IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用駆動装置 図1
  • 特許-車両用駆動装置 図2
  • 特許-車両用駆動装置 図3
  • 特許-車両用駆動装置 図4
  • 特許-車両用駆動装置 図5
  • 特許-車両用駆動装置 図6
  • 特許-車両用駆動装置 図7
  • 特許-車両用駆動装置 図8
  • 特許-車両用駆動装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240215BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20240215BHJP
   B60K 6/00 20071001ALI20240215BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
F16H57/04 G
B60K1/02
B60K6/00
H02K7/116
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023511232
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022014869
(87)【国際公開番号】W WO2022210486
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021058609
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】柳原 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】中島 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】手塚 武志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 公伸
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】森本 陽介
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-178485(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169542(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
B60K 1/02
B60K 6/00
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動力源と、第2駆動力源と、第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、動力伝達機構と、前記第1駆動力源及び前記第2駆動力源に油を供給するオイルポンプと、前記油を冷却するオイルクーラと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記動力伝達機構は、前記第1駆動力源のトルクを少なくとも前記第1出力部材に伝達する第1伝達系と、前記第2駆動力源のトルクを少なくとも前記第2出力部材に伝達する第2伝達系と、を備え、
前記第1駆動力源及び前記第2駆動力源が、第1軸上に配置され、
前記第1出力部材及び前記第2出力部材が、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記第1軸及び前記第2軸に平行な方向を軸方向とし、前記第2軸上に配置され且つ前記第1伝達系を構成するギヤのうち、前記第2軸を基準とする径方向の最も外側に配置されたギヤを第1外周ギヤとし、前記第2軸上に配置され且つ前記第2伝達系を構成するギヤのうち、前記径方向の最も外側に配置されたギヤを第2外周ギヤとして、
前記第1外周ギヤと前記第2外周ギヤとが、前記軸方向に離間して配置され、
前記オイルクーラは、前記第1外周ギヤと前記第2外周ギヤとの前記軸方向の間であって、前記軸方向に沿う軸方向視で前記第1外周ギヤ及び前記第2外周ギヤの少なくとも一方と重複するように配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1駆動力源、前記第2駆動力源、前記第1出力部材、前記第2出力部材、及び前記動力伝達機構を収容するケースを更に備え、
前記ケースは、前記第1外周ギヤ及び前記第2外周ギヤに対して前記径方向の外側を覆う周壁部を備え、
前記周壁部の一部であって、前記軸方向で前記第1外周ギヤと前記第2外周ギヤとの間の部分には、前記径方向の内側に窪む凹部が形成され、
前記オイルクーラの少なくとも一部が、前記凹部に収まるように配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記オイルポンプと前記オイルクーラとを結ぶ油路が、前記第1外周ギヤと前記第2外周ギヤとの前記軸方向の間であって、前記軸方向視で前記第1外周ギヤ及び前記第2外周ギヤの少なくとも一方と重複する領域を通るように配置されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記オイルクーラと前記第1駆動力源及び前記第2駆動力源の双方とを結ぶ油路が、前記第1外周ギヤと前記第2外周ギヤとの前記軸方向の間であって、前記軸方向視で前記第1外周ギヤ及び前記第2外周ギヤの少なくとも一方と重複する領域を通るように配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1駆動力源は、第1ロータを備えた第1回転電機であり、
前記第2駆動力源は、第2ロータを備えた第2回転電機であり、
前記第1伝達系は、前記第1ロータと一体的に回転するように連結された第1ギヤと、前記第1ギヤに噛み合う第3ギヤ及び当該第3ギヤと一体的に回転する第4ギヤを備えた第1カウンタギヤ機構と、を含み、
前記第2伝達系は、前記第2ロータと一体的に回転するように連結された第2ギヤと、前記第2ギヤに噛み合う第5ギヤ及び当該第5ギヤと一体的に回転する第6ギヤを備えた第2カウンタギヤ機構と、を含み、
前記第1外周ギヤは、前記第4ギヤに噛み合うギヤであり、
前記第2外周ギヤは、前記第6ギヤに噛み合うギヤであり、
前記動力伝達機構は、前記第1外周ギヤに伝達された前記第1回転電機のトルクと前記第2外周ギヤに伝達された前記第2回転電機のトルクとを、前記第1出力部材と前記第2出力部材とに分配する差動歯車機構を備え、
前記第1回転電機と前記差動歯車機構との前記軸方向における配置領域が重複し、
前記第2回転電機と前記オイルポンプとの前記軸方向における配置領域が重複し、
前記オイルクーラは、前記軸方向視で前記差動歯車機構及び前記オイルポンプの少なくとも一方と重複するように配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1駆動力源と、第2駆動力源と、動力伝達機構と、第1駆動力源及び第2駆動力源に油を供給するオイルポンプと、油を冷却するオイルクーラと、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1駆動力源と第2駆動力源と動力伝達機構とを備えた車両用駆動装置の一例が、特開2018-155327号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1における車両用駆動装置としての車両駆動装置(1)は、第1駆動力源及び第2駆動力源としての電動モータ(2L,2R)と、動力伝達機構としての減速装置(3L,3R)と、を備えている。減速装置(3L,3R)は減速装置ハウジング(9)に収容されており、特許文献1の段落0047に記載されているように、減速装置ハウジング(9)には潤滑油が封入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-155327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には記載されていないが、第1駆動力源及び第2駆動力源に油を供給してこれらの冷却等を行うために、第1駆動力源及び第2駆動力源に油を供給するオイルポンプと、当該油を冷却するオイルクーラとを、車両用駆動装置に設ける場合がある。この場合、オイルクーラの配置位置によっては、車両用駆動装置が大型化して車両用駆動装置の車両への搭載性が低下し得る。
【0006】
そこで、車両用駆動装置の大型化を抑制しつつオイルクーラを配置することが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る車両用駆動装置は、第1駆動力源と、第2駆動力源と、第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、第2車輪に駆動連結される第2出力部材と、動力伝達機構と、前記第1駆動力源及び前記第2駆動力源に油を供給するオイルポンプと、前記油を冷却するオイルクーラと、を備えた車両用駆動装置であって、前記動力伝達機構は、前記第1駆動力源のトルクを少なくとも前記第1出力部材に伝達する第1伝達系と、前記第2駆動力源のトルクを少なくとも前記第2出力部材に伝達する第2伝達系と、を備え、前記第1駆動力源及び前記第2駆動力源が、第1軸上に配置され、前記第1出力部材及び前記第2出力部材が、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、前記第1軸及び前記第2軸に平行な方向を軸方向とし、前記第2軸上に配置され且つ前記第1伝達系を構成するギヤのうち、前記第2軸を基準とする径方向の最も外側に配置されたギヤを第1外周ギヤとし、前記第2軸上に配置され且つ前記第2伝達系を構成するギヤのうち、前記径方向の最も外側に配置されたギヤを第2外周ギヤとして、前記第1外周ギヤと前記第2外周ギヤとが、前記軸方向に離間して配置され、前記オイルクーラは、前記第1外周ギヤと前記第2外周ギヤとの前記軸方向の間であって、前記軸方向に沿う軸方向視で前記第1外周ギヤ及び前記第2外周ギヤの少なくとも一方と重複するように配置されている。
【0008】
上記のように、第2軸上に配置され且つ第1伝達系を構成するギヤのうちの径方向の最も外側に配置されたギヤである第1外周ギヤと、第2軸上に配置され且つ第2伝達系を構成するギヤのうちの径方向の最も外側に配置されたギヤである第2外周ギヤとが、軸方向に離間して配置される場合、第1外周ギヤと第2外周ギヤとの軸方向の間であって軸方向視で第1外周ギヤ及び第2外周ギヤの少なくとも一方と重複する領域がデッドスペースとなりやすい。本構成によれば、このようにデッドスペースとなりやすい領域を利用してオイルクーラを配置することができるため、オイルクーラを配置することによる車両用駆動装置の大型化を抑制することができる。すなわち、本構成によれば、車両用駆動装置の大型化を抑制しつつオイルクーラを配置することができる。
【0009】
車両用駆動装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図2】実施形態に係る車両用駆動装置の断面図
図3】実施形態に係る車両用駆動装置の一部の平面図
図4】実施形態に係る車両用駆動装置の一部の斜視図
図5】実施形態に係る車両用駆動装置の一部の側面図
図6】実施形態に係る車両用駆動装置のケースを透視した斜視図
図7】実施形態に係る車両用駆動装置のケースを透視した斜視図
図8】実施形態に係る車両用駆動装置の正面図
図9】その他の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
【発明を実施するための形態】
【0011】
車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、第1回転電機1Aが「第1駆動力源」に相当し、第2回転電機1Bが「第2駆動力源」に相当し、第1入力ギヤ4Aが「第1ギヤ」に相当し、第2入力ギヤ4Bが「第2ギヤ」に相当し、第1差動入力ギヤ7Aが「第1外周ギヤ」に相当し、第2差動入力ギヤ7Bが「第2外周ギヤ」に相当し、第2油路24Bが「オイルポンプとオイルクーラとを結ぶ油路」に相当し、第3油路24Cが「オイルクーラと第1駆動力源及び第2駆動力源の双方とを結ぶ油路」に相当し、第1カウンタ入力ギヤ51Aが「第3ギヤ」に相当し、第2カウンタ入力ギヤ51Bが「第5ギヤ」に相当し、第1カウンタ出力ギヤ52Aが「第4ギヤ」に相当し、第2カウンタ出力ギヤ52Bが「第6ギヤ」に相当する。
【0012】
本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0013】
本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「軸方向の配置領域が重複する」とは、一方の部材の軸方向の配置領域内に、他方の部材の軸方向の配置領域の少なくとも一部が含まれることを意味する。
【0014】
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。但し、差動歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該差動歯車機構が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
【0015】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、第1回転電機1Aと、第2回転電機1Bと、第1車輪W1に駆動連結される第1出力部材2Aと、第2車輪W2に駆動連結される第2出力部材2Bと、動力伝達機構Tと、を備えている。図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1回転電機1A、第2回転電機1B、第1出力部材2A、第2出力部材2B、及び動力伝達機構Tを収容するケース3を更に備えている。図2に示す例では、第1出力部材2Aの一部及び第2出力部材2Bの一部は、ケース3の外部に露出している。
【0016】
第1車輪W1及び第2車輪W2は、車両(車両用駆動装置100が搭載される車両)における左右一対の車輪(例えば、左右一対の前輪、又は左右一対の後輪)である。本実施形態では、第1出力部材2Aは、第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2出力部材2Bは、第2車輪W2と一体的に回転するように連結される。第1出力部材2Aは、例えば等速ジョイントを介して第1車輪W1に連結され、第2出力部材2Bは、例えば等速ジョイントを介して第2車輪W2に連結される。
【0017】
図1に示すように、動力伝達機構Tは、第1回転電機1Aのトルクを少なくとも第1出力部材2Aに伝達する第1伝達系T1と、第2回転電機1Bのトルクを少なくとも第2出力部材2Bに伝達する第2伝達系T2と、を備えている。車両用駆動装置100は、第1回転電機1Aのトルクを少なくとも第1出力部材2Aに伝達させ、第2回転電機1Bのトルクを少なくとも第2出力部材2Bに伝達させて、車両を走行させる。第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、後述するインバータユニット90を介して、蓄電装置(図示せず)と電気的に接続されている。そして、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両の慣性力等によって発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。本実施形態では、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとは、互いに独立に回転可能に設けられている。
【0018】
本実施形態では、第1伝達系T1は、第1回転電機1Aのトルクを第1出力部材2A及び第2出力部材2Bの双方に伝達するように構成され、第2伝達系T2は、第2回転電機1Bのトルクを第1出力部材2A及び第2出力部材2Bの双方に伝達するように構成されている。すなわち、第1伝達系T1における第1回転電機1A側とは反対側の部分と、第2伝達系T2における第2回転電機1B側とは反対側の部分とは、共通の伝達系とされている。そして、動力伝達機構Tは、第1回転電機1Aのトルクと第2回転電機1Bのトルクとを、第1出力部材2Aと第2出力部材2Bとに分配して伝達する。
【0019】
第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、第1軸X1上に配置され、第1出力部材2A及び第2出力部材2Bは、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置されている。第1軸X1及び第2軸X2は、互いに平行に配置されている。ここで、第1軸X1及び第2軸X2に平行な方向を軸方向Lとする。また、軸方向Lにおける、第2回転電機1Bに対して第1回転電機1Aが配置された側を軸方向第1側L1とし、軸方向第1側L1とは反対側を軸方向第2側L2とする。本実施形態では、第1伝達系T1は、第1カウンタギヤ機構5Aを含み、第2伝達系T2は、第2カウンタギヤ機構5Bを含んでいる。第1カウンタギヤ機構5A及び第2カウンタギヤ機構5Bは、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置されている。第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3は、互いに平行に配置されている。第1軸X1、第2軸X2、及び第3軸X3は、仮想軸である。
【0020】
本実施形態では、車両用駆動装置100は、軸方向Lが車両左右方向に沿う向きで車両に搭載される。具体的には、軸方向第1側L1が車両左側となり、軸方向第2側L2が車両右側となる向きで、車両に搭載される。図4に示すように、車両用駆動装置100が車両に搭載された状態において上下方向視(上下方向V(鉛直方向)に沿う方向視)で軸方向Lに直交する方向を、幅方向Hとする。また、幅方向Hの一方側を幅方向第1側H1とし、幅方向Hの他方側を幅方向第2側H2とする。具体的には、幅方向Hにおける、第2軸X2に対して第1軸X1が配置された側を幅方向第1側H1とし、幅方向第1側H1とは反対側を幅方向第2側H2とする。本実施形態では、幅方向Hは、車両前後方向に一致する。具体的には、幅方向第1側H1が車両後方側となり、幅方向第2側H2が車両前方側となる。
【0021】
図1及び図2に示すように、第1回転電機1Aは、ケース3に固定された第1ステータ11Aと、第1ステータ11Aに対して回転自在に支持された第1ロータ12Aと、を備えている。第2回転電機1Bは、ケース3に固定された第2ステータ11Bと、第2ステータ11Bに対して回転自在に支持された第2ロータ12Bと、を備えている。このように、第1伝達系T1によって伝達されるトルクを出力する第1駆動力源は、第1ロータ12Aを備えた第1回転電機1Aであり、第2伝達系T2によって伝達されるトルクを出力する第2駆動力源は、第2ロータ12Bを備えた第2回転電機1Bである。本実施形態では、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bは、インナロータ型の回転電機である。そのため、第1ロータ12Aは、第1ステータ11Aの径方向(第1軸X1を基準とする径方向)の内側に配置され、第2ロータ12Bは、第2ステータ11Bの径方向(第1軸X1を基準とする径方向)の内側に配置されている。
【0022】
図2に示すように、本実施形態では、第1回転電機1Aの軸方向Lにおける配置領域である第1配置領域A1は、第1ステータ11Aの軸方向Lにおける配置領域と一致し、第2回転電機1Bの軸方向Lにおける配置領域である第2配置領域A2は、第2ステータ11Bの軸方向Lにおける配置領域と一致している。第1ステータ11A及び第2ステータ11Bのそれぞれは、ステータコア14と、ステータコア14から軸方向Lの両側に突出するコイルエンド部15と、を備えている。軸方向第1側L1のコイルエンド部15は、ステータコア14に巻装されたコイルにおけるステータコア14から軸方向第1側L1に突出する部分によって形成され、軸方向第2側L2のコイルエンド部15は、ステータコア14に巻装されたコイルにおけるステータコア14から軸方向第2側L2に突出する部分によって形成されている。第1ステータ11Aや第2ステータ11Bの軸方向Lにおける配置領域は、軸方向第1側L1のコイルエンド部15における軸方向第1側L1の端部と、軸方向第2側L2のコイルエンド部15における軸方向第2側L2の端部との間の、軸方向Lの領域である。
【0023】
本実施形態では、第1回転電機1Aの外径は、第2回転電機1Bの外径と等しい。具体的には、第1ステータ11Aが備えるステータコア14の外径は、第2ステータ11Bが備えるステータコア14の外径と等しい。
【0024】
第1伝達系T1は、第1ロータ12Aと一体的に回転するように連結された第1入力ギヤ4Aを含み、第2伝達系T2は、第2ロータ12Bと一体的に回転するように連結された第2入力ギヤ4Bを含んでいる。具体的には、第1ロータ12Aは、第1ロータ軸13Aと一体的に回転するように連結されている。そして、第1ロータ軸13Aにおける第1ロータ12Aよりも軸方向第2側L2の部分の外面に、第1入力ギヤ4Aが形成されている。また、第2ロータ12Bは、第2ロータ軸13Bと一体的に回転するように連結されている。そして、第2ロータ軸13Bにおける第2ロータ12Bよりも軸方向第1側L1の部分の外面に、第2入力ギヤ4Bが形成されている。
【0025】
上述したように、本実施形態では、第1伝達系T1は第1カウンタギヤ機構5Aを含み、第2伝達系T2は第2カウンタギヤ機構5Bを含んでいる。第1カウンタギヤ機構5Aは、第1入力ギヤ4Aに噛み合う第1カウンタ入力ギヤ51A及び当該第1カウンタ入力ギヤ51Aと一体的に回転する第1カウンタ出力ギヤ52Aを備えている。第1カウンタ出力ギヤ52Aは、第1カウンタ軸53Aを介して、第1カウンタ入力ギヤ51Aと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1カウンタ出力ギヤ52Aは、第1カウンタ入力ギヤ51Aに対して軸方向第1側L1に配置されている。第2カウンタギヤ機構5Bは、第2入力ギヤ4Bに噛み合う第2カウンタ入力ギヤ51B及び当該第2カウンタ入力ギヤ51Bと一体的に回転する第2カウンタ出力ギヤ52Bを備えている。第2カウンタ出力ギヤ52Bは、第2カウンタ軸53Bを介して、第2カウンタ入力ギヤ51Bと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2カウンタ出力ギヤ52Bは、第2カウンタ入力ギヤ51Bに対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0026】
本実施形態では、第1伝達系T1は第1差動入力ギヤ7Aを含み、第2伝達系T2は第2差動入力ギヤ7Bを含んでいる。第1差動入力ギヤ7Aは、第2軸X2上に配置されて第1回転電機1Aの回転が入力されるギヤであり、第2差動入力ギヤ7Bは、第2軸X2上に配置されて第2回転電機1Bの回転が入力されるギヤである。本実施形態では、第1差動入力ギヤ7Aは、第1カウンタ出力ギヤ52Aに噛み合うギヤであり、第1差動入力ギヤ7Aには、第1回転電機1Aの回転が第1カウンタギヤ機構5Aを介して入力される。また、本実施形態では、第2差動入力ギヤ7Bは、第2カウンタ出力ギヤ52Bに噛み合うギヤであり、第2差動入力ギヤ7Bには、第2回転電機1Bの回転が第2カウンタギヤ機構5Bを介して入力される。本実施形態では、第1差動入力ギヤ7Aは、第2差動入力ギヤ7Bと同径に形成されている。
【0027】
上述したように、本実施形態では、動力伝達機構Tは、第1回転電機1Aのトルクと第2回転電機1Bのトルクとを、第1出力部材2Aと第2出力部材2Bとに分配して伝達する。具体的には、動力伝達機構Tは、第1差動入力ギヤ7Aに伝達された第1回転電機1Aのトルクと第2差動入力ギヤ7Bに伝達された第2回転電機1Bのトルクとを、第1出力部材2Aと第2出力部材2Bとに分配する差動歯車機構6を備えている。差動歯車機構6は、第1差動入力ギヤ7Aに駆動連結される第1入力回転要素と、第2差動入力ギヤ7Bに駆動連結される第2入力回転要素と、第1出力部材2Aに駆動連結される第1出力回転要素と、第2出力部材2Bに駆動連結される第2出力回転要素との、4つの回転要素を備えている。そして、これら4つの回転要素は、回転速度の順が、第1入力回転要素、第1出力回転要素、第2出力回転要素、第2入力回転要素の順となっている。
【0028】
なお、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、差動歯車機構6の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、差動歯車機構6の構造によって定まるものであるため一定となる。各回転要素の回転速度の順は、各回転要素の速度線図(共線図ともいう)における配置順に等しい。
【0029】
本実施形態では、差動歯車機構6は、4つの回転要素を備える遊星歯車機構(具体的には、ラビニヨ型の遊星歯車機構)である。具体的には、差動歯車機構6は、第1サンギヤS61と、第2サンギヤS62と、キャリヤC6と、リングギヤR6との、4つの回転要素を備えている。キャリヤC6は、ピニオン軸P63を介して、一体的に回転する第1ピニオンギヤP61及び第2ピニオンギヤP62を回転可能に支持している。第1ピニオンギヤP61は、第2ピニオンギヤP62よりも小径に形成されている。そして、第1ピニオンギヤP61は、第1サンギヤS61に噛み合い、第2ピニオンギヤP62は、第2サンギヤS62に噛み合うと共にリングギヤR6にも噛み合っている。
【0030】
リングギヤR6は、第1差動入力ギヤ7Aに駆動連結される第1入力回転要素である。ここでは、リングギヤR6は、第1差動入力ギヤ7Aと一体的に回転するように連結されている。具体的には、第1差動入力ギヤ7Aは、第1連結部材8Aの外周面に形成されており、リングギヤR6は、第1連結部材8Aと一体的に回転するように連結されている。
【0031】
第2サンギヤS62は、第2差動入力ギヤ7Bに駆動連結される第2入力回転要素である。ここでは、第2サンギヤS62は、第2差動入力ギヤ7Bと一体的に回転するように連結されている。具体的には、第2差動入力ギヤ7Bは、第2連結部材8Bの外周面に形成されており、第2サンギヤS62は、第2連結軸9Bを介して第2連結部材8Bと一体的に回転するように連結されている。
【0032】
キャリヤC6は、第1出力部材2Aに駆動連結される第1出力回転要素である。ここでは、キャリヤC6は、第1出力部材2Aと一体的に回転するように連結されている。第1サンギヤS61は、第2出力部材2Bに駆動連結される第2出力回転要素である。ここでは、第1サンギヤS61は、第2出力部材2Bと一体的に回転するように連結されている。具体的には、第1サンギヤS61は、第1連結軸9Aを介して第2出力部材2Bと一体的に回転するように連結されている。
【0033】
車両用駆動装置100は、ケース3を備えている。図2図4に示すように、本実施形態では、ケース3は、ケース本体部材30と、第1カバー部材31Aと、第2カバー部材31Bと、を備えている。ケース本体部材30、第1カバー部材31A、及び第2カバー部材31Bは、互いに接合されており、本実施形態では、ボルトを用いて互いに接合されている。
【0034】
第1カバー部材31Aは、ケース本体部材30に対して軸方向第1側L1に配置されており、第1接合部J1においてケース本体部材30に接合されている。第1カバー部材31Aは、ケース本体部材30における軸方向第1側L1の開口部を閉じるように、ケース本体部材30に接合されている。第2カバー部材31Bは、ケース本体部材30に対して軸方向第2側L2に配置されており、第2接合部J2においてケース本体部材30に接合されている。第2カバー部材31Bは、ケース本体部材30における軸方向第2側L2の開口部を閉じるように、ケース本体部材30に接合されている。
【0035】
ケース本体部材30と第1カバー部材31Aと第2カバー部材31Bとで囲まれる空間に、第1回転電機1A、第2回転電機1B、第1出力部材2A、第2出力部材2B、及び動力伝達機構Tが収容されている。すなわち、ケース3は、第1回転電機1A、第2回転電機1B、第1出力部材2A、第2出力部材2B、及び動力伝達機構Tを収容する第1収容室70Aを備えている。そして、第1収容室70Aは、ケース本体部材30と第1カバー部材31Aと第2カバー部材31Bとに囲まれて形成されている。本実施形態では、第1収容室70Aには、後述するオイルポンプ20も収容されている。
【0036】
図2に示すように、本実施形態では、ケース3は、支持部44を備えている。支持部44は、例えば、軸方向Lに直交する面に沿う壁状に形成される。支持部44は、ケース本体部材30の一部であっても、ケース本体部材30とは別部材であってもよい。支持部44は、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間に配置され、本実施形態では、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの間の軸方向Lの中央部に配置されている。第1収容室70Aにおける支持部44に対して軸方向第1側L1の部分に、第1回転電機1A、第1カウンタギヤ機構5A、及び第1差動入力ギヤ7Aが収容され、第1収容室70Aにおける支持部44に対して軸方向第2側L2の部分に、第2回転電機1B、第2カウンタギヤ機構5B、及び第2差動入力ギヤ7Bが収容されている。本実施形態では、差動歯車機構6は、第1収容室70Aにおける支持部44に対して軸方向第1側L1の部分に収容されている。
【0037】
図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bを駆動するインバータユニット90を備えている。図2ではインバータユニット90を簡略化して示しているが、インバータユニット90には、直流電力と交流電力との間で電力を変換するインバータ(インバータ回路)と、インバータに付随する部品とが含まれる。インバータは、例えば、複数の素子(スイッチング素子等)をモジュール化したパワーモジュールとされる。インバータに付随する部品は、例えば、図2図4に示す第1端子台91A及び第2端子台91B、インバータを制御する制御装置が実装された制御基板、インバータの直流側の正負両極間電圧を平滑化する平滑コンデンサ等とされる。
【0038】
図5に示すように、第1軸X1は、第2軸X2よりも上方V1且つ幅方向Hの一方側(具体的には、幅方向第1側H1)に配置されている。また、図2に示すように、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとは、軸方向Lに離間して配置されている。そして、図2及び図5に示すように、インバータユニット90は、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間であって、軸方向視(軸方向Lに沿う方向視)で第1回転電機1A及び第2回転電機1Bと重複するように配置されており、更に、インバータユニット90は、第2軸X2よりも上方V1であって、第2軸X2上に配置された部材の少なくとも一部と上下方向視で重複するように配置されている。
【0039】
この車両用駆動装置100では、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとが同じ軸上に軸方向Lに離間して配置されるため、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間であって軸方向視で第1回転電機1A及び第2回転電機1Bと重複する領域がデッドスペースとなりやすい。また、第1軸X1が第2軸X2よりも上方V1且つ幅方向第1側H1に配置されるため、第2軸X2よりも上方V1の領域もデッドスペースとなりやすい。この車両用駆動装置100では、上記のようにインバータユニット90が配置されるため、デッドスペースとなりやすい2つの領域を利用してインバータユニット90を配置することができ、インバータユニット90を配置することによる車両用駆動装置100の大型化を抑制することができる。特に、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間の領域に加えて第2軸X2よりも上方V1の領域もインバータユニット90の配置領域として利用することで、インバータユニット90の上下方向視での配置領域を広く確保することができるため、インバータユニット90の配置領域の上下方向寸法を小さく抑えやすい。よって、車両用駆動装置100の上下方向Vにおける大型化を抑制しつつ、インバータユニット90を車両用駆動装置100における上部に配置することができる。
【0040】
本実施形態では、インバータユニット90は、軸方向視で、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bのそれぞれにおける第1軸X1よりも上方V1に配置される部分と少なくとも重複するように配置されている(図5参照)。また、図2に示すインバータユニット90と第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bのそれぞれとの軸方向Lの位置関係と、図5に示すインバータユニット90と第1差動入力ギヤ7Aとの上下方向Vの位置関係とから明らかなように、本実施形態では、インバータユニット90は、第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bよりも上方V1であって、第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bと上下方向視で重複するように配置されている。すなわち、本実施形態では、上記の「第2軸X2上に配置された部材の少なくとも一部」には、第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bが含まれている。また、本実施形態では、インバータユニット90は、第2軸X2よりも上方V1であって、第2軸X2と上下方向視で重複するように配置されている。
【0041】
本実施形態では、インバータユニット90は、ケース3に収容されている。すなわち、ケース3は、上述した第1収容室70Aに加えて、インバータユニット90を収容する第2収容室70Bを備えている。具体的には、図2図5、及び図8に示すように、ケース3は、ケース本体部材30、第1カバー部材31A、及び第2カバー部材31Bに加えて、第3カバー部材31Cを備えている。第3カバー部材31Cは、ケース本体部材30に対して上方V1に配置されており、ケース本体部材30における上方V1を向く開口部(図4参照)を閉じるように、ケース本体部材30に接合されている。本実施形態では、第3カバー部材31Cは、ボルトを用いてケース本体部材30に接合されている。そして、ケース本体部材30と第3カバー部材31Cとで囲まれた空間に、インバータユニット90が収容されている。すなわち、第2収容室70Bは、ケース本体部材30と第3カバー部材31Cとに囲まれて形成されている。
【0042】
図3及び図4に示すように、ケース本体部材30は、第2収容室70Bの軸方向第1側L1の側壁を構成する第1側壁40Aと、第2収容室70Bの軸方向第2側L2の側壁を構成する第2側壁40Bと、第2収容室70Bの幅方向第1側H1の側壁を構成する第3側壁40Cと、第2収容室70Bの幅方向第2側H2の側壁を構成する第4側壁40Dと、を備えている。第1側壁40Aと第2側壁40Bと第3側壁40Cと第4側壁40Dとは、ケース本体部材30に一体的に形成されている。第1側壁40Aにおける幅方向第2側H2の部分は、後述する第1領域72Aを形成するように、第1側壁40Aにおける幅方向第1側H1の部分よりも軸方向第1側L1に配置されている。また、第2側壁40Bにおける幅方向第2側H2の部分は、後述する第2領域72Bを形成するように、第2側壁40Bにおける幅方向第1側H1の部分よりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0043】
第2収容室70Bは、第1側壁40Aと、第2側壁40Bと、第3側壁40Cと、第4側壁40Dと、後述する第3区画壁61Cと、第3カバー部材31Cとで囲まれて形成されている。このように、本実施形態では、第3区画壁61Cが、第2収容室70Bの底壁を構成している。本実施形態では、第3区画壁61Cにおける幅方向第1側H1の部分は、第3区画壁61Cにおける幅方向第2側H2の部分よりも下方V2に配置されており、第2収容室70Bは、幅方向第1側H1の部分が幅方向第2側H2の部分よりも深く形成されている。また、本実施形態では、第3側壁40C(具体的には、第3側壁40Cにおける下側の部分)は、下方V2に向かうに従って幅方向第2側H2に向かうように傾斜している。
【0044】
本実施形態では、ケース本体部材30に、区画壁形成部60と、第1収容室形成部62Aと、第2収容室形成部62Bとが一体的に形成されている。すなわち、ケース本体部材30は、区画壁形成部60と、第1収容室形成部62Aと、第2収容室形成部62Bと、を備えている。このようなケース本体部材30は、例えば、鋳造による一体成形技術を用いて製造された鋳造物とされる。
【0045】
区画壁形成部60は、第1収容室70Aと第2収容室70Bとを区画する区画壁を形成する部分である。本実施形態では、以下に述べるように、軸方向第1側L1、軸方向第2側L2、及び下側のそれぞれにおいて、第1収容室70Aと第2収容室70Bとが1枚の区画壁によって区画されている。具体的には、図2図4に示すように、第1収容室70Aにおける第2収容室70Bに対して軸方向第1側L1に配置された部分(第1回転電機1Aが収容されている部分)と、第2収容室70Bとが、第1区画壁61Aによって軸方向Lに区画されている。ここでは、第1側壁40Aにおける幅方向Hの一部(具体的には、幅方向Hの中間部分)が第1区画壁61Aを構成している。また、第1収容室70Aにおける第2収容室70Bに対して軸方向第2側L2に配置された部分(第2回転電機1Bが収容されている部分)と、第2収容室70Bとが、第2区画壁61Bによって軸方向Lに区画されている。ここでは、第2側壁40Bにおける幅方向Hの一部(具体的には、幅方向Hの中間部分)が第2区画壁61Bを構成している。また、第1収容室70Aにおける第2収容室70Bに対して下方V2に配置された部分と、第2収容室70Bとが、第3区画壁61Cによって上下方向Vに区画されている。そして、これら3つの区画壁(具体駅には、第1区画壁61A、第2区画壁61B、及び第3区画壁61C)を、区画壁形成部60は形成している。
【0046】
第1収容室形成部62Aは、区画壁形成部60以外の部分であって第1収容室70Aの少なくとも一部を形成する部分である。本実施形態では、第1収容室形成部62Aは、以下に述べるように第1収容室70Aの一部を形成している。図2図5に示すように、ケース3は、軸方向Lに延びる筒状に形成されて第1回転電機1Aを囲む(本実施形態では、更に差動歯車機構6も囲む)周壁部を備えており、第1収容室形成部62Aは、当該周壁部における軸方向第2側L2の部分(具体的には、当該周壁部における第1接合部J1よりも軸方向第2側L2の部分)を形成している。また、ケース3は、軸方向Lに延びる筒状に形成されて第2回転電機1Bを囲む(本実施形態では、更にオイルポンプ20も囲む)周壁部を備えており、第1収容室形成部62Aは、当該周壁部における軸方向第1側L1の部分(具体的には、当該周壁部における第2接合部J2よりも軸方向第1側L1の部分)を形成している。また、ケース3は、軸方向Lに延びる筒状に形成されて第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bを囲む周壁部(後述する周壁部42)を備えており、第1収容室形成部62Aは、周壁部42の一部(具体的には、周壁部42における第3区画壁61Cが構成していない部分)を形成している。
【0047】
第2収容室形成部62Bは、区画壁形成部60以外の部分であって第2収容室70Bの少なくとも一部を形成する部分である。本実施形態では、図2図5に示すように、第2収容室形成部62Bは、第1側壁40Aにおける第1区画壁61Aを構成していない部分(ここでは、第1側壁40Aにおける幅方向Hの両側の部分)、第2側壁40Bにおける第2区画壁61Bを構成していない部分(ここでは、第2側壁40Bにおける幅方向Hの両側の部分)、第3側壁40C、及び第4側壁40Dを形成している。
【0048】
このように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、ケース3を更に備え、ケース3は、第1回転電機1A、第2回転電機1B、第1出力部材2A、第2出力部材2B、及び動力伝達機構Tを収容する第1収容室70Aと、インバータユニット90を収容する第2収容室70Bと、を備えている。そして、ケース3は、第1収容室70Aと第2収容室70Bとを区画する区画壁(本例では、第1区画壁61A、第2区画壁61B、及び第3区画壁61C)を形成する部分である区画壁形成部60と、区画壁形成部60以外の部分であって第1収容室70Aの少なくとも一部を形成する部分(第1収容室形成部62A)と、区画壁形成部60以外の部分であって第2収容室70Bの少なくとも一部を形成する部分(第2収容室形成部62B)とが一体的に形成されたケース本体部材30を備えている。
【0049】
本実施形態の車両用駆動装置100では、区画壁形成部60が形成される部材に、第1収容室70Aの少なくとも一部を形成する部分や第2収容室70Bの少なくとも一部を形成する部分も形成されているため、区画壁形成部60が形成される部材にこれら2つの部分が形成されない場合に比べて、ケース3の部品点数を少なく抑えやすい。ケース3の部品点数を少なく抑えることで、ケース3における接合部を少なく抑えて車両用駆動装置100の小型化を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態の車両用駆動装置100では、区画壁形成部60が形成する1枚の区画壁によって、第1収容室70Aと第2収容室70Bとを区画することができる。第1収容室70Aと第2収容室70Bとが壁厚方向に並ぶ複数枚の区画壁によって区画される場合には、区画壁同士の隙間によって車両用駆動装置100が大型化し得るが、本実施形態の車両用駆動装置100では、第1収容室70Aと第2収容室70Bとを1枚の区画壁によって区画することができるため、車両用駆動装置100の小型化を図りやすい。また、インバータユニット90と回転電機(具体的には、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bのそれぞれ)とを電気的に接続する接続経路を、区画壁に形成された貫通孔を経由するように形成する場合には、当該貫通孔の隙間をシールするシール部材が通常設けられる。第1収容室70Aと第2収容室70Bとが壁厚方向に並ぶ複数枚の区画壁によって区画される場合には、これら複数枚の区画壁のそれぞれに貫通孔を形成する必要があるが、本実施形態の車両用駆動装置100では、貫通孔を1枚の区画壁のみに形成すればよいため、シール部材の数を少なく抑えやすい。
【0051】
本実施形態では、車両用駆動装置100は、ケース3を更に備え、ケース3は、第1回転電機1A、第2回転電機1B、第1出力部材2A、第2出力部材2B、及び動力伝達機構Tを収容する第1収容室70Aと、インバータユニット90を収容する第2収容室70Bと、を備えている。幅方向Hにおける、第2軸X2に対して第1軸X1が配置された側を幅方向第1側H1とし、幅方向第1側H1とは反対側を幅方向第2側H2として、図3に示すように、第2収容室70Bは、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間に挟まれた部分である第1部分71Aと、第1部分71Aよりも幅方向第2側H2の部分である第2部分71Bと、を備えている。そして、本実施形態では、第2部分71Bは、第1部分71Aに比べて軸方向Lの寸法が大きく形成されている。また、本実施形態では、図8に示すように、第2部分71Bの一部は、幅方向視(幅方向Hに沿う方向視)で第1収容室70Aと重複するように配置されている。
【0052】
本実施形態の車両用駆動装置100では、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間に挟まれる第1部分71Aに比べて軸方向Lの寸法の制約を受け難い第2部分71Bについて、上記のように軸方向Lの寸法を大きくして、第2収容室70Bの上下方向視での形成領域を広げることができる。なお、第2部分71Bの一部は、幅方向視で第1収容室70Aと重複するように配置されているため、車両用駆動装置100が上下方向Vに大型化することを抑制しつつ、第2収容室70Bの上下方向視での形成領域を広げることができる。そして、このように第2収容室70Bの上下方向視での形成領域を広げることで、インバータユニット90を収容するために必要となる第2収容室70Bの上下方向Vの寸法を小さく抑えることができる。よって、車両用駆動装置100の上下方向Vにおける大型化を抑制しつつ、インバータユニット90を車両用駆動装置100における上部に配置することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、第2部分71Bにおける軸方向第1側L1の部分(後述する第1領域72A)が、幅方向視で、第1収容室70Aにおける第1回転電機1Aが収容される部分と重複するように配置され、第2部分71Bにおける軸方向第2側L2の部分(後述する第2領域72B)が、幅方向視で、第1収容室70Aにおける第2回転電機1Bが収容される部分と重複するように配置されている。
【0054】
軸方向Lにおける、第2回転電機1Bに対して第1回転電機1Aが配置された側を軸方向第1側L1とし、軸方向第1側L1とは反対側を軸方向第2側L2として、本実施形態では、図3に示すように、第2部分71Bは、第1部分71Aに対して軸方向第1側L1に拡張された領域である第1領域72Aと、第1部分71Aに対して軸方向第2側L2に拡張された領域である第2領域72Bと、を備えている。具体的には、第2部分71Bは、第1部分71Aに対して幅方向第2側H2に拡張された領域である第3領域72Cを備えており、第2部分71Bにおける第3領域72Cよりも軸方向第1側L1の領域が第1領域72Aであり、第2部分71Bにおける第3領域72Cよりも軸方向第2側L2の領域が第2領域72Bである。そして、本実施形態では、インバータユニット90と第1回転電機1Aとを電気的に接続するための第1端子台91Aが、第1領域72Aに配置され、インバータユニット90と第2回転電機1Bとを電気的に接続するための第2端子台91Bが、第2領域72Bに配置されている。
【0055】
上記のように、本実施形態の車両用駆動装置100では、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの位置関係を考慮して、第1回転電機1Aと電気的に接続しやすい軸方向Lの位置に第1端子台91Aを配置し、第2回転電機1Bと電気的に接続しやすい軸方向Lの位置に第2端子台91Bを配置することができる。また、本実施形態の車両用駆動装置100では、第2部分71Bにおける第1部分71Aに対して幅方向第2側H2に拡張された領域である中央領域(第3領域72C)を避けるように、第1端子台91A及び第2端子台91Bを配置することができる。よって、第1部分71Aと第2部分71Bにおける中央領域(第3領域72C)とを含む幅方向Hに連続した領域に、インバータユニット90における第1端子台91A及び第2端子台91B以外の構成要素を配置することができ、インバータユニット90の各構成要素を第2収容室70B内に適切に配置しやすい。
【0056】
図2図4に示すように、第1端子台91A及び第2端子台91Bのそれぞれは、インバータユニット90が備えるインバータ(インバータ回路)に電気的に接続されるインバータ側端子92を備えている。インバータと第1端子台91A及び第2端子台91Bのそれぞれとは、第2収容室70Bの内部で電気的に接続される。また、図2に示すように、第1端子台91A及び第2端子台91Bのそれぞれは、回転電機に電気的に接続される回転電機側端子93を備えている。第1端子台91Aが備えるインバータ側端子92と回転電機側端子93とは電気的に接続され、第2端子台91Bが備えるインバータ側端子92と回転電機側端子93とは電気的に接続されている。なお、図2では第2端子台91Bのみを示しているが、第1端子台91Aは、第2端子台91Bが備える回転電機側端子93と同様の回転電機側端子93を備えている。第1端子台91Aが備える回転電機側端子93と第1回転電機1A(例えば、第1ステータ11Aが備えるコイルに接続されたバスバー)とは、第1収容室70Aの内部で電気的に接続され、第2端子台91Bが備える回転電機側端子93と第2回転電機1B(例えば、第2ステータ11Bが備えるコイルに接続されたバスバー)とは、第1収容室70Aの内部で電気的に接続される。
【0057】
第1端子台91A及び第2端子台91Bは、第1収容室70Aと第2収容室70Bとを区画する区画壁(具体的には、第3区画壁61C)を貫通するように配置されている。すなわち、インバータユニット90と第1回転電機1Aとを電気的に接続する接続経路や、インバータユニット90と第2回転電機1Bとを電気的に接続する接続経路は、第3区画壁61Cに形成された貫通孔(図2参照)を経由するように形成されている。詳細は省略するが、第1端子台91Aが挿通される貫通孔には、当該貫通孔の隙間をシールするシール部材が設けられ、第2端子台91Bが挿通される貫通孔には、当該貫通孔の隙間をシールするシール部材が設けられている。
【0058】
図2図5に示すように、ケース3は、第1回転電機1Aを囲む壁である第1包囲壁41Aと、第2回転電機1Bを囲む壁である第2包囲壁41Bと、を備えている。本実施形態では、第1包囲壁41Aは、ケース本体部材30における軸方向第1側L1の部分と第1カバー部材31Aとによって形成され、第2包囲壁41Bは、ケース本体部材30における軸方向第2側L2の部分と第2カバー部材31Bとによって形成されている。
【0059】
第1包囲壁41Aは、第1周壁部と、第1壁部と、第2壁部と、を備えている。第1周壁部は、軸方向Lに延びる筒状に形成されて第1回転電機1Aを囲む(本実施形態では、更に差動歯車機構6も囲む)壁部である。本実施形態では、第1周壁部における軸方向第1側L1の部分は第1カバー部材31Aによって形成され、第1周壁部における軸方向第2側L2の部分はケース本体部材30によって形成されている。第1壁部は、第1周壁部における軸方向第1側L1の開口部を閉じる壁部である。本実施形態では、第1壁部は、第1カバー部材31Aによって形成されている。第1壁部(第1カバー部材31A)には貫通孔が形成されており、この貫通孔に第1出力部材2Aが配置されている。第2壁部は、第1周壁部における軸方向第2側L2の開口部の一部を閉じる壁部であり、第1回転電機1Aに対して軸方向第2側L2において第1回転電機1Aと軸方向Lに対向するように配置されている。本実施形態では、第2壁部は、ケース本体部材30(具体的には、ケース本体部材30における第1区画壁61Aを含む部分)によって形成されている。
【0060】
第2包囲壁41Bは、第2周壁部と、第3壁部と、第4壁部と、を備えている。第2周壁部は、軸方向Lに延びる筒状に形成されて第2回転電機1Bを囲む(本実施形態では、更にオイルポンプ20も囲む)壁部である。本実施形態では、第2周壁部における軸方向第2側L2の部分は第2カバー部材31Bによって形成され、第2周壁部における軸方向第1側L1の部分はケース本体部材30によって形成されている。第3壁部は、第2周壁部における軸方向第2側L2の開口部を閉じる壁部である。本実施形態では、第3壁部は、第2カバー部材31Bによって形成されている。第3壁部(第2カバー部材31B)には貫通孔が形成されており、この貫通孔に第2出力部材2Bが配置されている。第4壁部は、第2周壁部における軸方向第1側L1の開口部の一部を閉じる壁部であり、第2回転電機1Bに対して軸方向第1側L1において第2回転電機1Bと軸方向Lに対向するように配置されている。本実施形態では、第4壁部は、ケース本体部材30(具体的には、ケース本体部材30における第2区画壁61Bを含む部分)によって形成されている。
【0061】
第1包囲壁41Aと第2包囲壁41Bとは軸方向Lに離間して配置されている。そのため、ケース3(具体的には、ケース本体部材30)における第1包囲壁41Aと第2包囲壁41Bとの軸方向Lの間には凹部(第2収容室70Bが形成されている部分)が形成されるが、本実施形態では、ケース3における第2収容室70Bの少なくとも一部を形成する部分を、当該凹部の剛性を高める補強リブとして機能させている。具体的には、第2収容室70Bの第3側壁40C及び第4側壁40Dは、第1包囲壁41Aと第2包囲壁41Bとを軸方向Lに連結するように形成されており、これらの第3側壁40C及び第4側壁40D(特に、第3側壁40C)が補強リブとして機能している。
【0062】
このように、本実施形態では、ケース3は、第1回転電機1Aを囲む壁である第1包囲壁41Aと、第2回転電機1Bを囲む壁である第2包囲壁41Bと、第2収容室70Bの少なくとも一部を形成する部分であって第1包囲壁41Aと第2包囲壁41Bとを軸方向Lに連結するように形成された連結壁(本例では、第3側壁40C及び第4側壁40D)と、を備えている。
【0063】
本実施形態の車両用駆動装置100では、第2収容室70Bの少なくとも一部を形成する連結壁(本例では、第3側壁40C及び第4側壁40D)を、ケース3における第1包囲壁41Aと第2包囲壁41Bとの軸方向Lの間に形成される凹部の剛性を高める補強リブとして機能させることができる。このように第2収容室70Bを形成するための連結壁を利用してケース3を補強することができるため、ケース3の剛性を適切に確保しやすい。
【0064】
図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bに油を供給するオイルポンプ20と、油を冷却するオイルクーラ22と、を備えている。オイルポンプ20としては、例えば、電動モータで駆動される電動オイルポンプを用いることができる。また、ポンプの形式については特に限定されず、ギヤポンプやベーンポンプ、スクリューポンプ等を用いることができる。本実施形態では、オイルポンプ20は、第1収容室70Aに収容されている。なお、オイルポンプ20が第1収容室70Aに収容されない構成(例えば、ケース3の外部に取り付けられる構成)とすることもできる。
【0065】
図6に示すように、オイルポンプ20(具体的には、オイルポンプ20の吸入口)は、油に含まれる異物を除去する濾過器であるストレーナ21に、第1油路24Aを介して接続されており、オイルポンプ20は、ケース3の内部に貯留されている油を、ストレーナ21を介して吸引する。オイルポンプ20(具体的には、オイルポンプ20の吐出口)は、第2油路24Bを介してオイルクーラ22に接続されており、オイルポンプ20から吐出された油は、オイルクーラ22を通った後、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bに供給される。第1油路24Aや第2油路24Bは、例えば、オイルパイプを用いて形成される。
【0066】
オイルクーラ22は、油と冷媒(例えば、冷却水、空気等)との間での熱交換によって、油を冷却するように構成されている。本実施形態では、オイルクーラ22は、冷媒として冷却水を用いる水冷式のオイルクーラであり、図2図4に示すように、オイルクーラ22には、冷却水をオイルクーラ22に導入するための配管部材23と、冷却水をオイルクーラ22から排出するための配管部材23とが接続されている。
【0067】
ここで、第2軸X2上に配置され且つ第1伝達系T1を構成するギヤのうち、径方向R(第2軸X2を基準とする径方向)の最も外側R2に配置されたギヤ(言い換えれば、最も大径のギヤ)を「第1外周ギヤ」とし、第2軸X2上に配置され且つ第2伝達系T2を構成するギヤのうち、径方向Rの最も外側R2に配置されたギヤを「第2外周ギヤ」とする。図1及び図2に示すように、本実施形態では、第1差動入力ギヤ7Aが第1外周ギヤであり、第2差動入力ギヤ7Bが第2外周ギヤである。第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとは、軸方向Lに離間して配置されている。そして、図2図5、及び図7に示すように、オイルクーラ22は、第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間であって、軸方向視で第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの少なくとも一方と重複するように配置されている。
【0068】
この車両用駆動装置100では、第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとが軸方向Lに離間して配置されるため、第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間であって軸方向視で第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの少なくとも一方と重複する領域がデッドスペースとなりやすい。この車両用駆動装置100では、上記のようにオイルクーラ22が配置されるため、デッドスペースとなりやすい領域を利用してオイルクーラ22を配置することができ、オイルクーラ22を配置することによる車両用駆動装置100の大型化を抑制することができる。
【0069】
本実施形態では、図5に示すように、オイルクーラ22は、第2軸X2よりも幅方向第2側H2且つ第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間であって、軸方向視で第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの少なくとも一方と重複するように配置されている。また、本実施形態では、第1差動入力ギヤ7Aは、第2差動入力ギヤ7Bと同径に形成されており、オイルクーラ22は、軸方向視で第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの双方と重複するように配置されている。
【0070】
図2図4に示すように、ケース3は、第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bに対して径方向Rの外側R2を覆う周壁部42を備えている。周壁部42は、軸方向Lに連続した壁部である。そして、周壁部42は、第1差動入力ギヤ7Aに対して径方向Rの外側R2を覆う部分と、第2差動入力ギヤ7Bに対して径方向Rの外側R2を覆う部分と、軸方向Lでこれら2つの部分の間に配置された部分(以下、「対象部分」という)と、を備えている。本実施形態では、周壁部42は、ケース本体部材30(具体的には、第1収容室形成部62Aと第3区画壁61C)によって形成されている。周壁部42における第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間に対応する部分に、径方向Rの内側R1に窪む凹部43が形成されている。すなわち、周壁部42の一部であって、軸方向Lで第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの間の部分(言い換えれば、上記の対象部分)には、径方向Rの内側R1に窪む凹部43が形成されている。本実施形態では、凹部43は、周壁部42における幅方向第2側H2の部分に、幅方向第1側H1に窪むように形成されている。そして、オイルクーラ22の少なくとも一部が、凹部43に収まるように配置されている。すなわち、オイルクーラ22は、オイルクーラ22の少なくとも一部が凹部43に収まるように、ケース3の外部に取り付けられている。ここで、「凹部43に収まる」とは、軸方向Lのいずれの側からみた場合であっても、軸方向視で周壁部42に覆われることを意味する。本実施形態では、オイルクーラ22の本体部(油と冷媒との間での熱交換が行われる部分)の全体が、凹部43に収まるように配置されている。
【0071】
このように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1回転電機1A、第2回転電機1B、第1出力部材2A、第2出力部材2B、及び動力伝達機構Tを収容するケース3を更に備えている。ケース3は、第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bに対して径方向Rの外側R2を覆う周壁部42を備え、周壁部42の一部であって、軸方向Lで第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの間の部分には、径方向Rの内側R1に窪む凹部43が形成されている。そして、オイルクーラ22の少なくとも一部が、凹部43に収まるように配置されている。
【0072】
オイルクーラ22はケース3の外部に取り付けられることが多い。この場合、車両用駆動装置100の形状が、オイルクーラ22が取り付けられた部分がその周辺の部分に対して外方に突出した形状となりやすく、オイルクーラ22が取り付けられた側に車両用駆動装置100が大型化し得る。本実施形態の車両用駆動装置100では、第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間のデッドスペースとなりやすい領域を利用してケース3の周壁部42に凹部43を形成し、オイルクーラ22の少なくとも一部が当該凹部43に収まるように、オイルクーラ22を配置することができる。よって、車両用駆動装置100の大型化を抑制しつつ、オイルクーラ22をケース3の外部に取り付けることができる。
【0073】
図2に示すように、本実施形態では、第1回転電機1Aの軸方向Lにおける配置領域である第1配置領域A1と、差動歯車機構6の軸方向Lにおける配置領域である第3配置領域A3とが重複している。図2では、差動歯車機構6が備えるキャリヤC6の軸方向Lにおける配置領域(キャリヤC6の軸方向第1側L1の端部と軸方向第2側L2の端部との間の軸方向Lの領域)を、第3配置領域A3としている。また、本実施形態では、第2回転電機1Bの軸方向Lにおける配置領域である第2配置領域A2と、オイルポンプ20の軸方向Lにおける配置領域である第4配置領域A4とが重複している。そして、本実施形態では、オイルクーラ22は、軸方向視で差動歯車機構6及びオイルポンプ20の少なくとも一方と重複するように配置されている。本例では、図5に示すように、オイルクーラ22は、軸方向視で差動歯車機構6と重複し且つオイルポンプ20と重複しないように配置されているが(図5ではオイルポンプ20は省略)、オイルクーラ22が軸方向視でオイルポンプ20と重複し且つ差動歯車機構6と重複しないように配置される構成や、オイルクーラ22が軸方向視で差動歯車機構6及びオイルポンプ20の双方と重複するように配置される構成とすることもできる。
【0074】
このように、本実施形態では、第1駆動力源(第1伝達系T1によって伝達されるトルクを出力する駆動力源)は、第1ロータ12Aを備えた第1回転電機1Aであり、第2駆動力源(第2伝達系T2によって伝達されるトルクを出力する駆動力源)は、第2ロータ12Bを備えた第2回転電機1Bである。第1伝達系T1は、第1ロータ12Aと一体的に回転するように連結された第1入力ギヤ4Aと、第1ギヤに噛み合う第3ギヤ及び当該第3ギヤと一体的に回転する第4ギヤを備えた第1カウンタギヤ機構5Aと、を含み、第2伝達系T2は、第2ロータ12Bと一体的に回転するように連結された第2入力ギヤ4Bと、第2ギヤに噛み合う第5ギヤ及び当該第5ギヤと一体的に回転する第6ギヤを備えた第2カウンタギヤ機構5Bと、を含んでいる。第1差動入力ギヤ7Aは、第1カウンタ出力ギヤ52Aに噛み合うギヤであり、第2差動入力ギヤ7Bは、第2カウンタ出力ギヤ52Bに噛み合うギヤである。動力伝達機構Tは、第1差動入力ギヤ7Aに伝達された第1回転電機1Aのトルクと第2差動入力ギヤ7Bに伝達された第2回転電機1Bのトルクとを、第1出力部材2Aと第2出力部材2Bとに分配する差動歯車機構6を備えている。第1回転電機1Aと差動歯車機構6との軸方向Lにおける配置領域が重複し、第2回転電機1Bとオイルポンプ20との軸方向Lにおける配置領域が重複している。そして、オイルクーラ22は、軸方向視で差動歯車機構6及びオイルポンプ20の少なくとも一方と重複するように配置されている。
【0075】
上記のように第1伝達系T1及び第2伝達系T2が構成される場合、回転電機から第1出力部材2A及び第2出力部材2Bまでの減速比を大きく確保しようとすると、第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの径が大きくなりやすい。本実施形態の車両用駆動装置100では、上述したように、第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間のデッドスペースとなりやすい領域を利用してオイルクーラ22を配置することができる。そのため、第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの径が大きい場合であっても、オイルクーラ22を配置することによる車両用駆動装置100の更なる大型化を抑制することができる。
【0076】
更に、本実施形態の車両用駆動装置100では、第1回転電機1Aと差動歯車機構6との軸方向Lにおける配置領域が重複し、第2回転電機1Bとオイルポンプ20との軸方向Lにおける配置領域が重複している。このように差動歯車機構6とオイルポンプ20とを軸方向Lの両側に分けて配置することで、車両用駆動装置100における軸方向Lの一方側が他方側に比べて大型化することを抑制でき、車両用駆動装置100の形状を、車両への搭載性が良い形状としやすい。また、本実施形態の車両用駆動装置100では、オイルクーラ22が、軸方向視で差動歯車機構6及びオイルポンプ20の少なくとも一方と重複するように配置されるため、車両用駆動装置100の軸方向視での寸法を小さく抑えやすい。
【0077】
図6に示すように、本実施形態では、オイルポンプ20とオイルクーラ22とを結ぶ油路である第2油路24Bが、第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間であって、軸方向視で第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの少なくとも一方(図6に示す例では、双方)と重複する領域を通るように配置されている。
【0078】
本実施形態の車両用駆動装置100では、オイルポンプ20とオイルクーラ22とを結ぶ油路である第2油路24Bが上記のように配置されるため、オイルポンプ20とオイルクーラ22とを結ぶ油路についても、第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間のデッドスペースとなりやすい領域を利用して配置することができる。そのため、車両用駆動装置100の小型化を図りやすい。
【0079】
図6に示すように、本実施形態では、第2油路24Bは、第2軸X2よりも下方V2且つ第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間であって、軸方向視で第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの少なくとも一方と重複する領域を通るように配置されている。一方、図7に示すように、本実施形態では、以下に述べる第3油路24Cは、第2軸X2よりも上方V1且つ第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間であって、軸方向視で第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの少なくとも一方と重複する領域を通るように配置されている。
【0080】
また、図7に示すように、本実施形態では、オイルクーラ22と第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの双方とを結ぶ油路である第3油路24Cが、第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間であって、軸方向視で第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの少なくとも一方(図7に示す例では、双方)と重複する領域を通るように配置されている。
【0081】
本実施形態の車両用駆動装置100では、オイルクーラ22と第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの双方とを結ぶ油路である第3油路24Cが上記のように配置されるため、オイルクーラ22と第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの双方とを結ぶ油路についても、第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間のデッドスペースとなりやすい領域を利用して配置することができる。そのため、車両用駆動装置100の小型化を図りやすい。また、第3油路24Cを上記のように配置することで、オイルクーラ22と第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの双方とを結ぶ油路を、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間から(例えば、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの間の軸方向Lの中央部から)軸方向Lの両側に分岐して、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bのそれぞれに到達するように形成することができる。そのため、オイルクーラ22と第1回転電機1Aとを結ぶ油路の長さと、オイルクーラ22と第2回転電機1Bとを結ぶ油路の長さとを同じに近づけやすく、これら2つの油路における圧力損失を均等に近づけやすい。例えば、これら2つの油路の長さを同程度に短く抑えることで、これら2つの油路における圧力損失を同程度に低減することができる。
【0082】
以下、本実施形態の車両用駆動装置100における第3油路24Cの構成について具体的に説明する。第3油路24Cは、以下に述べる共通油路25、第1分岐油路26A、第2分岐油路26B、第3分岐油路26C、第1冷却油路27A、第2冷却油路27B、第3冷却油路27C、第1潤滑油路28A、及び第2潤滑油路28Bを備えている。第3油路24Cが備えるこれらの各油路は、例えば、オイルパイプを用いて形成され、或いは、ケース3の壁部に形成される。
【0083】
図7に示すように、共通油路25における上流側の端部は、オイルクーラ22に接続されている。共通油路25は、第1差動入力ギヤ7Aと第2差動入力ギヤ7Bとの軸方向Lの間であって、軸方向視で第1差動入力ギヤ7A及び第2差動入力ギヤ7Bの少なくとも一方(図7に示す例では、双方)と重複する領域を通るように配置されている。共通油路25は、例えば、軸方向Lにおいて、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの間の軸方向Lの中央部に配置される。
【0084】
共通油路25における下流側の部分には、第1分岐油路26Aと第2分岐油路26Bと第3分岐油路26Cとが並列に接続されており、オイルクーラ22から共通油路25に排出された油は、共通油路25を通って、第1分岐油路26A、第2分岐油路26B、及び第3分岐油路26Cの夫々に供給される。第1分岐油路26Aは、共通油路25との接続部から軸方向第1側L1に延びるように形成され、第2分岐油路26Bは、共通油路25との接続部から軸方向第2側L2に延びるように形成され、第3分岐油路26Cは、共通油路25との接続部から幅方向第1側H1に延びるように形成されている。よって、第3油路24Cは、共通油路25から軸方向Lの両側及び幅方向第1側H1に分岐するように形成されている。
【0085】
共通油路25から第1分岐油路26Aに供給された油は、第1回転電機1Aに供給される。具体的には、第1分岐油路26Aにおける下流側の部分には、第1冷却油路27Aと第1潤滑油路28Aとが並列接続されており、第1分岐油路26Aの油は、第1冷却油路27A及び第1潤滑油路28Aのそれぞれに供給される。そして、第1冷却油路27Aの油は第1回転電機1Aに供給されて、第1回転電機1Aが当該油によって冷却される。また、第1潤滑油路28Aの油は第1ロータ軸13Aを支持する軸受等の潤滑必要部位に供給されて、潤滑必要部位が当該油によって潤滑される。
【0086】
図5に示すように、本実施形態では、第1回転電機1Aの上方V1に、第1回転電機1Aに油を供給する油供給部97が設けられている。油供給部97は、第1冷却油路27Aから供給された油を第1回転電機1Aに供給する。図5に示す例では、油供給部97は、軸方向Lに沿って延びる供給管であり、供給管の内部の油を供給管に形成された孔部(図示せず)から第1回転電機1A(具体的には、第1ステータ11A)に供給するように構成されている。このように、第1冷却油路27Aの油は、油供給部97を介して第1回転電機1Aに供給される。図5に示す例では、2つの油供給部97が、第1軸X1を挟んだ幅方向Hの両側に設けられており、これに対応して、2つの第1冷却油路27Aが第1分岐油路26Aに接続されている(図7参照)。
【0087】
共通油路25から第2分岐油路26Bに供給された油は、第2回転電機1Bに供給される。具体的には、第2分岐油路26Bにおける下流側の部分には、第2冷却油路27Bと第2潤滑油路28Bとが並列接続されており、第2分岐油路26Bの油は、第2冷却油路27B及び第2潤滑油路28Bのそれぞれに供給される。そして、第2冷却油路27Bの油は第2回転電機1Bに供給されて、第2回転電機1Bが当該油によって冷却される。また、第2潤滑油路28Bの油は第2ロータ軸13Bを支持する軸受等の潤滑必要部位に供給されて、潤滑必要部位が当該油によって潤滑される。詳細は省略するが、本実施形態では、図5に示す油供給部97と同様の油供給部が、第2回転電機1Bの上方V1に設けられており、第2冷却油路27Bの油は、当該油供給部を介して第2回転電機1Bに供給される。
【0088】
共通油路25から第3分岐油路26Cに供給された油は、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの双方に供給される。具体的には、図2に示すように、第1軸X1上における第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間(本例では、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの間の軸方向Lの中央部)に、第3分岐油路26Cから油が供給される第3冷却油路27Cが配置されている。図2に示す例では、第3分岐油路26Cにおける第3冷却油路27Cとの接続部分は、支持部44に形成されている。第3冷却油路27Cの油は、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bに供給されて、第1回転電機1A及び第2回転電機1Bが当該油によって冷却される。
【0089】
第3冷却油路27Cの軸方向第1側L1の端部は、中空の第1ロータ軸13Aの内部に連通し、第3冷却油路27Cの軸方向第2側L2の端部は、中空の第2ロータ軸13Bの内部に連通している。よって、第3分岐油路26Cから第3冷却油路27Cに供給された油は、軸方向Lの両側に分岐して第1ロータ軸13Aの内部と第2ロータ軸13Bの内部とに供給される。第3冷却油路27Cから第1ロータ軸13Aの内部に供給された油は、第1回転電機1Aに供給されて、第1回転電機1Aが当該油によって冷却される。例えば、第1ロータ軸13Aの内部の油と第1ロータ軸13Aとの間の熱交換により、第1ロータ軸13Aに固定された第1ロータ12Aが冷却される。また、例えば、第1ロータ軸13Aに形成された孔部から排出された油が、第1ステータ11Aが備えるコイルエンド部15に供給されて当該コイルエンド部15が冷却される。第3冷却油路27Cから第2ロータ軸13Bの内部に供給された油は、第2回転電機1Bに供給されて、第2回転電機1Bが当該油によって冷却される。例えば、第2ロータ軸13Bの内部の油と第2ロータ軸13Bとの間の熱交換により、第2ロータ軸13Bに固定された第2ロータ12Bが冷却される。また、例えば、第2ロータ軸13Bに形成された孔部から排出された油が、第2ステータ11Bが備えるコイルエンド部15に供給されて当該コイルエンド部15が冷却される。
【0090】
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動装置のその他の実施形態について説明する。
【0091】
(1)上記の実施形態では、第1端子台91Aが第1領域72Aに配置され、第2端子台91Bが第2領域72Bに配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1端子台91A及び第2端子台91Bの一方又は双方が、第2部分71Bにおける第3領域72Cに配置される構成や、第1端子台91A及び第2端子台91Bの一方又は双方が、第1部分71Aに配置される構成とすることもできる。
【0092】
(2)上記の実施形態では、第2部分71Bが、第1部分71Aに比べて軸方向Lの寸法が大きく形成され、第2部分71Bの一部が、幅方向視で第1収容室70Aと重複するように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2部分71Bの軸方向Lの寸法が第1部分71Aの軸方向Lの寸法と等しく、第2部分71Bが、幅方向視で第1収容室70Aと重複する部分を備えない構成とすることもできる。すなわち、第2部分71Bが、第1領域72A及び第2領域72Bを備えない構成とすることもできる。
【0093】
(3)上記の実施形態では、ケース本体部材30に、区画壁形成部60と、第1収容室形成部62Aと、第2収容室形成部62Bとが一体的に形成される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1収容室形成部62A及び第2収容室形成部62Bの一方又は双方が、区画壁形成部60が形成される部材(ケース本体部材30)に一体的に形成されない構成とすることもできる。
【0094】
(4)上記の実施形態では、インバータユニット90がケース3に収容される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、ケース3とは別のケースに収容されたインバータユニット90が、ケース3の外部に取り付けられる構成とすることもできる。すなわち、ケース3が第2収容室70Bを備えない構成とすることもできる。
【0095】
(5)上記の実施形態では、周壁部42の一部であって、軸方向Lで第1外周ギヤ(上記の実施形態では、第1差動入力ギヤ7A)と第2外周ギヤ(上記の実施径形態では、第2差動入力ギヤ7B)との間の部分に凹部43が形成され、オイルクーラ22の少なくとも一部が凹部43に収まるように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はこのようにオイルクーラ22がケース3の外部に取り付けられる構成に限定されず、オイルクーラ22が第1収容室70Aに収容される構成とすることもできる。
【0096】
(6)上記の実施形態では、第1回転電機1Aと差動歯車機構6との軸方向Lにおける配置領域が重複し、第2回転電機1Bとオイルポンプ20との軸方向Lにおける配置領域が重複する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1回転電機1Aと差動歯車機構6との軸方向Lにおける配置領域が重複しない構成、又は、第2回転電機1Bとオイルポンプ20との軸方向Lにおける配置領域が重複しない構成、或いは、これらを組み合わせ構成とすることもできる。また、第1回転電機1Aとオイルポンプ20との軸方向Lにおける配置領域が重複し、第2回転電機1Bと差動歯車機構6との軸方向Lにおける配置領域が重複する構成とすることもできる。
【0097】
(7)上記の実施形態では、オイルクーラ22が、軸方向視で差動歯車機構6及びオイルポンプ20の少なくとも一方と重複するように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、オイルクーラ22が軸方向視で差動歯車機構6及びオイルポンプ20のいずれとも重複しないように配置される構成とすることもできる。
【0098】
(8)上記の実施形態では、オイルポンプ20とオイルクーラ22とを結ぶ油路である第2油路24Bが、第1外周ギヤ(上記の実施形態では、第1差動入力ギヤ7A)と第2外周ギヤ(上記の実施形態では、第2差動入力ギヤ7B)との軸方向Lの間であって、軸方向視で第1外周ギヤ及び第2外周ギヤの少なくとも一方と重複する領域を通るように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2油路24Bが、上記の領域を通らないように配置される構成とすることもできる。
【0099】
(9)上記の実施形態では、オイルクーラ22と第1回転電機1A及び第2回転電機1Bの双方とを結ぶ油路である第3油路24Cが、第1外周ギヤ(上記の実施形態では、第1差動入力ギヤ7A)と第2外周ギヤ(上記の実施形態では、第2差動入力ギヤ7B)との軸方向Lの間であって、軸方向視で第1外周ギヤ及び第2外周ギヤの少なくとも一方と重複する領域を通るように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第3油路24Cが、上記の領域を通らないように配置される構成とすることもできる。
【0100】
(10)上記の実施形態では、第1外周ギヤ(上記の実施形態では、第1差動入力ギヤ7A)が第2外周ギヤ(上記の実施形態では、第2差動入力ギヤ7B)と同径に形成されている構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1外周ギヤが第2外周ギヤよりも大径に又は小径に形成される構成とすることもできる。この場合、上記の実施形態とは異なり、オイルクーラ22が、第1外周ギヤと第2外周ギヤとの軸方向Lの間であって、軸方向視で第1外周ギヤ及び第2外周ギヤの一方のみと重複するように配置される構成としてもよい。また、この場合、上記の実施形態とは異なり、第2油路24B及び第3油路24Cの一方又は双方が、第1外周ギヤと第2外周ギヤとの軸方向Lの間であって、軸方向視で第1外周ギヤ及び第2外周ギヤの一方のみと重複する領域を通るように配置される構成としてもよい。
【0101】
(11)上記の実施形態では、差動歯車機構6が4つの回転要素を備える遊星歯車機構である構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、差動歯車機構6を、全体として4つの回転要素を備えて一体的に差動動作を行うように2つの遊星歯車機構を連結した機構とすることもできる。
【0102】
(12)上記の実施形態では、第1伝達系T1が第1カウンタギヤ機構5Aを含み、第2伝達系T2が第2カウンタギヤ機構5Bを含む構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1伝達系T1が第1カウンタギヤ機構5Aを含まず、第2伝達系T2が第2カウンタギヤ機構5Bを含まない構成とすることもできる。例えば、第1カウンタギヤ機構5Aに代えて、第1入力ギヤ4A及び第1差動入力ギヤ7Aの双方に噛み合うアイドラギヤが設けられ、第2カウンタギヤ機構5Bに代えて、第2入力ギヤ4B及び第2差動入力ギヤ7Bの双方に噛み合うアイドラギヤが設けられる構成とすることができる。或いは、第1差動入力ギヤ7Aが第1入力ギヤ4Aに噛み合い、第2差動入力ギヤ7Bが第2入力ギヤ4Bに噛み合う構成とすることもできる。
【0103】
(13)上記の実施形態では、第1伝達系T1が、第1回転電機1Aのトルクを第1出力部材2A及び第2出力部材2Bの双方に伝達し、第2伝達系T2が、第2回転電機1Bのトルクを第1出力部材2A及び第2出力部材2Bの双方に伝達する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1伝達系T1が、第1回転電機1Aのトルクを第1出力部材2Aのみに伝達し、第2伝達系T2が、第2回転電機1Bのトルクを第2出力部材2Bのみに伝達する構成とすることもできる。すなわち、動力伝達機構Tが差動歯車機構6を備えない構成とすることもできる。このような構成の一例を図9に示す。
【0104】
図9に示す例では、第1伝達系T1は、第2軸X2上に配置されて第1回転電機1Aの回転が入力されるギヤとして、第1出力部材2Aと一体的に回転する第1出力ギヤ6Aを含み、第2伝達系T2は、第2軸X2上に配置されて第2回転電機1Bの回転が入力されるギヤとして、第2出力部材2Bと一体的に回転する第2出力ギヤ6Bを含んでいる。第1出力ギヤ6Aが第1カウンタ出力ギヤ52Aに噛み合い、第2出力ギヤ6Bが第2カウンタ出力ギヤ52Bに噛み合っている。そして、図9に示す例では、第1出力ギヤ6Aが第1外周ギヤであり、第2出力ギヤ6Bが第2外周ギヤである。
【0105】
(14)上記の実施形態では、インバータユニット90が、第1回転電機1Aと第2回転電機1Bとの軸方向Lの間であって、軸方向視で第1回転電機1A及び第2回転電機1Bと重複するように配置され、更に、インバータユニット90が、第2軸X2よりも上方V1であって、第2軸X2上に配置された部材の少なくとも一部と上下方向視で重複するように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、インバータユニット90が軸方向視で第1回転電機1A及び第2回転電機1Bのいずれとも重複しないように配置される構成、又は、インバータユニット90が第2軸X2上に配置された部材のいずれとも上下方向視で重複しないように配置される構成、或いは、これらを組み合わせた構成とすることもできる。
【0106】
(15)上記の実施形態では、第1駆動力源(第1伝達系T1によって伝達されるトルクを出力する駆動力源)が、第1ロータ12Aを備えた第1回転電機1Aであり、第2駆動力源(第2伝達系T2によって伝達されるトルクを出力する駆動力源)が、第2ロータ12Bを備えた第2回転電機1Bである構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1駆動力源及び第2駆動力源の少なくとも一方が、回転電機以外の駆動力源(例えば、内燃機関)であってもよい。第1駆動力源及び第2駆動力源の双方が回転電機以外の駆動力源である場合、車両用駆動装置100がインバータユニット90を備えない構成としてもよい。
【0107】
(16)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0108】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置の概要について説明する。
【0109】
第1駆動力源(1A)と、第2駆動力源(1B)と、第1車輪(W1)に駆動連結される第1出力部材(2A)と、第2車輪(W2)に駆動連結される第2出力部材(2B)と、動力伝達機構(T)と、前記第1駆動力源(1A)及び前記第2駆動力源(1B)に油を供給するオイルポンプ(20)と、前記油を冷却するオイルクーラ(22)と、を備えた車両用駆動装置(100)であって、前記動力伝達機構(T)は、前記第1駆動力源(1A)のトルクを少なくとも前記第1出力部材(2A)に伝達する第1伝達系(T1)と、前記第2駆動力源(1B)のトルクを少なくとも前記第2出力部材(2B)に伝達する第2伝達系(T2)と、を備え、前記第1駆動力源(1A)及び前記第2駆動力源(1B)が、第1軸(X1)上に配置され、前記第1出力部材(2A)及び前記第2出力部材(2B)が、前記第1軸(X1)とは異なる第2軸(X2)上に配置され、前記第1軸(X1)及び前記第2軸(X2)に平行な方向を軸方向(L)とし、前記第2軸(X2)上に配置され且つ前記第1伝達系(T1)を構成するギヤのうち、前記第2軸(X2)を基準とする径方向(R)の最も外側(R2)に配置されたギヤを第1外周ギヤ(6A,7A)とし、前記第2軸(X2)上に配置され且つ前記第2伝達系(T2)を構成するギヤのうち、前記径方向(R)の最も外側(R2)に配置されたギヤを第2外周ギヤ(6B,7B)として、前記第1外周ギヤ(6A,7A)と前記第2外周ギヤ(6B,7B)とが、前記軸方向(L)に離間して配置され、前記オイルクーラ(22)は、前記第1外周ギヤ(6A,7A)と前記第2外周ギヤ(6B,7B)との前記軸方向(L)の間であって、前記軸方向(L)に沿う軸方向視で前記第1外周ギヤ(6A,7A)及び前記第2外周ギヤ(6B,7B)の少なくとも一方と重複するように配置されている。
【0110】
上記のように、第2軸(X2)上に配置され且つ第1伝達系(T1)を構成するギヤのうちの径方向(R)の最も外側(R2)に配置されたギヤである第1外周ギヤ(6A,7A)と、第2軸(X2)上に配置され且つ第2伝達系(T2)を構成するギヤのうちの径方向(R)の最も外側(R2)に配置されたギヤである第2外周ギヤ(6B,7B)とが、軸方向(L)に離間して配置される場合、第1外周ギヤ(6A,7A)と第2外周ギヤ(6B,7B)との軸方向(L)の間であって軸方向視で第1外周ギヤ(6A,7A)及び第2外周ギヤ(6B,7B)の少なくとも一方と重複する領域がデッドスペースとなりやすい。本構成によれば、このようにデッドスペースとなりやすい領域を利用してオイルクーラ(22)を配置することができるため、オイルクーラ(22)を配置することによる車両用駆動装置(100)の大型化を抑制することができる。すなわち、本構成によれば、車両用駆動装置(100)の大型化を抑制しつつオイルクーラ(22)を配置することができる。
【0111】
ここで、前記第1駆動力源(1A)、前記第2駆動力源(1B)、前記第1出力部材(2A)、前記第2出力部材(2B)、及び前記動力伝達機構(T)を収容するケース(3)を更に備え、前記ケース(3)は、前記第1外周ギヤ(6A,7A)及び前記第2外周ギヤ(6B,7B)に対して前記径方向(R)の外側(R2)を覆う周壁部(42)を備え、前記周壁部(42)の一部であって、前記軸方向(L)で前記第1外周ギヤ(6A,7A)と前記第2外周ギヤ(6B,7B)との間の部分には、前記径方向(R)の内側(R1)に窪む凹部(43)が形成され、前記オイルクーラ(22)の少なくとも一部が、前記凹部(43)に収まるように配置されていると好適である。
【0112】
オイルクーラ(22)はケース(3)の外部に取り付けられることが多い。この場合、車両用駆動装置(100)の形状が、オイルクーラ(22)が取り付けられた部分がその周辺の部分に対して外方に突出した形状となりやすく、オイルクーラ(22)が取り付けられた側に車両用駆動装置(100)が大型化し得る。本構成によれば、第1外周ギヤ(6A,7A)と第2外周ギヤ(6B,7B)との軸方向(L)の間のデッドスペースとなりやすい領域を利用してケース(3)の周壁部(42)に凹部(43)を形成し、オイルクーラ(22)の少なくとも一部が当該凹部(43)に収まるように、オイルクーラ(22)を配置することができる。よって、車両用駆動装置(100)の大型化を抑制しつつ、オイルクーラ(22)をケース(3)の外部に取り付けることができる。
【0113】
また、前記オイルポンプ(20)と前記オイルクーラ(22)とを結ぶ油路(24B)が、前記第1外周ギヤ(6A,7A)と前記第2外周ギヤ(6B,7B)との前記軸方向(L)の間であって、前記軸方向視で前記第1外周ギヤ(6A,7A)及び前記第2外周ギヤ(6B,7B)の少なくとも一方と重複する領域を通るように配置されていると好適である。
【0114】
本構成によれば、オイルポンプ(20)とオイルクーラ(22)とを結ぶ油路(24B)についても、第1外周ギヤ(6A,7A)と第2外周ギヤ(6B,7B)との軸方向(L)の間のデッドスペースとなりやすい領域を利用して配置することができる。そのため、車両用駆動装置(100)の小型化を図りやすい。
【0115】
また、前記オイルクーラ(22)と前記第1駆動力源(1A)及び前記第2駆動力源(1B)の双方とを結ぶ油路(24C)が、前記第1外周ギヤ(6A,7A)と前記第2外周ギヤ(6B,7B)との前記軸方向(L)の間であって、前記軸方向視で前記第1外周ギヤ(6A,7A)及び前記第2外周ギヤ(6B,7B)の少なくとも一方と重複する領域を通るように配置されていると好適である。
【0116】
本構成によれば、オイルクーラ(22)と第1駆動力源(1A)及び第2駆動力源(1B)の双方とを結ぶ油路(24C)についても、第1外周ギヤ(6A,7A)と第2外周ギヤ(6B,7B)との軸方向(L)の間のデッドスペースとなりやすい領域を利用して配置することができる。そのため、車両用駆動装置(100)の小型化を図りやすい。また、本構成によれば、オイルクーラ(22)と第1駆動力源(1A)及び第2駆動力源(1B)の双方とを結ぶ油路(24C)を、第1駆動力源(1A)と第2駆動力源(1B)との軸方向(L)の間から(例えば、第1駆動力源(1A)と第2駆動力源(1B)との間の軸方向(L)の中央部から)軸方向(L)の両側に分岐して、第1駆動力源(1A)及び第2駆動力源(1B)のそれぞれに到達するように形成することができる。そのため、オイルクーラ(22)と第1駆動力源(1A)とを結ぶ油路の長さと、オイルクーラ(22)と第2駆動力源(1B)とを結ぶ油路の長さとを同じに近づけやすく、これら2つの油路における圧力損失を均等に近づけやすい。例えば、これら2つの油路の長さを同程度に短く抑えることで、これら2つの油路における圧力損失を同程度に低減することができる。
【0117】
また、前記第1駆動力源(1A)は、第1ロータ(12A)を備えた第1回転電機(1A)であり、前記第2駆動力源(1B)は、第2ロータ(12B)を備えた第2回転電機(1B)であり、前記第1伝達系(T1)は、前記第1ロータ(12A)と一体的に回転するように連結された第1ギヤ(4A)と、前記第1ギヤ(4A)に噛み合う第3ギヤ(51A)及び当該第3ギヤ(51A)と一体的に回転する第4ギヤ(52A)を備えた第1カウンタギヤ機構(5A)と、を含み、前記第2伝達系(T2)は、前記第2ロータ(12B)と一体的に回転するように連結された第2ギヤ(4B)と、前記第2ギヤ(4B)に噛み合う第5ギヤ(51B)及び当該第5ギヤ(51B)と一体的に回転する第6ギヤ(52B)を備えた第2カウンタギヤ機構(5B)と、を含み、前記第1外周ギヤ(6A,7A)は、前記第4ギヤ(52A)に噛み合うギヤであり、前記第2外周ギヤ(6B,7B)は、前記第6ギヤ(52B)に噛み合うギヤであり、前記動力伝達機構(T)は、前記第1外周ギヤ(6A,7A)に伝達された前記第1回転電機(1A)のトルクと前記第2外周ギヤ(6B,7B)に伝達された前記第2回転電機(1B)のトルクとを、前記第1出力部材(2A)と前記第2出力部材(2B)とに分配する差動歯車機構(6)を備え、前記第1回転電機(1A)と前記差動歯車機構(6)との前記軸方向(L)における配置領域が重複し、前記第2回転電機(1B)と前記オイルポンプ(20)との前記軸方向(L)における配置領域が重複し、前記オイルクーラ(22)は、前記軸方向視で前記差動歯車機構(6)及び前記オイルポンプ(20)の少なくとも一方と重複するように配置されていると好適である。
【0118】
上記のように第1伝達系(T1)及び第2伝達系(T2)が構成される場合、回転電機(1A,1B)から第1出力部材(2A)及び第2出力部材(2B)までの減速比を大きく確保しようとすると、第1外周ギヤ(6A,7A)及び第2外周ギヤ(6B,7B)の径が大きくなりやすい。本開示の車両用駆動装置(100)では、上述したように、第1外周ギヤ(6A,7A)と第2外周ギヤ(6B,7B)との軸方向(L)の間のデッドスペースとなりやすい領域を利用してオイルクーラ(22)を配置することができる。そのため、第1外周ギヤ(6A,7A)及び第2外周ギヤ(6B,7B)の径が大きい場合であっても、オイルクーラ(22)を配置することによる車両用駆動装置(100)の更なる大型化を抑制することができる。
【0119】
更に、本構成によれば、第1回転電機(1A)と差動歯車機構(6)との軸方向(L)における配置領域が重複し、第2回転電機(1B)とオイルポンプ(20)との軸方向(L)における配置領域が重複している。このように差動歯車機構(6)とオイルポンプ(20)とを軸方向(L)の両側に分けて配置することで、車両用駆動装置(100)における軸方向(L)の一方側が他方側に比べて大型化することを抑制でき、車両用駆動装置(100)の形状を、車両への搭載性が良い形状としやすい。また、本構成によれば、オイルクーラ(22)が、軸方向視で差動歯車機構(6)及びオイルポンプ(20)の少なくとも一方と重複するように配置されるため、車両用駆動装置(100)の軸方向視での寸法を小さく抑えやすい。
【0120】
本開示に係る車両用駆動装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0121】
1A:第1回転電機(第1駆動力源)、1B:第2回転電機(第2駆動力源)、2A:第1出力部材、2B:第2出力部材、3:ケース、4A:第1入力ギヤ(第1ギヤ)、4B:第2入力ギヤ(第2ギヤ)、5A:第1カウンタギヤ機構、5B:第2カウンタギヤ機構、6:差動歯車機構、6A:第1出力ギヤ(第1外周ギヤ)、6B:第2出力ギヤ(第2外周ギヤ)、7A:第1差動入力ギヤ(第1外周ギヤ)、7B:第2差動入力ギヤ(第2外周ギヤ)、12A:第1ロータ、12B:第2ロータ、20:オイルポンプ、22:オイルクーラ、24B:第2油路(オイルポンプとオイルクーラとを結ぶ油路)、24C:第3油路(オイルクーラと第1駆動力源及び第2駆動力源の双方とを結ぶ油路)、42:周壁部、43:凹部、51A:第1カウンタ入力ギヤ(第3ギヤ)、51B:第2カウンタ入力ギヤ(第5ギヤ)、52A:第1カウンタ出力ギヤ(第4ギヤ)、52B:第2カウンタ出力ギヤ(第6ギヤ)、100:車両用駆動装置、L:軸方向、R:径方向、R1:内側、R2:外側、T:動力伝達機構、T1:第1伝達系、T2:第2伝達系、W1:第1車輪、W2:第2車輪、X1:第1軸、X2:第2軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9