IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルストム レノバブレス エスパーニャ, エセ.エレ.の特許一覧

特許7437579超電導機械における界磁コイル支持構造およびモジュール式界磁コイル設計
<>
  • 特許-超電導機械における界磁コイル支持構造およびモジュール式界磁コイル設計 図1
  • 特許-超電導機械における界磁コイル支持構造およびモジュール式界磁コイル設計 図2
  • 特許-超電導機械における界磁コイル支持構造およびモジュール式界磁コイル設計 図3
  • 特許-超電導機械における界磁コイル支持構造およびモジュール式界磁コイル設計 図4
  • 特許-超電導機械における界磁コイル支持構造およびモジュール式界磁コイル設計 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】超電導機械における界磁コイル支持構造およびモジュール式界磁コイル設計
(51)【国際特許分類】
   H02K 55/02 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
H02K55/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021568867
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 US2019034022
(87)【国際公開番号】W WO2020242445
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】513131419
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック レノバブレス エスパーニャ, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】スタウトナー,エルンスト・ウォルフギャング
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0197633(US,A1)
【文献】特開昭56-150966(JP,A)
【文献】特開昭61-196762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0316357(US,A1)
【文献】米国特許第4319149(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状電機子アセンブリ(104)と、
前記電機子アセンブリ(104)と同軸であり、ギャップ(120)によって前記電機子アセンブリ(104)から隔てられた非回転環状界磁巻線アセンブリ(102)と
を備える電気機械であって、前記界磁巻線アセンブリ(102)が、
界磁コイル支持構造(150)であって、前記界磁コイル支持構造(150)内に形成されて、前記界磁コイル支持構造(150)を巡って延びる凹部(154)の環状アレイを有する、界磁コイル支持構造(150)と、
複数の超電導コイル(152)であって、前記複数の超電導コイル(152)の各々が、前記凹部(154)の環状アレイのうちの一凹部(154)に配置されている、複数の超電導コイル(152)と
前記複数の超電導コイル(152)の周りに配置された少なくとも1つのセグメント化された熱シールド(160)と、
前記少なくとも1つのセグメント化された熱シールド(160)を前記複数の超電導コイル(152)に対して支持するように配置された1つ以上の支持柱(156)と
を備える、電気機械。
【請求項2】
前記電機子アセンブリ(104)、界磁コイル内側(FCI)構成を定めるように、前記非回転環状界磁巻線アセンブリ(102)の周囲に形成されている、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
前記複数の超電導コイル(152)の各々、競走場の形状の超電導コイル(152)である、請求項1又は請求項2に記載の電気機械。
【請求項4】
前記複数の超電導コイル(152)の各々、前記凹部(154)の環状アレイのそれぞれの凹部(154)においてスナップ式ジョイントを形成する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項5】
前記界磁コイル支持構造(150)、熱膨張係数の小さい材料で形成される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項6】
前記界磁コイル支持構造(150)、Invarで形成される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項7】
前記界磁コイル支持構造(150)、Kovarで形成される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセグメント化された熱シールド(160)が、半径方向にセグメント化された複数のアルミニウムシールド(162)を備える、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項9】
当該電気機械が発電機である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項10】
前記発電機が10MW以上の出力を達成する、請求項9に記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機に関し、とくには超電導巻線を含んでおり、超電導磁石の冷却中および冷却後の界磁コイルと電機子巻線コイルとの間の磁気ギャップを維持および/または減少させる電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータおよび発電機などの典型的な電気機械は、界磁コイルおよび電機子巻線コイルを含む。電圧が印加されると、磁場が界磁コイルと電機子巻線コイルとを結合させる。磁場の大きさは、界磁コイルを通る電流の量に依存する。電気機械内の磁気応力がトルクに変換され、ロータの回転をもたらす。磁場が強いほど、電機子巻線コイルの所与の円周における回転当たりのトルクが大きくなる。超電導材料で作られた界磁コイルを使用すると、超電導材料によって引き起こされる磁場強度の向上により、電気機械がより小型、軽量、かつ効率的になる。本明細書においては、界磁コイル内側(FCI)構成と呼ばれる超電導発電機がとくに注目される。
【0003】
典型的な超電導発電機において、界磁コイルは、一般にアルミニウムで形成される大型の主コイル形成体構造上に形成される。界磁コイルを室温から絶対零度の付近の動作温度へと冷却する際に、界磁コイル形成体構造の熱収縮が、半径方向および軸方向に生じる。界磁コイル形成体構造の半径方向の収縮は、界磁コイルと電機子巻線コイルとの間の磁気ギャップの増加をもたらす。この磁気ギャップの増加は、超電導発電機の性能、したがって効率を低下させる。設計に応じて、これは、例えば4m以上の半径を有する典型的な界磁コイル形成体構造において、最大で65mmになる可能性がある。
【0004】
界磁コイルと電機子巻線コイルとの間の最小磁気ギャップを維持するための手段を備え、例えば10~35MWなどの大メガワット(MW)の電力を発生させることができる超電導発電機が、長年にわたって求められている。求められる発電機は、信頼性が高くなければならず、経済的な輸送および設置を可能にするために、妥当なサイズおよび重量でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2011/316357号明細書
【発明の概要】
【0006】
本開示の態様および利点は、以下の説明において後述され、あるいは説明から自明であってよく、あるいは本開示の実施を通じて理解することができる。
【0007】
一実施形態によれば、電気機械が開示される。電気機械は、環状電機子アセンブリと、電機子アセンブリと同軸であり、電機子アセンブリからギャップによって隔てられた非回転環状界磁巻線アセンブリとを含む。非回転環状界磁巻線アセンブリは、界磁コイル支持構造および複数の超電導コイルを含む。界磁コイル支持構造は、界磁コイル支持構造内に形成され、界磁コイル支持構造を巡って延びる凹部の環状アレイを含む。複数の超電導コイルの各々は、凹部の環状アレイのうちの一凹部に配置される。
【0008】
別の実施形態によれば、発電機が開示される。発電機は、環状電機子アセンブリと、電機子アセンブリと同軸であり、電機子アセンブリからギャップによって隔てられた非回転環状界磁巻線アセンブリとを含む。非回転環状界磁巻線アセンブリは、界磁コイル支持構造および複数の超電導コイルを含む。界磁コイル支持構造は、無視し得る熱膨張係数を有する非収縮材料で形成される。複数の超電導コイルの各々は、界磁コイル支持構造に対して配置される。
【0009】
さらに別の実施形態によれば、電力を発生させるための方法が開示される。本方法は、発電機の非回転環状界磁巻線アセンブリに磁場を発生させるステップと、発電機の電機子アセンブリを回転させるステップと、非回転環状界磁巻線アセンブリの周りの電機子の回転によって電機子アセンブリに電流を発生させるステップと、複数の超電導コイルを冷却するときに少なくとも部分的に気化する冷却液を使用して、複数の超電導コイルを超電導状態に冷却するステップとを含む。界磁巻線アセンブリは、界磁コイル支持構造および複数の超電導コイルを含む。界磁コイル支持構造は、界磁コイル支持構造内に形成され、界磁コイル支持構造を巡って延びる凹部の環状アレイを含む。複数の超電導コイルの各々は、凹部の環状アレイのうちの一凹部に配置される。電機子アセンブリは、非回転環状界磁巻線アセンブリと同軸、かつ非回転環状界磁巻線アセンブリに電磁気的に結合し、非回転環状界磁巻線アセンブリは、電機子アセンブリからギャップによって隔てられる。界磁コイル支持構造は、複数の超電導コイルを超電導状態へと冷却する際に非回転環状界磁巻線アセンブリと電機子アセンブリとの間のギャップの寸法を維持するために、低い熱膨張係数を有する材料で構成される。
【0010】
本開示のこれらの特徴、態様、および利点、ならびに他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照することで、よりよく理解されるであろう。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の実施形態を例示し、説明と併せて本開示の原理を説明する役に立つ。
【0011】
当業者にとって、本開示の最良の態様を含む本開示の充分かつ本開示を実施可能にする開示が、添付の図面の参照を含む本明細書の残りの部分において、さらに詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の1つ以上の実施形態による超電導発電機の概略図であり、非回転または固定の界磁巻線から分離された電機子アセンブリを示している。
図2】界磁巻線の周りに配置された電機子を示しており、モジュール式の界磁コイルを含んでいる本開示の1つ以上の実施形態による超電導発電機の概略図である。
図3】環状回転電機子と、電機子によって囲まれた非回転超電導界磁巻線とを有する本明細書に提示される1つ以上の実施形態による超電導発電機を断面にて示している概略図である。
図4】本明細書に提示される1つ以上の実施形態による超電導界磁巻線の複数のモジュール式界磁コイルを含むコイル形成体構造の斜視図である。
図5】本明細書に提示される1つ以上の実施形態による図3の線5-5を通って得た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
対応する参照符号は、図面のいくつかの図を通して、対応する部分を示している。
【0014】
以下で、本開示の1つ以上の具体的な実施形態を説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供する努力において、実際の実装の特徴は、明細書において必ずしもすべては説明されないかもしれない。そのようなあらゆる実際の実装の開発においては、あらゆるエンジニアリングまたは設計プロジェクトと同様に、例えば実装ごとにさまざまであり得るシステム関連および事業関連の制約の順守などの開発者の具体的目標を達成するために、多数の実装ごとに特有の決定を行わなければならないことを、理解すべきである。さらに、そのような開発の努力が、複雑かつ時間を必要とするものであるかもしれないが、それでもなお本開示の恩恵を被る当業者にとって設計、作製、および製造の日常的な取り組みにすぎないと考えられることを、理解すべきである。
【0015】
本発明の種々の実施形態の構成要素を紹介するとき、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、および「前記(said)」は、その構成要素が1つ以上存在することを意味するように意図される。用語「・・・を備える(comprising)」、「・・・を含む(including)」、および「・・を有する(having)」は、包含的であるように意図され、そこに挙げられた構成要素以外のさらなる構成要素が存在してもよいことを意味する。
【0016】
界磁コイル巻線の周りに配置された電機子巻線を含む超電導交流(AC)発電機が開発されている。
【0017】
図1および図2が、分解された状態(図1)および組み立てられた状態(図2)の本開示の一実施形態による超電導発電機100の概略図である。超電導発電機100は、風力タービン、モータ、または例えば発電機がガスタービンによって駆動される用途における発電機に使用される超電導発電機の一実施形態を代表することができる。図1および図2に示される超電導発電機100は、界磁コイル内側(FCI)設計を有するように構成された半径方向磁場電気機械である。参照番号110および112が、それぞれ超電導発電機100の半径方向および軸方向を表している。
【0018】
図1および図2に示されるように、超電導発電機100は、非回転(本明細書において、固定とも称される)環状界磁巻線アセンブリ102と、ハウジング106内に配置された環状回転電機子アセンブリ104とを含む。とくに、図1は、非回転界磁巻線アセンブリ102と環状回転電機子アセンブリ104とを別々に示すための超電導発電機100の分解図を示している。
【0019】
非回転界磁巻線アセンブリ102は、環状回転電機子アセンブリ104に隣接して配置される。本明細書において使用されるとき、非回転界磁巻線アセンブリ102および環状回転電機子アセンブリ104の配置に関して、「隣接して配置され」という用語は、一実施形態において、非回転界磁巻線アセンブリ102が(図2に示されるように)環状回転電機子アセンブリ104によって囲まれるような非回転界磁巻線アセンブリ102と環状回転電機子アセンブリ104との相対的配置を指す。
【0020】
さらに、非回転界磁巻線アセンブリ102は、超電導界磁巻線108を備える。超電導界磁巻線は、充分に低い温度において超電導状態に遷移する導電性材料を使用して作られた1つ以上のモジュール式界磁コイル(図示せず)を含むことができる。そのような材料として、ニオブスズ合金、ニオブチタン合金、二ホウ化マグネシウム合金、超電導特性を示したいくつかのセラミック材料のいずれか、またはこれらの組み合わせが挙げられる。多くの場合、これらに限られるわけではないが銅、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、銀、金、またはこれらの組み合わせなどを含む導電性材料が、機械的特性を改善するために超電導合金と組み合わせて使用される。特定の実施形態においては、超電導発電機100の出力密度を向上させ、あるいは少なくとも維持するために、軽量導電性材料を使用することができる。いくつかの実施形態において、超電導発電機100は、超電導界磁巻線を極低温に冷却するための適切な構成(図示せず)を含むことができる。一実施形態において、回転電機子アセンブリ104は、超電導であってもよい。
【0021】
例として、いくつかの実施形態においては、超電導発電機100が風力タービンにおける超電導発電機として展開される場合に、環状回転電機子アセンブリ104を、風力タービンのロータに結合させることができる。したがって、環状回転電機子アセンブリ104を、風のエネルギーによって引き起こされるロータの回転によって回転させることができる。環状回転電機子アセンブリ104の回転により、超電導発電機100は、電機子巻線が超電導界磁巻線108によって確立された磁場を通過する際に電機子巻線に誘起される電圧によって、電力を発生させることができる。
【0022】
ここで図3を参照すると、環状回転電機子アセンブリ104によって囲まれた非回転超電導界磁巻線アセンブリ102を有する超電導発電機100が、概略の断面図にて示されている。回転電機子アセンブリ104は、界磁巻線アセンブリ102の周りの外側環状リングとして構成されている。電機子アセンブリ104は、従来どおりに形成され、電機子アセンブリ104の内側円筒面上に電機子アセンブリ104の長さに沿って長手方向に配置された導電性巻線114、例えばコイルまたはバーを備えることができる。一例として、電機子巻線114の長手方向部分は、長さが29~30インチであってよく、4~5インチの厚さおよび135~136インチの内径を有してもよい。コイルまたはバーを、それらの両端部において、導電性端部ターン116によって互いに接続することができる。長手方向のコイルまたはバーの間の端部ターン接続部116は、それらの数および配置、ならびに電機子巻線114に発生させるべき電気の位相に依存する。電機子巻線114の内側円筒面は、例えば約1~2インチなどの狭いエアギャップ120によって非回転界磁巻線アセンブリの外面から隔てられている。
【0023】
電機子アセンブリ104は、導電性巻線114を支持する円筒形ヨーク122を含む。ヨーク122の外面は、電機子アセンブリ104と一緒に回転する円筒形ハウジング106に固定される。ハウジング106の直径は、例えば、147~148インチであってよく、58インチの長さを有することができる。ハウジングは、ハウジング106および環状回転電機子アセンブリ104を支持する円形ディスク124に取り付けられる。
【0024】
回転円筒支持筒126が、電機子巻線114の半径方向内側に位置する。1対の環状軸受128が、非回転ベース管130の両端部に向かって配置され、非回転界磁巻線アセンブリ102の周りでの電機子アセンブリ104の回転を可能にする。
【0025】
非回転ベース管130は、非回転界磁巻線アセンブリ102が取り付けられた界磁巻線支持ディスク132を支持する。界磁巻線支持ディスク132は、軽量化のために切り欠きまたは穴(図示せず)を有することができる。界磁巻線支持ディスク132は、超電導界磁巻線108の超電導コイル(後述)を収容する低温装置ハウジング134の端部に取り付けられる。低温装置ハウジング134およびその冷却構成要素が、超電導界磁巻線108の超電導コイルを冷却する低温装置136を形成する。低温装置ハウジング134は、環状であり、断面において矩形であり、外径が134~135インチであり、長さが49インチであってよい。低温装置ハウジング134および発電機の他の構成要素の寸法は、設計上の選択事項であり、発電機の設計に応じてさまざまであってよい。
【0026】
低温装置136は、非回転界磁巻線108の超電導コイルを、絶対零度の付近、例えば10ケルビン(K)、好ましくは4Kまで冷却できるように断熱する。超電導コイルを冷却するために、低温装置ハウジング134は、液体ヘリウム(He)または他の同様の極低温液体(冷凍剤と呼ばれる)を受け入れるための断熱導管138を含む。従来からの2段再凝縮器140が、重力送りを使用して液体Heなどの冷凍剤を供給する。冷凍剤は、非回転界磁巻線102の超電導コイルの周りを流れ、コイルを冷却して超電導状態を達成する。コイルは、Heが少なくとも部分的に気化するときに、例えば4度Kまで冷却される。He蒸気は、導管138の一方を通って再凝縮器140へと流れ、再凝縮器140においてHeが冷却されて液化し、導管138を介してコイルへと戻される。超電導コイル用の電力導体も、ヘリウム用の断熱導管138を有する低温装置ハウジング134を通過する。
【0027】
第2の再凝縮器142が、例えば液体チッ素またはネオンなどの第2の冷却液を、超電導巻線108用の低温装置ハウジング134の内側熱シールド144へと供給する。第2の冷却液は、超電導コイル用の熱シールド144を約30度K~80度Kまで冷却する。熱シールド144を冷却することは、ヘリウムによって吸収される熱放射熱を減少させることによって超電導巻線108の過冷を助ける。第2の再凝縮器142は、気化した液体チッ素またはネオンを熱シールド144から受け取り、チッ素またはネオンを液化させ、液体チッ素またはネオンを断熱導管146を介して熱シールド144に供給する。
【0028】
非回転界磁巻線アセンブリ102の周りで環状回転電機子アセンブリ104を回転させるために、トルクが加えられる。トルクは、電磁力(EMF)結合ゆえに、環状回転電機子アセンブリ104によって非回転界磁巻線アセンブリ102へと加えられる。
【0029】
ここで図4および図5を参照すると、非回転界磁巻線アセンブリ102の一部分、より具体的にはコイル形成体または支持構造150の簡略化した等角図(図4)、および図3の線5-5を通って得た図3の超電導発電機の一部分の概略の断面図(図5)が示されている。複数の超電導コイル152のための界磁コイル支持構造150を含む非回転界磁アセンブリ102が示されている。一実施形態において、複数の超電導コイル152は、おおむね競走場の形状である。より具体的には、各々の超電導コイル152は、競走場の形状に形成された一群のワイヤで構成される。コイル152は、競走場の形状を保持するためにポッティングされる。各々の競走場は、例えば長さが29~30インチであり、幅が10インチである2つの平行な部分からなる長手方向部分を有することができる。界磁コイル支持構造150は、複数の超電導界磁コイル152を保持するための支持体を形成する。
【0030】
本明細書において、超電導界磁コイル152の冷却中および冷却後の半径方向110(図2)における界磁コイル支持構造150の収縮がとくに懸念される。このような界磁コイル支持構造150の収縮を排除しないまでも少なくとも最小限に抑えるために、本明細書に開示される界磁コイル支持構造150は、冷却時の構造の収縮を排除しないまでも少なくとも最小限にする軽量材料で形成される。一実施形態において、界磁コイル支持構造150は、温度変化に伴う膨張または収縮が相対的にないことで知られている任意の材料で形成される。一実施形態において、界磁コイル支持構造150は、KovarまたはInvarなどのニッケル-コバルト鉄合金で形成され、より詳細には、きわめて均一な熱膨張特性をもたらすように狭い範囲内に保持された化学組成を有する制御された膨張の合金で形成される。これらのニッケル-コバルト鉄合金材料は、比類ない低い熱膨張係数を有することで知られている。別の実施形態において、界磁コイル支持構造150は、複合繊維の巻き角に応じて、冷却中または冷却後に収縮せず、あるいは最小限にしか膨張しないように設計された強化ポリマーなどの複合材料で形成される。
【0031】
界磁コイル支持構造150は、中空凹部154の環状アレイを含み、各々の中空凹部154は、競走場の形状の複数の超電導コイル152のうちの1つを受け入れるように構成されている。各々の超電導コイル152は、界磁コイル支持構造150を巡って延びる環状アレイの凹部154内に支持され、ヘリウム浴によって極低温に冷却される。例えば、36個のコイル152が、発電機の固定子界磁巻線として機能する界磁巻線の環状アレイを形成することができる。超電導コイル152の各々を、ヘリウム用の冷却導管を含むことができる競走場の形態の周りに螺旋状に巻き付けられた(NbTi)ワイヤで形成することができる。
【0032】
より具体的には、競走場の形状の複数の超電導コイル152の各々は、コイル152を凹部154内に固定するために、スナップ式の設計(一体的な取り付け)によってそれぞれの凹部154内に据えられる。したがって、競走場の形状の複数の超電導コイル152の各々は、互いに噛み合う継手を形成するようにそれぞれの凹部154に対して配置される。超電導コイル152は、電機子コイルに向かって半径方向に磁気的に移動する傾向がある。超電導コイル152を界磁コイル支持構造150へとスナップ式にて取り付けることによって、超電導コイル152は、界磁コイル支持構造150に形成された凹部154内に固定されて保持される。
【0033】
図5をより具体的に参照すると、一実施形態において、内側熱シールド158および外側熱シールド160が、界磁コイル支持構造150の付近に配置される。熱シールド158、160の各々は、管状の円筒構造として構成される。超電導界磁コイル152の冷却中および冷却後の半径方向110(図2)における外側熱シールド160の収縮が懸念される。本明細書に開示のとおりの界磁コイル支持構造150の収縮の欠如ゆえに、外側熱シールド160が半径方向110に収縮すると、外側熱シールド160が界磁コイル支持構造150に接触する結果となり、高い熱負荷に起因して界磁コイル152を動作させることができなくなると考えられる。
【0034】
外側熱シールド160のこのような収縮を排除しないまでも少なくとも最小限に抑えるために、外側熱シールドは、半径方向にセグメント化された複数のアルミニウムシールド162で構成される。一実施形態においては、内側熱シールド158も、真空エンベロープを可能な限り小さくかつ緊密に保つことを可能にする半径方向にセグメント化された複数のアルミニウムシールド162で構成されてよい。外側熱シールド160を半径方向のセグメント化された構造162として形成することにより、半径方向110の収縮、または直径の収縮は「破壊」され、外側熱シールド160の各セグメント162は、各セグメント162の厚さに関する収縮のみを被ると考えられる。一実施形態において、外側熱シールド160の各々の熱シールドセグメント162は、おおむね5~10mmである。この最小寸法のシールド厚さの場合、冷却後の収縮は4.3パーミルになり、5mmの肉厚に対して0.0215mmの収縮を意味する。
【0035】
図5に最も良好に示されているように、一実施形態において、外側熱シールド160のセグメント化された熱シールド構造162を界磁コイル支持構造150に対して支持して安定にするために、複数の短くて熱伝導の少ない支持柱156が配置される。複数の支持柱156の各々は、それぞれのセグメント化された熱シールド構造162の重量を支える熱支持カラムとして機能する。支持柱156の各々を、低温装置の設計に応じて収縮するよりもむしろ膨張するように設計することができる。一実施形態において、そのような支持を提供することができる支持柱は、一般にHeimカラムと呼ばれる。
【0036】
電力を発生させるプロセスにおいて、非回転環状界磁巻線アセンブリに磁場が生成される。電機子アセンブリが、非回転環状界磁巻線アセンブリの周りを回転して、電機子アセンブリ内に電流が生じる。非回転環状界磁巻線アセンブリの複数の超電導コイルは、複数の超電導コイルを冷却するときに少なくとも部分的に気化する冷却液を使用して、超電導状態へと冷却される。非回転環状界磁巻線アセンブリの界磁コイル支持構造は、複数の超電導コイルを超電導状態へと冷却する際に非回転環状界磁巻線アセンブリと電機子アセンブリとの間の磁気ギャップの寸法を維持するために、低い熱膨張係数を有する材料で構成される。
【0037】
上述したように、複数のモジュール式超電導界磁コイル、界磁コイル支持構造、および外側電機子を含む超電導界磁巻線アセンブリを有する発電機、ならびに動作方法は、高いトルク密度を有し、比較的軽量である。発電機は、10MW以上の出力を達成でき、軽量であり得る。一実施形態において、超電導発電機は、風力の用途などにおいて、例えば10~35MWなどの大メガワット(MW)の電力を発生させることができる。別の実施形態において、超電導発電機は、超電導船舶推進システムなどにおいて、例えば100MW以上などの大メガワット(MW)の電力を発生させることができる。
【0038】
超電導界磁巻線アセンブリは、超電導磁石の冷却中および冷却後に超電導アセンブリと電機子アセンブリとの間に形成される磁気ギャップの収縮を排除しないまでも少なくとも最小限に抑える。ギャップが拡大しないように磁気ギャップを維持することにより、磁気ギャップ内への超電導界磁巻線の磁場の延伸の利点が維持され、より高い磁束密度が得られ、コスト上の利点がもたらされる。さらに、追加のコスト上の利点として、超電導システム内の超電導ワイヤのコストの割合を節約することができる。磁気ギャップが維持されず、ギャップサイズが大きくなると、超電導発電機の性能および効率が著しく低下する可能性がある。
【0039】
本発明を、現時点において最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられる内容に関して説明してきたが、本発明が、開示された実施形態に限定されるものではなく、むしろ反対に、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲に含まれる種々の変更および等価な構成を包含することを意図していることを、理解すべきである。
【符号の説明】
【0040】
100 電気機械、超電導発電機
102 非回転環状界磁巻線アセンブリ、非回転界磁巻線アセンブリ、非回転超電導界磁巻線アセンブリ、非回転界磁巻線、非回転界磁アセンブリ
104 環状回転電機子アセンブリ
106 円筒形ハウジング
108 超電導巻線、非回転界磁巻線
110 半径方向
112 軸方向
114 電機子巻線、導電性巻線
116 導電性端部ターン、端部ターン接続部
120 エアギャップ
122 円筒形ヨーク
124 円形ディスク
126 回転円筒支持筒
128 環状軸受
130 非回転ベース管
132 界磁巻線支持ディスク
134 低温装置ハウジング
136 低温装置
138 断熱導管
140 再凝縮器
142 再凝縮器
144 内側熱シールド
146 断熱導管
150 界磁コイル支持構造
152 超電導コイル、超電導界磁コイル
154 中空凹部
156 支持柱
158 内側熱シールド
160 外側熱シールド
162 セグメント、熱シールド構造、アルミニウムシールド
図1
図2
図3
図4
図5