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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/00 20060101AFI20240215BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20240215BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
E04B9/00 A
E04B9/18 Z
E04B1/82 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023059311
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2023-09-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 征宏
(72)【発明者】
【氏名】駒倉 昌和
(72)【発明者】
【氏名】硲 美友
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-015913(JP,U)
【文献】特開2016-148192(JP,A)
【文献】特開2003-129605(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02975188(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間仕切り壁の上方に設けられる天井構造であって、
天井スラブから吊り下げられたバー材を平行状又は格子状に組んだ天井下地と、
上記天井下地において平行に配置された2つの上記バー材の水平方向に延びる下端部の上に2つの辺部が載置される複数の矩形板状の天井材とを備え、
上記間仕切り壁から所定の距離範囲に設けられた複数の上記天井材の上方には、
平面視において上記天井材の寸法と同等の寸法の吸音材が上記各天井材に1つずつ対応付けられて設けられ、又は
平面視において上記天井材の寸法よりも小さい寸法の複数の吸音材が上記各天井材に対応付けられて上記2つのバー材間に該バー材の延伸方向に隙間無く並べられ、
上記各吸音材は、
弾性を有する矩形板状体によって構成され、
対応する上記天井材が載置される上記2つのバー材の内側において、対応する上記天井材との間に空間を形成するように配置されると共に、
対向する所定の二辺部が、弾性復元力によって上記2つのバー材に押し付けられるように、上記所定の二辺部間の中央が両端よりも上方に位置するように曲げられている
ことを特徴とする天井構造。
【請求項2】
請求項1に記載の天井構造において、
上記各吸音材は、上記所定の二辺部が上記間仕切り壁に平行となる向きに配置されている
ことを特徴とする天井構造。
【請求項3】
間仕切り壁の上方に設けられる天井構造であって、
天井スラブから吊り下げられたバー材を平行状又は格子状に組んだ天井下地と、
上記天井下地において平行に配置された2つの上記バー材の水平方向に延びる下端部の上に2つの辺部が載置される複数の矩形板状の天井材とを備え、
上記間仕切り壁から所定の距離範囲に設けられた複数の上記天井材の上方には、吸音材が上記各天井材に対応付けられて設けられ、
上記各吸音材は、
弾性を有する矩形板状体によって構成され、
対応する上記天井材が載置される上記2つのバー材の内側において、対応する上記天井材との間に空間を形成するように配置されると共に、
対向する所定の二辺部が、弾性復元力によって上記2つのバー材に押し付けられるように、上記所定の二辺部間の中央が両端よりも上方に位置するように曲げられ、
上記各吸音材を構成する上記矩形板状体の下面には、上記所定の二辺部の間に、該所定の二辺部に平行に延びる断面形状がV字形状の2つの溝が形成され、
上記各吸音材は、
上記2つの溝により、上記2つの溝の間の遮蔽部と、上記2つの溝と上記所定の二辺部との間の2つの脚部とに区画され、
上記遮蔽部と上記各脚部とのなす角が、90度より大きく180度から上記溝の角度を減じた角度より小さくなるように折り曲げられている
ことを特徴とする天井構造。
【請求項4】
間仕切り壁の上方に設けられる天井構造であって、
天井スラブから吊り下げられたバー材を平行状又は格子状に組んだ天井下地と、
上記天井下地において平行に配置された2つの上記バー材の水平方向に延びる下端部の上に2つの辺部が載置される複数の矩形板状の天井材とを備え、
上記間仕切り壁から所定の距離範囲に設けられた複数の上記天井材の上方には、吸音材が上記各天井材に対応付けられて設けられ、
上記各吸音材は、
弾性を有する矩形板状体によって構成され、
対応する上記天井材が載置される上記2つのバー材の内側において、対応する上記天井材との間に空間を形成するように配置されると共に、
対向する所定の二辺部が、弾性復元力によって上記2つのバー材に押し付けられるように、上記所定の二辺部間の中央が両端よりも上方に位置するように曲げられ、
上記各吸音材を構成する上記矩形板状体の下面には、上記所定の二辺部の間に、該所定の二辺部に平行に延びる上記矩形板状体の上面付近に至る深さの2本の切り込み溝が形成され、
上記各吸音材は、
上記2本の切り込み溝により、上記2本の切り込み溝の間の遮蔽部と、上記2の切り込み溝と上記所定の二辺部との間の2つの脚部とに区画され、
上記遮蔽部と上記各脚部とのなす角が、90度より大きく180度より小さくなるように折り曲げられている
ことを特徴とする天井構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の天井構造において、
上記各吸音材は、上記所定の二辺部間の中央が最も高くなるように湾曲している
ことを特徴とする天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間仕切り壁の上方に設けられる天井構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル等では、間仕切り壁が天井施工後に施工されることが多くある。このような場合、間仕切り壁は、床面から天井面までの間に施工され、天井裏までは設けられない。そのため、間仕切り壁の遮音性能が高くても、間仕切り壁で仕切られた二室の一方で発生した音が天井裏を介して他方へ伝達され、二室間における遮音性能が低くなるという問題があった。
【0003】
そこで、従来、間仕切り壁上方の天井裏にグラスウール等の吸音材を設けることで、二室間における遮音性能を向上させることが提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1では、間仕切り壁上方の天井下地の桟の上に板状の吸音材を設けることにより、間仕切り壁で仕切られた二室の一方で発生して天井裏へ透過した音を吸音材で減衰させることにより、他方の室に音が伝わり難くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4353128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1では、天井ボードの施工前に吸音材を設置することとしており、大きな板状の吸音材を用いてこれを天井下地の複数の桟に架け渡すことで、天井ボードが施工されるまでの間に吸音材が落下してしまわないようにしている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1では、天井構造を構成した後に吸音材の設置位置を変更することを何ら意識しておらず、吸音材も複数の桟に跨がる程大きいため、間仕切り壁の位置変更に合わせて吸音材の位置を容易に変更できないという問題があった。また、施工現場でグラスウールを所望の大きさに切断して吸音材を形成する際に、ごみが発生し、施工現場を汚してしまうという問題もあった。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、間仕切り壁の位置変更に応じて容易に吸音材の位置変更が可能であり、施工現場を汚すことなく容易に施工可能な天井構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、間仕切り壁の上方の天井構造としてシステム天井構造を採用すると共に、間仕切り壁から所定の距離範囲にある複数の天井材の上方に、吸音材を各天井材に対応付けて設けることとした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、間仕切り壁の上方に設けられる天井構造を前提とするものである。
【0011】
そして、第1の発明は、天井スラブから吊り下げられたバー材を平行状又は格子状に組んだ天井下地と、上記天井下地において平行に配置された2つの上記バー材の内側に突出する下端部の上に2つの辺部が載置される複数の矩形板状の天井材とを備え、上記間仕切り壁から所定の距離範囲に設けられた複数の上記天井材の上方には、吸音材が上記各天井材に対応付けられて設けられ、上記各吸音材は、弾性を有する矩形板状体によって構成され、対応する上記天井材が載置される上記2つのバー材の内側において、対応する上記天井材との間に空間を形成するように配置されると共に、対向する所定の二辺部が、弾性復元力によって上記2つのバー材に押し付けられるように、上記所定の二辺部間の中央が両端よりも上方に位置するように曲げられていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、間仕切り壁の上方の天井構造としてシステム天井構造を採用し、間仕切り壁から所定の距離範囲にある複数の天井材の上方に、吸音材を各天井材に対応付けて設けることとしている。このような天井構造によれば、間仕切り壁の上方の天井裏では、間仕切り壁によって仕切られる二室の隣室との境界付近の両側に、複数の吸音材が設けられることとなる。そのため、間仕切り壁で仕切られた二室の一方の室で発生して天井裏へ透過した音を吸音材で減衰させて他方の室へ伝わり難くすることができる。また、上記天井構造では、いずれの天井材も取り外し可能なシステム天井構造を採用すると共に、各吸音材を、天井材に対応付け、対応する天井材が載置される2つのバー材の間に配置するようにしている。このような構成によれば、吸音材が、システム天井用の天井材と同等の大きさに構成されるため、吸音材も天井材と同様に容易に着脱することができる。つまり、上記天井構造によれば、吸音材の位置変更を容易に行うことができるため、間仕切り壁の位置を変更する際に、容易に吸音材の位置も変更することができる。
【0013】
また、第1の発明では、各吸音材を、対応する天井材が載置される2つのバー材の間に、天井材との間に空間を形成するように配置することとしている。このような構成によれば、間仕切り壁で仕切られた二室の一方の室で発生して天井裏へ透過した音が、吸音材だけでなく吸音材と天井材との間に形成された空間でも減衰するため、他方の室へより伝わり難くなる。つまり、間仕切り壁で仕切られた二室間の遮音性能が向上する。
【0014】
また、第1の発明では、各吸音材を、弾性を有する矩形板状体によって構成し、弾性復元力によって吸音材の対向する所定の二辺部が対応するバー材に押し付けられるように、吸音材を曲げて矩形枠部の内側に配置することとしている。このような構成によれば、別途、支持部材等を用いることなく、吸音材を、少なくとも一部が天井材から持ち上げられて空間が形成される状態に保持することができる。また、第1の発明によれば、吸音材の大きさは、天井材の大きさに応じて決まるので、工場等で決まった大きさに切断しておくことができる。つまり、第1の発明によれば、施工現場でグラスウール等の吸音材を所望の大きさに切断する必要がなく、施工時にごみが発生して施工現場を汚してしまうことがない。
【0015】
以上のように、第1の発明によれば、間仕切り壁の位置変更に応じて容易に吸音材の位置変更が可能であり、施工現場を汚すことなく容易に施工可能な天井構造を提供することができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、上記各吸音材は、上記所定の二辺部が上記間仕切り壁に平行となる向きに配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
第2の発明では、各吸音材を、上記所定の二辺部が間仕切り壁に平行となる向きに配置することとしている。このような構成によれば、各吸音材と各天井材との間に形成される空間の上方だけでなく、間仕切り壁側の側方も吸音材で覆われることとなる。また、各吸音材の間仕切り壁に平行な所定の二辺部が、対応するバー材に押し付けられることにより、空間の側方が隙間無く閉塞されることとなる。そのため、間仕切り壁で仕切られた二室の一方の室で発生して天井裏へ透過した音が、他方の室へより伝わり難くなる。
【0018】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記各吸音材を構成する上記矩形板状体の下面には、上記所定の二辺部の間に、該所定の二辺部に平行に延びる断面形状がV字形状の2つの溝が形成され、上記各吸音材は、上記2つの溝により、上記2つの溝の間の遮蔽部と、上記2つの溝と上記所定の二辺部との間の2つの脚部とに区画され、上記遮蔽部と上記各脚部とのなす角が、90度より大きく180度から上記溝の角度を減じた角度より小さくなるように折り曲げられていることを特徴とするものである。
【0019】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、上記各吸音材を構成する上記矩形板状体の下面には、上記所定の二辺部の間に、該所定の二辺部に平行に延びる上記矩形板状体の上面付近に至る深さの2本の切り込み溝が形成され、上記各吸音材は、上記2本の切り込み溝により、上記2本の切り込み溝の間の遮蔽部と、上記2つの切り込み溝と上記所定の二辺部との間の2つの脚部とに区画され、上記遮蔽部と上記各脚部とのなす角が、90度より大きく180度より小さくなるように折り曲げられていることを特徴とするものである。
【0020】
第3及び第4の発明では、各吸音材を構成する矩形板状体の下面に、2本のV字形状の溝又は切り込み溝が形成されている。このような構成により、施工現場にて吸音材を設置する際に、吸音材の折り曲げ作業が容易になる。従って、第3及び第4の発明によれば、吸音材の設置及び位置変更をより容易に行うことができる。
【0021】
第5の発明は、第1又は第2の発明において、上記各吸音材は、上記所定の二辺部間の中央が最も高くなるように湾曲していることを特徴とするものである。
【0022】
第5の発明によれば、矩形板状体の吸音材を準備し、施工現場にて湾曲させて設置するだけで容易に吸音材を施工できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した如く、本発明によると、間仕切り壁の上方の天井構造としてシステム天井構造を採用すると共に、間仕切り壁から所定の距離範囲にある複数の天井材の上方に、吸音材を各天井材に対応付けて設けることとしたため、間仕切り壁の位置変更に応じて容易に吸音材の位置変更が可能であり、施工現場を汚すことなく容易に施工可能な天井構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態1に係る天井構造を上側から見て示す斜視図である。
図2図2は、図1の天井構造の間仕切り壁に直交する方向の断面図である。
図3図3は、図2のIII-III線方向の断面図である。
図4図4は、図2のバー材付近の拡大図である。
図5図5は、吸音材を折り曲げる様子を示す説明図である。
図6図6は、実施形態2の吸音材を折り曲げる様子を示す説明図である。
図7図7は、実施形態2の天井構造における図4相当図である。
図8図8は、実施形態3の吸音材を折り曲げる様子を示す説明図である。
図9図9は、実施形態3の天井構造における図4相当図である。
図10図10は、その他の実施形態の天井構造上側から見て示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0026】
《発明の実施形態1》
-天井構造の構成-
図1図3は、本発明の実施形態1に係る間仕切り壁PWの上方に設けられる天井構造Cを示す図である。天井構造Cには、所謂システム天井構造が採用されている。天井構造Cの下方は、間仕切り壁PWによって2つの室R1,R2に区切られている。なお、以下では、説明の便宜上、図2の左側、右側、上側、下側、紙面手前側、紙面奥側を、それぞれ「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」として説明する。
【0027】
図1図3に示すように、天井構造Cは、天井下地5と、複数の天井材10,…,10と、複数の吸音材20,…,20とを備えている。なお、図中、1は建物の室内の天井部分を構成する天井スラブ、2は上端が天井スラブ1に埋め込まれて固定された吊りボルト、3は該吊りボルト2の下端部にナット4,4により取り付けられたハンガーである。
【0028】
天井下地5は、複数のバー材6,…,6を格子状に組んだものであり、ハンガー3の下端部に複数のバー材6,…,6が取り付けられることにより、天井スラブ1から吊りボルト2及びハンガー3によって吊り下げられている。
【0029】
図4に示すように、各バー材6は、金属製で断面T字状に形成されている。各バー材6は、固定部6aと、連結部6bと、一対の係止部6c,6cとを備えている。固定部6aは、バー材6の上端に位置し、矩形筒状に形成されている。連結部6bは、固定部6aの下端から下向きに延びる板状部分である。一対の係止部6c,6cは、連結部6bの下端に連続し、水平方向に互いに離れる方向に延びている。各バー材6は、固定部6aがハンガー3の下端部に取り付けられており、連結部6bと一対の係止部6c,6cとで断面T字状をなして該T字が逆向きになった状態で吊り下げられている。
【0030】
上記複数のバー材6,…,6は前後方向(水平縦方向)及び左右方向(水平横方向)に並べられて平面視で格子状に組まれており、これらのバー材6,…,6により面一状の天井下地5が構成されている。天井下地5には、各4本のバー材6,6,6,6により、複数の矩形枠部8,…,8が形成されている。複数の矩形枠部8,…,8の一部には、照明器具や空調機器等の天井設備機器(図示せず)が固定支持され、残りの矩形枠部8,…,8には、それぞれ天井材10,…,10が各々の周辺部で載せ掛けられた状態で支持されている。複数の矩形枠部8,…,8に支持される天井設備機器及び天井材10,…,10により、格子状のグリッド天井面が形成されている。
【0031】
図2及び図4に示すように、各天井材10は、矩形枠部8の大きさに対応した大きさ(例えば600×600mm)のロックウール材によって構成されている。なお、天井材10の大きさ及び素材は、特に限定されず、いかなる大きさ及び素材であってもよい。
【0032】
各天井材10の四周辺部の下側隅角部には、該隅角部を断面矩形状に切り欠いた切欠き段部10aが形成されている。天井材10は、各切欠き段部10aの下面を矩形枠部8を構成する4本のバー材6の係止部6c上面に載置することで、バー材6に載せ掛けられた状態でバー材6に支持されている。
【0033】
図1及び図2に示すように、複数の吸音材20,…,20は、間仕切り壁PWから所定の距離範囲にある矩形枠部8,…,8の内側にそれぞれ1つずつ設けられている。即ち、間仕切り壁PWから所定の距離範囲にある複数の天井材10,…,10の上方には、吸音材20がそれぞれ1つずつ天井材10に対応付けられて設けられている。本実施形態1では、所定の距離は、例えば950mmに設定されている。なお、本実施形態1では、間仕切り壁PWは、上端が、前後方向に延びるバー材6に固定されており、矩形枠部8の一辺は、640mm程度に形成されている。そのため、図1及び図2に示すように、間仕切壁PWから950mmの範囲には、間仕切り壁PWの上端が固定されるバー材6を一部に含む2列分の矩形枠部8,…,8が含まれる。即ち、本実施形態1では、間仕切壁PWから950mmの範囲には、間仕切り壁PWの左右両側に天井材10が1つずつ含まれ、これに対応して、吸音材20が間仕切り壁PWの左右両側に1つずつ設けられることとなる。
【0034】
吸音材20は、吸音性を有すると共に弾性を有する矩形板状体によって構成されている。本実施形態1では、吸音材20は、グラスウールボード(密度24~96K)で構成されている。なお、吸音材20には、吸音性及び弾性を有する一方、600mmの長さの矩形板状体としたときに、両端のみが支持された状態で、真ん中が200mm以上垂れさがらない程度の厚みと剛性があれば、発泡体やグラスウールボード以外の繊維集合体でも構成することができる。発泡体としては、連続気泡発泡体で、発泡ポリエチレンや発泡ポリスチレン等を用いるのが好ましい。また、繊維集合体としては、グラスウールファイバーボードやロックウールファイバーボード等の無機繊維集合体や、アクリル繊維集合体やPET繊維集合体等の樹脂繊維集合体等を用いるのが好ましい。より好ましくは、燃え難く軽量なグラスウール(密度24~96K)を用いるのがより好ましい。
【0035】
吸音材20は、天井下地5の矩形枠部8の内側に収まる天井材10と同等の大きさに形成されている。なお、本実施形態1では、吸音材20は、折り曲げられて矩形枠部8の内側に設置されるため、例えば、厚さ25mm、600×800mmのグラスウールボード(矩形板状体)で構成されている。なお、吸音材20の厚さは、特に限定されないが、12~60mm程度のものを用いるのが好ましい。また、吸音材20の寸法も、上記の寸法に限定されないが、設置時の形態(折り曲げられた状態)で平面視において天井材10の寸法と同等のものを用いるのが好ましい。
【0036】
吸音材20を構成するグラスウールボードの下面には、2つの短辺部20s,20s(所定の2辺部)間に、該短辺部20sに平行に延びる断面形状がV字形状の2つの溝21,21が形成されている。2つの溝21,21は、吸音材20の下面において、長さ方向の両端から所定の距離(例えば、100mm)だけ離れた位置に形成されている。
【0037】
各溝21は、吸音材20を構成するグラスウールボードの下面を切り欠くことによって形成されている。本実施形態1では、各溝21は、角度αが50度のV字形状の断面を有し、吸音材20の短辺方向の一端から他端に亘って延びている。なお、溝21の角度αは、50度に限られず、10度~85度であればよい。
【0038】
吸音材20は、2つの溝21,21により、2つの溝21,21間の遮蔽部20Aと、2つの溝21,21と2つの短辺部20s,20sとの間の2つの脚部20B,20Bとに区画されている。また、吸音材20は、各溝21部分で折り曲げられ、短辺部20s,20s間の中央が両端よりも上方に位置する(上方に凸の形状となる)ように変形させられた状態で、矩形枠部8の内側に設置されている。
【0039】
具体的には、図5に示すように、吸音材20は、溝21の底部を軸として、脚部20Bを溝21の角度α(本実施形態1では、50度)だけ回動させると(図5の上段参照)、溝21の2つの内面が当接する(図5の中段参照)。本実施形態1では、溝21の2つの内面が当接した後、さらに脚部20Bを同方向へ回動させることにより、遮蔽部20Aと各脚部20Bとのなす角βが、90度より大きく180度から溝21の角度αを減じた角度(図5の中段の状態における遮蔽部20Aと各脚部20Bとのなす角)より小さくなり、吸音材20の溝21部分で遮蔽部20Aと脚部20Bとが圧縮された状態となる(図5の下段参照)。この状態で、吸音材20を矩形枠部8の内側に、脚部20Bの端(吸音材20の短辺部20s,20s)が矩形枠部8の対応するバー材6,6の固定部6a,6a又は連結部6b,6bに当接するように設置する(図2及び図4参照)。
【0040】
上述したように、吸音材20は、各溝21部分で折り曲げられ、遮蔽部20Aと脚部20Bとが圧縮されて変形し、弾性復元力が作用して互いに離れようとする。このような吸音材20の弾性復元力により、吸音材20の短辺部20s,20sが矩形枠部8の対応する2つのバー材6,6の固定部6a,6a又は連結部6b,6bに押し付けられる。
【0041】
また、吸音材20は、短辺部20s,20s間の中央が両端よりも上方に位置する(上方に凸の形状となる)ように変形させられた状態で、矩形枠部8の内側に設置されている。このように吸音材20を設置することにより、各矩形枠部8の内側において、該矩形枠部8に四周辺部が載置された天井材10との間に空間Sが形成される。詳細については後述するが、このような空間Sを形成することにより、間仕切り壁PWで区切られた二室R1,R2間の遮音性能が向上する。
【0042】
なお、上記空間Sは、できる限り閉じられていることが好ましい。そのため、吸音材20は、図2及び図3に示すように、4つの辺部(短辺部20s,20s及び長辺部20l,20l)が矩形枠部8の内面(4つのバー材6の固定部6a又は連結部6b)に当接するように設けられるのが好ましい。
【0043】
また、本実施形態1では、各吸音材20は、脚部20Bに含まれる短辺部20sが、前後方向に延びるように配置されている。つまり、各吸音材20は、短辺部20sが、前後方向に延びる間仕切り壁PWに平行となる向きに配置されている。
【0044】
-位置変更-
次に、間仕切り壁PWの設置位置を変更する際の動作について説明する。
【0045】
間仕切り壁PWの設置位置を変更する場合、吸音材20の位置も変更する必要がある。まず、吸音材20が設置されている矩形枠部8の隣の矩形枠部8に載置された天井材10を取り外し、そこから天井裏にアクセスして隣の吸音材20を取り外す。吸音材20は、2つの短辺部20s,20sが矩形枠部8に押し付けられることによって矩形枠部8内に保持されているだけであるので、短辺部20s,20sに対し、弾性復元力に抗する方向(内向き)の力を付与しながら吸音材20を持ち上げることにより、容易に矩形枠部8から取り外すことができる。
【0046】
間仕切り壁PWの元の設置位置の所定の距離範囲に設けられていた複数の吸音材20,20,20を全て取り外した後、間仕切り壁PWの新たな設置位置の所定の距離範囲にある矩形枠部8,…,8の内側に、取り外した吸音材20を設置する。具体的には、吸音材20を設置する予定の矩形枠部8の隣の矩形枠部8に載置された天井材10を取り外し、そこから天井裏にアクセスして隣の矩形枠部8の内側に、吸音材20を設置する。
【0047】
なお、吸音材20が設置される矩形枠部8に載置される天井材10を取り外して吸音材20を着脱するようにしてもよい。
【0048】
-遮音作用-
次に、天井構造Cの遮音作用について説明する。
【0049】
本実施形態1では、間仕切り壁PWの上方の天井構造Cとしてシステム天井構造を採用し、間仕切り壁PWから所定の距離範囲(例えば、950mm)にある複数の天井材10,…,10の上方に、吸音材20をそれぞれ1つずつ天井材10に対応付けて設けることとしている。そのため、間仕切り壁PWの上方の天井裏では、間仕切り壁PWによって仕切られる二室R1,R2の隣室との境界付近の両側に、複数の吸音材20,…,20が設けられることとなる。また、本実施形態1では、各吸音材20を、対応する天井材10が載置される矩形枠部8の内側に配置したときに、天井材10との間に空間Sを形成する形状に形成している。
【0050】
このような構成により、本実施形態1では、例えば、図2に示すように間仕切り壁PWで仕切られた二室R1,R2の一方の室R1で発生して天井材10を透過して天井裏へ至った音は、室R1側に設けられた吸音材20と天井材10とに挟まれた空間Sと吸音材20とによって減衰する。天井裏において一部の音が吸音材20で覆われた空間Sから漏れて天井裏の室R2側へ至ったとしても、室R2側にも吸音材20及び空間Sが設けられているため、これらによって音はさらに減衰される。
【0051】
また、本実施形態1では、各吸音材20の短辺部20sが、矩形枠部8の対応するバー材6に押し付けられることにより、空間Sの左右の端が隙間無く閉塞されている。このような構成により、室R1で発生して天井材10を透過して天井裏へ至り、室R1側から室R2側へ、即ち、右側へ進もうとしても、空間Sの右端が隙間無く閉塞されているため、空間Sから漏れ難くなり、遮音性能が向上する。
【0052】
以上のように、本実施形態1の吸音材20を備えた天井構造Cを間仕切り壁PWの上方に設けることにより、吸音材20を備えない天井構造C1及び従来の天井構造C2より二室間の遮音性能が向上することを検証すべく、以下の遮音性能試験を行った。なお、従来の天井構造C2は、本実施形態1の吸音材20よりも長尺の厚さ25mmのグラスウールを、施工現場で切断しながら、格子状の天井下地5の上に、複数の矩形枠部8,…,8に跨がるように設けたものである。
【0053】
[遮音性能試験]
図1及び図2に示す天井構造Cの下方において間仕切り壁PWによって区切られた2室R1,R2のうちの一方の室R1に測定用音源を設置して音源室とする一方、他方の室R2を受信室とし、測定用音源から人の声の周波数帯域とされる中心周波数500Hzの試験音(90dB程度)を発生させ、騒音計で測定した室R1(音源室)と室R2(受信室)との音圧レベルの差(遮音性能)を求めた。
【0054】
遮音性能試験の結果、人の声の周波数帯域とされる500Hz領域において、天井構造C,C1,C2の音圧レベル差(遮音性能)が、それぞれ26.8dB,23.4dB,24.1dBとなり、天井構造Cによれば、天井構造C1及び従来の天井構造C2より二室間の遮音性能が向上することが判る。また、天井構造Cの吸音材20の厚さを変更し、厚さ12mmの吸音材20を用いた場合も、500Hz領域における音圧レベル差(遮音性能)は、26.7dBであり、吸音材20を備え内天井構造C1及び従来の天井構造C2の音圧レベル差(遮音性能)より高かった。
【0055】
-実施形態1の効果-
本実施形態1では、間仕切り壁PWの上方の天井構造Cとしてシステム天井構造を採用し、間仕切り壁PWから所定の距離範囲にある複数の天井材10,…,10の上方に、吸音材20を各天井材10に対応付けて設けることとしている。このような天井構造Cによれば、間仕切り壁PWの上方の天井裏では、間仕切り壁PWによって仕切られる二室R1,R2の隣室との境界付近の両側に、複数の吸音材20,…,20が設けられることとなる。そのため、間仕切り壁PWで仕切られた二室R1,R2の一方の室で発生して天井裏へ透過した音を吸音材20で減衰させて他方の室へ伝わり難くすることができる。また、上記天井構造Cでは、いずれの天井材10も取り外し可能なシステム天井構造を採用すると共に、各吸音材20を、天井材10に対応付け、天井下地5の対応する天井材10が載置される矩形枠部8の内側に配置するようにしている。このような構成によれば、吸音材20が、システム天井用の天井材10と同等の大きさに構成されるため、吸音材20も天井材10と同様に容易に着脱することができる。つまり、上記天井構造Cによれば、吸音材20の位置変更を容易に行うことができるため、間仕切り壁PWの位置を変更する際に、容易に吸音材20の位置も変更することができる。
【0056】
また、本実施形態1では、各吸音材20を、対応する天井材10が載置される矩形枠部8の内側に、天井材10との間に空間Sを形成するように配置することとしている。このような構成によれば、間仕切り壁PWで仕切られた二室R1,R2の一方の室で発生して天井裏へ透過した音が、吸音材20だけでなく吸音材20と天井材10との間に形成された空間Sでも減衰するため、他方の室へより伝わり難くなる。つまり、間仕切り壁PWで仕切られた二室R1,R2間の遮音性能が向上する。
【0057】
また、本実施形態1では、各吸音材20を、弾性を有する矩形板状体によって構成し、弾性復元力によって吸音材20の短辺部20s,20s(対向する所定の二辺部)が対応するバー材6,6に押し付けられるように、吸音材20を曲げて矩形枠部8の内側に配置することとしている。このような構成によれば、別途、支持部材等を用いることなく、吸音材20を、少なくとも一部が天井材10から持ち上げられて空間Sが形成される状態に保持することができる。また、本実施形態1によれば、吸音材20の大きさは、天井材10の大きさに応じて決まるので、工場等で決まった大きさに切断しておくことができる。つまり、本実施形態1の天井構造Cによれば、施工現場でグラスウール等の吸音材20を所望の大きさに切断する必要がなく、施工時にごみが発生して施工現場を汚してしまうことがない。
【0058】
以上のように、本実施形態1によれば、間仕切り壁PWの位置変更に応じて容易に吸音材20の位置変更が可能であり、施工現場を汚すことなく容易に施工可能な天井構造Cを提供することができる。
【0059】
また、本実施形態1では、各吸音材20を、短辺部20s,20s(所定の二辺部)が間仕切り壁PWに平行となる向きに配置することとしている。このような構成によれば、各吸音材20と各天井材10との間に形成される空間Sの上方だけでなく、間仕切り壁PW側の側方も吸音材20で覆われることとなる。また、各吸音材20の間仕切り壁PWに平行な短辺部20sが、矩形枠部8の対応するバー材6に押し付けられることにより、空間Sの側方が隙間無く閉塞されることとなる。そのため、間仕切り壁PWで仕切られた二室R1,R2の一方の室で発生して天井裏へ透過した音が、他方の室へより伝わり難くなる。
【0060】
また、本実施形態1では、各吸音材20を構成する矩形板状体の下面に、2本のV字形状の溝21,21が形成されている。このような構成により、施工現場にて吸音材20を設置する際に、吸音材20の折り曲げ作業が容易になる。従って、本実施形態1によれば、吸音材20の設置及び位置変更をより容易に行うことができる。
【0061】
《発明の実施形態2》
実施形態2は、実施形態1の天井構造Cにおいて、吸音材20の構成を一部変更したものである。
【0062】
具体的には、図6に示すように、吸音材20の下面に形成された2つの断面形状がV字形状の溝21,21の代わりに、2つの切り込み溝22,22が形成されている。2つの切り込み溝22,22は、2つの溝21,21と同じ位置、即ち、吸音材20の下面において、長さ方向の両端から所定の距離(例えば、100mm)だけ離れた位置に設けられている。各切り込み溝22は、吸音材20を構成するグラスウールボードの下面に、吸音材20の上面付近まで至る深さの切り込みを入れることによって形成されている。各切り込み溝22は、吸音材20の短辺方向の一端から他端に亘って延びている。
【0063】
実施形態2では、吸音材20は、2つの切り込み溝22,22により、2つの切り込み溝22,22間の遮蔽部20Aと、2つの切り込み溝22,22と2つの短辺部20s,20sとの間の2つの脚部20B,20Bとに区画される。また、吸音材20は、各切り込み溝22部分で折り曲げられ、短辺部20s,20s間の中央が両端よりも上方に位置する(上方に凸の形状となる)ように変形させられた状態で、対応する天井材10が載置される矩形枠部8の内側に設置される。
【0064】
具体的には、図6に示すように、吸音材20を、切り込み溝22の底部(切り込み溝22と吸音材20の上面との間の部分)を軸として、脚部20Bを遮蔽部20Aに押し付けるように回動させることにより(図6上段参照)、各切り込み溝22部分で、遮蔽部20Aと各脚部20Bとのなす角βが、90度より大きく180度より小さくなるように折り曲げる(図6下段参照)。このとき、吸音材20の切り込み溝22部分では、遮蔽部20Aと脚部20Bとが圧縮された状態となる。この状態で、吸音材20を、対応する天井材10が載置される矩形枠部8の内側に、脚部20Bの端(吸音材20の短辺部20s,20s)が矩形枠部8の対応するバー材6,6の固定部6a,6a又は連結部6b,6bに当接するように設置する(図7参照)。
【0065】
上述したように、吸音材20は、各切り込み溝22部分で折り曲げられ、遮蔽部20Aと脚部20Bとが圧縮されて変形し、弾性復元力が作用して互いに離れようとする。このような吸音材20の弾性復元力により、吸音材20の短辺部20s,20sが矩形枠部8の対応する2つのバー材6,6の固定部6a,6a又は連結部6b,6bに押し付けられる。
【0066】
また、実施形態2においても、吸音材20は、短辺部20s,20s間の中央が両端よりも上方に位置する(上方に凸の形状となる)ように変形させられた状態で、矩形枠部8の内側に設置されているため、各矩形枠部8の内側において、該矩形枠部8に四周辺部が載置された天井材10との間に空間Sが形成される。これにより、実施形態2においても、空間Sを形成することにより、間仕切り壁PWで区切られた二室R1,R2間の遮音性能が向上する。
【0067】
なお、実施形態2においても、上記空間Sは、できる限り閉じられていることが好ましい。そのため、吸音材20は、実施形態1と同様に、4つの辺部(短辺部20s,20s及び長辺部20l,20l)が矩形枠部8の内面(4つのバー材6の固定部6a又は連結部6b)に当接するように設けられるのが好ましい。
【0068】
また、本実施形態2においても、各吸音材20は、脚部20Bに含まれる短辺部20sが、前後方向に延びるように配置されている。つまり、各吸音材20は、短辺部20sが、前後方向に延びる間仕切り壁PWに平行となる向きに配置されている。
【0069】
以上のように構成された実施形態2の天井構造Cによっても、実施形態1の天井構造Cと同様の効果を奏することができる。
【0070】
《発明の実施形態3》
実施形態3は、実施形態1の天井構造Cにおいて、吸音材20の構成を一部変更したものである。具体的には、実施形態3では、図8に示すように、吸音材20の下面に2つの溝21,21が形成されていない。
【0071】
実施形態3では、吸音材20は、短辺部20s,20s間の中央が両端よりも上方に位置する(上方に凸の形状となる)ように湾曲変形させられた状態で(図8下段参照)、対応する天井材10が載置される矩形枠部8の内側に設置される(図9下段参照)。このように吸音材20を湾曲変形させて矩形枠部8の内側に設置すると、吸音材20の弾性復元力により、吸音材20の短辺部20s,20sが矩形枠部8の対応する2つのバー材6,6の固定部6a,6a又は連結部6b,6bに押し付けられることとなる。
【0072】
また、実施形態3においても、吸音材20は、短辺部20s,20s間の中央が両端よりも上方に位置する(上方に凸の形状となる)ように変形させられた状態で、矩形枠部8の内側に設置されているため、各矩形枠部8の内側において、該矩形枠部8に四周辺部が載置された天井材10との間に空間Sが形成される。これにより、実施形態3においても、空間Sを形成することにより、間仕切り壁PWで区切られた二室R1,R2間の遮音性能が向上する。
【0073】
なお、実施形態3においても、上記空間Sは、できる限り閉じられていることが好ましい。そのため、吸音材20は、実施形態1と同様に、4つの辺部(短辺部20s,20s及び長辺部20l,20l)が矩形枠部8の内面(4つのバー材6の固定部6a又は連結部6b)に当接するように設けられるのが好ましい。
【0074】
また、本実施形態3においても、各吸音材20は、短辺部20sが、前後方向に延びるように配置されている。つまり、各吸音材20は、短辺部20sが、前後方向に延びる間仕切り壁PWに平行となる向きに配置されている。
【0075】
以上のように構成された実施形態3の天井構造Cによっても、実施形態1の天井構造Cと同様の効果を奏することができる。また、実施形態3の天井構造Cによれば、矩形板状体の吸音材20を準備し、溝加工を施すことなく、施工現場にて湾曲させて設置するだけで容易に吸音材20を施工できる。
【0076】
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、吸音材20は、各溝21,22部分で折り曲げる、又は所定の二辺部(短辺部20s,20s)間の中央が両端よりも上方に位置するように全体的に湾曲させて各矩形枠部8の内側に設けられていた。しかしながら、吸音材20の設置状態における形状は、上記各実施形態の形状に限られず、吸音材20と対応する天井材10との間に空間Sが形成され、吸音材20の所定の二辺部(短辺部20s,20s)が弾性復元力によって矩形枠部8の対応する2つのバー材6,6に押し付けられる形状であれば、いかなる形状に変形させてもよい。
【0077】
また、上記各実施形態1では、各吸音材20の2つのバー材6,6に押し付けられる所定の二辺部(短辺部20s,20s)が間仕切り壁PWに平行となる向きに、各吸音材20を配置することとしていたが、各吸音材20は、短辺部20s,20sが間仕切り壁PWに垂直となる向きに配置されていてもよい。
【0078】
上記各実施形態では、間仕切り壁PWは、上端が、前後方向に延びるバー材6に固定されるように設けられていた。しかしながら、間仕切り壁PWは、上端をバー材6に固定せずに設置することも可能である。なお、その場合、例えば、天井材10の左右方向の中程の下方に間仕切り壁PWが設置され、間仕切壁PWから950mmの範囲に3列分の矩形枠部8,…,8が含まれる場合があり、その場合、3列分の矩形枠部8,…,8の内側にそれぞれ吸音材20を設ければよい。
【0079】
また、吸音材20を設ける矩形枠部8を決める所定の距離範囲(950mmの範囲)は、あくまで一例であり、上記各実施形態で示した距離範囲に限定されない。間仕切り壁PWの直行方向両側に吸音材20が配置される距離範囲であれば、いかなる距離範囲であてもよいが、コストの観点からは、吸音材20が、間仕切り壁PWの両側に1~2列ずつ設けられるのが好ましい。
【0080】
また、上記実施形態1~3では、複数のバー材6,…,6が、前後方向及び左右方向に並べられて平面視で格子状に組まれたグリッドタイプのシステム天井Cについて説明したが、本発明に係るシステム天井は、図10に示すように、複数のバー材6,…,6が、前後方向又は左右方向に平行状に並べられて組まれたラインタイプのシステム天井Cであってもよい。
【0081】
図10に示すラインタイプのシステム天井Cでは、前後方向に延びる複数のバー材6,…,6が、複数の受け材9,9を介して左右方向に平行状に並べられて組まれて天井下地5を構成している。天井下地5において平行に配置された2つのバー材6,6の係止部(内側に突出する下端部)6cの上に天井材10の2つの辺部が載置されている。2つのバー材6,6の係止部6cの上に載置される天井材10の2つの辺部は、下側隅角部を断面矩形状に切り欠いた切欠き段部10aに形成されている。前後方向に延びる2つのバー材6,6の間に、複数の天井材10,…,10が、前後方向に隙間無く並べられている。なお、図10では、各天井材10は、平面視において正方形状に形成されているが、ラインタイプのシステム天井Cでは、平面視において長方形状の天井材10を用いることもできる。長方形状の天井材10は、長辺が2つのバー材6,6の延伸方向に沿う向きで2つのバー材6,6の係止部6cの上に載置される。
【0082】
上記のラインタイプのシステム天井Cにおいても、間仕切り壁PWから所定の距離範囲に設けられた複数の天井材10,…,10の上方に、天井材10に対応付けて吸音材20を設ける。なお、ラインタイプのシステム天井Cにおいて長方形状の天井材10を用いる場合、吸音材20を、設置時の形態で平面視において天井材10の寸法よりも小さい寸法となるように形成し、1つの天井材10の上方に、複数(例えば、2つ)の吸音材20,20を対応付けて設けることとしてもよい。複数の吸音材20,…,20は、前後方向に延びる2つのバー材6,6の内側において、対応する天井材10との間に空間Sを形成するように配置されると共に、対向する短辺部20s,20sが、弾性復元力によって上記2つのバー材6,6に押し付けられるように、短辺部20s,20s間の中央が両端よりも上方に位置するように曲げられている。また、複数の吸音材20,…,20は、天井材10と同様に、前後方向に延びる2つのバー材6,6の間に、前後方向に隙間無く並べられている。
【0083】
上記のようなラインタイプのシステム天井Cであっても、実施形態1~3のシステム天井Cと同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、間仕切り壁の上方に設けられる天井構造に有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 天井スラブ
5 天井下地
6 バー材
8 矩形枠部
10 天井材
20 吸音材
20A 遮蔽部
20B 脚部
20s 短辺部(所定の二辺部)
21 溝
22 切り込み溝
C 天井構造
PW 間仕切り壁
【要約】
【課題】間仕切り壁の位置変更に応じて容易に吸音材の位置変更が可能であり、施工現場を汚すことなく容易に施工可能な天井構造を提供する。
【解決手段】間仕切り壁の上方に設けられる天井構造Cは、天井下地5と、複数の矩形板状の天井材10とを備えている。間仕切り壁PWから所定の距離範囲に設けられた複数の天井材10の上方には、吸音材20が各天井材10に対応付けられて設けられている。各吸音材20は、弾性を有する矩形板状体によって構成され、対応する天井材10が載置される2つのバー材6,6の内側において、対応する天井材10との間に空間Sを形成するように配置されると共に、対向する所定の二辺部20sが、弾性復元力によって上記2つのバー材6に押し付けられるように、上記所定の二辺部20s間の中央が両端よりも上方に位置するように曲げられている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10