フィルムのRSLA値が前述の範囲に制御されることにより、-20℃という極低温において2時間放置した後でも、依然として目的とするレベルのループ剛性を実現し得る。具体的に、前記フィルムをフレキシブルディスプレイ装置に適用する際に製品の不良率を下げることができ、特にフレキシブルディスプレイ装置を過酷な環境において使用する場合にも、機械的物性や外観品質が低下しない。
【0042】
-20℃にて2時間放置後1分以内に前記ループ剛性を測定する際、前記ポリアミド系フィルムのMD方向を長さ方向とする試験片を製造した後に測定したループ剛性値をRSLMDとすると、前記RSLMD値は3.4mN~5.0mNである。
【0043】
具体的に、前記ポリアミド系フィルムのRSLMD値は、3.4mN以上、3.5mN以上、3.6mN以上、または3.8mN以上であり、5.0mN以下、4.8mN以下、4.5mN以下、または4.2mN以下であり得る。
【0044】
-20℃にて2時間放置後1分以内に前記ループ剛性を測定する際、前記ポリアミド系フィルムのTD方向を長さ方向とする試験片を製造した後に測定したループ剛性値をRSLTDとすると、前記RSLTD値は3.4mN~5.0mNである。
【0045】
具体的に、前記ポリアミド系フィルムのRSLTD値は、3.4mN以上、3.5mN以上、3.6mN以上、または3.8mN以上であり、5.0mN以下、4.8mN以下、4.5mN以下、または4.2mN以下であり得る。
【0046】
前記ポリアミド系フィルムのRSLMD値およびRSLTD値が前記範囲を満足すると、極低温にさらされた後でもフィルムの方向にかかわらず、目的とするレベルのループ剛性値を有するため、前記フィルムをフレキシブルディスプレイ装置に適用する際に品質のバラツキが少ないので、品質信頼性を向上させ得る。
【0047】
実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に、曲率半径が2mmとなるように折り畳んだ状態で25℃にて24時間静置した後、フィルムに加わる力を解放したとき、前記フィルムの内閣が140°以上である。
【0048】
具体的に、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に、曲率半径が2mmとなるように折り畳んだ状態で25℃にて24時間静置した後、フィルムに加わる力を解放したとき、前記フィルムの内角が145°以上、150°以上、155°以上、または160°以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0049】
このようなポリアミド系フィルムの静的曲げ特性に関して、変形角測定方法は
図6に示す通りである。具体的に、
図6(a)を参照して、幅20mm、長さ150mm、厚さ50μmのポリアミド系フィルム100を、曲率半径が2mmとなるようにガラス治具(glass zig)に入れて折り畳んだ状態で25℃にて24時間静置する。
図6(b)を参照して、24時間経過後、フィルムをガラス治具から取り出してフィルムに加わる力を解放したときのフィルムの内角AGを測定する。
【0050】
前記ポリアミド系フィルムの変形角評価により測定されたフィルムの内角が前述の範囲であると、優れた復元力を確保したため、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に適用する際に映像歪みが発生しない。特に、例えば、フォルダブルディスプレイ装置に適用する際、長時間フォルディング状態で維持してから広げることが多いが、この際に装置の外観に発生し得る永久変形を最小化し得る。
【0051】
実現例によると、前記ポリアミド系フィルムのモジュラスは5GPa以上である。具体的に、前記モジュラスは、5.5GPa以上、5.7GPa以上、または6GPa以上であり得る。
【0052】
前記ポリアミド系フィルムの透過度は80%以上であり得る。例えば、前記透過度は、85%以上、88%以上であり、100%以下または99%以下であり得る。
【0053】
前記ポリアミド系フィルムのヘイズは1%以下である。具体的に、前記ヘイズは、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、または0.5%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0054】
前記ポリアミド系フィルムの黄色度(yellow index)は5以下である。例えば、前記黄色度は、4.5以下、4.0以下、または3.5以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0055】
実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に厚さ偏差が3μm以下、または2μm以下であり得る。また、前記厚さ偏差率は、5%以下、4%以下、または3%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0056】
前記ポリアミド系フィルムの圧縮強度は、0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.5kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0057】
前記ポリアミド系フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを用いて10mm/分の速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下である。具体的に、前記穿孔最大径が、55mm以下、50mm以下であり、1mm以上、3mm以上、5mm以上、10mm以上、15mm以上、または20mm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記ポリアミド系フィルムの表面硬度はHB以上であり得る。具体的に、前記表面硬度がH以上、2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記ポリアミド系フィルムの引張強度は15kgf/mm2以上であり得る。具体的に、前記引張強度が18kgf/mm2以上、20kgf/mm2以上、21kgf/mm2以上、または22kgf/mm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記ポリアミド系フィルムの伸び率は15%以上であり得る。具体的に、前記伸び率が16%以上、17%以上、18%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0061】
前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が3mmになるようにフォルディングする際、破断する前までのフォルディング回数が20万回以上であり得る。前記フォルディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmになるように曲げて広げることを1回とする。
【0062】
前記ポリアミド系フィルムが前述の範囲のフォルディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0063】
前記ポリアミド系フィルムの表面粗さは、0.01μm~0.07μmであり得る。具体的に、前記表面粗さは、0.01μm以上または0.02μm以上であり、0.07μm以下、0.06μm以下、または0.05μm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記ポリアミド系表面粗さが前記範囲を満足することにより、ディスプレイ装置に適用するために有利な輝度条件や質感を実現するのに有利であり得る。
【0065】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒の含有量は1500ppm以下であり得る。例えば、前記残留溶媒の含有量は、1200ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、500ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記残留溶媒は、フィルム製造時に揮発せず、最終的に製造されたフィルムに残留する溶媒の量のことを意味する。
【0067】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下し、フィルム品質のバラツキにも影響を及ぼし得る。特に、機械的強度に影響を及ぼすため、フィルムの後加工の際に不利な影響を及ぼし、フィルムの吸湿性を加速化させ、機械的物性に加えて光学物性や耐熱特性も低下し得る。
【0068】
実現例による前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して形成され得る。
【0069】
例えば、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して形成されても良く、ジアミン化合物、ジカルボニル化合物、およびジアンヒドリド化合物を重合して形成されても良い。
【0070】
前記ポリアミド系重合体は、アミド繰り返し単位を含む重合体である。また、前記ポリアミド系重合体は、選択的にイミド繰り返し単位をさらに含み得る。
【0071】
具体的に、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位を含み、選択的にジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位を含む。
【0072】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して、共重合体を形成する化合物である。
【0073】
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
【0074】
前記化学式1において、Eは、置換または非置換の2価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の2価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の2価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2-、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2-の中から選択され得る。
【0075】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0076】
前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0077】
具体的に、前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0078】
より具体的に、前記化学式1の(E)eは、前記化学式1-6bで表される基または前記化学式1-9bで表される基であり得る。
【0079】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
【0080】
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。ここで、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0081】
一部の実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を含み得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0082】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminodiphenyl、TFDB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0083】
前記ジアンヒドリド化合物は、複屈折値が低いため、前記ポリアミド系重合体を含むフィルムの透過度のような光学物性の向上に寄与し得る化合物である。
【0084】
前記ジアンヒドリド化合物は特に限定されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアンヒドリド化合物であり得る。例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2の化合物であり得る。
【0085】
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC4-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択された連結基によって結合されている。
【0086】
前記化学式2におけるGは、下記化学式2-1a~2-9aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0087】
例えば、前記化学式2におけるGは、前記化学式2-2aで表される基、前記化学式2-8aで表される基、または前記化学式2-9aで表される基であり得る。
【0088】
一実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物、ビフェニル基を有する化合物、またはケトン基を有する化合物を含み得る。
【0089】
前記フッ素含有置換基は、フッ素化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0090】
他の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、1種の単一成分または2種の混合成分からなり得る。
【0091】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)および3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)からなる群より選択される1種以上を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0092】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とが重合してポリアミック酸を生成し得る。
【0093】
次いで、前記ポリアミック酸は、脱水反応によりポリイミドに転換され得、前記ポリイミドはイミド繰り返し単位を含む。
【0094】
前記ポリイミドは、下記化学式Aで表される繰り返し単位を形成し得る。
【0095】
前記化学式Aにおいて、E、G、およびeに関する説明は、前述の通りである。
【0096】
例えば、前記ポリイミドは、下記化学式A-1で表される繰り返し単位を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0097】
前記化学式A-1におけるnは1~400の整数であり得る。
【0098】
前記ジカルボニル化合物は特に制限されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
【0099】
前記化学式3において、Jは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0100】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0101】
前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0102】
具体的に、前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0103】
より具体的に、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、3-3bで表される基、または3-8bで表される基であり得る。
【0104】
例えば、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基または前記化学式3-2bで表される基であり得る。
【0105】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、1種のジカルボニル化合物を単独で使用するか、互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)jが前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0106】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0107】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0108】
前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
【0109】
例えば、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0110】
または、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、化学式B-2およびB-3で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
一実現例によると、前記ポリアミド系重合体は、下記化学式Bで表される繰り返し単位を含み、選択的に下記化学式Aで表される繰り返し単位を含み得る。
【0115】
【0116】
【0117】
前記化学式AおよびBのうち、EおよびJは互いに独立して、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され、
eおよびjは互いに独立して1~5の整数の中から選択され、
eが2以上の場合、2以上のEは互いに同一または異なり、
jが2以上の場合、2以上のJは互いに同一または異なり、
Gは、置換または非置換の4価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC4-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合して縮合環を形成するか、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択された連結基によって結合されている。
【0118】
前記ポリアミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を0:100~70:30のモル比で含み得る。具体的に、前記イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位のモル比は、0:100~70:30、0:100~60:40、0:100~50:50、または0:100~45:55であり得るが、これに限定されるものではない。
【0119】
前記ポリアミド系重合体のイミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とのモル比が前記範囲であると、ポリアミド系フィルムのRSRA値~RSLA値を効果的に制御することができ、特徴的な工程方法と結びついて、フィルムの柔軟性および機械的耐久性を高め得る。
【0120】
前記ポリアミド系重合体において、前記化学式Aで表される繰り返し単位および前記化学式Bで表される繰り返し単位のモル比は、0:100~70:30であり得る。具体的に、前記化学式Aで表される繰り返し単位および前記化学式Bで表される繰り返し単位のモル比は、0:100~70:30、0:100~60:40、0:100~50:50、または0:100~45:55であり得るが、これに限定されるものではない。
【0121】
実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体に加えて、フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤からなる群より選択される1種以上をさらに含み得る。
【0122】
前記フィラーは例えば、金属または準金属の酸化物、炭酸化物、硫酸化物などを含み得る。例えば、前記フィラーは、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0123】
前記フィラーは粒子状で含まれ得る。また、前記フィラーは、表面に特別なコーティング処理がされていない状態であり、フィルム全体に亘って均一に分散されている。
【0124】
前記ポリアミド系フィルムが前記フィラーを含むことにより、前記フィルムは光学特性の低下もなく、広い視野角を確保することができ、照度および巻取性を向上させ得ることはもちろん、フィルム製造の際の走行性スクラッチ改善効果を向上させ得る。
【0125】
前記フィラーの屈折率は1.55~1.75であり得る。具体的に、前記フィラーの屈折率は、1.60~1.75、1.60~1.70、1.60~1.68、または1.62~1.65であり得るが、これに限定されるものではない。
【0126】
前記フィラーの屈折率が前記範囲を満足することにより、nx、ny、nzに関連する複屈折値が適切に調節され、フィルムの様々な角度における輝度が改善され得る。
【0127】
一方、前記フィラーの屈折率が前記範囲から外れると、フィルム上でフィラーの存在が目視されたり、フィラーによってヘイズが上昇したりする問題が生じ得る。
【0128】
前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~15000ppmであり得る。具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~14500ppm、100ppm~14200ppm、200ppm~14500ppm、200ppm~14200ppm、250ppm~14100ppm、または300ppm~14000ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0129】
前記フィラーの含有量が前記範囲から外れると、フィルムのヘイズが急激に増加し、フィルム表面にフィラー同士の凝集現象が発生して、異物感が目視で確認されたり、生産工程において走行に問題が発生したり、巻取性が低下し得る。
【0130】
前記青色顔料は、TOYO社のOP-1300Aを含み得るが、これに限定されない。
【0131】
一部の実現例において、前記青色顔料は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して50ppm~5000ppmで含まれ得る。好ましくは、前記青色顔料は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して、100ppm~5000ppm、200ppm~5000ppm、300ppm~5000ppm、400ppm~5000ppm、50ppm~3000ppm、100ppm~3000ppm、200ppm~3000ppm、300ppm~3000ppm、400ppm~3000ppm、50ppm~2000ppm、100ppm~2000ppm、200ppm~2000ppm、300ppm~2000ppm、400~2000ppm、50ppm~1000ppm、100ppm~1000ppm、200ppm~1000ppm、300~1000ppm、または400ppm~1000ppmで含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0132】
前記UVA吸収剤は、当技術分野で使用される10nm~400nm波長の電磁波を吸収する吸収剤を含み得る。例えば、前記UVA吸収剤はベンゾトリアゾール(benzotriazole)系化合物を含み、前記ベンゾトリゾール系化合物はN-フェノールベンゾトリアゾール(N-phenolic benzotriazole)系化合物を含み得る。一部の実現例において、前記N-フェノールベンゾトリアゾール系化合物は、フェノール基が炭素数1~10のアルキル基で置換されたN-フェノールベンゾトリゾールを含み得る。前記アルキル基は、2個以上で置換され、直鎖状、分枝状または環状であり得る。
【0133】
一部の実現例において、前記UVA吸収剤は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して0.1重量%~10重量%で含まれ得る。好ましくは、前記UVA吸収剤は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~3重量%、0.1重量%~2重量%、0.5重量%~10重量%、0.5重量%~5重量%、0.5重量%~3重量%、0.5重量%~2重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、1重量%~3重量%、または1重量%~2重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0134】
前術の前記ポリアミド系フィルムの物性は、40μm~60μmの厚さを基準とする。例えば、前記ポリアミド系フィルムの物性は、50μmの厚さを基準とする。
【0135】
前述のポリアミド系フィルムの構成成分および物性に関する特徴は互いに組み合わされ得る。
【0136】
また、前記ポリアミド系フィルムの前述のRSRA値、RSRMD値、RSRTD値、RSLA値、RSLMD値、RSLTD値、変形角の評価によるフィルムの内閣、モジュラス、透過度、ヘイズ、黄色度などは、前記ポリアミド系フィルムをなす成分の化学的、物理的物性とともに、後述する前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、各段階の具体的な工程条件が総合して調節され得る。
【0137】
例えば、前記ポリアミド系フィルムをなす成分の組成と含有量、フィルム製造工程における重合条件および熱処理条件などと、全てのものが総合され、目的とする範囲のRSRA値、RSRMD値、RSRTD値、RSLA値、RSLMD値、RSLTD値、変形角の評価によるフィルムの内角を実現し得る。
【0138】
[ディスプレイ装置用カバーウィンドウ]
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含む。
【0139】
前記ポリアミド系フィルムはポリアミド系重合体を含み、前記フィルムの厚さ50μmを基準に、前記式1で表示されるRSRA値が3.4mN~5.0mNである。
【0140】
前記ポリアミド系フィルムに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0141】
前記ディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0142】
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウがポリアミド系フィルムと機能層とを含む。
【0143】
前記ポリアミド系フィルムはポリアミド系重合体を含み、前記フィルムの厚さ50μmを基準に、前記式1で表示されるRSRA値が3.4mN~5.0mNである。
【0144】
前記ポリアミド系フィルムおよびカバーウィンドウに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0145】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な分解図である。
図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な斜視図である。
図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。
【0146】
具体的に、
図1~
図3には、表示部400と、前記表示部400上に第1面101および第2面102を有するポリアミド系フィルム100と機能層200とを含むカバーウィンドウ300とが配置され、前記表示部400とカバーウィンドウ300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
【0147】
前記表示部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
【0148】
前記表示部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
【0149】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
【0150】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自己発光によって画像を表示し得る。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などのような駆動信号を印加し得るように接続されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
【0151】
また、前記表示部400および前記カバーウィンドウ300の間に接着層500が含まれ得る。前記接着層は、光学的に透明な接着層であって良く、特に限定されない。
【0152】
前記カバーウィンドウ300は、前記表示部400上に配置され得る。前記カバーウィンドウは、実現例によるディスプレイ装置の外郭に位置して、前記表示部を保護し得る。
【0153】
前記カバーウィンドウ300は、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み得る。前記機能層は、ハードコーティング層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記ポリアミド系フィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
【0154】
実現例によるポリアミド系フィルムの場合、ディスプレイ駆動方式やパネル内部のカラーフィルター、積層構造などの変更もなく簡単にディスプレイ装置の外部にフィルム状で適用して、均一な厚さ、低いヘイズ、高い透過率および透明性を有するディスプレイ装置を提供し得るので、過度の工程変更やコスト増加を必要としないので、生産コストを削減できるという利点もある。
【0155】
実現例によるポリアミド系フィルムは、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性およびモジュラス、柔軟性などの機械的特性を有することができ、紫外線にさらされても光学/機械的特性の変化(劣化)が抑制され得る。
【0156】
具体的に、前述した範囲のRSRA値を有するポリアミド系フィルムの場合、優れた柔軟性および機械的耐久性を実現することができ、フィルムの繰り返しフォルディング駆動に起因して発生し得るヒンジ部分の変形を最小化し、復元力が改善され得る。また、フィルムの方向に応じて類似のループ剛性値を示し、極低温においても目的とする範囲のループ剛性値を示すことにより、品質が均一で、最終製品に適用した際に品質信頼性が向上し、過酷な環境において使用する場合でも機械的物性や外観品質が低下しない。
【0157】
[ポリアミド系フィルムの製造方法]
一実現例は、ポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
【0158】
一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒中でジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して、ポリアミド系重合体溶液を調製する段階(S100)と、前記溶液をキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階(S200)と、前記ゲルシートを熱処理する段階(S300)とを含む(
図4参照)。
【0159】
一部の実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、前記ポリアミド系重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)、前記ポリアミド系重合体を熟成させる段階(S120)および/または前記ポリアミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。
【0160】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体が主成分であるフィルムであって、前記ポリアミド系重合体は、構造単位としてイミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とを所定のモル比で含む重合体である。
【0161】
前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、前記ポリアミド系重合体を調製するための重合体溶液は、反応器内で有機溶媒中にジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて調製され得る(S100)。
【0162】
一実現例において、前記重合体溶液を有機溶媒中にジアミン化合物およびジカルボニル化合物を同時投入して反応させることにより調製され得る。
【0163】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、有機溶媒中にジアミン化合物およびジカルボニル化合物を混合および反応させてポリアミド溶液を調製する段階を含み得る。
【0164】
他の実現例において、前記重合体溶液を有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時投入して反応させることにより調製され得る。
【0165】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミック酸(Polyamic acid、PAA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸(PAA)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させて、アミド結合およびイミド結合を形成する段階とを含み得る。前記ポリアミック酸溶液は、ポリアミック酸繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0166】
または、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミック酸溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸溶液を脱水してポリイミド(Polyimide、PI)溶液を調製する段階と、前記ポリイミド(PI)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させてアミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリイミド溶液は、イミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0167】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを1次混合および反応させて、ポリアミド(Polyamide、PA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミド(PA)溶液に前記ジアンヒドリド化合物を2次混合および反応させて、イミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0168】
このようにして調製された前記重合体溶液は、ポリアミック酸(PAA)繰り返し単位、ポリアミド(PA)繰り返し単位およびポリイミド(PI)繰り返し単位からなる群より選択される1種以上を含む重合体が含有された溶液であり得る。
【0169】
または、前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来のアミド繰り返し単位を含み、選択的に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来のイミド繰り返し単位を含む。
【0170】
前記ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物に関する説明は、前述の通りである。
【0171】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得る。または、前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は15重量%~25重量%または15重量%~20重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0172】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において、効果的にポリアミド系フィルムが製造され得る。
【0173】
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、触媒を投入する段階をさらに含み得る。
【0174】
この際、前記触媒は、ベータピコリン、酢酸無水物、イソキノリン(isoquinoline、IQ)およびピリジン系化合物からなる群より選択される1種以上を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0175】
前記触媒は、前記ポリアミド系重合体1モルを基準に、0.01モル当量~0.5モル当量、0.01モル当量~0.4モル当量、0.01モル当量~0.3モル当量、0.01モル当量~0.2モル当量、または0.01モル当量~0.1モル当量を投入し得るが、これに限定されるものではない。
【0176】
前記触媒を投入すると、反応速度を向上させることができ、繰り返し単位構造間または繰り返し単位構造内の化学的結合力を向上させ得る。
【0177】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)をさらに含み得る。前記重合体溶液の粘度は、常温を基準に、80000cps~500000cps、100000cps~500000cps、150000cps~500000cps、150000cps~450000cps、200000cps~450000cps、200000cps~400000cps、200000cps~350000cps、または200000cps~300000cpsで調整され得る。この場合、ポリアミド系フィルムの製膜性を向上させることにより、厚さ均一度を向上させ得る。
【0178】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、有機溶媒中にジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を同時または順次混合および反応させて第1重合体溶液を調製する段階と、前記ジカルボニル化合物を追加投入して目標粘度を有する第2重合体溶液を調製する段階とを含み得る。
【0179】
前記第1重合体溶液を調製する段階および第2重合体溶液を調製する段階の場合、調製された重合体溶液の粘度が異なる。例えば、前記第1重合体溶液よりも前記第2重合体溶液の粘度がさらに高い。
【0180】
前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度と、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度とが異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度が、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度より速くても良い。
【0181】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調整する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7に調整され、例えば、4.5~7に調整され得る。
【0182】
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することにより調整され、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミンまたはアルカノールアミンなどのアミン系化合物を含み得る。
【0183】
前記重合体溶液のpHを前述の範囲で調整することにより、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面で目的とする光学物性および機械的物性を実現し得る。
【0184】
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
【0185】
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記重合体溶液に用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0186】
他の実現例において、前記重合体溶液に、フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤からなる群より選択される1種以上を添加し得る。
【0187】
前記フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤の種類、含有量などの具体的な内容は前述の通りである。前記フィラー、青色顔料および/またはUVA吸収剤は、前記重合体溶液内で前記ポリアミド系重合体と混合され得る。
【0188】
前記重合体溶液は、-20℃~20℃、-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃にて保管され得る。
【0189】
前記温度にて保管すると、前記重合体溶液の変質を防止することができ、含水率を低下させ、これにより製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止し得る。
【0190】
一部の実現例において、前記重合体溶液または前記粘度調整された重合体溶液を熟成させ得る(S120)。
【0191】
前記熟成は、前記重合体溶液を、24時間以上-10~10℃の温度条件に静置して行われ得る。この場合、前記重合体溶液に含まれているポリアミド系重合体または未反応物が、例えば、反応を仕上げたり、化学平衡をなしたりすることによって、前記重合体溶液が均質化され、これにより形成されたポリアミド系フィルムの機械的特性、光学特性がフィルムの全面積に対して実質的に均一となり得る。好ましくは、前記熟成は-5~10℃、-5~5℃または-3~5℃の温度条件にて行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0192】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。前記脱気により前記重合体溶液中の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの優れた表面外観および機械的物性などを実現し得る。
【0193】
前記脱気は、真空脱泡または不活性ガスパージを含み得る。
前記真空脱泡は、前記重合体溶液が収容された反応器を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件にて真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内部の気泡を低減させることができ、その結果、それにより製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学物性を実現し得る。
【0194】
また、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧でパージする方法により行われ得る。このような条件にて前記パージを実施することにより、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることによって、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの優れた光学物性および優れた機械的物性などを実現し得る。
【0195】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0196】
前記真空脱泡および前記不活性ガスパージは、別の工程で行われ得る。
例えば、真空脱泡する工程が行われ、それ以降に不活性ガスでパージする工程が行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0197】
前記真空脱泡および/または前記不活性ガスパージを行うことにより、製造されたポリアミド系フィルム表面の物性が向上し得る。
【0198】
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造し得る(S200)。
例えば、前記重合体溶液を支持体上で塗布、押出および/または乾燥してゲルシートを形成し得る。
【0199】
また、前記重合体溶液のキャスティング厚は200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液が前記厚さ範囲にキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一度とを確保し得る。
【0200】
前記重合体溶液の粘度は前述のように、常温にて150000cps~500000cpsであり得る。前記粘度範囲を満足することにより、前記重合体溶液がキャスティングされる際に欠陥なく均一な厚さにキャスティングされることができ、乾燥過程において局所的/部分的な厚さ変化もなく、実質的に均一な厚さのポリアミド系フィルムを形成し得る。
【0201】
前記重合体溶液をキャスティングした後、60℃~150℃、70℃~150℃、80℃~150℃、90℃~150℃、または90℃~120℃の温度で、5分~60分、または10分~40分間乾燥してゲルシートを製造し得る。具体的に、前記重合体溶液を90℃~120℃の温度で20分~40分間乾燥してゲルシートを製造し得る
【0202】
前記乾燥中に前記重合体溶液の溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが製造され得る。
【0203】
前記乾燥されたゲルシートを熱処理して、ポリアミド系フィルムを形成し得る(S300)。
【0204】
前記ゲルシートの熱処理は、例えば熱処理装置(テンター(tenter))により行われ得る。前記熱処理装置は、少なくとも1つの熱風機および少なくとも1つのヒーターを含み得る。前記熱処理装置は、少なくとも1つの熱風機または少なくとも1つのヒーターのいずれか1つのみを含んでも良い。
【0205】
前記乾燥されたゲルシートを熱処理する段階は、少なくとも1つの熱風機で生成される熱風によって熱処理する第1熱処理段階と、少なくとも1つのヒーターによって熱処理する第2熱処理段階とを含み得る。
【0206】
前記第1熱処理段階を行う区間を第1熱処理区間とし、前記第2熱処理段階を行う区間を第2熱処理区間とする。
【0207】
前記第1熱処理段階および前記第2熱処理段階を順次行い得る。前記第1熱処理段階を行った後で第2熱処理段階を行っても良く、第2熱処理段階を行った後で第1熱処理段階を行っても良いが、これに限定されるものではない。具体的には、第1熱処理段階を行った後で第2熱処理段階を行い得る。
【0208】
前記ゲルシートを熱処理する段階は、熱処理装置内で連続的に移動する支持体により進行され得る。具体的に、前記ゲルシートが支持体上に位置し、前記支持体が進行方向に移動することによって、フィルムも長さ方向に移動しながら進行され得る。
【0209】
前記ゲルシートを熱処理する段階は、ゲルシート(フィルム)の幅方向の両端部を固定部材で固定する段階と、固定部材を用いてゲルシートの幅を変化させる段階とを含む。すなわち、前記ゲルシートを熱処理する段階は、前記ゲルシートの幅方向の両端部を固定部材で固定し、固定させた前記ゲルシートの幅を変化させながら熱処理し得る。例えば、前記熱処理装置内でフィルムの幅方向の両端部をピン(pin)で固定し、フィルムが支持体によって移動する際、ピンの位置を調節することにより、ゲルシートの幅を変化させ得る。
【0210】
前記ゲルシートの幅方向の両端部を固定部材で固定し、固定したゲルシートの幅を変化させながら熱処理する段階は、前記ゲルシートが前記第1熱処理区間および前記第2熱処理区間を通過する間に行われ得る。
【0211】
実現例において、ゲルシートがゲルシートの長さ方向に(進行方向に)第1熱処理区間を通過する間にゲルシートの幅を変化させる段階において、ゲルシートの幅を狭めて行ける。
【0212】
また、ゲルシートがゲルシートの長さ方向に(進行方向に)第2熱処理区間を通過する間にゲルシートの幅を変化させる段階において、ゲルシートの幅を狭めて行ける。または、前記ゲルシートの幅を変化させる段階において、ゲルシートの幅を広くしたり狭めたりすることを繰り返し得る。
【0213】
前記第1熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅が、前記第1熱処理区間の末端部におけるゲルシートの幅より大きくても良く、前記第2熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅が、前記第2熱処理区間の末端部におけるゲルシートの幅より大きくても良い。
【0214】
また、前記第1熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅が、前記第2熱処理区間の末端部おけるゲルシートの幅より大きくても良いが、これに限定されるものではない。
【0215】
前記第1熱処理区間において前記ゲルシートの最大幅をWa、前記第1熱処理区間において前記ゲルシートの最小幅をWb、前記第1熱処理区間および前記第2熱処理区間において前記ゲルシートの最小幅をWcとする。
【0216】
例えば、前記第1熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅が、前記第1熱処理区間におけるゲルシートの最大幅Waであり、前記第1熱処理区間の末端部におけるゲルシートの幅が、前記第1熱処理区間におけるゲルシートの最小幅Wbであり得る。
【0217】
また、前記第1熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅が、前記第1熱処理区間におけるゲルシートの最大幅Waであり、前記第2熱処理区間の末端部におけるゲルシートの幅が、前記第1熱処理区間および前記第2熱処理区間におけるゲルシートの最小幅Wcであり得る。
【0218】
また他の例として、前記WbがWcよりも等しいか大きくあり得、前記WbがWcより等しいか小さくあり得る。具体的に、WbがWcより大きくあり得る。より具体的に、Wa>Wb>Wcであり得るが、これに限定されるものではない。
【0219】
実現例において、Wb/Wa値が0.955~0.990である。例えば、前記Wb/Wa値が、0.955以上、0.960以上、0.965以上、0.968以上、または0.969以上であり、0.990以下、0.985以下、0.980以下、または0.975以下であり得るが、これに限定されるものではない。また他の例として、0.955~0.980であり得る。
【0220】
また、Wc/Wa値が0.950~0.990である。例えば、前記Wc/Wa値が、0.950以上、0.953以上、0.955以上、または0.957以上であり、0.990以下、0.985以下、0.980以下、0.975以下、0.970以下、または0.965以下であり得るが、これに限定されるものではない。また他の例として、0.950~0.970であり得る。
【0221】
前記ゲルシートを熱処理する段階において、Wb/Wa値およびWc/Wa値が前述の範囲を満足することにより、製造されたポリアミド系フィルムのRSRA値を3.4~5.0に制御するのに容易である。
【0222】
一実現例において、前記少なくとも1つの熱風機で生成される熱風によって熱処理する第1熱処理段階を行うと、熱量が均等に付与され得る。もし、熱量が均等に分布されないと、満足のいく表面粗さが実現できないか、または表面品質が不均一となることがあり、表面エネルギーが上昇し過ぎたり、低下し過ぎたりし得る。
【0223】
前記熱風による熱処理は、100℃~250℃の範囲で5分~100分間行われ得る。具体的に、前記熱風によるゲルシートの熱処理は、100℃~250℃の範囲で1.5℃/分~20℃/分の速度で昇温させながら5分~60分間行われ得る。より具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、140℃~250℃の温度範囲で行われ得る。
【0224】
この際、前記熱風による前記ゲルシートの熱処理開始温度は100℃以上であり得る。具体的に、前記熱風による前記ゲルシートの熱処理開始温度は100℃~180℃であり得る。また、前記熱風による熱処理中の最高温度は150℃~250℃であり得る。
【0225】
前記熱風による熱処理に関する温度は、前記ゲルシートが存在する熱処理装置内の温度であって、前記熱処理装置内の第1熱処理区間に設けられた温度感知センサによって測定された温度に該当する。
【0226】
一実現例において、前記ゲルシートを熱処理する段階は、少なくとも1つのヒーターによって熱処理する第2熱処理段階、具体的には複数のヒーターによって熱処理する段階を含み得る。
【0227】
前記複数のヒーターは、ゲルシートの幅方向(TD方向)に離隔された複数のヒーターを含み得る。前記複数のヒーターはヒーター装着部に装着され、前記ヒーター装着部はゲルシートの進行方向(MD方向)に沿って2つ以上配置され得る。
【0228】
前記少なくとも1つのヒーターは、IRヒーターを含み得る。ただし、少なくとも1つのヒーターの種類は、前記の例に限定されず、様々に変更され得る。具体的に、前記複数のヒーターはIRヒーターを含み得る。
【0229】
前記少なくとも1つのヒーターによる熱処理は、250℃以上の温度範囲で行われ得る。具体的に、前記少なくとも1つのヒーターによる熱処理は、250℃~400℃の温度範囲で1分~30分、または1分~20分間行われ得る。
【0230】
前記ヒーターによる熱処理に関する温度は、前記ゲルシートが存在する熱処理装置内の温度であって、前記熱処理装置内の第2熱処理区間に設けられた温度感知センサによって測定された温度に該当する。
【0231】
次いで、前記ゲルシートを熱処理する段階以降、硬化したフィルムを移動させながら冷却する段階を行い得る。
【0232】
前記硬化フィルムを移動させながら冷却する段階は、100℃/分~1000℃/分の速度で減温する第1減温段階と、40℃/分~400℃/分の速度で減温する第2減温段階とを含み得る。
【0233】
この際、具体的に、前記第1減温段階後に前記第2減温段階が行われ、前記第1減温段階の減温速度は、前記第2減温段階の減温速度より速くても良い。
【0234】
例えば、前記第1減温段階中の最大速度が、前記第2減温段階中の最大速度よりも速い。または、前記第1減温段階中の最低速度が、前記第2減温段階中の最低速度よりも速い。
【0235】
前記硬化フィルムの冷却段階が、このように多段階で行われることにより、前記硬化フィルムの物性をより安定化することができ、前記硬化過程で確立したフィルムの光学物性および機械的物性をより安定して長期間維持し得る。
【0236】
また、前記冷却した硬化フィルムを、ワインダー(winder)により巻取る段階を行い得る。
【0237】
この際、前記乾燥時のベルト上においてゲルシートの移動速度:巻取時の硬化フィルムの移動速度の比は1:0.95~1:1.40である。具体的に、前記移動速度の比は、1:0.99~1:1.20、1:0.99~1:1.10、または1:1.01~1:1.10であり得るが、これに限定されるものではない。
【0238】
前記移動速度の比が前記範囲から外れると、前記硬化フィルムの機械的物性が損なわれるおそれがあり、柔軟性および弾性特性が低下するおそれがある。
【0239】
前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、下記一般式1による厚さ偏差(%)は3%~30%であり得る。具体的に、前記厚さ偏差(%)は5%~20%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0240】
[一般式1]
厚さ偏差(%)={(M1-M2)/M1}×100
前記一般式1において、M1は前記ゲルシートの厚さ(μm)であり、M2は巻取時の冷却された硬化フィルムの厚さ(μm)である。
【0241】
前記ポリアミド系フィルムは、前述の製造方法によって製造されることにより、光学的、機械的に優れた物性を示すだけでなく、長時間折曲げの状態が持続した後、折曲げの力を解除したときの復元力も優れており、過酷なフォルディングテスト後にも、シワがほとんど視認されない。さらに、常温においてのみならず、極低温環境においても依然として目的とするレベルのループ剛性を実現したので、柔軟性および機械的耐久性が求められる様々な用途に適用可能であり得る。例えば、前記ポリアミド系フィルムは、ディスプレイ装置だけでなく、太陽電池、半導体素子、センサなどにも適用され得る。
【0242】
前記で述べた製造方法により製造されたポリアミド系フィルムに関する説明は、前述の通りである。
【0243】
(実施例)
前記の内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、実施例の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0244】
(実施例1)
温度調節が可能な反応器に、10℃の窒素雰囲気下で有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)を満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を徐々に投入しながら溶解した。
【0245】
その後、ジカルボニル化合物としてテレフタロイルクロリド(TPC)を投入して1時間撹拌し、イソフタロイルクロリド(IPC)を投入モルに対して94%投入し1時間撹拌して第1重合体ー溶液を調製した。
【0246】
調製された第1重合体溶液の粘度を測定した後、測定された粘度が目標とする粘度に達しなかった場合、25万cpsの粘度になるまで、DMAc有機溶媒に10重量%のIPC溶液を調製して添加した後、30分間撹拌する過程を繰り返して第2重合体溶液を調製した。
【0247】
得られた重合体溶液を支持体上に塗布し、90℃~120℃の温度範囲で約30分間熱風により乾燥してゲルシートを製造した。
【0248】
その後、乾燥したゲルシート熱処理段階として、第1熱処理段階と第2熱処理段階とを熱処理装置において順次行った。具体的に、第1熱処理段階として、前記ゲルシートを140℃~250℃の温度で熱風処理した(第1熱処理空間)。なお、前記第1熱処理空間における温度は、前記ゲルシートが存在する熱処理装置内の温度であって、前記熱処理装置内の第1熱処理区間に設けられた温度感知センサによって測定された温度に該当する。
【0249】
次いで、第2熱処理段階として、複数のIRヒータ(最高温度が1200℃のIRヒータ)を使用して、250℃~400℃の温度でゲルシートを熱処理した(第2熱処理空間)。なお、前記第2熱処理空間における温度は、前記ゲルシートが存在する熱処理装置内の温度であって、前記熱処理装置内の第2熱処理区間に設けられた温度感知センサによって測定された温度に該当する。
【0250】
この際、前記ゲルシートの熱処理段階において、ゲルシートの幅方向の両端部を固定部材で固定し、固定した幅を変化させながら熱処理した。具体的に、前記第1熱処理区間において前記ゲルシートの最大幅をWa、前記第1熱処理区間において前記ゲルシートの最小幅をWb、前記第1熱処理区間および前記第2熱処理区間において前記ゲルシートの最小幅をWcとすると、前記Wa(第1熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅と同一)が1660mmになるようにゲルシートの幅方向の両端部を固定部材で固定しており、前記ゲルシートが長さ方向に移動しながら熱処理される際、Wb/Waが0.969、Wc/Waが0.957となるように、前記ゲルシートの幅を変化させながら熱処理した。
【0251】
その後、約800℃/分の速度で第1段階の減温処理した後、約100℃/分の速度で第2段階の減温処理をして、厚さ50μmのポリアミド系フィルムを得ており、これをワインダーにより巻き取った。この際、乾燥時のベルト上におけるゲルシートの移動速度は1m/sであり、前記乾燥時のベルト上におけるゲルシートの移動速度:巻取時のフィルムの移動速度の比が1:1.01~1:1.10の範囲となるようにワインダーの速度を調節した。
【0252】
ポリアミド系重合体の具体的な組成およびモル比は、下記表1に記載の通りである。
【0253】
(実施例2~5および比較例1および2)
下記表1に記載のように、重合体の組成およびモル比、ゲルシートの熱処理段階においてWb/WaおよびWc/Wa等を異にしたことを除いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを製造した。
【0254】
また、重合体溶液の調製の際にジアンヒドリド化合物を反応させる場合、有機溶媒に芳香族ジアミンを溶解した後、ジカルボニル化合物を投入する前の段階でジアンヒドリド化合物を徐々に投入して撹拌した。
【0255】
(評価例)
前記実施例および比較例において製造されたフィルムについて、下記のように物性を測定および評価し、その結果を下記表1に示した。
【0256】
(評価例1:フィルムの厚さ測定)
日本ミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547-401を用いて、ランダムな位置の5か所の厚さを測定し、平均値をもって厚さを測定した。
【0257】
(評価例2:モジュラス測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に10cm以上、および主収縮方向に10mmでカットし、10cm間隔のクリップに装着した後、常温にて破断が起きるまで12.5mm/分の速度で伸しながら応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)を得た。前記応力-ひずみ曲線において、初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
【0258】
(評価例3:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、JIS K 7136規格に基づいて光透過度およびヘイズを測定した。
【0259】
(評価例4:黄色度測定)
黄色度(Yellow Index、YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりd65、10°の条件で、ASTM-E313規格に基づいて測定した。
【0260】
(評価例5:ループ剛性測定)
ループ剛性テスター(LOOP STIFFNESS TESTER、東洋精機製作所)装置の固定部に幅15mm、長さ120mm、厚さ50μmのポリアミド系フィルムの両端部を固定し、加圧部と固定部との間の最終離隔距離(L)が20mmになるまで加圧部を用いて3.3mm/sの加圧速度でポリアミド系フィルムを加圧した後、センサでポリアミド系フィルムのループ剛性を測定した(
図5参照)。
【0261】
RSRMDは、常温条件でフィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
RSRTDは、常温条件でフィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
RSLMDは、-20℃の低温条件で2時間放置後1分以内に、フィルムのMD方向を長さ方向として測定したループ剛性値であり、
RSLTDは、-20℃の低温条件で2時間放置後1分以内に、フィルムのTD方向を長さ方向として測定したループ剛性値である。
【0262】
(評価例6:変形角測定(静的曲げ試験))
幅20mm、長さ150mmおよび厚さ50μmのフィルムを、曲率半径が2mmとなるようにガラス治具(glass zig)に入れて折り畳んだ状態で25℃にて24時間静置した後、フィルムに加わる力を解放したとき、フィルムの内角(
図6(b)、AG)を測定した(
図6参照)。
【0263】
(評価例7:シワ視認性評価)
厚さ50μmのフィルムを曲率半径が3mmとなるようにフォルディング(曲げて広げることを1回とする)を20万回繰り返した。20万回のフォルディング後、シワがほとんど視認されない場合をO、シワが弱く視認される場合をΔ、シワが強く視認される場合を×と評価した。
【0264】
【0265】
前記表1を参照すると、RSRA値が3.4~5.0に調整された実施例によるフィルムの場合、ループ剛性、モジュラス、透過度、ヘイズ、黄色度など、フィルムの主要物性の面で優れるのみならず、長時間の折曲状態が持続した後に折曲げる力を解除したときの復元性においても優れた結果を示しており、フォルディングを20万回以上繰り返した後もシワがほとんど視認されないことを確認した。
【0266】
具体的に、前記復元性に関しては、実施例1~5によるフィルムの場合、変形角評価試験後の内角が150°以上の値を示したのに対し、比較例1および2はそれぞれ135°、130°の値を示しており、静的曲げ耐性において著しく劣る効果を示した。すなわち、比較例1および2によるフィルムの場合、外部押圧に脆弱であり、特に、長時間の折曲状態が持続したときに、それによる変形が大きく発生して、ディスプレイ装置への適用時に均一な画面状態を示せないか、またはシワが生じて画面が歪む問題が発生し得る。
【0267】
実施例1~5のポリアミド系フィルムの場合、ループ剛性に関して常温だけでなく-20℃という極低温にて2時間放置した後でも、依然として優れたループ剛性を実現しており、静的曲げ耐性およびフォルディング後のシワ視認性評価においても、比較例によるフィルムに比べて改善された結果を示したので、フォルダブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、ローラブルディスプレイ等に適用するのに容易であることを確認した。
【符号の説明】
【0268】
100:ポリアミド系フィルム
101:第1面
102:第2面
200:機能層
300:カバーウィンドウ
400:表示部
500:接着層
10:固定部
20:加圧部
L:ループ剛性測定時の最終離隔距離
AG:変形角評価時のフィルムの内角