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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20240215BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
H01L29/06 301M
H01L29/06 301V
H01L29/86 301F
H01L29/86 301E
H01L29/86 301M
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023513951
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2023001274
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2022201771
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100172627
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将貴
(72)【発明者】
【氏名】末本 竜二
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-120990(JP,A)
【文献】特開2015-126027(JP,A)
【文献】特開2013-069783(JP,A)
【文献】特開2021-125478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に形成されるエピタキシャル層と、前記エピタキシャル層の一の面側に設けられる絶縁層と、を有する半導体装置であって、
前記エピタキシャル層の一の面側には、前記絶縁層を介して、活性部が設けられるとともに、前記活性部の外側の領域に設定されている周辺部には、トレンチが設けられ、
前記周辺部に設けられる絶縁層は、比誘電率が異なる第1絶縁体と第2絶縁体とを積層して構成され、
前記第1絶縁体は、シリコン酸化物を含み、
前記第2絶縁体は、チタン酸化物を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
基板と、前記基板に形成されるエピタキシャル層と、前記エピタキシャル層の一の面側に設けられる絶縁層と、を有する半導体装置であって、
前記エピタキシャル層の一の面側には、前記絶縁層を介して、活性部が設けられるとともに、前記活性部の外側の領域に設定されている周辺部には、トレンチが設けられ、
前記周辺部に設けられる絶縁層は、比誘電率が異なる第1絶縁体と第2絶縁体とを積層して構成され、
前記周辺部の終端部側には、チャネル電流抑制部が設けられ、前記チャネル電流抑制部には、トレンチが更に設けられ、前記トレンチは、前記活性部から前記終端部側に流れるチャネル電流を抑制することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記第2絶縁体の比誘電率は、5~200とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2絶縁体の比誘電率は、5~30とすることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2絶縁体の比誘電率は、5~10とすることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁層は、更に保護膜を含み、前記保護膜は、前記第1絶縁体および前記第2絶縁体に積層して設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1絶縁体は、酸化物を含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記酸化物は、シリコン酸化物を含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2絶縁体は、シリコン系化合物または酸化物を含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記シリコン系化合物は、シリコン窒化物を含むことを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記酸化物は、ハフニウム酸化物、チタン酸化物、およびアルミニウム酸化物のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記保護膜は、ポリイミドまたはポリイミド系化合物を含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記周辺部の終端部側には、チャネル電流抑制部が設けられ、前記チャネル電流抑制部には、トレンチが更に設けられ、前記トレンチは、前記活性部から前記終端部側に流れるチャネル電流を抑制することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記チャネル電流抑制部は、更に前記チャネル電流を抑制する電極を設けることを特徴とする請求項2または請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記チャネル電流を抑制する電極は、EQR電極とすることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記チャネル電流抑制部に設けられたトレンチは、前記エピタキシャル層の一の面側における終端部側を段差状に欠損させるように設けられ、前記段差状のトレンチは、外側の側方を開放するように構成されることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記段差状のトレンチは、底部に更にトレンチを設けることを特徴とする請求項16に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置においては、基板に形成されるエピタキシャル層と活性部を構成する素子との間の絶縁を行うために絶縁層が設けられている。この絶縁層には、例えば、特許文献1に開示されるように酸化ケイ素等の酸化膜が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-505769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体装置においては、トレンチショットキーバリアダイオード等の素子の耐圧を決定する周辺部の構造として、P型半導体をイオンインプランテーションおよび拡散工程を用いて形成するガードリング構造がある。しかしながら、ガードリング構造は、耐圧の確保が難しく周辺部の無効領域が大きくなることがあった。また、ガードリングを形成するための工程が多くコスト高となる問題もあった。このため、従来は、ガードリング構造に替えてトレンチ構造を用いることがあった。すなわち、トレンチ構造を用いることにより、耐圧が確保され、周辺部の無効領域を小さくすることができ、製造コストの低減も図られた。
【0005】
近年は、更なる高耐圧化が求められているが、従来は、絶縁層にシリコン酸化物(例えばSiO)等の酸化膜を用いることが多く、局所的に電界集中が生じることがあり、トレンチ構造を用いる場合にあっても高耐圧の確保が難しいことがあった。また、絶縁層にシリコン酸化物(例えばSiO)等の酸化膜のみを用いる場合には、パッケージ材料樹脂との密着性が劣り、パッケージ材料樹脂と絶縁層との間に外部からの水分が侵入して絶縁層の電荷が変動する等半導体装置の性能の劣化も招いていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高耐圧を確保するとともに、絶縁層の密着性を向上させることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置は、基板と、基板に形成されるエピタキシャル層と、エピタキシャル層の一の面側に設けられる絶縁層と、を有する半導体装置であって、エピタキシャル層の一の面側には、絶縁層を介して、活性部が設けられるとともに、活性部の外側の領域である周辺部には、トレンチが設けられ、周辺部に設けられる絶縁層は、比誘電率が異なる第1絶縁体と第2絶縁体とを積層して構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、活性部の外側の領域である周辺部には、トレンチが設けられ、周辺部に設けられる絶縁層は、比誘電率が異なる第1絶縁体と第2絶縁体とを積層して構成されていることにより、例えば比誘電率が相対的に低い第1絶縁体および第2絶縁体のいずれか一方において電界集中が生じる場合にあっても、比誘電率が相対的に高い第1絶縁体および第2絶縁体のいずれか他方により電界集中を緩和することができる。これにより、トレンチの効果と相俟って高耐圧を確保することができる。また、第1絶縁体と第2絶縁体とを積層して設けることにより、絶縁層の密着性(例えばパッケージ材料樹脂と絶縁層との密着性)を向上させることができ、外部からの水分が侵入することも防止することができる。
【0009】
第2絶縁体の比誘電率は、5~200とすることにより、電界集中を一層緩和することができる。第2絶縁体の比誘電率は、5~30とすることにより、更には、5~10とすることにより、電界集中を更に一層緩和することができる。
絶縁層は、更に保護膜を含み、保護膜は、第1絶縁体および第2絶縁体に積層して設けられることにより、絶縁層の密着性(例えばパッケージ材料樹脂と絶縁層との密着性)を更に向上させることができる。
【0010】
第1絶縁体は、酸化物を含むことにより、絶縁効果を向上させることができる。
酸化物は、例えば、シリコン酸化物を含むことができる。
第2絶縁体は、シリコン系化合物または酸化物を含むことにより、成分が絶縁体と共通し、絶縁層の密着性(例えばパッケージ材料樹脂と絶縁層との密着性)を更に向上させることができる。
【0011】
シリコン系化合物は、例えば、シリコン窒化物を含むことができる。
酸化物は、ハフニウム酸化物、チタン酸化物、およびアルミニウム酸化物のうち少なくともいずれかを含むことができる。
【0012】
保護膜は、ポリイミドまたはポリイミド系化合物を含むことにより、絶縁層の密着性(例えばパッケージ材料樹脂と絶縁層との密着性)を更に向上させることができる。
【0013】
周辺部の終端部側には、チャネル電流抑制部が設けられ、チャンネル電流抑制部には、活性部から終端部側に流れるチャネル電流を抑制するトレンチが更に設けられることにより、チャネル電流を抑制することができ、第1絶縁体と第2絶縁体を積層した構成とも相俟って更なる高耐圧の確保を図ることができる。
【0014】
チャネル電流抑制部は、更にチャネル電流を抑制する電極を設けることにより、トレンチの効果と相俟って終端部に流れるチャネル電流を更に抑制することができる。
【0015】
チャネル電流を抑制する電極は、EQR電極とすることにより、電位を等電位に保持することができ、終端部に流れるチャネル電流を抑制することができる。
【0016】
チャネル電流抑制部に設けられたトレンチは、エピタキシャル層の一の面側における終端部側を段差状に欠損させるように設けられ、段差状のトレンチは、外側の側方を開放するように構成されることにより、抵抗が大きくなり終端部に流れるチャネル電流を更に抑制することができる。
【0017】
段差状のトレンチは、底部に更にトレンチを設けることにより、段差状の形状と底部のトレンチが相俟って終端部に流れるチャネル電流を更に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高耐圧を確保するとともに、絶縁層の密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構成を示す平面図である。
図2】同半導体装置の構成を示す図1のAA正面断面図である。
図3】同半導体装置のトレンチの構造を示す拡大正面断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の構成を示す正面断面図である。
図5】同半導体装置の変形例を示す正面断面図である。
図6】同半導体装置の変形例を示す別の正面断面図である。
図7】同半導体装置の変形例を示す更に別の正面断面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る半導体装置の構成を示す平面図である。
図9】同半導体装置の構成を示す図8のAA正面断面図である。
図10】同半導体装置の終端部のトレンチの構造を示す拡大正面断面図である。
図11】本発明の第4実施形態に係る半導体装置の構成を示す正面断面図である。
図12】同半導体装置の変形例を示す正面断面図である。
図13】同半導体装置の別の変形例を示す正面断面図である。
図14】同半導体装置の更に別の変形例を示す正面断面図である。
図15】同半導体装置のまた更に別の変形例を示す正面断面図である。
図16】同半導体装置の他の変形例を示す正面断面図である。
図17】同半導体装置の更に他の変形例を示す正面断面図である。
図18】同半導体装置の更にまた他の変形例を示す正面断面図である。
図19】同半導体装置のまた更に他の変形例を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る半導体装置1を図1乃至図3を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構成を示す平面図、図2は、同半導体装置の構成を示す図1のAA正面断面図、図3は、同半導体装置のトレンチの構造を示す拡大正面断面図である。なお、以下の説明においては、半導体装置1の基板10から見てエピタキシャル層20側を上方、カソード電極等30側を下方、半導体装置1の中央部65側を内側、終端部70a側(末端70a´側)を外側とし、他の方向も含め各方向を図において明示するものとする。
【0021】
図1乃至図3を参照して本発明の第1実施形態に係る半導体装置1の概要を説明すると、半導体装置1は、平面視が矩形状(正方形)であり、基板10、エピタキシャル層20、カソード電極またはドレイン電極30(例えばMOSFETではドレイン電極、ダイオードではカソード電極、以下カソード電極等30とする)、絶縁層40,50、活性部60、および周辺部70を有している。絶縁層40は、活性部60に設けられており、絶縁層50は、周辺部70に設けられている。絶縁層50の上面側は、図示しないがパッケージ材料樹脂により封止される。
【0022】
基板10は、板状で所定の導電物質により形成することができる。基板10は、単結晶の基板であり、基板10の上面側となる一の面10a側には、エピタキシャル層20が形成されている。基板10の下面側となる他の面10b側には、カソード電極等30が設けられている。カソード電極等30は、金属等の導電物質で形成することができる。カソード電極等30と活性部60との間には所定の電位差が生じることにより活性部60に電流が流れて活性部60を機能させることができる。
【0023】
エピタキシャル層20は、基板10の一の面10a側の全面をエピタキシャル成長させて形成することができる。エピタキシャル層20の上面側となる一の面20a側には絶縁層40,50が所定に設けられている。エピタキシャル層20の一の面20a側には、絶縁層40を介して活性部60が設けられ、周辺部70は、活性部60の外側の領域に設定されている。絶縁層50は、周辺部70に設けられている。すなわち、活性部60および周辺部70は、絶縁層40,50を介してエピタキシャル層20と所定に絶縁されている。
【0024】
活性部60は、主電流が流れる中央部65側(内側)の領域に設けられている。活性部60には、トレンチ61が複数設けられている。
【0025】
トレンチ61は、エピタキシャル層20の一の面20a側の所定の箇所を埋没させるように設けられている。トレンチ61は、正面から見た断面形状がU字状で所定の深さ寸法(溝深さ寸法)d1および幅(トレンチ幅)寸法w1をもってエピタキシャル層20の一の面20a側を周回するように設けられた溝形状となっている。トレンチ61の埋没した内面61aには、絶縁層40が設けられている。すなわち、トレンチ61は、エピタキシャル層20に対して絶縁されている。トレンチ61の内面61aに囲まれた空間には、絶縁層40を介して導電物質61bが上端部まで充填されている。トレンチ61の上端部の開口61cは、導電物質61bにより閉塞されている。導電物質61bは、例えば、ポリシリコン、不純物ドープシリコン、メタル(金属)等の各種の導電物質とすることができる。
【0026】
トレンチ61に設けられる絶縁層40は、絶縁体41となっている。絶縁体41は、酸化物を含み、酸化物は、シリコン酸化物(例えば、二酸化ケイ素(SiO))を含むことができる。
【0027】
周辺部70には、トレンチ71が設けられている。トレンチ71は、エピタキシャル層20の一の面20a側の所定の箇所を埋没させるように設けられている。トレンチ71は、正面から見た断面形状が矩形状(横長の長方形)で所定の深さ寸法(溝深さ寸法)d2および幅(トレンチ幅)寸法w2をもってエピタキシャル層20の一の面20a側を周回するように設けられた溝形状となっている。周辺部70のトレンチ71の幅寸法w2は、活性部60のトレンチ61の幅寸法w1よりも大きい寸法となっている。周辺部70にトレンチ71を設けることで製造コストの低減を図りながら耐圧を確保することができる。
【0028】
トレンチ71の埋没した内面71aおよび周辺部70の終端部70a側には、絶縁層50が設けられている(周辺部70の終端部70aとは、トレンチ71の外側の領域である)。すなわち、周辺部70より詳しくはトレンチ71および周辺部70の終端部70a側は、エピタキシャル層20に対して絶縁されている。
【0029】
周辺部70に設けられる絶縁層50は、比誘電率が異なる第1絶縁体51と第2絶縁体52とを積層して構成されている。第1絶縁体51は、更に下部側絶縁体51Aと上部側絶縁体51Bを含んでいる。下部側絶縁体51Aは、トレンチ71の内面71aにおいてエピタキシャル層20の一の面20a側に直接設けられている。上部側絶縁体51Bは、トレンチ71の内面71aにおいて下部側絶縁体51Aの上面に積層して設けられている。上部側絶縁体51Bは、トレンチ71の外側の端部71a2から末端70a´まではエピタキシャル層20の一の面20a側に直接設けられている。
【0030】
下部側絶縁体51Aおよび上部側絶縁体51Bは、酸化物を含み、酸化物は、シリコン酸化物(例えば、二酸化ケイ素(SiO))を含むことができる。シリコン酸化物、例えば、二酸化ケイ素(SiO)の比誘電率は、3~4である。トレンチ71の両端部71a1,71a2側において下部側絶縁体51Aと上部側絶縁体51Bの間には導電物質71bが介在している。正確には、トレンチ71の活性部60側の端部71a2側においては、上部側絶縁体51Bおよび第2絶縁体52は、端部71a2(周辺部70と活性部60の境界L)に達することなく、導電物質71bが上部側絶縁体51Bおよび第2絶縁体52に対し露出し、導電物質71bの露出した部分71b´は、フィールドプレート電極82、ショットキー電極81と接している。導電物質71bは、例えば、ポリシリコン、不純物ドープシリコン、メタル(金属)等の各種の導電物質とすることができる。
【0031】
第2絶縁体52は、第1絶縁体51より詳しくは上部側絶縁体51Bの上面に積層して設けられている。第2絶縁体52は、第1絶縁体51の上面の全体を覆うように設けられている。第2絶縁体52は、第1絶縁体51よりも比誘電率が大きく設定されている。
第2絶縁体52の比誘電率は、5~200より好ましくは5~30更に好ましくは5~10とすることができる。第2絶縁体52は、シリコン系化合物または酸化物を含むことが好ましく、シリコン系化合物は、シリコン窒化物(例えば、窒化ケイ素(SiN、Si))を含むことが好ましい。酸化物は、ハフニウム酸化物(例えば、二酸化ハフニウム(HfO))、チタン酸化物(例えば、二酸化チタン(TiO))、およびアルミニウム酸化物(Al)のうち少なくともいずれかを含むことが好ましい。第1絶縁体51にシリコン酸化物(例えば、二酸化ケイ素(SiO))等の酸化膜を用いることにより、局所的に電界集中が生じることがあるが、第2絶縁体52を積層することにより電界集中を緩和することができる。
【0032】
第2絶縁体52の比誘電率は、SiN、Siは7~8程度、TiOは80~190程度、Alは7~10程度、HfOは10~20程度であり、比誘電率が5~30の範囲にあるSiN、Si、Al、HfOは特に密着性の向上に寄与する。更に、比誘電率が5~10程度のSiN、Siは、窒化膜中の分子間の隙間が、SiO酸化膜より狭いため、水分の侵入を抑制する効果が大きく、更にパッケージ材料樹脂との密着性の向上に寄与する。特に窒化膜はフィールドプレート電極82との密着性が酸化膜より優れ、酸化膜上にフィールドプレート電極82を成膜するよりも窒化膜を挟むことで、フィールドプレート電極82の剥離を防止することができる。
【0033】
活性部60には、ダイオード80が設けられている。ダイオード80は、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)80とすることができる。ショットキーバリアダイオード80は、ショットキー電極81とフィールドプレート電極82を有している。ショットキー電極81は、活性部60に設けられている。ショットキー電極81は、主電流が流れてショットキーバリアダイオード80の主たる機能を果たす電極部分である。
【0034】
ショットキー電極81は、第1電極部分81Aと第2電極部分81Bを有している。第1電極部分81Aと第2電極部分81Bは、相互に連続している。
【0035】
第1電極部分81Aは、トレンチ61の開口61cを塞ぐように設けられている電極部分である。第1電極部分81Aは、トレンチ61に充填された導電物質61bと絶縁層40を介することなく直接接合している。
【0036】
第2電極部分81Bは、エピタキシャル層20の一の面20aと直接接合している電極部分である。すなわち、エピタキシャル層20の一の面20aにおけるトレンチ61の開口61cの周辺には、絶縁層40が設けられておらず、第2電極部分81Bは、絶縁層40を介さずにエピタキシャル層20に直接設けられる部分となっている。
【0037】
フィールドプレート電極82は、活性部60の外側に延びるように設けられている。つまり、フィールドプレート電極82は、活性部60の外側において周辺部70のトレンチ71の中間部まで達するように設けられている。フィールドプレート電極82は、設計耐圧によって長短する構成となっている。フィールドプレート電極82は、トレンチ71の内面71aにおいて第2絶縁体52の上面を覆うように設けられている。フィールドプレート電極82は、電界強度を緩和する機能を果たす電極部分である。ショットキー電極81とフィールドプレート電極82は、段差状に連続するように設けられている。
【0038】
以上説明したように、本発明の第1実施形態の半導体装置1によれば、活性部60の外側の領域である周辺部70には、トレンチ71が設けられ、周辺部70に設けられる絶縁層50は、比誘電率が異なる第1絶縁体51と第2絶縁体52とを積層して構成されていることにより、例えば比誘電率が相対的に低い第1絶縁体51において電界集中が生じる場合にあっても、比誘電率が相対的に高い第2絶縁体52により電界集中を緩和することができる。これにより、トレンチ71の効果と相俟って高耐圧を確保することができる。
【0039】
また、第1絶縁体51と第2絶縁体52とを積層して設けることにより、パッケージ材料樹脂と絶縁層50との密着性を向上させることができ、パッケージ材料樹脂と絶縁層との間に外部からの水分が侵入することも防止することができる。
【0040】
また、第2絶縁体52の比誘電率は、5~200より好ましくは5~30更に好ましくは5~10とすることにより、電界集中を一層緩和することができる。
【0041】
更にまた、第1絶縁体51は、酸化物を含むことにより、絶縁効果を向上させることができる。
【0042】
また更に、第2絶縁体52は、シリコン系化合物または酸化物を含むことにより、成分が第1絶縁体51と共通し、パッケージ材料樹脂と絶縁層50との密着性を更に向上させることができる。
また、第2絶縁体52は、第1絶縁体51の上面の全体を覆うように設けられていることにより、水分の侵入を更に抑えることができる。
更に、トレンチ71の活性部60側の端部71a2側においては、上部側絶縁体51Bおよび第2絶縁体52は、端部71a2に達することなく、導電物質71bが上部側絶縁体51Bおよび第2絶縁体52に対し露出し、導電物質71bの露出した部分71b´は、フィールドプレート電極82、ショットキー電極81と接していることにより同電位となり、周辺の電界強度を緩和することができる。なお、上部側絶縁体51Bおよび第2絶縁体52が導電物質71bに達していない場合は、フィールドプレート電極82下の第1絶縁体51および第2絶縁体52で覆われている部分と、覆われていない部分で電界強度分布が異なってしまい、耐圧不安定、耐圧低下につながる。
【0043】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る半導体装置2と図4を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図4において上述した実施形態と同一の符号が付された構成および説明のない構成であって同等の構成については上述した実施形態と同様の構成であるとしてその説明を省略することがあるものとする。また、以下の説明においては、半導体装置2の基板10から見てエピタキシャル層20側を上方、カソード電極等30側を下方、半導体装置2の中央部65側を内側、終端部70a側(末端70a´側)を外側とし、他の方向も含め各方向を図において明示するものとする。
【0044】
本発明の第2実施形態に係る半導体装置2は、絶縁層50に、更に保護膜53を含む構成となっている。保護膜53は、第1絶縁体51および第2絶縁体52に積層して設けられている。より詳しくは、保護膜53は、周辺部70の終端部70aからトレンチ71の中間部までは第2絶縁体52の上面に積層され、トレンチ71の中間部から活性部60の外側の端部側に至るまではフィールドプレート電極82の上面を覆うように設けられている。保護膜53は、ポリイミドまたはポリイミド系化合物を含むことができる。
【0045】
このように、絶縁層50は、更に保護膜53を含み、保護膜53は、第1絶縁体51および第2絶縁体52に積層して設けられることにより、パッケージ材料樹脂と絶縁層50との密着性を更に向上させることができる。
【0046】
また、保護膜53は、ポリイミドまたはポリイミド系化合物を含むことにより、パッケージ材料樹脂と絶縁層50との密着性を更に向上させることができる。
【0047】
なお、図5に示すように、保護膜53は、フィールドプレート電極82の上面に達することなく、周辺部70の終端部70aからトレンチ71の中間部まで第2絶縁体52の上面にのみ積層する構成とすることとしても所要の効果を奏することができる。
【0048】
また、図6および図7に示すように、保護膜53は、周辺部70の終端部70aの外側の末端70a´に達することなく設けることとしても所要の効果を奏することができる。
【0049】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る半導体装置3を図8乃至図10を参照して詳細に説明する。図8は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の構成を示す平面図、図9は、同半導体装置の構成を示す図8のAA正面断面図、図10は、同半導体装置の終端部のトレンチの構造を示す拡大正面断面図である。なお、以下の説明および図8乃至図10において上述した実施形態と同一の符号が付された構成および説明のない構成であって同等の構成については上述した実施形態と同様の構成であるとしてその説明を省略することがあるものとする。また、以下の説明においては、半導体装置3の基板10から見てエピタキシャル層20側を上方、カソード電極等30側を下方、半導体装置3の中央部65側を内側、終端部70a側(末端70a´側)を外側とし、他の方向も含め各方向を図において明示するものとする。
【0050】
本発明の第3実施形態に係る半導体装置3は、周辺部70の終端部70a側に、チャネル電流抑制部90を設けた構成となっている。チャネル電流抑制部90は、周辺部70のトレンチ71の外側においてトレンチ71を囲むように設けられている。すなわち、チャンネル電流抑制部90には、トレンチ91が更に設けられ、トレンチ91は、活性部60から終端部70a側に流れるチャネル電流を抑制することができる。チャネル電流抑制部90には、更にチャネル電流を抑制する電極100が設けられている。
【0051】
トレンチ91は、トレンチ71の外側に設けられている。トレンチ91は、エピタキシャル層20の一の面20a側の所定の箇所を埋没させるように設けられている。トレンチ91は、正面から見た断面形状がU字状で所定の深さ寸法(溝深さ寸法)d3および幅(トレンチ幅)寸法w3をもってエピタキシャル層20の一の面20a側を周回するように設けられた溝形状となっている。
【0052】
トレンチ91の深さ寸法d3は、活性部60に設けられたトレンチ61の深さ寸法d1と同等の寸法乃至大きい寸法に設定されている。また、トレンチ91の幅(トレンチ幅)寸法w3は、活性部60に設けられたトレンチ61の幅(トレンチ幅)寸法w3と同等の寸法乃至大きい寸法に設定されている。
【0053】
トレンチ91の埋没した内面91aには、絶縁層50´が設けられている。すなわち、トレンチ91は、エピタキシャル層20に対して絶縁されている。トレンチ91の内面91aに囲まれた空間には、絶縁層50´を介して導電物質91bが上端部まで充填されている。トレンチ91の上端部の開口91cは、導電物質91bにより閉塞されている。導電物質91bは、例えば、ポリシリコン、不純物ドープシリコン、メタル(金属)等の各種の導電物質とすることができる。
【0054】
トレンチ91に設けられる絶縁層50´は、第1絶縁体51´のみで構成されている。第1絶縁体51´は、酸化物を含み、酸化物は、シリコン酸化物(例えば、二酸化ケイ素(SiO))を含むことができる。
【0055】
すなわち、半導体装置3は、終端部70aのうちトレンチ71の外側の端部71a2からトレンチ91の内側の端部91a1までは絶縁層50がトレンチ71から連続しており、第1絶縁体51と第2絶縁体52のいずれも積層されている。一方、トレンチ91に設けられる絶縁層50´は、第1絶縁体51´のみで構成されており、第2絶縁体52は積層されていない構成となっている。なお、トレンチ91の外側の端部91a2から終端部70aの末端70a´には、絶縁層が設けられていない構成となっている。
【0056】
チャネル電流を抑制する電極100は、EQR(EQui-potential Ring:等電位ポテンシャルリング)電極100となっている。
【0057】
EQR電極100は、エピタキシャル層20の一の面20a側をリング状に周回するように設けられている。EQR電極100は、所定のEQR領域を同電位にすることができる。EQR電極100のリング状の内側領域に、活性部60およびトレンチ71が設けられている。
【0058】
EQR電極100は、導電物質で形成することができる。EQR電極100は、第1電極部分100a、第2電極部分100b、および第3電極部分100cを有している。第1電極部分100a、第2電極部分100b、および第3電極部分100cは、段差状に連続するように設けられている。
【0059】
第1電極部分100aは、トレンチ91の開口91cを塞ぐように設けられている。第1電極部分100aは、トレンチ91に充填された導電物質91bと絶縁層を介することなく直接接合している。
【0060】
第2電極部分100bは、第1電極部分100aから外側に短尺状に延在する電極部分である。
【0061】
第2電極部分100bは、エピタキシャル層20の一の面20aと直接接合している。すなわち、上記したように、エピタキシャル層20の一の面20aにおけるトレンチ91の外側の端部91bから終端部70aの末端70a´には、絶縁層が設けられておらず、第2電極部分100bは、絶縁層を介さずにエピタキシャル層20に直接設けられる部分となっている。EQR電極100は、エピタキシャル層20に直接設けられる第2電極部分100bを介してエピタキシャル層20と電気的に接続している。
【0062】
第3電極部分100cは、第1電極部分100aから中央部65側(内側)に向かって延在するように延びている。第3電極部分100cは、絶縁層50を介してエピタキシャル層20に設けられている。
【0063】
以上のように構成された半導体装置3においては、活性部60のダイオード80より詳しくはショットキーバリアダイオード80に主電流を流して機能させたときには、ショットキーバリアダイオード80から終端部70a側(外側)に向かってパッシベーション等の電荷によるチャネルが形成されチャネル電流が流れるが、チャネル電流抑制部90にトレンチ91を設けることで、活性部60から終端部70a側(外側)に向かうチャネル電流の流れをチャネル電流抑制部90のトレンチ91により中断させることができ、終端部70a側(外側)に流れるチャネル電流を抑制することができる。また、トレンチ91は、同様に活性部60においても設けられており、活性部60のトレンチ61とチャネル電流抑制部90のトレンチ91を同時に設けることができる等、製造プロセスを増やすことなくチャネル電流を抑制し、チャネル電流抑制構造を精度よく形成することができる。
【0064】
また、チャネル電流抑制部90は、更にチャネル電流を抑制する電極100を設けることにより、トレンチ91の効果と相俟って終端部70a側(外側)に流れるチャネル電流を更に抑制することができる。
【0065】
すなわち、チャネル電流を抑制する電極100は、EQR電極100とすることにより、カソード電極等30とチャネル電流抑制部90を等電位に保持することができ、終端部70a側(外側)に流れるチャネル電流を抑制することができる。
【0066】
更に、EQR電極100は、絶縁層を介さずにエピタキシャル層20に直接設けられる第2電極部分100bを有することにより、EQR電極100とエピタキシャル層20を電気的に接続することができる。これにより、エピタキシャル層20の下面側となる他の面20b側とEQR電極100を等電位とすることができ、活性部60から終端部70a側(外側)に流れるチャネル電流を抑制することができる。
【0067】
更にまた、チャネル電流抑制部90に設けられたトレンチ91の深さ寸法d3を、活性部60に設けられたトレンチ61の深さ寸法d1と同等の寸法乃至大きい寸法に設定することによりおよびチャネル電流抑制部90に設けられたトレンチ91の幅寸法w3を、活性部60に設けられたトレンチ61の幅寸法w1と同等の寸法乃至大きい寸法に設定することにより、チャネル電流の流れをチャネル電流抑制部90に設けられたトレンチ91により更に中断させることができる。
【0068】
また更に、活性部60に設けられる素子をダイオード80とすることにより、上記のチャネル電流により生じるダイオード80の逆電流が齎す性能低下を抑制することができる。
【0069】
ダイオード80は、ショットキーバリアダイオード80とすることにより、逆電流が大きいショットキーバリアダイオード80においては、逆電流がもたらす性能低下の抑制効果が更に大きくなる。
【0070】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る半導体装置4と図11を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図11において上述した実施形態と同一の符号が付された構成および説明のない構成であって同等の構成については上述した実施形態と同様の構成であるとしてその説明を省略することがあるものとする。また、以下の説明においては、半導体装置4の基板10から見てエピタキシャル層20側を上方、カソード電極等30側を下方、半導体装置4の中央部65側を内側、終端部70a側(末端70a´側)を外側とし、他の方向も含め各方向を図において明示するものとする。
【0071】
本発明の第4実施形態に係る半導体装置4は、絶縁層50に、更に保護膜53を含む構成となっている。保護膜53は、第1絶縁体51および第2絶縁体52に積層して設けられている。より詳しくは、保護膜53は、トレンチ91の内側の端部91aからトレンチ71の中間部までは第2絶縁体52の上面側に積層され(EQR電極100が設置される領域ではEQR電極100の上面側を覆うように積層される)、トレンチ71の中間部から活性部60の外側の端部側まではフィールドプレート電極82の上面を覆うように設けられている。保護膜53は、ポリイミドまたはポリイミド系化合物を含むことができる。
【0072】
本第4実施形態においては、絶縁層50は、更に保護膜53を含み、保護膜53は、第1絶縁体51および第2絶縁体52に積層して設けられることにより、パッケージ材料樹脂と絶縁層50との密着性を更に向上させることができる。
【0073】
すなわち、保護膜53は、ポリイミドまたはポリイミド系化合物を含むことにより、パッケージ材料樹脂と絶縁層50との密着性を更に向上させることができる。
【0074】
なお、図12に示すように、保護膜53は、フィールドプレート電極82の上面に達することなく、トレンチ91の内側の端部91a1からトレンチ71の中間部まで第2絶縁体52の上面にのみ積層する構成としても所要の効果を奏することができる。
【0075】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る半導体装置5を図13乃至図16を参照して詳細に説明する。図13は、同半導体装置の構成を示す正面断面図、図14は、同半導体装置の別の構成を示す正面断面図、図15は、同半導体装置の更に別の構成を示す正面断面図、図16は、同半導体装置のまた更に別の構成を示す正面断面図である。なお、以下の説明および図13乃至図16において上述した実施形態と同一の符号が付された構成および説明のない構成であって同等の構成については上述した実施形態と同様の構成であるとしてその説明を省略することがあるものとする。また、以下の説明においては、半導体装置5の基板10から見てエピタキシャル層20側を上方、カソード電極等30側を下方、半導体装置5の中央部65側を内側、終端部70a側(末端70a´側)を外側とし、他の方向も含め各方向を図において明示するものとする。
【0076】
本発明の第5実施形態に係る半導体装置5は、チャネル電流抑制部90のトレンチ92を段差状に形成した構成を示している。
【0077】
すなわち、半導体装置5は、図13および図14に示すように、チャネル電流抑制部90に設けられたトレンチ92を、エピタキシャル層20の一の面20a側における終端部70a側を段差状に欠損させるように設け、段差状のトレンチ92は、外側の末端70a´側の側方を開放するように構成されている。トレンチ92は、エピタキシャル層20の一の面20a側を周回するように設けられている。段差状のトレンチ92の内面92aには、トレンチ71から連続する絶縁層50が段差形状に沿って屈曲するように設けられており、トレンチ92は、エピタキシャル層20に対して所定に絶縁されている。絶縁層50は、第1絶縁体51、第2絶縁体52、保護膜53を含んでいる。
【0078】
半導体装置5のチャネル電流抑制部90には、上述した第3実施形態および第4実施形態と同様にチャネル電流を抑制する電極110つまりEQR(EQui-potential Ring:等電位ポテンシャルリング)電極110が設けられている。EQR電極110は、エピタキシャル層20の一の面20a側を周回するように設けられている。EQR電極110は、導電物質で形成することができる。EQR電極110は、絶縁層50における第2絶縁体52の上面を覆うように設けられている。EQR電極110は、トレンチ92の段差形状に沿って屈曲するように設けられている。
【0079】
EQR電極110は、第1電極部分110a、第2電極部分110b、および第3電極部分110cを有している。第1電極部分110a、第2電極部分110b、および第3電極部分110cは、連続するように設けられている。
【0080】
第1電極部分110aは、段差状のトレンチ92の底部92´から上端部92´´にかけて上下方向に延びるように設けられている。第1電極部分110aは、絶縁層50における第1絶縁体51および第2絶縁体52を介してエピタキシャル層20に設けられている。
【0081】
第2電極部分110bは、段差状のトレンチ92の底部92´に沿って設けられている。第2電極部分110bは、第1電極部分110aの下端から末端70a´側(外側)に短尺状に延在する電極部分である。
【0082】
第2電極部分110bは、エピタキシャル層20の一の面20aと直接接合している。すなわち、段差状のトレンチ92の底部92´の末端70a´側(外側)には、第1絶縁体51および第2絶縁体52が設けられておらず、第2電極部分110bは、第1絶縁体51および第2絶縁体52を介さずにエピタキシャル層20に直接設けられる部分となっている。EQR電極110は、エピタキシャル層20に直接設けられる第2電極部分110bを介してエピタキシャル層20と電気的に接続している。
【0083】
第3電極部分110cは、第1電極部分110aの上端からエピタキシャル層20の一の面20aに沿って中央部65側(内側)に延在するように延びている。第3電極部分110cは、第1絶縁体51および第2絶縁体52を介してエピタキシャル層20に設けられている。
【0084】
以上のように構成された第5実施形態の半導体装置5においては、チャネル電流抑制部90に設けられたトレンチ92は、エピタキシャル層20の一の面20a側における終端部70a側を段差状に欠損させるように設けられ、段差状のトレンチ92は、外側の末端70a´側の側方を開放するように構成されることにより、抵抗が大きくなり終端部70aに流れるチャネル電流を更に抑制することができる。
【0085】
ここで、段差状のトレンチ92は、図15および図16に示すように、底部92´に更に第3実施形態および第4実施形態と同様にトレンチ91を設けることとしてもよい。EQR電極110の第2電極部分110bは、トレンチ91の開口91cを塞ぐように設けられており、トレンチ91に充填された導電物質91bと第1絶縁体51および第2絶縁体52を介することなく直接接合する構成となっている(トレンチ91の内面91aには第1絶縁体51´のみからなる絶縁層50´が設けられている)。
【0086】
このように段差状のトレンチ92の底部92´に更にトレンチ91を設けることにより、段差状の形状と底部92´のトレンチ91が相俟って終端部70aに流れるチャネル電流を更に抑制することができる。
【0087】
なお、図示しないが、トレンチ92を段差状に設ける場合には、導電物質71bを介してEQR電極110を絶縁層50の上面に設けることとしてもよい。
【0088】
[その他変形例、応用例]
本発明は上述した実施形態に限定されることなく特許請求の範囲において種々の変形実施、応用実施が可能であることは勿論である。
【0089】
例えば、上述した実施形態にあっては、EQR電極110は、絶縁層50における第1絶縁体51および第2絶縁体52、絶縁層50´を介さずにエピタキシャル層20に直接設けられる第2電極部分110bを有することとしているが、第2電極部分110bとエピタキシャル層20との間にも絶縁層50における第1絶縁体51および第2絶縁体52、絶縁層50´を介在させて第2電極部分110bをエピタキシャル層20に対し絶縁することとしてもチャネル電流の抑制に対し所要の効果を奏することができる。
【0090】
ただし、EQR電極110は、絶縁層50における第1絶縁体51および第2絶縁体52、絶縁層50´を介さずにエピタキシャル層20に直接設けられる第2電極部分110bを有することとした方が、EQR電極110とエピタキシャル層20を電気的に接続することができ、チャネル電流の抑制効果を向上させることができるのでより好ましい実施形態となる。なお、上述した実施形態において、絶縁層50における第1絶縁体51および第2絶縁体52、絶縁層50´をトレンチ91の開口91cの外側の端部71a1から末端70a´に短尺に延在させて第2電極部分110bとエピタキシャル層20との間に絶縁層50における第1絶縁体51および第2絶縁体52、絶縁層50´を一部介在させることとしてもチャネル電流の抑制に対し所要の効果を奏することができる。
【0091】
更に、上述した実施形態にあっては、EQR電極110の第1電極部分110aは、トレンチ91に充填された導電物質91bと絶縁層50における第1絶縁体51および第2絶縁体52、絶縁層50´を介することなく直接接合することとしているが、絶縁層50における第1絶縁体51および第2絶縁体52、絶縁層50´を介在させてEQR電極110の第2電極部分110bを導電物質91bに対し絶縁することとしてもチャネル電流の抑制に対し所要の効果を奏することができる。
【0092】
ただし、EQR電極110の第2電極部分110bは、トレンチ91に充填された導電物質91bと絶縁層50における第1絶縁体51および第2絶縁体52、絶縁層50´を介することなく直接接合することとした方が、チャネル電流をトレンチ91に確実に導くことができるのでより好ましい実施形態となる。
【0093】
更にまた、図17に示すように、チャネル電流抑制部90に設けられるトレンチ91は、チャネル電流が流れる方向に沿って複数設けることとしてもよい。この場合にあっては、トレンチ91のメサ幅(隣接するトレンチ91間の間隔)w3´を、トレンチ幅w3よりも大きい幅寸法に設定することとすると更に好ましい実施形態となる。すなわち、トレンチ91のメサ幅w3´を、トレンチ幅w3よりも大きい幅寸法に設定することにより、チャネル電流の流れをチャネル電流抑制部90のトレンチ91により確実に中断させることができる。数1に示されるトレンチ91のトレンチ幅w3に対するメサ幅w3´の比Aは例えば1.0~3.0とすることができる。なお、メサ幅w3´は、トレンチ幅w3よりも小さい幅寸法としても所要の効果を奏する。
[数1]
A=w3´/w3
【0094】
また、上述した実施形態にあっては、トレンチ91は正面から見た断面形状をU字状とすることとしているが、三角形状および他の形状とする等、活性部60のトレンチ61と異なる断面形状としてもチャネル電流の抑制に対し所要の効果を奏することができるのでより好ましい実施形態となる。
【0095】
なお、チャネル電流抑制部90をトレンチ91のみとしてEQR電極110を省略することとしてもチャネル電流の抑制に対し所要の効果を奏することができる。ただし、チャネル電流抑制部90にEQR電極110を設けた方がトレンチ91の効果と相俟って終端部70aに流れるチャネル電流を更に抑制することができる。
【0096】
更に、上述した実施形態にあっては、活性部60に設けられる素子をダイオード80より詳しくはショットキーバリアダイオード80とすることとしているが、スイッチングダイオードやファストリカバリダイオード等の他のダイオードとし、またはダイオード以外の他の電子素子としてもチャネル電流の抑制に対し所要の効果を奏することができる。
【0097】
ただし、ショットキーバリアダイオード80は、逆電流が齎す性能低下が大きく本発明を実施する意義が特に大きい。
【0098】
更にまた、上述した実施形態にあっては、第1絶縁体51をシリコン酸化物(例えば、二酸化ケイ素(SiO))、第2絶縁体52をシリコン窒化物(例えば、窒化ケイ素(SiN、Si))、ハフニウム化合物(例えば、二酸化ハフニウム(HfO))、チタン酸化物(例えば、二酸化チタン(TiO))、およびアルミニウム酸化物(Al)のうち少なくともいずれかを含むこととし、保護膜53をポリイミドまたはポリイミド系化合物とすることとしているが、絶縁性、誘電性を有する他の物質により構成することとしても所要の効果を奏することができる。
【0099】
また更に、上述した実施形態にあっては、トレンチ61は、エピタキシャル層20の一の面20a側を周回するように設けられた溝形状とすることとしているが、図18に示すように、横方向の一方向に直線上に配置されることとし、または、図19に示すように、縦方向の一方向に直線上に配置されることとする等、周回した構成に限定されない。
【0100】
更にまた、上述した実施形態にあっては、絶縁層50の上面側は、パッケージ材料樹脂により封止されることとしているが、ウエハーの状態またはチップの状態で販売する場合のように、パッケージ樹脂材料により封止せずに絶縁層50が露出する構成もあり得る。
【符号の説明】
【0101】
A:比
L:境界
d1,d2,d3:深さ寸法
w1,w2,w3:幅寸法
w3´:メサ幅
1,2,3,4,5:半導体装置
10:基板
10a:一の面
10b:他の面
20:エピタキシャル層
20a:一の面
30:カソード電極等
40:絶縁層
41:絶縁体
50:絶縁層
50´:絶縁層
51:第1絶縁体
51A:下部側絶縁体
51B:上部側絶縁体
51´:絶縁体
52:第2絶縁体
53:保護膜
60:活性部
61:トレンチ
61a:内面
61b:導電物質
61c:開口
65:中央部
70:周辺部
70a:終端部
70a´:末端
71:トレンチ
71a:内面
71a1,71a2:端部
71b:導電物質
71b´:露出した部分
80:ダイオード(ショットキーバリアダイオード)
81:ショットキー電極
81A:第1電極部分
81B:第2電極部分
82:フィールドプレート電極
90:チャネル電流抑制部
91:トレンチ
91a:内面
91a1:内側の端部
91a2:外側の端部
91b:導電物質
91c:開口
92:トレンチ
92´:底部
92´´:上端部
100:電極(EQR電極)
100a:第1電極部分
100b:第2電極部分
100c:第3電極部分
110:電極(EQR電極)
110a:第1電極部分
110b:第2電極部分
110c:第3電極部分
【要約】
【課題】高耐圧を確保するとともに、絶縁層の密着性を向上させることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明の半導体装置1は、基板10と、基板10に形成されるエピタキシャル層20と、エピタキシャル層20の一の面20a側に設けられる絶縁層40,50と、を有する半導体装置1であって、エピタキシャル層20の一の面20a側には、絶縁層40を介して、活性部60が設けられるとともに、活性部60の外側の領域である周辺部70には、トレンチ71が設けられ、周辺部70に設けられる絶縁層50は、第1絶縁体51と第2絶縁体52を積層して構成されることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19