(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】照射パラメータ選択装置及びその使用方法、該装置を含む制御システム及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 H
(21)【出願番号】P 2022518985
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 CN2020117285
(87)【国際公開番号】W WO2021057828
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】201910908146.9
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910908127.6
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910908121.9
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520417207
【氏名又は名称】中硼(厦▲門▼)医▲療▼器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Therapy System Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2060 Wengjiao West Road, Haicang District Xiamen, Fujian Provance, 361026 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼渊豪
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-501694(JP,A)
【文献】特開2011-182868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N5/00-5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子ビームの照射パラメータ選択装置であって、照射パラメータは、照射点及び照射角度を含み、照射パラメータ選択装置は、
複数組の照射点及び照射角度を選択するサンプリング部であって、前記照射点及び照射角度の選択は、順方向選択又は逆方向選択のいずれかであり、順方向選択では、照射点を人体外の位置に決定し、一定の角度又は距離間隔で順にサンプリングするか、又はランダムサンプリングの方式でサンプリングし、逆方向選択では、照射点を腫瘍の範囲内に決定し、照射点が腫瘍の重心又は最奥であり、照射角度をランダムにサンプリングするか又は所定の間隔角度でサンプリングし、中性子ビームの角度が照射点から腫瘍の重心又は腫瘍の最奥までのベクトル方向に設定される、サンプリング部と、
各組の照射点及び照射角度に対応する評価値を算出する計算部であって、前記計算部は、中性子ビームが器官を透過した軌跡を計算し、即ち、中性子ビームが人体に入った後に透過した器官の種類及びその厚さを算出し、中性子ビームが人体を透過した軌跡情報を取得した後、腫瘍が最大の治療可能デプス範囲内にあるか否かを判断し、
腫瘍が最大の治療可能デプス範囲内にあれば、この軌跡情報を根拠としてユーザが設定した器官ホウ素含有濃度、器官放射感度係数及び中性子ビーム特性の情報に合わせて該照射点及び照射角度に対応する評価値を計算し、
腫瘍が最大の治療可能デプス範囲内でなければ、最悪の評価値を与え、評価値の計算を完成した後、照射点、照射角度及び対応する評価値を記録する、計算部と、
計算部により算出された評価値に基づいて、評価値の算出された全ての照射点及び照射角度から1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択する最適選択部とを含み、
前記最適選択部は、前記計算部が各組の照射点及び照射角度に対応する評価値を算出する前に、サンプリングされた全ての照射点及び照射角度から、実際の照射過程において実施不可能な照射点及び照射角度を取り除く、ことを特徴とする中性子ビームの照射パラメータ選択装置。
【請求項2】
前記計算部は、中性子ビームが患者に入った後に入射したデプスと、透過した器官の種類とを算出し、次に中性子ビームが人体を透過した軌跡情報に基づいて腫瘍が該組の照射点及び照射角度に対応する最大の治療可能デプス範囲内にあるか否かを判断し、そうであれば、この軌跡情報を根拠としてユーザが設定した器官ホウ素含有濃度、器官放射感度係数及び中性子ビーム特性情報のデータに合わせて該組の照射点及び照射角度に対応する評価値を計算する、ことを特徴とする請求項1に記載の中性子ビームの照射パラメータ選択装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の照射パラメータ選択装置であって、
前記サンプリング部は、患者の
解剖学的な身体構造上の特徴を示す画像を読み取り、各器官、組織及び腫瘍の輪郭を1つずつ定義し、設定された材料種類及び密度を与え、輪郭、材料及び密度の定義を完成した後、中性子ビームの照射点及び照射角度を選択する、ことを特徴とする照射パラメータ選択装置。
【請求項4】
前記最適選択部は、各組の照射点及び照射角度の優劣を順位付けした後、1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を見つけるまで、優劣の順位で各組の照射点及び照射角度が実施可能であるか否かを検証する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の照射パラメータ選択装置。
【請求項5】
前記計算部は、照射点、照射角度及び対応する評価値のデータを3D又は2D画像の形態で出力する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の照射パラメータ選択装置。
【請求項6】
前記最適選択部の最適選択プロセスは、完全に関連装置により自動的に行われてもよく、部分的に人手で行われてもよい、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の照射パラメータ選択装置。
【請求項7】
患者を載置する載置台を含む中性子捕捉療法装置を制御する制御システムであって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の照射パラメータ選択装置と、
実施可能な最適な照射点及び照射角度のパラメータを載置台の移動予定の位置の座標パラメータに変換する変換部と、
載置台を変換部から得られた座標位置に調整する調整部と、を含む、ことを特徴とする制御システム。
【請求項8】
前記変換部は、患者のCT/MRI/PET-CT情報、セットアップ情報、載置台の構造情報に合わせて、実施可能な最適な照射点及び照射角度のパラメータを、照射過程における載置台の移動予定の位置の座標パラメータに変換する、ことを特徴とする請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
照射パラメータ選択装置によって、実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択するステップと、
変換部によって、実施可能な最適な照射点及び照射角度のパラメータを載置台の移動予定の位置の座標パラメータに変換するステップと、
調整部によって、載置台を変換部から得られた座標位置に調整するステップとを含む、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の制御システムの使用方法。
【請求項10】
前記照射パラメータ選択装置の使用方法は、まず、サンプリング部によって、複数組の照射点及び照射角度を選択し、続いて、最適選択部は、サンプリングされた全ての照射点及び照射角度から、実際の照射過程において実施不可能な照射点及び照射角度を取り除き、さらに、計算部によって、実施不可能な照射点及び照射角度を取り除いた後のサンプリングされた各組の照射点及び照射角度に対応する評価値を算出し、次に、最適選択部によって、計算部により算出された評価値に基づいて、各組の照射点及び照射角度から1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択することである、ことを特徴とする請求項9に記載の制御システムの使用方法。
【請求項11】
前記計算部は、各組の照射点、照射角度及びそれらの対応する評価値のデータを3D又は2D画像の形態で出力する、ことを特徴とする請求項10に記載の制御システムの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線療法の分野に関し、特に照射パラメータ選択装置及びその使用方法、該装置を含む制御システム及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、コバルト60、線形加速器、電子ビーム等の放射線療法は、すでにがん治療の主な手段の一つとなった。しかし、従来の光子又は電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路上の数多くの正常組織に損傷を与える。また、腫瘍細胞により放射線に対する感受性の度合いが異なっており、従来の放射線療法では、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例えば、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果が良くない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織の放射線損傷を軽減するすために、化学療法(chemotherapy)における標的療法が、放射線療法に用いられている。また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では生物学的効果比(relative biological effectiveness、RBE)の高い放射線源が積極的に開発されている(例えば、陽子線治療、重粒子治療、中性子捕捉療法等)。このうち、中性子捕捉療法は、上記の2つの構想を結びつけたものである。例えば、ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、BNCT)では、ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度な中性子ビームの制御と合わせることで、従来の放射線と比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素(10B)含有薬剤が熱中性子に対して大きい捕獲断面積を持つ特性を利用し、10B(n,α)7Li中性子捕捉と核分裂反応により、4Heと7Liという2種の重荷電粒子を生成する。2種の粒子の総放射距離が約1つの細胞のサイズに近いので、生体への放射線損傷を細胞レベルに限定することができ、ホウ素含有薬物を腫瘍細胞に選択的に集めると、適切な中性子源と合わせることで、正常組織に大きな損傷を与えないで腫瘍細胞を部分的に殺せる目的を達成することができる。
【0005】
従来の中性子捕捉療法計画システムにおいて、その照射幾何学的角度は、いずれも人手で経験に基づいて判断されて定義される。人体の構造が非常に複雑であり、様々な組織又は器官の放射に対する感度も大きく異なるため、単に人手で判断すると、より良好な照射角度が見落されて、治療効果を大きく低減する可能性がある。技術の発展に伴い、ソフトウェアを用いて複数の異なる照射角度の評価値を計算し、評価値に応じて最適な照射点及び照射角度を選択し始めているが、ソフトウェアの計算結果により選択された最適な照射点及び照射角度は、理論的に最適なものであり、実際の操作過程において実施不可能である可能性があり、治療効果の最適化及び治療計画の実施可能性を達成するために、ビームの照射点及び照射角度の選択をさらに最適化する必要がある。
【0006】
したがって、実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択する照射パラメータ選択装置を提供する必要がある。
【0007】
また、中性子捕捉療法を行う前に、ビームの実施可能な最適な照射点及び照射角度を見つけ、次に、患者を載置する載置台を照射室内に移動して、載置台及び患者のセットアップによりビームを予め見つけ出された実施可能な最適な照射点及び照射角度で照射できるまで位置を調整する。この過程は、煩雑で、時間がかかり、中性子捕捉療法装置の使用効率を低下させ、そしてセットアップを長時間連続して調整すると、患者が耐えにくく、操作者も疲れている。セットアップ時間を減少させ、装置の使用効率を向上させるために、載置台のセットアップ過程をさらに最適化する必要がある。
【0008】
したがって、載置台を迅速に所定の位置に調整することを実現できる方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
従来技術の欠陥を克服するために、本願の一態様に係る、照射点及び照射角度を含む実施可能な最適な照射パラメータを選択できる照射パラメータ選択装置は、複数組の照射点及び照射角度を選択するサンプリング部と、各組の照射点及び照射角度に対応する評価値を算出する計算部と、計算部により算出された評価値に基づいて、サンプリングされた全ての照射点及び照射角度から1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択する最適選択部と、を含む。
【0010】
更に、前記計算部は、中性子ビームが患者に入った後に入射したデプスと、透過した器官の種類とを算出し、次に中性子ビームが人体を透過した軌跡情報に基づいて腫瘍が該組の照射点及び照射角度に対応する最大の治療可能デプス範囲内にあるか否かを判断し、そうであれば、この軌跡情報を根拠としてユーザが設定した器官ホウ素含有濃度、器官放射感度係数及び中性子ビーム特性情報等のデータに合わせて該組の照射点及び照射角度に対応する評価値を計算する。
【0011】
更に、前記最適選択部は、サンプリングされた全ての照射点及び照射角度から、実際の照射過程において実施不可能な照射点及び照射角度を取り除き、1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択する。
【0012】
本願の別の態様に係る上記照射パラメータ選択装置の使用方法は、サンプリング部によって、患者の例えばCT又はMRI又はPET-CT等の明確な人体解剖が有する映像を読み取り、各器官、組織及び腫瘍の輪郭を1つずつ定義し、設定された材料種類及び密度を与え、輪郭、材料及び密度の定義を完成した後、中性子ビームの照射点及び照射角度を選択するステップと、計算部によって、中性子ビームが器官を透過した軌跡を計算し、即ち、中性子ビームが人体に入った後に透過した器官の種類及びその厚さを算出し、中性子ビームが人体を透過した軌跡情報を取得した後、腫瘍が最大の治療可能デプス範囲内にあるか否かを判断し、そうであれば、この軌跡情報を根拠としてユーザが設定した器官ホウ素含有濃度、器官放射感度係数及び中性子ビーム特性等の情報に合わせて該照射点及び照射角度に対応する評価値を計算し、そうでなければ、最悪の評価値を与え、評価値の計算を完成した後、照射点、照射角度及び対応する評価値を記録するステップと、最適選択部によって、サンプリングされた全ての照射パラメータから1組の実施可能な最適な照射パラメータを選択するステップと、を含む。
【0013】
更に、前記照射点及び照射角度の選択は、順方向選択又は逆方向選択であってもよく、順方向選択では、照射点を人体外の位置に決定し、一定の角度又は距離間隔で順にサンプリングしてもよく、ランダムサンプリングの方式でサンプリングしてもよく、逆方向選択では、照射点を腫瘍の範囲内に決定し、照射点が腫瘍の重心又は最奥であってもよく、照射角度をランダムにサンプリングするか又は所定の間隔角度でサンプリングしてもよく、中性子ビームの角度が照射点から腫瘍の重心又は腫瘍の最奥までのベクトル方向に設定されてもよい。
【0014】
更に、前記最適選択部は、各組の照射点及び照射角度の優劣を順位付けした後、1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を見つけるまで、優劣の順位で各組の照射点及び照射角度が実施可能であるか否かを検証する。
【0015】
更に、評価値を計算した後、前記最適選択部は、まず、全ての実施不可能な照射点及び照射角度を見つけ、次に、これらの実施不可能な照射点及び照射角度を取り除き、最後に、残りの照射点及び照射角度から最適な1組を選択する。
【0016】
更に、前記最適選択部は、評価値を計算する前に、実施不可能な照射点及び照射角度を予め取り除き、計算を完成した後に最適な1組を選択する。
【0017】
更に、前記計算部は、照射点、照射角度及び対応する評価値のデータを3D又は2D画像の形態で出力する。
【0018】
更に、前記最適選択部の最適選択プロセスは、完全に関連装置により自動的に行われてもよく、部分的に人手で行われてもよい。
【0019】
本願の第3の態様に係る、患者を載置する載置台を含む中性子捕捉療法装置を制御し、載置台を所定の位置に迅速に調整することができる制御システムは、実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択する照射パラメータ選択装置と、実施可能な最適な照射点及び照射角度のパラメータを載置台の移動予定の位置の座標パラメータに変換する変換部と、載置台を変換部から得られた座標位置に調整する調整部と、を含む。
【0020】
更に、前記照射パラメータ選択装置は、複数組の照射点及び照射角度を選択するサンプリング部と、各組の照射点及び照射角度に対応する評価値を計算する計算部と、計算部により算出された評価値に基づいて、サンプリングされた全ての照射点及び照射角度から1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択する最適選択部と、を含む。
【0021】
更に、前記変換部は、患者のCT/MRI/PET-CT情報、セットアップ情報、載置台の構造情報等に合わせて、実施可能な最適な照射点及び照射角度のパラメータを、照射過程における載置台の移動予定の位置の座標パラメータに変換する。
【0022】
本願の第4の態様に係る上記制御システムの使用方法は、照射パラメータ選択装置によって、実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択するステップと、変換部によって、実施可能な最適な照射点及び照射角度のパラメータを載置台の移動予定の位置の座標パラメータに変換するステップと、調整部によって、載置台を変換部から得られた座標位置に調整するステップと、を含む。
【0023】
更に、前記照射パラメータ選択装置は、サンプリング部、計算部及び最適選択部を含み、前記照射パラメータ選択装置の使用方法は、まず、サンプリング部によって、複数組の照射点及び照射角度を選択し、続いて、計算部によって、各組の照射点及び照射角度に対応する評価値を算出し、次に、最適選択部によって、計算部により算出された評価値に基づいて、サンプリングされた全ての照射点及び照射角度から1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択することである。
【0024】
更に、前記中性子捕捉療法装置は、中性子ビームで患者を照射することで治療を実現し、前記サンプリング部は、患者のCT/MRI/PET-CT等の明確な人体解剖が有する映像を読み取り、各器官、組織及び腫瘍の輪郭を1つずつ定義し、設定された材料種類及び密度を与え、輪郭、材料及び密度の定義を完成した後、複数組の中性子ビームの照射点及び照射角度を選択する。
【0025】
更に、前記計算部は、中性子ビームが患者の器官を透過した軌跡を計算し、即ち、中性子ビームが人体に入った後に透過した器官の種類及びその厚さを算出し、中性子ビームが人体を透過した軌跡情報を取得した後、腫瘍が最大の治療可能デプス範囲内にあるか否かを判断し、そうであれば、この軌跡情報を根拠としてユーザが設定した器官ホウ素含有濃度、器官放射感度係数及び中性子ビーム特性等の情報に合わせて該照射点及び照射角度に対応する評価値を計算し、そうでなければ、最悪の評価値を与え、評価値の計算を完成した後、各組の照射点及び照射角度並びにその対応する評価値を記録する。
【0026】
更に、前記計算部は、各組の照射点、照射角度及びそれらの対応する評価値のデータを3D又は2D画像の形態で出力する。
【0027】
更に、前記最適選択部は、各組の照射点及び照射角度の優劣を順位付けした後、1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を見つけるまで、優劣の順位で各組の照射点及び照射角度が実施可能であるか否かを検証する。
【0028】
更に、前記最適選択部は、まず、全ての実施不可能な照射点及び照射角度を見つけ、次に、これらの実施不可能な照射点及び照射角度を取り除き、最後に、残りの照射点及び照射角度から最適な1組を選択する。
【0029】
本願の第5の態様に係る、照射点及び照射角度の優劣の判断を実行することができる中性子捕捉療法装置は、中性子ビーム生成アセンブリと、被照射体に中性子ビームを照射する照射室と、照射制御を実施する管理室と、患者を載置する載置台と、治療プロセスを制御し、管理する制御システムとを含み、前記制御システムは、最適な照射点及び照射角度を選択する照射パラメータ選択装置と、前記照射パラメータ選択装置は、複数の照射点及び照射角度を選択するサンプリング部と、各組の照射点及び照射角度に対応する評価値を算出してレポートを出力する計算部と、を含む。
【0030】
更に、前記計算部は、中性子ビームが患者に入った後に入射したデプスと、透過した器官の種類とを算出し、次に中性子ビームが人体を透過した軌跡情報に基づいて腫瘍が該組の照射点及び照射角度に対応する最大の治療可能デプス範囲内にあるか否かを判断し、そうであれば、この軌跡情報を根拠としてユーザが設定した器官ホウ素含有濃度、器官放射感度係数及び中性子ビーム特性情報等のデータに合わせて該組の照射点及び照射角度に対応する評価値を計算し、そうでなければ、最悪の評価値を与える。
【0031】
更に、前記計算部は、照射点、照射角度及びそれらの対応する評価値のデータを3D又は2D画像の形態で出力する。
【0032】
更に、対応するある照射点、照射角度及び照射軌跡において、式1を用いて器官iの重み係数(W(i))を計算する。
【0033】
【数1】
式中、I(i)、S(i)及びC(i)は、それぞれ中性子強度、器官iの放射感度係数及び器官iのホウ素含有濃度である。
【0034】
更に、使用されたビームを基づいて人体をシミュレートする場合の深部強度又は線量曲線の積分の式2を用いて前記I(i)を計算する。
【0035】
【数2】
式中、i(x)は、人体に近似する場合の治療用ビームの深部強度又は線量曲線の関数であり、x0-xは、器官(i)のビーム軌跡におけるデプス範囲である。
【0036】
更に、式3を用いて前記評価係数を計算する。
【0037】
【数3】
式中、Q(x,y,z,Φ,θ)は、評価係数として器官軌跡における各器官の重み係数の総和に等しい。
【0038】
更に、式4を用いて前記評価係数と腫瘍評価係数との比(QR(x,y,z,Φ,θ))を計算する。
【0039】
【数4】
式中、W(tumor)は、腫瘍の重み係数である。
【0040】
本願の第6の態様に係る上記照射パラメータ選択装置の使用方法は、サンプリング部によって、患者の例えばCT又はMRI又はPET-CT等の明確な人体解剖が有する映像を読み取り、各器官、組織及び腫瘍の輪郭を1つずつ定義し、設定された材料種類及び密度を与え、輪郭、材料及び密度の定義を完成した後、中性子ビームの照射点及び照射角度を選択するステップと、計算部によって、中性子ビームが器官を透過した軌跡を計算し、即ち、中性子ビームが人体に入った後に透過した器官の種類及びその厚さを算出し、中性子ビームが人体を透過した軌跡情報を取得した後、腫瘍が最大の治療可能デプス範囲内にあるか否かを判断し、そうであれば、この軌跡情報を根拠としてユーザが設定した器官ホウ素含有濃度、器官放射感度係数及び中性子ビーム特性等の情報に合わせて該照射点及び照射角度に対応する評価値を計算し、そうでなければ、1つの特別の評価値を与え、評価値の計算を完成した後、照射点、照射角度及び対応する評価値を記録するステップと、を含む。
【0041】
更に、前記照射点及び照射角度の選択は、順方向選択又は逆方向選択であってもよく、順方向選択では、照射点を人体外の位置に決定し、一定の角度又は距離間隔で順にサンプリングしてもよく、ランダムサンプリングの方式でサンプリングしてもよく、逆方向選択では、照射点を腫瘍の範囲内に決定し、照射点が腫瘍の重心又は最奥であってもよく、照射角度をランダムにサンプリングするか又は所定の間隔角度でサンプリングしてもよく、中性子ビームの角度が照射点から腫瘍の重心又は腫瘍の最奥までのベクトル方向に設定されてもよい。
【0042】
更に、前記計算部は、照射点、照射角度及びそれらの対応する評価値のデータを3D又は2D画像の形態で出力する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図2】
10B(n,α)
7Li中性子捕捉核反応式である。
【
図3】本発明の実施例における中性子捕捉療法装置の概略図である。
【
図4】本発明の実施例における制御システムの概略図である。
【
図5】本発明の実施例における中性子ビームの照射パラメータの評価値の計算論理ブロック図である。
【
図6】本発明の実施例における中性子ビーム照射時の器官軌跡の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を更に詳細に説明することにより、当業者は明細書の文字を参照して実施することができる。
【0045】
中性子捕捉療法は、がん治療の有効な手段として、近年の応用が増えてきており、ホウ素中性子捕捉療法は最も一般的であり、ホウ素中性子捕捉療法に用いられる中性子は、原子炉又は加速器から供給することができる。ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、BNCT)は、ホウ素(
10B)含有薬剤が熱中性子に対して大きい捕獲断面積を持つ特性を利用して、
10B(n,α)
7Li中性子捕捉と核分裂反応により、
4Heと
7Liという2種の重荷電粒子を生成する。
図1及び
図2を参照して、それぞれホウ素中性子捕捉反応の概略図及び
10B(n,α)
7Li中性子捕捉核反応式を示し、2種の重荷電粒子の平均エネルギーは約2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)及び短い放射距離という特性を有し、α粒子の線エネルギーと放射距離は、それぞれ150keV/μm、8μmであり、
7Li重荷電粒子は、175keV/μm、5μmであり、2種の粒子の総放射距離は、約1つの細胞のサイズに近いので、生体への放射線損傷を細胞レベルに限定することができるホウ素含有薬物を腫瘍細胞に選択的に集めると、適切な中性子源と合わせることで、正常組織に大きな損傷を与えないで、腫瘍細胞を正確に殺せる目的を達成することができる。
【0046】
ホウ素中性子捕捉療法の中性子源が原子炉又は荷電粒子とターゲットとの原子核反応によるものに係わらず、生成するのはすべて混合放射線場であり、即ちビームは、低エネルギーから高エネルギーまでの中性子、光子を含み、深部腫瘍のホウ素中性子捕捉療法に対して、熱外中性子を除くその他の放射線の含有量が多ければ多いほど、正常組織での非選択的線量沈着の割合も大きくなるので、これらの不必要な線量を引き起こす放射線をできる限り低減する必要がある。エアビームの品質要素の他、中性子による人体における線量分布をさらに理解するために、本発明の実施例は、人間の頭部組織の人工器官を用いて線量を計算し、そして人工器官におけるビームの品質要素を中性子ビーム設計の参考とする。
【0047】
国際原子力機構(IAEA)は、臨床ホウ素中性子捕捉療法に用いられる中性子源に対して、エアビームの品質要素に関する5提案を出しており、この5提案は異なる中性子源の長所と短所を比較するために利用できる他、中性子生成経路の選定及びビーム整形体の設計をする時の参考として利用できる。この5提案はそれぞれ以下のとおりである。
熱外中性子束Epithermal neutron flux>1×109n/cm2s
高速中性子汚染Fast neutron contamination<2×10-13Gy-cm2/n
光子汚染Photon contamination<2×10-13Gy-cm2/n
熱中性子束と熱外中性子束との比thermal to epithermal neutron flux ratio<0.05
中性子流とフラックスとの比epithermal neutron current to flux ratio>0.7
注:熱外中性子エネルギー領域は0.5eV~40keVであり、熱中性子エネルギー領域は0.5eVより小さく、高速中性子エネルギー領域は40keVより大きい。
【0048】
1、熱外中性子束:
中性子束と腫瘍におけるホウ素含有薬物の濃度と共同に臨床治療の時間が決まる。腫瘍におけるホウ素含有薬物の濃度が十分に高ければ、中性子束への要求が低下する。逆に、腫瘍におけるホウ素含有薬物の濃度が低ければ、高フラックスの熱外中性子で腫瘍に十分な線量を与える必要がある。IAEAは、熱外中性子束に対して、平方センチメートル当たり1秒の熱外中性子が109個より多いことを求めていて、既存のホウ素含有薬物にとって、このフラックスでの中性子ビームで治療時間を大体1時間以内に抑えられ、短い治療時間は、患者の位置決めと快適さに対して優れている他、腫瘍におけるホウ素含有薬物の限られた滞留時間も効果的に利用できる。
【0049】
2、高速中性子汚染:
高速中性子は、正常組織への不必要な線量を引き起こすので、汚染とみなされて、この線量と中性子エネルギーとは、正の相関関係があるので、中性子ビームの設計において、できる限り高速中性子の含有量を減らす必要がある。高速中性子汚染は、単位熱外中性子束に伴う高速中性子の線量と定義される。IAEAは、高速中性子汚染を2×10-13Gy-cm2/nより小さくすることを推奨している。
【0050】
3、光子汚染(γ線汚染):
γ線は強い透過性の放射線に属し、非選択的にビーム経路にあるすべての組織で線量沈着を引き起こすので、γ線の含有量を減らすこともビームの設計の必要条件である。γ線汚染は、単位熱外中性子束に伴うγ線の線量と定義される。IAEAは、γ線汚染を2×10-13Gy-cm2/nより小さくすることを推奨している。
【0051】
4、熱中性子束と熱外中性子束との比:
熱中性子は、減衰速度が速く、透過性も弱く、人体に入った後で大部分のエネルギーが皮膚組織に沈着するので、黒色腫等の皮膚腫瘍にホウ素中性子捕捉療法の中性子源として熱中性子を使用する場合以外、例えば脳腫瘍等の深部腫瘍に対して、熱中性子の含有量を減らす必要がある。IAEAは、熱中性子束と熱外中性子束との比を0.05より小さくすることを推奨している。
【0052】
5、中性子流とフラックスとの比:
中性子流とフラックスとの比は、ビームの方向性を示し、その比が大きいほど、ビームの前向性が優れて、高い前向性を持つ中性子ビームは、中性子の発散による周辺の正常組織への線量を減らせる他、治療可能デプス及びセットアップ姿勢の柔軟性を向上させることができる。IAEAは、中性子流とフラックスとの比を0.7より大きくすることを推奨している。
【0053】
人工器官を利用して組織内の線量分布を取得され、正常組織及び腫瘍の線量-デプス曲線により、人工器官におけるビーム品質要素が導き出される。以下の3つのパラメータは異なる中性子ビーム療法の治療効果の比較に利用できる。
【0054】
1、有効治療デプス:
腫瘍線量は最大正常組織線量のデプスと等しくて、このデプスより後ろでは、腫瘍細胞が受ける線量は最大正常組織線量より小さくて、つまり、ホウ素中性子捕捉上の優位性がなくなる。このパラメータはビームの透過性を示し、有効治療デプスが大きいほど、治療可能な腫瘍のデプスが深くなり、単位はcmである。
【0055】
2、有効治療デプスの線量率:
即ち、有効治療デプスにおける腫瘍線量率であり、最大正常組織線量率と等しい。正常組織で受け取る総線量は、与えられ得る腫瘍総線量に影響する要因であるので、このパラメータが治療時間の長さを影響して、有効治療デプスの線量率が大きいほど、腫瘍に一定の線量を与える必要な照射時間が短くなる。単位はGy/mA-minである。
【0056】
3、有効治療線量比:
脳表面から有効治療デプスまでに、腫瘍と正常組織とが受け取る平均線量の比は、有効治療線量比と呼ばれる。平均線量は、線量-デプス曲線の積分により算出できる。有効治療線量比が大きいほど、当該ビームの治療効果がよくなる。
【0057】
ビーム整形体の設計における比較根拠として、IAEAによるエアビームの品質要素の5提案、及び上記の3つのパラメータの他に、本発明の実施例では、ビーム線量のパフォーマンスの優劣を評価するための以下のパラメータを利用する。
1、照射時間≦30min(加速器で使用する陽子流は10mA)
2、30.0RBE-Gy治療可能デプス≧7cm
3、最大腫瘍線量≧60.0RBE-Gy
4、最大正常脳組織線量≦12.5RBE-Gy
5、最大皮膚線量≦11.0RBE-Gy
注:RBE(Relative Biological Effectiveness)は生物学的効果比であり、光子及び中性子による生物学的効果が異なるため、上記の線量にそれぞれ異なる組織の生物学的効果比を掛けて、等価線量を算出する。
【0058】
図3に示すように、中性子捕捉療法を実現する中性子捕捉療法装置100は、中性子ビーム生成アセンブリ1と、被照射体、例えば、患者に中性子ビームを照射する照射室2と、照射前の準備作業を行う準備室3と、照射室2と準備室3とを連通させる連絡室4と、照射制御を実施する管理室5と、患者を位置決めする位置決め装置(図示せず)と、患者を載置し、準備室3及び照射室2内を移動する載置台6と、治療プロセスを制御し、管理する制御システム7と、を備える。
【0059】
中性子ビーム生成アセンブリ1は、照射室2外に中性子ビームを生成し、照射室2内の患者に中性子ビームを照射することができるように構成され、照射室2内にコリメータ20が設置される。準備室3は、患者に中性子ビームを照射する前に必要な準備の作業を実施するための部屋であり、準備室3内に模擬コリメータ30が設置され、準備作業は、患者を載置台6に固定することと、患者の腫瘍を定位すると共に3次元定位マークをつけることと等を含む。管理室5は、ホウ素中性子捕捉療法装置100の実施する全体的な治療工程を管理し、制御する部屋であり、例えば、管理者は、管理室5の室内で準備室3中の準備作業の状況を肉眼で確認し、制御システム7を操作して中性子ビームの照射の開始、停止、載置台6の位置調整等を制御し、載置台6は、患者を支えて患者と共に回転、平行移動及び昇降運動を行う。上記制御システム7は、本明細書において単に総称であり、1セットの全体的な制御システムであってもよく、即ち中性子ビームの照射の開始、停止、載置台6の位置調整等は、いずれも1セットのシステム制御によって制御され、複数セットの制御システムであってもよく、即ち中性子ビームの照射の開始、停止、載置台6の位置調整等は、それぞれ1セットの制御システムによって制御される。
【0060】
図4に示すように、ホウ素中性子捕捉療法を行う前に、管理者は、中性子ビームがどの角度から患者を照射すれば腫瘍細胞を最大限に死滅させ、放射線の周囲の正常組織に対する損傷をできるだけ低減するかを明確にし、最適な照射点及び照射角度を決定した後に患者を載置する載置台6を対応する位置に調整する必要がある。具体的には、制御システム7は、実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択する照射パラメータ選択装置71と、実施可能な最適な照射点及び照射角度のパラメータを載置台6の座標パラメータに変換する変換部72と、載置台6を変換部72から得られた座標位置に調整する調整部73と、中性子ビームの照射の開始、停止を制御する開始停止部74と、を含む。
【0061】
続いて
図4に示すように、各組の照射パラメータは、中性子ビームの照射点及び照射角度を含み、照射パラメータ選択装置71は、サンプリング部711、計算部712及び最適選択部713を含み、まず、サンプリング部711によって、複数組の照射点及び照射角度を選択し、続いて、計算部712によって、各組の照射点及び照射角度に対応する評価値を算出し、次に、最適選択部713によって、計算部712により算出された評価値に基づいて、サンプリングされた全ての照射点及び照射角度から1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を選択し、具体的には、最適選択部713は、実際の治療過程における実施不可能な照射パラメータを取り除き、1組の実施可能な最適な照射パラメータを選択する。サンプリング部711による照射点及び照射角度に対する選択は、ランダムであってもよく、規則的であってもよく、評価値の計算では、中性子ビームが患者の器官を透過する軌跡を計算し、即ち、計算部712は、中性子ビームが人体に入った後に入射したデプスと、透過した器官の種類とを算出し、次に中性子ビームが人体を透過した軌跡情報に基づいて腫瘍が該組の照射パラメータに対応する最大の治療可能デプス範囲内にあるか否かを判断し、そうであれば、この軌跡情報を根拠としてユーザが設定した器官ホウ素含有濃度、器官放射感度係数及び中性子ビーム特性情報等のデータに合わせて該組の照射点及び照射角度に対応する評価値を計算し、そうでなければ、該照射点及び照射角度に特別な評価値を与え、中性子ビームの照射点及び照射角度のサンプリング、計算を改めて行う。複数組の照射点及び照射角度に対応する評価値を計算した後、評価値に基づいて各組の照射点及び照射角度の優劣を直感的に順位付けすることができる。コリメータ20の位置が固定され、照射室2内に位置決め装置等の装置が設置されるため、患者のあるセットアップが実現できなく、治療ベッドのある運動位置が干渉される状況が存在し、また、患者のある部位、例えば目等の器官が照射されないため、ある照射点及び照射角度で照射を実施できず、実際の治療過程において、最適選択部713は、これらの実施できない照射点及び照射角度を取り除く必要がある。
【0062】
図5、
図6を参照して、以下、照射パラメータ選択装置71の使用方法について詳細に説明し、該方法は、以下のステップを含む。サンプリング部711によって、患者のCT/MRI/PET-CT等の明確な人体解剖が有する映像を読み取り、各器官、組織及び腫瘍の輪郭を1つずつ定義し、設定された材料種類及び密度を与え、輪郭、材料及び密度の定義を完成した後、中性子ビームの照射点及び照射角度を選択し、照射点及び照射角度の選択は、順方向選択又は逆方向選択であってもよく、順方向選択では、照射点を人体外の位置に決定し、一定の角度又は距離間隔で順にサンプリングしてもよく、ランダムサンプリングの方式でサンプリングしてもよく、中性子ビームの角度が照射点から腫瘍の重心又は腫瘍の最奥までのベクトル方向に設定されてもよく、逆方向選択では、照射点を腫瘍の範囲内に決定し、照射点が腫瘍の重心又は最奥であってもよく、中性子ビーム角度をランダムにサンプリングするか又は所定の間隔角度でサンプリングしてもよい。中性子ビームの照射点及び照射角度を決定した後、計算部712によって、中性子ビームが器官を透過した軌跡を計算し、即ち、中性子ビームが人体に入った後に透過した器官の種類及びその厚さを算出し、中性子ビームが人体を透過した軌跡情報を取得した後、腫瘍が最大の治療可能デプス範囲内にあるか否かを判断し、そうであれば、この軌跡情報を根拠としてユーザが設定した器官ホウ素含有濃度、器官放射感度係数及び中性子ビーム特性等の情報に合わせて該照射点及び照射角度に対応する評価値を計算し、そうでなければ、1つの特別の評価値を与え、中性子ビームの照射点及び照射角度のサンプリングを改めて行い、評価値の計算を完成した後、照射点、照射角度及び対応する評価値を記録する。上記サンプリング及び計算を繰り返して一定の数量に達した後、レポートを出力する。最適選択部713によって、サンプリングされた全ての照射パラメータから1組の実施可能な最適な照射パラメータを選択する。計算部712は、照射点、照射角度及びそれらの対応する評価値のデータを3D又は2D画像の形態で出力してもよく、この場合、医師又は物理学者は、照射点、照射角度の優劣をより直感的に判断することができる。
【0063】
好ましくは、最適選択部713は、各組の照射点及び照射角度の優劣を順位付けした後、1組の実施可能な最適な照射点及び照射角度を見つけるまで、優劣の優劣で各組の照射点及び照射角度が実施可能であるか否かを検証する。当然のことながら、最適選択部713は、評価値を計算した後、まず、全ての実施不可能な照射点及び照射角度を見つけ、次に、これらの実施不可能な照射点及び照射角度を取り除き、最後に、残りの照射点及び照射角度から最適な1組を選択して中性子捕捉療法を実施してもよい。最適選択部713は、評価値を計算する前に、実施不可能な照射点及び照射角度を予め取り除き、計算を完成した後に最適な1組の照射点及び照射角度を選択して中性子捕捉療法を行ってもよい。
【0064】
最適選択プロセスは、完全に関連装置により自動的に行なってもよく、部分的に人手で行われてもよく、また完全に人手で実行され、即ち最適選択部713を設置しなくてもよく、例えば、実施不可能な照射点及び照射角度は、経験が豊富な医師により羅列されてもよく、関連装置によりシミュレートして決定されてもよく、評価値の優劣を順位付けする動作、実施不可能な照射点及び照射角度を取り除きた後に最適な照射点及び照射角度を選択する動作も同様である。実施可能な最適な照射点及び照射角度を取得した後、変換部72は、患者のCT/MRI/PET-CT情報、セットアップ情報、載置台6の構造情報等に合わせて、該照射点及び照射角度のパラメータを、照射過程における載置台6の移動予定の位置の座標パラメータに変換し、その後に調整部73は、変換部72から取得された座標情報に基づいて載置台6を所定の位置に調整する。調整部73は、載置台6を所定の位置に調整した後、位置決め装置は、中性子ビームの患者の腫瘍に対する照射点及び照射角度が予め選択された実施可能な最適な照射点及び照射角度と同じであるか否かを更に確認し、そうでなければ、人手で患者のセットアップ又は載置台6の位置を調整することにより中性子ビームが最適な照射点及び照射角度で患者の腫瘍を照射することを確保するか、又は調整部73を動かして載置台6の位置を調整して中性子ビームが最適な照射点及び照射角度で患者の腫瘍を照射することを確保する。
【0065】
照射室2内の放射線が照射室2外に散乱することを防止するために、照射室2と連絡室4との間に第1の遮蔽扉21が設置され、連絡室4と準備室3との間に第2の遮蔽扉31が設置される。他の実施形態において、第1の遮蔽扉21及び第2の遮蔽扉31の代わりに迷路が設置される遮蔽壁を採用することができ、前記迷路の形状は、「Z」字状、「弓」字状、「己」字状を含むがこれらに限定されない。
【0066】
以下、計算部712が評価値を計算する具体的な実施例を詳細に説明し、当然のことながら、この実施例に限定されず、他の方法及び式で評価値を計算してもよい。評価値は、中性子ビーム特性、器官放射感度係数及び器官ホウ素含有濃度に基づいて計算され、ある照射点及び照射角度に対応し、器官iの重み係数(W(i))は、式1に示すように計算され、式中、I(i)、S(i)及びC(i)は、それぞれ中性子強度、器官iの放射感度係数及び器官iのホウ素含有濃度である。
【0067】
【数5】
式中、I(i)は、使用された中性子ビームに基づいて人体をシミュレートする場合の深部強度又は線量曲線の積分から取得され、式2に示すように、式中、i(x)は、人体に近似する場合の治療用中性子ビームのデプス強度又は線量曲線の関数であり、x
0-xは、器官iの中性子ビーム軌跡におけるデプス範囲である。
【0068】
【0069】
上記計算方法により、器官軌跡における各器官の重み係数の計算を順に完成した後、その合計を計算すれば、該中性子ビームに対応する評価値を算出することができ、式3に示すように、この計算において、腫瘍の重み係数は計算しないべきである。
【0070】
【0071】
上記評価値の大きさに基づいて、治療時に正常組織が受ける危害程度をより直感的に判断することができる。評価値を利用して照射位置及び角度を評価する以外に、評価比係数を用いて評価してもよく、式4に示すように、評価比係数は、腫瘍の重み係数に対する評価値の比として定義され、このように照射位置及び角度での予想治療効果をより十分に発現することができる。
【0072】
【0073】
上記実施例において、「患者のCT又はMRI又はPET-CT等の明確な人体解剖が有する映像を読み取り、各器官、組織及び腫瘍の輪郭を1つずつ定義し、設定された材料種類及び密度を与える。」等のステップに関わり、本出願人が2015年11月17日に国家知識産権局に渡し、出願番号201510790248.7であり、発明名称が「医用画像データに基づく幾何学的モデルの設定方法」である特許出願を参照することができ、その全ての内容は本明細書に組み込まれるものとする。
【0074】
当業者がよく知られているように、上記式1~式4のいくつかの簡単な変換は、依然として本発明の特許請求の範囲内にあり、例えばI(i)、S(i)及びC(i)について乗算から加算に変換し、I(i)、S(i)及びC(i)はそれぞれn乗を乗算し、nは、状況に応じて決定され、1の整数倍であっても他の倍数であってもよく、i(x)は、x0-xの間の平均数であってもよいか又は中間数が(x0-x)を乗算するものであってもよく、強度積分計算結果との一致を実現することができる任意の計算方法である。
【0075】
以上に本発明の例示的な具体的な実施形態を説明して、当業者が本発明を理解することを容易にするが、明らかに、本発明は具体的な実施形態の範囲に限定されず、当業者にとって、様々な変化が添付の特許請求の範囲で限定かつ決定される本発明の精神及び範囲内にあれば、これらの変化が明らかで、いずれも本発明の特許請求の範囲内にある。