(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】近視治療のためのデジタルシステム、デジタルシステムの動作方法及びコンピュータ読み取り可能媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 3/113 20060101AFI20240215BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20240215BHJP
A61F 9/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A61B3/113
G16H50/20
A61F9/00
(21)【出願番号】P 2022523130
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(86)【国際出願番号】 KR2019018729
(87)【国際公開番号】W WO2021075641
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0130146
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522154607
【氏名又は名称】エスアルファセラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チェ・スンウン
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107595308(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0121608(US,A1)
【文献】特表2016-529963(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1432348(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0006805(KR,A)
【文献】国際公開第2019/067779(WO,A1)
【文献】特表2018-509983(JP,A)
【文献】特表2020-522363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/113
G16H 50/20
A61F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視治療のためのデジタルシステムであって、
デジタルプログラムを格納する少なくとも一つのメモリーと、
少なくとも一つのプロセッサと、を含み、前記少なくとも一つのプロセッサは、前記デジタルプログラムを実行して、
デジタル課題生成部によって、近視を治療するため
の複数の神経体液性因子(neuro-humoral factors)
の不均衡を矯正するように構成された複数の第1モジュールの少なくとも一部に基づいて、一つ又は複数の第1デジタル課題を近視治療の対象である第1使用者に提供することであって、前記第1モジュールのそれぞれは、前記第1使用者が従うべき一つ又は複数のデジタル課題を含むことと、
結果収集部によって、センサを使用して、前記一つ又は複数の第1デジタル課題に対する前記第1使用者の実行結果を収集することと、を行うように構成され、
前記複数の第1モジュールは、環境、行動、情緒、及び認知に関するパラメータに関連して導出され
るデジタル課題を含む、デジタルシステム。
【請求項2】
前記一つ又は複数の神経体液性因子は、IGF(insulin-like growth factor)、コルチゾール(cortisol)、又はドーパミン(dopamine)のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載のデジタルシステム。
【請求項3】
前記複数の第1モジュールは、光環境設定モジュール、眼球運動モジュール、身体運動モジュール、楽しさモジュール、自我モジュール、安全・平安モジュール、又は成就モジュールのうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載のデジタルシステム。
【請求項4】
前記複数の第1モジュールは、前記光環境設定モジュール及び前記眼球運動モジュールを含み、
前記光環境設定モジュールは、IGF分泌を促進させるための一つ又は複数の光環境設定課題を含み、
前記眼球運動モジュールは、IGF分泌を促進させるための一つ又は複数の眼球運動課題を含む、請求項3に記載のデジタルシステム。
【請求項5】
IGF分泌を促進させるための前記一つ又は複数の光環境設定課題は、前記第1使用者のための光環境制御又は光環境通知に関する一つ又は複数のデジタル課題を含む、請求項4に記載のデジタルシステム。
【請求項6】
IGF分泌を促進させるための前記一つ又は複数の眼球運動課題は、前記第1使用者のための眼球運動、瞬き、遠距離注視、目閉じ、又は眼球関連行動制御に関するデジタル課題のうちの少なくとも一つを含み、
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記デジタルプログラムを実行して、眼球追跡技術(eye tracking technology)を用いて前記一つ又は複数の第1デジタル課題に対する前記第1使用者の実行結果を収集するようにさらに構成される、請求項4に記載のデジタルシステム。
【請求項7】
前記複数の第1モジュールは、前記身体運動モジュールを含み、
前記身体運動モジュールは、IGF分泌を促進させ、かつコルチゾール分泌を抑制するための一つ又は複数の身体運動課題を含む、請求項3に記載のデジタルシステム。
【請求項8】
IGF分泌を促進させ、かつコルチゾール分泌を抑制するための前記一つ又は複数の身体運動課題は、前記第1使用者のための遅い速度の楽な身体運動、腹筋運動、休息、弛緩、深呼吸、瞑想、又は眼のマッサージに関するデジタル課題のうちの少なくとも一つを含む、請求項7に記載のデジタルシステム。
【請求項9】
前記複数の第1モジュールは、楽しさモジュールを含み、
前記楽しさモジュールは、ドーパミン分泌を促進させ、かつコルチゾール分泌を抑制するための一つ又は複数の楽しさ課題を含む、請求項3に記載のデジタルシステム。
【請求項10】
前記複数の第1モジュールは、前記自我モジュール及び前記安全・平安モジュールのうちの少なくとも一つを含み、
前記自我モジュールは、コルチゾール分泌を抑制するための一つ又は複数の自我課題を含み、
前記安全・平安モジュールは、コルチゾール分泌を抑制するための一つ又は複数の安全・平安課題を含む、請求項3に記載のデジタルシステム。
【請求項11】
前記複数の第1モジュールは、前記成就モジュールを含み、
前記成就モジュールは、ドーパミン分泌を促進させるための一つ又は複数の成就課題を含む、請求項3に記載のデジタルシステム。
【請求項12】
ドーパミン分泌を促進させるための前記一つ又は複数の成就課題は、デジタル課題を実行することに対する補償に関する一つ又は複数のデジタル課題を含む、請求項11に記載のデジタルシステム。
【請求項13】
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記デジタルプログラムを実行して、前記第1使用者から受信した情報、又は第2使用者からの入力のうちの少なくとも一つに基づいて、前記一つ又は複数の第1デジタル課題を提供するようにさらに構成される、請求項1に記載のデジタルシステム。
【請求項14】
前記第2使用者からの前記入力は、前記第1使用者のための前記第2使用者による処方に対する実行結果を含む、請求項13に記載のデジタルシステム。
【請求項15】
前記第1使用者から受信した前記情報は、前記第1使用者の基底要因(basal factors)、医療情報、又はデジタル治療剤理解能力(digital therapeutics literacy)のうちの少なくとも一つを含み、
前記基底要因は、前記第1使用者の活動量、心拍数、睡眠、及び食事を含み、
前記医療情報は、前記第1使用者のEMR(electronic medical record)、家族歴、遺伝的脆弱性(genetic vulnerability)、及び遺伝的感受性(genetic susceptibility)を含み、
前記デジタル治療剤理解能力は、デジタル治療及び装置に関する前記第1使用者の接近性と収容姿勢を含む、請求項13に記載のデジタルシステム。
【請求項16】
前記複数の第1モジュールは、近視を治療するための前記一つ又は複数の神経体液性因子と前記パラメータとの間の生理学的連関関係に基づいて導出される一つ又は複数のデジタル課題を含む、請求項1に記載のデジタルシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記デジタルプログラムを実行して、前記デジタル課題生成部によって、前記一つ又は複数の第1デジタル課題に対する前記第1使用者の実行結果に基づいて、近視を治療するための一つ又は複数の神経体液性因子を調節するように構成された複数の第2モジュールの少なくとも一部に基づいて、一つ又は複数の第2デジタル課題を前記第1使用者に提供するようにさらに構成され、前記第2モジュールのそれぞれは、前記第1使用者が従うべき一つ又は複数のデジタル課題を含み、
前記一つ又は複数の第2デジタル課題は、前記一つ又は複数の第1デジタル課題とは異なる、請求項1に記載のデジタルシステム。
【請求項18】
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記デジタルプログラムを実行して、前記一つ又は複数の第1デジタル課題に対する前記第1使用者の実行結果をサーバに送信し、前記一つ又は複数の第1デジタル課題に対する前記第1使用者の実行結果に基づいて
、前記一つ又は複数の第2デジタル課題を
生成するようにさらに構成される、請求項17に記載のデジタルシステム。
【請求項19】
デジタルプログラムを格納する少なくとも一つのメモリーと、少なくとも一つのプロセッサと、少なくとも1つのセンサと、を含む近視治療のためのデジタルシステムの動作方法であって、
前記デジタルプログラムを実行することにより、前記プロセッサが、
デジタル課題生成部によって、近視を治療するため
の複数の神経体液性因子
の不均衡を矯正するように構成された複数の第1モジュールの少なくとも一部に基づいて、一つ又は複数の第1デジタル課題
を生成し、前記生成された第1のデジタル課題を近視治療の対象である第1使用者に提
示することであって、前記第1モジュールのそれぞれは、前記第1使用者が従うべき一つ又は複数のデジタル課題を含むことと、
結果収集部によって、センサを使用して、前記一つ又は複数の第1デジタル課題に対する前記第1使用者の実行結果を収集することと、を
実行することを含み、
前記複数の第1モジュールは、環境、行動、情緒、及び認知に関するパラメータに関連して導出され
るデジタル課題を含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法をコンピュータで実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、近視進行の抑制を含む近視治療を目的とするデジタル治療剤(digital therapeutics、以下、DTx)に関し、特に、近視の発病機序を見つけるための基礎科学的論文と関連臨床試験論文に対する文献調査と専門家レビューを通じて、児童期/青少年期の軸性近視に対する発病機序(mechanism of action、以下、MOA)を導出し、これに基づいて児童期/青少年期の軸性近視進行の抑制と治療のための治療仮説(therapeutic hypothesis)とデジタル治療仮説(digital therapeutic hypothesis)を確立することを含む。
【0002】
また、本発明は、前記児童期/青少年期の軸性近視のデジタル治療仮説を臨床的に検証し、デジタル治療剤として具現するための、アプリケーション(application)の合理的設計と、それに基づいた児童期/青少年期の軸性近視進行の抑制と治療を目的とするデジタル装置及びアプリケーションの提供を含む。
【背景技術】
【0003】
韓国の近視患者有病率は非常に高く、2008年から2012年までのデータを分析した結果、特に、韓国の12~18歳青少年の近視有病率(-0.75ディオプター以上)は80.4%であって、人口学的に60代の老人近視有病率(18.5%)の4.35倍であり、高度近視有病率(-6ディオプター以上)は12%であって、60代(1.5%)より8倍も高く現れ、米国、英国などの青少年の近視有病率に比べて3倍近く高い数値を示した。
【0004】
より深刻なものは、韓国の青少年近視患者の約70%が重度も及び高度近視患者であると調査された。小学生の近視有病率も1980年に23%内外であったことに比べて、1990年代38%、2000年代46.2%で着実に増加している。
【0005】
世界保健機構(WHO)は、近視を疾病として認識しているが、全世界的に未だに近視に対する明らかな治療剤がない実情である。近年、中国、シンガポール、韓国などで近視有病率が急に増加していることから、近視は、将来失明まで引き起こす可能性のある眼科疾患として浮上しており、再び学界の注目を浴びている。
【0006】
近視の種類は、眼球の軸が長くなって発生する軸性近視(axial myopia)と、水晶体や角膜などの屈折率の増加による屈折性近視(refractive myopia、indexmyopia)に分類される。軸性近視は、網膜や脈絡膜に影響を及ぼさない単純近視(simple myopia)と、網膜に変性をもたらして失明を引き起こす変性近視(degenerative myopia)にさらに分類される。糖尿による水晶体核硬化(nuclosclerosis)や円錐角膜(keratoconum)を除くと、大部分の近視は、小学校の年齢から進行が加速化する単純軸性近視に該当する。
【0007】
このような近視の進行を遅らせるか治療する方法として、薬物(アトロピン)と特殊レンズ(例えば、ドリームレンズ)を使用する方法が知られている。しかし、アトロピンの場合、瞳孔拡張による深刻なグレアが発生する可能性がある。また、ドリームレンズの場合、角膜損傷の危険性が高いので、視力矯正メガネと比べると、その臨床的活用が制限的である。
【0008】
これとは別に、様々な近視治療用機構、眼球運動法、眼球運動アプリケーションなどが開発されて販売されているが、大部分がその臨床的有効性に対する根拠が足りず、別途の認許可手続きなしに販売されている実情である。このように、病院で近視診断を受けた児童期/青少年期患者が、近視進行の抑制と治療のために行う信頼性の高い治療法の不在が現実である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、先ず、児童期/青少年期の成長による眼球発達段階及び近視進行の神経体液性因子(neuro-humoral factors)を考慮して、近視に対する発病機序、治療仮説、デジタル治療仮説を導出する。本発明は、近視デジタル治療仮説に基づいて、光刺激環境下で、患者がデジタル課題の繰り返し的な実行を通じて、近視の進行を抑制し、治療効果を提供する信頼性を確保できる近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置は、近視に対する発病機序と治療仮説に基づいて、前記近視治療のためのデジタル治療剤モジュール(digital therapeutics module)を生成し、該デジタル治療剤モジュールに基づいて、具体化したデジタル課題を生成し、前記デジタル課題を第1使用者に提供するデジタル課題生成部、及び前記デジタル課題に対する前記第1使用者の実行結果を収集する結果収集部を含んでよい。
【0011】
本発明の一実施形態による軸性近視治療のためのデジタルアプリケーションは、近視に対する発病機序と治療仮説に基づいて、前記近視治療のためのデジタル治療剤モジュールを生成する段階、前記デジタル治療剤モジュールに基づいて、具体化したデジタル課題を生成する段階、前記デジタル課題を第1使用者に提供する段階、及び前記デジタル課題に対する前記第1使用者の実行結果を収集する段階を含む動作をコンピューティング装置により実行するようにできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軸性近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションによれば、軸性近視進行の神経体液性因子を考慮して、近視に対する発病機序と治療仮説、デジタル治療仮説を導出し、これに基づいて適切な光刺激環境の設定下で、患者にデジタル課題を提示し、その実行結果を収集分析することにより、近視の進行を抑制し、治療を提供する信頼性のあるデジタル装置及びアプリケーションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1a】本発明で提案した児童期/青少年期の軸性近視の発病機序を示す図である。
【
図1b】本発明で提案した軸性近視の治療仮説を示す図である。
【
図1c】本発明で提案した軸性近視のデジタル治療仮説を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションの入力と出力ループを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションによるフィードバックループを示す図である。
【
図5a】本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル近視装置及びアプリケーションでデジタル治療を具現するモジュール設計を示す図である。
【
図5b】本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションを裏付ける背景要因を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションを用いて患者カスタマイズ型デジタル処方を指定する方法を示す図である。
【
図7a】本発明の一実施形態による実行環境設定を示す図である。
【
図7b】本発明の一実施形態による各モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す図である。
【
図7c】本発明の一実施形態による各モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す図である。
【
図7d】本発明の一実施形態による各モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す図である。
【
図7e】本発明の一実施形態による各モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す図である。
【
図7f】本発明の一実施形態による各モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す図である。
【
図7g】本発明の一実施形態による各モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションでデジタル課題を生成する方法を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションでフィードバック制御により動作を繰り返し実行することを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しつつ、本発明の多様な実施形態に対して詳細に説明する。本文書で図上の同一の構成要素に対しては同一の参照符号を使用し、同一の構成要素に対して重複した説明は省略する。
【0015】
本文書に開示されている本発明の多様な実施形態に対して、特定の構造的又は機能的説明は、単に本発明の実施形態を説明するための目的として例示されたものであって、本発明の多様な実施形態は、多様な形態で実施可能であり、本文書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはいけない。
【0016】
多様な実施形態で用いられる「第1」、「第2」、「第一」、又は「第二」などの表現は、多様な構成要素を順序及び/又は重要度に関係なく修飾することができ、当該構成要素を限定しない。例えば、本発明の権利範囲を外れることなく、第1の構成要素は第2の構成要素と命名されてよく、同様に、第2の構成要素も第1の構成要素に変えて命名されてよい。
【0017】
本文書で用いられる用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであって、他の実施形態の範囲の限定を意図するものではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味がない限り、複数の表現を含んでよい。
【0018】
技術的や科学的な用語を含めて、ここで用いられる全ての用語は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される意味と同一の意味を有し得る。一般的に用いられる辞書に定義された用語は、関連技術の文脈上有する意味と同一又は類似の意味を有するものと解釈されてよく、本文書で明らかに定義されない限り、理想的又は過度に形式的な意味に解釈されない。場合によっては、本文書で定義された用語であっても、本発明の実施形態を排除するように解釈されてはいけない。
【0019】
従来の新薬開発は、現場での医学的必要を確認し、当該疾病に対する専門家レビューとメタ分析を活用した発病機序を提案し、これに基づいた治療仮説を導出することから始まる。また、治療仮説に基づいて治療効果を期待した薬物のライブラリを準備した後、スクリーニングにより候補物質を発見し、当該候補物質の最適化及び前臨床試験を経て、臨床以前段階から有効性と安全性を確認して最終候補薬物を確定することになる。そして、当該候補薬物の大量生産のためにCMC(chemistry、manufacturing、and controls)を確立した後、当該候補薬物の臨床試験を進行して発病機序と治療仮説に対する検証を行い、候補薬物に対する臨床的有効性及び安全性を確認することになる。
【0020】
特許の観点からは、新薬開発のアップストリーム(upstream)に該当する薬物ターゲットと信号伝達(drug target/signaling)は、多くの不確実性を有している。そして、多くの場合、既存に報告された結果を総合、解釈する方法論を採用しているので、発明の新規性を認められ難い場合が多い。それに反して、薬物ターゲットと信号伝達を調節して疾病を治療できる薬物の発明は、数多くの新薬研究開発の研究方法論の発展にもかかわらず、一部の抗体や核酸(DNA、RNA)治療剤分野を除くと、最も高い水準の創意性が求められる。結果として、薬物の分子的構造は、新薬分野において最も強力な物質特許を構成する最も核心的な要素である。
【0021】
このような物質特許により強力に保護される薬物とは異なり、デジタル治療剤は、原則的にソフトウェアで具現される。デジタル治療剤の属性上、治療剤としての臨床的検証と認許可プロセスを考慮すると、当該疾病に対するデジタル治療剤の合理的設計及びこれに基づいたソフトウェアの具現は、特許として保護されなければならない非常に創意的な発明の過程であると言える。
【0022】
すなわち、本発明のようなデジタル治療剤の核心は、当該疾病の治療に好適なデジタル治療剤の合理的設計と、これに基づいて臨床的に検証できる具体的なソフトウェアの開発にある。このような観点から具現された本発明の近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションについて、以下で具体的に説明する。
【0023】
図1aは、本発明で提案した児童期/青少年期の軸性近視の発病機序を、
図1bは、本発明で提案した軸性近視の治療仮説を、
図1cは、本発明で提案した軸性近視のデジタル治療仮説を示す図である。
【0024】
以下で説明する本発明の近視進行の抑制と治療のためのデジタル装置及びアプリケーションは、児童期/青少年期の軸性近視に対する臨床試験論文の文献調査と専門家レビューを通じて導出された発病機序と治療仮説に基づいて具現された。
【0025】
一般的に言えば、疾病治療は、特定の疾病を病態生理学的機能及び器質的側面で分析して、開始点、進行点及び終末点を決定する。そして、当該疾病の人口学的特性及び疾病統計学的分析を通じて、疾病の症状(indication)を定義する。また、確定された症状に該当する患者の生理、特に、神経体液性因子を分析し、患者の神経体液性因子を疾病に関する部分に範囲を狭めて、発病機序を導出する。
【0026】
次に、疾病と関連した当該神経体液性因子の調節に直接的な関係がある行為と環境を制御することにより、当該疾病を治療する治療仮説を導出する。このような治療仮説をデジタル治療剤として具現するために、患者の「行為/環境の制御→神経体液性因子の調節」に連結される繰り返し的なデジタル課題と実行による治療効果の達成というデジタル治療仮説を提案する。本発明のデジタル治療仮説は、患者の行為(行動、情緒、認知領域を含む)変化、環境改善、患者参与を具体的な課題(instruction)の形で提示し、その実行を収集・分析するデジタル装置及びアプリケーションとして具現される。
【0027】
以上で説明した臨床試験に対する文献調査は、メタ分析、データマイニングにより行われてよく、各分析段階において、臨床専門家のフィードバックと深層レビューが適用されてよい。基本的に、本発明は、以上で説明した過程を通じて、軸性近視の発病機序と治療仮説を抽出することができ、これに基づいて神経体液性因子を調節して軸性近視進行の抑制と治療のためのデジタル治療剤としてのデジタル装置及びアプリケーションの提供を含む。
【0028】
しかし、本発明に係る軸性近視の発病機序と治療仮説の抽出方法が、以上で説明した方法にのみ制限されるものではなく、この外にも多様な方法により疾病の発病機序と治療仮説を抽出することができる。
【0029】
図1aを参照すれば、児童期/青少年期の多様な危険要因(risk factors)、例えば、近距離作業、教育、人種、遺伝、その他の要因(早産、ダイエット、光露出、出生季節、高い眼圧など)が児童期/青少年期の神経体液性因子の不均衡をもたらすことができる。このため、IGF、コルチゾール、ドーパミン異常により、眼球周辺の鞏膜にタンパク質多糖(proteoglycan)生成の異常が発生し、その結果、眼軸が非正常的に成長し、軸性近視が発生する。
【0030】
図1bを参照すれば、本発明に係る軸性近視の治療仮説は、患者の行為(行動、情緒、認知領域を含む)と環境、そして、患者参与による神経体液性因子のバランス回復による軸性近視進行の抑制と治療である。
【0031】
図1cを参照すれば、軸性近視のデジタル治療仮説は、患者の行為変化、環境改善、参与を具体的な課題の形で提示し、その実行を収集・分析するデジタル装置及びアプリケーションとして具現される。本発明のデジタル治療剤を用いると、前記デジタル入力(課題)と出力(実行)を通じて、児童期/青少年期の軸性近視患者の神経体液性因子の不均衡を矯正し、軸性近視進行の抑制と治療を達成することができる。
【0032】
一方、
図1a及び1bでは、軸性近視の発病機序と治療仮説について説明したが、本発明がこれに制限されるものではなく、すべての種類の近視、その他の疾病に対しても、本発明の方法論を適用してよい。
【0033】
また、
図1a及び
図1bでは、神経体液性因子をIGF(insulin-like growth factor)、コルチゾール(cortisol)、ドーパミン(dopamine)で説明したが、これは例示的なものであるだけで、本発明に係る近視の発病機序と治療仮説において神経体液性因子がこれに制限されるものではなく、近視に影響を与えるすべての神経体液性因子が考慮されてよい。
【0034】
図2は、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置の構成を示すブロック図である。
【0035】
図2を参照すれば、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルシステム000は、デジタル課題生成部010、センシングデータ収集部020、実行入力部030、結果分析部040、データベース050、及び保安部060を含んでよい。
【0036】
児童期/青少年期の軸性近視に対する発病機序、治療仮説、及びデジタル治療仮説に基づいて、医者(第2使用者)は、当該患者の近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションとして具現されるデジタル治療剤を処方することができる。この際、デジタル課題生成部010は、近視に対する神経体液性因子と行動/環境間の相互作用に基づいて、デジタル治療剤の処方を患者が実行できる具体的な行動課題として患者に提供する装置である。例えば、神経体液性因子は、IGF、コルチゾール、及びドーパミンなどを含んでよい。しかし、これに制限されるものではなく、近視を引き起こす可能性のあるすべての神経体液性因子が考慮されてよい。
【0037】
デジタル課題生成部010は、医者からの入力に基づいてデジタル課題を生成することができる。この場合、デジタル課題生成部010は、医者が患者(第1使用者)を診断して収集した情報に基づいてデジタル課題を生成することができる。また、デジタル課題生成部010は、患者から受信した情報に基づいてデジタル課題を生成することができる。例えば、患者から受信した情報は、患者の基底要因(basal factors)、医療情報、デジタル治療剤理解能力(digital therapeutics literacy)を含んでよい。この際、基底要因は、患者の活動量(activity)、心拍数、睡眠、食事(栄養と熱量)などを含んでよい。医療情報は、患者のEMR(electronic medical record)、家族歴、遺伝的脆弱性(genetic vulnerability)、遺伝的感受性(genetic susceptibility)などを含んでよい。デジタル治療剤理解能力は、デジタル治療課題及び装置に関する患者の接近性(accessibility)と収容姿勢などを含んでよい。
【0038】
デジタル課題生成部010は、近視に対する発病機序と治療仮説を反映して、仮想媒介変数を活用、デジタルモジュールを生成することができる。この際、仮想媒介変数は、患者の環境、行動、感情、及び認知の側面に対して導出され得る。これについては
図5で詳細に後述する。
【0039】
デジタル課題生成部010は、患者が治療効果を得るために具体的に設計されたデジタル課題を生成し、その課題を患者に提供する。例えば、デジタル課題生成部010は、明るい光環境により光刺激を提供すると同時に、各デジタル治療剤モジュールの具体的なデジタル課題を生成することができる。
【0040】
センシングデータ収集部020と実行入力部030は、デジタル課題生成部010により提供されたデジタル課題に対する患者の実行結果を収集することができる。具体的には、デジタル課題に対する患者の順守度(adherence)をセンシングするセンシングデータ収集部020と、デジタル課題に対して患者が直接実行結果を入力することができる実行入力部030とで構成され、デジタル課題に対する患者の実行結果を出力する。
【0041】
結果分析部040は、患者の行動順守度や参与を予め設定された周期で収集して外部に報告することができる。よって、医者は、患者が直接内院しなくてもアプリケーションによりデジタル課題の実行経過を持続的にモニタリングすることができる。
【0042】
データベース050は、近視に対する発病機序、治療仮説、使用者に提供されたデジタル課題、使用者の実行結果に関するデータを格納することができる。
図2では、データベース050が近視治療のためのデジタルシステム000に含まれると示されたが、データベース050は、外部のサーバーに備えられてよい。
【0043】
一方、デジタル課題生成部010によるデジタル課題の入力とセンシングデータ収集部020/実行入力部030による患者のデジタル課題実行結果の出力、そして、結果分析部040による評価という一連のループは、複数回繰り返して行われてよい。この際、デジタル課題生成部010は、以前回次で提供された患者のデジタル課題とその出力値及び評価を反映して、現在回次に対する患者カスタマイズ型デジタル課題を生成することができる。
【0044】
このように、本発明の軸性近視進行の抑制及び治療のためのデジタル治療装置によれば、軸性近視の神経体液性因子を考慮して、軸性近視に対する発病機序と治療仮説、デジタル治療仮説を導出し、これに基づいて患者に適切な光刺激環境の設定と軸性近視の治療のためのデジタル課題を提示し、その実行を収集・分析することにより、信頼性を確保できる近視治療が可能となる。
【0045】
図3は、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションの入力と出力ループを示す図である。
【0046】
図3を参照すれば、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションは、当該デジタル処方を課題の形で患者に入力し、当該デジタル課題に対する実行結果を出力することができる。
【0047】
患者に提供されるデジタル課題は、行動、情緒、認知に対する具体的な行為課題と患者の光環境を制御することを含んでよい。
図3に示されたように、デジタル課題は、眼球運動、ストレス減少、成就感、光刺激などを含んでよい。しかし、これは例示であるだけで、本発明に係るデジタル課題がこれに制限されるものではない。
【0048】
デジタル課題に対する患者の実行結果は、1)課題-実行ログイン/ログアウト情報、2)眼球運動、ストレスに関する心拍数、酸素飽和度の変化のようなパッシブデータ(passive data)の形でセンシングされる順守度情報、そして、3)患者実行結果の直接入力情報で構成される。
【0049】
図4は、本発明の一実施形態による軸性近視の治療のためのデジタル装置及びアプリケーションのフィードバックループを示す図である。
【0050】
図4を参照すれば、前述した
図3の単一のフィードバックループを複数回繰り返し実行して神経体液性因子を調節することにより、軸性近視進行の抑制と治療を達成することを示している。
【0051】
軸性近視の場合、疾病的特性上、その治療のためには、短くは10週、長くは児童期/青少年期全体にわたる長期間のデジタル治療と観察が求められる。このような特性のために、軸性近視進行の抑制及び治療効果は、当該治療過程中の単純課題-実行の繰り返しよりは、フィードバックループによる課題-実行の漸進的な向上により、より効果的に達成され得る。
【0052】
例えば、初回のデジタル課題と実行結果は、単一のループでは入力値と出力値として与えられるが、N回実行時にループのフィードバックプロセスを用いて、今回のループで生成された入力値と出力値を反映して次回のループの入力を調整することから、新しいデジタル課題を生成することができる。このようなフィードバックループを繰り返すことにより、患者カスタマイズ型デジタル課題を導出すると同時に、治療効果を極大化することができる。
【0053】
このように、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションでは、以前回次(例えば、N-1回次)で提供された患者のデジタル課題及び課題実行結果に関するデータを用いて、現在回次(例えば、N回次)に対する患者のデジタル課題と実行結果を算出することができる。すなわち、以前ループで算出された患者のデジタル課題及び課題実行結果に基づいて、次回のループでのデジタル課題を生成することができる。この際、フィードバックプロセスは、必要に応じて多様なアルゴリズムと統計的モデルが使用されてよい。
【0054】
このように、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションでは、迅速なフィードバックループによって患者に好適な患者カスタマイズ型デジタル課題の最適化が可能である。
【0055】
図5aは、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル近視装置及びアプリケーションでデジタル治療を具現するモジュール設計を示す図であり、
図5bは、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションを裏付ける背景要因を示す図である。
【0056】
図5aに示されたように、近視に対する発病機序に基づいた治療仮説が作られると、ターゲットとなる神経体液性因子(例えば、IGF、コルチゾール、ドーパミンなど)を導出することができる。このような神経体液性因子の調節に具体的な課題を対応させるために、仮想媒介変数を活用した。「神経体液性因子-仮想媒介変数-モジュール」の相関関係を用いて、近視治療に必要なモジュールを導出した。各モジュールは、後述する
図7でより具体的にモジュール別の課題の形で説明する。この際、各モジュールは、実際デジタル装置又はアプリケーションとして具現されるデジタル治療剤の基本設計単位であり、具体的な課題の集合である。
【0057】
具体的には、
図5aを参照すれば、軸性近視に対する発病機序と治療仮説を通じて導出された神経体液性因子は、IGF、コルチゾール(若しくは、コルチゾールに影響を受けるTGF-beta)及びドーパミン(若しくは、GABA agonist/antagonist、glucagon)であってよい。近視治療のためには、当該年齢代で眼球の発達に影響を与えるIGFとドーパミンの分泌を促進させ、コルチゾールの分泌は抑制させるように調節しなければならない。
【0058】
各神経体液性因子の制御を環境(光)、行動(運動)、情緒(ストレス減少)、認知(成就感)を仮想媒介変数として活用してデジタル治療剤モジュールに対応させた。そして、変換されたモジュールに基づいて、各モジュール別の具体的なデジタル課題を生成した。この際、デジタル課題は、モニタリングを通じて出力可能な実行環境設定とモジュール(眼球運動、体操、自我、安全・平安、楽しさ、及び成就モジュール)を含んでよい。しかし、これは例示であるだけで、本発明に係るモジュールにこれに制限されるものではない。
【0059】
一方、
図5bを参照すれば、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションのモジュール設計において、背景要因をともに考慮してよい。
【0060】
ここで、背景要因は、本発明に係るデジタル近視治療の臨床的有効性を検証する過程において、臨床実験結果の補正のために必要な要素である。具体的には、
図5bに示された背景要因中の基底要因(basal factors)は、活動量(activity)、心拍数、睡眠、食事(栄養と熱量)などを含んでよく、医療情報は、患者が内院した時に作成したEMR、
家族歴、遺伝的脆弱性、及び感受性などを含んでよく、デジタル治療剤理解能力は、デジタル治療課題及び機器に対する患者の接近性と収容姿勢を含んでよい。
【0061】
図6は、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションを用いて患者カスタマイズ型デジタル処方を指定する方法を示す図である。
【0062】
図6の(A)は、日常的患者-医者間の問診による処方過程を示し、
図6の(B)は、医者が複数のデジタル課題とその実行結果の分析を通じて、患者カスタマイズ型デジタル処方を指定する方式を示す。
【0063】
このように、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションを用いることにおいて、
図6の(B)に示されたように、一定の期間の間に患者の課題と実行結果を医者が検討して、患者カスタマイズ型で近視治療のためのモジュールの種類と各モジュール別の課題を調整することができる。
【0064】
図7aは、本発明の一実施形態による実行環境設定を、
図7b~7gは、本発明の一実施形態による各モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す。
【0065】
軸性近視のデジタル治療の場合、通常、10週以上持続的な患者の参与が必須であるため、青少年期児童がデジタル治療に対して楽しさを感じて自発的に参与することが何よりも重要である。このような脈絡では、各モジュールにゲーム的な要素を入れてモジュールを構成することができる。後述のように、軸性近視の改善及び治療のために具現された近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションで、各モジュールは基本設計単位であり、具体的な課題の集合である。
【0066】
図7aを参照すれば、実行環境設定の具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す。この際、実行環境設定は、
図2のデジタル課題生成部010の構成で含まれてよい。
【0067】
具体的には、実行環境設定は、照度センサーを用いた実行環境の明るさを設定することを含み、他のモジュールは、設定された光環境下で行われる。
【0068】
一般的には、日差しは、眼球健康と密接な関係を有している。直射光線に露出したものと同様の程度の強い光刺激は、網膜の神経細胞に作用してドーパミンの分泌を促進することにより、鞏膜を支持するタンパク質多糖の合成を誘導する。これは正常な眼軸長さの調節に必須要因である。
【0069】
このように、患者に光刺激を提供するために、照度センサーを用いて現在環境の照度を測定するようにするか、現在光環境に対する通知を提供することにより、患者がデジタル治療に参与する環境を明るく制御するようにできる。
【0070】
図7bを参照すれば、眼球運動モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す。この際、眼球運動モジュールは、
図2のデジタル課題生成部010の構成で含まれてよい。
【0071】
眼球運動に対するデジタル課題は、患者の眼球運動、バイオフィードバック(biofeedback)、眼球関連行動制御を含み、動眼筋でIGFの分泌を促進させる。具体的には、眼球運動モジュールの行動課題は、眼球運動、瞬き、遠距離注視、目閉じなどのように眼球追跡技術(eye tracking technology)を用いて患者順守度をモニタリングすることができる。しかし、眼球運動モジュールの実行結果収集は、眼球追跡技術に制限されるものではなく、課題に対する実行結果の患者直接入力を含む。
【0072】
図7cを参照すれば、身体運動モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す。この際、身体運動モジュールは、
図2のデジタル課題生成部010の構成で含まれてよい。身体運動モジュールは、遅い速度の楽な身体運動及び腹筋運動を含み、休息、弛緩、深呼吸などによりストレスを減少させ、コルチゾールの分泌を抑制する一連の行動課題(behavioral instruction)で構成されてよい。
【0073】
具体的には、身体運動モジュールの行動課題は、弛緩体操、深呼吸、瞑想、眼のマッサージなどのような行動課題を含む。そして、その実行結果をバイオフィードバック(EEG、ECG、EMG、EDGなど測定)装置や汎用センサー(activity、HRなど測定)を用いてセンシングデータ収集部020で収集するか、若しくは患者が直接実行入力部030を用いて入力する方法を含む。本発明の行動課題は、小児精神科で児童のストレス解消のために広く用いている行動治療法を準用して構成した。
【0074】
一般的には、近視の進行と青少年期の進行は密接な関係がある。特に、この時期には、年齢代、性別、性格、趣向に応じて、自我、安全・平安(換気、ventilation)、楽しさ、成就に対する多様性が大きくなるしかない。このような偏差をカバーするために、各患者の個別特性に応じて各モジュール別のデジタル課題をカスタマイズ型で提示することが好ましい。特に、会話のように、アプリケーションとの相互コミュニケーションが必要な課題は、ビックデータ分析、人工知能分析と結合して開発可能である。
【0075】
図7dを参照すれば、自我モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す。この際、自我モジュールは、
図2のデジタル課題生成部010の構成で含まれてよい。
【0076】
具体的には、自我モジュールの課題は、青少年の自尊感を高め、ストレスを下げる役割を目的とする。このために、例えば、会話、絵描き、瞑想、日記書き、自分の安全空間作り(safety place課題)、自分の好きなものなど(場所、時間、季節、色、食べ物、人など)、自分のバケットリスト、行きたい旅行先を決めて計画作りなどの課題を構成してよい。このような課題は、小児精神科で自尊感を高め、児童或いは青少年のストレス解消のために広く用いている心理治療法を準用して構成した。
【0077】
図7eを参照すれば、安全・平安モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す。この際、安全・平安モジュールは、
図2のデジタル課題生成部010の構成で含まれてよい。
【0078】
具体的には、安全・平安モジュールの課題は、青少年のストレスを下げる換気(ventilation)の役割を目的とする。このために、例えば、チャット、表現すること(書く、歌う、描く)、アニメーション的に不快な感情を捨てる(trash can課題)などの課題を構成してよい。このような課題は、小児精神科で児童或いは青少年のストレス解消のために広く用いている心理治療法を準用して構成した。
【0079】
図7fを参照すれば、楽しさモジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す。この際、楽しさモジュールは、
図2のデジタル課題生成部010の構成で含まれてよい。
【0080】
具体的には、楽しさモジュールは、患者がアプリケーションを使用して楽しさを感じらせる課題であって、青少年期の特性に応じて、音楽、ゲーム、又は動画などの多様なコンテンツを用いて構成されてよい。また、楽しさモジュールで楽しさ課題は、患者のデジタル治療参与の持続性を向上させることをさらに他の目的とする。
【0081】
図7gを参照すれば、成就モジュールの具体的な課題例示及び出力データ収集方式を示す。この際、成就モジュールは、
図2のデジタル課題生成部010の構成で含まれてよい。
【0082】
具体的には、成就モジュールは、患者の課業実行とその完遂の成就感によるドーパミンの分泌を促進する課題を含んでよい。ここで、課業成就課題は、課業を与え、その達成により患者が成就感を感じらせる課題であって、患者の参与期間にわたって課業をアップデートすることができ、自発的な参与を誘導し得るゲームを含んでよい。例えば、ゲームの具体的な形式は、学習、隠し絵又は異なる絵探し、クイズなどで多様に構成してよい。
【0083】
特に、成就モジュール中のクイズの形で具現される部分は、患者の健康情報理解能力とデジタル治療剤理解能力を高める付加的な効果を期待してよい。このような健康情報及びデジタル治療剤理解能力の向上は、患者の持続的な治療参与と実行度の向上のために必須要素である。
【0084】
前述したように、本発明に係るデジタル治療は、10週以上の患者参与が必要であり、この期間中、上述したモジュールの課題をまじめに実行する自体が患者の成就感が形成できるように、成就モジュールに称賛(補償)課題を作ることができる。称賛課題で患者の積極的な治療参与は、患者-保護者、患者-医者間の信頼と補償により、成就感でフィードバックすることができる。
【0085】
以上で
図7b~
図7gに示されたデジタル課題は、単に例示的なものであるだけで、本発明がこれに制限されるものではなく、患者に提供されるデジタル課題は、場合によって多様に設定されてよい。
【0086】
図8は、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【0087】
図8を参照すれば、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションは、先ず、近視に対する発病機序と治療仮説に基づいて、近視治療のためのデジタル治療剤モジュールを生成することができる(S810)。この際、段階S810においては、近視に対する神経体液性因子(例えば、IGF、コルチゾール、ドーパミンなど)に基づいて、デジタル治療剤モジュールを生成するようにできる。
【0088】
一方、段階S810においては、医者からの入力に基づいて、デジタル治療剤モジュールを生成することができる。この場合、医者が患者を診断して収集した情報とこれに基づいて作成した処方結果に基づいて、デジタル治療剤モジュールを生成することができる。また、段階S810においては、患者から受信した情報(例えば、基底要因、医療情報、デジタル治療剤理解能力など)に基づいて、デジタル治療剤モジュールを生成することができる。
【0089】
そして、段階S820においては、デジタル治療剤モジュールに基づいて、具体化したデジタル課題を生成することができる。段階S820は、近視に対する発病機序と治療仮説に対して、患者の環境、行動、情緒、及び認知に関する仮想媒介変数を適用して、デジタル治療剤モジュールを生成することができる。これに関しては
図5で説明したので、詳細な説明は省略する。
【0090】
この際、デジタル課題は、光環境設定、眼球運動、身体運動、自我、安全・平安、楽しさ及び成就モジュールの少なくとも一つに対して生成されてよい。実行環境設定と各モジュール別の具体的なデジタル課題に対する説明は、
図7a~7gで説明したものと同様である。
【0091】
次に、デジタル課題を患者に提供することができる(S830)。この場合、デジタル課題は、行動、情緒、認知と関連され、眼球運動/身体運動のように患者の課題順守度を、センサーを用いてモニタリングできるデジタル課題や、患者が直接実行結果を入力するデジタル課題の形で提供されてよい。
【0092】
提示されたデジタル課題を患者が実行すると、デジタル課題に対する患者の実行結果を収集することができる(S840)。段階S840においては、前述したように、デジタル課題に対する患者の順守度をモニタリングするか、デジタル課題に対して患者が実行結果を入力することにより、デジタル課題に対する実行結果を収集することができる。
【0093】
一方、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションは、デジタル課題を生成する段階と、デジタル課題に対する患者の実行結果を収集する段階とが、フィードバックループによって複数回繰り返して実行されてよい。この場合、デジタル課題を生成する段階は、以前回次で提供された患者のデジタル課題と、収集された患者のデジタル課題に対する実行結果データに基づいて、現在回次に対する患者のデジタル課題を生成するようにできる。
【0094】
このように、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションによれば、近視の神経体液性因子を考慮して、近視に対する発病機序と治療仮説を導出し、これに基づいて患者にデジタル課題を提示し、適切な光刺激環境下で、デジタル課題を実行するようにし、その結果を収集・分析することにより、近視進行の抑制と治療の信頼性を確保することができる。
【0095】
以上では、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置及びアプリケーションについて近視治療の観点のみで説明したが、本発明がこれに制限されるものではなく、近視以外に他の疾患においても、前述したものと実質的に同様の方式に従ってデジタル治療を実行してよい。
【0096】
図9は、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションでデジタル課題を生成する方法を示すフローチャートである。
【0097】
図9を参照すれば、近視に対する発病機序と治療仮説に基づいて、近視治療のためのモジュールと具体化したデジタル課題とを生成する過程(
図8の段階S810、S820)と
図5過程の詳述である。
【0098】
段階S910においては、先ず、近視に対する発病機序と治療仮説が入力され得る。この際、近視の発病機序と治療仮説は、前述したように、近視に対する体系的な関連臨床試験に対する文献調査と専門家レビューを通じて事前導出されたものであってよい。
【0099】
そして、入力された発病機序と治療仮説から近視の神経体液性因子を予測することができる(S920)。この際、段階S920を通じて予測された近視の神経体液性因子は、IGF、コルチゾール、ドーパミンなどで導出される可能性がある。このような神経体液性因子については、
図5で具体的に説明したので、詳細な説明は省略する。
【0100】
段階S930においては、予測された神経体液性因子に仮想媒介変数を対応して、デジタル治療剤モジュールを生成することができる。ここで、仮想媒介変数は、近視の神経体液性因子をデジタル治療剤モジュールに変換する交換器(converter)の役割をし、
図5に示されたように、神経体液要因と環境、行動、情緒、及び認知要因の間の生理学的連関関係を設定する過程である。
【0101】
次に、生成されたデジタル治療剤モジュールに基づいて具体化したデジタル課題を生成することができる(S940)。この際、具体的なデジタル課題は、
図7a~7gで説明した光環境設定、眼球運動、身体運動、自我、安全・平安、楽しさ及び成就モジュールによって生成されてよい。
【0102】
図10は、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタルアプリケーションでフィードバック制御により動作を繰り返し実行することを示すフローチャートである。
【0103】
図10では、近視治療のためのデジタルアプリケーションによるデジタル課題の生成と実行結果収集がN回次実行されることとして説明する。この場合、まず、近視の発病機序と治療仮説が入力され得る(S1010)。また、以前回次で提供されたデジタル課題と実行結果データを受信することができる(S1020)。もし、現在実行中の回次が初回の場合には、以前データがないので、段階S1020は省略してよい。
【0104】
次に、入力された発病機序と治療仮説、以前回次で提供されたデジタル課題及び実行結果データに基づいて、現在回次に対するデジタル課題を生成することができる(S1030)。そして、生成されたデジタル課題に対する使用者の実行結果を収集することができる(S1040)。
【0105】
段階S1050においては、現在回次がN回次以上であるか否かを判断する。もし、現在回次がN回次未満の場合(NO)、さらに段階S1020に戻り、段階S1020~S1040を繰り返して実行してよい。一方、現在回次がN回次以上の場合(YES)、すなわち、デジタル課題の生成と実行結果収集過程がN回実行された場合には、フィードバック動作を終了してよい。
【0106】
図11は、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置のハードウェア構成を示す図である。
【0107】
図11を参照すれば、本発明の一実施形態による近視治療のためのデジタル装置のハードウェア600は、CPU610、メモリー620、入出力I/F630、及び通信I/F640を含んでよい。
【0108】
CPU610は、メモリー620に格納されている近視治療のためのデジタルプログラムを実行させ、デジタル近視治療のための各種データを処理し、デジタル近視治療に関する機能を実行するプロセッサであってよい。すなわち、CPU610は、メモリー620に格納されている近視治療のためのデジタルプログラムを実行させることにより、
図2に示された各構成の機能を実行するようにできる。
【0109】
メモリー620は、近視治療のためのデジタルプログラムを格納してよい。また、メモリー620は、前述したデータベース050に含まれたデジタル近視治療のために使用されるデータ、例えば、患者のデジタル課題、課題実行結果、患者の医療情報などを含んでよい。
【0110】
このようなメモリー620は、必要に応じて複数個設けられてもよい。メモリー620は、揮発性メモリーであってもよく、非揮発性メモリーであってもよい。揮発性メモリーとしてのメモリー620は、RAM、DRAM、SRAMなどが使用されてよい。非揮発性メモリーとしてのメモリー620は、ROM、PROM、EAROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリーなどが使用されてよい。前記列挙したメモリー620の例は、単に例示であるだけで、これら例に限定されるものではない。
【0111】
入出力I/F630は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置(未図示)とディスプレイ(未図示)などの出力装置とCPU610との間を連結してデータを送受信できるようにするインターフェースを提供することができる。
【0112】
通信I/F640は、サーバーと各種データとを送受信できる構成であって、有線又は無線通信を支援し得る各種装置であってよい。例えば、通信I/F640を通じて別途に設けられた外部サーバーから、前述したデジタル行動基盤治療に関する各種データを受信することができる。
【0113】
このように、本発明の一実施形態によるコンピュータプログラムは、メモリー620に記録され、CPU610により処理されることにより、例えば、
図2に示された各機能ブロックを実行するモジュールとして具現されてもよい。
【0114】
以上、本発明の実施形態を構成する全ての構成要素が一つに結合するか、結合されて動作することと説明されたとして、本発明が必ずこのような実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的範囲内であれば、その全ての構成要素が一つ以上に選択的に結合されて動作してもよい。
【0115】
また、以上に記載された「含む」、「構成する」又は「有する」などの用語は、特に反対の記載がない限り、当該構成要素が内在し得ることを意味するので、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでよいと解釈されなければならない。技術的や科学的な用語を含む全ての用語は、特に定義されない限り、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有すると解釈されてよい。辞書に定義された用語のように一般的に用いられる用語は、関連技術の文脈上の意味と一致すると解釈されなければならず、本発明で明らかに定義しない限り、理想的や過度に形式的な意味として解釈されない。
【0116】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で多様な修正及び変性が可能である。したがって、本発明に開示された実施形態は、本発明の技術思想を限定するためではなく、説明するためのものであり、このような実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲により解釈されなければならず、それと同等の範囲内の全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0117】
000 デジタル近視治療システム
010 デジタル課題生成部
020 センシングデータ収集部
030 実行入力部
040 結果分析部
050 データベース
060 保安部
600 デジタル近視治療装置
610 CPU
620 メモリー
630 入出力I/F
640 通信I/F