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特許7437558情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20240215BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240215BHJP
   G16B 15/30 20190101ALI20240215BHJP
【FI】
G01N33/53 D ZNA
C12M1/00 A
G16B15/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023118557
(22)【出願日】2023-07-20
【審査請求日】2023-07-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】ホッサイン マッド サダム
(72)【発明者】
【氏名】シヴァム グプタ
(72)【発明者】
【氏名】桃▲崎▼ 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】坂田 知子
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇志
(72)【発明者】
【氏名】染田 真孝
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 憲二
(72)【発明者】
【氏名】庄屋 雄二
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-534759(JP,A)
【文献】特表2005-508141(JP,A)
【文献】特表2020-516309(JP,A)
【文献】特開2012-145349(JP,A)
【文献】黒田大祐,Cutting Edge 計算化学による抗体の立体構造モデリング,構造活性相関部会・ニュースレター,日本,2022年10月01日,No.43,Page.9-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12M 1/00
G16B 15/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体の誘導を目的とするタンパク質の候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記候補ペプチドの抗原性を評価する第1の評価部を含み、
前記抗原性への寄与度は、抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と水素結合により相互作用する前記抗原上のエピトープ残基のアミノ酸残基に基づき算出された前記エピトープ残基における各アミノ酸の出現頻度である、情報処理装置。
【請求項2】
抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基を分析する分析部と、
前記エピトープ残基を構成する各アミノ酸残基に基づき、各アミノ酸の抗原性への寄与度を算出する算出部とを含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記候補ペプチドの抗原性への寄与度が予め指定された寄与度の条件を満たす場合、前記候補ペプチドを、候補抗原ペプチドとして選抜する第1の選抜部を含む、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記候補抗原ペプチドについて、前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質における位置を決定する決定部と、
前記タンパク質における前記候補抗原ペプチドの位置が、前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質における予め指定された位置の条件を満たす場合、前記候補抗原ペプチドを選抜する第2の選抜部を含む、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列または前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質のアミノ酸配列と、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列とを比較して、2つのアミノ酸配列の類似性を評価する第2の評価部と、
前記アミノ酸配列の類似性が予め指定された類似性の条件を満たす場合、前記候補抗原ペプチドを選抜する第3の選抜部を含む、請求項3または4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列または前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質のアミノ酸配列と、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列とを比較して、2つのアミノ酸配列の類似性を評価する第2の評価部と、
前記アミノ酸配列の類似性が前記予め指定された類似性の条件を満たさない場合、前記候補抗原ペプチドの1以上のアミノ酸に変異が導入された別の候補ペプチドを生成する生成部と、
前記別の候補ペプチドについて、前記各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記別の候補ペプチドの抗原性を再評価する再評価部とを含む、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記別の候補ペプチドの抗原性への寄与度が前記予め指定された寄与度の条件を満たす場合、前記別の候補ペプチドを、候補抗原ペプチドとして選抜する第4の選抜部を含む、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記分析部では、少なくとも前記抗体と前記抗原との水素結合を分析することにより、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基を分析する、請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記抗原性は、生体に免疫した際の抗体誘導能である、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項10】
抗体の誘導を目的とするタンパク質の候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記候補ペプチドの抗原性の寄与度を評価する第1の評価工程を含み、
前記抗原性への寄与度は、抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と水素結合により相互作用する前記抗原上のエピトープ残基のアミノ酸残基に基づき算出された前記エピトープ残基における各アミノ酸の出現頻度である、情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
抗体の誘導を目的とするタンパク質の候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記候補ペプチドの抗原性の寄与度を評価する第1の評価処理を実行させ、
前記抗原性への寄与度は、抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と水素結合により相互作用する前記抗原上のエピトープ残基のアミノ酸残基に基づき算出された前記エピトープ残基における各アミノ酸の出現頻度である、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質における特定のアミノ酸配列に対する抗体の取得では、前記アミノ酸配列を有するペプチドを、動物等の投与対象に投与することにより、前記特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対する抗体産生を誘導することが一般的に行われている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Takeo Tanaka et.al., “Efficient generation of antibodies to oncoproteins by using synthetic peptide antigens”, Proc.Nati.Acad.Sci.USA, Vol.82, pp.3400-3404
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記投与対象では、全てのペプチドに対する抗体産生が誘導されるとは限らず、目的のペプチドに対する抗体産生を誘導できないことがある。また、免疫に用いるペプチドは、ペプチドの親水性、溶媒への溶解性、二次構造等を考慮して設計されているが、ペプチドの抗原性とは必ずリンクしているわけではない。
【0005】
そこで、本開示は、対象のペプチドの抗原性の評価に使用可能な情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本開示の情報処理装置は、候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性に基づき、前記候補ペプチドの抗原性を評価する第1の評価工程を含み、
前記抗原性への寄与度は、抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基のアミノ酸残基に基づき算出された寄与度である。
【0007】
本開示の情報処理方法は、候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記候補ペプチドの抗原性を評価する第1の評価工程を含み、
前記抗原性への寄与度は、抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基のアミノ酸残基に基づき算出された寄与度である。
【0008】
本開示のプログラムは、コンピュータに、
候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記候補ペプチドの抗原性を評価する第1の評価処理を実行させ、
前記抗原性への寄与度は、抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基のアミノ酸残基に基づき算出された寄与度である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、対象のペプチドの抗原性を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1における情報処理装置を含む情報処理システムの一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態1の情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態1の情報処理方法およびプログラムの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態2における情報処理装置を含む情報処理システムの一例を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態2の情報処理方法およびプログラムの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態2の情報処理方法およびプログラムの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施例1における各抗原ペプチドを免疫して得られた抗血清の初回免疫後の最大抗体価を示すグラフである。
図8図8は、実施例2における各抗原ペプチドを免疫して得られた抗血清の抗体価を示すグラフである。
図9図9は、実施例2における各抗原ペプチドを免疫して得られた抗血清の抗体価を示すグラフである。
図10図10は、実施例2における各抗血清の交差反応性を示すグラフである。
図11図11は、実施例2における各抗血清の交差反応性を示すグラフである。
図12図12は、実施例3における各抗原ペプチドを免疫して得られた抗血清の抗体価を示すグラフである。
図13図13は、実施例3における各抗原ペプチドを免疫して得られた抗血清の抗体価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<定義>
本開示において、「タンパク質」は、未修飾アミノ酸(天然のアミノ酸)、修飾アミノ酸、および/または人工アミノ酸から構成されるポリマーを意味し、例えば、10アミノ酸以上の長さを有するペプチドである。また、本開示において、「ペプチド」は、未修飾アミノ酸(天然のアミノ酸)、修飾アミノ酸、および/または人工アミノ酸から構成されるポリマーを意味する。
【0012】
本開示において、「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的または部分的にコードされる、1または複数のポリペプチドを含むタンパク質を意味する。前記抗体は、全長の免疫グロブリンでもよいし、その抗原結合断片でもよい。
【0013】
本開示において、「抗原」は、単独で、または、他の分子と複合体を形成して、生体内で抗体を誘導可能な物質を意味する。
【0014】
本開示において、「抗原性」は、生体に投与した際に、液性免疫応答または抗体産生を惹起もしくは誘導可能な性質を意味する。前記抗原性は、例えば、免疫原性ともいう。
【0015】
本開示において、「エピトープ」は、抗原において、抗体が結合する部位を意味する。
【0016】
本開示において、「投与対象」は、動物または動物由来の細胞、組織もしくは器官を意味し、特にヒトを含む意味で用いられる。前記動物は、ヒトおよび非ヒト動物を意味する。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル、イルカ、アシカ、ラクダ等の哺乳類動物;ニワトリ等の鳥類動物;サメ等の魚類等があげられる。
【0017】
以下、本開示について、例をあげ、図面を参照して詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の説明により限定されない。なお、以下の図1図6において、同一部分には、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、図面においては、説明の便宜上、各部の構造は適宜簡略化して示す場合があり、各部の寸法比等は、実際とは異なり、模式的に示す場合がある。また、各実施形態および説明は、特に言及しない限り、互いにその説明を援用できる。なお、本明細書において、「~」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いる。また、本明細書において、「Aおよび/またはB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「AおよびBの双方」が含まれる。
【0018】
(実施形態1)
本実施形態は、本開示の情報処理装置を含む情報処理システムの一例である。図1に示すように、本実施形態の情報処理システム100は、情報処理装置1を含む。情報処理装置1は、取得部11、分析部12、算出部13、第1の評価部14、および第1の選抜部15を備える。図1に示すように、情報処理システム100において、情報処理装置1は、システム外の通信回線網3を介して、立体構造データベース(DB)2と一方または両方向に接続可能(通信可能)である。情報処理装置1が接続可能な立体構造DB2の数は、図1に示すように、1つでもよいが、複数でもよい。実施形態1において、情報処理装置1は、サーバとして構成されている。
【0019】
本実施形態の情報処理装置1は、本開示のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ(PC)またはシステムとしてサーバ等に組込まれてもよい。また、本実施形態の情報処理装置1は、本開示のプログラムを実行可能な1以上のコンピュータまたはサーバから構成されるシステム、すなわち、クラウド・コンピューティングシステムであってもよい。前記パーソナルコンピュータは、コンピュータクラスタを構成してもよい。図示していないが、情報処理装置1は、通信回線網3を介して、システム管理者の外部端末とも接続可能な構成とし、前記システム管理者が、前記外部端末から情報処理装置1の管理を実施できるように構成してもよい。なお、本実施形態において、情報処理システム100に含まれる情報処理装置1は、それぞれ、1つであるが、いずれも複数であってもよい。
【0020】
立体構造DB2は、後述のように、抗原抗体複合体の立体構造のデータが複数格納されたデータベースサーバである。前記抗原抗体複合体の立体構造は、抗原と抗体とが結合した状態の立体構造であり、例えば、抗原と抗体とが結合した状態のタンパク質複合体について結晶構造解析を行うことにより取得できる。立体構造DB2としては、例えば、公的データベースが使用できる。前記公的データベースは、例えば、プロテインデータバンク(protein data bank:PDB、https://www.rcsb.org/)、Structural Antibody Database (SAbDab)(https://opig.stats.ox.ac.uk/webapps/sabdab-sabpred/sabdab/)等があげられる。立体構造DB2のハードウェア構成は、情報処理装置1のハードウェア構成の説明を援用できる。なお、実施形態1の情報処理装置1は、分析部12、算出部13、および第1の選抜部15を含むが、本開示は、これに限定されず、これらの構成はあってもよいし、なくてもよい。
【0021】
通信回線網3は、特に制限されず、公知のネットワークを使用でき、例えば、有線でもよいし、無線でもよい。通信回線網3は、例えば、インターネット回線、WWW(World Wide Web)、電話回線、LAN(Local Area Network)、WiFi(Wireless Fidelity)等があげられる。
【0022】
図2に、情報処理装置1のハードウェア構成のブロック図を例示する。情報処理装置1は、例えば、演算要素であるCPU(中央処理装置)101、メモリ102、バス103、記憶装置104、入力装置108、ディスプレイ109、通信デバイス(通信部)110等を有する。情報処理装置1の各部は、それぞれのインタフェース(I/F)により、バス103を介して接続されている。
【0023】
CPU101は、コントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)等により、他の構成と連携動作し、情報処理装置1の全体の制御を担う。情報処理装置1において、CPU101により、本開示のプログラム105およびその他のプログラムが実行され、また、各種情報またはデータの読み込みや書き込みが行われる。具体的には、本実施形態では、CPU101が、取得部11、分析部12、算出部13、第1の評価部14、および第1の選抜部15として機能する。情報処理装置1は、演算装置(演算要素)として、CPUを備えるが、GPU(Graphics Processing Unit)、APU(Accelerated Processing Unit)等の他の演算装置を備えてもよいし、CPUとこれらとの組合せを備えてもよい。なお、CPU101は、例えば、他の実施形態における記憶部以外の各部として機能する。
【0024】
メモリ102は、メインメモリを含む。前記メインメモリは、主記憶装置ともいう。CPU101が処理を行う際には、例えば、後述する記憶装置104(補助記憶装置)に記憶されている本開示のプログラム105等の種々の動作プログラムを、メモリ102が読み込む。そして、CPU101は、メモリ102からデータを読み出し、解読し、前記プログラムを実行する。前記メインメモリは、RAM(ランダムアクセスメモリ)である。メモリ102は、さらに、ROM(読み出し専用メモリ)を含んでもよい。
【0025】
バス103は、外部機器とも接続できる。前記外部機器は、例えば、外部記憶装置(外部データベース等)、プリンター等があげられる。情報処理装置1は、例えば、バスに接続された通信デバイス110により、通信回線網3に接続でき、通信回線網3を介して、端末2等の外部機器と接続することもできる。
【0026】
記憶装置104は、例えば、前記メインメモリ(主記憶装置)に対して、いわゆる補助記憶装置ともいう。前述のように、記憶装置104には、本開示のプログラム105を含む動作プログラムと、立体構造データ106および寄与度データ107を含むデータとが格納されている。記憶装置104は、例えば、記憶媒体と、前記記憶媒体に読み書きするドライブとを含む。前記記憶媒体は、特に制限されず、例えば、内蔵型でも外付け型でもよく、HD(ハードディスク)、FD(フロッピー(登録商標)ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-RW、MO、DVD、フラッシュメモリー、メモリーカード等があげられ、前記ドライブは、特に制限されない。記憶装置104は、例えば、前記記憶媒体と前記ドライブとが一体化されたハードディスクドライブ(HDD)、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)であってもよい。
【0027】
情報処理装置1は、さらに、入力装置108、出力装置であるディスプレイ109を有する。入力装置108は、例えば、タッチパネル、トラックパッド、マウス等のポインティングデバイス;キーボード;カメラ、スキャナ等の撮像手段;ICカードリーダ、磁気カードリーダ等のカードリーダ;マイク等の音声入力手段;等があげられる。ディスプレイ109は、例えば、LED(light emitting diode)ディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示装置があげられる。本実施形態において、入力装置108とディスプレイ109とは、別個に構成されているが、入力装置108とディスプレイ109とは、タッチパネルディスプレイのように、一体として構成されてもよい。また、情報処理装置1において、入力装置108およびディスプレイ109は、任意の構成であり、無くてもよいし、いずれか1つ以上を含んでもよい。
【0028】
つぎに、本実施形態の情報処理システム100における処理の一例について、抗原抗体複合体の結晶構造解析のデータを用いて、抗原性への寄与度を算出し、得られた抗原性への寄与度に基づき、候補ペプチドから候補抗原ペプチドを選抜する場合を例に取り、図3のフローチャートを用いて説明する。図3に示すように、実施形態1の情報処理方法およびプログラムは、S1(取得)、S2(分析)、S3(算出)、S4(評価)、およびS5(第1の選抜)の各処理をこの順序で実施する。
【0029】
まず、情報処理装置1では、候補ペプチドの抗体誘導能の評価に用いる抗原性への寄与度について、抗原抗体複合体の立体構造のデータを用いて算出する。具体的には、S1工程では、取得部11が、通信回線網3を介して、立体構造DB2であるPDB等の立体構造データが格納されたデータベースにアクセスし、立体構造DB2に格納されている複数の抗原抗体複合体の結晶構造解析のデータ(立体構造データ)を取得する。前記結晶構造解析のデータは、PDBのAntibody database(AbDb)データベース(URL: http://www.abybank.org/abdb/)(下記参考文献1参照)から取得できる。前記立体構造データは、ペプチド、タンパク質等のアミノ酸から構成される分子と抗体との複合体の立体構造データが好ましい。取得する前記立体構造データの数は、複数である。前記立体構造データの数の下限値は、例えば、前記抗原性への寄与度についてより正確に評価できることから、好ましくは、100、200、300、400、または500以上である。前記立体構造データの数の上限は、特に制限されず、例えば、5000、4000、または3000以下である。前記立体構造データの数は、例えば、100~5000、200~5000、300~4000、または500~3000である。前記立体構造データの解像度は、前記抗原性への寄与度についてより正確に評価できることから、4Å以下であることが好ましい。前記解像度が4Å以下の立体構造データは、例えば、前記AbDbデータベースにおいて、約800個である。

参考文献1:Ferdous, Saba et.al., “AbDb: antibody structure database-a database of PDB-derived antibody structures.” Database 2018 (2018)
【0030】
つぎに、S2工程では、分析部12が、前記抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基を分析する。後述のように、情報処理装置1では、前記立体構造データにおけるエピトープ残基のアミノ酸情報を用いて抗原性への寄与度を算出する。そこで、S2工程では、前記算出に用いるエピトープ残基を特定するために、S1工程で取得した立体構造データから、前記抗原抗体複合体におけるエピトープ残基を分析する。
【0031】
前記抗原と前記抗体とは、例えば、水素結合、静電相互作用、ファンデルワールス力、疎水性作用等の分子間相互作用を介して結合する。そこで、S2工程では、前記抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗原-抗体間、より具体的には、前記抗原を構成する分子と、前記抗体を構成するアミノ酸との間で形成されている分子間相互作用を推定する。そして、S2工程では、前記抗原-抗体間において形成されていると推定された分子間相互作用の情報から、前記抗体のパラトープが結合(認識)している前記抗原中のエピトープ残基を分析する。
【0032】
S2工程では、1種類の分子間相互作用に基づいて、前記抗原-抗体間の分子間相互作用を推定してもよいし、複数種類の分子間相互作用に基づいて、前記抗原-抗体間の分子間相互作用を推定してもよい。前記分子間相互作用として水素結合を対象として、前記抗原上のエピトープ残基を分析する場合、S2工程は、例えば、分子構造の解析プログラムを用いて実施でき、具体例として、ChimeraX(カリフォルニア大学 RBVI(Resource for Biocomputing, Visualization, and Informatics)製)を使用して実施できる。また、前記分子間相互作用として静電相互作用、ファンデルワールス力、または疎水性作用を対象として、前記抗原上のエピトープ残基を分析する場合、S2工程は、例えば、下記参考文献2を参照して実施できる。S2工程で推定に用いる相互作用は、対象ペプチドの抗原性をより正確に評価できることから、好ましくは、水素結合である。

参考文献2:Tsumoto, Kouhei, and Jose MM Caaveiro. "Antigen-Antibody Binding." eLS (2016): 1-8.
【0033】
つぎに、S3工程では、算出部13が、前記エピトープ残基を構成する各アミノ酸残基に基づき、各アミノ酸の抗原性への寄与度を算出する。本発明者らは、前記抗体が認識する抗原ペプチドのエピトープ残基を構成するアミノ酸残基には偏りが存在することを見出した。すなわち、本発明者らは、前記抗体が認識する頻度が高いアミノ酸残基と、前記抗体が認識する頻度が低いアミノ酸残基とが存在することを見出した。また、本発明者らは、後述の実施例で示すように、前記偏りに基づいて対象のペプチドを評価すると、得られた評価結果(後述のペプチドの抗原性)と生体に免疫した際の抗体誘導能とが相関することを見出した。さらに、本発明者らは、前記評価を利用して、対象のペプチドのアミノ酸配列を前記偏りにあわせて変化させることで、生体に免疫(投与)した際に対象のペプチドに対する結合可能な抗体の誘導能を調整できることを見出した。そこで、S3工程では、前記評価に用いるエピトープ残基におけるアミノ酸残基の偏りを、前記各アミノ酸の抗原性への寄与度として算出する。
【0034】
前記アミノ酸残基の偏りは、得られたエピトープ残基を構成するアミノ酸残基について、各アミノ酸残基の頻度、すなわち、全エピトープ残基の総アミノ酸残基数に締める各アミノ酸の割合、出現率(比率)、出現回数、出現頻度、出現比、出現度合い等として評価できる。このため、S3工程では、S2工程で分析された各エピトープ残基について、総アミノ酸残基数と、各アミノ酸の総残基数とを集計する。そして、S3工程では、前記総アミノ酸残基数と各アミノ酸の総残基数とから、前記抗原性への寄与度として、各アミノ酸残基の出現頻度を算出する。
【0035】
つぎに、S4工程では、第1の評価部14が、候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記候補ペプチドの抗原性を評価する。具体的には、S4工程では、前記候補ペプチドの抗原性を、前記候補ペプチドの抗原性への寄与度(抗原性の指標値)を指標として用いて評価する。S4工程では、S3工程で算出された各アミノ酸の抗原性への寄与度を用いて、前記候補ペプチドのアミノ酸配列に基づき、候補ペプチドの抗原性への寄与度を評価(算出)する。具体的には、S4工程では、前記候補ペプチドのアミノ酸配列に基づき、各アミノ酸と対応する各アミノ酸の抗原性への寄与度を積算する。前述のように、各アミノ酸の抗原性への寄与度は、例えば、前記エピトープ残基のアミノ酸の頻度として算出されている。このため、前記候補ペプチドの各アミノ酸の抗原性への寄与度の積算値が相対的に大きくなれば、前記候補ペプチドは、前記抗体に認識される頻度が高いアミノ酸を含むため、相対的に抗体誘導能が高くなる。他方、前記候補ペプチドの各アミノ酸の抗原性への寄与度の積算値が相対的に小さくなれば、前記候補ペプチドは、前記抗体に認識される頻度が低いアミノ酸を含むため、相対的に抗体誘導能が低くなる。このため、S4工程では、前記候補ペプチドの抗原性の寄与度(抗原性の指標値)として前記積算値を用い、前記候補ペプチドの抗原性を評価している。
【0036】
前記抗原性は、例えば、生体に免疫した際の抗体誘導能ということもできる。前記生体は、例えば、前記候補抗原ペプチド等の投与対象ということもでき、具体例として、ヒトまたは非ヒト動物を含む動物があげられる。前記抗体誘導能は、例えば、抗体価でもよいし、抗体の誘導の早さ(例えば、抗体価が上昇し始めるまでの期間)でもよい。
【0037】
S4工程において、前記評価に供する前記候補ペプチドの数は、特に制限されず、任意の数とでき、具体例として、100~50000、500~40000、1000~30000、または5000~20000である。
【0038】
前記候補ペプチドの長さ(アミノ酸長)は、例えば、抗体誘導可能な長さのポリペプチドであればよい。前記候補ペプチドの長さは、例えば、7~50アミノ酸、8~40アミノ酸、9~35アミノ酸、または10~30アミノ酸であり、好ましくは、10~30アミノ酸である。
【0039】
前記候補ペプチドは、任意のアミノ酸配列からなるポリペプチドとできる。前記候補ペプチドは、例えば、抗体の誘導を目的とするタンパク質から設計したポリペプチドでもよいし、抗体の誘導を目的とするポリペプチドでもよいし、これらのポリペプチドを鋳型として、鋳型のポリペプチドに変異が導入された変異ポリペプチドでもよい。前記候補ペプチドは、例えば、スライディングウィンドウアルゴリズムに準じて、目的とするタンパク質のアミノ酸配列から指定された長さのペプチドとして設計できる。
【0040】
前記変異ポリペプチドは、例えば、対象のポリペプチドのアミノ酸配列に対して、1以上の変異を導入することにより設計できる。前記変異の種類は、例えば、挿入、付加、欠失、置換等があげられる。前記変異の種類がN末端またはC末端への1以上のアミノ酸付加である場合、付加されるアミノ酸残基は、前記候補ペプチドが由来するタンパク質において、前記候補ペプチドのアミノ酸配列のN末端またはC末端に位置する1以上のアミノ酸(対応する1以上のアミノ酸)と同じアミノ酸としてもよい。前記変異ポリペプチドの設計では、1種類の変異を導入してもよいし、複数種類の変異を組み合わせて導入してもよい。前記変異の導入位置は、例えば、変異前の候補ペプチドの各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき決定できる。具体的には、前記候補ペプチドにN個(N:正の整数)の変異を導入する場合、前記変異は、例えば、前記候補ペプチドの各アミノ酸の抗原性への寄与度の順番において、最も順位の低いアミノ酸を基準(1番目)として、下からN番目のアミノ酸までと設定できる。
【0041】
前記変異ポリペプチドにおいて、前記変異の数(N)は、例えば、前記対象の候補ペプチドの長さに応じて決定でき、具体例として、1~10アミノ酸、1~5アミノ酸、または1~3アミノ酸であり、好ましくは、1~3アミノ酸である。前記変異ポリペプチドの長さは、例えば、前記鋳型のポリペプチドの長さを基準として、-3~+3アミノ酸、-2~+2アミノ酸、または-1~+1アミノ酸であり、好ましくは、0アミノ酸である。
【0042】
そして、S5工程では、第1の選抜部15が、前記候補ペプチドの抗原性への寄与度が前記予め指定された寄与度の条件を満たす場合、前記候補ペプチドを、候補抗原ペプチドとして選抜する。前記寄与度の条件は、例えば、前記候補抗原ペプチドに要求する抗原性に基づき適宜設定できる。具体例として、前記寄与度の条件は、例えば、評価対象の候補ペプチド群における抗原性への寄与度の順位の範囲(例えば、1位からの指定された順位数)、前記候補ペプチドの抗原性への寄与度の数値範囲等があげられる。前記1位の評価対象の候補ペプチドは、前記抗原性への寄与度が最も大きい評価対象の候補ペプチドである。前記指定された順位数は、例えば、10位、20位、30位、40位、50位、60位、70位、80位、90位、100位、200位、300位、400位、500位等があげられる。第1の選抜部15は、前記候補ペプチドの抗原性への寄与度以外の条件(その他の条件)で選抜してもよい。前記その他の条件は、例えば、前記候補ペプチドの長さ等があげられる。選抜される候補抗原ペプチドの数は、特に制限されず、任意の数とできる。
【0043】
そして、情報処理システム100および情報処理装置1の処理を終了する。
【0044】
実施形態1の情報処理装置1では、前記抗原抗体複合体の立体構造を用いて、前記抗体が認識するエピトープ残基から、ペプチドの抗原性と相関性がある各アミノ酸残基の抗原性への寄与度を算出する。このため、情報処理装置1によれば、各アミノ酸残基の抗原性への寄与度を用いて、候補ペプチドの抗原性への寄与度または候補ペプチドの抗原性を評価できる。また、情報処理装置1では、前記候補ペプチドの抗原性への寄与度に基づき、候補ペプチドから候補抗原ペプチドを選抜できる。このため、実施形態1の情報処理装置1によれば、抗体誘導能が調整された候補抗原ペプチドを選抜できる。
【0045】
実施形態1の情報処理装置1では、立体構造DB2から前記立体構造データを取得しているが、本開示は、これに限定されず、例えば、前記抗原および抗体のアミノ酸配列から、抗原抗体複合体の立体構造を予測し、得られた予測構造を前記立体構造データとして用いてもよい。この場合、情報処理装置1は、S1工程に代えてまたは加えて、予測部により、前記抗原および抗体のアミノ酸配列から、抗原抗体複合体の立体構造を予測する工程を含む。前記立体構造の予測は、例えば、前記抗原の立体構造および前記抗体の立体構造について予測し、得られた2つの立体構造の結合状態を予測することにより実施できる。
【0046】
前記抗原の立体構造および前記抗体の立体構造の予測は、例えば、アミノ酸配列から立体構造を予測可能なソフトウェアを用いて実施でき、具体例として、AlphaFold、Meta ESMまたはMeta ESM2、Rosetta modelling、Swiss-model、Modeller等が使用できる。
【0047】
前記2つの立体構造の結合状態の予測は、例えば、2つの分子のドッキングシミュレーションが予測可能なソフトウェアを用いて実施でき、具体例として、Rosetta-dock、Haddock、Patchdock、Zdock、LightDock、Hexserver等があげられる。
【0048】
前記予測工程において予測する抗原抗体複合体の立体構造の数は、例えば、複数である。前記立体構造の数の下限値は、例えば、前記抗原性への寄与度についてより正確に評価できることから、好ましくは、100、200、300、400、または500以上である。前記立体構造の数の上限は、特に制限されず、例えば、5000、4000、または3000以下である。前記立体構造の数は、例えば、100~5000、200~5000、300~4000、または500~3000である。
【0049】
情報処理装置1は、前記予測部を含むことにより、立体構造DB2からの前記立体構造データの取得が難しい場合においても、前記立体構造データを生成できる。このため、前記予測部を含む情報処理装置1によれば、立体構造DB2がない状況でも、候補ペプチドの抗原性を評価できる。
【0050】
(実施形態2)
本実施形態は、本開示の情報処理装置を含む情報処理システムの他の例である。図4は、実施形態2の情報処理装置1Aを備える情報処理システム100Aを示すブロック図である。図4に示すように、本実施形態の情報処理装置1Aは、実施形態1の情報処理装置1の構成に加えて、決定部16、第2の選抜部17、第2の評価部18、第3の選抜部19、生成部20、再評価部21、および第4の選抜部22を備える。情報処理装置1Aのハードウェア構成は、図2の情報処理装置1のハードウェア構成において、CPU101が、図2の情報処理装置1の構成に代えて、図4の情報処理装置1Aの構成を備える以外は同様である。これらの点を除き、実施形態2の情報処理装置1Aの構成は、実施形態1の情報処理装置1の構成と同様であり、その説明を援用できる。
【0051】
つぎに、本実施形態の情報処理装置1Aを備える情報処理システム100Aの処理の一例について、図5および図6のフローチャートを用いて説明する。図5および図6に示すように、実施形態2の情報処理方法は、実施形態1の情報処理方法のS1~S5工程に加えて、S6工程(位置決定)、S7工程、(位置による選抜:第2の選抜)、S8工程(類似性評価:第2の評価)、S9(類似性による選抜:第3の選抜)、S10工程(ペプチドの生成)、S11工程(再評価)、およびS12工程(再選抜:第4の選抜)を含む。なお、実施形態2の情報処理方法において、S6~S7工程の実施後に、S8~S12工程を実施しているが、順不同である。
【0052】
まず、実施形態2の情報処理システム100Aは、実施形態1の情報処理システム100と同様にして、S1~S5工程を実施する。
【0053】
つぎに、S6工程では、決定部16は、前記候補抗原ペプチドについて、前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質における位置を決定する。前記位置の決定では、前記タンパク質における分子表面(外部)に存在するか、前記分子内(内部)に存在するか、前記タンパク質の分子表面および分子内の両者に存在するかを決定する。具体的には、前記位置の決定は、前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列と前記タンパク質のアミノ酸配列とをアライメントして、前記タンパク質における前記候補抗原ペプチドの位置を特定する。つぎに、S6工程では、S1工程で取得した抗原抗体複合体の立体構造データを参照し、前記タンパク質における候補抗原ペプチドの位置を特定することにより、位置決定を実施できる。S6工程では、例えば、前記位置として、前記候補抗原ペプチドにおけるタンパク質の表面に位置するアミノ酸残基数と、タンパク質の内部に位置するアミノ酸残基数とを決定してもよい。
【0054】
S7工程では、第2の選抜部17が、前記タンパク質における前記候補抗原ペプチドの位置が予め指定された位置の条件を満たす場合、前記候補抗原ペプチドを選抜する。前記抗体は、主に、タンパク質の表面を認識する。そこで、S7工程では、少なくとも一部のアミノ酸残基がタンパク質外(表面)に存在する候補抗原ペプチドを選抜することにより、前記候補抗原ペプチドを含むタンパク質に対して結合能が高い抗体を誘導可能な候補抗原ペプチドを選抜できる。
【0055】
まず、S7工程では、S6工程で得られた候補抗原ペプチドのタンパク質における位置が、位置の条件を満たすか否かを評価する。具体的に、前記候補抗原ペプチドが前記タンパク質における分子内(内部)に存在する場合、S7工程では、前記候補抗原ペプチドは、前記位置の条件を満たさないと評価する。そして、前記候補抗原ペプチドのタンパク質における位置が前記位置の条件を満たさない場合、すなわち、Noの場合、第2の選抜部17は、前記候補抗原ペプチドを選抜せず、情報処理装置1Aは、処理を終了する。他方、前記候補抗原ペプチドが前記タンパク質における分子表面(外部)に存在する場合、または、前記タンパク質の分子表面および分子内の両者に存在する場合、S7工程では、前記候補抗原ペプチドは、位置の条件を満たすと評価する。そして、前記候補抗原ペプチドのタンパク質における位置が前記位置の条件を満たす場合、すなわち、Yesの場合、第2の選抜部17は、前記候補抗原ペプチドを選抜し、S8工程に進む。
【0056】
前記位置の条件は、前記候補抗原ペプチドを含むタンパク質に対して結合能がより高い抗体を誘導可能な候補抗原ペプチドを選抜できることから、全部のアミノ酸残基がタンパク質外に存在するとしてもよい。また、S6工程において、前記候補抗原ペプチドにおけるタンパク質の表面に位置するアミノ酸残基数をカウントしている場合、前記位置の条件は、例えば、前記候補抗原ペプチドにおけるタンパク質の表面に位置するアミノ酸残基数に基づき設定してもよい。
【0057】
つぎに、S8工程では、第2の評価部18は、前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列または前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質のアミノ酸配列と、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列とを比較して、2つのアミノ酸配列の類似性を評価する。前記候補抗原ペプチドが前記投与対象の対応するタンパク質のアミノ酸配列と同一である、または、極めて類似している場合、一般的には、抗体誘導能が低い、すなわち、抗原性が低い。そこで、S8工程では、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列と類似性を、前記抗原性の指標として評価する。前記類似性は、例えば、2つのアミノ酸配列間で相違するアミノ酸残基数、2つのアミノ酸配列間の同一性等があげられる。
【0058】
具体的には、S8工程では、前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列と、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列とを比較し、類似性を算出することにより、前記2つのアミノ酸配列の類似性を評価する。前記比較および類似性の算出は、配列解析プログラムを用いて実施でき、具体例として、ClustalW、Clustal Omega等が使用できる。
【0059】
S9工程では、第3の選抜部19が、得られた類似性が、予め指定された類似性の条件を満たすかを評価して、前記候補抗原ペプチドの選抜を行う。すなわち、S9工程では、前記類似性を指標に、前記投与対象における対応するタンパク質と類似しない場合、前記候補抗原ペプチドは、抗原性が高いと推定されるため、選抜を行う。他方、前記投与対象における対応するタンパク質と類似する場合、前記候補抗原ペプチドは、抗原性が低いと推定されるため、選抜を行わない。
【0060】
そして、S9工程では、S8工程で得られた類似性の評価結果が前記類似性の条件を満たす場合、すなわち、Yesの場合、第3の選抜部19は、評価対象の候補抗原ペプチドを選抜し、情報処理装置1Aは、処理を終了する。他方、S9工程では、S8工程で得られた類似性の評価結果が前記類似性の条件を満たさない場合、すなわち、Noの場合、第3の選抜部19は、前記評価対象の候補抗原ペプチドを選抜せず、S10工程に進む。
【0061】
前記類似性の条件は、前記類似性の種類により設定できる。前記類似性として2つのアミノ酸配列間の同一性を用いる場合、前記類似性の条件は、例えば、前記同一性が、70%以上、80%以上、もしくは90%以上ではない、または、90%未満、80%未満、もしくは70%未満であると設定できる。また、前記類似性として2つのアミノ酸配列間で相違するアミノ酸残基数を用いる場合、前記連続して一致するアミノ酸残基数が、5アミノ酸以上、6アミノ酸以上、もしくは7アミノ酸以上ではない、または7アミノ酸未満、6アミノ酸未満、もしくは5アミノ酸未満である、と設定できる。
【0062】
つぎに、S10工程では、生成部20が、前記候補抗原ペプチドの1以上のアミノ酸に変異が導入された別の候補ペプチドを生成する。具体的には、S10工程では、前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸配列に対して、1以上の変異を導入することにより、前記別の候補ペプチドを生成できる。
【0063】
前記変異の種類は、例えば、挿入、付加、欠失、置換等があげられる。前記変異の種類がN末端またはC末端への1以上のアミノ酸付加である場合、付加されるアミノ酸残基は、前記候補ペプチドが由来するタンパク質において、前記候補ペプチドのアミノ酸配列のN末端またはC末端に位置する1以上のアミノ酸(対応する1以上のアミノ酸)と同じアミノ酸としてもよい。前記変異ポリペプチドの設計では、1種類の変異を導入してもよいし、複数種類の変異を組み合わせて導入してもよい。
【0064】
前記変異の数は、例えば、前記対象のペプチドの長さに応じて決定でき、具体例として、1~10アミノ酸、1~5アミノ酸、または1~3アミノ酸であり、好ましくは、1~3アミノ酸である。前記変異ポリペプチドの長さは、例えば、前記鋳型のポリペプチドの長さを基準として、-3~+3アミノ酸、-2~+2アミノ酸、または-1~+1アミノ酸であり、好ましくは、0アミノ酸である。
【0065】
生成される別の候補ペプチドの数は、任意の数とでき、具体例として、100~50000、500~40000、1000~30000、または5000~20000である。
【0066】
つぎに、S11工程では、再評価部21が、前記別の候補ペプチドについて、前記各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記別の候補ペプチドの抗原性を再評価する。S11工程は、前記候補ペプチドに代えて、S10工程で生成した別の候補ペプチドを用いる点を除き、S4工程と同様にして実施できる。
【0067】
つぎに、S12工程では、第4の選抜部22が、前記別の候補ペプチドの抗原性への寄与度が前記予め指定された寄与度の条件を満たす場合、前記候補ペプチドを、候補抗原ペプチドとして選抜する。S12工程は、前記候補ペプチドの抗原性への寄与度に代えて、S10工程で再評価した別の候補ペプチドの抗原性への寄与度を用いる点を除き、S5工程と同様にして実施できる。
【0068】
そして、情報処理装置1Aは、S6以降の工程を同様に実施し、終了する。
【0069】
実施形態2の情報処理装置1Aでは、前記候補ペプチドが由来するタンパク質における位置を指標として候補ペプチドを選抜する。このため、実施形態2の情報処理装置1Aによれば、前記候補抗原ペプチドを含むタンパク質に対して結合能がより高い抗体を誘導可能な候補抗原ペプチドを選抜できる。また、実施形態2の情報処理装置1では、前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列と、記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列との類似性に基づき、前記候補抗原ペプチドを選抜する。このため、実施形態2の情報処理装置1Aによれば、抗原性が高い候補抗原ペプチドを選抜できる。
【0070】
実施形態2の情報処理装置1Aでは、前記候補抗原ペプチドが前記類似性の条件を満たさない場合に対して、前記アミノ酸変異の導入(S10)、別の候補ペプチドの再評価(S11)、および選抜(S12)を実施したが、本開示はこれに限定されず、例えば、S5工程において、前記寄与度の条件を満たさない候補ペプチド、およびS7工程において、前記位置の条件を満たさない候補抗原ペプチドに対して、実施してもよい。
【0071】
(実施形態3)
本実施形態のプログラムは、コンピュータに、前記本開示の情報処理方法を実行させるプログラムである。本実施形態のプログラムにおいて、「処理」は、例えば、「手順」または「命令」と言うこともできる。また、本実施形態のプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。前記記録媒体は、例えば、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)である。前記記録媒体は、特に制限されず、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードディスク(HD)、ソリッド・ステート・ドライブ(Solid State Drive:SSD)、光ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)等があげられる。
【実施例
【0072】
以下、実施例を用いて本開示を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。なまた、特に言及しない限り、市販の試薬およびキットは、添付のプロトコルに従って使用した。
【0073】
[実施例1]
ペプチドのアミノ酸配列と、各アミノ酸残基の抗原性への寄与度とに基づき算出したペプチドの抗原性の寄与度(抗原性の指標、抗原性スコア)と抗体誘導能とが相関することを確認した。
【0074】
(1)抗原性スコアの算出
PDB(Protein Data Bank)のAbDbデータベースから、870データの抗原抗体複合体の結晶構造の情報を収集した。つぎに、得られた結晶構造の情報において、前記結晶構造の解像度は、4Å以下のものを選抜した(800データ)。前記選抜された結晶構造について、抗体-抗原間で形成される水素結合をChimeraX(カリフォルニア大学 RBVI(Resource for Biocomputing, Visualization, and Informatics)製)を用いて解析し、抗体と相互作用する抗原のエピトープのアミノ酸残基を抽出した。前記抽出された各アミノ酸の出現個数を計数し、全エピトープのアミノ酸総数に対する各アミノ酸の出現頻度(%)を抗原性への寄与度とした。
【0075】
(2)抗原の調製
各抗原は、それぞれのペプチドをKLH修飾(コスモ・バイオ社製、ユーロフィンジェノミクス社製)したものを用いた。前記KLH修飾抗原を、抗原濃度が0.33mg/0.5ml/羽となるようにリン酸緩衝液(D-PBS)(富士フィルム和光純薬社製)で調整後、得られた抗原を含むPBSと、完全フロイトアジュバント(FCA、富士フィルム和光純薬社製)とを1:1(体積比)で混合してエマルジョン1.0mlを得た。前記エマルジョンを、一次免疫の抗原として使用した。なお、抗原としては、Porphyromonas gingivalisが産生するLys-gingipain(NCBIアクセッション番号: WP_099896865.1、配列番号9)由来のペプチドを4種類、Porphyromonas gingivalisが産生するArg-gingipain(NCBIアクセッション番号: WP_271912163.1、配列番号10)由来のペプチドを3種類、Porphyromonas gingivalisが産生するPeptidylarginine deiminase PPAD(NCBIアクセッション番号: WP_005873463.1、配列番号11)由来のペプチドを2種、ヒトのPeptidylarginine deiminase 4(NCBIアクセッション番号: NP_036519.21、配列番号12)由来のペプチドを2種、COVID-19のSpike glycoprotein (Uniprotアクセッション番号:P0DTC2.1、配列番号13)由来のペプチド1種を、各タンパク質のアミノ酸配列から設計して用いた。また、各抗原の抗原性スコアは、各抗原のアミノ酸配列に基づき、各アミノ酸の出現頻度を積算することにより算出した。
【0076】
また、前記KLH修飾抗原を、抗原濃度が0.33mg/0.5ml/羽となるようにPBSで調整後、得られた抗原を含むPBSと、不完全フロイトアジュバント(FIA、Wako社製)とを、1:1(体積比)で混合してエマルジョン1.0mlを得た。前記エマルジョンを、二次免疫の抗原として使用した。
【0077】
(3)免疫
ニワトリは、各抗原あたり、2~3羽使用した。まず、一次免疫として、一次免疫用に調製した抗原を前記ニワトリの腹腔内に投与した(投与0週目)。前記投与の4週間後、二次免疫として、二次免疫用に調製した抗原を前記ニワトリの腹腔内に投与した。また、投与0週目(免疫前)、投与2週目、投与4週目、投与5週目、および投与6週目に各ニワトリから採血を行った。採血された血液は、遠心分離(14,000×g)し、抗血清を回収した。前記抗血清は、-20℃で保管した。
【0078】
(4)抗体価の確認
各抗血清について、前記抗原に対する抗体価をELISAにて測定した。抗原特異的な抗体の検出は、各抗原で修飾されたウシ血清アルブミン(BSA)を用いて行った(以下、同様)。具体的には、各抗原として、5μg/mlの抗原-BSA(コスモ・バイオ社製、ユーロフィンジェノミクス社製、固相化液)をイムノプレート(マキシソープ、Nunc社製)に添加し、4℃、オーバーナイトで処理することで前記抗原-BSAを固相化した。前記固相化後、前記固相化液を捨て、ブロッキング溶液(25%Block Ace/PBS、ケー・エー・シー社製)を添加して、37℃で1時間ブロッキングした。つぎに、PBS-T(137 mmol/l NaCl、8.9 mmol/l Na2HPO4・12H2O、2.7 mmol/l KCl、1.5 mmol/l KH2PO4、0.05% Tween-20)で洗浄後、サンプル液を添加し、37℃で1時間反応させた。前記サンプル液は、前記ブロッキング液を用いて、前記抗血清を1000倍、2000倍、および4000倍に段階希釈した溶液とした。前記反応後、前記プレートをPBS-Tを用いて洗浄後、前記ブロッキング溶液で1000倍希釈した二次抗体(HRP-anti-chicken-IgG、KPL社製)を添加して37℃で1時間反応させた。前記反応後、PBS-Tを用いて洗浄後、発色試薬(3,3′,5,5′- tetramethylbenzidine:TMB、KPL社製)を添加して、10~30分間発色を行った。前記発色後、TMB stop solution(KPL社製)を添加して、発色を停止させ、各ウェルの吸光度(450nm)を、プレートリーダ(Cytation、BioTek社製)を用いて測定した。そして、得られた測定結果から、各抗原について、初回免疫後に抗体価が最も高くなるまでの日数を算出した。これらの結果を図7に示す。
【0079】
図7は、抗原性スコアと初回免疫後の最大抗体価に達するまでの日数との関係を示すグラフである。図7において、横軸は、初回免疫後に抗体価が最も高くなるまでの日数を示し、縦軸は、抗原性スコアを示す。図中における直線は、近似曲線を示し、Rは、決定係数を示す。図7に示すように、抗原性スコアと初回免疫後の最大抗体価に達するまでの日数とは、高い負の相関関係が確認された。すなわち、前記抗原の抗原性スコアの値が高くなるにつれて、抗体価が上昇するまでの日数が早く、逆に、前記抗原の抗原性スコアが低くなるにつれて、抗体価が上昇するまでに日数がかかることが確認された。したがって、前記抗原性スコアと、抗原の抗原性とが相関することがわかった。
【0080】
[実施例2]
抗原性スコアに基づき、VEGFA由来の抗原ペプチドのアミノ酸を改変することにより、抗原性を改善できることを確認した。
【0081】
(1)抗原の調製
VEGFA(Vascular endothelial growth factor A)をモデル抗原とし、前記VEGFA由来ペプチドに対する抗体誘導能を抗原性スコアに基づき改善できることを確認した。
【0082】
VEGFAのアミノ酸配列(配列番号1)
MNFLLSWVHW SLALLLYLHH AKWSQAAPMA EGGGQNHHEV VKFMDVYQRS YCHPIETLVD IFQEYPDEIE YIFKPSCVPLMRCGGCCNDE GLECVPTEES NITMQIMRIK P[HQGQHIGEM SFLQHN]KCEC RPKKDRARQE KKSVRGKGKG QKRKRKKSRYKSWSVYVGAR CCLMPWSLPG PHPCGPCSER RKHLFVQDPQ TCKCSCKNTD SRCKARQLEL NERTCRCDKP RR
【0083】
まず、VEGFAのアミノ酸配列において、下線で示すアミノ酸配列を抗原ペプチド(改変前の抗原ペプチド1、VPTEESNITMQIMRIK:配列番号2)とした。前記改変前の抗原ペプチド1のアミノ酸配列に変異を導入後、変異を含む抗原ペプチド1よりの抗原性スコアを再計算した。そして、前記改変前の抗原ペプチド1より抗原性スコアが高い、改変後の抗原ペプチド1を得た。得られた前記改変前および改変後の抗原ペプチド1について、前記実施例1と同様にして、一次免疫および二次免疫の抗原を調製した。
【0084】
【表1】
【0085】
また、VEGFAのアミノ酸配列において、括弧で囲ったアミノ酸配列を抗原ペプチド(改変前の抗原ペプチド2、HQGQHIGEMSFLQHN:配列番号4)とした。前記抗原ペプチド2について、前記抗原ペプチド1と同様にして、前記改変前の抗原ペプチド2より抗原性スコアが高い、改変後の抗原ペプチド2を得た。得られた前記改変前および改変後の抗原ペプチド2について、前記実施例1と同様にして、一次免疫および二次免疫の抗原を調製した。
【0086】
【表2】
【0087】
(2)免疫
前記改変前および改変後の抗原ペプチド1、ならびに、前記改変前および改変後の抗原ペプチド2について、それぞれ、ニワトリ2羽に免疫を行った以外は、前記実施例1と同様にして免疫および採血をした。
【0088】
(3)抗体価の確認
前記改変前および改変後の抗原ペプチド1と、前記改変前および改変後の抗原ペプチド2とをそれぞれ免疫した抗血清(mutation-1、2およびoriginal-1、2)について、免疫に用いた各抗原ペプチドに対する抗体価をELISAで測定した。ELISAの測定方法は、前記実施例1と同様にして行った。固相化した抗原ペプチドとして、前記改変前および改変後の抗原ペプチド1、ならびに前記改変前および改変後の抗原ペプチド2を使用した。抗原ペプチド1について得られた測定結果を図8に、抗原ペプチド2について得られた測定結果を図9に示す。図に記載されたナンバーは、免疫したニワトリの個体ナンバーを示す。
【0089】
図8は、前記各抗原ペプチドを免疫して得られた抗血清の抗体価を示すグラフである。図8において、(A)は、改変前の抗原ペプチド1の結果を示し、(B)は、改変後の抗原ペプチド1の結果を示す。図8(A)および(B)において、横軸は、一次免疫を行った日(投与0週目)からの週数を示し、縦軸は、抗体価を表す吸光度の値を示す。図8(A)に示すように、前記改変前の抗原ペプチド1では、抗体価が、6週目で若干の抗体価の上昇に止まった。他方、図8(B)に示すように、前記改変後の抗原ペプチド1では、抗体価が、2週目には全ての個体で上昇することが確認された。すなわち、抗原性スコアの低い改変前の抗原ペプチドに比べ、抗原性スコアの高い抗原ペプチドの方が、抗原性が高いこと、すなわち、抗体の誘導能が高いことがわかった。
【0090】
図9は、前記各抗原ペプチドを免疫して得られた抗血清の抗体価を示すグラフである。図9において、(A)は、改変前の抗原ペプチド2の結果を示し、(B)は、改変後の抗原ペプチド2の結果を示す。図9(A)および(B)において、横軸は、一次免疫を行った日(投与0週目)からの週数を示し、縦軸は、抗体価を表す吸光度の値を示す。図9(A)に示すように、前記改変前の抗原ペプチド2では、抗体価が、4~5週目で抗体価が上昇した。他方、図9(B)に示すように、前記改変後の抗原ペプチド2では、抗体価が、2週目には全ての個体で上昇することが確認された。すなわち、抗原性スコアの低い改変前の抗原ペプチドに比べ、抗原性スコアの高い抗原ペプチドの方が、抗原性が高いこと、すなわち、抗体の誘導能が高いことがわかった。
【0091】
以上のことから、各アミノ酸残基の抗原性への寄与度に基づき算出した抗原性スコアを指標とすることで、ペプチドの抗原性を調整できることがわかった。
【0092】
(4)交差反応性の確認
前記改変後の抗原ペプチド1および2で免疫した6週目の抗血清について、前記改変前の抗原ペプチド1および2への交差反応性を確認した。前記交差反応性は、ELISAで測定した。前記改変前および改変後の抗原ペプチド1と、前記改変前および改変後の抗原ペプチド2とについて、N末端をBSAで修飾後、得られたBSA修飾ペプチドを、それぞれプレートに固相化した。前記固相化後、サンプル液としては、前記抗血清を1000倍から2倍希釈で段階希釈した希釈液を調製して使用した。これらの点を除き、前記実施例1と同様にしてELISAで測定した。前記抗原ペプチド1について得られた測定結果を、図10に、前記抗原ペプチド2について得られた測定結果を、図11に示す。
【0093】
図10は、各抗血清の交差反応性を示すグラフである。図10において、(A)は、改変後の抗原ペプチド1を免疫して得られた抗血清の改変前の抗原ペプチド1に対する抗体価を示し、(B)は、改変後の抗原ペプチド1を免疫して得られた抗血清の改変後の抗原ペプチド1に対する抗体価を示す。図10(A)および(B)において、横軸は、前記抗血清の希釈倍率を示し、縦軸は、吸光度の値を示す。前記改変後の抗原ペプチド1を免疫した抗血清は、各抗原ペプチドに反応性を示すことが確認された。
【0094】
図11は、各抗血清の交差反応性を示すグラフである。図11において、(A)は、改変後の抗原ペプチド2を免疫して得られた抗血清の改変前の抗原ペプチド2に対する抗体価を示し、(B)は、改変後の抗原ペプチド2を免疫して得られた抗血清の改変後の抗原ペプチド2に対する抗体価を示す。図11(A)および(B)において、横軸は、前記抗血清の希釈倍率を示し、縦軸は、吸光度の値を示す。前記改変後の抗原ペプチド2を免疫した抗血清は、各抗原ペプチドに反応性を示すことが確認された。
【0095】
以上のことから、各アミノ酸残基の抗原性への寄与度に基づき算出された抗原性スコアを用いることにより、ペプチドの抗原性を調整できることがわかった。また、前記抗原性スコアに基づき変異を導入した抗原ペプチドを免疫した際にも、変異を導入する前の抗原ペプチドに交差反応する抗体が誘導されることがわかった。
【0096】
[実施例3]
抗原性スコアに基づき、Calcitonin gene-related peptide type 1 receptor(CGRPR)由来の抗原ペプチドのアミノ酸を改変することにより、抗原性を改善できることを確認した。
【0097】
(1)抗原の調整
CGRPRをモデル抗原とし、CGRPRに対する抗体誘導能を抗原性スコアに基づき改善できることを確認した。
【0098】
CGRPRのアミノ酸配列(配列番号6)
MEKKCTLNFL VLLPFFMILV TAELEESPED SIQLGVTRNK IMTAQYECYQ KIMQDPIQQA EGVYCNRTWD GWLCWNDVAA GTESMQLCPD YFQDFDPSEK VTKICDQDGN WFRHPASNRT WTNYTQCNVN THEKVKTALN LFYLTIIGHG LSIASLLISL GIFFYFKSLS CQRITLHKNL FFSFVCNSVV TIIHLTAVAN NQALVATNPV SCKVSQFIHL YLMGCNYFWM LCEGIYLHTL IVVAVFAEKQ HLMWYYFLGW GFPLIPACIH AIARSLYYND NCWISSDTHL LYIIHGPICA ALLVNLFFLL NIVRVLITKL KVTHQAESNL YMKAVRATLI LVPLLGIEFV LIPWRPEGKI AEEVYDYIMH ILMHFQGLLV STIFCFFNGE VQAILRRNWN QYKIQFGNSF SNSEALRSAS YTVSTISDGP GYSHDCPSEH LNGKSIHDIE NVLLKPENLY N
【0099】
まず、CGRPRのアミノ酸配列において、下線で示すアミノ酸配列を抗原ペプチド(改変前の抗原ペプチド3、DYFQDFDPSEKVTKI:配列番号7)とした。前記抗原ペプチド3は、改変前の抗原性スコアが5.82と高いが、免疫動物の内在性タンパク質と相同性が高い。よって、前記抗原ペプチド3は、抗体価の上昇が遅い、または抗体価が上昇しにくいことが予測されたため、抗原性スコアに基づき、前記抗原ペプチド3を改変した。前記改変前の抗原ペプチド3のアミノ酸配列に変異を導入後、変異を含む抗原ペプチド1よりの抗原性スコアを再計算した。そして、前記改変前の抗原ペプチド3より抗原性スコアが高い、改変後の抗原ペプチド3を得た。得られた前記改変前および改変後の抗原ペプチド3について、前記実施例1と同様にして、一次免疫および二次免疫の抗原を調製した。
【0100】
【表3】
【0101】
(2)免疫
前記改変前の抗原ペプチド3および前記改変後の抗原ペプチド3について、それぞれ、ニワトリ3羽に免疫を行った以外は、前記実施例1と同様にして免疫および採血をした(mutation-1、2、3およびoriginal-1、2、3)。
【0102】
(3)抗体価の確認
前記改変前および改変後の抗原ペプチド3をそれぞれ免疫した抗血清の前記各抗原に対する抗体価をELISAで測定した。ELISAは、前記改変前および改変後の抗原ペプチド2に代えて、前記改変前および改変後の抗原ペプチド3を用いた以外は前記実施例2(3)と同様に実施した。得られた測定結果を、図12に示す。
【0103】
図12は、前記抗原ペプチド3を免疫して得られた抗血清の抗体価を示すグラフである。図12において、(A)は、改変前の抗原ペプチド3の結果を示し、(B)は、改変後の抗原ペプチド3の結果を示す。図12(A)および(B)において、横軸は、一次免疫を行った日(投与0週目)からの週数を示し、縦軸は、抗体価を表す吸光度の値を示す。図12(A)に示すように、前記改変前の抗原ペプチド3では、抗体価が、2~5週目で抗体価が上昇した。他方、図12(B)に示すように、前記改変後の抗原ペプチド3では、抗体価が、2週目には全ての個体で上昇することが確認された。すなわち、抗原性スコアの低い改変前の抗原ペプチドに比べ、抗原性スコアの高い抗原ペプチドの方が、抗原性が高いこと、すなわち、抗体の誘導能が高いことがわかった。
【0104】
以上のことから、他のタンパク質においても、各アミノ酸残基の抗原性への寄与度に基づき算出した抗原性スコアを指標とすることで、ペプチドの抗原性を調整できることがわかった。
【0105】
(4)交差反応性の確認
前記改変後の抗原ペプチド3で免疫した抗血清について、前記改変前の抗原ペプチド3への交差反応性を確認した。前記改変前および改変後の抗原ペプチド3に対する抗血清を用い、前記改変前および改変後の抗原ペプチド3を固相化した以外は、前記実施例2(4)と同様にして、ELISAで測定した。得られた結果を、図13に示す。
【0106】
図13は、各抗血清の交差反応性を示すグラフである。図13において、(A)は、改変後の抗原ペプチド3を免疫して得られた抗血清の改変前の抗原ペプチド3に対する抗体価を示し、(B)は、改変後の抗原ペプチド3を免疫して得られた抗血清の改変後の抗原ペプチド3に対する抗体価を示す。図13(A)および(B)において、横軸は、前記抗血清の希釈倍率を示し、縦軸は、吸光度の値を示す。前記改変後の抗原ペプチド3を免疫した抗血清は、各抗原ペプチドに反応性を示すことが確認された。
【0107】
以上のことから、各アミノ酸残基の抗原性への寄与度に基づき算出された抗原性スコアを用いることにより、ペプチドの抗原性を調整できることがわかった。また、前記抗原性スコアに基づき変異を導入した抗原ペプチドを免疫した際にも、変異を導入する前の抗原ペプチドに交差反応する抗体が誘導されることがわかった。
【0108】
以上、実施形態および実施例を参照して本開示を説明したが、本開示は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0109】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
<情報処理装置>
(付記1)
候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記候補ペプチドの抗原性を評価する第1の評価部を含み、
前記抗原性への寄与度は、抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基のアミノ酸残基に基づき算出された寄与度である、情報処理装置。
(付記2)
抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基を分析する分析部と、
前記エピトープ残基を構成する各アミノ酸残基に基づき、各アミノ酸の抗原性への寄与度を算出する算出部とを含む、付記1に記載の情報処理装置。
(付記3)
前記候補ペプチドの抗原性への寄与度が前記予め指定された寄与度の条件を満たす場合、前記候補ペプチドを、候補抗原ペプチドとして選抜する第1の選抜部を含む、付記2に記載の情報処理装置。
(付記4)
前記候補抗原ペプチドについて、前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質における位置を決定する決定部と、
前記タンパク質における前記候補抗原ペプチドの位置が予め指定された位置の条件を満たす場合、前記候補抗原ペプチドを選抜する第2の選抜部を含む、付記3に記載の情報処理装置。
(付記5)
前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列または前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質のアミノ酸配列と、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列とを比較して、2つのアミノ酸配列の類似性を評価する第2の評価部と、
前記アミノ酸配列の類似性が予め指定された類似性の条件を満たす場合、前記候補抗原ペプチドを選抜する第3の選抜部を含む、付記3または4に記載の情報処理装置。
(付記6)
前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列または前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質のアミノ酸配列と、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列とを比較して、2つのアミノ酸配列の類似性を評価する第2の評価部と、
前記アミノ酸配列の類似性が前記予め指定された類似性の条件を満たさない場合、前記候補抗原ペプチドの1以上のアミノ酸に変異が導入された別の候補ペプチドを生成する生成部と、
前記別の候補ペプチドについて、前記各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記別の候補ペプチドの抗原性を再評価する再評価部とを含む、付記5に記載の情報処理装置。
(付記7)
前記別の候補ペプチドの抗原性への寄与度が前記予め指定された寄与度の条件を満たす場合、前記別の候補ペプチドを、候補抗原ペプチドとして選抜する第4の選抜部を含む、付記6に記載の情報処理装置。
(付記8)
前記分析部では、少なくとも前記抗体と前記抗原との水素結合を分析することにより、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基を分析する、付記1から7のいずれかに記載の情報処理装置。
(付記9)
前記各アミノ酸の抗原性への寄与度は、前記エピトープ残基における各アミノ酸の出現頻度である、付記1から8のいずれかに記載の情報処理装置。
(付記10)
前記抗原性は、生体に免疫した際の抗体誘導能である、付記1から9のいずれかに記載の情報処理装置。
<情報処理方法>
(付記11)
候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記候補ペプチドの抗原性を評価する第1の評価工程を含み、
前記抗原性への寄与度は、抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基のアミノ酸残基に基づき算出された寄与度である、情報処理方法。
(付記12)
抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基を分析する分析工程と、
前記エピトープ残基を構成する各アミノ酸残基に基づき、各アミノ酸の抗原性への寄与度を算出する算出工程とを含む、付記11に記載の情報処理方法。
(付記13)
前記候補ペプチドの抗原性への寄与度が前記予め指定された寄与度の条件を満たす場合、前記候補ペプチドを、候補抗原ペプチドとして選抜する第1の選抜工程を含む、付記12に記載の情報処理方法。
(付記14)
前記候補抗原ペプチドについて、前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質における位置を決定する決定工程と、
前記タンパク質における前記候補抗原ペプチドの位置が予め指定された位置の条件を満たす場合、前記候補抗原ペプチドを選抜する第2の選抜工程を含む、付記13に記載の情報処理方法。
(付記15)
前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列または前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質のアミノ酸配列と、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列とを比較して、2つのアミノ酸配列の類似性を評価する第2の評価工程と、
前記アミノ酸配列の類似性が予め指定された類似性の条件を満たす場合、前記候補抗原ペプチドを選抜する第3の選抜工程を含む、付記13または14に記載の情報処理方法。
(付記16)
前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列または前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質のアミノ酸配列と、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列とを比較して、2つのアミノ酸配列の類似性を評価する第2の評価工程と、
前記アミノ酸配列の類似性が前記予め指定された類似性の条件を満たさない場合、前記候補抗原ペプチドの1以上のアミノ酸に変異が導入された別の候補ペプチドを生成する生成工程と、
前記別の候補ペプチドについて、前記各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記別の候補ペプチドの抗原性を再評価する再評価工程とを含む、付記15に記載の情報処理方法。
(付記17)
前記別の候補ペプチドの抗原性への寄与度が前記予め指定された寄与度の条件を満たす場合、前記別の候補ペプチドを、候補抗原ペプチドとして選抜する第4の選抜工程を含む、付記16に記載の情報処理方法。
(付記18)
前記分析工程では、少なくとも前記抗体と前記抗原との水素結合を分析することにより、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基を分析する、付記11から17のいずれかに記載の情報処理方法。
(付記19)
前記各アミノ酸の抗原性への寄与度は、前記エピトープ残基における各アミノ酸の出現頻度である、付記11から18のいずれかに記載の情報処理方法。
(付記20)
前記抗原性は、生体に免疫した際の抗体誘導能である、付記11から19のいずれかに記載の情報処理方法。
<プログラム>
(付記21)
コンピュータに、
候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記候補ペプチドの抗原性を評価する第1の評価処理を実行させ、
前記抗原性への寄与度は、抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基のアミノ酸残基に基づき算出された寄与度である、プログラム。
(付記22)
抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基を分析する分析処理と、
前記エピトープ残基を構成する各アミノ酸残基に基づき、各アミノ酸の抗原性への寄与度を算出する算出処理とを含む、付記21に記載のプログラム。
(付記23)
前記候補ペプチドの抗原性への寄与度が前記予め指定された寄与度の条件を満たす場合、前記候補ペプチドを、候補抗原ペプチドとして選抜する第1の選抜処理を含む、付記22に記載のプログラム。
(付記24)
前記候補抗原ペプチドについて、前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質における位置を決定する決定処理と、
前記タンパク質における前記候補抗原ペプチドの位置が予め指定された位置の条件を満たす場合、前記候補抗原ペプチドを選抜する第2の選抜処理を含む、付記23に記載のプログラム。
(付記25)
前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列または前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質のアミノ酸配列と、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列とを比較して、2つのアミノ酸配列の類似性を評価する第2の評価処理と、
前記アミノ酸配列の類似性が予め指定された類似性の条件を満たす場合、前記候補抗原ペプチドを選抜する第3の選抜処理を含む、付記23または24に記載のプログラム。
(付記26)
前記候補抗原ペプチドのアミノ酸配列または前記候補抗原ペプチドが由来するタンパク質のアミノ酸配列と、前記候補抗原ペプチドの投与対象における対応するタンパク質のアミノ酸配列とを比較して、2つのアミノ酸配列の類似性を評価する第2の評価処理と、
前記アミノ酸配列の類似性が前記予め指定された類似性の条件を満たさない場合、前記候補抗原ペプチドの1以上のアミノ酸に変異が導入された別の候補ペプチドを生成する生成処理と、
前記別の候補ペプチドについて、前記各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記別の候補ペプチドの抗原性を再評価する再評価処理とを含む、付記25に記載のプログラム。
(付記27)
前記別の候補ペプチドの抗原性への寄与度が前記予め指定された寄与度の条件を満たす場合、前記別の候補ペプチドを、候補抗原ペプチドとして選抜する第4の選抜処理を含む、付記26に記載のプログラム。
(付記28)
前記分析処理では、少なくとも前記抗体と前記抗原との水素結合を分析することにより、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基を分析する、付記21から27のいずれかに記載のプログラム。
(付記29)
前記各アミノ酸の抗原性への寄与度は、前記エピトープ残基における各アミノ酸の出現頻度である、付記21から28のいずれかに記載のプログラム。
(付記30)
前記抗原性は、生体に免疫した際の抗体誘導能である、付記21から29のいずれかに記載のプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のように、本開示によれば、対象のペプチドの抗原性を評価できる。このため、本開示は、例えば、創薬分野等において極めて有用である。
【要約】      (修正有)
【課題】対象のペプチドの抗原性の評価に使用可能な情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】本開示の情報処理装置は、候補ペプチドについて、各アミノ酸の抗原性への寄与度に基づき、前記候補ペプチドの抗原性を評価する第1の評価工程を含み、前記抗原性への寄与度は、抗原抗体複合体の立体構造のデータから、前記抗体と相互作用する前記抗原上のエピトープ残基のアミノ酸残基に基づき算出された寄与度である。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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