IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナノグラデ アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7437492固体ポリマー組成物、自立フィルム及び発光デバイス
<>
  • 特許-固体ポリマー組成物、自立フィルム及び発光デバイス 図1
  • 特許-固体ポリマー組成物、自立フィルム及び発光デバイス 図2
  • 特許-固体ポリマー組成物、自立フィルム及び発光デバイス 図3
  • 特許-固体ポリマー組成物、自立フィルム及び発光デバイス 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】固体ポリマー組成物、自立フィルム及び発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240215BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240215BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20240215BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20240215BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20240215BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20240215BHJP
   C09K 11/70 20060101ALI20240215BHJP
   C09K 11/74 20060101ALI20240215BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20240215BHJP
   C09K 11/56 20060101ALI20240215BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20240215BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240215BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240215BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08 J
C09K11/66
C09K11/61
C09K11/64
C09K11/62
C09K11/70
C09K11/74
C09K11/88
C09K11/56
C09K11/02 Z
C09K11/08 G
H01L33/00 L
H01L33/50
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022519792
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2021068523
(87)【国際公開番号】W WO2022008451
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】20184584.9
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514211884
【氏名又は名称】アファンタマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ノルマン アルベルト リューヒンガー
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-070444(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086362(WO,A1)
【文献】特表2019-502954(JP,A)
【文献】特表2019-526658(JP,A)
【文献】特開2011-189508(JP,A)
【文献】特開2019-048937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/08
C09K 11/66
C09K 11/61
C09K 11/64
C09K 11/62
C09K 11/70
C09K 11/74
C09K 11/88
C09K 11/56
C09K 11/02
H01L 33/00
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立フィルムであって、
前記自立フィルムは、0.005~10mmの厚さを有し、
- 緑色発光性結晶(1)と、
- 赤色発光性結晶(2)と、
- アクリレートを含むポリマー(3)と、
を含み、前記緑色発光性結晶(1)が、式(I):
[M (I)
(ここで、
は、1又は2種以上の有機カチオンを表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
は、M以外の1又は2種以上の金属を表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選ばれた1又は2種以上のアニオンを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
又はAのいずれか、あるいは、M及びAが存在する。)
の化合物から選ばれたペロブスカイト結晶であり、
前記赤色発光性結晶(2)が、式(II):
[M`][YY`] (II)
(ここで、
、M`は、Al、Ga、Inを表し、
Y、Y`は、N、P、As、Sbを表し、
`、Y`は、存在しても存在していなくてもよく、
又は
、M`は、Zn、Cd、Beを表し、
Y、Y`は、S、Se、Teを表し、
`、Y`は、存在しても存在していなくてもよい。)
の化合物から選択される閃亜鉛鉱型又はウルツ鉱型結晶であり、
の濃度が、5~200mg/mであり、
+M`の濃度が30~250mg/mであり、
前記ポリマー(3)は、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比zを有し、ここでzは0.4以下である、
自立フィルム。
【請求項2】
+M`の濃度が、120~170mg/mである、請求項1に記載の自立フィルム。
【請求項3】
10≦h≦80%のヘイズhを有する、請求項1又は2に記載の自立フィルム。
【請求項4】
金属酸化物粒子及びポリマー粒子からなる群から選ばれた散乱粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項5】
前記自立フィルムが2つのバリア層(4)の間に挟まれている、請求項1~4のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項6】
前記緑色発光性結晶(1)が、式(I’):
FAPbBr (I’)
(ここで、FAはホルムアミジニウムを表す。)
のペロブスカイト結晶である、請求項1~5のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項7】
前記赤色発光性結晶(2)が、コア-シェル型のものであり、
前記コアが、請求項1に規定されるとおりの式(II)のものであり、
前記シェルが、式(III):
Z (III)
(ここで、
は、Zn又はCdを表し、
Zは、S、Se、Teを表す。)
の化合物を含み、
式(III)の化合物と式(II)の化合物とは異なる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項8】
前記赤色発光性結晶(2)が、
InP及びCdSeからなる群から選ばれたコアを含み、かつ、
ZnS、ZnSe、ZnSeS及びZnTe並びにこれらの組み合わせからなる群から選ばれたシェル又はマルチシェルを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項9】
前記ポリマー(3)が環状脂肪族アクリレートを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項10】
前記緑色発光性結晶(1)が、前記自立フィルムの第1の領域(11)に配置されており、前記赤色発光性結晶が、前記自立フィルムの第2の領域(21)に配置されており、前記第1の領域(11)及び前記第2の領域(21)が、互いに隣接する層を形成している、請求項1~9のいずれか一項に記載の自立フィルム。
【請求項11】
固体ポリマー組成物(100)であって、
- 緑色発光性結晶(1)と、
- 赤色発光性結晶(2)と、
- アクリレートを含むポリマー(3)と、
を含み、前記緑色発光性結晶(1)が、式(I):
[M (I)
(ここで、
は、1又は2種以上の有機カチオンを表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属を表し、
は、M以外の1又は2種以上の金属を表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選ばれた1又は2種以上のアニオンを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
又はAのいずれか、あるいは、M及びAが存在する。)
の化合物から選ばれたペロブスカイト結晶であり、
前記赤色発光性結晶(2)が、式(II):
[M`][YY`] (II)
(ここで、
、M`は、Al、Ga、Inを表し、
Y、Y`は、N、P、As、Sbを表し、
`、Y`は、存在しても存在していなくてもよく、
又は
、M`は、Zn、Cd、Beを表し、
Y、Y`は、S、Se、Teを表し、
`、Y`は、存在しても存在していなくてもよい。)
の化合物から選ばれた閃亜鉛鉱型又はウルツ鉱型結晶から選ばれた結晶構造を有し、
の濃度が、100~1000ppmであり、
+M`の濃度が300~2,500ppmであり、
前記ポリマー(3)は、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比zを有し、ここでzは0.4以下である、
固体ポリマー組成物(100)。
【請求項12】
前記緑色発光性結晶(1)が、式(I’):
FAPbBr (I’)
(ここで、FAはホルムアミジニウムを表す。)
のペロブスカイト結晶である、請求項11に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項13】
前記赤色発光性結晶(2)が、コア-シェル型のものであり、
前記コアが、請求項11に記載の式(II)に規定されるとおりのものであり、
前記シェルが、式(III):
Z (III)
(ここで、
は、Zn又はCdを表し、
Zは、S、Se、Teを表す。)
の化合物を含み、
式(III)の化合物と式(II)の化合物とは異なる、
請求項11又は12に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項14】
前記赤色発光性結晶(2)が、
InP及びCdSeからなる群から選ばれたコアを含み、かつ
ZnS、ZnSe、ZnSeS及びZnTe並びにこれらの組み合わせからなる群から選ばれたシェル又はマルチシェルを含む、
請求項11又は12に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項15】
+M`の濃度が、1,200~1,700ppmであり、及び/又は
前記赤色コア-シェル量子ドットがプレートレット構造を有する、
請求項13に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項16】
前記ポリマー(3)は、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比zを有し、ここでz≦0.25である、請求項11又は12に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項17】
前記ポリマー(3)は環状脂肪族アクリレートを含む、請求項11又は12に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項18】
前記固体ポリマー組成物は、Tg≦120℃のガラス転移温度Tgを有する、請求項11又は12に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項19】
前記固体ポリマー組成物(100)は、金属酸化物粒子及びポリマー粒子からなる群から選ばれた散乱粒子を含む、請求項11又は12に記載の固体ポリマー組成物(100)。
【請求項20】
請求項1~10のいずれか一項に記載の自立フィルムを含む、発光デバイス。
【請求項21】
1つよりも多くの青色LED(6)のアレイを含み、
LED(6)の前記アレイは、実質的に全液晶ディスプレイ領域をカバーし、
1つよりも多くの青色LED(6)の前記アレイと前記自立フィルムとの間に拡散板が配置されている、請求項20に記載の発光デバイス。
【請求項22】
前記発光デバイスが、液晶ディスプレイ(LCD)である、請求項20又は21に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体ポリマー組成物、当該固体ポリマー組成物を含む自立フィルム、及び当該固体ポリマー組成物又は当該自立フィルムを含む発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
最新の液晶ディスプレイ(LCD)又はディスプレイコンポーネントは、発光性結晶(luminescent crystal)(量子ドット)に基づくコンポーネントを含む。特に、かかるLCDのバックライトコンポーネントは、赤色、青色及び緑色の光からなるRGBバックライトを含むことがある。今日、典型的には、かかるバックライトコンポーネントのバックライト色を生成させるために、発光性結晶(量子ドット)が使用されている。
【0003】
米国特許出願公開第2017/186922 A1号は、約440nm~約480nmの間の波長にピーク発光を有する光源と、光源上に配置された光変換層とを含む電子デバイスを開示している。この光変換層は、赤色光を放出する第1の量子ドットと、緑色光を放出する第2の量子ドットとを含む。第1の量子ドット及び第2の量子ドットの少なくとも一方は、ペロブスカイト結晶構造を有し、化学式1:AB’X3+αで表される化合物を含む。ここで、AはIA族金属、NR 又はそれらの組み合わせであり、B’はIVA族金属であり、Xはハロゲン、BF 又はそれらの組み合わせであり、αは0~3である。
【0004】
国際公開第2017/195062 A1号は、可視光を生成させること及び/又は可視光を使用して通信することなどのためにハロゲン化物ペロブスカイト及び/又は蛍光体を含む材料を含むデバイス及びシステムを開示している。
【0005】
国際公開第2018/146561 A1号は、光変換発光性複合材料に関する組成物及び方法を開示している。
【0006】
国際公開第2017/108568 A1号は、第1の固体ポリマー組成物を含む第1のフィルムと、第2の固体ポリマー組成物を含む第2のフィルムとを含む発光コンポーネントを開示している。第1の固体ポリマー組成物は第1の発光性結晶を含む。第2の固体ポリマー組成物は第2の発光性結晶を含む。第1の発光性結晶は、3nm~3000nmのサイズを有するものであり、より短波長の光による励起に応じて赤色光を放出する。第2の発光性結晶は、3nm~3000nmのサイズを有するものであり、より短波長の光による励起に応じて緑色光を放出する。
【0007】
国際公開第2020/130592 A1号は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト発光デバイス及びその製造方法に関する。この発明に係る金属ハロゲン化物ペロブスカイト発光デバイスは、プロトン移動反応によって得られる多次元結晶構造を有するペロブスカイトフィルムを発光層として使用することにより、自己組織化シェルによってイオン移動が抑制され、表面欠陥が除去されて、フォトルミネッセンス強度、発光効率及び寿命が改善される。また、正孔注入層として使用されるPEDOT:PSS導電性ポリマーに、その酸性度を調整するとともに界面の仕事関数を向上させるためにフッ素系材料及び塩基性材料を注入することによって、及び、化学的に安定なグラフェンバリア層により酸の影響を受けやすい電極を保護することによって、高効率な発光デバイスを製造することができる。
【0008】
かかるコンポーネントの製造は様々な課題に直面する。1つの課題は、コンポーネント中への発光性結晶の埋め込みである。発光性結晶の異なる化学的性質のために、発光性結晶を構成する様々な埋め込められる材料間で、あるいは同一材料中に埋め込まれた発光性結晶間でさえも、不適合性が生じるおそれがある。かかる不適合性は、ディスプレイコンポーネントの材料の劣化を招き、そのため、かかるディスプレイの寿命が影響を受けるおそれがある。
【0009】
さらに、発光性結晶に基づくコンポーネントは、しばしば、安定性及び輝度に関する課題に取り組むが、これらのコンポーネントの良好な安定性及び高いディスプレイ輝度を達成することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、先行技術の欠点を克服することである。特に、本発明は、安定性及び輝度の点で先行技術の欠点を克服するものである。
【0011】
特に断らない限り、本明細書では以下の定義が適用されるものとする。
【0012】
本発明の文脈で使用される語句「a」、「an」、「the」及び類似の用語は、本明細書で特に断らない限り、あるいは、文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると理解されるべきである。さらに、用語「含む」又は「含有する」(containing)は、「含む」(comprising)、「実質的に・・・からなる」(essentially consisting of)及び「からなる」(consisting of)の全てを包含する。百分率は、本開示で特に断らない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、質量%として示されている。「独立に」は、1つの置換基/イオンが、名称を挙げた置換基/イオンのうちの1つから選択できること、あるいは、上記のものの1つより多くのものの組み合わせであることができることを意味する。
【0013】
用語「発光性結晶」(luminescent crystal)(LC)は、当該技術分野で知られており、本発明の文脈では、半導体材料製の2~100nmの結晶に関する。この用語は、量子ドット、典型的には2~10nmの範囲内の量子ドット、及び、ナノ結晶、典型的には10~100nmの範囲内のナノ結晶を包含する。
【0014】
LCは、その用語が示すように、ルミネッセンス(発光)を示す。本発明の文脈において、発光性結晶なる用語は、単結晶と多結晶性粒子の両方を包含する。後者の場合、1つの粒子は、結晶性又はアモルファス相境界により接続された幾つかの結晶ドメイン(グレイン(grains))からなっていてもよい。発光性結晶は、直接バンドギャップ(典型的には1.1~3.8eV、より典型的には1.4~3.5eV、よりいっそう典型的には1.7~3.2eVの範囲内)を示す半導体材料である。このバンドギャップ以上の電磁線を照射することによって、価電子帯の電子が伝導帯に励起されて電子正孔(electron hole)が価電子帯に残る。形成された励起子(電子-電子正孔対)は、フォトルミネッセンスの形で輻射再結合し、最大強度はLCバンドギャップ値を中心とし、少なくとも1%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。外部の電子及び電子正孔源と接触すると、LCはエレクトロルミネッセンスを示すことができる。
【0015】
用語「量子ドット」(QD)は知られており、特に、半導体ナノ結晶に関連し、その直径は典型的には2~10nmである。この範囲では、QDの物理的半径は、バルク励起ボーア半径(bulk excitation Bohr radius)よりも小さく、量子閉じ込め効果が優勢になる。その結果、QDの電子状態は、QDの組成及び物理的サイズの関数であり、それゆえ、バンドギャップは、QDの組成及び物理的サイズの関数であり、すなわち吸収/発光の色はQDのサイズと関連している。QDのサンプルの光学的品質は、それらの均質性と直接関連する(より単分散性のQDであるほど、より小さいFWHM(半値全幅)の発光を示す)。QDがボーア半径より大きなサイズに達すると、量子閉じ込め効果が妨げられ、励起子再結合のための無輻射経路が支配的になるので、サンプルはもはや発光性でないことがある。従って、QDはナノ結晶の特定のサブグループであり、特にそのサイズ及びサイズ分布によって定義される。典型的な量子ドット組成は、カドミウム又はインジウムを含み、例えば、セレン化カドミウム(CdSe)、リン化インジウム(InP)の形態のカドミウム又はインジウムを含む。
【0016】
用語「コア-シェル結晶(core-shell crystals)」は知られており、特に、量子ドットに関連し、典型的には硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化カドミウム(CdS)又はそれらの組み合わせを含む追加のシェルを有するCdSeコア又はInPコアを有する量子ドットに関連する。
【0017】
用語「コア-シェル量子ドットプレートレット(core-shell quantum dot platelets)」は知られており、特に、プレートレット構造を有するコア-シェル量子ドットに関連する。プレートレットの3つのすべての直行する次元のアスペクト比(最長:最短の方向)は、2~50、好ましくは3~20、最も好ましくは4~15である。
【0018】
用語「ペロブスカイト結晶」は知られており、特に、ペロブスカイト構造の結晶性化合物を包含する。かかるペロブスカイト構造はそれ自体知られており、一般式M1M2X3の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶結晶として記述される。ここで、M1は配位数12(立方八面体(cuboctaeder))のカチオンであり、M2は配位数6(八面体(octaeder))のカチオンであり、Xは、格子の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶位置のアニオンである。これらの構造において、選ばれたカチオン又はアニオンは、他のイオンにより置き換えられていてもよく(確率的又は正規に最大30原子数%まで)、それによって、まだその元の結晶構造を維持している、ドープされたペロブスカイト又は非化学量論的ペロブスカイトがもたらされることがある。好ましくは、発光性ペロブスカイト結晶は、ほぼ等方的(例えば、球状又は立方体)である。3つのすべての直行する次元のアスペクト比(最長:最短の方向)が1~2である場合に、粒子はほぼ等方的であるとみなされる。したがって、LCの集合体は、好ましくは50~100%(n/n)、好ましくは66~100%(n/n)、より好ましくは75~100%(n/n)の等方性ナノ結晶を含む。
【0019】
かかる発光性ペロブスカイト結晶の製造は、例えば国際公開第2018/028869号から公知である。
【0020】
用語「ポリマー」は知られており、反復単位(「モノマー」)を含む有機及び無機の合成物質を包含する。用語「ポリマー」は、ホモポリマーとコポリマーを包含する。さらに、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーも包含される。文脈に応じて、用語「ポリマー」は、そのモノマー及びオリゴマーを包含する。例として、ポリマーは、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、ノルボルネンポリマー、シラザンポリマー、シリコーンポリマー及び環式オレフィンコポリマーを包含する。ポリマーは、当該技術分野における従前のとおり、重合開始剤、安定剤、充填剤、溶剤などの他の材料を含んでもよい。
【0021】
ポリマーは、極性、ガラス転移温度Tg、ヤング率及び光透過率などの物理的パラメータによってさらに特徴付けることができる。
【0022】
透過率:典型的には、本発明の文脈において使用されるポリマーは、発光性結晶により光が放出されることが可能であり、また、発光性結晶を励起させるために使用される光源の可能な光が透過するように可視光に対して光透過性である、すなわち、不透明でない。光透過率は、白色光干渉分析法又は紫外-可視(UV-Vis)分光分析法により決定することができる。
【0023】
ガラス転移温度:(Tg)は、ポリマーの分野で確立したパラメータであり、ガラス転移温度は、アモルファス又は半結晶質ポリマーがガラス(硬い)状態から、より柔軟な、コンプライアントな、又はゴム状の状態に変化する温度を指す。高いTgを有するポリマーは、「硬質(hard)」と見なされるのに対し、低いTgを有するポリマーは「軟質(soft)」と見なされる。分子レベルでは、Tgは不連続な熱力学的転移でなく、その前後にわたってポリマー鎖の可動性が著しく増加する温度範囲である。しかしながら、慣例では、DSC測定の熱流曲線の2つのフラットな領域に対する接線で囲まれた温度範囲の中点として定義される単一の温度として報告される。Tgは、DSCを使用して、DIN EN ISO 11357-2又はASTM E1356に従って決定することができる。ポリマーがバルク材料の形態で存在する場合、この方法は特に適する。あるいは、ISO 14577-1又はASTM E2546-15に従って、ミクロ又はナノインデンテーションにより温度依存ミクロ又はナノ硬度を測定することによって、Tgを決定することもできる。この方法は、ここに開示されるとおりの発光コンポーネント及び照明デバイスに適する。好適な分析装置はMHT(Anton Paar)、Hysitron TI Premier(Bruker)又はNano Indenter G200(Keysight Technologies)として入手可能である。温度制御ミクロ及びナノインデンテーションにより得られたデータをTgに変換することができる。典型的には、塑性変形仕事もしくはヤング率又は硬さは温度の関数として測定され、Tgはこれらのパラメータが著しく変化する温度である。
【0024】
ヤング率(Young’modulusもしくはYoung modulus)又は弾性率は、固体材料の剛性を評価する機械的特性である。ヤング率又は弾性率は、一軸変形の線形弾性領域における材料の応力(単位面積当たりの力)と歪(比例変形)との間の関係を規定する。
【0025】
本発明の第1の態様は、緑色発光性結晶と、赤色発光性結晶と、ポリマーとを含む固体ポリマー組成物に関する。緑色発光性結晶は、式(I)の化合物から選ばれるペロブスカイト結晶である:
[M (I)
ここで、
は、1又は2種以上の有機カチオン、特にホルムアミジニウム(FA)を表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属、特にCsを表し、
は、M以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選ばれた1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
又はAのいずれか、あるいは、M及びAが存在する。
【0026】
本発明のさらに有利な一実施形態において、緑色発光性結晶は、式(I’):
FAPbBr (I’)
の緑色発光性ペロブスカイト結晶である。
【0027】
特に、式(I)は、青色光の吸収時に、500nm~550nmの緑色光スペクトルの波長、特に527nmを中心とした光を放出するペロブスカイト発光性結晶を記述するものである。
【0028】
赤色発光性結晶が知られており、かかる結晶は、より短波長の光による励起に応じて赤色光(630nm±30nm)を放出する。好適な結晶は、II-VI族半導体化合物からなる群から、及びIII-V族半導体化合物からなる群から選ばれる。
【0029】
実施形態において、結晶は、閃亜鉛鉱型格子構造(閃亜鉛鉱型結晶)又はウルツ鉱型結晶構造(ウルツ鉱型結晶)のいずれか、好ましくは閃亜鉛鉱型に結晶化する。両構造は、カチオン:アニオン比=1:1であり、アニオンが、等しい球体の最密充填(それぞれhcp又はfcp)を形成し、カチオンが四面体(tetraeder)位置に位置している点で共通している。
【0030】
実施形態において、結晶は、式(II)の化合物から選ばれる:
[M`][YY`] (II)
ここで、
、M`は、Al、Ga、In、特にInを表し、Y、Y`は、N、P、As、Sb、特にPを表し、M`、Y`は、存在しても存在していなくてもよく(すなわち、III-V族半導体化合物)、
又は
、M`は、Zn、Cd、Be、特にCdを表し、Y、Y`は、S、Se、Te、特にSeを表し、M`、Y`は、存在しても存在していなくてもよい(すなわち、II-VI型半導体化合物)。
【0031】
上記から明らかなように、好適な結晶としては、式(II-1)の2元系化合物、式(II-2)及び(II-3)の3元系化合物、及び式(II-4)の4元系化合物が挙げられる:
[M][Y] (II-1)
ここで、M及びYは、上に定義したとおりであり、この式の化合物は、例えばCdSe、InN、InP、InAs及びInSbなどである;
[M`][Y] (II-2)
ここで、M、M`、Yは、上に定義したとおりであり、M、M`が存在し、この式の化合物は、例えばInGaPなどである;
[M][YY`] (II-3)
ここで、M、Y、Y`は、上に定義したとおりであり、M、Y、Y`が存在し、この式の化合物は、例えばInPN、InPAs及びInPSbなどである;
[M`][YY`] (II-4)
ここで、M、M`、Y、Y`は、上に定義したとおりであり、M、M`、Y、Y`が存在し、この式の化合物は、例えばInGaPN、InGaPAs及びInGaPSbなどである。
【0032】
好適な結晶は、シェルによって取り囲まれていても取り囲まれていなくてもよい。シェルによって取り囲まれた結晶は、コア-シェル結晶と呼ばれる。かかるコア-シェル結晶では、コアを形成する化合物とシェルを形成する化合物とが異なる。
【0033】
好適な結晶は、ドーパント金属によってドープされていてもドープされていなくてもよい。好適なドーパントは当該技術分野で知られており、典型的には、1mol%以下の範囲の濃度を有する。
【0034】
赤色発光性結晶の結晶サイズは、広い範囲にわたって様々な値をとり得るが、典型的には1~10nmの範囲内である。かかる結晶は量子ドットと呼ばれ、マイクロ結晶と区別される。II-VI族半導体化合物の場合、好適な範囲は1~10nmであり、好ましくは3~8nmである。III-V族半導体化合物では、好適な範囲は1~8nmであり、好ましくは2~4nmである。好ましくは、発光性結晶は、単分散性のサイズ分布を示す。本発明の文脈において、用語「単分散」は、量子ドットの母集団(population)の少なくとも約60%、好ましくは母集団の75%~90%、又はその間の任意の整数又は非整数が指定された粒径範囲内に収まる量子ドットの母集団を指す。単分散粒子の母集団は、直径の二乗平均平方根(rms)について、20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の偏差がある。粒径及び粒径分布は、顕微鏡によって測定することができる。
【0035】
結晶の形態は、プレートレット、立方体、球状、多面体など様々である。
【0036】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、赤色発光性結晶は、請求項1に定義されるとおりのコアと、式(III)のシェルとを有するコア-シェル型のものである:
Z (III)
ここで、
は、Zn又はCd、好ましくはZnを表し、
Zは、S、Se、Teを表し、
ここで、式(III)の化合物と式(II)の化合物とは異なる。
【0037】
シェルとしては、シングルシェル構造及びマルチシェル構造が挙げられる。
【0038】
本発明のさらに有利な一実施形態において、赤色発光性結晶は、InP及びCdSeからなる群から選ばれたコアを含む。
【0039】
さらに、赤色発光性結晶は、ZnS、ZnSe、ZnSeS及びZnTeからなる群から選ばれたシングルシェルを含む。具体例としては、InP@ZnS、InP@ZnSe、InP@ZnSeS、InP@ZnSeS、InP@ZnSe@ZnS、CdSe@ZnS、及びCdSe@ZnSe、特にInP@ZnSeSが挙げられる。
【0040】
さらに、赤色発光性結晶は、ZnS、ZnSe、ZnSeS及びZnTeからなる群から選ばれた化合物の組み合わせから選ばれたマルチシェルを含む。具体例としては、InP/ZnSe/ZnS(マルチシェル)、及びInP/ZnSeS/ZnS(マルチシェル)が挙げられる。
【0041】
さらなる有利な一実施形態において、赤色発光性結晶は、Znで合金化された/ZnがドープされたCdSeコアを含む。この実施形態は、量子ドットあたりのCdの量を低減することを可能にする。
【0042】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、Mの濃度は、100~1000ppm、好ましくは300~1000ppm、非常に好ましくは500~1000ppmであり、及び/又は、M+M’の濃度は、300~2,500ppm、好ましくは600~2,000ppm、非常に好ましくは1,200~1,700ppmであり、及び/又は赤色コアシェル量子ドットはプレートレット構造を有する。
【0043】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、M+M’の濃度は、>300ppm、好ましくは>600ppm、最も好ましくは>1,200ppmであり、及び/又は赤色コアシェル量子ドットはプレートレット構造を有する。
【0044】
本発明のさらなる有利な一実施形態による固体ポリマー組成物は、赤色コアシェル量子ドットが、1nm≦s≦10nm、特に3nm≦s≦8nm、特に2nm≦s≦6nm、特に2nm≦s≦4nmの特定のサイズsを有する。
【0045】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、ポリマーは、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比zを有し、ここでz≦0.9、z≦0.75、特にz≦0.4、特にz≦0.3、特にz≦0.25である。
【0046】
さらなる有利な一実施形態において、ポリマーはアクリレートを含み、非常に特に、ポリマーは環状脂肪族アクリレートを含む。
【0047】
有利な一実施形態において、固体ポリマーは、イソボルニルアクリレート(CAS 5888-33-5)、イソボルニルメタクリレート(CAS 7534-94-3)、ジシクロペンタニル-アクリレート(CAS 79637-74-4,FA-513AS(Hitachi Chemical,日本))、ジシクロペンタニル-メタクリレート(CAS 34759-34-7,FA-513M(Hitachi Chemical,日本))、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(CAS 86178-38-3)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(CAS 7779-31-9)、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(CAS 84100-23-2)、4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(CAS 46729-07-1)のリストから選ばれたアクリレートを含む。
【0048】
別の有利な一実施形態において、固体ポリマーは架橋されている。
【0049】
別の有利な一実施形態において、固体ポリマーは多官能性アクリレートを含む。
【0050】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物は、Tg≦120℃、特にTg≦100℃、特にTg≦80℃、特にTg≦70℃のガラス転移温度Tgを有する。
【0051】
各Tgは、第2の加熱サイクルの間に、-90℃から開始して最高250℃まで、20K/分の加熱速度を適用し、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って測定される。
【0052】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物は、金属酸化物粒子及びポリマー粒子からなる群から選ばれた散乱粒子、好ましくはTiO、ZrO、Al及びオルガノポリシロキサンからなる群から選ばれた散乱粒子を含む。
【0053】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは半結晶性である。
【0054】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、固体ポリマーは、<140℃、好ましくは<120℃、最も好ましくは<100℃の融解温度を有する。
【0055】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に係る固体ポリマー組成物を含む自立フィルムに関する。
【0056】
この自立フィルムは、放出される緑色光よりも短い波長の光による励起に応じて緑色及び赤色の光を発光する。
【0057】
この自立フィルムの有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物は、2つのバリア層の間に挟まれる。特に、かかるサンドイッチ配置は、水平方向にバリア層とポリマーともう1つのバリア層とを有する配置を指す。このサンドイッチ構造の2つのバリア層は、同じバリア層材料で製造されたものであることができ、又は異なるバリア層材料で製造されたものであることができる。
【0058】
バリア層の技術的効果は、発光性ペロブスカイト結晶の安定性、特に酸素や湿気に対する安定性を向上させることである。
【0059】
特に、かかるバリア層は当該技術分野で知られており、典型的には、低い水蒸気透過率(WVTR)及び/又は低い酸素透過率(OTR)を有する材料/材料の組み合わせを含む。かかる材料を選択することによって、水蒸気及び/又は酸素に曝されたことに応じたコンポーネント内の発光性結晶の劣化を低減し、あるいは回避することができる。バリア層又はフィルムは、好ましくは、温度40℃/相対湿度(r.h.)90%及び大気圧におけるWVTRが、<10(g)/(m・day)、より好ましくは1(g)/(m・day)未満、最も好ましくは0.1(g)/(m・day)未満である。
【0060】
一実施形態において、バリアフィルムは、酸素に対して透過性であってよく、温度23℃/相対湿度90%及び大気圧におけるOTR(酸素透過率)が、>0.1(mL)/(m・day)、より好ましくは>1(mL)/(m・day)、最も好ましくは>10(mL)/(m・day)である。
【0061】
一実施形態において、バリアフィルムは、>0.3mm、好ましくは>1mm、最も好ましくは>3mmの厚さを有する。
【0062】
一実施形態において、バリアフィルムは、光に対して透過性であり、すなわち、可視光透過率は、>80%、好ましくは>85%、最も好ましくは>90%である。
【0063】
好適なバリアフィルムは、単一層の形態で存在することができる。かかるバリアフィルムは、当該技術分野で知られており、ガラス、セラミック、金属酸化物、及びポリマーを含む。好適なポリマーは、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリプロピレン(PP)からなる群から選択することができ、好適な無機材料は、金属酸化物、SiO、Si、AlOからなる群から選択することができる。最も好ましくは、ポリマー湿気バリア材料は、PVdC及びCOCからなる群から選ばれた材料を含む。
【0064】
最も有利には、ポリマー酸素バリア材料は、EVOHポリマーから選ばれた材料を含む。
【0065】
好適なバリアフィルムは、多層フィルムの形態で存在することができる。かかるバリアフィルムは当該技術分野で知られており、一般的に、基材、例えば10~200μmの範囲内の厚さを有するPET、SiO及びAlOからなる群からの材料を含む薄い無機層もしくはポリマーマトリックス中に埋め込まれた液晶に基づく有機層又は所望のバリア特性を有するポリマーを有する有機層などを含む。かかる有機層用の可能なポリマーは、例えばPVdC、COC、EVOHを含む。
【0066】
本発明のさらなる有利な一実施形態は、
10≦h≦80%、好ましくは20≦h≦70%、最も好ましくは30≦h≦60%のヘイズh;及び/又は
5~200mg/m、好ましくは10~100mg/m、20~80mg/m、最も好ましくは30~80mg/mのMの濃度;及び/又は
30~250mg/m、好ましくは60~200mg/m、最も好ましくは120~170mg/mのM+M`の濃度;
を有する自立フィルムに関する。
【0067】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、M+M`の濃度は、>30mg/m、好ましくは>60mg/m、最も好ましくは>120mg/mである。
本発明のさらなる有利な一実施形態において、自立フィルムは、h≦80%、好ましくはh≦70%、非常に好ましくはh≦60%のヘイズhを有する。
【0068】
本発明のさらなる有利な実施形態において、自立フィルムは、10%≦h≦80%、好ましくは20%≦h≦70%、非常に好ましくは30%≦h≦60%のヘイズhを有する。
【0069】
本発明の文脈におけるヘイズとは、透過ヘイズ(transmission haze)を意味する。透過ヘイズは、通常、透明物質(本発明における自立フィルム)を通過する際に、法線入射方向から2.5°を超える角度で広角散乱(ASTM D1003で測定;例えば、BYK Gardnerヘイズメーターによる)を受けた光の量である。
【0070】
自立フィルムの低いヘイズは、自立フィルム中の発光性ペロブスカイト結晶が、より安定、特に青色光源に曝された場合により安定であるという技術的効果を有する。この安定性は、自立フィルムにおいて、低いヘイズのために青色光の多重散乱が低減される結果である。
【0071】
さらに、低いヘイズのさらなる技術的効果は、低いヘイズは、自立フィルムの「光変換係数(light conversion factor)」(LCF)として求められる、より高い表示輝度をもたらすという事実である。自立フィルムの光変換係数は、自立フィルムから垂直方向に放出された緑色光強度と、自立フィルムに垂直な方向に消滅(例えば、吸収、反射又は散乱により)した青色光強度との間の比を指す。
【0072】
さらなる有利な一実施形態において、かかる自立フィルムは、典型的には0.005~10mm、より典型的には0.05~3mm、最も典型的には0.01~0.5mmの厚さを有することができる。
【0073】
自立フィルムのさらに有利な一実施形態において、緑色発光性結晶は固体ポリマー組成物の第1の領域に配置され、赤色発光性結晶は固体ポリマー組成物の第2の領域に配置される。
【0074】
特に、第1の領域及び第2の領域は、互いに隣接する層を形成するように適合される。さらなる有利な一実施形態において、第1の領域及び第2の領域は、互いに間隔を空けて配置されることが可能である。
【0075】
本発明の第3の態様は、発光デバイス、特に液晶ディスプレイ(LCD)に関する。
【0076】
有利には、発光デバイスは、本発明の第1の態様に係る固体ポリマー組成物を含む。
【0077】
さらなる有利な一実施形態において、発光デバイスは、本発明の第2の態様による自立フィルムを含む。
【0078】
発光デバイスのさらなる有利な一実施形態において、発光デバイスは、1つよりも多くの青色LEDのアレイを含む。さらに、LEDのアレイは、実質的に全液晶ディスプレイ領域をカバーする。拡散板は、1つよりも多くの青色LEDのアレイと自立フィルムとの間に配置される。
【0079】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、アレイの1又は2つ以上の青色LEDは、f≧150Hz、好ましくはf≧300Hz、非常に好ましくはf≧600Hzの周波数fでオンとオフを切り替えるようにそれぞれ適合される。
【0080】
他の有利な実施形態は、従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【0081】
本発明は、以下の詳細な説明により、より良く理解され、上記以外の目的も明らかとなるであろう。かかる説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1図1は、本発明の一実施形態に従う固体ポリマー組成物の概略図を示す。
図2図2は、本発明の実施形態に従う自立フィルムの概略図を示す。
図3図3は、本発明の実施形態による発光デバイスを示す。
図4図4は、本発明のさらに有利な実施形態に従う自立フィルムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明の実施形態や、実施例や、本発明の実施形態、態様及び利点を示す又は導く実験は、以下の詳細な説明からより良く理解されるであろう。かかる説明は、添付の図面を参照する。
【0084】
図1は、第1の態様の一実施形態に従う固体ポリマー組成物100の概略図を示し、ここで、固体ポリマー組成物は、式(I)の緑色発光性結晶1、式(II)の赤色発光性結晶2、及びポリマー3を含む。
【0085】
図1の固体ポリマー組成物のさらなる実施形態は、本発明の第1の態様に従うさらなる特徴を含んでもよい。
【0086】
図2は、本発明の第2の態様に従う自立フィルムの一実施形態の概略図を示す。図示されているような有利な一実施形態において、自立フィルムは、固体ポリマー組成物100を挟むバリア層4を含んでもよい。
【0087】
図3は、本発明の第3の態様に従う発光デバイス、特に液晶ディスプレイ(LCD)の一実施形態の概略図を示す。有利には、発光デバイスは、図1に示されているような固体ポリマー組成物100、又は、図2に示されているような自立フィルムを含む。有利には、発光デバイスは、1つより多くの青色LED6を含み、LEDは、実質的に全液晶ディスプレイ領域5をカバーする。特に、1つより多くの青色LEDのアレイと自立フィルムとの間に拡散板が配置される(拡散板は図示されていない)。
特に、発光デバイスは、RGB色(aa、bb、cc)で発光することができる。
【0088】
図4は、本発明の第2の態様に従う自立フィルムのさらなる有利な一実施形態を示す。本実施形態における緑色発光性結晶1は、自立フィルムの第1の領域11に配置されている。赤色発光性結晶2は、自立フィルムの第2の領域21に配置されている。第1の領域11と第2の領域21とは、互いに隣接する層を形成している。
【実施例
【0089】
実験セクション
実施例1:低ガラス転移温度及び低ヘイズを有するポリマーを用いた自立フィルムの作製
組成にホルムアミジニウム鉛トリブロミド(FAPbBr)を有する緑色ペロブスカイト発光性結晶をトルエン中で以下のように合成した:
PbBrとFABrをミリングすることによって、ホルムアミジニウム鉛トリブロミド(FAPbBr)を合成した。すなわち、16mmolのPbBr(5.87g,98% ABCR,カールスルーエ(ドイツ))及び16mmolのFABr(2.00g,Greatcell Solar Materials,クイーンビーアン(オーストラリア))をイットリウム安定化ジルコニアビーズ(直径5mm)を使用して6時間ミリングして、純粋な立方晶FAPbBrを得た(XRDにより確認)。このオレンジ色のFAPbBr粉末をオレイルアミン(80-90,Acros Organics,ヘール(ベルギー))及びトルエン(>99.5%,puriss,Sigma Aldrich)に加えた(FAPbBr:オレイルアミン質量比=100:15)。FAPbBrの最終濃度は1質量%であった。次に、周囲条件(特に定義しない場合、周囲条件は全ての実験について35℃、1atm、空気中である)で直径200μmのイットリウム安定化ジルコニアビーズを使用するボールミリングによって、混合物を1時間分散させ、緑色発光性のインクを得た。
【0090】
フィルム形成:
0.1gの上記緑色インクを、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)及び2質量%のポリマー散乱粒子(オルガノポリシロキサン,ShinEtsu,KMP-590)を含有するUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(0.7gのFA-513AS、Hitachi Chemical、日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)と、トルエン中に懸濁されたInPコアとZnSシェルを有する等方性コアシェルQDである赤色発光性結晶とを、スピードミキサーで混合し、トルエンを室温で真空(<0.01mbar)により蒸発させた。得られた混合物を、次に、100ミクロンのバリアフィルム(供給元:I-components(韓国);製品:TBF-1007)上に50ミクロンの層厚でコートし、次に、同じタイプの第2のバリアフィルムを積層した。その後、積層構造体を60秒間紫外線硬化させた(水銀ランプと石英フィルターを備えたUVAcube100,Hoenle,ドイツ)。硬化層(バリアなし)中のPbの濃度は500ppm Pbであり、単位面積当たりのPb担持量は30mg Pb/mであった。硬化層(バリアなし)中のInの濃度は1300ppm Inであり、単位面積当たりのIn担持量は80mg In/mであった。得られたフィルムの初期性能は、22nmのFWHMで526nmの緑色発光波長と、20nmのFWHMで630nmの赤色発光波長であった。QDフィルムの上部に2枚の交差プリズムシート(X-BEF)と1枚の輝度向上フィルム(DBEF)を備えて青色LED光源(発光波長450nm)上に配置した場合のフィルムの色座標(CIE1931)は、x=0.25及びy=0.20であった(コニカミノルタCS-2000により測定した光学的特性)。得られたフィルムのヘイズは50%であり、透過率は85%であった(BYK Gardnerヘイズメーターにより測定)。フィルムの光変換係数は49%であった(LCF;LCF=緑色発光強度(積分発光ピーク)÷青色強度(積分発光ピーク);コニカミノルタCS-2000を用いてQDフィルムから緑色と青色の垂直発光を測定)。UV硬化した固体ポリマー組成物のガラス転移温度Tgは、窒素雰囲気下(20ml/分)で、開始温度-90℃及び終了温度250℃、加熱速度20K/分で、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って、DSCにより測定した。パージガスは、20ml/minで窒素(5.0)であった。DSCシステムDSC 204 F1 Phoenix(Netzsch)を使用した。2回目の加熱サイクルでTを決定した(-90℃から250℃までの1回目の加熱で、ガラス転移以外に重畳効果が示された)。DSC測定では、バリアフィルムを剥離することで、固体ポリマー組成物をフィルムから除去した。UV硬化樹脂組成物の測定されたTgは75℃であった。
【0091】
フィルム温度50℃、フィルム上の青色光束410mW/cmで、青色強度の高いライトボックス(供給元:Hoenle;モデル:LED CUBE 100 IC)にフィルムを入れることによって、青色LED光照射下で150時間かけてフィルムの安定性を試験した。さらに、60℃及び相対湿度90%の恒温恒湿槽中でフィルムを150時間試験した。初期性能の測定(上に記載)と同じ手順で、安定性試験後の光学的パラメーターの変化を測定した。光学的パラメーターの変化は、以下のとおりであった。
【0092】
【表1】
【0093】
これらの結果から、緑色ペロブスカイト結晶と赤色コアシェル量子ドットが両方とも高い青色光束及び高い温度/湿度の下で試験した場合に良好な化学的適合性及び高い安定性を示す自立発光フィルムが得られることがわかった。
【0094】
実施例1に対する比較例1:低ガラス転移温度及び高ヘイズを有するポリマーを用いた自立フィルムの作製
手順は、以下のパラメーターを変更した以外は、実施例1の前の手順と同じであった:
・緑色ペロブスカイトQDと赤色コアシェルInP量子ドットとを50%だけ使用した。
・最終的なQDフィルムのヘイズを高めるために、UV硬化性アクリレート混合物に12質量%の散乱粒子KMP-590を混合した。
【0095】
得られた自立フィルムは、実施例1と同様の光学的特性及びTgを示したが、ヘイズは95%、透過率は80%、LCFは41%であった。
【0096】
LCFが実験1におけるものよりも低いことがわかる。ヘイズが高いほどLCFがより低くなり、ヘイズが低いほどLCFがより高くなる。したがって、QDフィルムのヘイズがより低いことは、より高いLCFを達成すること、ひいては、より高い表示効率(特定の比較可能な白色点色座標(white point colour coordinates)において)を達成することに有益である。
【0097】
硬化層(バリアなし)中のPbの濃度は250ppm Pbであり、単位面積当たりのPb担持量は15mg Pb/mであった。硬化層(バリアなし)中のInの濃度は650ppm Inであり、単位面積当たりのIn担持量は40mg In/mであった。
【0098】
再び実施例1と同様の安定性試験を行ったところ、光学的パラメーターの変化は以下のとおりであった:
【0099】
【表2】
【0100】
これらの結果から、QDフィルムのヘイズがより高いほど、実施例1と比較して、高い青色光束下で、より低い安定性の緑色ペロブスカイト結晶をもたらし(y値の減少によって緑色強度の減少はわかる)、特に緑色ペロブスカイト結晶が高い青色光束下で安定性が低いことがわかった。したがって、ディスプレイデバイスの動作寿命の間、安定な色座標及び安定な白色点を達成するために、高い青色光束下でのQDフィルムの安定性の改善につながるQDフィルムの低いヘイズを達成することは有利である。
【0101】
実施例1に対する比較例2:高ガラス転移温度及び低ヘイズを有するポリマーを用いた自立フィルムの作製
手順は、アクリレートモノマー混合物(0.7gのFA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)を以下のアクリレートモノマー混合物に置き換えたことを除いて、実施例1の手順と同じであった:
・0.7gのFA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.3gのFA-320M,Hitachi Chemical,日本。
【0102】
得られた自立フィルムは、実施例1と同様の光学的特性及びヘイズを示したが、Tgは140℃であった。
【0103】
硬化層(バリアなし)中のPb及びInの濃度は実施例1と同じであった。
【0104】
再び実施例1と同様の安定性試験を行ったところ、光学的パラメーターの変化は以下のとおりであった:
【0105】
【表3】
【0106】
これらの結果から、自立フィルムの固体ポリマーの高いTgは、実施例1と比較して、高い青色光束下での緑色ペロブスカイト結晶の低い安定性(y値の減少によって緑色強度の減少はわかる)をもたらすことがわかった。したがって、ディスプレイデバイスの動作寿命の間、安定な色座標及び安定な白色点を達成するために、高い青色光束下でのQDフィルムの安定性の改善につながるQDフィルムの低いTgを達成することは有利である。
【0107】
実施例2:低ヘイズを有し、赤色コアシェル量子ドット及び緑色ペロブスカイト結晶が空間的に分離された自立フィルムの作製
緑色ペロブスカイトQDは、実施例1からのものを使用した。
【0108】
フィルムの形成:
実施例1からの緑色インク0.1gを、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)及び2質量%のポリマー散乱粒子(オルガノポリシロキサン,ShinEtsu,KMP-590)を含有するUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(0.7gのFA-513AS、Hitachi Chemical、日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)とスピードミキサーで混合し、トルエンを室温で真空(<0.01mbar)により蒸発させた。得られた混合物を、次に、100ミクロンのバリアフィルム(供給元:I-components(韓国);製品:TBF-1007)上に50ミクロンの層厚でコートし、窒素雰囲気中でUV硬化させた。次に、実験1からのInPコアとZnSシェルを有する赤色コアシェル量子ドット(トルエン中に懸濁)を、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)及び2質量%のポリマー散乱粒子(オルガノポリシロキサン,ShinEtsu,KMP-590)を含有するUV硬化モノマー/架橋剤混合物(0.7gのFA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)とスピードミキサーで混合し、トルエンを室温で真空(<0.01mbar)により蒸発させた。得られた混合物を、次に、先に堆積させた緑色層上に50ミクロンの層厚でコートし、次に、上に第2のバリアフィルムを積層し、全サンドイッチ構造体を60秒間UV硬化させた(水銀ランプと石英フィルターを備えたUVAcube100,Hoenle,ドイツ)。
【0109】
最終的な自立フィルムは、実験1と同程度の光学的特性を示した。
【0110】
硬化した緑色層(バリアなし)中のPbの濃度は500ppm Pbであり、単位面積当たりのPb担持量は30mg Pb/mであった。硬化した赤色層(バリアなし)中のInの濃度は1300ppm Inであり、単位面積当たりのIn担持量は80mg In/mであった。
【0111】
光学的パラメータの変化は以下のとおりであった:
【0112】
【表4】
【0113】
これらの結果は、緑色層と赤色層が分離した自立発光フィルムであって、緑色ペロブスカイト結晶と赤色コアシェル量子ドットは両方とも高い青色光束及び高い温度/湿度の下で試験した場合に高い安定性を示す自立発光フィルムが得られることを示している。
【0114】
実施例3:実施例1と同様であるが、CdSeコア及びZnSシェルを有する赤色コア-シェル量子ドットプレートレットを用いた自立フィルムの作製
実施例1に記載したのと同じ実験手順を用いたが、CdSeコアとZnSシェルとを有する赤色コアシェル量子ドットプレートレットを使用した。
【0115】
硬化層(バリアなし)中のPbの濃度は500ppm Pbであり、単位面積当たりのPb担持量は30mg Pb/mであった。硬化層(バリアなし)中のCdの濃度は500ppm Cdであり、単位面積当たりのCd担持量は30mg Cd/mであった。
【0116】
結果は、実施例1と同等の光学的性能及び安定性であった。
【0117】
実施例4:実施例2と同様であるが、CdSeコアとZnSシェルを有する赤色コアシェル量子ドットプレートレットを用いた自立フィルムの作製
実施例2に記載したのと同じ実験手順を用いたが、CdSeコアとZnSシェルとを有する赤色コアシェル量子ドットプレートレットを使用した。
結果は、実施例2と同等の光学的性能及び安定性であった。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
自立フィルムであって、
- 緑色発光性結晶(1)と、
- 赤色発光性結晶(2)と、
- ポリマー(3)と、
を含み、前記緑色発光性結晶(1)が、式(I):
[M (I)
(ここで、
は、1又は2種以上の有機カチオン、特にホルムアミジニウム(FA)を表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属、特にCsを表し、
は、M 以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選ばれた1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
又はA のいずれか、あるいは、M 及びA が存在する。)
の化合物から選ばれたペロブスカイト結晶であり、
前記赤色発光性結晶(2)が、式(II):
[M `][YY`] (II)
(ここで、
、M `は、Al、Ga、In、特にInを表し、
Y、Y`は、N、P、As、Sb、特にPを表し、
`、Y`は、存在しても存在していなくてもよく、
又は
、M `は、Zn、Cd、Be、特にCdを表し、
Y、Y`は、S、Se、Te、特にSeを表し、
`、Y`は、存在しても存在していなくてもよい。)
の化合物から選択される閃亜鉛鉱型又はウルツ鉱型結晶、好ましくは閃亜鉛鉱型結晶であり、
の濃度が、5~200mg/m 、好ましくは10~100mg/m 、非常に好ましくは20~80mg/m である、
自立フィルム。
[態様2]
+M `の濃度が、30~250mg/m 、好ましくは60~200mg/m 、非常に好ましくは120~170mg/m である、態様1に記載の自立フィルム。
[態様3]
10≦h ≦80%、好ましくは20≦h ≦70%、非常に好ましくは30≦h ≦60%のヘイズh を有する、態様1又は2に記載の自立フィルム。
[態様4]
金属酸化物粒子及びポリマー粒子からなる群から選ばれた散乱粒子、好ましくはTiO 、ZrO 、Al 及びオルガノポリシロキサンからなる群から選ばれた散乱粒子を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の自立フィルム。
[態様5]
前記固体ポリマー組成物(100)が2つのバリア層(4)の間に挟まれている、態様1~4のいずれか一項に記載の自立フィルム。
[態様6]
前記緑色発光性結晶(1)が、式(I’):
FAPbBr (I’)
のペロブスカイト結晶である、態様1~5のいずれか一項に記載の自立フィルム。
[態様7]
前記赤色発光性結晶(2)が、コア-シェル型のものであり、
前記コアが、態様1に規定されるとおりの式(II)のものであり、
前記シェルが、式(III):
Z (III)
(ここで、
は、Zn又はCd、好ましくはZnを表し、
Zは、S、Se、Teを表す。)
の化合物を含み、
式(III)の化合物と式(II)の化合物とは異なる、
態様1~6のいずれか一項に記載の自立フィルム。
[態様8]
前記赤色発光性結晶(2)が、
InP及びCdSeからなる群から選ばれたコアを含み、かつ、
ZnS、ZnSe、ZnSeS及びZnTe並びにこれらの組み合わせからなる群から選ばれたシェル又はマルチシェルを含む、
態様1~7のいずれか一項に記載の自立フィルム。
[態様9]
前記ポリマー(3)がアクリレートを含み、非常に特に、前記ポリマーは環状脂肪族アクリレートを含む、態様1~8のいずれか一項に記載の自立フィルム。
[態様10]
前記緑色発光性結晶(1)が、前記自立フィルムの第1の領域(11)に配置されており、前記赤色発光性結晶が、前記自立フィルムの第2の領域(21)に配置されており、特に、前記第1の領域(11)及び前記第2の領域(21)が、互いに隣接する層を形成している、態様1~9のいずれか一項に記載の自立フィルム。
[態様11]
固体ポリマー組成物(100)であって、
- 緑色発光性結晶(1)と、
- 赤色発光性結晶(2)と、
- ポリマー(3)と、
を含み、前記緑色発光性結晶(1)が、式(I):
[M (I)
(ここで、
は、1又は2種以上の有機カチオン、特にホルムアミジニウム(FA)を表し、
は、1又は2種以上のアルカリ金属、特にCsを表し、
は、M 以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選ばれた1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
又はA のいずれか、あるいは、M 及びA が存在する。)
の化合物から選ばれたペロブスカイト結晶であり、
前記赤色発光性結晶(2)が、式(II):
[M `][YY`] (II)
(ここで、
、M `は、Al、Ga、In、特にInを表し、
Y、Y`は、N、P、As、Sb、特にPを表し、
`、Y`は、存在しても存在していなくてもよく、
又は
、M `は、Zn、Cd、Be、特にCdを表し、
Y、Y`は、S、Se、Te、特にSeを表し、
`、Y`は、存在しても存在していなくてもよい。)
の化合物から選ばれた閃亜鉛鉱型又はウルツ鉱型結晶、好ましくは閃亜鉛鉱型結晶であり、
の濃度が、100~1000ppm、好ましくは300~1000ppm、非常に好ましくは500~1000ppmである、固体ポリマー組成物(100)。
[態様12]
前記緑色発光性結晶(1)が、式(I’):
FAPbBr (I’)
のペロブスカイト結晶である、態様11に記載の固体ポリマー組成物(100)。
[態様13]
前記赤色発光性結晶(2)が、コア-シェル型のものであり、
前記コアが、態様11に規定されるとおりのものであり、
前記シェルが、式(III):
Z (III)
(ここで、
は、Zn又はCd、好ましくはZnを表し、
Zは、S、Se、Teを表す。)
の化合物を含み、
式(III)の化合物と式(II)の化合物とは異なる、
態様11又は12に記載の固体ポリマー組成物(100)。
[態様14]
前記赤色発光性結晶(2)が、
InP及びCdSeからなる群から選ばれたコアを含み、かつ
ZnS、ZnSe、ZnSeS及びZnTe並びにこれらの組み合わせからなる群から選ばれたシェル又はマルチシェルを含む、
態様11~13のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
[態様15]
+M `の濃度が、300~2,500ppm、好ましくは600~2,000ppm、非常に好ましくは1,200~1,700ppmであり、及び/又は
前記赤色コア-シェル量子ドットがプレートレット構造を有する、
態様11~14のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
[態様16]
前記ポリマー(3)は、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比zを有し、ここでz≦0.9、z≦0.75、特にz≦0.4、特にz≦0.3、特にz≦0.25である、態様11~15のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
[態様17]
前記ポリマーはアクリレートを含み、非常に特に、前記ポリマーは環状脂肪族アクリレートを含む、態様11~16のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
[態様18]
前記固体ポリマー組成物は、Tg≦120℃、特にTg≦100℃、特にTg≦80℃、特にTg≦70℃のガラス転移温度Tgを有する、態様11~17のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
[態様19]
前記固体ポリマー組成物(100)は、金属酸化物粒子及びポリマー粒子からなる群から選ばれた散乱粒子、好ましくはTiO 、ZrO 、Al 及びオルガノポリシロキサンからなる群から選ばれた散乱粒子を含む、態様11~18のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物(100)。
[態様20]
態様1~10のいずれか一項に記載の自立フィルムを含むか、又は
態様11~19のいずれか一項に記載の固体ポリマー組成物を含む、
発光デバイス、特に液晶ディスプレイ(LCD)。
[態様21]
1つよりも多くの青色LED(6)のアレイを含み、
LED(6)の前記アレイは、実質的に全液晶ディスプレイ領域をカバーし、
1つよりも多くの青色LED(6)の前記アレイと前記自立フィルムとの間に拡散板が配置されている、態様20に記載の発光デバイス。
図1
図2
図3
図4