(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】較正及び品質管理のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/49 20060101AFI20240215BHJP
G01N 15/01 20240101ALI20240215BHJP
【FI】
G01N33/49 A
G01N15/01
(21)【出願番号】P 2022538441
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 US2020065997
(87)【国際公開番号】W WO2021127424
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-21
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514017758
【氏名又は名称】ロッシュ ダイアグノスティクス ヘマトロジー インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】522247091
【氏名又は名称】ロッシュ ダイアグノスティクス インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンバーガー、アンネ
(72)【発明者】
【氏名】ホートン、ケリー エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ラペン、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ザーニシャー、デイビッド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】クリンガウフ、ミルコ
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-518063(JP,A)
【文献】特開平08-005543(JP,A)
【文献】特開平11-083724(JP,A)
【文献】特開平09-196916(JP,A)
【文献】特開2007-178315(JP,A)
【文献】特表2015-526713(JP,A)
【文献】特表2014-517324(JP,A)
【文献】国際公開第97/035201(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0142289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 1/00- 1/44
G01N 15/00-15/1492
A61B 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
較正流体であって、
複数のビーズであって、少なくとも1種類の血球を表すようにサイズ設定及び着色されている、複数のビーズと、
キャリア流体と、
を含む、較正流体。
【請求項2】
前記複数のビーズが、セルロースビーズ、シリカ(二酸化ケイ素)ビーズ、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)/ヒドロゲル被覆ビーズ、メラミン(メラミンホルムアルデヒド樹脂)ビーズ、架橋アガロースビーズ、ポリ酢酸ビニル(PVA)ビーズ、及びポリスチレンビーズからなる群から選択される、請求項1に記載の較正流体。
【請求項3】
前記複数のビーズが官能化されている、請求項1又は請求項2に記載の較正流体。
【請求項4】
前記複数のビーズが、メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ジスルフィド基、ポリビニルアルコール基、アミン基(1級及び2級アンモニウム)、マレイミド基、3級アンモニウム基、4級アンモニウム基、エポキシ基、カルボキシルスルホネート基、及びオクタデシル(C18)基のうちの1つ又は複数で官能化されている、請求項3に記載の較正流体。
【請求項5】
前記複数のビーズが
、1~10ミクロンの直径及
び1.0
~3.0グラム/cm
3の密度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の較正流体。
【請求項6】
前記キャリア流体が、水溶性ポリマー又は水溶性重合マトリクスを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の較正流体。
【請求項7】
前記水溶性重合マトリクスがアクリル樹脂又はポリウレタン樹脂を含む、請求項6に記載の較正流体。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーが、ヒドロキシエチルデンプン又はセルロースを含む、請求項6に記載の較正流体。
【請求項9】
前記水溶性ポリマーが、メチルセルロースを含む、請求項6に記載の較正流体。
【請求項10】
前記キャリア流体が血清を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の較正流体。
【請求項11】
前記キャリア流体が1つ又は複数の糖を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の較正流体。
【請求項12】
前記1つ又は複数の糖が、グルコース、フルクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、ラクトース、リボース、及び/又はラムノースを、任意の組み合わせで、単一分子又は二量体として含む、請求項11に記載の較正流体。
【請求項13】
前記複数のビーズが、白血球(WBC)を表すようにサイズ設定及び着色された第1のビーズセットを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の較正流体。
【請求項14】
WBCを表す前記第1のビーズセットが、
好中球を表す複数のオレンジ色シリカビーズ;
リンパ球を表す複数の青色ポリスチレンビーズ;
単球を表す複数の緑色ポリスチレンビーズ;
好酸球を表す複数の赤色ポリスチレンビーズ;及び
好塩基球を表す複数の黒色ポリスチレンビーズ
を含む、請求項13に記載の較正流体。
【請求項15】
安定化赤血球(RBC)若しくは安定化血小板(PLT)、又は安定化RBCと安定化PLTの両方をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の較正流体。
【請求項16】
前記複数のビーズが、赤血球(RBC)を表すようにサイズ設定及び着色されている、前記第1のビーズセットとは異なる第2のビーズセットをさらに含む、請求項13又は請求項14に記載の較正流体。
【請求項17】
前記複数のビーズが、血小板(PLT)を表すようにサイズ設定及び着色されている、前記第1のビーズセット及び前記第2のビーズセットとは異なる第3のビーズセットをさらに含む、請求項16に記載の較正流体。
【請求項18】
前記較正流体が1つ又は複数の血液成分を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の較正流体。
【請求項19】
前記較正流体が血清を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の較正流体。
【請求項20】
前記較正流体が脳脊髄液を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の較正流体。
【請求項21】
自動試料調製システムを較正する方法であって、
請求項1~20のいずれか一項に記載の較正流体を得ること;
或る量の較正流体を基板上に加えて、較正試料を作製すること;
前記較正試料を第1の染色剤で染色すること;
前記較正試料から前記第1の染色剤をすすぐこと;
前記較正試料を画像化すること;
前記較正試料の画像から、前記自動試料調製システムの較正状態を判定すること;及び
前記較正状態に基づいて、必要に応じて前記自動試料調製システムの少なくとも1つの態様を調整すること、
を含む、自動試料調製システムを較正する方法。
【請求項22】
前記自動試料調製システムの較正状態を判定することが、
前記較正試料の1つ又は複数の画像から、少なくとも1つの較正パラメータの値を計算すること;及び
プロセッサにより、前記少なくとも1つの較正パラメータの前記値を前記少なくとも1つの較正パラメータの既知の基準範囲と比較すること、
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの較正パラメータの前記値が前記既知の基準範囲外であると判定すること;及び
前記少なくとも1つの較正パラメータに関連する前記自動試料調製システムの少なくとも1つの態様を調整するようにユーザに通知すること、
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ユーザが前記自動試料調製システムの少なくとも1つの態様を調整したと判定すること、
前記少なくとも1つの較正パラメータの前記値が現在前記既知の基準範囲内にあると判定すること、及び
前記自動試料調製システムが正しく較正されていることをユーザに通知すること、
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記或る量の較正流体を前記基板上に分配した後、前記基板を基板移動機で染色ステーションに搬送することをさらに含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記較正試料を第2の染色剤で染色することをさらに含み、複数のビーズが前記第2の染色剤を吸収するように構成される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の染色剤及び前記第2の染色剤が、エオシンY、アズールB及びメチレンブルーからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
複数のビーズのうち第1のビーズセットが、白血球(WBC)を表すようにサイズ設定及び着色されている、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
赤血球(RBC)を表すようにサイズ設定及び着色されている、前記第1のビーズセットとは異なる、前記複数のビーズのうち第2のビーズセットを使用することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(a)
前記自動試料調製システムの印刷針によって前記基板上に印刷された複数のビーズを含む印刷試料の
、前記基板上の或る部分が
、前記印刷試料の、前記基板上の別の部分よりも厚いかどうかを検出することと、
前記印刷試料の検出された厚さと前記印刷試料の基準厚さ
との比較に基づいて、前記自動試料調製システムの印刷針
の印刷性能が許容範囲外であるかどうかを判定すること;
(b)
前記印刷試料中の前記複数のビーズのサイズを
前記印刷試料の画像から計算し、
前記画像から計算された前記複数のビーズのサイズと前記印刷試料中の前記複数のビーズの既知のサイズ
との比較に基づいて、前記画像から
計算された前記複数のビーズの
サイズが
前記複数のビーズの前記既知のサイズの許容範囲内にあるかどうかを判定すること;並びに
(c)画像化ステーションにおいて特定の波長の光を
前記印刷試料に照射することによって
、前記印刷試料中の染色された複数のビーズの知覚された色を判定すること、及び、
前記印刷試料中の前記複数のビーズの判定された色と前記印刷試料中の前記複数のビーズの基準色
との比較に基づいて、前記画像化ステーションにおける前記特定の波長の光源が許容範囲内にあるかどうかを判定すること、
のうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項21~29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年12月19日に出願された米国仮出願第62/950,796号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、血液及び他の生物学的流体等の様々な流体試料、並びに組織試料、並びに品質管理及び試料処理システムの性能監視のための材料と共に使用するための試料処理システムの較正に関する。
【背景技術】
【0003】
実験技術者は、長年にわたって、最初に試料を顕微鏡スライド等の基板に適用し、次いで調製された基板を例えば顕微鏡下で見ることによって、様々な生物学的試料、例えば血液を検査してきた。手作業による適用手順は、個々の技術者間の技能及び経験の違いに起因する品質の変動、並びに適用工程の日常的な変動の影響を受ける。さらに、基板上での生体試料の手作業による調製は、典型的には複数の労働集約的な工程を伴うため、比較的遅い。
【0004】
フローサイトメーター及びインピーダンスベースの細胞計数システム等の多数の自動化された細胞試料分析システムがあり、これらは血液試料等の多数の生体試料の分析に非常に有効であり得る。さらに、例えば、米国特許第9,217,695号、同第10,094,764号、及び10,764,538号に開示されているように、例えば、cobas(登録商標)m 511統合型血液学分析装置(Roche Diagnostics)等の生体試料の自動画像ベースの細胞カウンタが利用可能である。そのような画像ベースのカウンタは、血液試料を分析するため、並びに細胞濃度及び生存率を決定するため及び/又は細胞の特定のサブタイプを計数するための様々な細胞型を計数するために使用される。そのようなシステムは、細胞が懸濁液中を流れる間に検出器を通過するときに細胞を画像化することができる。他のシステムは、画像化の前に基板上に細胞を配置する。どちらの場合も、細胞成分の可視化を可能にするために、細胞を吸収色素又は他の染色剤、例えば蛍光試薬で染色することができる。しかしながら、これらの自動化されたシステムはいずれも、細胞分析の正確な結果を保証するために、制御又は標準を使用して、初期設定時に、線形性試験のために、及び日常的に較正を必要とする。
【0005】
全血球計算(CBC)等の血液分析のための現在の較正流体及び品質管理流体は、いくつかの検証されていない担血種(blood bearing species)からの生体材料を使用して製造され、ロット間の変動性が高い。例えば、白血球(WBC)の計数及び分化、並びに血小板(PLT)のサイズパラメータに変動性が見られ、より安定した信頼性の高い較正及び品質管理流体が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態が従来技術に勝る或る自明でない利点及び進歩を提供することは上記を背景にしている。特に、本発明者らは、較正及び品質管理のための組成物及び方法の改善の必要性を認識した。
【0007】
本開示は、少なくとも部分的には、任意に精製及び安定化された血球、例えば赤血球(RBC)を含む、特定のサイズのビーズ、例えばセルロース、シリカ、及び/又はポリスチレン、並びに他の種類のビーズを含む較正流体を使用して、生体試料分析に対してガラス又はプラスチック基板、例えばスライドを使用する自動化された画像ベースの血液分析装置システムを較正することができるという発見に基づいており、これは、これらの流体中のビーズをガラス又はプラスチック基板に付着又は接着することができ、いくつかの実施形態では染色することができ、全ての実施形態において、1つ以上の生体細胞を含む生体試料と全て同じ方法で血液分析装置システムによって画像化することができるためである。ビーズの計数、サイズ設定、及び染色剤の取り込み能力は、そのような血液分析装置システムの印刷プロセス、固定プロセス(例えば、メタノールによる)、染色プロセス、及び撮像プロセスの評価を可能にする。
【0008】
第1の態様では、本開示は、複数のビーズであって、少なくとも1種類の血球を表すようにサイズ設定及び着色されている、複数のビーズと、キャリア流体とを含む較正流体を提供する。これらの較正流体では、複数のビーズは、白血球(WBC)を表すようにサイズ設定及び着色された第1のビーズセットを含む。例えば、WBCを表す複数のビーズは、好中球を表す複数のオレンジ色シリカビーズ;リンパ球を表す複数の青色ポリスチレンビーズ;単球を表す複数の緑色ポリスチレンビーズ;好酸球を表す複数の赤色ポリスチレンビーズ;及び好塩基球を表す複数の黒色ポリスチレンビーズを含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、較正流体は、安定化赤血球(RBC)若しくは安定化血小板(PLT)、又は安定化されたRBCとPLTの両方を更に含む。
【0010】
他の実施形態では、較正流体中の複数のビーズは、赤血球(RBC)を表すようにサイズ設定及び着色されている、第1のビーズセットとは異なる第2のビーズセットを更に含む。更に他の実施形態では、較正流体は、血小板(PLT)を表すようにサイズ設定及び着色されている、第1のビーズセット及び第2のビーズセットとは異なる第3のビーズセットを更に含む。
【0011】
様々な実施形態では、担体流体は、アクリル樹脂又はポリウレタン樹脂等の水溶性重合マトリックスであるか、又は水溶性重合マトリックスを含むことができる。
【0012】
異なる実施形態では、較正流体中のビーズは、セルロースビーズ、シリカ(二酸化ケイ素)ビーズ、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)/ヒドロゲル被覆ビーズ、メラミン(メラミンホルムアルデヒド樹脂)ビーズ、セファローズ(商標)(架橋あるがロース)ビーズ、ポリ酢酸ビニル(PVA)ビーズ、及びポリスチレンビーズの1つ以上を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、ビーズは、官能化されている。例えば、ビーズは、以下の基の1つ以上で官能化される:メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ジスルフィド基、ポリビニルアルコール基、アミン基(1級及び2級アンモニウム)、マレイミド基、3級アンモニウム基、4級アンモニウム基、エポキシ基、カルボキシルスルホネート基、及びオクタデシル(C18)基。
【0014】
実施形態では、ビーズは、約1~約10ミクロンの直径及び約1.0~約3.0グラム/cm3の密度を有する。
【0015】
様々な実施形態の場合、キャリア流体は、水溶性ポリマー又は重合マトリックス、例えばアクリル樹脂又はポリウレタン樹脂を含む。他の実施形態では、水溶性ポリマーは、デンプン、例えばヒドロキシエチルデンプン又はセルロース、例えばメチルセルロースを含む。更に他の実施形態では、キャリア流液は、血清及び/又は脳脊髄液を含むことができるか、又はそれも含む。
【0016】
幾つかの実施形態では、キャリア流体は、1つ以上の糖、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、ラクトース、リボース、及び/又はラムノースを、任意の組み合わせで、単一分子又は二量体として含む。
【0017】
別の態様では、本開示は、自動血液学分析装置、例えば画像ベースの血液学分析装置等の自動試料調製システムを較正する方法を提供する。これらの方法は、本明細書に記載の較正流体;ある体積の較正流体を基板上に加えて、較正試料を作成すること;較正試料を第1の染色剤で染色すること;較正試料から第1の染色液をすすぐこと;較正試料を撮像すること;較正試料の画像から、自動試料調製システムの較正状態を決定すること;及び較正状態に基づいて、必要に応じて自動試料調製システムの少なくとも1つの態様を調整することを含む。
【0018】
これらの方法では、自動試料調製システムの較正状態を決定することは、較正試料の1つ以上の画像から、少なくとも1つの較正パラメータの値を計算すること;及びプロセッサによって、少なくとも1つの較正パラメータの値を少なくとも1つの較正パラメータの既知の基準範囲と比較することを含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記方法は、少なくとも1つの較正パラメータの値が既知の基準範囲外であると判定すること;及び少なくとも1つの較正パラメータに関連する自動試料調製システムの少なくとも1つの態様を調整するようにユーザに通知することを更に含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、ユーザが自動試料調製システムの少なくとも1つの態様を調整したと判定すること;少なくとも1つの較正パラメータの値が今や既知の基準範囲内にあると判定すること;自動試料調製システムが正しく較正されていることをユーザに通知することを更に含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、ある量の較正流体を基板上に分配した後、前記基板を基板移動機と共に染色ステーションに搬送することを更に含む。同じ又は他の実施形態では、方法は、較正試料を第2の染色剤で染色することを更に含み、ビーズは第2の染色剤を吸収するように構成される。染色剤は、例えば、エオシンY、アズールB及びメチレンブルーからなる群から選択することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数のビーズの第1のビーズセットは、白血球(WBC)を表すようにサイズ設定及び着色され、及び/又は上記方法は、赤血球(RBC)を表すようにサイズ設定及び着色され、第1のビーズセットとは異なる複数のビーズの第2のビーズセットを使用することを更に含むことができる。
【0022】
ある特定の実施形態において、本方法は、次のうちの1つ以上をさらに含む:(a)ビーズを含む印刷試料の一方の面が他方の面よりも厚いかどうかを検出すること、印刷試料の基準厚さに基づいて、システムの印刷針が許容範囲外であるかどうかを判定すること;(b)ビーズのサイズを計算し、試料中のビーズの既知のサイズに基づいて、画像から採取されたビーズの測定値が基準サイズ範囲の許容範囲内にあるかどうかを判定すること;(c)撮像ステーションにおいて特定の波長の光を照射することによって、染色されたビーズの知覚された色を判定すること、及び試料中のビーズの基準色に基づいて、撮像ステーションにおける特定の波長の光源が許容範囲内にあるかどうかを判定すること。
【0023】
いくつかの実施形態では、較正流体は、1つ以上の血液成分、例えば血清又は脳脊髄液を含む。
【0024】
例えば、ビーズ、例えば、セルロース、シリカ、PMMA/ヒドロゲル被覆ビーズ、メラミンビーズ、Sepharose(商標)(架橋アガロース)ビーズ、PVAビーズ又はポリスチレンビーズ、及び任意に精製及び安定化された血球を含む新たな較正流体、並びに本明細書に記載の方法は、多数の利点及び利益を提供する。例えば、較正組成物中のビーズは非常に安定であり、血液又は組織試料中の生体細胞と全て同じ方法で印刷、固定、染色及び画像化することができる。さらに、ビーズは一般に可撓性であり、これにより、生体細胞と同様の方法で自動血液分析装置システムの印刷針を通って移動することができる。ビーズを、印刷時にビーズがガラススライド(又は他の基板)に付着することを可能にする有利な接着特性を提供するために、較正流体中で、特定のキャリア流体、例えばアクリル及び/又はポリウレタン水溶性重合マトリックス例えば樹脂、又はデンプン(例えばヒドロキシエチルデンプン)又はセルロース(例えば、メチルセルロース)、及び/又は糖(例えば、任意の組み合わせで、単一分子又は二量体として、グルコース、フルクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、ラクトース、リボース及び/又はラムノース)等の他のポリマー、又は血清と組み合わせる。
【0025】
さらに、較正流体中のビーズは、特定の実施形態では、自動血液分析装置システムにおける染色プロセス中に1つ以上の異なる染色剤を吸収することができる。これは、一般に予備染色されている標準的なプラスチックビーズとは異なり、したがって、自動血液分析装置システムの染色アセンブリの機能性の分析を可能にしない。しかしながら、特定の予備染色されたビーズも、新たな較正流体において有利に使用することができる。新たなビーズ及び方法はまた、試料ごとの品質管理を可能にし、他の品質管理方法及びシステムと比較して比較的低コストである。
【0026】
較正流体はまた、生体試料に導入することができ、流体中のビーズは、サイズ及び形状及び色の一貫性のため、自動血液分析装置システムにおける撮像の間に生体試料中の細胞又は他の生体材料と区別することができる。ビーズを容易に識別することができることから、自動血液学分析装置システムは、ビーズの画像に基づいてビーズを測定し、測定値を使用して分析装置システムの態様を較正することができる。ビーズはまた、そのようなシステムの性能を監視するために自動血液分析装置システムによって処理することができる品質管理材料に組み込むことができる。さらに、ビーズの画像を使用して、自動血液分析装置システムが試料を処理することができる前に対処する必要があり得るシステムの欠陥(例えば、染色剤が適用されていない、光源、例えばLEDがその許容可能な波長範囲外にある、又は試料アプリケータの針が詰まっている)をユーザに知らせることができる。
【0027】
さらに、較正流体は、任意の他の生体試料又は他の試料と同じ方法でシステムを通過することができることから、自動血液分析装置システム及び他の細胞分析システムを効率的且つ容易に較正するために、較正流体を使用することができる。較正流体は長い貯蔵寿命を有するように設計されており、これらの流体中のビーズは一貫してサイズ設定され、形状が決められており、独自の色及び染色特性を有することができる。ビーズは、自動血液学分析装置システムが検出するために承認されている濃度範囲の多数の粒子を含む試料を分析する際のシステムの機能性を試験するために、関連する濃度でシステムを通過することができる。較正流体は、任意の他の生体試料と同様に、自動血液学分析装置システムを通過することができる。
【0028】
さらに、流体中のビーズを、そうでない場合には集束が困難である試料上にイメージングアセンブリを集束させるのを助けるため、低濃度の細胞(例えば、脳脊髄液等の細胞数が少ない試料)を含む生体試料に導入することができる。流体中のビーズは、生体試料中の細胞の撮像を妨害せず、自動血液分析装置システムの印刷、固定、染色、及び画像化プロセス中に分解しない。
【0029】
「好ましくは」、「一般的に」、及び「典型的に」のような用語は、特許請求される実施形態の範囲を限定するため、又は特定の特徴が特許請求される実施形態の構造又は機能にとって重要、必須、又はさらに重要であることを意味するために本明細書では使用されないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、本開示の特定の実施形態で利用されてもされなくてもよい代替又は追加の特徴を強調することを単に意図している。
【0030】
「実質的に」及び「約」という用語は、本明細書では、任意の定量的な比較、値、測定、又は他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために利用され得る。「実質的に」及び「約」という用語はまた、本明細書では、定量的表現が、問題の主題の基本機能の変化をもたらすことなく、記載された基準から変化することができる程度を表すために利用される。
【0031】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料が本発明の実施又は試験で使用され得るが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が援用される。矛盾する場合は、定義をも含む本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0032】
本開示の実施形態のこれら及び他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。特許請求の範囲は、本明細書に記載の特徴及び利点の具体的な説明ではなく、その中の列挙によって定義されることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照符号で示される以下の図面と併せて読むと最もよく理解されることができる。
【0034】
【
図1】本開示の一実施形態による自動血液分析装置システムで撮影された印刷及び染色されたセルロースビーズの画像である。
【
図2】本開示の一実施形態による自動検体処理システムの概略図である。
【
図3】
図2の自動検体処理システムの染色アセンブリの概略図である。
【
図4】
図3の染色アセンブリに接続されたポンピング及び制御システムの概略図である。
【
図5】自動検体処理システムにおいて検体を処理する一連の工程の一例を示すフローチャートである。
【
図6】顕微鏡スライド上の緑色、黄色、赤色、黒色の予備染色された10ミクロンのシリカビーズの顕微鏡画像の表示である。
【
図7】以下で誘導体化されたシリカビーズの顕微鏡画像の表示である:NH2(アミノ、オレンジ色)、C18(ワックス、水色)、及び-COOH(酸、濃青色)。
【
図8】ポリスチレンビーズ及びNH2で誘導体化されたシリカビーズ(オレンジ)の顕微鏡画像の表示である。
【
図9】7ミクロンのシリカ-NH2ビーズ、10ミクロンのポリスチレンビーズ、アクリル水溶性重合樹脂、RBC、グルコース、及び5ミクロン未満の非誘導体化シリカビーズを含む較正流体の均一なプリントの顕微鏡画像の表示である。
【0035】
当業者には、図中の要素は、簡単及び明確にするための例示であり、必ずしも一律の縮尺で描かれていないことが分かる。例えば、本開示の実施形態をわかりやすくするために、図中の要素のうちの一部の要素の寸法が他の要素に対して相対的に誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書では、較正流体を使用して自動化された生体試料処理システム(例えば、自動血液分析装置システム)の機能性を較正及び評価するための方法及びシステムが開示される。自動化された試料処理方法及びシステムは、手作業又は他のシステムによって処理された試料と比較して、最小限の試薬量を使用しながら処理速度を向上させ、染色剤、定着剤、及び他の試薬の適用に関連する変動性を大幅に低減する均一な試料調製物を同時に生成することを含む、手動及び他の自動化された処理方法を超える利点を提供する。
【0037】
自動化された生体試料処理システムは、均一で再現可能な結果をもたらすように較正されなければならない。本明細書に開示されるように、ビーズ、例えばセルロース、シリカ、PMMA/ヒドロゲル被覆ビーズ、メラミンビーズ、Sepharose(商標)(架橋アガロース)ビーズ、PVAビーズ、及び/又はポリスチレンビーズ、並びに任意に、保存された血球を含む較正流体又は品質管理流体を、通常の生体試料と同じ方法又は本質的に同じ方法で自動試料処理システムを通過させることができる。ビーズを、自動試料処理システムによって印刷、固定、染色、画像化、及び測定することができ、結果は、自動試料処理システムの1つ以上の部分/構成要素の性能を較正及び/又は監視するために使用することができる。
【0038】
一般的な方法論
異なる試料流体で作られた較正流体及び品質管理流体
較正流体を、画像ベースの分析装置システム(例えば、印刷、染色、又は撮像)の特定の構成要素の動作を調整してシステムを位置合わせし、較正流体の製造時に予め決定されたシステム測定値の正確に既知の値を生成するために使用する。較正を、新たなシステムの設置時に実行し、システムの使用中又は主要なシステム構成要素が変更されたときに定期的に(例えば、6ヶ月毎)実行してもよい。品質管理流体は、通常、日常使用中にシステムの性能を監視するために毎日使用される。そのような品質管理流体は、システムがルーチンにおいてそのダイナミックレンジにわたって実行していることを確実にするために、細胞数の範囲をカバーすることが多い。
【0039】
セルロース、シリカ、PMMA/ヒドロゲル被覆ビーズ、メラミンビーズ、Sepharose(商標)(架橋アガロース)ビーズ、PVAビーズ、及び/又はポリスチレンビーズ等のビーズを、血液、脳脊髄液、滑液、及び血清を含む任意の数の生体液に添加して、自動血液分析装置システムの性能を監視するための較正流体又は品質管理流体を作成することができる。また、ビーズを緩衝液を含む非生体液に組み込んで、較正流体及び品質管理流体を生成することができる。ビーズを、流体又は較正の目的に応じて様々な濃度で含めることができる。例えば、脳脊髄液(例えば、5~1000個のRBC及び/又はWBC)中には一般に低濃度の細胞が存在するため、より小さいRBC及びより大きいWBCが計数される脳脊髄液を模倣する試料に、より低濃度のセルロース及び/又は他のビーズを組み込むことができる。
【0040】
較正流体又は品質管理流体を生成するためにセルロース及び/又は他のビーズを含無ことができる生体試料としては、例えば、赤血球、白血球及び血小板を含む血液試料が挙げられる。さらに、赤血球及び/又は白血球及び/又は血小板を含む他の生体試料、例えば、骨髄懸濁液、尿、膣/子宮頸部細胞懸濁液、上皮組織懸濁液、腫瘍懸濁液、精液、痰及び唾液も基板に適用することができる。基板に適用することができ、目的の細胞を含有することができる他の流体としては、脳脊髄液(CSF)、胸水、腹膜液(例えば、腹水等の状態に起因する)、心膜液、滑液、及び連続外来腹膜透析(CAPD)液を含む漿液性流体が含まれるが、これらに限定されない。細胞を含有しないが、基板にも適用することができる流体には、血漿(例えば、血漿、例えば40%、及び糖、例えばグルコース、例えば20%)、ヒドロキシエチルデンプン6%(Voluven(商標))、メチルセルロース及び血清が含まれるが、これらに限定されない。使用することができる他の糖としては、任意の組み合わせで、単分子又は二量体として、フルクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、ラクトース、リボース及び/又はラムノースが挙げられる。
【0041】
較正流体又は対照流体はまた、自動試料処理システム、例えば画像ベースの血液分析装置システムによる処理中にビーズがスライド又は基板に付着することを確実にするために、アクリル及び/又はポリウレタン重合樹脂、又は他のポリマー、タンパク質、及び/又は糖等の水溶性懸濁液を含むことができる。樹脂が使用される場合、最終較正流体中の樹脂の濃度は、基板への塗布時とプロセス中の染色工程の前との間に硬化するのに十分でなくてはならない。これは、自動化プロセスの全ての工程中に較正流体中のビーズの基板への強固な接着を提供する。水性ベース中のアクリル又はポリウレタン重合マトリックス、例えば樹脂の典型的な濃度は、約0.2~約5重量%の範囲である。
【0042】
スライドへのビーズの保持は、デンプン、例えばヒドロキシエチルデンプン及びセルロースデンプン、例えばメチルセルロースデンプン、並びに特定のバイオインク等のポリマーの添加によって更に増加させることができ、これらは、その生体適合性成分及び好ましいレオロジー特性のために選択された任意の天然又は合成ポリマーであり得る。これらの特徴は、生細胞を一時的又は永続的に支持して、成熟中のそれらの接着、増殖、及び分化を促進する。他の実施形態では、ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、グリコーゲン、アミロペクチン、ゼラチン、ゼラチンスクシネート、アガロース、アルギネート、コラーゲン、及びキトサンを含むことができる。さらに、ヒドロキシエチルデンプンは、緊急医療で使用されるコロイド状血漿体積膨張剤であるVenofundin(商標)の主成分であり、これは本発明の較正流体及び対照流体にも使用することができる。
【0043】
他の実施形態では、スライドをポリ-L-リジンで前処理(例えばプレコーティング)するか、又はスライドへのビーズ付着を増加させるためにプラズマ処理することができる。スライドを、印刷プロセス中にコーティングすることもできる。
【0044】
使用した水溶性重合樹脂は、水溶性アクリル系又はポリウレタン系溶液であった。1つの主要な特徴は、(水溶性である)重合樹脂が、較正されている器具の水系洗浄剤によって洗浄され得ること、及び、水溶性重合樹脂が、混合物に添加される細胞成分に悪影響を及ぼさないことである。水溶性重合樹脂の別の特徴は、それらが空気中で急速に硬化し、したがって細胞及びビーズをスライド又は基板に固定し、その後の染色操作によるビーズ除去を阻害することである。
【0045】
希釈剤及び他の成分も、所望の稠度及び濃度を達成するために必要に応じて較正流体に添加することができ、これは効果的な試料調製、染色、撮像、及び分析に必要であり得る。例えば、グルコース等の糖(例えば、2~5%以上、最大10、15、又は20%までの範囲のグルコース)を添加して、印刷の均一性及び安定性を助け、基板への接着性を更に高めることができる。使用することができる他の糖としては、任意の組み合わせで、単分子又は二量体として、フルクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、ラクトース、リボース及び/又はラムノースが挙げられる。
【0046】
一般に、ビーズは以下の特性を有しなければならない。サイズに関して、ビーズは、例えば赤血球等の血液細胞のサイズを模倣するために、血液試料中の種々の細胞のサイズ、例えば1~10ミクロン、例えば3~10ミクロン、例えば4~6ミクロン又は3~8ミクロンであり得る。このサイズは、典型的な目的、例えば20倍の目的で良好な染色スコアを提供し、場合によっては、より大きな粒子、特に10ミクロンを超える粒子が染色中に洗い流される場合がある。ビーズは、より良好な染色剤取り込みを支持し、染色及び洗浄工程中に洗い落とされるビーズの数を減らすために、わずかな多孔性(例えば、15nm以上の細孔)又は表面粗さを有することができる。ビーズの密度は、水の密度である約1グラム/cm3でなくてはならない。密度の増加(1.5グラム/cm3を超える)は、局所的により高い壁剪断応力を生じ、粒子を表面から剥ぎ取り、染色及び洗浄中のウォッシュオフを増加させる可能性がある。0.9グラム/cm3未満の密度を有するビーズは懸濁液を形成せず、むしろ保存マトリックスとして使用される水溶液の上に浮遊する。さらに、単分散ビーズは、使用がより容易であり、自動化システムによる染色スコア評価のための定量がより容易である。
【0047】
ビーズの官能化
様々な種類のビーズは、ビーズの能力及び機能を高めるために、例えば、特定の染色剤及び色素に良好に結合するために、ビーズの正又は負の電荷を変化させるために、酸又は塩基の強度を変化させるために、及び/又はそれらの多孔度を変化させるために、多くの方法で誘導体化又は官能化、例えばコーティングすることができる。官能化の性質は、色取り込み速度論、色放出速度論、及び/又は色彩強度に影響を及ぼし得る。例えば、エオシン及びメチレンブルー等の特定の色素及び染色剤は異なる電荷及び異なる染色強度を有することから、異なる正又は負に帯電した表面修飾が色差を可能にする。さらに、異なる官能基化ビーズを混合する場合、全ての種類のビーズは、集合及び凝集を回避するのに役立つように、規定の安定pHで溶液中において等しいゼータ電位を保持しなければならない。
【0048】
異なる官能基としては、例えば、メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ジスルフィド基、ポリビニルアルコール基、アミン(第一級及び第二級アンモニウム)基、マレイミド基、第三級アンモニウム基、第四級アンモニウム基、エポキシ基、カルボキシルスルホネート基及びオクタデシル(C18)基が挙げられる。しかしながら、利用可能な官能化はビーズ材料に依存する。ビーズ/官能基の組み合わせは、例えば、PMMA、ポリスチレン、メラミン、又はカルボキシル基を有するシリカビーズ、PMMA、シリカ、又はアミン基を有するメラミン、カルボキシルスルホン酸基を有するポリスチレンビーズを含むことができる。他の例では、PMMAビーズは、メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ジスルフィド基、ポリビニルアルコール基、アミン(第一級及び第二級アンモニウム)基、マレイミド基、及び/又はカルボキシルスルホネート基で誘導体化又は官能化することができる。いくつかの他の例では、ポリスチレンビーズをカルボキシル基又はカルボキシルスルホネート基で官能化することができ、シリカビーズをカルボキシル基又はアミン基で官能化することができる。メラミンビーズは、例えば、カルボキシル又はカルボキシルスルホネート及び第一級、第二級、第三級又は第四級アンモニウム基で官能化することができる。セファロースビーズは、例えば、三級又は四級アンモニウム基で官能化することができる。
【0049】
セルロースビーズの特性
セルロースビーズは、様々なサイズ、例えば直径1~50ミクロン、及び密度、例えば約0.1~20g/cm
3、例えば約1.0~10g/cm
3、又は2.5~5g/cm
3の範囲内、例えば1.0、1.02、1.05、1.1、1.13、1.15、1.17、又は1.2g/cm
3で得ることができる。セルロースビーズの試料の一例の拡大下の画像を
図1に示す。例えば、較正流体に含めるためのセルロースビーズは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、20、25、40、45、又は50ミクロンの直径を有することができる。しかしながら、より小さいサイズ、例えば8ミクロン未満のセルロースビーズは、取り扱いがやや困難な場合がある。セルロースビーズは、目的の特定の細胞型、例えば赤血球(RBC)(3~8ミクロン)、白血球(WBC)(6~15ミクロン)、循環腫瘍細胞(CTC)(8~15ミクロン)、又は血小板(約2ミクロン)のサイズを反映するように選択することができる。セルロースビーズのゼータ電位は、pH7.4(IEP pH2.8)で約-30mVであり得る。
【0050】
目的の細胞の種類は、調査されている試料の種類に応じて異なり得る。例えば、試料が脳脊髄液試料であり、脳脊髄液中の血球の有無を調べるために撮像が行われている場合、ビーズサイズは、赤血球及び/又は白血球のサイズと平行になるように選択され得る。セルロースビーズのサイズは、試料調製中にビーズが針を通して印刷されるため、自動血液分析装置システムの印刷針の直径によって制限され得る。
【0051】
セルロースビーズは、典型的には、一般に長い貯蔵寿命を有する乾燥粉末(例えば、米国ニュージャージー州サウスプレインフィールドのKobo Products,Inc.により製造される)として購入される。ビーズは一般に均一な形状であり、これにより、較正及び品質管理プロトコル中、撮像の際にビーズを細胞内容物と区別することができる。セルロースビーズは親水性であり、自動血液分析装置システム用の較正液又は品質管理液に含めるためのそれらの有利な特性は、湿潤時に現れる。
【0052】
セルロースビーズ、及び本明細書に記載の任意のビーズは、血液、血漿(例えば、血漿40%及びグルコース20%)、血清、脳脊髄液、PLASMALYTE(商標)、PLASMANATE(商標)、ヒドロキシエチルデンプン6%(Voluven(商標))、メチルセルロース、重合マトリックス、例えば樹脂、及び蒸留水を含む様々な流体と混合して、処理用の較正流体及び品質管理流体を形成することができる。
【0053】
セルロースビーズの親水性は、自動血液学分析中に行われる染色工程からビーズが染色剤を吸収することを可能にする。染色工程で使用される染色剤は、例えば、エオシンY、アズールB、メチレンブルー、ヘマトキシリン、パパニコロー(PAP)、蛍光染色剤、又は超生体染色剤、及びそれらの異なる組み合わせを含み得る。セルロースビーズを含む試料の画像化中に、染色の着色及び被覆率を評価することができる。いくつかの例では、サイズグリッドを有する基板を使用して、基板上の細胞及び/又はビーズの被覆率を決定するためのガイドを提供することができる。画像化中、自動血液分析装置システムの集束パラメータも同様に確認することができる。
【0054】
例えば、
図1は、自動血液分析装置システムで撮影された印刷及び染色されたセルロースビーズ100の画像である。ビーズの親水性の性質により、染色剤を吸収し、後に撮像することができる。血液学で使用されるロマノフスキー染色剤の場合、定着剤、赤色及び青色の色素、並びにリンス剤を順次適用することができる。青色色素のみで約10秒の標準染色時間を用いて、
図1に示す試料を作製した。同様の染色強度は、赤色色素、及び定着剤と赤色色素又は青色色素との組み合わせで見出すことができた。しかしながら、水系リンス剤は、典型的には、染色強度を低下させる。
【0055】
シリカビーズの特性
シリカビーズは容易に入手可能であり、自動化された生体試料処理システムによって染色可能であり、1~15ミクロンサイズの範囲で入手可能であり、多種多様な化学コーティングでも利用可能である。これらのコーティングは、異なる系によるビーズの染色を修飾する。シリカビーズ密度は、約1~5g/cm3、例えば2~3g/cm3、例えば2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.55、2.6、2.65、2.7、2.75、2.8、2.9、又は3.0g/cm3であり得る。
【0056】
コーティングされていない、又は自然状態のシリカビーズは、ロマノフスキー染色によって水色に染色することができる。これは、ロマノフスキー染色における色素上の電荷に起因する。-NH3表面を形成するようにコーティング(誘導体化)されたシリカビーズは、ビーズ上に高い正電荷を生成し、これがロマノフスキー染色において負電荷を帯びた色素(エオシンY)を引きつけ、これにより-NH3コーティングビーズが赤色に染色される。
【0057】
-COOHでコーティングされたシリカビーズは、ビーズ上に負電荷を生成し、これがロマノフスキー染色において陽性色素(アズールB、メチレンブルー)を引きつけ、ビーズが濃青色に染色される。
【0058】
シリカビーズの電荷修飾及び化学修飾は、他の染色、例えば、ヘマトキシリン、パパニコロー(PAP)染色、蛍光染色、又は超生体染色、及びそれらの異なる組み合わせによる染色を可能にする。
【0059】
シリカビーズ及び誘導体化シリカビーズは、数十年にわたって多くの産業で使用されているため、容易に入手可能である。最も注目すべきは、それらは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で使用するために様々なサイズのビーズ及びコーティングを供給する会社から入手可能である。
【0060】
ポリスチレンビーズの特性
ポリスチレンビーズは、典型的には自動化された生体試料処理システムによって染色されないが、高度に定義されたサイズ範囲で利用可能であり、様々な予備染色された色で利用可能である。ポリスチレンビーズは、様々なサイズ、例えば直径1~50ミクロン、及び密度、例えば約0.1~1.05g/cm3、例えば約0.9~1.0g/cm3、例えば0.95、1.0、1.01、1.02、1.05g/m3の範囲内で得ることができる。ポリスチレンビーズのゼータ電位は、例えば、NH2が官能化されている場合は5~30mV、又はSO3が官能化されている場合は約-30mVであり得る。
【0061】
予備染色された色は、スペクトル波長及び光学撮像システムで使用される他の測定特徴を検証するために、及び/又は例えば印刷プロセスを較正するための較正に(例えば、洗浄又は他の工程を伴わずに)使用することができる。このような予備染色されたポリスチレンビーズは、フローベースのシステムの測定特性の検証のために様々な製造業者から入手可能である。
【0062】
PMMA/ヒドロゲル被覆ビーズの特性
PMMAビーズは、様々なサイズ、例えば直径1~50ミクロン、及び密度、例えば約0.1~1.18g/cm3、例えば約0.5~1.18g/cm3、又は1~2g/cm3の範囲内、例えば1.0、1.02、1.05、1.1、1.15、1.18若しくは1.2g/m3で得ることができる。例えば、較正流体に含めるためのPMMAビーズは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、20、25、40、45、又は50ミクロンの直径を有することができる。PMMAビーズは、目的の特定の細胞型、例えば赤血球(RBC)(3~8ミクロン)、白血球(WBC)(6~15ミクロン)、循環腫瘍細胞(CTC)(8~15ミクロン)、又は血小板(約2ミクロン)のサイズを反映するように選択することができる。PMMAビーズのゼータ電位は、NH2が官能化されている場合、例えば、pH7.4(IEP pH6.67)で-10mVであり得る。
【0063】
目的の細胞の種類は、調査されている試料の種類に応じて異なり得る。例えば、試料が脳脊髄液試料であり、脳脊髄液中の血球の有無を調べるために撮像が行われている場合、ビーズサイズは、赤血球及び/又は白血球のサイズと平行になるように選択され得る。PMMAビーズのサイズは、試料調製中にビーズが針を通して印刷されるため、自動血液分析装置システムの印刷針の直径によって制限され得る。
【0064】
PMMAビーズは、様々な仕様、例えば水中の10%溶液(w/v)中の単分散で製造することができる。PMMAビーズは、所望であれば、表面官能化を達成するためにヒドロゲルコーティングされなくてはならなない。
【0065】
メラミンビーズの特性
メラミンビーズは、様々なサイズ、例えば直径1から50ミクロン、及び密度、例えば約0.1から1.57g/cm3、例えば約0.9~1.57g/cm3、又は1.0~1.5g/cm3の範囲内、例えば1.0、1.02、1.05、1.1、1.15、1.2、1.3、1.4、1.5、又は1.57g/m3で得ることができる。例えば、較正流体に含めるためのメラミンビーズは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、20、25、40、45、又は50ミクロンの直径を有することができる。メラミンビーズは、目的の特定の細胞型、例えば赤血球(RBC)(3~8ミクロン)、白血球(WBC)(6~15ミクロン)、循環腫瘍細胞(CTC)(8~15ミクロン)、又は血小板(約2ミクロン)のサイズを反映するように選択することができる。
【0066】
目的の細胞の種類は、調査されている試料の種類に応じて異なり得る。例えば、試料が脳脊髄液試料であり、脳脊髄液中の血球の有無を調べるために撮像が行われている場合、ビーズサイズは、赤血球及び/又は白血球のサイズと平行になるように選択され得る。メラミンビーズのサイズは、試料調製中にビーズが針を通して印刷されるため、自動血液分析装置システムの印刷針の直径によって制限され得る。
【0067】
メラミンビーズは、様々な仕様、例えば水中の10%溶液(w/v)中の単分散で製造することができる。
【0068】
Sepharose(商標)(架橋アガロース)ビーズの特性
Sepharoseビーズは様々なサイズで得ることができるが、一般に不均一であり、8.5ミクロン以上の平均直径で製造することができ、広範囲の密度を有することができる。例えば、較正流体に含めるためのSepharoseビーズは、約8.5、24、25、30、35、40、45、又は50ミクロンの直径を有することができる。Sepharoseビーズは、目的の特定の細胞型のサイズを反映するように選択することができる。Sepharoseビーズはまた、直径約70nmの細孔を有する。
【0069】
Sepharoseビーズのサイズは、試料調製中にビーズが針を通して印刷されるため、自動血液分析装置システムの印刷針の直径によって制限され得る。
【0070】
セファロースビーズは、様々な仕様に製造することができ、例えば、凝集を避けるためにエタノール中の懸濁液に分散させることができる。
【0071】
ポリ酢酸ビニル(PVA)ビーズの特性
PVAビーズは、様々なサイズ、例えば直径1~50ミクロン、及び密度で、例えば約0.1~1.19g/cm3、例えば約0.9~1.19g/cm3、例えば0.95、0.98、0.99、1.0、又は1.1g/cm3の範囲内で得ることができる。例えば、較正流体に含めるためのPVAビーズは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、20、25、40、45、又は50ミクロンの直径を有することができる。PVAビーズは、目的の特定の細胞型、例えば赤血球(RBC)(3~8ミクロン)、白血球(WBC)(6~15ミクロン)、循環腫瘍細胞(CTC)(8~15ミクロン)、又は血小板(約2ミクロン)のサイズを反映するように選択することができる。
【0072】
目的の細胞の種類は、調査されている試料の種類に応じて異なり得る。例えば、試料が脳脊髄液試料であり、脳脊髄液中の血球の有無を調べるために撮像が行われている場合、ビーズサイズは、赤血球及び/又は白血球のサイズと平行になるように選択され得る。PVAビーズのサイズは、試料調製中にビーズが針を通して印刷されるため、自動血液分析装置システムの印刷針の直径によって制限され得る。
【0073】
PVAビーズは、様々な仕様、例えば水中の10%溶液(w/v)中の単分散で製造することができる。
【0074】
較正及び品質管理流体
本開示を考慮すると、ビーズを含有する較正流体のチューブを作製することが可能であり、次いで、ビーズを、画像ベースの血液学分析装置、例えば、cobas m 511統合型血液学分析装置(Roche Diagnostics,Inc.)によってサンプリング、印刷、染色及び撮像することができる。利用可能な選択肢の現在のパレットを考えると、代用物として使用することができるビーズの種類は、少なくとも以下を含む:
シリカ10ミクロンオレンジ(画像ベースの血液分析装置によってオレンジ色に染色)-好中球の代用
ポリスチレン10ミクロンブルー-リンパ球の代用
ポリスチレン10ミクロングリーン-単球の代用
ポリスチレン10ミクロンレッド-好酸球の代用
ポリスチレン10ミクロンブラック-好塩基球の代用
セルロース5マイクロ(画像ベースの血液分析装置で染色)-RBC及びHGB(ヘモグロビン)/MCH(平均細胞ヘモグロビン)測定の代用
シリカ5ミクロン未満(画像ベースの血液分析装置によって紫色に染色)-血小板の代用。
【0075】
ビーズに加えて、精製安定化RBCをRBC及びHGB/MCH測定の代用として使用することができる。
【0076】
原則として、これは、これらの較正流体を使用して、
(1)溶液中のビーズの数を計数し、印刷均一性を評価することによって、画像ベースの血液分析装置の試料印刷(又はスメア)性能を検証する;
(2)染色可能なビーズ、例えばシリカビーズ又はセルロースビーズの染色剤取り込みの量を測定することによって、画像ベースの血液分析装置の染色性能を検証する;
(3)洗浄効率及び洗浄条件がウォッシュオフ(wash off)を検出していることを検証する;
(4)異なるビーズタイプを計数し、それに応じてタイプを分類することによって画像ベースの血液分析装置の性能を検証する;並びに
(5)HGB及び他のRBCパラメータが画像ベースの血液学分析装置で利用可能である場合、ビーズ又は安定化RBCをこれらのパラメータの検証のために溶液に使用することができる。
【0077】
自動画像ベースの血液分析装置システム
基板に塗布された試料を調製するために使用される後続の処理工程は、試料を固定、染色、及びすすぎのために1つ以上の流体に試料を曝露することを含むことができる。流体送達、撹拌、及び流体排出等の流体輸送工程、並びに乾燥等の他の調製ステップも、試料調製に関与することができる。
【0078】
一般に、例えば、米国特許第9,217,695号同第10,094,764号;及び同第10,764,538号に開示されているような、例えば、cobas(登録商標)m 511統合型血液学分析装置(Roche Diagnostics)等の自動化された画像ベースの血液学分析装置システムは、最小限の流体量を使用して迅速、効率的、且つ均一な試料処理を提供する。そのようなシステムを使用する方法は、典型的には、固定、染色、及びすすぎの段階のうちの1以上の間又は後に1つ以上の撹拌段階を含む、1つ以上の固定、染色、及びすすぎの段階を含む。システムは、独立型装置として、又は生体試料を調製及び検査するためのより大きなシステムの構成要素として実装することができる。
【0079】
その一例が図に示されているRocheのcobas m 511統合型血液学分析装置は、上述の段階を実行するための印刷、染色、及び撮像ステーションを含む。
図2は、基板2を受け取り、複数のステーション(例えば、ステーション121、122、123、124及び125)を通って基板2を移動させる自動血液分析装置システム1を示す。自動血液分析装置システム1は、ステーション間(例えば、ステーション121からステーション122へ、ステーション123へ、ステーション124へ、及びステーション125へ)で基板2を搬送するための基板移動機120を含む。基板移動機120は、基板2を保持するための把持具127と、移動機120が基板2が移動機120に取り付けられているかどうかを判定することを可能にするための位置合わせ回路又はソフトウェアとを含むことができる。
【0080】
図2は、第1のラベル読み取りステーション121、アプリケータステーション122、染色ステーション123、撮像ステーション124、及び第2のラベル読み取りステーション125を有するシステムを示す。第1のラベル読み取りステーション121は、特定の基板2を識別するために使用されるバーコード及び/又は「指紋」情報等の情報を基板2から読み取るように構成される。第2のラベル読み取りステーション125は同様に機能し、それが読み取る情報は、撮像ステーション124で撮像された試料3が処理された基板と同じであることを検証するために使用される。
【0081】
印刷ステーション
アプリケータステーション(印刷ステーションとも呼ばれる)122で、流体が、例えば中空針(図示せず)によって基板2上に堆積される。基板は、試料処理中及び試料処理後の顕微鏡検査中に試料を保持するのに適した顕微鏡スライド、カバースリップ、又は他の透明材料であってもよく、又はそれらを含むことができる。基板は、電磁スペクトルの少なくとも可視部分内の放射に対して透明であってもなくてもよい1つ以上の材料から形成することができる。そのような材料の例には、様々なガラス、石英、溶融シリカ、及び様々なポリマーが含まれるが、これらに限定されず、それらのいくつかは透明であってもよい。
図3の実施形態は、生体試料3を含むガラス顕微鏡スライド基板2を示す。堆積した流体は試料3となり、次いで自動血液分析装置システムの後のステーションで染色及び撮像される。中空針は、ビーズの直径よりも大きい直径を有し、少なくともビーズの直径と同じ高さに配置される。
【0082】
染色ステーション
図3を参照すると、染色ステーション123は、染色ステーション123をシステム又は実験室ワークステーション内の位置に固定するための支持体110A及び110Bを含むことができる。染色ステーション123はまた、各々がその基部でアクチュエータ30A及び30Bに接続された1つ以上の基板アーム10A及び10Bを含む。基板アーム10Aと10Bの両端部には、試料処理時に基板を受けて保持するための基板把持具20A及び20Bが設けられている。各基板把持具20A及び20Bは、染色ステーション123が試料処理工程を完了する間に基板2を受け入れて保持する(後述)。吸引ポートを使用して、基板把持具20A、20Bは、試料処理中に基板2を基板アーム10A、10Bに保持することができる。吸引管23は、吸引ポート21Aと21B、及び22Aと22B(ポート21A及び22Aは、
図3において基板2の後ろに配置され、破線で示されていることに留意されたい)を介して基板把持具20A及び20Bを吸引する。
図3に示す実施形態は、基板アーム10A及び10Bのそれぞれに基板を保持して処理することができる二重基板システムである。他の実施形態は、単一の基板又は3つ以上の基板を順次又は同時の処理を提供することができる。
【0083】
図3に示す染色ステーション123は、2つの基板上の試料を受け入れて処理するように構成されているが、以下の説明及び図では、染色ステーション123内の構成要素のただ1つのセット(例えば、基板把持具20A、アクチュエータ30A、及び基板アーム10A)を参照してもよい。しかしながら、構成要素の1つのセットに関連して開示される同じ工程、特徴、及び属性は、染色ステーション1(例えば、基板把持具20B、アクチュエータ30B、基板アーム10B)の構成要素の他のセットにも適用することができることを理解されたい。したがって、本明細書の説明は、明確さ及び簡潔さのために一組の構成要素のみに焦点を当てているが、染色ステーション123等の試料検査のための機械又は装置は、2組以上の構成要素のセットを含むことができ、各セットは、本明細書で説明する特徴の一部又は全てを有することが理解される。
【0084】
基板2上の試料3への流体送達は、それぞれブロック80A及び80Bに取り付けることができるプラットフォーム60A及び60Bを介して行われる。プラットフォーム60Aは、プラットフォーム60Aの表面と基板2との間に分離を提供し、基板2がプラットフォーム60Aに接触するのを防止するためのオフセット70A~70Dを含むことができる。プラットフォーム60Bは、オフセット71A~71Dの対応するセットを含むことができる。オフセットは、スタンドオフ、ピン、ペグ、ロッド、ビーズ、壁、又はプラットフォーム60A及び/又は60Bの表面と基板2との間の分離を提供する他の構造を含むことができる。プラットフォーム60A及び60Bは、長縁部9及び短縁部7を有する。仕切り100は、プラットフォーム60A及び60Bの長縁部9に実質的に平行なプラットフォーム60Aと60Bとの間に配置される。廃棄物チューブ50A及び50Bは、バルブ90A及び90Bを通って延びてもよく、廃棄物チューブ51A及び51B(
図4に示す)は、値90C及び90Dを通って延びてもよい。廃棄物チューブ50~51A及び50~51Bは、定着剤、染色液、又はリンス液を廃棄物容器230及び231(
図4に示す)に運ぶことができる。弁90A~90Dは、弁の内部又は外部に含まれるアクチュエータを介して機械的、電気的、油圧的、又は空気圧的に作動されてもよい。
【0085】
染色ステーション123は、染色ステーション123の別の斜視図を提供する
図4に示すような制御システム5を含むか、又は制御システム5に接続することができる。試料3の性質に応じて、検査用の試料を調製するための全体的な処理シーケンスの一部として、いくつかの異なる処理段階を実行することができる。そのような医薬の例は、本明細書で論じられる。しかしながら、本明細書で具体的に説明されていない段階を含む、多種多様な異なる処理段階及び段階の組み合わせを、本明細書に開示されたシステムを使用して実行することができることを理解されたい。特定の実施形態では、制御システム5は、インジケータアーム101A及び101Bを検出するために1つ以上のセンサ105A及び105Bを利用して基板アーム10A及び/又は10Bの位置を検出することができる。センサ105A及び105Bは、例えば赤外光又は様々な他の技術(レーザ、動作検出器、誘導センサ、静電容量センサ、抵抗(すなわち、接触)センサ又はスイッチ)を利用して基板アーム10A及び/又は10Bの有無を検出する近接センサ、例えば光電センサとすることができる。例えば、センサ105A又は105Bは、検出フィールドを有することができ、センサは、基板アーム(例えば、アーム10A及び/又は10B)又は基板把持具(例えば、把持具20A及び/又は20B)が検出フィールド内にあるか否かを判定することができる。制御システム5は、センサから情報を受信して、基板アーム10A及び/又は10Bの位置を決定することができる。特定の実施形態では、制御システム5は、システム1に取り付けられた乾燥機4を使用して試料3を乾燥させることができる。例えば、乾燥機4は、試料3を横断する空気の流れを導くことができる。
【0086】
図4を参照すると、1つ以上の流体管52~55Aは、プラットフォーム60A内のポート及びそれぞれの定着剤又は染色剤リザーバ210~213Aに接続することができる。流体管はまた、定着剤又は染色剤をリザーバから管及びプラットフォーム上に配置されたポートを通って基板及び試料に導くことができる、ポンプ200~203A及び/又は弁への接続を含んでもよい。一例として、ポンプ200Aは、リザーバ210Aからチューブ54Aを通って、ブロック80Aを通って、ポート44Aから出て、プラットフォーム60A上に、プラットフォーム60Aと基板2との間の間隙92内に、及び試料3を含む基板2上に定着剤又は染色剤を導くことができる。基板2に特定の量の定着剤又は染色剤を適用した後、真空又は他の吸引源220及び/又は221は、廃棄物チューブ50~51A及び50~51Bを介して基板2から廃棄物容器230及び/又は231に残留定着剤を排出することができる。第2のセットの流体管52~55Aは、プラットフォーム60A内のポート及びそれぞれの定着剤又は染色剤リザーバ210~213Bに接続することができる。流体管はまた、定着剤又は染色剤をリザーバから管及びプラットフォーム上に配置されたポートを通って基板及び試料に導くことができる、ポンプ200~203B及び/又は弁への接続を含んでもよい。
【0087】
制御システム5は、各々がハードドライブ、光学ドライブ、又はメモリ等のコンピュータ可読媒体に記憶されたソフトウェア命令を実行することができる中央処理装置を含む1つ以上のコンピュータを含むことができる。さらに、制御システム5は、ソフトウェア命令を実行するための電気回路を含むことができる。制御システム5は、システム1の動作を制御するためのユーザコマンドを受信するためのユーザインターフェースを含むことができる。制御システム5に格納された又は提供されるソフトウェア、すなわちコンピュータ(複数可)は、流体ポンプ及び真空等の試料処理中にシステム1の構成要素の動作を制御するプログラムを含むことができる。例えば、ソフトウェアは、基板上の試料に様々な定着剤、染色剤、及びリンス剤を適用し、試料処理中にいくつかの撹拌工程を実行するようにシステム1に指示するための命令を含むことができる。
【0088】
撮像ステーション
撮像ステーション124は、例えば、顕微鏡を含むことができる。いくつかの実施形態では、試料画像を得るために、1つ以上の放射線源及び1つ以上の検出器等の構成要素、並びに様々な他の光学構成要素を含み得る染色ステーション123で試料撮像を実行することができる。そのような実施形態では、システム1は、別個の撮像ステーション124を含まなくてもよく、撮像ステーションの全ての機能は、代わりにシステムの他のステーション(例えば、染色ステーション123において)で実行される。
【0089】
自動血液分析装置システムの較正
一般に、自動血液分析装置システムは、適切な動作を保証するために、システムの初期セットアップ時に、及びシステムの寿命にわたって定期的に行われるメンテナンスチェック中に較正されなければならない。初期セットアップ及びメンテナンスチェックの両方において、動作パラメータの全範囲にわたるシステムの機能が評価されなければならない。例えば、自動血液分析装置システムは、0~500万個の血小板及び0~800万個の赤血球、並びに0~40万個のWBCの範囲を有する試料で動作することができなければならない。しかしながら、自動血液分析装置システムの動作範囲の上限及び下限で生体の血小板及び赤血球数を有する保存された生体試料を得ることは困難な場合がある。それにもかかわらず、セルロース、シリカ、及び/又はポリスチレンビーズを含む本明細書に記載の較正流体は、所望に応じて各ビーズサイズの正確な特定の濃度を有するように調製することができることから、理想的な溶液を提供する。
【0090】
図5に記載されるように、較正手順400の間、ビーズを含有する較正流体は、実際の生体試料と同じ方法で自動血液分析装置システムを通過し、自動血液分析装置システムのパラメータを、較正流体の観察に基づいて変更することができる。第1の工程402において、較正流体が基板上に印刷される。基板上に印刷された試料に定着溶液を適用する任意の工程の後、較正流体の印刷された試料は、次いで、第1染色剤で染色される(工程404)。第1の染色剤を試料からすすぐ(工程406)。任意に、第2の染色剤は、第1の染色剤と同時に、又は連続的に試料に適用され得る。任意に、次いで、第2の染色剤を試料からすすぐ。次いで、試料を撮像する(工程408)。
【0091】
画像の観察又は測定に基づいて、1つ以上の較正パラメータを評価し(工程410)、これらのパラメータが定義された限界のセット内にあるかどうかを確認する。較正パラメータが較正パラメータの予測限界内にない場合、自動血液分析装置システムの少なくとも1つの構成要素が調整される414。調整を行った後、較正流体の別の試料をシステムに流し、較正パラメータを同様に分析する。
【0092】
評価することができる較正パラメータの例としては、試料混合、イメージャ焦点距離及び被写界深度、LED光強度及び波長、印刷試料体積、印刷針距離、相対速度、及び基板に対する/基板からの相対角度、並びに染色剤アプリケータ機能が挙げられる。較正は、システム測定結果(例えば、細胞型のカウント、細胞型の区別)を、較正器流体の製造時に独立して較正されたシステムで生成されたものと比較することによって評価される。印刷ステーションについて、基板からの印刷針距離及び印刷針の清浄度を調査することができる。較正中に採取された試料の画像中のセルロース、シリカ、及び/又はポリスチレンビーズの輪郭が壊れて見える場合、印刷針は、ビーズ(又は細胞)が針を通って流れるとき、又はビーズが針から基板上に流れるときにビーズ(又は細胞)を損傷しないように調整され得る。ビーズが破壊された画像は、印刷針が部分的に詰まっているか又は誤った形状であることを示す場合があり、洗浄及び/又は交換する必要があり得る。さらに、較正中に撮影された画像にビーズが現れない場合、印刷が完全にブロックされている可能性があり、洗浄及び/又は交換する必要があり得る。
【0093】
別の例では、画像処理システムは、較正中に撮影された画像内のビーズの数を計数することができる。カウントされたビーズの数は、適切な量の較正流体が適用された画像に現れる予想されるビーズの数と比較することができる。例えば、較正流体が1000ビーズ/マイクロリットルのビーズ濃度を有し、画像処理システムが900ビーズをカウントする場合、0.9マイクロリットルの較正流体が基板に適用されると予想される。基板に塗布される試料の所望の体積が1マイクロリットルである場合、印刷体積を調整する必要があり得る。
【0094】
染色ステーションについて、新たな方法は、試料への染色剤の塗布の均一性を試験することを可能にする。例えば、基板の或る部分の特定の色素(複数可)を取り込むビーズ(例えば、セルロース、誘導体化シリカ、又はシステムによって染色することができる他のビーズ)が、基板の別の部分上のビーズよりも強く染色されているように見える場合、染色アプリケータを調整する必要があり得る。
【0095】
別の例では、較正中に撮影された画像においてビーズが染色されていないように見える場合、染色装置は目詰まり又は漏れを有する可能性がある。自動血液分析装置システムで較正されている特定のプロトコルが、複数の染色を基板に適用することを必要とする場合、両方の染色の適用及び均一性を評価することができる。撮像ステーションは、色素を含有する基板を通る光の吸光度又は透過率を測定することができる。
【0096】
吸光度及び透過率の値は、試料調製プロセス中の基板上の色素沈着の堆積、及び色素が配置される領域に関連することから、そのような値を評価して、器具がスライド上に所望の試料量を正確に堆積させたかどうかを判定することができる。例えば、色素のスペクトル品質は、印刷された血液試料及び/又は所与の厚さのビーズを含有する試料の画像に取り込まれた色を判定することができる。したがって、所与の領域にわたって均一に印刷及び染色された試料の厚さを、1つ以上の取得された画像に基づいて推定することができる。推定された厚さ及び印刷された試料の面積から、基板上に分配された色素の量を計算することが可能である。したがって、既知のスペクトル特性を有する色素を使用して、ディスペンサが所与の表面に沈着させる試料の量を推定及び/又は較正することができる。同様に、本開示の別の実施形態によれば、ビーズ、すなわちセルロースビーズ、シリカビーズ、又はポリスチレンビーズを使用して、ビーズを含む印刷された試料の一方の面が他方の面よりも厚いかどうかを検出することができ、これは、例えば、印刷針が曲がったことを示すか、そうでなければ分析装置にとって許容範囲外であることを示すことができる。
【0097】
較正中に撮影された画像の明瞭さ又はぼやけに基づいて、撮像システムの焦点を調整してサンプルを最も鮮明な視野にすることができる。別の例では、撮像システムを使用して、ビーズを含む較正試料の画像を取り込むことができ、画像処理システムを使用して、ビーズのサイズ(例えば、直径測定によって)を計算することができる。試料中のビーズは既知のサイズであるため、画像から採取されたビーズの測定値が既知のサイズの許容範囲内になるように、撮像システム又は画像処理システムを調整することができる。別の例では、ビーズが、撮像ステーションで特定の波長の光を照射することによって吸収又は励起される特定の染色剤、例えば蛍光染色剤で染色され、ビーズが吸収又は蛍光を示さない場合、撮像ステーションでの特定の波長の光源は正しく機能していない可能性がある。
【0098】
上述のように較正プロトコルを実行した後に自動血液分析装置システムを調整した後、別の較正プロトコルを開始することができる。後続の較正プロトコルでは、ユーザは、第1の較正プロトコルの後に行われた調整が適切に行われたこと、及び試料を自動血液分析装置システムで分析する前に任意の追加の調整を完了する必要があるかどうかを確認することができる。
【実施例】
【0099】
実施形態が相互に排他的でない限り、本開示の前述の実施形態の1つ以上を組み合わせることができることが理解される。本開示の実施形態をより容易に理解することができるように、本開示を例示することを意図しているが、その範囲を限定するものではない以下の実施例を参照する。
【0100】
実施例1-セルロースビーズ
血清中に混合されたセルロースビーズを用いた初期試験により、これらのビーズは、cobas m 511統合型血液学分析装置(
図1)によって染色及び画像化できることが証明された。全自動染色プロトコルの適用は、染色プロセス後に基板に適用されたビーズの一部のみが残っていることを示した。次いで、アクリル水溶性を用いたその後の実験を行った(実施例2)。
【0101】
実施例2-アクリル水溶性重合樹脂中のセルロースビーズ
ビーズをスライド(基板)により良好に付着させるために、較正流体の成分としてアクリル水溶性樹脂を添加した。ビーズを樹脂に懸濁し、cobas m 511統合型血液学分析装置に置き、正常に処理した。結果は、スライド上に堆積した樹脂の薄層のため、樹脂が染色工程の前に硬化し、ビーズをガラス表面に付着させることを示した。
【0102】
10ミクロンサイズ及びおよそ0.2%の濃度のセルロースビーズを樹脂マトリックスと混合した。アクリル水溶性重合樹脂を0.25重量%程度の濃度で使用した。
【0103】
2種類の水溶性重合樹脂、アクリル及びポリウレタンを試した。これらを5~50%の濃度(最終)範囲で試験して、約1~10%の最も有用な範囲を開発した。
【0104】
ポリウレタン樹脂は、cobas m 511統合型血液学分析装置染色プロセスからの明るい青色を染色するが、アクリル樹脂は透明である。
【0105】
図1に示すように、これらの結果は、システムがサンプル間のDigiMAC3洗浄を使用してそれ自体を適切に洗浄することを可能にするために、水溶性アクリル(又は他の)重合樹脂マトリックスが必要であることを示している。
【0106】
実施例3-シリカビーズ
シリカビーズも試験した。これらのビーズを、いくつかの色素で予備染色することができる。例えば、ポリスチレンビーズと同様に、予備染色されたシリカビーズを得ることができる。これらは、ポリスチレンビーズの代替として使用することができる。そのようなシリカビーズを、有機溶媒に可溶化された色素に曝露し、次いでシリカビーズを水性緩衝液に懸濁し、それによってシリカビーズの内部に色素を捕捉することによって予備染色される。
【0107】
特に、7ミクロンのシリカビーズを約0.1%の濃度で使用し、10ミクロンのシリカビーズを約0.05%の濃度で使用し、5ミクロン未満のシリカビーズを約0.1%の濃度で使用した。アクリル水溶性重合樹脂を5%程度の濃度で使用した。グルコースを約4%の濃度で使用した。最初に試験した濃度範囲は、全てのビーズについて0~0.5%、水溶性重合樹脂について0~50%、グルコースについて0~10%、及び0~500万RBC/マイクロリットルであった。
【0108】
2種類の水溶性重合樹脂、アクリル及びポリウレタンを試した。これらを5~50%の濃度(最終)範囲で試験して、約1~10%の最も有用な範囲を開発した。ポリウレタン樹脂は、cobas m 511統合型血液学分析装置染色プロセスからの明るい青色を染色するが、アクリル樹脂は透明のままである。
【0109】
図6は、顕微鏡スライド上の緑色、黄色、赤色、黒色の予備染色された10ミクロンのシリカビーズの顕微鏡画像の表示である。
【0110】
実施例4-誘導体化シリカビーズ
-NH2(アミノ)、-COOH(酸)、及びC18(ワックス)で化学的に誘導体化されたシリカビーズは、SiliCycle Inc.(カナダケベック州)から入手した。これらのビーズを、水溶性アクリル重合樹脂(5%濃度)中で懸濁液を作製することによって試験し、DigiMAC3(商標)染色パックを使用してcobas m 511統合型血液学分析装置で処理した。ビーズの濃度は0~5%であった。
【0111】
図7は、以下で誘導体化されたシリカビーズの顕微鏡画像の表示である。-NH
2(アミノ、オレンジ色)、C18(ワックス、水色)、及び-COOH(酸、濃青色)。
【0112】
実施例5-ポリスチレンビーズ
予備染色されたポリスチレンビーズを水溶性アクリル重合樹脂に懸濁し、cobas m 511統合型血液学分析装置で処理した。これらのビーズは均一なサイズであり、分析装置で染色した後も色を保持していた。入手しやすいことから、赤色、青色、黒色、及び緑色のビーズを使用し、それらの色を手動顕微鏡法によって容易に区別した。
【0113】
特に、7ミクロンのシリカビーズを約0.1%の濃度で使用した。10ミクロンのポリスチレン予備染色したビーズを約0.05%の濃度で使用した。アクリル水溶性重合樹脂を5%程度の濃度で使用した。最初に試験した濃度範囲は、全てのビーズについて0~0.5%、水溶性重合樹脂について0~50%であった。2種類の水溶性重合樹脂、アクリル及びポリウレタンを試した。これらを5~50%の濃度(最終)範囲で試験して、約1~10%の最も有用な範囲を開発した。
【0114】
ポリウレタン樹脂は、cobas m 511統合型血液学分析装置染色プロセスからの明るい青色を染色するが、アクリル樹脂は透明である。
【0115】
図8は、ポリスチレンビーズ(赤色、青色、黒色、緑色)及びNH
2で誘導体化されたシリカビーズ(オレンジ)の顕微鏡画像の表示である。
【0116】
実施例6-較正流体中の成分としてのRBC
RBC(10万~500万個/マイクロリットル)をビーズ懸濁液に添加したが、最初、RBCは均一な試料印刷を破壊した。較正流体にグルコースを添加することにより、より均一な調製ができることが分かった。使用した範囲は1%~5%グルコースであった。グルコースはまた、スライドに付着したビーズを保持するのに役立つが、アクリル及び/又はポリウレタンの水溶性重合樹脂マトリックスが依然として必要であった。
【0117】
特に、7ミクロンのシリカビーズを約0.1%の濃度で使用し、10ミクロンのシリカビーズを約0.05%の濃度で使用し、5ミクロン未満のシリカビーズを約0.1%の濃度で使用した。アクリル水溶性重合樹脂を5%程度の濃度で使用した。グルコースを約4%の濃度で使用した。RBCを約300万細胞/マイクロリットルの濃度で添加した。
【0118】
最初に試験した濃度範囲は、全てのビーズについて0~0.5%、水溶性重合樹脂について0~5%、グルコースについて0~10%、及び0~500万RBC/マイクロリットルであった。
【0119】
実施例7-5ミクロン未満のビーズ
PLT代用物として使用するために、非誘導体化シリカビーズを濾過によって選別して5ミクロン直径未満のビーズを得た。これらのビーズは、cobas m 511統合型血液学分析装置によって紫色に染色される。
【0120】
実施例8-較正流体試験
最終較正流体は以下を含んだ:
7ミクロンシリカ-NH2ビーズ(0.1%)
10ミクロンポリスチレンビーズ(0.05%)
アクリル水溶性重合樹脂(5%)
RBC(300万細胞/ml)
グルコース4%/mL
5ミクロン未満の非誘導体化シリカビーズ(0.1%)
【0121】
上記の実施例に記載されるcobas m 511統合型血液学分析装置で試験された濃度範囲は、ビーズについては0~0.5%、水溶性アクリル重合樹脂については0~50%、グルコースについては0~10%、及び500万個RBC/1マイクロリットルであった。
【0122】
結果は、かなり均一なプリントを得ることができ、これを分析装置で処理することができ、これは、次にRBCパラメータデータを与え、小ビーズの一部を血小板として分類することを示す。これらの結果を、リリースされたソフトウェアを修正なしで使用して得た。
図9は、上述のように、7ミクロンのシリカ-NH
2ビーズ、10ミクロンのポリスチレンビーズ、水溶性アクリル重合樹脂、RBC、グルコース、及び5ミクロン未満の非誘導体化シリカビーズを含む較正流体の均一なプリントの顕微鏡画像の表示である。
【0123】
このスライドのcobas m 511統合型血液学分析装置の結果は以下の通りであった:
WBC 0.21
RBC 0.68
HGB 2
HCT 6.6
MCV 97.8
MCH 30.3
MCHC 31
RDW 15.1
RDWSD 53.2
PLT 5
観察ステーションからのギャラリーは、cobas m 511統合型血液学分析装置によって染色された5ミクロン以下のビーズが血小板であることが確認された。
【0124】
他の実施形態
本開示のいくつかの実施形態について説明した。それにもかかわらず、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に対して様々な修正及び変形を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。