(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ヒトにおいて使用するための免疫調節薬の毒性を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
G01N33/68
(21)【出願番号】P 2022182283
(22)【出願日】2022-11-15
(62)【分割の表示】P 2019556188の分割
【原出願日】2018-04-17
【審査請求日】2022-12-14
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398066918
【氏名又は名称】ザ ジャクソン ラボラトリー
【氏名又は名称原語表記】THE JACKSON LABORATORY
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ケック
(72)【発明者】
【氏名】チュンティン イェ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0007357(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0082091(US,A1)
【文献】国際公開第2017/040930(WO,A2)
【文献】S.L. Malcolm,A humanised mouse model of cytokine release: Comparison of CD3-specific antibody fragments,Journal of Immunological Methods,2012年,384,pp.33-42,doi:10.1016/j.jim.2012.07.001
【文献】Sabrina Weimller,TGN1412 Induces Lymphopenia and Human Cytokine Release in a Humanized Mouse Model,PLOS ONE,2016年03月09日,pp.1-19,DOI:10.1371/journal.pone.0149093
【文献】井上 智彰,バイオ医薬品の安全性評価,Drug Delivery System,2011年,26-6,pp.622-627
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫調節薬が、前記免疫調節薬の投与後にヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があるか決定する方法であって、前記方法が、
(a)ヒト化照射免疫不全マウスを用意するステップと、
(b)ヒトから単離された1.5~3.0×10
7個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記マウスに生着させるステップと、
(c)前記PBMCを生着させてから4~7日後に、前記マウスに免疫調節薬を投与するステップと、
(d)前記マウス由来の血液試料における、IFN-γ、IL-10、IL-6、IL-2、IL-4、およびTNFαから選択されるサイトカインの血中濃度を決定するステップと
を含み、
閾値濃度値に等しいまたはそれを上回る前記サイトカインの血中濃度が、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群を示し、かつ前記免疫調節薬が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があることを示す、方法。
【請求項2】
IFN-γ、IL-10、IL-6、IL-2、IL-4、およびTNFαについての前記閾値濃度値が、それぞれ1,800pg/ml、120pg/ml、25pg/ml、80pg/ml、25pg/ml、および20pg/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PBMCが、可能な投与のために前記免疫調節薬が考慮されているヒト患者に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(d)における前記決定が、前記免疫調節薬の投与の2~6時間後である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫調節薬が免疫賦活性薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫調節薬が抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫調節薬が、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロン、イミキモド、サリドマイドおよびその誘導体またはアナログ、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;タリモジーンラハーパレプベック、ダラツムマブ、抗CD38抗体、アダリムマブ、エロツズマブ、エパカドスタット、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)の経口利用できるヒドロキシアミジン阻害剤、カツマキソマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ-I
131、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、デノスマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、およびパニツムマブ、からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫調節薬が、チェックポイント阻害剤から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記チェックポイント阻害剤が、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、およびPD-L1阻害剤から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ヒトへの免疫調節薬の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘導する見込みを決定する方法であって、
(a)ヒト由来の1.5~3.0×10
7個の単離された末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから4~7日後に免疫調節薬を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップであって、前記マウスがNOD scidガンマ遺伝的背景を有する、ステップと、
(b)前記マウスの前記血液試料に存在するIFN-γ、IL-10、IL-6、IL-2、IL-4、およびTNFαから選択されるサイトカインの濃度をin vitroで検出するステップであって、
前記マウス血液試料における閾値濃度値に等しいまたはそれを上回るサイトカインの濃度が、前記ヒトへの前記免疫調節薬の投与が、重度サイトカイン放出症候群を誘導する可能性があることを示す、ステップと
を含む方法。
【請求項12】
IFN-γ、IL-10、IL-6、IL-2、IL-4、およびTNFαについての前記閾値濃度値が、それぞれ1,800pg/ml、120pg/ml、25pg/ml、80pg/ml、25pg/ml、および20pg/mlである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記PBMCが、可能な投与のために前記免疫調節薬が考慮されているヒト患者に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫調節薬が免疫賦活性薬である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫調節薬が抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記免疫調節薬が、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロン、イミキモド、サリドマイドおよびその誘導体またはアナログ、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;タリモジーンラハーパレプベック、ダラツムマブ、抗CD38抗体、アダリムマブ、エロツズマブ、エパカドスタット、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)の経口利用できるヒドロキシアミジン阻害剤、カツマキソマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ-I
131、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、デノスマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、およびパニツムマブからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫調節薬が、チェックポイント阻害剤から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記チェックポイント阻害剤が、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、およびPD-L1阻害剤から選択される、請求項1
7に記載の方法。
【請求項19】
前記チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブから選択される、請求項1
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年4月17日に出願された米国仮出願第62/486,441号および2017年6月19日に出願された米国仮出願第62/521,617号に対する優先権の利益を主張し、その両出願の内容は、その全体が本明細書に参照により援用される。
【0002】
本発明は、概して、免疫調節薬が、免疫調節薬が投与されたヒトにおいてサイトカイン放出症候群応答を誘発するか決定する方法に関する。本発明は、また、薬物候補の医薬品安全性評価における使用のための予測値を有するin vivoマウス方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
モノクローナル抗体(mAb)は、がんおよび自己免疫性疾患の処置において治療法として使用されてきた。このような治療用mAbの多くは、免疫細胞、特に、T細胞およびB細胞の表面におけるタンパク質に対して標的化される。しかし、mAbは、致死的となり得るサイトカイン放出症候群(CRS)または全身性炎症応答症候群(SIRS)等、注入時に種々の有害効果を有し得る。多数のリンパ球(B細胞、T細胞および/またはナチュラルキラー(NK)細胞)および/または骨髄系細胞(マクロファージ、樹状細胞および単球)が、投与されたmAbによって活性化され、炎症性サイトカインを放出するようになると、CRSは、臨床的に顕在化する。症状発病のタイミングおよびCRS重症度は、mAbの種類および免疫細胞活性化の振幅に依存する。
【0004】
一般に、薬物の臨床治験に先立ち毒性を試験するために、2種の現存している方法、動物モデルにおけるin vivo試験、およびin vitro全血または末梢血単核細胞(PBMC)アッセイが存在する。残念ながら、これら2種の方法は、ヒトにおける毒性、特に、免疫的毒性を適切に予測することも決定することもできない。in vitro試験は、ヒト患者の身体を模倣することができない;潜在的薬物毒性に対する全身性応答は、in vivo以外のいかなるモデルにおいてもモデル化することができない。齧歯類や非ヒト霊長類のモデルにおけるゲノム応答は、ヒトの応答を模倣することができない。毒性の観点から、前臨床試験および臨床治験の間には相当なギャップがある。
【0005】
試験のために非ヒト哺乳動物にヒト幹細胞を移植するための方法が試みられた。しかし、かかる方法は、患者から非胚性幹細胞を得ること(例えば、患者から骨髄を得ること)に関する大きな課題に悩まされ、また、幹細胞が成長し、様々な細胞へと分化するのを待つのに長過ぎる時間を要するという点が不利である。よって、かかる方法は、侵襲的であり(可能であれば)、煩雑で、かつ非実用的である。
【0006】
今はなきTeGenero AG、Wurzburgによって開発されたTGN1412は、ヒトT細胞によって発現される共刺激分子CD28に特異的なIgG4サブクラスのヒト化モノクローナル抗体(mAb)である。これは、古典的なCD28特異的mAbとは異なり、T細胞抗原受容体(TCR)の同時係合なしでTリンパ球を活性化することができるため、「CD28スーパーアゴニスト」(CD28SA)と呼ばれる(Hunig、2007年、Adv Immunol、95巻:111~148頁)。
【0007】
2006年3月13日にNorthwick Park Hospital、Londonにおける独立したParexel Clinical Trial Unitによって行われたヒト初回投与(first-in-man)治験において、健康なヒトボランティアへの100μg/kg体重のTGN1412の静脈内適用は、生命にかかわるサイトカイン放出症候群をもたらし、これは、ボランティアを病院の集中治療病棟に移動した後にようやく制御された(Suntharalingamら、2006年、Engl J Med、355巻:1018~1028頁)。よって、抗CD28免疫調節薬TGN1412は、試験下の対象において発生するサイトカインストームのため、その第I相治験においてひどく失敗し、これにより、参加した6名の健康なボランティアの生命が著しく脅かされ、全6名が多臓器不全を患った。
【0008】
しかし、当該試験における前臨床研究は、ラットCD28特異的スーパーアゴニストを使用した類似のラットモデル、およびヒトボランティアよりも最大50倍高い用量でTGN1412それ自体を受けたカニクイザル(Macaca fascicularis)において、かかる「サイトカインストーム」の証拠を示さなかった(Duff、2006年、Expert Scientific Group on Phase One Clinical Trials Final Report.、Norwich, UK:Stationary Office)。さらに、ヒトPBMCの培養物へのTGN1412
の添加は、サイトカイン放出をもたらさなかった。肝要なサルおよびPBMC培養実験は全て、政府のExpert Scientific Group on Phase One Clinical Trialsの代理をするBritish National Institute for Biological Standards and Control(NIBSC)によって反復され、これらの系におけるTGN1412の無害な挙動を確認した(Duff、2006年)。よって、これらのラット、カニクイザルおよび培養ヒトPBMCアッセイは、ヒトボランティアによって経験されたサイトカインストームに対する警告に適切ではなかった。齧歯類およびカニクイザルが、CD28SAの注射後に毒性全身性サイトカインを放出することができないのは、かかる薬剤に対するインタクトな免疫系の反応性の種間差が原因である可能性があり、かかる差に関する具体的な提案が為された(Gogishviliら、2009年、PLoS ONE、4巻(2号):e4643頁、https://doi.org/10.1371/journal.pone.0004643;Nguyenら、2006年、Proc Natl Acad Sci U S A.、103巻:7765~7770頁;SchravenおよびKalinke、2008年、Immunity、28巻:591~595頁)。
【0009】
ヒトは、およそ1×1012個のTリンパ球を有し、このような細胞のうち1パーセント未満が、いかなる瞬間でも血液中を循環している。培養PBMCが、TGN1412に応答することができない原因が、リンパ系組織に存する細胞(これは、ボランティアにおけるサイトカイン放出により明らかに応答した)と比較して、このような細胞における機能欠損によるものか、またはリンパ系臓器に存在するが血液には存在しない細胞型の、Tリンパ球のTGN1412媒介性活性化に対する要求によるものであるかは、現在不明である。
公知ヒトPBMC培養物が、サイトカイン放出により可溶性TGN1412に応答できないことは、この系が、身体の内側のインタクトなヒト免疫系と同じ様式で、全てのリンパ球活性化剤に応答するとは限らないことを示す。この欠損の補正は、TGN1412等、ヒトCD28スーパーアゴニスト(SA)の効果の詳細な解析を可能にし得るのみならず、前臨床開発において他の一見したところ無害な薬物の反応性を明らかにすることもできる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Hunig、2007年、Adv Immunol、95巻:111~148頁
【文献】Suntharalingamら、2006年、Engl J Med、355巻:1018~1028頁
【文献】Duff、2006年、Expert Scientific Group on Phase One Clinical Trials Final Report.、Norwich, UK:Stationary Office
【文献】Gogishviliら、2009年、PLoS ONE、4巻(2号):e4643頁、https://doi.org/10.1371/journal.pone.0004643
【文献】Nguyenら、2006年、Proc Natl Acad Sci U S A.、103巻:7765~7770頁
【文献】SchravenおよびKalinke、2008年、Immunity、28巻:591~595頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
よって、患者処置および臨床治験に先立つ、免疫調節薬の毒性試験および個体におけるサイトカイン放出症候群等の毒性の決定に有効な、新たなin vivoヒト化動物モデルの継続した必要がある。
【0012】
非限定例の実施形態において、本発明は、免疫調節薬が、免疫調節薬の投与後にヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があるか決定する方法を提供する。例の実施形態において、本方法は、
(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、
(b)ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記マウスに生着させるステップと、
(c)PBMCを生着させてから5~7日後に、前記マウスに免疫調節薬を投与するステップと、
(d)前記マウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップであって、
IFN-γ≧1,800pg/mlおよびIL-10≧120pg/mlの血中濃度が、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群を示す、ステップと、
(e)前記免疫調節薬が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があると決定するステップであって、
前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群の存在が、前記免疫調節薬の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があることを示す、ステップと
を含む。
【0013】
別の例の実施形態において、第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物が、免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与後にヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があるか決定する方法が提供される。本方法は、
(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、
(b)ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記マウスに生着させるステップと、
(c)PBMCを生着させてから5~7日後に、前記マウスに第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬を投与するステップと、
(d)前記マウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップであって、
IFN-γ≧1,800pg/mlおよびIL-10≧120pg/mlの血中濃度が、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群を示す、ステップと、
(e)免疫調節薬の前記組み合わせ物が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があると決定するステップであって、
前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群の存在が、免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があること
を示す、ステップと
を含む。
【0014】
他の例の実施形態において、本発明は、免疫調節薬の投与後にヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘発しない免疫調節薬の安全な投薬量を決定する方法を提供する。ある実施形態では、本方法は、
(a)第1の投薬量を有する免疫調節薬を用意するステップであって、免疫調節薬の前記第1の投薬量が、その投与後に第1のヒト化照射免疫不全マウスにおいて軽度または重度サイトカイン放出症候群を誘発すると決定される、ステップと、
(b)第2の免疫不全マウスを用意するステップであって、前記第2のマウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、
(c)ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記第2のマウスに生着させるステップと、
(d)PBMCを生着させてから5~7日後に、前記第2のマウスに免疫調節薬を投与するステップであって、前記免疫調節薬が、前記第1の投薬量よりも少ない第2の投薬量で投与される、ステップと、
(e)前記第2のマウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップと、
(f)前記ヒトにおける投与のための前記免疫調節薬の安全な投薬量を決定するステップであって、前記安全な投薬量が、前記第2のマウスへの前記免疫調節薬の投与後に、IFN-γが<300pg/mlであり、IL-10が<25pg/mlである血中濃度を生じる投薬量であり、
前記第2のマウスにおけるIFN-γ<300pg/mlおよびIL-10<25pg/mlの血中濃度が、前記免疫調節薬の前記安全な投薬量の投与が、前記ヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘発しない可能性があることを示す、ステップと
を含む。
【0015】
他の例の実施形態において、本発明は、ヒトにおける使用のための薬物候補の免疫毒性を決定する方法を提供する。ある実施形態では、本方法は、
(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、
(b)4.5~5.5×107個のヒトPBMCを前記マウスに生着させるステップと、(b)生着させてから4~7日後に、薬物候補を前記マウスに投与するステップと、
(c)前記マウスの血液におけるサイトカイン濃度を決定するステップであって、前記サイトカインが、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNFからなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインである、ステップと、
(d)前記薬物候補の免疫毒性を決定するステップであって、
IFN-γ≧300pg/ml、
IL-2≧15pg/ml、
IL-4≧10pg/ml、
IL-6≧10pg/ml、
IL-10≧25pg/ml、および
TNF≧5pg/ml
からなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインの前記マウスにおける血中濃度が、ヒトにおける前記薬物候補の免疫毒性を示す、ステップと
を含む。
【0016】
別の実施形態では、ヒトへの免疫調節薬の投与が、ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘導する見込みを決定する方法が提供される。本方法は、
(a)ヒト由来の1.5~3.0×107個の単離された末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから5~7日後に免疫調節薬を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、
(b)マウスの血液試料に存在するIFN-γおよび/またはIL-10を含む複数のサイトカインの濃度をin vitroで検出するステップであって、IFN-γ≧1,800pg/mlまたはIL-10≧120pg/mlの濃度が、ヒトへの免疫調節薬の投与が、重度サイトカイン放出症候群を誘導する可能性があることを示す、ステップと
を含む。
【0017】
別の実施形態では、ヒトへの第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物の投与が、ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘導する見込みを決定する方法が提供される。本方法は、
(a)ヒト由来の1.5~3.0×107個の単離された末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから5~7日後に第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、
(b)マウスの血液試料に存在するIFN-γおよび/またはIL-10の濃度をin vitroで検出するステップであって、IFN-γ≧1,800pg/mlまたはIL-10≧120pg/mlの濃度が、ヒトへの第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物の投与が、重度サイトカイン放出症候群を誘導する可能性があることを示す、ステップと
を含む。
【0018】
別の実施形態では、ヒトにおける薬物候補の免疫毒性を決定する方法が提供される。本方法は、
(a)4.5~5.5×107個の単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから4~7日後に薬物候補を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、
(b)マウス血液試料に存在する少なくとも1種のヒトサイトカインの濃度をin vitroで検出して、薬物候補のヒト免疫毒性を決定するステップであって、少なくとも1種のヒトサイトカインが、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNFからなる群から選択され、マウス血液試料において低いヒトサイトカイン濃度が検出される場合、薬物候補が、低いヒト免疫毒性を有する、ステップと
を含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
免疫調節薬が、前記免疫調節薬の投与後にヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があるか決定する方法であって、
(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、
(b)ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記マウスに生着させるステップと、
(c)前記PBMCを生着させてから5~7日後に、前記マウスに免疫調節薬を投与するステップと、
(d)前記マウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップであって、
IFN-γ≧1,800pg/mlおよびIL-10≧120pg/mlの血中濃度が、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群を示す、ステップと、
(e)前記免疫調節薬が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があると決定するステップであって、
前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群の存在が、前記免疫調節薬の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があることを示す、ステップと
を含む方法。
(項目2)
前記マウスが、NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1マウスである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記マウスが、NSGマウスである、項目1に記載の方法。
(項目4)
ステップ(a)における前記マウスが、100cGyのX線を照射される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記生着ステップ(b)が、2×107個のPBMCで行われる、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記投与ステップ(c)が、生着させてから6日後に行われる、項目1に記載の方法。(項目7)
ステップ(d)における前記複数のサイトカインが、IL-2、IL-4、IL-6およびTNFをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記複数のサイトカインの血中濃度が、前記免疫調節薬の投与の2~6時間後に決定される、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記複数のサイトカインの血中濃度が、前記免疫調節薬の投与の6時間後に決定される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記免疫調節薬が、抗CD28モノクローナル抗体(mAb)、抗CD3 mAb、抗CD20 mAb、抗CD52 mAb;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);インターフェロン;イミキモド;サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;タリモジーンラハーパレプベック;アダリムマブ、カツマキソマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ-I131、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、デノスマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ダラツムマブ、セリチニブ、エロツズマブおよび抗胸腺細胞グロブリンからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記抗CD28 mAbが、TGN1412である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記抗CD3 mAbが、OKT3である、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記抗C20 mAbが、リツキシマブである、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記抗CD52 mAbが、アレムツズマブである、項目10に記載の方法。
(項目15)
第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物が、免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与後にヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があるか決定する方法であって、
(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、
(b)ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記マウスに生着させるステップと、
(c)前記PBMCを生着させてから5~7日後に、前記マウスに第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬を投与するステップと、
(d)前記マウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップであって、
IFN-γ≧1,800pg/mlおよびIL-10≧120pg/mlの血中濃度が、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群を示す、ステップと、
(e)免疫調節薬の前記組み合わせ物が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があると決定するステップであって、
前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群の存在が、免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があることを示す、ステップと
を含む方法。
(項目16)
前記マウスが、NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1マウスである、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記マウスが、NSGマウスである、項目15に記載の方法。
(項目18)
ステップ(a)における前記マウスが、100cGyのX線を照射される、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記生着ステップ(b)が、2×107個のPBMCで行われる、項目15に記載の方法。
(項目20)
前記投与ステップ(c)が、生着させてから6日後に行われる、項目15に記載の方法。
(項目21)
ステップ(d)における前記複数のサイトカインが、IL-2、IL-4、IL-6およびTNFをさらに含む、項目15に記載の方法。
(項目22)
前記複数のサイトカインの血中濃度が、免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与の2~6時間後に決定される、項目15に記載の方法。
(項目23)
前記複数のサイトカインの血中濃度が、免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与の6時間後に決定される、項目15に記載の方法。
(項目24)
前記第1の免疫調節薬および前記第2の免疫調節薬が、抗CD28モノクローナル抗体(mAb)、抗CD3 mAb、抗CD20 mAb、抗CD52 mAb;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);インターフェロン;イミキモド;サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;タリモジーンラハーパレプベック;アダリムマブ、カツマキソマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ-I131、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、デノスマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ダラツムマブ、セリチニブ、エロツズマブおよび抗胸腺細胞グロブリンからなる群から独立して選択される、項目15に記載の方法。
(項目25)
前記第1の免疫調節薬が、ペムブロリズマブまたはニボルマブであり、前記第2の免疫調節薬が、レナリドミド、ポマリドミド、エパカドスタット、タリモジーンラハーパレプベック、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、セリチニブ、ダラツムマブまたはデュルバルマブである、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記第1の免疫調節薬が、イピリムマブであり、前記第2の免疫調節薬が、レナリドミド、ポマリドミド、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、セリチニブ、ダラツムマブまたはデュルバルマブである、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記第1の免疫調節薬が、アテゾリズマブ、アベルマブまたはデュルバルマブであり、前記第2の免疫調節薬が、レナリドミド、ポマリドミド、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、リツキシマブ、セリチニブ、ダラツムマブまたはアレムツズマブである、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記抗CD52 mAbが、アレムツズマブであり、前記抗C20 mAbが、リツキシマブであり、前記抗CD3 mAbが、OKT3であり、または前記抗CD28 mAbが、TGN1412である、項目24に記載の方法。
(項目29)
免疫調節薬の投与後にヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘発しない前記免疫調節薬の安全な投薬量を決定する方法であって、
(a)第1の投薬量を有する免疫調節薬を用意するステップであって、前記免疫調節薬の前記第1の投薬量が、その投与後に第1のヒト化照射免疫不全マウスにおいて軽度または重度サイトカイン放出症候群を誘発すると決定される、ステップと、
(b)第2の免疫不全マウスを用意するステップであって、前記第2のマウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、
(c)ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記第2のマウスに生着させるステップと、
(d)前記PBMCを生着させてから5~7日後に、前記第2のマウスに免疫調節薬を投与するステップであって、前記免疫調節薬が、前記第1の投薬量よりも少ない第2の投薬量で投与される、ステップと、
(e)前記第2のマウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップと、
(f)前記ヒトにおける投与のための前記免疫調節薬の安全な投薬量を決定するステップであって、前記安全な投薬量が、前記第2のマウスへの前記免疫調節薬の投与後に、IFN-γが<300pg/mlであり、IL-10が<25pg/mlである血中濃度を生じる投薬量であり、
前記第2のマウスにおけるIFN-γ<300pg/mlおよびIL-10<25pg/mlの血中濃度が、前記免疫調節薬の前記安全な投薬量の投与が、前記ヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘発しない可能性があることを示す、ステップと
を含む方法。
(項目30)
前記第2のマウスが、NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1マウスである、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記第2のマウスが、NSGマウスである、項目29に記載の方法。
(項目32)
ステップ(b)における前記第2のマウスが、100cGyのX線を照射される、項目29に記載の方法。
(項目33)
前記生着ステップ(c)が、2×107個のPBMCで行われる、項目29に記載の方法。
(項目34)
前記投与ステップ(d)が、生着させてから6日後に行われる、項目29に記載の方法。
(項目35)
ステップ(d)における前記複数のサイトカインが、IL-2、IL-4、IL-6およびTNFをさらに含む、項目29に記載の方法。
(項目36)
前記複数のサイトカインの血中濃度が、前記免疫調節薬の投与の2~6時間後に決定される、項目29に記載の方法。
(項目37)
前記複数のサイトカインの血中濃度が、前記免疫調節薬の投与の6時間後に決定される、項目29に記載の方法。
(項目38)
前記免疫調節薬が、抗CD28モノクローナル抗体(mAb)、抗CD3 mAb、抗CD20 mAb、抗CD52 mAb;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);インターフェロン;イミキモド;サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;タリモジーンラハーパレプベック;アダリムマブ、カツマキソマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ-I131、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、デノスマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ダラツムマブ、セリチニブ、エロツズマブおよび抗胸腺細胞グロブリンからなる群から選択される、項目29に記載の方法。
(項目39)
前記抗CD28 mAbが、TGN1412である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記抗CD3 mAbが、OKT3である、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記抗C20 mAbが、リツキシマブである、項目38に記載の方法。
(項目42)
前記抗CD52 mAbが、アレムツズマブである、項目38に記載の方法。
(項目43)
ヒトにおける使用のための薬物候補の免疫毒性を決定する方法であって、
(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、
(b)4.5~5.5×107個のヒトPBMCを前記マウスに生着させるステップと、(c)生着させてから4~7日後に、薬物候補を前記マウスに投与するステップと、
(d)前記マウスの血液におけるサイトカイン濃度を決定するステップであって、前記サイトカインが、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNFからなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインである、ステップと、
(e)前記薬物候補の免疫毒性を決定するステップであって、
IFN-γ≧300pg/ml、
IL-2≧15pg/ml、
IL-4≧10pg/ml、
IL-6≧10pg/ml、
IL-10≧25pg/ml、および
TNF≧5pg/ml
からなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインの前記マウスにおける血中濃度が、ヒトにおける前記薬物候補の免疫毒性を示す、ステップと
を含む方法。
(項目44)
前記マウスが、NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1マウスである、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記マウスが、NSGマウスである、項目42に記載の方法。
(項目46)
ステップ(a)における前記マウスが、100cGyのX線を照射される、項目42に記載の方法。
(項目47)
前記生着ステップ(b)が、5×107個のPBMCで行われる、項目42に記載の方法。
(項目48)
前記投与ステップ(c)が、生着させてから6日後に行われる、項目42に記載の方法。
(項目49)
サイトカインの血中濃度が、前記薬物候補の投与の2~6時間後に決定される、項目42に記載の方法。
(項目50)
サイトカインの血中濃度が、前記薬物候補の投与の6時間後に決定される、項目42に記載の方法。
(項目51)
ヒトへの免疫調節薬の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘導する見込みを決定する方法であって、
(a)ヒト由来の1.5~3.0×107個の単離された末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから5~7日後に免疫調節薬を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、
(b)前記マウスの前記血液試料に存在するIFN-γおよび/またはIL-10を含む複数のサイトカインの濃度をin vitroで検出するステップであって、
前記マウス血液試料におけるIFN-γ≧1,800pg/mlまたはIL-10≧120pg/mlの濃度が、前記ヒトへの前記免疫調節薬の投与が、重度サイトカイン放出症候群を誘導する可能性があることを示す、ステップと
を含む方法。
(項目52)
ヒトへの第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘導する見込みを決定する方法であって、
(a)ヒト由来の1.5~3.0×107個の単離された末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから5~7日後に第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、
(b)前記マウスの前記血液試料に存在するIFN-γおよび/またはIL-10を含む複数のサイトカインの濃度をin vitroで検出するステップであって、IFN-γ≧1,800pg/mlまたはIL-10≧120pg/mlの濃度が、前記ヒトへの前記第1の免疫調節薬および前記第2の免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与が、重度サイトカイン放出症候群を誘導する可能性があることを示す、ステップと
を含む方法。
(項目53)
ヒトにおける薬物候補の免疫毒性を決定する方法であって、
(a)4.5~5.5×107個の単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから4~7日後に薬物候補を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、
(b)前記マウス血液試料に存在する少なくとも1種のヒトサイトカインの濃度をin vitroで検出して、前記薬物候補のヒト免疫毒性を決定するステップであって、前記少なくとも1種のヒトサイトカインが、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNFからなる群から選択され、前記マウス血液試料において低いヒトサイトカイン濃度が検出される場合、前記薬物候補が、低いヒト免疫毒性を有する、ステップと
を含む方法。
【0019】
非限定例の実施形態が、次の添付図を参照しつつ、本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1Aは、ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)、2×10
7個のhPBMC/マウスの生着後の、NSGおよびNSG-CSF-1マウス体重測定値を描写する。1群あたり10匹のマウスが存在し、データは平均±SEMとして提示する。
【0021】
図1Bは、2×10
7個のhPBMC/マウス生着後のNSGマウス体重測定値を描写する。各線は、1匹のマウスを表す。
【0022】
【
図2】
図2Aは、ドナー331由来の2×10
7個のhPBMC/マウスの生着後5日目における、ヒトPBMCのNSG、NSG-IL-6およびNSG-CSF-1マウス再構成を描写する。1群あたり5匹のマウスであり、データは平均±SEMとして提示する。
【0023】
図2Bは、NSGマウスにおける、4名の異なるドナー、362、213、309および364由来の2×10
7個のhPBMC/マウスの生着後5日目または10日目における異なる細胞集団を描写する。各時点につき1群あたり2~5匹のマウスであり、データは平均±SEMとして提示する。
【0024】
図2Cは、NSGマウスにおける、ドナー358由来の3×10
7個のhPBMC/マウスの生着後5日目または10日目における異なる細胞集団を描写する。各時点につき1群あたり4匹のマウスであり、データは平均±SEMとして提示する。
【0025】
【
図3-1】
図3Aは、ドナー4692、5×10
7個のhPBMC/マウスを生着させた5匹のNSGマウスの体重測定値を描写する。データは平均±SEMである。
【0026】
図3Bは、ドナー362、5×10
7個のhPBMC/マウスを生着させた5匹のNSGマウスの体重測定値を描写する。データは平均±SEMである。
【0027】
【
図3-2】
図3Cは、ドナー309、2×10
7個のhPBMC/マウスを生着させた5匹のNSGマウスの体重測定値を描写する。データは平均±SEMである。
【0028】
図3Dは、ドナー358、3×10
7個のhPBMC/マウスを生着させた4匹のNSGマウスの体重測定値を描写する。データは平均±SEMである。
【0029】
【
図4-1】
図4Aは、5日目(2×10
7個のhPBMC/マウス生着)のヒト化マウスにおける10名のドナーのPBMC再構成の間の比較を描写する。フローサイトメトリーにより、示されている免疫細胞サブセット再構成に関してヒト化NSGマウスを試験した。総細胞のパーセンテージとしてのヒトCD45+細胞、ならびにCD45+細胞のパーセンテージとしてのCD3、CD19、CD14およびCD56(CD45+細胞においてゲーティング)を示す(ドナーA4692、A4625およびA4668のみが、CD45、CD3、CD19およびCD14を示したが、CD56を示さなかった)。
【0030】
【
図4-2】
図4Bは、生着前の匿名化された患者ドナーの情報を描写する(ドナーA4625およびA4668を除く)。
【0031】
【
図5-1】
図5A~
図5Fは、10名の異なるドナーのhPBMC(2×10
7個のPBMC/マウス)ヒト化NSGマウスへのmAbの注射後のサイトカインの誘導を描写する。マウスに、0.5mg/kg OKT3または1mg/kg抗CD28(ANC28.1/5D10 mAb)またはPBS(対照)をi.v.注射した。マウスを2および6時間目に出血させ、循環サイトカイン濃度をBD CBA Th1/Th2 IIキットによって測定した。サイトカイン濃度を
図5A~
図5Fに示す。群毎のマウスの数は2~5匹であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0032】
図5Aは、mAb負荷に続く誘導後のIFN-γレベルを描写する:重度/高度応答:≧1,800pg/ml;中程度/軽度応答:300pg/ml≦IFN-γ<1,800pg/ml;および低/無応答:<300pg/ml。
【0033】
図5Bは、IL-10レベルを描写する:重度/高度応答:≧120pg/ml;中程度/軽度応答:25pg/ml≦IL-10<120pg/ml;および低/無応答:<25pg/ml。
【0034】
【
図5-2】
図5Cは、mAb負荷に続くサイトカイン誘導後の、ヒト化マウスのIL-6レベルを描写する。
【0035】
図5Dは、mAb負荷に続くサイトカイン誘導後の、ヒト化マウスのIL-2レベルを描写する。
【0036】
【
図5-3】
図5Eは、mAb負荷に続くサイトカイン誘導後の、ヒト化マウスのIL-4レベルを描写する。
【0037】
図5Fは、mAb負荷に続くサイトカイン誘導後の、ヒト化マウスのTNFレベルを描写する。
【0038】
【
図6】
図6は、OKT3または抗CD28 mAbの投与を受けている10名のドナーの間の異なる応答を描写する。抗CD28 mAb投与後に、ドナーA4692、A4668および362は、重度/高度レベルのIFN-γおよびIL-10により応答し;ドナーA4625、266、345、309および213は、中程度/軽度レベルのIFN-γおよびIL-10により応答し;ドナー364および353は、低/無レベルのIFN-γおよびIL-10により応答した。
【0039】
【
図7】
図7は、10名のドナーのhPMBCを生着させ、続いて対照PBS、OKT3または抗CD28 mAbを注射した、ヒト化NSGマウスにおける直腸温の変化を描写する。群毎のマウスの数は2~5匹であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0040】
【
図8】
図8は、免疫調節薬の注射後の10名のドナーのヒト化マウスの臨床スコアを描写する。PBS、OKT3または抗CD28 mAb注射後2および6時間目に、各マウスの臨床スコアを次の判断基準により評価した:スコア:0=正常な活動性;1=正常な活動性、立毛、つま先歩行;2=背中を丸め、活動性が低下しているが、依然として移動可能;3=運動性低下だが、促されると移動可能;4=瀕死(触れても応答しない)。群毎のマウスの数は2~5匹であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0041】
【
図9-1】
図9A~
図9Fは、2×10
7個のPBMC/マウスまたは5×10
7個のPBMC/マウスによるドナー213ヒト化マウスにおけるサイトカイン応答の比較を描写する。
【0042】
図9Aは、5×10
7個のPBMC/マウスにおいて1,800pg/mlよりも上がるが、2×10
7個のPBMC/マウスにおいては上がらない、IFN-γレベルを描写する。
【0043】
図9Bは、5×10
7個のPBMC/マウスにおいて120pg/mlよりも上がるが、2×10
7個のPBMC/マウスにおいては上がらない、IL-10レベルを描写する。
【0044】
【
図9-2】
図9Cは、2×10
7個のPBMC/マウスおよび5×10
7個のPBMC/マウスによるIL-6レベルを描写する。
【0045】
図9Dは、2×10
7個のPBMC/マウスおよび5×10
7個のPBMC/マウスによるIL-2レベルを描写する。
【0046】
【
図9-3】
図9Eは、2×10
7個のPBMC/マウスおよび5×10
7個のPBMC/マウスによるIL-4レベルを描写する。
【0047】
図9Fは、2×10
7個のPBMC/マウスおよび5×10
7個のPBMC/マウスによるTNFレベルを描写する。
【0048】
【
図10-1】
図10A~
図10Fは、異なるヒトPBMC濃度(ドナー309由来の、マウス1匹あたり2×10
7、3×10
7および4×10
7個)ヒト化NSGマウスにおける抗体の注射後のサイトカインの誘導を描写する。マウスに、0.5mg/kg OKT3、1mg/kg抗CD28、10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)または対照としてのPBSをiv注射した。マウスを2および6時間目に出血させ、循環サイトカイン濃度をBD CBA Th1/Th2 IIキットによって測定した。群毎のマウスの数は3~5匹であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0049】
図10Aは、2×10
7個のPBMC/マウス、3×10
7個のPBMC/マウスおよび4×10
7個のPBMC/マウスによるINFγレベルを描写する。
【0050】
図10Bは、2×10
7個のPBMC/マウス、3×10
7個のPBMC/マウスおよび4×10
7個のPBMC/マウスによるIL-10レベルを描写する。
【0051】
【
図10-2】
図10Cは、2×10
7個のPBMC/マウス、3×10
7個のPBMC/マウスおよび4×10
7個のPBMC/マウスによるIL-6レベルを描写する。
【0052】
図10Dは、2×10
7個のPBMC/マウス、3×10
7個のPBMC/マウスおよび4×10
7個のPBMC/マウスによるIL-2レベルを描写する。
【0053】
【
図10-3】
図10Eは、2×10
7個のPBMC/マウス、3×10
7個のPBMC/マウスおよび4×10
7個のPBMC/マウスによるIL-4レベルを描写する。
【0054】
図10Fは、2×10
7個のPBMC/マウス、3×10
7個のPBMC/マウスおよび4×10
7個のPBMC/マウスによるTNFレベルを描写する。
【0055】
【
図11】
図11A~
図11Dは、ドナー309 PBMCヒト化マウスにおける、OKT3、抗CD28およびKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)に応答した体温および臨床スコア変化を描写する。
【0056】
図11Aは、5日目におけるドナー309マウス細胞集団を描写する。5匹のNSGマウスに、2×10
7個のhPBMC/マウスを生着させ;5匹のNSGマウスに、3×10
7個のhPBMC/マウスを生着させ、5匹のNSGマウスに、4×10
7個のhPBMC/マウスを生着させた。全マウスは、100cGyのX線照射の4時間後に生着させた。フローサイトメトリーによるCD45、CD3、CD19、CD14およびCD56細胞集団試験のため、5日目にマウスを出血させた。
【0057】
図11Bは、薬物:対照PBS、0.5mg/kg OKT3、1mg/kg抗CD28または10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)の注射後2および6時間目の、ヒト化マウスの臨床スコアを描写する。次の判断基準により臨床スコアを評価した:スコア:0=正常な活動性;1=正常な活動性、立毛、つま先歩行;2=背中を丸め、活動性が低下しているが、依然として移動可能;3=運動性低下だが、促されると移動可能;4=瀕死。5匹のマウス/群であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0058】
図11Cは、ドナー309による2×10
7個のhPMBC/マウスを使用した、測定された直腸温を示す。マウスに、対照PBS、0.5mg/kg OKT3、1mg/kg抗CD28または10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)を注射した。薬物注射後2および6時間目に直腸温を測定した。3~5匹のマウス/群であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0059】
図11Dは、ドナー309による3×10
7個のhPMBC/マウスを使用した、測定された直腸温を示す。マウスに、対照PBS、0.5mg/kg OKT3、1mg/kg抗CD28または10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)を注射した。薬物注射後2および6時間目に直腸温を測定した。3~5匹のマウス/群であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0060】
図11Eは、ドナー309による4×10
7個のhPMBC/マウスを使用した、測定された直腸温を示す。マウスに、対照PBS、0.5mg/kg OKT3、1mg/kg抗CD28または10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)を注射した。薬物注射後2および6時間目に直腸温を測定した。3~5匹のマウス/群であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0061】
【
図12-1】
図12A~
図12Fは、異なる用量のKEYTRUDA(登録商標)による異なるサイトカインレベルの誘導におけるKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)の用量効果を描写する。NSGマウスに、KEYTRUDA(登録商標)投薬6日前に、ドナー358の3×10
7個のhPBMC/マウスを生着させた。投薬日に、マウスに、PBS、0.5mg/kg OKT3、2.5mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)をiv注射した。マウスを2および6時間目に出血させ、循環サイトカイン濃度をBD CBA Th1/Th2 IIキットによって測定した。5匹のマウス/群であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0062】
図12Aは、3×10
7個のPBMC/マウスによるINFγレベルを描写する。
【0063】
図12Bは、3×10
7個のPBMC/マウスによるIL-10レベルを描写する。
【0064】
【
図12-2】
図12Cは、3×10
7個のPBMC/マウスによるIL-6レベルを描写する。
【0065】
図12Dは、3×10
7個のPBMC/マウスによるIL-2レベルを描写する。
【0066】
【
図12-3】
図12Eは、3×10
7個のPBMC/マウスによるIL-4レベルを描写する。
【0067】
図12Fは、3×10
7個のPBMC/マウスによるTNFレベルを描写する。
【0068】
【
図13】
図13A~
図13Cは、ドナー358 PBMCヒト化マウスにおける、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)に応答した体温および臨床スコア変化を描写する。
【0069】
図13Aは、5日目におけるドナー358マウス細胞集団を描写する。100cGyのX線照射の4時間後に、四(4)匹のNSGマウスに、3×10
7個のhPBMCを生着させた。フローサイトメトリーによるCD45、CD3、CD19、CD14およびCD56細胞集団試験のため、5日目にマウスを出血させた。
【0070】
図13Bは、薬物注射後のヒト化マウス臨床スコアを描写する。PBS、0.5mg/kg OKT3、2.5mg/kg、5mg/kgおよび10kg/mgKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)の2および6時間後に、次の判断基準により臨床スコアを評価した:スコア:0=正常な活動性;1=正常な活動性、立毛、つま先歩行;2=背中を丸め、活動性が低下しているが、依然として移動可能;3=運動性低下だが、促されると移動可能;4=瀕死。5匹のマウス/群であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0071】
図13Cは、異なる時点でヒト化マウスにおいて測定された直腸温を描写する。マウスに、対照PBS、0.5mg/kg OKT3、2.5mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)を注射し、薬物注射後2および6時間目に直腸温を測定した。5匹のマウス/群であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0072】
【
図14-1】
図14A~
図14Bは、薬物曝露後のサイトカイン放出のin vitroおよびin vivo測定の異なる結果を描写する。
【0073】
図14Aは、IFN-γ(パネルaおよびb)またはIL-10(パネルcおよびd)に関する4名の異なるPBMCドナーによるin vitro(パネルaおよびc)またはin vivo(パネルbおよびd)実験によって得られた、抗CD28処置に応答したサイトカイン放出レベルを比較するヒストグラムを提示する。データは平均±SEMとして提示する。
【0074】
【
図14-2】
図14Bは、IL6(パネルeおよびf)またはIL-4(パネルgおよびh)に関する4名の異なるPBMCドナーによるin vitro(パネルeおよびg)またはin vivo(パネルfおよびh)実験によって得られた、抗CD28処置に応答したサイトカイン放出レベルを比較するヒストグラムを提示する。データは平均±SEMとして提示する。
【0075】
【
図15】
図15は、a)IFN-γ;b)IL-10;c)IL-6;およびd);IL-4に関するPBMCドナー213によるin vitroまたはin vivo実験によって得られた、抗CD28処置に応答したサイトカイン放出レベルのヒストグラムを提示する。データは平均±SEMとして提示する。各グラフにおける点線は、抗CD28実験の対照レベルである。
【0076】
【
図16】
図16は、a)IFN-γ;b)IL-6;c)IL-4 d)IL-10;e)IL-2;およびf)TNFに関する、PBMCドナー213またはドナー364に関する、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)、REVLIMID(登録商標)(レナリドミド)または両方の薬物による処置に応答したサイトカイン放出レベルのヒストグラムを提示する。PBSによる処置は対照であった。データは平均±SEMとして提示する。
【0077】
【
図17】
図17は、a)IFN-γ;b)IL-10;c)IL-6 d)IL-2;e)IL-4;およびf)TNFに関する、PBMCドナー213またはドナー364に関するKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)、ATGまたは両方の薬物による処置に応答したサイトカイン放出レベルのヒストグラムを提示する。PBSによる処置は対照であった。データは平均±SEMとして提示する。
【0078】
【
図18】
図18は、a)IFN-γ;b)IL-6;c)IL-4 d)IL-2;e)IL-4;およびf)TNFに関する、PBMCドナー213またはドナー364に関する抗CD-28、ATGまたは両方の薬物による処置に応答したサイトカイン放出レベルのヒストグラムを提示する。PBSによる処置は対照であった。データは平均±SEMとして提示する。
【0079】
【
図19】
図19は、ヒトPBMCの生着に先立つ照射ありまたはなしのヒト化マウスの全血における5日目および10日目細胞集団を説明する;マウスは、6名の異なるドナー:362、345および2785(上のグラフ)ならびに213、364および3251(下のグラフ)のうち1名由来のPBMCによりヒト化された。
【0080】
【
図20】
図20は、照射後の(IR)および照射なしの(非IR)、6名の異なるドナー:362、345および2785(パネルa)ならびに213、364および3251(パネルb)のうち1名由来のPBMCによりヒト化されたマウスに関する、PBMC生着後日数の関数としての体重減を示す。
【0081】
【
図21】
図21は、PBMC生着後10日目における、いかなる薬物処置もないPBMCヒト化マウスにおけるサイトカインレベルを示す。
【0082】
【
図22-1】
図22A~
図22Bは、薬物処置後に放出されたサイトカインのレベルのグラフを提示する(ドナー362または213のいずれかのPBMCによりヒト化された照射または非照射マウスによる)。薬物(OKT3、KEYTRUDAまたはATG)または陰性対照(PBS)は、PBMC生着後6日目に投与した。
【0083】
図22Aは、IFN-γ(パネルa)、IL-10(パネルb)およびIL-6(パネルc)のレベルのグラフを提示する。
【0084】
【
図22-2】
図22Bは、IL-2(パネルd)、IL-4(パネルe)およびTNF(パネルf)のレベルのグラフを提示する。
【発明を実施するための形態】
【0085】
定義:
例の実施形態を記載する際に、分かり易くするために具体的な用語法が用いられる。しかし、実施形態は、この具体的な用語法に限定されることを意図されない。他の記述がなければ、技術用語は、従来の使用法に従って使用される。
【0086】
本明細書において、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは複数を意味することができる。本明細書において、「別の(another)」は、少なくとも第2またはそれよりも多くを意味することができる。さらに、文脈によってそれ以外が要求されない限り、単数形の用語は、複数を含み、複数形の用語は、単数形を含む。
【0087】
用語「NSG」は、NOD scidガンマの免疫不全マウスモデル(すなわち、NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJマウス;Jackson laboratory系統番号:005557)を指す。このマウスは、NOD/ShiLtJ遺伝的背景に2個の突然変異を保有する;重症複合型免疫不全(scid)およびインターロイキン-2(IL2)受容体共通ガンマ鎖の完全ヌル型アレル(IL2rgヌル)。このようなマウスは、極めて免疫不全である。
【0088】
用語「NSG-CSF-1」は、そのゲノムがヒトCSF-1(マクロファージコロニー刺激因子-1)遺伝子を含有する、NSGマウスモデルを指し、トランスジェニックNSG-CSF-1マウスは、ヒトCSF-1サイトカインを発現する(Jackson Laboratory系統番号:028654)。
【0089】
用語「NSG-IL-6」は、そのゲノムがヒトインターロイキン-6(IL-6)遺伝子を含有し、ヒトIL-6サイトカインを発現する、NSGマウスモデルを指す(Jackson Laboratory系統番号:028655)。
【0090】
用語「CD」は、表面抗原分類を指す。
【0091】
用語「CD3」は、表面抗原分類3を指し、成熟Tリンパ球におけるT細胞受容体(TCR)複合体の部分である抗原を表す。
【0092】
用語「CD4」は、表面抗原分類4を指し、この抗原は、ヘルパーT細胞、単球、マクロファージおよび樹状細胞等、免疫細胞の表面に見出される糖タンパク質である。
【0093】
用語「CD8」は、表面抗原分類8を指し、細胞傷害性T細胞の表面に主に発現される共受容体であるが、ナチュラルキラー細胞、皮質胸腺細胞および樹状細胞に見出すこともできる。
【0094】
用語「CD14」は、表面抗原分類14を指し、主としてマクロファージおよび樹状細胞によって発現される抗原である。
【0095】
用語「CD19」は、表面抗原分類19を指し、この抗原は、B細胞に見出される。
【0096】
用語「CD28」は、表面抗原分類28を指し、T細胞活性化および生存に要求される共刺激シグナルをもたらすT細胞において発現されるタンパク質の1種である。T細胞受容体(TCR)に加えてCD28を介したT細胞刺激は、様々なインターロイキン(例えば、IL-6)の産生のための強力なシグナルをもたらすことができる。
【0097】
用語「CD45細胞」は、表面抗原分類45を指し、この抗原は、ヒトリンパ球、単球および他の骨髄系細胞において存在する。
【0098】
用語「CD56」は、表面抗原分類56を指し、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の表面に発現される同種親和性結合糖タンパク質である。
【0099】
用語「末梢血単核細胞(PBMC)」は、丸い核を有する末梢血細胞を指す。このような単核血液細胞は、組織および血液の間で再循環し、感染と戦い、侵入者に適応するための免疫系における重大な構成成分である。2種の主要な型の単核細胞である、リンパ球および単球が存在する。PBMCのリンパ球集団は典型的に、T細胞、B細胞およびNK細胞からなる。PBMCは、本技術分野で周知の方法(例えば、フィコール勾配)によって全血試料から単離することができる。
【0100】
用語「サイトカイン」は、細胞シグナル伝達において重要な、小型のタンパク質(ほぼ5~20kDa)の一クラスのメンバーを指す。サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカインおよび腫瘍壊死因子を含む。サイトカインの例として、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNFαが挙げられる。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球およびマスト細胞等の免疫細胞を含む広い範囲の細胞によって産生される;所与のサイトカインは、2種類以上の細胞によって産生され得る。その放出は、その周囲にある細胞の挙動に効果を有する。サイトカインは、免疫調節剤として自己分泌シグナル伝達、傍分泌シグナル伝達および内分泌シグナル伝達に関与すると同定された。
【0101】
用語「サイトカイン放出症候群」(「CRS」)は、「全身性炎症応答症候群」(「SIRS」)、「サイトカインカスケード」、「高サイトカイン血症」および「サイトカインストーム」と互換的に本明細書で使用されている。本技術分野で「高サイトカイン血症」としても公知の「サイトカインストーム」は、低血圧、発熱および/または悪寒によってとりわけ特徴付けされ、潜在的に死亡をもたらす、患者における全身性炎症応答を定義する。サイトカインストームはおそらく、高度に上昇されたレベルの様々なサイトカインをもたらす、サイトカインおよび免疫細胞の間の制御されない正のフィードパックループに起因する。これらの用語は程度が幾分異なる場合があるが、その全てが、対象へのある特定の抗体の投与の結果としての、対象によるサイトカインの許容し難く高い放出の結果である。対象は、許容し難く高いレベルのサイトカインを放出することによって処置に反応する。本明細書でこれらの用語のうち1種を参照することは、全ての用語を包含することが意図される。
【0102】
用語「サイトカイン放出症候群(CRS)のグレード付け」は、Daniel W. Leeら、「Current Concepts in the Diagnosis and Management of Cytokine Release Syndrome」、Blood.、2014年7月10日;124巻(2号):188~195頁によって定義されるものに基づく:グレード1:症状は、生命にかかわるものではなく、対症処置のみを要求する(例えば、発熱、悪心、疲労、頭痛、筋痛、倦怠感);グレード2:症状は、中等度介入を要求し、これに応答する、酸素要求<40%、または流体もしくは低用量の1種の昇圧剤に応答性の低血圧、またはグレード2臓器毒性;グレード3:症状は、積極的な介入を要求し、これに応答する、酸素要求≧40%、または高用量もしくは複数の昇圧剤を要求する低血圧、またはグレード3臓器毒性もしくはグレード4高トランスアミナーゼ血症;グレード4:生命にかかわる症状、人工呼吸器支持を要求、またはグレード4臓器毒性(高トランスアミナーゼ血症を除外);グレード5:死亡。本願の目的のため、重度CRSは、グレード4~5を指し、軽度CRSは、グレード1~3を包含する。
【0103】
本発明者らは、投与された薬物または薬物候補に応答してヒト化マウスモデルにおいて放出されたある特定のサイトカインの濃度を使用して、投与された薬物または薬物候補に応答してヒトにおいて予想されるサイトカイン放出症候群の相対的重症度を予測することができることを決定した。本発明者らは、ヒト由来の1.5~3.0×10
7個のPBMCを生着させた免疫不全マウスに関して、ある特定のサイトカインのマウス血中濃度の閾値を決定して、生着から5~7日後にマウスに投与された薬物によってマウスにおいて誘導されるサイトカイン放出の重症度を決定した。次表に閾値を要約する。
【表1】
【0104】
表1のマウスサイトカイン閾値濃度値は、利用できる文献報告と併せた実験データから決定されており、±10%の可変性を有する。
【0105】
重度/高度応答のマウスサイトカイン閾値濃度値は、ヒトCRSグレード4~5に対応し;中程度/軽度応答のマウスサイトカイン閾値濃度値は、ヒトCRSグレード1~3に対応し;中程度/軽度応答のマウスサイトカイン閾値濃度値は、ヒトCRSグレード<1に対応する。
【0106】
マウスにおけるPBMCの1.5~3.0×107個の生着による開示されている方法において、本発明者らは、マウスにおいて重度/高度応答が観察される場合、例えば、IFN-γ≧1,800pg/mlまたはIL-10≧120pg/mlである場合、ヒトが、薬物または薬物候補の投与後に重度サイトカイン放出症候群を有し得るという可能性があることを決定した。同様に、マウスにおけるPBMCの1.5~3.0×107個の生着による開示されている方法において、本発明者らは、マウスにおいて低/無応答が観察される場合、例えば、IFN-γ<300pg/mlまたはIL-10<25pg/mlである場合、ヒトが、薬物または薬物候補の投与後に重度サイトカイン放出症候群にならないが、その代わりに、多くても低レベルのサイトカイン放出を有する可能性があるという可能性があることを決定した。これらの閾値の間の、1.5~3.0×107個のPBMCを生着させたマウスにおけるIFN-γまたはIL-10の濃度は、中程度/軽度応答と命名され、ヒトが、薬物または薬物候補の投与後に中程度/軽度サイトカイン放出症候群を経験する可能性があることを示す。誘導されたIL-6、IL-4、IL-2またはTNFαのマウスにおける閾値を同様に使用して、薬物または薬物候補に対するサイトカイン応答の重症度を評価することができる。誘導されたIFN-γ、IL-10、IL-6、IL-4、IL-2およびTNFαのマウスにおける閾値を単独でまたはいずれかの組合せで使用して、ヒトにおける薬物または薬物候補に対するサイトカイン応答の重症度を評価することができる。
【0107】
用語「ドナー(複数)」、「個体(複数)」、「ヒト(複数)」、「対象(複数)」および「患者(複数)」(およびこれらの用語の単数形)は、本明細書で若干互換的に使用されている。本発明者らによって行われる試験において、「ドナー」PBMCが使用された。本方法において、「ドナー」よりも寧ろ、可能な投与のために免疫調節薬が考慮されている特定のヒト、個体、対象または患者由来のPBMCが使用されるであろう。本明細書におけるこれらの用語のうち1種の使用は、これらの用語のそれぞれを包含することが意図される。本方法において、個体、対象および患者は、ヒトである。しかし、おそらく、当業者によって決定され得る何らかの修正を本方法に加えて、本明細書に記載されている方法および技法を使用して、本方法が他の哺乳動物に適用され得ることが企図される。
【0108】
用語「免疫調節薬」は、例えば、T細胞阻害または活性化等、リンパ球機能、例えば、T細胞機能を活性化または阻害することにより、免疫系を活性化または抑制することができるいずれかの治療剤(例えば、mAb)を意味する。免疫調節薬もしくは剤、または免疫調節物質、または免疫療法薬は、例えば、インターロイキン、サイトカイン、ケモカイン、免疫調節性イミド薬物、または免疫療法において使用され得る他の薬剤を含むことができる。非限定例として、がん免疫療法は、腫瘍を破壊するように免疫系を刺激することを試みる。よって、免疫調節薬または剤を使用して、患者におけるがんの処置を試みることができるが、免疫調節薬の使用は、がんの処置に限定されない。免疫療法は、単品で、または他の処置方法と組み合わせて使用することができる。免疫調節薬の例の実施形態は、抗体、好ましくは、モノクローナル抗体(mAb)等の免疫賦活性薬である。例えば、モノクローナル抗体は、ヒトCD28特異的スーパーアゴニストモノクローナル抗体であり得る。
【0109】
免疫調節薬の例として、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);インターフェロン;イミキモド;サリドマイドおよびその誘導体またはアナログ、レナリドミド(REVLIMID(登録商標))、ポマリドミド(IMNOVID)(登録商標)、ならびにアプレミラスト;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;IMLYGIC(商標)(タリモジーンラハーパレプベック)、遺伝子改変された腫瘍溶解性ウイルス療法;ダラツムマブ(DARZALEX(登録商標))、抗CD38抗体;アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、EMPLICITI(商標)(エロツズマブ)、エパカドスタット、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)の経口利用できるヒドロキシアミジン阻害剤、カツマキソマブ(REMOVAB(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN(登録商標))、トシツモマブ-I131(BEXXAR(登録商標))、ブレンツキシマブベドチン(ADCETRIS(登録商標))、セツキシマブ(betuximab)(ERBITUX(登録商標))、リツキシマブ(MABTHERA(登録商標)またはRITUXAN(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH-1H(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ペルツズマブ(PERJETA(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、トラスツズマブエムタンシン(emtansinen)(KADCYLA(商標))、デノスマブ(PROLIA(登録商標)またはXGEVA(登録商標))、イピリムマブ(YERVOY(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、ならびにパニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))が挙げられる。
【0110】
チェックポイント阻害剤は、T細胞等の一部の種類の免疫系細胞、および一部のがん細胞によって作製されたある特定のタンパク質を遮断する薬物である。そのようなタンパク質は、免疫応答の抑止を助け、T細胞が、がん細胞を死滅させることを防止することができる。チェックポイント阻害剤によってそのようなタンパク質が遮断されると、免疫系における「ブレーキ」が放出される。免疫「ブレーキ」のこのような放出は、T細胞が、がん細胞をより十分に死滅させることを可能にし得るが、有害効果としてCRSをもたらすこともできる。
【0111】
免疫調節薬の例示的なクラスは、FDA承認がん薬物、イピリムマブ(YERVOY(登録商標))、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))およびニボルマブ(OPDIVO(登録商標))等のモノクローナル抗体であることが多い、チェックポイント阻害剤である。免疫系の重要な側面は、身体における正常細胞と、免疫系が「異物」と考慮する細胞の間を区別するその能力である。これにより、免疫系は、正常細胞に手出しすることなく、異物細胞を攻撃する。これを為すために、免疫系は、免疫応答を開始するために活性化(または不活性化)される必要がある、ある特定の免疫細胞における分子である「チェックポイント」を使用する。例示的なFDA承認チェックポイント阻害剤は、CTLA-4阻害剤イピリムマブ(YERVOY(登録商標))、PD-1阻害剤ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))およびニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、ならびにPD-L1阻害剤アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))、アベルマブ(BAVENCIO(登録商標))およびデュルバルマブ(IMFINZI(登録商標))を含む。
【0112】
用語「T細胞活性化」は、好ましくは、異なる種類のT細胞の間で僅かに変動し得る、T細胞の活性化機構を指定する。しかし、CD4+T細胞における「2シグナルモデル」は、大部分の種類のT細胞に適用可能である。より詳細には、CD4+T細胞の活性化は典型的に、主要組織適合性コード抗原提示分子による、T細胞表面におけるT細胞受容体およびCD28の両方と、抗原提示細胞(APC)の表面におけるその結合された抗原性ペプチドならびにB7ファミリーメンバーそれぞれとの係合を介して発生する。両方の細胞-細胞接触は一般に、有効な免疫応答の産生に要求される。例えば、CD28共刺激の非存在下では、T細胞受容体シグナル伝達単独は、T細胞アネルギーをもたらし得る。CD28およびT細胞受容体の両方から下流のさらなるシグナル伝達経路は、当業者にとって公知の多くのさらに別のタンパク質が関与する。T細胞の活性化は、本明細書で後述される通り、サイトカイン放出および/または細胞増殖、特に、T細胞の増殖によって決定することができる。
【0113】
用語「臨床スコア」は、Jamie L Bradyら「Preclinical Screening for Acute Toxicity of Therapeutic Monoclonal Antibodies in a hu-SCID Model」、Clinical & Translational Immunology(2014年)3巻、e29頁;doi:10.1038/cti.2014.28;2014年12月19日にオンラインで発表によって定義されるものとして採用される:0=正常な活動性;1=正常な活動性、立毛、つま先歩行;2=背中を丸め、活動性が低下しているが、依然として移動可能;3=運動性低下だが、促されると移動可能;4=瀕死(触れても応答しない)。
【0114】
用語「用量」または「投薬量」は、患者によって一度に服用されるべき薬物の量を意味する。
【0115】
ヒトにとっての免疫調節薬の「安全な投薬量」は、本明細書において、本明細書で開示されている方法によって決定される通り、ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を生着させた照射免疫不全マウスへの免疫調節薬の投与後に、低/無応答に対応するマウスにおけるサイトカイン血中濃度、例えば、IFN-γが<300pg/mlであり、IL-10が<25pg/mlである濃度を生じる投薬量を指す。免疫学的に安全な投薬量は、治療有効性を有する投薬量に対応しても対応しなくてもよい。
【0116】
「有効性」は、患者において治療効果をもたらす、患者に投与された薬物または活性薬剤の能力を意味する。
【0117】
「治療有効量」または「有効量」は、薬理学的効果を達成するための医薬剤の量である。用語「治療有効量」は、例えば、予防有効量を含む。薬物の「有効量」は、過度の有害副作用を伴わない、所望の薬理学効果または治療改善の達成に必要とされる量である。薬物の有効量は、特定の患者および疾患に応じて、当業者によって選択されるであろう。「有効量」または「治療有効量」が、薬物代謝、対象の年齢、体重、全身状態、処置されている状態、処置されている状態の重症度、および処方医師の判断における多様性により、対象間で変動し得ることが理解される。
【0118】
本明細書における用語「免疫毒性」は、サイトカイン放出症候群等、有害な免疫賦活を生成する薬物または薬物候補の性向を指す。
【0119】
用語「薬物候補」は、疾患、疾病、傷害、病気または状態の軽減、処置および/または治癒の治療効果を潜在的に有することが創薬スクリーニングによって同定された、抗体、小分子および/または他の化合物等、1種または複数の活性薬剤を含む、いずれかの潜在的な薬物または組成物を意味する。
【0120】
一態様では、本発明者らは、前臨床試験、臨床治験および/または薬物による個体の個々の処置のために、個体における薬物免疫的毒性、特に、サイトカイン放出症候群(CRS)をスクリーニングおよび決定するための、ヒト化マウスモデルを考案した。本発明は、免疫調節薬に対する個体の反応性の決定に、および個体への免疫調節薬の投与の安全な投薬量の決定に有用である。
【0121】
別の態様では、本ヒト化マウス方法は、薬物候補の医薬品安全性評価においても有用である。特に、開示されている方法は、ヒトにおける薬物候補の免疫毒性の改善された前臨床動物試験を提供する。
【0122】
本明細書で開示されている薬物免疫毒性を決定するための方法は、所与の免疫調節薬または免疫調節薬の組合せに応答した個々の多様性を検出する能力、in vitro PBMC細胞培養方法等の先行技術方法よりも優れた応答予測精度、試験のために個体からほんの中等度の量(100mlまたはそれに満たない)の採血を要求すること、適した免疫不全マウスを商業的に入手できること、および2週間未満のターンオーバー時間の利点を有する。
【0123】
薬物候補の前臨床免疫毒性試験に関して、本方法は、上述の利点の全てを有し、許容し難く高いレベルの免疫賦活(例えば、ヒトにおける当該薬物候補の投与によって誘導されるサイトカイン放出)を誘導する薬物候補の初期排除を可能にすることにより、薬物開発における時間および費用の節約を可能にする、投与後に薬物候補が誘導するであろう免疫賦活のレベルを評価するための高感度方法をさらに提供する。
【0124】
有利には、本明細書でさらに記述されている通り、本発明者らは、このアッセイ系が、in vivo応答を予測し、研究および医薬品安全性評価における強力なツールを表すことを見出した。ボランティアヒト対象における新たな薬物候補の現在の臨床試験は、薬物不合格の結果となることが多い。この失敗の原因は、大部分は、現存しているin vivo動物モデルの不適切さのために、前臨床試験において毒性が曝露されなかったことにある。潜在的な薬物候補の有害効果を正確に予測することができるin vivo動物モデルに対する、長年にわたり満たされていない必要がある。本ヒト化マウスモデルは、多数の臨床的に関連する薬物候補から、サイトカイン放出を誘発する潜在的な薬物候補を同定するための高い程度の精度を有する薬物スクリーニングプラットフォームとして有用である。よって、本方法は、前臨床および臨床試験の間に必要なリンクを提供する、薬物免疫毒性試験のための頑強な予測アッセイを表す。薬物開発プログラムへの本アッセイの統合は、治療薬開発のためのFDA前等の薬物承認プロセスを加速する筈である。
【0125】
一態様では、本発明は、免疫調節薬が、ヒトにおいて免疫的毒性を引き起こすか決定する方法を対象にする。換言すると、本方法は、患者が免疫調節薬を受けるのに安全である場合、免疫調節薬を受ける個々の患者のためのスクリーニングアッセイとして機能することができる。本方法は、ヒト対象から末梢血単核細胞(PBMC)を収集するステップと、照射され、該個体由来の収集されたPBMCを生着させた免疫不全非ヒト哺乳動物(例えば、ヒト化免疫不全マウス)に免疫調節薬(例えば、mAb)を投与するステップと、放出された1種または複数のサイトカイン(IFN-γおよび/またはIL-10により例証)を検出するステップと、これにより、免疫調節薬が免疫的毒性を引き起こすか決定するステップとを含むことができ、免疫調節薬が、非ヒト哺乳動物において重度サイトカインストームを誘発する場合、免疫調節薬は、該個体において免疫的毒性を引き起こす。
【0126】
医師が、免疫調節薬の投与に先立ちヒト対象における潜在的なCRSを決定するのに有用な、信頼できるin vivoマウス方法に対する、長年にわたり満たされていない必要がある。理想的には、本方法は、免疫調節薬を受けているヒト対象のいずれが、重度CRS有害事象を患うことになるかを正確に決定するべきである。上に記述されている2006年3月に報告されている通り、mAb TGN1412が関与するNorthwick Park Hospitalでのヒト治験において、治験下の6名のボランティアが有害事象のために入院した。患者の多くが、血管浮腫、皮膚および粘膜の腫脹と、それに続く多臓器機能障害を患ったが、この治験の前臨床研究は、ラットモデルであれカニクイザル(Macaca fascicularis)であれin vivoヒトPBMC細胞培養アッセイであれ、CRS示唆を示さなかった。しかし、本発明者らによって、ある特定の患者が、所与の免疫調節薬に対して重度CRS有害事象を有する場合とそうでない場合があることが発見され、特定の患者が、特定の薬物を投与された場合にCRSを患う可能性があるか予め決定するための方法が考案された。
【0127】
サイトカイン放出症候群は、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞ならびに他の免疫細胞集団(例えば、マクロファージ等)の活性化により発生する。免疫調節物質の添加により、T細胞およびナチュラルキラー細胞の活性化は、高レベルのサイトカインの放出ならびに下流の傷害および死亡可能性をもたらし得る。T細胞活性化の役割は、TGN1412臨床治験により多くの注目を集めたが、NK細胞活性化も、ある特定の免疫調節物質に応答したサイトカイン放出症候群の供給源であることが示された。例えば、抗CD52抗体であるCAMPATH1-Hによる処置は、NK細胞が関与することが示され、in vivoでの高レベルのTNF、IFN-γおよびIL-6の放出(Wing M.G.ら(1995年)Ther. Immunol.、2巻:183~190頁)ならびにIL-2およびIL12の組合せによる処置に起因する毒性は、B細胞でもT細胞でもなく、ナチュラルキラー細胞の活性化の結果であることが示された(Carson W.E.、(1999年)J Immunol、162巻;4943~4951頁)。異なる免疫調節物質および様々な免疫細胞集団の活性化により、サイトカイン放出症候群は、様々な活性化免疫細胞集団に伴い変動し得る高レベルのサイトカイン放出により顕在化し得る。
【0128】
本発明者らは、マウスモデルが、薬物誘導性CRSの正確な予測を提供できるようになる前に、この複雑な生命システムにおいて、多くの変数を慎重に選択し、最適化する必要があることを了解した。残念ながら、現時点では、本技術分野において、いずれの変数を選択するべきかまたはこれをどのように最適化するべきかに関するガイダンスは殆どない。この系の高度に入り組んだ複雑な性質を考慮すると、マウスモデルが薬物誘導性CRSの有用かつ正確な予測を提供するためには、これらの変数の間の微妙なバランスが要求される。
【0129】
本発明者らは、ヒト細胞数(すなわち、マウスに投与されたPBMCの数)およびマウスに存在するヒト細胞型の分布(これは、生着後の時間と共に変化する)が、この系において重大な変数であることを発見した。ヒトPBMCがマウスに注射されると、ヒトT細胞のみが増えることができ;他のヒト細胞型、例えば、NK細胞およびB細胞は、死に絶え始めるであろうことが発見された。ヒトT細胞計数が、マウスにおいて多くなり過ぎると、体重減少、背中を丸めた姿勢、脱毛、運動性低下、頻呼吸および最終的に死亡によって顕在化されるGVHDを引き起こすであろうことがさらに発見された。マウスが、重度GVHDを示す場合、試験結果の精度が著しく損なわれる。
【0130】
理論に制約されないが、PBMCにおける成人ヒトT細胞が、異物としてマウスを認識し、マウスに攻撃を開始し、マウスに対して健康問題およびおそらく死亡を引き起こし、付随するサイトカイン放出を伴うことが予想外に発見された。これが起こる場合、マウスは、有意な体重減少を患い始め、CRS決定においてマウスモデルを不正確なものにする病的症状を示す。
【0131】
理論に制約されないが、多過ぎるPBMCの生着は、方法が不正確な予測を提供する(すなわち、偽陽性を提供する傾向がある)ように、マウスにおけるサイトカイン放出プロファイルを増加させると考えられる。生着させたPBMCの数が、5×107個のPBMC/マウスを超える場合、一部のマウスが、生着後非常に急速に、おそらくGVHD(移植片対宿主病)により有意な体重減少を患うことが観察される。マウスがGVHDを有する場合、免疫調節薬によって誘導されたそのようなマウスにおけるサイトカイン放出応答は、免疫調節薬に対するヒト対象の応答を正確に決定することができない。あるいは、生着させたPBMCの数が、ある特定の閾値(例えば、<1×107個/マウス)を下回る場合、方法は、また、最適感度で免疫調節薬に対するヒト対象の応答を決定することができず、偽陰性を提供するであろう。さらに、本出願人らは、X線でマウスを照射して、生着に先立ちマウス免疫系を破壊して、拒絶を最小化し、注射されたヒトPBMCの生存を最大化する。
【0132】
よって、本発明者らは、生着させたPBMCの数および免疫調節薬投与に先立つPBMC生着時間が、マウスにおけるGVHD発病に対して適切な集団の存在およびマウスにおけるヒト免疫細胞の分布のバランスを取ることにより、アッセイの最適精度に重大であることを決定した。
【0133】
PBMCヒト化マウスモデルは、初期のBLT(骨髄/肝臓/胸腺)または幹細胞ヒト化マウスモデルとは異なり、ヒトPBMCがマウス身体に注射されると、時間と共に他のヒト細胞型は死に絶えるが、T細胞集団のみが増えることができるため、本技術分野において、T細胞のみのモデルであると考慮されてきた。本技術分野において、PBMCヒト化マウスは、通常、マウス1匹あたり通常百万~1千万個の細胞のPBMC生着数による10日間のPBMC生着後に使用されており、これは、研究に、T細胞集団が実験を行うのに十分な多さの数まで増えるのを待つことを要求する。マウス細胞集団に存在する通常10%ヒトCD45またはヒトCD3 T細胞が、ヒト細胞の最小数の標準として使用されてきた。しかし、本発明者らは、PBMCヒト化マウスモデルが、最適な薬物毒性試験を提供するためには、T細胞のみならず、他の細胞型、特に、NK細胞および単球も、マウスにおいて必要とされることを決定した。
【0134】
したがって、本明細書におけるある特定の実施形態では、本発明は、長年にわたり満たされていない必要を満たし、免疫調節薬が、ヒト等の個体においてサイトカインストーム応答(すなわち、重度サイトカイン放出症候群)を誘発するか決定するin vivo方法であって、(a)免疫調節薬を受けることが考慮されている個々のヒトからPBMCを収集または単離するステップと、(b)照射を受けた(例えば、生着させたPBMCを攻撃するためのマウス免疫細胞を機能的に抑制するために)免疫不全マウス(NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1)に1.5×107~3.0×107個の収集/単離されたPBMCを生着させるステップと、(c)生着後5~7日目、好ましくは、6日目に、生着させたた免疫不全マウスに、免疫調節薬を投与するステップと、(d)投与後に放出された1種または複数のサイトカインの存在を検出するステップと、(e)対照薬剤(例えば、対照mAb)と比較して、免疫調節薬に対するサイトカイン応答を評価して、マウスにおけるIFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度の決定によるマウスにおけるサイトカイン放出が、重度サイトカイン放出症候群を示すレベルのものであるか決定するステップとを含む方法を対象にする。
【0135】
一実施形態では、本方法は、ヒトから単離された1.5×107~3.0×107個のPBMCを、照射された免疫不全マウス(例えば、NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1)に生着させるステップと、生着させてから5~7日後、好ましくは、6日後に、生着させた免疫不全マウスに免疫調節薬を投与するステップと、投与後に放出された1種または複数のサイトカインの量を検出するステップと、免疫調節薬がヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があると決定するステップであって、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群の存在は、前記免疫調節薬の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があることを示す、ステップとを含む。本方法は、照射された免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射されるステップ、またはヒトからPBMCを単離するステップ、または薬物投与後に放出されたサイトカイン量を、陰性対照薬剤の投与後に放出された量と比較するステップをさらに含むことができる。適した陰性対照薬剤の例として、バッファーまたはアイソタイプ対照mAbが挙げられる。検出されるサイトカインは、IFN-γ、IL-10、IL-6、IL-2、IL-4、TNFまたは前述の組合せであり得、好ましくは、サイトカインは、IFN-γまたはIL-10である。本アッセイは、医師に、いずれのヒト患者(複数可)が、重度CRSを患わないであろう他の患者と比較して、重度CRSを患う可能性があるか区別(または同定)させることが可能である。
【0136】
好まれる例の実施形態において、生着に先立ち、免疫欠損マウスは、75~125cGyのX線または100cGyのX線を照射される。さらなる例の実施形態において、照射は、生着の少なくとも4時間前に行われる。
【0137】
本発明者らは、PBMCを個体(免疫調節薬を受けるものと思われる)から収集することができ、免疫不全マウス(例えば、NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1)における生着に使用して、ヒト化マウスを得て、本明細書で開示されているアッセイを使用して1種または複数の薬物によって誘導された免疫的毒性(すなわち、サイトカイン放出)を試験することができることを確立した。有利には、本発明者は、驚いたことに、このアッセイ系が、免疫調節薬の投与を受けるであろうヒト患者におけるin vivo応答を予測することを見出した。
【0138】
本発明の方法において使用することができる、種々のヒトサイトカインが存在する。IFN-γ、IL-Ιβ、TNF、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10およびIL-12を含む、多くの炎症性サイトカインが、サイトカイン放出症候群において放出されることが公知である。一部のサイトカインは、サイトカイン放出症候群の決定において、他のサイトカインよりも有意な重要性を有すると考えられる。本発明において、CRS応答を決定するための予測的サイトカインとしてIFN-γおよび/またはIL-10を含むことが特に適切となり得る(Teachey DTら、Cancer Discov.、2016年6月;6巻(6号):664~79頁.doi: 10.1158/2159-8290.CD-16-0040. Epub、2016年4月13日)。
【0139】
本発明者らは、ヒト化マウス血液におけるIFN-γおよび/またはIL-10を使用して、対象において予想され得るCRSの重症度を確実に予測することができることを発見した。PBMCヒト化マウスにおけるIFN-γレベルおよびIL-10レベルは、免疫調節薬による誘導後の他のサイトカインレベルと比較して、また、ヒトと比較して高い。他の抗体を使用して、潜在的応答の重症度の決定を助けることができることが企図される。
【0140】
本発明者らは、マウスへの抗CD28(ANC28.1/5D10)等の免疫調節薬の投与6時間後に、ヒト化マウスの血液におけるそのIFN-γレベルが1,800pg/mlであったもしくはこれを上回った、および/またはIL-10レベルが120pg/mlであったもしくはこれを上回ったドナーが、この薬物がこのヒト対象に投与されたとしたら、重度CRS(例えば、グレード4~5)を発症する可能性があったことを発見した。ヒト化マウスの血液において、そのIFN-γレベルが300pg/ml~1,800pg/mlの間であった、および/またはそのIL-10レベルが25pg/ml~120pg/mlの間であったドナーは、免疫調節薬を受けた後に、中程度CRS(グレード1~3 CRSを発症)を発症する可能性があった(ただし、重度CRSは発症しない)。ヒト化マウスの血液において、そのIFN-γレベルが300pg/mlを下回った、および/またはIL-10レベルが25pg/mlを下回ったドナーは、免疫調節薬を受けた後に、CRSを発症しない可能性があった(Teachey DTら、2016年;Weissmullerら、PloS One、DOI:10.1371/journal.pone.0149093、2016年3月)。
【0141】
ある特定の実施形態では、本発明は、後述する通り、ドナー/対象に由来する、マウス1匹あたり1千5百万~3千万個の収集/単離されたヒトPBMCの使用、およびヒト化免疫不全マウスを得るための免疫欠損マウスにおけるPBMCの生着を対象にする。ある特定の好まれる実施形態では、マウス1匹あたり1千5百万~2千5百万個の収集/単離されたヒトPBMCが使用される。ある特定の好まれる実施形態では、マウス1匹あたり2千万個の収集/単離されたヒトPMBCが使用される。生着から5~7日後に、免疫調節薬がマウスに投与され、マウスにおけるヒトサイトカイン濃度が測定されて、特定のドナー/対象が、免疫調節薬の投与後にサイトカイン放出症候群(CRS)を示すか否かに関する予測因子または決定因子として、IFN-γおよびIL-10のサイトカイン放出が、「重度もしくは高度応答」、「中程度もしくは低応答」または「無応答」のものであるか決定する。「重度/高度応答」は、ヒト化マウスへの免疫調節薬の投与後6時間目に、1,800pg/mlに等しいまたはこれを上回るIFN-γレベルおよび120pg/mlに等しいまたはこれを上回るIL-10レベルとして測定される。IFN-γおよびIL-10は、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームが発生するか否かに関して最もよく予測すると同定されたため、これらが測定される。本発明者らは、本in vivoアッセイ系を使用して、免疫不全マウスに生着させた異なるヒトドナーPBMCが、CRS誘導薬剤に異なって応答することを実証した。
【0142】
本方法において、対象は、ヒト化マウスモデル方法において「低/無応答者」である場合、免疫調節薬投与後にサイトカイン応答を誘発する可能性は低く、この場合、この個体へのこの免疫調節薬の投与は安全である。したがって、本方法を使用して特定の個体が「低/無応答者」であると決定される場合、極めて有害なサイトカインストーム効果を有する潜在力のために、処置における使用に以前は利用できなかった免疫調節薬を、実際に当該個体に使用することができる。当該個体が、本方法により、この個体のPBMCによりヒト化されたマウスを使用して免疫調節薬に対する重度/高度IFN-γおよびIL-10応答を有すると決定される場合、当該個体は、サイトカインストーム応答を誘発する可能性があり、そこで、この個体へのこの免疫調節薬の投与は安全ではない。
【0143】
本方法において、免疫欠損マウス(免疫不全マウスとしても公知)が使用される。NSGマウスは、免疫不全である純系研究室マウスの系列である。NSGマウスは、成熟T細胞、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞、またはこれらの組合せを欠く。NSGマウスはまた、複数のサイトカインシグナル伝達経路を欠損し、自然免疫に多くの欠損を有する。NSGマウスにおける複合免疫不全状態は、広い範囲の初代ヒト細胞の生着を許してヒト化マウスを得て、ヒトの生物学および疾患の多くの分野の精巧なモデル化を可能にする。本発明者らは、NSGマウスが、NSG-CSF-1マウスおよびNSG-IL-6マウスと同様の応答を有することを発見した。本明細書において、用語「ヒト化マウス」、「ヒト化免疫欠損マウス」、「ヒト化免疫不全マウス」およびこれらの複数形バージョンは、互換的に使用される。よって、これらの用語のうち1種の使用は、全てを包含するものとして解釈されるべきである。
【0144】
ある特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、免疫系を欠く遺伝子改変マウス(すなわち、ヒト化免疫不全マウス)である。免疫不全マウスの例として、NSG(すなわち、NOD scidガンマ(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)マウス)、NSG-CSF-1、NSG-IL-6その他が挙げられるがこれらに限定されない。本発明は、免疫不全マウスの他の具体例を包含することが意図される。免疫不全マウスは、好ましくは、それ自身のT細胞、B細胞、NK細胞またはこれらの組合せを欠く。その結果として、免疫不全マウスは、即時型移植片対宿主拒絶を伴わないヒト末梢血単核細胞(PBMC)の生着を可能にすることが予想される。
【0145】
前のin vivoアッセイを使用して、薬物誘導性サイトカインシグナルを実証することができるが、前のアッセイは、被験動物におけるドナー細胞の数と共にその動力学的免疫学的変化(例えば、十分な循環CD3細胞およびNK細胞、ならびにGVHDの存在)の重大性を考慮することができないため、先行技術アッセイは、偽陽性および偽陰性応答の産生の影響を受け易いことが、本発明者らによって仮定される。前者は、多過ぎるドナー細胞(すなわち、CD3細胞およびNK細胞)に起因し得、これにより、アッセイを過剰に高感度にし、サイトカイン放出の正確な予測を得ることができない。後者は、少な過ぎるドナー細胞(すなわち、CD3細胞およびNK細胞)に起因し得、これもまた、アッセイを過剰に低感度にし、サイトカイン放出の正確な予測を得ることができない。厄介なことに、多過ぎるCD3細胞は、被験動物において作動する移植片対宿主防御機構を引き起こす場合があり、マウスモデルをサイトカイン放出のスクリーニングに不適なものとする。
【0146】
本発明は、ヒト対象における重度CRSを正確に決定するin vivoスクリーニングアッセイを提供するという、長年にわたり満たされていない必要を救済する。これは、生着させるPBMCの量およびPBMC生着後の薬物投与のタイミングを調整することにより達成される。
【0147】
当業者であれば認める通り、PBMCを収集および単離するための多くの適した仕方が存在する。非限定例として静脈内および心臓内を含む、免疫不全マウスにPBMCを導入するための多くの適した仕方も存在する。
【0148】
本発明者らは、個々のヒト(免疫調節薬を受けるものと思われる)からPBMCを収集し、次いで、免疫不全マウス(例えば、NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1)における生着に使用して、本明細書で開示されているアッセイを使用して、毒性(すなわち、サイトカイン放出)を試験することができることを確立した。有利には、本発明者らは、このアッセイ系が、免疫調節薬の投与を受けるであろうPBMCを提供するヒト患者におけるin vivo応答を予測することを見出した。
【0149】
理論に傾倒することなく、多過ぎるPBMCが、行き過ぎて不正確な予測を提供(すなわち、多くの偽陽性を提供)するように、サイトカイン放出プロファイルの感度を増強し得ると考えられる。PBMCの数が、5×107個のPBMC/マウスを超える場合、一部のマウスが、おそらくGVHD(移植片対宿主病)により、有意な体重減少を患うことが観察される。これが起こる場合、免疫調節薬によって誘導されたこのようなマウスにおけるサイトカイン放出応答は、ヒト対象におけるCRSを正確に決定することができない。あるいは、投与されたPBMCの数が、ある特定の閾値(例えば、<1×107個/マウス)を下回る場合、方法は同様に、最適感度でCRSを決定することができない(すなわち、多くの偽陰性を提供する)。
【0150】
本方法の例の実施形態では、単離されたPBMCを免疫欠損マウスに生着させる少なくとも4時間前に、マウスは、100cGyのX線(または75cGy~125cGyのX線)を照射される。照射は、ヒトからPBMCを収集および単離するステップの後、その前またはそれと同時に発生し得る。照射を使用することにより、T細胞は、NSGマウスにおいてより速く増えるであろうと考えられる。理論に制約されずに、照射が、ヒト細胞の生着を増強すると考えられる。正確な機構は依然として明らかでないが、照射は、骨髄破壊をもたらすことができ、これは、マウス免疫細胞を破壊し、ヒトPBMC生存因子を増加させ、ヒトT細胞増大化をスピードアップする。照射は、末梢血、脾臓および骨髄におけるマウス免疫細胞の細胞死(アポトーシス)も誘導し、増加されたヒト免疫細胞を骨髄に向かわせる。照射なしでは、本方法を行うのに十分なヒト免疫細胞を得るには、より長い時間がかかるであろう。しかし、時間と共に、ヒトPBMCは、一部の細胞型、例えば、NK細胞および単球を失うであろうが、その理由として、これらの細胞型は、マウスにおいて成長することができず、単に数日間生存して、死に絶えることが挙げられる。NKおよび骨髄系細胞は、一般にCD3 T細胞よりも迅速にターンオーバーするが、マウスにおけるNK細胞および骨髄系細胞の短い生存は、これらの生存を刺激するIL15等の因子の欠如が原因である。照射ありまたはなしで、NK細胞は、NK細胞(および骨髄系細胞)の短い生存により、PBMC生着後10日目までに失われる筈である。T細胞のみが、NSGマウスにおいて増えることができる。アッセイは、毒性を試験するために、可能な限り多くのヒト免疫細胞型を必要とする。したがって、生着させたヒト免疫細胞の最適集団を有し、重度GVHDを発病する前の期間、例えば、1.5×107~3.0×107個のPBMCの生着による本方法の5~7日目は、偽陰性を最小化しつつ、最適感度を達成するのに決定的に重要である。
【0151】
ある特定の例の実施形態では、本発明は、免疫不全マウスへの特定の範囲のヒトPMBC(1.5~3.0×107個/マウス)の生着に関する。ある特定の好まれる実施形態では、生着させるヒトPBMCの数は、2×107個/マウスである。
【0152】
本発明者らは、特定の個体のPBMCが、照射された免疫抑制マウスにおいて生着し、次いで、免疫調節薬が、かかる生着後の重大な期間(例えば、5~7日後)(好ましくは、6日後)においてマウスに投与される場合、IFN-γおよび/またはIL-10を使用してサイトカイン応答を測定して、この特定のヒトが、対象が、ヒトにとって潜在的に致死的となり得るサイトカイン放出症候群等の大量サイトカイン放出応答を誘発する可能性があり、したがって、免疫調節薬を投与されるべきではないことを意味する「重度」または「高度応答者」であるか決定することができることも発見した。
【0153】
ある特定のT細胞活性化剤、特に、免疫抑制のために診療所において使用された初めてのmAbであったマウスモノクローナル抗体(mAb)であるORTHOCLONE OKT(登録商標)3(「OKT3」)等、T細胞抗原受容体(TCR)に取り組むモノクローナル抗体(mAb)は、炎症促進性サイトカインの全身性放出を誘導することができる(Abramowicz D.ら、Transplantation、1989年4月;47巻(4号):606~8頁)。これらのうち最も危険なのは、TNF、インターフェロン-ガンマ(IFN-ガンマ)およびIL-2である。mAb療法を受けている患者において、かかるサイトカイン放出症候群または「サイトカインストーム」の制御は、高用量コルチコステロイド処置によってルーチンに達成される。ORTHOCLONE OKT(登録商標)3は、静脈内に与えられて、心臓、腎臓および肝臓を含む移植された臓器の急性拒絶を反転する免疫抑制薬であるムロモナブ-CD3の商品名である。OKT3は、急性移植片拒絶において主要な役割を果たす、T細胞の機能を遮断することにより作用する。OKT3は、T細胞の膜におけるCD3と呼ばれる分子と反応し、その機能を遮断する。Tリンパ球へのOKT3の結合は、その初期活性化をもたらし、サイトカイン放出に続くT細胞機能遮断をもたらす。これは、CRSの強い誘導因子である免疫抑制薬である。抗CD28抗体ANC28.1/5D10は、より弱いCRS誘導因子である。開発中の薬物候補を含む、他の抗体および免疫調節剤を本方法において使用することができる。
【0154】
免疫調節薬の例として、抗CD28モノクローナル抗体(mAb)、抗CD3 mAb、抗CD20 mAb、抗CD52 mAb;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);インターフェロン;イミキモド;レナリドミド(REVLIMID(登録商標))、ポマリドミド(IMNOVID(登録商標))およびアプレミラスト等、サリドマイドおよびその誘導体またはアナログ;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;IMLYGIC(商標)(タリモジーンラハーパレプベック);アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、カツマキソマブ(REMOVAB(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN(登録商標))、トシツモマブ-I131(BEXXAR(登録商標))、ブレンツキシマブベドチン(ADCETRIS(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、リツキシマブ(MABTHERA(登録商標)またはRITUXAN(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH-1H(登録商標)、CAMPATH(登録商標)またはLEMTRADA(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ペルツズマブ(PERJETA(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(商標))、デノスマブ(PROLIA(登録商標)またはXGEVA(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、イピリムマブ(YERVOY(登録商標))、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))、アベルマブ(BAVENCIO(登録商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(登録商標))、ダラツムマブ(DARZALEX(登録商標))、セリチニブ(ZYKADIA(登録商標))および抗胸腺細胞グロブリン(THYMOGLOBULIN(登録商標)(ウサギ)またはATGAM(登録商標)(ウマ))が挙げられるがこれらに限定されない。
【0155】
したがって、ある特定の例の実施形態では、免疫調節薬は、治療用抗体である。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。モノクローナル抗体(mAb)として、TGN1412(抗CD28 mAb)(TAB08)、OKT3(抗CD3 mAb)、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)(抗CD20 mAb)、LEMTRADA(登録商標)(CAMPATH(登録商標)としても販売されるアレムツズマブ)(抗CDS2 mAb)、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)、OPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)、YERVOY(登録商標)(イピリムマブ)、ZYKADIA(登録商標)(セリチニブ)、TECENTRIQ(登録商標)(アテゾリズマブ)、BAVENCIO(登録商標)(アベルマブ)、IMFINZI(登録商標)(デュルバルマブ)その他を挙げることができるがこれらに限定されない。他の実施形態では、免疫調節薬は、REVLIMID(登録商標)(レナリドミド)等の小分子薬物;抗胸腺細胞グロブリン等のポリクローナル抗体;またはインターフェロン等のタンパク質等の生物学的薬物であり得る。
【0156】
当業者によって認められる通り、免疫調節薬は、種々の投与経路を使用して、非ヒト免疫不全哺乳動物に投与することができる。例示的な投与経路として、静脈内、大腿内(intrafemoral)、脳室内(intraventricular)、心臓内、腹腔内投与経路その他が挙げられるがこれらに限定されない。好まれる投与経路は、静脈内注入である。
【0157】
特定の理論に傾倒することなく、ヒトPBMCによるマウス生着後5~7日目のヒト化免疫不全マウスに存在する優勢な細胞は、免疫調節薬の投与後のサイトカイン放出症候群またはサイトカインストーム毒性に関して試験することができると考えられる。試験は、注射後のPBMC細胞の数およびヒトPBMCの比を含む因子に依存する。投与される細胞の細胞型のバランスおよび細胞数(含量)は、サイトカイン放出症候群の決定において重要であると考えられる。例えば、
図2Bに示す通り、NK細胞(CD56)は、存在するCD45細胞の約20~30%であり、生着後10日目までに1~5%に減少した。したがって、10日目までに、このPBMCヒト化マウスにおける優勢な細胞型は、T細胞であり、PBMCヒト化マウスは、多くの他のヒト細胞型を持たず、毒性試験のための優れたモデルではない。
【0158】
本発明の非限定例の実施形態は、免疫調節薬が、個体への免疫調節薬の投与後に、個々のヒトにおけるサイトカイン放出症候群(CRS)、SIRSまたはサイトカインストーム(CRSの重症例)を誘発する可能性があるか決定する方法を含む。例の実施形態において、本方法は、
(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、
(b)ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記マウスに生着させるステップと、
(c)生着させてから5~7日後に、前記マウスに免疫調節薬を投与するステップと、
(d)前記マウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップであって、IFN-γ≧1,800pg/mlおよびIL-10≧120pg/mlの血中濃度が、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群を示す、ステップと、
(e)前記免疫調節薬が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があると決定するステップであって、
前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群の存在が、前記免疫調節薬の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があることを示す、ステップと
を含む。
【0159】
別の非限定例の実施形態では、本発明は、免疫調節薬が、個体への免疫調節薬の投与後に、個々のヒトにおけるサイトカイン放出症候群(CRS)、SIRSまたはサイトカインストーム(CRSの重症例)を誘発する可能性があるか決定する方法を含む。例の実施形態において、本方法は、
(a)ヒトから末梢血単核細胞(PBMC)を単離するステップと、
(b)2×107個の前記単離されたPBMCを、照射された免疫不全マウスに生着させるステップと、
(c)生着させてから5~7日後に、前記マウスに免疫調節薬を投与するステップと、
(d)前記マウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップであって、
IFN-γ≧1,800pg/mlおよびIL-10≧120pg/mlの血中濃度が、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群を示し、
前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群の存在が、前記免疫調節薬の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があることを示す、ステップと
を含む。
【0160】
例の実施形態において、本方法は、
(e)ヒトが、免疫調節薬による治療法に適しているか決定するステップであって、
マウスにおける誘発された重度サイトカイン放出症候群が、免疫調節薬による治療法に適していないヒトを示す、ステップ
をさらに含むことができる。
【0161】
マウスモデルにおける免疫調節薬に応答したサイトカインIFN-γおよびIL-10の濃度が、「重度/高度」として測定される場合、免疫調節薬は、重度サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを誘発する可能性があり、ヒトは、治療法に適していない。ヒトが、この特定の免疫調節薬による治療法に適していないと思われる場合、別の抗体もしくは化学療法または他の薬物を、個体/患者の処置に試みることができる。
【0162】
IFN-γおよびIL-10の両方の濃度が、「低/無応答」または「低応答」を示す場合、個々のヒトは、免疫調節薬による治療法に適している。「無応答」vs.「低応答」下端の決定は、識別が困難となる場合があり、アッセイの感度に依存し得るが、「無応答」および「低応答」は両者共に、ヒトが治療法に適していることを示すため、応答スペクトルのこのような末端に明瞭な境界線を設定する必要はないと思われる。
【0163】
本明細書に記載されている通り、ヒト化生着マウスに、例えば、抗CD28 mAb、OKT3(抗CD3 mAb)を含む様々な治療用抗体等の異なる免疫調節薬を注射し、ヒト化マウスにおける抗体の効果を観察した。抗CD28およびOKT3処置マウスの両方が、ある特定の個体/試料に関して主要な炎症性サイトカインの有意な増加を示した。非ヒト化マウスへの投与は、サイトカイン応答を誘導しなかった。これらの知見は、PBMCを生着させたヒト化マウスが、特定の対象/個体に対するある特定の薬物の免疫的毒性を決定することができることを示す。
【0164】
本方法は、ヒトPBMCを生着させた非ヒト哺乳動物に免疫調節薬を投与するステップと、免疫調節薬が、非ヒト哺乳動物において毒性を引き起こすか決定するステップであって、薬剤が、非ヒト哺乳動物において毒性を引き起こす場合、薬剤が、ヒトにおいて免疫的毒性を引き起こすと考えられる、ステップとを含む。
【0165】
免疫的毒性は、個体の免疫系の機能における薬剤の望ましくない/意図されない効果を指す。例えば、Weir, A、Journal of Immunotoxicology、5巻:3~10頁(2008年);Gribble, E J.ら、Expert Opinion Drug Metab Toxicol、3巻(2号)(2007年)を参照されたい。
【0166】
一部の実例では、免疫的毒性は、ヒトにおいてサイトカインストームを生じ得る。サイトカインストーム、サイトカイン放出症候群または輸注反応は、薬剤(例えば、治療用mAb)への初めての曝露後に通常見られる有害事象である。これは、いくつかの炎症性サイトカインの全身性放出によって特徴付けられる。症状は、軽度から重度に及び、疲労、頭痛、蕁麻疹、そう痒、気管支痙攣、呼吸困難、舌または咽頭腫脹の感覚、鼻炎、悪心、嘔吐、潮紅、発熱、悪寒、低血圧、頻拍、および無力症を含む。例えば、Wing, M.ら、Journal of Immunotoxicology、5巻:11~15頁(2008年)およびWang, H.ら
、American Journal of Emergency Medicine、26巻:711~715頁(2008年)を参照されたい。
【0167】
よって、さらに別の態様では、本発明は、(1種または複数の)薬剤の投与が、それを必要とする個体(例えば、ヒト)におけるサイトカイン放出症候群を引き起こすか決定する方法を対象にする。本方法は、ある特定の数のPBMCを生着させた非ヒト哺乳動物に、ある特定の日数の後に薬剤を投与するステップと、薬剤によって誘導された非ヒト免疫不全哺乳動物内の1種または複数のヒトサイトカインのレベルを決定するステップと、薬剤が、非ヒト哺乳動物においてサイトカイン放出症候群を引き起こすか決定するステップであって、薬剤が、非ヒト哺乳動物においてサイトカイン放出症候群を引き起こす場合、薬剤が、ヒトにおいてサイトカイン放出症候群を引き起こすであろう、ステップとを含む。
【0168】
本発明者らは、日数が適した細胞組成をもたらす限り、NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1マウスにおけるPBMCの生着後に免疫調節薬を試験する日数が重大であることを発見した。この日数は、マウスにおいて最初に生着させるPBMCの数に応じて若干変動し得る。すなわち、より多くのPBMCを生着させる(本範囲内)場合、免疫調節薬を試験する前の日数は、より少ないPBMC(本範囲内)を生着させる場合よりも若干短くなり得る(同様に本範囲内)。マウスに対する成人ヒトT細胞の免疫細胞同種異系間認識により、生着させたPBMCが、マウス細胞を死滅させ始めると、マウスは、移植片対宿主病(GVHD)を起こすと考えられる。これが起こる場合、マウスは、有意な体重減少を患い始め、CRSの決定においてマウスモデルを不正確なものにする、重度病的症状を示す。ある特定の実施形態では、本発明は、PBMC生着の4~7日または5~7日後の免疫調節薬の投与を提供する。ある特定の好まれる実施形態では、本発明は、PBMC生着の6日後の免疫調節薬の投与を提供する。
【0169】
本発明者らは、各マウスに注射される細胞の数(マウス1匹あたり2千万個の細胞vs.マウス1匹あたり5千万個の細胞)の関数として、IFN-γおよびIL-10の応答レベルを比較した(
図9A~
図9Bを参照)。マウスに注射されるPBMCの数は、決定因子である。多い数のPBMC(例えば、マウス1匹あたり5千万個のPBMC)が注射されると、マウスは、多い放出サイトカインを示し、IFN-γおよびIL-10は全て、それぞれ≧1,800pg/mlおよび≧120pg/mlに増加した。しかし、このドナー(213)(
図9で使用)は、前にマウス1匹あたり2千万個のPBMCを注射された場合、少ないサイトカインが放出された。このデータは、マウス1匹あたり2千万個のPBMC(またはマウス1匹あたり1千5百万~3千万個のPBMCの範囲)が、患者スクリーニングの好まれる範囲内であることを示す。本発明に従って、免疫療法薬に応答した個体のためのサイトカインストームの検出において使用されるPBMCの範囲は、1千5百万~3千万個の間のPBMCである。好ましくは、PBMC範囲は、2千万~2千5百万個の間のPBMCである。より好ましくは、濃度は、マウス1匹あたり2千万個のPBMCである。
【0170】
本発明は、ヒト患者において有害なサイトカイン放出症候群(CRS)を引き起こす免疫調節薬の潜在力を決定するための改善されたin vivo方法を提供する。
【0171】
有利には、本明細書でさらに記述されている通り、本発明者らは、このアッセイ系が、in vivo応答を決定するものであり、研究および医薬品安全性評価における強力なツールを表すことも見出した。ボランティアヒト対象における新たな薬物候補の現在の臨床試験は、薬物不合格の結果となることが多い。この失敗は、大部分は、現存しているin vivo動物モデルの不適切さのために、前臨床試験において曝露されなかった毒性によるものである。潜在的薬物候補の有害効果を正確に予測することができるin vivo動物モデルに対し、長年にわたり満たされていない必要がある。治療薬候補へと開発するための薬物候補のスクリーニングは、in vitroおよびin vivo前臨床試験の両方に合格する必要がある。
【0172】
同様に当業者によって認められる通り、PBMCを非ヒト哺乳動物に導入するための種々の仕方が存在する。かかる方法の非限定例は、静脈内、大腿内、脳室内、心臓内投与経路を含むことができる。好ましくは、PBMCは、静脈内経由で導入される。
【0173】
本発明者らは、PBMC生着時間が重大であることを発見した。特に、対象のPBMCのマウスへの生着後の特定の時間枠内に免疫調節薬を投与することができることが観察される。
【0174】
生着後3日目に、不十分な細胞数が存在する。本発明者らは、5日目に、十分なヒト細胞型が存在し、このようなヒト細胞の数は、試験に最適である(ヒトCD45%>10%)ことを見出した。しかし、10日目に、多くの細胞型の細胞数(総生細胞のパーセンテージ)は減少する。例えば、NK細胞は、5日目の20~30%から10日目の1~5%へと減少した(
図2Bおよび
図2C)。よって、本方法は、生着後4~7日目の間にまたは5~7日目の間にまたは6日目に、ヒト化マウスに薬物を投与するステップを含む。
【0175】
多くのリンパ系、骨髄系および潜在的には他のヒト免疫細胞型が、免疫的毒性応答における関与を要求され、これは、重要な役割を果たすT細胞およびNK細胞を含むと考えられる。本PBMCヒト化マウスモデルにおいて、本発明者らは、異なるヒト細胞型が、初期時点でマウスに存在することを見出した。ヒトT細胞およびNK細胞は、生着5日目のこのようなマウスにおける優勢な細胞集団である(
図2および
図4A)。
【0176】
最適な毒性試験のため、マウスにおける重大な意味を持つレベルのヒト細胞を要求することも考えられる。マウスにヒトPBMCが注射されると、ヒトT細胞のみが増えることができる;他の細胞型は、時間と共に死に絶え始めるであろう。時間経過に伴った細胞数(すなわち、マウスに投与されたPBMCの数)および細胞型の間の入り組んだバランスが必要とされる。
【0177】
その上、本発明者らは、マウスが、体重減少によって顕在化される移植片対宿主病GVHDを発症する前に、実験が行われることが必要であることを発見した。下にさらに記述する通り、8日後に、本発明者らは、重度移植片対宿主病GVHDを示す、PBMCを生着させたヒト化マウスの多くの有意な体重減少を観察した。一般に、マウスにおけるヒトT細胞は、永久に成長することができないと考えられる;これは、T細胞数が多い場合、サイトカインの放出により、マウスを攻撃し、GVHDを引き起こすであろう。マウスがGVHDを有する場合、ヒトT細胞がマウス細胞を攻撃する際にサイトカインが放出されるため、試験結果の精度に影響を与えるであろう(Ju XPら、Transplantation.、1997年;63巻(9号):1307~1313頁)。マウスは、GVHDが原因で最終的に死ぬであろう。
【0178】
GVHDの例のデータは、
図3A~
図3Dに描写されている。
図3Aおよび
図3Bにおいて、マウスにおけるドナー4629および362由来のPMBCの生着は、5×10
7個のPBMC生着後の早くも6日目に有意な体重減少を引き起こした。
図3Cは、ドナー309について、2×10
7個のPMBCを受けているマウスは、8日目後に体重減少を開始したことを示す一方、
図3Dは、ドナー358由来の3×10
7個のPMBCを受けているマウスが、7日目後に体重減少を開始したことを示す。
【0179】
加えて、GVHDを有するこれらのマウスは、8日後に病的であり、したがって、もはや試験に適していなかった。本発明者らは、体重減少を観察したのみならず、背中を丸めた姿勢、脱毛、運動性低下および頻呼吸も示された。20%の体重減少後に、マウスは、安楽死させる必要があった。
【0180】
よって、マウスが、GVHDを患っていないまたは他の面で病的でないことを確実にするために、PBMCの生着の8日後より前に免疫調節薬が投与されることが重大な意味を持つ。さらに、例えば3日目もの早さでは十分な細胞が存在しない可能性があるため、早過ぎる時点で薬物を投与することはできない。試験が正確となるために、十分な循環細胞が存在する必要がある。
【0181】
よって、上述の因子を考慮して、ある特定の実施形態では、免疫調節薬は、マウスにPBMCを生着させてから5~7日後にマウスに投与される。一部の好まれる実施形態では、免疫調節薬は、PBMCを生着させてから6日後にマウスに投与される。この期間において、マウスは、当業者にとって公知の通りに哺乳動物の基本的欲求(例えば、食物、水、光)を満たすことを含む、適した条件下に維持するべきである。
【0182】
下に表記する例において、本発明者らは、10名のドナーの実験のために6日目を選択した。1種または複数の炎症促進性サイトカイン(ヒトまたはマウス)の発現増加を測定するための方法も、当業者にとって公知である。炎症促進性ヒトサイトカインは、IL-2、IL-6、IL-8、IL-1β、IL-4、ガンマインターフェロン(IFN-γ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-αまたは「TNF」)、IL-10またはこれらの組合せを含む。炎症促進性サイトカインの発現増加は、フローサイトメトリーを使用して、本明細書に記載されている通りに決定することができる。
【0183】
別の態様では、免疫調節薬の組み合わせ物が、免疫調節薬の組み合わせ物の投与後にヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群(CRS)を誘発する可能性があるか決定する方法が開示されている。一実施形態では、組み合わせ物は、第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬を含む。別の実施形態では、本方法は、免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を免疫不全マウスに生着させて、ヒト化マウスを産生するステップと、PBMCを生着させてから5~7日後に、第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬をヒト化マウスに投与するステップと、ヒト化マウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップであって、IFN-γ≧1,800pg/mlおよびIL-10≧120pg/mlの血中濃度が、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群を示す、ステップと、免疫調節薬の組み合わせ物が、ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があると決定するステップであって、マウスにおける重度サイトカイン放出症候群の存在が、免疫調節薬の組み合わせ物の投与が、ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する能性があることを示す、ステップとを含む。
【0184】
マウス1匹あたりの生着させるPBMCの数は、2×107個のPBMCであり得る。免疫不全マウスは、NSGマウス、NSG-IL-6マウスまたはNSG-CSF-1マウス、好ましくは、NSGマウスであり得る。免疫不全マウスは、生着に先立ち、100cGyのX線を照射することができる。薬物の投与は、生着させてから6日後に行うことができる。複数のサイトカインは、IL-2、IL-4、IL-6またはTNFをさらに含むことができる。サイトカイン濃度は、IFN-γ、IL-10、IL-6、IL-2、IL-4およびTNFのそれぞれに対して決定することができる。複数のサイトカインの血中濃度は、免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与の2~6時間、好ましくは、6時間後に決定される。
【0185】
複数の免疫調節薬の例示的な組み合わせ物の1種では、免疫調節薬は、抗CD28モノクローナル抗体(mAb)、抗CD3 mAb、抗CD20 mAb、抗CD52 mAb;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);インターフェロン;イミキモド;レナリドミド(REVLIMID(登録商標))、ポマリドミド(IMNOVID(登録商標))およびアプレミラスト等、サリドマイドおよびその誘導体またはアナログ;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;IMLYGIC(商標)(タリモジーンラハーパレプベック);アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、カツマキソマブ(REMOVAB(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN(登録商標))、トシツモマブ-I131(BEXXAR(登録商標))、ブレンツキシマブベドチン(ADCETRIS(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、リツキシマブ(MABTHERA(登録商標)またはRITUXAN(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH-1H(登録商標)、CAMPATH(登録商標)またはLEMTRADA(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ペルツズマブ(PERJETA(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、トラスツズマブエムタンシン((KADCYLA(商標))、デノスマブ(PROLIA(登録商標)またはXGEVA(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、イピリムマブ(YERVOY(登録商標))、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))、アベルマブ(BAVENCIO(登録商標))およびデュルバルマブ(IMFINZI(登録商標))、ダラツムマブ(DARZALEX(登録商標))、セリチニブ(ZYKADIA(登録商標))および抗胸腺細胞グロブリン(THYMOGLOBULIN(登録商標)(ウサギ)またはATGAM(登録商標)(ウマ))から独立して選択することができる。
【0186】
別の例示的な組み合わせ物では、第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬は、抗CD28 mAb、抗CD3 mAb、抗CD20 mAb、抗CD52 mAb、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);インターフェロン;イミキモド;サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;タリモジーンラハーパレプベック;アダリムマブ、カツマキソマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ-I131、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、デノスマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ダラツムマブ、セリチニブ、エロツズマブおよび抗胸腺細胞グロブリンからなる群から独立して選択される。抗CD52 mAbは、アレムツズマブであり得、抗C20 mAbは、リツキシマブであり得、抗CD3 mAbは、OKT3であり得、抗CD28 mAbは、TGN1412であり得る。
【0187】
好まれる一実施形態では、第1の免疫調節薬は、ペムブロリズマブまたはニボルマブであり、第2の免疫調節薬は、レナリドミド、ポマリドミド、エパカドスタット、タリモジーンラハーパレプベック、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、セリチニブ、ダラツムマブ、エロツズマブまたはデュルバルマブである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、ペムブロリズマブであり、第2の免疫調節薬は、レナリドミドである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、ペムブロリズマブであり、第2の免疫調節薬は、ポマリドミドである。
【0188】
好まれる一実施形態では、第1の免疫調節薬は、ニボルマブであり、第2の免疫調節薬は、レナリドミドである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、ニボルマブであり、第2の免疫調節薬は、ポマリドミドである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、ニボルマブであり、第2の免疫調節薬は、エロツズマブである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、ニボルマブであり、第2の免疫調節薬は、ダラツムマブである。好まれる一実施形態では、第1の免疫調節薬は、ニボルマブであり、第2の免疫調節薬は、イピリムマブである。
【0189】
別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、イピリムマブであり、第2の免疫調節薬は、レナリドミド、ポマリドミド、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、セリチニブ、ダラツムマブまたはデュルバルマブである。
【0190】
別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、アテゾリズマブ、アベルマブまたはデュルバルマブであり、第2の免疫調節薬は、レナリドミド、ポマリドミド、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、リツキシマブ、セリチニブ、ダラツムマブまたはアレムツズマブである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、デュルバルマブであり、第2の免疫調節薬は、レナリドミドである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、デュルバルマブであり、第2の免疫調節薬は、リツキシマブである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、デュルバルマブであり、第2の免疫調節薬は、ポマリドミドである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、デュルバルマブであり、第2の免疫調節薬は、ダラツムマブである。さらに別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、デュルバルマブであり、第2の免疫調節薬は、イブルチニブである。
【0191】
好まれる一実施形態では、第1の免疫調節薬は、エロツズマブであり、第2の免疫調節薬は、ポマリドミドである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、アテゾリズマブであり、第2の免疫調節薬は、ポマリドミドである。別の好まれる実施形態では、第1の免疫調節薬は、アテゾリズマブであり、第2の免疫調節薬は、レナリドミドである。
【0192】
別の態様では、本発明は、開示されている、免疫調節薬の投与後にヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘発しない免疫調節薬の安全な投薬量を決定する方法を提供する。本方法は、第1の投薬量を有する免疫調節薬を用意するステップであって、免疫調節薬の前記第1の投薬量が、その投与後に、第1の照射されたヒト化免疫不全マウスにおいて軽度または重度サイトカイン放出症候群を誘発すると決定される、ステップと、第2の免疫不全マウスを用意するステップであって、前記第2のマウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記第2のマウスに生着させるステップと、PBMCを生着させてから5~7日後に、前記第2のマウスに免疫調節薬を投与するステップであって、前記免疫調節薬が、前記第1の投薬量よりも少ない第2の投薬量で投与される、ステップと、前記第2のマウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップと、前記ヒトにおける投与のための前記免疫調節薬の安全な投薬量を決定するステップであって、前記安全な投薬量が、前記第2のマウスへの前記免疫調節薬の投与後に、IFN-γが<300pg/mlであり、IL-10が<25pg/mlである血中濃度を生じる投薬量であり、前記第2のマウスにおけるIFN-γ<300pg/mlおよびIL-10<25pg/mlの血中濃度が、前記免疫調節薬の前記安全な投薬量の投与が、前記ヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘発しない可能性があることを示す、ステップとを含むことができる。
【0193】
別の実施形態では、本方法は、ヒトにおいて軽度または重度サイトカイン放出症候群を誘発するのではないかと疑われる免疫調節薬の安全な投薬量の最適化を提供する。本方法は、免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を生着させるステップと、PBMCを生着させてから5~7日後に、前記マウスに免疫調節薬を投与するステップであって、前記免疫調節薬が、軽度または重度サイトカイン放出を誘発するのではないかと疑われる投薬量よりも低い投薬量で投与される、ステップと、前記マウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップと、前記ヒトにおける投与のための前記免疫調節薬の安全な投薬量を決定するステップであって、前記安全な投薬量が、前記マウスへの前記免疫調節薬の投与後に、IFN-γが<300pg/mlであり、IL-10が<25pg/mlである血中濃度を生じる投薬量であり、前記マウスにおけるIFN-γ<300pg/mlおよびIL-10<25pg/mlの血中濃度が、前記免疫調節薬の前記安全な投薬量の投与が、前記ヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘発しない可能性があることを示す、ステップとを含む。
【0194】
マウス1匹あたりの生着させるPBMCの数は、2×107個のPBMCであり得る。例示的な免疫不全マウスは、NSGマウス、NSG-IL-6マウス、NSG-CSF-1マウスその他を含む。好ましくは、免疫不全マウスは、NSGマウスである。好まれる実施形態では、免疫不全マウスは、生着に先立ち、100cGyのX線を照射される。薬物の投与は、生着させてから6日後に行うことができる。複数のサイトカインは、IL-2、IL-4、IL-6またはTNFをさらに含むことができる。複数のサイトカインの血中濃度は、免疫調節薬の投与の2~6時間後に、好ましくは、免疫調節薬の投与の6時間後に決定することができる。免疫調節薬は、本明細書で開示されているもののうちのいずれかであり得る。例えば、免疫調節薬は、抗CD28 mAb、抗CD3 mAb、抗CD20 mAb、抗CD52 mAb、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、エパカドスタット、タリモジーンラハーパレプベック、ニボルマブ、レナリドミド、セリチニブまたは抗胸腺細胞グロブリンであり得る。
【0195】
別の態様では、本発明は、ヒトへの免疫調節薬の投与が、ヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘導する見込みを決定するin vitro方法であって、ヒト由来の1.5~3.0×107個の単離された末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから5~7日後に免疫調節薬を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、マウスの血液試料に存在するIFN-γおよび/またはIL-10を含む複数のサイトカインの濃度をin vitroで検出するステップであって、マウス血液試料におけるIFN-γ≧1,800pg/mlまたはIL-10≧120pg/mlの濃度が、ヒトへの免疫調節薬の投与が、重度サイトカイン放出症候群を誘導する可能性があることを示す、ステップとを含む方法を提供する。
【0196】
別の態様では、本発明は、開示されている、ヒトへの第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物の投与が、ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘導する見込みを決定する方法を提供する。本方法は、ヒト由来の1.5~3.0×107個の単離された末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから5~7日後に第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、マウスの血液試料に存在するIFN-γおよび/またはIL-10を含む複数のサイトカインの濃度をin vitroで検出するステップであって、IFN-γ≧1,800pg/mlまたはIL-10≧120pg/mlの濃度が、ヒトへの第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物の投与が、重度サイトカイン放出症候群を誘導する可能性があることを示す、ステップとを含むことができる。
【0197】
さらなる態様において、本発明は、臨床評価のために多数の臨床的に関連する薬物候補から同定するための精度を有する薬物スクリーニングプラットフォームとしてのヒト化マウスモデルを提供する。本アッセイは、ヒトにおいてサイトカイン放出を誘発する潜在的薬物候補を排除することから、薬物免疫毒性試験のための頑強な予測ツールを表す。
【0198】
本アッセイは、ヒトにおける免疫系に有害に影響し得る薬物候補(複数可)のための薬物試験アッセイを表す。本アッセイは、薬物候補または薬物候補の組み合わせ物のための薬物試験を提供することもできる。モデルは、前臨床および臨床試験の間に必要なリンクを提供する。薬物開発プログラムへの本アッセイの統合は、治療薬開発のためのFDA承認プロセスを加速させる筈である。これらの方法における薬物候補または薬物候補の組合せは、本明細書における他の実施形態に関して言及されている免疫調節薬に限定されないが、疾患、疾病、病気、傷害または他の状態の処置、軽減および/または治癒に関して治療効果を有し得るいずれかの薬物候補を含むことができる。
【0199】
したがって、別の態様では、本発明は、薬物候補が、ヒトにおいて免疫的毒性を引き起こすか決定する方法を対象にする。本方法は、ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を生着させた非ヒト免疫不全哺乳動物(例えば、NSG、NSG-CSF-1またはNSG-IL-6マウス)に薬物を投与するステップと、薬物が、非ヒト哺乳動物において免疫的毒性を引き起こすか決定することにより、薬物が、ヒトにおいて免疫的毒性を引き起こすか決定するステップとを含む。
【0200】
したがって、本発明は、ヒトにおける使用のための薬物候補の免疫毒性を決定するin vivo方法であって、(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、(b)4.5~5.5×107~5.5×107個のヒトPBMC、好ましくは、5.0×107個のヒトPBMCをマウス(例えば、NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1)に生着させるステップと、(c)生着させてから4~7日後に、マウスに薬物候補を投与するステップと、(d)前記マウスの血液におけるサイトカイン濃度を決定するステップであって、前記サイトカインが、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNFからなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインである、ステップと、(e)前記薬物候補の免疫毒性を決定するステップであって、前記マウスにおける、IFN-γ≧300pg/ml、IL-2≧15pg/ml、IL-4≧10pg/ml、IL-6≧10pg/ml、IL-10≧25pg/mlまたはTNF≧5pg/mlからなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインの血中濃度が、ヒトにおける前記薬物候補の免疫毒性を示す、ステップとを含む方法を提供する。免疫不全マウスは、NSGマウス、NSG-IL-6マウスまたはNSG-CSF-1マウス、好ましくは、NSGマウスであり得る。好まれる実施形態では、免疫不全マウスは、100cGyのX線を照射される。サイトカイン放出は、薬物候補投与の2~6時間後に、好ましくは、薬物候補投与の6時間後に、マウスの血液において決定することができる。
【0201】
ある実施形態では、薬物候補のヒト免疫毒性を決定する方法は、4.5×107~5.5×107個のヒトPBMCを、照射された免疫不全マウスに生着させるステップと、生着させてから4~7日後、好ましくは、5~7日後に、より好ましくは、生着させてから6日後に、薬物候補を前記マウスに投与するステップと、前記マウスの血液におけるサイトカイン放出を決定するステップであって、サイトカインが、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNFからなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインである、ステップと、低いサイトカイン放出が、マウスの血液において検出される場合、薬物候補が、低いヒト免疫毒性を有することを同定するステップとを含む。ある実施形態では、薬物候補のヒト免疫毒性を決定する方法は、4.5~5.5×107個の単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)の生着から4~7日後、好ましくは、5~7日後に、より好ましくは、生着から6日後に、薬物候補を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、マウス血液試料に存在する少なくとも1種のヒトサイトカインの濃度をin vitroで検出して、薬物候補のヒト免疫毒性を決定するステップであって、少なくとも1種のヒトサイトカインが、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNFαからなる群から選択され、低いヒトサイトカイン濃度がマウス血液試料において検出される場合、薬物候補が、低いヒト免疫毒性を有する、ステップとを含む。免疫不全マウスは、NSGマウス、NSG-IL-6マウスまたはNSG-CSF-1マウスであり得、好ましくは、前記免疫不全マウスは、NSGマウスである。免疫不全マウスは、75~125cGyのX線を照射することができ、好ましくは、免疫不全マウスは、100cGyのX線を照射される。サイトカイン放出は、薬物候補投与の2~6時間後に、好ましくは、薬物候補投与の6時間後に、マウスの血液において決定することができる。マウスの血液における低いサイトカイン放出は、IFN-γ<300pg/ml、IL-10<25pg/ml、IL-2<15pg/ml、IL-4<10pg/ml、IL-6<10pg/mlまたはTNF<5pg/mlを含むことができる。マウスの血液における低いサイトカイン放出は、陰性対照の投与によって誘導されるサイトカインの量以下のサイトカインの量を含むことができる。
【0202】
本発明は、薬物候補(複数可)および/または薬物組合せが、FDA承認に適した安全性プロファイルを有するか同定するためのステップであって、低いサイトカイン放出が、FDA承認に適した安全性プロファイルを示す、ステップをさらに提供する。非限定例の実施形態において、4.5×107~5.5×107個のヒトPBMCが、照射された免疫不全マウスに生着する。他の非限定例の実施形態において、5.0×107個のヒトPBMCが、照射された免疫不全マウスに生着する。安全性プロファイルを決定する方法において生着するPBMCは、単一の個体にまたはヒトのプールに由来し得る。好まれる実施形態において、免疫欠損マウスは、PBMCが免疫不全マウスに生着する少なくとも4時間前に、75cGy~125cGyのX線を照射される。他の好まれる実施形態において、免疫欠損マウスは、PBMCが免疫不全マウスに生着する少なくとも4時間前に、1100cGyのX線を照射される。薬物に対する応答は、例えば対照薬剤と比較して評価することができる。本アッセイは、薬物候補が医薬品安全性評価を合格することの決定を可能にする。
【0203】
他の例の実施形態において、本発明は、ヒト末梢血単核細胞を生着させたヒト化照射免疫不全マウスであって、NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスであるヒト化照射免疫不全マウスを提供する。好ましくは、マウスは、1.5~3.0×107個のPBMCを生着させる。NSGマウスは、ヒトマクロファージコロニー刺激因子-1遺伝子(NSG-CSF-1)またはヒトインターロイキン-6遺伝子(NSG-IL-6)をさらに含むことができる。より好ましくは、マウスは、2×107個のPBMCを生着させる。他の例の好まれる実施形態において、マウスは、4.5~5.5×107個のPBMCを生着させる。
【0204】
他の例の実施形態において、本発明は、ヒト末梢血単核細胞を生着させたヒト化免疫不全マウスであって、ヒトマクロファージコロニー刺激因子-1遺伝子(NSG-CSG-1)を有するNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスであるヒト化免疫不全マウスを提供する。好ましくは、マウスは、1.5~3.0×107個のPBMCを生着させる。より好ましくは、マウスは、2×107個のPBMCを生着させる。他の例の好まれる実施形態において、マウスは、4.5~5.5×107個のPBMCを生着させる。
【0205】
本発明の例の実施形態の追加的な態様、利点および/または他の特色は、添付の図面と併せて、次の詳細な説明を考慮することにより明らかになるであろう。当業者であれば、本明細書に提供されている記載されている実施形態は、単に例示的かつ説明的なものであり、限定的なものではないことが明らかとなる筈である。その修正の多数の実施形態は、本開示およびその均等の範囲内に収まるものとして企図される。
【0206】
次の実施例は、本方法の開発において行われる実験を含む、本方法の様々な非限定的な実施形態および技法をさらに説明するために提供される。しかし、これらの実施例が、説明的であることを意味し、特許請求の範囲を限定しないことを理解されたい。当業者には明らかであろうが、多くの多様性および修正が、本発明の精神および範囲内に包含されることが意図される。
【実施例】
【0207】
(実施例1)
ヒト化マウスにおけるヒトPBMCの生着
本試験において、2種の系列のヒト化免疫不全マウスを使用した:6週齢の雌(i)NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG、JAX系統番号005557)マウスおよび(ii)NSG-CSF-1マウス(Jackson Laboratory系統番号:028654)。マウスに、ヒトPBMC生着の少なくとも4時間前に、100cGyのX線を照射した。同じドナー由来の精製/単離されたヒトPBMC(Astarte BiologicsまたはAllcells)を、1~5×107個の細胞/マウスでNSGまたはNSG-CSF-1マウスに静脈内(iv)注射した。hPBMC注射後に、体重、毛皮の全体的な外観および運動性についてマウスを毎日観察した。
【0208】
図1Aは、平均±平均の標準誤差(SEM)として提示された、2×10
7個のhPBMC/マウスでのhPBMC生着後の10匹のNSGまたはNSG-CSF-1マウスにおける毎日の体重変化を示す。
図1Bは、hPBMC生着後の(2×10
7個のhPBMC/マウス)、5匹の個々のNSGマウスの体重測定値を描写する。各線は、1匹のマウスを表す。マウスの大部分が、8日目から始まる、有意な体重減少を示したことが観察された。さらに、生着後の体重の減少に加えて、マウスは、下にさらに記述する通り、移植片対宿主病(GVHD)を示し始めた。
(実施例2)
生着後の異なる時点におけるヒトの生着細胞型および細胞数における動力学
【0209】
本実験において、3種の異なる系列のマウスのhPBMC生着後に、異なるヒトドナー由来の生着させたヒト単核細胞の細胞型および細胞数を試験した。生着後5日目または/および10日目にマウスを出血させ、ヒト細胞(型およびパーセンテージ)をフローサイトメトリーによって解析した。具体的には、マウスPBMC(hPBMCとの混合物における)を、ヒト抗体:抗CD45、抗CD3、抗CD14、抗CD19および抗CD56で染色した。
【0210】
ヒト細胞再構成を試験するために(すなわち、ヒト細胞は、生着後の異なる時点で異なる総生細胞のパーセンテージを示した)、NSG、NSG-IL-6(Jackson Laboratory系統番号028655)およびNSG-CSF-1マウスを使用した。
図2Aは、NSG、NSG-IL-6およびNSG-CSF-1マウス再構成が、ドナー331由来のhPBMCの生着後5日目に、匹敵するヒト細胞を示したことを示す。結果は、これら3種のマウス系列の間に有意差がなかったことを示す。マウスの全3種の系列は、生着5日目に約20%ヒトCD45細胞再構成を有する。ヒトCD45細胞のうち、その大部分が、CD3 T細胞およびNK細胞であった(
図2A)。
【0211】
別の試験において、NSGにおける、異なるドナー(
図2B、2×10
7個のPBMC/マウス)またはドナー358(
図2C、3×10
7個のPBMC/マウス)由来のhPBMCの生着後の2つの異なる時点において、異なる細胞集団を検討した。これらの実験において、各時点につき1群あたり2~5匹のマウスを使用し、データは平均±SEMとして提示する。
図2Bおよび
図2Cに示す通り、5日目にほぼ10~15%ヒトCD45+が存在し、10日目に35~50%CD45+が存在した。これらのデータは、生着させたヒトCD45細胞が、ヒト化マウスにおいて経時的に増加したことを示す。興味深いことに、5日目に、20~30%CD56(NK)細胞が、ヒト化マウスにおけるCD45+細胞の集団に存在したことが観察された。しかし、10日目に、CD56(NK)細胞は、1~5%へと大幅に減少した。これらのデータは、パーセントCD45の増加が、特定の単核細胞型(例えば、CD56 NK細胞)の消失と相関することを示唆する。要するに、hPMBCの生着後のヒト化免疫欠損マウスにおいて、生着させた単核細胞の細胞型および細胞数に動力学的変化がある。T細胞およびNK細胞は、5日目の優勢な細胞型であるが、10日目に、T細胞型のみが優勢である細胞型であり、NK細胞は時間と共に死に絶える。本方法が機能するためには、薬物試験時に(例えば、10日目に)NK細胞の全てが死に絶える訳ではないように、バランスが存在する必要がある。
【0212】
ヒトT細胞は、ヒト細胞再構成後に時間と共に優勢な細胞集団となるため、hPBMCヒト化マウスモデルは、T細胞モデルと考慮される。本実施例の結果は、これを確認した。
図2Bおよび
図2Cは、生着後5日目の10~15%から、10日目の35~50%へと増加したヒトCD45細胞のうち、CD3 T細胞パーセンテージが、5日目の65~80%から、10日目の90~95%へと増加したことを示した。
【0213】
免疫的毒性応答に関与する多くの細胞型が存在する。T細胞、NK細胞および単球細胞は全て、非常に重要な役割を果たす。hPBMCヒト化マウスモデルにおいて、生着後初期時点のマウスにおいて、依然として異なるヒト細胞型が存在することが判明した。ヒトT細胞およびNK細胞は、生着5日目にhPBMCヒト化マウスにおける細胞集団において優勢である、
図2Bおよび
図2C。この知見は、本発明者らに、hPBMCヒト化マウスにおける免疫的毒性応答を試験する契機を与える。免疫的毒性およびCRSの試験を行うために、生着後初期時点、例えば、6日目を選択した。
【0214】
0日目にマウスに照射し、同日中にhPBMCを生着させた。マウスの体重は、照射のため、1日目から3日目に下降した。4日目の後に、マウスは、体重を増し始めた。一見したところ、
図1Aに示す通り、NSGマウスは、NSG-CSF-1と比較してより多くの体重を有する。NSGマウスはまた、より健康でより活動的に見えた。したがって、NSGマウスを後の試験に使用した。
(実施例3)
生着時間の重大性
【0215】
本試験において、hPBMC生着後にヒト化マウスの一部において失われる体重の基盤を検討した。多数のマウスにおいて有意な体重減少が観察され、これらのマウスにおける移植片対宿主病(GVHD)を示す。例えば、GVHDのデータは、
図3A、
図3B、
図3Cおよび
図3Dに描写されている。
【0216】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれドナー4692およびドナー362に対する、NSGマウスにおける5×10
7個のPBMC/マウスの生着後の時間の関数としての5匹のヒト化NSGマウスの体重測定値を描写する。このレベルの生着細胞は、いずれかのドナー由来のPBMCの生着後7日目の後に、有意な体重減少(ほぼ10%)を引き起こした。ほぼ20%体重減少は、マウスにおけるGVHDの重度の状態を表し、マウスの安楽死を要求する。
【0217】
図3Cは、ドナー309生着(2×10
7個のPBMC/マウス)後の時間の関数としての、5匹のヒト化NSGマウスの体重測定値を描写する。PBMCの生着後8日目の後に、有意な体重減少(ほぼ10%)が観察される。
【0218】
図3Dは、ドナー358生着(3×10
7個のPBMC/マウス)後の時間の関数としての、4匹のヒト化NSGマウスの体重測定値を示す。ドナー358由来のPMBCを受けているマウスは、生着後9日目に有意な体重減少(ほぼ10%)を開始した。
【0219】
GVHDが、観察された体重減少を説明したと考えられる。マウスにおける生着ヒトT細胞は、成長し始めるにつれて、マウス細胞を攻撃する。上の実施例2に記述されている通り、生着後に時間と共にCD45細胞の%の増加が見られており、T細胞数が多い場合、GVHDを有するマウスは、8日後に病的になり、もはや試験に適さなくなった。
【0220】
GVHDマウスは、体重減少を示しただけでなく、背中を丸めた姿勢、脱毛、運動性低下および頻呼吸の徴候も示した。20%の体重減少の後に、マウスは、安楽死させる必要があり、実験を終止した。8日間の生着後のGVHDの高頻度発生は、毒性試験のための免疫調節薬の投与に先立つヒトPBMC生着のタイミングの重大性の別の側面を明らかにする。
【0221】
信頼できかつ再現性のある結果を生じさせるのに十分な循環細胞数および型がマウスに存在しない可能性があるため、免疫調節薬は、生着後の早過ぎる時点で(例えば、2~3日目に)投与することができない。
【0222】
しかし、マウスが、GVHDを有する場合、このことは、試験結果に影響を与えるであろう。したがって、その後の実験において、さらなるドナーにおける薬物投与の効果の試験のために、細胞生着後6日目を選択した。
【0223】
薬物投与後の異なる時点で、異なるサイトカインが放出し得る。最も早く放出されるサイトカインは、薬物投与後1時間にまたはそれ以前に常にピークになるTNFとなる筈である。さらに、臓器不全がなければ、大部分のサイトカインは、24時間後に正常レベルに戻るであろう。したがって、マウスの出血およびサイトカイン濃度に関する血清試験の時点として、薬物投与の2および6時間後を選択した。
(実施例4)
ヒトT細胞およびNK細胞は、生着5日目のhPBMCヒト化NSGマウスにおける優勢な細胞集団を表す
【0224】
本試験において、十(10)名のドナーの単核細胞再構成をヒト化マウスにおいて検討および比較した。各マウスに、ドナー由来の2×10
7個のhPBMCを生着させた。10名のドナーのうち7名の匿名化された患者情報を
図4Bに表記する。
【0225】
ドナー毎に5匹のヒト化NSGマウスを、示されている免疫細胞サブセット再構成に関して、フローサイトメトリーによって試験した。hPBMC注射NSGマウスにおいて、再構成5日目に、全血をフローサイトメトリーによって解析した。ヒトCD45、CD3、CD19、CD14およびCD56を測定した。総細胞のパーセンテージとしてのヒトCD45+細胞、ならびにCD45+細胞のパーセンテージとしてのCD3、CD19、CD14およびCD56(CD45+細胞においてゲーティング)を、10名のドナーに関して、
図4Aに示す。ドナーA4692、A4625およびA4668のみが、CD45、CD3、CD19およびCD14を示した。ヒト化マウスは、末梢血において平均10~25%のヒトCD45+細胞を示した(
図4A)。ヒトCD45細胞のうち、30~80%T細胞および10~40%CD56(NK)細胞が存在し、異なるドナーの間で多様性が示された。
【0226】
その後の実験において、毒性試験のためにマウスに免疫調節薬を投与するための最適時間として、生着後5~7日目の範囲内の日を選択した。
(実施例5)
ヒト化マウスにおける免疫調節薬によって誘導されたサイトカイン放出
【0227】
前臨床試験および臨床治験のために、薬物免疫的毒性、サイトカイン放出症候群(CRS)のスクリーニングおよび決定のためのヒト化マウスモデルを確立するために、全患者に対して陽性対照が必要とされる。ムロモナブ-CD3とも称されるORTHOCLONE OKT3は、移植片レシピエントを免疫抑制するための免疫抑制薬として使用されたマウスモノクローナル抗体(mAb)(抗CD3 mAb)である。OKT3は、CD3受容体に結合し、これは、サイトカインを放出するようにT細胞を活性化し、サイトカイン放出症候群(CRS)を引き起こすことができる。OKT3は、全患者に対する陽性対照として使用された。方法の特異性および感度を試験するために、その免疫的毒性を試験するための方法が殆どない標的薬物が選択されることが必要とされる。本方法の特異性および感度の評価のための標的薬物として、抗CD28 mAbを選択した。
【0228】
九(10)名の異なるドナーのPBMCを使用して、これらの実験のためのヒト化NSGマウスを産生した。hPBMC生着(2×10
7個のPBMC/マウス)6日目に、抗体OKT3(抗CD3 mAb;BioLegend、Cat.No.317302)またはANC28.1/5D10(「ANC28」、「抗CD28 mAb」または「抗CD28」とも称される;Ancell、Cat.No.177-824)のi.v.注射によってヒトサイトカイン放出のためにマウスを誘導した。PBSバッファーは、陰性対照とした。マウスを2および6時間目に出血させ、血清を採取し、BD Cytometric Bead Array(CBA)ヒトTh1/Th2サイトカインキットII(BD、Cat.No.551809)を使用して、サイトカイン濃度に関して解析した(
図5A~
図5Fを参照)。
【0229】
図5A~
図5Fは、九(9)名の異なるドナーのためのヒト化マウスのセットへの抗体OKT3(抗CD3 mAb)およびANC28(抗CD28)の注射後2および6時間目に測定された、異なるサイトカイン(すなわち、それぞれIFN-γ、IL-6、IL-2、IL-10、IL-4およびTNF)の濃度の複数のグラフを描写する。0.5mg/kg OKT3または1mg/kg抗CD28および5ml/kg PBS(陰性対照)をマウスにi.v.注射した。マウスを2および6時間目に出血させ、循環サイトカイン濃度をBD CBA Th1/Th2 IIキットによって測定した。群毎のマウスの数は2~5匹であり、データは平均±SEMとして提示する。
(実施例6)
薬物投与後の増強された循環サイトカイン濃度
【0230】
サイトカインストームが誘導されたか確かめるために、抗体注射後2および6時間後にマウスの血清におけるサイトカイン(ヒトIFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNF)をアッセイした(
図5A~
図5Fを参照)。全10名のドナーにおいて、2および6時間目の両方で、OKT3の注射後にヒトIFN-γ、IL-6、IL-10、IL-2、IL-4およびTNFの有意な誘導が見出された。
【0231】
しかし、抗CD28 mAb投与マウスにより、一部のドナーのみが、サイトカインの有意な放出を誘導した。全てのドナーが、抗CD28注射後にサイトカイン放出応答を有した訳ではない。
【0232】
図5Aに示す通り、10名のドナーは、抗CD28注射後6時間目に、IFN-γサイトカインに関して異なる放出プロファイルを示した:
重度/高度応答:ドナーA4692、A4668および362(IFN-γ≧1,800pg/ml)、
中程度/軽度応答:ドナーA4625、366、345、309および213(IFN-γ≧300pg/ml~<1,800pg/ml)ならびに
低/無応答:ドナー364および353(IFN-γ<300pg/ml)。
【0233】
図5Bは、2×10
7個(PBMC/マウス)を生着させたNSGマウスにおいて2または6時間目に観察された、抗CD28 mAb IL-10サイトカイン応答を示す。応答が重度/高度応答であるか決定することがより容易になるように、重度/高度応答および低応答の間のカットオフである120pg/mlのIL-10レベルに、線が描写されている。6時間目の応答は次の通りであった:
重度/高度応答:ドナーA4692、A4668および362(IL-10≧120pg/ml)、
中程度/軽度応答:ドナーA4625、366、345、213および309(IL-10≧25pg/ml~<120pg/ml)ならびに
低/無応答:ドナー364および353(<25pg/ml)。
【0234】
本出願人らは、そのIFN-γレベルが≧1,800pg/mlである(OKT3または抗CD28 mAbのいずれかによる)ドナーが、IL-10レベルの増加も示した(すなわち、≧120pg/ml)ことを観察した。IFN-γおよびIL-10レベルの両方が、それぞれ≧1,800pg/mlおよび≧120pg/mlを上回って増加される場合、ドナーは、この薬物を注射された場合にCRSを発症する可能性が非常に高い。
【0235】
図5C~
図5Fは、2または6時間目における、それぞれIL-6、IL-2、IL-4およびTNFのサイトカイン放出を描写する。
図5Cは、2×10
7個(PBMC/マウス)を生着させたNSGマウスにおいて2または6時間目に観察された、抗CD28 mAb IL-6サイトカイン応答を示す。6時間目の応答は次の通りであった:
重度/高度応答:ドナーA4692、A4668および362(IL-6≧25pg/ml)、
中程度/軽度応答:ドナーA4625、366、345、213および309(IL-6≧10pg/ml~<25pg/ml)ならびに
低/無応答:ドナー364および353(IL-6<10pg/ml)。
【0236】
図5Dは、2×10
7個(PBMC/マウス)を生着させたNSGマウスにおいて2または6時間目に観察された、抗CD28 mAb IL-2サイトカイン応答を示す。6時間目の応答は次の通りであった:
重度/高度応答:ドナーA4692、A4668および362(IL-2≧80pg/ml)、
中程度/軽度応答:ドナーA4625、366、345、213および309(15pg/ml≦IL-2<80pg/ml)ならびに
低/無応答:ドナー364および353(IL-2<15pg/ml)。
【0237】
図5Eは、2×10
7個(PBMC/マウス)を生着させたNSGマウスにおいて2または6時間目に観察された、抗CD28 mAb IL-4サイトカイン応答を示す。6時間目の応答は次の通りであった:
重度/高度応答:ドナーA4692、A4668および362(IL-4≧25pg/ml)、
中程度/軽度応答:ドナーA4625、366、345、213および309(10pg/ml≦IL-4<25pg/ml)ならびに
低/無応答:ドナー364および353(IL-4<10pg/ml)。
【0238】
図5Fは、2×10
7個(PBMC/マウス)を生着させたNSGマウスにおいて2または6時間目に観察された、抗CD28 mAb TNFサイトカイン応答を示す。6時間目の応答は次の通りであった:
重度/高度応答:ドナーA4692、A4668および362(TNF≧20pg/ml)、
中程度/軽度応答:ドナーA4625、366、345、213および309(5pg/ml≦TNF<20pg/ml)ならびに
低/無応答:ドナー364および353(TNF<5pg/ml)。
【0239】
図6は、IFN-γおよびIL-10を誘導するそれらの能力の観点から、OKT3または抗CD28の投与後の10名のドナーの応答を要約する。抗CD28 mAb投与後に、ドナーA4692、A4668および362が重度/高度応答者であり;ドナーA4625、366、345、309および213が中程度/軽度応答者であり;ドナー364および353が低/無応答者であることに留意されたい。これらのデータは、PBMC生着モデルによるNSG/NSG-CSF-1/NSG-IL-6マウスが、ヒトが、ヒトへの免疫調節薬の投与後に重度サイトカイン放出症候群応答を誘発する可能性があるか区別するのに(またはその予測因子として)有用であることを明らかに示す。
【0240】
図5A~
図5Fおよび
図6に示す通り、全10名のドナー/患者のPBMCを生着させたマウスは、OKT3注射後に大幅なサイトカイン放出を示した。しかし、抗CD28 mAbの投与により、ドナーのPBMCを生着させたマウスの一部のみが、これらのサイトカインの有意な誘導を示した。全てのドナーが、抗CD28注射に応答して高レベルのサイトカイン放出を有した訳ではない。これらの結果は、人間における多様性と同様である。OKT3等、CRSの強い誘導因子に対し、全てのドナーが、応答を有したが、抗CD28等、弱い誘導因子に対して、本方法において観察されるように、ドナーの間に莫大な多様性があることを検出することができる方法は他にない。例としてIFN-γ応答を使用することができる:3名のドナー/患者のPBMCを生着させたマウスは、抗CD28に対して高度応答を示し、5名のドナー/患者のPBMCを生着させたマウスは、抗CD28に対して中程度応答を示し、2名のドナー/患者のPBMCを生着させたマウスは、抗CD28に対して低/無応答を示す。マウスはまた、サイトカイン放出が存在した場合、体温下降および増加した臨床スコアを示す。本方法を使用して、新たな薬物免疫的毒性を検出することができ、また、個々の患者に対する薬物毒性をスクリーニングすることができる。
(実施例7)
免疫調節薬処置後のNSGマウスにおける体温変化
【0241】
実施例5および6のマウスの直腸温は、処置前に、また、各時点の出血の直前に測定した。温度データを
図7に示す。ヒト化NSGマウスは、薬物処置後に一部の動物において僅かに下降した体温を示した。体温が、高いIFN-γ放出を有したマウスにおいてより頻繁に下降したことが認められた(
図7)。OKT3および抗CD28群におけるマウスに関して、体温は、6時間の時点で37~38℃から36℃未満へと下降した。
図7は、薬物の注射後の低体温誘導を示す。対照PBS、OKT3および抗CD28を注射された、10名のドナーのhPMBCヒト化マウスにおいて、直腸温を測定した。群毎のマウスの数は2~5匹であり、データは平均±SEMとして提示する。
(実施例8)
薬物の注射後のマウスの臨床スコアの評価
【0242】
次の通りに徴候およびスコアのグレード付けを行うことにより、マウスにおける臨床スコアをモニターした:スコア:0=正常な活動性;1=正常な活動性、立毛、つま先歩行;2=背中を丸め、活動性が低下しているが、依然として移動可能;3=運動性低下だが、促されると移動可能;4=瀕死(危篤状態)。臨床スコア4を有するマウスは安楽死させた。群毎のマウスの数は2~5匹であり、データは平均±SEMとして提示する。
【0243】
OKT3または抗CD28 mAb処置群におけるサイトカイン放出を有するマウスの大部分は、6時間の時点で1にスコア付けされた。サイトカイン放出がないまたは低いサイトカイン放出を有するマウスは、臨床スコアがなかった。薬物の注射後のマウスの臨床スコアは、
図8に描写されている。マウスの大部分は、臨床スコア1を有した。
(実施例9)
PBMC(5×10
7個/マウス)の生着は、薬物候補毒性スクリーニングのためのヒト化マウスモデルを提供する
【0244】
本出願人らは、発見において潜在的な薬物をスクリーニングするための毒性試験に有用なヒト化マウスモデルを開発した。薬物候補開発の初期相において、潜在的な薬物候補が毒性活性を保持し得るかスクリーニングすることが要求される。このマウスモデルにおいて、潜在的な薬物候補に関連するいかなる毒性(例えば、サイトカイン放出症候群)もスクリーニングすることができるように、サイトカイン応答感度は、故意に増強された。
【0245】
これを行うため、多数のPBMC(すなわち、5×107個/マウス)をヒト化NSGマウスに生着させた。6日目に、マウスは薬物を受け、サイトカイン放出プロファイルを決定した。そこで、上述の実験と同様に、2×107個のPBMC/マウスを使用して、IFN-γおよびIl-10レベルを評価した。
【0246】
図9Aおよび
図9Bは、薬物注射後のIFN-γまたはIL-10レベルに対する2×10
7vs.5×10
7個のPBMC/マウスを比較するドナー213を描写する。IFN-γおよびIL-10レベルが、同じ量のmAb(すなわち、OKT3 mAb=0.5mg/kgおよび抗CD28 mAb=1mg/kg)を使用して、6日目に、OKT3および抗CD28 mAbの投与後に、より高いPBMC生着により増加したことが観察された。5×10
7個のPMBC/マウスによるこの増強されたサイトカイン放出は、前臨床薬物開発におけるスクリーニングアッセイに適していると考えられる。
図9C~
図9Fは、2×10
7個のPBMC/マウスおよび5×10
7個のPBMC/マウスによるドナー213におけるサイトカイン応答(それぞれIL-6、IL-2、IL-4およびTNF)の比較を描写する。これらのデータは、薬物毒性スクリーニングのため、多数のPBMCが、信頼できかつ高感度の試験方法を提供することを示す。
(実施例10)
変動するPBMC生着濃度によるサイトカイン放出の比較
【0247】
本実験において、本出願人らは、3種の濃度のうち1種のPBMCを生着させたヒト化マウスを使用して、サイトカイン放出を比較して、細胞濃度の効果を決定した。特に、本出願人らは、2×107個のPBMC/マウス、3×107個のPBMC/マウスまたは4×107個のPBMC/マウスを生着させたヒト化NSGマウスにおいて生成されたサイトカインレベルを、免疫療法薬(すなわち、mAb OKT3、抗CD28またはKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ))によるかかるマウスにおける処置後に比較した。
【0248】
生着後6日目に、マウスは免疫療法薬(mAb)を受け、これら3群のマウスにおけるサイトカイン放出プロファイルを決定した。マウスを2および6時間目に出血させ、循環サイトカイン濃度をBD CBA Th1/Th2 IIキットによって測定した。
図10A~
図10Fは、2×10
7、3×10
7または4×10
7個のPBMC/マウスを生着させたドナー309ヒト化NSGマウスにおける薬物注射後のサイトカインレベルを描写する。
図10Aは、マウスの各群のINFγレベルを描写する。
図10Bは、マウスの各群のIL-10レベルを描写する。
図10Cは、マウスの各群のIL-6レベルを描写する。
図10Dは、マウスの各群のIL-2レベルを描写する。
図10Eは、マウスの各群のIL-4レベルを描写する。
図10Fは、マウスの各群のTNFレベルを描写する。
【0249】
本出願人らは、これらの実験条件下で、サイトカインレベルが、より低い生着レベル、マウス1匹あたり2×107または3×107個のPBMCで、2つのマウス群において、同じ量のmAb(すなわち、OKT3 mAb=0.5mg/kg、抗CD28 mAb=1mg/kgおよびKEYTRUDA(登録商標)=10mg/kg)を使用して、6日目に、OKT3および抗CD28 mAbおよびKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)の投与後に同様の増加を示したことを観察した。しかし、マウス1匹あたり4×107個のPBMCの生着により、これらの実験条件下で、薬物注射のそれぞれに対するサイトカイン応答は、最適な感度で個々の応答を区別するには高過ぎることが判明した。対照的に、マウス1匹あたり2×107および3×107個の細胞のPBMCの生着は、これらの条件下で、個々のヒトにおける薬物に応答したサイトカインストームの発生をスクリーニングするための高感度試験を提供する。
(実施例11)
異なる濃度のPBMC生着における体温および臨床スコア
【0250】
本試験において、本出願人らは、異なるPBMC濃度での生着後のヒト化マウスにおける異なる細胞型、体温および臨床スコアを測定した。本試験において使用したPBMCは、ドナー309から得た。
図11Aは、PBMC生着後5日目の細胞集団を描写する。総ヒトCD45+細胞パーセンテージは、マウスにおける増加するレベルのPBMC生着に伴い増加したが、CD45集団内の異なる細胞型のパーセンテージは同様であった。
図11Bは、OKT3 mAb(0.5mg/kg)、抗CD28(1mg/kg)およびKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ;10mg/kg)による投与後のヒト化マウスにおける臨床スコアを描写する。
図11C、
図11Dおよび
図11Eは、マウス体温変化を描写する。
図11Cおよび
図11Dに示す通り、2×10
7個のPBMC/マウス群と比較して、3×10
7個のPBMC/マウス群において僅かな体温下降が見られた。
(実施例12)
サイトカインレベルは、薬物投薬量増加に伴い増加する
【0251】
薬物耐性は、個人間で異なることが多い。ヒト化免疫不全マウスモデルを使用して、個々の患者におけるサイトカイン放出の薬物濃度依存を試験することができる。
【0252】
本試験において、本発明者らは、異なる濃度のKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)を検討して、ヒト化マウスにおけるCRSに投薬量依存が存在するか決定した。6週齢の雌NOD.Cg-Prkdc
scid Il2rg
tm1Wjl/SzJ(NSG、JAX系統番号005557)マウスに、ヒトPBMC生着の少なくとも4時間前に、100cGyのX線を照射した。PBMCは、これらの実験において、ドナー358に由来した。精製/単離されたヒトPBMCを、3×10
7個の細胞/マウスでマウスに静脈内注射した。PBMC生着から6日後に、マウスに、PBS(陰性対照)、0.5mg/kg OKT3(陽性対照)、2.5mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)をiv注射した。1群あたり5匹のマウスが存在した。これらのKEYTRUDA(登録商標)投薬量は、KEYTRUDA(登録商標)の米国処方情報(U.S.prescribing information)に記述されている臨床治験において試験された投薬量の範囲内にある。KEYTRUDA(登録商標)投与後の重度サイトカイン放出症候群の有害効果報告は殆ど記述されていない。マウスを2および6時間目に出血させ、BD CBA Th1/Th2 IIキットを使用して、循環サイトカイン濃度を測定した。
図12A~
図12Fに示す通り、陽性対照OKT3の注射後に測定されたレベルは、IFN-γ、IL-10、IL-6、IL-2、IL-4およびTNFのそれぞれに対して非常に高かった。
図12A~
図12Fに示す通り、サイトカインレベルは、KEYTRUDA(登録商標)の増加する投薬量と共に増加した。2.5mg/kgKEYTRUDA(登録商標)において、サイトカインレベルは、陰性対照群(すなわち、PBS対照群)と同様であり、サイトカイン放出は殆どなかった。対照的に、サイトカインレベルは、増加するKEYTRUDA(登録商標)投薬量に伴い増加し、10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)が使用された場合に高度サイトカイン応答であった。
【0253】
図12A~
図12Fから分かる通り、投薬6時間後のサイトカインレベルは、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)の量における用量依存性応答を示し、増加する用量に伴い増加した。2.5mg/kgのKEYTRUDA(登録商標)濃度において、各サイトカインのレベルは、PBS対照群のために測定されたレベルの誤差範囲内であり、サイトカイン放出が殆どなかったことを示す。10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)において、各サイトカインのレベルは、CRSを予測するための中程度範囲内にあった。よって、ドナー358のため、2.5mg/kgKEYTRUDA(登録商標)の投与は、10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)の投与よりも低い、CRSを生じるリスクを有するであろう。
【0254】
サイトカイン放出の用量依存は、in vivoヒト化マウスモデルを使用して、個々の患者に対し、免疫的毒性の回避に関して、最良の薬物濃度をスクリーニングすることができることを示す。次に、かかる情報は、患者を苦しめる障害の処置に有効な投薬範囲に関する他の知識と併せて使用して、薬物の有効だが安全な用量を決定することができる。
(実施例13)
異なる用量のKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)のための体温および臨床スコア
【0255】
本試験において、本発明者らは、実施例12に記載されているヒト化マウスにおける様々な細胞型、体温および臨床スコアを測定した。
図13Aは、細胞生着後5日目の細胞集団を描写する。本発明者らは、T細胞およびNK細胞が、これらのマウスにおける優勢な細胞型を表すことを観察した。
図13Bは、異なる用量のKEYTRUDA(登録商標)により、免疫療法薬(KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ))の投与後の臨床スコアを描写する。投薬6時間後の臨床スコアは、5mg/kgおよび10mg/kgKEYTRUDA(登録商標)により投薬された場合、陽性対照(OKT投与)と同じであった。
図13Cは、異なる用量のKEYTRUDA(登録商標)によるマウス体温変化を描写する。
(実施例14)
比較 - in vivoヒト化マウス方法対in vitroアッセイ
【0256】
in vitro全血またはPBMCアッセイは現在、薬物スクリーニングのためにサイトカイン放出を試験するための主要なアッセイである。本実施例において、同じPBMCドナーに対する2種の方法、in vitro PBMCアッセイおよびin vivoヒト化マウス方法によって、薬物処置に応答したサイトカイン放出を決定した。
in vivo方法
【0257】
0日目:6週齢の雌NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG、JAX系統番号005557)マウスに、ヒトPBMC生着の少なくとも4時間前に、100cGyのX線を照射した。精製/単離されたヒトPBMCを、3×107個の細胞/マウスでマウスに静脈内注射した。PBMCは、ドナー213、309、345または366に由来した。5日目、ヒト細胞生着試験のためにマウスを出血させた。6日目、マウスに薬物を投与し;BD CBA Th1/Th2 IIキットを使用して、薬物投与6時間後にマウス血清におけるサイトカインレベルを決定する。これらの実験において、1群あたり5匹のマウスを使用した。
in vitro方法
【0258】
-1日目:薬物でプレートをコーティングした:PBSにおいて薬物(例えば、抗体)を希釈し;ドラフト内でプレートを開けたままにする。
【0259】
0日目:各ドナー由来のPBMCを加工する。PBMCは、ドナー213、309、345または366に由来した。補充RPMIにおいてPBMCを解凍し、1回洗浄する。細胞を計数し、1×106個の細胞/mlとなるよう補充RPMIに再懸濁する。コーティングされたウェルを200μlのPBSで2回、次いで200μLの補充RPMIで1回洗浄する。各ウェルに100μlの細胞を蒔く(1ウェルあたり総計1×105個の細胞のため)。
【0260】
2日目:各ウェルから上清を収集し、BD CBA Th1/Th2 IIキットを使用してサイトカインレベルを測定する。
結果
【0261】
薬物処置後のサイトカイン放出レベルを決定するための2種の方法を、抗CD28抗体(Ancell、Cat.No.177-824)による4名の異なるドナー由来のPBMCの処置に関して比較した。in vitroアッセイのため、96ウェルプレートにおいて10μg/ウェルで抗CD28を投薬した。in vivo方法のため、1mg/kgで抗CD28を投薬した。in vitro PBMC培養ウェルの上清およびマウス由来の血清を採取し、サイトカインレベルを測定した。抗体OKT3(in vivoアッセイのために0.5mg/kgまたはin vitroアッセイのために1mg/ml)を陽性対照として使用し、それぞれin vivoアッセイまたはin vitroアッセイにおいて、PBSまたはアイソタイプ抗体のいずれかを陰性対照として使用した。決定されたサイトカインレベルは、平均値±平均の標準誤差(SEM)として
図14A(IFN-γおよびIL-10)および
図14B(IL-6およびIL-4)に提示する。
図14Aおよび
図14Bは、4名のPBMCドナーのそれぞれのため、いずれか所定のサイトカインに対して、2種のアッセイによって異なるレベルが決定されたことを示す。
【0262】
図15は、ドナー213の
図14Aおよび
図14Bのサイトカインレベルデータを再プロットして、2種の試験において決定されたサイトカインレベルの差のより容易な比較を可能にする。4種のサイトカイン、IFN-γ、IL-10、IL-6およびIL-4のそれぞれに関して、in vitro試験は、抗CD-28による投薬後にドナー213細胞において相対的に少ないサイトカイン放出が生じたことを示した。in vitroアッセイにおいて、抗CD28による投薬後に測定されたサイトカインレベルは、抗CD28に対する対照アイソタイプ抗体(「媒体2」)による投薬後に決定されたレベルと殆ど異ならなかった一方、対照OKT3抗体による投薬後のサイトカインレベルは、OKT3に対する対照アイソタイプ抗体(「媒体1」)による投薬後に決定されたレベルよりもはるかに高かった。対照的に、in vivo試験方法によって、4種のサイトカイン、IFN-γ、IL-10、IL-6およびIL-4のそれぞれに関して、抗CD-28またはOKT3のいずれかによる投薬後にドナー213細胞において産生されたサイトカインレベルは、陰性対照において測定されたレベルよりもはるかに高かった。
【0263】
これらの結果は、一部のヒトに関して、in vivo試験は、当該個体が、免疫活性薬による投薬後にサイトカインストームと反応し得ることを示すが、in vitro試験は、免疫活性薬による投薬後にサイトカインストームと反応するであろうことを示すことができない可能性があることを示す。in vivoヒト化マウス方法は、in vitroアッセイよりも高感度であり、in vitro試験が見逃し得る、ヒトにおけるサイトカインストームの潜在力を予測することができる。
(実施例15)
薬物組合せによる処置後のサイトカイン放出
【0264】
PBMCヒト化マウスモデルは、単一の薬物が、個体においてサイトカインストームを誘導することができるか有効に試験することができる。しかし、薬物スクリーニングおよび臨床治療法のため、薬物組合せを使用する必要がある場合もある。本実施例は、PBMCヒト化マウスモデルを使用して、サイトカイン放出に関して薬物組合せを試験することができることを示す。モデルにより得た結果は、ドナー特異的であることが示される。
【0265】
6週齢の雌NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG、JAX系統番号005557)マウスに、ヒトPBMCの生着の少なくとも4時間前に、100cGyのX線を照射した。それぞれのドナー由来の単離されたヒトPBMCを、3×107個の細胞/マウスでマウスに静脈内注射した。PBMCは、ドナー213またはドナー364に由来した。PBMC生着後6日目に、本出願人らは、マウスに薬物の組合せを投与し、BD CBA Th1/Th2 IIキットを使用して、薬物投与6時間後にマウス血清におけるサイトカインレベルを決定した。全実験群において5匹のマウスを使用した。
【0266】
試験した薬物組合せは、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)およびREVLIMID(登録商標)(レナリドミド);KEYTRUDA(登録商標)および抗胸腺細胞グロブリン(ATG)(THYMOGLOBULIN(登録商標)(ウサギ));ならびに抗CD28およびATGであった。
【0267】
ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))は、がん免疫療法において使用されるヒト化抗体である。レナリドミド(REVLIMID(登録商標))は、がん処置において使用される経口免疫調節性小分子薬である、サリドマイドの誘導体である。THYMOGLOBULIN(登録商標)(ウサギ)として販売される抗胸腺細胞グロブリン(ATG)は、腎臓移植片等、移植片を受ける患者における身体の自然の免疫の低下に使用される免疫抑制薬である。
【0268】
KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)およびREVLIMID(登録商標)(レナリドミド)実験において、ヒト化NSGマウスは、経口投与される100mg/kgレナリドミドにつき、5mg/kgKEYTRUDA(登録商標)を静脈内(iv)注射された、または両方の薬物を受けた。ivの5ml/kg PBSによる処置を対照として使用した。
【0269】
KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)およびATG実験において、ヒト化NSGマウスは、5mg/kgKEYTRUDA(登録商標)、1mg/kg ATGを静脈内注射された、または両方の薬物を受けた。ivの5ml/kg PBSによる処置を対照として使用した。
【0270】
抗CD28およびATG実験において、ヒト化NSGマウスは、1mg/kg抗CD28、1mg/kg ATGを静脈内注射された、または両方の薬物を受けた。ivの5ml/kg PBSによる処置を陰性対照として使用した。
【0271】
KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)およびREVLIMID(登録商標)(レナリドミド)実験において決定されたサイトカインレベルを、両方のドナーに関して
図16に示す。レベルが測定されたサイトカインは、IFN-γ(パネルa);IL-10(パネルb);IL-6(パネルc);IL-2(パネルd);IL-4(パネルe);およびTNF(パネルf)であった。
【0272】
多発性骨髄腫を処置するためにデキサメタゾンおよび免疫調節剤REVLIMID(登録商標)(レナリドミド)と組み合わせたKEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)を評価する、2種の停止された臨床治験からのデータに基づき、FDAは、KEYTRUDAおよびレナリドミドの組合せによる処置が、重度毒性および死亡のリスク増加をもたらしたとの声明を2017年に発表した。
【0273】
図16に示す通り、IFN-γ、IL-6、IL-2およびTNFはそれぞれ、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)およびREVLIMID(登録商標)(レナリドミド)が組み合わせて使用された場合、各薬物単独による処置によって産生されたレベルを上回って、サイトカイン放出の有意な増加を示したが、この結果はドナー213に関してであって、ドナー364に関してはそうではなかった。
【0274】
抗胸腺細胞グロブリン(ATG)は、臓器移植における急性拒絶の予防および処置ならびに再生不良性貧血の治療法において使用される。ATGは、臨床毒性を刺激することが以前に実証された。
図17は、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)単独、ATG単独、ならびにKEYTRUDA(登録商標)およびATGの組合せによる処置後のサイトカイン結果を示す。IFN-γ、IL-6、IL-10およびTNFのレベルは、KEYTRUDA(登録商標)およびATGの組合せによる処置後に、いずれかの薬物単独による処置後よりも高かったが、この結果は、ドナー213に関してであって、ドナー364に関してはそうではなかった。
【0275】
図18は、抗CD28単独、ATG単独、ならびに抗CD28およびATGの組合せによる処置後のサイトカイン結果を示す。ドナー213に関して、IFN(IIFN)-γ、IL-6、IL-2およびTNFのレベルは、いずれかの薬物単独による処置後と比較して、薬物の組合せによる処置後により高かったが、ドナー364に関しては、いずれかの薬物単独による処置後と比較して薬物の組合せによる処置後に、IL-2およびTNFのみが増加した。
【0276】
これらの結果は、in vivoヒト化マウスモデルが、単一の薬物による、および同様に薬物組合せに関する、高いサイトカイン放出の見込みを予測することができることを示す。加えて、異なるPBMCドナーは、併用療法に対し異なるサイトカイン放出応答を示した。
【0277】
本試験は、臨床投与に先立ち、患者への薬物の特定の組合せが、重度サイトカイン放出を誘導する可能性があり得るかスクリーニングするためのin vivo方法における患者自身のPBMCの使用の利点を実証する。同様に、本方法は、薬物組合せの投与に伴う可能な薬物関連の毒性のスクリーニングに有用である。
(実施例16)
照射ヒト化マウスにおけるヒト免疫細胞集団および細胞型分布
【0278】
本実施例において、本出願人らは、照射ヒト化マウスにおけるヒト免疫細胞集団および細胞型分布を評価した。マウス内のヒト細胞集団における免疫不全マウスへのヒトPBMC生着前のX線照射および生着後の時間の効果が実証される。
【0279】
6週齢の雌NOD.Cg-Prkdc
scid Il2rg
tm1Wjl/SzJ(NSG、JAX系統番号005557)マウスを、ヒトPBMCの生着に使用した。照射処置に付されるマウスのため、マウスに、ヒトPBMCの生着の少なくとも4時間前に、100cGyのX線を照射した。ドナー由来の精製/単離されたヒトPBMCを、2×10
7個の細胞/マウスでマウスに静脈内注射した。PBMCは、6名の異なるドナー:362、345、2785、213、364または3251のうち1名に由来した。生着後5日目および10日目にマウスを出血させ、マウス血液におけるヒト細胞をフローサイトメトリーによって解析して、存在するヒト細胞型および各型のパーセンテージを決定した。具体的には、ヒトPBMCとの混合物中のマウスPBMCは、ヒト抗体:抗CD45、抗CD3、抗CD14、抗CD19および抗CD56 mAbで染色した。結果を
図19に示し、
図19は、ヒト細胞集団が、5日目および10日目に照射ありおよびなしのマウスの間で異なることを説明する。
【0280】
図19に示す通り、5日目に、総ヒト白血球細胞集団(CD45+)は、照射マウスにおいて約8~15%であったが、非照射マウスにおいては1~3%のみであり、総集団に関してドナーの間に多様性があった。
図19は、5日目に、照射または非照射マウスに関する総ヒト細胞(CD45+)集団内の白血球細胞型の分布は、殆ど同一であったことをさらに示し、それぞれにおける優勢な細胞型は、CD3+細胞(T細胞)およびCD56+(NK細胞)であり、少ないパーセンテージのCD19+細胞(B細胞)およびCD14+細胞(単球)があった。
【0281】
図19は、10日目に、総ヒト細胞(CD45+)集団が、照射マウスにおいて生細胞の約30~85%に成長したが、非照射マウスにおいては生細胞の8~17%のみになったことを示し、個々のドナーの間に多様性があった。
【0282】
図19は、10日目に、総ヒト細胞(CD45+)集団内の白血球細胞型の分布はまたしても、照射または非照射マウスで同様であったことをさらに示す。照射または非照射マウスのいずれかにおいて、優勢な細胞型は、マウスにおいてその集団を成長させ増やした、CD3+細胞(T細胞)であった。ごく僅かなまたは無視できるパーセンテージの生存CD56+(NK細胞)、CD19+細胞(B細胞)およびCD14+細胞(単球)が、照射または非照射マウスに存在した - すなわち、これらの細胞は、マウスにおいてその集団を成長させず増やさなかった。
【0283】
照射マウスにおいて5日目または10日目に存在するヒト細胞の絶対数は、非照射マウスにおいて同日に存在するヒト細胞の絶対数の約3~15倍多かったため、照射マウスは、存在するヒト白血球の型のそれぞれの、より多い数を示した。重要なことに、5日目に、照射マウスは、ヒトCD45+細胞集団内に、より多い絶対数の生存CD56+(NK細胞)、CD19+細胞(B細胞)およびCD14+細胞(単球)を有し、サイトカイン放出症候群の試験の感度および精度を増強するヒト免疫系の優れたモデル化を提供する。
(実施例17)
照射または非照射ヒト化マウスにおけるGVHDの指標としての体重減少
【0284】
本試験において、本出願人らは、ヒト化マウスにおけるGVHDの指標として体重減少を使用した。6名の異なるヒトドナー(362、345、2785、213、364または3251)のそれぞれに由来する2千万個のPBMCを生着させたヒト化マウスにおいて、体重測定を毎日行った。マウスは、実施例16の手順に従って、ドナーPBMCの生着に先立ち照射したまたは照射しなかった。ドナー毎の照射および非照射群の体重測定値を
図20のパネルa(ドナー362、345および2785);パネルb(ドナー213、364および3251)に示す。
図20は、全ドナーに関して、体重減少は、照射マウスに、非照射マウスよりも初期に発生することを示し、GVHDが、照射ヒト化マウスに、非照射ヒト化マウスよりも速く発症することを実証する。全6名のヒトドナーに関して、8日目の後の照射ヒト化マウスの体重減少は有意であり(少なくとも約10%)、8日目の後の有意なGVHDを示す。非照射マウスは、PBMC生着の12~14日後であっても有意な体重減少を示さず、有意なGVHDのはるかにより遅い発病を示す。
(実施例18)
GVHDは、単独で(薬物処置の非存在下で)ヒト化マウスにおいてヒトサイトカイン放出を引き起こす
【0285】
本実施例は、有意なGVHDを経験するマウスが、GVHDの結果としてヒトサイトカインを分泌したことを実証する。GVHDは、照射ヒト化マウスに、非照射ヒト化マウスよりも速く発症した。
【0286】
図21は、いずれの薬物処置も非存在下で、PBMC生着後10日目にヒト化マウスに存在するヒトサイトカインレベルを示す。サイトカイン測定値は、PBMC生着に先立つ照射ありまたはなしで、6名のドナー(362、345、2785、213、364および3251)のヒト化マウスに関してIFN-γ(パネルa)、IL-10(パネルb)およびIL-6(パネルc)に示す。ドナー毎に、生着後10日目に、非照射マウスよりも多くの3種のサイトカインのそれぞれが照射マウスの血液に存在した。10日目に、実施例17に開示されている体重測定値に基づき、照射マウスは、存在するヒト白血球からのヒトサイトカインの結果的GVHD関連分泌により、非照射マウスよりも重度のGVHDを有した。
(実施例19)
照射および非照射ヒト化マウスにおけるサイトカイン放出
【0287】
本実施例は、薬物誘導性ヒトサイトカイン放出におけるマウスのX線照射(PBMC生着に先立つ)の効果を評価する。
【0288】
マウスに、ドナー362(高度応答者)またはドナー21(中程度応答者)由来の2千万個のPBMCを生着させた。マウスは、ドナーhPBMCの生着に先立ち照射したまたは照射しなかった。生着から6日後に、マウスは、免疫調節薬(0.5mg/kg OKT3、10mg/kgKEYTRUDA、1mg/kg ATGまたは5ml/kg PBS(陰性対照)のiv注射)で処置した。薬物処置の6時間後に得たマウス血液におけるサイトカインレベルを決定した。照射および非照射ヒト化マウスにおける薬物誘導性サイトカインレベルを比較する結果を
図22A~
図22Bに示す。
図22Aは、IFN-γ(パネルa)、IL-10(パネルb)およびIL-6(パネルc)のデータを提示する一方、
図22Bは、IL-2(パネルd)、IL-4(パネルe)およびTNF(パネルf)のデータを提示する。
図22A~
図22Bは、各サイトカインに関して、いずれかのドナーにおいて、非照射マウスにおけるサイトカインレベルは、所与の薬物処置後に、同じ薬物処置後の照射マウスにおいて決定されたものと比較して一貫してより低いことを示す。
【0289】
照射マウスにおいて産生されたより高いサイトカインレベルは、実施例16に開示されている通り、当該マウスに存在するより多い数のヒト免疫細胞(T細胞およびNK細胞)が原因である可能性がある。よって、照射ヒト化マウスモデルは、所与の薬物に応答した免疫賦活における個々の多様性の検出のためのより優れた感度を提供する。
材料&方法
1.PBMCヒト化マウス再構成
【0290】
6週齢の雌NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG、JAX系統番号005557)マウスおよびその派生系統、NSG-CSF-1、NSG-IL-6マウスに、ヒトPBMC生着の少なくとも4時間前に、100cGyのX線を照射した。精製されたヒトPBMCは、商業的に購入した(Astarte BiologicsまたはAllcells technologies)。解凍後にPBMCをPBSで2回洗浄し、次いで1千万~5千万個の細胞/マウスをNSGマウスに静脈内(i.v.)注射した。hPBMC注射後に、毛皮の全体的な外観および運動性についてマウスを毎日観察した。hPBMC生着後の別の日に、フローサイトメトリーによってヒト細胞パーセンテージを試験するためにマウスを出血させた。ヒト抗CD45、抗CD3、抗CD14、抗CD19、抗CD56でマウスPBMCを染色した。
2.ヒト化マウスにおけるサイトカイン放出の誘導および測定
【0291】
hPBMC生着の6日目に、マウスは、抗体OKT3(抗CD3 mAb)およびANC28(抗CD28 mAb)、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)(抗PD-1)、ATG、REVLIMID(登録商標)(レナリドミド)ならびにベースライン対照としてのPBSバッファーのiv注射によってヒトサイトカイン放出を誘導された。2および/または6時間目にマウスを出血させ、血清を採取し、BD Cytometric Bead Array(CBA)ヒトTh1/Th2サイトカインキットII(BD Cat.No.551809)を使用して、サイトカイン濃度に関して解析した。様々なサイトカインに関する本アッセイの検出限界を次に示す:IFN-γ、7pg/ml;IL-2、2.6pg/ml;IL-4、2.6pg/ml;IL-6、3.0pg/ml;IL-10、2.8pg/ml;およびTNF、2.8pg/ml。
3.体温の測定
【0292】
処置前に、また、各時点の出血の直前に、マウスの直腸温を測定した。温度は、直腸熱電対プローブを挿入し、安定した読み取り値が得られるまで待つことによって測定した。4.臨床スコアの評価
【0293】
Bradyら、Clinical & Translational Immunology、2014年による参考文献と同
様に、本発明者らは、次の通りに徴候およびスコアのグレード付けを行った:スコア:0=正常な活動性;1=正常な活動性、立毛、つま先歩行;2=背中を丸め、活動性が低下しているが、依然として移動可能;3=運動性低下だが、促されると移動可能;4=瀕死(危篤状態)。臨床スコア4を有するマウスは安楽死させた。
5.統計解析
【0294】
GraphPad Prism 5.0を使用して結果を解析した。
【0295】
本開示は、次の態様をさらに包含する。
【0296】
態様1.免疫調節薬が、免疫調節薬の投与後にヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があるか決定する方法であって、(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、(b)ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記マウスに生着させるステップと、(c)PBMCを生着させてから5~7日後に、前記マウスに免疫調節薬を投与するステップと、(d)前記マウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップであって、IFN-γ≧1,800pg/mlおよびIL-10≧120pg/mlの血中濃度が、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群を示す、ステップと、(e)前記免疫調節薬が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があると決定するステップであって、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群の存在が、前記免疫調節薬の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があることを示す、ステップとを含む方法。
【0297】
態様2.ヒトへの免疫調節薬の投与が、ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘導する見込みを決定する方法であって、(a)ヒト由来の1.5~3.0×107個の単離された末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから5~7日後に免疫調節薬を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、(b)マウスの血液試料に存在するIFN-γおよび/またはIL-10を含む複数のサイトカインの濃度をin vitroで検出するステップであって、マウス血液試料におけるIFN-γ≧1,800pg/mlまたはIL-10≧120pg/mlの濃度が、ヒトへの免疫調節薬の投与が、重度サイトカイン放出症候群を誘導する可能性があることを示す、ステップとを含む方法。
【0298】
態様3.第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物が、免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与後にヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があるか決定する方法であって、(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、(b)ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記マウスに生着させるステップと、(c)PBMCを生着させてから5~7日後に、前記マウスに第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬を投与するステップと、(d)前記マウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップであって、IFN-γ≧1,800pg/mlおよびIL-10≧120pg/mlの血中濃度が、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群を示す、ステップと、(e)免疫調節薬の前記組み合わせ物が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があると決定するステップであって、前記マウスにおける重度サイトカイン放出症候群の存在が、免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与が、前記ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘発する可能性があることを示す、ステップとを含む方法。
【0299】
態様4.ヒトへの第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物の投与が、ヒトにおいて重度サイトカイン放出症候群を誘導する見込みを決定する方法であって、(a)ヒト由来の1.5~3.0×107個の単離された末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから5~7日後に第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、(b)マウスの血液試料に存在するIFN-γおよび/またはIL-10を含む複数のサイトカインの濃度をin vitroで検出するステップであって、IFN-γ≧1,800pg/mlまたはIL-10≧120pg/mlの濃度が、ヒトへの第1の免疫調節薬および第2の免疫調節薬の組み合わせ物の投与が、重度サイトカイン放出症候群を誘導する可能性があることを示す、ステップとを含む方法。
【0300】
態様5.免疫調節薬の投与後にヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘発しない免疫調節薬の安全な投薬量を決定する方法であって、(a)第1の投薬量を有する免疫調節薬を用意するステップであって、免疫調節薬の前記第1の投薬量が、その投与後に第1のヒト化照射免疫不全マウスにおいて軽度または重度サイトカイン放出症候群を誘発すると決定される、ステップと、(b)第2の免疫不全マウスを用意するステップであって、前記第2のマウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、(c)ヒトから単離された1.5~3.0×107個の末梢血単核細胞(PBMC)を前記第2のマウスに生着させるステップと、(d)PBMCを生着させてから5~7日後に、前記第2のマウスに免疫調節薬を投与するステップであって、前記免疫調節薬が、前記第1の投薬量よりも少ない第2の投薬量で投与される、ステップと、(e)前記第2のマウスにおける、IFN-γおよびIL-10を含む複数のサイトカインの血中濃度を決定するステップと、(f)前記ヒトにおける投与のための前記免疫調節薬の安全な投薬量を決定するステップであって、前記安全な投薬量が、前記第2のマウスへの前記免疫調節薬の投与後に、IFN-γが<300pg/mlであり、IL-10が<25pg/mlである血中濃度を生じる投薬量であり、前記第2のマウスにおけるIFN-γ<300pg/mlおよびIL-10<25pg/mlの血中濃度が、前記免疫調節薬の前記安全な投薬量の投与が、前記ヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘発しない可能性があることを示す、ステップとを含む方法。
【0301】
態様6.ヒトにおける使用のための薬物候補の免疫毒性を決定する方法であって、(a)免疫不全マウスを用意するステップであって、前記マウスが、75~125cGyのX線を照射される、ステップと、(b)4.5~5.5×107個のヒトPBMCを前記マウスに生着させるステップと、(c)生着させてから4~7日後に、薬物候補を前記マウスに投与するステップと、(d)前記マウスの血液におけるサイトカイン濃度を決定するステップであって、前記サイトカインが、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNFからなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインである、ステップと、(e)前記薬物候補の免疫毒性を決定するステップであって、IFN-γ≧300pg/ml、IL-2≧15pg/ml、IL-4≧10pg/ml、IL-6≧10pg/ml、IL-10≧25pg/ml、またはTNF≧5pg/mlからなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインの前記マウスにおける血中濃度が、ヒトにおける前記薬物候補の免疫毒性を示す、ステップとを含む方法。
【0302】
態様7.ヒトにおける薬物候補の免疫毒性を決定する方法であって、(a)4.5~5.5×107個の単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)を生着させてから4~7日後に薬物候補を投与されたヒト化照射免疫不全マウスから、血液試料を用意するステップと、(b)マウス血液試料に存在する少なくとも1種のヒトサイトカインの濃度をin vitroで検出して、薬物候補のヒト免疫毒性を決定するステップであって、少なくとも1種のヒトサイトカインが、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10およびTNFからなる群から選択され、マウス血液試料において低いヒトサイトカイン濃度が検出される場合、薬物候補が、低いヒト免疫毒性を有する、ステップとを含む方法。
【0303】
態様8.前記マウスが、NSG、NSG-IL-6またはNSG-CSF-1マウスである、態様1~7のいずれか一態様に記載の方法。
【0304】
態様9.前記マウスが、NSGマウスである、態様1~8のいずれか一態様に記載の方法。
【0305】
態様10.前記マウスが、100cGyのX線を照射される、態様1~9のいずれか一態様に記載の方法。
【0306】
態様11.前記生着ステップが、2×107個のPBMCで行われる、態様1~5および8~10のいずれか一態様に記載の方法。
【0307】
態様12.前記投与ステップが、生着させてから6日後に行われる、態様1~11のいずれか一態様に記載の方法。
【0308】
態様13.前記複数のサイトカインが、IL-2、IL-4、IL-6およびTNFをさらに含む、態様1~12のいずれか一態様に記載の方法。
【0309】
態様14.複数のサイトカインの血中濃度が、前記免疫調節薬または免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与の2~6時間後に決定される、態様1~13のいずれか一態様に記載の方法。
【0310】
態様15.複数のサイトカインの血中濃度が、前記免疫調節薬または免疫調節薬の前記組み合わせ物の投与の6時間後に決定される、態様1~14のいずれか一態様に記載の方法。
【0311】
態様16.前記免疫調節薬が、抗CD28モノクローナル抗体(mAb)、抗CD3 mAb、抗CD20 mAb、抗CD52 mAb;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);インターフェロン;イミキモド;サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;タリモジーンラハーパレプベック;アダリムマブ、カツマキソマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ-I131、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、デノスマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ダラツムマブ、セリチニブ、エロツズマブおよび抗胸腺細胞グロブリンからなる群から選択される、態様1~15のいずれか一態様に記載の方法。
【0312】
態様17.前記抗CD28 mAbが、TGN1412である、態様16に記載の方法。
【0313】
態様18.前記抗CD3 mAbが、OKT3である、態様16に記載の方法。
【0314】
態様19.前記抗C20 mAbが、リツキシマブである、態様16に記載の方法。
【0315】
態様20.前記抗CD52 mAbが、アレムツズマブである、態様16に記載の方法。
【0316】
態様21.前記第1の免疫調節薬および前記第2の免疫調節薬が、抗CD28モノクローナル抗体(mAb)、抗CD3 mAb、抗CD20 mAb、抗CD52 mAb;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);インターフェロン;イミキモド;サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド)、アプレミラスト;アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、静脈内免疫グロブリン、メトトレキセート、ミトキサントロン;タリモジーンラハーパレプベック;アダリムマブ、カツマキソマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ-I131、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、デノスマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ)、デュルバルマブ、ダラツムマブ、セリチニブ、エロツズマブおよび抗胸腺細胞グロブリンからなる群から独立して選択される、態様3~4および5~15のいずれか一態様に記載の方法。
【0317】
態様22.前記第1の免疫調節薬が、ペムブロリズマブまたはニボルマブであり、前記第2の免疫調節薬が、レナリドミド、ポマリドミド、エパカドスタット、タリモジーンラハーパレプベック、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、セリチニブ、ダラツムマブまたはデュルバルマブである、態様3~4、5~15および21のいずれか一態様に記載の方法。
【0318】
態様22.前記第1の免疫調節薬が、イピリムマブであり、前記第2の免疫調節薬が、レナリドミド、ポマリドミド、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、セリチニブ、ダラツムマブまたはデュルバルマブである、態様3~4、5~15および21のいずれか一態様に記載の方法。
【0319】
態様23.前記第1の免疫調節薬が、アテゾリズマブ、アベルマブまたはデュルバルマブであり、前記第2の免疫調節薬が、レナリドミド、ポマリドミド、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、リツキシマブ、セリチニブ、ダラツムマブまたはアレムツズマブである、態様3~4、5~15および21のいずれか一態様に記載の方法。
【0320】
態様24.前記抗CD52 mAbが、アレムツズマブであり、前記抗C20 mAbが、リツキシマブであり、前記抗CD3 mAbが、OKT3であり、または前記抗CD28 mAbが、TGN1412である、態様3~4、5~15および21のいずれか一態様に記載の方法。
【0321】
態様25.前記生着ステップ(b)が、5×107個のPBMCで行われる、態様6または7に記載の方法。
【0322】
本明細書で言及されているいずれかの刊行物または参考文献は、本発明が属する技術分野の当業者の水準を示す。本明細書におけるあらゆる特許、刊行物および/または参考文献は、あたかも個々の刊行物のそれぞれが、その全体が参照により組み込まれたと特にかつ個々に示されているのと同じ程度まで、参照により組み込む。
【0323】
例の実施形態が、ヒトにおいて許容し難く高度なサイトカイン応答を誘発することなく免疫調節薬をヒトに投与することができるか決定するためのヒト化免疫抑制マウスの使用に関して本明細書に記載されているが、本方法を、様々な哺乳動物および/もしくは薬物と共に使用することができる、ならびに/またはヒト以外の哺乳動物の処置に使用することができることを理解されたい。したがって、本発明は、本実施例に限定されない。本明細書に提供されている教示を考慮して、当業者は、本発明が使用され得る他の適用を認識するであろう。よって、当業者は、他の適用において本発明の方法を使用することができるであろう。したがって、このような代替使用は、本発明の一部であることが意図されている。
【0324】
前述の明細書において、本発明は、その特定の実施形態を参照しつつ記載されてきた。しかし、本発明のより広い精神および範囲から逸脱することなく、そこに様々な修正および変更を為すことができることが明らかであろう。したがって、かかる変更および修正が、本明細書に添付されている特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲内に収まることが意図される。したがって、本明細書および図面は、制限的ではなく説明的な意味で考慮するべきである。