(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】リモート生産方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240215BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240215BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2022522533
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010535
(87)【国際公開番号】W WO2021229911
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020083276
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】渥美 光是
(72)【発明者】
【氏名】砂子 祐也
(72)【発明者】
【氏名】白谷 真仁
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-206304(JP,A)
【文献】特開2018-195153(JP,A)
【文献】特開2016-106325(JP,A)
【文献】特開2002-91533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立品を構成する部品群の保管場所および前記組立品の保管場所とは異なる所在地に立地する1または複数の生産場所において
、生産用具を使用して前記組立品を生産する方法であって、
生産計画に基づいて、前記部品群と前記組立品の組立作業の手順とをホストコンピュータに記憶させる工程と、
前記ホストコンピュータに記憶させた部品群
と前記生産用具とを前記生産場所に運搬する工程と、
前記生産場所に設けられた端末と前記ホストコンピュータとを通信させ、前記端末に前記組立作業の手順を表示させる工程と、
前記組立作業の進捗および結果を前記端末に入力する工程と、
前記端末と前記ホストコンピュータとを通信させ、前記組立作業の進捗および結果を前記ホストコンピュータに報告させる工程と、
前記組立作業が完了した後に前記組立品を前記生産場所から回収する工程と、
を含むリモート生産方法。
【請求項2】
組立品を構成する部品群の保管場所および前記組立品の保管場所とは異なる所在地に立地する1または複数の生産場所において前記組立品を生産する方法であって、
生産計画に基づいて、前記部品群と前記組立品の組立作業の手順とをホストコンピュータに記憶させる工程と、
前記ホストコンピュータに記憶させた部品群を前記生産場所に運搬する工程と、
前記生産場所に設けられた端末と前記ホストコンピュータとを通信させ、前記端末に前記組立作業の手順を表示させる工程と、
前記組立作業の進捗および結果を前記端末に入力する工程と、
前記端末と前記ホストコンピュータとを通信させ、前記組立作業の進捗および結果を前記ホストコンピュータに報告させる工程と、
前記組立作業が完了した後に前記組立品を前記生産場所から回収する工程と、
を含み、
前記組立作業の進捗および結果の少なくとも一部は、前記端末に接続された生産用具の使用実績に基づいて前記端末に自動入力される
、
リモート生産方法。
【請求項3】
前記1または複数の生産場所は、複数の生産場所を含み、
前記複数の生産場所のうちの少なくとも1つの生産場所に設けられた前記端末は、他の生産場所に設けられた前記端末に入力された前記組立作業の進捗を確認可能に構成されている、
請求項1または2に記載のリモート生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモート生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械装置(最終製品と最終製品の部品となる組立された部品アッセンブリとを含む、以下、これらを総称して組立品と呼ぶ)の組立は、工場勤務の作業者によって工場内で行われている。通常の場合、組立品を構成する部品群は工場内の保管場所から供給され、完成された組立品は同じ工場内の組立品の保管場所に運ばれる。例えば特許文献1には、作業標準データベースから読み出した作業標準データを作業場所に設けられた表示装置に表示させる製造工程管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば感染症の発生などによって作業者の多くが工場に出勤することができなくなった場合、工場での組立作業が停止または停滞し、組立品を生産計画通りに組み立てることが困難になる。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業者の一部が工場に出勤することができなくなった場合であっても、組立品を生産計画通りに組み立てることを容易にする生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示するリモート生産方法は、組立品を構成する部品群の保管場所および前記組立品の保管場所とは異なる所在地に立地する1または複数の生産場所において前記組立品を生産する方法であって、生産計画に基づいて、前記部品群と前記組立品の組立作業の手順とをホストコンピュータに記憶させる工程と、前記ホストコンピュータに記憶させた部品群を前記生産場所に運搬する工程と、前記生産場所に設けられた端末と前記ホストコンピュータとを通信させ、前記端末に前記組立作業の手順を表示させる工程と、前記組立作業の進捗および結果を前記端末に入力する工程と、前記端末と前記ホストコンピュータとを通信させ、前記組立作業の進捗および結果を前記ホストコンピュータに報告させる工程と、前記組立作業が完了した後に前記組立品を前記生産場所から回収する工程と、を含む。
【0007】
上記リモート生産方法によれば、作業者の一部が工場に出勤することができなくなった場合であっても、作業者が在宅で、または出勤可能な他の生産場所で組立品を組み立てることができる。また、組み立てた組立品を回収することができる。その結果、組立品を生産計画通りに組み立てることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】リモート生産システムのサイクルを示す模式図である。
【
図2】リモート生産システムのシステム構成を示す模式図である。
【
図3A】部品キット前の小物部品キットの通い箱を示す平面図である。
【
図3B】部品キット後の小物部品キットを示す平面図である。
【
図4】組立品の組立作業の手順を示す表示の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明に係るリモート生産システムの一実施形態について説明する。ここに開示する実施形態は、好適な1つの例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1は、リモート生産システム1のサイクルを示す模式図である。
図2は、リモート生産システム1のシステム構成を示す模式図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態に係るリモート生産システム1は、本来の生産場所である工場2とは異なる所在地に立地する1または複数の生産場所3A~3D(
図1では、その1つである生産場所3Aを図示する)において組立品100を生産するシステムである。
図2に示すように、工場2は、ここでは、組立品100を構成する部品群の保管場所2Aおよび組立品100の保管場所2Bが立地する場所である。工場2には、また、組立品100を組み立てるための生産用具、および、生産状況を管理するホストコンピュータ10が準備されている。なお、部品群の保管場所2Aは、部品群が集約的に保管される倉庫を必ずしも意味せず、生産に必要な数量の部品群が随時に供給され一時的に保管される保管場所、例えば受け入れ場等も含む。組立品100の保管場所2Bは、組立品100が長期にわたって保管される倉庫を必ずしも意味せず、組立が終了した組立品100が一時的に保管される保管場所、例えば出荷場等も含む。
【0011】
組立品100は、移動困難な生産用具を使用して組み立てる必要があるものを除いて特に限定されない。ただし、組立品100は、好適には、普通の住居でも組立可能なものであるとよい。
図1に示す例では、組立品100は、小型のカッティングマシンである。組立品100は、その他、例えば小型のプリンタなどであってもよい。
【0012】
生産場所3A~3Dの数および条件は特に限定されないが、例えば、通常時には工場で組立品100を組み立てている作業者の自宅であってもよい。
図2に示すように、リモート生産システム1は、工場2に設けられたホストコンピュータ10と、各生産場所3A~3Dに設けられたリモート端末セット20A~20Dとを含んでいる。ホストコンピュータ10は、ここでは、生産管理を担うサーバコンピュータ11と、サーバコンピュータ11に接続され工場2内に配置された工場内端末12とを含んでいる。
【0013】
リモート端末セット20A~20Dは、それぞれ、端末としてのコンピュータ21と、無線LANアダプタ22とを含んでいる(内部構成は、リモート端末セット20Aのみ図示)。コンピュータ21は、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータである。ホストコンピュータ10とコンピュータ21とは、無線LANアダプタ22を介して通信可能に接続されている。無線LANアダプタ22を介することにより、ほとんどの環境においてホストコンピュータ10とコンピュータ21とを接続することができる。ただし、ホストコンピュータ10とコンピュータ21とは、有線で接続されていてもよい。また、生産場所3A~3Dに設けられる端末は、パーソナルコンピュータでなくてもよく、タブレット端末やスマートフォン等であってもよい。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るリモート生産システム1では、工場2においてリモート生産の準備工程S01、S02が行われる。工程S01では、生産計画に基づいて、組立品100を構成する部品群と組立品100の組立作業の手順とをホストコンピュータ10に記憶させる。組立品100の組立作業の手順は、最初に一度決定され、その後必要に応じて改定される。組立品100を構成する部品群は、例えば、組立品100のシリアルナンバー等に紐付けされて、シリアルナンバー毎に記憶される。なお、例えば、シリアルナンバー間でオプション等の仕様に差がある場合には、シリアルナンバーによって部品群の構成に差があってもよい。
【0015】
工程S02では、部品群がピッキングされ、部品キット30として準備される。また、工場2でなければ実施困難な工程、例えば圧入や溶接などが実施される。必要であれば、部品不良の確率が比較的高い部品であって事前検査をするように定められている部品の事前検査を行う。さらに、
図1に示した例の場合には、生産用具のうちの2種類の電動ドライバ41、42のトルクが設定通りであるかどうかが検査される。工程S02では、完成した組立品100を回収するための梱包箱50も用意される。
【0016】
図1に示すように、部品キット30は、ここでは、外装部品31と、基板(図示せず)と、ビス類キット32と、小物部品キット33とから構成されている。外装部品31と基板とは、1つの箱B1に収容されている。ビス類キット32は、内部が仕切られた通い箱B2と、種類ごとに上記仕切り内に収容された各種ビス類とから構成されている。
【0017】
なお、ビス類は、落として紛失するおそれなどを考慮して必要数よりも多くキットされていてもよい。十分な員数のビス類がキットされているかどうかを確認するために、例えば、ビス類キット32の重量が測定されてもよい。ただし、各ビス類は、必要数だけキットされていてもよい。
【0018】
図3Aは、部品キット前の小物部品キット33の通い箱B3を示す平面図である。
図3Bは、部品キット後の小物部品キット33を示す平面図である。
図3Aおよび
図3Bに示すように、小物部品キット33も、内部が区画された通い箱B3と、種類ごとに区画内に収容された小物部品34とから構成されている。通い箱B3は、容器35と、緩衝材36と、トレイ37とを備えている。容器35は、典型的には、直方体の箱である。緩衝材36は、例えば発泡性の樹脂等で形成され、弾性を有している。緩衝材36は、容器35の内部空間の形状に対応した外形を有し、容器35に収容されている。
図3Aおよび
図3Bに示すように、緩衝材36は、複数の小物部品34の形状にそれぞれ対応した形状を有する複数の貫通孔36aを備えている。複数の小物部品34はそれぞれ、対応する貫通孔36aに収容される。これにより、小物部品キット33の運搬による小物部品34の容器35内での移動、および、それによる小物部品34の破損が防止される。一部の小物部品34(例えばケーブル)は、緩衝材36に固定されたトレイ37に収容される。なお、小物部品34が収容されるのは、貫通孔36aではなく、貫通していない凹部であってもよい。
【0019】
図3Aに示すように、容器35の底部35aおよびトレイ37の底部37a、言い換えれば、小物部品34が収容される凹部の底部は、緩衝材36の表面とは異なる色に構成されている。好適には、容器35の底部35aおよびトレイ37の底部37aは、緩衝材36の表面とは明瞭に判別可能であって、かつ、一目で識別可能な色に着色されているとよい。例えば、緩衝材36の色には青色が選択され、容器35の底部35aおよびトレイ37の底部37aは赤色に着色されていてもよい。これにより、キット担当者は、全ての小物部品34が通い箱B3にキットされたことを容易に確認することができる。なお、容器35の底部35aの色とトレイ37の底部37aの色とは、異なる色であってもよい。
【0020】
図1に示すように、工程S03では、ホストコンピュータ10に記憶させた部品群を部品キット30として生産場所3A~3Dに運搬する。また、トルク検査後の電動ドライバ41、42が生産場所3A~3Dに運搬される。なお、他の生産用具は、生産場所3A~3Dに保管されている。梱包箱50も生産場所3A~3Dに運搬される。運搬には、例えば自動車が利用される。
【0021】
なお、部品キット30の部品の一部または全部、特に運搬や組立作業によって破損するおそれが比較的高いものや、部品不良率が高いことが分かっているものは、生産場所3A~3Dに予め予備品を用意しておいてもよい。予備品のリストおよび数量は、例えば、リモート生産における破損数のデータに基づいて決定されるとよい。
【0022】
工程S04では、生産場所3A~3Dに設けられた端末としてのコンピュータ21とホストコンピュータ10とを通信させ、コンピュータ21に組立品100の組立作業の手順を表示させる。具体的には、生産場所3A~3Dにおいて各作業者がコンピュータ21を操作して、コンピュータ21とホストコンピュータ10とを接続し、例えばリモート生産用の画面に入る。ここで作業者が組立作業を開始する操作を行うと、組立品100の組立作業の手順を表示する画面がコンピュータ21の表示装置に表示される。
【0023】
図4は、組立品100の組立作業の手順を示す表示の一例である。
図4に一例として示すように、組立品100の組立作業の手順を示す表示D1では、ビスを締結する場所などの作業の内容、使用工具、締付けトルクなどの作業ポイント等が写真や図を伴って表示される。組立品100の組立作業の手順を示す表示は特に限定されず、適宜に作成され改定されてよい。
【0024】
工程S05では、生産場所3A~3Dにおける他の準備が行われる。工程S05では、部品キット30が開梱される。また、事前に生産場所3A~3Dに運搬しておいた工具セット40の構成品が組立作業を行う作業台に並べられる。
図1に示す例では、工具セット40は、静電気防止用の除電マット43、除電バンド(図示せず)およびイオナイザ(図示せず)と、その他の工具とを含んでいる。また、部品キット30とともに運搬された2つの電動ドライバ41、42も使用工具として作業台に並べられる。必要であれば、工具セット40には、組立後の組立品100を検査する検査装置などが含まれていてもよい。
【0025】
この準備作業では、作業者は除電マット43を作業台に敷く。さらに、静電気とは逆の電荷に帯電させた風をイオナイザにより発生させ、その風を除電マット43の上方の空間に向かって吹きつける。作業者は、さらに自分の腕に除電バンドを巻く。組立品100の組立作業は、除電バンドを付けた作業者により除電マット43上で行われる。これにより、部品群のうちの電子部品が静電気により破損することを予防する。
【0026】
工程S05では、また、2つの電動ドライバ41、42がコンピュータ21に通信可能に接続される。電動ドライバ41および42は、実際に掛かったトルクを測定して、その実績データを送信可能に構成されている。電動ドライバ41または42の実績データを受信することにより、コンピュータ21およびホストコンピュータ10では、電動ドライバ41または42が使用されたタイミングおよび締付け時間と、そのときの実際のトルクとを把握することができる。
【0027】
工程S06では、組立品100の組立作業が実際に行われる。工程S06では、都度、組立作業の進捗および結果がコンピュータ21に入力される。より具体的には、作業者は1つの作業が完了するたびに工程が完了したことを知らせる操作をコンピュータ21に対して行う。これにより、コンピュータ21は、組立作業の進捗を把握することができる。そして、作業者は、次の作業に進むことができる。ただし、電動ドライバ41または42を使用する作業では、電動ドライバ41または42の実績データを受信することにより、組立作業の進捗および結果がコンピュータ21に自動入力される。電動ドライバ41または42を使用する作業において電動ドライバ41または42が所定の回数だけ使用され、そのときのトルクが設定トルクに近い所定の範囲内であれば、当該作業は完了したものとみなされる。上記所定の回数は、当該作業で締めるべきビス類の員数に等しい。なお、測定されたトルクが上記所定の範囲から外れていた場合には、作業エラーとして組立作業を止めてもよい。組立作業の結果は、上記のような態様で、あるいは、例えば検査作業などでは検査結果を作業者が入力するような態様で入力される。
【0028】
上記のように、組立品100の組立作業の進捗および結果の少なくとも一部は、コンピュータ21に接続された生産用具の使用実績に基づいてコンピュータ21に自動入力されてもよい。組立品100の組立の進捗および結果の入力には、作業者による手動入力と上記したような自動入力とが含まれていてもよい。このような作業結果の入力により、組立作業が正しく行われているかを監視することができる。また、組立作業の進捗の入力間違いを抑制することができる。
【0029】
工程S07では、コンピュータ21とホストコンピュータ10とを通信させ、組立作業の進捗および結果をホストコンピュータ10に報告させる。工程S07は、好適には、工程S06の各工程の直後にリアルタイムで行われるとよい。
【0030】
なお、組立品100の仕掛品または完成品の外観検査が組立作業に含まれている場合には、作業者が組立品100の仕掛品または完成品の写真や動画を撮影し、コンピュータ21を介してホストコンピュータ10に写真データを送信してもよい。その場合、工場2内または外部にいる担当者が送信された写真データをリアルタイムまたは組立終了後に確認して、問題なく組立作業が行われたかどうかを確認してもよい。
【0031】
工程S07では、同時に、各工程に要した時間がホストコンピュータ10に記録される。これにより、工場2での生産と比較してリモート生産の各工程でどのくらいの時間が費やされているか、または、異常な時間が費やされていないか、などをホストコンピュータ10で把握できる。
図5は、組立作業の作業ログを表す表示D2の一例である。
図5に示すように、作業ログを表す表示D2には、例えば、作業者名、作業名、管理項目、各作業の状態(例えば、作業終了/未了/中断中など)、作業結果等が表示される。これにより、例えば、作業改善、生産計画の見直し、異常な時間が掛かっている場合の問い合わせ等が可能となる。
【0032】
工程S08では、作業者により組立作業の完了通知がコンピュータ21に入力される。工程S09では、組立作業の完了通知をホストコンピュータ10に報告させる。なお、工程S08およびS09は特に行われなくてもよく、組立作業の進捗報告の一部であってもよい。
【0033】
組立品100の組立作業が完了すると、小物部品キット33の小物部品34は全て使用され、通い箱B3内には存在しなくなる。従って、組立品100の組立作業終了後の通い箱B3の状態は、
図3Aに示したものと同じになる。そのため、作業者は、全ての小物部品34を組み付けたことを容易に確認することができる。
【0034】
なお、ビス類を必要数よりも多数キットする場合には、通い箱B2に残った各ビス類の数が所定の残数以下であるかどうかを作業者が確認して、確認結果をコンピュータ21に入力することが好ましい。また、生産場所3A~3Dに保管しておいた予備品を使用した場合には、その事実も入力することが好ましい。
【0035】
工程S10では、部品キット30等とともに運搬されてきた梱包箱50に、完成した組立品100を梱包する。工程S11では、組立作業が完了した後の組立品100を生産場所3A~3Dから回収する。このとき、部品キット30の通い箱B1~B3および電動ドライバ41、42も回収される。回収された組立品100は、必要に応じて工場2で受け入れ検査されてもよい。
【0036】
かかるリモート生産システム1によれば、例えば感染症の発生などの理由によって、通常時には組立品100を生産している作業者の一部が工場2に出勤することができなくなった場合であっても、作業者が他の生産場所3A~3Dで組立品100を組み立てることができる。また、組み立てた組立品100を工場2に回収することができる。従来の生産方法であれば、例えば感染症などによって作業者の一部が工場2に出勤することができなくなった場合、工場2での組立作業は停止または停滞し、組立品100を生産計画通りに組み立てることが困難になる。しかし、本実施形態に係るリモート生産システム1によれば、他の生産場所3A~3Dで組立品100を組み立てることができるため、組立品100を生産計画通りに生産することが容易となる。
【0037】
特に、本実施形態に係るリモート生産システム1は、一般住居でも組立品100の組立が可能なように構成されている。言い換えると、工場2でないと実施できないような工程がないように構成されている。さらに、無線LAN方式によって、ほとんどどんなネット環境であっても生産場所の端末としてのコンピュータ21をホストコンピュータ10に接続できる。よって、作業者の自宅など、事業者や作業者にとって都合のよい場所を生産場所として選択することが可能である。
【0038】
また、本実施形態に係るリモート生産システム1によれば、生産拠点を移転するような大規模な移動作業や設置作業が不必要なため、作業者の一部が工場2に出勤できない事態が発生した場合には、迅速かつ安価にリモート生産体制に移行することができる。
【0039】
本実施形態では、組立品100の生産場所は複数(3A~3D)であり、複数の生産場所3A~3Dのうちの少なくとも1つの生産場所に設けられたコンピュータ21は、他の生産場所に設けられたコンピュータ21に入力された組立作業の進捗を確認可能に構成されている。例えば、作業者のリーダーのコンピュータ21は、他の生産場所に設けられたコンピュータ21に入力された組立作業の進捗を確認可能に構成されていてもよい。例えば生産場所3Aにいる作業者がリーダーの場合、生産場所3Aのコンピュータ21によって、他の生産場所3B~3Dのコンピュータ21に入力された組立作業の進捗を確認できてもよい。これにより、生産場所3Aにいる作業者は、自己も含め、いずれかの生産場所3A~3Dにおける生産が止まったり遅れたりしていた場合には、その状態を把握できる。そこで、生産が止まったり遅れたりしている生産場所以外の生産場所での生産量を増やす等の対応を取ることができる。
【0040】
なお、ホストコンピュータ10では、全ての生産場所3A~3Dにおける組立作業の進捗を確認できてもよい。また、全ての生産場所3A~3Dに設けられたコンピュータ21によって、それぞれ他の全ての(または自己も含む全ての)生産場所の組立作業の進捗状況を確認できてもよい。例えば、全ての生産場所3A~3Dのコンピュータ21によって、自己も含む全ての生産場所3A~3Dの作業ログ(それぞれ、例えば
図5に示すようなもの)を確認できてもよい。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では説明されていなかったが、生産場所でトラブルや判断に迷う事象(例えば、合格か不合格か迷うような外観の問題)が発生した場合には、生産場所の端末を使って工場内外の担当者と音声で通信することができてもよい。その際、端末に付属または接続されたカメラによって画像を送信できてもよい。
【0042】
上記した実施形態では、組立品100は工場2からの出荷を前提として工場2に回収されたが、回収場所は他の出荷拠点でもよい。生産場所や回収時ごとに回収場所が異なっていてもよい。また、上記した実施形態では、完成した組立品100の梱包は組立品100を工場2に回収するためのものであったが、客先に出荷するための出荷梱包であってもよい。
【0043】
その他、特に言及がない限り、上記した実施形態は本発明を限定しない。例えば、図示した部品、組立品、画面表示等は例示に過ぎず、本発明を限定しない。
【符号の説明】
【0044】
2 工場
3A~3D 生産場所
10 ホストコンピュータ
20A リモート端末セット
21 コンピュータ(端末)
22 無線LANアダプタ
30 部品キット
40 工具セット
100 組立品